説明

3波長光合波器

【課題】小型であり、かつ3本のシングルモード光ファイバへ入射される波長の異なる光、特に赤色、緑色、青色の光を、透過率をある一定基準以上で合波する3波長光合波器を提供する。
【解決手段】3波長光合波器100は、入出射ポートを有する3本のシングルモード光ファイバ1,2,3を、ファイバ軸方向に直交する断面方向から見てこの順に互いに並行に配列して融着延伸し、シングルモード光ファイバ1およびシングルモード光ファイバ2が有するパラメータの一つである2次モードカットオフ波長C1と、シングルモード光ファイバ3が有するパラメータの一つである2次モードカットオフ波長C2と、シングルモード光ファイバ3から入射される光の波長λ3と、の関係がC1<C2<λ3となるシングルモード光ファイバ1,2,3を有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3本のシングルモード伝送する導光体へ入射された3波長の光を1本のシングルモード伝送する導光体に合波する3波長光合波器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導光体である3本の光ファイバを同一平面上に配して融着延伸することにより、入射された光を分岐、分波、合波する光分岐器、光分波器、光合波器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、伝播定数のほぼ等しい2本の光ファイバと、ダミー用の1本の光ファイバと、を並べて融着延伸した光ファイバカプラが開示されている。これにより、広帯域な波長特性を持つ等分岐された光ファイバカプラが実現されている。また、特許文献2には、規格化周波数とファイバ径の一方または両方が異なる光ファイバを含む3本の光ファイバを並べて融着延伸した光ファイバカプラが開示されている。これにより、入力側の一つのポートに1.3μmと1.55μmの二つの光信号を入射させたとき、出力側で1.3μmと1.55μmの光信号が分波され、さらに1.3μmの光信号が等分岐された光ファイバカプラが実現されている。
【0004】
また、特許文献3には、コア径が他の光ファイバよりも大きい光ファイバを含む3本の光ファイバを並べて、融着延伸した光ファイバ型光合波器が開示されている。これにより、同一波長の光信号を低損失で合波する光ファイバ型光合波器が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−313038号公報
【特許文献2】特開平8−220370号公報
【特許文献3】特開平6−214136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような光ファイバカプラは、光通信などに用いられるものであり、伝送する光信号の波長帯域も1μm以上である。そのため、例えば、映像ディスプレイなどで使用される赤色、緑色、青色などの可視光を合波する目的には適していない。
【0007】
また、映像ディスプレイなどのデバイスに用いる場合、光ファイバカプラに入射される3色の光が、ある一定基準以上の透過率で合波される必要がある。この点、特許文献1に開示されている光ファイバカプラは、出射される光信号の広帯域化を図っており、特許文献2に開示されている光ファイバカプラは、入射した2波長の光信号の分波および等分岐を図っており、特許文献3に開示されている光ファイバ型光合波器は、同一波長の光信号を入射することによって合波される光信号の低損失化を図っている。そのため、波長の異なる3色の光を、ある一定基準以上の透過率で合波する目的には適していない。
【0008】
さらに、波長の異なる3色の光を、ある一定基準以上の透過率で合波する手段として、光ファイバ型光合波器を直列に2個繋げた多段型光ファイバ型光合波器や、光信号を空間結合させるための部品を組み立てたバルク型の光合波器が知られている。しかしながら、多段型光ファイバ型光合波器は、2個の光ファイバ型光合波器のファイバを接続したのち、ファイバの取り回しを行いパッケージに収納する必要があるため、サイズが大きくなってしまい、これを用いるデバイス自体も大きくせざるをえなくなってしまう。また、バルク型の光合波器は、構成部品同士の光軸合わせを精密にする必要があり、振動などがあった場合に光軸がずれてしまうなど、信頼性に乏しくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、小型であり、かつ3本の導光体へ入射される波長の異なる光、特に赤色、緑色、青色の光を、透過率をある一定基準以上で合波する3波長光合波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シングルモード伝送する第一の導光体と、シングルモード伝送する第二の導光体と、シングルモード伝送する第三の導光体と、からなる3本の導光体を、ファイバ軸方向に直交する断面方向から見てこの順に互いに並行に配列した光合波器であって、前記第一の導光体と前記第三の導光体は、お互い接触することなく、夫々前記第二の導光体のみと接触して配列されており、3本の前記導光体のうち、前記第一の導光体と前記第二の導光体は、互いに等しいパラメータを有し、前記第三の導光体は、他の2本の前記導光体とは異なるパラメータを有しており、夫々の3本の前記導光体から入射される光の波長の関係をλ1<λ2<λ3としたとき、前記第一の導光体には前記λ1の波長を有する光が入射され、前記第二の導光体には前記λ2の波長を有する光が入射され、前記第三の導光体には前記λ3の波長を有する光が入射され、前記λ1、λ2、λ3の波長を有する光の合波光が、前記第一の導光体から出射されることを特徴とする3波長光合波器である。
【0011】
上記の構成によれば、入射された3波長の光を、ある一定基準以上の透過率で合波することができる。さらに、3本の導光体が一体の構成であるため、小型である。
【0012】
また、本発明における3波長光合波器は、前記第一の導光体、前記第二の導光体、および前記第三の導光体を、この順に同一平面上に互いに並行に配列していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、第一の導光体、第二の導光体、第三の導光体の順に、同一平面上に互いに並行に配列されているため、パッケージし易く、安定した品質を実現できる。
【0014】
また、本発明における3波長光合波器は、前記第一の導光体、前記第二の導光体、および前記第三の導光体が、シングルモード光ファイバであり、前記3本の導光体を一括で融着延伸していてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、第一の導光体、第二の導光体、第三の導光体が、シングルモード光ファイバであり、3本の導光体が一括で融着延伸されているため、容易に、かつ品質が安定した光結合部を作製できる。
【0016】
また、本発明における3波長光合波器は、前記パラメータの一つが2次モードカットオフ波長であり、前記第一のシングルモード光ファイバおよび前記第二のシングルモード光ファイバの2次モードカットオフ波長C1と、前記第三のシングルモード光ファイバの2次モードカットオフ波長C2と、前記第三のシングルモード光ファイバから入射される光の波長λ3と、の関係が、C1<C2<λ3となっていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、より好適に、入射された3波長の光を、ある一定基準以上の透過率で合波することができる。
【0018】
また、本発明における前記第二の導光体と、前記第三の導光体と、が有する前記出射ポートが、無反射処理されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、実質不要な導光体を整理することができ、3入力1出力の3波長光合波器とすることができる。
【0020】
また、本発明における前記λ1の波長を有する光が青色、前記λ2の波長を有する光が緑色、前記λ3の波長を有する光が赤色、の可視光であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、青色、緑色、赤色の3色の可視光の3波長合波が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明における3波長光合波器によれば、結果的に、入射された3波長の光を、ある一定基準以上の透過率で合波することができる。また、3本の導光体が一体の構成であるため、小型である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る3波長光合波器を示す図である。
【図2】図1の3波長光合波器における光結合部の断面図である。
【図3】3波長光合波器を構成するシングルモード光ファイバの配列例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る3波長光合波器を構成するシングルモード光ファイバの特性表を示す図である。
【図5】3波長光合波器を構成するシングルモード光ファイバに赤色の光を入射したときの巻き径対曲げ損失のグラフを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る3波長光合波器の製造における融着延伸工程を示す図である。
【図7】比較例1,2および実施例における3波長光合波器の構成表を示す図である。
【図8】比較例1における3波長光合波器から出射される光の波長対透過率のグラフを示す図である。
【図9】比較例2における3波長光合波器から出射される光の波長対透過率のグラフを示す図である。
【図10】実施例における3波長光合波器から出射される光の波長対透過率のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(3波長光合波器の構成)
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る3波長光合波器100を示す図である。図1に示すように、本実施形態の3波長光合波器100は、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3を備えている。
【0026】
3本のシングルモード光ファイバ1,2,3は、互いに並行に配列されており、光結合部6において3本のシングルモード光ファイバ1,2,3が一括で融着延伸されている。尚、シングルモード光ファイバ1,2,3は、光結合部6においてファイバ軸方向に直交する断面方向から見て互いに並行に配列されていればよい。即ち、シングルモード光ファイバ1,2,3は、光結合部6において、同一平面上に配列された状態にされていてもよいし、螺旋状にねじれた形状の同一曲面上に配列されていてもよい。さらに、シングルモード光ファイバ1とシングルモード光ファイバ3は、お互い接触することなく、夫々がシングルモード光ファイバ2のみと接触して配列されている。
【0027】
また、シングルモード光ファイバ1,2,3は、光が入出射されるポートを有している。例えば、シングルモード光ファイバ1は、光が入射される入射ポート1−1と、光が出射される出射ポート1−2と、を有している。同様に、シングルモード光ファイバ2は、入射ポート2−1および出射ポート2−2を、シングルモード光ファイバ3は、入射ポート3−1および出射ポート3−2を、有している。なお、出射ポート2−2および出射ポート3−2は、終端部10により、無反射処理が施されている。
【0028】
シングルモード光ファイバ1,2,3の夫々の入射ポート1−1,2−1,3−1からは、異なる波長の光が入射される。具体的には、図1中の下側に位置するシングルモード光ファイバ3の入射ポート3−1からは赤色の光が入射される。図1中の中央に位置するシングルモード光ファイバ2の入射ポート2−1からは緑色の光が入射される。また、図1中の上側に位置するシングルモード光ファイバ1の入射ポート1−1からは青色の光が入射される。そして、入射された3色の可視光は、光結合部6において合波され、出射ポート1−2から合波光が出射される。なお、出射ポート2−2,3−2は、終端部10により無反射処理が施されていることにより、入射ポートへの光信号の反射を防止している。
【0029】
ここで、本実施形態の場合、赤色の光とは、波長が600nm〜700nmの範囲となる光である。また、緑色の光とは、波長が490nm〜600nmの範囲となる光である。さらに、青色の光とは、波長が400nm〜500nmの範囲となる光である。なお、例えば、緑色の光と青色の光の波長帯域が重なっているなど、上記の波長帯域の値は、目的などによって見解が異なるが、本実施形態においては、上記の波長帯域を用いる。
【0030】
次に、図2は、図1に示す3波長光合波器100の光結合部6に係る線A−A´に沿う断面図である。図2に示すように、3波長光合波器100を構成するシングルモード光ファイバ1,2,3は、コア9と、コア9の周囲に形成されたクラッド12と、からなる。
【0031】
ここで、図3は、3波長光合波器100におけるシングルモード光ファイバ1,2,3の配列例を示した図である。図3(a),(b)に示すように、シングルモード光ファイバ1とシングルモード光ファイバ3は、お互い接触することなく、夫々がシングルモード光ファイバ2のみと接触して配列されていればよい。一方、図3(c)に示すように、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3は、俵積みのように、夫々が他の2本のシングルモード光ファイバの両方に接触するような配列はしない。
(シングルモード光ファイバの特性)
【0032】
上記のような構成を有するシングルモード光ファイバ1,2,3は、図4の表に示すような特性を有している。ここで、本実施形態の場合、シングルモード光ファイバ1,2は、互いに等しいパラメータを有しており、シングルモード光ファイバ3は、他の2本とは異なるパラメータを有している。なお、パラメータとは、シングルモード光ファイバ1,2,3のパラメータのことであり、具体的には、クラッド径、コアの屈折率、クラッドの屈折率、コアとクラッドとの比屈折率、開口数(NA)、2次モードカットオフ波長、などである。
【0033】
つまり、本実施形態の場合、シングルモード光ファイバ1,2には、同じパラメータを有するシングルモード光ファイバが用いられ、シングルモード光ファイバ3には、それとは異なるシングルモード光ファイバが用いられている。具体的には、シングルモード光ファイバ1,2には、図4におけるシングルモード光ファイバAが用いられ、シングルモード光ファイバ3には、図4におけるシングルモード光ファイバBが用いられている。
【0034】
図4に示すように、シングルモード光ファイバAおよびシングルモード光ファイバBにおいて大きく異なる特性は、波長に関する特性である。具体的には、シングルモード光ファイバAは動作波長が445〜600nm、2次モードカットオフ波長が430±15nmである。一方、シングルモード光ファイバBは動作波長が600〜770nm、2次モードカットオフ波長が570±30nmとなり、シングルモード光ファイバAに比べて波長帯が高波長側にある。
【0035】
また、上記のような特性を有するシングルモード光ファイバAおよびシングルモード光ファイバBは、曲げ損失についても特性が異なる。図5は、3波長光合波器100を構成するシングルモード光ファイバAおよびシングルモード光ファイバBに656nmの赤色の光を入射したときの巻き径対曲げ損失のグラフを示す図である。
【0036】
図5に示すように、シングルモード光ファイバAおよびシングルモード光ファイバBに656nmの赤色の光を入射して、巻き径を変化させていくと、シングルモード光ファイバAにおいては、20mm径で約1dBほどの曲げ損失が発生し、12mm径で9dBの曲げ損失が発生する。一方、シングルモード光ファイバBにおいては、12mm径でも曲げ損失が発生することがない。従って、光合波器において、赤色の光を入射するシングルモード光ファイバにシングルモード光ファイバBを用いた方が、取り回しを小さくできるため、より省スペースでシングルモード光ファイバの収納が可能となる。
(3波長光合波器の製造)
【0037】
次に、3波長光合波器100の光結合部6を形成する際に用いた融着延伸方法について、図6を参照しながら説明する。まず、光結合用部位を有する3本のシングルモード光ファイバ1,2,3を用意する。次に、光結合部6を形成する箇所のみ、クラッド12を被膜していた保護材を除去する。そして、互いに並行に配列し、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3における夫々の光結合用部位を当接する。この状態で、発熱部20によって加熱して溶融させながら後述する方法で延伸することにより、図1の3波長光合波器100の光結合部6が形成される。
【0038】
次に、延伸の方法を説明する。3本のシングルモード光ファイバ1,2,3を上記のように当接させる。そして、シングルモード光ファイバ3の入射ポート3−1から赤色の光を入射し、シングルモード光ファイバ1の出射ポート1−2から出射される光の出射パワーをモニタしながら、延伸する。そして、出射ポート1−2から出射される光の出射パワーが所望の値となった所で、延伸を停止することにより、3波長光合波器100の光結合部6を得ることができる。
【0039】
ここで、融着延伸する際のスピードは275μm/秒で、延伸時間は約85秒である。即ち、光結合部6の延伸長は、約23.375mmとなる。なお、入射ポート1−1,2−1,3−1から入射される可視光の波長、延伸を停止する時の出射パワーの値は、目的とする透過率とそのときの波長によって、適宜設定することができる。
【0040】
なお、上記の融着延伸方法は、赤色の光をシングルモード光ファイバ3に入射した場合を説明した。これは、3色の可視光の中では、赤色の光の波長が一番長く、結合曲線が急勾配となるためである。従って、赤色の光の出射パワーが所望の値になるところで延伸を停止した方が、光学的にはばらつきが小さい3波長光合波器100の光結合部6を形成することができる。なお、融着延伸においては、赤色の光に限らず、緑色や青色の光を入射して、モニタしてもよい。
(比較例1,2と実施例)
【0041】
次に、3波長光合波器100の比較例1,2および実施例を用いて、夫々の特性を比較する。
【0042】
図7は、比較例1,2および実施例における3波長光合波器の構成表を示す図である。図7に示すように、比較例1は、3波長光合波器100を構成する3本のシングルモード光ファイバ1,2,3について全て同じパラメータの光ファイバを用いている。具体的には、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3には、図4に示したシングルモード光ファイバAが用いられている。また、比較例1における3波長光合波器100については、シングルモード光ファイバ1に青色の光が入射され、シングルモード光ファイバ2に緑色の光が入射され、シングルモード光ファイバ3に赤色の光が入射される。
【0043】
比較例2は、3波長光合波器100を構成する3本のシングルモード光ファイバ1,2,3について一部パラメータの異なる光ファイバを用いている。具体的には、比較例2のシングルモード光ファイバ1,3には、図4に示したシングルモード光ファイバAが用いられ、シングルモード光ファイバ2には、図4に示したシングルモード光ファイバBが用いられている。
【0044】
また、比較例2における3波長光合波器100については、比較例1および実施例における3波長光合波器100に入射される光とは一部異なる。即ち、シングルモード光ファイバ1には青色の光が入射され、シングルモード光ファイバ2には赤色の光が入射され、シングルモード光ファイバ3には緑色の光が入射される。
【0045】
実施例は、シングルモード光ファイバ1,2について図4に示したシングルモード光ファイバAを使用し、シングルモード光ファイバ3について図4に示したシングルモード光ファイバBを使用している。また、実施例における3波長光合波器100については、シングルモード光ファイバ1に青色の光が入射され、シングルモード光ファイバ2に緑色の光が入射され、シングルモード光ファイバ3に赤色の光が入射される。
【0046】
ここで、夫々の3波長光合波器100に入射される青色の光の波長は446nmとし、これをλ1と定義する。緑色の光の波長は532nmとし、これをλ2と定義する。赤色の光の波長帯域は635nmとし、これをλ3と定義する。また、シングルモード光ファイバAの2次モードカットオフ波長は、434nmとし、これをC1と定義する。さらに、シングルモード光ファイバBの2次モードカットオフ波長は、574nmとし、これをC2と定義する。
【0047】
この場合、実施例における3波長光合波器100は、互いに等しいパラメータを有するシングルモード光ファイバ1,2と、他の2本とは異なるパラメータを有するシングルモード光ファイバ3と、を有しており、夫々の3本のシングルモード光ファイバ1,2,3から入射される光(青色、緑色、赤色の光)の波長の関係をλ1<λ2<λ3としたとき、シングルモード光ファイバ1にはλ1の波長を有する青色の光が入射され、シングルモード光ファイバ2にはλ2の波長を有する緑色の光が入射され、シングルモード光ファイバ3にはλ3の波長を有する赤色の光が入射され、λ1、λ2、λ3の波長を有する光の合波光が、シングルモード光ファイバ1から出射されるようになっている。
【0048】
また、実施例における3波長光合波器100は、シングルモード光ファイバ1およびシングルモード光ファイバ2の2次モードカットオフ波長C1と、シングルモード光ファイバ3の2次モードカットオフ波長C2と、シングルモード光ファイバ3から入射される赤色の光の波長λ3と、の関係が、C1<C2<λ3となっている。
【0049】
一方、比較例1における3波長光合波器100は、夫々のシングルモード光ファイバ1,2,3に入射された光の波長と、2次モードカットオフ波長と、の関係が、C1<λ1,λ2,λ3となる。つまり、比較例1では、全てのシングルモード光ファイバ1,2,3の2次モードカットオフ波長が、夫々に入射された光の波長帯域λ1,λ2,λ3よりも小さい値となっている。
【0050】
また、比較例2における3波長光合波器100は、実施例と同様に、互いに等しいパラメータを有するシングルモード光ファイバ1,3と、他の2本とは異なるパラメータを有するシングルモード光ファイバ2と、を有しているが、シングルモード光ファイバ2およびシングルモード光ファイバ3に入射される光が、実施例とは反対になっている。
【0051】
このような関係にある比較例1,2および実施例の3波長光合波器100について、入射ポート1−1,2−1,3−1の夫々に入射される可視光において、出射ポート1−2から出射される光の波長に対する透過率をグラフ化したものを図8〜図10に示す。
【0052】
なお、図8〜図10に示す波長対透過率のグラフを作成する際は、レーザー光源を用いて波長の異なる光を3波長光合波器100に入射し、光パワーメータを用いて出射された光の透過率の測定を6ポイント行った。
【0053】
図8は、比較例1における波長対透過率のグラフである。図8に示すように、入射ポート1−1に青色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、青色の波長である446nmにおいて、出射ピーク値が80%近く得ることができる。また、入射ポート3−1に赤色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、赤色の波長である635nmにおいて、出射ピーク値が100%得ることができる。しかしながら、入射ポート2−1に緑色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、緑色の波長である532nmにおいて、出射ピーク値が40%ほどしか得ることが出来ず、目標とする基準の透過率60%を大きく下回っている。
【0054】
また、図9は、比較例2における波長対透過率のグラフである。図9に示すように、入射ポート1−1に青色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、青色の波長である446nmにおいて、出射ピーク値が100%近く得ることができる。しかしながら、入射ポート2−1に赤色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、赤色の波長である635nmにおいて、出射ピーク値が10%ほどしか得ることができない。さらに、入射ポート3−1に緑色の光のみを入射した場合も、出射ポート1−2に出射される光は、緑色のポイント波長である532nmにおいて、出射ピーク値が10%ほどしか得ることが出来ず、目標とする基準の透過率60%を大きく下回っている。
【0055】
一方、図10は、実施例における波長対透過率のグラフである。図10に示すように、入射ポート1−1に青色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、青色の波長である446nmにおいて、出射ピーク値を70%得ることができる。また、入射ポート3−1に赤色の光のみを入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、赤色の波長である635nmにおいて、出射ピーク値を80%以上得ることができる。さらに、入射ポート2−1に緑色の光のみ入射した場合、出射ポート1−2に出射される光は、緑色の波長である532nmにおいて、出射ピーク値を目標とする基準の透過率60%以上を得ることができる。
【0056】
以上の結果から、比較例1のように、3波長光合波器100を構成するシングルモード光ファイバ1,2,3に全て同じパラメータを有するシングルモード光ファイバAを用いた場合、緑色の光の透過率が目標とする基準の60%を大きく下回ってしまう。
【0057】
また、比較例2のように、シングルモード光ファイバ1に青色の光を入射し、シングルモード光ファイバ2に赤色の光を入射し、シングルモード光ファイバ3に緑色の光を入射した場合、緑色の光と赤色の光の透過率が、著しく悪化してしまう。
【0058】
一方、実施例のように、シングルモード光ファイバ1,2に同じパラメータを有するシングルモード光ファイバAを用い、シングルモード光ファイバ3に他の2本とは異なるパラメータを有するシングルモード光ファイバBを用い、さらに、シングルモード光ファイバ1に青色の光を入射し、シングルモード光ファイバ2に緑色の光を入射し、シングルモード光ファイバ3に赤色の光を入射した場合、結果的に、入射された3波長の光を、目標とする基準(60%)以上の透過率で合波することができる。
【0059】
このように、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3へ入射される波長の異なる光、特に赤色、緑色、青色の光を、透過率を一定基準(60%)以上で合波するためには、上述した実施例のようなシングルモード光ファイバ1,2,3の構成、および配列が必要となる。
(本実施形態の概要)
【0060】
以上のように、本発明の一実施形態に係る3波長光合波器100は、シングルモード伝送するシングルモード光ファイバ1と、シングルモード光ファイバ2と、シングルモード光ファイバ3と、からなる3本のシングルモード光ファイバを、ファイバ軸方向に直交する断面方向から見てこの順に互いに並行に配列した光合波器であって、シングルモード光ファイバ1とシングルモード光ファイバ3は、お互い接触することなく、夫々シングルモード光ファイバ2のみと接触して配列されており、3本のシングルモード光ファイバのうち、シングルモード光ファイバ1とシングルモード光ファイバ2は、互いに等しいパラメータを有し、シングルモード光ファイバ3は、他の2本のシングルモード光ファイバ1,2とは異なるパラメータを有しており、夫々の3本のシングルモード光ファイバ1,2,3から入射される光の波長の関係をλ1<λ2<λ3としたとき、シングルモード光ファイバ1にはλ1の波長を有する光が入射され、シングルモード光ファイバ2にはλ2の波長を有する光が入射され、シングルモード光ファイバ3にはλ3の波長を有する光が入射され、λ1、λ2、λ3の波長を有する光の合波光が、シングルモード光ファイバ1から出射されることを特徴とする3波長光合波器100である。
【0061】
上記の構成によれば、入射された3波長の光を、ある一定基準(60%)以上の透過率で合波することができる。さらに、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3が一体の構成であるため、小型である。
【0062】
また、本発明の一実施形態に係る3波長光合波器100はシングルモード光ファイバ1、シングルモード光ファイバ2、およびシングルモード光ファイバ3を、この順に同一平面上に互いに並行に配列している。
【0063】
上記の構成によれば、シングルモード光ファイバ1、シングルモード光ファイバ2、シングルモード光ファイバ3の順に、同一平面上に互いに並行に配列されているため、パッケージし易く、安定した品質を実現できる。
【0064】
また、本発明の一実施形態に係るシングルモード光ファイバ1、シングルモード光ファイバ2、およびシングルモード光ファイバ3が、シングルモード光ファイバであり、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3を一括で融着延伸している
【0065】
上記の構成によれば、シングルモード光ファイバ1、シングルモード光ファイバ2、シングルモード光ファイバ3が、シングルモード光ファイバを用いており、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3が一括で融着延伸されているため、容易に、かつ品質が安定した光結合部6を作製できる。
【0066】
また、本発明の一実施形態に係る3波長光合波器100は、パラメータの一つが2次モードカットオフ波長であり、シングルモード光ファイバ1およびシングルモード光ファイバ2の2次モードカットオフ波長C1と、シングルモード光ファイバ3の2次モードカットオフ波長C2と、シングルモード光ファイバ3から入射される光の波長λ3と、の関係が、C1<C2<λ3となっている。
【0067】
上記の構成によれば、より好適に、入射された3波長の光を、ある一定基準(60%)以上の透過率で合波することができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係るシングルモード光ファイバ2と、シングルモード光ファイバ3と、が有する出射ポート2−2,3−2が、無反射処理されている。
【0069】
上記の構成によれば、実質不要な導光体を整理することができ、3入力1出力の3波長光合波器100とすることができる。
【0070】
また、本発明の一実施形態に係るλ1の波長を有する光が青色、λ2の波長を有する光が緑色、λ3の波長を有する光が赤色、の可視光であってもよい。
【0071】
上記の構成によれば、青色、緑色、赤色の3色の可視光の3波長合波が可能になる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態を説明した。なお、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
【0073】
例えば、本実施形態において、3本のシングルモード光ファイバ1,2,3の入射ポート1−1,2−1,3−1から夫々入射される光は、青色、緑色、赤色であったが、これに限定される必要はない。図6の実施例に示すような波長と2次モードカットオフ波長の対応関係であれば、何れの波長を用いていてもよい。
【0074】
また、本実施形態において、出射パワーのある一定基準は、透過率60%であるが、これに限定する必要はなく、60%より大きくてもよいし、60%より小さくてもよい。
【0075】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、3本のシングルモード光ファイバから入射する光を合波する3波長光合波器に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 シングルモード光ファイバ
1−1 入射ポート
1−2 出射ポート
2 シングルモード光ファイバ
2−1 入射ポート
2−2 出射ポート
3 シングルモード光ファイバ
3−1 入射ポート
3−2 入射ポート
6 光結合部
10 終端部
100 3波長光合波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルモード伝送する第一の導光体と、シングルモード伝送する第二の導光体と、シングルモード伝送する第三の導光体と、からなる3本の導光体を、ファイバ軸方向に直交する断面方向から見てこの順に互いに並行に配列した光合波器であって、
前記第一の導光体と前記第三の導光体は、お互い接触することなく、夫々前記第二の導光体のみと接触して配列されており、
3本の前記導光体のうち、前記第一の導光体と前記第二の導光体は、互いに等しいパラメータを有し、前記第三の導光体は、他の2本の前記導光体とは異なるパラメータを有しており、
夫々の3本の前記導光体から入射される光の波長の関係をλ1<λ2<λ3としたとき、前記第一の導光体には前記λ1の波長を有する光が入射され、前記第二の導光体には前記λ2の波長を有する光が入射され、前記第三の導光体には前記λ3の波長を有する光が入射され、前記λ1、λ2、λ3の波長を有する光の合波光が、前記第一の導光体から出射されることを特徴とする3波長光合波器。
【請求項2】
前記第一の導光体、前記第二の導光体、および前記第三の導光体を、この順に同一平面上に互いに並行に配列した、請求項1に記載の3波長光合波器。
【請求項3】
前記第一の導光体、前記第二の導光体、および前記第三の導光体が、シングルモード光ファイバであり、前記3本の導光体を一括で融着延伸していることを特徴とする請求項1または2に記載の3波長光合波器。
【請求項4】
前記パラメータの一つが2次モードカットオフ波長であり、前記第一のシングルモード光ファイバおよび前記第二のシングルモード光ファイバの2次モードカットオフ波長C1と、前記第三のシングルモード光ファイバの2次モードカットオフ波長C2と、前記第三のシングルモード光ファイバから入射される光の波長λ3と、の関係が、C1<C2<λ3となることを特徴とする請求項3に記載の3波長光合波器。
【請求項5】
前記第二の導光体と、前記第三の導光体と、が有する前記出射ポートが、無反射処理されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の3波長光合波器。
【請求項6】
前記λ1の波長を有する光が青色、前記λ2の波長を有する光が緑色、前記λ3の波長を有する光が赤色、の可視光であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の3波長光合波器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−27985(P2011−27985A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173313(P2009−173313)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)