説明

4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)ピペリジン−3−カルボン酸誘導体の効率的不斉合成

【課題】 医薬として有用な2−オキソイミダゾール誘導体の中間体の不斉合成を提供することにある。
【解決手段】式(II)で表される化合物と(R)−(+)−α−メチルベンジルアミンとを縮合して得られた式(III)で表される化合物を還元し式(IV)で表される化合物とし、該化合物を水素化して式(V)で表される化合物とし、式(VI)で表される化合物と縮合して式(VII)で表される化合物とし、ニトロ基を還元後、カルボジイミダゾールと反応して化合物(XI)としたのち、最後に塩基で処理することにより式(I)で表される化合物を得る。
式(I)で表される化合物は、ノシセプチン受容体ORL1へのノシセプチンの結合を阻害する化合物の中間体として有用である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野で有用な発明である。更に詳しくは、本発明は、医薬の分野で有用な化合物の中間体の不斉合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公報WO98/54168号、J.Med.Chem.1999年,5061−5063頁及びBioorg.Med.Chem.2001年、9巻、1871−1877頁は、ノシセプチン受容体ORL1(Opioid receptor like−1受容体)へのノシセプチンの結合を阻害する作用を有する化合物が開示されており、なかでも式(A)
【0003】
【化1】

で表される化合物(以下、「化合物A」という)は、ノシセプチン受容体へのノシセプチンの結合を選択的に阻害する作用を有するものとして特に優れている。
【0004】
ところで、WO98/54168号においては、ラセミ混合物を得た後にラセミ分割することにより、化合物Aを得ているが、該化合物を工業的に合成するにあたっては、ラセミ分割より簡便な製造方法が求められる。
【特許文献1】国際公報WO98/54168号
【非特許文献1】J.Med.Chem.1999年、5061−5063頁、
【非特許文献2】Bioorg.Med.Chem.2001年、9巻、1871−1877頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、医薬として有用な化合物Aを代表とする、2−オキソイミダゾール誘導体の不斉合成方法を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、従来、ラセミ分割の手法により調製していた化合物を効率よく合成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、
1) 式(II)
【0007】
【化2】

[式中、Rは、低級アルキル基を表し、Pは、アミノ保護基又は式(Z)
【0008】
【化3】

(式中、CYは、炭素数6〜12の1又は2環性脂肪族炭素環基を表す)で表される基を表す]で表される化合物と(R)−(+)−α−メチルベンジルアミンとを縮合し、式(III)
【0009】
【化4】

[式中、Phは、フェニル基を表し、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
2) 式(III)で表される化合物を還元し、式(IV)
【0010】
【化5】

[式中、Ph、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
3) 式(IV)で表される化合物のベンジル基を水素化分解して式(V)
【0011】
【化6】

[式中、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
4) 式(V)で表される化合物と式(VI)
【0012】
【化7】

[式中、Rは、水素原子、ハロゲン、低級アルキル基、水酸基及び低級アルコキシ基からなる群より選ばれる基を表し、Xは、脱離基を表す]で表される化合物とを縮合し式(VII)
【0013】
【化8】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
5) 式(VII)で表される化合物のニトロ基を還元して式(IIX)
【0014】
【化9】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
6) 式(IIX)で表される化合物を、溶媒中、カルボニルジイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエチル、クロロギ酸エチル及び尿素からなる群より選択されるカルボニル化合物と反応させ、式(IX)
【0015】
【化10】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得る工程、及び
7) 式(IX)で表される化合物を、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウムメトキシド及びナトリウムメトキシドからなる群より選択される塩基と反応させる工程、
を包含する、式(I)
【0016】
【化11】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物の製造方法、を提供する。
【0017】
更に、本発明は、式(II)で表される化合物を原料として、(S)−(−)−α−メチルベンジルアミンを用いて同様の反応を行なう、式(Ib)
【0018】
【化12】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである。]で表される化合物の製造方法を提供する。
【0019】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、「低級」なる語は、この語が付された基又は化合物の炭素数が6以下、好ましくは4以下であることを意味する。
【0021】
「低級アルキル基」には、炭素数1〜6の直鎖状又は炭素数3〜6の分岐状のアルキル基が包含され、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
【0022】
「ハロゲン原子」としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0023】
「低級アルキルオキシ基」は、酸素原子に低級アルキル基が結合した基が包含され、具体的には、低級アルキルオキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
「1又は2環性脂肪族炭素環基」とは、飽和の脂肪族炭素環基であって、1、又は2環性の環式基を意味し、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、スピロ[2.5]オクタン−4−イル基、スピロ[2.5]オクタン−5−イル基、スピロ[2.5]オクタン−6−イル基、スピロ[3.5]ノナン−5−イル基、スピロ[3.5]ノナン−6−イル基、スピロ[3.5]ノナン−7−イル基、スピロ[4.5]デカン−6−イル基、スピロ[4.5]デカン−7−イル基、スピロ[4.5]デカン−8−イル基等が挙げられる。
【0025】
アミノ基の保護基としては、その機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基等のアラルキル基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基等の低級アルカノイル基;ベンゾイル基;フェニルアセチル基、フェノキシアセチル基等のアリールアルカノイル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等の低級アルキルシリル基;テトラヒドロピラニル基;トリメチルシリルエトキシメチル基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の低級アルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等のアリールスルホニル基等が挙げられる。
【0026】
水酸基の保護基としては、その機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、tert-ブチル基;トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等の低級アルキルシリル基;メトキシメチル基;テトラヒドロピラニル基;トリメチルシリルエトキシメチル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、2,3−ジメトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、トリチル基等のアラルキル基;ホルミル基、アセチル基等のアシル基等が挙げられ、特に、メチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、トリチル基、トリメチルシリルエトキシメチル基、tert-ブチルジメチルシリル基、アセチル基等が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の製造方法について、具体例を挙げて詳細に説明する。
工程1:
工程1は、式(II)
【0028】
【化13】

[式中、Rは、低級アルキル基を表し、Pは、アミノ保護基又は式(Z)
【0029】
【化14】

(式中、CYは、炭素数6〜12の1又は2環性脂肪族炭素環基を表す)で表される基を表す]で表される化合物と(R)−(+)−α−メチルベンジルアミンとを縮合し、式(III)
【0030】
【化15】

[式中、Phは、フェニル基を表し、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0031】
(R)−(+)−α−メチルベンジルアミンの使用量としては、式(II)で表される化合物1モルにつき、1〜2モルが例示され、好ましくは1〜1.3モルが推奨される。
【0032】
縮合反応は、有機溶媒中で行なうことが好ましく、具体的には、例えばメタノール、エタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、「THF」という)、アセトニトリル等が例示される。
【0033】
反応温度としては50〜100℃が例示され、好ましくは60〜80℃が推奨される。
【0034】
反応時間としては、通常3〜6時間が例示される。
【0035】
式(II)で表される化合物は、WO98/54168号に記載のものが使用可能である。ここで、Pにおけるアミノ保護基としては、後述する工程、特に工程3において安定である必要があり、例えばtert-ブチルオキシカルボニル基が推奨される。
【0036】
尚、Pが、式(Z)
【0037】
【化16】

(式中、CYは、炭素数6〜12の1又は2環性脂肪族炭素環基を表す)である場合のCYとしては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、スピロ[2.5]オクタン−4−イル基、スピロ[2.5]オクタン−5−イル基、スピロ[2.5]オクタン−6−イル基、スピロ[3.5]ノナン−5−イル基、スピロ[3.5]ノナン−6−イル基、スピロ[3.5]ノナン−7−イル基、スピロ[4.5]デカン−6−イル基、スピロ[4.5]デカン−7−イル基、スピロ[4.5]デカン−8−イル基等が挙げられ、中でもシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、スピロ[2.5]オクタン−4−イル基、スピロ[3.5]ノナン−5−イル基、スピロ[4.5]デカン−6−イル基等が推奨される。
【0038】
又、Rとして好ましくは、メチル基、エチル基等が例示される。
【0039】
工程2:
工程2は、式(III)で表される化合物を還元し、式(IV)
【0040】
【化17】

[式中、Ph、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0041】
この反応は、有機溶媒中で行なうことが好ましく、例えばメタノール、エタノール、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル等が例示される。
【0042】
還元方法としては、
1)トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元、
2)カルボン酸存在下で、水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元、又は
3)金属触媒存在化での水素添加反応、が挙げられる。
【0043】
1)トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元(Tetrahedron: Asymmetry 1455頁、1994年)
この反応は、式(III)で表される化合物を、有機溶媒中で、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元するものである。
【0044】
還元剤の使用量としては、式(III)で表される化合物1モルに対して1〜4モルが挙げられ、好ましくは2〜3モルが推奨される。
【0045】
反応温度としては−10〜50℃が例示され、好ましくは0〜30℃が推奨され、反応時間としては、通常、2〜24時間が挙げられる。
【0046】
この反応は、窒素ガス、アルゴン等の不活ガスの存在下で反応を行なうことが好ましい。
【0047】
2)カルボン酸存在下での水素化ホウ素ナトリウムによる還元
この反応は、式(III)で表される化合物を、有機溶媒中、カルボン酸存在下で水素化ホウ素ナトリウムにより還元するものである。
【0048】
カルボン酸としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、トリフルオロ酢酸等が例示され、好ましくはトリフルオロ酢酸が推奨される。
【0049】
水素化ホウ素ナトリウムの使用量としては、式(III)で表される化合物1モルに対して1〜3モルが挙げられ、好ましくは1.5〜2.5モルが推奨される。
【0050】
カルボン酸の使用量としては、水素化ホウ素ナトリウム1モルに対して1〜5モルが例示され、好ましくは1.5〜3モルが推奨される。
【0051】
反応温度としては−100〜0℃が例示され、好ましくは−80〜−20℃が推奨され、反応時間としては、通常、2〜4時間が挙げられる。
【0052】
この反応は、窒素ガス、アルゴン等の不活ガスの存在下で反応を行なうことが好ましい。
【0053】
3)金属触媒存在化での水素添加反応
式(III)で表される化合物を、有機溶媒中、金属触媒の存在下、水素雰囲気下で水素添加反応を行い、式(IV)で表される化合物を得る。
【0054】
金属触媒としては、パラジウム炭素が例示される。
【0055】
金属触媒の使用量としては、式(III)で表される化合物100重量部に対して10〜100重量部が挙げられ、好ましくは10〜20重量部が推奨される。
【0056】
反応温度としては0〜50℃が例示され、好ましくは20〜30℃が推奨され、反応時間としては、通常、2〜24時間が挙げられる。
【0057】
工程2として好ましくは、1)トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元、又は2)カルボン酸存在下で水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元が例示され、特に、トリフルオロ酢酸存在下での水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元が推奨される。
【0058】
例えば、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム/トリフルオロ酢酸を用いる場合は、テトラヒドロホウ酸ナトリウムのテトラヒドロフラン懸濁液にトリフルオロ酢酸を5〜10℃にて約20分かけて加え、これを0℃で約25分撹拌したのち、さらにトリフルオロ酢酸を一気に加え、還元剤を調製する。そして、該懸濁液中に式(III)で表される化合物を加えて、−78〜−20℃まで温度で還元反応を行なった後、該反応液中に25%アンモニア水を1時間かけて加え、さらに−20℃で1時間撹拌を行なう等の作業により過剰の還元剤を分解することができる。
【0059】
工程3:
工程3は、式(IV)で表される化合物のベンジル基を水素化分解して式(V)
【0060】
【化18】

[式中、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0061】
すなわち、式(IV)で表される化合物を、有機溶媒中、金属触媒を用いて、水素雰囲気下で水素化することにより化合物(V)を得ることができる。
【0062】
金属触媒としては、パラジウム−炭素が例示される。
【0063】
金属触媒の使用量としては、式(IV)で表される化合物100重量部につき、1〜100重量部が例示され、好ましくは5〜15重量部が推奨される。
【0064】
有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、THF等が例示される。
【0065】
水素圧としては、1〜5気圧等が例示され、好ましくは2〜4気圧等が推奨される。
【0066】
反応温度としては0〜5℃が例示され、好ましくは20〜30℃が推奨される。
【0067】
反応時間としては、通常2〜6時間が例示される。
【0068】
工程4;
工程4は、式(V)で表される化合物と式(VI)
【0069】
【化19】

[式中、X及びRは、前記に同じである]で表される化合物とを、好ましくは塩基の存在下で縮合し式(VII)
【0070】
【化20】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0071】
この反応は、有機溶媒中で行なうことが好ましく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という)、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という)、THF等が例示される。
【0072】
式(VI)で表される化合物の使用量としては、式(V)で表される化合物1モルにつき1〜1.5モルが例示され、好ましくは1〜1.1モルが推奨される。
【0073】
塩基としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が例示され、好ましくは炭酸ナトリウムが推奨される。
【0074】
塩基の使用量としては、式(V)で表される化合物1モルにつき1〜1.5モルが例示され、好ましくは1〜1.2モルが推奨される。
【0075】
反応温度としては、50〜100℃が例示され、好ましくは70〜90℃が推奨される。
【0076】
反応時間としては、通常10〜24時間が例示される。
【0077】
式(VI)において、Rとして好ましくは、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基等が推奨される。
【0078】
としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲンが例示され、好ましくはフッ素原子が推奨される。
【0079】
そして、式(VI)で表される化合物としては、WO98/54168号に記載のものが例示される。
【0080】
工程5:
工程5は、式(VII)で表される化合物のニトロ基を水素化して式(IIX)
【0081】
【化21】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0082】
水素化は、有機溶媒中、金属触媒の存在下で行なわれ、例えばパラジウム−炭素が例示される。
【0083】
金属触媒の使用量としては、式(VII)で表される化合物100重量部につき1〜100重量部が例示され、好ましくは5〜15重量部が推奨される。
【0084】
有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、THF等が例示される。
【0085】
水素圧としては、例えば1〜5気圧が例示され、好ましくは2〜4気圧が推奨される。
【0086】
反応温度としては、0〜50℃が例示され、好ましくは20〜30℃が推奨される。
【0087】
反応時間としては、通常2〜6時間が例示される。
【0088】
工程6:
工程6は、式(IIX)で表される化合物を、有機溶媒中、カルボニルジイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエチル、クロロギ酸エチル、尿素からなる群より選択されるカルボニル化合物と反応させることにより、式(IX)
【0089】
【化22】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0090】
カルボニル化合物としては、例えばカルボニルイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエチル、クロロギ酸エチル、尿素等が例示され、好ましくはカルボニルイミダゾール、炭酸ジエチル等が推奨される。
【0091】
カルボニル化合物の使用量としては、式(IIX)で表される化合物1モルにつき、1〜2モルが例示され、好ましくは1〜1.3モルが推奨される。
【0092】
有機溶媒としては、例えばDMF、DMSO、THF、アセトニトリル等が例示され、好ましくはTHFが推奨される。
【0093】
反応温度としては、0〜50℃が例示され、好ましくは0〜20℃が推奨される。
【0094】
反応時間としては、通常10〜24時間が例示される。
【0095】
工程7:
工程7は、式(IX)で表される化合物を、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシドからなる群より選択される塩基と反応させることにより、式(I)
【0096】
【化23】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得るものである。
【0097】
塩基としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等が例示され、好ましくは炭酸ナトリウムが推奨される。
【0098】
塩基の使用量としては、式(XI)で表される化合物1モルにつき0.3〜2モルが例示され、好ましくは0.5〜1.0モルが推奨される。
【0099】
反応は、有機溶媒中で行なわれ、例えばメタノール、THF等が例示される。
【0100】
反応温度としては、50〜100℃が例示され、好ましくは50〜80℃が推奨される。
【0101】
反応時間としては、通常10〜24時間が例示される。
【0102】
上記反応において、反応物質中に反応に関与しないアミノ基、水酸基、カルボキシル基、オキソ基、カルボニル基等が存在する場合、当該アミノ基、水酸基、カルボキシル基、オキソ基、カルボニル基は、適宜、アミノ基の保護基、水酸基の保護基、カルボキシル基の保護基又はオキソ基若しくはカルボニル基の保護基で保護した後に工程1から7の各反応を行い、反応後に当該保護基を除去することができる。
【0103】
保護基の除去方法は、保護基の種類及び式(I)で表される化合物の安定性等により異なるが、例えば文献記載の方法[プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、T.W.グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley & Sons社(1981年)参照]又はそれに準じる方法に従って、例えば酸又は塩基を用いる加溶媒分解、即ち、例えば0.01モル〜大過剰の酸、好ましくはトリフルオロ酢酸、ギ酸、塩酸等、又は等モル〜大過剰の塩基、好ましくは水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を作用させる方法;水素化金属錯体等を用いる化学的還元又はパラジウム−炭素触媒、ラネーニッケル触媒等を用いる接触還元等により行われる。
【0104】
尚、上記反応において、(R)−(+)−α−メチルベンジルアミンの代わりに(S)−(−)−α−メチルベンジルアミンを用いて同様の反応を行い、式(Ib)
【0105】
【化24】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得ることも可能である。
【0106】
上記方法で得られた式(I)で表される化合物(Pが、アミノ保護基の場合)は、以下の方法により化合物Aに導くことができる。
【0107】
【化25】

【0108】
参考薬理試験例1(ノシセプチン受容体結合阻害実験)
ヒトノシセプチン受容体遺伝子をコードするcDNAを発現ベクターpCR3(Invitrogen社製)に組み込み、pCR3/ORL1を作製した。次に、pCR3/ORL1をトランスフェクタム(Nippongene社製)を用いてCHO細胞に導入し、1mg/ml G418に耐性の安定発現株(CHO/ORL1細胞)を得た。この安定発現株より膜画分を調製し、受容体結合実験を行なった。膜画分11μg、50pM[125I]Tyr14−Nociceptin(Amersham Pharmacia社製)、1mgのWheatgerm agglutinin SPA beads(PVTベースのもの;Amersham Pharmacia社製)及び被験化合物をNC buffer(50mM Hepes、10mM塩化ナトリウム、1mM塩化マグネシウム、2.5mM塩化カルシウム、0.1%BSA、0.025%バシトラシン、pH7.4)に懸濁させ、37℃で60分間インキュベーションした後、放射活性を測定した。ノシセプチン受容体に対する結合活性は、化合物Aによる[125I]Tyr14−Nociceptin結合の50%阻害濃度(IC50値)で表示する。その結果、化合物Aは1.8nMであった。
【0109】
参考薬理試験例2(ノシセプチン誘導G蛋白質活性化に対する拮抗作用)
ノシセプチン受容体ORL1を安定発現したCHO細胞を用いて、ノシセプチン誘導G蛋白質活性化に対する被験化合物の作用を検討した。CHO/ORL1細胞より調製した膜画分、50nMノシセプチン、200pM GTPγ[35S](NEN社製)、1.5mgのWheatgerm agglutinin SPA beads(Amersham Pharmacia社製)及び被験化合物をGDP buffer(20mM Hepes、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM EDTA、5μM GDP、pH7.4)中で混合し、25℃で150分間インキュベートした後、放射活性を測定した。ノシセプチン誘導G蛋白質活性化に対する拮抗作用は、化合物AによるGTPγ[35S]結合の50%阻害濃度(IC50値)で表示する。その結果、化合物Aは、18nMであった。
【実施例】
【0110】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、実施例で用いた各種試薬は、特に記載の無い限り市販品を使用した。1H−NMRはJEOL社製、AL−400−2(400MHz)を使用し、テトラメチルシランを標準物質として用いて測定した。またマススペクトルはWaters社製micromassZQを使用しエレクトロスプレイイオン化法(ESI)もしくは大気圧化学イオン化法(APCI)で測定した。
【0111】
実施例
1−t−ブチル 3−メチル(3R,4R)−4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシレート
1)メチル 4−ヒドロキシ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−カルボキシレートの製造
メチル 1−ベンジル−4−ヒドロキシ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−カルボキシレート762.7gのメタノール2.5L溶液に10%パラジウム−炭素触媒(含水)157.4gを加え、水素雰囲気下、室温、3気圧にて4時間攪拌した。反応系を窒素に置換し、触媒をガラス繊維濾紙により濾去したのち、残渣をメタノール−水(300mL−200mL)で洗浄した。濾液を減圧留去して表題化合物520gを淡燈色固体として得た。
1HNMR(400MHz,CD3OD)δ:2.67(2H,t,J=6.6Hz),3.41(2H,t,J=6.6Hz),3.81(3H,s),3.84(2H,brs)
ESI−MS Found:m/z 158.3[M+H]+
【0112】
2)1−t−ブチル 3−メチル 4−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロピリジン−1,3(2H)−ジカルボキシレートの製造
窒素雰囲気下、上記1で得た化合物1100gおよびジ−t−ブチル ジカーボネート1274mLの水−ジオキサン(1:1)6.6Lの溶液に無水炭酸水素ナトリウム983gを10分かけて注意深く加えた。室温にて3時間撹拌したのち、水6.0Lで希釈してから酢酸エチル4.5Lで2回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して表題化合物1480gを淡赤褐色の油状物として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.48(9H,s),2.38(2H,t,J=5.9Hz),3.57(2H,t,J=5.9Hz),3.78(3H,s),4.06(2H,brs),11.98(1H,brs)
ESI−MS Found:m/z 258.3[M+H]+,202.3[M−Bu+H]+
【0113】
3)1−t−ブチル 3−メチル 4−{[(1R)−1−フェニルエチル]アミノ}−5,6−ジヒドロピリジン−1,3(2H)−ジカルボキシレートの製造
窒素雰囲気下、上記1で得た化合物1480gのメタノール−テトラヒドロフラン(1:1)6.0L溶液に(R)−(+)−α−メチルベンジルアミン826mLおよび酢酸396mLを加え65℃にて4時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、酢酸エチル12.0Lで希釈したのち有機層を水9.0L、0.5N水酸化ナトリウム水溶液9.0Lおよび飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して表題化合物1940gを黄色の油状物として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.43(9H,s),1.50(3H,d,J=6.8Hz),2.05(1H,m),2.38(1H,m),3.30(1H,m),3.42(1H,m),3.72(3H,s),4.06(2H,brs),4.61(1H,quintet,J=7.1Hz),7.22−7.35(5H,m),9.25(1H,brd、J=6.8Hz)
ESI−MS Found:m/z 361.3[M+H]+
【0114】
4)1−t−ブチル 3−メチル(3S,4R)−4−{[(1R)−1−フェニルエチル]アミノ}ピペリジン−1,3−ジカルボキシレートの製造
窒素雰囲気下、テトラヒドロホウ酸ナトリウム295gのテトラヒドロフラン5.7L懸濁液にトリフルオロ酢酸1224mLを5−10℃にて20分かけて加えた。これを0℃で25分撹拌したのち、さらにトリフルオロ酢酸546mLを一気に加え、−78℃に冷却した。この反応液に上記3で得た化合物1420gのアセトニトリル1.8Lの溶液を1時間かけて滴下して加えたのち、−78℃で1.5時間撹拌し、−20℃まで昇温後に25%アンモニア水溶液を1時間かけて加えた。さらに−20℃で1時間撹拌後、徐々に室温まで戻し、30分室温にて撹拌したのち水11.0L中にこの反応液を注いだ。この溶液を酢酸エチル11.0Lおよび4.3Lで抽出し、酢酸エチル層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して表題化合物1660gを微褐色の固体として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.28(3H,d,J=6.3Hz),1.43(9H,s),1.72−1.81(3H,m),2.77−2.86(2H,m),2.98(1H,ddd,J=13.2,9.5,3.7Hz),3.15(1H,dd,J=13.7,3.4Hz),3.72(4H,s),3.87(1H,q,J=6.3Hz),4.01(1H,brd,J=9.5Hz),7.22−7.33(5H,m)
ESI−MS Found:m/z 363.2[M+H]+
【0115】
5)1−t−ブチル 3−メチル(3S,4R)−4−アミノピペリジン−1,3−ジカルボキシレートの製造
上記4で得た化合物1160gおよび酢酸238mLのメタノール2.5L溶液に10%パラジウム−炭素触媒(含水)293gを加え、水素雰囲気下、室温、3気圧にて4時間攪拌した。反応系を窒素に置換し、触媒をガラス繊維濾紙により濾去したのち、残渣をメタノール100mLで洗浄した。濾液を減圧留去し、残渣を水4.6Lに溶解したのち、この溶液をメチル−t−ブチルエーテル3.5Lで洗浄した。メチル−t−ブチルエーテル層を水2.3Lで再度抽出後、水層を合わせて1N水酸化ナトリウム水溶液で中和したのち、この水層をメチル−t−ブチルエーテル−テトラヒドロフラン(2:1)7.0Lおよび酢酸エチル(3.5L+1.7L)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して表題化合物580gを無色透明の油状物として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.45(9H,s),1.76(3H,m),2.66(1H,m),3.37(1H,m),3.45(2H,m)3.69(1H,m),3.71(3H,s)
ESI−MS Found:m/z 259.3[M+H]+,203.3[M−Bu+H]+
【0116】
6)1−t−ブチル 3−メチル(3S,4R)−4−[(2−ニトロフェニル)アミノ]ピペリジン−1,3−ジカルボキシレートの製造
窒素雰囲気下、上記5で得た化合物580gのジメチルホルムアミド2.9L溶液にオルト−フルオロニトロアニリン260mLおよび炭酸ナトリウム286gを順次加え、80℃にて15時間撹拌した。反応液を10℃まで冷却後、水5.0Lを加えたのち酢酸エチル(4.5L+3.5L)で抽出した。有機層を合わせて水3.5Lおよび飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して表題化合物860gを黄色の油状物として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.47(9H,s),1.84(1H,m),2.05(1H,m)2.94(1H,m),3.43(1H,m)3.65(2H,m),3.69(3H,s),3.99(1H,dd,J=14.1,7.3Hz),4.16(1H,septet,J=4.1Hz),6.68(1H,m),6.90(1H,d,J=8.8Hz),7.44(1H,m),8.19(1H,dd,J=8.8,1.5Hz),8.62(1H,brs)
ESI−MS Found:m/z 380.2[M+H]+,324.2[M−Bu+H]+
【0117】
7)1−t−ブチル 3−メチル(3S,4R)−4−[(2−アミノフェニル)アミノ]ピペリジン−1,3−ジカルボキシレートの製造
上記6で得た化合物780gのテトラヒドロフラン3.0L溶液に10%パラジウム−炭素触媒(含水)156gを加え、水素雰囲気下、室温、3気圧にて1.5時間攪拌した。反応系を窒素に置換し、触媒をガラス繊維濾紙により濾去したのち、残渣をメタノール300mLで洗浄した。濾液を減圧留去し、得られた残渣を酢酸エチル8.0Lに溶解したのち、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。この溶液にシリカゲル400gを加えて撹拌後、濾過により固体を除いたのち溶媒を減圧留去して表題化合物640gを黒色の油状物として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.46(9H,s),1.66(1H,m),1.77(1H,m),2.91(1H,m)3.23(1H,ddd,J=13.2,9.0,4.1Hz),3.45(2H,brdd,J=13.2,3.2Hz)3.68(3H,s),3.76(1H,m),4.08(1H,dd,J=14.9,5.6Hz),6.66−6.79(4H,m)
ESI−MS Found:m/z 350.2[M+H]+,294.2[M−Bu+H]+
【0118】
8)1−t−ブチル 3−メチル(3S,4R)−4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシレートの製造
窒素雰囲気下、上記7で得た化合物640gのテトラヒドロフラン4.0L溶液に、氷冷下でN,N−カルボニルジイミダゾール356gのテトラヒドロフラン500mL懸濁液を加え室温で16時間攪拌した。反応液を酢酸エチル6.0Lで希釈したのち有機層を0.5N塩酸水溶液4.4Lおよび飽和食塩水で洗浄した。溶媒を減圧留去して表題化合物720gを茶色の泡状物として得た。
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.48(9H,s),1.88(1H,m),2.94(1H,m),3.06−3.30(3H,m)3.44(3H,s),4.33−4.68(3H,m)7.01−7.09(3H,m),7.30(1H,m),9.17(1H,brs)
ESI−MS Found:m/z 376.3[M+H]+,320.2[M−Bu+H]+
【0119】
9)1−t−ブチル 3−メチル(3R,4R)−4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)ピペリジン−1,3−ジカルボキシレートの製造
窒素雰囲気下、上記8で得た化合物1680gのメタノール−テトラヒドロフラン(1:1)6.8L溶液に炭酸ナトリウム256gを加えて70℃にて16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、溶媒を減圧留去し、残渣をエチルメチルケトン7.5Lおよびテトラヒドロフラン3.4Lに溶かした。この溶液を1N塩酸水溶液5.0Lおよび飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をメタノール5.0Lに懸濁し、50℃にて1時間撹拌後、室温にてさらに20時間撹拌した。この懸濁液を濾過し、得られた白色個体をメチル−t−ブチルエーテル700mLで3回洗浄したのちオーブンで真空下乾燥することで標題化合物509g(純度99.9%,光学純度99.9%)を白色固体として得た。濾液を集めて減圧濃縮後、同様の操作を行うことで第2晶45.0g(純度99.6%,光学純度99.8%)および第3晶(純度99.3%,光学純度98.6%)を得た。
【0120】
純度、光学純度は下記カラム条件により決定した。
純度
カラム:YMC社製 ODS AQ−303、250X4.6 mm
カラム温度:40℃
溶出速度:1.0ml/min
溶出液:0.1%リン酸水溶液:アセトニトリル=80:20−(グラジエント、10min)−40:60−(グラジエント、10min)
検出:UV 210 nm
【0121】
光学純度
カラム:ダイセル社製 ChiralPAK AD,250X4.6 mm
カラム温度:25℃
溶出速度:1.0ml/min
溶出液:ヘキサン/2−プロパノール/ジエチルアミン=900/100/1
検出:UV 280 nm
1HNMR(400MHz、CDCl3)δ:1.52(9H,s),1.85(1H,brd,J=12.7Hz),2.51(1H,m),2.82−3.05(2H,m)3.46(3H,s),3.57(1H,m)4.22−4.62(3H,m),7.03−7.12(4H,m)9.59(1H,brs)
ESI−MS Found:m/z 376.3[M+H]+,320.2[M−Bu+H]+
【産業上の利用可能性】
【0122】
化合物(A)は医薬として有用であり、本発明は、化合物(A)の中間体である式(I)で表される化合物の工業的に有利な不斉合成方法を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1) 式(II)
【化1】

[式中、Rは、低級アルキル基を表し、Pは、アミノ保護基又は式(Z)
【化2】

(式中、CYは、炭素数6〜12の1又は2環性脂肪族炭素環基を表す)で表される基を表す]で表される化合物と(R)−(+)−α−メチルベンジルアミンとを縮合し、式(III)
【化3】

[式中、Phは、フェニル基を表し、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
2) 式(III)で表される化合物を還元し、式(IV)
【化4】

[式中、Ph、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
3) 式(IV)で表される化合物のベンジル基を水素化分解して式(V)
【化5】

[式中、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
4) 式(V)で表される化合物と式(VI)
【化6】

[式中、Rは、水素原子、ハロゲン、低級アルキル基、水酸基及び低級アルコキシ基からなる群より選ばれる基を表し、Xは、脱離基を表す]で表される化合物とを縮合し式(VII)
【化7】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
5) 式(VII)で表される化合物のニトロ基を還元して式(IIX)
【化8】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
6) 式(IIX)で表される化合物を、溶媒中、カルボニルジイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエチル、クロロギ酸エチル及び尿素からなる群より選択されるカルボニル化合物と反応させ、式(IX)
【化9】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得る工程、及び
7) 式(IX)で表される化合物を、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウムメトキシド及びナトリウムメトキシドからなる群より選択される塩基と反応させる工程、
を包含する、式(I)
【化10】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
1) 式(II)
【化11】

[式中、Rは、低級アルキル基を表し、Pは、アミノ保護基又は式(Z)
【化12】

(式中、CYは、炭素数6〜12の1又は2環性脂肪族炭素環基を表す)で表される基を表す]で表される化合物と(S)−(−)−α−メチルベンジルアミンとを縮合し、式(IIIb)
【化13】

[式中、Phは、フェニル基を表し、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
2) 式(IIIb)で表される化合物を還元し、式(IVb)
【化14】

[式中、Ph、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
3) 式(IVb)で表される化合物のベンジル基を水素化分解して式(Vb)
【化15】

[式中、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
4) 式(Vb)で表される化合物と式(VI)
【化16】

[式中、Rは、水素原子、ハロゲン、低級アルキル基、水酸基及び低級アルコキシ基からなる群より選ばれる基を表し、Xは、脱離基を表す]で表される化合物とを縮合し式(VIIb)
【化17】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
5) 式(VIIb)で表される化合物のニトロ基を還元して式(IIXb)
【化18】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物とする工程、
6) 式(IIXb)で表される化合物を、溶媒中、カルボニルジイミダゾール、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエチル、クロロギ酸エチル及び尿素からなる群より選択されるカルボニル化合物と反応させ、式(IXb)
【化19】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物を得る工程、及び
7) 式(IXb)で表される化合物を、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウムメトキシド及びナトリウムメトキシドからなる群より選択される塩基と反応させる工程、
を包含する、式(Ib)
【化20】

[式中、R、R及びPは、前記に同じである]で表される化合物の製造方法。