説明

C1〜C4アルカンからベンゼン、トルエン(及びナフタレン)を水素の別個の場所での同時配量により製造する方法

本発明は、出発物質流を、芳香族炭化水素を含有する生成物流Pに変換する、C1〜C4脂肪族化合物を含む出発物質流を非酸化的に脱水素芳香族化する方法であって、前記変換が、触媒の存在下、反応帯域1において実施され、活性が堆積したコークスにより低減された触媒の再生が、水素を含有する混合物Hを使用して反応帯域2において実施され、少なくとも一部の堆積したコークスがメタンに変換され、少なくとも一部の得られたメタンが反応帯域1に供給される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C1〜C4脂肪族化合物を含有する出発物質流を非酸化的に脱水素芳香族化するにあたり、出発物質流を、反応帯域1中で触媒の存在下、芳香族炭化水素を含有する生成物流Pに変換し、堆積したコークスにより活性が低減された触媒を、水素含有混合物Hにより反応帯域2中で再生し、ここで堆積したコークスの少なくとも一部をメタンに変換し、かつ生じたメタンの少なくとも一部を反応帯域1に供給することによる、C1〜C4脂肪族化合物を含有する出発物質流を非酸化的に脱水素芳香族化する方法に関する。
【0002】
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、キシレン及びナフタレンのような芳香族炭化水素は、化学産業において重要な中間体であり、その需要は高まり続けている。一般に、これらはナフサの接触改質により得られ、そしてまたナフサは鉱油から得られる。最近の研究は、世界的な鉱物油埋蔵量は、天然ガス埋蔵量と比較して著しく限定されていることを示している。したがって、天然ガスから得ることができる出発物質から芳香族炭化水素を製造することは、経済的に興味深い選択肢になってきている。天然ガスの主成分は、典型的にはメタンである。
【0003】
脂肪族化合物から芳香族化合物を得る一つの可能な反応経路は、非酸化的脱水素芳香族化(DHAM)である。この反応は、非酸化的条件下、特に酸素の排除下で実施される。DHAMでは、脂肪族化合物の脱水素及び環化が実施されて、対応する芳香族化合物が与えられ、水素が遊離される。
【0004】
非酸化的条件下での脱水素芳香族化の工業的な適用における大きな問題はコークス化である、なぜなら、これは触媒の活性を比較的短い時間内で低下させ、このことは短い製造サイクル及び再生の高い必要性をまねくからである。更にコークス化は、多くの場合、短縮された触媒寿命を伴う。触媒の再生は問題がないわけでもない、なぜなら、経済的な方法のためには一方では定期的に出発活性が回復可能である必要があり、他方では、このことは多数のサイクルに関して可能である必要があるからである。
【0005】
更に、コークス堆積物は、物質収支及び収率に対して好ましくない効果を有する、なぜなら、コークスに変換された出発物質の全ての分子が、芳香族化合物を与える望ましい反応に利用可能できなくなるからである。従来技術において現在まで達成されているコークスの選択性は、大部分の場合において、変換された脂肪族化合物に基づいて20%超である。
【0006】
DHAMの工業的実施における更なる困難は、必要とされる反応への熱の導入にある。DHAMは吸熱反応であり、外部熱供給に依存している。反応が間接的に加熱される場合、大きな熱交換面積が必要となり、そのことは方法を装置的に複雑し、経済的に高価にする。更に、比較的高温のために、望ましくない副作用が熱交換面において起こり、例えばコークス化である。
【0007】
WO−A03/000826は、メタンを反応帯域において活性触媒の存在下で変換させることによるメタンを芳香族化する方法を記載し、その場合、触媒は失活される。一部の失活された触媒は、再生帯域において再生ガスにより再生され、その場合、触媒は反応帯域と再生帯域の間を循環する。使用される再生ガスは、酸素又は空気、水素及び水蒸気であることができる。再生の際に生じるガスは、これ以上使用されることはない。再生の際に生じる熱は、触媒それ自体、そうでなければ他の熱交換媒体を介して反応帯域に伝達される。
【0008】
US−A2007/0249879は、メタンを、芳香族化合物を含む高級炭化水素に変換する方法に関する。使用される反応器は、直列に連結された少なくとも2つの反応帯域から構成される。粒状形態で存在する触媒は、第1から第2反応帯域へ送られ、メタン含有流は第2から第1反応帯域へ逆の方向に送られる。メタンから生成物への変換は、全ての反応帯域において実施される。一部の触媒を再生のために取り出し、再生した後に戻すことができる。再生は、酸素ガスによって実施される。適切であれば、触媒を続いて水素ガスで活性化する。反応系に熱を共有するために、触媒の一部を取り出し、別個の加熱帯域において、追加の燃料源から生じる燃焼ガスにより加熱することができる。次に加熱された触媒を反応帯域に戻す。
【0009】
US−A2007/0249880は、メタンを触媒の存在下で芳香族炭化水素に変換する方法を開示し、反応帯域は逆温度プロフィールで稼働している。ここでも、触媒を、取り出した及び/又は燃焼ガスにより反応温度より高い温度に加熱した後で再生し、次にそれぞれを反応帯域に戻すことができる。
【0010】
WO−A2006/011568は、芳香族炭化水素及び水素の製造方法を記載する。この目的のために、メタン及び2〜10%の水素を含むガス流を、脱水素芳香族化のために触媒に通過させる。メタンの供給は、一時的に中断される。提示された実施例によると、反応(メタン/水素混合物の供給)の5時間後、メタン供給を2時間停止して、触媒を水素雰囲気下で再生する。
【0011】
技術水準において既知の方法を越えて、使用されるC1〜C4脂肪族化合物に関して高い収率の芳香族炭化水素を有し、比較的少ない外部エネルギー供給で済み、かつ比較的小さい熱交換面を必要とする、C1〜C4脂肪族化合物から芳香族化合物を製造する更に改善された方法が必要であった。
【0012】
この課題は、本発明によると、C1〜C4脂肪族化合物を含有する出発物質流Eを非酸化的に脱水素芳香族化する方法により解決され、前記方法は、
I.出発物質流Eを、反応帯域1中で触媒の存在下で非酸化条件下、芳香族炭化水素を含有する生成物流Pに変換する工程、
II.堆積したコークスにより活性が低減された工程Iの触媒を、水素含有ガス流Hにより反応帯域2中で再生し、その場合、堆積したコークスの少なくとも一部をメタンに変換し、かつメタン含有ガス流Mが生じる工程
を含み、前記方法は、
反応帯域2中での再生の際に生じたメタンの少なくとも一部を反応帯域1に供給することにより特徴付けられる。
【0013】
失活された触媒の水素による再生の際に、コークス堆積物から発熱反応でメタンが生じる。本発明によると、このメタンを反応帯域1に供給し、したがって出発物質として再び利用可能である。このことは、使用されるC1〜C4脂肪族化合物の量に基づいた芳香族化合物の全収率を増加する。本発明の一つの実施態様において、再生の際に生じるガス流Mを、水素を除去することなく反応帯域1に戻し、2つの非常に低沸点の化合物である水素とメタンの複雑で費用のかかる分離の必要がない。更に、出発物質流への水素の添加は、触媒のコークス化傾向に対する肯定的な影響を有する。本発明の更なる実施態様において、ガス流M中に含まれる水素の少なくとも一部を、戻す前に、反応帯域1に戻す。この実施態様は、反応帯域1中の水素含有量を、ガス流Mの組成が依存している反応帯域2中の条件と無関係に確立できるという利点を有する。
【0014】
本発明の更なる実施態様において、触媒の再生の際に発生した熱を反応帯域1へ、触媒及びメタン若しくはガス流Mを戻すことにより直接移動する。その結果、芳香族化に必要な反応熱の一部は、系それ自体によって生じ、このことは系全体の外部エネルギー必要量の低減という結果をもたらす。
【0015】
本発明によると、「非酸化的」は、DHAMにおいて、出発物質流E中の酸素又は窒素酸化物のような酸化剤の濃度が5質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。より好ましくは、混合物は酸素を含まない。同様に、特に好ましいものは、C1〜C4脂肪族化合物が由来する供給源中の酸化剤の濃度と等しいか又はそれより少ない、混合物E中の酸化剤の濃度である。
【0016】
再生に関して、本発明の範囲内での「非酸化的」は、触媒上のDHAM由来のコークス堆積物が、触媒を再生するために、空気又は酸素のような酸化剤によりCO及び/又はCO2に変換されないことを意味する。特に、工程IIにおける再生に使用される混合物H中の酸化剤の濃度は、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。
【0017】
工程IIにおける再生に使用される水素含有ガス流H中のメタンの濃度は、最大で70質量%、好ましくは最大で50質量%、より好ましくは最大で30質量%、より好ましくは最大で15質量%である。
【0018】
本発明によると、出発物質流Eは、1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族化合物を含有する。これらの脂肪族化合物には、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、エテン、プロペン、1−及び2−ブテン、イソブテンが含まれる。本発明の一つの実施態様において、出発物質流Eは、少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、とりわけ好ましくは少なくとも80mol%、特に少なくとも90mol%のC1〜C4脂肪族化合物を含有する。
【0019】
脂肪族化合物のうち、特に好ましくは飽和アルカンが使用され、この場合、出発物質流Eは、好ましくは少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、とりわけ好ましくは少なくとも80mol%、特に少なくとも90mol%の、1〜4個の炭素原子を有するアルカンを含有する。
【0020】
アルカンのうち、メタン及びエタンが好ましく、特にメタンである。本発明のこの実施態様において、出発物質流Eは、好ましくは少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、とりわけ好ましくは少なくとも80mol%、特に少なくとも90mol%のメタンを含有する。
【0021】
1〜C4脂肪族化合物のために使用される供給源は、好ましくは天然ガスである。天然ガスの典型的な組成は以下である:75〜99mol%のメタン、0.01〜15mol%のエタン、0.01〜10mol%のプロパン、6mol%までのブタン、30mol%までの二酸化炭素、30mol%までの硫化水素、15mol%までの窒素及び5mol%までのヘリウム。本発明の方法に使用する前に、天然ガスを当業者に既知の方法により精製及び富化することができる。精製には、例えば、場合により天然ガス中に存在する硫化水素又は二酸化炭素の除去及び後に続く方法に望ましくない更なる化合物の除去が含まれる。
【0022】
出発物質流E中に含まれるC1〜C4脂肪族化合物は、他の供給源に由来することもでき、例えば、原油精製の際に生じることができる。C1〜C4脂肪族化合物は、再生可能な手段(例えば、バイオガス)又は合成的な手段(例えば、フィッシャー−トロプシュ合成)によっても製造することができる。
【0023】
使用されるC1〜C4脂肪族化合物供給源がバイオガスである場合、出発物質流Eは、追加的にアンモニア、微量の低級アルコール及びバイオガスに典型的な更なる添加剤を含有することもできる。
【0024】
本発明の方法の更なる実施態様において、使用される出発物質流EはLPG(液化石油ガス)であることができる。本発明の方法の更なる実施態様において、使用される出発物質流EはLNG(液化天然ガス)であることができる。
【0025】
追加的に、水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素及び1つ以上の希ガスを出発物質流Eに加えることが可能である。好ましくは、出発物質流Eは、水素、好ましくは0.1〜10容量%の水素、より好ましくは0.1〜5容量%の水素を含有する。本発明の特に好ましい実施態様において、メタンと再生の際に消費されなかった水素とを含有し、再生の際に生じたガス流Mを、出発物質流に加える。
【0026】
本発明の方法の工程Iにおいて、出発物質流Eの変換は、反応帯域1中で触媒の存在下で非酸化的条件下に実施され、芳香族炭化水素を含有する生成物流Pとなる。この変換は脱水素芳香族化であり、すなわち、出発物質流E中に含まれるC1〜C4脂肪族化合物が脱水素及び環化により反応して、対応する芳香族化合物を与え、その場合、水素を遊離する。本発明によると、DHAMは、適切な触媒の存在下で実施される。一般に、DHAMを触媒する全ての触媒を本発明の方法の工程Iにおいて使用することができる。典型的には、DHAM触媒は、多孔質担体及びその上に適用された少なくとも1つの金属を含有する。担体は、典型的には、結晶質又は非晶質の無機化合物を含有する。
【0027】
本発明によると、触媒は、好ましくは少なくとも1つのメタロケイ酸塩を担体として含有する。好ましくは、アルミノケイ酸塩を担体として使用する。とりわけ好ましくは、本発明においてゼオライトを担体として使用する。ゼオライトは、それらの製造の際に、典型的にはナトリウム型で生じるアルミノケイ酸塩である。Na型では、四価ケイ素原子が三価アルミニウム原子に交換されることによって、結晶格子中に存在する過剰の陰電荷がナトリウムイオンにより補償される。ナトリウム単独の代わりに、ゼオライトは、電荷補償のために更にアルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンを含有することもできる。好ましくは、本発明によると、触媒中に含まれる少なくとも1つのゼオライトは、ペンタシル及びMWW構造型から選択される、より好ましくはMFI、MEL、混合MFI/MEL及びMWW構造型から選択される構造を有する。とりわけ好ましくは、ZSM−5又はMCM−22型のゼオライトの使用である。ゼオライトの構造型の命名はW.M.Meier, D.H.Olson and Ch. Baerlocher, "Atlas of Zeolite Structure Types", Elsevier, 3rd edition, Amsterdam 2001の記載に対応している。ゼオライトの合成は、当業者に知られており、例えば、水熱条件下でアルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及び非晶質SiO2から出発して実施することができる。この合成において、ゼオライト中に形成されるチャネル系の種類は、有機テンプレート分子により、温度及び更なる実験パラメーターにより制御することができる。
【0028】
Alに加えて、ゼオライトは、Ga、B、Fe又はInのような更なる元素を含有することができる。
【0029】
好ましくは、担体として好ましくは使用されるH型のゼオライトが使用され、このゼオライトも市販されている。
【0030】
Na型からH型に変換される場合、ゼオライト中に含有するアルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンは、プロトンに交換される。触媒をH型に変換する慣用の、かつ本発明において好ましい方法は、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンが最初にアンモニウムイオンに交換される2段階方法である。ゼオライトが約400〜500℃に加熱される場合、アンモニウムイオンは分解して、揮発性アンモニア及びゼオライト中に残るプロトンとなる。
【0031】
この目的のために、ゼオライトをNH4含有混合物で処理する。NH4含有混合物に使用されるNH4含有成分は、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウムの群から選択されるアンモニウム塩である。好ましくは、硝酸アンモニウムをNH4含有成分として使用する。
【0032】
ゼオライトを、ゼオライトのアンモニウム交換に適した既知の方法によりNH4含有混合物で処理する。これらには、例えば、ゼオライトをアンモニウム塩溶液により含浸、浸漬又は噴霧することが含まれ、その場合に溶液は一般に過剰量で用いられる。使用される溶媒は、好ましくは水及びアルコールである。混合物は、使用されるNH4成分を典型的には1〜20質量%含有する。NH4含有混合物による処理は、典型的には、数時間かけて高められた温度で実施される。ゼオライトに対するNH4含有混合物による作用の後、過剰量の混合物を除去することができ、ゼオライトを洗浄することができる。続いて、ゼオライトを40〜150℃で数時間、典型的には4〜20時間乾燥する。この後に、300〜700℃、好ましくは350〜650℃、より好ましくは500〜600℃の温度でのゼオライトの焼成が続く。焼成の時間は、典型的には2〜24時間、好ましくは3〜10時間、より好ましくは4〜6時間である。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、使用される担体は、NH4含有混合物で改めて処理し、引き続き乾燥したゼオライトである。NH4含有混合物によるゼオライトの改めての処理は、上記記載に従って実施される。
【0034】
市販のH型のゼオライトは、典型的には、NH4含有混合物での処理による最初のアンモニウム交換、続く乾燥及び焼成を既に経ている。したがって、本発明において、H型で存在する市販のゼオライトを担体a)として使用することが可能であるが、好ましくは、これらをNH4含有混合物による改めての処理に付し、適切であれば焼成する。
【0035】
典型的には、DHAM触媒は少なくとも1つの金属を含有する。典型的には、金属は、元素周期表(IUPAC)の3〜12族から選択される。好ましくは、本発明において、DHAM触媒は、6〜11の主族の遷移金属から選択される少なくとも1つの元素を含有する。DHAM触媒は、より好ましくは、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Auを含有する。特に、DHAM触媒は、Mo、W、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cuの群から選択される少なくとも1つの元素を含有する。より好ましくは、DHAM触媒は、Mo、W及びReの群から選択される少なくとも1つの元素を含有する。
【0036】
同様に好ましくは、本発明において、DHAM触媒は、活性成分として少なくとも1つの金属及びドーパントとして少なくとも1つの更なる金属を含有する。本発明によると、活性成分は、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Ptから選択される。本発明によると、ドーパントは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、V、Zn、Zr及びGaの群、好ましくはFe、Co、Ni、Cuの群から選択される。本発明によると、DHAM触媒は、活性成分として2つ以上の金属及びドーパントとして2つ以上の金属を含有することができる。これらは、それぞれ、活性成分及びドーパントにおいて特定された金属から選択される。
【0037】
本発明によると、少なくとも1つの金属が、湿式化学的又は乾式化学的に担体に適用される。
【0038】
湿式化学的には、金属はそれらの塩又は錯体の水溶液、有機溶液又は有機−水溶液の形で、対応する溶液で担体を含浸することにより、適用される。使用される溶媒は、超臨界CO2であることもできる。含浸は、担体の細孔容積にほぼ同じ容積の含浸溶液を充填し、適切であれば熟成した後、担体を乾燥することによる、初期湿潤法(incipient-wetness-Methode)により実施することができる。過剰量の溶液で実施することも可能であり、その場合、この溶液の容積は、担体の細孔容積よりも大きい。この場合、担体を含浸溶液と混合し、十分に長い時間撹拌する。加えて、対応する金属化合物の溶液を担体に噴霧することが可能である。担体上への金属化合物の沈殿、金属化合物を含有する溶液の噴霧適用、ゾル含浸などのような、当業者に既知である他の製造方法も可能である。少なくとも1つの金属を担体上に適用した後、触媒を、真空下又は空気中、約80℃〜130℃で典型的には4〜20時間乾燥する。
【0039】
本発明によると、少なくとも1つの金属を乾式化学方法により、例えばMo(CO)6、W(CO)6及びRe2(CO)10のような高温でガス状の金属カルボニルをガス相から担体に析出させることより適用することもできる。金属カルボニル化合物の析出は、担体を焼成した後に実施される。
【0040】
本発明によると、触媒は、少なくとも1つの金属を、それぞれの場合に触媒の総質量に基づいて0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%含有する。触媒は、1つの金属のみを含有することができ、2、3つ又はそれ以上の金属の混合物を含有することができる。これらの元素を湿式化学的に、一緒に1つの溶液で適用するか又は異なる溶液で連続して適用することができ、その場合に個別の適用の間に乾燥工程を適用することができる。これらの元素を、混合形態により、すなわち一部は湿式化学的に、他の部分は乾式化学的に適用することもできる。金属化合物の適用の間、必要であれば焼成を上記記載に従って実施することができる。
【0041】
本発明によると、触媒は、活性成分の群からの少なくとも1つの金属をドーパントの群から選択される少なくとも1つの金属と共に含有することができる。この場合、活性成分の濃度は、それぞれの場合に触媒の総質量に基づいて、0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0042】
この場合、ドーパントは、本発明によると、触媒の総質量に基づいて少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.2質量%、最も好ましくは少なくとも0.5質量%の濃度で触媒中に存在する。
【0043】
本発明の更なる好ましい実施態様において、触媒は結合剤と混合される。適切な結合剤は、酸化アルミニウム含有及び/又はSi含有結合剤のような、当業者に既知の慣用の結合剤である。特に好ましくは、Si含有結合剤であり、とりわけ適切には、テトラアルコキシシラン、ポリシロキサン及びコロイドSiO2ゾルである。
【0044】
本発明によると、結合剤の添加の後に成形工程が続き、ここで触媒材料は当業者に既知の方法により加工されて成形体となる。成形方法の例には、担体a)及び/又は触媒材料を含有する懸濁液の噴霧、噴霧乾燥、錠剤化、湿潤状態若しくは乾燥状態での圧縮、並びに押出しが挙げられる。これらの方法の2つ以上を組み合わせることもできる。成形では、孔形成剤及びペースト剤のような補助剤、あるいは当業者に既知の他の添加剤を使用することが可能である。可能なペースト剤は、混合性、混練性及び流動性に改善をもたらす化合物である。本発明の範囲内で、好ましくは、有機の、特に親水性のポリマーであり、例えば、セルロース、メチルセルロースのようなセルロース誘導体、ジャガイモデンプンのようなデンプン、壁紙用糊、アクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリグリコールエーテル、脂肪酸化合物、ロウエマルション、水又はこれらの化合物の2つ以上の混合物である。本発明の範囲内での孔形成剤の例には、水又は水性溶媒混合物に分散性、懸濁性又は乳化性である化合物が挙げられ、そのような化合物には、ポリアルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、炭水化物、セルロース、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、天然糖繊維、パルプ、グラファイト又はこれらの化合物の2つ以上の混合物が含まれる。孔形成剤及び/又はペースト剤は、成形後に、好ましくは少なくとも1つの適切な乾燥工程及び/又は焼成工程により、得られた成形体から除去される。この目的に必要な条件は、焼成について上記に記載したパラメーターと同様に選択することができ、当業者に既知である。
【0045】
特に流動層触媒として使用される場合、触媒成形体は噴霧乾燥により製造される。
【0046】
本発明により得られる触媒のジオメトリーは、例えば、球状(中空又は中実)、円柱状(中空又は中実)、環状、鞍状、星状、蜂巣状又は錠剤状であることができる。加えて、例えば、ストランド形、三葉形、四葉形、星形又は中空円柱形の押出物も有用である。加えて、成形されうる触媒材料を押し出し、焼成することができ、そのようにして得られた押出物を粉砕し、破片又は粉末に加工することができる。破片を異なるスクリーン画分に分離することができる。
【0047】
本発明の好ましい実施態様において、触媒を成形体又は破片として使用する。
【0048】
更に好ましい実施態様において、触媒を粉末として使用する。触媒粉末は、結合剤を含有することができるか、そうでなければ結合剤無含有であることができる。
【0049】
本発明の触媒が結合剤を含有する場合、結合剤は、触媒の総質量に基づいて5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%の濃度で存在する。
【0050】
1〜C4脂肪族化合物の脱水素芳香族化に使用される触媒を、実際の反応の前に活性化することが有利でありうる。
【0051】
活性化は、C1〜C4アルカン、例えばエタン、プロパン、ブタン又はこれらの混合物、好ましくはブタンにより実施することができる。活性化は、250〜850℃、好ましくは350〜650℃の温度及び0.5〜5bar、好ましくは0.5〜2barの圧力で実施される。典型的には、活性化の際のGHSV(気体時空間速度)は、100〜4000h-1、好ましくは500〜2000h-1である。
【0052】
しかし、出発物質流EがC1〜C4アルカン若しくはその混合物を既にそれ自体として含有するか又はC1〜C4アルカン若しくはその混合物を出発物質流Eに添加することによって、活性化を実施することも可能である。活性化は、250〜650℃、好ましくは350〜550℃の温度及び0.5〜5bar、好ましくは0.5〜2barの圧力で実施される。
【0053】
更なる実施態様において、C1〜C4アルカンに加え、更に水素を加えることも可能である。
【0054】
本発明の好ましい実施態様において、触媒を、N2、He、Ne及びArのような不活性ガスを追加的に含有することができるH2含有ガス流により活性化する。
【0055】
本発明によると、C1〜C4脂肪族化合物の脱水素芳香族化は、触媒の存在下、400〜1000℃、好ましくは500〜900℃、より好ましくは600〜800℃、特に700〜800℃の温度、0.5〜100bar、好ましくは1〜30bar、より好ましくは1〜10bar、特に1〜5barの圧力で実施される。本発明によると、反応は、100〜10,000h-1、好ましくは200〜3000h-1のGHSV(気体時空間速度)で実施される。
【0056】
工程IによるC1〜C4脂肪族化合物の脱水素芳香族化及び工程IIによるコークス堆積物で失活された触媒の水素による再生も、原則的に、当該技術において既知の種類の全ての反応器中で実施することができる。適切な反応器の形は、固定層反応器、半径流反応器、管型反応器又は管束反応器である。これらの反応器の場合に、触媒は、固定層として1本の反応管中又は反応管の束中に存在する。同様に、触媒を流動層(Wirbelschicht)、移動層又は濃厚流動層(Fliessbett)としてこの目的に適した対応する種類の反応器中で使用することもでき、本発明の方法は、そのようにして存在する触媒により実施することができる。
【0057】
本発明によると、触媒を未希釈で又は不活性材料と混合して使用することができる。使用される不活性材料は、反応帯域中で支配的な反応条件下で不活性に挙動する、すなわち反応しない任意の材料であることができる。適切な不活性材料は、特に、触媒に使用される非ドープ担体であるが、また、不活性ゼオライト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などである。不活性材料の粒径は、触媒粒子の大きさの範囲内である。本発明によると、不活性材料は、主に、熱エネルギーを反応帯域2から、又は適切であれば外に出しかつ加熱した後、反応帯域1に導入する、安価な熱伝達物質として機能する。
【0058】
好ましくは本発明によると、触媒は、未希釈で又は不活性材料と混合されて、反応帯域1、反応帯域2又は両方の反応帯域中で固定層、移動層又は流動層として存在する。より好ましくは、触媒又は触媒と不活性材料の混合物は、反応帯域1、反応帯域2又は両方の反応帯域中で流動層として存在する。
【0059】
本発明によると、C1〜C4脂肪族化合物は、H2を遊離しながら芳香族化合物に変換される。したがって生成物流Pは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、キシレン及びナフタレンの群から選択される少なくとも1つの芳香族炭化水素を含有する。より好ましくは、生成物流Pは、ベンゼン及びトルエンを含有する。加えて、生成物流は、未変換C1〜C4脂肪族化合物、生じた水素及び出発物質流E中に含まれるN2、He、Ne、Arのような不活性ガス、出発物質流Eに添加されたH2のような物質並びにE中に既に存在している不純物を含有する。
【0060】
反応帯域2中での工程IIによる再生は、600℃〜1000℃、より好ましくは700℃〜900℃の温度及び1bar〜30bar、好ましくは1bar〜15bar、より好ましくは1〜10barの圧力で実施される。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、反応帯域2中への入口での温度は、反応帯域1中への入口での温度よりも高い。好ましくは、反応帯域2の入口温度は、反応帯域1の入口温度よりも、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも100℃高い。
【0062】
本発明によると、工程IにおけるDHAMに使用される触媒は、工程IIにおけるガス流H中に含まれる水素により定期的に再生される。その場合、堆積したコークスの少なくとも一部はメタンに変換される。メタン含有ガス流Mが生じ、これは、生じたメタンと同様に、未変換炭化水素及び混合物H中に既に含まれる物質を含む。本発明によると、再生の際に生じたメタンの少なくとも一部が、反応帯域1に供給される。ガス流Mから除去された後、メタンを反応帯域1に供給することができる。好ましくは、反応帯域2において生じたメタンの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、特に反応帯域2において生じたメタンの少なくとも90%が反応帯域1に供給される。とりわけ好ましいことは、再生の際に生じた全てのメタンの反応帯域1への供給である。
【0063】
本発明の好ましい実施態様において、再生の際に生じたメタン含有ガス流Mの少なくとも一部が、反応帯域1に供給される。ガス流Mを、1つ以上の構成成分を前もって除去することなく、反応帯域1に供給することができるが、ガス流Mを戻す前に、1つ以上の構成成分を除去することも可能である。このことは、反応帯域1の入口でのCH4/H2比を、制御可能な方法で調整することを可能にする。ガス流Mの少なくとも一部を戻す前に、好ましくは、その中に含まれる未変換水素の少なくとも一部を除去する。
【0064】
工程IIにおいて生じたメタン又はメタン含有ガス流Mを、反応帯域1に直接供給することができるか又はメタン若しくはガス流Mの添加により出発物質流Eに供給することができる。
【0065】
反応帯域1及び反応帯域2は、1つの反応器において空間的に離れて存在するか又は異なる反応器により空間的に離れて存在する2つの反応帯域である。反応帯域1及び反応帯域2は、そこで進行する反応より定義される。出発物質流E中に含まれるC1〜C4脂肪族化合物から芳香族炭化水素への変換は、反応帯域1中で進行し、失活された触媒上に堆積したコークスから、ガス流M中に含まれる水素を用いたメタンへの変換は、反応帯域2中で進行する。
【0066】
反応帯域1及び反応帯域2は、ガス流を変えることにより互いに変えることができる。本発明の好ましい実施態様において、反応帯域1は、出発物質流Eを低減し、かつガス流Hを供給することによって、反応帯域2に変わる。出発物質流Eを低減するとは、出発物質流Eが、反応帯域に供給されるガスの最大10容量%、好ましくは最大5容量%、より好ましくは最大1容量%になることを意味する。特に好ましくは、出発物質流Eの供給の完全な終止である。
【0067】
本発明の好ましい実施態様において、反応帯域2は、ガス流Hを低減し、かつ出発物質流Eを供給することによって、反応帯域1に変わる。ガス流Hを低減するとは、ガス流Hが、反応帯域2に供給されるガスの、供給されるガスの総容量に基づいて最大10容量%、好ましくは最大5容量%、より好ましくは最大1容量%を形成することを意味する。より好ましくは、ガス流Hの供給を完全に終止する。
【0068】
更なる実施態様において、出発物質流Eは水素を含有せず、この場合、ガス流Hの供給を、反応帯域2を反応帯域1に変える際に、コークス化に肯定的な作用を有する水素の含有量が反応帯域1中で確立される程度にのみ絞ることもできる。
【0069】
より好ましくは、反応帯域1から反応帯域2に及び反応帯域2から反応帯域1には、互いに連結して交互に変わるので、一方の反応帯域が、DHAMが実施される反応帯域1として及び堆積したコークスの少なくとも一部が水素を用いてメタンに変換される反応帯域2として、時間間隔を置いて交互に存在する。他方の反応帯域は、そのためにそれぞれ反応帯域2とは及び反応帯域1とは時間的にずれて存在する。本発明によると、この1つの反応帯域は、反応帯域1(脱水素芳香族化)として1〜50時間存在し、かつ反応帯域2(再生)として1〜50時間存在する。
【0070】
本発明によると、1つより多い反応帯域1及び1つより多い反応帯域2が存在することができ、それぞれ単に、少なくとも1つの反応帯域1及び少なくとも1つの反応帯域2の存在が必要である。反応帯域1から反応帯域2に変わる段階にある反応帯域が存在することも可能であり、加えて、触媒が他の方法により、例えば酸素又は水蒸気により再生される反応帯域が存在することが可能であり、この場合、おそらく再カーバイド化工程が必要となる。本発明によると、好ましくは、反応帯域1及び反応帯域2のみが存在する。
【0071】
コークス堆積物により失活された工程Iの触媒を再生するために、本発明において、この触媒は反応帯域2において水素により定期的に再生される。本発明の一つの実施態様において、この目的のため、触媒を反応帯域1から反応帯域2に移動し、そこで水素含有ガス流Hを用いて再生する。次に再生された触媒を反応帯域1に再び戻す。本発明の更なる実施態様において、反応帯域1は、上記に記載されたように、出発物質流Eの供給を低減し、かつガス流Hを供給することにより反応帯域2に変わり、失活された触媒は再生され、次に反応帯域2は、上記に記載されたように、再び反応帯域1に変わる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の特に好ましい実施態様の概略図。
【0073】
本発明の特に好ましい実施態様において、反応帯域1及び反応帯域2は、1つの反応器中で空間的に離れて存在している。反応器は、触媒又は触媒と不活性材料の混合物を粒子の形態で含有し、そして静止流動層(stationaeres Wirbelschicht)として稼働し、これは、触媒及び適切であれば不活性材料を保持するのに適した装置を備えた気泡形成流動層又は乱流流動層である。触媒粒子又は触媒と不活性材料の混合物は、反応器の異なる空間帯域を定期的に通過するために十分に流動化される。出発物質流Eはガス流Hの上方から供給される。この実施態様は、図1に概略的に示されている。ガス流Hの供給の領域内に反応帯域2があり、そこで、本発明によると、本発明の方法の工程IIによるコークス堆積物からメタンへの変換が起こる。その場合に生じるガス流Mは反応帯域1に向かって上昇し、そこで、出発物質流E中に含まれるC1〜C4脂肪族化合物は、芳香族化合物に変換される。流動化された触媒粒子又は触媒と不活性材料の混合物は、反応帯域2から反応帯域1へ及びその逆に移動し、すなわち、反応帯域1と反応帯域2の間を往復する。
【0074】
本発明の好ましい実施態様において、反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部は、工程IにおけるDHAMに必要なエネルギーを少なくとも部分的に補填することに寄与するため、反応帯域1に供給される。熱を直接的又は間接的に供給することができる。好ましくは、熱を直接的に供給する。この目的のため、反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部は、好ましくは、再生された触媒の少なくとも一部を移動することにより、反応帯域2から反応帯域1に直接供給される。再生触媒は熱担体として機能する。更に好ましい実施態様において、反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部は、反応帯域2からのガス流Mを介して直接反応帯域1に供給される。
【0075】
より好ましくは、反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部は、再生された触媒の少なくとも一部及びガス流Mの少なくとも一部を移動することにより、反応帯域2から反応帯域1に直接供給される。
【0076】
両方の反応帯域が、非排出流動層(nicht austragendes Wirbelschicht)として稼働する1つの反応器に存在する、上記記載の、かつ図1に概略的に示されている本発明の好ましい実施態様において、工程IIでの反応帯域2中での再生の際に生じる熱は、ガス流Mを介し、往復する流動化された触媒粒子を介して、反応帯域1に供給される。
【0077】
反応帯域1から反応帯域2に及びその逆に変わる際に、触媒は、好ましくは、固定層として又は静止流動層として存在する。反応帯域1として稼働する部分は、吸熱DHAMによって冷却される。反応帯域2に変わった後、この反応帯域は、コークス堆積物からメタンへの発熱変換の結果、熱くなる。この反応帯域が再び反応帯域1に変わる場合、コークス堆積物からメタンへの変換の際に生じた熱の少なくとも一部を、加熱された触媒により反応帯域1に移動する。
【0078】
本発明の更に好ましい実施態様において、本発明の方法の工程Iの反応帯域1に必要なエネルギーの一部は、触媒及び適切であれば不活性材料を間接的に加熱することにより、例えば反応帯域1中の熱交換器束により適用することができる。
【0079】
本発明の更に好ましい実施態様において、本発明の方法の工程Iにおける反応帯域1中で必要なエネルギーの一部は、
i)反応帯域1又は2中に存在する触媒の少なくとも一部及び適切であれば不活性材料を反応帯域1又は2から排出し、
ii)排出された触媒及び適切であれば不活性材料を反応帯域1中の温度よりも高い温度に加熱し、かつ
iii)加熱された触媒及び適切であれば不活性材料を反応帯域1に戻す
ことにより供給される。
【0080】
排出された触媒は、反応帯域1中の温度より少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも150℃高い温度に加熱される。放出された触媒を、直接又は間接的に加熱することができる。好ましくは、排出された触媒を、例えば触媒に燃焼ガスを通過させることにより、直接加熱する。あるいは、燃焼ガスを使用して不活性ガスを加熱し、次に不活性ガスは、直接接触することによって触媒を加熱する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜C4脂肪族化合物を含有する出発物質流Eを非酸化的に脱水素芳香族化する方法であって、
I.出発物質流Eを、反応帯域1中で触媒の存在下で非酸化条件下に、芳香族炭化水素を含有する生成物流Pに変換する工程、
II.堆積したコークスにより活性が低減された工程Iの触媒を、水素含有ガス流Hにより反応帯域2中で再生し、その場合、堆積したコークスの少なくとも一部をメタンに変換し、かつメタン含有ガス流Mを生じる工程
を含み、
反応帯域2の再生の際に生じたメタンの少なくとも一部を反応帯域1に供給することを特徴とする、C1〜C4脂肪族化合物を含有する出発物質流Eを非酸化的に脱水素芳香族化する方法。
【請求項2】
再生の際に生じたガス流Mの少なくとも一部を、反応帯域1に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部を、反応帯域1に供給する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される触媒が不活性材料と混合される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部を、反応帯域2から再生された触媒の少なくとも一部を移動することにより直接反応帯域1に供給する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応帯域2中での工程IIにおける触媒の再生の際に生じる熱の少なくとも一部を、反応帯域2からのガス流Mを介して直接反応帯域1に供給する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程Iにおいて必要な熱の少なくとも一部が、
i)反応帯域1又は2中に存在する触媒の少なくとも一部を、反応帯域1又は2から排出し、
ii)排出された触媒を反応帯域1中の温度よりも高い温度に加熱し、かつ
iii)加熱された触媒を反応帯域1へ戻す
ことにより供給される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応帯域2中への入口での温度が、反応帯域1中への入口での温度よりも高い、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応帯域1及び反応帯域2が、1つの反応器中で空間的に離れて存在する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応帯域1及び反応帯域2が、異なる反応器中で空間的に離れて存在する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応帯域1が、出発物質流Eを低減し、かつガス流Hを供給することにより、時間間隔を置いて反応帯域2に変わる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
反応帯域2が、ガス流Hを低減し、かつ出発物質流Eを供給することにより、時間間隔を置いて反応帯域1に変わる、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
触媒が、反応帯域1、反応帯域2又は両方の反応帯域中で流動層として存在する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
出発物質流Eが、少なくとも50mol%のC1〜C4脂肪族化合物を含有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
出発物質流Eが、0.1〜10容量%の水素を含有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ガス流Hが、少なくとも50容量%の水素を含有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
触媒が、少なくとも1つのアルミノケイ酸塩と、Mo、W、Mn及びReの群から選択される少なくとも1つの金属とを含有する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
触媒が、Cr、Mn、V、Zn、Zr、Ga、Cu、Ni、Co及びFeの群から選択される少なくとも1つの更なる金属を含有する、請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−528652(P2011−528652A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509971(P2011−509971)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056104
【国際公開番号】WO2009/141366
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】