説明

3次元超音波診断装置及びボリュームデータ表示領域設定方法

【課題】ノイズ等の障害物が含まれないようなボリュームデータ表示領域を容易に決定することができる3次元超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波の3次元走査手段と、該3次元走査手段からの走査情報に基づいて2次元画像データを生成する2次元超音波画像生成手段及び3次元画像データを生成する3次元超音波画像生成手段と、2次元超音波画像及び3次元超音波画像を表示する画像表示手段と、該画像表示手段により表示された上記2次元画像上に関心領域を設定する関心領域設定手段と、該関心領域設定手段により設定された関心領域内の2次元超音波画像データの画素値から輝度勾配を求める輝度勾配算出手段と、該輝度勾配算出手段により算出された輝度勾配を基に観察対象物と観察対象物以外の境界点を決定する境界点決定手段と、該境界点決定手段により決定された境界点の位置を基に3次元超音波画像の表示範囲を決定する表示範囲決定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイムに3次元(3D)画像を表示する3次元超音波診断装置に係り、特に表示すべき3次元画像データの範囲を決定するために使用される3次元超音波診断装置に関する。また、本発明は、斯かる3次元超音波診断装置において実行されるボリュームデータ表示領域設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、超音波診断装置において、実時間3次元表示機能が実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。その3次元再構成のためのスタックデータ収集には、1次元アレイプローブによるものと、2次元アレイプローブによるものとに大別され、1次元アレイプローブによる走査方式には、フリーハンドスキャン方式とメカニカルスキャン方式とがある。
【0003】
フリーハンドスキャン方式では、煽り(揺動)走査、平行移動走査、或いは回転走査を手動により定速度で行なう方法と、磁気方式等の位置センサをプローブに装着し、任意方向に走査する手法がある。
【0004】
一方、メカニカルスキャン方式は、エンクロージャ内にプローブとプローブ駆動用モータを備え、体表プローブでは煽り(揺動)走査を、体腔内プローブでは回転走査を機械的に定速度で行なうものである。
【0005】
そして、2次元アレイプローブ方式は、2次元面上に配置された振動子を用いて3次元データを電子的に走査収集する。
【0006】
図12に、このような3次元的な走査により得られたスタックデータから再構成され3次元表示された対象領域の様子を、胎児の頭部を例に採って示す。ここで、1次元アレイプローブは、同図に示すZ方向に揺動走査され、CS101は断層像、CS102はCS101と直交する方向の断面を示している。図13(a)及び(b)は、それぞれ図12に示す断面CS101,CS102の様子を示すものである。
【0007】
実時間3次元表示において3次元画像を作成する場合、図13(a)に示すように、予め超音波画像上で撮像の目的部位周りに関心領域(ROI)を設定し、その中のみをボリュームデータとして表示する。これにより、ボリュ−ムデータ作成量を低減してリアルタイム性を向上させることができるとともに、目的部位の手前にある組織や超音波の多重反射によるノイズなどの障害物OB101を撮像範囲から除外することができる。このとき、図13(b)に示すように、各断層像上でROI101の大きさは同じであり、ボリュームデータの形状も自動的に決定される。
【特許文献1】特開平6−169921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、目的部位を撮像してボリュームデータを作成する際、目的部位の手前にある組織や超音波の多重反射によるノイズ等の障害物が目的部位を隠してしまい、観察の妨げとなる場合がある。
【0009】
このような場合、斯かる障害物を含まないようにROIを設定するのであるが、障害物の形状によっては、超音波画像上でのROI設定のみではそれらを完全に取り除くことができないときがある。
【0010】
例えば、図13(a)に示す断面CS101において、多重反射によるノイズ等の障害物が含まれないようにROI101を設定しても、図13(b)に示す断面CS102を見ると解るように、このROI101によって定まるボリュームデータ表示領域には障害物OB101が含まれており、胎児の顔を観察したいと思っても、この障害物OB101が観察の妨げとなる。
【0011】
画像1枚1枚に対してROIを手動で設定することは画像収集中には実際上不可能である。また、画像収集後に画像1枚1枚に対してROIを手動で設定することは可能であるが、一般的に画像枚数は多いため非常に面倒な作業となり、現実的な方法ではない。 本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、観察の妨げとなる組織や超音波の多重反射によるノイズ等の障害物が含まれないようなボリュームデータ表示領域を容易に決定することができる3次元超音波診断装置及びボリュームデータ表示領域設定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る3次元超音波診断装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、超音波の3次元的な走査を行なう3次元走査手段と、該3次元走査手段からの走査情報に基づいて2次元画像データを生成する2次元超音波画像生成手段と、上記3次元走査手段からの走査情報に基づいて3次元画像データを生成する3次元超音波画像生成手段と、上記2次元画像生成手段により生成された2次元超音波画像及び3次元超音波画像を表示する画像表示手段と、該画像表示手段により表示された上記2次元画像上に1つ以上の関心領域を設定する関心領域設定手段と、該関心領域設定手段により設定された関心領域内の2次元超音波画像データの画素値から輝度勾配を求める輝度勾配算出手段と、該輝度勾配算出手段により算出された輝度勾配を基に観察対象物と観察対象物以外の境界点を決定する境界点決定手段と、該境界点決定手段により決定された境界点の位置を基に3次元超音波画像の表示範囲を決定する表示範囲決定手段とを備えるものである。
【0013】
他方、上述した課題を解決するために、請求項2に係るボリュームデータ表示領域設定方法は、超音波の3次元的な走査を行なう3次元走査ステップと、該3次元走査ステップにより得られた走査情報に基づいて2次元画像データを生成する2次元超音波画像生成ステップと、上記3次元走査ステップにより得られた走査情報に基づいて3次元画像データを生成する3次元超音波画像生成ステップと、上記2次元画像生成ステップにおいて生成された2次元超音波画像及び3次元超音波画像を表示する画像表示ステップと、該画像表示ステップにおいて表示された上記2次元画像上に1つ以上の関心領域を設定する関心領域設定ステップと、該関心領域設定ステップにおいて設定された関心領域内の2次元超音波画像データの画素値から輝度勾配を求める輝度勾配算出ステップと、該輝度勾配算出ステップにおいて算出された輝度勾配を基に観察対象物と観察対象物以外の境界点を決定する境界点決定ステップと、該境界点決定ステップにより決定された境界点の位置を基に3次元超音波画像の表示範囲を決定する表示範囲決定ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る3次元超音波診断装置及びボリュームデータ表示領域設定方法によれば、観察の妨げとなる組織や超音波の多重反射によるノイズ等の障害物が含まれないようなボリュームデータ表示領域を容易に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る超音波診断装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の全体的な概要構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示す超音波診断装置1は、被検体に対して超音波の送受波を行なう超音波プローブ2と、所定の走査方向に対して超音波の送受波を行なうために超音波プローブ2に対して電気信号の送受信を行なう送受信部3と、所定の走査方向から得られた受信超音波信号に基づいて2次元超音波画像データを生成する画像データ生成部4と、画像データ生成部4において生成された超音波画像データを記憶する画像記憶部5とを備えている。
【0017】
そして、超音波診断装置1は、画像データ生成部4において生成された超音波画像データに対して種々の処理を行なう画像データ処理部8と、超音波画像データの収集条件や画像データ処理条件、更には種々のコマンド信号の入力などを行なう入力部6と、画像データを除く各種データを記憶するデータ記憶部7とを備えている。
【0018】
また、超音波診断装置1は、画像データ生成部において生成された超音波画像データから3次元データを再構成するボリューム投影部11と、これら2次元超音波画像データ及び3次元超音波画像を表示する画像表示部12とを備え、さらに、この表示部12にROIを描画するオーバーレイ描画部9と、描画されたROIを2次元画像上に重畳表示させる画像・オーバーレイ合成部10とを備える。
【0019】
超音波プローブ2は、図示は省略するが、超音波の送受波を行なう振動子と、振動子の機械的な走査を行なう走査機構であるモータと、振動子の現在位置すなわち超音波ビームの方向を検出する位置センサとを備える。この超音波プローブ2は、例えば生体の体表に当接して使用される3次元データ取り込み用の超音波プローブであり、機械走査に加えて電子走査も併用される。すなわち、振動子としてアレイ振動子が設けられ、このアレイ振動子が電子走査により所定方向に電子走査を行い、さらにこれと垂直な方向に機械走査を行なうことで、3次元空間内での超音波の送受波を可能にする。生体の体表に当接して使用される3次元データ取り込み用の超音波プローブの場合、機械走査として、煽り(揺動)走査が行われる。
【0020】
超音波プローブ2が備える位置センサからの位置情報は、超音波診断装置1本体の図示しない位置検出部に送出され、位置検出部は、超音波プローブ1の位置と傾きを検出してプローブ位置データを生成する。
【0021】
送受信部3は、超音波プローブ2から送信超音波を発生するための駆動信号を生成する送信部と、超音波プローブ2の圧電振動子から得られる複数チャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう受信部とを備え、一方、画像データ生成部4は、送受信部3から受信信号を受け取り、整相加算された受信信号に対して2次元超音波画像データを生成するための信号処理を行なう。また、画像データ記憶部5は、画像データ生成部4により生成収集された2次元超音波画像データを保存する。
【0022】
入力部6は、操作者が超音波診断装置1を操作するための様々な情報を入力するための手段であり、入力パネル上にキーボード、トラックボール、マウス等の入力デバイスと表示パネルを備え、患者情報、診断部位、画像データ収集モード、画像データ処理方法、画像データ表示方法、更には各種コマンド信号の入力が行なわれる。また、この入力部6を介して、ROIの位置の移動、大きさの変更等を行なうための情報が与えられる。
【0023】
データ記憶部7は、入力部6を介して入力された情報等画像データ以外の各種データを記憶する記憶手段であり、各種データには、少なくとも後述するROIの位置情報およびボリューム表示範囲情報が含まれる。
【0024】
次に、本実施形態の主要ユニットである画像データ処理部8の構成につき、図2に示すブロック図を用いて説明する。画像データ処理部8は、同図に示すように、輝度勾配算出部81と、境界点決定部82と、表示範囲決定部83とを備える。
【0025】
輝度勾配算出部81は、画像データ記憶部5から2次元超音波画像データを、そして、データ記憶部7からROIの位置情報をそれぞれ読み出し、2次元超音波画像上に設定されたROI内部の画素値から輝度勾配を求める。
【0026】
境界点決定部82は、輝度勾配算出部81により求められた輝度勾配値から観察対象物と観察対象物以外の境界点を決定し、表示範囲決定部83は、さらに境界点決定部82により決定された境界点の位置を基に3次元超音波画像の表示範囲を決定する。境界点決定部82及び表示範囲決定部83により得られたデータは、逐次データ記憶部7に送出され、データ記憶部7において保存される。
【0027】
オーバーレイ描画部9は、入力部6を介して入力されたROIの位置情報に基づいてROIを描画する。オーバーレイ描画部9により描画されたROIは、画像・オーバーレイ合成部10により、2次元超音波画像上に重畳される。
【0028】
ボリューム投影部11は、画像データ記憶部5から受け取った複数の2次元超音波画像データ、及びデータ記憶部7から受け取ったボリューム表示範囲情報から、ボリューム表示範囲内にある2次元超音波画像データの3次元画像データを再構成する。
【0029】
画像表示部12は、CRT又はLCDを備え、2次元超音波画像、ROIが重ねられた2次元超音波画像を表示するとともに、ボリューム投影部11により再構成された3次元画像データを2次元スクリーン上に投影表示する。
【0030】
また、超音波診断装置1は、図示しないシステム制御部を備え、システム制御部は、CPUと記憶回路を有し、超音波診断装置1の上記各ユニットの制御やシステム全体を統括的に制御する。
【0031】
なお、本実施形態における入力部6及びデータ記憶部7は、本発明に係る領域設定手段を構成し、本実施形態におけるオーバーレイ描画部9、画像・オーバーレイ合成部10、ボリューム投影部11、及び画像表示部12は、本発明に係る画像表示手段を構成する。
【0032】
本実施の形態に係る超音波診断装置1は上記のように構成されており、以下その処理手順について、被検体として胎児Eの頭部を含む部位を例に採って説明する。なお、各部の制御およびデータの流れは全てシステム制御部の指示に基づくものであり、逐一その旨を記載することは省略する。図3は、境界点探索用ROIの設定手順を示すフローチャートである。
【0033】
超音波プローブ2内の振動子は、モータにより駆動されて揺動運動(煽り走査)を行いながら、超音波を被検体に対して送受信する。そして、超音波プローブ2により受信された超音波データは、送受信部3を経由して画像データ生成部4に送られ、画像データ生成部4において2次元超音波画像が生成され(ステップS1)、その画像データは直ちに画像データ記憶部5に記憶される。
【0034】
2次元超音波画像は更に画像データ記憶部5から画像・オーバーレイ合成部10を経由して画像表示部12に送られ、2次元超音波画像が表示される(ステップS2)。この時点では未だROIは合成されていない。
【0035】
次に、図4に示すように、3次元最大表示範囲Mが画像に重ねて表示される(ステップS3)。3次元最大表示範囲Mとは、操作者が3次元画像として表示させたい部分を2次元画像P上で指定するためのROIである。3次元最大表示範囲Mは矩形であり、その位置情報はデータ記憶部7に記憶される。その位置情報がデータ記憶部7から読み出されるとオーバーレイ描画部9により描画され、描画された画像データが画像・オーバーレイ合成部10に送られて2次元超音波画像Pに重ねられ、画像表示部12において両者は重畳表示される。3次元最大表示範囲Mは、トラックボールを動かす等により、表示部12の画面上を上下左右に移動させることができる。3次元最大表示範囲Mをはじめとする全てのROIは、このようにして2次元超音波画像P上に重畳表示される。
【0036】
続いて、3次元最大表示範囲Mの内部に、境界点探索用ROISが2次元超音波画像Pに重畳表示される(ステップS4)。境界点探索用ROISは左右に5ピクセル、上下に10乃至20ピクセル程度の小さな矩形であり、その位置情報はデータ記憶部7に記憶される。トラックボールを動かす等により、境界点探索用ROISを3次元最大表示範囲Mの内部で上下左右に移動させることができる。境界点探索用ROISの設定に際し、操作者は、胎児Eの頭部のほぼ中央が撮像されているときに超音波プローブ2の振動子の揺動を止める。そして、画面を見ながら、境界点探索用ROISが胎児E部分と背景である羊水A部分の境界を含む位置に設定されるように境界点探索用ROISを移動させる。境界点探索用ROISが所望の位置に配置されると、操作者は、マウスをクリックする等により、境界点探索用ROISの設定完了を指示する。
【0037】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、ボリューム表示範囲の設定手順について説明する。撮像された2次元超音波画像Pは、画像データ記憶部5から読み出され、画像データ処理部8内の輝度勾配算出部81に送られる(ステップS11)。同時に、境界点探索用ROISの位置情報がデータ記憶部7から読み出され、輝度勾配算出部81に送られる。
【0038】
輝度勾配算出部81では、境界点探索用ROIS内部の画素値から、輝度勾配(画素値の勾配)を計算する(ステップS12)。この算出方法を以下に説明する。境界点探索用ROISは、図6(a)に示すように、縦Mピクセル、横Nピクセルのサイズを有し、各ピクセルは、Pjkの画素値を持っている。
【0039】
まず、図6(b)に示すように、この境界点探索用ROISの横方向に画素値の平均A算出する(A=(Pj1+Pj2+……+PjN)/N ここに、j=1,2,……,N)。そして、この平均Aから、図6(c)に示すように、縦方向に画素値の勾配Gを算出する(G=(Aj−1−Aj+1)/2 ここに、j=2,3,……,M−1)。こうして求められた勾配Gが輝度勾配データとなる。
【0040】
こうして算出された輝度勾配データは境界点決定部82に送られ、ここで、図7に示すように、輝度勾配の最大値を与える縦方向の位置が求められる。この位置を境界点の位置Tとする(ステップS13)。2次元超音波画像では胎児E部分は羊水A部分に比べて輝度(画素値)が大きいので、輝度勾配が最大、すなわち輝度の変化が最大の位置を胎児Eの頭部と羊水A部分の境界点の位置Tとして求めることができる。
【0041】
このようにして求められた境界点の位置Tは、データ記憶部7に記憶されるとともに、表示範囲決定部83に送られる。表示範囲決定部83では、図7に示すように、3次元最大表示範囲M内において、求めた境界点の位置Tから予め定めた画素数分だけ上の位置より下側の範囲を、この画像のボリューム表示範囲Vとし、その位置情報をデータ記憶部に記憶する(ステップS14)。境界点の位置Tより上にボリューム表示範囲Vを設定するのは、被検体の一部が3次元画像から欠落することを予防するための安全策である。
【0042】
最初に撮像された画像の次に撮像された画像に対しては、図8に示すように、求めた境界点の位置Tが境界点探索用ROISの中心となるように境界点探索用ROIが自動的に設定される(ステップS15)。このとき境界点探索用ROISの左右方向の位置は変化させない。そして、画像データ記憶部5から2次元超音波画像データを読み出し(ステップS16)、上記と同様の方法で、輝度勾配算出部81において輝度勾配データを求め(ステップS17)、境界点決定部82において境界点の位置Tを求め(ステップS19)、表示範囲決定部83でその画像のボリューム表示範囲Vを決定する(ステップS20)。この動作を繰り返して次々と撮像される画像に対してボリューム表示範囲Vを決定する(ステップS21:Yes)。
【0043】
撮像される2次元超音波画像Pが胎児E頭部の側面(耳のある方)に至ると、その後は頭部が撮像されなくなる。そのような状態になったときにはもはや境界点の位置を求める必要はない。その状態では、輝度勾配がほとんどない状態となるので、輝度勾配の最大値が予め定められた値よりも小さくなったら(ステップS18:No)、境界点の位置を求めるのはやめ、ボリューム表示範囲はなしとし、境界点探索用ROISの位置も変更させない。そして、振動子の揺動が反対方向となり同じ位置の画像の撮像が行われたときに、境界点探索用ROISを同じ位置に設定して、境界点の位置の決定を再開する。
【0044】
このようにして次々と撮像される2次元超音波画像の1枚1枚についてボリューム表示範囲Vを決定することができる。そして、1個のボリュームを構成する2次元超音波画像P(片道の揺動範囲に対応)についてボリューム表示範囲Vが決定できたら、それらの2次元超音波画像Pを画像データ記憶部5から、また対応するボリューム表示範囲Vの位置情報をデータ記憶部7から読み出し、ボリューム投影部11に送信して投影を行なわせ、3次元画像を画像表示部12に表示させる。なお、画面は左右に2分割し、撮像している2次元画像と3次元画像を並べて表示することが望ましい。
【0045】
このようにボリューム表示範囲Vを設定することにより、図9に示すように、3次元最大表示範囲等従来のROI設定では回避することができなかった障害物OBも含まないようにすることができる。また、画像中のボリュームデータとする領域を限定するので、扱うデータ量を減少させることができ、これにより、フレームレートを増加、又は画質を向上させることも可能となる。
【0046】
上述した実施形態では、境界点探索用ROISを1個だけ設定したが、境界点探索用ROISを2個以上設定するようにしてもよい。例えば、境界点探索用ROISを2個設定した場合は、図10に示すように、求めた2個の境界点S1,S2の外側はそれぞれの境界点の同じレベルに線分を設定し、2個の境界点の間については2個の境界点を結ぶ線分を設定して、それらの線分の予め定めた画素数分だけ上側にボリューム表示範囲Vの示す線分を設定すればよい。これにより、ボリューム表示範囲Vはさらに限定され、障害物の回避もより確実になる。
【0047】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0048】
例えば、本実施形態においては、超音波プローブとしてメカニカルスキャン方式のものを例に採って説明したが、超音波プローブはメカニカルスキャン方式のものに限られず、フリーハンドスキャン方式のものであってもよく、或いは2次元アレイプローブを採用してもよい。
【0049】
特に2次元アレイプローブを採用した場合は、図11に示すように、X軸方向及びZ軸方向のそれぞれに複数の境界点探索用ROISを設定することも可能であり、これによれば、境界点探索用ROISを面的に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を示す概略ブロック図。
【図2】本実施形態に係る画像データ処理部の構成を示す概略ブロック図。
【図3】境界点探索用ROIの設定手順を示すフローチャート。
【図4】3次元最大表示範囲及び境界点探索用ROIを示す図。
【図5】ボリューム表示範囲の設定手順を示すフローチャート。
【図6】境界点探索用ROIの内部の輝度勾配の算出方法を説明する図。
【図7】最初に設定された境界点の位置とボリューム表示範囲との関係を示す説明図。
【図8】2番目以降の境界点の位置設定を示す説明図。
【図9】ボリューム表示範囲と障害物との位置関係を説明する図。
【図10】境界点探索用ROIが2個の場合における境界点の位置とボリューム表示範囲との関係を示す説明図。
【図11】多数の境界点探索用ROIを面的に配置した例を示す図。
【図12】従来のボリュームデータ表示例。
【図13】(a)は、図12における断面CS101を示す図、(b)は同CS102を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1 3次元超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部
4 2次元画像生成部
5 画像記憶部
6 入力部
7 データ記憶部
8 画像データ処理部
81 輝度勾配算出部
82 境界点決定部
83 表示範囲決定部
9 オーバーレイ描画部
10 画像・オーバーレイ合成部
11 ボリューム投影部
12 画像表示部
A 羊水
E 被検体
M 3次元最大表示範囲
OB 障害物
P 2次元画像
S 境界点探索用ROI
T 境界点の位置
V ボリューム表示範囲の最高位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の3次元的な走査を行なう3次元走査手段と、
該3次元走査手段からの走査情報に基づいて2次元画像データを生成する2次元超音波画像生成手段と、
上記3次元走査手段からの走査情報に基づいて3次元画像データを生成する3次元超音波画像生成手段と、
上記2次元画像生成手段により生成された2次元超音波画像及び3次元超音波画像を表示する画像表示手段と、
該画像表示手段により表示された上記2次元画像上に1つ以上の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
該関心領域設定手段により設定された関心領域内の2次元超音波画像データの画素値から輝度勾配を求める輝度勾配算出手段と、
該輝度勾配算出手段により算出された輝度勾配を基に観察対象物と観察対象物以外の境界点を決定する境界点決定手段と、
該境界点決定手段により決定された境界点の位置を基に3次元超音波画像の表示範囲を決定する表示範囲決定手段と、
を備えることを特徴とする3次元超音波画像診断装置。
【請求項2】
超音波の3次元的な走査を行なう3次元走査ステップと、
該3次元走査ステップにより得られた走査情報に基づいて2次元画像データを生成する2次元超音波画像生成ステップと、
上記3次元走査ステップにより得られた走査情報に基づいて3次元画像データを生成する3次元超音波画像生成ステップと、
上記2次元画像生成ステップにおいて生成された2次元超音波画像及び3次元超音波画像を表示する画像表示ステップと、
該画像表示ステップにおいて表示された上記2次元画像上に1つ以上の関心領域を設定する関心領域設定ステップと、
該関心領域設定ステップにおいて設定された関心領域内の2次元超音波画像データの画素値から輝度勾配を求める輝度勾配算出ステップと、
該輝度勾配算出ステップにおいて算出された輝度勾配を基に観察対象物と観察対象物以外の境界点を決定する境界点決定ステップと、
該境界点決定ステップにより決定された境界点の位置を基に3次元超音波画像の表示範囲を決定する表示範囲決定ステップと、
を備えることを特徴とするボリュームデータ表示領域設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−288471(P2006−288471A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109843(P2005−109843)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】