B型肝炎ウイルス遺伝子の標的を狙った組み込みによる肝細胞癌を誘発するためのマウス・モデル
【課題】B型肝炎ウイルス遺伝子の標的を狙った組み込みによる肝細胞癌を誘発するためのマウス・モデルの提供。
【解決手段】本発明は、肝細胞癌のマウス・モデル、及び以下のステップ:
a) 着目の外来性遺伝子を、標的部位に相同的な配列を担持する好適なベクター内に挿入して、組換えターゲッティング・ベクターを構築し;
b) ステップa)からのターゲッティング・ベクターを使って研究される動物のES細胞にトランスフェクトし、そして上記外来性遺伝子を特定の部位に組み込まれている標的ES細胞をスクリーニングし;
c) ステップb)から得られた標的ES細胞を、上記動物の胞胚内に注入し、そして標的ES細胞を含む胚が発生するように上記胞胚を試験管内で培養し、そして
d) ステップc)から生じた胚を、上記動物の子宮に移植し、それによって外来性遺伝子を安定して発現する子孫を生み出す、
を含む動物モデルの構築方法を提供する。
【解決手段】本発明は、肝細胞癌のマウス・モデル、及び以下のステップ:
a) 着目の外来性遺伝子を、標的部位に相同的な配列を担持する好適なベクター内に挿入して、組換えターゲッティング・ベクターを構築し;
b) ステップa)からのターゲッティング・ベクターを使って研究される動物のES細胞にトランスフェクトし、そして上記外来性遺伝子を特定の部位に組み込まれている標的ES細胞をスクリーニングし;
c) ステップb)から得られた標的ES細胞を、上記動物の胞胚内に注入し、そして標的ES細胞を含む胚が発生するように上記胞胚を試験管内で培養し、そして
d) ステップc)から生じた胚を、上記動物の子宮に移植し、それによって外来性遺伝子を安定して発現する子孫を生み出す、
を含む動物モデルの構築方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、トランスジェニック動物モデル及びそのようなモデルを構築する方法に関する。特に、本発明は、外来性遺伝子が安定的に発現される動物モデルを生み出すために、胚性幹(ES)細胞培養及び相同組換えにより着目の外来性遺伝子を動物ゲノムに組み込む方法、並びに上記方法によって得られた動物モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
肝細胞癌(HCC)は、世界規模の主な悪性腫瘍の1つであって、中国を含むアジア及び太平洋地域に特に分布する。100万人以上の人が毎年HCCに変わり(1)、その5年間の生存率は、5%未満である。多数の病因的要素、特にB型肝炎ウイルス(HBV)感染は、HCCの発生及び進行に関係している。HBVは、DNAウイルスに属し、それは環状の、不完全な2本鎖DNAを含み、そしてRNA中間体を介して複製し、完全長約3.2 kbを持つ。HBVは、宿主ゲノム内に無作為に組み込まれることができて、HBVが組み込まれた宿主は、保菌者と呼ばれる。
【0003】
前記保菌者は、症状のない慢性の感染の症状となるが、しかしB型肝炎の表面抗原(HBsAg)の発現がある。世界中で少なくとも3億5千万人の人々が、HBVの慢性保菌者(2)であり、75%超がアジア及び西太平洋に存在する (3)と推定された。これらの保菌者の間で、少なくとも約20%が、様々な程度の慢性肝炎と肝硬変を示し、かれらの一部は、原発性肝細胞癌に発達するかもしれない。臨床及び疫学的研究は、HCCに罹患するリスクがHBV慢性保菌者の間で40〜50%の高さに達することを示している。
【0004】
肝細胞癌に関して、最良の臨床的アプローチは、初期段階での肝臓癌切除であり、よって、初期診断が非常に重要であるように思われる。しかし、できるだけ遅れることなくHCCに発達する可能性のある保菌者を診断するために使用することができる血清又は肝臓中の分子マーカーは、まだ見つかっていない。HBVに誘発されたHCCを引き起こす病理学及び分子機構のさらなる研究は、そのような肝臓癌の初期診断にとって大きな意味がある。
【0005】
肝細胞癌の誘導及び進行は、異常な遺伝子発現又は突然変異、及びその間の相互作用に関連する複数の要素を伴った複雑な進行である。HBV感染の後に、HBV遺伝子発現産物と肝細胞タンパク質又は核酸の間の相互作用が、正常な遺伝子発現とシグナル伝達を妨げる可能性があり、それにより、肝細胞の異常な増殖と分化を導き、そして最終的には肝細胞癌をもたらす、癌原遺伝子の異常な発現、あるいは腫瘍抑圧遺伝子の機能上の不活化を引き起こすかもしれない。しかし、これまで、HBVの標的は不明確である。一般に、HBVは培養細胞にも普通の実験動物にも感染しないので(チンパンジーは唯一の感受性の実験動物である)、これがHBV疾病の発生の調査研究をある程度まで制限した。
【0006】
トランスジェニック動物技術が、HBV疾病の発生を調査するための新しいアプローチを提供する。Chisari(4)及びBabinet(5)らは、トランスジェニック技術を使い、1985年に首尾よく多数のHBVトランスジェニックマウス・モデルを確立し、それ以来、そのようなマウス・モデルの研究が、HBVに誘発された肝細胞癌の病理学と分子機構の理解を大いに促進した。しかし、そのようなトランスジェニック・マウスは、慣習的なトランスジェニック技術によって開発されて、そしてそれらの外来性遺伝子は、染色体に無作為に組み込まれているので、しばしば発現型の相違をもたらし、そしてある程度、発現型解析を難しくしている。このように、HBVに誘発されたHCCの分子機構に関する最終決定はまだ成されていない。HBVゲノム全体を組み込んだトランスジェニック・マウスの国内での報告が刊行されているが、今まで肝臓癌について成功したトランスジェニック・マウス・モデルについては報告されていない。
【0007】
80年代末以来、遺伝子ターゲッティング技術に基づく遺伝子ノックイン技術が開発されており、この技術は、相同組換え及びマウスES細胞培養の技術を外来性遺伝子をマウス・ゲノム上の特定の部位に組み込むために使用し、伝統的なトランスジェニック技術の無分別さをあらかじめ回避する。Deng(6)は、マウスが正常に発生して、そのp21遺伝子が取り除かれた後に、肝臓で異常な表現型が存在しなかったことを発見した。しかも、ヒト遺伝子マッピングの実現は、生命科学のポストゲノム時代の幕開けをしるし、そしてプロテオミクスによる調査研究は、機能的ゲノミクスを研究する上で重要な道具になっている。
【0008】
本発明の説明
本発明は、動物モデルを構築する方法に関し、以下のステップ:
a) 着目の外来性遺伝子を、標的部位に一致した配列を担持する好適なベクター内に挿入して、組換えターゲッティング・ベクターを構築し;
b) ステップa)からの上記ターゲッティング・ベクターを使って研究されるべき動物のES細胞に形質移入し、そして上記外来性遺伝子が特定の部位に組み込まれている標的ES細胞をスクリーニングし;
c) ステップb)から得られた標的ES細胞を上記動物の胞胚に注入し、そして標的ES細胞を含む胚を生じるように試験管内で上記胞胚を培養し;そして
d) ステップc)から生じた胚を上記動物の子宮に移植し、それによって外来性遺伝子を安定して発現する子孫を作り上げる、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図2】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図3】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図4】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図5】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図6】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図7】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図8】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図9】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスからの胚性幹細胞のサザンブロット・スクリーニングを示す。
【図10】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスのPCR同定を示す。
【図11】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスのサザンブロット同定を示す。
【図12】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスのノーザンブロット分析を示す。
【図13】15ヶ月齢マウスからの肝臓組織のヘマトキシリン及びエオジン染色像を示す。
【図14】15ヶ月齢マウスからの肝臓組織のPCNA染色像を示す。
【図15】2ヶ月齢マウスにおける血清α-フェトプロテインの試験結果を示す。
【図16】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図17】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図18】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図19】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図20】肝臓タンパク質の2次元(2-D)電気泳動に続く、ゲル走査像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第一の側面において、本発明は、ターゲッティング・トランスジェニック・ベクターの構築に関し、それは、以下のステップを含む:
【0011】
pLoxpneo(7)を最初のターゲッティング・ベクターとして使用し;p21遺伝子第2エクソンの側方に位置する約8 kbのゲノムDNAセグメントを、ターゲッティング・ベクターの相同配列として使用した。外来性遺伝子(例えば、HBV、HCV、HIVなどからのウイルス性遺伝子、例えばHBsAg、HBXなど)を、p21遺伝子の第2エクソンに挿入した。続いて前記要素を、ターゲッティング・トランスジェニック・ベクター中に組み合わせ、上記ベクターは、以下の:1)標的部位の相同配列、ここで、上記標的部位は、肝細胞内で転写及び発現されるp21遺伝子座又は他の遺伝子座である;2)外来性遺伝子、陽性選択マーカー(neo)、及び陰性選択マーカー(tk)を含む。前記外来性遺伝子は、HBVゲノム全体、個々のHBV遺伝子であるか、又は他の病因性微生物のゲノム全体かその個々の遺伝子であるかもしれない。前記陽性選択マーカーは、neo遺伝子又は他の陽性選択マーカー、例えばハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hph)、キサンチン/グアニン・ホスホトランスフェラーゼ(gpt)、ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(hprt)などである。陰性選択マーカーは、tk遺伝子であるか、又は他の陰性選択マーカー、例えば単純ヘルペス・ウイルス・チミジン・キナーゼ(HSVtk)、ジフテリア毒素(DT)、チミジンキナーゼなどである。
【0012】
第2の側面において、本発明は、以下のプロトコールを使った、標的ES細胞の製造に関する:
【0013】
前記ターゲッティング・ベクターを線状にし、次に電気穿孔法によりES細胞中に形質移入した。続いて、トランスフェクトしたES細胞を、新しい細胞培養培地と混合し、これらのES細胞を、フィーダー細胞が集密状態まで成長していたプレートに広げた。24時間後に、培地を、ES細胞のスクリーニングのための、G418とガンシクロビルを含む選択培地に変更し、それ以来毎日新しい選択培地に変えた。トランスフェクトの7日後に、細胞クローンをスクリーニングした。具体的に言うと、ESクローンの単細胞懸濁液として分散させ、次に各々のESクローンからの単細胞懸濁液を2つの等量のアリコートに分けて、フィーダー細胞を含む2枚の96ウェル・プレート上にそれぞれ移した。前記2枚のプレートについて、各々のクローンの位置及び順序は同じものだった。毎日の新しいES細胞培地へ培地交換、そして2〜3日間の培養に続き、1枚のプレートが冷凍し、もう一方をトリプシン処理し、その中のESクローンを24ウェル・プレートに移し、その培地の色が黄色くなるまでフィーダー細胞培地中で培養した。溶解緩衝液を各々のウェルに添加し、次に溶解した細胞懸濁液をエッペンドルフ管に移した。ES細胞から抽出しTE溶液に、完全に溶かした後に、ゲノムDNAを、それぞれ、EcoRIとBglIIで消化し、そして得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端に配置したプローブを使ったサザンブロットに供した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは約22 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のEcoRI部位の削除から生じる。変更された陽性バンド位置を有するES細胞は、外来性遺伝子を含有している細胞だった。
第3の側面において、本発明は、標的ES細胞を含むトランスジェニック動物の製造方法に関し、それは以下の通り説明される:
【0014】
最初に、興奮していない4〜5週齢の雌C57BL/6Jマウスに、5 IUの性腺刺激ホルモンを腹腔内に注射した。先の性腺刺激ホルモン注射の48時間以内に、これらのマウスに5 IUのヒト絨毛膜性腺刺激ホルモンを腹腔内に注射してそれらに過剰排卵させ、次に繁殖用の雄マウスの檻に移し、それらと交尾させた。3.5日後、子宮の胞胚を回収した。一方、注入されるES細胞を数日前に解凍し、そして注入の日の朝に培地を新しいES培地に変えた。1〜2時間後、この細胞をトリプシンにより処理し、得られた単細胞をBrinster's BMOC-3培地中に懸濁液として保存し、次に注入用ピペットにより12〜15個の小さくて、丸いES細胞を吸い、顕微鏡下でインジェクションポンプを突き通して、ES細胞を連続して胞胚腔に入れる。次に、注入された胞胚を、Brinster's BMOC-3培地を補った溶滴中で培養し、それによって移植する胚を得ることができた。第二に、計量後、偽妊娠している雌マウスに麻酔を腹腔内に注射し、そして切開した。解剖顕微鏡下、トランスファーピペットを使って、移植される胚をそれらの子宮内にゆっくりと産みつけ、その後、それらの子宮及び腸間膜を腹腔内に戻し、切開が閉じた。
【0015】
前記操作がうまくいっていれば、仔マウスが17日後に生まれる。高度キメラ・マウスが得られた場合には、数日後にそれらの毛皮の色からそれを推論することができる。高度キメラ・マウスを選択し、C57BL/6Jマウスと交尾させた場合、無垢の茶色の毛皮をもつトランスジェニックされた子孫が産まれる。
【0016】
第4の側面において、本発明は、HBsAg遺伝子を含むトランスジェニック・マウスの表現型の分析に関し、それは以下のとおり説明される:
15日齢のマウスから尾の先端の約0.5cmの部分を切断し、エッペンドルフ管に移し、そこに溶解緩衝液を添加し、細胞溶解液を作製し、次に、高度に濃縮した塩を添加し、タンパク質を沈澱させた。DNAを含む上清を、遠心分離によって回収し、そしてエタノールによって沈澱させた後に、ゲノムDNAを得ることができた。このDNAを後の使用のためにTE溶液中に再溶解した。
【0017】
子孫マウスの異なる遺伝子型を同定するために、鋳型としてゲノムDNAを使い、そして何組かのプライマーを使うことによってPCRを実施した。野生型p21対立遺伝子を確認するためにプライマー1(5'-TCTTCTGTTTCAGCCACAGGC-3')及びプライマー2(5'-TGTCAGGCTGGTCTGCCTCC-3')を使用し、436bpのバンドが野生型及びヘテロ接合性マウスから増幅されうる。neo遺伝子上のプライマー3(5'-ATTTTCCAGGGATCTGACTC-3')及びプライマー4(5'-CCAGACTGCCTTGGGAAAAGC-3')を、neo遺伝子を含む標的対立遺伝子を同定するために使用した。HBsAg遺伝子を同定するためにプライマー5(5'-GGACCCTGCACCGAACATGG-3')及びプライマー6(5'-GGAATAGCCCCAACGTTTGG-3')を使用した。
【0018】
マウス尾ゲノムDNAを、それぞれEcoRIとBglIIで消化し、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端の外側に配置されたプローブを使ったサザンブロットに供した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは約22 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のEcoRI部位の削除から生じる。
【0019】
全RNAを、Trizol剤を使ってマウス組織から抽出し、そしてノーザンブロット分析を実施した。要するに、ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動法を実施するために20μgの全RNAを必要とし、次に、このRNAを、キャピラリー・トランスファーによって前記ゲルからニトロセルロース膜に移し、HBsAg遺伝子由来のプローブとハイブリダイズさせた。結果は、HBsAg遺伝子がトランスジェニック・マウスの肝臓及び脾臓で発現されたことを示した。
【0020】
HBsAg遺伝子の発現を、ワンステップHBsAg ELISAキットを使ってアッセイした。両マウスの血清及び肝臓ホモジネートを準備したが、しかしトランスジェニック・マウスについて、HBsAgが血清中に分泌されないで、肝臓ホモジネート中のみに存在したことが分かった。
【0021】
ヘテロ接合性及びホモ接合性トランスジェニック・マウスの成長及び発達は正常だった。肝臓において、リンパ球浸潤と脂肪変性が1年後に観察され;増殖細胞核抗原(PCNA)染色が肝細胞が過剰増殖の状態にあることを示した。15ヶ月齢のヘテロ接合性マウスが、高分化型肝細胞癌に向かって進行を始めて、17ヶ月齢以上のトランスジェニック雄マウスの75%が上記症状に冒された。明らかなアポトーシスは観察されなかった。
【0022】
第5の側面において、本発明は、HBV遺伝子の誘発された肝細胞癌モデル・マウスとしてのトランスジェニック・マウスの使用に関し、それは、以下の研究を含む:
【0023】
最初に、全RNAを、異なる月齢で、野生型又はHBVトランスジェニック・ホモ接合性マウスの肝臓から抽出し、そして疾患発生の分子機構について予備研究を行うために、肝細胞癌の発生に関与するかもしれない遺伝子を発見するために、ノーザンブロットにより遺伝子発現パターンを分析した。第2に、月齢の異なる野生型又はHBVトランスジェニック・ホモ接合性マウスの血清又は肝臓からタンパク質を抽出し、その後2次元(2-D)ゲル電気泳動に供した。示差的に発現されたタンパク質を見つけるために比較分析を実施し、次に、肝細胞癌の誘導の早期現象及び分子機構の集中的な研究、又は肝細胞癌の診断又は治療のための標的分子のスクリーニングのために、これらのタンパク質をペプチド質量フィンガープリント・プロフィールの分析を通して同定した。最後に、異なる月齢で、HBV遺伝子によって誘発された肝細胞癌を生じたマウス及び野生型マウスに、静脈内注射、腹腔内注射、又は経口投与により、薬剤を与えた。尾静脈血を採取し、そして先の調査研究から見つけていた肝細胞癌に関連した初期の分子を、治療計画及び薬効を評価するために観察した。18ヶ月齢超のマウスからの肝臓組織学的分析を実施し、治療薬の効果を評価しもした。
【0024】
遺伝子ノックイン法の利点を利用して、発明者は、相同組換え及びES細胞培養の手段により、B型肝炎表面抗原(HBsAg)遺伝子をマウスES細胞ゲノム上の特定の部位に組み込んだ。安定してHBsAg遺伝子を発現するトランスジェニック・マウスを、マイクロインジェクションと胚移植を通して得た。そのようなトランスジェニック・マウスは、肝臓でB型肝炎表面抗原を発現し、ヘテロ接合性マウス、及びホモ接合性マウスの両方で正常に発達した。肝臓において、リンパ球浸潤と脂肪変性が1年後に観察され;増殖細胞核抗原(PCNA)染色は、肝細胞が過剰増殖の状態にあることを示した。15ヶ月齢のヘテロ接合性マウスが、高分化型肝細胞癌に向かって進行を始めて(図7)、17ヶ月齢以上のトランスジェニック雄マウスの75%が上記症状に冒された。明らかなアポトーシスは観察されなかった。そのようなHBV遺伝子に誘発された肝細胞癌モデル・マウスは、肝細胞癌の早期現象及び誘導の分子機構の集中的な研究を行うために、肝細胞癌の初期段階の診断又は治療のための標的分子のスクリーニングのために、そして中国の伝統的な薬物と西洋の薬物の治療計画及び効果を比較するために使用することができる。
【0025】
文脈中で言及された文献を、それらの本質について本明細書中に援用する。
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されない。
【実施例】
【0026】
実施例1
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターの構築
HBV cDNAを含むpADR-1(8)を、BglIIとBamHIにより消化した。完全長のHBsAg遺伝子を含む2.2 kbの断片を単離し、ベクターpLoxpneoのBamHI部位に挿入して、ベクターpLoxpneo-s1を得た。相同配列の短い腕としての、p21遺伝子座の第2エクソンの上流の、2.0 kbのXhoI(埋め込み)-NotI(クローン・ベクターから)断片を、pLoxpneo-s1のHpaI部位とNotI部位の間に挿入して、ベクターpLoxpneo-s2を得た。p21遺伝子座の第2エクソンの下流の、6.0 kbのXbaI-BglII断片を、ベクターpHSG397にクローンし、HindIII(埋め込み)及びEcoRI部位を作り出した。最後に、相同配列の長い腕としての断片を、ベクターpLoxpneo-s2のAsp718I(埋め込み)とEcoRI部位の間に挿入して(図1)、HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターpLoxpneo-HBsAgを産生した。
【0027】
実施例2
HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターの構築
HBV cDNAを含むpADR-1を、XbaIとBamHIにより消化した。HBX遺伝子5'末端及びX遺伝子5'の側方に位置する部分を含む1.15 kbの断片を単離し、ベクターpLoxpneoに挿入して、ベクターpLoxpneo-X1を得た。HBV cDNAを含むpADR-1を、BglIIとBamHIで消化した。HBX遺伝子の3'末端を含む0.58 kbの断片を単離し、ベクターpLoxpneo-X1に挿入して、全HBX遺伝子及びその5'末端の側方に位置する部分を含むベクターpLoxpneo-X2を得た。相同配列の短い腕としての、p21遺伝子座の第2エクソンの上流の、2.0 kbのXhoI-NotI断片を、前記ベクターのXhoI部位とNotI部位の間に挿入して、ベクターpLoxpneo-X3を得た。p21遺伝子座の第2エクソンの下流の、6.0 kbのXbaI-BglII断片を、ベクターpHSG397にクローンし、HindIII(埋め込み)及びEcoRI部位を作り出した。最後に、相同配列の長い腕としての断片を、ベクターpLoxpneo-X3のAsp718I(埋め込み)とEcoRI部位の間に挿入して(図2)、HBX遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターpLoxpneo-HBXを産生した。
【0028】
実施例3
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞の産生
1) フィーダー細胞であるマウス初期胚線維芽細胞の準備
1.妊娠後14日目のマウスを屠殺し、腹腔を開き、胚と一緒に子宮を取り出した。PBS中で胚を子宮から切取り、次に、無菌の100 mmペトリ皿に置いた。
2.卵黄嚢、羊膜、及び胎盤を取り除き、そして胚を新しいPBSで2回洗浄した。
3.胚の頭部及び内臓を複数の鉗子によって取り除き、マウス胎仔を、無菌のはさみにより小片(l〜3 mm3)にカットし、次にPBSが実質的に無色透明になるまでPBSで洗浄した。
【0029】
4.上記組織小片をPBSを含む15 ml遠沈管に移し、2分間1000rpmで遠心分離する。
5.上清を捨て、そして5 mlの0.25%トリプシンを残渣に添加し、37℃で30分間処理し、次に10%のウシ胎仔血清を補ったDMEM培地を添加し、ピペットによる吸い上げと吐き出しを繰返した。
6.管を2分間1000rpmで遠心分離した。
7.上清を捨てた。フィーダー細胞培地を加えた後、細胞を150 mmペトリ皿に移し、5%のCO2雰囲気のインキュベーター中、37℃で2〜3日間培養した。通常、胚性線維芽細胞は3日でペトリ皿を覆う。
【0030】
8.1つのペトリ皿の胚性線維芽細胞を、3つのペトリ皿の中に分配し、3日後に10%のDMSOを加えたフィーダー細胞培地を使って冷凍した。この細胞が、マウス初期胚性線維芽細胞であった。
【0031】
2) マウス初期胚性線維芽細胞の処理
マウス初期胚性線維芽細胞は、それらが培養されたES細胞を超えて増殖することなくES細胞の成長を支援することができるように、それらの成長を止めるためにそれらをフィーダー細胞として使用する前にマイトマイシンCで処理する必要がある。
【0032】
1.マウス初期胚性線維芽細胞の管を速やかに40℃の水浴で解凍し、次に細胞を、2 mlの培地を含む遠沈管に移し、2分間1000rpmで遠心分離した。
2.上清を捨てた。フィーダー細胞培地を加えた後、細胞を2つの100 mmペトリ皿に移し、5%のCO2雰囲気のインキュベーター中、37℃でインキュベートした。
3.3日後に、細胞をトリプシン処理し、次に、6つの150 mmペトリ皿に移し、37℃で3日間インキュベートした。
【0033】
4.細胞を6つの150 mmペトリ皿から12の150 mmペトリ皿に移し、37℃で3〜4日間インキュベートした。
5.細胞を12の150 mmペトリ皿から40の150 mmペトリ皿に移し、37℃で3〜4日間インキュベートした。
6.3.3 mlのPBSをマイトマイシンC(2mg)のバイアルに加えて、マイトマイシンCの3つのバイアルを合計10 mlにまとめた。各々のペトリ皿に10 μg/mlの終濃度まで0.25 mlのマイトマイシンCを添加し、そして37℃で2〜3時間インキュベートした。
【0034】
7.各々のペトリ皿に対し、培地を捨て、そして細胞をPBSで1回洗浄し、3 mlの0.25%トリプシンで処理した。10分後、5 mlのフィーダー細胞培地を添加し、反応を終わらせた。
8.全てのペトリ皿からの細胞を50 ml遠沈管中に集めた。これらの管を2分間1000rpmで遠心分離した。
【0035】
9.40 mlの寒剤(15%のFCS、10%のDMSO、75%のDMEM)をこの細胞に加えた。ピペットによる吸い上げと吐き出しを繰返した後に、細胞を素速く40本の小サイズの管に分け、-80℃で保存した。こうして用意したフィーダー細胞は、通常、各々の解凍された小サイズ管につき90 mmペトリ皿3〜4枚を覆うことができる。
【0036】
600 mlのフィーダー細胞培地の調整は、以下の処方を参照することができる:
500 ml DMEM
6 ml L-グルタミン
6 ml非必須アミノ酸溶液(10 mM)
6 mlペニシリン及びストレプトマイシン溶液
(5,000 ユニットのペニシリン、5 mgのストレプトマイシン/100 ml)
4 μlメルカプトエタノール
90 mlウシ胎仔血清
【0037】
次に、フィーダー細胞培地をろ過し、4℃で保存した。1000 u/mlのLIFをこの培地に加えた後に、培地をES細胞の培養に使用することができる。
【0038】
3) HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターを使った電気穿孔法によるES細胞のトランスフェクト
【0039】
1.トランスフェクトを、蘇生したES細胞をパッサージした後2日目(36時間目)に実施した。
2.トランスフェクトの2時間前に培地を新しい培地に変えた。
3.培地は捨て、次にペトリ皿をPBSで2回洗浄した。
4.1.5 mlの0.25%トリプシンを各々の100 mmペトリ皿に37℃で5分間加えておいた。
【0040】
5.3.5 mlのES細胞培地を加え、ピペットによる吸い上げと吐き出しを20回行った。血球計算チャンバーを使って細胞数を数えた。各々のターゲッティング・ベクターについて、約2×107細胞/トランスフェクトを通常必要とした。
6.ES細胞懸濁を2分間1000rpmで遠心分離し、上清を捨てた。細胞を10 mlのPBS中に再懸濁した。
7.細胞懸濁液を2分間1000rpmで再度遠心分離し、そして細胞を、細胞密度が2×107細胞/ml超なるようにPBS中に再懸濁した。
【0041】
8.45 μgの実施例1の線状ターゲッティング・ベクターを1 mlの細胞懸濁液と混ぜ、そして電気穿孔法用キュベット中に設置した。このキュベットを5分間室温に置いた。
9.Gene Pulsor(600 V、25 μF)を放電させた。上記キュベットを取り除き、そして1分間室温に置いた。
10.電気穿孔法キュベット中の細胞を、7 mlの新しいES細胞培地と混合し、そしてフィーダー細胞で覆われた4つのペトリ皿(100 mm)に分配した。
【0042】
11.40 μlの非トランスフェクト細胞を対照として100 mmペトリ皿に置いた。
12.24時間後、ES細胞をスクリーニングするために、G418(280 μg/ml)及びガンシクロビル(2 μM)を含む選択培地に培地を交換し、以後、毎日新しい選択培地に交換した。
13.個々のクローンを、トランスフェクト後7日目から通常は選別した。
【0043】
4) 陽性ESクローンの選別
1.7-8日の間選択培地中で培養し、そして培地を捨てた後に、トランスフェクトしたES細胞を1回PBSで洗い、そして10 mlのPBSに変えた。
2.200 μlマイクロピペッタを20 μlに合わせ、そして顕微鏡下でそのチップを使って陽性ESクローンを選択した。
【0044】
3.個々のクローンを空の96ウェル・プレートに移した。各々の100 mmペトリ皿について、1枚で通常30〜50のクローンを選別することができる。
4.50 μlの0.25%トリプシン-EDTA溶液を各々のウェルに加え、37℃で3〜5分間反応させた。
【0045】
5.各々のウェル中に、100 μlのES細胞培地を加え、マイクロピペッタのチップを用いてピペットによる吸い上げと吐き出しを繰り返しESクローンを単細胞の懸濁液にした、ここで、上記マイクロピペッタは、100 μlの8チャネルのものであり、80 μlに調整した。それぞれ各々のESクローンからの単細胞懸濁液を、2つのアリコートに分け、そしてフィーダー細胞を伴う2枚の96ウェル・プレートに再び蒔いた。2枚のプレートについて、各々のクローンの配置と順序は同じものだった。毎日の新しいES細胞培地への培地の変更、そして2〜3日間の培養に続いて、1枚のプレートを凍結させ、もう一方をトリプシン処理して、その中のESクローンを24ウェル・プレートに移し、培地の色が黄色に変化するまでフィーダー細胞培地を用いて培養した。
【0046】
5) 陽性ESクローンの凍結
1.前記培地を捨て、そして100 μlのPBSを添加した。
2.PBSを捨てた後で、PBSで薄めた0.125%のトリプシン-EDTA溶液50 μlを加えて、37℃で3〜5分間反応させた。
【0047】
3.100 μlの寒剤(15%のDMSO、20%のウシ胎仔血清、65%のDMEM)を加えた。
4.8チャネルのマイクロピペッタを用いて、細胞を少なくとも10回ピペットにより吸い上げ、そして吐き出した。96ウェル・プレートを封着膜により封じて、ビニール袋で閉じて、そして上記プレートと上記ビニール袋の表面に印をつけた。
【0048】
5.凍結速度を落とすために、まず、前記プレートをフォーム・ボックスの中に置き、そして-80℃で冷凍した。
6) ESクローンからのゲノムDNAの製造
1.ES細胞を12ウェル・プレート又は24ウェル・プレートで培養した。ゲノムDNAを抽出するためにES細胞を使用するために、LIFを培地に加える必要はない。
【0049】
2.400 μlの細胞溶解緩衝液(0.5%のSDS、0.1 M NaCl、0.01 M EDTA、0.02 M Tris-Cl pH7.6、プロテアーゼ K、100 μg/ml)を各々のウェルに加え、そしてこのプレートを5分間室温に置いた。各々のウェルの内容物をエッペンドルフ管に移した。
【0050】
3.管を50℃で2時間維持した。
4.200 μlの飽和NaCl(6 M)は加えた。
5.エッペンドルフ管をボール紙の箱に置き、200回激しく振とうした。
6.エッペンドルフ管を10分間氷上に置いた。
7.前記管を室温下、10分間14,000rpmで遠心分離した。
8.各々の管に、500 μlの上清をきれいなエッペンドルフ管に移し、続いて0.8 mlのエタノールを加えて、混ぜた。
【0051】
9.前記管を、5分間14,000rpmで遠心分離し、そして上清を捨てた。
10.各々の管をひっくり返して置き、室温で乾燥させた。DNAを50〜100 μlのTE中に再懸濁して、完全に溶けるま(24〜48時間)で37℃で静置した。DNAをPCR又はサザン・ハイブリダイゼーション分析のために使用することができる。
7) サザンブロットによるHBsAg遺伝子標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞の同定
【0052】
G418/FIAU二重抵抗性クローンから抽出した後に、それぞれEcoRI及びBglIIによりゲノムDNAを消化して、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの外側5'末端に配置されたプローブを使ってサザンブロットに共した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは約22 kb(図3)に移動した。
【0053】
実施例4
HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞の製造
実施例3に記載したそれと同じ方法で、HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞を得れることができる。
【0054】
実施例5
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの製造
1) ドナー胞胚の製造
胞胚の数は、多くの要因、例えばマウス系統、全身的な健康状態、適応、過剰排卵する能力、及び実験する季節などに依存する。より多くの胞胚を得るためにか、又はマウスの数が限られているとき、興奮していないマウスを、一般に腹腔内にホルモンを注射し、それらにより多くの卵を排卵させる、すなわち、過剰排卵させる。過剰排卵させられるマウスは、通常、青年期にある3〜5週齢であり、そして特定の年齢は、マウスの系統により変わるかもしれない、例えば雌C57BL/6Jマウスの最も好適な年は、25日齢である。
【0055】
過剰排卵マウスからの胞胚の製造:
1.興奮していない4〜5週齢の雌C57BL/6Jのマウス(12.5〜14 g)を選択し、1日目の午後2:30に、5 IUの妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG、SIGMA)を腹腔内に注射した。
2.3日目の正午前、すなわち先のPMSG注射の48時間以内に、雌マウスに5 IUのヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG、SIGMA)を腹腔内に注射して、過剰排卵させ、そして繁殖用の雄マウスの檻に移して、それらと交尾させた。
【0056】
3.4日目の午前9:00前に、膣栓の存在を確認した。膣栓のあるマウスをドナー雌マウスとして使用し、そして他の檻に移し、その日を0.5日目と指定した。同日午後2:30に、興奮した白色雌クンミン・マウス(約24〜30g)を選択し、精管結紮した(spermaductus-deligated)雄マウスとつがわせる。
【0057】
4.5日目の午前9:00前に、膣栓の存在を確認した。膣栓のあるマウスをアクセプター雌マウスとして使用し、他の檻に移した。
5.7日目、すなわち、交尾後4日目に、胞胚をドナー雌マウスの子宮から採集した。
【0058】
胞胚の採集及び培養:
1.脱臼によってドナー雌マウスを屠殺した後に、それらの腹部は70%のアルコールで殺菌した。腹部の真ん中の線で水平の切開した。
2.皮膚を切り開き、その切開の外側に引っ張り、そして腹腔を持ち上げ、そして切り開いて、十分に腹腔を露出させた。
【0059】
3.内臓組織を腹膜の上に持ち上げ、子宮を見つけ、次に子宮を、両卵管が子宮端に結合する場所で慎重に摘出して、60 mmの無菌のペトリ皿に置いた。
4.卵管と子宮端を、それぞれ子宮の頭部及び子宮の尾部から取り除き、別々の遮るもののない分かれた子宮にした。
【0060】
5.十分なBrinster's培地BMOC-3(GEBCOBRL)を、5 mlの使い捨ての注射器中に吸い込んだ。5ゲージの針を装着した後、この注射器を、解剖顕微鏡下で子宮腔に挿入し、次に注射器プラグを押して、様々な方向で子宮腔をフラッシュした。フラッシング中、子宮はわずかしか使われずに、そしてマウスの胚は皿の底に速やかに沈んだ。
【0061】
6.各々の水滴が200 μlの、数個の培地を35 mmのペトリ皿中に滴らせて、次に鉱物油(SIGMA、M-3516)で覆った。
7.胚を、解剖顕微鏡下、フラッシング・ピペットを使って採集し、そして培養微小滴に移し、次に5%のCO2雰囲気のインキュベーター中で37℃で2時間インキュベートした。
【0062】
2) 胞胚のマイクロインジェクション
ES細胞のマイクロインジェクションを、深さと堅さの効果により、位相差顕微鏡又は微分干渉顕微鏡(Nikon)を使用すべきである。耐震プラットフォーム上の、少なくとも低倍率対物レンズと200×の倍率までの高倍率対物レンズ、及びさらに37℃の定温対象ステージを備えている、極微操作装置(Narishige)がより好ましい。
【0063】
マイクロインジェクションのためのピペットの準備:
ES細胞を胞胚内に注入する前に、胞胚を移すためのトランスファー・ピペット、マイクロインジェクション中の胞胚を固定するためのホールディング・ピペット、及び胞胚内に細胞を注入するインジェクション・ピペットを含む胞胚操作のための様々な種類のピペットが、必要である。
【0064】
針作製用バーナー(Narishige、MF-900)を使ったマイクロインジェクションのためのホールディング・ピペットの準備:
1.細いガラス毛細管(Nikon、G-1)を、小さい炎の上で約2〜3cmの長さの細い針に引き伸ばした。
【0065】
2.ガラス毛細管を、ガラス球になるように、針作製用バーナーのフィラメント上で溶かした。用意した針を固定して、フィラメントと水平になるように調整した。フィラメントを加熱し、次にガラス球を近づけ、そして接触させてガラス針をその60〜90 μmの直径にする。
【0066】
3.フィラメントの加熱を止めた後、それは冷えて収縮するので、針が分割され、鋭くないホールディング・ピペットを形成した。
4.次に12〜20 mmの中間口径をもち、針先を丸くするために、再びフィラメントを加熱し、針先をそれに近づけた。
5.針を、針先から1cm離れたところで加熱し、30°の角度で曲げた、このため針先は、顕微操作視野で水平である。
【0067】
針作製用バーナーを使ったインジェクション・ピペットの準備:
1.ガラス毛細管を、長さ約1cmの細い針に引き伸ばした。
2.前記の針を、針作成用バーナーを使って、12〜15 μmの内径で分割させた、その内径は、ES細胞を押しつぶすことなく、ちょうど1つのES細胞を保持することができる。
【0068】
3.針を針先からわずかに離れたところで曲げ、30°の角度をつけた、これにより顕微操作視野で針先は水平である。
トランスファー・ピペットの準備は、ホールディング・ピペットのそれと類似していたが、トランスファー・ピペットの内径が胞胚のそれの1〜1.5倍(約110〜130 μm)であるというところに唯一の相違があり、よって胞胚が容易にそこを出入りできる。前記針の長さは、培地、泡、及び特定の数の胞胚を保持するために約2〜3 cmである。
【0069】
胞胚注入の操作手順:
1.パラフィン油で満たした後、皿、ホールディング・ピペットの針管、及びインジェクション・ピペットのそれを、顕微鏡の微調整を通して同じ焦点水平面に合わせた。
2.注入するES細胞を、注入の数日前に解凍した。培地を、注入日の朝に新しいES培地に変えた。1〜2時間後、細胞を、トリプシン処理して単細胞懸濁液を用意し、次にBrinster's BMOC-3培地に浸した。
【0070】
3.膨らんだモルファ(morpha)、はっきりした辺縁、より大きな胞胚腔をもつ約10個の胞胚を、35 mmペトリ皿から選び、ホールディング・ピペット及びインジェクション・ピペットを取り付けたインジェクション・チャンバーに移して、次に上記チャンバー内にフラッシュ・ピペットを使って数個のES細胞を吸い込んで移した。
4.10×の倍率下、インジェクション・ピペットを使って12〜15個の小さくて、丸いES細胞を吸った。
5.40×の倍率下、ホールディング・ピペットを、胞胚の一方の側面に付け、次にインジェクション・ピペットを、胞胚の中心のそれと同じ水平面に合わせた。
【0071】
6.インジェクション・ピペットの操作棒を、インジェクション・ピペットが速やかに胞胚の壁を抜けて胞胚腔の中に貫通するように動かし、次にインジェクション・ポンプを押して、ES細胞を胞胚腔に連続して入れ、最後に慎重に引き抜いた。
7.その後注入した胞胚を顕微操作視野の反対側に置き、次の胞胚の注入を続けた。
8.10×の倍率下、全ての注入した胞胚を、フラッシング・ピペットを使ってより大きな皿に吸って移し、Brinster's BMOC-3培地を加えた滴で培養して、最後に印をつけた。
【0072】
残りは類推により推定され、注入すべき胞胚の数は、胞胚の状態とその日のアクセプター・マウスの数に基づき決定された。ホールディング・ピペット及びインジェクション・ピペットは、塞がれたか又はすぐに詰まるときのみ変えた。マイクロインジェクション・チャンバーの滴を、注入の数時間後か、又は培地のpHが変わったときに新しくした。
【0073】
3) 子宮内への胞胚の移植
1.アクセプター雌マウスを計量し、それらの体重に従って麻酔剤(アベルチン)を腹腔内注射して、背中の毛を剃った。
2.トランスファー・ピペットを、口で制御する管と接続し、次に培地、泡、培地、泡、注入された胞胚、泡、そして多少の培地を順番に吸った。
【0074】
3.各々のアクセプター・マウスの背中を75%のアルコールで殺菌して、次に最初の腰椎近くの右側に1 cmの水平の切開をした。右側の卵巣及びその脂肪体が腹膜を通して見ることができるまで、皮膚を切開の外側に引っ張った。腹膜の3 mm開口を、先のとがった鉗子を使って裂いた。
4.脂肪体を左手で固定すると、子宮を見ることができた。小サイズの止血鉗子を使って脂肪体は固定した。
【0075】
5.子宮壁を、子宮と卵管の間の接点から2 mm離れた場所で、左手の先のとがった鉗子でクランプし、一方で、4ゲージの針先とトランスファー・ピペットを右手に保持した。解剖顕微鏡下で針先を使って、先のとがった鉗子に近く、そして血管から離れた場所で開口部を開け、次にトランスファー・ピペットの最前部をその中に慎重に挿入し、そして胞胚をゆっくりと子宮内に吹き出した。
【0076】
6.子宮及び腸間膜を、腹腔に戻し、その後切開を閉じた。
前述の操作がうまくいっていれば、仔マウスが17日後に生まれて、高度のキメラ・マウスが得られている場合には、数日後にそれらの毛皮の色から推論できる。高度のキメラ・マウスをC57BL/6Jマウスと交尾させるために選択したとき、無垢の茶色の毛皮をもつトランスジェニック子孫が産まれる。
【0077】
実施例6
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの同定
1) マウス・ゲノムDNAの準備
1.尾の先端約0.5cmの部分を15日齢のマウスから切断し、次にエッペンドルフ管に移した。
2.各々の管に、400 μlの溶解緩衝液(0.5%のSDS、O.1 M NaCl、0.05 M EDTA、0.01 M Tris-Cl pH8.O、プロテアーゼK、200 μg/ml)を加え、尾の先端を溶解させた。
【0078】
3.この管を一晩50℃でインキュベートした。
4.200 μlの飽和NaCl(6M)を各々の管に加えた。
5.エッペンドルフ管をボール紙の箱に置き、200回激しく振とうした。
6.エッペンドルフ管を10分間氷上に置いた。
7.前記管を室温下、10分間14,000rpmで遠心分離した。
8.各々の管について、500 μlの上清をきれいなエッペンドルフ管に移し、続いて0.8 mlのエタノールを加えて、混ぜた。
【0079】
9.この管を5分間14,000rpmで遠心分離して、上清を捨てた。
10.各々の管をひっくり返って置き、室温で乾燥させた。DNAを、50〜100 μlのTE中に再懸濁し、完全に溶けるまで(24〜48時間)37℃で静置した。このDNAをPCR又はノザン・ハイブリダイゼーションのために使用することができる。
【0080】
2) マウス遺伝子型のPCR同定
野生型p21対立遺伝子を確認するためにプライマー1(5'-TCTTCTGTTTCAGCCACAGGC-3')及びプライマー2(5'-TGTCAGGCTGGTCTGCCTCC-3')を使用し、436bpのバンドが野生型及びヘテロ接合性マウスから増幅されうる。neo遺伝子上のプライマー3(5'-ATTTTCCAGGGATCTGACTC-3')及びプライマー4(5'-CCAGACTGCCTTGGGAAAAGC-3')を、neo遺伝子を含む標的対立遺伝子を同定するために使用した。HBsAg遺伝子を同定するためにプライマー5(5'-GGACCCTGCACCGAACATGG-3')及びプライマー6(5'-GGAATAGCCCCAACGTTTGG-3')を使用した(図4)。
【0081】
3) サザンブロット・ハイブリダイゼーションを用いたHBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
抽出したマウス尾ゲノムDNAを、それぞれEcoRIとBglIIで消化し、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端の外側に配置されたプローブを使ったサザンブロットに供した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたる変異後のHBsAg遺伝子を含む上記バンドは約22 kbに移動した(図5)。
【0082】
4) 組織からの全RNAの抽出
1.2 mlのTrizolを加えた後に、100 mgのマウス組織(肝臓、脾臓、腎臓など)をホモジナイザーにより均質化し、次に5分の間室温で静置した。
2.0.4 mlのクロロホルムを加えた。管をきっちりと閉じて、15秒間激しく振とうし、そして2〜3分間静置し、次に2〜8℃で15分間10,000〜12,000gで遠心分離した。
【0083】
3.水性上層を、新しい遠沈管に移し、次に1 mlのイソプロパノールを加え、そして混ぜた。この管を、室温に10分間置き、続いて2〜8℃で10分間10,000〜12,000gで遠心分離した。
4.上清を捨てた。次にペレットを、少なくとも2 mlの75%のエタノールの添加により洗浄し、2〜8℃で5分間わずか7500gの速度で遠心分離した。
【0084】
5.上清を捨てた。RNAペレットを5〜10分間風乾して、次にピペッティングの繰り返しにより500 μlのRNase不含水中に溶かした。
6.このRNAを55〜60℃で10分間維持し、次に-70℃で保存した。
5) ノーザン・ハイブリダイゼーションを用いたHBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
【0085】
1.1.5gのアガロースを117.2 mlのDEPC処理水中に溶かし、次に70℃に冷却し、3.5 μlの10 mg/ml臭化エチジウム(EB)、30 mlの5×MOPS(0.1 mol/l MOPS (pH7.0)、40 mmol/l酢酸ナトリウム、5 mmol/l EDTA(pH8.0))、及び2.8 mlの40%ホルムアルデヒド溶液を加えた。
2.20 μgのRNAに、3倍量の添加液(6.7 mlのホルムアミド、2.2 mlの40%ホルムアルデヒド、1320 μlの10×MOPS、20 μlの20 mg/mlブロモフェノールブルー)を加え、60℃で10分間加熱し、そして氷水で急速に冷やし、次にサンプルを添加した。
【0086】
3.電気泳動装置を電源に接続した。120〜160vの電圧をゲルに適用して、そしてブロモフェノールブルーが、添加したウェルの8cm先まで移動するまで2〜3時間の泳動した。この間、両極性の電気泳動緩衝液を30分間ごとにかき混ぜた。
4.このゲルを、各回につき15分間、20×SSCに2回浸した。
5.RNAを、20×SSCを使ってゲルからニトロセルロース膜に移して、次にこの膜を5分間2×SSCで洗浄した。
【0087】
6.UV(1200 μW/cm2)下で2分間の架橋後、この膜を80℃で45分間焼いた。
7.Promega社製のプライマーA標識システム(Cat. No. U1100)を使ってプローブを標識した。要するに、標識されるDNA断片を、95〜100℃で2分間ボイルし、次に、氷水により急冷した。以下の溶液を1.5 mlの遠沈管中で混ぜた:
【0088】
【表1】
【0089】
次にヌクレアーゼを含まない水を50 μlの量まで加え、そして混ぜた。室温で1時間静置し、そして2分間ボイルし、次にこの管を氷水で急冷し、次にEDTAを終濃度20 mMまで加えて反応を終了させた。
【0090】
8.前記膜を5分間6×SSCに浸して、次にプレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、2×Denhardt、0.1%のSDS、100 μg/mlの変性サケ精子DNA)中、65℃で2時間インキュベートした。標識したプローブをプレハイブリダイゼーション溶液中に加えた後、ハイブリダイゼーションを65℃で18時間超続けた。
9.前記の膜を、1×SSC、0.1%のSDS中、室温で20分間、次に0.2×SSC、0.1%のSDS中、65℃で3回、各回につき20分間洗浄した。
【0091】
10.この膜をかるく乾かして、次に-70℃でX線フィルムに露光した。
11.このフィルムを現像した。
結果を図6に示した。
【0092】
6) ELISAを用いたHBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
HBsAgのためのワンステップELISAキットを北京のSihuan Biological社から購入して、そして以下のステップを使用した:
【0093】
1、サンプルの添加:
マイクロタイタープレートをコートした。各々のプレートに、2つのウェルを、それぞれ陰性対照及び陽性対照として設定し、次に1滴の対照溶液(50 μl)を各々の4つのウェルに加えた。1つのウェルを(全ての薬剤を加えない)ブランク対照として設定した。50 μlの試験サンプルを他のウェルに加えた。次に1滴の抗HBs-HRP(50 μl)を各々のウェルに加えた。前記プレートを37℃で30分間インキュベートした。
【0094】
2、プレートの洗浄:
各々のウェルの液体を捨て、次にこのウェルを3倍希釈した洗浄緩衝液を使って5回洗い、そして軽くたたいて乾かした。
【0095】
3、発色:
1滴の色素原溶液Aと1滴の色素原溶液Bを各々のウェルに加え、次にプレートを37℃で15分間インキュベートして、発色させた。
【0096】
4、反応停止:
1滴の停止緩衝液を加え反応を停止させた。
5、結果の表示:
ブランク・ウェルを450nmの波長で計測して、次に各々のウェルのOD値を読み取り、結果を以下の式に従って計算した:
S/N=試験血清のOD値/陰性対照の平均のOD値、S/N≧2.1の場合、試験血清は陽性であるとみなし、S/N<2.1の場合、試験血清は陰性であるとみなした。陰性対照のOD450<0.05である場合、そのとき、0.05を前記の式に取り入れ;OD450≧0.05の場合、そのとき、実効値を前記の式に取り入れた。結果は以下の通りだった:
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
実施例7
HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの同定
1) PCRによるマウスの遺伝子型の同定
野生型p21対立遺伝子を同定するために、プライマー1(5'-TCTTCTGTTTCAGCCACAGGC-3')及びプライマー2(5'-TGTCAGGCTGGTCTGCCTCC-31)を使用し、そして436bpのバンドが野生型及びヘテロ接合性マウスから増幅されることができた。neo遺伝子を含む標的対立遺伝子を同定するために、neo遺伝子上のプライマー3(5'-ATTTTCCAGGGATCTGACTC-3')及びプライマー4(5'-CCAGACTGCCTTGGGAAAAGC-3')を使用した。HBX遺伝子を確認するために、プライマー7(5'-TCTCTGCCAAGTGTTTGCTGACGC-3')及びプライマー8(5'-TCGGTCGTTGACATTGCTGAGAGTC-3')を使用した。
【0100】
2) サザンブロットによるHBX遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
抽出したマウス尾ゲノムDNAを、それぞれEcoRI及びBglIIにより消化し、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端の外側に配置されたプローブを使ったサザン・ハイブリダイゼーションに共した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたる変異後のHBX遺伝子を含む上記バンドは約22 kbに移動した。
【0101】
3) ノーザンブロットによるHBX遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
HBV cDNAを含むpADR-1のBglII及びBamHI消化産物から抽出した580bp断片を、ノーザン・ハイブリダイゼーションのためのプローブとして使用した。結果は、HBX遺伝子がマウスの肝臓及び腎臓で発現されていたことを示した。
【0102】
実施例8
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの表現型分析
1) ヘマトキシリン及びエオジン染色
1、固定
組織を中性ホルムアルデヒド溶液(100 mlの40%ホルムアルデヒド、900 mlの水、4 gのリン酸2ナトリウム、6.5 gのリン酸二水素ナトリウム)中で20時間にわたり固定した。
【0103】
2、乾燥
70%エタノール15分間
80%エタノール15分間
90%エタノール15分間
95%エタノール15分間
無水のアルコール15分間
無水のアルコール15分間
キシレン15分間
キシレン15分間
【0104】
3、包埋
乾燥した組織を、加工されたパラフィン(すなわち、融解され、そして60℃で一晩寝かせた)の中に移し、そして2時間浸した、この期間の間にパラフィンを2度交換した。次に、組織を予熱した包埋枠組み中に移し、続いて融解パラフィンを速やかに注ぎ入れ、その間に、暖めた鉗子を使って組織の位置を調節した。次に、底板を上に置き、その上にいくらかの融解パラフィンを注ぎ、そしてその中の泡を慎重に取り除いた。それを室温に置き、融解パラフィンを凝固させた。
【0105】
4、切片のカッティング
塊状パラフィンを好適なサイズにし、刃を10°の角度に合わせた回転式ミクロトーム(MICROM HM340E)で切った。形成されワックス-チップをきれいなアルミニウム・ホイルに移し、外科用のかみそりの刃を使って好適なサイズに切り、そしてそれぞれスライドに移した。サンプルが水面に浮かぶまで、適切な量の水を加えて、次に前記スライドを、約40℃のスライド乾燥機のプラットフォーム上に置き、そしてサンプルが広がるまで慎重に水を捨てた。前記スライドを、検体ボックス中にまとめ、37℃で一晩乾燥させた。
【0106】
5、ヘマトキシリン及びエオジン染色
キシレン15分間;
キシレン15分間;
無水アルコール15分間;
95%エタノール5分間;
70%エタノール5分間;
水5分間;
【0107】
ハリス・ヘマトキシリン染色溶液(2.5 gのヘマトキシリン、25 mlの無水アルコール、50 gのカリミョウバン、1.25 gの酸化第二水銀、20 mlの氷酢酸、500 mlの水)5分間;
流水による洗浄、5〜10分間;
70%エタノール-塩酸(200 mlの70%エタノール+10滴の塩酸)15〜30秒間;
70%エタノール-水酸化アンモニウム(200 mlの70%エタノール+10滴の水酸化アンモニウム)1分;
水5分間;
【0108】
次に、脱色の程度を顕微鏡下で観察した。細胞質が灰色であるか又は透明ならば、次のステップを実行した。細胞質がまだ青ければ、前述のステップを繰り返した。
70%エタノール3分間;
エオジンY染色溶液(0.5 gのエオジンY、5 mlの水中に溶解した50 mgのブリリアント・レッドB、50 mlの水、2 mlの氷酢酸、390 mlの95%エタノール)1分間;
95%エタノール5分間;
無水アルコール5分間;
キシレン5分間;
キシレン5分間;
【0109】
6.中性ゴムによるスライドの封入
結果を図7に示した。
2) 免疫組織化学的分析
1.パラフィン切片を用意し、規定どおりに水に対してろうを取り除いた。
2.このスライドを、3%の過酸化水素中、10分間室温でインキュベートし、内性のペルオキシダーゼを不活性化した。
【0110】
3.このスライドを蒸留水により2分間×3回洗浄し、次に0.01 Mのクエン酸緩衝液(pH6.0)を含む容器中に移した。この容器を、電子レンジにより前記緩衝液が10〜15分間92〜98℃の温度になるまで加熱し、次に室温で10〜20分冷まして抗原を復元した。このスライドを5分間PBS中に浸した。
【0111】
4.次に、前記スライドを5〜10%の正常ヤギ血清(PBSで希釈)によりブロックし、10分間室温インキュベートし、その後血清を捨て、好適な割合に希釈した一次抗体(1%BSA-PBSで希釈)を添加し、37℃で1〜2時間又は4℃で一晩インキュベートした。
【0112】
5.このスライドを、各回5分間、PBSにより3回洗浄した。
6.次に、このスライドに好適な割合に希釈したビオチン標識二次抗体(PBSで希釈)を加え、37℃で30分間インキュベートした。
【0113】
7.このスライドを、各回5分間、PBSにより3回洗浄した。
8.次に、このスライドに好適な割合に希釈したホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(PBSで希釈)を加え、37℃で30分間インキュベートした。
【0114】
9.このスライドを、各回5分間、PBSにより3回洗浄した。
10.色素原物質を使って色を発色させた。
11.このスライドを水で十分に洗い、対比染色し、封入した。
結果を図8に示した。
【0115】
3) マウス血清中のα-フェトプロテインの分析
マウス血清中のα-フェトプロテインの含量を、ヒト血清α-フェトプロテイン(α-AFP)に対する定量的なELISAキットを使って測定した。手順は以下のとおりであった:
【0116】
1.血清を、血液サンプルから分離し、4℃で保存し、冷凍と解凍の繰り返しを避けた。
2.サンプルを以下の比率で加えた:
【0117】
【表4】
【0118】
混合し、次に37℃で20分間インキュベートした。各々の実験において、1つのウェルをブランクとして設定した。
【0119】
3.各々のウェルについて、まず、その中の液体を捨て、第2に、蒸留水をその中に再び満たし、次に10秒後に捨てた。このステップを3〜4回繰り返した。
4.1滴の色素原物質A(50 μl)、1滴の色素原物質Bを添加し、そして十分に混ぜ、次に色素形成のために37℃で15分間静置した。
【0120】
5.1滴の停止溶液(50 μl)を加えた。ブランク・ウェルを使ってゼロを計測した後に、450nmの波長で各々のウェルのOD値を読み取った。
6.横座標として標準の異なる濃度の対数、縦座標として対応するOD値を使った、標準曲線をプロットした。プロットした標準曲線の線状回帰方程式に基づき、サンプルの濃度を、その試験したOD値によって計算することができた。前記方程式は、以下のとおりである:
logOD=Blog[濃度]+A
2ヶ月齢マウスの比較結果を図9に示した。
【0121】
4) アポトーシスの検出
Oncor社製のApopTaq(In situアポトーシス検出キット)を、アポトーシス検出のために使用し、手順は以下のとおりだった:
1.パラフィン切片を水に対して脱ろう化し、各回5分間、2回PBS中に浸した。
2.組織の用意
組織を、PBSで希釈したプロテアーゼK(20 μg/ml)により室温で15分間(60 μl/5cm2)処理し、次に純水で、各回2分間、2回洗浄した。
【0122】
3.内性のペルオキシダーゼを不活化する。
前記組織を、PBSに希釈した3%H2O2により5分間室温で処理し、次に純水で、各回5分間、2回洗浄した。
4.サンプルの平衡化
不必要な液体を慎重に捨てた。75 μlの平衡緩衝液を直接的にサンプル上に加え、次に少なくとも10秒間室温でインキュベートした。
【0123】
5.TdTaseの取り込み
不必要な液体を慎重に捨てた。TdTase作用溶液(77 μlの反応緩衝液+33 μlのTdTase)を直接的に加えて、次に37℃で1時間インキュベートした。
6.反応停止
サンプルに停止緩衝液を添加し、15秒間撹拌し、次に続けて室温で10分間インキュベートした。
【0124】
7.抗ジゴキシン-複合体の添加
サンプルを、各回1分間、3回PBSにより洗浄した。不必要な液体を慎重に捨てた後に、サンプルを、室温に暖めた抗ジゴキシン・ペルオキシダーゼ複合体で覆った。次に30分間室温でインキュベートした。
8.色の発色
サンプルを、各回2分間、4回PBSで洗浄した。色素形成のためにDABを使用した。
【0125】
9.水を使った反応の停止。
サンプルを、各回1分間、3回純水で洗浄し、その後純水中で5分間継続した。
10.対比染色
0.5%のメチルグリーン(100 mlの0.1 M酢酸ナトリウムpH4.0中に溶かした0.5 gメチルグリーン)を10分間室温での対比染色に使用した。次にサンプルを3回純水で洗浄し、最初の2回については、それぞれ10回水に浸し、3回目は、撹拌することなく、30秒間水に浸した。最後に、前記の手順を使って、サンプルを100%のn-ブタノール中で3回洗浄した。
【0126】
11.スライドの封入
サンプルを、各回2分間、3回キシレンに浸し、次に中性ゴムにより封入した。
結果は、アポトーシスが15ヶ月齢のトランスジェニック・マウスでも野生型マウスでも検出されないわけではないことが明らかであることを示した。
【0127】
実施例9
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス血清プロテオミクスの調査研究
1) 肝臓組織からのタンパク質の用意
1.肝臓組織をサンプルとして摘出した;
2.液体窒素下、乳鉢を使ってサンプルは粉末化した。サンプル1gにつき0.5 mlの溶解緩衝液(5 M尿素、2 Mチオ尿素、2%のSB-30、2%のCHAPS、1%のDTT、プロテアーゼ・インヒビターの混合物)を加えた後、サンプルを組織ホモジナイザーで30秒間均質化した;
【0128】
3.組織懸濁液を15℃で10分間10,000gで遠心分離した;
4.その上清を4℃で45分間150,000gで超遠心分離した;
5.次に、上部に浮いている脂質層を慎重に避けて、得られた上清を取り出し、再び6℃で50分間40,000gで遠心分離した;
【0129】
6.得られた上清を取り出した。ブラッドフォード法に従ってそのタンパク質濃度を測定した後に、前記上清をアリコートの状態で-75℃で保存した。
【0130】
2) マウス血清の用意
それぞれ3ヶ月齢の野生型マウス及びトランスジェニックホモ接合性マウスからの血液を、30分間室温で静置し、次に3500gで30分間遠心分離した。上層の血清を取り出し、そしてそのタンパク質濃度をPIERCE社製のBCATM-タンパク質アッセイ・キット(Cat. No. 23226)を使って測定し、各々の血清をアリコートの状態で-75℃で保存した。
【0131】
3) 血清及び肝臓組織のプロテオミクス分析
1、等電点分離法
ゲル内再水和作法を使うことによって、250 μgのタンパク質を含む血清又は組織抽出物に、350 μlの終量までサンプル再水和作用溶液(8 mol/lの尿素、2%のCHAPS、微量のブロモフェノールブルー)、そこに還元剤DTTを、20 mmol/lの終濃度まで加え、0.5%の終濃度までIPG緩衝液を加えた。IPG乾燥ゲル(pH3〜10、L,18cm、Amersham Pharmacia Biotech)を、前記溶液中に置き、以下の指標下、等電点分離法を実行した:
【0132】
【表5】
【0133】
2、平衡
等電点分離法の後に、前記IPGゲルを10 mlのSDS平衡緩和液(50 mmol/lのTris-Cl pH8.8、6 mol/lの尿素、30%のグリセロール(V/V)、2%のSDS(V/V)、微量のブロモフェノールブルー)中に置き、次に振とう機により各回10分間、2回振とうする、前記の初回について、平衡緩衝液は1OO mgのDTTを含み、前記2回目について、平衡緩衝液は250 mgのヨードアセトアミドを含む。
【0134】
3、2次元SDS-PAGE垂直電気泳動
IPGゲルのサイズに従い、200×200×1 mm3のサイズを有する1個の12.5%の同質のゲルを用意した。平衡されたIPGゲルを、SDS-PAGE上に転写し、続いて電気泳動緩衝液(25 mmol/lのTris、250 mmol/lのグリシン pH8.3、0.1%のSDS)によって用意された、微量のブロモフェノールブルーを含む0.5%のアガロースを用いて遮蔽した。14〜15℃で、まず、ゲルにつき120 mAの定電流を40分間流し、次にガラスプレートの下縁から1 mm手前までブロモフェノールブルーが移動するまで30 mAに上げた。電気泳動ゲルを、メタノール:酢酸:水(3:3:4)中で固定し、クーマシーブリリアントブルー染色溶液(メタノール:水:酢酸=4.5:4.5:1によって調整した0.25%のクーマシーブリリアントブルーR250)により4時間以上染色した。次に、7%酢酸-10%エタノールを使って脱色した。
【0135】
4、2-Dゲル電気泳動結果の分析
Amersham Pharmacia Biotech社製の画像分析ソフトウェアであるImageMaster2D Elite3.01を使うことによって電気泳動結果を分析した。
【0136】
5、酵素消化及びPAGEからの示差的なタンパク質の抽出
2Dゲルから明らかな相違をもつタンパク質のドットを選び、次にかみそりの刃により染色された縁に沿って切り落とし、管に移し、50%のアセトニトリル(クロマトグラフィー・グレード)、50 mMの重炭酸アンモニウムを含む溶液で脱色し、遠心分離し、そして真空下で乾燥させた。8〜10 μlの0.01 g/Lトリプシン溶液を各々の管に添加し、37℃で20時間インキュベートした。前記トリプシンは、ボーリンガー社製であり、(修飾された、配列決定用グレード)、そしてその溶液は、25 mmol/Lの重炭酸アンモニウム溶液を使って用意された。120 μlの15%トリフルオロ酢酸(TFA、Fluka社)を添加し、そして40℃で1時間インキュベートした。上清を取り出し、次に120 μlの2.5%TFA、50%ACN溶液を加え、そして30℃で1時間インキュベートし、最後に合わせて、凍結乾燥した。
【0137】
6、示差的なタンパク質のペプチド質量フィンガープリンティング(PMF)分析
10 μlの0.5%トリフルオロ酢酸中にペプチド混合物を溶解し、続いて凍結乾燥した。1 μlの溶解したペプチド混合物又は脱塩抽出物を、ドットに対して得、1 μlの、0.1%のトリフルオロ酢酸/50%のアセトニトリル中に溶解されている飽和1-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸溶液をマトリックスとし、次に室温で乾燥させた。Bruker社製のREFLEX IIIマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)を使うことによって、タンパク質を337 nmのレーザー長で検出した。
【0138】
7.データベース検索を通してのタンパク質の予備的な同定
タンパク質等電点、分子量及びペプチド・フィンガープリンティングの特徴の範囲、並びに他の指標の入力データに従って、それらの指標に合致するタンパク質が、データベース検索プログラムの利点を受け入れるタンパク質データベース内で検索されることができる。ウェブ上のタンパク質データベース検索プログラムは、以下の通りである:ExPASy分子生物学サーバーによって提供されたPeptIdent(http://www.expasy.ch/tools/peptident.html)、及びUCSF質量分析施設により提供されたMS-Fit(http://prospector.ucsf.edu/htmlucsi3.0msfit.htm)。
【0139】
【化1】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、トランスジェニック動物モデル及びそのようなモデルを構築する方法に関する。特に、本発明は、外来性遺伝子が安定的に発現される動物モデルを生み出すために、胚性幹(ES)細胞培養及び相同組換えにより着目の外来性遺伝子を動物ゲノムに組み込む方法、並びに上記方法によって得られた動物モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
肝細胞癌(HCC)は、世界規模の主な悪性腫瘍の1つであって、中国を含むアジア及び太平洋地域に特に分布する。100万人以上の人が毎年HCCに変わり(1)、その5年間の生存率は、5%未満である。多数の病因的要素、特にB型肝炎ウイルス(HBV)感染は、HCCの発生及び進行に関係している。HBVは、DNAウイルスに属し、それは環状の、不完全な2本鎖DNAを含み、そしてRNA中間体を介して複製し、完全長約3.2 kbを持つ。HBVは、宿主ゲノム内に無作為に組み込まれることができて、HBVが組み込まれた宿主は、保菌者と呼ばれる。
【0003】
前記保菌者は、症状のない慢性の感染の症状となるが、しかしB型肝炎の表面抗原(HBsAg)の発現がある。世界中で少なくとも3億5千万人の人々が、HBVの慢性保菌者(2)であり、75%超がアジア及び西太平洋に存在する (3)と推定された。これらの保菌者の間で、少なくとも約20%が、様々な程度の慢性肝炎と肝硬変を示し、かれらの一部は、原発性肝細胞癌に発達するかもしれない。臨床及び疫学的研究は、HCCに罹患するリスクがHBV慢性保菌者の間で40〜50%の高さに達することを示している。
【0004】
肝細胞癌に関して、最良の臨床的アプローチは、初期段階での肝臓癌切除であり、よって、初期診断が非常に重要であるように思われる。しかし、できるだけ遅れることなくHCCに発達する可能性のある保菌者を診断するために使用することができる血清又は肝臓中の分子マーカーは、まだ見つかっていない。HBVに誘発されたHCCを引き起こす病理学及び分子機構のさらなる研究は、そのような肝臓癌の初期診断にとって大きな意味がある。
【0005】
肝細胞癌の誘導及び進行は、異常な遺伝子発現又は突然変異、及びその間の相互作用に関連する複数の要素を伴った複雑な進行である。HBV感染の後に、HBV遺伝子発現産物と肝細胞タンパク質又は核酸の間の相互作用が、正常な遺伝子発現とシグナル伝達を妨げる可能性があり、それにより、肝細胞の異常な増殖と分化を導き、そして最終的には肝細胞癌をもたらす、癌原遺伝子の異常な発現、あるいは腫瘍抑圧遺伝子の機能上の不活化を引き起こすかもしれない。しかし、これまで、HBVの標的は不明確である。一般に、HBVは培養細胞にも普通の実験動物にも感染しないので(チンパンジーは唯一の感受性の実験動物である)、これがHBV疾病の発生の調査研究をある程度まで制限した。
【0006】
トランスジェニック動物技術が、HBV疾病の発生を調査するための新しいアプローチを提供する。Chisari(4)及びBabinet(5)らは、トランスジェニック技術を使い、1985年に首尾よく多数のHBVトランスジェニックマウス・モデルを確立し、それ以来、そのようなマウス・モデルの研究が、HBVに誘発された肝細胞癌の病理学と分子機構の理解を大いに促進した。しかし、そのようなトランスジェニック・マウスは、慣習的なトランスジェニック技術によって開発されて、そしてそれらの外来性遺伝子は、染色体に無作為に組み込まれているので、しばしば発現型の相違をもたらし、そしてある程度、発現型解析を難しくしている。このように、HBVに誘発されたHCCの分子機構に関する最終決定はまだ成されていない。HBVゲノム全体を組み込んだトランスジェニック・マウスの国内での報告が刊行されているが、今まで肝臓癌について成功したトランスジェニック・マウス・モデルについては報告されていない。
【0007】
80年代末以来、遺伝子ターゲッティング技術に基づく遺伝子ノックイン技術が開発されており、この技術は、相同組換え及びマウスES細胞培養の技術を外来性遺伝子をマウス・ゲノム上の特定の部位に組み込むために使用し、伝統的なトランスジェニック技術の無分別さをあらかじめ回避する。Deng(6)は、マウスが正常に発生して、そのp21遺伝子が取り除かれた後に、肝臓で異常な表現型が存在しなかったことを発見した。しかも、ヒト遺伝子マッピングの実現は、生命科学のポストゲノム時代の幕開けをしるし、そしてプロテオミクスによる調査研究は、機能的ゲノミクスを研究する上で重要な道具になっている。
【0008】
本発明の説明
本発明は、動物モデルを構築する方法に関し、以下のステップ:
a) 着目の外来性遺伝子を、標的部位に一致した配列を担持する好適なベクター内に挿入して、組換えターゲッティング・ベクターを構築し;
b) ステップa)からの上記ターゲッティング・ベクターを使って研究されるべき動物のES細胞に形質移入し、そして上記外来性遺伝子が特定の部位に組み込まれている標的ES細胞をスクリーニングし;
c) ステップb)から得られた標的ES細胞を上記動物の胞胚に注入し、そして標的ES細胞を含む胚を生じるように試験管内で上記胞胚を培養し;そして
d) ステップc)から生じた胚を上記動物の子宮に移植し、それによって外来性遺伝子を安定して発現する子孫を作り上げる、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図2】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図3】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図4】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBsAg遺伝子を組み込むために使用される。
【図5】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図6】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図7】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図8】ターゲッティング・ベクターの構築を説明し、上記ベクターは、トランスジェニック・マウス・ゲノム上の特定の部位にHBV X遺伝子を組み込むために使用される。
【図9】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスからの胚性幹細胞のサザンブロット・スクリーニングを示す。
【図10】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスのPCR同定を示す。
【図11】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスのサザンブロット同定を示す。
【図12】HBsAgの標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスのノーザンブロット分析を示す。
【図13】15ヶ月齢マウスからの肝臓組織のヘマトキシリン及びエオジン染色像を示す。
【図14】15ヶ月齢マウスからの肝臓組織のPCNA染色像を示す。
【図15】2ヶ月齢マウスにおける血清α-フェトプロテインの試験結果を示す。
【図16】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図17】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図18】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図19】示差的な発現遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【図20】肝臓タンパク質の2次元(2-D)電気泳動に続く、ゲル走査像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第一の側面において、本発明は、ターゲッティング・トランスジェニック・ベクターの構築に関し、それは、以下のステップを含む:
【0011】
pLoxpneo(7)を最初のターゲッティング・ベクターとして使用し;p21遺伝子第2エクソンの側方に位置する約8 kbのゲノムDNAセグメントを、ターゲッティング・ベクターの相同配列として使用した。外来性遺伝子(例えば、HBV、HCV、HIVなどからのウイルス性遺伝子、例えばHBsAg、HBXなど)を、p21遺伝子の第2エクソンに挿入した。続いて前記要素を、ターゲッティング・トランスジェニック・ベクター中に組み合わせ、上記ベクターは、以下の:1)標的部位の相同配列、ここで、上記標的部位は、肝細胞内で転写及び発現されるp21遺伝子座又は他の遺伝子座である;2)外来性遺伝子、陽性選択マーカー(neo)、及び陰性選択マーカー(tk)を含む。前記外来性遺伝子は、HBVゲノム全体、個々のHBV遺伝子であるか、又は他の病因性微生物のゲノム全体かその個々の遺伝子であるかもしれない。前記陽性選択マーカーは、neo遺伝子又は他の陽性選択マーカー、例えばハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hph)、キサンチン/グアニン・ホスホトランスフェラーゼ(gpt)、ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(hprt)などである。陰性選択マーカーは、tk遺伝子であるか、又は他の陰性選択マーカー、例えば単純ヘルペス・ウイルス・チミジン・キナーゼ(HSVtk)、ジフテリア毒素(DT)、チミジンキナーゼなどである。
【0012】
第2の側面において、本発明は、以下のプロトコールを使った、標的ES細胞の製造に関する:
【0013】
前記ターゲッティング・ベクターを線状にし、次に電気穿孔法によりES細胞中に形質移入した。続いて、トランスフェクトしたES細胞を、新しい細胞培養培地と混合し、これらのES細胞を、フィーダー細胞が集密状態まで成長していたプレートに広げた。24時間後に、培地を、ES細胞のスクリーニングのための、G418とガンシクロビルを含む選択培地に変更し、それ以来毎日新しい選択培地に変えた。トランスフェクトの7日後に、細胞クローンをスクリーニングした。具体的に言うと、ESクローンの単細胞懸濁液として分散させ、次に各々のESクローンからの単細胞懸濁液を2つの等量のアリコートに分けて、フィーダー細胞を含む2枚の96ウェル・プレート上にそれぞれ移した。前記2枚のプレートについて、各々のクローンの位置及び順序は同じものだった。毎日の新しいES細胞培地へ培地交換、そして2〜3日間の培養に続き、1枚のプレートが冷凍し、もう一方をトリプシン処理し、その中のESクローンを24ウェル・プレートに移し、その培地の色が黄色くなるまでフィーダー細胞培地中で培養した。溶解緩衝液を各々のウェルに添加し、次に溶解した細胞懸濁液をエッペンドルフ管に移した。ES細胞から抽出しTE溶液に、完全に溶かした後に、ゲノムDNAを、それぞれ、EcoRIとBglIIで消化し、そして得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端に配置したプローブを使ったサザンブロットに供した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは約22 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のEcoRI部位の削除から生じる。変更された陽性バンド位置を有するES細胞は、外来性遺伝子を含有している細胞だった。
第3の側面において、本発明は、標的ES細胞を含むトランスジェニック動物の製造方法に関し、それは以下の通り説明される:
【0014】
最初に、興奮していない4〜5週齢の雌C57BL/6Jマウスに、5 IUの性腺刺激ホルモンを腹腔内に注射した。先の性腺刺激ホルモン注射の48時間以内に、これらのマウスに5 IUのヒト絨毛膜性腺刺激ホルモンを腹腔内に注射してそれらに過剰排卵させ、次に繁殖用の雄マウスの檻に移し、それらと交尾させた。3.5日後、子宮の胞胚を回収した。一方、注入されるES細胞を数日前に解凍し、そして注入の日の朝に培地を新しいES培地に変えた。1〜2時間後、この細胞をトリプシンにより処理し、得られた単細胞をBrinster's BMOC-3培地中に懸濁液として保存し、次に注入用ピペットにより12〜15個の小さくて、丸いES細胞を吸い、顕微鏡下でインジェクションポンプを突き通して、ES細胞を連続して胞胚腔に入れる。次に、注入された胞胚を、Brinster's BMOC-3培地を補った溶滴中で培養し、それによって移植する胚を得ることができた。第二に、計量後、偽妊娠している雌マウスに麻酔を腹腔内に注射し、そして切開した。解剖顕微鏡下、トランスファーピペットを使って、移植される胚をそれらの子宮内にゆっくりと産みつけ、その後、それらの子宮及び腸間膜を腹腔内に戻し、切開が閉じた。
【0015】
前記操作がうまくいっていれば、仔マウスが17日後に生まれる。高度キメラ・マウスが得られた場合には、数日後にそれらの毛皮の色からそれを推論することができる。高度キメラ・マウスを選択し、C57BL/6Jマウスと交尾させた場合、無垢の茶色の毛皮をもつトランスジェニックされた子孫が産まれる。
【0016】
第4の側面において、本発明は、HBsAg遺伝子を含むトランスジェニック・マウスの表現型の分析に関し、それは以下のとおり説明される:
15日齢のマウスから尾の先端の約0.5cmの部分を切断し、エッペンドルフ管に移し、そこに溶解緩衝液を添加し、細胞溶解液を作製し、次に、高度に濃縮した塩を添加し、タンパク質を沈澱させた。DNAを含む上清を、遠心分離によって回収し、そしてエタノールによって沈澱させた後に、ゲノムDNAを得ることができた。このDNAを後の使用のためにTE溶液中に再溶解した。
【0017】
子孫マウスの異なる遺伝子型を同定するために、鋳型としてゲノムDNAを使い、そして何組かのプライマーを使うことによってPCRを実施した。野生型p21対立遺伝子を確認するためにプライマー1(5'-TCTTCTGTTTCAGCCACAGGC-3')及びプライマー2(5'-TGTCAGGCTGGTCTGCCTCC-3')を使用し、436bpのバンドが野生型及びヘテロ接合性マウスから増幅されうる。neo遺伝子上のプライマー3(5'-ATTTTCCAGGGATCTGACTC-3')及びプライマー4(5'-CCAGACTGCCTTGGGAAAAGC-3')を、neo遺伝子を含む標的対立遺伝子を同定するために使用した。HBsAg遺伝子を同定するためにプライマー5(5'-GGACCCTGCACCGAACATGG-3')及びプライマー6(5'-GGAATAGCCCCAACGTTTGG-3')を使用した。
【0018】
マウス尾ゲノムDNAを、それぞれEcoRIとBglIIで消化し、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端の外側に配置されたプローブを使ったサザンブロットに供した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは約22 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のEcoRI部位の削除から生じる。
【0019】
全RNAを、Trizol剤を使ってマウス組織から抽出し、そしてノーザンブロット分析を実施した。要するに、ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動法を実施するために20μgの全RNAを必要とし、次に、このRNAを、キャピラリー・トランスファーによって前記ゲルからニトロセルロース膜に移し、HBsAg遺伝子由来のプローブとハイブリダイズさせた。結果は、HBsAg遺伝子がトランスジェニック・マウスの肝臓及び脾臓で発現されたことを示した。
【0020】
HBsAg遺伝子の発現を、ワンステップHBsAg ELISAキットを使ってアッセイした。両マウスの血清及び肝臓ホモジネートを準備したが、しかしトランスジェニック・マウスについて、HBsAgが血清中に分泌されないで、肝臓ホモジネート中のみに存在したことが分かった。
【0021】
ヘテロ接合性及びホモ接合性トランスジェニック・マウスの成長及び発達は正常だった。肝臓において、リンパ球浸潤と脂肪変性が1年後に観察され;増殖細胞核抗原(PCNA)染色が肝細胞が過剰増殖の状態にあることを示した。15ヶ月齢のヘテロ接合性マウスが、高分化型肝細胞癌に向かって進行を始めて、17ヶ月齢以上のトランスジェニック雄マウスの75%が上記症状に冒された。明らかなアポトーシスは観察されなかった。
【0022】
第5の側面において、本発明は、HBV遺伝子の誘発された肝細胞癌モデル・マウスとしてのトランスジェニック・マウスの使用に関し、それは、以下の研究を含む:
【0023】
最初に、全RNAを、異なる月齢で、野生型又はHBVトランスジェニック・ホモ接合性マウスの肝臓から抽出し、そして疾患発生の分子機構について予備研究を行うために、肝細胞癌の発生に関与するかもしれない遺伝子を発見するために、ノーザンブロットにより遺伝子発現パターンを分析した。第2に、月齢の異なる野生型又はHBVトランスジェニック・ホモ接合性マウスの血清又は肝臓からタンパク質を抽出し、その後2次元(2-D)ゲル電気泳動に供した。示差的に発現されたタンパク質を見つけるために比較分析を実施し、次に、肝細胞癌の誘導の早期現象及び分子機構の集中的な研究、又は肝細胞癌の診断又は治療のための標的分子のスクリーニングのために、これらのタンパク質をペプチド質量フィンガープリント・プロフィールの分析を通して同定した。最後に、異なる月齢で、HBV遺伝子によって誘発された肝細胞癌を生じたマウス及び野生型マウスに、静脈内注射、腹腔内注射、又は経口投与により、薬剤を与えた。尾静脈血を採取し、そして先の調査研究から見つけていた肝細胞癌に関連した初期の分子を、治療計画及び薬効を評価するために観察した。18ヶ月齢超のマウスからの肝臓組織学的分析を実施し、治療薬の効果を評価しもした。
【0024】
遺伝子ノックイン法の利点を利用して、発明者は、相同組換え及びES細胞培養の手段により、B型肝炎表面抗原(HBsAg)遺伝子をマウスES細胞ゲノム上の特定の部位に組み込んだ。安定してHBsAg遺伝子を発現するトランスジェニック・マウスを、マイクロインジェクションと胚移植を通して得た。そのようなトランスジェニック・マウスは、肝臓でB型肝炎表面抗原を発現し、ヘテロ接合性マウス、及びホモ接合性マウスの両方で正常に発達した。肝臓において、リンパ球浸潤と脂肪変性が1年後に観察され;増殖細胞核抗原(PCNA)染色は、肝細胞が過剰増殖の状態にあることを示した。15ヶ月齢のヘテロ接合性マウスが、高分化型肝細胞癌に向かって進行を始めて(図7)、17ヶ月齢以上のトランスジェニック雄マウスの75%が上記症状に冒された。明らかなアポトーシスは観察されなかった。そのようなHBV遺伝子に誘発された肝細胞癌モデル・マウスは、肝細胞癌の早期現象及び誘導の分子機構の集中的な研究を行うために、肝細胞癌の初期段階の診断又は治療のための標的分子のスクリーニングのために、そして中国の伝統的な薬物と西洋の薬物の治療計画及び効果を比較するために使用することができる。
【0025】
文脈中で言及された文献を、それらの本質について本明細書中に援用する。
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されない。
【実施例】
【0026】
実施例1
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターの構築
HBV cDNAを含むpADR-1(8)を、BglIIとBamHIにより消化した。完全長のHBsAg遺伝子を含む2.2 kbの断片を単離し、ベクターpLoxpneoのBamHI部位に挿入して、ベクターpLoxpneo-s1を得た。相同配列の短い腕としての、p21遺伝子座の第2エクソンの上流の、2.0 kbのXhoI(埋め込み)-NotI(クローン・ベクターから)断片を、pLoxpneo-s1のHpaI部位とNotI部位の間に挿入して、ベクターpLoxpneo-s2を得た。p21遺伝子座の第2エクソンの下流の、6.0 kbのXbaI-BglII断片を、ベクターpHSG397にクローンし、HindIII(埋め込み)及びEcoRI部位を作り出した。最後に、相同配列の長い腕としての断片を、ベクターpLoxpneo-s2のAsp718I(埋め込み)とEcoRI部位の間に挿入して(図1)、HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターpLoxpneo-HBsAgを産生した。
【0027】
実施例2
HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターの構築
HBV cDNAを含むpADR-1を、XbaIとBamHIにより消化した。HBX遺伝子5'末端及びX遺伝子5'の側方に位置する部分を含む1.15 kbの断片を単離し、ベクターpLoxpneoに挿入して、ベクターpLoxpneo-X1を得た。HBV cDNAを含むpADR-1を、BglIIとBamHIで消化した。HBX遺伝子の3'末端を含む0.58 kbの断片を単離し、ベクターpLoxpneo-X1に挿入して、全HBX遺伝子及びその5'末端の側方に位置する部分を含むベクターpLoxpneo-X2を得た。相同配列の短い腕としての、p21遺伝子座の第2エクソンの上流の、2.0 kbのXhoI-NotI断片を、前記ベクターのXhoI部位とNotI部位の間に挿入して、ベクターpLoxpneo-X3を得た。p21遺伝子座の第2エクソンの下流の、6.0 kbのXbaI-BglII断片を、ベクターpHSG397にクローンし、HindIII(埋め込み)及びEcoRI部位を作り出した。最後に、相同配列の長い腕としての断片を、ベクターpLoxpneo-X3のAsp718I(埋め込み)とEcoRI部位の間に挿入して(図2)、HBX遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターpLoxpneo-HBXを産生した。
【0028】
実施例3
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞の産生
1) フィーダー細胞であるマウス初期胚線維芽細胞の準備
1.妊娠後14日目のマウスを屠殺し、腹腔を開き、胚と一緒に子宮を取り出した。PBS中で胚を子宮から切取り、次に、無菌の100 mmペトリ皿に置いた。
2.卵黄嚢、羊膜、及び胎盤を取り除き、そして胚を新しいPBSで2回洗浄した。
3.胚の頭部及び内臓を複数の鉗子によって取り除き、マウス胎仔を、無菌のはさみにより小片(l〜3 mm3)にカットし、次にPBSが実質的に無色透明になるまでPBSで洗浄した。
【0029】
4.上記組織小片をPBSを含む15 ml遠沈管に移し、2分間1000rpmで遠心分離する。
5.上清を捨て、そして5 mlの0.25%トリプシンを残渣に添加し、37℃で30分間処理し、次に10%のウシ胎仔血清を補ったDMEM培地を添加し、ピペットによる吸い上げと吐き出しを繰返した。
6.管を2分間1000rpmで遠心分離した。
7.上清を捨てた。フィーダー細胞培地を加えた後、細胞を150 mmペトリ皿に移し、5%のCO2雰囲気のインキュベーター中、37℃で2〜3日間培養した。通常、胚性線維芽細胞は3日でペトリ皿を覆う。
【0030】
8.1つのペトリ皿の胚性線維芽細胞を、3つのペトリ皿の中に分配し、3日後に10%のDMSOを加えたフィーダー細胞培地を使って冷凍した。この細胞が、マウス初期胚性線維芽細胞であった。
【0031】
2) マウス初期胚性線維芽細胞の処理
マウス初期胚性線維芽細胞は、それらが培養されたES細胞を超えて増殖することなくES細胞の成長を支援することができるように、それらの成長を止めるためにそれらをフィーダー細胞として使用する前にマイトマイシンCで処理する必要がある。
【0032】
1.マウス初期胚性線維芽細胞の管を速やかに40℃の水浴で解凍し、次に細胞を、2 mlの培地を含む遠沈管に移し、2分間1000rpmで遠心分離した。
2.上清を捨てた。フィーダー細胞培地を加えた後、細胞を2つの100 mmペトリ皿に移し、5%のCO2雰囲気のインキュベーター中、37℃でインキュベートした。
3.3日後に、細胞をトリプシン処理し、次に、6つの150 mmペトリ皿に移し、37℃で3日間インキュベートした。
【0033】
4.細胞を6つの150 mmペトリ皿から12の150 mmペトリ皿に移し、37℃で3〜4日間インキュベートした。
5.細胞を12の150 mmペトリ皿から40の150 mmペトリ皿に移し、37℃で3〜4日間インキュベートした。
6.3.3 mlのPBSをマイトマイシンC(2mg)のバイアルに加えて、マイトマイシンCの3つのバイアルを合計10 mlにまとめた。各々のペトリ皿に10 μg/mlの終濃度まで0.25 mlのマイトマイシンCを添加し、そして37℃で2〜3時間インキュベートした。
【0034】
7.各々のペトリ皿に対し、培地を捨て、そして細胞をPBSで1回洗浄し、3 mlの0.25%トリプシンで処理した。10分後、5 mlのフィーダー細胞培地を添加し、反応を終わらせた。
8.全てのペトリ皿からの細胞を50 ml遠沈管中に集めた。これらの管を2分間1000rpmで遠心分離した。
【0035】
9.40 mlの寒剤(15%のFCS、10%のDMSO、75%のDMEM)をこの細胞に加えた。ピペットによる吸い上げと吐き出しを繰返した後に、細胞を素速く40本の小サイズの管に分け、-80℃で保存した。こうして用意したフィーダー細胞は、通常、各々の解凍された小サイズ管につき90 mmペトリ皿3〜4枚を覆うことができる。
【0036】
600 mlのフィーダー細胞培地の調整は、以下の処方を参照することができる:
500 ml DMEM
6 ml L-グルタミン
6 ml非必須アミノ酸溶液(10 mM)
6 mlペニシリン及びストレプトマイシン溶液
(5,000 ユニットのペニシリン、5 mgのストレプトマイシン/100 ml)
4 μlメルカプトエタノール
90 mlウシ胎仔血清
【0037】
次に、フィーダー細胞培地をろ過し、4℃で保存した。1000 u/mlのLIFをこの培地に加えた後に、培地をES細胞の培養に使用することができる。
【0038】
3) HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するターゲッティング・ベクターを使った電気穿孔法によるES細胞のトランスフェクト
【0039】
1.トランスフェクトを、蘇生したES細胞をパッサージした後2日目(36時間目)に実施した。
2.トランスフェクトの2時間前に培地を新しい培地に変えた。
3.培地は捨て、次にペトリ皿をPBSで2回洗浄した。
4.1.5 mlの0.25%トリプシンを各々の100 mmペトリ皿に37℃で5分間加えておいた。
【0040】
5.3.5 mlのES細胞培地を加え、ピペットによる吸い上げと吐き出しを20回行った。血球計算チャンバーを使って細胞数を数えた。各々のターゲッティング・ベクターについて、約2×107細胞/トランスフェクトを通常必要とした。
6.ES細胞懸濁を2分間1000rpmで遠心分離し、上清を捨てた。細胞を10 mlのPBS中に再懸濁した。
7.細胞懸濁液を2分間1000rpmで再度遠心分離し、そして細胞を、細胞密度が2×107細胞/ml超なるようにPBS中に再懸濁した。
【0041】
8.45 μgの実施例1の線状ターゲッティング・ベクターを1 mlの細胞懸濁液と混ぜ、そして電気穿孔法用キュベット中に設置した。このキュベットを5分間室温に置いた。
9.Gene Pulsor(600 V、25 μF)を放電させた。上記キュベットを取り除き、そして1分間室温に置いた。
10.電気穿孔法キュベット中の細胞を、7 mlの新しいES細胞培地と混合し、そしてフィーダー細胞で覆われた4つのペトリ皿(100 mm)に分配した。
【0042】
11.40 μlの非トランスフェクト細胞を対照として100 mmペトリ皿に置いた。
12.24時間後、ES細胞をスクリーニングするために、G418(280 μg/ml)及びガンシクロビル(2 μM)を含む選択培地に培地を交換し、以後、毎日新しい選択培地に交換した。
13.個々のクローンを、トランスフェクト後7日目から通常は選別した。
【0043】
4) 陽性ESクローンの選別
1.7-8日の間選択培地中で培養し、そして培地を捨てた後に、トランスフェクトしたES細胞を1回PBSで洗い、そして10 mlのPBSに変えた。
2.200 μlマイクロピペッタを20 μlに合わせ、そして顕微鏡下でそのチップを使って陽性ESクローンを選択した。
【0044】
3.個々のクローンを空の96ウェル・プレートに移した。各々の100 mmペトリ皿について、1枚で通常30〜50のクローンを選別することができる。
4.50 μlの0.25%トリプシン-EDTA溶液を各々のウェルに加え、37℃で3〜5分間反応させた。
【0045】
5.各々のウェル中に、100 μlのES細胞培地を加え、マイクロピペッタのチップを用いてピペットによる吸い上げと吐き出しを繰り返しESクローンを単細胞の懸濁液にした、ここで、上記マイクロピペッタは、100 μlの8チャネルのものであり、80 μlに調整した。それぞれ各々のESクローンからの単細胞懸濁液を、2つのアリコートに分け、そしてフィーダー細胞を伴う2枚の96ウェル・プレートに再び蒔いた。2枚のプレートについて、各々のクローンの配置と順序は同じものだった。毎日の新しいES細胞培地への培地の変更、そして2〜3日間の培養に続いて、1枚のプレートを凍結させ、もう一方をトリプシン処理して、その中のESクローンを24ウェル・プレートに移し、培地の色が黄色に変化するまでフィーダー細胞培地を用いて培養した。
【0046】
5) 陽性ESクローンの凍結
1.前記培地を捨て、そして100 μlのPBSを添加した。
2.PBSを捨てた後で、PBSで薄めた0.125%のトリプシン-EDTA溶液50 μlを加えて、37℃で3〜5分間反応させた。
【0047】
3.100 μlの寒剤(15%のDMSO、20%のウシ胎仔血清、65%のDMEM)を加えた。
4.8チャネルのマイクロピペッタを用いて、細胞を少なくとも10回ピペットにより吸い上げ、そして吐き出した。96ウェル・プレートを封着膜により封じて、ビニール袋で閉じて、そして上記プレートと上記ビニール袋の表面に印をつけた。
【0048】
5.凍結速度を落とすために、まず、前記プレートをフォーム・ボックスの中に置き、そして-80℃で冷凍した。
6) ESクローンからのゲノムDNAの製造
1.ES細胞を12ウェル・プレート又は24ウェル・プレートで培養した。ゲノムDNAを抽出するためにES細胞を使用するために、LIFを培地に加える必要はない。
【0049】
2.400 μlの細胞溶解緩衝液(0.5%のSDS、0.1 M NaCl、0.01 M EDTA、0.02 M Tris-Cl pH7.6、プロテアーゼ K、100 μg/ml)を各々のウェルに加え、そしてこのプレートを5分間室温に置いた。各々のウェルの内容物をエッペンドルフ管に移した。
【0050】
3.管を50℃で2時間維持した。
4.200 μlの飽和NaCl(6 M)は加えた。
5.エッペンドルフ管をボール紙の箱に置き、200回激しく振とうした。
6.エッペンドルフ管を10分間氷上に置いた。
7.前記管を室温下、10分間14,000rpmで遠心分離した。
8.各々の管に、500 μlの上清をきれいなエッペンドルフ管に移し、続いて0.8 mlのエタノールを加えて、混ぜた。
【0051】
9.前記管を、5分間14,000rpmで遠心分離し、そして上清を捨てた。
10.各々の管をひっくり返して置き、室温で乾燥させた。DNAを50〜100 μlのTE中に再懸濁して、完全に溶けるま(24〜48時間)で37℃で静置した。DNAをPCR又はサザン・ハイブリダイゼーション分析のために使用することができる。
7) サザンブロットによるHBsAg遺伝子標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞の同定
【0052】
G418/FIAU二重抵抗性クローンから抽出した後に、それぞれEcoRI及びBglIIによりゲノムDNAを消化して、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの外側5'末端に配置されたプローブを使ってサザンブロットに共した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは約22 kb(図3)に移動した。
【0053】
実施例4
HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞の製造
実施例3に記載したそれと同じ方法で、HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス胚性幹細胞を得れることができる。
【0054】
実施例5
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの製造
1) ドナー胞胚の製造
胞胚の数は、多くの要因、例えばマウス系統、全身的な健康状態、適応、過剰排卵する能力、及び実験する季節などに依存する。より多くの胞胚を得るためにか、又はマウスの数が限られているとき、興奮していないマウスを、一般に腹腔内にホルモンを注射し、それらにより多くの卵を排卵させる、すなわち、過剰排卵させる。過剰排卵させられるマウスは、通常、青年期にある3〜5週齢であり、そして特定の年齢は、マウスの系統により変わるかもしれない、例えば雌C57BL/6Jマウスの最も好適な年は、25日齢である。
【0055】
過剰排卵マウスからの胞胚の製造:
1.興奮していない4〜5週齢の雌C57BL/6Jのマウス(12.5〜14 g)を選択し、1日目の午後2:30に、5 IUの妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG、SIGMA)を腹腔内に注射した。
2.3日目の正午前、すなわち先のPMSG注射の48時間以内に、雌マウスに5 IUのヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG、SIGMA)を腹腔内に注射して、過剰排卵させ、そして繁殖用の雄マウスの檻に移して、それらと交尾させた。
【0056】
3.4日目の午前9:00前に、膣栓の存在を確認した。膣栓のあるマウスをドナー雌マウスとして使用し、そして他の檻に移し、その日を0.5日目と指定した。同日午後2:30に、興奮した白色雌クンミン・マウス(約24〜30g)を選択し、精管結紮した(spermaductus-deligated)雄マウスとつがわせる。
【0057】
4.5日目の午前9:00前に、膣栓の存在を確認した。膣栓のあるマウスをアクセプター雌マウスとして使用し、他の檻に移した。
5.7日目、すなわち、交尾後4日目に、胞胚をドナー雌マウスの子宮から採集した。
【0058】
胞胚の採集及び培養:
1.脱臼によってドナー雌マウスを屠殺した後に、それらの腹部は70%のアルコールで殺菌した。腹部の真ん中の線で水平の切開した。
2.皮膚を切り開き、その切開の外側に引っ張り、そして腹腔を持ち上げ、そして切り開いて、十分に腹腔を露出させた。
【0059】
3.内臓組織を腹膜の上に持ち上げ、子宮を見つけ、次に子宮を、両卵管が子宮端に結合する場所で慎重に摘出して、60 mmの無菌のペトリ皿に置いた。
4.卵管と子宮端を、それぞれ子宮の頭部及び子宮の尾部から取り除き、別々の遮るもののない分かれた子宮にした。
【0060】
5.十分なBrinster's培地BMOC-3(GEBCOBRL)を、5 mlの使い捨ての注射器中に吸い込んだ。5ゲージの針を装着した後、この注射器を、解剖顕微鏡下で子宮腔に挿入し、次に注射器プラグを押して、様々な方向で子宮腔をフラッシュした。フラッシング中、子宮はわずかしか使われずに、そしてマウスの胚は皿の底に速やかに沈んだ。
【0061】
6.各々の水滴が200 μlの、数個の培地を35 mmのペトリ皿中に滴らせて、次に鉱物油(SIGMA、M-3516)で覆った。
7.胚を、解剖顕微鏡下、フラッシング・ピペットを使って採集し、そして培養微小滴に移し、次に5%のCO2雰囲気のインキュベーター中で37℃で2時間インキュベートした。
【0062】
2) 胞胚のマイクロインジェクション
ES細胞のマイクロインジェクションを、深さと堅さの効果により、位相差顕微鏡又は微分干渉顕微鏡(Nikon)を使用すべきである。耐震プラットフォーム上の、少なくとも低倍率対物レンズと200×の倍率までの高倍率対物レンズ、及びさらに37℃の定温対象ステージを備えている、極微操作装置(Narishige)がより好ましい。
【0063】
マイクロインジェクションのためのピペットの準備:
ES細胞を胞胚内に注入する前に、胞胚を移すためのトランスファー・ピペット、マイクロインジェクション中の胞胚を固定するためのホールディング・ピペット、及び胞胚内に細胞を注入するインジェクション・ピペットを含む胞胚操作のための様々な種類のピペットが、必要である。
【0064】
針作製用バーナー(Narishige、MF-900)を使ったマイクロインジェクションのためのホールディング・ピペットの準備:
1.細いガラス毛細管(Nikon、G-1)を、小さい炎の上で約2〜3cmの長さの細い針に引き伸ばした。
【0065】
2.ガラス毛細管を、ガラス球になるように、針作製用バーナーのフィラメント上で溶かした。用意した針を固定して、フィラメントと水平になるように調整した。フィラメントを加熱し、次にガラス球を近づけ、そして接触させてガラス針をその60〜90 μmの直径にする。
【0066】
3.フィラメントの加熱を止めた後、それは冷えて収縮するので、針が分割され、鋭くないホールディング・ピペットを形成した。
4.次に12〜20 mmの中間口径をもち、針先を丸くするために、再びフィラメントを加熱し、針先をそれに近づけた。
5.針を、針先から1cm離れたところで加熱し、30°の角度で曲げた、このため針先は、顕微操作視野で水平である。
【0067】
針作製用バーナーを使ったインジェクション・ピペットの準備:
1.ガラス毛細管を、長さ約1cmの細い針に引き伸ばした。
2.前記の針を、針作成用バーナーを使って、12〜15 μmの内径で分割させた、その内径は、ES細胞を押しつぶすことなく、ちょうど1つのES細胞を保持することができる。
【0068】
3.針を針先からわずかに離れたところで曲げ、30°の角度をつけた、これにより顕微操作視野で針先は水平である。
トランスファー・ピペットの準備は、ホールディング・ピペットのそれと類似していたが、トランスファー・ピペットの内径が胞胚のそれの1〜1.5倍(約110〜130 μm)であるというところに唯一の相違があり、よって胞胚が容易にそこを出入りできる。前記針の長さは、培地、泡、及び特定の数の胞胚を保持するために約2〜3 cmである。
【0069】
胞胚注入の操作手順:
1.パラフィン油で満たした後、皿、ホールディング・ピペットの針管、及びインジェクション・ピペットのそれを、顕微鏡の微調整を通して同じ焦点水平面に合わせた。
2.注入するES細胞を、注入の数日前に解凍した。培地を、注入日の朝に新しいES培地に変えた。1〜2時間後、細胞を、トリプシン処理して単細胞懸濁液を用意し、次にBrinster's BMOC-3培地に浸した。
【0070】
3.膨らんだモルファ(morpha)、はっきりした辺縁、より大きな胞胚腔をもつ約10個の胞胚を、35 mmペトリ皿から選び、ホールディング・ピペット及びインジェクション・ピペットを取り付けたインジェクション・チャンバーに移して、次に上記チャンバー内にフラッシュ・ピペットを使って数個のES細胞を吸い込んで移した。
4.10×の倍率下、インジェクション・ピペットを使って12〜15個の小さくて、丸いES細胞を吸った。
5.40×の倍率下、ホールディング・ピペットを、胞胚の一方の側面に付け、次にインジェクション・ピペットを、胞胚の中心のそれと同じ水平面に合わせた。
【0071】
6.インジェクション・ピペットの操作棒を、インジェクション・ピペットが速やかに胞胚の壁を抜けて胞胚腔の中に貫通するように動かし、次にインジェクション・ポンプを押して、ES細胞を胞胚腔に連続して入れ、最後に慎重に引き抜いた。
7.その後注入した胞胚を顕微操作視野の反対側に置き、次の胞胚の注入を続けた。
8.10×の倍率下、全ての注入した胞胚を、フラッシング・ピペットを使ってより大きな皿に吸って移し、Brinster's BMOC-3培地を加えた滴で培養して、最後に印をつけた。
【0072】
残りは類推により推定され、注入すべき胞胚の数は、胞胚の状態とその日のアクセプター・マウスの数に基づき決定された。ホールディング・ピペット及びインジェクション・ピペットは、塞がれたか又はすぐに詰まるときのみ変えた。マイクロインジェクション・チャンバーの滴を、注入の数時間後か、又は培地のpHが変わったときに新しくした。
【0073】
3) 子宮内への胞胚の移植
1.アクセプター雌マウスを計量し、それらの体重に従って麻酔剤(アベルチン)を腹腔内注射して、背中の毛を剃った。
2.トランスファー・ピペットを、口で制御する管と接続し、次に培地、泡、培地、泡、注入された胞胚、泡、そして多少の培地を順番に吸った。
【0074】
3.各々のアクセプター・マウスの背中を75%のアルコールで殺菌して、次に最初の腰椎近くの右側に1 cmの水平の切開をした。右側の卵巣及びその脂肪体が腹膜を通して見ることができるまで、皮膚を切開の外側に引っ張った。腹膜の3 mm開口を、先のとがった鉗子を使って裂いた。
4.脂肪体を左手で固定すると、子宮を見ることができた。小サイズの止血鉗子を使って脂肪体は固定した。
【0075】
5.子宮壁を、子宮と卵管の間の接点から2 mm離れた場所で、左手の先のとがった鉗子でクランプし、一方で、4ゲージの針先とトランスファー・ピペットを右手に保持した。解剖顕微鏡下で針先を使って、先のとがった鉗子に近く、そして血管から離れた場所で開口部を開け、次にトランスファー・ピペットの最前部をその中に慎重に挿入し、そして胞胚をゆっくりと子宮内に吹き出した。
【0076】
6.子宮及び腸間膜を、腹腔に戻し、その後切開を閉じた。
前述の操作がうまくいっていれば、仔マウスが17日後に生まれて、高度のキメラ・マウスが得られている場合には、数日後にそれらの毛皮の色から推論できる。高度のキメラ・マウスをC57BL/6Jマウスと交尾させるために選択したとき、無垢の茶色の毛皮をもつトランスジェニック子孫が産まれる。
【0077】
実施例6
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの同定
1) マウス・ゲノムDNAの準備
1.尾の先端約0.5cmの部分を15日齢のマウスから切断し、次にエッペンドルフ管に移した。
2.各々の管に、400 μlの溶解緩衝液(0.5%のSDS、O.1 M NaCl、0.05 M EDTA、0.01 M Tris-Cl pH8.O、プロテアーゼK、200 μg/ml)を加え、尾の先端を溶解させた。
【0078】
3.この管を一晩50℃でインキュベートした。
4.200 μlの飽和NaCl(6M)を各々の管に加えた。
5.エッペンドルフ管をボール紙の箱に置き、200回激しく振とうした。
6.エッペンドルフ管を10分間氷上に置いた。
7.前記管を室温下、10分間14,000rpmで遠心分離した。
8.各々の管について、500 μlの上清をきれいなエッペンドルフ管に移し、続いて0.8 mlのエタノールを加えて、混ぜた。
【0079】
9.この管を5分間14,000rpmで遠心分離して、上清を捨てた。
10.各々の管をひっくり返って置き、室温で乾燥させた。DNAを、50〜100 μlのTE中に再懸濁し、完全に溶けるまで(24〜48時間)37℃で静置した。このDNAをPCR又はノザン・ハイブリダイゼーションのために使用することができる。
【0080】
2) マウス遺伝子型のPCR同定
野生型p21対立遺伝子を確認するためにプライマー1(5'-TCTTCTGTTTCAGCCACAGGC-3')及びプライマー2(5'-TGTCAGGCTGGTCTGCCTCC-3')を使用し、436bpのバンドが野生型及びヘテロ接合性マウスから増幅されうる。neo遺伝子上のプライマー3(5'-ATTTTCCAGGGATCTGACTC-3')及びプライマー4(5'-CCAGACTGCCTTGGGAAAAGC-3')を、neo遺伝子を含む標的対立遺伝子を同定するために使用した。HBsAg遺伝子を同定するためにプライマー5(5'-GGACCCTGCACCGAACATGG-3')及びプライマー6(5'-GGAATAGCCCCAACGTTTGG-3')を使用した(図4)。
【0081】
3) サザンブロット・ハイブリダイゼーションを用いたHBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
抽出したマウス尾ゲノムDNAを、それぞれEcoRIとBglIIで消化し、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端の外側に配置されたプローブを使ったサザンブロットに供した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたる変異後のHBsAg遺伝子を含む上記バンドは約22 kbに移動した(図5)。
【0082】
4) 組織からの全RNAの抽出
1.2 mlのTrizolを加えた後に、100 mgのマウス組織(肝臓、脾臓、腎臓など)をホモジナイザーにより均質化し、次に5分の間室温で静置した。
2.0.4 mlのクロロホルムを加えた。管をきっちりと閉じて、15秒間激しく振とうし、そして2〜3分間静置し、次に2〜8℃で15分間10,000〜12,000gで遠心分離した。
【0083】
3.水性上層を、新しい遠沈管に移し、次に1 mlのイソプロパノールを加え、そして混ぜた。この管を、室温に10分間置き、続いて2〜8℃で10分間10,000〜12,000gで遠心分離した。
4.上清を捨てた。次にペレットを、少なくとも2 mlの75%のエタノールの添加により洗浄し、2〜8℃で5分間わずか7500gの速度で遠心分離した。
【0084】
5.上清を捨てた。RNAペレットを5〜10分間風乾して、次にピペッティングの繰り返しにより500 μlのRNase不含水中に溶かした。
6.このRNAを55〜60℃で10分間維持し、次に-70℃で保存した。
5) ノーザン・ハイブリダイゼーションを用いたHBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
【0085】
1.1.5gのアガロースを117.2 mlのDEPC処理水中に溶かし、次に70℃に冷却し、3.5 μlの10 mg/ml臭化エチジウム(EB)、30 mlの5×MOPS(0.1 mol/l MOPS (pH7.0)、40 mmol/l酢酸ナトリウム、5 mmol/l EDTA(pH8.0))、及び2.8 mlの40%ホルムアルデヒド溶液を加えた。
2.20 μgのRNAに、3倍量の添加液(6.7 mlのホルムアミド、2.2 mlの40%ホルムアルデヒド、1320 μlの10×MOPS、20 μlの20 mg/mlブロモフェノールブルー)を加え、60℃で10分間加熱し、そして氷水で急速に冷やし、次にサンプルを添加した。
【0086】
3.電気泳動装置を電源に接続した。120〜160vの電圧をゲルに適用して、そしてブロモフェノールブルーが、添加したウェルの8cm先まで移動するまで2〜3時間の泳動した。この間、両極性の電気泳動緩衝液を30分間ごとにかき混ぜた。
4.このゲルを、各回につき15分間、20×SSCに2回浸した。
5.RNAを、20×SSCを使ってゲルからニトロセルロース膜に移して、次にこの膜を5分間2×SSCで洗浄した。
【0087】
6.UV(1200 μW/cm2)下で2分間の架橋後、この膜を80℃で45分間焼いた。
7.Promega社製のプライマーA標識システム(Cat. No. U1100)を使ってプローブを標識した。要するに、標識されるDNA断片を、95〜100℃で2分間ボイルし、次に、氷水により急冷した。以下の溶液を1.5 mlの遠沈管中で混ぜた:
【0088】
【表1】
【0089】
次にヌクレアーゼを含まない水を50 μlの量まで加え、そして混ぜた。室温で1時間静置し、そして2分間ボイルし、次にこの管を氷水で急冷し、次にEDTAを終濃度20 mMまで加えて反応を終了させた。
【0090】
8.前記膜を5分間6×SSCに浸して、次にプレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、2×Denhardt、0.1%のSDS、100 μg/mlの変性サケ精子DNA)中、65℃で2時間インキュベートした。標識したプローブをプレハイブリダイゼーション溶液中に加えた後、ハイブリダイゼーションを65℃で18時間超続けた。
9.前記の膜を、1×SSC、0.1%のSDS中、室温で20分間、次に0.2×SSC、0.1%のSDS中、65℃で3回、各回につき20分間洗浄した。
【0091】
10.この膜をかるく乾かして、次に-70℃でX線フィルムに露光した。
11.このフィルムを現像した。
結果を図6に示した。
【0092】
6) ELISAを用いたHBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
HBsAgのためのワンステップELISAキットを北京のSihuan Biological社から購入して、そして以下のステップを使用した:
【0093】
1、サンプルの添加:
マイクロタイタープレートをコートした。各々のプレートに、2つのウェルを、それぞれ陰性対照及び陽性対照として設定し、次に1滴の対照溶液(50 μl)を各々の4つのウェルに加えた。1つのウェルを(全ての薬剤を加えない)ブランク対照として設定した。50 μlの試験サンプルを他のウェルに加えた。次に1滴の抗HBs-HRP(50 μl)を各々のウェルに加えた。前記プレートを37℃で30分間インキュベートした。
【0094】
2、プレートの洗浄:
各々のウェルの液体を捨て、次にこのウェルを3倍希釈した洗浄緩衝液を使って5回洗い、そして軽くたたいて乾かした。
【0095】
3、発色:
1滴の色素原溶液Aと1滴の色素原溶液Bを各々のウェルに加え、次にプレートを37℃で15分間インキュベートして、発色させた。
【0096】
4、反応停止:
1滴の停止緩衝液を加え反応を停止させた。
5、結果の表示:
ブランク・ウェルを450nmの波長で計測して、次に各々のウェルのOD値を読み取り、結果を以下の式に従って計算した:
S/N=試験血清のOD値/陰性対照の平均のOD値、S/N≧2.1の場合、試験血清は陽性であるとみなし、S/N<2.1の場合、試験血清は陰性であるとみなした。陰性対照のOD450<0.05である場合、そのとき、0.05を前記の式に取り入れ;OD450≧0.05の場合、そのとき、実効値を前記の式に取り入れた。結果は以下の通りだった:
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
実施例7
HBV X遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの同定
1) PCRによるマウスの遺伝子型の同定
野生型p21対立遺伝子を同定するために、プライマー1(5'-TCTTCTGTTTCAGCCACAGGC-3')及びプライマー2(5'-TGTCAGGCTGGTCTGCCTCC-31)を使用し、そして436bpのバンドが野生型及びヘテロ接合性マウスから増幅されることができた。neo遺伝子を含む標的対立遺伝子を同定するために、neo遺伝子上のプライマー3(5'-ATTTTCCAGGGATCTGACTC-3')及びプライマー4(5'-CCAGACTGCCTTGGGAAAAGC-3')を使用した。HBX遺伝子を確認するために、プライマー7(5'-TCTCTGCCAAGTGTTTGCTGACGC-3')及びプライマー8(5'-TCGGTCGTTGACATTGCTGAGAGTC-3')を使用した。
【0100】
2) サザンブロットによるHBX遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
抽出したマウス尾ゲノムDNAを、それぞれEcoRI及びBglIIにより消化し、得られた消化物を、ターゲッティング・ベクターの5'末端の外側に配置されたプローブを使ったサザン・ハイブリダイゼーションに共した。BglIIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約8 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたるこの陽性バンドは9 kbに移動した。後者は、相同組換えの後の本来のBglII部位の削除とneo遺伝子による他のBglII部位の導入から生じる。EcoRIによる消化に関して、野生型p21対立遺伝子にあたる約7.7 kbの陽性バンドが現われるべきであるが、それに対し、標的p21対立遺伝子にあたる変異後のHBX遺伝子を含む上記バンドは約22 kbに移動した。
【0101】
3) ノーザンブロットによるHBX遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウスの同定
HBV cDNAを含むpADR-1のBglII及びBamHI消化産物から抽出した580bp断片を、ノーザン・ハイブリダイゼーションのためのプローブとして使用した。結果は、HBX遺伝子がマウスの肝臓及び腎臓で発現されていたことを示した。
【0102】
実施例8
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するトランスジェニック・マウスの表現型分析
1) ヘマトキシリン及びエオジン染色
1、固定
組織を中性ホルムアルデヒド溶液(100 mlの40%ホルムアルデヒド、900 mlの水、4 gのリン酸2ナトリウム、6.5 gのリン酸二水素ナトリウム)中で20時間にわたり固定した。
【0103】
2、乾燥
70%エタノール15分間
80%エタノール15分間
90%エタノール15分間
95%エタノール15分間
無水のアルコール15分間
無水のアルコール15分間
キシレン15分間
キシレン15分間
【0104】
3、包埋
乾燥した組織を、加工されたパラフィン(すなわち、融解され、そして60℃で一晩寝かせた)の中に移し、そして2時間浸した、この期間の間にパラフィンを2度交換した。次に、組織を予熱した包埋枠組み中に移し、続いて融解パラフィンを速やかに注ぎ入れ、その間に、暖めた鉗子を使って組織の位置を調節した。次に、底板を上に置き、その上にいくらかの融解パラフィンを注ぎ、そしてその中の泡を慎重に取り除いた。それを室温に置き、融解パラフィンを凝固させた。
【0105】
4、切片のカッティング
塊状パラフィンを好適なサイズにし、刃を10°の角度に合わせた回転式ミクロトーム(MICROM HM340E)で切った。形成されワックス-チップをきれいなアルミニウム・ホイルに移し、外科用のかみそりの刃を使って好適なサイズに切り、そしてそれぞれスライドに移した。サンプルが水面に浮かぶまで、適切な量の水を加えて、次に前記スライドを、約40℃のスライド乾燥機のプラットフォーム上に置き、そしてサンプルが広がるまで慎重に水を捨てた。前記スライドを、検体ボックス中にまとめ、37℃で一晩乾燥させた。
【0106】
5、ヘマトキシリン及びエオジン染色
キシレン15分間;
キシレン15分間;
無水アルコール15分間;
95%エタノール5分間;
70%エタノール5分間;
水5分間;
【0107】
ハリス・ヘマトキシリン染色溶液(2.5 gのヘマトキシリン、25 mlの無水アルコール、50 gのカリミョウバン、1.25 gの酸化第二水銀、20 mlの氷酢酸、500 mlの水)5分間;
流水による洗浄、5〜10分間;
70%エタノール-塩酸(200 mlの70%エタノール+10滴の塩酸)15〜30秒間;
70%エタノール-水酸化アンモニウム(200 mlの70%エタノール+10滴の水酸化アンモニウム)1分;
水5分間;
【0108】
次に、脱色の程度を顕微鏡下で観察した。細胞質が灰色であるか又は透明ならば、次のステップを実行した。細胞質がまだ青ければ、前述のステップを繰り返した。
70%エタノール3分間;
エオジンY染色溶液(0.5 gのエオジンY、5 mlの水中に溶解した50 mgのブリリアント・レッドB、50 mlの水、2 mlの氷酢酸、390 mlの95%エタノール)1分間;
95%エタノール5分間;
無水アルコール5分間;
キシレン5分間;
キシレン5分間;
【0109】
6.中性ゴムによるスライドの封入
結果を図7に示した。
2) 免疫組織化学的分析
1.パラフィン切片を用意し、規定どおりに水に対してろうを取り除いた。
2.このスライドを、3%の過酸化水素中、10分間室温でインキュベートし、内性のペルオキシダーゼを不活性化した。
【0110】
3.このスライドを蒸留水により2分間×3回洗浄し、次に0.01 Mのクエン酸緩衝液(pH6.0)を含む容器中に移した。この容器を、電子レンジにより前記緩衝液が10〜15分間92〜98℃の温度になるまで加熱し、次に室温で10〜20分冷まして抗原を復元した。このスライドを5分間PBS中に浸した。
【0111】
4.次に、前記スライドを5〜10%の正常ヤギ血清(PBSで希釈)によりブロックし、10分間室温インキュベートし、その後血清を捨て、好適な割合に希釈した一次抗体(1%BSA-PBSで希釈)を添加し、37℃で1〜2時間又は4℃で一晩インキュベートした。
【0112】
5.このスライドを、各回5分間、PBSにより3回洗浄した。
6.次に、このスライドに好適な割合に希釈したビオチン標識二次抗体(PBSで希釈)を加え、37℃で30分間インキュベートした。
【0113】
7.このスライドを、各回5分間、PBSにより3回洗浄した。
8.次に、このスライドに好適な割合に希釈したホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(PBSで希釈)を加え、37℃で30分間インキュベートした。
【0114】
9.このスライドを、各回5分間、PBSにより3回洗浄した。
10.色素原物質を使って色を発色させた。
11.このスライドを水で十分に洗い、対比染色し、封入した。
結果を図8に示した。
【0115】
3) マウス血清中のα-フェトプロテインの分析
マウス血清中のα-フェトプロテインの含量を、ヒト血清α-フェトプロテイン(α-AFP)に対する定量的なELISAキットを使って測定した。手順は以下のとおりであった:
【0116】
1.血清を、血液サンプルから分離し、4℃で保存し、冷凍と解凍の繰り返しを避けた。
2.サンプルを以下の比率で加えた:
【0117】
【表4】
【0118】
混合し、次に37℃で20分間インキュベートした。各々の実験において、1つのウェルをブランクとして設定した。
【0119】
3.各々のウェルについて、まず、その中の液体を捨て、第2に、蒸留水をその中に再び満たし、次に10秒後に捨てた。このステップを3〜4回繰り返した。
4.1滴の色素原物質A(50 μl)、1滴の色素原物質Bを添加し、そして十分に混ぜ、次に色素形成のために37℃で15分間静置した。
【0120】
5.1滴の停止溶液(50 μl)を加えた。ブランク・ウェルを使ってゼロを計測した後に、450nmの波長で各々のウェルのOD値を読み取った。
6.横座標として標準の異なる濃度の対数、縦座標として対応するOD値を使った、標準曲線をプロットした。プロットした標準曲線の線状回帰方程式に基づき、サンプルの濃度を、その試験したOD値によって計算することができた。前記方程式は、以下のとおりである:
logOD=Blog[濃度]+A
2ヶ月齢マウスの比較結果を図9に示した。
【0121】
4) アポトーシスの検出
Oncor社製のApopTaq(In situアポトーシス検出キット)を、アポトーシス検出のために使用し、手順は以下のとおりだった:
1.パラフィン切片を水に対して脱ろう化し、各回5分間、2回PBS中に浸した。
2.組織の用意
組織を、PBSで希釈したプロテアーゼK(20 μg/ml)により室温で15分間(60 μl/5cm2)処理し、次に純水で、各回2分間、2回洗浄した。
【0122】
3.内性のペルオキシダーゼを不活化する。
前記組織を、PBSに希釈した3%H2O2により5分間室温で処理し、次に純水で、各回5分間、2回洗浄した。
4.サンプルの平衡化
不必要な液体を慎重に捨てた。75 μlの平衡緩衝液を直接的にサンプル上に加え、次に少なくとも10秒間室温でインキュベートした。
【0123】
5.TdTaseの取り込み
不必要な液体を慎重に捨てた。TdTase作用溶液(77 μlの反応緩衝液+33 μlのTdTase)を直接的に加えて、次に37℃で1時間インキュベートした。
6.反応停止
サンプルに停止緩衝液を添加し、15秒間撹拌し、次に続けて室温で10分間インキュベートした。
【0124】
7.抗ジゴキシン-複合体の添加
サンプルを、各回1分間、3回PBSにより洗浄した。不必要な液体を慎重に捨てた後に、サンプルを、室温に暖めた抗ジゴキシン・ペルオキシダーゼ複合体で覆った。次に30分間室温でインキュベートした。
8.色の発色
サンプルを、各回2分間、4回PBSで洗浄した。色素形成のためにDABを使用した。
【0125】
9.水を使った反応の停止。
サンプルを、各回1分間、3回純水で洗浄し、その後純水中で5分間継続した。
10.対比染色
0.5%のメチルグリーン(100 mlの0.1 M酢酸ナトリウムpH4.0中に溶かした0.5 gメチルグリーン)を10分間室温での対比染色に使用した。次にサンプルを3回純水で洗浄し、最初の2回については、それぞれ10回水に浸し、3回目は、撹拌することなく、30秒間水に浸した。最後に、前記の手順を使って、サンプルを100%のn-ブタノール中で3回洗浄した。
【0126】
11.スライドの封入
サンプルを、各回2分間、3回キシレンに浸し、次に中性ゴムにより封入した。
結果は、アポトーシスが15ヶ月齢のトランスジェニック・マウスでも野生型マウスでも検出されないわけではないことが明らかであることを示した。
【0127】
実施例9
HBsAg遺伝子の標的を狙った組み込みを含有するマウス血清プロテオミクスの調査研究
1) 肝臓組織からのタンパク質の用意
1.肝臓組織をサンプルとして摘出した;
2.液体窒素下、乳鉢を使ってサンプルは粉末化した。サンプル1gにつき0.5 mlの溶解緩衝液(5 M尿素、2 Mチオ尿素、2%のSB-30、2%のCHAPS、1%のDTT、プロテアーゼ・インヒビターの混合物)を加えた後、サンプルを組織ホモジナイザーで30秒間均質化した;
【0128】
3.組織懸濁液を15℃で10分間10,000gで遠心分離した;
4.その上清を4℃で45分間150,000gで超遠心分離した;
5.次に、上部に浮いている脂質層を慎重に避けて、得られた上清を取り出し、再び6℃で50分間40,000gで遠心分離した;
【0129】
6.得られた上清を取り出した。ブラッドフォード法に従ってそのタンパク質濃度を測定した後に、前記上清をアリコートの状態で-75℃で保存した。
【0130】
2) マウス血清の用意
それぞれ3ヶ月齢の野生型マウス及びトランスジェニックホモ接合性マウスからの血液を、30分間室温で静置し、次に3500gで30分間遠心分離した。上層の血清を取り出し、そしてそのタンパク質濃度をPIERCE社製のBCATM-タンパク質アッセイ・キット(Cat. No. 23226)を使って測定し、各々の血清をアリコートの状態で-75℃で保存した。
【0131】
3) 血清及び肝臓組織のプロテオミクス分析
1、等電点分離法
ゲル内再水和作法を使うことによって、250 μgのタンパク質を含む血清又は組織抽出物に、350 μlの終量までサンプル再水和作用溶液(8 mol/lの尿素、2%のCHAPS、微量のブロモフェノールブルー)、そこに還元剤DTTを、20 mmol/lの終濃度まで加え、0.5%の終濃度までIPG緩衝液を加えた。IPG乾燥ゲル(pH3〜10、L,18cm、Amersham Pharmacia Biotech)を、前記溶液中に置き、以下の指標下、等電点分離法を実行した:
【0132】
【表5】
【0133】
2、平衡
等電点分離法の後に、前記IPGゲルを10 mlのSDS平衡緩和液(50 mmol/lのTris-Cl pH8.8、6 mol/lの尿素、30%のグリセロール(V/V)、2%のSDS(V/V)、微量のブロモフェノールブルー)中に置き、次に振とう機により各回10分間、2回振とうする、前記の初回について、平衡緩衝液は1OO mgのDTTを含み、前記2回目について、平衡緩衝液は250 mgのヨードアセトアミドを含む。
【0134】
3、2次元SDS-PAGE垂直電気泳動
IPGゲルのサイズに従い、200×200×1 mm3のサイズを有する1個の12.5%の同質のゲルを用意した。平衡されたIPGゲルを、SDS-PAGE上に転写し、続いて電気泳動緩衝液(25 mmol/lのTris、250 mmol/lのグリシン pH8.3、0.1%のSDS)によって用意された、微量のブロモフェノールブルーを含む0.5%のアガロースを用いて遮蔽した。14〜15℃で、まず、ゲルにつき120 mAの定電流を40分間流し、次にガラスプレートの下縁から1 mm手前までブロモフェノールブルーが移動するまで30 mAに上げた。電気泳動ゲルを、メタノール:酢酸:水(3:3:4)中で固定し、クーマシーブリリアントブルー染色溶液(メタノール:水:酢酸=4.5:4.5:1によって調整した0.25%のクーマシーブリリアントブルーR250)により4時間以上染色した。次に、7%酢酸-10%エタノールを使って脱色した。
【0135】
4、2-Dゲル電気泳動結果の分析
Amersham Pharmacia Biotech社製の画像分析ソフトウェアであるImageMaster2D Elite3.01を使うことによって電気泳動結果を分析した。
【0136】
5、酵素消化及びPAGEからの示差的なタンパク質の抽出
2Dゲルから明らかな相違をもつタンパク質のドットを選び、次にかみそりの刃により染色された縁に沿って切り落とし、管に移し、50%のアセトニトリル(クロマトグラフィー・グレード)、50 mMの重炭酸アンモニウムを含む溶液で脱色し、遠心分離し、そして真空下で乾燥させた。8〜10 μlの0.01 g/Lトリプシン溶液を各々の管に添加し、37℃で20時間インキュベートした。前記トリプシンは、ボーリンガー社製であり、(修飾された、配列決定用グレード)、そしてその溶液は、25 mmol/Lの重炭酸アンモニウム溶液を使って用意された。120 μlの15%トリフルオロ酢酸(TFA、Fluka社)を添加し、そして40℃で1時間インキュベートした。上清を取り出し、次に120 μlの2.5%TFA、50%ACN溶液を加え、そして30℃で1時間インキュベートし、最後に合わせて、凍結乾燥した。
【0137】
6、示差的なタンパク質のペプチド質量フィンガープリンティング(PMF)分析
10 μlの0.5%トリフルオロ酢酸中にペプチド混合物を溶解し、続いて凍結乾燥した。1 μlの溶解したペプチド混合物又は脱塩抽出物を、ドットに対して得、1 μlの、0.1%のトリフルオロ酢酸/50%のアセトニトリル中に溶解されている飽和1-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸溶液をマトリックスとし、次に室温で乾燥させた。Bruker社製のREFLEX IIIマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)を使うことによって、タンパク質を337 nmのレーザー長で検出した。
【0138】
7.データベース検索を通してのタンパク質の予備的な同定
タンパク質等電点、分子量及びペプチド・フィンガープリンティングの特徴の範囲、並びに他の指標の入力データに従って、それらの指標に合致するタンパク質が、データベース検索プログラムの利点を受け入れるタンパク質データベース内で検索されることができる。ウェブ上のタンパク質データベース検索プログラムは、以下の通りである:ExPASy分子生物学サーバーによって提供されたPeptIdent(http://www.expasy.ch/tools/peptident.html)、及びUCSF質量分析施設により提供されたMS-Fit(http://prospector.ucsf.edu/htmlucsi3.0msfit.htm)。
【0139】
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスモデルの構築方法であって、以下のステップ:
a) HBV X遺伝子及びHBV表面抗原(HBsAg)遺伝子から選ばれる着目の外来性遺伝子を、マウスp21遺伝子座の第2エクソンの上流配列及び下流配列に相同的な2つの配列を担持する好適なベクター内に挿入して、組換えターゲッティング・ベクターを構築し;
b) ステップa)からのターゲッティング・ベクターを使って試験されるマウスのES細胞をトランスフェクトし、そして上記外来性遺伝子がマウスp21遺伝子座の第2エクソンに組み込まれている標的とされたES細胞をスクリーニングし;
c) ステップb)から得られた標的とされたES細胞を、上記マウスの胞胚内に注入し、そして標的とされたES細胞を含む胚が発生するように上記胞胚を試験管内で培養し;そして
d) ステップc)から生じた胚を、上記動物の子宮に移植し、それによって外来性遺伝子を安定して発現する子孫を作製すること、
を含む、構築方法。
【請求項2】
前記ターゲッティング・ベクターが、前記の着目の外来性遺伝子、前記のマウスp21遺伝子座の第2エクソンの上流配列及び下流配列に相同的な配列、並びに陽性及び陰性選択マーカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲッティング・ベクターが、pLoxpneo-HBsAgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲッティング・ベクターが、pLoxpneo-HBXである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
HBV X遺伝子及びHBV表面抗原(HBsAg)遺伝子から選ばれる着目の外来性遺伝子を挿入された細胞ゲノム上のマウスp21遺伝子座の第2エクソンを特徴とするマウス細胞。
【請求項6】
同じ遺伝子型を有する胚性幹細胞又は体細胞である、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により得られたトランスジェニック・マウス。
【請求項8】
遺伝子ノックイン法によりHBV X遺伝子及びHBV表面抗原(HBsAg)遺伝子から選ばれる着目の外来性遺伝子がマウスp21遺伝子座の第2エクソン内に部位特異的に組み込まれたそのマウスの染色体を特徴とする、トランスジェニック・マウス。
【請求項9】
マウスp21遺伝子座の第2エクソン内に部位特異的に挿入されたHBsAg遺伝子を特徴とするトランスジェニック・マウスであって、上記着目の外来性遺伝子が安定して受け継がれ、そして発現されて、上記マウスが正常に分化し、そして一定期間の後に肝細胞癌に罹患する、上記トランスジェニック・マウス。
【請求項10】
肝細胞癌の病因、その早期診断及び治療の研究、並びに抗がん剤のスクリーニングにおける、請求項8又は9に記載のトランスジェニック・マウスの使用。
【請求項1】
マウスモデルの構築方法であって、以下のステップ:
a) HBV X遺伝子及びHBV表面抗原(HBsAg)遺伝子から選ばれる着目の外来性遺伝子を、マウスp21遺伝子座の第2エクソンの上流配列及び下流配列に相同的な2つの配列を担持する好適なベクター内に挿入して、組換えターゲッティング・ベクターを構築し;
b) ステップa)からのターゲッティング・ベクターを使って試験されるマウスのES細胞をトランスフェクトし、そして上記外来性遺伝子がマウスp21遺伝子座の第2エクソンに組み込まれている標的とされたES細胞をスクリーニングし;
c) ステップb)から得られた標的とされたES細胞を、上記マウスの胞胚内に注入し、そして標的とされたES細胞を含む胚が発生するように上記胞胚を試験管内で培養し;そして
d) ステップc)から生じた胚を、上記動物の子宮に移植し、それによって外来性遺伝子を安定して発現する子孫を作製すること、
を含む、構築方法。
【請求項2】
前記ターゲッティング・ベクターが、前記の着目の外来性遺伝子、前記のマウスp21遺伝子座の第2エクソンの上流配列及び下流配列に相同的な配列、並びに陽性及び陰性選択マーカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲッティング・ベクターが、pLoxpneo-HBsAgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲッティング・ベクターが、pLoxpneo-HBXである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
HBV X遺伝子及びHBV表面抗原(HBsAg)遺伝子から選ばれる着目の外来性遺伝子を挿入された細胞ゲノム上のマウスp21遺伝子座の第2エクソンを特徴とするマウス細胞。
【請求項6】
同じ遺伝子型を有する胚性幹細胞又は体細胞である、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により得られたトランスジェニック・マウス。
【請求項8】
遺伝子ノックイン法によりHBV X遺伝子及びHBV表面抗原(HBsAg)遺伝子から選ばれる着目の外来性遺伝子がマウスp21遺伝子座の第2エクソン内に部位特異的に組み込まれたそのマウスの染色体を特徴とする、トランスジェニック・マウス。
【請求項9】
マウスp21遺伝子座の第2エクソン内に部位特異的に挿入されたHBsAg遺伝子を特徴とするトランスジェニック・マウスであって、上記着目の外来性遺伝子が安定して受け継がれ、そして発現されて、上記マウスが正常に分化し、そして一定期間の後に肝細胞癌に罹患する、上記トランスジェニック・マウス。
【請求項10】
肝細胞癌の病因、その早期診断及び治療の研究、並びに抗がん剤のスクリーニングにおける、請求項8又は9に記載のトランスジェニック・マウスの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−200756(P2010−200756A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99265(P2010−99265)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2003−140748(P2003−140748)の分割
【原出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【出願人】(503180029)ベイジン インスティチュート オブ バイオテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2003−140748(P2003−140748)の分割
【原出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【出願人】(503180029)ベイジン インスティチュート オブ バイオテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
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