説明

8位に水酸基を有するベンゾピラン化合物の製造方法

【課題】 ニプラジロールのような医薬品を製造する際の原体として重要な化合物である3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランのような8位に水酸基を有するベンゾピラン化合物を製造する方法であって、高純度品を効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】 3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランのようにベンゾピラン骨格の8位に保護基を有する化合物を加水分解して脱保護することにより目的物の粗体を得、得られた粗体を有機溶媒中でシリガケルなどの無機酸化物及び活性炭と接触させることにより粗体に含まれる不純物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環系疾患治療剤等に用いられる医薬原体を製造する際の中間体として有用なヒドロキシジヒドロベンゾピラン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,4−ジヒドロ−8−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランは、一般名ニプラジロールと呼ばれている医薬原体であり、循環系疾患治療剤、高眼圧症治療剤等に用いられている。一般にニプラジロールは、下記(A)〜(E)の5つの工程を含む方法で製造されている(特許文献1参照)。
【0003】
(A) 3,4−ジヒドロ−3,8−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピランのベンゼン環に結合している水酸基を保護し、3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピランを得る工程、
(B) 上記工程で得られた3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピランのピラン環に結合している水酸基をニトロエステル化して3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランを得る工程、
(C) 上記工程で得られた3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランを加水分解することにより脱保護して3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランを得る工程、
(D) 上記工程で得られた3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランとエピハロヒドリンとを塩基存在下反応させてエポキシ化し、3,4−ジヒドロ−8−(2、3−エポキシ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランを得る工程、及び
(E) 上記工程で得られた3,4−ジヒドロ−8−(2、3−エポキシ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランとイソプロピルアミンとを反応させてニプラジロールを得る工程。
【0004】
【特許文献1】特公昭60−54317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記の方法では、工程(D)を行うに当たり、その前工程で得られた3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランをカラム精製している。これは、工程(D)の原料として、工程(C)得られた粗体をそのまま反応を行うとエポキシ化が起こり難くなり収率が低下するため、工程(D)の反応を行う前に原料物質から不純物除去する必要があるところ、上記粗体に含まれる不純物はカラム精製以外の方法では分離除去することが困難であるという理由によるものである。ところが、カラム精製により満足の行く純度の目的物を得ようとすると精製収率は極めて低くなるため、前記方法は、製造効率の点だけでなく製造コストの点においても十分な方法とはいえない。
【0006】
そこで本発明は、工程(C)で得られる工程(D)の原料物質の粗体から、高純度の原料物質を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、
下記式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは、ニトロキシ基、又はニトロキシメチル基である。)
で示される、8位に水酸基を有するベンゾピラン化合物(以下、単に「8−ヒドロキシベンゾピラン」ともいう)を製造する方法であって、
下記式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
{式中、Rは前記式(1)におけるRと同義であり、Rはエトキシカルボニル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、メチル基、またはエチル基である。}
で示される、8位の炭素原子に保護基を有するベンゾピラン化合物(以下、単に「保護体」ともいう)を加水分解して、不純物を含む8−ヒドロキシベンゾピランの粗体を得る工程、及び該工程で得られた粗体を有機溶媒中で無機酸化物及び活性炭と接触させることにより前記粗体に含まれる不純物を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
上記本発明の方法は、前記工程(C)で得られる保護体の粗体には大きく分けて性質の異なる2種類の不純物が含まれており、吸着法のような簡便な精製方法により精製を試みた場合、1種類の吸着剤を用いて一度に両方の不純物を除去することは非常に困難であるが、この2種の不純物はそれぞれ互いに異なる特定の吸着剤、具体的には無機酸化物及び活性炭を用いて処理すれば容易に除去できるという知見に基づいてなされたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、保護体から簡便でかつ効率的に高純度の8−ヒドロキシベンゾピランを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製造方法では、保護体を加水分解することにより8−ヒドロキシベンゾピランの粗体(以下、単に粗体ともいう)を得、得られた粗体を特定の方法により精製して高純度化された8−ヒドロキシベンゾピランを製造する。
【0015】
本発明の製造方法の目的物である、8−ヒドロキシベンゾピランとは、前記式(1)で示される化合物であり、該式(1)におけるRは、ニトロキシ基、又はニトロキシメチル基を意味する。8−ヒドロキシベンゾピランは、ニプラジロール等の医薬品の中間体として有用な化合物群であり、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシメチル−2H−1−ベンゾピランを含む。これら化合物は、その価格も高いため、工業的見地からは、効率よく純度の高い物を製造することが重要であるが、本発明の方法によればそのような要求を満足して目的物を得ることができる。8−ヒドロキシベンゾピランの中でも3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランは、医薬中間体としての有用性が特に高いため、本発明の方法は、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランの製造方法として特に有用である。
【0016】
本発明の製造方法では、まず保護体を加水分解して8−ヒドロキシベンゾピランの粗体を得る。このとき原料として使用される保護体とは前記式(2)で示される化合物を意味する。式(2)におけるRは前記式(1)におけるRと同義であり、Rはエトキシカルボニル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、メチル基、及びエチル基からなる群より選ばれる1種の基である。Rとして示されるこれらの基は、所謂「保護基」であり、保護体を合成する過程でベンゾピラン骨格の8位に結合する水酸基を保護するために導入されるものである。
【0017】
上記保護体は、3,4−ジヒドロ−8−ベンジルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−メトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−t−ブトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−ベンジルオキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−アセチルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8―メトキシ−3−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−エトキシ−3−ニトロキシ−2H−ベンゾピランを含むが、これら化合物の中でも、収率の高さ及び副生成物が生成し難いという観点から、3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−メトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−8−ベンジルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランを使用するのが好ましく、目的物の医薬中間体としての有用性の観点から、3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランを使用するのが最も好ましい。
【0018】
3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランは、背景技術として説明したニプラジロールの従来の製法における工程(B)の生成物であることからも分かるように、保護体は、下記式(3)
【0019】
【化3】

【0020】
{式中、Rは前記式(2)におけるRと同義であり、Rは水酸基、ヒドロキシメチル基である。}
で示される化合物を尿素の存在下に硝酸エステルと反応させる等してニトロエステル化することにより得ることができる。
【0021】
保護体の加水分解は、有機溶媒中、保護基を除去するのに適した反応剤と接触させることにより行うことができる。このとき、使用できる有機溶媒は保護体を溶解し、反応に対して不活性なものであれば特に限定されないが、好適に使用される溶媒を例示すれば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;クロロホルムやジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノールのアルコール系溶媒;又はアセトニトリル類のニトリル類を挙げることができる。これらの中でも、反応効率の観点からメタノールを使用するのが最も好適である。加水分解で使用する脱保護剤は、保護体の保護基を除去するのに適した反応剤を適宜選択すればよい。例えば、エトキシカルボニル基の場合は水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液、t−ブトキシカルボニルオキシ基の場合は塩酸などの酸水溶液を選択すればよい。加水分解の反応温度は、−50〜100℃の範囲で適宜選択すればよい。
【0022】
加水分解反応後、反応液を中和すると8−ヒドロキシベンゾピランが析出するので、水洗後析出物をろ過等の方法により分離することにより8−ヒドロキシベンゾピランの粗体を得ることができる。なお、8−ヒドロキシベンゾピランの種類によっては固体として析出しないこともあるが、その場合には有機溶媒を用いて目的物を抽出した後に溶媒を溜去することにより8−ヒドロキシベンゾピランの粗体を得ることができる。このようにして分離された粗体の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行ったときに得られるチャートにおけるピーク面積を基準とした純度(全ピーク面積の合計に対する目的物のピーク面積の割合、以下、HPLC純度ともいう)で表して通常80〜99.5%、好ましくは85〜99.5%である。また、粗体に含まれる不純物には着色の原因となるもの(着色性不純物)が含まれており、その量は、粗体1gを7mlの有機溶媒(アセトンやアセトニトリルなどの400nmの波長の光を吸収しない有機溶媒)に溶解させた溶液について400nmの光に対する吸光度を測定したときの吸光度で表して0.7〜0.3abs.程度となる量である(着色性不純物が含まれない場合、400nmの光に対する吸光度は0.1abs.以下となる)。
【0023】
本発明の製造方法では、このようにして得られた8−ヒドロキシベンゾピランの粗体を有機溶媒中で無機酸化物及び活性炭と接触させることにより該粗体に含まれる不純物を除去する。前記粗体に含まれる不純物は除去が困難であるため、従来、高純度の8−ヒドロキシベンゾピランを得るためには粗体をカラムクロマトグラフィーにより精製する必要があった。カラムクロマトグラフィーを用いた精製によれば高純度品を得ることはできるが、着色がなく十分に高い純度のものをカラムクロマトグラフィーのみによる精製により得ようとする場合には、精製によるロスが多く、生成効率の点では問題がある。これに対し、本発明の方法では、互いに異なる特定の吸着剤による処理、具体的には無機酸化物及び活性炭による処理を組み合わせることにより、簡便且つ高い収率で高純度の8−ヒドロキシベンゾピランを得ることができる。無機酸化物又は活性炭のどちらか一方のみを用いて処理を行った場合には、十分な精製が困難であり、高純度の目的物を得ようとすると収率(粗体に含まれる目的物に対する、回収された精製品の割合)が低下する。
【0024】
本発明者等の検討により、粗体に含まれる不純物は、大別すると、極性を有するものと極性が低く着色の原因となるものの2種類があることが確認されており、それぞれが無機酸化物処理及び活性炭処理により効率的に除去できるため、両処理を組み合わせることにより粗体から高純度の8−ヒドロキシベンゾピランを高収率で回収することができたものと思われる。なお、無機酸化物処理では主に極性不純物が除去され、活性炭処理では主に着色性不純物が除去されている。
【0025】
本発明の方法において、無機酸化物処理及び活性炭処理とは、粗体を有機溶媒中で無機酸化物及び活性炭と接触させることにより前記粗体に含まれる不純物を除去する処理を意味する。本発明の方法において無機酸化物処理及び活性炭処理は、それぞれ独立に行ってよいし、同時に、即ち無機酸化物と活性炭を共存させた状態での処理を行ってもよい。また、各処理を独立に行う場合、その順番は特に限定されないが、光学純度を保持する理由から最初に無機酸化物による処理を行ってから活性炭処理を逐次的に行うのが好ましい。
【0026】
これら処理で使用する有機溶媒としては、粗体を溶解し、目的物に対して不活性なものであれば特に限定されないが、好適に使用される溶媒を例示すれば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;クロロホルムやジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノールのアルコール系溶媒;又はアセトニトリル類のニトリル類を挙げることができる。これらの中でも、精製効率の観点からアセトンを使用するのが最も好適である。
【0027】
無機酸化物処理で使用する無機酸化物としては金属又は半金属の酸化物又は複合酸化物が特に制限なく使用できるが、精製効果の観点から、珪素酸化物及び/又はアルミニウム酸化物を使用するのが好ましく、更にはシリカゲル及び/又はアルミナを使用するのが特に好ましい。
【0028】
本発明で好適に使用できるシリカゲルを具体的に示せば、和光純薬社製のシリカゲルとして、ワコーゲルC−100、ワコーゲルC−100E、ワコーゲルC−200、ワコーゲルC−200E、ワコーゲルC−300、ワコーゲルC−300E、ワコーゲルC−300HG、ワコーゲルC−400HG、ワコーゲルC−500HG、ワコーゲル50C18、ワコーゲル100C18、ワコーゲルDX、ワコーゲルFC−40、ワコーゲルFC−40FM、ワコーゲルG、ワコーゲルLP−20、ワコーゲルLP−40、ワコーゲルLP−60、ワコーゲルQ−12、ワコーゲルQ−22、ワコーゲルQ−23、ワコーゲルQ−50、ワコーゲルQ−63、ワコーゲルS−1、ワコーシルC−200、ワコーシルC−300、ワコーシル25SIL、ワコーシル25C18、ワコーシル40SIL、ワコーシル40C18、シリカゲル60、シリカゲル(No.12)、シリカゲル(No.923)、シリカゲル(No.950)シリカゲルCQ−3、シリカゲルODS・Q−3;関東化学社製のシリカゲルとしてシリカゲル40、シリカゲル60、シリカゲル60(球状)、シリカゲル60N(球状、中性)、シリカゲル60N(破砕状、中性)、シリカゲル60F254、シリカゲル100、シリカゲル60G(タイプ60)、シリカゲル60F254(タイプ60)、シリカゲル60H(タイプ60)、シリカゲル60HF254(タイプ60)、シリカゲル60PF254;ALDRICH社製のシリカゲルとしてGrade 3、12、15、22、40、41、62、922、923;Davisil社製のシリカゲルとしてGrade 633、634、635、636、710、643、644、645、646;Merck社製のシリカゲルとしてGrade 10180、10181、9385、7734、7754、10184を挙げることができる。これら無機酸化物の中でも、シリカゲルのワコーゲルC−300、ワコーゲルC−400HGが好適に使用される。
【0029】
また、本発明で好適に使用できるアルミナを具体的に示せば、和光純薬社製のアルミナとして活性アルミナ、アルミナ90;関東化学社製のアルミナとして活性アルミナ−酸性−スーパーI、活性アルミナ−酸性−活性度I、活性アルミナ90−酸性−活性度I、活性アルミナ−塩基性−スーパーI、活性アルミナ−塩基性−活性度I、活性アルミナ90−塩基性−活性度I、活性アルミナ90−中性−活性度I、活性アルミナ−中性−スーパーI、活性アルミナ−中性−活性度I、活性アルミナ中性、関東化学社製のアルミナ、酸化アルミニウム(活性)、酸化アルミニウム(活性、粒状)、酸化アルミニウム60活性型塩基性、酸化アルミニウム90活性型酸性、酸化アルミニウム90活性型塩基性、酸化アルミニウム90活性型中性、酸化アルミニウム90活性型塩基性(ブロックマンのアルミナ)、酸化アルミニウム150塩基性(タイプT)等を挙げることができる。
【0030】
活性炭処理で使用する活性炭としては、工業的に又は試薬として入手可能なものが特に制限無く使用できる。好適に使用できる活性炭を具体的に示せば、日本ノーリット社製のPK、PKDA MESY/MRX、ELORIT、AZ0、DARCO、HYDRODARCO 3000/4000、DARCO 12X20LI、DARCO12X20DC、PETRODARCO、DARCO MRX、GAC、GAC PLUS、DARCO VAPURE、GCN、C−GRANULAR等の破砕活性炭類、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS等の粉末活性炭類、ROW、RO、ROX、RB、R、R.EXTRA、SORBONORIT、GF 40/50、CNR、ROZ、RBAA、RBHG、RZN、RGM等の成型活性炭・添着活性炭類;PICA社製の粒状活性炭類、球状活性炭類、粉末活性炭類;日本エンバイロケミカル社製のモルシーボン、WHA、粒状白鷺(X2M、GM2X、GH2X、GHXUG、GS1X、GS3X、GTX、GTSX、G2X、GS2X、GAAX、MAC−W、GOC、GOX、GOHX、APRC、TAC、MAC、XRC、NCC、SRCX)等の機能性活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3、等の粒状活性炭類、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11等の粉末活性炭類、ハニカムカーボ白鷺、モールドカーボン、カーボンペーパー、白鷺C−DC、カルボラフィンDC、粒状白鷺DC、アルデナイト、アルデナイトSP等の活性炭加工品類;二村化学工業社製のSG、SGP等の顆粒活性炭類、TA、TS、TG、TM等の造粒活性炭類、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、CG48B、CG48BR、CW130B、CW130A、CW130BR、CW130AR、CW480SZ、CW6100SZ、GL130A、GL240A、GM130A、GM240A、GMC等の破砕活性炭類を挙げることができる。
【0031】
これらの活性炭の中でも処理効果の観点から、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3等の粒状活性炭類を使用するのが好ましく、粉末活性炭類の精製白鷺および精製白鷺−2を使用するのが特に好ましい。
【0032】
無機酸化物処理及び活性炭処理においては、不純物の除去と回収率という理由から、それぞれ中位径が10〜100μmの無機酸化物及び中位径が10〜100μmの活性炭を使用するのが好ましく、両処理剤とも30〜70μmの中位径のものを使用するのが特に好ましい。ここで、中位径とは、粒径分布(たとえば、ふるい上曲線)から求められるR=50%に相当する粒径でメディアン径または50%粒子径(d50)ともいわれるものである。無機酸化物処理及び活性炭処理の中位径が10〜100μmの範囲にない場合には粉砕、分級などの操作により中位径を好適な範囲内となるように調整してから使用すればよい。
【0033】
無機酸化物処理及び活性炭処理は、有機溶媒に粗体を溶解させた溶液を無機酸化物及び/又は活性炭と接触させることにより行われる。接触方法としては、容器内で粗体の有機溶媒溶液と処理剤(無機酸化物及び/又は活性炭)を撹拌下に混合する方法、処理剤を充填した塔に粗体の有機溶媒溶液を通過させる方法が好適に採用される。なお、無機酸化物を充填した充填塔を用いた処理はカラムクロマトグラフィーに相当する処理にとなるが、本発明の方法では、活性炭処理と組み合わされているため、カラムクロマトグラフィーのみで精製を行う場合と比べて精製収率は高くなる。本発明の方法においては、専用の装置(例えば充填塔)を必要とせず、少量の処理剤で十分な高純度化が図れ、操作も簡便であることから容器内で撹拌混合する方法を採用するのが特に好ましい。
【0034】
無機酸化物処理及び活性炭処理を同時に行う場合には、処理剤として無機酸化物と活性炭との混合物を使用すればよい。また、処理を逐次的に行う場合には、最初の処理を行った後に、必要に応じて処理剤と処理液を分離し、分離された処理液について後段の処理を行えばよい。処理を逐次的に行う場合であって、処理方法として容器内で撹拌混合する方法を採用する場合には、前段の処理後に処理剤と処理液を分離せず、処理液にもう一方の処理剤を追加投入して処理を行うこともできる。この方法では、処理後の分離操作が1回で済むという利点がある。
【0035】
処理方法として容器内で混合撹拌する方法を採用する場合、使用する容器としては、ステンレス製容器などの金属製容器を使用することもできるが、目的物の用途が医薬中間体である場合には金属イオン、特に重金属イオンの混入を避けるためにガラス製容器、グラスライニング容器、又は樹脂ライニング容器を使用するのが好ましい。また、容器は、処理温度の制御を高精度で行うために、温度計、温度センサーが装着可能なものが好ましい。更に、8−ヒドロキシベンゾピラン化合物は光により分解しやすいため、ガラス製容器を使用する場合には褐色ガラス製のものを使用するかアルミホイルなどを使用して遮光するのが好ましい。
【0036】
前記したように、処理は攪拌下で行うのが好ましく、攪拌方法としてはマグネティックスターラー、メカニカルスターラー又は振動攪拌が好適に採用される。スターラーピースの形状や攪拌翼形状は反応器の種類や必要とする攪拌強度等に応じて適宜選択すればよい。好適に使用できる攪拌翼を例示すれば、ファウドラー翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、ヘリカル翼、スクリュー翼、ディスクタービン翼、ツインスター翼、ベントリーフ翼等を挙げることができる。
【0037】
無機酸化物処理及び活性炭処理において使用する有機溶媒の使用量は精製効率の観点から、被処理物である8−ヒドロキシベンゾピランの粗体1質量部に対して1〜10000質量部、特に2〜8000質量部とするのが好適である。また、無機酸化物の使用量は、経済性と収率の観点から、8−ヒドロキシベンゾピランに対して0.01質量%〜100質量%、特に1質量%〜40質量%とするのが好適である。さらに、活性炭の使用量は、同様の理由から、8−ヒドロキシベンゾピランに対して0.01質量%〜100質量%、特に1質量%〜20質量%とするのが好適である。また、いずれの処理においても処理温度および処理時間は、用いる粗体の種類や純度、使用する吸着剤の種類や量に応じて高純度化が測れる条件を適宜設定すればよいが、通常常温で10分〜10時間程度処理すれば十分純度の目的物を得ることができる。
【0038】
処理終了後は、処理剤と処理液(処理済の溶液)とを分離した後、有機溶媒を除去することにより高純度化された8−ヒドロキシベンゾピランを回収すればよい。処理剤と処理液の分離には、遠心分離ろ過、加圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレス等の通常使用される固液分離方法が特に限定なく採用できるが、分離効率及び操作の簡便性から、ケイソウ土等のろ過助剤を使用した加圧ろ過、減圧濾過あるいはフィルタープレスにより分離するのが好適である。なお、ろ過助剤は水溶液中に添加してもよく、ろ過器に添加してもよい。
【0039】
このようにして固体成分を除去された処理液の溶媒を除去する方法としては、温風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥、風乾、天日干等の通常の乾燥方法が採用できる。乾燥温度や乾燥時間は、乾燥方法に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
このようにして分離された8−ヒドロキシベンゾピランは高純度であり、医薬中間体として好適に使用することができる。
【0041】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
(1)3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(保護体)の製造
温度計、撹拌機、還流器、窒素注入管を装着した2000ml四つ口反応器を準備し、容器内を窒素で置換した後に容器内に窒素雰囲気下で,4−ジヒドロ−3,8−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン225g及びTHF1,576mlを導入し,液温が5℃になるまで撹拌下で冷却した。この後、トリエチルアミン146gを滴下し、10分間撹拌した。次いで、クロロギ酸エチル121gを液温が5℃に維持するように滴下した。滴下終了後、5℃を維持しながら1時間撹拌した。反応が未完結だったため、さらにクロロギ酸エチル20gを滴下し、5℃を維持しながら1時間撹拌した。
【0043】
上記反応で得られた反応液に7.2%塩酸427gを滴下してpHが1であることを確認し、液温を20℃まであげ、静置して有機層と水層とを分離し、有機層を回収した。水層に酢酸エチル439mlを加え、撹拌後静置して有機層と水層を分離して、有機層を回収した。回収した有機層を混合して、20%食塩水439mlで2回洗浄を行った。洗浄後に得られた有機層から反応溶媒及び酢酸エチルを留去した。得られた粗体にトルエン2,487mlを加えて均一にした後、トルエンを留去して褐色油状の3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン348g得た。
【0044】
これとは別に温度計、撹拌機、還流器、窒素注入管を取り付けた1000ml四つ口反応器を準備し、これに窒素雰囲気下で無水酢酸383g及び尿素1.0gを導入し、液温が−5℃になるまで撹拌下で冷却した。この後、液温を−5℃に維持しながら無水酢酸と尿素の混合液に発煙硝酸241gを2時間以上かけて滴下した。滴下終了後、液温を20℃に昇温し、この温度で30分撹拌して硝酸アセチルを調製した。
【0045】
温度計、撹拌機、還流器、窒素注入管を装着した10,000ml四つ口反応器を準備し、容器内を窒素で置換した後に容器内に窒素雰囲気下で、上記反応で得られた3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン336g及び尿素1.0gを導入した。次いで、窒素雰囲気下で容器内にトルエン5925mlを導入して、撹拌してフェノール保護体及び尿素を溶解させ、液温が−5℃になるまで撹拌下で冷却した。その後、該トルエン溶液に、硝酸アセチルを液温が−5℃を維持するようにして2時間かけて滴下した。滴下終了後、−5℃でさらに1時間撹拌して反応を完結させた。
【0046】
反応終了後、反応液に10%炭酸水素ナトリウム水溶液4905mlを加えてよく撹拌後に静置することにより有機層と水層を分離し、有機層を回収した。回収した有機層に10%炭酸水素ナトリウム水溶液4905mlを加え、撹拌後静置して有機層と水層とを分離し、水層のpHが6以上であることを確認した。その後、有機層を回収し、20%食塩水691mlで2回以上洗浄を行った。洗浄後に得られた有機層から酢酸エチル及び反応溶媒を留去することにより、褐色油状の粗体を得た。得られた粗体にメタノール1041mlを加え−5℃で2時間撹拌すると結晶が析出したので、ろ過することにより結晶を回収し、得られた結晶を40℃で12時間真空乾燥することにより、3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(保護体)363g(収率88%)を得た。
【0047】
(2)3,4−ジヒドロ−8−エトキシカルボニルオキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(保護体)の加水分解(8−ヒドロキシベンゾピランの粗体の製造)
温度計、撹拌機、還流器を装着した10,000ml四つ口反応器にメタノール2,559mlを準備した。次いで(1)で得た保護体300gを添加し、液温が−5℃になるまで撹拌下で冷却した。その後、液温が−5℃を維持するようにして12%水酸化ナトリウム水溶液1,558gを滴下した。滴下終了後、液温を20℃に昇温し、この温度で30分撹拌した。再度−5℃まで冷却した後、10%塩酸1,611gを液温が−5℃を維持するようにして滴下し、この温度で1時間撹拌した。析出した結晶をろ過することにより回収し、回収された結晶を40℃で24時間真空乾燥することにより、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランの粗体(8−ヒドロキシベンゾピランの粗体)208g(収率93%)得た。なお、得られた粗体をHPLC分析したとこと、その純度(HPLC純度)は、99.8%であった。
【0048】
(3)3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)の粗体の吸着剤による処理
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色ガラス製の3,000ml四つ口反応器にアセトン1100gを導入した。次いで(2)で得た8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を添加し溶解させた。さらに25℃(液温)で1時間撹拌した。このとき得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.642abs.であった。その後、上記アセトン溶液にシリカゲル(和光純薬社製ワコーゲルC−300、中位径60μm 40g(20質量%)を加えて25℃で1時間撹拌することにより無機酸化物処理を行った。処理後の溶液をサンプリングし、無機酸化物を除去してから400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.328abs.であった。
【0049】
その後、無機酸化物処理後の処理液(アセトン溶液)に活性炭(日本エンバイロケミカル社製精製白鷺−2、中位径60μm 20g(10質量%)を加えて25℃で1時間撹拌することにより活性炭処理を行った。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて無機酸化物及び活性炭を含む処理液をろ過して無機酸化物(シリカゲル)及び活性炭を除去した。得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.078abs.であった。その後、ろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)190.04g(精製収率95%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は99.9%であった。
【0050】
実施例2
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.588abs.であった。
【0051】
その後、上記溶液にシリカゲル(和光純薬社製ワコーゲルC−400HG、中位径30μm 40g(20質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後の溶液をサンプリングし、無機酸化物を除去してから400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.391abs.であった。
【0052】
シリカゲル処理後の処理液に、活性炭(日本エンバイロケミカル社製特製白鷺、中位径36μm20g(10質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて無機酸化物及び活性炭を含む処理液をろ過し、得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.080abs.であった。その後、ろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)170.40g(精製収率85%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は99.9%であった。
【0053】
実施例3
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3,000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.588abs.であった。
【0054】
その後、上記溶液に活性アルミナ(和光純薬社製、中位径45μm)40g(20質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後の溶液をサンプリングし、無機酸化物を除去してから400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.387abs.であった。
【0055】
活性アルミナ処理後の処理液に、活性炭(日本エンバイロケミカル社製特製白鷺、中位径36μm)20g(10質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて無機酸化物及び活性炭を含む処理液をろ過し、得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.085abs.であった。その後、ろ液からアセトンを減圧留去し3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)150.80g(精製収率75%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は99.9%であった。
【0056】
実施例4
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3,000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.634abs.であった。
【0057】
その後、上記溶液にシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC−300、中位径60μm)4g(20質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後の溶液をサンプリングし、無機酸化物を除去してから400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.358abs.であった。
【0058】
シリカゲル処理後の処理液に、活性炭(日本エンバイロケミカル社製粒状白鷺P、中位径36μm)20g(10質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて無機酸化物及び活性炭を含む処理液をろ過し、得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.132abs.であった。その後、ろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)170.22g(精製収率85%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は99.9%であった。
【0059】
実施例5
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3,000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.602abs.であった。
【0060】
その後、上記溶液にシリカゲル(和光純薬製C−100、中位径288μm)4g(20質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後の溶液をサンプリングし、無機酸化物を除去してから400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.372abs.であった。
【0061】
シリカゲル処理後の処理液に、活性炭(日本エンバイロケミカル社製特製白鷺、中位径36μm)20g(10質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて無機酸化物及び活性炭を含む処理液をろ過し、得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.085abs.であった。その後、ろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)165.20g(精製収率83%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は99.9%であった。
【0062】
実施例6
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3,000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.602abs.であった。
【0063】
その後、上記溶液に活性炭(日本エンバイロケミカル社製精製白鷺−2、中位径60μm)20g(10質量%)を加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて活性炭を含む処理液をろ過し、ろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)の粗体(1次精製品)を回収した。回収された8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は78.0%であった。
【0064】
上記活性炭処理後、回収された粗体(1次精製品)をアセトンに再溶解しシリカゲル(和光純薬社製ワコーゲルC−300、中位径60μm)800gを用いたカラムクロマトグラフィーで精製した。溶媒を留去して、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)120.40g(収率60%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランのHPLC純度は100%であった。
【0065】
比較例1(無機酸化物処理のみの例)
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.589abs.であった。
【0066】
その後、上記溶液にシリカゲル(和光純薬社製ワコーゲルC−400HG、中位径30μm)400gを加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いてシリカゲルを含む処理液をろ過し、得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.394abs.であった。その後、ろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)140.84g(精製収率70.4%)を得た。得られた8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は99.5%であった。
【0067】
比較例2(活性炭処理のみの例)
温度計、攪拌機、還流器を装着した褐色3000ml四つ口反応器にアセトン1100g及び実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体200.00g(0.95mol、1当量)を導入し、25℃(液温)で1時間撹拌することにより粗体のアセトン溶液を調製した。得られた溶液について400nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.588abs.であった。
【0068】
その後、上記溶液に活性炭(日本エンバイロケミカル社製特製白鷺、中位径36μm)200gを加えて25℃で1時間撹拌した。処理後、ろ過器をラジオライトでコートしたろ過器を用いて活性炭を含む処理液をろ過し、得られたろ液について400nmの光に対する吸光度を測定したところ吸光度は0.043abs.であった。得られたろ液からアセトンを減圧留去し、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(8−ヒドロキシベンゾピラン)165.30g(精製収率83%)を回収した。回収された8−ヒドロキシベンゾピランについてHPLC測定を行ったところその純度(HPLC純度)は91.2%であった。
【0069】
比較例3(カラムクロマトグラフィーにより着色のない高純度品を得た例)
実施例1と同様にして調製した8−ヒドロキシベンゾピランの粗体20.00gをアセトン1100gに溶解させて被処理液を調製した。得られた被処理液をシリカゲル(和光純薬社製ワコーゲルC−300、中位径60μm)800gを用いたカラムクロマトグラフィーで精製した。なお、精製は、流出液を20mlのフラクションに分けて回収し、各フラクションについて400nmの光に対する吸光度を測定し、吸光度が0.1abs.以下となるフラクションを選別し、選別されたフラクションを混合してからアセトンを減圧留去することにより行った。このようにして回収された8−ヒドロキシベンゾピランは、60.82g(精製収率30.4%)であり、そのHPLC純度)は76.2%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Rはニトロキシ基、又はニトロキシメチル基である。)
で示される、8位に水酸基を有するベンゾピラン化合物を製造する方法であって、
下記式(2)
【化2】

{式中、Rは前記式(1)におけるRと同義であり、Rはエトキシカルボニル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、メチル基、またはエチル基である。}
で示される、8位に保護基を有するベンゾピラン化合物を加水分解して、不純物を含む前記式(1)で示される化合物の粗体を得る工程、及び該工程で得られた粗体を有機溶媒中で無機酸化物及び活性炭と接触させることにより前記粗体に含まれる不純物を除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
中位径が10〜100μmの無機酸化物及び中位径が10〜100μmの活性炭を使用することを特徴とする請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−145755(P2007−145755A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341789(P2005−341789)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】