説明

3次元神経回路網具現装置

本発明は、3次元神経回路網具現装置に関し、3次元構造を有する培養基板と、当該培養基板上に配置されて神経細胞を3次元構造に培養させる多数の微小電極とを含んで構成されることにより、生命体の神経細胞網と類似する並列演算効率を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経回路網具現装置に関し、特に、生命体の神経細胞網と類似する並列演算効率を提供する3次元神経回路網具現装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の簡単で且つ当然視されている考え方や行動は、数千億個の神経細胞(neuron)間のシナプス(synapse)を介した神経細胞網の純粋な並列信号処理によって一瞬で行われる。
【0003】
しかしながら、既存のコンピューターの信号処理方式は、信号処理素子間の数多くの直列信号処理で行われるため、人間の複雑な考え方や行動を演算で具現するのには無理がある。
【0004】
頭脳の並列信号処理方式を活用した人工神経網(artificial neural network)においても、単位素子同士が直列に連結された構造を有するため、人間の神経細胞網の純粋な並列信号処理方式とは差があり、情報処理速度及び処理機能に限界がある。
【0005】
よって、生命体の神経細胞網をコンピューターの演算部分に活用するための研究であって、神経細胞を培養して神経細胞網を形成し、微小電極アレイを介して神経回路網と機械間の送受信が可能となるようにする頭脳−機械インターフェース(BMI、brain−machine interface)に関する研究が米国及びヨーロッパを中心に活発に行われている。
【0006】
しかしながら、このような神経回路網では、図1に示されるように、2次元的な平面培養基板に神経細胞を培養するため、信号の効果的な並列伝達に困難さがあった。
【0007】
即ち、図1に示されるように、平面的な2次元構造を有する神経回路網を介して、3次元構造を有する生命体の神経細胞網と同じ並列演算効率を得るのは、現実的に不可能であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許 第0338245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、神経細胞が生命体の神経細胞網のような3次元構造を有するようにすることで、当該生命体の神経細胞網と類似する並列演算効率を提供する3次元神経回路網具現装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題点を解決するために、本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置は、3次元構造を有する培養基板と、当該培養基板上に配置されて神経細胞を3次元構造に培養させる多数の微小電極とを含むことを特徴とする。
【0011】
上記培養基板は、中央領域が半球形又は球形であることを特徴とする。
【0012】
また、上記培養基板は、球形の中央領域を有する一つの基板として具現されるか又は半球形の中央領域を有する二つの基板を対向させて結合することで具現されることを特徴とする。
【0013】
上記多数の微小電極は、上記培養基板の中央領域に分散配置され、当該培養基板の中央領域の全体にわたって一定の配置分布を有するか又は当該培養基板の中央領域の内で領域別に相違する配置分布を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記3次元神経回路網具現装置は、2次元構造を有する上記培養基板の外郭領域に配置されて外部機器が連結される多数の外部連結用電極と、上記多数の微小電極のそれぞれと上記多数の外部連結用電極のそれぞれとを連結させる多数の電極間の連結線とをさらに含むことを特徴とする。
【0015】
上記外部機器は、上記外部連結用電極に接触し、当該外部連結用電極と上記電極間の連結線と上記微小電極とを介して上記神経細胞に電気的な刺激を与えたり上記神経細胞から発生する信号を感知したりすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の3次元神経回路網具現装置によると、3次元構造を有する培養基板上に微小電極を分散配置し、当該微小電極上に神経細胞を培養させることで、当該神経細胞が生命体の神経細胞網と類似する培養構造を有することになり、当該生命体の神経細胞網と類似する並列演算効率を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術による2次元神経細胞網を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるように好ましい実施形態を詳述する。但し、本発明の好ましい実施形態における動作原理を詳述するにおいて、関連する公知の機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要にできると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0019】
また、図面において、本発明の明確な説明と関係ないものは省略し、明細書全体にわたって類似する部分に対しては類似する符号を付した。
【0020】
なお、明細書全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0021】
図2から図4は、本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【0022】
図2から図4を参照すると、本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置は、半球形の中央領域を有する培養基板21と、当該培養基板21の中央領域に分散配置される多数の微小電極22と、外部機器(図示せず)と連結されるように当該培養基板21の外郭領域に一列に配置される多数の外部連結用電極23と、上記多数の微小電極22のそれぞれと上記多数の外部連結用電極23のそれぞれとを電気的に連結させる多数の電極間の連結線24とで構成され、神経細胞は上記微小電極22上で培養される。
【0023】
このように、本発明の一実施形態による3次元神経回路網具現装置では、生命体の神経細胞網と類似する形態を有するように、培養基板21の中央領域を半球形に具現し、多数の微小電極22を当該培養基板21の中央領域に分散配置させる。
【0024】
即ち、上記微小電極22は、上記培養基板21の3次元の面上に配置されて3次元構造を有し、微小電極22上に培養される神経細胞また、3次元構造を有することになる。
【0025】
その結果、神経細胞網を刺激し記録するための外部機器は、生命体の神経細胞網と類似する3次元構造を有する神経細胞に電気的な刺激を与えたり神経細胞から発生する電気的信号を感知したりすることができるため、当該生命体の神経細胞網と実質的に類似する並列演算効率を得ることが可能となる。
【0026】
この際、上記外部機器は、上記外部連結用電極23に接触し、当該外部連結用電極23と上記電極間の連結線24と上記微小電極22とを介して神経細胞に電気的な刺激を与えたり上記神経細胞から発生する信号を感知したりすることで、神経細胞網を刺激し記録する。
【0027】
なお、図2から図4に示される電極間の連結線24及び微小電極22は、培養基板21における半球形の中央領域の外側面に配置されるが、必要に応じて、培養基板21における半球形の中央領域の内側面に配置されることもできる。
【0028】
図5から図6は、本発明の他の実施形態による3次元神経回路網具現装置の構造を示す図である。
【0029】
図5から図6を参照すると、本発明の他の実施形態による3次元神経回路網具現装置は、球形の中央領域を有する培養基板31と、当該培養基板31の中央領域に分散配置される多数の微小電極32と、外部機器と連結されるように当該培養基板31の外郭領域に一列に配置される多数の外部連結用電極33と、上記多数の微小電極32のそれぞれと上記多数の外部連結用電極33のそれぞれとを電気的に連結させる多数の電極間の連結線34とで構成され、神経細胞は上記微小電極32上で培養される。
【0030】
この際、上記培養基板31は、一つの基板として具現されることもでき、図2から図4に示されるような半球形の中央領域を有する二つの培養基板31−1、31−2を対向させて結合することで具現されることもできる。
【0031】
即ち、図5から図6に示される3次元神経回路網具現装置では、生命体の神経細胞網と類似するように培養基板31が3次元構造に具現されるが、図2から図4に示される3次元神経 回路網具現装置とは異なり、培養基板31の中央領域は球形に具現される。
【0032】
これにより、図5から図6に示される3次元神経回路網具現装置によると、図2から図4に示される3次元神経回路網具現装置に比べて、より広いサンプリング範囲及びより多い微小電極数の提供が可能となるため、より大きな並列演算処理能力を提供することができるようになる。
【0033】
上述した実施形態では、培養基板の中央領域が半球型又は球形に具現される場合に限定して説明したが、培養基板の構造は、神経細胞網の適用分野又は利用目的に応じて3次元構造を有する範囲内で多様な形態に変わることができることは勿論のことである。
【0034】
また、微小電極の分散配置方法も、神経細胞網の適用分野又は利用目的に応じて多様に変わることができる。例えば、微小電極は、培養基板21の中央領域の全体にわたって一定の配置分布を有するか又は領域別に相違する配置分布を有することができる。
【0035】
上述したように、発明の詳細な説明及び図面を介して本発明の多様な実施形態を開示した。なお、本明細書における用語は、単に本発明を説明するための目的として用いられたものであり、意味を限定するか又は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するために用いられたものではない。したがって、当技術分野における通常の知識を有する者であれば、これらから多様な変形及び均等な他の実施形態を想到し得るということを理解するであろう。また、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的事項によって決まるべきであろう。
【符号の説明】
【0036】
21、31 培養基板
22、32 微小電極
23、33 外部連結用電極
24、34 電極間の連結線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元構造を有する培養基板と、
前記培養基板上に配置されて神経細胞を3次元構造に培養させる多数の微小電極と、
を含む、3次元神経回路網具現装置。
【請求項2】
前記培養基板は、
中央領域が球形である、請求項1に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項3】
前記培養基板は、
球形の中央領域を有する一つの基板として具現される、請求項2に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項4】
前記培養基板は、
半球形の中央領域を有する二つの基板を対向させて結合することで具現される、請求項2に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項5】
前記多数の微小電極は、
前記培養基板の中央領域に分散配置される、請求項2に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項6】
前記多数の微小電極は、
前記培養基板の中央領域の全体にわたって一定の配置分布を有する、請求項5に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項7】
前記多数の微小電極は、
前記培養基板の中央領域の内で領域別に相違する配置分布を有する、請求項5に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項8】
2次元構造を有する前記培養基板の外郭領域に配置されて外部機器が連結される多数の外部連結用電極と、
前記多数の微小電極のそれぞれと前記多数の外部連結用電極のそれぞれとを連結させる多数の電極間の連結線と、
をさらに含む、請求項2に記載の3次元神経回路網具現装置。
【請求項9】
前記外部機器は、
前記外部連結用電極に接触し、当該外部連結用電極と前記電極間の連結線と前記微小電極とを介して前記神経細胞に電気的な刺激を与えたり前記神経細胞から発生する信号を感知したりする、請求項8に記載の3次元神経回路網具現装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−507815(P2012−507815A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535495(P2011−535495)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002531
【国際公開番号】WO2010/053238
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】