説明

B−C−N−O蛍光体の製造方法

【課題】希土類元素および重金属を含まないB−C−N−O蛍光体の、一酸化炭素の発生が抑制された製造方法の提供。
【解決手段】ホウ酸および/またはホウ酸誘導体と分解温度200℃以上の含窒素高分子化合物を混合し、熱分解工程に付して蛍光体前駆体を調製する前駆体調製工程と、前記蛍光体前駆体を酸化雰囲気下で焼成する酸化焼成工程とを少なくとも含むB−C−N−O蛍光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明機器、表示機器、化粧品材料等に有用な、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)元素からなるB−C−N−O蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機蛍光体はLEDの色調変換剤として照明機器や各種表示機器に用いられている。また化粧品材料への応用も検討されている。かかる使用目的に適した発光色、発光スペクトル強度、耐久性、工業生産性(供給安定性、価格など)を実現するために、種々の無機蛍光体についての研究が行われている。
【0003】
発光中心として、EuやCeなどの高価で希少な希土類元素を含有する無機蛍光体が広く知られているが、かかる希土類元素の安定供給は工業生産上の課題となる。また、Zn、Cu、Mn、Cdなどの重金属を含む無機蛍光体も広く知られているが、かかる無機蛍光体は環境保護の観点から望ましくない。
【0004】
一方、希土類元素および重金属を含まない無機蛍光体も近年報告されている。例えば、特許文献1および2には、13族元素(M)、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)からなるM−C−N−O系蛍光体が開示されている。さらに、特許文献2には、ホウ酸、尿素、および有機系分散剤として作用するポリエチレングリコールからなる混合物を加熱して得られる熱分解物を解砕した後、酸素雰囲気下で焼成することにより、色純度の高いB−C−N−O蛍光体を得る方法が開示されている。
【0005】
特許文献1、2に開示された無機蛍光体は、希土類元素が含まれていないため、原料の安定的な供給が容易であり、また重金属も含まれていないため、環境保護の観点からも望ましい無機蛍光体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/126500号
【特許文献2】国際公開第2010/067767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に示された無機蛍光体では、分散剤としてポリエチレングリコールなどの含酸素化合物を使用しており、このため、焼成の際に不完全燃焼による一酸化炭素が発生しやすく、一酸化炭素吸着剤や加圧燃焼炉を備えた製造設備が必要であり、工業的に実施するには不利である。さらに、一酸化炭素は副生するNH3と反応し、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)を生じることも懸念される。
【0008】
以上を鑑みて、本発明の目的は、希土類元素および重金属を含まないB−C−N−O蛍光体の、一酸化炭素の発生が抑制された製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
[1] ホウ酸および/またはホウ酸誘導体と分解温度200℃以上の含窒素高分子化合物を混合し、熱分解工程に付して蛍光体前駆体を調製する前駆体調製工程と、前記蛍光体前駆体を酸化雰囲気下で焼成する酸化焼成工程とを少なくとも含むB−C−N−O蛍光体の製造方法;および
[2] 前駆体調製工程において、尿素および/または尿素誘導体をさらに添加することを特徴とする上記[1]のB−C−N−O蛍光体の製造方法;を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一酸化炭素の発生が抑制されたB−C−N−O蛍光体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られた蛍光体1の蛍光スペクトルである。
【図2】実施例2で得られた蛍光体2の蛍光スペクトルである。
【図3】実施例3で得られた蛍光体3の蛍光スペクトルである。
【図4】実施例4で得られた蛍光体4の蛍光スペクトルである。
【図5】実施例5で得られた蛍光体5の蛍光スペクトルである。
【図6】実施例6で得られた蛍光体6の蛍光スペクトルである。
【図7】実施例7で得られた蛍光体7の蛍光スペクトルである。
【図8】実施例8で得られた蛍光体8の蛍光スペクトルである。
【図9】比較例1で得られた蛍光体9の蛍光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において「ホウ酸」とは、無水ホウ酸(B)、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸(HBO)、テトラホウ酸(H)など、一般式x(B)・y(HO)(式中、x=0.5〜2、y=0〜1)で示される化合物の総称である。また、本発明で使用できるホウ酸誘導体としては、ホウ酸分子の一部を他の原子や官能基で置換したものをいい、例えば、ホウ酸エステル(例、ホウ酸メチル、ホウ酸エチル等)、ホウ酸塩(例、ホウ酸アンモニウム塩等)、ホウ酸アミド等が挙げられる。ホウ酸、およびホウ酸誘導体は単独で使用しても、複数種を混合して使用してもよい。中でも、無水ホウ酸またはオルトホウ酸を用いるのが好ましい。
以下、便宜上、本発明において使用するホウ酸および/またはホウ酸誘導体を「ホウ酸化合物」とも称する。
【0013】
本発明で使用する「200℃以上の分解温度を有する含窒素高分子化合物」は分散剤として働く。かかる含窒素高分子化合物の分解温度は200〜490℃の範囲であることが好ましく、250〜480℃の範囲であることがより好ましい。分解温度が低すぎる場合には、前駆体調製工程においてホウ酸化合物が縮合によって蛍光体前駆体を形成する以前に、含窒素高分子化合物が分解してしまい、またホウ酸化合物の気散等が起こり、蛍光体前駆体の生成量が少なくなる傾向となる。分解温度が高すぎる場合には、ホウ酸化合物に含まれるホウ素により不燃物が生成し、黒色の炭化物が生成する傾向となる。
【0014】
ここで、上記含窒素高分子化合物の分解温度とは、熱重量分析(TG−DTA分析)において、酸素非存在下に昇温し、50%の重量減少を示す温度である。
【0015】
また、上記含窒素高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、通常、600〜150000の範囲であり、好ましくは1000〜10000の範囲である。Mwが600未満の場合、末端官能基とホウ酸化合物との反応による不燃物の生成が顕著になり、得られるB−C−N−O蛍光体に不純物として混入する傾向となる。また、当該Mwが150000より大きくなると、ホウ酸化合物の分散性が低下し、得られるB−C−N−O蛍光体の色調にムラが発生する傾向となる。
【0016】
また、上記含窒素高分子化合物の数平均分子量(Mn)は、通常、50〜2000の範囲であり、好ましくは100〜1000の範囲である。Mnが50未満の場合、末端官能基とホウ酸化合物との反応による不燃物の生成が顕著になり、得られるB−C−N−O蛍光体に不純物として混入する傾向となる。また、当該Mnが2000より大きくなると、ホウ酸化合物の分散性が低下し、得られるB−C−N−O蛍光体の色調にムラが発生する傾向となる。なお、本明細書において、上記含窒素高分子化合物のMwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された標準ポリスチレン換算の値である。
【0017】
さらに、蛍光体前駆体調製工程における熱分解工程(後述)の一酸化炭素の発生を抑制するためには、上記含窒素高分子化合物は、酸素を含有していないことが好ましい。
【0018】
以上の点から、本発明で用いられる「分解温度200℃以上の含窒素高分子化合物」としては、例えばポリエチレンイミン、ポリブチレンイミンなどのポリイミン類;ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリアミン類;ポリアクリロニトリル、ポリメタアクリロニトリルなどのアクリル樹脂;などが挙げられ、価格および入手性の観点から、ポリエチレンイミンまたはポリアリルアミンが好ましい。
【0019】
上記含窒素高分子化合物の使用量は、ホウ酸化合物の分散性の観点から、ホウ酸化合物の0.2〜30質量倍の範囲が好ましく、0.4〜15質量倍の範囲がより好ましい。
また、最終的に得られるB−C−N−O蛍光体の窒素供給源として、当該含窒素高分子化合物のみが利用される場合には、ホウ酸化合物に含まれるホウ素原子の総量に対して、含窒素高分子化合物に含まれる窒素原子の量が通常0.1〜40倍の範囲であることが好ましく、0.2〜30倍の範囲であることがより好ましい。後述の尿素および/または尿素誘導体も窒素供給源として使用される場合には、ホウ素原子の総量に対して、含窒素高分子化合物に含まれる窒素原子と、尿素および/または尿素誘導体に含まれる窒素原子の総量が、0.1〜40倍の範囲であることが好ましく、0.2〜30倍の範囲であることがより好ましい。
【0020】
本発明では、蛍光体前駆体調製工程において、必要に応じて、尿素および/または尿素誘導体をさらに添加してもよい。かかる尿素誘導体とは、尿素を原料とし、熱分解でアンモニアを発生する化合物を意味し、例えば、ポリ尿素、ジシアンジアミド、メラミン、メチロールメラミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても複数種を混合して使用しても構わない。これらのうち、価格および入手性の観点から、尿素またはメラミンの使用が好ましい。以下、便宜的に尿素および/または尿素誘導体を「尿素化合物」とも称する。
【0021】
尿素化合物をさらに使用することで、ホウ酸化合物への窒素分の導入が容易になる。尿素化合物の使用量は、ホウ酸化合物に含まれるホウ素原子の総量に対して、尿素化合物に含まれる窒素原子の総量が、0〜40倍の範囲であることが好ましく、0.1〜30倍の範囲であることがより好ましい。ホウ酸化合物に含まれるホウ素原子の総量に対して尿素化合物に含まれる窒素原子の総量が0〜40倍の範囲である場合、B−C−N−O蛍光体の色調を尿素化合物の種類および/または添加量によって調節することができ、380〜580nmの範囲に発光ピークを有する種々のB−C−N−O蛍光体を製造できる。
【0022】
前駆体調製工程では、ホウ酸化合物と分解温度200℃以上の含窒素高分子化合物、さらに必要に応じて尿素化合物を添加して、混合し、調製した混合物を加熱して熱分解させる工程(以下、「熱分解工程」と称する)に付することによって蛍光体前駆体を調製する。ここで、蛍光体前駆体とは、紫外線、可視光線によって励起されず、蛍光を発しないが、後述の酸化焼成工程に供することによって本発明のB−C−N−O蛍光体となるものを指す。
【0023】
前駆体調製工程において、混合対象となるホウ酸化合物と分解温度200℃以上の含窒素高分子化合物は、溶媒に溶解又は懸濁して混合するか、または上記混合対象各々を溶媒に溶解又は懸濁して調製した溶液を混合することが好ましい。なお、混合後に用いた溶媒を留去してもよい。溶媒としては、例えば水;メタノール、エタノールなどのアルコールが挙げられ、水が好ましい。混合条件に特に制限はないが、溶媒の温度は通常10〜95℃の範囲であり、溶媒の使用量は上記混合対象の総量に対して好ましくは10〜300重量%、より好ましくは20〜200重量%の範囲であり、混合に要する時間は通常1分〜2時間の範囲である。
【0024】
ここで溶媒が含有していてもよい不純物(例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属、ハロゲン等)の総含有量は、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下である。
【0025】
熱分解工程は、例えば、ロータリーキルン炉のような移動床、ローラーハースキルン炉やプッシャー炉のような連続式固定床、雰囲気焼成炉のようなバッチ式固定床などの加熱焼成炉、スプレーや噴霧法などを採用する熱分解炉などを用いて行うことができる。また、加熱混練装置、例えば一軸押出機、二軸押出機のような押出機、トーラスディスクなどの加熱混合機を使用してもよい。
【0026】
熱分解工程における到達温度(本明細書中「加熱温度」という場合がある)は、通常、150〜490℃の範囲、好ましくは200〜490℃の範囲、より好ましくは300〜490℃の範囲である。加熱温度が低すぎると熱分解が充分に進行せず、加熱温度が高すぎるとエネルギー消費が増加する傾向となる。
【0027】
熱分解工程での昇温速度は、1〜80℃/分の範囲が好ましく、2〜50℃/分の範囲がより好ましい。昇温速度が速すぎると特殊な焼成炉を必要とし、設備コストが増大する傾向となる。昇温速度は、昇温の開始から終了まで一定でも、変化させてもよい。
【0028】
熱分解工程において、装置(特に反応容器)内は、窒素、希ガス(ヘリウム、アルゴン等)などの不活性ガス雰囲気であることが極めて好ましい。熱分解工程は、前記不活性ガス気流下または不活性ガスで密閉された雰囲気下で実施できる。
【0029】
熱分解工程での、加熱温度からの降温速度は、1〜80℃/分の範囲が好ましく、2〜50℃/分の範囲がより好ましい。降温速度が速すぎると特殊な焼成炉を必要とし、設備コストが増大する。降温速度は、降温の開始から終了まで一定でも、変化させてもよい。
【0030】
熱分解工程における、加熱温度での保持時間は、通常0〜180分の範囲、好ましくは1〜150分の範囲、より好ましくは5〜120分の範囲である。
熱分解工程における昇温開始から降温終了までの時間が短すぎると熱伝達が十分でなく、蛍光体前駆体の組成が不均一になる傾向があり、長すぎると蛍光体前駆体を構成する炭素に欠損が生じる傾向となる。
【0031】
熱分解工程で得られた蛍光体前駆体は、酸化焼成工程に供する前に解砕されることが好ましい。解砕には、ボールミル、ターボミル、ジェットミルなどを使用できる他、乳鉢などを用いてもよく、平均粒径が通常0.1μm〜2mmの範囲、好ましくは0.2μm〜1mmの範囲内となるように解砕する。微細に解砕し過ぎると、酸化焼成工程において酸化性気体の流通・拡散が悪くなり、焼成が不均一になりムラが生じる傾向となる。なお、本明細書中、「平均粒径」とは、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定された、体積基準の粒度分布に基づいて決定される累積体積平均メジアン径(D50)をいう。
【0032】
上記のように必要に応じて解砕した蛍光体前駆体を酸化焼成工程に供してB−C−N−O蛍光体を製造する。酸化焼成工程における到達温度(本明細書中「焼成温度」という場合がある)は、通常、500〜1000℃の範囲、好ましくは510〜950℃の範囲、より好ましくは520〜900℃の範囲である。焼成温度が低すぎると蛍光体前駆体に含まれる炭素分の一部が炭化物としてB−C−N−O蛍光体の表面に付着して、蛍光量子収率を低下させる傾向となる。また、焼成温度が高すぎると炭素分が完全に燃焼されて消失し、B−C−N−O蛍光体を構成する炭素に欠損が生じて発光色が変化する傾向となる。
【0033】
酸化焼成工程での昇温速度は、1〜80℃/分の範囲が好ましく、2〜50℃/分の範囲がより好ましい。昇温速度が速すぎると特殊な焼成炉を必要とし、設備コストが増大する。昇温速度は、昇温の開始から終了まで一定でも、変化させてもよい。
【0034】
酸化焼成工程において、装置(特に反応容器)内は、蛍光体前駆体中の余分な炭素分を燃焼させるために、酸素ガスを含有する雰囲気とする。酸素ガスの濃度は、1〜30%の範囲が好ましく、3〜25%の範囲がより好ましい。酸化焼成工程は、このような酸素ガスを含有するガス気流下、または酸素ガスを含有する雰囲気で密封した条件下で実施できる。また、焼成温度を保持する間、焼成装置内を窒素、希ガス(ヘリウム、アルゴン等)などの不活性ガス雰囲気に切り替えてもよい。
【0035】
酸化焼成工程での、焼成温度から降温させる際の降温速度は、1〜80℃/分の範囲が好ましく、2〜50℃/分の範囲がより好ましい。降温速度が速すぎると特殊な焼成炉を必要とし、設備コストが増大する傾向となる。降温速度は、降温の開始から終了まで一定でも、変化させてもよい。
【0036】
また、降温させる際の装置内は、窒素、希ガス(ヘリウム、アルゴン等)などの不活性ガス雰囲気、酸素を含有する雰囲気のいずれでもよいが、安全性の観点から、不活性ガス雰囲気下で降温させることが好ましい。さらに、300℃以下においては、B−C−N−O蛍光体の表面への水分の付着を抑制するため、乾燥させた不活性ガス雰囲気下で降温させることが好ましい。
【0037】
酸化焼成工程における焼成温度での保持時間は、通常、0〜180分の範囲、好ましくは1〜150分の範囲、より好ましくは5〜120分の範囲である。
酸化焼成工程における昇温開始から降温終了までの時間が短すぎると熱伝達が十分ではなく、B−C−N−O蛍光体の組成が不均一になる傾向となり、時間が長すぎると炭素分が一部焼失し、B−C−N−O蛍光体の組成が不均一になる傾向となる。
【0038】
このようにして得られたB−C−N−O蛍光体は、粉砕して、さらに微細な粒子としてもよい。粉砕には、ボールミル、ターボミル、ジェットミルなどを使用できるほか、乳鉢などを用いてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。なお、実施例等における蛍光量子収率および蛍光スペクトルの測定は、日本分光株式会社製の分光蛍光光度計FP−6500を用いて行った。
また、新コスモス電機株式会社製複合ガス検知器XP−302Mを加熱部排気口に設置し、排気中の一酸化炭素濃度を検出した。
なお、本明細書において「蛍光量子収率」とは、波長350nmの入射光によって励起された蛍光体から放出される光子の数と入射光の光子の数との比であり、この数値が大きいほど蛍光体として好ましい。
【0040】
<実施例1>
ホウ酸(オルトホウ酸)(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)1.53g(0.025モル)、ポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級、分解温度:350℃、重量平均分子量:2400、数平均分子量:600)2.68gを容量300mlのビーカーに取り、純水33.3gを加え、攪拌しながら溶解させて、原料溶液を調製した。かかる原料溶液を坩堝に移し、加熱炉にて、0.5L/時の窒素気流下、昇温速度20℃/分で400℃まで昇温した。400℃で1時間保持した後、室温まで20℃/分で冷却した。この間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。得られた蛍光体前駆体を乳鉢で平均粒径32μmまで解砕した後、再び坩堝に戻し、空気下、昇温速度20℃/分、800℃まで昇温、30分保持した後、40℃/分で500℃まで冷却し、500℃で1時間保持した後、さらに20℃/分で室温まで冷却して、B−C−N−O蛍光体(蛍光体1)を得た。表1に、得られた蛍光体1の蛍光量子収率を、図1に、蛍光スペクトルを示す。
【0041】
<実施例2>
実施例1において、原料溶液に尿素19.4g(0.32モル)をさらに添加した以外は、実施例1と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体2)を得た。蛍光体前駆体調製工程の間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。表1に、得られた蛍光体2の蛍光量子収率を、図2に、蛍光スペクトルを示す。
【0042】
<実施例3>
実施例1において、原料溶液に尿素13.17g(0.21モル)をさらに添加した以外は、実施例1と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体3)を得た。蛍光体前駆体調製工程の間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。表1に得られた蛍光体3の蛍光量子収率を、図3に、蛍光スペクトルを示す。
【0043】
<実施例4>
実施例2において、ポリエチレンイミン2.68gから0.71gに変更した以外は、実施例2と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体4)を得た。蛍光体前駆体調製工程の間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。表1に、得られた蛍光体4の蛍光量子収率を、図4に、蛍光スペクトルを示す。
【0044】
<実施例5>
実施例2において、ポリエチレンイミンの添加量を、2.68gから1.43gに変更した以外は、実施例2と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体5)を得た。蛍光体前駆体調製工程の間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。表1に得られた蛍光体5の蛍光量子収率を、図5に、蛍光スペクトルを示す。
【0045】
<実施例6>
実施例2において、ポリエチレンイミンの添加量を、2.68gから2.88gに変更した以外は、実施例2と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体6)を得た。蛍光体前駆体調製工程の間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。表1に得られた蛍光体6の蛍光量子収率を、図6に、蛍光スペクトルを示す。
【0046】
<実施例7>
実施例2において、ポリエチレンイミン2.68gの代わりに、ポリアリルアミン(東洋紡績株式会社製、PAA−15C、分解温度:440℃、重量平均分子量:5000、数平均分子量:100)の20質量%水溶液17.92gを添加した以外は、実施例2と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体7)を得た。蛍光体前駆体調製工程の間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。表1に得られた蛍光体7の蛍光量子収率を、図7に、蛍光スペクトルを示す。
【0047】
<実施例8>
ホウ酸(オルトホウ酸)(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)1.96g(0.032モル)、メラミン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)8.07g、ポリアリルアミン(東洋紡績株式会社製、PAA−15C、分解温度:440℃、重量平均分子量:5000、数平均分子量:100)20質量%水溶液6.02gを坩堝に取り、加熱炉にて、0.5L/時間の窒素気流下、昇温速度3℃/分で、350℃まで昇温した。350℃で1時間保持した後、150℃まで40℃/分で冷却し、150℃で1時間保持した後、さらに20℃/分で室温まで冷却した。この間、排気管に装着した一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)で一酸化炭素は検出されなかった。得られた蛍光体前駆体を乳鉢にて平均粒径32μmまで解砕した後、再び坩堝に入れ、空気下6℃/分で750℃まで昇温し、750℃で1時間保持した後、40℃/分で室温まで冷却して、B−C−N−O蛍光体(蛍光体8)を得た。表1に得られた蛍光体8の蛍光量子収率を、図8に、蛍光スペクトルを示す。
【0048】
<比較例1>
実施例8において、ポリアリルアミン(東洋紡績株式会社製、PAA−15C、分解温度:440℃、重量平均分子量:5000、数平均分子量:100)20質量%水溶液6.02gの代わりに、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬特級、平均分子量:4000、分解温度:350℃)1.2gを使用した以外は、実施例8と同様に行って、B−C−N−O蛍光体(蛍光体9)を得た。蛍光体前駆体調製工程において、一酸化炭素検出器(新コスモス電機株式会社製)は300℃〜400℃にかけて最大450ppmの一酸化炭素を検出しており、特定の温度範囲で一酸化炭素が発生した。表1に得られた蛍光体9の蛍光量子収率を、図9に、蛍光スペクトルを示す。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、一酸化炭素の発生が抑制されたB−C−N−O蛍光体の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸および/またはホウ酸誘導体と分解温度200℃以上の含窒素高分子化合物を混合し、熱分解工程に付して蛍光体前駆体を調製する前駆体調製工程と、前記蛍光体前駆体を酸化雰囲気下で焼成する酸化焼成工程とを少なくとも含むB−C−N−O蛍光体の製造方法。
【請求項2】
前駆体調製工程において、尿素および/または尿素誘導体をさらに添加することを特徴とする請求項1に記載のB−C−N−O蛍光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10878(P2013−10878A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144947(P2011−144947)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】