説明

3環式化合物のエナンチオ選択的アルキル化

【課題】ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼのインヒビターである化合物を調製するのに有用な中間体である式(I)の化合物を調製するためのプロセスを提供する。


【解決手段】ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1.2−b]ピリジン誘導体が以下(a)〜(c)で任意の順序で処理される:(a)非求核性強塩基;(b)キラルアミノアルコール;および(c)4位に脱離基を有するピペリジン誘導体を有する化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼのインヒビターとして公知の三環式化合物の調製に有用な中間体を調製するためのプロセスを提供する。特に、本発明のプロセスにより調製される化合物は、1997年7月3日に公開されたPCT公開番号WO97/23478において開示されるようなFPTインヒビターであるキラル化合物の調製における、キラル中間体として有用である。
【背景技術】
【0002】
最近数十年の間、多数のエナンチオ選択的な炭素−炭素結合形成反応が開発されており、これらは2つの異なるグループに分類され、それは、共有結合したキラル前駆体のアルキル化を含む反応、および非共有結合的に結合したキラル補助剤を使用する反応である。前者の例としては、Evan’sオキサゾリジノン系、Meyer’sオキサゾリン系およびEnders’RAMP/SAMP系が挙げられる(Evans,D.A.ら、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis;Wiley:Chichester、1995、第1巻、345頁;Gant,T.G.;Meyers,A.I.Tetrahedron 1994,50,2297;およびEnders.D.ら、Liebigs Ann.1995,1127を参照のこと)。後者の例としては、ケトン、イミン、アミノ酸誘導Schiff塩基、N−アルキルカルバメートおよびO−アルキルカルバメートの、安定化されたアニオンのアルキル化が挙げられ、これらは非共有結合的に結合したキラルアルカロイド塩基またはキラルなリチウム塩基を用いて安定化される(例えば、Hughes,D.L.ら、J.Org.Chem.1987,52,4745;Sato,D.ら、Tetrahedron 1997,53,7191;Koga,K.Pure&Appl.Chem.1994,66,1487;Tomioka,K.ら、Chem.Pharm.Bull.1989,37,1120;O’Donnell,M.J.ら、Tetrahedron 1994,50,4507;Weisenburger,G.A.ら、J.Am.Chem.Soc.1996,118,12218;Gallagher,D.J.ら、J.Am.Chem.Soc.1996,118,11391;およびHoppe,D.ら、Pure&Appl.Chem.1996,68,613を参照のこと)。これらの反応は、発生され、そしてアルキル化されるアニオンが、ケトン、イミン、またはヒドラゾンなどの隣接するカルボニル型の安定化基を有していることにおいて類似する。非カルボニル型基安定化アニオンの例が少数ある。Gawleyは、キラルなスタナン前駆体から発生されたα−アミノオルガノリチウムアニオンは立体配置的に安定であり、そしてある場合は、1級アルキルハライドによるアルキル化は、優れたエナンチオ選択性で生成物を与えるにもかかわらず、キラルなスタナン前駆体が分解されなければならないという事実がこの手順から減らされることを報告した(Gawley,R.E.ら、J.Org.Chem.1995,60,5763を参照のこと)。Noyoriらは、エチルベンゼン/(−)−スパルテイン複合体のアニオンのシリル化およびカルボキシル化が、約30%のエナンチオマー過剰率(e.e.)で低収率で進行し、そして有意量の芳香族核上の反応もまた観察されたことを報告した(Nozaki,H.;Aratani,T.;Toraya,T.;Noyori,R.Tetrahedron 1971,27,905を参照のこと)。Whiteらは、2−メチルピリジン/(−)−スパルテイン複合体のメチル化が20%e.e.および収率64%で進行することを報告した(Papasergio,R.I.;Skelton,B.W.;Twiss,P.;White,A.H.;Raston,C.L.J.Chem.Soc.Dalton Trans.1990,1161を参照のこと)。Hoppeらは、インデニン系(アリルアニオン)のアシル化が>95%eeで収率52〜79%で進行することを報告した(Hoppe,I.ら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1995,34,2158を参照のこと)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、上記のキラルFPTインヒビターを調製するのに有用な、高いe.e.および高収率の中間体を生じるキラルリガンドとしてキラルアミノアルコールを使用して、非ケトン/アミド/カルバメート/イミンベンジル型メチレン化合物のエナンチオ選択的アルキル化のためのプロセスをここで発見した。
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、以下の式の化合物を調製するためのプロセスを提供する:
【0005】
【化18】

ここで、X1、X2、X3、X4およびX5が、独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシからなる群から選択され、そしてRが保護基であり、このプロセスが、以下の工程:
以下の式を有する化合物:
【0006】
【化19】

(ここで、X1、X2、X3、X4およびX5は、上記で定義された通りである)を、以下:
(a)非求核性強塩基;
(b)キラルアミノアルコール;および
(c)以下の式を有する化合物:
【0007】
【化20】

(ここで、Lは脱離基であり、そしてRは上記で定義された通りである)で、任意の順序で処理する工程を包含する。
【0008】
以下の式を有する化合物を調製するためのプロセスもまた、本明細書中で請求される:
【0009】
【化21】

ここで、X1、X2、X3、X4およびX5が、独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシからなる群から選択され、そしてRが保護基であり、このプロセスが、以下の工程:
以下の式を有する化合物:
【0010】
【化22】

(ここで、X1、X2、X3、X4およびX5は、上記で定義された通りである)を、キラルアミノアルコールの存在下で、非求核性強塩基と反応させて、複合体を形成する工程;および
(b)工程(a)で形成した複合体を、以下の式を有する化合物:
【0011】
【化23】

(ここで、Lは脱離基であり、そしてRは上記で定義された通りである)と反応させる工程を包含する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1) 以下の式の化合物を調製するためのプロセスであって:
【化1】


ここで、X1、X2、X3、X4およびX5が、独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシからなる群から選択され、そしてRが保護基であり、該プロセスが、以下:
以下の式を有する化合物:
【化2】


(ここで、X1、X2、X3、X4およびX5は、上記で定義された通りである)を、以下:
(a)非求核性強塩基;
(b)キラルアミノアルコール;および
(c)以下の式を有する化合物:
【化3】


(ここで、Lは脱離基であり、そしてRは上記で定義された通りである)で、任意の順序で処理する工程を包含する、プロセス。
(項目2) 項目1に記載のプロセスであって、ここで、X2およびX4はHであり、そしてX1、X3およびX5はハロであり;そしてここで、前記キラルアミノアルコールが、
(i)以下の式を有する化合物:
【化4】


(ここで、点線は任意の二次結合を表し、そしてここで、R1は、アルコキシ、アリールオキシまたはNRABから選択され、ここで、RAおよびRBは、アルキルまたはアリールから選択され、R1は、1つ以上のアルコキシ基で必要に応じて置換される)、または
(ii)以下の式を有する化合物:
【化5】


(ここで、R2は、アルキルおよびアルコキシからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で、必要に応じて置換されるフェニル基である)、である、プロセス。
(項目3) X1がBrであり、X3がClであり、そしてX5がBrである、項目2に記載のプロセス。
(項目4) 項目3に記載のプロセスであって、ここで、前記非求核性強塩基、前記キラルアミノアルコール、または前記式(V)の化合物での処理のうち少なくとも1つが、水またはC1〜C3アルコールの存在下で生じる、プロセス。
(項目5) 項目4に記載のプロセスであって、ここで、前記非求核性強塩基、前記キラルアミノアルコール、または前記式(V)の化合物での処理のうち少なくとも1つが、水の存在下で生じ、該非求核性強塩基がリチウムジイソプロピルアミドである、プロセス。
(項目6) 項目5に記載のプロセスであって、ここで、前記キラルアミノアルコールが、キニーネ、ヒドロキニーネ、
【化6】


からなる群から選択される、プロセス。
(項目7) 前記キラルアミノアルコールがキニーネである、項目6に記載のプロセス。
(項目8) 前記脱離基Lが、スルホネート、ホスフェート、ベンゾエートおよびハロからなる群から選択される、項目7に記載のプロセス。
(項目9) 前記脱離基が、メシレートまたはトシレートである、項目8に記載のプロセス。
(項目10) 項目9に記載のプロセスであって、ここで、Rが、tert−ブトキシカルボニル、
【化7】





からなる群から選択される、プロセス。
(項目11) 項目10に記載のプロセスであって、ここで、Rが,tert−ブトキシカルボニル、または
【化8】


である、プロセス。
(項目12) 項目6に記載のプロセスであって、ここで、前記キラルアミノアルコールが、
【化9】


である、プロセス。
(項目13) 項目12に記載のプロセスであって、ここで、前記脱離基Lが、スルホネート、ホスフェート、ベンゾエートおよびハロからなる群から選択される、プロセス。
(項目14) 前記脱離基が、メシレートまたはトシレートである、項目13に記載のプロセス。
(項目15) 項目14に記載のプロセスであって、ここで、Rが、tert−ブトキシカルボニル、
【化10】





からなる群から選択される、プロセス。
(項目16) 項目15に記載のプロセスであって、ここで、Rが,tert−ブトキシカルボニル、または
【化11】


である、プロセス。
(項目17) 以下の式を有する化合物を調製するためのプロセスであって:
【化12】


ここで、X1、X2、X3、X4およびX5が、独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシからなる群から選択され、そしてRが保護基であり、該プロセスが、以下:
(a)以下の式を有する化合物:
【化13】


(ここで、X1、X2、X3、X4およびX5は、上記で定義された通りである)を、キラルアミノアルコールの存在下で、非求核性強塩基と反応させて、複合体を形成する工程;および
(b)工程(a)で形成された該複合体を、以下の式を有する化合物:
【化14】


(ここで、Lは脱離基であり、そしてRは上記で定義された通りである)と反応させる工程、を包含する、プロセス。
(項目18) 項目17に記載のプロセスであって、ここで、該プロセスが水の存在下で行われ、そしてここで、前記キラルアミノアルコールが、以下:
(i)以下の式を有する化合物:
【化15】


(ここで、点線は任意の二次結合を表し、そしてここで、R1は、アルコキシ、アリールオキシまたはNRABから選択され、ここで、RAおよびRBは、アルキルまたはアリールから選択され、R1は、1つ以上のアルコキシ基で必要に応じて置換される)、または
(ii)以下の式を有する化合物:
【化16】


(ここで、R2は、アルキルおよびアルコキシからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で、必要に応じて置換されるフェニル基である)、から選択される、プロセス。
(項目19) 項目18に記載のプロセスであって、ここで、X2およびX4がHであり、X1がBrであり、X3がClであり、そしてX5がBrであり、前記非求核性強塩基がリチウムジイソプロピルアミドであり、前記脱離基Lがメシレートであり、Rがtert−ブトキシカルボニルであり、そして前記キラルアミノアルコールが、キニーネ、または
【化17】


から選択される、プロセス。
(項目20) 項目18に記載のプロセスであって、ここで、
(a)1.2〜1.4当量の非求核性強塩基を、温度を10℃〜30℃に維持しながら、以下(i)、(ii)および(iii)を含有する溶液に添加し:
(i)前記式(II)の化合物、
(ii)1.1〜1.3当量の前記式(V)の化合物、および
(iii)1.2〜1.4当量の前記キラルアミノアルコール;
(b)工程(a)の混合物を、0℃〜10℃に冷却し、そして0.8〜1.2当量の水を添加し;
(c)追加の0.9〜1.1当量の該非求核性強塩基を、温度を0℃〜10℃に維持しながら、工程(b)からの混合物に添加し;
(d)工程(c)からの混合物の温度を、14℃〜18℃まで上げ、そして追加の1.1〜1.3当量の該非求核性強塩基を、温度を14℃〜18℃に維持しながら添加し;そして
(e)該キラルアミノアルコールを除去する、プロセス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖の基を意味する。
【0013】
「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素ラジカルを意味する。
【0014】
「アルコキシ」とは、式−OR(ここで、Rはアルキルである)を有する基のことをいう。
【0015】
「アリール」とは、少なくとも1つの芳香族環を有する炭素環式基をいう。
【0016】
「アリールオキシ」とは、式−OR(ここで、Rはアリールである)を有する基をいう。
【0017】
「e.e.」は、R−エナンチオマーからS−エナンチオマーの量を引き、そしてR−エナンチオマーとS−エナンチオマーの量の和で割ることにより得られる百分率を表す:
e.e.%=100×(R−エナンチオマー−S−エナンチオマー)/(R−エナンチオマー+S−エナンチオマー)。
【0018】
以下の略語が本明細書中で使用される:「Boc」は、tert−ブトキシカルボニルを表し;「LDA」は、リチウムジイソプロピルアミドを表し;「THF」は、テトラヒドロフランを表し;そして「Ph」はフェニル基を表す。
【0019】
上記のプロセスによって調製される化合物は、FPTインヒビターであるキラル化合物(例えば、PCT公開番号WO97/23478(1997年7月3日公開)に記載されるような化合物)を調製するための中間体として有用である。このような化合物は、式(I)の化合物を脱保護することによって調製し得る。すなわち、酸(例えば、H2SO4)で処理することにより、R基を除去して、遊離アミンを形成するか、または必要に応じて、この遊離アミンを適切な酸(例えば、N−アセチル−L−フェニルアラニン)と反応させて、安定な塩を形成し、そしてこの遊離塩基または塩を所望のアシル基でアシル化して、所望のFPTインヒビターを形成する。本発明のプロセスによって調製される化合物は、以下の化合物を調製するのに特に有用である:
【0020】
【化24】

好ましくは、X1、X2、X3、X4およびX5は、Hまたはハロから選択される。より好ましくは、X2およびX4がHであり、X1、X3およびX5がハロである。ハロは、最も好ましくは、ClまたはBrである。最も好ましくは、X1がBrであり、X2がHであり、X3がClであり、X4がHであり、そしてX5がBrである。
【0021】
脱離基Lの非限定的な例としては、スルホネート(例えば、メシレート、トシレート、クロシレート(p−クロロトシレート)、およびブロシレート(p−ブロモトシレート))、ホスフェート(例えば、ジエチルホスフェートのようなアルキルホスフェート)、ベンゾエートならびにハロが挙げられる。好ましくは、脱離基Lは、スルホネートであり、より好ましくは、メシレートまたはトシレートである。
【0022】
保護基は、ピペリジン環の窒素原子を保護するのに適切な任意の基であり得る。保護基の非限定的な例としては、スルホネート、ならびにアシル基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、
【0023】
【化25】


が挙げられる。好ましくは、保護基は、アシル基であり、より好ましくは、tert−ブトキシカルボニル、または
【0024】
【化26】

である。
【0025】
適切な非求核性強塩基の例としては、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−リチウム4−メチルピペラジン、1,4−ジリチウムピペラジン、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、リチウムジエチルアミド、およびカリウムtert−ブトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、非求核性強塩基は、LDAである。
【0026】
キラルアミノアルコールの非限定的な例としては、キニーネおよびキニーネ誘導体、1,2−および1,3−アミノアルコール誘導体、およびキノリンアルコール誘導体が挙げられる。
【0027】
好ましくは、キラルアミノアルコールは、
(i)以下の式を有する化合物:
【0028】
【化27】

(ここで、点線は任意の二次結合を表し、そしてここで、R1は、アルコキシ、アリールオキシまたはNRABから選択され、ここで、RAおよびRBは、アルキルまたはアリールから選択され、R1は、1つ以上のアルコキシ基で必要に応じて置換される)、または
(ii)以下の式を有する化合物:
【0029】
【化28】

(ここで、R2は、アルキルおよびアルコキシからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で、必要に応じて置換されるフェニル基である)である。
【0030】
上記式(III)のキラルアミノアルコールは、キニーネまたはキニーネ誘導体である。式(III)のキラルアミノアルコールの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【0031】
【化29】

好ましくは、式(III)のR1はアルコキシである。式(III)のキラルアミノアルコールは、最も好ましくは、キニーネ、ヒドロキニーネ、
【0032】
【化30】

から選択される。キニーネが特に好ましい。
【0033】
式(IV)のキラルアミノアルコールは、ノルエフェドリンの誘導体である。好ましくは、R2は、1〜3個のアルコキシ置換基で置換されたフェニルである。好ましくは、これらのアルコキシ置換基は、メトキシまたはエトキシであり、メトキシが特に好ましい。式(IV)のキラルアミノアルコールの非限定的な例としては、以下が挙げられる:
【0034】
【化31】

式(IV)のキラルアミノアルコールが、最も好ましい:
【0035】
【化32】

本明細書中で請求されるプロセスは、以下の機構に従って進行すると考えられる:塩基が、式(II)の3環式化合物からプロトンを受け取り、アニオン:
【0036】
【化33】

を形成する。続いて、この3環式アニオンは、キラルアミノアルコールおよび塩基と複合体を形成する。この複合体の3環式アニオンは、式(V)のピペリジン化合物と反応し、脱離基Lを置換し、それにより所望の式(I)の化合物を形成する。
【0037】
本発明のプロセスは、好ましくは、有機溶媒中で行われる。適切な有機溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、クロロベンゼン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。トルエンが特に好ましい溶媒である。
【0038】
このプロセスは、好ましくは、−20℃〜+60℃の温度範囲、より好ましくは−10℃〜+40℃の温度範囲、最も好ましくは、0℃〜+25℃の温度範囲で行われる。
【0039】
使用される非求核性強塩基の量は、好ましくは、3.0〜5.0当量、より好ましくは、3.0〜4.0当量、最も好ましくは、3.0〜3.6当量の範囲である。
【0040】
使用されるキラルアミノアルコールの量は、好ましくは、1.0〜2.0当量、より好ましくは、1.0〜1.5当量、最も好ましくは、1.0〜1.3当量の範囲である。
【0041】
使用される式(V)のピペリジン化合物の量は、好ましくは、1.0〜2.0当量、より好ましくは、1.0〜1.5当量、最も好ましくは、1.0〜1.3当量の範囲である。
【0042】
上記のように、3環式の出発化合物は、任意の順序で、非求核性強塩基、キラルアミノアルコール、または式(V)のピペリジン化合物(これらの試薬の混合物を含む)で処理され得る。
【0043】
本発明のプロセスは、好ましくは、非求核性強塩基、キラルアミノアルコール、または式(V)のピペリジン化合物での処理のうち少なくとも1つが、水またはC1〜C3アルコール(例えば、メタノール、最も好ましくは水)の存在下で生じるように行われる。使用される水またはC1〜C3アルコールの量は、好ましくは、0.1〜3.0当量、より好ましくは、0.8〜1.2当量、最も好ましくは、0.9〜1.1当量の範囲である。水またはC1〜C3アルコールは、塩基、キラルアミノアルコールまたはピペリジン化合物の添加の前か、またはそれと同時に、3環式出発化合物に添加され得るか、あるいはこれはこれらの化合物のいずれかまたは全てが3環式出発化合物に接触された後に添加され得る。
【0044】
特に好ましい実施形態において、
(a)1.2〜1.4当量、好ましくは約1.3当量の非求核性強塩基を、温度を10℃〜30℃(好ましくは、15℃〜25℃)に維持しながら、以下(i)、(ii)および(iii)を含有する溶液に添加し:
(i)前記式(II)の化合物、
(ii)1.1〜1.3当量、好ましくは、約1.2当量の式(V)の化合物、および
(iii)1.2〜1.4当量、好ましくは、約1.3当量のキラルアミノアルコール;
(b)工程(a)の混合物を、0℃〜10℃、好ましくは、0℃〜5℃に冷却し、そして0.8〜1.2当量、好ましくは、1.0当量の水を添加し;
(c)追加の0.9〜1.1当量、好ましくは、約1.0当量の該非求核性強塩基を、温度を0℃〜10℃、好ましくは、0℃〜8℃に維持しながら、工程(b)からの混合物に添加し;そして
(d)工程(c)からの混合物の温度を、14℃〜18℃まで上げ、そして追加の1.1〜1.3当量、好ましくは、約1.2当量の該非求核性強塩基を、温度を14℃〜18℃に維持しながら添加する。
【0045】
本発明者らの発明のプロセスは、キラルなアミノアルコールがさらなる使用のために回収され、そして再利用され得るため、経済的である。例えば、反応が完結したとHPLCにより判断された後、反応混合物は水を加えることによりクエンチされ得、そしてキラルなアミノアルコールを沈殿させるため0℃から5℃の温度で攪拌され、このキラルなアミノアルコールは濾過により回収され得る。
【0046】
本発明者らのプロセスの三環式出発化合物は、以下に示されるように、対応する三環式ケトンを還元することにより調製され得る:
【0047】
【化34】

この三環式ケトンの還元は、当該分野で周知の方法により行われ得る。好ましくは、この還元は、三環式ケトンをZnおよびテトラヒドロフラン/無水酢酸の2:1混合物中の2当量のトリフルオロ酢酸で処理することにより行われる。三環式ケトンは、当該分野で公知の方法、例えば、1997年7月3日に公開されたPCT公開番号WO97/23478、1996年10月10日に公開されたWO96/31478、1996年10月3日に公開されたWO96/30363、および1995年4月20日に公開されたWO95/10516に記載される方法に従って調製され得る。あるいは、三環式ケトンは、以下のスキームに従って調製され得る:
【0048】
【化35】

上記のスキームに示されるように、ピリジン化合物1は、パラジウム触媒(例えば、Pd(OAc)2またはPdCl2)、一酸化炭素、塩基(例えば、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデク−7−エン(「DBU」)またはジイソプロピルエチルアミン)、ならびにエチレングリコールジメチルエーテル、2−メトキシエチルエーテル、およびトリエチレングリコールジメチルエーテルから選択されるエーテルの存在下、アニリンと反応してアミド化合物2を形成する。このアミド化合物2を形成する反応は、約45℃〜90℃の温度、および約40〜100psiの圧力で、適切な溶媒(例えば、トルエンまたはクロロベンゼン)中で、好ましくは行われる。アミド化合物2は、強塩基(例えば、リチウムジイソプロピルアミド)の存在下、適切な溶媒(例えば、THF)中でヨード置換化合物3と反応して化合物4を形成する。化合物4は、CH3Iおよび塩基(例えば、NaH)と反応して、メチル化化合物5を形成する。化合物5は、グリニャール試薬(例えば、2−メトキシフェニルマグネシウムブロミド)との反応により環化され、所望のケトンを形成する。
【0049】
あるいは、この三環式ケトンは、以下のスキームに従って調製され得る:
【0050】
【化36】

上記のスキームに示されるように、アミド化合物2は、強塩基(例えば、リチウムジイソプロピルアミド)の存在下、適切な溶媒(例えば、THF)中で、化合物6と反応して化合物7を形成する。化合物7は、それを脱水剤および超酸(例えば、P25/CF3SO3H)または脱水剤およびルイス酸(例えば、PCl5/AlCl3またはPOCl3/ZnCl2)で処理することにより環化され、そして反応生成物8を加水分解することにより所望の三環式ケトンを形成する。
【0051】
本発明者らのプロセスにおいて用いられるノルエフェドリン誘導体は、以下のスキームに従って、ワンポット、2工程のプロセスにより調製され得る:
【0052】
【化37】

上記のスキームに示されるように、(1R,2S)−(−)−ノルエフェドリンは、エタノール中で還流することにより、任意に置換されたベンズアルデヒドと反応し、この反応の生成物を水素化ホウ素ナトリウムで周囲温度で還元することにより、所望のノルエフェドリン誘導体化合物を生成する。
【0053】
本発明者らのプロセスにおいて用いられるキニーネ誘導体は、商業的に入手可能であるか、あるいはキニーネまたはヒドロキニーネから当業者に公知の方法を用いて製造され得るかのいずれかである(例えば、H.King、J.Chem.Soc.1946,523−524;およびA.Renfrewら、J.Am.Chem.Soc.1943,65,2309−2310を参照のこと)。
【0054】
以下の実施例は、上記の発明を例示するが、このような実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の範囲内にある代替の試薬および類似の(analagous)プロセスは、当業者にとって明らかである。
【0055】
(調製例A)
(トリメトキシベンジル−ノルエフェドリンリガンドのワンポット、2工程の調製)
【0056】
【化38】

(1R,2S)−(−)−ノルエフェドリン(100g)および3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド(143g)をエタノール(1L)に溶解し、4〜5時間(完結に必要な平均時間)、穏やかに還流させる。次いで、反応混合物を氷水浴中で冷却し、そして水素化ホウ素ナトリウム(37g)を何回かに分けて加える。室温で一晩で還元が起こる。一旦、還元が完結すると、水(25mL)を加えることにより過剰の水素化ホウ素ナトリウムが破壊される。次いで、有機溶媒(エタノール)をrotavapを用いて除去し、そして生成物を酢酸エチルで抽出する。酢酸エチルをrotavapを用いて除去し、トリメトキシベンジル−ノルエフェドリンが無色の油状物として残る。
【0057】
トリメトキシベンジル−ノルエフェドリン油状物をメタノール(400mL)に溶解し、そして48%w/w臭化水素酸水溶液(73mL)をゆっくり加えることにより、さらなる精製が達成される。白色固体が沈殿し、これを室温で1時間の攪拌後、濾過する。このリガンド塩を、メタノール/ジエチルエーテル(12:1)混合物中で再結晶する。再結晶した塩を、次いで、希水酸化ナトリウム水溶液を用いて脱塩基し、そしてトルエンで抽出する。次いで、トルエンをrotavapで除去し、トリメトキシベンジル−ノルエフェドリン(188g)が無色の油状物として残る。
【0058】
1H NMR(CDCl3):δ7.33−7.24(m,7H);6.55(s,2H);4.80(d,J=3.8Hz,1H);3.86−3.82(m,9H);3.00(dq,J=3.8および6.5Hz,1H);1.39(d,J=6.5Hz,1H);0.9(d,J=6.5Hz,3H)
13C NMR(CDCl3):154.3,142.2,138.2,136.4,129.1,128.1,127.1,106.0,74.4,62.0,59.1,57.3,52.7,15.9。
【0059】
(調製例B)
【0060】
【化39】

THF(140L)中の、上記で示される三環式ケトン(40kg、1当量)、無水酢酸(72L、7.8当量)の混合物に、−25℃で亜鉛ダスト(22.4kg、3.5当量)を加え、次いで、トリフルオロ酢酸(16.8L、2.2当量)を、−25℃〜−20℃で2時間かけて滴下した。この混合物を、2時間かけて室温までゆっくり昇温し、20時間かけて18℃〜20℃に保った。Supercel(4kg)およびトルエン(400L)を加え、この混合物を濾過した。過剰の亜鉛および無機残渣をトルエン(80L)で洗浄した。この濾液および洗浄液を合わせ、そして水(200L)、10%NaOH(160L×2)および水(200L)で洗浄した。有機層を水層から分離した後、有機層を120Lになるまで濃縮した。2−ブタノール(320L)をこの混合物に加え、次いで、これを120Lになるまで減圧下で濃縮した。再び、160Lの2−ブタノールを加え、この混合物を加熱して1時間還流した。この混合物を0℃〜5℃に冷却し、4時間攪拌した。固体を濾過し、80Lの2−ブタノールで洗浄した。この結晶生成物を減圧下、70℃で乾燥した。収量は、32.6kg(82%)であった。Mp.:163〜164℃.1H NMR(CDCl3):8.38(d,J=2.0Hz,1H),7.46(d,J=2.0Hz,1H),7.44(d,J=2.0Hz,1H),7.14(d,J=2.0Hz,1H)4.54(s,2H)、3.10−3.20(m,4H)。13C NMR(CDCl3):154.1,148.5,143.9,141.7,137.2,135.8,133.9,131.6,128.7,125.5,119.8,41.7,32.9,32.8。
【0061】
必要であれば、この生成物は7容量の2−ブタノールおよび1.5容量のトルエンからの再結晶により、収率94%でさらに精製され得る。
【0062】
(実施例1)
(ノルエフェドリンベースのリガンドを用いるキラルアルキル化)
【0063】
【化40】

調製例Aのトリメトキシベンジル−ノルエフェドリンリガンド(76.8g)、調製例Bの三環式メチレン基質(50g)およびメシル化されたN−保護ピペリジン誘導体(43.2g)を、トルエンに溶解し、総体積1Lにする。次いで、この反応混合物を0℃と−5℃との間に冷却し、リチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)溶液(シクロヘキサン中、1.5M)(「LDA」)(155mL)を加え、続いて水(2.1mL)を加える。この時点で、温度を0℃と−5℃との間に保ち、残りのLDA1.5M(172mL)を4〜5時間かけてゆっくり加える。反応が完結したら、1N塩酸(1.2L)を加えてキラル誘導リガンドを沈殿させ、これを、濾過により回収し、そしてさらなる精製なしで再利用され得る。次いで、水層を、アルキル化された生成物(93〜95%ee、>95%溶液収率)を含む有機層(トルエン)から分離する。
【0064】
(実施例2)
実施例1の手順を用い、そしてLDAの代わりにリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを用いて、アルキル化された化合物を得る(81%ee)。
【0065】
(実施例3)
【0066】
【化41】

上記で示されるノルエフェドリン誘導体(0.9g)および上記で示される三環式化合物(1.0g)を40mLの脱気トルエンに溶解した、冷却された(0〜5℃)溶液に、LDA1.5M(3.8mL)を滴下した。この混合物をこの温度で2時間攪拌する。上記で示されるメシル化されたN−保護ピペリジン誘導体(10mLのトルエン中、1g)の溶液を、この反応混合液に加える。この反応により、室温まで戻る。HPLCにより反応をモニタリングして終点を決定し、アルキル化された化合物(57%ee)を得る。
【0067】
(実施例4)
実施例3と同じ手順を用いて、実施例2で用いたノルエフェドリン誘導体の代わりに、以下のノルエフェドリン誘導体:
【0068】
【化42】

を用いることにより、アルキル化された生成物(48%ee)を得る。
【0069】
(実施例5)
実施例3と同じ手順を用いて、LDAの代わりに1,4−ジリチウムピペラジドを用いることにより、アルキル化された生成物(62%ee)を得る。
【0070】
(実施例6)
(キニーネを用いるキラルアルキル化)
【0071】
【化43】

上記で示される三環式化合物(6.0g)および4−メシル−N−Boc−ピペリジン(5.0g)をトルエン150mL中で混合し、30分間で40℃まで加熱して透明な溶液を得、そして室温まで冷却する。この溶液を、固体キニーネ(6.0g)の入った反応フラスコに加える。1.3当量のリチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)(シクロヘキサン中、1.5M)溶液(「LDA溶液」)を、この混合物が赤色に変わるまでゆっくり加え、その間、温度を10℃未満に保つ。H2O(1.0当量)を加え、10分間攪拌し、そしてこの反応混合物を5℃未満に冷却する。1.0当量のLDA溶液をゆっくり加え、そしてこの反応混合物を14℃〜18℃に昇温して透明な溶液を得る。さらに1.1当量のLDA溶液を2時間かけて加える。得られる混合物を周囲温度まで昇温し、そして18時間攪拌する。この反応混合物を90mLの10%H2SO4でクエンチする。下層の水溶液を除去する。トルエン溶液(有機上層)に24mLの20%H2SO4を加え、85℃で4時間加熱し、そして周囲温度まで冷却する。15mLの濃NH4OHをこの反応混合物に加え、そして下の水溶液を除去する。トルエン溶液(有機上層)を、減圧蒸留により48mLの体積まで減らす。120mLのエタノールを加え、そして減圧蒸留により48mLの体積になるまで減らす。N−アセチル−L−フェニルアラニン(3.0グラム)のエタノール(120mL)溶液を加え、この混合物を減圧蒸留に供し、体積を48mLまで減らす。70℃で1時間攪拌し、そして周囲温度まで冷却する。この固体を濾過し、そしてエチルアルコールおよびメチル−t−ブチルエーテルの1:1溶液で洗浄する。減圧オーブン中、55℃の温度で18時間乾燥し、8.75gの所望の塩を得る(モル収率80%、純度96%、>98%ee)。
【0072】
塩の1H NMR(CDCl3):8.45(s,1H),7.58(s,1H),7.52(s,1H),7.20(m,6H),6.33(d,J=6Hz,1H),4.96(d,J=9Hz,1H),4.52(m,1H),3.55(m,1H),3.12−3.24(m,5H),3.0(m,1H),2.84(m,1H),2.58(m,2H),2.34(m,1H),2.00(s,3H),1.82(m,1H),1.62(m,2H),1.42(m,1H)。
【0073】
遊離塩基の1H NMR(CDCl3):8.45(s,1H),7.52(s,1H),7.48(s,1H),7.10(s,1H),4.88(d,J=9Hz,1H),3.62(m,1H),3.25(m,1H),3.00(m,3H),2.78(m,1H),2.48(m,2H),2.55(m,1H),1.50(m,3H),1.26(m,2H)。
【0074】
(実施例7)
(工程A)
【0075】
【化44】

攪拌子を備えた500ml丸底フラスコに10.0gの(11R)−(8−クロロ−3,10−ジブロモ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11−イル)−1−ピペリジン(S)−N−アセチル−L−フェニルアラネートを充填し、100mLのトルエン、50mLの25%NaOH溶液、および100mLのH2Oを加える。30分攪拌後、1.0gのセライト(登録商標)を加え、さらに5分間攪拌し、次いで濾過する。このセライト(登録商標)のパッドを10mLのトルエンで洗浄する。有機層および水層を分離し、そして有機層を水(4×50mL、続いて1×150mL)で洗浄する。40mLのDMF、0.199gの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、3.19gの1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド・HCl(EDCl・HCl)および4.0gの1−N−tert−ブトキシカルボニルピペリジニル−4−酢酸を加え、反応が完結するまで(HPLCで反応をモニタリングすることにより判断される)室温で攪拌する。この反応混合物に50mLのH2Oを加え、有機層および水層を分離する。有機層をAcOH溶液(AcOH 0.1mL/H2O 20mL)、1×40mLのH2O、NaOH溶液(24%NaOH 6.4g/H2O 36mL)、3×40mLのH2O、次いでNaCl溶液(3.9グラム/H2O 40mL)で洗浄する。有機層を、約60mLの体積まで濃縮し、そしてこのトルエン溶液を、22.5グラムのSiO2(Davison Grade 62)を用い、1:1EtOAc/トルエンで溶出し、50mLのフラクションで回収するクロマトグラフィーで分離する。それぞれのフラクションを薄層クロマトグラフィーにより分析し、そして生成物を含有する全てのフラクションを合わせる。合わせたフラクションを約50mLに濃縮し、100mLのトルエンを加え、そして約100mLに濃縮した。3.5グラムのアルミナ(塩基性、活性I)を加え、30分間攪拌し、濾過し、そしてアルミナのケーキを10mLのトルエンで洗浄する。アルミナスラリーを、HPLCが受容可能な品質の生成物を示すまで繰り返す。トルエン層を約20mLに濃縮し、EtOAc30mL、ヘプタン60mLを加え、そしてゆっくり室温まで冷却させる。生成物が沈殿した後、1時間0℃に冷却し、固体を集めて30mLの2:1ヘプタン/EtOAcで洗浄する。この固体を減圧オーブン中で一晩乾燥し、7.98gの生成物を得る。
【0076】
1H NMR:(CDCl3、δ):8.42(s,1H),7.53(s,1H),7.50(s,1H),7.10−7.20(m,6H),6.36(d,1H,J=7Hz)、4.94(d,1H,J=10Hz),4.48(m,1H),3.52(m,1H),3.24(m,2H),3.12(m,3H),2.98(m,1H),2.82(m,1H),2.53(m,2H),2.32(m,1H),1.98(s,3H),1.78(m,1H),1.56(m,1H),1.40(m,1H)。
【0077】
(工程B)
【0078】
【化45】

攪拌子を備えた250mL丸底フラスコに、7.07gの上記の工程Aで得られる生成物を充填する。エチルアルコール2B(35mL)を加え、攪拌する。この溶液を氷浴で10分間冷却し、次いで42mLの3N HCl溶液を、温度を25℃未満に維持しつつ加える。この反応物を、加水分解が完結するまで(HPLCにより判断される)(典型的には、6時間以上)室温で攪拌する(必要であれば、水浴中に反応系を置き、そして50℃で約30分攪拌して加水分解を完結させる)。rotavapで約35mLに濃縮し、1−メチル−2−ピロリジノン17.5mLを加え、次いで3N NaOHを約30分間かけてゆっくり加えることにより、pH9に調節し、その間、3N NaOHの添加速度を調節することにより、固体の形成を避ける。28.0gの尿素を加え、約110℃に加熱されたオイル浴中に置き、穏やかな還流下で一晩攪拌して固体を形成する。約50℃に冷却し、次いで3N HClを用いてpH6に調節する。固体物質を回収し、140mLのH2Oで洗浄し、そして減圧オーブン中で一晩乾燥して5.434gの生成物を得る。
【0079】
1H NMR:(CDCl3、δ):8.38(d,1H,J=8Hz),7.48(m,1H),7.43(s,1H),7.07(m,1H),4.82(d,1H,J=10Hz),4.54(m,1H),4.00(brs,2H),3.77(m,1H),3.56(m,1H),3.20(m,1H),2.90(m,1H),2.60−2.80(m,3H),2.30(m,2H),2.18(m,2H),1.90(m,1H),1.65(m,2H),1.38(s,9H),1.00−1.45(m,7H)。
【0080】
(工程C)
【0081】
【化46】

攪拌子を備えた500mL丸底フラスコに、5.14gの上記の工程Bで得られる物質を充填する。THF5mLおよびCH2Cl2250mLを加える。室温で約30分間攪拌し、全ての物質を溶解させて溶液を得る。2.57gのSiO2を加え、30分間攪拌し、次いでセライトのパッドを通して濾過する。15mLのCH2Cl2で洗浄し、約50mLに濃縮し、次いでTHF100mLを加え、そして蒸留により50mLに濃縮する。酢酸エチル100mLを加え、50mLに濃縮して白色沈殿を形成させる。再び25mLの酢酸エチルを加え、約50mLに濃縮し、次いで約35℃に冷却する。濾過し、この固体を冷酢酸エチル15mLで洗浄し、そして減圧オーブン中で一晩乾燥して4.1187gの生成物を得る。
【0082】
1H NMR:(CDCl3、δ):8.42(s,1H),7.58(d,1H,J=8Hz),7.50(s,1H),7.16(s,1H),4.92(d,1H,J=9Hz),4.62(brs,3H),3.92(m,3H),3.62(m,1H),3.26(m,1H),3.00(m,1H),2.82(m,1H),2.40(m,2H),2.22(m,2H),2.04(m,1H),1.78(m,2H),1.08−1.58(m,6H)。
【0083】
(実施例8)
【0084】
【化47】

上記で示される三環式化合物(0.207g)、ヒドロキニーネ(0.202g)および4−メシルN−Boc−ピペリジン(0.204g)をトルエン(20×)中で混合し、周囲温度で10分間攪拌し、そして0℃に冷却する。1mLのリチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)溶液(シクロヘキサン中、1.5M)(「LDA」)をゆっくり加え、その間、温度を10℃未満に維持する。得られる混合物を周囲温度に昇温し、そして2時間攪拌する。HPLC分析で転換率91.5%および68.5%eeを与える。
【0085】
(実施例9)
実施例8と同じ手順を用い、実施例8で用いられるヒドロキニーネの代わりに、以下のキノリンアルコール誘導体:
【0086】
【化48】

を用いて、アルキル化された生成物(35%e.e.)を得る。
【0087】
(実施例10)
【0088】
【化49】

上記で示される三環式化合物(5.0g)および4−メシル−(1−[1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−4−ピペリジニルアセチル)ピペリジン(6.3g)を、125mLのトルエンまたはアニソール中で混合し、40℃で30分間加熱して透明な溶液を得、そして周囲温度に冷却する。この溶液を固体キニーネ(6.3g)を有する反応フラスコに加える。1.5当量のリチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)溶液(シクロヘキサン中、1.5M)(「LDA溶液」)を、混合物が赤色に変わるまでゆっくり加え、その間、温度を10℃未満に維持する。H2O(1.2当量)を加え、10分間攪拌し、そして反応混合物を5℃以下に冷却する。1.2当量のLDA溶液をゆっくり加え、この反応混合物を16℃〜20℃に加温して透明な溶液を得る。さらに1.3当量のLDA溶液を、5時間かけて加える。得られる混合物を周囲温度で18時間攪拌する。この反応系を0℃に冷却し、この反応混合物を水20mLでクエンチする。0℃で4時間攪拌し、キニーネを濾過する。有機層を、1N HClで洗浄する。有機層を分離し、トルエン溶液(有機上層)を減圧蒸留により45mLの体積まで減らし、120mLのEtOHを加え、そして減圧蒸留により45mLの体積になるまで減らす。溶液を氷浴で10分間冷却し、次いで53mLの3N HCl溶液を、温度を25℃未満に維持しながら加える。この反応物を、室温で、加水分解が完結するまで(HPLCにより判断する)、典型的には6時間以上、攪拌する。(必要であれば、水浴中にこの反応系を置き、そして50℃で約30分間攪拌して加水分解を完結させる。)rotavapで約40mLに濃縮し、120mLのトルエンを加え、そして水層のpHが12になるまで3N NaOHを加える。トルエン相を分離し、トルエン溶液(有機上層)を減圧蒸留により40mLの体積まで減らす。イソプロパノール120mLを加え、そして減圧蒸留により40mLの体積になるまで減らす。イソプロパノール(80mL)中のN−α−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アスパラギン(3.6グラム)の溶液を加え、そしてこの混合物を減圧蒸留に供して体積を40mLまで減らす。80mLの酢酸イソプロピルを加え、還流で3時間加熱する。冷却し、周囲温度で1時間攪拌する。固体を濾過し、酢酸イソプロピル25mLで洗浄する。減圧オーブン中で55℃の温度で18時間乾燥して所望の塩(98%ee)を得る。この固体塩を、100mLのトルエン、50mLの25%NaOH溶液、および100mLのH2Oに懸濁させる。30分間攪拌し、有機層および水層を分離し、この水層をトルエン(2×10mL)で抽出する。このトルエン溶液を、3N HCl溶液25mLで抽出する。得られる水溶液は、NaOH、1−メチル−2−ピロリジノンおよび尿素で、実施例7工程Bの手順に従って処理され、実施例7工程Bにおいて形成される最終化合物を形成し得る。所望であれば、上記の方法におけるN−α−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アスパラギンをジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン、(S)−(−)−2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、または(1R)−(+)−樟脳酸(Camphanic acid)に変えることにより、他の塩が形成され得る。
【0089】
(実施例11)
【0090】
【化50】

以下は、バッチ調製を例示する:
反応器に33kgのキニーネを充填する。別の反応器に、33kgの上記に示される三環式化合物、27.4kgの4−メシル−N−Boc−ピペリジン、および660Lのトルエンを充填し、全ての固体が溶解するまで、攪拌しながら30℃から35℃の間の温度に加熱し、そしてこの溶液を20℃から25℃の間の温度までゆっくり冷却する。この溶液を、キニーネを含む最初の反応器に加え、この混合物を攪拌し始める。165Lのトルエンをこの反応混合物に充填し、そして温度を0℃から5℃の間に冷却しながら、60.7kgのリチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)(シクロヘキサン中、1.5M)をこの反応混合物にゆっくり充填する。温度を0℃から5℃の間に維持しながら、1518mLの水を反応器中に充填する。攪拌しながら、45.9kgのリチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)(シクロヘキサン中、1.5M)をゆっくり充填し、この間、バッチ温度を0℃から8℃の間に維持する。このバッチを、18±2℃の温度にゆっくり加熱し、そしてこの温度で約30分間攪拌する。約2〜3時間かけて、バッチ温度を14±2℃に維持しながら、リチウムジイソプロピルアミドモノ(テトラヒドロフラン)(シクロヘキサン中、1.5M)59.4kgを充填する。14±2℃の温度で約12時間、反応が終了するまで(HPLCにより確認する)攪拌する。198Lの水をこのバッチに充填し、0℃から5℃の間の温度で約4時間攪拌する。このバッチを濾過し、濾液を反応器に回収する。濾過ケーキ(回収されたキニーネ)を66Lのトルエン、続いて66Lの水で洗浄し、そしてこの洗浄液を、反応器中の濾液と合わせる。下部の水相を有機相と分離する。有機相を132Lの7.6%硫酸水溶液で洗浄し、そして相を分離して下部の水相を除去する。反応器温度を80℃未満に維持しながら、198Lの15%硫酸水溶液をこのバッチに加える。バッチ温度が約85℃に到達するまで、このバッチを加熱して溶媒を溶液から蒸留し、そして蒸留を停止し、この反応物を約85℃の温度で約4時間攪拌する。このバッチを約25℃に冷却した後、83Lの25%水酸化アンモニウム溶液を加え、そして20℃から30℃の間の温度で攪拌する。このバッチを静置して層分離させ、そして下部の水層を除去する。このバッチを20℃未満の温度に冷却する。このバッチを、減圧蒸留により約264Lの最終体積に濃縮する。このバッチを20℃未満の温度に冷却し、627Lのエチルアルコールを充填し、そしてこのバッチを、減圧蒸留により約264Lの最終体積に濃縮し、トルエンを溶媒交換により除去する。このバッチを20℃から25℃の間の温度に冷却する。エチルアルコール(495L)中のN−アセチル−L−フェニルアラニン(19.8kg)の溶液を加え、約1時間攪拌しながら、このバッチを55℃から60℃の間の温度に加熱する。20℃から25℃の間の温度に冷却する。このバッチを減圧蒸留に供し、約264Lの最終体積にこれを減らす。このバッチを15℃から20℃の間の温度に冷却し、濾過して結晶化した塩を回収し、そしてエチルアルコールおよびメチルt−ブチルエーテルの1:1溶液52Lで洗浄する。洗浄した結晶を、50℃から60℃の間の温度で少なくとも16時間乾燥して48kg(84.4%モル収率)の生成物(純度101.4%;98.8%ee)を生成する。
【0091】
本発明を上述の特定の実施形態とともに記載したが、それらの多数の代替、改変および変更は当業者に明らかである。すべてのこのような代替、改変および変更は本発明の精神および範囲内に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明

【公開番号】特開2010−189436(P2010−189436A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107771(P2010−107771)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2000−583892(P2000−583892)の分割
【原出願日】平成11年11月18日(1999.11.18)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】