説明

5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを調製するための新規な方法

【課題】5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを調製するための新規な方法の提供。
【解決手段】本発明は、表題化合物である5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを調製するための方法に関する。この化合物は、ある種のチアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシドの調製において有用な中間体である。上記チアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシドは、免疫調節剤として実用できる可能性がある化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表題化合物である5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを調製するための方法に関する。この化合物は、ある種のチアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシド(免疫調節剤として実用できる可能性がある)の調製において有用な中間体である。
【背景技術】
【0002】
様々なD−及びL−プリンヌクレオシド類似体が、免疫調節剤として使用するために検討されている。そのような用途に実用できる可能性があるヌクレオシド類似体類としては、例えば、Anadys Pharmaceuticals,Inc.が承継人である特許文献1で開示されている化合物等のチアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシド類があり、その開示内容の全てを本願に引用して援用する。これらの化合物には、例えば、下記式の5−アミノ−3−β−D−リボフラノシル−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オン等がある。
【0003】
【化1】

【0004】
上記及び他のチアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシドの調製において有用な中間体は、ピリミジン塩基、すなわち、下記式の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンである。
【0005】
【化2】

【0006】
この化合物を調製するための効率的かつ費用効果の高い方法を提供することが望ましい。本発明はそのような方法を提供する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0070556号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを調製するための方法に関する。上記方法は、
(i)下記式:
【0008】
【化3】

【0009】
の2,4−ジアミノピリミジンをハロゲン化し、下記式:
【0010】
【化4】

【0011】
(式中、
Xは、F、Cl、Br、及びIから選択されるハロゲン基(halo)を表す)
の2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを形成し、
(ii)上記2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを環縮合し、下記式:
【0012】
【化5】

【0013】
の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを形成し、
(iii)上記5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを形成する
方法である。
【0014】
一実施形態では、本発明は、下記式:
【0015】
【化6】

【0016】
(式中、
Xは、F、Cl、Br、及びIから選択されるハロゲン基(halo)である)
の2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを環縮合し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを形成するための方法に関し、
上記環縮合は、下記式:
【0017】
【化7】

【0018】
(式中、
Mは金属カチオンであり、Rはアルキル基である)
を有するキサントゲン酸塩化合物の存在下で行われ、かつ、
上記反応は、窒素雰囲気中、不活性溶媒の存在下、上記反応物を加熱することを含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを形成するための方法に関し、上記方法は、塩基性条件下で5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化剤と反応させ、それに続く酸加水分解により、所望の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを得ることを含む。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オン(5−アミノ−3−β−D−リボフラノシル−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オン等の、チアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシド類の調製において有用な中間体である)を製造し、精製するための新規な方法を提供する。上記方法は、2,4−ジアミノピリミジンを2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンに変換し、環縮合により5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを得、続いて酸化により上記表題化合物を形成することを含む。
【0021】
上記方法は、操作する上で簡単、効率的、かつ、確実性の高いものとすることができ、その結果、高総合収率かつ高処理能にすることが出来る。例えば、本発明の3工程から成る方法により、収率を50%を超えるものにすることが出来る。その上、上記方法は、廃棄物全量が少なく、環境親和的なものとすることができる。さらに、上記方法は、使用される試薬が安価であり、クロマトグラフィーを使用することなく実施でき、かつ、修正を行いスケールアップすることができる。この点に関して、上記方法の出発物質、すなわち、2,4−ジアミノピリミジンは、比較的安価であり、かつ、バルクサイズで市販されている。
【0022】
本願に使用される語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及び、ヨウ素を表し、語「ハロゲン基(halo)」は、その置換基をいう。
【0023】
本願に使用される語「アルキル」には、直鎖部分、分岐部分、若しくは、環状部分(縮合二環式部分、架橋二環式部分、及び、スピロ環状部分等)を有する、又は、上記部分を組み合わせて有する、1価の飽和炭化水素基等がある。アルキル基が環状部分を有するには、上記基に炭素原子が少なくとも3つ必要である。特筆すべきアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等がある。
【0024】
本発明の化合物は、互変異性現象を示し得る。本願の各化学式では、考えられる全ての互変異性体を明確に表現することはできないが、各化学式は、表現された化合物のいずれの互変異性体をも意味するものであることを理解されたい。また、本発明の化合物は、化学式で表現された特定の化合物構造だけに限定されない。例えば(下記参照)、下記化学式において、置換基がエノール型、又はケト型で表されるかどうかにかかわらず、それらは同じ化合物を意味することを理解されたい。
【0025】
【化8】

【0026】
本願に使用される語「金属カチオン」は、陽イオンの金属イオンを表す。特筆すべき金属カチオンは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及び、カリウム(K)のカチオン等の、周期表の1A族の金属カチオンである。
【0027】
本願に使用される語「不活性溶媒」は、溶解力を持つが、所定の反応、又は、反応系の反応物と著しく反応しない、任意の溶媒を表す。例えば、2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを環縮合し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを形成する反応において、好適な不活性溶媒には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、及び、N−メチルピロリジノン(NMP)等が含まれる。
【0028】
本願に使用される語「酸化剤」は、化学反応において電子を得る物質、又は、化学種を表す。例えば、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを形成する反応において、好適な酸化剤には、過酸化水素(H)、尿素過酸化水素(NHCONH.H)、及び、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等が含まれる。
【0029】
本発明の範囲内に入る、方法の第一工程は、2,4−ジアミノピリミジンをハロゲン化し、2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを形成することを含む。この工程は、例えば、まず、2,4−ジアミノピリミジンを適当な溶媒に溶解し、次いで、ハロゲン化剤を反応混合物に添加することにより、行うことができる。
【0030】
この工程の反応混合物の温度は、例えば、約−20℃〜50℃(約0℃〜室温(約25℃)等)であればよい。さらに、2,4−ジアミノピリミジンのハロゲン化剤に対するモル比は、例えば、約1.0:1.5〜1.0:1.0(約1.0:1.1〜1.0:1.0等)であればよい。2,4−ジアミノピリミジン1グラム当たりの溶媒の体積は、例えば、約5ml〜100ml(約10ml〜30ml等)であればよい。
【0031】
好適な溶媒の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、水、及び、酢酸が挙げられる。好ましい溶媒としては、THF、及び、酢酸が挙げられる。ハロゲン化剤の例としては、Br、Cl、F、I、及び、ピリジニウムトリブロミド(PyHBr)が挙げられる。好ましいハロゲン化剤としては、Br、及び、PyHBrが挙げられる。Br、又は、PyHBrがハロゲン化剤として使用される場合、この第一工程で生成する化合物は、2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジンである。
【0032】
この第一工程による反応生成物は、当業者に公知の任意の方法によって、反応混合物から単離できる。例えば、上記反応生成物は、ろ過、中和、ろ過と溶媒(例えば、水)による洗浄、及び/又は、これら操作の組み合わせにより、反応混合物から単離できる。
【0033】
別の方法としては、この第一工程による反応生成物は、中和してもよく、濃縮してもよく、また、単離することなく次の工程に進めることもできる。
【0034】
置換ピリミジン化合物をハロゲン化する他の方法は、例えば、English et al.,J Am.Chem.Soc’y,68,453−58(1946)に、開示されている。
【0035】
本発明の範囲内に入る、方法の次の工程は、2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを環縮合し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを形成することを含む。この工程は、例えば、2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジン(2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジン等)を下記一般式:
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、
Mは、金属カチオンを表し、Rは、アルキル基である)
を有するキサントゲン酸塩化合物と反応させることにより、行うことができる。このような反応は、例えば、窒素雰囲気中、指定時間の間、加熱しながら、上記両試薬を不活性溶媒に溶解させることにより、行うことができる。
【0038】
この工程の反応溶液の温度は、例えば、約50℃〜200℃であればよい。別の実施形態において、この工程の上記温度は約130℃〜180℃である。さらに、2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンのキサントゲン酸塩化合物に対するモル比は、例えば、約1:10〜1:1(約1:2〜1:1等)であればよい。2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジン1グラム当たりの溶媒の体積は、例えば、約5ml〜100ml(約10ml〜40ml等)であればよい。
【0039】
好適な不活性溶媒の例としては、DMF、NMP、DMAc(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ジメチルスルホン、及び、スルホラン(テトラメチレンスルホン)が挙げられる。
【0040】
キサントゲン酸塩化合物に関して、好適な金属カチオンの例としては、カリウム、及び、ナトリウムが挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、及び、エチル基が挙げられる。好ましいキサントゲン酸塩化合物は、エチルキサントゲン酸カリウムである。
【0041】
この工程による反応生成物は、当業者に公知の任意の方法によって、反応混合物から単離できる。例えば、上記反応生成物は、水の添加、中和、ろ過、溶媒(例えば、水及び/又はエタノール)による洗浄、及び/又は、これら操作の組み合わせにより、反応混合物から単離できる。
【0042】
本発明の範囲内に入る、方法の次の工程は、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化し、表題化合物である5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを形成することを含む。この工程は、例えば、塩基性条件下で5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化剤と反応させ、それに続き、酸加水分解させることにより、行うことができる。
【0043】
この工程の反応溶液の温度は、例えば、約0℃〜100℃であればよい。別の実施形態においては、上記温度は約20℃〜90℃である。
【0044】
さらに、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンの酸化剤に対するモル比は、例えば、約1:5〜1:1(約1:3〜1:2等)であればよい。5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオン1グラム当たりの溶媒の体積は、例えば、約5ml〜100ml(約10ml〜30ml等)であればよい。
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化剤と反応させる塩基性条件は、まず、無機塩基等の塩基を水に溶解させ、続いて、得られる溶液に5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを添加することで得ることができる。次いで、酸化剤を上記溶液に添加する。塩基の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンに対するモル比は、例えば、約1:5〜1:1(約1:3〜1:1等)であればよい。
【0046】
使用可能な塩基の例としては、NaOH及びKOH等の無機塩基が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤の例としては、過酸化水素、尿素過酸化水素、及び、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。加水分解に使用可能な酸としては、例えば、HCl(濃HCl等)等の任意の好適な酸が挙げられる。
【0047】
この工程による反応生成物、すなわち、表題化合物は、当業者に公知の任意の方法によって、反応混合物から単離できる。例えば、上記反応生成物は、ろ過、塩基による中和、ろ過と溶媒(例えば、水及び/又はアセトニトリル)による洗浄、及び/又は、これら操作の組み合わせにより、反応混合物から単離できる。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、表題化合物は、本方法の3つの独立した各工程において、クロマトグラフィーによる分離法又は精製法を使用することなく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
下記の実施例により、本発明を説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではない。
【0050】
化合物の調製
下記の実施例において、特に明記しない限り、温度は全て摂氏温度で表され、部やパーセンテージは全て重量による。試薬は、Aldrich Chemical Company、又は、Lancaster Synthesis Ltd.等の市販の製造業者から購入し、特に明記しない限り、さらに精製することなく使用した。テトラヒドロフラン(THF)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、AldrichからSure Seal(登録商標) bottlesで購入し、そのまま使用した。
【0051】
下記に示した反応は、通常、アルゴン又は窒素の陽圧下、外界温度(特に明記しない限り)、無水溶媒中で行われる。上記反応を、TLC、及び/又は、LC−MSにより分析し、出発物質が消費されたことを確認して反応を止めた。薄層クロマトグラフィー(TLC)分析を、ガラス板にシリカゲル60F254を0.2mm塗布した薄層プレート(EM Science製)を用いて行い、紫外線(254nm)を当てて可視化した後、加熱した。
【0052】
H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルは、Varian Mercury−VX400機器(400MHzで作動)において記録した。NMRスペクトルは、対照標準として、適宜、クロロホルム(7.27ppm及び77.00ppm)、CDOD(3.4及び4.8ppm並びに49.3ppm)、DMSO−d、又は、内部標準であるテトラメチルシラン(0.00ppm)を用い、CDCl溶液として得た(ppmで報告されている)。必要に応じ、他のNMR溶媒を使用した。多重性のピークが記録される場合、以下の略語を使用する:s(1重線)、d(2重線)、t(3重線)、q(4重線)、m(多重線)、br(幅広いピーク)、dd(2重線の2重線)、dt(3重線の2重線)。測定時に、結合定数はヘルツ(Hz)で報告されている。
【0053】
マススペクトルは、Anadys Pharmaceuticals,Inc.の分析化学部門によって行われた(+)−ES又はAPCI(+)LC/MSによる。
【0054】
下記の合成経路及び実験手順に、以下のような、多くの一般的な化学略語を使用する:THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、EtOAc(酢酸エチル)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、MeCN(アセトニトリル)、MeOH(メタノール)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、Br(臭素)、H(過酸化水素)。
【0055】
実施例1
第一工程:ハロゲン化による2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジンの形成
室温中、酢酸(375ml)に溶解した2,4−ジアミノピリミジン(25g、0.23mol、1.0当量)の撹拌混合液に、Br(36.3g、0.23mol、1.0当量)を添加した。得られた混合液を室温(約25℃)で2時間撹拌し、次いで、ろ過した。得られた黄色固体を水(250ml)と混合し、得られた混合液のpHを、50%NaOH溶液を用いて、8〜9に調製した。室温で30分間撹拌を続け、上記混合液をろ過し、水洗し、次いで、真空乾燥して、38g(87%)の2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジンを白色固体として得た。H NMR(400MHz,d−DMSO)δ6.60(s,2H,ex.DO),6.50(br,2H,ex.DO),7.76(s,1H);MS(+)−ES[M+H] m/z 191。
【0056】
第二工程:環縮合による5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンの形成
2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジン(9.5g、50mmol、1.0当量)及びエチルキサントゲン酸カリウム(16g、100mmol、2当量)をDMF(300ml)に溶解させた溶液を加熱し、N雰囲気中、10時間、還流した。反応溶液を室温まで冷却し、水(600ml)を添加した。次いで、上記溶液のpHを、HSO(2ml)を用いて、約5に調製し、得られた懸濁液を50〜60℃で30分間撹拌し、約30℃まで冷却し、ろ過し、及び、水洗した。生成物を50〜60℃で真空乾燥して、8.2g(89%)の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを黄色固体として得た。H NMR(400MHz,d−DMSO)δ6.91(s,2H,ex.DO),8.34(s,1H),12.3(br,1H,ex.DO);MS(+)−ES[M+H] m/z 185。
【0057】
第三工程:酸化による5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの形成
手順A:NaOH(0.6g、15mmol、3当量)を水(20ml)に溶解させた溶液に、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオン(0.92g、5mmol、1.0当量)を添加した。上記混合液が溶液になるまで撹拌した。H(0.68g、2.3ml(30%)、20mmol、4当量)の水溶液を上記溶液にゆっくりと滴加し、50℃より低い温度に保持した。次いで、上記反応物を室温(約25℃)まで冷却した。濃HCl(37%、6ml)を上記溶液に、pHが1未満になるまで、添加した。上記混合液を室温で30分間撹拌した。セライト(登録商標)(2g)を懸濁液に添加し、この懸濁液をろ過し、水(10ml)で洗浄した。ろ液に50%NaOH溶液を添加してpHを5〜5.5に調製し、30分間撹拌し、ろ過し、水洗し、及び、50℃で真空乾燥して、0.52g(62%)の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを淡黄色固体として得た。H NMR(400MHz,d−DMSO)δ6.70(s,2H,ex.DO),8.2(s,1H),12.2(br s,1H,ex.DO);MS(+)−ES[M+H] m/z 169。
【0058】
別の方法としては、第三工程の手順は、以下のように、過酸化水素の代わりに、尿素過酸化水素を使用して行うことができる。
【0059】
手順B:NaOH(0.6g、15mmol、3当量)を水(20ml)に溶解させた溶液に、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオン(0.92g、5mmol、1.0当量)を添加した。上記混合液を溶液になるまで撹拌した。尿素過酸化水素(2.8g、30mmol、6当量)を上記溶液にゆっくりと滴加し、50℃より低い温度に保持した。次いで、上記反応物を室温(約25℃)まで冷却した。濃HCl(37%、6ml)を上記溶液に、pHが1未満になるまで、添加した。上記混合液を室温で30分間撹拌した。セライト(登録商標)(2g)を溶液に添加し、この溶液をろ過し、水(10ml)で洗浄した。ろ液に50%NaOH溶液を添加してpHを5〜5.5に調製した。上記溶液を50〜60℃まで30分間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、ろ過し、及び、水洗し、50℃で真空乾燥して、0.56g(67%)の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを淡黄色固体として得た。この生成物のH NMR、HPLC、及び、LCMS分析は、上記実施例1の第二工程における手順Aにより生成する上記生成物の分析方法と同一である。
【0060】
実施例2
第一工程:ハロゲン化による2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジンの形成
0℃で、2,4−ジアミノピリミジン(5.5g、0.05mol、1.0当量)とTHF(200ml)の混合液に、ピリジニウムトリブロミド(17.5g、0.055mol、1.1当量)を3回に分けて添加した。得られた混合液を約0℃で2時間撹拌し、ろ過し、及び、THF(20ml)で洗浄した。得られた黄色固体を水(100ml)と混合し、得られた混合液を、pHが約7になるまで、10%NaOH溶液を用いて中和した。室温で30分間撹拌を続け、その後、上記混合液をろ過し、水(2×20ml)で洗浄し、及び、50℃で真空乾燥して、8.2g(87%)の2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジンを白色固体として得た。この生成物のH NMR、HPLC、及び、LCMS分析は、実施例1の第一工程における上記生成物の分析方法と同一である。
【0061】
第二工程:環縮合による5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンの形成
2,4−ジアミノ−5−ブロモ−ピリミジン(0.95g、5mmol、1.0当量)及びエチルキサントゲン酸カリウム(1.6g、10mmol、2.0当量)をDMF(30ml)に溶解させた溶液を加熱し、N雰囲気中、10時間、還流した。反応溶液を室温(約25℃)まで冷却し、水(30ml)を上記溶液に添加した。上記溶液のpHを、3.6N HSOを用いて、約5に調製した。得られた混合液を50〜60℃まで1時間加熱し、室温まで冷却かつ2時間撹拌し、ろ過し、水(20ml)とエタノール(20ml)で洗浄し、及び、乾燥して、0.8g(87%)の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを黄色固体として得た。この生成物のH NMR、HPLC、及び、LCMS分析は、実施例1の第二工程における上記生成物の分析方法と同一である。
【0062】
第三工程:酸化による5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの形成
5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオン(0.24g、1.3mmol、1.0当量)を、0.1gのNaOH(2.5mmol、2.5当量)を含有する8mlの水に、溶解した。得られた溶液を80℃まで加熱した。次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(4.4ml、10〜13%溶液、5当量)の溶液を、約80℃に保持した上記溶液にゆっくりと添加し、80〜90℃で30分間撹拌を続けた。上記溶液を約70℃まで冷却し、濃HCl溶液(0.3ml、37%、2.3当量)を添加し、その後、得られた溶液を80〜90℃まで1時間加熱した。反応混合液を室温まで冷却し、セライト(登録商標)パッドを通してろ過した。ろ液のpHを、10%NaOH溶液を用いて、5〜5.5に調製した。得られた混合液を60℃まで1時間加熱し、室温まで冷却し、かつ、少なくとも2時間撹拌し、ろ過し、水とアセトニトリルで洗浄して、0.06g(27%)の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを淡黄色固体として得た。この生成物のH NMR、HPLC、及び、LCMS分析は、実施例1の第三工程における上記生成物の分析方法と同一である。
【0063】
上記記載は、性質上例示的かつ説明的なものであり、本発明及びその好ましい実施形態を説明するものであることを理解されたい。当業者は、通例の実験法により、本発明の意図から外れることなく、明白な修正及び変形が可能であることを理解するであろう。このように、本発明は、上記記載によってではなく、本願の特許請求の範囲及びその均等物によって、定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを調製するための方法であって、
(i)下記式:
【化2】

の2,4−ジアミノピリミジンをハロゲン化し、下記式:
【化3】

(式中、
Xは、F、Cl、Br、及びIから選択されるハロゲン基を表す)
の2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを形成し、
(ii)前記2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを環縮合し、下記式:
【化4】

の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを形成し、
(iii)前記5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化し、5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを形成する
方法。
【請求項2】
前記Xは、Br、及び、Clから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記XはBrである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記環縮合の工程は、下記式:
【化5】

(式中、
Mは金属カチオンを表し、Rはアルキル基である)
を有するキサントゲン酸塩化合物の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Mは、カリウムカチオン、及び、ナトリウムカチオンから選択され、かつ、前記Rは、メチル基、及び、エチル基から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Mはカリウムカチオンであり、かつ、前記Rはエチル基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化の工程は、塩基性条件下で前記の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化剤と反応させ、それに続き、酸加水分解させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤は、過酸化水素、尿素過酸化水素、及び、次亜塩素酸ナトリウムから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤は過酸化水素である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Xは、Cl、及び、Brから選択され、前記Mは、カリウムカチオン、及び、ナトリウムカチオンから選択され、前記Rは、メチル基、及び、エチル基から選択され、かつ前記酸化の工程は、塩基性条件下で前記5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化剤と反応させ、それに続き、酸加水分解させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記XはBrであり、前記Mはカリウムカチオンであり、前記Rはエチル基であり、かつ、前記酸化剤は過酸化水素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
下記式:
【化6】

(式中、
Xは、F、Cl、Br、及びIから選択されるハロゲン基である)
の2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンを環縮合し、下記式:
【化7】

の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを形成するための方法であって、
前記環縮合は、下記式:
【化8】

(式中、
Mは金属カチオンであり、Rはアルキル基である)
を有するキサントゲン酸塩化合物の存在下で行われ、かつ、
前記反応は、不活性溶媒の存在下、前記反応物の溶液を加熱することを含む、
方法。
【請求項13】
前記Xは、Br、又は、Clから選択され、前記Mは、カリウムカチオン、及び、ナトリウムカチオンから選択され、前記Rは、メチル基、及び、エチル基から選択され、かつ、前記不活性溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及び、N−メチルピロリジノン(NMP)から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記XはBrであり、前記Mはカリウムカチオンであり、前記Rはエチル基であり、かつ、前記不活性溶媒はDMFである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンの前記キサントゲン酸塩化合物に対するモル比は、約1:10〜1:1であり、温度は、約50℃〜200℃であり、かつ、前記2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジン1グラム当たりの前記不活性溶媒の体積は、約5ml〜100mlである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジンの前記キサントゲン酸塩化合物に対するモル比は、約1:2〜1:1であり、温度は、約140℃〜165℃であり、かつ、前記2,4−ジアミノ−5−ハロ−ピリミジン1グラム当たりの前記不活性溶媒の体積は、約10ml〜40mlである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
下記式:
【化9】

の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化し、下記式:
【化10】

の5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンを形成するための方法であって、
前記方法は、塩基性条件下で前記5−アミノ−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−チオンを酸化剤と反応させ、それに続き、酸加水分解させることを含む
方法。
【請求項18】
前記塩基は、NaOH、及び、KOHから選択され、かつ、前記酸化剤は、過酸化水素、尿素過酸化水素、及び、次亜塩素酸ナトリウムから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基はNaOHであり、前記酸化剤は過酸化水素であり、かつ、前記酸はHClである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化、及び、それに続く前記酸加水分解反応の温度は、約20℃〜100℃である、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−516709(P2009−516709A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541505(P2008−541505)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/061111
【国際公開番号】WO2007/062355
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504204443)アナディス ファーマシューティカルズ インク (13)
【Fターム(参考)】