説明

4−アルコキシフラン−2(5H)−オン又は4−アリールアルコキシフラン−2(5H)−オンから出発して4−アミノブタ−2−エノリド類を製造する新規方法

本発明は、式(I)で表される4−アミノブタ−2−エノリド化合物を製造する方法に関し、ここで、該方法は、ブレンステッド酸の存在下で、式(II)で表される4−アルコキシフラン−2(5H)−オン化合物又は4−アリールアルコキシフラン−2(5H)−オン化合物と式(III)で表されるアミン(ここで、R、R及びAは、明細書中で示されている定義を有する)を変換することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アルコキシフラン−2(5H)−オン又は4−アリールアルコキシフラン−2(5H)−オンから出発して4−アミノブタ−2−エノリド類を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換されている特定の4−アミノブタ−2−エノリド化合物は、EP−A−0539588及びWO 2007/115644から、殺虫効果を有する化合物として知られている。それらは、さまざまな方法で合成することができる。
【0003】
かくして、例えば、「Heterocycles Vol. 27, No. 8, 第1907〜1923頁 (1988)」及びEP−A−0539588には、スキーム1に示されているように無水テトロン酸(1)とアミン(2)からエナミノカルボニル化合物(3)を調製することができるということが記載されている。しかしながら、この調製方法は、該無水テトロン酸(1)を費用効率の高い方法で製造することができないので、エナミノカルボニル化合物を大規模に工業的に製造するのには全く適していない。
【0004】
スキーム1
【0005】
【化1】

今日まで、テトロン酸は、比較的大量には市販されていない。このことは、上記で記載されている調製方法において使用するために、テトロン酸をアセト酢酸エステルから出発して臭素化を介し、次に水素化に付すことによって調製しなければならないことを意味する(cf. Synthetic Communication, 11(5), 第385〜390頁 (1981))。テトロン酸の比較的低い収率(通常、40%未満)及びテトロン酸は無水でなければならないという条件によって、コストが高くなる。
【0006】
テトロン酸を調製するためのさらなる調製方法が、「Swiss Patent Specification 503722」に記載されている。4−クロロアセト酢酸エステルを芳香族アミンと反応させて、3−アリールアミノクロトノラクトンを生成させ、ここで、テトロン酸は、その後鉱酸で処理することによって遊離させる。そのテトロン酸は、高真空下で蒸留することによってのみ単離することができる。このことは、この調製方法を大規模に工業的に使用するのに対して不利である。
【0007】
EP−A−0153615には、同様に、テトロン酸を調製するための多段階調製方法が記載されており、ここで、該調製方法は、2,4−ジクロロアセト酢酸エステルから出発し、そして、大規模な工業的製造には全く適していない。この調製方法は、多くの複雑な段階を必要とし、そして、所望されるテトロン酸を65%という比較的中程度の収率で生成する。
【0008】
マロン酸エステルと塩化クロロアセチルから出発するテトロン酸のさらなる調製方法が、「J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1(1972), 9/10, 第1225〜1231頁」から知られている。この調製方法は、所望される目標化合物を生成するが、その収率は、わずかに43%である。
【0009】
「Tetrahedron Letters, No. 31, 第2683及び2684頁 (1974)」には、とりわけ、テトロン酸の調製について記載されており、それは、スキーム2に示されている。ここで使用される出発物質は、アセチレンジカルボン酸ジメチルである。
【0010】
スキーム2
【0011】
【化2】

この調製方法の不利点は、僅かに30%という低い全収率及び高価な出発物質(例えば、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH))を使用することである。
【0012】
WO 2007/115644には、特定の4−アミノブタ−2−エノリド類の調製について記載されている。例えば、4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](3,3−ジクロロプロパ−2−エン−1−イル)アミノ]フラン−2(5H)−オンの調製について記載されており、これは、4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]アミノ]フラン−2(5H)−オンを3−ブロモ−1,1−ジクロロプロパ−1−エンと反応させることによるか、又は、4−[[2−フルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンを2−クロロ−5−クロロメチルピリジンと反応させることによる。当該反応は、好ましくは、リチウム又はナトリウムの水素化物を用いて実施する。ここでも、これらの基体は、高価であり、そして、安全性の理由から取扱いには必然的に困難さが伴う。
【0013】
置換されている4−アミノブタ−2−エノリド類を調製するためのさらなる調製方法が、Mowafakらによって、「J. Heterocyclic Chem., 21, 第1753〜1754頁 (1984)」に記載されている。この調製方法は、テトロン酸メチルから出発し、ここで、所望される化合物は、アミンとの反応の結果として調製される。しかしながら、その中に記載されているメトキシ基の「マイケル付加」による該記載されている交換は、電子豊富な環状アミン又は第1級アミンを用いてのみ実施可能であり、このことは、本特許出願の実験の節における実施例によって実証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0539588号
【特許文献2】国際公開第2007/115644号
【特許文献3】スイス特許明細書第503722号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0153615号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Heterocycles Vol. 27, No. 8, 第1907〜1923頁 (1988)
【非特許文献2】Synthetic Communication, 11(5), 第385〜390頁 (1981)
【非特許文献3】J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1(1972), 9/10, 第1225〜1231頁
【非特許文献4】Tetrahedron Letters, No. 31, 第2683及び2684頁 (1974)
【非特許文献5】J. Heterocyclic Chem., 21, 第1753〜1754頁 (1984)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、上記従来技術から出発して、式(I)で表される4−アミノブタ−2−エノリド化合物を高収率及び充分に高い純度で生成し、且つ、容易に、高い費用効率で実施することが可能な、該4−アミノブタ−2−エノリド化合物の調製方法を提供することである。さらに、高い費用効率で製造することが可能であり且つ取扱いが用意であるテトロン酸誘導体が、当該調製方法において使用されるべきである。
【0017】
本発明者らは、特に本発明による4−アミノブタ−2−エノリド化合物が良好な収率及び高い純度で得られる(このことは、直接的な反応生成物の複雑な後処理及び/又は精製が一般に必要ではないということを意味する)という理由により、上記不利点を回避し且つ容易に高い費用効率で実施することが可能な4−アミノブタ−2−エノリド化合物の調製方法を見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、式(I):
【0019】
【化3】

〔式中、R及びAは、以下で定義されている化学基である〕
で表される4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製するための下記において記載されている調製方法を提供する。
【0020】
式(I)で表される4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製するための本発明による調製方法は、式(II)
【0021】
【化4】

で表される4−アルコキシフラン−2(5H)−オン化合物又は4−アリールアルコキシフラン−2(5H)−オンを、ブレンステッド酸の存在下で、式(III)
【0022】
【化5】

〔上記式中、
は、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C2−12−アルケニル、C2−12−ハロアルケニル、C2−6−アルキニル、C3−8−シクロアルキル、C3−8−シクロアルキル−C1−6−アルキル、C3−8−ハロシクロアルキル、C1−12−アルコキシ、C1−6−アルキルオキシ−C1−6−アルキル、C3−8−ハロシクロアルキル−C1−6−アルキル又はアリール−C1−6−アルキルであり、Rは、好ましくは、C1−6−アルキル、C1−6−ハロアルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−ハロアルケニル、C2−6−アルキニル、C3−8−シクロアルキル、C3−8−シクロアルキル−C1−6−アルキル、C3−8−ハロシクロアルキル、C3−8−ハロシクロアルキル−C1−6−アルキル又はC1−6−アルキルオキシ−C1−6−アルキルであり、特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、プロピレン、プロピレン、ビニル、アリル、プロパルギル、シクロプロピル、C1−6−アルキルオキシ−C1−6−アルキル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル又は2−フルオロシクロプロピルであり、極めて特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−プロパ−2−エニル、n−プロパ−2−イニル、シクロプロピル、メトキシエチル、2−フルオロエチル又は2,2−ジフルオロエチルであり;
は、C1−12−アルキル、アリール−C1−6−アルキルであり、Rは、好ましくは、C−C−アルキル、アリール−C1−6−アルキルであり、特に好ましくは、ベンジル、メチル又はエチルであり;及び、
Aは、ピリダ−2−イル、ピリダ−4−イル若しくはピリダ−3−イル(ここで、これらは、6位において、F、Cl、Br、CH、CF又はOCFで置換されていてもよい)であるか、又は、ピリダジン−3−イル(ここで、これは、6位において、Cl又はCHで置換されていてもよい)であるか、又は、ピラジン−3−イル若しくは2−クロロピラジン−5−イルであるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(ここで、これは、2位において、Cl又はCHで置換されていてもよい)であるか、又は、ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリル若しくは1,2,5−チアジアゾリル(ここで、これらは、F、Cl、Br、CN、NO、C1−4−アルキル、C1−3−アルキルチオ、C1−3−アルキルスルホニルで置換されていてもよく、その際、ラジカルC1−4−アルキル、C1−3−アルキルチオ及びC1−3−アルキルスルホニルは、それぞれ、F及び/又は塩素で置換されている)であるか、又は、下記式
【0023】
【化6】

[ここで、
Xは、ハロゲン、C1−12−アルキル又はC1−12−ハロアルキルであり;及び、
Yは、ハロゲン、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C1−12−ハロアルコキシ、アジド又はCNである]
で表される置換ヘテロシクリルであり、
Aは、好ましくは、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−メチルピリダ−3−イル、6−トリフルオロメチルピリダ−3−イル、6−トリフルオロメトキシピリダ−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、6−メチル−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル、5,6−ジフルオロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ヨード−6−フルオロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−ヨード−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5,6−ジブロモピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ヨードピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−ヨードピリダ−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−ヨードピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−ブロモピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−ヨードピリダ−3−イルから選択される置換ヘテロシクリルであり、Aは、特に好ましくは、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5,6−ジブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルから選択される置換ヘテロシクリルであり、Aは、極めて特に好ましくは、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル及び5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イルから選択される置換ヘテロシクリルである〕
で表されるアミンと反応させることを含んでいる。
【0024】
驚くべきことに、本発明による反応又は変換において、式(II)で表される化合物中のアルコキシラジカルの式(III)で表されるアミンとの交換が極めて良好な収率で起こるということが分かった。ブレンステッド酸の非存在下においては、比較実施例において示されているように、変換は起こらない。さらに、当該反応条件下においてテトロン酸が二量化することが「J. Chem. Soc.(1947) 第1365頁」に従って予期されたが、そのような反応条件下においてテトロン酸が二量化しないということも驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による変換は、溶媒(希釈剤)の存在下で実施することができる。該溶媒は、好ましくは、当該反応混合物がその調製方法全体を通して容易に撹拌可能な状態にあるような量で使用する。本発明による調製方法又は変換を実施するのに適している溶媒は、当該反応条件下において不活性な全ての有機溶媒である。本発明によれば、溶媒は、純粋な溶媒の混合物も意味するものと理解される。
【0026】
本発明に従って適切な溶媒は、特に、以下のものである:ハロ炭化水素類、例えば、クロロ炭化水素類(例えば、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコールジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテル、並びに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのポリエーテル類)、ニトロ炭化水素類(例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、クロロニトロベンゼン、o−ニトロトルエン)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、メチルニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、m−クロロベンゾニトリル)、並びに、さらに、テトラヒドロチオフェンジオキシド及びジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ベンジルメチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジイソアミルスルホキシド;スルホン類、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン及びテトラメチレンスルホン、脂肪族、脂環式又は芳香族の炭化水素類(例えば、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、沸点が例えば40℃〜250℃の範囲内にある成分を有している所謂「ホワイトスピリット」、シメン、70℃〜190℃の沸点間隔(boiling interval)の範囲内にあるベンジン留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、ナフサ、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン;エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジブチル及び炭酸エチレン)、アミド類(例えば、ヘキサメチレンホスホロトリアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジン、オクチルピロリドン、オクチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリンジオン、N−ホルミルピペリジン、N,N’−1,4−ジホルミルピペラジン)、及び、脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノール)、又は、それらの混合物。
【0027】
本発明による調製方法又は該変換に関して、使用する溶媒は、好ましくは、ジオキサン、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、酢酸ブチル、DME、トルエン、メチル−THF、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、n−ヘプタン、イソブタノール、n−ブタノール、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル及びそれらの混合物である。
【0028】
使用する出発化合物に応じて、本発明による調製方法又は該変換は、希釈剤なしで、即ち、溶媒を添加することなく、実施することができる。
【0029】
本発明において適切なブレンステッド酸は、原理上は、全ての有機酸及び無機酸である。本発明において好ましいブレンステッド酸は、リン酸(HPO4)、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、フッ化水素酸(HF)、硫酸水素カリウム(KHSO)、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸である。本発明によれば、リン酸、硫酸、硫酸水素カリウム及びトリフルオロ酢酸が特に好ましい。
【0030】
該ブレンステッド酸は、無水形態又は含水形態のいずれかで、例えば、85%強度リン酸又は37%強度塩酸として、存在し得る。経済的な理由で、市販されている酸の濃度を使用するのが好ましい。
【0031】
使用するブレンステッド酸と式(III)で表されるアミンのモル比は、変更することができる。好ましくは、ブレンステッド酸と式(III)で表されるアミンのモル比は、約10:0.6〜約1:1.5の範囲内、特に、約5:0.9〜1:1.2の範囲内、とりわけ、約2:1〜約1:1.1の範囲内にある。
【0032】
本発明による調製方法は、一般に、減圧下で、又は、大気圧下で、又は、大気圧よりも高い圧力下で実施することができる。
【0033】
使用する温度は、使用する出発物質に応じて変更することができる。本発明による変換又は該調製方法は、約20℃〜約200℃の範囲内の温度で、好ましくは、約20℃〜約150℃の範囲内の温度で、実施することができる
使用する式(II)及び(III)で表される化合物の化学量論は、広い範囲内で変更することができる。式(II)で表される化合物と使用する式(III)で表されるアミンのモル比は、約1:0.5〜約1:10、特に、約1:1〜約1:6、とりわけ、約1:1.05〜約1:2であることができる。比較的大量の式(III)で表される化合物を使用することも原理上は可能であるが、それは、経済的な理由で不利である。
【0034】
当該変換を溶媒中で実施する場合、その溶媒は、反応終了後、蒸留によって除去することができる。これは、室温で又は高温下に、大気圧下又は減圧下で実施することができる。
【0035】
反応終了後、該ブレンステッド酸は、水で抽出することにより除去することができる。式(I)で表される所望の化合物の単離は、慣習的な方法で実施することができる。
【0036】
式(II)で表される4−メトキシフラン−2(5H)−オン誘導体は、一部の例では既知であり、及び/又は、慣習的な方法で調製することができる。
【0037】
式(II)〔式中、Rはメチルである〕で表される化合物の調製については、例えば、「J. Heterocyclic Chem. 21, 1753 (1984)」に記載されている。式(II)で表される化合物のさらなる調製については、例えば、「European Journal of Organic Chemistry (2004), (22), 第4582〜4595頁」に記載されている。
【0038】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「アルキル」は、単独でも、又は、さらなる用語と組み合わされても(例えば、ハロアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロシクロアルキルアルキル及びアリールアルキル)、分枝鎖又は非分枝鎖であり得る1〜12個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基のラジカルを意味するものと理解される。C1−12−アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル及びn−ドデシルである。これらのアルキルラジカルのうちで、C1−6−アルキルラジカルが特に好ましい。C1−4−アルキルラジカルが特に好ましく、メチル及びエチルがとりわけ好ましい。
【0039】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「アルケニル」は、少なくとも1の二重結合を有している直鎖又は分枝鎖のC2−12−アルケニルラジカル(例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタンジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1,3−ペンタンジエニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル及び1,4−ヘキサンジエニル)を意味するものと理解される。これらの中で、C2−6−アルケニルラジカルが好ましく、C2−4−アルケニルラジカルが特に好ましい。
【0040】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「アルキニル」は、少なくとも1の三重結合を有している直鎖又は分枝鎖のC2−12−アルキニルラジカル(例えば、エチニル、1−プロピニル及びプロパルギル)を意味するものと理解される。これらの中で、C2−6−アルキニルラジカルが好ましく、C3−4−アルキニルラジカルが特に好ましい。該アルキニルラジカルは、本発明においては、少なくとも1の二重結合も有し得る。
【0041】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「シクロアルキル」は、C3−8−シクロアルキルラジカル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル)を意味するものと理解される。これらの中で、C3−6−シクロアルキルラジカルが好ましい。
【0042】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「アリール」は、6〜14個の炭素原子を有する芳香族ラジカル(好ましくは、フェニル)を意味するものと理解される。
【0043】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「アリールアルキル」は、本発明に従って定義されている「アリール」ラジカルと「アルキル」ラジカルの組合せを意味するものと理解される(該ラジカルは、一般に、アルキル基を介して結合している)。それらの例は、ベンジル、フェニルエチル又はα−メチルベンジルであり、ベンジルが特に好ましい。
【0044】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、「ハロゲンで置換されているラジカル」(例えば、ハロアルキル)は、モノハロゲン化されているラジカル又は置換基の可能な最大数までポリハロゲン化されているラジカルを意味するもの理解される。ポリハロゲン化の場合、該ハロゲン原子は、同一であっても又は異なっていてもよい。ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、特に、フッ素、塩素又は臭素である。
【0045】
本明細書中において特に別途定義されていない場合、本発明に関連して、用語「アルコキシ」は、単独でも、又は、さらなる用語と組み合わされても(例えば、ハロアルコキシ)、この場合、O−アルキルラジカルを意味するものと理解され、ここで、用語「アルキル」は上記意味を有する。
【0046】
置換されていてもよいラジカル(optionally substituted radicals)は、1置換されていてもよいか又は多置換されていてもよく、多置換の場合、該置換基は、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0047】
下記実施例を参照して本発明について例証するが、本発明はそれら実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0048】
調製実施例
比較実施例(「J. Heterocyclic Chem., 21, 第1753〜1754頁 (1984)」に記載されているものと同様)
3mLのジオキサンの中に、0.3g(2.6mmol)の4−メトキシフラン−2(5H)−オン及び0.54g(2.6mmol)5gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル)−2,2−ジフルオロエチルアミンを最初に導入し、還流下に15時間加熱する。反応は、起こらない。
【0049】
本発明による実施例
3mLのジオキサンの中に、0.3g(2.6mmol)の4−メトキシフラン−2(5H)−オン及び0.54g(2.6mmol)のN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル)−2,2−ジフルオロエチルアミンを最初に導入し、1mLの32%強度塩酸を添加する。次いで、その混合物を還流下に8時間加熱する。その反応混合物を水に注ぎ入れ、塩化メチレンで2回抽出する。その塩化メチレン相を硫酸ナトリウムで脱水し、次いで、溶媒を減圧下に除去する。これにより、0.6gの4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](2,2−ジフルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンが得られる(収率79%)。
H−NMR(CDCl,298K)δ: 3.53(td,2H),4.52(s,2H),4.82(s,2H),4.83(s,1H),5.96(tt,1H),7.37(d,1H),7.55(dd,1H),8.27(d,1H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表される4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製する方法であって、式(II)
【化2】

で表される4−アルコキシフラン−2(5H)−オン化合物又は4−アリールアルコキシフラン−2(5H)−オン化合物を、ブレンステッド酸の存在下で、式(III)
【化3】

〔上記式中、
は、水素、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C2−12−アルケニル、C2−12−ハロアルケニル、C2−6−アルキニル、C3−8−シクロアルキル、C3−8−シクロアルキル−C1−6−アルキル、C3−8−ハロシクロアルキル、C1−12−アルコキシ、C1−6−アルキルオキシ−C1−6−アルキル、C3−8−ハロシクロアルキル−C1−6−アルキル又はアリール−C1−6−アルキルであり;
は、C1−12−アルキル又はアリール−C1−6−アルキルであり;及び、
Aは、ピリダ−2−イル、ピリダ−4−イル若しくはピリダ−3−イル(ここで、これらは、6位において、F、Cl、Br、CH、CF又はOCFで置換されていてもよい)であるか、又は、ピリダジン−3−イル(ここで、これは、6位において、Cl又はCHで置換されていてもよい)であるか、又は、ピラジン−3−イル若しくは2−クロロピラジン−5−イルであるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(ここで、これは、2位において、Cl又はCHで置換されていてもよい)であるか、又は、ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリル若しくは1,2,5−チアジアゾリル(ここで、これらは、F、Cl、Br、CN、NO、C1−4−アルキル、C1−3−アルキルチオ、C1−3−アルキルスルホニルで置換されていてもよく、その際、ラジカルC1−4−アルキル、C1−3−アルキルチオ及びC1−3−アルキルスルホニルは、それぞれ、F及び/又は塩素で置換されている)であるか、又は、下記式
【化4】

[ここで、
Xは、ハロゲン、C1−12−アルキル又はC1−12−ハロアルキルであり;及び、
Yは、ハロゲン、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C1−12−ハロアルコキシ、アジド又はCNである]
で表される置換ヘテロシクリルである〕
で表されるアミンと反応させることを含む、前記方法。
【請求項2】
化合物(III)において、
が、C1−6−アルキル、C1−6−ハロアルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−ハロアルケニル、C2−6−アルキニル、C3−8−シクロアルキル、C3−8−シクロアルキル−C1−6−アルキル、C3−8−ハロシクロアルキル、C3−8−ハロシクロアルキル−C1−6−アルキル又はC1−6−アルキルオキシ−C1−6−アルキルであり;及び、
Aが、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−メチルピリダ−3−イル、6−トリフルオロメチルピリダ−3−イル、6−トリフルオロメトキシピリダ−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、6−メチル−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル、5,6−ジフルオロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ヨード−6−フルオロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−ヨード−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5,6−ジブロモピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ヨードピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−ヨードピリダ−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−ヨードピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−ブロモピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−ヨードピリダ−3−イルから選択される;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブレンステッド酸が、リン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸水素カリウム、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
用いられる式(II)で表される化合物と式(III)で表されるアミンのモル比が1:0.5〜1:10である、請求項1〜3の1項に記載の方法。
【請求項5】
用いられるブレンステッド酸と式(III)で表されるアミンのモル比が約5:0.8〜約1:1.5の範囲内にある、請求項1〜4の1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515691(P2013−515691A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545264(P2012−545264)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070202
【国際公開番号】WO2011/076715
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512151078)バイエル・インテレクチユアル・プロパテイー・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【Fターム(参考)】