説明

CAD/CAMブランク用のホルダー

【課題】歯科用製品を製造するためのミルブランクをCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジング内に固定するための改良されたホルダー(10)を得る。
【解決手段】ホルダーをミルブランクに接合するための接合面(14)と前記接合面(14)に接続される固定シャフト(16)を備え、前記固定シャフト(16)が前記ハウジングに固定するための少なくとも1面の固定面(26,28;13)を有する。前記固定シャフト(16)は断面で見て少なくとも2面の側面(18,20,22,24)を伴った実質的に多角形の形状を有する。前記側面のうちの少なくとも2面が互いに隣接して配置されるとともに相互に直角に延在する。前記固定面(26)は断面で見て実質的にその固定面の中点を介して延在する固定シャフト(16)の半径に対して実質的に垂直に延在するとともに一側面(18;20;22;24)の幅よりも小さな幅を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1に記載の歯科用製品を製造するためのミルブランクを固定するためのホルダーに関する。本発明の実施形態はCAD/CAMシステム内における使用のためのCAD/CAMブランクのホルダー、特に歯科用CAD/CAMシステム内で使用されるホルダーを対象とする。
【背景技術】
【0002】
以下の議論では、一定の構造および/または方法について言及する。しかしながら、以下の言及から、これら構造および/または方法が従来技術を構成することを認めていると解釈するべきではない。出願人は、これら構造および/または方法が従来技術とみなさないことを示す権利を明示的に留保する。
【0003】
今日歯科においては、歯科医院(チェア側)および歯科研究所(研究室側)の両方で、治療計画、バーチャル治療、歯列矯正術、歯科修復物の設計および製造に関して自動化技術を使用する傾向が徐々に増加している。この傾向は、時に「デジタル革命」と呼ばれ、研究室側におけるCAD/CAM技術の急増に最もはっきりと表れている。歯科研究所に利用可能な数多くのCAD/CAMシステムは、最近10年間において10倍近く増加している。現在のところ、25以上の歯科用CAD/CAMシステムと、多様な形状および寸法のミルブランクを使用する相当数のコピーミリングシステムが存在する。ブランク形状は、長方形、円筒形または六角形などの単純な形状から、欧州特許出願公開第1654104号A2明細書に記載されるスマートブランク(smart blanks)などのより複雑な形状へと変化する。なお、欧州特許出願公開第1654104号A2明細書は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。ブランクの寸法は、約1.25cmから約10cmの長さまたは直径の範囲である。ミルブランクには、全部で4種類の材料、すなわち、金属、ポリマー(樹脂、プラスチック)、セラミックスおよび複合材料がある。セラミックミルブランクは、長石(白榴石、サニディンまたは長石)のブランク、ガラスセラミック(ケイ酸リチウム、雲母など)のブランク、および(軟焼結された、または十分に緻密な)アルミナおよび/またはジルコニアなどを基にした結晶性セラミックスのブランクという3つの大きなカテゴリに分類することができる。全ての3つのセラミックカテゴリと複合ブランクには、多様な色調が既にあり、または間もなく利用可能となる。所与の種類のブランクそれぞれに必要な色調の一覧表を蓄積することにより、CAD/CAMシステムを稼働する設備に対して経済的圧力が加わる。
【0004】
CAD/CAM技術によって、歯科研究室に品質向上、再現性、および人為的ミスを除去する機会がもたらされるが、一方でほとんどのCAD/CAMシステムが軟焼結ジルコニアのミリング加工用であり、このため、過飽和の急速な市場において競争力のある材料を選択するという点に関して不十分である。CAD/CAMシステムの価格は、製造業者および構造により左右されるが、40,000ユーロから400,000ユーロかかるので、最大規模の研究室および外注センターのみが複数のシステムを稼働させて材料の選択を拡張させることが可能であるにすぎない。ほとんどのCAD/CAMシステム製造業者は、自身のブロックを製造せず、むしろ歯科用材料または先端材料の開発および製造において確立した中核技術を有するイボクラール社、ヴィータ(Vita)社、メトキシット(Metoxit)社などの供給者からブロックを購入する。当然のことながら、CAD/CAM材料はかなり高価であり、CAD/CAMシステム稼働費用を実質的に増大させる。例えば、セラミックミルブランクの価格は、材料1グラム当たり約0.45ユーロから3.00ユーロの範囲である。欧州特許出願公開第1654104号A2明細書に記載するブランク当たりの産出量はかなり少なく、そのほとんどが無駄となる。
【0005】
セレック(シロナ社)やラヴァ(3M/ESPE社)などのチェア側または研究室側で使用するためのミリング装置からなる第1のCAD/CAMシステムは、閉鎖システムであり、そのシステムにおいてミルブランクは、スタブ保持具、突起物、マンドレル、ホルダーまたは運搬手段に取り付けられ、独国特許第19612699号C5明細書および欧州特許第0982009号B1明細書に記載される独特の特許形状を有し、かつバーコードにより保護しうることによって、他の(CAD/CAM)システムとの互換性を妨げている。スタブアセンブリ上の多様なワークピース(ミリング加工部)もまた欧州特許第1343431号B1明細書、同第1313407号B1明細書、欧州特許出願公開第1023876号A2明細書、同第1481647号A1明細書、同第1068839号A2明細書に記載されており、それらを参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。オープン構造システムの出現により、システム間のブランクの互換が可能となるだけでなく、極めて望ましくなった。現在、市場は閉鎖システムによって独占されている一方で、オープンシステムが市場に着実に浸透してきている。25の商業的CAD/CAMシステムのうち少なくとも5または6のシステムが同一のD−250歯科用3DスキャナおよびDentalDesigner歯科用CADソフトウェア(3Shape A/S社、コペンハーゲン、デンマーク)を利用している。オープン構造システムでは、ブランクはバーコードにより保護されておらず、ミリング装置の既存のハウジング(ブランクホルダー、チャック、収集体、支持体)に適合する限りにおいてあらゆるブランクを使用することができる。
【0006】
従って、ブランクに互換性を与え、ブランク当たりの産出量を最大化し、材料廃棄物を削減してシステムの多用途性、材料の選択および作業効率を最大化する技術的な必要性が存在する。ミリング加工装置内においてブランクの位置を調整するために場合によってアダプタと共にブランクをホルダー上に固定することが広く知られている。そのためアダプタとホルダーの間の所要のアラインメントを得るために任意の適宜な固定手段を設けることができる。振動防止構造を確立するために、追加的な締付力の手段によってホルダーとアダプタの間の相互結合を改善することが提案されている。しかしながら、その種の締付力はそれら2つの部品の間の相互結合をある程度固定化する傾向があり、それによってユーザがアダプタをホルダーから安全に取り外すことが妨げられる。
【0007】
そのためホルダーとアダプタの間の相互結合を改善するための追加的な締付力の使用はそれ程普及していない。
【0008】
上述したホルダー/アダプタ構造に加えて、ホルダーとアダプタの間の角度アラインメントおよび/またはアダプタと工具保持固定具の間の角度アラインメントをユーザが選択し得るようにすることが提案されている。例えば4つの異なった角度位置を選択し得る場合、それらの位置のそれぞれに対して充分な締付力を提供することが重要である。
【0009】
固定的かつ耐振動性の構造を確立するために、ホルダーシャフト内に窪み部を設け締付力を補強するために前記窪み部内にスタッドを挿入することが提案されている。しかしながら、その種の窪み部はノッチ効果を生じさせ易くその結果その種の相互結合の利便性が低下する。
【0010】
欧州特許出願公開第2036516号A2明細書により、多様なミリング加工装置を使用する際にブランクの柔軟な調整および構成を可能にするための特殊ホルダーを有するブランク構成が開示されている。この構成によって多様なミリング加工装置に対して多様なホルダーが必要となることが解消される。さらに、強固に基礎材に固定されたブランクの予加工が可能になる。
【0011】
独国特許出願公開第102004020192号A1明細書により、ボルトおよびねじれ止めを受容するための窪み部を設けることが知られている。しかしながら、この構成ではブランクの位置を正確に固定することは不可能である。
【0012】
本明細書では、本発明について主に義歯の機械加工を参照することにより説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の原理は、一般には医療装置(例えば、インプラント、置換関節部、骨格置換など)に適用することができる。その広範な特徴によれば、本発明は、3次元の対象物に不可欠なミリング加工または成形をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1654104号A2明細書
【特許文献2】独国特許第19612699号C5明細書
【特許文献3】欧州特許第0982009号B1明細書
【特許文献4】欧州特許第1343431号B1明細書
【特許文献5】欧州特許第1313407号B1明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1023876号A2明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1481647号A1明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1068839号A2明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第2036516号A2明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第102004020192号A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の対象は、ミリング振動に対して脆弱かつ依存的になることなくホルダーとアダプタの間の安定的かつ角度調整可能な相互結合を可能にする、請求項1前段に記載のCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジング内において歯科用製品を製造するためのミルブランク固定用のホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題は請求項1に記載の特徴によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が定義される。
【0016】
本発明の好適な実施形態によれば、ホルダーがミルブランクに接合するための接合面と前記接合面の上端に接続される固定シャフトを備え、前記固定シャフトが複数の側面と1つの底面を有してなる。前記固定シャフトはCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジングに固定するための少なくとも1面の固定面を含み、前記固定面が断面で見てその固定面の中点を介して延在する半径に対して実質的に垂直に延在するとともに一側面の幅よりも小さな幅を有する。前記固定シャフトは断面で見て少なくとも2面の側面を伴った実質的に多角形の形状を有し、側面のうちの少なくとも2面が互いに隣接して配置されるとともに相互に直角に延在する。固定面の中点を介して延在する半径の延長線が垂直角部のうちの1つの頂点を介して延在する。固定面は一側面の長さの約0.3ないし約0.6倍の範囲の幅で延在することができる。固定面の幅は一側面の幅の約0.5倍未満とすることができる。
【0017】
さらに、固定面の幅はその固定面に隣接していない一側面の幅の(√2−1)(約0.4142)倍とすることができる。それに代えて、固定面の幅を2面の固定面の間に位置する一側面の幅と略等しくすることができる。
【0018】
ホルダーの別の特徴によれば、断面で見て固定シャフトが約1:1の長さ対幅の比率を有する。隣接する2つの側面の間の移行部は隣接する両方の側面を横断して約45°の角度で延在する少なくとも1面の固定面によって形成される。固定面と固定シャフトの軸の間の最少距離は側面と固定シャフトの軸の間の最少距離と略等しいものとすることができる。
【0019】
ホルダーの別の特徴によれば、固定面の幅が一側面の幅の約1/3となる。固定面の幅の中央に対して垂直な線が固定シャフトの軸を介して延在する。
【0020】
ホルダーのさらに別の特徴によれば、固定面がホルダーの軸に対して平行に延在するとともに外周方向に見て少なくとも1面の側面よりも小さくなる。この固定面は少なくとも1面の固定面から実質的に135°の角度で延在するベベルを有するが、ベベルの姿勢は前記の角度に限定されることはなくCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジング内におけるホルダーの動作の容易性を提供する任意の姿勢とし得る。固定シャフトがホルダーの高さよりも低い高さを有し、固定面はホルダーの高さの半分よりも高い高さに存在する。
【0021】
ホルダーのさらに別の特徴によれば、接合面を正方形に形成するとともにホルダー軸が貫通するものとすることができる。接合面が固定シャフトの末端上に配置されたフランジあるいはプラットフォームを有し、前記のフランジあるいはプラットフォームが固定シャフトを超えて放射方向に突出することができる。
【0022】
ホルダーのさらに別の特徴によれば、ホルダーの高さが向かい合った側面の間の距離より大きくなる。ホルダーは接合面と対向する底面を有し、CAD/CAMシステムのミリング装置のハウジング上へ配置するために前記底面が実質的に接合面に対して平行に延在する。
【0023】
ホルダーのさらに別の特徴によれば、前記少なくとも1面の固定面が第1および第2の固定面を含み、前記第1および第2の固定面がそれぞれベベルを有し、前記第1と第2の固定面のベベルが固定シャフト内で前後して配置される場合に固定シャフトの側面が断面で見て最大の幅となる。
【0024】
ホルダーのさらに別の特徴によれば、ホルダーに取り付け可能なミルブランクが断面において長方形であるとともに全ての側面において固定シャフトの断面を超越する。ミルブランクの高さは軸方向から見て実質的に固定シャフトの全高に相当する。ミルブランクはホルダーに対して機械的に固定あるいは接着固定するかまたは一体的に形成することができる。ミルブランクはセラミック、ポリマー、複合材、金属、またはそれらの組合せによって製造することができる。
【0025】
さらに別の特徴によれば、ホルダーはCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジングに対して直接取り付け可能であるか、またはCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジングに対して少なくとも1個の中間部材を介して取り付け可能である。ホルダーは締付ハードウェアに固定することが好適であり、前記締付ハードウェアをCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジングに対して直接取り付け可能にするかまたは同ミリング装置のハウジングに対して取り付け可能なアダプタに対して取り付け可能にする。
【0026】
ホルダーの別の特徴によれば、前記少なくとも1面の固定面が機械的要素、締り嵌めあるいはスナップ嵌めによって締付ハードウェアに対して固定されるように形成される。前記の機械的要素は前記少なくとも1面の固定面の直径に実質的に相当する直径を有することができる。代替的に、前記少なくとも1面の固定面が締付ハードウェアにフォームフィット結合するように構成された少なくとも1本のノッチあるいは切下げを有することができる。
【0027】
別の特徴によれば、ホルダーが5軸あるいは6軸ミリング加工装置を含めて(ただしそれらに限定しない)任意の型式のCAD/CAMシステム内で使用することができる。ホルダーは金属、樹脂、セラミック材料、またはそれらの組合せによって製造することができる。ここで製造される三次元対象物の例には、コーピング、ポンティック、フレームワーク、義歯用の歯、保隙装置、歯牙交換歯列矯正装置、歯列矯正リテーナ、義歯、ポスト、ファセット、スプリント、シリンダ、ピン、コネクタ、クラウン、部分クラウン、べニア、オンレー、インレー、ブリッジ、固定部分義歯、インプラントまたは支台等の歯科用製品が含まれる(ただしそれらに限定されない)。
【0028】
ホルダーの別の好適な実施形態によれば、半径の延長線が垂直角部のうちの1つの頂点を介して延在する。
【0029】
ホルダーの別の好適な実施形態によれば、固定面の幅が一側面の長さの約0.3ないし約0.6倍となり、その際前記少なくとも1面の固定面の幅が一側面の幅の約0.5倍未満、特に前記少なくとも1面の固定面の幅が前記側面の幅の約1/3となる。
【0030】
ホルダーの好適な実施形態によれば、固定面の幅が2面の固定面の間に位置する側面の幅と略等しくなり、また前記固定面の幅はその固定面に連接していない側面の幅に略相当する。
【0031】
ホルダーの好適な実施形態によれば、固定シャフトの高さはホルダーの高さと比べて小さくなり、固定面がホルダーの高さの半分超の高さを有し、また固定シャフトが断面で見て約1:1の長さ対幅の比率を有する。
【0032】
ホルダーの好適な実施形態によれば、隣り合った側面の間の移行部が隣り合った両方の側面に対して約45°の角度で交差する少なくとも1面の固定面によって形成される。
【0033】
ホルダーの好適な実施形態によれば、前記少なくとも1面の固定面がホルダーの軸に対して平行に延在するとともに外周方向に見て少なくとも1面の側面よりも小さくなり、前記少なくとも1面の固定面の幅の中点への垂直線が固定シャフトの軸を介して延在する。
【0034】
ホルダーの好適な実施形態によれば、前記少なくとも1面の固定面がその少なくとも1面の固定面から実質的に135°の角度で延在するベベルを有し、第1および第2の固定面が存在する場合それぞれがベベルを有し、また前記第1と第2の固定面のベベルが固定シャフト内で前後して配置される場合に固定シャフトの側面が断面で見て最大の幅となる。
【0035】
ホルダーの好適な実施形態によれば、接合面が正方形に形成されるとともにホルダー軸がそれを貫通し、前記接合面が固定シャフトの一端上に配置されたフランジあるいはプラットフォームを有し、前記フランジあるいはプラットフォームが固定シャフトを超えて放射方向に突出する。
【0036】
ホルダーの好適な実施形態によれば、ホルダーが接合面と対向する底面を有し、前記底面はハウジング上に配置するために実質的に接合面に対して平行に延在し、ホルダーがハウジングに対して直接取り付け可能であるか、またはハウジングに取り付け可能な少なくとも1個の中間部材に対して取り付け可能である。
【0037】
ホルダーの好適な実施形態によれば、ミルブランクがホルダーに対して機械的に固定あるいは接着固定されるかまたは一体的に形成され、前記ミルブランクは断面において長方形であるとともに全ての側面において固定シャフトの断面を超越し、さらにミルブランクの高さが軸方向から見て実質的に固定シャフトの全高に相当する。
【0038】
ホルダーの好適な実施形態によれば、ホルダーを締付ハードウェアに固定するとともに前記締付ハードウェアをミリング装置のハウジングに対して直接取り付け可能にするかまたは同ミリング装置のハウジングに取り付け可能なアダプタに対して取り付け可能にし、前記締付ハードウェアとフォームフィット結合するように形成されたノッチあるいは切下げ等の機械的要素によって、または締り嵌めあるいはスナップ嵌めによって前記締付ハードウェアに対して固定されるように前記少なくとも1面の固定面を形成し、前記機械的要素が前記少なくとも1面の固定面の直径に実質的に相当する直径を有する。
【0039】
ホルダーの好適な実施形態によれば、CAD/CAMシステムが5軸あるいは6軸ミリング加工装置とされる。
【0040】
ホルダーの好適な実施形態によれば、歯科用製品がコーピング、ポンティック、フレームワーク、義歯用の歯、保隙装置、歯牙交換歯列矯正装置、歯列矯正リテーナ、義歯、ポスト、ファセット、スプリント、シリンダ、ピン、コネクタ、クラウン、部分クラウン、べニア、オンレー、インレー、ブリッジ、固定部分義歯、インプラントまたは支台を含む。
【0041】
ホルダーの好適な実施形態によれば、ハウジングがブロックの情報を自動的に伝送するためのトランスポンダを備え、前記トランスポンダがRFIDタグからなるとともに前記ブロックの情報はCAMファイルに関するものとされ、さらに前記CAMファイルがCAD/CAMシステムのミリング装置内でミリング加工される製品のミリング仕様を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例に係るホルダーを示した立体図である。
【図2】取り付けられたミルブランクを伴った図1のホルダーを示した立体図である。
【図3】図1のホルダーの底面を示した平面図である。
【図4】図1のホルダーの底面を示した平面図である。
【図5】図3の線5−5に沿って図1のホルダーを示した断面図である。
【図6】図2のホルダーとミルブランクを示した側面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るホルダーを示した立体図である。
【図8】図1のホルダーを伴ったCAD/CAMシステムのハウジング構成内の各要素を示した拡大図である。
【図9】図7のハウジング構成の組み立て後の要素を示した立体図である。
【図10】図1のホルダーを伴ったCAD/CAMシステムの別のハウジング構成内の各要素を示した拡大図である。
【図11】図10のハウジング構成のパレットを示した立体図である。
【図12】図10のハウジング構成の組み立て後の要素を示した立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
「本発明」とは少なくとも本発明の複数の実施形態を意味し;本明細書中の「本発明」の種々の特徴に関する言及が全ての請求される実施形態あるいは方法が言及された特徴を含むことを意味するものではない。特許、特許出願、ならびに公開された製品を含めた、ここで引用される全ての文献(製品)が参照として組み入れられていることが理解される。ここにおいて複数形で記載される全ての用語がその用語の単数形をも含み得るものとし、また単数形で記載される全ての用語がその用語の複数形をも含み得るものとする。
【0044】
記述されるように本発明の一実施例においては、図2に示されているようなミルブランク12をCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジングに取り付けるために図1に示されているようなホルダー10を設ける。ホルダー10は接続面あるいは接合面14と固定シャフト16を備えてなる単一かつ非分割式の要素とすることが好適である。接合面14はミルブランク12をホルダー10に取り付けるためにホルダー10の固定シャフト16の上端に配置することが好適である。ミルブランク12はホルダー10に対して機械的に固定あるいは接着固定するかまたは一体的に形成することができる。接合面14は固定シャフト16の少なくとも一部を超えて延在するプラットフォームあるいはフランジの形式とすることが好適である。
【0045】
固定シャフト16はホルダー10をミリング装置のハウジング(図8および図10に示されており、後述される)に固定する。固定シャフト16は、CAD/CAMシステムのミリング装置内においてブランク12あるいはホルダー10が振動あるいは遊動(ブランク自体の動作に匹敵する制御不能な動作)することなくミルブランク12が切削加工されるようにホルダー10を前記ミリング装置のハウジングに確実に固定する。ホルダー10はセラミック、ポリマー、複合材、金属、またはそれらの組合せから製造することができる。
【0046】
固定シャフト16は縦方向に延在する複数の側面あるいは側部18,20,22および24と少なくとも1面の固定面26を有する。シャフト16内に少なくとも1面の固定面が含まれ、必要な数の固定面をシャフト16が含むことができる。シャフト16は第2の固定面28を含んでいる。固定面26および28はホルダー10をハウジング内に挿入し実際に固定するために使用される手段である。面26あるいは28のいずれか一方のみがホルダー10をハウジングに固定するために必要である。図7を参照すると、単一の固定面13を有する代替的なホルダー11の実施例が示されている。
【0047】
図3は底面30の方から見たホルダー10の断面図である。底面30の角度は特定の方向性に限定されるものではないが、底面30が実質的に接合面14に対して平行であれば好適である。底面30の方向性はホルダー10が挿入されるハウジングの形状および構成に依存することが可能である。ホルダー10の断面は底面30の方から見てそれぞれ側面22および20と側面18および20によって形成される2つの直角部32および34を含んでいる。固定面26および28はそれぞれ側面18および24と側面24および28の間の移行面であり、ハウジングへの挿入および固定のための空間を提供するように角度付けられている。固定面26および28の角度によってシャフト16がハウジング内に挿入された際に締付ハードウェアと接触することが可能になる。図8および図10を参照するとネジ等の締付要素35が示されており、固定シャフト16を固定面あるいは締付チャック36に固定するために締付チャック36にネジ付けられている。しかしながら締付要素の使用はホルダー10の締付ハードウェアへの固定の一例である。その他の方法には(それに限定されないが)スナップ嵌めあるいは圧入等の締り嵌めによるホルダー10のハウジング内への嵌め付けが含まれる。
【0048】
固定面26および28はそれらの固定面26および28の中心を介して延在する直径40の半径に対して実質的に垂直に延在し、前記直径は固定シャフトの軸を介して直角部32あるいは34の頂点に向かって延在する。図5に示されているように固定面26および28が固定シャフト16の軸41に対して実質的に平行に延在することが好適である。シャフト16の長さおよび幅が図4の断面図に示されているように実質的に同等、すなわち長さ対幅の比が約1:1であればさらに好適であるが、それによってシャフト16の幅および長さが限定されることはなく、任意の長さおよび幅にすることができる。固定面の幅は側面の幅よりも小さいことが好適であり、側面の幅の約1/3ないし約1/2であればさらに好適である。図1および図2のように固定面26および28を外周方向から見た場合に、固定面が少なくとも1つの側面18,20,22あるいは24より小さいことが好適である。
【0049】
図4において固定面26および28が隣接する側面との間で形成する角度は約45°であるが、固定面が側面との間で形成する角度は特定の角度には限定されない。固定面26および28の幅の中央42は固定シャフト16の軸44を介して延在することが好適である。
【0050】
図1、図2、および図6を参照すると、固定面26および28の最上部あるいは上面に近接したベベル46が示されている。図においてベベル46は固定面26,28に対して135°の角度で配置されているが、ベベル46の角度は特定の角度には限定されない。図5は図3の線5−5に沿ったホルダー10の断面図である。固定面26に対するベベルの角度が明確に示されている。
【0051】
固定面26,28はシャフト16の任意の位置に配置することができる。それらは図示されているように前後して配置することが好適である。従って固定面が前後して配置される場合に側面が最大の幅となり、すなわち固定面26,28が対向してあるいは対角線上に配置される場合に比べると面20の幅に全く欠落が無くなる。
【0052】
固定シャフト16はホルダー10に比べて短くするか、または底面30から接合面14まで延在させることができる。固定面はホルダー10上で任意の長さで延在させることができ、ホルダー10の長さの半分超とすることが好適である。ホルダー10の高さに限定はないが、高さが向かい合った側面の間の距離より大きいものであれば好適である。代替的な実施形態によれば、接合面14は最上接合面14からベベル46の下端に延在する接合シャフト31の形式とし、固定シャフト16をベベル46の底部から底面30まで延在させることができる。
【0053】
接合面14は多角形、円形、楕円あるいは長円形を含めた任意の形状とすることができる。好適には、ミルブランクの長方形あるいは正方形の断面を容易に収容できるように接合面14が正方形にされる。ミルブランクは長方形および正方形に限定されることはなく、その他の多角形、円形、楕円あるいは長円形および/または複合ニアネットシェープとして形成することができる。ミルブランクは接合面の領域内に整合するか、または図2に示されているように1つまたは複数の角部で突出することができる。ミルブランクはホルダー10と同程度の高さあるいは異なった高さとすることができる。図6にはホルダー10と同等な高さを有するミルブランク12が示されている。ミルブランクは金属、樹脂、セラミック材料、またはそれらの組合せから製造することができる。ミルブランクからミリング加工し得る歯科用製品には(それらに限定されることはない)、コーピング、ポンティック、フレームワーク、義歯用の歯、保隙装置、歯牙交換歯列矯正装置、歯列矯正リテーナ、義歯、ポスト、ファセット、スプリント、シリンダ、ピン、コネクタ、クラウン、部分クラウン、べニア、オンレー、インレー、ブリッジ、固定部分義歯、インプラントまたは支台が含まれる。
【0054】
図8ないし図11を参照すると、CAD/CAMハウジング50および50′が示されている。同一の構成要素は同一の参照符号で示し、同じ目的であるが異なった構成要素はアポストロフィによって区別する。ホルダー10はミリング装置のハウジング内に直接挿入するか、または中間部材内に挿入してそれをミリング装置のハウジング内に挿入することができる。
【0055】
通常ホルダー10は締付チャック36等の締付ハードウェアに挿入および固定される。締付チャック36への固定あるいは留め付けの例は(それらに限定されることはないが)、ボルト、ネジ、あるいはセットスクリュー等の機械的締付要素である。締付要素を使用する場合その締付要素の直径が固定面26,28の幅と同程度であることが好適である。ホルダー10はチャック36に対して締り嵌めあるいは圧入によって固定することもできる。また、固定面26,28をチャック36内に圧入し得るように構成することもできる。それらに限定されることはないが、ノッチ、切下げ、または参照に組み入れられている米国特許出願第20090075238号明細書に開示されているようにチャック36内へスナップ嵌め、圧入あるいは締り嵌めされるように形成されたその他の表面の構成が含まれる。
【0056】
締付チャック36はミリング装置のハウジング内に直接挿入するか、またはアダプタ52あるいは52′に取り付けてそれをミリング装置のハウジングあるいはパレット54あるいは54′に挿入することができる。図9および図12に組み立てられたハウジング構成50,50′が示されている。図11を参照すると、材料、シェード、強度、およびその他の利用可能な材料特性等のミルブランクに関する情報を提供するための無線識別(RFID)タグ等のトランスポンダ58′を有するパレット54′が示されている。ミリング装置上のセンサがRFIDタグを読み取ってミリング加工動作の前にパレット54′上の材料を判定する。ミリング装置にリンクされたデータベースが材料ブロックに対して特定のCAMファイルを関連付け、加工装置がそのCAMファイルに従ってブロックを切削する。
【0057】
ホルダーならびにパレットに新しいブロックを取り付ける際、バーコード式スキャナを使用して操作員が材料ブロックの特性に関する情報を入力することができる。RFIDタグ58′がスキャンされ、以前の材料ブロックに関する古い情報を消去するように制御パネルがプログラムされる。その後新しい材料情報が制御パネルに入力される。データベースはパレット54上の材料ブロックに関する情報を記憶する。新しいものを切削する準備が完了すると、パレット54′上のブロックに関するCAMファイルがそのブロックを切削するために使用される。
【0058】
固定シャフト16がCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジング内へホルダー10を固定するための簡便な手段を提供する。アダプタあるいは同様な要素を使用して多数の異なった型式のCAD/CAMシステム内への固定に対応することができる。
【0059】
本発明を好適な実施形態に関して説明したが、当業者は特に説明していない追加、削除、修正および置き換えを添付の請求項に規定される発明の精神および範囲から逸脱せずに行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
10,11 ホルダー
12 ミルブランク
13,26,28 固定面
14 接合面
16 固定シャフト
18,20,22,24 側面
30 底面
31 接合シャフト
32,34 直角部
35 締付要素
36 締付チャック
40 直径
41,44 軸
42 中央
46 ベベル
50,50′ ハウジング構成
52,52′ アダプタ
54,54′ パレット
58′ トランスポンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用製品を製造するためのミルブランクをCAD/CAMシステムのミリング装置のハウジング内に固定するためのホルダー(10)であり、
− ホルダーをミルブランクに接合するための接合面(14)を備え;
− 前記接合面(14)に接続される固定シャフト(16)を備え、前記固定シャフト(16)が前記ハウジングに固定するための少なくとも1面の固定面(26,28;13)を有してなり;
前記固定シャフト(16)は断面で見て少なくとも2面の側面(18,20,22,24)を伴った実質的に多角形の形状を有し、前記側面のうちの少なくとも2面が互いに隣接して配置されるとともに相互に直角に延在し;
前記固定面(26)が断面で見て実質的にその固定面の中点を介して延在する固定シャフト(16)の半径に対して実質的に垂直に延在するとともに一側面(18;20;22;24)の幅よりも小さな幅を有する、
ホルダー。
【請求項2】
半径の延長線が垂直角部のうちの1つの頂点を介して延在することを特徴とする請求項1記載のホルダー。
【請求項3】
固定面(26,28;13)の幅が一側面(18;20;22,24)の長さの約0.3ないし約0.6倍となり、その際少なくとも1面の固定面(26,28;13)の幅が一側面の幅の約0.5倍未満、特に前記少なくとも1面の固定面(26,28;13)の幅が前記側面(18;20;22;24)の幅の約1/3となることを特徴とする請求項1または2記載のホルダー。
【請求項4】
固定面(26,28;13)の幅が2面の固定面(26,28)の間に位置する側面(18,20,22,24)の幅と略等しくなり、また前記固定面(26,28)の幅はその固定面(26,28)に連接していない側面(18,20,22,24)の幅の1/2に相当することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のホルダー。
【請求項5】
固定シャフト(16)の高さはホルダー(10)の高さと比べて小さくなり、固定面(26,28;13)がホルダー(10)の高さの半分超の高さを有し、また固定シャフト(16)が断面で見て約1:1の長さ対幅の比率を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のホルダー。
【請求項6】
隣り合った側面(18;20;22;24)の間の移行部が隣り合った両方の側面に対して約45°の角度で交差する少なくとも1面の固定面(26,28;13)によって形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のホルダー。
【請求項7】
少なくとも1面の固定面がホルダーの軸に対して平行に延在するとともに外周方向に見て少なくとも1面の側面(20;22;24;26)よりも小さくなり、前記少なくとも1面の固定面(26,28;13)の幅の中点への垂直線が固定シャフト(16)の軸を介して延在することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のホルダー。
【請求項8】
少なくとも1面の固定面(26,28;13)がその少なくとも1面の固定面(26,28;13)から実質的に135°の角度で延在するベベル(46)を有し、第1および第2の固定面が存在する場合それぞれがベベル(46)を有し、また前記第1と第2の固定面のベベル(46)が固定シャフト(16)内で前後して配置される場合に固定シャフト(16)の側面が断面で見て最大の幅となることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のホルダー。
【請求項9】
接合面(14)が正方形に形成されるとともにホルダー軸がそれを貫通し、前記接合面(14)が固定シャフト(16)の一端上に配置されたフランジあるいはプラットフォームを有し、前記フランジあるいはプラットフォームが固定シャフト(16)を超えて放射方向に突出することを特徴とする請求項1記載のホルダー。
【請求項10】
ホルダー(10)が接合面(14)と対向する底面(30)を有し、前記底面(30)はハウジング上に配置するために実質的に接合面(14)に対して平行に延在し、ホルダーがハウジングに対して直接取り付け可能であるか、またはハウジングに取り付け可能な少なくとも1個の中間部材に対して取り付け可能であることを特徴とする請求項1記載のホルダー。
【請求項11】
ミルブランクがホルダー(10)に対して機械的に固定あるいは接着固定されるかまたは一体的に形成され、前記ミルブランクは断面において長方形であるとともに全ての側面において固定シャフト(16)の断面を超越し、さらにミルブランクの高さが軸方向に見て実質的に固定シャフト(16)の全高に相当することを特徴とする請求項1記載のホルダー。
【請求項12】
ホルダー(10)を締付ハードウェアに固定するとともに前記締付ハードウェアをミリング装置のハウジングに対して直接取り付け可能にするかまたは同ミリング装置のハウジングに取り付け可能なアダプタに対して取り付け可能にし、前記締付ハードウェアとフォームフィット結合するように形成されたノッチあるいは切下げ等の機械的要素によって、または締り嵌めあるいはスナップ嵌めによって前記締付ハードウェアに対して固定されるように少なくとも1面の固定面(26,28;13)を形成し、前記機械的要素が前記少なくとも1面の固定面(26,28;13)の直径に実質的に相当する直径を有することを特徴とする請求項10記載のホルダー。
【請求項13】
CAD/CAMシステムが5軸あるいは6軸ミリング加工装置とされることを特徴とする請求項1記載のホルダー。
【請求項14】
歯科用製品がコーピング、ポンティック、フレームワーク、義歯用の歯、保隙装置、歯牙交換歯列矯正装置、歯列矯正リテーナ、義歯、ポスト、ファセット、スプリント、シリンダ、ピン、コネクタ、クラウン、部分クラウン、べニア、オンレー、インレー、ブリッジ、固定部分義歯、インプラントまたは支台からなることを特徴とする請求項1記載のホルダー。
【請求項15】
ハウジングがブロックの情報を自動的に伝送するためのトランスポンダを備え、前記トランスポンダがRFIDタグからなるとともに前記ブロックの情報はCAMファイルに関するものとされ、さらに前記CAMファイルがCAD/CAMシステムのミリング装置内でミリング加工される製品のミリング仕様を提供することを特徴とする請求項1記載のホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−41809(P2011−41809A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185661(P2010−185661)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)