説明

5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法

【課題】5−ジフルオロメトキシキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を簡便に、且つ収率良く製造する方法の提供。
【解決手段】一般式(1)
【化1】


(式中、Rは、アルキル基等を、Rは電子吸引性基を、Rはアルキル基等を、nは0又は2を示す。)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物と、一般式(2)
【化2】


(式中、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンを、ジアルキルケトン又はアルキルニトリル、及び水酸化ナトリウムの存在下で反応させる事を特徴とする、一般式(3)
【化3】


(式中、R、R、R及びnは前記と同じ意味を示す。)で表される5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【効果】目的物を簡便な操作で製造できる。更に、本発明方法では原料や生成物の分解が少なく、反応時間も大幅に短縮されることから、工業的な利用価値が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明によって得られる5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物は医薬及び農薬の製造中間体として有用である。
【0003】
5−ジフルオロメトキシピラゾール化合物を得る方法として、例えば、5−ヒドロキシピラゾール化合物とクロロジフルオロメタンをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、炭酸水素カリウムの存在下で反応させる方法(非特許文献1参照)、ジオキサンと水の混合溶媒中、水酸化ナトリウムの存在下で反応させる方法(特許文献1参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物に対して、クロロジフルオロメタンを用いて5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を得る方法に関しては、知られていない。
【0005】
一方、5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物は、ケト−エノール互変異性体として存在し、ケト型化合物は、電子吸引基を持つオレフィンへの、硫黄化合物のマイケル付加生成物であると理解できるが、一般に、この種のマイケル付加は可逆的であり、付加物を強塩基とともに加熱すると硫黄化合物が脱離することが知られている(非特許文献2参照)。また、強塩基条件下、クロロジフルオロメタンを用いて、5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物から5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を得ようとする場合、例えば、アルコール溶媒中で反応すると、反応の進行と競争して、原料の分解が起こることが知られている(非特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】国際公開公報 WO95/19967
【非特許文献1】ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(J.Medicinal Chemistry)、第43巻−16号、2975−2981頁(2000年)
【非特許文献2】有機合成における硫黄化合物の役割(三共出版株式会社)、5.5.2章、171−174頁、(1981年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物に対してクロロジフルオロメタンを用いて5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を効率よく製造する方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような状況に鑑み、本発明者が5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を製造する方法について鋭意研究を重ねた結果、意外にも、5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物とハロゲン化ジフルオロメタンを、塩基として水酸化ナトリウムを用い、炭素数1乃至3(以下、炭素数については、例えば炭素数1乃至3の場合には、これを「C1〜C3」のように略記する。)のジ(C1〜C3アルキル)ケトン又は(C1〜C3アルキル)ニトリルの存在下に反応させることによって、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法により、5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の新規な工業的製造法が提供される。本発明方法によれば、原料として、5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物とハロゲン化ジフルオロメタンを用いて5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を簡便な操作で製造できる。更に、本発明方法では原料や生成物の分解が少なく、反応時間も大幅に短縮されることから、工業的な利用価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、下記〔1〕乃至〔4〕項に記載の発明を提供する事により前記課題を解決したものである。
【0012】
〔1〕一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは、アルキル基、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い複素環基を示し、Rは電子吸引性基を示し、Rはアルキル基、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い複素環基を示し、nは0又は2を示す。)
【0015】
で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物と、一般式(2)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
【0018】
で表されるハロゲン化ジフルオロメタンを、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン又は(C1〜C3アルキル)ニトリル、及び水酸化ナトリウムの存在下で反応させる事を特徴とする、一般式(3)
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R、R、R及びnは前記と同じ意味を示す。)
【0021】
で表される5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【0022】
〔2〕一般式(2)中のXが、塩素である請求項〔1〕に記載の5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【0023】
〔3〕nが0である、請求項〔1〕乃至〔2〕項の何れか1項に記載の5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【0024】
〔4〕nが2である請求項〔1〕乃至〔2〕項の何れか1項に記載の5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
本発明は、一般式(1)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物と、一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンとを、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン又は(C1〜C3アルキル)ニトリル、及び水酸化ナトリウムの存在下で反応させることを特徴とする、一般式(3)で表される5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法である。
【0027】
まず、本発明方法の原料として用いる、一般式(1)で表される原料化合物について説明する。
【0028】
一般式(1)中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;例えばフェニル基、ナフチル基等の、単環又は縮合環のC6〜C10芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基は、例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、メトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;ニトロ基;例えば、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル−(C1〜C6アルキル)基;シアノ基等の置換基を有していても良い。);例えばフリル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、オキザゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジル基、ピリミジニル基、インドリル基、キノリニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、トリアジニル基等に代表される、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環の芳香族複素環基(該芳香族複素環基は、例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、メトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;ニトロ基;例えば、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル−(C1〜C6アルキル)基;シアノ基等の置換基を有していても良い。)や、例えばヒドロフリル基、ピラニル基、チオラニル基、チアニル基、ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペラジニル基等に代表される、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環の芳香族性を有しない複素環基(該芳香族性を有しない複素環基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ヒドロキシアルキル基;例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基、又はそのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩やカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩に代表される、カルボキシル基の金属塩;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;ニトロ基;アミノ基;例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、直鎖又は分岐のモノ又はジ(C1〜C6アルキル)アミノ基;例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニルアミノ基;シアノ基;ホルミル基;例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基;例えばベンゾイル基、ナフトイル基等の、環を構成する原子数が6乃至14、好ましくは6乃至10のアリールカルボニル基;例えばピリジルカルボニル基、チエニルカルボニル基、フリルカルボニル基等の、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環のヘテロアリールカルボニル基等の置換基を1以上有していても良い。)を包含する、芳香族性を有するか又は有しない、複素環基等を例示することができる。
【0029】
一般式(1)中のRで表される電子吸引性基とは、誘起効果により相手から電子を引きつける原子団を意味し、具体的には、例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;ニトロ基;ホルミル基;例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基;アミノカルボニル基;例えばメチルアミノカルボニル基等の直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル基;例えばジメチルアミノカルボニル基等の、直鎖又は分岐ジ(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル基;シアノ基;例えばクロロフェニル基、アセチルフェニル基、ニトロフェニル基、アセチルナフチル基等に代表される、置換基として誘起効果により相手から電子を引きつける原子団(例えば、ここまでに誘起効果により相手から電子を引きつける原子団として例示した、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;ハロゲン原子;ニトロ基;ホルミル基;直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基;アミノカルボニル基;直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル基;直鎖又は分岐ジ(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル基;シアノ基等の原子団)を1以上有する、単環又は縮合環のC6〜C10芳香族炭化水素基;シアノピリジル基、クロロチエニル基、ニトロフリル基、ホルミルピリジル基等に代表される、置換基として誘起効果により相手から電子を引きつける原子団(例えば、ここまでに誘起効果により相手から電子を引きつける原子団として例示した、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;ハロゲン原子;ニトロ基;ホルミル基;直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基;アミノカルボニル基;直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル基;直鎖又は分岐ジ(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル基;シアノ基等の原子団)を1以上有する、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環の芳香族複素環基等を例示することができる。
【0030】
また、一般式(1)中のRで表される置換基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;フェニル基、ナフチル基等の、単環又は縮合環のC6〜C10芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基は、例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、メトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;ニトロ基;例えば、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル−(C1〜C6アルキル)基;シアノ基等の置換基を有していても良い。);例えばフリル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、オキザゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジル基、ピリミジニル基、インドリル基、キノリニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、トリアジニル基等に代表される、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環の芳香族複素環基(該芳香族複素環基は、例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、メトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;ニトロ基;例えば、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル−(C1〜C6アルキル)基;シアノ基等の置換基を有していても良い。)や、例えばヒドロフリル基、ピラニル基、チオラニル基、チアニル基、ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペラジニル基等に代表される、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環の芳香族性を有しない複素環基(該芳香族性を有しない複素環基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル基;ヒドロキシル基;例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の、直鎖又は分岐C1〜C6アルコキシ基;例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ヒドロキシアルキル基;例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)−(C1〜C6アルキル)基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の、直鎖又は分岐C1〜C6ハロアルキル基;カルボキシル基、又はそのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩やカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩に代表される、カルボキシル基の金属塩;例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルコキシ)カルボニル基;例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ−ド等のハロゲン原子;ニトロ基;アミノ基;例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、直鎖又は分岐のモノ又はジ(C1〜C6アルキル)アミノ基;例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニルアミノ基;シアノ基;ホルミル基;例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の、直鎖又は分岐(C1〜C6アルキル)カルボニル基;例えばベンゾイル基、ナフトイル基等の、環を構成する原子数が6乃至14、好ましくは6乃至10のアリールカルボニル基;例えばピリジルカルボニル基、チエニルカルボニル基、フリルカルボニル基等の、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1つを異項原子として1乃至4個有する、環を構成する原子数が5乃至14、好ましくは5乃至10の単環又は縮合環のヘテロアリールカルボニル基等の置換基を1以上有していても良い。)を包含する、芳香族性を有するか又は有しない、複素環基等を例示することができる。
【0031】
一般式(1)中のnが0の場合は一般式(1)で表される化合物はスルフィド類であり、nが2の場合は一般式(1)で表される化合物はスルホン類である。
【0032】
一般式(1)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物は公知の化合物であるか、あるいは、例えば後記参考例1〜4に記す様に、5−ヒドロキシピラゾール類とホルムアルデヒド及び硫黄化合物との反応により、容易に合成することが可能である。
【0033】
続いて、一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンについて説明する。
【0034】
一般式(2)中のXは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン原子を示す。
【0035】
従って、当反応に使用できる一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンとしては、具体的にはトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ブロモジフルオロメタン、ジフルオロヨードメタンを例示できる。好ましくはクロロジフルオロメタン、ブロモジフルオロメタンを挙げることができるのであり、特に好ましくはクロロジフルオロメタンを挙げることができる。
【0036】
これらの一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンは公知化合物である。
【0037】
当反応における、一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンの使用モル比は、一般式(1)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物に対して如何なるモル比でも反応が進行するが、一般式(1)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンが、通常0.1〜10.0モル、好ましくは1.0〜5.0モル、更に好ましくは1.3〜2.2モルの範囲を例示できる。
【0038】
当反応は水酸化ナトリウムを用いて行なう。当反応に用いうる水酸化ナトリウムとしては、固体状の水酸化ナトリウムであれば良く、市販の96%水酸化ナトリウムや、工業品として入手可能なビーズ状の99%水酸化ナトリウムが好ましく、特に99%水酸化ナトリウムが好ましい。
【0039】
水酸化ナトリウムの使用量は、反応が充分に進行する量であれば何れでもよいが、一般式(1)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物1モルに対して1.0〜20モル、好ましくは1.5〜10モル、より好ましくは2.0〜3.0モルの範囲を例示できる。
【0040】
当反応は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等の、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン;または、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等の、(C1〜C3アルキル)ニトリルの存在下で実施する。通常は、反応の溶媒を兼ねて、反応系の攪拌が充分にできるように過剰量を用い、具体的には一般式(1)で表される原料化合物1モルに対して通常0.05〜10l、好ましくは0.3〜5l、より好ましくは0.5〜2lの範囲であれば良い。
【0041】
ジ(C1〜C3アルキル)ケトン、(C1〜C3アルキル)ニトリルは、単独で用いるか、あるいは反応を阻害しない溶媒、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素;ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエーテル等のエ−テル系溶媒;ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素等に混合して用いることもできる。但し、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン又は(C1〜C3アルキル)ニトリルの混合比率を極端に下げることは、反応速度の低下を伴うため好ましくなく、芳香族炭化水素等の混合する溶媒に対する混合比率(容量比)が1以上(すなわち芳香族炭化水素等の混合する溶媒と等容量以上)であることが好ましく、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン、(C1〜C3アルキル)ニトリルを、反応を阻害しない溶媒と混合して使用する場合でも、その使用量は上記範囲(一般式(1)で表される原料化合物1モルに対してジ(C1〜C3アルキル)ケトン、(C1〜C3アルキル)ニトリルが通常0.05〜10l、好ましくは0.3〜5l、より好ましくは0.5〜2lの範囲)となるようにする。
【0042】
全溶媒量としては、反応系の攪拌が充分にできる量であれば良いが、一般式(1)で表される原料化合物1モルに対して通常0.05〜10l、好ましくは0.5〜2lの範囲であれば良い。
【0043】
当反応の反応温度は、−10℃〜35℃で行う必要があり、反応速度との兼ね合いから0℃〜10℃が好ましい。
【0044】
当反応の反応時間は特に制限されないが、反応速度は、一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンの導入速度により変化する。通常は1時間〜30時間で反応は完結する。
【0045】
反応器への各成分の添加順序及び反応方法は特に制限されないが、好適な例としては有機層中に塩基を加え、これに一般式(1)で表される原料化合物を加えて懸濁させ、次いで、ハロゲン化ジフルオロメタンを導入することにより反応を行い、一般式(3)で表される生成物を得る方法が挙げられる。
【0046】
当反応によれば、一般式(1)で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物と、一般式(2)で表されるハロゲン化ジフルオロメタンとを、水酸化ナトリウム存在下、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン又は(C1〜C3アルキル)ニトリルを用いることで、一般式(3)で表される5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物が生成する。得られる一般式(3)で表される5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物は、医薬、農薬の中間体として有用な化合物である。
【実施例】
【0047】
次に、参考例及び実施例を挙げて本発明の製造方法を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
(参考例1)3−[(5−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルチオ]−4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチルイソオキサゾールの合成
5−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール1.7g(10mmol)と水酸化ナトリウム1.6g(40mmol)を水10mlに溶解した。この溶液を室温で攪拌しながら、35%ホルムアルデヒド水溶液(35%ホルマリン溶液)1.7g(20mmol)を滴下し、同温で1時間攪拌した。これに、[5,5−ジメチル(4,5−ジヒドロイソオキサゾロ−3−イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩2.1g(10mmol)の水10ml溶液を室温で滴下し、2時間攪拌した。反応後、35%塩酸5.0g(50mmol)を滴下した。析出した結晶を吸引ろ過後、水5mlで2回洗浄した。温風乾燥機にて乾燥することにより、表題化合物2.5g(収率80.1%)を淡黄色結晶として得た。得られた結晶は、n−ヘキサン/2−プロパノール混合溶媒から再結晶でき、白色結晶として得た。
【0049】
H−NMR値(300MHz,MeOH−d4):σ=4.88(br,1H),4.08(s,2H),3.64(s,3H),2.91(s,2H),1.39(s,6H)ppm
LC−MS(EI):m/z=309(M),177(base)
融点:115−116℃
【0050】
(参考例2)5−ヒドロキシ−1−メチル−4−メチルチオメチル−3−トリフルオロメチルピラゾールの合成
5−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール1.7g(10mmol)と水酸化ナトリウム0.6g(15mmol)を水10mlに溶解した。この溶液を室温で攪拌しながら、35%ホルムアルデヒド水溶液(35%ホルマリン溶液)1.7g(20mmol)を滴下し、同温で1時間攪拌した。これに、10%ナトリウムチオメトキシド水溶液7.1g(10mmol)を室温で滴下し、6時間攪拌した。反応後、35%塩酸5.0g(50mmol)を滴下した。析出した結晶を吸引ろ過後、水5mlで2回洗浄した。温風乾燥機にて乾燥することにより、表題化合物1.6g(収率72.7%)を淡黄色結晶として得た。得られた結晶は、水−メタノールから再結晶でき、白色結晶として得た。
【0051】
H−NMR値(300MHz,MeOH−d4):σ=4.86(br,1H),3.64(s,3H),3.56(s,2H),2.02(s,3H)ppm
LC−MS(EI):m/z=226(M),179(base)
融点:123−124℃
【0052】
(参考例3)4−[(5−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルスルホニル]トルエンの合成
5−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール8.3g(50mmol)と水酸化ナトリウム3.0g(75mmol)を水50mlに溶解した。この溶液を室温で攪拌しながら、35%ホルムアルデヒド水溶液(35%ホルマリン溶液)8.5g(100mmol)を滴下し、同温で1時間攪拌した。これに、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム9.0g(50mmol)を室温で投入し、2時間攪拌した。反応後、35%塩酸25.0g(250mmol)を滴下した。さらに水100mlを加え、析出した結晶を吸引ろ過後、水20mlで2回洗浄した。温風乾燥機にて乾燥することにより、表題化合物14.0g(収率83.8%)を白色結晶として得た。
【0053】
H−NMR値(300MHz,MeOH−d4):σ=7.62(d;J=8.4Hz,2H),7.39(d;J=8.4Hz,2H),4.85(br,1H),4.32(s,2H),3.63(s,3H),2.44(s,3H)ppm
LC−MS(EI):m/z=334(M),179(base)
融点:135℃
【0054】
(参考例4)4−[(3−シアノ−5−ヒドロキシ−1−フェニルピラゾロ−4−イル)−メチルスルホニル]トルエンの合成
3−シアノ−5−ヒドロキシ−1−フェニルピラゾール1.8g(10mmol)と水酸化ナトリウム0.6g(15mmol)を水10mlに溶解した。この溶液を室温で攪拌しながら、35%ホルムアルデヒド水溶液(35%ホルマリン溶液)1.7g(20mmol)を滴下し、同温で1時間攪拌した。これに、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム1.8g(10mmol)を室温で投入し、2時間攪拌した。反応後、35%塩酸5.0g(50mmol)を滴下した。さらに水20mlを加え、析出した結晶を吸引ろ過後、水20mlで2回洗浄した。温風乾燥機にて乾燥することにより、表題化合物3.0g(収率85.7%)を淡黄色結晶として得た。
【0055】
H−NMR値(300MHz,MeOH−d4):σ=7.4−7.7(m;9H),4.86(s,1H),4.40(s,2H),2.46(s,3H)ppm
LC−MS(EI):m/z=353(M),197(base)
融点:214℃
【0056】
実施例1:3−[(5−ジフルオロメトキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルチオ]−4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチルイソオキサゾールの合成
アセトニトリル100mlに、参考例1により合成した3−[(5−ヒドロキシ−1−フェニル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルチオ]−4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチルイソオキサゾール33.2g(純度93.3%,0.1mol)と99%水酸化ナトリウム12.0g(0.3mol)を添加し、室温で1時間攪拌した。この懸濁液を氷冷し、5〜15℃の範囲内を保ちながら、クロロジフルオロメタン17.3g(0.2mol)を4時間かけて導入し、同温度範囲内で5時間反応した。反応終了後、トルエン100ml、水50ml及び35%塩酸10mlを加え、有機層を分取した。水層をトルエン50mlで再抽出した後、合わせた有機層を水50ml、飽和食塩水20mlで順次洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去することにより、表題化合物38.0g(純度85%,純分収率90%)を赤褐色の液体として得た。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、表題化合物22.6gを白色結晶として得た。
H−NMR値(300MHz,CDCl):σ=6.72(t;J=72Hz,1H),4.17(s,2H),3.80(s,3H),2.77(s,2H),1.40(s,6H)
GC−MS(EI):m/z=359(M),179(base)
融点:47−48℃
【0057】
以下の実施例2〜5においては、実施例1で得られた化合物を標品として用いた内部標準分析法(内部標準;n−オクチルベンゼン)で収率を算出した。
【0058】
実施例2:3−[(5−ジフルオロメトキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルチオ]−4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチルイソオキサゾールの収率確認
アセトニトリル20mlに、n‐オクチルベンゼン0.1g(内部標準物質)、参考例1により合成した3−[(5−ヒドロキシ−1−フェニル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルチオ]−4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチルイソオキサゾール1.7g(純度93.3%,0.01mol)及び99%水酸化ナトリウム1.2g(0.3mol)を添加し、室温で1時間攪拌した。この懸濁液を氷冷し、0〜10℃の範囲内を保ちながら、過剰量のクロロジフルオロメタンをバルーンを用いて導入した。吹き込み開始から、1時間後、反応液をサンプリングして、ガスクロマトグラフィーを用いた内部標準分析法にて反応収率を算出した結果、収率は89%であった。
【0059】
実施例3〜5及び比較例1〜9
実施例2と同様の操作にて、各種溶媒中(総量は20ml)で反応を行った。結果を(表1)に纏めた。比較例に示す反応においては、何れも相関移動触媒として、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.05gを添加した。なお、(表1)中の溶媒の項における「v:v」は容量比を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
(比較例10)
実施例2の99%水酸化ナトリウムを99%水酸化カリウムに置き換えた以外は(使用モル数は同じ)、実施例2と同様の操作で反応を行った。結果、吹き込み開始から1時間後の分析において、目的物は10%の生成のみで、原料も消失しており、残りは分解物であった。
【0062】
(比較例11)
実施例2の水酸化ナトリウムを炭酸水素カリウムに置き換えた以外は(使用モル数は同じ)、実施例2と同様の操作で反応を行った。結果、吹き込み開始から24時間後の分析において、目的物は1%以下の生成のみで、残りは原料であった。
【0063】
実施例6:5−ジフルオロメトキシ−1−メチル−4−メチルチオメチル−3−トリフルオロメチルピラゾールの合成法
アセトニトリル10mlに、参考例2により合成した5−ヒドロキシ−1−メチル−4−メチルチオメチル−3−トリフルオロメチルピラゾール1.2g(5mmol)と99%水酸化ナトリウム0.6g(15mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。この懸濁液を氷冷し、0〜10℃の範囲内を保ちながら、過剰量のクロロジフルオロメタンをバルーンを用いて導入した。吹き込み開始から1時間後、バルーンを外し、反応液に水20ml、酢酸エチル20mlを加え、有機層を分取した。さらに、水層を酢酸エチル20mlで再抽出し、合わせた有機層を水10ml、飽和食塩水10mlで順次洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去することにより、表題化合物1.2g(収率88%)を淡黄色液体として得た。
【0064】
H−NMR値(300MHz,CDCl):σ=6.82(t;J=72.6Hz,1H),3.82(s,3H),3.61(s,2H),2.09(s,3H)
GC−MS(EI):m/z=276(M),179(base)
【0065】
実施例7:4−[(5−ジフルオロメトキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルスルホニル]トルエンの合成法
アセトニトリル10mlに、参考例3により合成した4−[(5−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾロ−4−イル)−メチルスルホニル]トルエン1.7g(5mmol)と99%水酸化ナトリウム0.6g(15mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。この懸濁液を氷冷し、0〜10℃の範囲内を保ちながら、過剰量のクロロジフルオロメタンをバルーンを用いて導入した。吹き込み開始から1時間後、バルーンを外し、反応液に水20ml、酢酸エチル20mlを加え、有機層を分取した。さらに、水層を酢酸エチル20mlで再抽出し、合わせた有機層を水10ml、飽和食塩水10mlで順次洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去することにより、表題化合物2.1g(収率99%)を淡黄色結晶として得た。得られた結晶は、n−ヘキサン−2−プロパノールから再結晶でき、白色結晶として得た。
【0066】
H−NMR値(300MHz,CDCl):σ=7.70(d;J=8.4Hz,2H),7.35(d;J=8.4Hz,2H),6.99(t;J=72.3Hz,1H),4.12(s,2H),3.85(s,3H),2.46(s,3H)
GC−MS(EI):m/z=384(M),229(base)
【0067】
実施例8:4−[(3−シアノ−5−ジフルオロメトキシ−1−フェニルピラゾロ−4−イル)−メチルスルホニル]トルエンの合成法
アセトニトリル10mlに、参考例4により合成した4−[(3−シアノ−5−ヒドロキシ−1−フェニルピラゾロ−4−イル)−メチルスルホニル]トルエン1.8g(5mmol)と99%水酸化ナトリウム0.6g(15mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。この懸濁液を氷冷し、0〜10℃の範囲内を保ちながら、過剰量のクロロジフルオロメタンをバルーンを用いて導入した。吹き込み開始から1時間後、バルーンを外し、反応液に水20ml、酢酸エチル20mlを加え、有機層を分取した。さらに、水層を酢酸エチル20mlで再抽出し、合わせた有機層を水10ml、飽和食塩水10mlで順次洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去することにより、表題化合物1.8g(収率88%)を赤色結晶として得た。得られた結晶は、n−ヘキサン−2−プロパノールから再結晶でき、白色結晶として得た。
【0068】
H−NMR値(300MHz,CDCl):σ=7.75(d;J=8.4Hz,2H),7.6−7.4(m,5H),7.41(d;J=8.4Hz,2H),6.87(t;J=71.4Hz,1H),4.31(s,2H),2.49(s,3H)
GC−MS(EI):m/z=403(M),248(base)
【産業上の利用可能性】
【0069】
5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の新規な工業的製造法が提供される。本発明方法によれば、原料として、合成の容易な5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物とハロゲン化ジフルオロメタンを用いて5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を簡便な操作で製造できる。本発明方法では原料の分解が少なく、高収率で、医薬及び農薬の製造中間体として有用な5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、アルキル基、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い複素環基を示し、Rは電子吸引性基を示し、Rはアルキル基、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い複素環基を示し、nは0又は2を示す。)
で表される5−ヒドロキシ−4−チオメチルピラゾール化合物と、一般式(2)
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化ジフルオロメタンを、ジ(C1〜C3アルキル)ケトン又は(C1〜C3アルキル)ニトリル、及び水酸化ナトリウムの存在下で反応させる事を特徴とする、一般式(3)
【化3】

(式中、R、R、R及びnは前記と同じ意味を示す。)
で表される5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【請求項2】
一般式(2)中のXが、塩素である請求項〔1〕に記載の5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【請求項3】
nが0である、請求項〔1〕乃至〔2〕項の何れか1項に記載の5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。
【請求項4】
nが2である請求項〔1〕乃至〔2〕項の何れか1項に記載の5−ジフルオロメトキシ−4−チオメチルピラゾール化合物の製造方法。

【公開番号】特開2007−246396(P2007−246396A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−132764(P2004−132764)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(000102049)イハラケミカル工業株式会社 (48)