説明

B細胞の増殖を増加させる方法

非腫瘍性B細胞の増殖を増加させる方法が本願中に開示されている。本方法はPCDGFと、必要に応じて他のB細胞刺激剤(例えばIgM、LPS)をB細胞に投与することを伴い、B細胞の増殖が増加する結果となる。本発明の方法は、例えば、B細胞株を確立するために、混合した細胞集団からB細胞を選別するために、あるいは静止しているB細胞を活性化するのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【参考文献】
【0001】
いくつかの刊行物がこの中で参照されている。これらの刊行物の完全な引用については後に提供する。特に言及しない場合には、これらの刊行物における開示は本願に引用して援用される。
【背景技術】
【0002】
多細胞生物の中の細胞の増殖と分化は、高度に制御されたプロセスの対象である。癌細胞を区別できる特性はこのプロセスに関する制御が存在しないことであり、増殖と分化は自由となって成長が制御されない結果となる。この正常細胞と腫瘍細胞の間の差をより良く理解することに、多くの研究努力が向けられてきた。研究の焦点となる一つの分野は成長因子であり、より具体的には自己分泌(オートクライン)成長刺激である。
【0003】
成長因子は成長、分化、移動および遺伝子発現に関する指令を細胞に運ぶポリペプチドである。典型的には成長因子は1つの細胞の中で作成され、他の細胞上で作用して増殖を刺激する。しかし特定の悪性細胞は、培養中で、オートクライン成長機構に対するより大きな又は完全な依存を示す。このオートクライン作用が観察される悪性細胞は、他の細胞による成長因子の産生の制御を回避し、それによってそれらの成長は制御を受けない。
【0004】
B細胞の発達は、抗原非依存性と抗原依存性の2つの段階からなる。B細胞の発達の抗原非依存性の段階は骨髄で起こり、ここでB細胞前駆体は細胞表層IgMを発現している未熟なB細胞へ分化する。B細胞分化の抗原依存性の段階は末梢の二次リンパ器官中で起こり、ここで抗原特異的なB細胞は増殖し、活性化により特異的な抗体を分泌する形質細胞へ分化する。
【0005】
B細胞発達の抗原非依存性な段階の間に、免疫グロブリン遺伝子断片の一連の再配列によって様々な抗原のレパートリーが作られる。B細胞前駆体由来の最も早期のB系統細胞であるプロB細胞は、早期のB細胞系列の細胞表層蛋白質の出現と、重鎖に所在する免疫グロブリン遺伝子の再配列によって特徴付けられる。プロB細胞段階は続いてプレB細胞段階となり、それは免疫グロブリン軽鎖遺伝子の再配列によって特徴付けられる。重鎖と軽鎖の両者の再配列が成功すると、未熟なB細胞段階において、細胞表層上に無傷なIgM分子の発現へ至る。
【0006】
未熟なB細胞は、抗原によって誘発される一連のチュックポイントにおける自己寛容についての選抜と、末梢リンパ組織中で生き残る能力についての選抜を受ける。自己寛容と末梢リンパ組織中で生き残る能力についての選抜に生き残ったB細胞は更に分化し、表層IgMに加えて表層IgDを発現する成熟B細胞になる[Burrows, 1997]。成熟B細胞は末梢リンパ組織を通じて再循環し、そこでそれらは抗原と遭遇する。抗原により活性化されたB細胞は形質細胞へ分化し、大量の抗体を分泌する[Duchosal, 1997]。免疫グロブリン分子には5つの異なったクラスがあり、それらはIgM、IgD、IgG、IgAとIgAである。IgMは合成されて発現する最初の免疫グロブリン分子である。
【0007】
抗原依存的なB細胞の発達と分化は、抗原のB細胞への結合から始まる。B細胞の活性化には2つの信号が必要であり、それらは、B細胞表層の免疫グロブリンへの抗原の結合と、B細胞と抗原特異的なヘルパーT細胞の相互作用である。B細胞抗原受容体(BCR)として働いている表層免疫グロブリンは、B細胞活性化において重要な役割を果たしている。抗原結合の後にBCRと抗原の複合体は吸収されて抗原蛋白質は分解する。消化された抗原は、MHCクラスII分子と結合したペプチドとしてB細胞表層へ戻る[Parker, 1993]。
【0008】
B細胞はプロB細胞から形質細胞へ発達するから、それらは細胞免疫グロブリン以外の細胞表層蛋白質を発現し、それは種々の発達段階においてB系列細胞のマーカーとして有用である。B系列細胞の表層上で最初に同定可能な蛋白質の1つはCD45Rである(B220としても知られている)[Osmond, 1998; Hardy, 2001]。B細胞受容体のシグナリングにおいて機能する蛋白質チロシンフォスファターゼであるCD45Rは、プロB細胞から形質細胞に至るまで、B細胞の発達を通じて発現している[Osmond, 1998; Hardy, 2001]。CD43(ムチンロイコシアリン)もプロB細胞の段階において発現しているが、細胞が未熟なB細胞へと進展するにつれてその発現は失われる[Hardy, 2001]。CD43は直接矛盾する機能性を有する多機能性分子である[Ostberg, 1998]。例えばCD43は、B細胞前駆体とストロマ細胞との細胞-細胞相互作用を導く接着分子として作用することができる[Ostberg, 1998]。しかし、CD43は抗接着機能も有している[Ostberg, 1998]。CD43は細胞シグナリングと細胞骨格相互作用において重要な役割を果たしている[Ostberg, 1998]。CD19は他の表層マーカー蛋白質であり、プロB細胞から形質細胞の段階を通じて発現している[Hardy, 2001]。CD19はB細胞のシグナリングに関与しており、B細胞の抗原受容体刺激のための閾値を低下させる[LeBien, 1998]。B細胞発達の種々の段階の間に発現している他の細胞表層分子には、熱安定抗原HSA, CD10, CD20, CD22, CD38およびCD40が含まれる[Duchosal, 1997; Hardy, 2001]。
【0009】
抗原非依存的な段階のB細胞の発達と分化は、系統と段階に特異的な成長因子と細胞接着分子によって厳密に制御される。ストロマ細胞により分泌されるインターロイキン7(IL-7)は、早期のB細胞発達のために必須の成長因子である。IL-7はプロおよびプレB細胞の増殖を刺激することができる[Duchosal, 1997]。中和性抗IL-7抗体は、プロおよびプレB細胞のIL-7に誘導される増殖を阻害できる[Duchosal, 1997]。IL-7依存性のプロB細胞増殖は、インスリン様成長因子-Iと幹細胞因子という、2つのストロマ成長因子によって強化される[Duchosal, 1997]。インターフェロン(IFNs)-α/βは骨髄中のマクロファージにより分泌されるが、アポトーシスを通じてIL-7が誘導性したB細胞の成長を阻害することができる[Burrows, 1997]。ストロマ細胞由来の因子IまたはプレB細胞成長刺激因子(SDF-1/PBSF)は、骨髄ストロマ細胞により構成的に産生されるが、プロおよびプレ-B細胞の増殖を刺激する[Nagasawa, 1996]。インビボの実験により、PBSF/SDF-1を欠損しているマウスは周産期に死亡した事が示されている[Nagasawa, 1996]。IL-3は、B細胞上のIL-3受容体と相互作用することにより、プレ-B細胞の増殖を刺激する[Duchosal, 1997]。IL-3はT細胞由来のサイトカインであり、IL-6と共に多能性幹細胞とB細胞前駆体を刺激できる[Kincade, 1989]。グルコース-6-リン酸のアイソマーの同族体であるニューロロイキンは、B細胞の発達を刺激する能力を有している[Kincade, 1989]。
【0010】
B細胞の発達を負に制御する成長因子もいくつかある。IL-1は、早期のプロ-B細胞からプレ-B細胞を産生することを阻害する[Ryan, 1994]。しかしヒトの骨髄培養液からの免疫グロブリン分泌性のB細胞の産生は、IL-1により増加する[Ryan, 1994]。TNF-αとIL-4はヒトのリンパ前駆体のコロニーを阻害する[Ryan, 1994]。細胞接着分子も早期のB細胞の発達に重要である。ストロマ細胞の細胞表層上に存在する幹細胞因子(SCF)は、B細胞前駆体上の細胞表層の受容体チロシンキナーゼであるkitと相互作用し、早期のB細胞の発達を刺激する[Ashman, 1999]。ディファレンシャル・スプライシングおよび蛋白質分解開裂(proteolytic cleavage)の結果として、SCFは可溶性および膜結合型の両者で存在している[Ashman, 1999]。膜結合型のSCFは、その早期のB細胞の発達の制御に寄与する[Ashman, 1999]。Flk2/flt3は、幹細胞因子受容体c-kitとして同じファミリーにある受容体チロシンキナーゼである。IL-7およびSCFのみならず、SCF-1と相同性を有するflk2/flt3リガンドは、早期のプロ-B細胞の強力な共刺激剤である[Burrows, 1997]。Flk2/flt3遺伝子を破壊すると、初期のB細胞前駆体の選択的な欠損へ至る[Burrows, 1997]。
【0011】
VLA-4はB細胞前駆体の細胞表層分子であり、ストロマ細胞とマクロファージ上の細胞外基質リガンドであるフィブロネクチン、および内皮細胞とマクロファージ上のVCAM-1と相互作用する[Duchosal, 1997]。VLA-4はプレB細胞よりも、プロB細胞上でより多く発現する。そこでVLA-4は、プレB細胞よりもプロB細胞の増殖をより効率的に調節する[Duchosal, 1997]。
【0012】
B細胞前駆体上のCD44とストロマ細胞上のヒアルロン酸の間の相互作用もまた、B細胞の発達に重要な役割を果たす。CD44の抗体はインビボでマウスB細胞の発達を阻害する[Duchosal, 1997]。ホルモンもB細胞のリンパ球産生を制御する。リンパ球産生の微環境中のストロマ細胞に対する影響を介して、エストロゲンはB細胞の産生を制御する[Burrows, 1997]。T細胞不全とB細胞の発達不全のために、プロラクチンと甲状腺刺激ホルモンの発現が不十分である矮性のマウスは免疫不全であるが、それは甲状腺ホルモンであるチロキシンの不足により修正できる。
【0013】
B細胞とヘルパーT細胞の直接の接触を通じて、Tヘルパー細胞はB細胞へシグナルを伝達する。この直接的な接触は、アクセサリー分子の抗原非依存的な相互作用により達成され、Tヘルパー細胞上のCD40リガンドとB細胞上のCD40はT細胞を助け[Parker, 1993]、更にそのペプチドの抗原特異的な相互作用;B細胞表層上のMHCクラスII複合体とヘルパーT細胞上の抗原特異的なT細胞受容体により達成される。抗原に仲介されたB細胞の活性化はT細胞非依存的な様式、またはT細胞依存的な様式で起こる。T細胞非依存的なB細胞の活性化は、多糖類などの非蛋白質抗原に反応して起こることがある。B細胞は多糖類と直接反応する能力を有するので、多くの重要な細菌性病原体に対する迅速な反応を提供する[Vos, 2000]。T細胞依存的なB細胞の活性化は、蛋白質抗原、または蛋白質の担体蛋白質分子と結合した非蛋白質抗原に反応して起こる。
【0014】
T細胞依存的なB細胞の活性化はホルモン性免疫の核である。活性化されたヘルパーT細胞は、B細胞の増殖と分化を刺激できる可溶性サイトカインを産生する[Parker, 1993]。最初に同定された可溶性サイトカインは、B細胞刺激因子-I(BSF-1)またはB細胞成長因子(BCGF)としても知られているIL-4であった。IL-4は元々、抗IgMで刺激されたネズミBリンパ球のDNA合成を刺激できる分子として同定された[Howard, 1982]。ヒトIL-4は蛋白質コアを有する153アミノ酸の糖蛋白質であり、分子量は15KDである。グリコシル化されたヒトIL-4は20KDの分子量を有する[Yokota, 1986; Ohara, 1987]。IL-4はB細胞に多様な影響を有する。例えばIL-4は、抗IgM抗体で刺激されたB細胞の増殖を促進でき[Howard, 1982]。クラスII MHCの発現とCD23の発現を誘導し[Conrad, 1987; Jansen, 1990]、免疫グロブリンのアイソタイプの発現を制御する。例えばIL-4はB細胞を誘導してIgEを産生可能であり[Pene, 1988]、IgMの産生からIgG1および/またはIgEの産生へ細胞の発現の切り替えを誘導できる[Callard, 1991]。IL-4はT細胞、肥満細胞、単球、造血細胞、繊維芽細胞、およびNK細胞の制御においても役割を果たす。
【0015】
インターロイキン-2(IL-2)は133アミノ酸の糖蛋白質であり、可変のグリコシル化によって13から17.5KDの分子量を有する[Robb, 1981]。T細胞により産生されたIL-2は、活性化されたB細胞の増殖を刺激し[Gearing, 1985]、免疫グロブリン分泌の誘導とB細胞によるJ鎖の合成を促進し[Gearing, 1985; Blackman, 1986]、活性化されたB細胞により仲介された免疫効果を促進するように作用する[Mingari, 1984]。
【0016】
インターロイキン-6(IL-6)は19から30KDの分子量を有する186アミノ酸の糖蛋白質であり[May, 1989]、単球、マクロファージ、ストロマ細胞、および形質細胞を含む多くの型の細胞から産生される[May, 1989; Frassanito, 2001]。IL-6はB細胞が形質細胞へ移行するための後期の分化因子として良く確立されている[Muraguchi, 1988]。IL-6は活性化されたB細胞を刺激してIgM、IgGとIgAを産生する[Muraguchi, 1988]。IL-6は生体内(インビボ)と生体外(インビトロ)で、抗原に対する抗原特異的な抗体の反応も増大する[Takatsuki, 1988]。T細胞の発達の抗原特異的な段階はオートクライン因子であるIL-2の産生に依存するが、B細胞において対応するオートクライン制御因子は未だ同定されていない。
【0017】
PCDGF(PC細胞由来の成長因子)は発癌性の高いオートクライン成長因子であり、広範囲の癌の原因となる薬剤である。例えばB細胞白血病などの発癌性の造血細胞において、PCDGFレベルは上昇しているが、正常なB細胞中では検出されない。本願に引用して援用されている米国特許番号6,309,826において述べられているように、PCDGFが過剰発現すると制御されない腫瘍細胞が成長し、発癌性が増加する。PCDGFの過剰発現の程度は、細胞の発癌性の程度と直接的に相関している。PCDGFを過剰発現している細胞は、制御されない細胞成長を維持するために外部の信号を必要としない。インスリンおよび/またはエストロゲンに対する反応性が失われるなど、細胞成長の制御が失なわれると、悪性度が増加して制御されない細胞が過度に成長する。しかしPCDGFが腫瘍性ではない(すなわち正常な)B細胞の成長の刺激と関連しているとは、これまで示されていない。
【0018】
PCDGFは3T3細胞の成長を穏やかに増加させるが、PCDGFは他のいくつかの細胞株の成長を阻害する。例えば、PCDGFは正常なミンクの肺上皮細胞(CCL64細胞)の成長を阻害する。Xia,XとSerrero,G、「上皮細胞と繊維芽細胞上のPC細胞由来の成長因子(エピセリン/グラニュリン前駆体)の細胞表層結合部位の同定」Biochem.Biophys.Res.Commun,245,539-543,1998。PCDGFは正常マウスとラットの胸腺の上皮細胞(BT1BとTEA3A1細胞)の成長も阻害する(Serrero、非公開の結果)。
【0019】
PCDGFは、HelaとCHO細胞(Serrero非公開データ)およびCos-7細胞(Plowman,et al, 1993; Serrero非公開の結果; Plowman,G.D.,Green,J.M.,Neubauer,M.G.,Buckley,S.D.,McDonald,V.L.,Todaro,G,J.,and Shoyab,M. (1992)エピセリン前駆体は相反する活性を有する2つの蛋白質をコードする)を含むいくつかの正常ヒト細胞株の増殖に影響を及ぼさない。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明はB細胞にPCDGFを投与することにより、非腫瘍性B細胞の増殖を増加させる方法を提供する。我々はPCDGFが正常(すなわち非腫瘍性)B細胞のオートクライン成長因子であることを発見した。そこで正常B細胞の増殖を促進するのにPCDGFを使用し、例えば初代造血細胞の培養の効率を改善することができる。初代B細胞の培養の効率と成長の改善は、例えば生物医学的な検討に使用するための細胞株の確立および維持(例えば幹細胞株)において大きな価値がある。
【0021】
本発明は一態様として、有効量のPCDGFをB細胞に投与することにより非腫瘍性B細胞の増殖を促進する方法を提供し、B細胞の増殖は好ましくは少なくとも2倍増加する。本発明の他の態様は、有効量のPCDGFをB細胞に投与することにより非腫瘍性B細胞の増殖を促進する方法を提供し、B細胞の増殖は好ましくは少なくとも3倍増加する。本発明の更なる態様は、PCDGFをB細胞に投与することにより非腫瘍性B細胞においてDNA合成を刺激するための方法を提供し、DNA合成は少なくとも2倍増加する。
【0022】
本発明の更なる態様および利点は、その一部は下記の説明において述べられ、その一部は記載から自明であり、または本発明の実施を通じて学習されるであろう。本発明の目的および利点は、添付された特許請求の範囲において特に示された手段および組み合わせの方法により達成されるであろう。
【0023】
発明の詳細な説明
PCDGFは腫瘍細胞の強力な成長因子であり、乳房、卵巣、肺、腎臓、肝臓、造血および他の組織における広範囲の腫瘍の発癌剤である。腫瘍形成におけるPCDGFの重要な役割を考えると現在までのPCDGFの研究は、腫瘍細胞の成長を阻害するか又はそれに干渉するために、PCDGFを阻害および/または不活性化することに向けられていた。抗PCDGF抗体などのPCDGFアンタゴニストは、直接的にPCDGFと結合することにより、およびPCDGFが細胞成長のシグナルを標的細胞(例えば乳癌細胞)へ伝達することを防ぐことにより、PCDGFの生物学的な活性(例えば腫瘍形成活性)に干渉する。非腫瘍性B細胞で細胞増殖を増加させるために、PCDGFを使用することはこれまで行なわれていなかった。
【0024】
驚くべきことに本発明者は、非腫瘍性B細胞の増殖を増加させるためにPCDGFを使用できることを見出した。「非腫瘍性B細胞」という用語は、腫瘍細胞成長の、成長、制御、および/または生物学的な活性(例えば、調節されない成長、動物に投与した後に腫瘍を誘導する能力)を示さないB細胞をいう。「B細胞」という言葉は任意の発達段階(例えば、幹細胞、B細胞前駆体、分化したB細胞、形質細胞)、および任意の起源のB細胞をいうものであり、その起源には末梢血、リンパ節、骨髄、臍帯血、または脾臓細胞が含まれるが、それに限定されるものではない。
【0025】
PCDGFは正常な静止B細胞(例えば細胞分裂または増殖を受けていない静止細胞)中では検出されないが、PCDGFのmRNAと蛋白質のレベルは、B細胞が静止状態から活動状態へ移行した時には劇的に上昇する。LPS(リポポリサッカライド)は、グラム陰性細菌の細胞壁中に見い出される複合化合物である。LPSは既知のB細胞の有糸分裂促進剤(マイトジェン)である。マウスの脾臓リンパ球が10μg/mlのLPSによって活性化されたとき、ノザンブロット解析(図1)に示されるように、PCDGFのmRNAの発現は処理後6時間という早期に増加する。PCDGFのmRNAは、LPS添加前の正常細胞中においては殆ど検出不可能である(図1のレーン1-5をみよ)。LPS処理して6から48時間後、PCDGFのmRNAの発現は劇的に増加した(図1のレーン6-9をみよ)。
【0026】
LPSで正常B細胞を活性化すると、PCDGF蛋白質の発現も増加するという結果となった。10μg/mlのLPS(図2B)またはコントロール(図2A)を添加して48時間後に、マウス脾臓リンパ球を精製したウサギ抗ヒトPCDGF抗体で免疫蛍光染色すると、LPSでの処理に続いてPCDGF蛋白質レベルの劇的な増加が示された。PCDGFのmRNAと蛋白質のレベルの増加は、細胞増殖の増加と相関している(図3)。マウス脾臓リンパ球によるチミジン取り込みは、10μg/mlのLPSと48時間インキュベートした後に少なくとも100倍刺激された。
【0027】
マウス脾臓リンパ球はB細胞とT細胞の混合物である。LPSのマウス脾臓リンパ球の刺激が特異的であるかを決定するために、Tリンパ球の活性化剤であるConAを用いて、マウス脾臓リンパ球を活性化した。図4に示されるように、PCDGFのmRNAはLPSで刺激されたサンプル中でのみ検出されたが、逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)の実験で示されるように、コントロールまたはConAで刺激されたサンプル中では検出されなかった。LPSまたはConAのいずれかを添加して6から48時間後の間に、PCDGFのmRNAの転写物はLPS+,ConA-のレーンには示されたが、LPS-,ConA+のレーンには示されなかった。同様に、10μg/mlのLPS(図5、レーン2)または2.5μg/mlのConA(図5、レーン3)のいずれかでマウス脾臓リンパ球を刺激して24時間後に、免疫沈降に続いて行なった抗PCDGF抗体のウエスタンブロット解析で示されるように、PCDGFの蛋白質レベルはLPSにより刺激されたが、ConAによっては刺激されなかった。マウス脾臓リンパ球の増殖は、10μg/mlのLPSまたは2.5μg/mlのConAによって刺激された(図6)。そこで、活性化されたマウス脾臓リンパ球におけるPCDGFのmRNAと蛋白質のレベルの増加は、B細胞の活性化より特異的にもたらされる。
【0028】
PCDGF陽性のマウス脾臓のリンパ球は、LPS刺激により増殖中のB細胞であるかを決定するために、PCDGFに対する抗体、チミジンのアナログ、およびB細胞のマーカーを用いて蛍光染色を行なった。BrdUはDNA合成の間にDNA中へ導入されるチミジンアナログである(細胞増殖の指標である)。B220はB細胞のマーカーとして一般的に使用されている抗原であり、プロBから成熟B細胞までの全ての段階でBリンパ球上に発現している。マウス脾臓リンパ球をLPS無し(図7Aおよび図7B)または10μg/mlのLPS有り(図7Cおよび図7D)でインキュベートし、抗BrdU抗体(図7Aおよび図7C)または抗-PCDGF抗体(図7Bおよび図7D)で染色した。図7Cと図7Dに示されるように、PCDGFとLPS陽性細胞もBrdU陽性でもあったが、一方LPS陰性細胞はPCDGFとBrdUのいずれも陽性でなかった。そこで、PCDGF陽性細胞は増殖中のB細胞でもあったが、一方PCDGF陰性細胞(すなわち非刺激細胞)は増殖していなかった。増殖中のマウス脾臓リンパ球は図8A-Fに示される通りB細胞である。マウス脾臓リンパ球は刺激されていないか(8A-C)、または10μg/mlのLPSで刺激されている(8D-F)。細胞を抗B220抗体(8Aと8D)、DAPI(4,6-ジアミジノ-2-フェ-ニリンドール)核染色(8Bと8E)、または抗PCDGF抗体(8Cと8F)で染色した。LPS刺激された細胞は、図8Dと8Fに示されるように、B細胞染色(抗-B220)とPCDGF染色(抗PCDGF)について陽性であった。DAPIは細胞の核を染色し、それによって全細胞集団を示す。
【0029】
PCDGFは静止B細胞を増殖へ誘導できる。図9に示されるように、静止しているマウス脾臓リンパ球をコントロール(レーン1)、200ng/ml PCDGF(レーン2)、10μg/ml IgM(レーン3)、または200ng/ml PCDGFと10μg/ml IgMの両者(レーン4)で処理した。処理して72時間後にB細胞の増殖は、レーン1-4においてそれぞれ0, 2.7, 3.7および4.6倍に刺激された。PCDGF単独(図9、レーン2)またはIgMとの組み合わせ(図9、レーン4)において、静止B細胞の増殖を誘導できた。
【0030】
本発明の1つの態様は、非腫瘍性B細胞の増殖を増加させる方法を提供するものであり、該方法は前記細胞へ有効量のPCDGFを投与することからなり、前記細胞前記細胞の増殖は少なくとも2倍増加している。PCDGFは他のB細胞増殖因子と共投与することもでき、それはIgMに限定されない。PCDGFと他のB細胞マイトジェン(例えばIgM、LPS)を共投与すると、図9に示すようにB細胞増殖は更に増加するかもしれない。PCDGFおよび共投与するB細胞活性化剤を、B細胞へ同時にまたは順次に投与することができ、またはB細胞株培地中へ直接に取り込ませることもできる。
【0031】
他の態様は、非腫瘍性B細胞中でDNA合成を増加させる方法を提供するものであり、該方法は前記細胞へ有効量のPCDGFを投与することからなり、前記前記細胞中のDNA合成は好ましくは少なくとも2倍増加している。本発明の更なる態様は、非腫瘍性B細胞中でDNA合成を増加させる方法を提供するものであり、該方法は前記細胞へ有効量のPCDGFおよび他のB細胞DNA合成刺激因子(例えばIgM)を投与することからなり、前記細胞中のDNA合成は例えば少なくとも2または3倍増加している。
【0032】
適切な担体(例えば緩衝液)に入ったPCDGFを細胞培養培地へ添加することにより、PCDGFを細胞へ提供することができ、細胞培養培地の濃度は典型的には0.01ngから約100mg/mlの範囲であり、好ましくは約10ngから約50mg/mlの範囲である。PCDGFまたは非腫瘍性B細胞の増殖を増加する能力を保持する活性なPCDGF断片をコードするDNAまたはRNA、あるいはそのようなDNAまたはRNA配列を含んでいるベクターで、B細胞をトランスフェクトすることもできる。任意の適切な技術を用いて(例えば誘導性プロモーターおよび多数の(multiple)プラスミドコピー)、トランスフェクトされたB細胞を誘導してPCDGFまたは活性なPCDGF断片を作製することもできる。本発明の他の態様において、B細胞をPCDGF産生細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞、PCDGFをコードする核酸でトランスフェクトされた細胞を含む腫瘍性細胞であるが、それらに限定されない)と共に局在化させることもできる。PCDGF産生細胞から分泌されたPCDGFは、PCDGF産生細胞の近傍にある正常B細胞の増殖を誘導できる。
【0033】
本発明の更なる態様は、造血細胞集団中で増殖中のB細胞を同定する方法を提供するものであり、該方法は前記細胞中のPCDGFレベルを測定することからなり、PCDGFを発現している細胞は増殖中のB細胞である。図8に示すように、マウス脾臓リンパ球の集団(B細胞とT細胞の両者を含む)中のPCDGF陽性細胞も、増殖中のB細胞については陽性に染色される。そこで、PCDGFについて染色が陽性であることは、造血細胞集団中に増殖中のB細胞が存在していることを示唆するものである。増殖中のB細胞を混合した細胞集団から単離でき、且つ細胞株を確立し、ミエローマ細胞とのハイブリドーマを形成するか又は染色体分析に使用することができる。
【0034】
B細胞および他の造血細胞は、一般的には、細胞培養を維持することが困難であると知られている。PCDGFは任意の起源(例えば、幹細胞、骨髄、臍帯血、胚幹細胞)に由来する哺乳動物のB細胞の生体外(インビトロ)培養を確立するのに使用できる。本発明の他の態様は、非腫瘍性PCDGF反応性細胞の増殖を増加させる方法を提供する(例えば、哺乳動物B細胞、哺乳動物B幹細胞、哺乳動物骨髄細胞、および造血系のPCDGF反応性細胞、胚幹細胞)。例えば、融合した脾臓細胞と多発性骨髄腫細胞から形成されたハイブリドーマ細胞の形成を刺激するのに、PCDGFを使用することができる。
【0035】
本発明の更なる態様においてPCDGFを使用して、不死化したB細胞系統を確立および維持し、染色体分析のためにB細胞集団を増やしたり、静止B細胞から抗原産生を刺激することができる。B細胞の発達の任意の段階に由来するB細胞を、PCDGFおよび/またはB細胞共刺激剤を使用して活性化することができ、抗PCDGF抗体を用いて同定され、生体外(インビトロ)の細胞株中で確立される。細胞培養培地へPCDGFを添加することにより、B細胞株の不死化および/または増殖している活性な状態の維持が可能である。静止しているB細胞を活性化するためにPCDGFを使用することもでき、抗体が産生する結果となる。例えばPCDGFを用いて、融合した脾臓細胞と多発性骨髄腫細胞から形成されたハイブリドーマ細胞の形成を刺激することができる。
【0036】
特定の問題または環境へ本発明の教示を適用することは、本願中に含まれた教示に照らして当業者の能力の範囲内であることを理解するべきである。下記の実施例により本発明を更に十分に説明するが、その実施例は限定的なものでない。
【実施例】
【0037】
実施例1 PCDGFに刺激されたLPS刺激
我々は、マウスの正常B細胞のマイトジェンであるLPSで活性化することによるPCDGF発現を検討した。マウス脾臓リンパ球が10μg/mlのLPSにより活性化されたとき、ノザンブロット解析により示されるように、6時間という早期にPCDGFのmRNAの発現は劇的に増加した(図1)。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、10%FBSを含んでいるRPMI 1640の中で培養した。静止しているマウスB細胞を活性化するために、10μg/mlのLPSを使用した。0, 6, 12, 24および48時間にRNAを単離した。PCDGFのmRNAの発現をチェックするためにノサンブロット解析を行なった。上のパネルはPCDGFのmRNAの発現を示している。下のパネルは各レーンへ同じ量が搭載されていることを表すために、18Sと28S RNA のEB染色を示す。
【0038】
免疫蛍光染色により示されるように、PCDGF蛋白質の発現も48時間後に劇的に増加した(図2)。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、10%FBSを含んでいるRPMI 1640の中で、10μg/mlのLPSのなし(A)又はあり(B)で培養した。細胞の細胞回転調製物をパラフォルムアルデヒドの2%PBS溶液で固定化し、トライトンX100の0.2%PBS溶液で透水化し、精製したウサギ抗ヒトPCDGF抗体で染色し、アレキサ-488が結合したヤギ抗ウサギIgG F(ab’)2で明らかにした。免疫蛍光染色を観察し、100Wの水銀ランプを装備したオリンパスBX40蛍光顕微鏡を用いて写真を撮影した。
【0039】
チミジンの取り込みは100倍の刺激に達し、10μg/mlのLPSとインキュベートして48時間後に最大のcpmに達した(図3)。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、LPS(10μg/ml)のあり又はなしで、10%FBSを含んでいるRPMI 1640中で、最終容量0.2mlで平底96穴プレート中で培養した。最後の6時間、[3H]TdR(1μCi/ウェル)を培地に添加した。チミジンの取り込みを24,48および72時間でチェックした。結果を平均±SD(標準偏差)で表現した。これらのデータは、正常なB細胞の活性化により、PCDGFのmRNAと蛋白質発現が劇的に刺激されたことを示唆した。
【0040】
実施例2 PCDGF発現の増加はB細胞の活性化に特異的であった
我々が実験で使用した細胞であるマウス脾臓リンパ球は、マウスB細胞とT細胞の混合物である。PCDGF発現の増加がB細胞の活性化に特異的であるかをチェックするために、強力なTリンパ球活性化剤であるConAを使用し、マウス脾臓リンパ球のT細胞を刺激し、PCDGF発現を測定した。RT-PCR(図4)で示されたように、PCDGFのmRNAは6から48時間、LPSで刺激されたサンプルのみで検出され、コントロールとConA刺激されたサンプルで検出されなかった。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、10%FBSを含んでいるRPMI 1640の中で、10μg/mlのLPS、2.5μg/mlのConA、またはベヒクルと共に培養した。RNAを0, 6, 12, 24および48時間において単離し、PCDGFのmRNAの発現をチェックするためにRT-PCRを行なった(上のパネル)。マウスのβ-アクチンを内部標準として使用し、各レーンに同じ量が搭載されていることを示した(下のパネル)。
【0041】
PCDGF蛋白質の発現もLPS刺激したサンプルにおいてのみ検出された(図5)。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、10%FBSを含んでいるRPMI 1640の中で、10μg/mlのLPS、2.5μg/mlのConA、またはベヒクルと共に24時間培養した。同量の生細胞(6×106の生細胞)を含んでいる培養培地を免疫沈降に使用し、続いてウエスタンブロット解析を行い、PCDGF蛋白質の発現をチェックした。
【0042】
チミジン取り込みのデータは、マウス脾臓リンパ球はLPSとConAのいずれかにより刺激されたことを示している(図6)。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、10μg/mlのLPS、2.5μg/mlのConA、またはベヒクルと共に、10%FBSを含んでいるRPMI 1640中で、最終容量0.2mlで平底96穴プレート中で培養した。最後の6時間、[3H]TdR(1μCi/ウェル)を培地に添加した。結果を平均±SD(標準偏差)で表現した。これらのデータは、PCDGFの発現増加はB細胞の活性化に特異的であることを示していた。
【0043】
実施例3 LPS刺激の間のPCDGF陽性細胞は増殖中のB細胞である
PCDGF陽性細胞はLPS刺激により増殖中のB細胞であることを証明するために、抗PCDGF抗体、抗BrdU抗体、および抗B220抗体を使用して免疫蛍光染色を行なった。BrdUはチミジンの類縁物質であり、DNA合成の間に特異的に取り込まれる。マウスリンパ球をBrdU-フルオレセイン抗体で染色すると、PCDGFに対して陽性に染色されたリンパ球はBrdUに対して陽性であり、PCDGFを発現した細胞は増殖中の細胞であることを示唆している(図7)。プロB細胞から成熟B細胞までの全ての段階において、Bリンパ球上にB220抗原は発現していた。B220はB細胞のマーカーとして一般的に使用されている。マウスリンパ球を抗B220-FITC抗体で染色すると、PCDGFについて染色が陽性であったリンパ球はB220についても陽性であり、PCDGFを発現した細胞はB細胞であることを示している(図8)。マウス脾臓リンパ球を1.2×106細胞/mlで、10%FBSを含んでいるRPMI 1640の中で、10μg/mlのLPS無し(A,B,C)または有り(D,E,F)で48時間培養した。細胞をパラフォルムアルデヒドの2%PBS溶液で固定化し、トライトンX100の0.2%PBS溶液で透水化し、B220-FITC(AおよびD)、ダピ(BとE)、または精製したウサギ抗ヒトPCDGF抗体で染色し、続いてテキサスレッドが結合したヤギ抗ウサギIgG二次抗体で染色した(CおよびF)。免疫蛍光染色を観察し、100Wの水銀ランプを装備したオリンパスBX40蛍光顕微鏡を用いて写真を撮影した。
【0044】
実施例4 PCDGFはマウス脾臓細胞の増殖を刺激する
休止中のB細胞の増殖を刺激できるのはPCDGF単独であるか、あるいは他のB細胞マイトジェンと共にであるかを検討することは重要である。我々はチミジンの取り込みを使用して、PCDGF、抗IgM、またはPCDGFと抗IgMを用いて、マウスの静止B細胞の増殖に対する影響を測定した。図9に見られるように、200ng/mlのPCDGF、10μg/mlの抗IgM、10μg/mlの抗IgMを含む200ng/mlのPCDGFは、処理の72時間後に、マウスの静止B細胞の増殖をそれぞれ2.7、3.7および4.6倍に刺激した。マウス脾臓リンパ球を5×106細胞/mlで72時間、200ng/mlのPCDGF、10μg/mlの抗IgM、または両者と共に、10%FBSを含んでいるRPMI 1640中で、最終容量0.2mlで平底96穴プレート中で培養した。最後の16時間、[3H]TdR(1μCi/ウェル)を培地に添加した。結果を平均±SD(標準偏差)で表現した。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、正常マウスB細胞におけるPCDGFのmRNAレベルは、LPSを添加して静止状態から活性化状態へ細胞を活性化することにより、劇的に増加することを示す。ノザンブロット解析に示されるように、PCDGFのmRNAはLPS(リポポリサッカライド)添加の後に6時間という早期に増加する。
【図2】図2Aと図2Bは、PCDGFの存在を検出する免疫蛍光染色によって示されるように、LPSを添加して48時間後にPCDGF蛋白質の発現も劇的に増加することを示す。図2AはLPS非存在下のPCDGF染色を示すが、一方図2Bは10μg/mlのLPSを添加して48時間後のPCDGF染色を示す
【図3】図3は、チミジンの取り込みで示されるように、細胞増殖は10μg/mlのLPSと48時間インキュベートした後に少なくとも100倍増加することを示す。
【図4】図4は、PCDGF発現の増加はLPSの添加によることを示す。逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)のアッセイは、LPSで刺激されたサンプル中でPCDGFのmRNAが検出され、コントロールまたはConAで刺激されたサンプル中では検出されなかったことを示す。
【図5】図5は、LPSで刺激されたサンプルにおいてのみPCDGF蛋白質は検出されるので、PCDGF蛋白質の発現の増加はLPSの添加によるものであることを示す。
【図6】図6は、マウス脾臓リンパ球の増殖はLPSとConAの両者により活性化されることを示す。
【図7】図7A-Dは、PCDGF陽性細胞はLPS刺激により増殖していることを示す。LPSで刺激されたマウスリンパ球は、抗PCDGFおよび抗BrdU(チミジン類似体抗体)を用いて免疫染色される。PCDGFについて陽性に染色された細胞は抗BrdUおよび抗B220についても陽性に染色され、LPSで刺激されたPCDGF陽性細胞は増殖していることを示している(すなわち、チミジンの取り込み)。マウス脾臓リンパ球をLPS無し(7AおよびB)又は10μg/mlのLPS(7CおよびD)有りでインキュベートし、B220-BrdU抗体(7AおよびC)又は抗PCDGF抗体(7BおよびD)で染色した。
【図8】図8A-Fは、PCDGF陽性細胞はBリンパ球であることを示す。マウスリンパ球をB220-FITC抗体で染色し、その抗体は一般的なB細胞マーカーであるB220抗原に対する抗体である。PCDGFについて陽性に染色された細胞はB220についても陽性であった。マウス脾臓リンパ球をLPS無し(8A-C)又は10μg/mlのLPS有り(8D-E)でインキュベートし、B220-FITC抗体(8AおよびD)、DAPI(8BおよびE)又は抗PCDGF抗体(8CおよびF)で染色した。
【図9】図9は、PCDGFはマウス脾臓細胞の増殖を刺激することを示す。200ng/mlのPCDGF、10μg/mlの抗IgM、およびPCDGFと抗IgMの組み合わせは、静止したマウスB細胞の増殖を刺激し、処理に続く72時間でそれぞれ2.7, 3.7および4,6倍となった。
【0046】
参照文献






【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCDGF反応性の非腫瘍性細胞の増殖を増加させる方法であって、該方法は前記細胞へ有効量のPCDGFを投与することからなり、前記細胞の増殖は基礎レベルの細胞増殖を超えて増加している上記方法。
【請求項2】
前記PCDGF反応性の細胞はB細胞、骨髄細胞、および形質細胞からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
有効量のB細胞マイトジェンを更に投与することからなり、B細胞の増殖は細胞増殖の基礎レベルを超えて増加している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PCDGF反応性の非腫瘍性細胞のDNA合成を刺激する方法であって、該方法は前記細胞へ有効量のPCDGFを投与することからなり、DNA合成が基礎レベルの細胞のDNA合成を超えて増加している上記方法。
【請求項5】
前記PCDGF反応性の細胞はB細胞、骨髄細胞、および形質細胞からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
有効量のB細胞マイトジェンを投与することからなり、前記細胞におけるDNA合成は細胞増殖の基礎レベルを超えて増加している、請求項4記載の方法。
【請求項7】
非腫瘍性細胞の集団中で増殖中のB細胞を同定する方法であって、前記細胞中のPCDGFレベルを測定することからなり、PCDGFを発現している細胞は増殖中のB細胞である上記方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−524484(P2006−524484A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569217(P2004−569217)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040111
【国際公開番号】WO2004/078782
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505184654)エイアンドジー ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】