説明

3D映像表示装置

【課題】3D映像を録画することなく、視認者が容易に適正範囲で3D映像を視認できるようにする。
【解決手段】ISP51は、イメージセンサ5による撮影画像から、視認者の顔画像を抽出して顔検出画像を出力する。判定処理部10が、顔検出画像に基づいて、視認者が3D映像を適正に視認できる適正範囲の外側に位置していると判定すると、表示処理部10が、そのことを警告としてメッセージを表示する。その後、判定処理部10が、再びISP51より得られた顔検出画像に基づいて、視認者が適正範囲の外側にいると判定すると、表示処理部11が、適正範囲への移動を指示する(移動方法を示す)メッセージを表示す
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者が3D映像を適正範囲で視認していないことを視認者の位置に基づいて判定した結果に基づいて適正範囲での視認を可能とするようにした3D映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の3D表示技術の進展により、3D映像を表示する高性能な表示装置が市販されるに至り、家庭でも容易に3D映像を見ることが可能となっている。このような表示装置は、人の目の視差を利用して映像を立体化するものであり、専用のメガネを必要とするメガネ方式と、専用のメガネを必要としない裸眼方式とに大別される。メガネ方式としてはアクティブシャッターメガネ方式が知られており、裸眼方式としては視差バリア方式やレンチキュラ方式が知られている。
【0003】
どちらの方式でも、画面上に左目用の画像と右目用の画像とを表示するのであるが、両画像の表示の切り替え方が異なる。メガネ方式では、その切り替えを視認者が装着するメガネによって行い、裸眼方式では、メガネを用いずにその切り替えを行なう。
【0004】
具体的には、メガネ方式では、左目用の画像と右目用の画像とが画面上で時系列に交互に高速に表示され、その映像に同期して、左目用の画像が表示されているときにはメガネの右側レンズが閉じられ、逆に右目用の画像が表示されているときには左側レンズが閉じられるように動作する。この動作によって、視認者は左右それぞれの目に適切な画像のみが入力され、立体映像として知覚および視認することが可能となる。一般に、メガネの左右レンズの開閉には、レンズ表面に設けられた電池等で駆動する液晶シャッターが利用されている。本方式では、立体映像を視認するためには、必ずこのメガネを装着しなければならない。
【0005】
一方、裸眼方式では、メガネ方式と違って、画面上に左目用の画像と右目用の画像とが、例えば縦1ラインおきに同時に表示される。ここで、画面上には視差バリア、レンチキュラと呼ばれる構造体が形成されている。この構造体のため、左目には左目用の画像しか見えず、右目には右目用の画像しか見えないようになっている。これにより、視認者はメガネを装着することなく立体映像を視認することができる。しかしながら、その原理上、映像の解像度は表示装置の解像度の半分に低下してしまう。
【0006】
メガネ方式および裸眼方式には、前述のようにそれぞれ一長一短があるが、共通の課題として視聴位置の問題がある。3D映像は、左右にずれた2つの2D映像を見せて、一種の目の錯覚を利用することにより、実際には存在しない位置に物体が存在するように人間に錯覚を起こさせ仮想の画像を視認させるのであるが、2つの2D映像のずれ量が画面との距離や角度に対して不適切であると、視認を続けることによって疲労が発生する。例えば、ハイビジョンテレビでは、画面の高さの3倍の距離だけ画面から離れた位置を適正な視認位置としているが、前述のメガネ方式を適用した場合、この位置での視差角を1度と設定したとき、視距離(画面から視認位置までの距離)を変えると、視差角は表1のように変わってしまう。
【0007】
【表1】

【0008】
もちろん、距離が適切であっても斜めから見ると台形ひずみが大きくなるため、できるだけ正面からの視認が望まれる。
【0009】
裸眼方式については、その原理上、視聴位置の影響はメガネ方式よりも大きく、適切な視認位置から距離や角度がずれると、視差バリアやレンチキュラが適切に機能しなくなり、映像が立体ではなく単なる2重像に見えだしてしまう。
【0010】
これらの要因から、3D映像を快適に視聴するには、好適な位置で視聴することが重要であることが理解できる。
【0011】
完全に不適切な視聴位置ならば、視認者は、違和感を覚え自ら位置を修正しようと行動する。しかしながら、視認者は、少々好適な視聴位置からずれていても、そのずれが無意識のうちに脳によって修正されるため、ずれが生じていることに気がつかない場合がある。映像に熱中しているときは、さらにその傾向が顕著になるので、このような状態で視認し続けると、人間の脳は、矛盾のない正しい映像を得ようとして上記のような映像補正にパワーを消費する。この結果、視認者は、知らないうちに高いストレスや疲労が蓄積して、頭痛等の体調不良を生じることがある。
【0012】
このような不都合を解消するため、特許文献1には、ぶれた映像を見ないように、視聴位置が不適切である場合に3D表示を停止し、かつ録画を開始するという技術が開示されている。特許文献1に記載された装置は、視差バリア方式等のディスプレイを持つ携帯電話等の放送受信可能な小型情報端末装置において、放送データのみを対象として視認位置が不適切であると判定された場合に、3D放送の録画を開始し、3D画像を録画しながら、その3D画像を2D画像に変換して表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−296118号公報(2009年12月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載された装置では、視認位置が不適切と判定されたら番組の途中から録画を始めるという動作が行われる。しかしながら、このような動作は、視認者が正しい位置で映像の視認を継続したいという意志を持っておれば、その意志に反しているので、好ましくない。
【0015】
また、上記の装置は、一度不適切な視認位置にあると判定したら、それ以降の番組を録画し続け、2D映像を表示している合間に不連続に3D放送の録画映像の追っかけ再生を繰り返すだけである。しかしながら、上記のような自動録画ではなく、通常に録画して後に録画映像を再生する場合、視認位置の判定をすることができない。このため、視認者は、再生した3D映像を不適切な位置で視認していても、その状態を知ることができない。
【0016】
上記の端末装置では、視認者が3D放送の画像を視認できる適正範囲から外れていることにより3D放送を録画したことを示すアイコンを表示する。視認者は、このアイコンの表示により、適正範囲から外れていることを認識することができるので、情報端末装置の表示画面に視線を向けるように、視認位置を変更すればよい。しかしながら、適正範囲の広い据え置き型のテレビシステムにおいては、アイコンの表示だけでは、適正範囲に入るにはどのように移動すればよいかわからない。このため、視認者は、方向および距離を予測して移動しなければならない。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、3D映像を録画することなく、視認者が容易に適正範囲で3D映像を視認できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る3D映像表示装置は、表示画面に対する視認者の視認位置を検出するセンサと、検出された前記視認位置が予め設定された3D映像を適正に視認できる適正範囲の外側にあるか否かを判定する位置判定手段と、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されたときに視認者に対して警告を発報する警告手段とを備えた3D映像表示装置において、上記の課題を解決するために、警告と同時または警告の後に、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されたときに視認者に対して前記適正範囲への移動方法を提示する提示手段を備えていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成では、3D映像を視認する場合において、位置判定手段により、センサにて検出された視認位置が適正範囲の外側にあると判定されると、警告手段により、視認者にそのことが警告される。これにより、視認者は、映像に熱中していても、警告により適正範囲で視認していないことを知ることができる。その警告方法としては、例えば、映像において絵や文字などによる報知や、LEDのようなインジケータによる報知が挙げられる。また、3D映像を視認するためのシャッターメガネを用いる場合は、シャッターメガネの動作を停止して、3D映像を視認できなくすることで警告してもよい。
【0020】
上記のように視認者に警告した上で、さらに、提示手段により、適正範囲への移動方法が視認者に提示される。移動方法は、例えば、前後左右のいずれかに移動することが提示される。これにより、視認者は、移動方向を容易に把握することができ、迷うことなく適正範囲へ移動することができる。
【0021】
移動方法の提示は、映像における表示またはインジケータの点灯により行なうことが好ましい。映像における表示としては、文字、絵、記号などを用いることができる。また、インジケータの点灯としては、色の異なる複数のLEDを用いることができ、点灯色によって移動方向を特定することができる。
【0022】
視認者が、警告や移動方法の提示に従わず、適正範囲外での視認を継続していれば、視認者にストレスを与えるなどの悪影響が及ぶ。この不都合を回避するため、3D映像表示装置は、前記警告手段による警告の発報後または前記提示手段による移動方法の提示後、前記位置判定手段により、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されると、3D表示を2D表示に切り替える切替手段を備えることが好ましい。これにより、視認者が警告や移動方法の提示に従わなかった場合は、切替手段によって強制的に3D表示から2D表示に切り替えられる。それゆえ、視認者は、適正範囲外での視認を継続したい場合でも、悪影響を受けることがない。
【0023】
また、切替手段が、3D表示を2D表示に切り替えた後、前記位置判定手段により、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されると、2D表示を3D表示に切り替えるようにしてもよい。これにより、視認者が警告や移動方法の提示に従って適正範囲に移動すると、3D表示に戻されて3D映像の視認が可能となる。
【0024】
複数の視認者がいることが想定されるので、健康上の観点から、一人でも適正範囲外で視認することは好ましくない。そこで、前記位置判定手段は、複数の視認者の全てについて、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあるか否かを判定し、前記提示手段は、視認者のうち一人でも前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されると、移動方法を提示することが好ましい。これにより、表示画面に近すぎたり離れすぎたりしている視認者や、表示画面に対する傾斜角度が大きい方向から視認している視認者は、自分が適正範囲にいないことを容易に把握することができる。
【0025】
視認者の位置が適切であるかどうか判断するためには、適正範囲として、表示画面から視認者まで距離(視認距離)および表示画面の法線と視認者が表示画面に向ける視線とのなす角度(視認角)が必要である。そこで、前記センサは、視認者を撮影するイメージセンサと、当該イメージセンサから出力される視認者の撮影画像から視認者の顔画像を抽出する画像処理装置とを含み、前記位置判定手段は、前記顔画像の位置およびサイズに基づいて、前記視認位置が前記適正範囲にあるか否かを判定することが好ましい。これにより、位置判定手段は、撮影画像から抽出された視認者の顔画像に基づいて、顔画像のサイズから表示画面に対する遠近を判定したり、顔画像の位置から画角に対するずれを判定したりして、視認者の位置判定を適正に行なうことができる。
【0026】
立体視が完成していない6歳以下の幼児が3D映像を視認することは、不適切であるので避けるべきである。そこで、前記センサは、視認者を撮影するイメージセンサと、当該イメージセンサから出力される視認者の撮影画像から視認者の顔画像を抽出する画像処理装置とを含み、3D映像表示装置は、前記顔画像に基づいて、視認者の顔の特徴を解析することにより、当該視認者が幼児であるか否かを判定する幼児判定手段と、当該視認者が幼児であると判定されると、3D表示を2D表示に切り替える切替手段とを備えていることが好ましい。これにより、幼児判定手段によって、視認者が幼児であると判定された場合には、3D表示が切替手段によって強制的に2D表示に切り替えられるので、幼児の視認者に悪影響が及ぶことはない。
【0027】
また、前記切替手段が、3D表示を2D表示に切り替えた後、前記幼児判定手段により幼児であると判定される視認者がいなくなると、2D表示を3D表示に切り替えるようにすれば、視認者から幼児をはずすことで、3D表示に戻すことができる。
【0028】
大型の3D映像表示装置では、前述のように視認角を検出することが視認位置を判定することに対して有効な手段となる。しかしながら、3Dカメラや携帯型メディアプレーヤ等の小型の3D映像表示装置では、通常、視差バリア方式やレンチキュラ方式が用いられることから、基本的に一人が表示画面に正対して見る場合に限られるため、視認距離のみ検出できればよい。また、消費電力の観点からも、視認者の位置を検出するために、常時イメージセンサを用いて視認者を撮影し、画像処理することは実用上困難である。そこで、前記センサが、前記表示画面と視認者との間の距離を測定する測距センサからなることが好ましい。小型の3D映像表示装置では、消費電力が小さい赤外線方式の測距センサを搭載すれば、視認者が画面に対して正対しているか否か、視認距離が適正であるか否かを消費電力を抑えながら判定することができる。
【0029】
視認距離には、目の間隔等に起因する若干の個人差が反映されるので、基準となる視認距離を視認者に応じて予め設定しておくことが好ましい。このため、3D映像表示装置は、前記適正範囲を規定する前記表示画面と視認者との間の基準距離の上限値および下限値を視認者に応じて記憶するメモリを備え、前記位置判定手段は、前記センサにより検出された前記視認位置が、前記メモリに記憶された前記上限値および前記下限値の範囲の外側にあるか否かを判定すればよい。これにより、上記の上限値と下限値とで規定される基準の視認距離の範囲が、視認者に応じて容易に設定することができる。
【0030】
前述の3D映像表示装置は、警告や適正範囲への移動方法の提示により、視認者に対して適正範囲への移動を促しているが、視認者に対して表示画面を動かすことで、視認者を適正範囲に位置させることもできる。
【0031】
このため、本発明の他の3D映像表示装置は、表示画面を水平方向に回動させる回動手段を備えた3D映像表示装置において、上記の課題を解決するために、表示画面に対する視認者の視認位置を検出するセンサと、検出された前記視認位置が予め設定された3D映像を適正に視認できる画角の範囲外にあるか否かを判定する角度判定手段と、前記視認位置が前記画角の範囲外にあると判定されたときに、前記視認位置が前記画角の範囲にあるように前記表示画面の回動方向および回動量を算出する回動量算出手段とを備え、前記回動手段が、前記表示画面を前記回動方向に前記回動量で回動させることを特徴としている。
【0032】
上記の構成では、位置判定手段により、センサにて検出された視認位置が適正範囲の外側にあると判定されると、回動量算出手段により、表示画面の回動方向および回動量が算出される。そして、回動手段により、表示画面が回動方向に回動量だけ回動する。これにより、視認者は、適正範囲にいなくても、わざわざ移動することなく、適正範囲における視認が可能となる。
【0033】
上記の構成では、水平方向の適正範囲に位置していない視認者に対して表示画面を回動させて、視認者を適正範囲に位置させることができる。しかしながら、上記の構成では、視認者が視認距離において適正範囲に位置していない場合は、表示画面を視認者に対して近づけたり遠ざけたりすることができないので、視認者が移動しなければ、その位置を補正することはできない。そこで、検出された前記視認位置が予め設定された3D映像を適正に視認できる距離の適正範囲の外側にあるか否かを判定する距離判定手段と、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されたときに視認者に対して前記適正範囲への移動方法を提示する提示手段を備えていることが好ましい。これにより、視認距離について適正な位置にいない視認者に対して適正範囲への移動方法が提示されるので、視認位置の補正をより確実にすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る3D映像表示装置は、以上のように構成されているので、3D映像を録画することなく、視認者が容易に適正範囲で3D映像を視認することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態1に係る3D液晶テレビの外観構成を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る3D液晶テレビの他の外観構成を示す正面図である。
【図3】上記3D液晶テレビのシステム構成を示すブロック図である。
【図4】上記3D液晶テレビの表示画面にサブ画面が表示された状態を示す正面図である。
【図5】上記3D液晶テレビおよび本発明の実施形態2に係る2D液晶テレビの視認者の位置に応じた表示動作を示すフローチャートである。
【図6】上記3D液晶テレビのイメージセンサに内蔵されるIPSによる視認者の顔検出画像の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る3D液晶テレビの外観構成を示す正面図である。
【図8】図7の3D液晶テレビのシステム構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る3D液晶テレビの外観構成を示す正面図である。
【図10】図9の3D液晶テレビのシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[実施形態1]
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0037】
図1は、本実施形態の3D液晶テレビ1の外観構成を示す。図2は、本実施形態の3D液晶テレビ1の他の外観構成を示す。図3は、3D液晶テレビ1のシステム構成を示す。
【0038】
本実施形態の3D映像表示機器である3D液晶テレビ1(3D映像表示装置)は、アクティブシャッター方式を採用しており、アクティブシャッターメガネを動作させるための駆動信号を出力する。視認者は、同期信号に合わせて動作するアクティブシャッターメガネを装着することにより、3D映像を視聴することができる。
【0039】
〔3D液晶テレビの外観構成〕
図1に示すように、3D液晶テレビ1は、本体2と、台座3とを備えており、本体2が台座3に支持される構造となっている大型のテレビである。本体2は、例えば液晶パネルからなる表示画面4が組み込まれている。また、本体2における表示画面4の下側の中央部には、イメージセンサ5が配置されている。
【0040】
図2に示すように、3D液晶テレビ1は、本体2における表示画面4の上側の中央部には、例えばLEDからなるカラーインジケータ6〜8(警告手段,提示手段)が配置されていてもよい。カラーインジケータ6は、表示画面4に対して視認者が近づきすぎであることを赤色で表示する。カラーインジケータ7は、表示画面4に対して視認者が離れすぎであることをオレンジ色で表示する。カラーインジケータ8は、表示画面4に対して視認者が斜めに寄りすぎていることを黄色で表示する。
【0041】
なお、カラーインジケータ6〜8の表示色は、上記の一例に限定されず、適宜変更が可能であることはもちろんである。
【0042】
〔3D液晶テレビのシステム構成〕
図3に示すように、3D液晶テレビ1は、表示画面4と、イメージセンサ5と、カラーインジケータ6〜8と、チューナ9と、判定処理部10と、表示処理部11と、表示制御部12と、シャッター制御部13とを備えている。また、3D液晶テレビ1はメモリ14を備えている。
【0043】
イメージセンサ5(センサ)は、例えば画角±30度を有する2MピクセルのCMOSイメージセンサである。このイメージセンサ5は、3D映像信号がチューナ9により出力されるときに、チューナ6から出力される3D表示信号がアクティブになると、表示画面4の前面にいる視認者の顔の撮影を開始する。また、イメージセンサ5には、画像処理を行なうISP(Image Signal Processor)51が内蔵されている。ISP51(画像処理装置)は、イメージセンサ5から出力された撮影映像信号に規定のアルゴリズムにしたがって所定の処理を施す。ISP51は、例えば上記の処理として、撮影画像に含まれる視認者の顔の画像を抽出して顔検出画像を生成する。
【0044】
判定処理部10は、ISP51から出力された顔検出画像に基づいて、視認者が適正に3D映像を視認できるように各種の判定を行なう。このために、判定処理部10は、検出部101、位置判定部102および幼児判定部103を有している。
【0045】
検出部101は、ISP51から出力された顔検出画像に基づいて、視認者の顔のサイズおよび左右位置を検出する。視認者の顔は、顔検出画像において、表示画面4に近いと大きく写り、表示画面4から遠いと小さく写る。これにより、視認者の顔画像のサイズによって、表示画面4から視認者までの距離(視認距離)が定まる。また、視認者の左右位置によって、表示画面4の法線と視認者が表示画面4に向ける視線とのなす角度(視認角)が定まる。
【0046】
視認距離が適正に3D映像を視認できる基準値(基準距離)の範囲内にあるか否かは、顔画像のサイズによって判定することができる。また、視認各が適正に3D映像を視認できる画各の範囲内にあるか否かは、顔画像の左右位置によって判定することができる。そこで、位置判定部102(位置判定手段)は、顔検出画像における視認者の顔のサイズおよび左右位置に基づいて、表示画面4に対する視認者の位置を特定し、その特定した位置が3D映像の視認に適した適正範囲の外側にあるか否かを判定する。
【0047】
位置判定部102は、具体的には、視認者が適正範囲外に位置しているという判定を次のようにして行なう。
(1)視認者が表示画面4に対して近すぎる場合
顔画像が所定の上限基準サイズ(基準距離の上限値)よりも大きければ、視認者が表示画面4に対して近づきすぎであると判定して近接信号を出力する。
(2)視認者が表示画面4に対して離れすぎている場合
顔画像が所定の下限基準サイズ(基準距離の下限値)よりも小さければ、視認者が表示画面4に対して離れすぎであると判定して離間信号を出力する。
(3)視認者が画角の範囲に位置している場合
顔画像が顔検出画像において画角を表す所定の左右の適正範囲にあれば、視認者が画角の範囲に位置すると判定する。
(4)視認者が画角の範囲外に位置している場合
顔画像が上記の適正範囲外にあれば、視認者が画角の範囲外に位置すると判定して画角外信号を出力する。
【0048】
このように、位置判定部102は、視認距離および視認角について、適正範囲の内外のいずれに存在するかを判定する。位置判定部102は、視認者が上記の適正範囲外に存在すると判定した場合、すなわち、近接信号、離間信号または画角外信号の少なくともいずれか1つが出力された場合、表示処理部11における後述のメッセージ表示部111およびサブ画像表示部112に対して、適正範囲外であることの警告を発報するように、範囲外警告信号を与える。
【0049】
また、位置判定部102は、視認者が適正範囲外に存在すると判定した場合、それから所定時間経過した後にも、検出部101からの新たな検出出力に基づいて視認者の位置を判定した結果、適正範囲外における視認者の存在を認めると、メッセージ表示部111およびサブ画像表示部112に対して、適正範囲への移動を示唆する動作をするように、発生した近接信号、離間信号または画角外信号の少なくともいずれか1つを与える。
【0050】
さらに、位置判定部102は、視認者が適正範囲外に位置すると判定した場合、それから所定時間経過した後にも、検出部101からの新たな検出出力に基づいて視認者の位置を判定した結果、適正範囲外における視認者の存在を認めると、後述する2D/3D切替部113に、3D映像から2D映像に表示を切り替えるための2D切替信号を与える。位置判定部102は、その後、2D切替信号を出力した後、適正範囲外における視認者の存在を認めないと、2D/3D切替部113に、2D映像から3D映像に表示を切り替えるための3D切替信号を与える。
【0051】
位置判定部102は、カラーインジケータ6〜8を用いて、視認者に対して、視認位置についての警告を発したり、適正範囲への移動を指示したりする場合、カラーインジケータ6〜8に点灯信号を出力する。具体的には、位置判定部102は、視認者が表示画面4に対して近づきすぎであると判定したときに、カラーインジケータ6に対して点灯信号として近接信号を出力する。また、位置判定部102は、視認者が表示画面4に対して離れすぎであると判定したときに、カラーインジケータ7に対して点灯信号として離間信号を出力する。さらに、位置判定部102は、視認者が画角の範囲にいないと判定したときに、カラーインジケータ8に対して点灯信号として画角外信号を出力する。
【0052】
ここで、適正範囲を規定する前述の顔画像の上限基準サイズおよび下限基準サイズと画角は、予め標準的な値が用意されており、この値はメモリ14に記憶されている。位置判定部102は、メモリ14からこれらの値を読み出して、検出部101による検出値と比較する。
【0053】
また、3D映像を視認するための適正な視認距離の範囲は、視認者の目の間隔等に起因する若干の個人差があるため、上限基準サイズおよび下限基準サイズもその個人差の影響を受ける。そこで、視認者の顔の特徴に応じた上限基準サイズおよび下限基準サイズをメモリ14に予め登録しておいてもよい。具体的には、予め視認者の顔画像とともに、当該視認者の顔(特に目の間隔)の特徴に応じた上限基準サイズおよび下限基準サイズをメモリ14に記憶させておく。このような登録処理は、判定処理部10が行ってもよい。
【0054】
位置判定部102は、ISP51からの顔検出画像における顔画像と、メモリ14に登録されている顔画像と比較し、両者が一致すると、当該顔画像に対応する上限基準サイズおよび下限基準サイズをメモリ14から読み出して、判定処理に用いる。これにより、各視認者に適した判定処理を行なうことができる。また、位置判定部102は、両者が一致しないと、撮影された視認者の顔画像が登録されていないと判断し、標準の上限基準サイズおよび下限基準サイズをメモリ14から読み出して、判定処理に用いる。
【0055】
幼児判定部103(幼児判定手段)は、位置判定部102により、全ての視認者が適正範囲に存在していると判定されたとき、検出部101からの顔検出画像に基づいて、視認者が幼児であるか否かを判定する。具体的には、幼児判定部103は、顔検出画像の顔画像に現れる顔の特徴情報(顔のサイズに対する目や鼻の位置関係等)と、予め登録されている年齢に応じた顔の特徴情報との比較によって視認者の年齢を推定するという公知の解析技術を利用して、各視認者が6歳以下であるか否かを判定する。
【0056】
おおよそ6歳以下の幼児は、立体視の能力が完成しておらず、3D映像を視認することが不適切である。このため、幼児判定部103は、6歳以下の視認者が存在すると判定した場合、メッセージ表示部111に対して、視認を止める警告動作をするように、停止警告信号を与える。また、幼児判定部103は、6歳以下の視認者が存在すると判定した場合、それから所定時間経過した後にも、検出部101からの新たな検出出力に基づいて各視認者の顔画像から年齢を推定した結果、6歳以下の視認者の存在を認めると、2D/3D切替部113に3D映像から2D映像に表示を切り替えるように2D切替信号を与える。
【0057】
表示処理部11は、チューナ9からの受信映像信号に所定の処理を施して、当該受信映像信号を、表示映像信号として表示制御部12に出力する。また、表示処理部11は、表示制御部12に出力する表示映像信号から同期信号を抽出してシャッター制御部13に出力する。
【0058】
表示処理部11は、視認者に、3D映像を適正に視認するための警告を発し、また適正範囲への移動を指示するために、メッセージ表示部111、サブ画像表示部112および2D/3D切替部113を有している。
【0059】
メッセージ表示部111(警告手段)は、位置判定部102からの範囲外警告信号を受けると、視認者が適正範囲外に位置していることを報知するための予め登録されているメッセージをメモリ(図示せず)から読み出して映像の所定の位置に重畳する。また、メッセージ表示部111(提示手段)は、位置判定部102からの近接信号、離間信号および画角外信号を受けると、それぞれの信号に応じて予め登録されている視認者に移動を指示する(移動方法を示す)ためのメッセージをメモリから読み出して映像の所定の位置に重畳する。さらに、メッセージ表示部111は、幼児判定部103からの停止警告信号を受けると、視認の停止を警告するための予め登録されているメッセージを上記のメモリから読み出して映像の所定の位置に重畳する。
【0060】
サブ画像表示部112(提示手段)は、検出部101によって検出された視認者の顔画像を所定のサイズに調整して映像の所定の位置に重畳する。また、サブ画像表示部112は、位置判定部102による反転結果に応じてサブ画像内の顔画像の表示状態を適正範囲の内側と外側とで異ならせる。サブ画像表示部112は、例えば図4に示すように、サブ画像Sにおいて、適正範囲外にある顔F1,F3の表示色と適正範囲にある顔F2の表示色とを異ならせる。
【0061】
2D/3D切替部113(切替手段)は、位置判定部102からの2D切替信号を受けて、表示処理部11から出力する表示映像信号を3D映像から2D映像に切り替えたり、位置判定部102からの3D切替信号を受けて、表示映像信号を2D映像から3D映像に切り替えたりする。また、2D/3D切替部113は、幼児判定部103からの2D切替信号を受けて、表示映像信号を3D映像から2D映像に切り替えたり、幼児判定部103からの3D切替信号を受けて、表示映像信号を2D映像から3D映像に切り替えたりする。
【0062】
表示制御部12は、表示処理部11から出力された表示映像信号を表示画面4に出力する。また、表示制御部12は、表示画面4の駆動を制御するクロック信号等の各種の制御信号を表示画面4に出力する。
【0063】
表示画面4は、液晶パネル等の平板型パネルが好適に用いられ、パネル本体を駆動するデータドライバおよび走査ドライバを備えている。データドライバは、上記の表示映像信号が表示データとして与えられると、クロック信号のタイミングでサンプリングされてパネル本体の各データ線に出力する。走査ドライバは、クロック信号のタイミングで、表示データを書き込む画素をライン毎に順次選択する。
【0064】
シャッター制御部13は、表示処理部11により表示映像信号から抽出された同期信号に基づいて、アクティブシャッターメガネ15を駆動するための駆動信号を生成し、当該駆動信号をアクティブシャッターメガネ15に無線(赤外線通信)で送信する。具体的には、シャッター制御部13は、3D映像が表示される場合、左側映像の表示映像信号の同期信号に基づいて、アクティブシャッターメガネ15の左側のシャッターをONし、右側のシャッターをOFFする駆動信号を出力する。一方、シャッター制御部13は、右側映像の表示映像信号の同期信号に基づいて、アクティブシャッターメガネ15の右側のシャッターをONし、左側のシャッターをOFFする駆動信号を出力する。シャッター制御部13は、上記の駆動信号を交互に出力することにより、アクティブシャッターメガネ15の駆動を制御する。
【0065】
また、シャッター制御部13は、上記の通常のシャッター制御機能以外に、表示画面4において3D映像が表示された状態で、強制的に2D映像が見えるようにアクティブシャッターメガネ15を制御する機能を有する。具体的には、シャッター制御部13は、位置判定部102からの範囲外警告信号を受けて、アクティブシャッターメガネ15の両方のシャッターを同時に開閉するという2D強制駆動信号をシャッター制御部13に与える。これは、右側または左側のいずれか一方の表示映像信号の同期信号を取り込み、他方の表示映像信号の同期信号を取り込まないことで行われる。このように、アクティブシャッターメガネ15を強制的に2D映像表示させる制御をすることにより、視認者が適正範囲外に位置しているという警告を、後述のメッセージ表示に代えてすることができる。
【0066】
アクティブシャッターメガネ15は、3D駆動信号を受信すると、左右の液晶シャッターを交互に開閉駆動する。また、アクティブシャッターメガネ15は、上記の2D強制駆動信号を受信すると、左右の液晶シャッターを同時に開閉し、これにより、液晶パネル4には3D映像が表示されているが、視認者には2D映像が見えるようになる。
【0067】
〔3D液晶テレビの視認者の位置に応じた表示動作〕
3D液晶テレビ1の視認者の位置に応じた表示動作について説明する。図5は、この表示動作の手順を示すフローチャートである。
【0068】
《メッセージ表示による視認者への告知》
まず、メッセージ表示によって、視認者に適正範囲外に存在することを警告し、適正範囲への移動を指示する動作について説明する。
【0069】
図5に示すように、3D表示が開始すると、まず、イメージセンサ5によるセンシングが行われる(ステップS1)。これにより、ISP51は、イメージセンサ5による撮影画像から視認者の顔の画像を抽出して顔検出画像を出力する。
【0070】
続いて、判定処理部10により、上記の顔検出画像に基づいて、視認者が適正範囲にいるか否かが判定される(ステップS2)。ここで、視認者が適正範囲外にいると判定された場合、表示処理部10により、その判定結果を警告として発報するように、警告内容が表示される(ステップS3)。
【0071】
ステップS2において、位置判定部102は、ISP51からの顔検出画像における顔画像のサイズおよび左右位置に基づいて、表示画面4に対する視認者の位置を特定し、その特定した位置が適正範囲外にあると判定すると、範囲外警告信号を出力する。
【0072】
ここで、視認者が適正範囲に存在するか否かの判定の具体例について説明する。図6は、IPS51による顔検出画像の一例を示す。
【0073】
図6は、顔F1についての視認距離(表示画面4から顔までの距離)が1mであり、顔F2,F3についての視認距離が3mである場合を示している。また、顔F2,F3は顔F1の約1/3のサイズに撮影されている。また、画角+15度の位置はラインL2(右側)で示され、画角−15度の位置はラインL1(左側)で示される。これらのラインL1,L2の間の範囲では、視認角が±15度以内であるが、その範囲外では視認角が15度を超える。
【0074】
ここで、適正範囲が、視認距離について表示画面4から2m以上かつ4m以内であり、視認角について±15度以内と設定されているとする。この場合、顔F1は表示画面4に近づきすぎており、不適切な視認位置にあることがわかる。また、顔F2は視認距離および視認角が適切な視認位置にあることがわかる。さらに、顔F3は視認距離が適切であるが、視認角が大きく、表示画面4に対して大きく傾斜しているために不適切な視認位置であることがわかる。このような判定処理は、例えば1回/秒程度行なえば十分である。
【0075】
ステップS3において、メッセージ表示部111は、位置判定部102からの範囲外警告信号を受けて、視認者が適正範囲外にいることを警告するメッセージを映像に重畳する。これにより、表示映像には、上記のメッセージがテロップ表示される。また、ステップS3において、サブ画像表示部112は、範囲外警告信号を受けて、サブ画像を生成し、当該サブ画像を映像に重畳する。この結果、表示処理部11から出力される表示映像信号が表示画面4に供給されると、表示画面4には、図4に示すように、サブ画像Sを含む映像が表示される。
【0076】
このサブ画像Sでは、サブ画像表示部112の処理により、適正範囲にある顔F2と、適正範囲外にある顔F1,F3とで表示状態が異なっている。例えば、色で表示状態を異ならせる場合、適正範囲にある顔F2は緑色で表示され、適正範囲外にある顔F1,F3は赤色で表示される。これにより、特に、複数の視認者が3D液晶テレビ4を視認する場合、誰が適正範囲外にいるかを容易に把握することができる。
【0077】
あるいは、ステップS3において、シャッター制御部13が、アクティブシャッターメガネ15に強制的に2D表示をさせるように制御することにより、視認者が適正範囲外に存在していることを警告してもよい。アクティブシャッターメガネ15は、この制御により、3D映像が見えるように液晶シャッターを駆動している状態から、2D映像に見えるように動作を切り替える。これにより、全ての視認者が適正範囲にいる状態から、一人の視認者でも適正範囲外に出ると、見える3D映像が2D映像に切り替わるので、視認者の誰かが適正範囲外に出たことがわかる。
【0078】
警告の発報後、再びイメージセンサ5によるセンシングが行われ(ステップS4)、判定処理部10により、イメージセンサ5からの顔検出画像に基づいて、視認者が適正範囲に存在しているか否かが判定される(ステップS5)。ここで、視認者がまだ適正範囲外にいると判定された場合、表示処理部11により、移動方法を提示するように、適正範囲への移動を指示する(移動方法を示す)メッセージが表示される(ステップS6)。
【0079】
ステップS6において、メッセージ表示部111は、位置判定部102からの近接信号、離間信号および画角外信号の少なくともいずれか1つを受けて、視認者に適正範囲に移動するように指示するメッセージを映像に重畳する。これにより、表示された映像には、上記のメッセージがテロップ表示される。このとき、例えば、近接信号を受けた場合、「画面に対して近すぎる人がいますので離れてください。」というメッセージが表示され、離間信号を受けた場合、「画面に対して離れすぎている人がいますので近づいてください。」というメッセージが表示される。また、画角外信号を受けた場合、「斜めから見ている人がいますので、正面に寄ってください。」というメッセージが表示される。
【0080】
また、上記のようなメッセージを表示している状態で、前述のサブ画像Sを表示するようにしておけば、移動が必要な視認者を容易に把握することができる。サブ画像Sでは、顔F1の視認者が近づきすぎであり、顔F3の視認者が斜め方向にいることがわかる。
【0081】
移動方法の提示後、イメージセンサ5によるセンシングが行われ(ステップS7)、判定処理部10により、イメージセンサ5からの顔検出画像に基づいて、視認者が適正範囲に存在しているか否かが判定される(ステップS8)。ここで、視認者がまだ適正範囲外にいると判定された場合、判定処理部10により、3Dの表示を中止する指示が出力されて(ステップS9)、処理がステップS1に戻される。
【0082】
このとき、位置判定部102が2D/3D切替部113に2D切替信号を与えることにより、2D/3D切替部113は3D映像から2D映像に切り替える処理を行なう。これにより、表示画面4には2D映像が表示されて、3D映像の表示が中止される。
【0083】
ステップS2,S5,S8において、全ての視認者が適正範囲にいると判定された場合、3D映像が表示される(ステップS10)。このとき、すでに3D映像が表示されている場合、その状態が維持される。また、2D映像が表示されている場合、2D/3D切替部113は、位置判定部102からの3D切替信号を受けて、2D映像から3D映像に切り替える処理を行なう。これにより、表示画面4には3D映像が表示されて、3D映像の表示が実行される。
【0084】
このように、ステップS1〜S10の処理では、適正範囲外に視認者に存在している場合、まずはそのことを報知する警告を発し、まだ適正範囲外に視認者の存在が認められる場合、移動方法を示して適正範囲への移動を指示した上で、それでも適正範囲外に視認者の存在が認められる場合には、3D映像の表示を停止させている。これにより、視認者が容易に適正範囲で3D映像を視認できるようになる。
【0085】
そして、3D映像の表示が維持されている状態から、幼児判定部103により、視認者に6歳以下の幼児がいるか否かが判定される(ステップS12)。ここで、視認者に該当する幼児がいると判定された場合、表示処理部10により、その判定結果が警告として表示される(ステップS13)。
【0086】
ステップ12において、幼児判定部103は、検出部101からの顔検出画像に基づいて、視認者の年齢が6歳以下の幼児であるか否かを判定し、幼児であると判定すると、停止警告信号をメッセージ表示部111に与える。ステップS13において、メッセージ表示部111は、停止警告信号を受けて、視認者に幼児がいること警告するメッセージを映像に重畳する。これにより、表示映像には上記のメッセージがテロップ表示される。この状態では、まだ3D映像の表示が維持されている。
【0087】
さらに、ステップS4,S7と同様にしてイメージセンサ5によるセンシングが行われ(ステップS13)、再び幼児判定部103により、視認者に6歳以下の幼児がいるか否かが判定される(ステップS14)。ここで、まだ視認者に該当する幼児がいると判定された場合、3D映像の表示を停止するように、処理をステップS9に移行させる。
【0088】
ステップS11,S14において、視認者に該当する幼児がいないと判定された場合、3D映像の表示が維持されたまま処理がステップS1に戻される。
【0089】
このように、ステップS11〜S14の処理では、視認者に幼児がいる場合、まずは幼児の視認を止めさせる警告を発し、それでも幼児の視認が認められる場合には、3D映像の表示を停止させている。これにより、幼児に対して悪影響の及ぶ立体視を容易に回避することができる。
【0090】
なお、上記の例では、適正位置への移動を指示した後に、視認者が適正範囲に移動しなかった場合に、3D表示を2D表示に切り替えている。しかしながら、これに限らず、警告後に、3D表示を2D表示に切り替えてもよい。
【0091】
また、メッセージを表示することにより視認者に報知しているが、メッセージ(文字)に限らず、絵、記号等で報知してもよい。
【0092】
《インジケータ点灯による視認者への告知》
続いて、インジケータ点灯によって視認者に適正範囲への移動を指示する動作について説明する。
【0093】
この例では、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS2〜S4の処理が省略され、ステップS1に続いてステップS5の処理が行われる。
【0094】
ステップS5において、カラーインジケータ6〜8は、位置判定部102からの点灯信号を受けてそれぞれ点灯する。具体的には、カラーインジケータ6は、位置判定部102からの近接信号を受けて赤色で点灯し、近すぎる視認者がいることを報知する。また、カラーインジケータ7は、位置判定部102からの離間信号を受けてオレンジ色で点灯し、離れすぎる視認者がいることを報知する。さらに、カラーインジケータ8は、位置判定部102からの画角外信号を受けて黄色で点灯し、斜めから見ている視認者がいることを報知する。
【0095】
上記のように、カラーインジケータ6〜8により、適正範囲外の視認者に適正範囲へ移動するように指示する(移動方法を示す)ことにより、前述のメッセージを表示する場合のように、表示映像の視認がメッセージ表示で遮られることを回避できる。また、上記の例では、ステップS3の警告表示の処理が省略されているが、カラーインジケータ6〜8の点灯が警告表示を兼ねている。したがって、この場合は、カラーインジケータ6〜8の点灯により、警告および移動指示が同時に行われることになる。
【0096】
なお、上記のようなメッセージを表示している状態で、前述のサブ画像Sを表示するようにしてもよい。これにより、移動が必要な視認者を容易に把握することができる。
【0097】
[実施形態2]
本発明の他の実施形態について図5,図7,図8に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0098】
図7は、本実施形態の3D液晶テレビ21の外観構成を示す。図8は、3D液晶テレビ21のシステム構成を示す。
【0099】
なお、本実施形態において、実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0100】
実施形態1では、大型の3D液晶テレビ1について説明したが、本実施形態では、小型の3D液晶テレビ21について説明する。
【0101】
図7に示す3D映像表示機器である3D液晶テレビ21(3D映像表示装置)は、メガネが不要である視差バリア方式またはレンチキュラ方式の3D表示方式を採用している。したがって、3D液晶テレビ21の視認者は1人が想定されており、画面に対して正面に向かうことが前提となっている。このため、視認者が適正範囲に位置しているか否かについては、画面から適正な視認距離で視認しているか否かのみを判定すればよい。
【0102】
〔3D液晶テレビの外観構成〕
図7に示すように、3D液晶テレビ21は、本体22に、例えば液晶パネルからなる表示画面23が組み込まれる構造となっている。また、本体22における表示画面23の上側の中央部には、測距センサ24が配置されている。さらに、本体22における表示画面23の側方には、LEDからなるカラーインジケータ25,26が配置されている。
【0103】
カラーインジケータ25は、表示画面23に対して視認者が近づきすぎであることを赤色で表示する。カラーインジケータ26は、表示画面23に対して視認者が離れすぎであることをオレンジ色で表示する。
【0104】
なお、カラーインジケータ25,26の表示色は、上記の一例に限定されず、適宜変更が可能であることはもちろんである。
【0105】
〔3D液晶テレビのシステム構成〕
図7に示すように、3D液晶テレビ21は、チューナ9、表示画面23と、測距センサ24と、カラーインジケータ25,26と、判定処理部27と、メモリ28と、表示処理部29と、表示制御部30とを備えている。
【0106】
測距センサ24は、光学的に測定対象物との間の距離を測定するセンサであり、発光素子と、受光素子と、回路部とを有している。この測距センサ24は、発光素子(赤外発光ダイオード)からの赤外光が視認者によって反射された反射光を受光素子で受光し、受光素子から出力される受光信号に回路部で信号処理を施すことにより、測定した距離をデジタルの検出値として出力する。
【0107】
判定処理部27は、測距センサ24から出力された検出値に基づいて、視認者が適正な視認距離の範囲に存在しているか否かを判定する。このため、判定処理部27として、コンパレータ等の汎用の回路を用いることができる。上記の視認距離は、メモリ28に前述のメモリ14(実施形態1)と同様に記憶されている上限基準サイズおよび下限基準サイズによって規定される。したがって、判定処理部27は、この上限基準サイズおよび下限基準サイズをメモリ28から読み出して前記の検出値と比較することにより判定を行なう。メモリ28には、標準の上限基準サイズおよび下限基準サイズだけでなく、視認者に応じた上限基準サイズおよび下限基準サイズも記憶されている。これにより、各視認者に適した判定処理を行なうことができる。
【0108】
この判定処理部27は、位置判定部102は、視認者が上記の適正範囲外に存在すると判定した場合、すなわち、近接信号また離間信号が出力された場合、表示処理部29における後述のメッセージ表示部291に対して、適正範囲外であることの警告動作をするように、範囲外警告信号を与える。
【0109】
また、判定処理部27は、視認者が適正範囲外に存在すると判定した場合、それから所定時間経過した後にも、測距センサ24からの新たな検出値に基づいて視認者の位置を判定した結果、適正範囲外における視認者の存在を認めると、メッセージ表示部291に対して、適正範囲への移動を示唆する動作をするように、発生した近接信号または離間信号を与える。
【0110】
さらに、判定処理部27は、視認者が適正範囲外に存在すると判定した場合、それから所定時間経過した後にも、測距センサ24からの新たな検出値に基づいて視認者の位置を判定した結果、適正範囲外における視認者の存在を認めると、2D/3D切替部292に3D映像から2D映像に表示を切り替えるための2D切替信号を与える。判定処理部27は、その後、2D切替信号を出力した後、適正範囲外における視認者の存在を認めないと、2D/3D切替部292に2D映像から3D映像に表示を切り替えるための3D切替信号を与える。
【0111】
判定処理部27は、カラーインジケータ25,26を用いて、視認者に対して、視認位置についての警告を発したり、適正範囲への移動を指示したりする場合、カラーインジケータ25,26に点灯信号を出力する。具体的には、判定処理部27は、視認者が表示画面23に対して近づきすぎであると判定したときに、カラーインジケータ25に対して点灯信号として近接信号を出力する。また、判定処理部27は、視認者が表示画面23に対して離れすぎであると判定したときに、カラーインジケータ26に対して点灯信号として離間信号を出力する。
【0112】
3D映像の適正な視認位置は、実施形態1の3D液晶テレビ1のような通常の据え置き型のテレビシステムでは、表示画面に対する角度と表示画面からの距離とで定まるが、本実施形態のような小型の3D液晶テレビ21や携帯型の端末装置では、表示画面と対面して映像を視認するため、距離のみで定まる。しかしながら、前述の特許文献1に記載された装置は、テレビ放送の受信が可能な携帯型の端末装置であるにも関わらず、表示画面からの距離だけでなく、表示画面に対する角度についても視認者の適正位置を判定しており、不要な判定機能を備えていると言える。したがって、3D液晶テレビ21のような小型の映像表示装置では、上記のように視認距離のみで視認者の位置を判定することが好ましい。
【0113】
表示処理部29は、チューナ27からの受信映像信号に所定の処理を施して、当該受信映像信号を、表示映像信号として表示制御部30に出力する。また、表示処理部29は、視認者が適正な視認距離の範囲外に存在している場合、3D液晶テレビ1と同様にして警告や移動を指示するメッセージを表示するように、視認者に、3D映像の視認のための警告を発し、また適正範囲への移動を指示するために、メッセージ表示部291および2D/3D表示部292を有している。
【0114】
メッセージ表示部291は、判定処理部27からの範囲外警告信号を受けると、視認者が適正範囲外に存在していることを報知するための予め登録されているメッセージをメモリ(図示せず)から読み出して映像の所定の位置に重畳する。また、メッセージ表示部291は、判定処理部27からの近接信号または離間信号を受けると、それぞれに応じて予め登録されている視認者に移動を指示するメッセージをメモリから読み出して映像の所定の位置に重畳する。
【0115】
2D/3D切替部292は、判定処理部27からの2D切替信号を受けて、表示処理部29から出力する表示映像信号を3D映像から2D映像に切り替える。また、2D/3D切替部292は、判定処理部27からの3D切替信号を受けて、表示映像信号を2D映像から3D映像に切り替える。
【0116】
表示制御部30は、表示処理部29から出力された表示映像信号を表示画面23に出力する。また、表示制御部30は、表示画面23の駆動を制御するクロック信号等の各種の制御信号を表示画面23に出力する。
【0117】
表示画面23は、液晶パネル等の平板型パネルが好適に用いられ、3D液晶テレビ1における前述の表示画面4と同等に構成されているが、小型サイズである。
【0118】
〔3D液晶テレビの視認者の位置に応じた表示動作〕
3D液晶テレビ1の視認者の位置に応じた表示動作について説明する。
【0119】
《メッセージ表示による視認者への告知》
まず、メッセージ表示によって、視認者に適正範囲外に存在することを警告し、適正範囲への移動を指示する動作について説明する。
【0120】
この場合、図5に示すフローチャートのステップS1〜S10の処理が行われる。まず、測距センサ24によるセンシングが行われる(ステップS1)。
【0121】
続いて、判定処理部27により、測距センサ24からの検出値に基づいて、視認者が3D映像を適正に視認できる適正範囲に存在しているか否かが判定される(ステップS2)。ここで、視認者が適正範囲外にいると判定された場合、表示処理部29により、その判定結果が警告として表示される(ステップS3)。
【0122】
ステップS2において、判定処理部27は、測距センサ24の検出値、すなわち表示画面23と視認者との間の距離が適正範囲にないと判定すると、範囲外警告信号を出力する。
【0123】
その後、再び測距センサ24によるセンシングが行われ(ステップS4)、判定処理部27により、測距センサ24の検出値に基づいて、視認者が3適正範囲に存在しているか否かが判定される(ステップS5)。ここで、視認者がまだ適正範囲外にいると判定された場合、表示処理部29により、適正範囲への移動を指示する(移動方法を示す)メッセージが表示される(ステップS6)。
【0124】
ステップS6において、メッセージ表示部291は、判定処理部27からの近接信号または離間信号を受けて、視認者に適正範囲に移動するように指示するメッセージを映像に重畳する。これにより、表示された映像には、上記のメッセージがテロップ表示される。このとき、例えば、近接信号を受けた場合、「画面に対して近すぎですので離れてください。」というメッセージが表示され、離間信号を受けた場合、「画面に対して離れすぎですので近づいてください。」というメッセージが表示される。
【0125】
さらに、測距センサ24によるセンシングが行われ(ステップS7)、判定処理部27により、測距センサ24の検出値に基づいて、視認者が適正範囲に位置しているか否かが判定される(ステップS8)。ここで、視認者がまだ適正範囲外にいると判定された場合、判定処理部27により、3Dの表示を中止する指示が出力されて(ステップS9)、処理がステップS1に戻される。
【0126】
このとき、判定処理部27が2D/3D切替部292に2D切替信号を与えることにより、2D/3D切替部292は3D映像から2D映像に切り替える処理を行なう。これにより、表示画面23には2D映像が表示されて、3D映像の表示が中止される。
【0127】
ステップS2,S5,S8において、視認者が適正範囲に位置していると判定された場合、3D映像が表示されて(ステップS10)、処理がステップS1に戻される。ステップS10において、3D映像が表示されている場合、その状態が維持される。また、2D映像が表示されている場合、2D/3D切替部292は、判定処理部27からの3D切替信号を受けて、2D映像から3D映像に切り替える処理を行なう。これにより、表示画面23には3D映像が表示されて、3D映像の表示が実行される。
【0128】
なお、上記の例では、メッセージを表示することにより視認者に報知しているが、メッセージ(文字)に限らず、絵、記号等で報知してもよい。
【0129】
《インジケータ点灯による視認者への告知》
続いて、インジケータ点灯によって視認者に適正範囲へ移動を指示する動作について説明する。
【0130】
この例では、図5に示すフローチャートにおいて、上記のステップS1〜S10からなる処理においてステップS2〜S4の処理が省略され、ステップS1に続いてステップS5の処理が行われる。
【0131】
ステップS5において、カラーインジケータ25,26は、判定処理部27からの点灯信号を受けてそれぞれ点灯する。具体的には、カラーインジケータ25は、判定処理部27からの近接信号を受けて赤色で点灯し、視認者が近すぎることを報知する。また、カラーインジケータ26は、判定処理部27からの離間信号を受けてオレンジ色で点灯し、離れすることを報知する。
【0132】
上記のように、カラーインジケータ25,26により、適正範囲外の視認者に適正範囲へ移動するように指示する(移動方法を示す)ことにより、前述のメッセージを表示する場合のように、表示映像の視認がメッセージ表示で遮られることを回避できる。
【0133】
以上のように、本実施形態の3D液晶テレビ31は、小型機器であるため位置変更が容易であり、常に表示画面23を直視する状態が普通であるので、斜め方向から見ることはない。そこで、測距センサ24によって表示画面23と視認者との間の距離を測定し、判定処理部27によって、視認者が表示画面23から適正範囲に位置しているか否かを判定した結果に基づいて、適正範囲外で視認していることを警告表示し、表示画面23に対して近づくか離れるかを指示するようにしている。
【0134】
具体的には、適正範囲外に視認者がいる場合、まずはそのことを報知する警告をメッセージにて発し、まだ適正範囲外に視認者の存在が認められる場合、適正範囲への移動をメッセージにて指示した上で、それでも適正範囲外に視認者の存在が認められる場合には、3D映像の表示を停止させている。これにより、実施形態1の3D液晶テレビ1と同様、視認者が容易に適正範囲で3D映像を視認できるようになる。
【0135】
なお、カラーインジケータ25,26を表示する例では、ステップS3の警告表示の処理が省略されているが、カラーインジケータ25,26の点灯が警告表示を兼ねている。
【0136】
なお、上記の例では、カラーインジケータ25,26を用いて、視認者に近づきすぎであるか、離れすぎであるかを報知しているが、報知の手法としては、これに限定されない。例えば、1つのカラーインジケータによって、視認者が適正範囲に位置していることを例えば青色で点灯させてもよい。この手法では、カラーインジケータが点灯していないとき、視認者が適正範囲へ移動する方向が把握できないが、視認者自身が表示画面23に近づきすぎであるか離れすぎであるかは表示画面23との位置関係から認識することは可能であるので、十分実用に供する。
【0137】
[実施形態3]
本発明のさらに他の実施形態について図9,図10に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0138】
なお、本実施形態において、実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0139】
図9は、本実施形態の3D液晶テレビ31の外観構成を示す。図10は、3D液晶テレビ31のシステム構成を示す。
【0140】
実施形態1,2では、視認者が適正範囲に移動するように指示する3D液晶テレビ1,21について説明したが、本実施形態では、3D液晶テレビ31が適正範囲となるように視認者に対して表示画面を移動させる構成について説明する。
【0141】
〔3D液晶テレビの外観構成〕
図9に示すように、3D液晶テレビ31(3D映像表示装置)は、図1に示す3D液晶テレビ1と同様、表示画面4が組み込まれた本体2と、台座3とを備えており、さらに、スィーベル機構32を備えている。
【0142】
スィーベル機構32(回動手段)は、本体2を台座3に対して所定の角度範囲で表示画面4の左右方向に回動させる機構である。このスィーベル機構32は、図示はしないが、駆動源としてのモータ、本体2を回動自在に指示する駆動軸、駆動源の駆動力を駆動軸に伝達するギヤ等からなる伝達機構を有している。
【0143】
〔3D液晶テレビのシステム構成〕
図10に示すように、3D液晶テレビ21は、図1に示す3D液晶テレビ1と同様、イメージセンサ5と、チューナ9とを備えており、さらに、判定処理部33と、駆動制御部34と、スィーベル機構32とを備えている。
【0144】
判定処理部33は、ISP51から出力された顔検出画像に基づいて、視認者が適正に3D映像を視認できるように本体2を移動させることが必要であるか否かを判定する。このために、判定処理部33は、検出部331、位置判定部332および駆動量算出部333を有している。
【0145】
検出部331は、前述の3D液晶テレビ1における検出部101と同等の機能を有しており、ISP51から出力された顔検出画像に基づいて、視認者の顔のサイズおよび左右位置を検出する。
【0146】
位置判定部332(距離判定手段,角度判定手段)は、3D液晶テレビ1における位置判定部102と同等の機能を有しており、顔検出画像における視認者の顔のサイズおよび左右位置に基づいて、表示画面4に対する視認者の位置を特定し、その特定した位置が3D映像の視認に適した適正範囲(表示画面4に対する距離および画角の範囲)にあるか否かを判定する。また、位置判定部332は、上記の機能に加えて、視認者が適正範囲外に存在していると判定した場合、当該視認者の顔の中心と顔検出画像の中心とのずれ量およびずれ方向を検出する機能を有する。具体的には、位置判定部332は、視認者の顔の中心座標と顔検出画像の中心座標との水平方向の差を算出し、右方向のずれ量を正の値として出力し、左方向のずれ量を負の値として出力する。
【0147】
駆動量算出部333(回動量算出手段)は、位置判定部332からのずれ量およびずれ方向に応じたスィーベル機構32のモータの駆動量および駆動方向をデータとして生成する。駆動量は本体2(表示画面4)の回動量に対応しており、駆動方向は本体2の回動方向に対応している。
【0148】
駆動制御部34は、駆動量算出部333からのデータに基づいてモータの駆動電圧を生成する。具体的には、駆動制御部34は、データの値に応じた電圧値と、データの符号に応じた電圧値の符号を決定する。
【0149】
スィーベル機構32(回動手段)は、駆動制御部34からの駆動電圧に基づいてモータを正転方向(右方向)または逆転(左方向)に回動させる。スィーベル機構32は、このモータの駆動力を伝達機構を介して駆動軸に伝達することにより、本体2をモータの駆動量および駆動方向に応じて本体2を回動させる。
【0150】
〔3D液晶テレビの本体駆動動作〕
上記のように構成される3D液晶テレビ31の本体2を駆動する動作について説明する。
【0151】
まず、判定処理部33において、イメージセンサ5が視認者を撮影することにより、ISP51から視認者の顔検出画像が出力されると、検出部331により、この顔検出画像に基づいて視認者の顔画像の左右位置が出力される。すると、位置判定部332により、検出された視認者の顔画像の左右位置に基づいて、視認者が適正範囲外に位置しているか否かが判定される。視認者が適正範囲外に位置していると判定された場合、位置判定部332により、当該視認者の顔画像の中心と顔検出画像の中心とのずれ量が検出される。そして、駆動量算出部333により、上記のずれ量に基づいて駆動量のデータが出力される。
【0152】
さらに、駆動制御部34により、上記のデータに基づいて駆動電圧を発生すると、スィーベル機構32により、この駆動電圧に基づいてモータを駆動し、本体2を駆動量に応じた角度と、ずれ方向および方向に回動させる。
【0153】
例えば、視認者の顔画像が顔検出画像の中心から右方向にずれて適正範囲外にある場合、位置判定部332により、ずれ方向が右であると判定されるので、本体2は視認者が位置する右方向に回動する。これにより、視認者は、自らが動かずとも、左右方向の適正範囲に位置し、顔検出画像の中心とほぼ一致する表示画面4の中心と正面で向かい合うようになる。
【0154】
なお、上記の構成では、視認者が表示画面4の中心と正面で向かい合うように本体2を回動させているがこれに限定されない。例えば、少なくとも視認者が左右方向の適正範囲に位置するように、モータの駆動量および駆動方向を算出し、これらに基づいて本体2を回動させてもよい。
【0155】
〔3D液晶テレビによる移動指示〕
上記の構成では、本体2を左右方向の適正範囲に位置していない視認者に対して本体2を回動させて、視認者を適正範囲に位置させることができる。しかしながら、上記の構成では、視認者が表示画面4に対する距離において適正範囲に位置していない場合は、表示画面4を視認者に対して近づけたり遠ざけたりすることができないので、視認者が移動しなければ、その位置を補正することはできない。
【0156】
このため、3D液晶テレビ31に実施形態1の3D液晶テレビ1で用いた表示処理部11を適用して、表示画面4に対する位置を補正するように視認者に移動を指示してもよい。このように構成する場合、位置判定部332によって位置判定部102と同様に得られる近接信号および離間信号を用いて、カラーインジケータ6,7を点灯させたり、メッセージを表示させたりする。これにより、視認者は、表示画面4に対する距離が適正範囲外に位置している場合、カラーインジケータ6,7の点灯状態や、表示されるメッセージに応じて、表示画面4に近づいたり離れたりすることで位置を調整し、適正範囲に入ることができる。
【0157】
なお、上記のように構成した場合でも、3D液晶テレビ1のメモリ14と同様のメモリを備えていてもよい。これにより、メモリに予め登録された上限基準サイズおよび下限基準サイズを位置判定部332の判定処理に用いることができる。
【0158】
また、視認者が複数存在する場合、どの視認者に対して本体2を回動させるか特定する必要がある。この場合、位置判定部332が、視認者の中でほぼ中央に位置する視認者を顔検出画像より特定し、その視認者に対してずれ量およびずれ方向を検出するようにしてもよい。これにより、左右方向の適正範囲に極力多くの視認者が位置するように表示画面4を向けることができる。これでも、視認者の何人かが左右方向の適正範囲から外れる場合は、3D液晶テレビ1で用いた表示処理部11を適用して、表示画面4に対して位置を補正するように視認者に促してもよい。
【0159】
[実施形態の総括]
前述の各実施形態の3D液晶テレビ1,21,31における判定処理部10,27,33、表示処理部11,29および駆動制御部34の各ブロック(判定処理部10,27,33、表示処理部11,29および駆動制御部34)は、ハードウェアロジックによって構成されてもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現されてもよい。
【0160】
すなわち、上記の各ブロックは、それぞれの機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、制御プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、3D液晶テレビ1,21,31に供給し、CPUが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによっても、達成可能である。
【0161】
上記の記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/BD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0162】
また、3D液晶テレビ1,21,31を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記のプログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0163】
なお、各実施形態の3D液晶テレビ1,21,31は、表示画面4,23として液晶パネルを用いているが、本発明は、液晶テレビに限らず、プラズマディスプレイパネルや有機ELパネル等の他の表示パネルを用いた3Dテレビであってもよい。また、本発明は、テレビに限らず、テレビ受信機能を備えていないモニタ装置にも適用できることはもちろんである。
【0164】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、3D映像の視認に適した適正範囲外に位置する視認者に対して、適正範囲への移動を案内するので、3Dテレビ等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0166】
1 3D液晶テレビ
4 表示画面
5 イメージセンサ(センサ)
6 カラーインジケータ(警告手段,提示手段)
7 カラーインジケータ(警告手段,提示手段)
8 カラーインジケータ(警告手段,提示手段)
10 判定処理部
11 表示処理部
13 シャッター制御部
14 メモリ
15 アクティブシャッターメガネ
21 3D液晶テレビ
23 表示画面
24 測距センサ
25 カラーインジケータ(警告手段,提示手段)
26 カラーインジケータ(警告手段,提示手段)
27 判定処理部
28 メモリ
29 表示処理部
31 3D液晶テレビ
32 スィーベル機構(回動手段)
33 判定処理部
34 駆動制御部
51 ISP(画像処理装置)
101 検出部
102 位置判定部(位置判定手段)
103 幼児判定部(幼児判定手段)
111 メッセージ表示部(警告手段,提示手段)
112 サブ画像表示部(提示手段)
113 2D/3D切替部(切替手段)
291 メッセージ表示部(提示手段)
292 2D/3D切替部(切替手段)
331 検出部
332 位置判定部(距離判定手段,角度判定手段)
333 駆動量算出部(回動量算出手段)
F1 顔
F2 顔
F3 顔
L1 ライン
L2 ライン
S サブ画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に対する視認者の視認位置を検出するセンサと、検出された前記視認位置が予め設定された3D映像を適正に視認できる適正範囲の外側にあるか否かを判定する位置判定手段と、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されたときに視認者に対して警告を発報する警告手段とを備えた3D映像表示装置において、
警告と同時または警告の後に、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されたときに視認者に対して前記適正範囲への移動方法を提示する提示手段を備えていることを特徴とする3D映像表示装置。
【請求項2】
前記提示手段は、映像における表示またはインジケータの点灯により移動方法を提示することを特徴とする請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項3】
前記警告手段による警告の発報後または前記提示手段による移動方法の提示後、前記位置判定手段により、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されると、3D表示を2D表示に切り替える切替手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項4】
前記切替手段は、3D表示を2D表示に切り替えた後、前記位置判定手段により、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されると、2D表示を3D表示に切り替えることを特徴とする請求項3に記載の3D映像表示装置。
【請求項5】
前記位置判定手段は、複数の視認者の全てについて、前記視認位置が前記適正範囲の外側にあるか否かを判定し、
前記提示手段は、視認者のうち一人でも前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されると、移動方法を提示することを特徴とする請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項6】
前記センサは、視認者を撮影するイメージセンサと、当該イメージセンサから出力される視認者の撮影画像から視認者の顔画像を抽出する画像処理装置とを含み、
前記位置判定手段は、前記顔画像の位置およびサイズに基づいて、前記視認位置が前記適正範囲にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の3D映像表示装置。
【請求項7】
前記センサは、視認者を撮影するイメージセンサと、当該イメージセンサから出力される視認者の撮影画像から視認者の顔画像を抽出する画像処理装置とを含み、
3D映像表示装置は、
前記顔画像に基づいて、視認者の顔の特徴を解析することにより、当該視認者が幼児であるか否かを判定する幼児判定手段と、
当該視認者が幼児であると判定されると、3D表示を2D表示に切り替える切替手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項8】
前記切替手段は、3D表示を2D表示に切り替えた後、前記幼児判定手段により幼児であると判定される視認者がいなくなると、2D表示を3D表示に切り替えることを特徴とする請求項7に記載の3D映像表示装置。
【請求項9】
前記センサは、前記表示画面と視認者との間の距離を測定する測距センサからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の3D映像表示装置。
【請求項10】
前記適正範囲を規定する前記表示画面と視認者との間の基準距離の上限値および下限値を視認者に応じて記憶するメモリを備え、
前記位置判定手段は、前記センサにより検出された前記視認位置が、前記メモリに記憶された前記上限値および前記下限値の範囲の外側にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の3D映像表示装置。
【請求項11】
表示画面を水平方向に回動させる回動手段を備えた3D映像表示装置において、
表示画面に対する視認者の視認位置を検出するセンサと、
検出された前記視認位置が予め設定された3D映像を適正に視認できる画角の範囲外にあるか否かを判定する角度判定手段と、
前記視認位置が前記画角の範囲外にあると判定されたときに、前記視認位置が前記画角の範囲にあるように前記表示画面の回動方向および回動量を算出する回動量算出手段とを備え、
前記回動手段は、前記表示画面を前記回動方向に前記回動量で回動させることを特徴とする3D映像表示装置。
【請求項12】
検出された前記視認位置が予め設定された3D映像を適正に視認できる距離の適正範囲の外側にあるか否かを判定する距離判定手段と、
前記視認位置が前記適正範囲の外側にあると判定されたときに視認者に対して前記適正範囲への移動方法を提示する提示手段を備えていることを特徴とする請求項11に記載の3D映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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