説明

4−クロロ−2−メチルピリジン中の2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンの除去方法

【課題】爆発性のある硝酸エチルを生成させることなく、4−クロロ−2−メチルピリジン中に不純物として含まれる2−クロロ−6−メチルピリジン、さらには2−クロロメチルピリジンを除去する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジン及び/又は2−クロロメチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンから2−クロロ−6−メチルピリジン及び/又は2−クロロメチルピリジンを除去するにあたり、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒中で当該4−クロロ−2−メチルピリジンを酸(但し、硝酸を除く。)と反応させて、生成する4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩を析出させることを特徴とする2−クロロ−6−メチルピリジン及び/又は2−クロロメチルピリジンの除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−クロロ−2−メチルピリジン中の2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンの除去方法に関する。4−クロロ−2−メチルピリジンは、医薬中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、4−クロロ−2−メチルピリジンの製造方法としては、2−メチルピリジン−N−オキシドとオキシ塩化リンとを反応させる方法が知られている。反応終了後、濃縮、抽出及び蒸留を経た粗生成物中には4−クロロ−2−メチルピリジン以外に不純物として2−クロロ−6−メチルピリジンが含有されていることが知られており、2−クロロ−6−メチルピリジンを除去する方法として、粗生成物をエタノール中で硝酸と反応させた後、4−クロロ−2−メチルピリジンを硝酸塩として晶析させて粗生成物から2−クロロ−6−メチルピリジンを除去する方法が記載されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上述の除去方法で使用される硝酸とエタノールは互いに反応し、爆発性の硝酸エチルを生成する恐れがあり、不純物である2−クロロ−6−メチルピリジンを除去する方法として、工業的に好ましい方法とはいえない。
【特許文献1】特表平5−503709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、爆発性のある硝酸エチルを生成させることなく、安全に4−クロロ−2−メチルピリジン中の2−クロロ−6−メチルピリジンを除去する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、2−クロロ−6−メチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンを、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒中で酸(但し、硝酸を除く。以下同じ。)と反応させて生成した4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩の結晶を析出させると、その後結晶を濾別して得られる濾液中に、不純物である2−クロロ−6−メチルピリジンの多くが残存して4−クロロ−2−メチルピリジンから除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
また、本発明者らが、2−メチルピリジン−N−オキシドとオキシ塩化リンを反応させた後、反応液を濃縮し、濃縮残渣にアンモニア水とトルエンを加えて抽出したところ、トルエン抽出液中には4−クロロ−2−メチルピリジン及び2−クロロ−6−メチルピリジン以外に2−クロロメチルピリジンも不純物として含まれていることが判明した。不純物として2−クロロメチルピリジンをさらに含有する4−クロロ−2−メチルピリジンを上記と同様にして酸と反応させて生成した4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩の結晶を析出させると、その後結晶を濾別して得られる濾液中に、2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンの多くが残存して4−クロロ−2−メチルピリジンから除去できることをも見出した。
【0007】
即ち、本発明は、不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンから2−クロロ−6−メチルピリジンを除去するにあたり、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒中で当該4−クロロ−2−メチルピリジンを酸と反応させて、生成する4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩を析出させることを特徴とする2−クロロ−6−メチルピリジンの除去方法、並びに不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンから2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンを除去するにあたり、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒中で当該4−クロロ−2−メチルピリジンを酸と反応させて、生成する4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩を析出させることを特徴とする2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンの除去方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、爆発性のある硝酸エチルを生成することなく、4−クロロ−2−メチルピリジン中に不純物として含まれる2−クロロ−6−メチルピリジン、さらには2−クロロメチルピリジンも選択的に除去でき、高純度の4−クロロ−2−メチルピリジンを得ることができるため、工業的利用性大なるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる4−クロロ−2−メチルピリジンは、通常、2−メチルピリジン−N−オキシドとオキシ塩化リンを反応させることにより得られるものであり、4−クロロ−2−メチルピリジン及び不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジンを含有するものである。4−クロロ−2−メチルピリジンには、クロロ化反応後の反応混合物、該反応混合物を濃縮後、適当な溶媒で抽出した抽出液又はその濃縮液、並びに抽出液又は濃縮液を蒸留して4−クロロ−2−メチルピリジンとの分離が容易な不純物を除去した蒸留留分が含まれ、不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジン及び場合によりさらに2−クロロメチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンであれば特に限定されない。4−クロロ−2−メチルピリジンには、4−クロロ−2−メチルピリジン純分1重量部に対して2−クロロ−6−メチルピリジンが通常0.4〜1.2重量部、及び2−クロロメチルピリジンが含有されている場合はそれが通常0.4〜1.6重量部含まれている。
【0010】
本発明においては、溶媒としてイソプロパノールとトルエンの混合溶媒が用いられる。イソプロパノールとトルエンの重量比は、通常6:1〜1:6、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2.5:1〜1:2.5である。かかる混合溶媒の使用量は、4−クロロ−2−メチルピリジン純分1重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、より好ましくは3〜6重量部である。
【0011】
酸としては、硝酸を除き、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸等の無機酸又は酢酸、プロピオン酸等の有機酸が用いられ、好ましくは塩化水素が用いられる。酸の使用量は、4−クロロ−2−メチルピリジン純分1モルに対して、通常0.8〜2.0モル、好ましくは0.9〜1.6モル、より好ましくは1.0〜1.4モルである。
【0012】
酸の添加方法としては、イソプロパノール、トルエン又はそれらの混合溶媒に溶解させた溶液状態で加えてもよいし、ガス状で吹き込んでもよい。
【0013】
酸の添加時の温度は、通常0〜20℃、好ましくは0〜10℃である。かかる温度で混合すれば、4−クロロ−2−メチルピリジンの酸塩が析出してくる。本発明では、該酸塩を濾過等の所望の分離操作で分離すれば、不純物である2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンはそれぞれ酸塩として濾液に除去される。
【0014】
このようにして得られた4−クロロ−2−メチルピリジンの酸塩を塩基で処理することにより、4−クロロ−2−メチルピリジンを得ることもできる。
【0015】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を混合してもよい。また、そのまま用いても、水溶液で用いてもよい。
【0016】
塩基処理の温度は、通常0〜50℃、好ましくは10〜40℃である。かかる処理は発熱するため、必要に応じて冷却しながら行うことが望ましい。
【0017】
塩基処理終了後、抽出、濃縮等の所望の分離操作をすれば、高純度の4−クロロ−2−メチルピリジンを得ることができる。
【実施例】
【0018】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0019】
参考例
オキシ塩化リン1079gに2−メチルピリジン−N−オキシド255g(純分250g)を85℃に保ちながらゆっくりと滴下した。オキシ塩化リン滴下終了後、さらに100℃で5時間反応し、得られた反応混合物を減圧下濃縮した。得られた濃縮残渣にトルエン140gを加え、50℃にて水340gをゆっくりと添加した後、10℃以下でアンモニア水310gを滴下した。析出した不溶物を濾過によって濾別し、得られた濾液を分液して有機層を得、さらに有機層を水13gで洗浄し、有機層289gを得た。この有機層をHPLCで分析したところ、4−クロロ−2−メチルピリジン46.7g、2−クロロ−6−メチルピリジン45.5g及び2−クロロメチルピリジン21.4gを含有していた。
【0020】
実施例1
参考例で得られた有機層289gに0〜5℃で19.3重量%の塩化水素/イソプロパノール溶液84g(塩化水素として0.44モル)を徐々に添加し、添加終了後0〜5℃で1時間反応した(イソプロパノールとトルエンの重量比は1.00:2.06)。反応終了後、析出した結晶を濾過、洗浄、乾燥し、4−クロロ−2−メチルピリジン塩酸塩51.8gを得た。得られた4−クロロ−2−メチルピリジン塩酸塩をHPLCで分析したところ、純度は99.1%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンから2−クロロ−6−メチルピリジンを除去するにあたり、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒中で当該4−クロロ−2−メチルピリジンを酸(但し、硝酸を除く。)と反応させて、生成する4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩を析出させることを特徴とする2−クロロ−6−メチルピリジンの除去方法。
【請求項2】
不純物として少なくとも2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンを含有する4−クロロ−2−メチルピリジンから2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンを除去するにあたり、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒中で当該4−クロロ−2−メチルピリジンを酸(但し、硝酸を除く。)と反応させて、生成する4−クロロ−2−メチルピリジン酸塩を析出させることを特徴とする2−クロロ−6−メチルピリジン及び2−クロロメチルピリジンの除去方法。
【請求項3】
イソプロパノールとトルエンの混合溶媒における重量比が6:1〜1:6である請求項1又は2に記載の除去方法。
【請求項4】
酸が塩化水素である請求項1〜3のいずれかに記載の除去方法。