説明

4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法

【課題】本発明は、工業的に極めて有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】レゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法において4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物中の水分を15〜25重量%に調整した後、段階的に減圧乾燥処理を行う製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールは、例えばレゾルシンおよびシクロヘキサノンからメタノールあるいは酢酸エチル等の溶媒の存在下で製造されることは公知である(特許文献1〜3)。
【0003】
反応後に、得られた4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールは、使用された溶媒、例えば、メタノールあるいは酢酸エチルとの付加物として分離する。この付加物からメタノールあるいは酢酸エチルといった付加物の成分類を分離する方法としては、通常、減圧下に、メタノールあるいは酢酸エチル等の成分類を分離し留去させる方法が用いられる。しかし、この方法では減圧下、長時間を要すること、メタノールあるいは酢酸エチル等の成分類の分離が不十分で包接率が30%以上となる場合があり、目的物中の成分類を一定値以下に保てない等の欠点を有している。メタノールとの1:1付加物の場合、包接率が24%以下であればメタノール含有量が2%以下となって、工業的な用途において求められているレベルに達することができるため、工業的に有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得られる製造方法の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開平08−169937号公報
【特許文献2】特開平08−269039号公報
【特許文献3】WO9212205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、工業的に有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等はこれらの欠点を解決するために鋭意検討した結果、レゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法において、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物中の水分を15〜25重量%に調整した後、段階的に減圧乾燥処理を行うことにより、工業的に有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールが得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、工業的に有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明はレゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法に関するものであり、該方法は4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物中の水分を15〜25重量%に調整した後、段階的に減圧乾燥処理を行い、当該化合物を得ることを特徴としている。
【0009】
本発明において、公知の方法で得た4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物は、好適には4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールが約1:1〜0.6付加物の形状である。
【0010】
本発明において、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物は、通常の製造方法から得られるものが用いられるが、溶液中でプラスのゼータ電位を示す機械的ろ過と吸着ろ過とを組み合わせたろ材で処理した付加物を用いることが好ましい。この処理は、メタノール、酢酸エチル等に、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物を溶解させ実施される。この処理により得られた付加物は処理をしない付加物に比し、金属含有量等の品質が優れる傾向がある。このため、この付加物を用い、段階的に減圧乾燥処理を行って得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールは優れた品質のものが得られる傾向がある。
【0011】
本発明において、必要に応じて用いられる溶液中でプラスのゼータ電位を示す機械的ろ過と吸着ろ過とを組み合わせたろ材としては、ゼータプラスフィルター(登録商標)等が挙げられる。
【0012】
本発明において、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物中の水分は15〜25重量%に調整される。好ましくは18〜22重量%の範囲であり、より好ましくは19〜21重量%の範囲である。水分が15重量%未満の場合、乾燥後のメタノール包接率が高くなり好ましくない。水分が25重量%を超えた場合、水分の乾燥に長時間必要になり好ましくない。
【0013】
本発明において、乾燥処理は減圧度を段階的に変化させることによって行われる。この方法によれば、急激な圧力変化を回避しながら、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールとの付加物からメタノールを効率的に除去することが可能となり包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができる。さらには、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールから水分を効率的に、ほぼ完全に除去することが可能となる。減圧度を段階的に変化させることなく乾燥を行った場合には、包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができない。乾燥温度は75℃前後まで徐々にあるいは段階的に昇温される。
段階的に変化させる減圧度の好ましい実施態様としては、下記の要件を満たす乾燥処理が挙げられる。
(1)減圧度53〜26kPaで、主に目的化合物の付加物からメタノールを除去すること、
(2)減圧度26〜13kPaに変化させ主に水を除去すること、
(3)減圧度13〜2kPaとし目的化合物から水分をほぼ完全に除去すること。
【0014】
本発明において、通常、目的物を乾燥するために使用される乾燥機としては、一般的な乾燥器、例えば、板乾燥器、撹拌乾燥器、パドル乾燥器などが使用される。
【0015】
本発明によれば、乾燥時間が短縮され、包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールが容易に得られ、工業的に極めて有利な方法となる。
【0016】
(実施例)
以下、実施例を挙げ、さらに本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書中、包接率は、以下の式で求められる。
包接率(%)=メタノールのモル量÷(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)のモル量×100
【実施例1】
【0017】
メタノール包接率100%の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール(水分:10重量%、包接化合物:90重量%)45.8gを、温度計、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗を付けた0.5リットル4つ口丸底フラスコに仕込み、メタノール123.0gを加えて60℃に昇温し、溶解した。前記の溶解液に80gのイオン交換水を滴下して晶析、濾過後、結晶45.0gを得た。得られた結晶の水分は11.6重量%で、包接率は90%であった。
この結晶を0.5リットルフラスコに仕込み、イオン交換水4.7gを加え、水分20重量%に調整した。75℃で40kPaに減圧して、10時間乾燥後、20kPaに減圧して1時間乾燥、さらに、2kPaに減圧して4時間乾燥した。乾燥後の得量は37.2gであった。この乾燥ケーキ(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)の水分は0.3重量%で、この時の包接率は3.5%であり、各種金属(Na,K,Mg,Ca,Fe,Cu,Mn,Al,Zn,Ni,Cr,Pb)濃度は、合計で120ppbであった。
【実施例2】
【0018】
メタノール包接率100%の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール(水分:10重量%、包接化合物:90重量%)45.8gを、温度計、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗を付けた0.5リットル4つ口丸底フラスコに仕込み、メタノール123.0gを加えて60℃に昇温し、溶解した。前記の溶解液をゼータプラスフィルター(登録商標)で処理して得られた溶液に80gのイオン交換水を滴下して晶析、濾過後、結晶45.0gを得た。得られた結晶の水分は11.6重量%で、包接率は90%であった。
この結晶を0.5リットルフラスコに仕込み、イオン交換水4.7gを加え、水分20重量%に調整した。75℃で40kPaに減圧して、10時間乾燥後、20kPaに減圧して1時間乾燥、さらに、2kPaに減圧して4時間乾燥した。乾燥後の得量は37.2gであった。この乾燥ケーキ(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)の水分は0.3重量%で、この時の包接率は3.5%であり、各種金属(Na,K,Mg,Ca,Fe,Cu,Mn,Al,Zn,Ni,Cr,Pb)濃度は,合計で15ppbであった。
【0019】
(比較例1)
メタノール包接率100%の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール(水分:10重量%、包接化合物:90重量%)45.8gを、温度計、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗を付けた0.5リットル4つ口丸底フラスコに仕込み、メタノール123.0gを加えて60℃に昇温し、溶解した。前記の溶解液に80gのイオン交換水を滴下して晶析、濾過後、結晶45.0gを得た。得られた結晶の水分は11.6重量%で、包接率は90%であった。
この結晶を0.5リットルフラスコに仕込み、75℃で40kPaに減圧して、4時間乾燥後、20kPaに減圧して1時間乾燥、さらに、2kPaに減圧して4時間乾燥した。乾燥後の得量は38.7gであった。この乾燥ケーキ(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)の水分は0.3重量%で、この時の包接率は50%であった。
【0020】
(比較例2)
メタノール包接率100%の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール(水分:10重量%、包接化合物:90重量%)45.8gを温度計、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗を付けた0.5リットル4つ口丸底フラスコに仕込み、メタノール123.0gを加えて60℃に昇温し溶解した。溶解液に80gのイオン交換水を滴下して晶析、濾過後、結晶45.0gを得た。得られた結晶の水分は11.6重量%で、包接率は90%であった。この結晶を0.5リットルフラスコに仕込み、イオン交換水4.7gを加え、水分20重量%に調整し、75℃で2kPaに減圧して、8時間乾燥した。乾燥後の得量は39.1gであった。この乾燥ケーキ(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)の水分は0.3重量%で、この時の包接率は40%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法において、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物中の水分を15〜25重量%に調整した後、段階的に減圧乾燥処理を行うことを特徴とする包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法。
【請求項2】
4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールの付加物が、溶液中でプラスのゼータ電位を示す機械的ろ過と吸着ろ過とを組み合わせたろ材で処理したものであることを特徴とする請求項1記載の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法。

【公開番号】特開2009−149543(P2009−149543A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327636(P2007−327636)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】