説明

3次元画像形成のための標本の位置制御のための流体集束(FLUIDFOCUSING)

光トモグラフィシステムによる画像形成のためのサンプルを充填する方法。少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体を含むサンプル容積がサンプル供給管272内に同軸上に充填される。サンプル容積は集束セル222を通じてキャピラリチューブ274内に推進され、ここでキャピラリチューブ274はサンプル供給管よりも小さい断面積を有し、それによって、少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体の低減された容積がキャピラリチューブ274内の中心領域に拘束される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には光トモグラフィ画像形成システムに関し、より詳細には、生物細胞のような小さな対象物がたとえば、顕微鏡による画像形成のためにキャピラリチューブ内に流動的に位置決めされる光トモグラフィに関する。
【背景技術】
【0002】
光トモグラフィを使用する生物細胞の画像形成の最近の進歩は、たとえば、2003年2月18日に発行された「APPARATUS AND METHOD FOR IMAGING SMALL OBJECTS IN A FLOW STREAM USING OPTICAL TOMOGRAPHY」と題する特許文献1に開示されているように、Nelsonによって開発されている。該特許文献の全開示が参照により援用される。当該技術分野におけるさらなる発展は、2003年11月18日に出願され2004年4月22日付で米国特許出願公開第2004/0076319号として公開された、「METHOD AND APPARATUS OF SHADOWGRAM FORMATION FOR OPTICAL TOMOGRAPHY」と題する、Fauver他の特許文献2に教示されている。該特許文献の全開示も参照により援用される。
【0003】
このような光トモグラフィシステムにおける処理は、標本を調製することから開始する。通常、患者から採取された標本は病院又は診療所から受け取られ、処理されて非診断要素が除去され、固定され、次いで染色される。染色された標本は次いで光学ゲルと混合され、マイクロキャピラリチューブ内に挿入されて、標本内の、細胞のような対象物の画像が光トモグラフィシステムを使用して生成される。結果として生成される画像は、「疑似投影画像」と呼ばれる異なる複数の視野(perspective)からの拡張された被写界深度画像のセットを含む。疑似投影画像のセットを逆投影技法及びフィルタリング技法を使用して再構成して対象となる細胞の3次元断層像をもたらすことができる。
【0004】
その後、3次元断層像は、対象となる構造、分子又は分子プローブを定量化すると共にそれらのロケーションを確定することを可能にするために、分析に利用可能に維持される。生物細胞のような対象物は、少なくとも1つの染色剤又は標識分子プローブを用いてラベル付けすることができ、このプローブの測定量及びロケーションが、肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌及び卵巣癌のようなさまざまな癌を含むが、これらには限定されない、細胞の疾病状態に関する重要な情報をもたらすことができる。
【0005】
たとえば、特許文献2に記載されているような光トモグラフィ顕微鏡(OPTM)システムでは、180度の回転にわたって撮影される約250個のサンプル画像が、50マイクロメートルのキャピラリチューブ内で流動流の中にランダムに分散している細胞核の容積を適切にサンプリングすることが必要とされる。以前の細胞導入方法における制限に起因して、多数の細胞がキャピラリチューブ壁の近くに現れ、それによってサンプリングが外半径において約0.6マイクロメートルの解像度をレンダリングする程度にしか良好でなくなる。
【0006】
このような光トモグラフィシステムは集束しないキャピラリチューブ充填技法を使用するため、細胞及び他の対象物は、追跡エラー、並びに幾何学的歪み、及び管壁屈折によって引き起こされる収差からの解像度の損失を含む光学的欠陥に陥る傾向にある。このようなシステムはまた、媒質の振動、温度変化、封入ガスの膨張並びに/又は化学的変化及び局所的なレオロジー的変化からのゲル不安定性に起因する縦運動の影響を受ける。中心にない標本も、壁に張り付くか又は壁に沿ってゆっくりと移動する傾向にあり、それによって、壁に付着する細胞が凝集することから目詰まりが引き起こされる。現行のシステムもサンプルキャリーオーバーの問題を抱えている。
【0007】
スループットを向上させるために、許容可能な解像度を維持しながらサンプリング要件を低減するために、より高い解像度又は改善された信号対雑音を提供する方法が必要とされている。本発明は、サンプルをセンタリングすると共にサンプル容積を低減して、サンプルキャリーオーバー問題を緩和しながらOPTMシステムにおける画像取得及びスループットを向上させる新規の斬新な技法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,522,775号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/716,744号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、光トモグラフィシステムによる画像形成のためのサンプルを充填する方法を提供する。少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体を含むサンプル容積は、サンプル供給管内に同軸上に充填される。サンプル容積は集束セルを通じてキャピラリチューブ内に推進される。ここでキャピラリチューブはサンプル供給管よりも小さい断面積を有し、それによって、少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体の低減された容積がキャピラリチューブ内の中央領域に拘束される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】光トモグラフィ顕微鏡システムによる疑似投影の取得中の等価なサンプリング増分を使用する50マイクロメートル径のキャピラリチューブのサンプリング増分を概略的に示す。
【図1B】光トモグラフィ顕微鏡システムによる疑似投影の取得中の等価なサンプリング増分を使用する15マイクロメートル径のキャピラリチューブのサンプリング増分を概略的に示す。
【図2】本発明の一例の実施形態において使用される回転高圧流体力学集束フローセル(rotating high-pressure hydrodynamic focus flow cell)の断面図を概略的に示す。
【図3】本発明の一例の実施形態において回転高圧流体力学集束フローセルにおいて使用される集束セルの詳細な斜視図を概略的に示す。
【図4】充填シーケンスの開始時における、シリンジを充填する中心コアのための本発明の代替のメカニズムの一例の図解を概略的に示す。
【図5】充填シーケンスの終了時における、シリンジを充填する中心コアのための本発明の代替のメカニズムの一例の図解を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において生物細胞に関連する特定の例に関して本発明を記載するが、これらの例は本発明の原理の説明を目的とするものであること、及び本発明はそのようには限定されないことは理解されよう。
【0012】
概して本明細書において使用される場合、以下の用語は、光学顕微鏡法処理の文脈内で使用される場合、以下の意味を有する。
【0013】
「キャピラリチューブ」は一般的に受け入れられている意味を有し、透明なマイクロキャピラリチューブ及び100マイクロメートル以下の内径を有する等価な物品を含むように意図される。このようなマイクロキャピラリチューブは、アリゾナ州所在のPolymicro Technologies, LLCによって製造されている。
【0014】
「対象物」は個々の細胞又は他の実体を意味する。1つ又は複数の対象物が1つの標本を含む場合がある。
【0015】
「疑似投影」は、光学素子の本来の被写界深度よりも広い範囲のサンプリングされた容積を表す単一の画像を含む。
【0016】
「標本」は、単一の試験又は手技から得られる個々の患者からの完全な産物(たとえば、分析、生検用に提出される唾液、又は鼻腔用綿棒)を意味する。標本は1つ又は複数の対象物から成る場合がある。標本診断の結果はケース診断の一部となる。
【0017】
「サンプル」は、分析の準備が整っている完成した細胞調製品を意味し、アリコート又は標本のすべて又は一部を含む。
【0018】
ここで図1Aを参照すると、光トモグラフィ顕微鏡システムによる疑似投影の取得中の等価なサンプリング増分を使用する、目的のセンタリングがなされていないキャピラリチューブのサンプリング増分が概略的に示されている。ここで、サンプリング増分は、第1のサンプリング角θ、第1のサンプリング距離d、及びサンプリング間隔aによって記述することができる。キャピラリチューブの直径が約50マイクロメートルである一実施例では、θは0.720度になり、dは25マイクロメートルになり、aは0.31マイクロメートルの値を有する。中心にない対象物を上記の条件下で適切にサンプリングするために、約250個のサンプルがキャピラリチューブの180度の回転にわたって必要とされる。
【0019】
しかしながら通常、唾液のような生物サンプル中の分析される標本核及び細胞型の大部分は直径が25マイクロメートルよりも小さい。細胞の流動流を中心流動流の半径±5マイクロメートル内に制限するために、サンプリングされる全体の半径は15マイクロメートルとなり、すなわち中心直径は30マイクロメートルとなる。サンプルは10マイクロメートルの通常のサイズを有する核のみに制約されるべきであり、サンプリングされる中心容積の直径は15マイクロメートルになる。
【0020】
ここで図1Bを参照すると、光トモグラフィ顕微鏡システムによる疑似投影の取得中の等価なサンプリング増分を使用する、15マイクロメートル径のキャピラリチューブのサンプリング増分が概略的に示されている。ここで、サンプリング増分は、本発明のシステム及び方法を使用してサンプルをセンタリングすることによって可能となるように、第2のより小さいサンプリング角θ’、第2のより小さいサンプリング距離d’、及び第2のサンプリング間隔a’によって制約される。たとえば、一貫して0.6マイクロメートルのサンプリング間隔a’を維持することによって、30マイクロメートルコアのサンプル数を250個から150個に低減することができる。15マイクロメートルの中心直径の標的を使用してサンプリングをさらに75個のサンプルに低減することができる。システムスループットの向上は、必要とされる画像サンプリングの割合低減まで直接に引き上げられる。したがって、同じか又はより小さい回転サンプル増分で、信号対雑音比が向上したより高い解像度を達成することができるため、光トモグラフィ分析のためにキャピラリチューブ内で細胞のような標的対象物をセンタリングすることには大幅な性能優位性がある。代替的に、回転サンプル増分を低減して、十分な画質を維持しながら同じ容積に関してサンプルをより少なくすることができる。
【0021】
ここで図2を参照すると、本発明の一例の実施形態において使用される回転高圧流体力学集束フローセルの断面図が概略的に示されている。回転高圧流体力学集束フローセル200は、ケース250と、封止ハウジング252と、ベアリングレース254とを備える。ケース250は管251を備え、管251は、集束セル222、シリンジ針ノズル注入器201、及び針シール203を含む構成要素を収容する。集束セル222は、波型円錐部230と、第1のOリング及び第2のOリング302と、テーパ状フローセル224とをさらに備える。
【0022】
シース流体注入ポート220が、シース流体入口チャネル260において波型円錐部230と流体連通するケース250内に穿孔されるか又は他の方法で作成される。封止ハウジング252は、テーパ状フローセル224を通じて挿入されるシリンジ針272によって供給されるサンプルを受け入れるように軸方向に位置調整される回転シール202を中心に保持する。テーパ状フローセル224は、キャピラリチューブ出口232において終端する。好ましい一実施形態では、シリンジ針272は、交換式注入器針を含む。交換式注入器針は有利には、キャリーオーバー問題を低減し、標本のキャリーオーバーが確実に最小限に抑えられるようにシステムを通じて洗浄しなければならない全体の洗浄容積も低減する。
【0023】
ベアリングレース254は、シャフトハウジング285に対して圧力ばめされている回転ベアリング282を保持する。シャフト290がシャフトハウジング285内の中心に取り付けられる。シャフト290は、同じく軸方向に位置調整される交換式キャピラリチューブ274を受け入れる穿孔を有する。駆動ギア280はシャフトハウジング285と係合するようになっている。駆動ギア280は、交換式キャピラリチューブ274を受け入れると共に中心軸270と一致させて中心に保持するように構成される長い環状のテーパ状素子292を含む。ケース250、封止ハウジング252、管251及びシャフト290は中心軸270に沿って直線上で位置調整される。
【0024】
ここで図3を参照すると、本発明の一例の実施形態において使用される回転高圧流体力学集束フローセルにおいて使用される集束セルのより詳細な透視斜視図が概略的に示されている。集束セル222内に挿入されると、シリンジ針ノズル注入器201(図2に示す)は、針ロケーション201aにおいて両端のOリングシール302によって波型円錐部230内にフィットし、テーパ状フローセル224の中心に位置決めされる。波型円錐部230は、流れの方向に沿って下流に向けてテーパ状になっており、複数のシース注入ポート226によって一様に波型になっている。複数のシース注入ポート226は、シースゲルが流体入口チャネル260から該複数のシース注入ポート226を通じてテーパ状フローセル224に供給されることを可能にするように位置決めされる。
【0025】
本発明の回転高圧流体力学集束フローセルを使用して、層流条件下で2つの流れを同軸上に合流させることによって生成される中心の流動の結果、標本が中心に置かれる。層流は以下の関係によって記述することができる。
R=レイノルズ数<<2000
ここで、R=(密度)(速度)(直径)/粘度
理想的には、流速は注入ロケーションにおいて一致するか又はほぼ一致する。流速が等しいとき、初期コア径とシース直径との比は保存される。中心流動と外側の「シース」流動流とが合流する点において、流動流は流動プロファイルが同じであると仮定する。流動が下って流体力学集束セルの円錐形流動プロファイルに移行すると、流体の速度が増加してテーパを通る一定の質量流量がサポートされる。速度が増加すると流体は押し出されて直径がより小さくなるが、流動流は流動プロファイル全体にわたって同じ相対位置を保持する。中心流動流内の微粒子は中心流動流内に留まる。
【0026】
ここで図2及び図3を共に参照すると、動作中、高圧流体力学集束セル200はテーパ状フローセル224のキャピラリチューブ出口232に回転シール202を生成する。回転シール202は、既知の工学的設計技法を使用して、高粘性ゲルを密にフィットしている交換式キャピラリチューブ274を通じて押し出すのに必要な圧力に耐えるように構成される。通常の圧力は1000PSIを超えることができる。回転ベアリング282は、密にフィットしている交換式キャピラリチューブ274が、針272の周囲をOリング202によって依然としてシールされたままでベルト及びモータ(図示せず)を介して回転することを可能にする。
【0027】
シース流体(図示せず)は流体入口チャネル260を通じてシース流体注入ポート220内に、また複数のシース注入ポート226内に注入されて別個のシース流動流が形成される。ほぼ同時に、シリンジ針272が針ロケーション201aにおいてシリンジ針ノズル注入器201を通じてサンプルを供給する。円錐部230の出口端305とシリンジ針ノズル注入器201の出口との間の距離304は、別個のシース流動流が完全に成形された合流流動プロファイルを生成することを可能にするのに十分である。シース流体及びサンプル流動流はシリンジ針ノズル注入器201の出口端において同軸上に合流する。駆動ギア280がシャフトハウジングと回転係合すると、シース流体ポートと協働するシリンジ針272は、同軸上に合流した層状のサンプル容積を、シリンジ針ノズル注入器201を通じてキャピラリチューブ出口232において挿入される交換式キャピラリチューブ274に供給することができる。
【0028】
好ましい一実施形態では、サンプルを担持するゲル媒質は、サンプルの中心コアがシリンジ内のゲル媒質の中心領域内に注入されると、該中心コアを保持するのに適切な高粘度及びチキソトロピー性を呈するべきである。粒子はシリンジコア内に充填されると、キャピラリチューブを下る層流を介して、中心流動流内に残留する粒子によってキャピラリチューブを押し下げる。さらに、テーパ状の供給移行部分であるテーパ状フローセル224によって、シリンジ流動からキャピラリチューブ内径への滑らかな移行がもたらされる。
【0029】
有利にはゲル媒質もキャピラリチューブの屈折率と一致するように選択される光学ゲルとすることができる。屈折率が一致する材料は市販されており(たとえば市販のソースはNye Optical Gel(Dymx Corp、及びCargille Labs)を含む)、たとえば光界面において光反射を低減するための可変反射率の光学ゲル、油及び流体を含む。光学ゲルはより高い粘度が所望される場合に特に有用であり、油、ゲル、ポリマーエポキシ樹脂、又は周囲の屈折率と一致する他の光学的に透明な材料の媒質を含むことができる。標本は、屈折率が一致するエポキシ樹脂、包埋剤、又はプラスチックポリマー並びに屈折率が一致するゲル及び粘性流体内に保持することができる。
【0030】
本発明の流体力学集束セルを使用することによって、再構成に必要なサンプルの数を低減することも可能になり、それによってデータ収集速度が流体力学集束がない場合よりも1.6倍〜3.3倍程度増加する。本発明の流体力学集束セルは標本のセンタリングを容易にし、該センタリングは、追跡エラー及び必要な集束追跡のダイナミックレンジを低減すると共に、幾何学的歪み及び壁屈折によって引き起こされる収差からの解像度の損失を含む管壁の光学的効果を大幅に低減する。同時に、本発明のシステムは、標本を保持するためのキャピラリチューブの全体の直径を増大させることを可能にし、それによって、OPTMシステム全体が、ゲルの振動、温度変化、封入ガスの膨張、又は化学的変化若しくは局所的なレオロジー的変化からのゲル不安定性のような要因に起因する縦運動によって受ける影響が少なくなる。
【0031】
本発明のシステムは、標本が壁に張り付くか又は壁に沿ってゆっくりと移動する傾向を低減し、それによって壁に付着する細胞が凝集することによる目詰まりを低減することによって信頼性を向上させる。流体力学集束は本質的に、細胞が長手方向に引き離されるようにし、それによって、目詰まりが低減されて、細胞が共に近接する確率が低下することによって顕微鏡に対する提示が改善される。直径が小さいキャピラリチューブにおけるレイノルズ数はより高い速度においても20を下回ったままであり、それによって、標本のセンタリングを混乱させる乱流なしにスループットを高くすることが可能となる。
【0032】
ここで図4を参照すると、充填シーケンスの開始時における、シリンジを充填する中心コアのための本発明の代替のメカニズムの一例の図解が概略的に示されている。中心コア充填メカニズム100は、第1のシリンジバレルグリップ122によって基礎112に取り付けられるプランジャ103を有する第1のシリンジAを備える。プランジャ105を有する第2のシリンジBが第2のシリンジバレルグリップ124によって線形スライド108に取り付けられる。シリンジBプランジャ105は第1の線形アクチュエータ106内の第1の線形アクチュエータシャフト104に結合され、第1の線形アクチュエータ106は線形スライド108上に取り付けられる。次いで、線形スライド108が基礎112に摺動可能に取り付けられる。第2の線形アクチュエータ110は、シャフト120を横方向に動かすように結合され、シャフト120は線形スライド108を横方向に動かすように取り付けられる。シリンジBはシリンジA及びシリンジバレル126の中心内に挿入するのに適切なサイズにされる外径の小さい針107を有する。
【0033】
第1のシリンジバレルグリップ122は有利には、基板112に固定してシリンジバレル126に対するプランジャ105のストロークの正確度を提供することができる。一実施例では、シリンジバレルグリップ122はアルミニウム等のような剛性材料、又は他の既知の材料から構成され、規格U−100のシリンジバレルにフィットするように成形される。アダプタ又は接続金具を使用して線形アクチュエータシャフト104をシリンジプランジャ105に調整可能に接続することができる。第1の線形アクチュエータ106及び第2の線形アクチュエータ110は、たとえば、電気パルスを線形アクチュエータシャフト104、120の線形の機械的ストロークに変換する単極ステッパモータケースを備えることができる。
【0034】
通常使用では、シリンジAは媒質ゲルを含み、シリンジBはサンプルを含み、サンプルは通常、光学ゲル内に保持される生物細胞を含む。シリンジA内にサンプルを充填する前に、シリンジBの、外径の小さい針107がシリンジAの中心内に挿入される。
【0035】
ここで図5を参照すると、充填シーケンスの終了時における、シリンジを充填する中心コアのための本発明の代替のメカニズムの一例の図解が概略的に示されている。動作中、シリンジBは、線形スライド108を押し出す制御されている第1のアクチュエータ110を使用してシリンジAから後退し、一方で制御されている第2の線形アクチュエータ106はシリンジBを押してシリンジAから後退している針107の容積と等しい容積のサンプルを分配する。このようにして、サンプルは後に観察のために光トモグラフィキャピラリチューブ(図示せず)内に分配するためにシリンジAの中心コア128内に充填される。
【0036】
シリンジA及びB内で使用される流体の高粘度、並びに光トモグラフィサンプル供給に使用されるシリンジ及びキャピラリチューブの双方の比較的小さい寸法によってサンプル供給システム内の流動の低レイノルズ数が保証される。高粘度且つチキソトロピー性のサンプル媒質のレオロジー的特性によって、細胞の懸濁液が流動を安定及び停止させることなく、サンプルキャピラリチューブを、サンプルの角度又は長手方向(すなわち流動軸寸法)を阻害することなく回転させることを可能にすることが可能となる。サンプル供給管の中心コアに拘束されるように同軸にシリンジポンプ内に充填されるサンプルは、特にキャピラリチューブへの移行がテーパ状になっており滑らかである供給システムにおいては乱流を経験しない。この種類のシリンジ中心コア充填物は、細胞の相対半径方向位置を保持するキャピラリチューブを通じて圧送することができる。層流システムの中心において開始する細胞はその中心流動流を維持する。流動流は直径数ミリメートルから100マイクロメートル未満に収縮するため、中心粒子は中心にあるままである。ゲル媒質のような、細胞が埋め込まれるチキソトロピー性の非ニュートン性流体のレオロジー的応答によって、ゲルが流れ始めるとずれが最大になる壁に沿って流体の流動化(thinning)を生じる。このように壁の最も近くでのずり流動化(shear thinning)の結果として、速度流動プロファイルがより平坦になるという効果があり、それによって、直径にわたる流速差によって中心粒子が阻害されない状態が維持される。
【0037】
本発明によって意図される流体集束システムを説明してきたが、本発明の、光トモグラフィシステムによる画像形成のための低減されたサンプル容積を充填する方法の一実施例をこれより説明する。少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体を含むサンプル容積を、管251のようなサンプル供給管内に同軸上に充填することができる。次いで、サンプル容積をテーパ状フローセル224のようなテーパ状の供給移行部分を通じて、キャピラリチューブ274内に推進させることができる。キャピラリチューブはサンプル供給管よりも小さい断面積を有し、それによって、少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体の低減された容積がキャピラリチューブ内の中心領域に拘束される。好ましくは、サンプル容積は層流条件下で同軸上に合流する2つの流れによって形成され、2つの流れのうちの一方は少なくとも1つの顕微鏡サンプルを含む。本発明の方法の一態様によれば、2つの流れは、テーパ状流管内又は流体力学集束セル内のいずれかに2つの流れを別個に注入することによって層流条件下で合流する。
【0038】
特許法に準拠すると共に、当業者に本発明の新規の原理を適用するのに必要な情報を提供するために、またこのような例示的な構成要素及び専用の構成要素を必要に応じて構成して使用するために、本発明を本明細書においてかなり詳細に記載してきた。しかしながら、明確に異なる機器、及びデバイスによって本発明を実行することができること、並びに、機器の詳細及び動作手順の双方に関して、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなくさまざまな変更を達成することができることは理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光トモグラフィシステムによる画像形成のためのサンプルを充填する方法であって、
少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び粘性流体を含むサンプル容積をサンプル供給管(272)内に同軸上に充填するステップと、
前記サンプル容積を流体力学集束セル(222)を通じてキャピラリチューブ(274)内に推進させるステップであって、該キャピラリチューブ(274)は前記サンプル供給管(272)よりも小さい断面積を有し、前記流体力学集束セル(222)は波型円錐部(230)及びテーパ状フローセル(224)を備え、それによって、前記少なくとも1つの顕微鏡サンプル及び前記粘性流体の低減された容積が前記キャピラリチューブ(274)内の中心領域に拘束されるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記同軸上に充填するステップは、2つの流れを層流条件下で同軸上に合流させるステップを含み、該2つの流れのうちの一方は前記少なくとも1つの顕微鏡サンプルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの流れを層流条件下で同軸上に合流させるステップは、前記テーパ状フローセル(224)内に第1の流れを注入するステップ、及び前記流体力学集束セル(222)内に第2の流れを注入するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘性流体は非ニュートン性ずり流動化ゲルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記粘性流体は非ニュートン性ずり流動化ゲルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記収束セル(222)は波型円錐部(230)とテーパ状フローセル(224)とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テーパ状フローセル(224)はキャピラリチューブ出口(232)において終端し、前記波型円錐部(230)及び前記テーパ状フローセル(224)は中心軸(270)に沿って軸方向に位置調整され、前記サンプル供給管(272)は出口端を有するシリンジ針ノズル注入器(201)を備え、該シリンジ針ノズル注入器(201)は前記テーパ状フローセル(224)に対してセンタリングされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回転高圧流体力学集束フローセル(200)であって、
波型円錐部及びテーパ状フローセル(224)を収容するケース(250)であって、該テーパ状フローセル(224)はキャピラリチューブ出口において終端し、前記波型円錐部及び前記テーパ状フローセル(224)は中心軸(270)に沿って軸方向に位置調整されるケース(250)と、
出口端を有するシリンジ針ノズル注入器(201)であって、該シリンジ針ノズル注入器(201)は前記テーパ状フローセル(224)内でセンタリングされるシリンジ針ノズル注入器(201)とを備え、
前記波型円錐部は、複数のシース注入ポート(226)によって一様に波型になっており、該複数のシース注入ポート(226)は、前記テーパ状フローセル(224)と流体連通すると共に、前記シリンジ針ノズル注入器(201)の前記出口端において合流流動プロファイルを生成することが可能となるように、シースゲルが前記テーパ状フローセル(224)に供給されることを可能にするように位置決めされ、
前記テーパ状フローセル(224)内に同軸上に挿入されると、シリンジ針(272)によって供給されるサンプルを受け入れるように軸方向に位置調整される交換式キャピラリチューブ(274)を中心に保持する封止ハウジングと、
シャフトハウジング(285)と、
前記シャフトハウジング(285)内で中心に取り付けられると共に前記中心軸(270)に沿って軸方向に位置調整されるシャフト(290)であって、該シャフト(290)は前記交換式キャピラリチューブ(274)を受け入れる穿孔を有するシャフト(290)と、
前記交換式キャピラリチューブ(274)を前記中心軸(270)を中心として回転させる、前記シャフトハウジング(285)と係合する駆動ギアと、
を備える、回転高圧流体力学集束フローセル。
【請求項9】
回転高圧流体力学集束セル(200)であって、前記駆動ギアは、前記交換式キャピラリチューブ(274)を受け入れると共に前記中心軸(270)と一致させて中心に保持するように構成される長い環状のテーパ状素子を備える、請求項8に記載の回転高圧流体力学集束セル。
【請求項10】
回転高圧流体力学集束セル(200)であって、前記サンプルは光学ゲル内に担持される少なくとも1つの生物細胞を含む、請求項8に記載の回転高圧流体力学集束セル。
【請求項11】
回転高圧流体力学集束セル(200)であって、前記サンプルは非ニュートンずり流動化ゲル内に担持される少なくとも1つの生物細胞を含む、請求項8に記載の回転高圧流体力学集束セル。
【請求項12】
回転高圧流体力学集束セル(200)であって、前記交換式キャピラリチューブ(274)は100マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲内の断面内径を有する、請求項8に記載の回転高圧流体力学集束セル。
【請求項13】
回転高圧流体力学集束セル(200)であって、シース流体注入ポート(220)が、シース流体入口チャネル(260)において前記管(251)と流体連通するように前記ケース(250)内に作成される、請求項8に記載の回転高圧流体力学集束セル。
【請求項14】
回転高圧流体力学集束セル(200)であって、前記複数のシース注入ポート(226)及び前記シリンジ針ノズル注入器(201)は協働して、前記交換式キャピラリチューブ(274)が回転すると該キャピラリチューブ(274)にシース流体内で層状になっているサンプルを充填する、請求項8に記載の回転高圧流体力学集束セル。
【請求項15】
サンプルコアシリンジ充填のためのメカニズム(100)であって、
基礎(112)に取り付けられる第1のシリンジ(A)であって、該第1のシリンジ(A)は媒質ゲルを含む第1のシリンジ(A)と、
プランジャを有する第2のシリンジ(B)であって、該第2のシリンジ(B)は線形スライド(108)に取り付けられ、該線形スライド(108)は前記基礎(112)に摺動可能に取り付けられ、該第2のシリンジ(B)はサンプルを含み、該第2のシリンジ(B)は前記第1のシリンジ(A)の中心内に挿入されるようなサイズにされる針(107)を有する第2のシリンジ(B)と、
前記線形スライド(108)上に取り付けられる第1の線形アクチュエータ(106)であって、前記第2のシリンジ(B)のプランジャは該第1の線形アクチュエータ(106)に結合される第1の線形アクチュエータ(106)と、
前記線形スライド(108)を横方向に動かすように結合される第2の線形アクチュエータ(110)とを備え、
前記第2のシリンジ(B)の針(107)が前記第1のシリンジ(A)内に挿入された後に、前記第1の線形アクチュエータ(106)は前記第2のシリンジ(B)の前記シリンジプランジャを動かし、前記第2の線形アクチュエータ(110)は同時に前記線形スライド(108)を動かし、それによって、前記第2のシリンジ(B)が押されて、前記第1のシリンジ(A)から後退する前記針(107)内の容積に比例するサンプルの該容積が分配され、それによって前記第1のシリンジ(A)の中心コア(128)内に前記サンプルが充填されるメカニズム。
【請求項16】
前記サンプルは光学ゲル内に担持される少なくとも1つの生物細胞を含む、請求項15に記載のメカニズム。
【請求項17】
前記サンプルは、非ニュートンずり流動化ゲル内に担持される少なくとも1つの生物細胞を含む、請求項15に記載のメカニズム。
【請求項18】
前記媒質ゲルは高粘度チキソトロピー性ゲルを含む、請求項15に記載のメカニズム。
【請求項19】
前記サンプルは少なくとも1つの生物細胞を含み、該少なくとも1つの生物細胞は前記第2のシリンジ(B)内で半径方向位置を有し、該相対半径方向位置は充填時に維持される、請求項15に記載のメカニズム。
【請求項20】
前記サンプルは、100マイクロメートル未満に収縮する流動流によって前記第1のシリンジ(A)の前記中心コア(128)内に充填される、請求項15に記載のメカニズム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−519547(P2010−519547A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550975(P2009−550975)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/054248
【国際公開番号】WO2008/103640
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(503351962)ヴィジョンゲイト,インコーポレーテッド (7)