CD44の表面発現を証明する細胞の細胞毒性媒介
【課題】癌腫瘍の診断および処置手段の提供。
【解決手段】抗CD44モノクローン抗体H460−16−2の使用と、該モノクローン抗体H460−16−2に特異的に結合するCD44の抗原性部分を発現する細胞の存在を決定する結合アッセイ用のモノクローン抗体H460−16−2の使用。モノクローン抗体H460−16−2は、腫瘍に対する細胞毒性反応を引き起こすための手段として、必要に応じて1種類以上の化学療法薬と組み合わせて使用できる。
【解決手段】抗CD44モノクローン抗体H460−16−2の使用と、該モノクローン抗体H460−16−2に特異的に結合するCD44の抗原性部分を発現する細胞の存在を決定する結合アッセイ用のモノクローン抗体H460−16−2の使用。モノクローン抗体H460−16−2は、腫瘍に対する細胞毒性反応を引き起こすための手段として、必要に応じて1種類以上の化学療法薬と組み合わせて使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腫瘍細胞の細胞毒性の媒介と、より詳しくは細胞毒性応答を開始させるための手段として、必要に応じて1種類以上の化学療法薬を併用させる癌疾患修飾抗体(CDMAB)の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト白血球に対するモノクローン抗体の確立は、CD44抗原の発見をもたらした。単鎖ヒアルロン酸(HA)結合糖タンパク質が多種多様の正常組織および全ての種類の造血細胞で発現した。そのことは、リンパ球活性化およびホーミングに元来、関係していた。現在のところ、推定上の生理学的役割として、炎症性遺伝子の活性化、細胞周期の変調、細胞増殖の誘導、分化および発現の誘導、細胞骨格の再編成および細胞遊走、ならびにアポトーシスに対する細胞生存/耐性も挙げられる。
ヒトでは、CD44の単一遺伝子コピーは第11染色体の短腕部11p13領域に位置する。この遺伝子は19のエクソンを含み、最初の5つは定常であり、次の9つは可変であり、その後の3つは定常であり、さらに最後の2つは可変である。選択的スプライシングによって生じ得る異性体の数は1,000を越える。しかし、現在、自然発生的な変異体で同定されているものは、わずかに数ダースだけである。
CD44標準糖タンパク質は、N末端細胞外(20アミノ酸のリーダー配列および膜近位領域(85アミノ酸))、ドメイン(270アミノ酸)、膜貫通領域(21アミノ酸)、ならびに細胞質尾部(72アミノ酸)からなる。細胞該領域は、N末端に連結モジュールも有する。この領域は、長さが92アミノ酸であり、他のHA結合連結タンパク質と相同性を示す。高相同性がマウス型のCD44とヒト型のCD44との間にある。タンパク質の変異型は、エクソン5のカルボキシ末端に挿入され、発現された際に細胞外に位置する。
血清可溶型のCD44もまた、自然発生的に生じるとともに、停止コドン(可変領域内)またはタンパク質分解活性から生じ得る。TNF−αを含む種々の刺激による細胞の活性化は、CD44受容体の放出(shedding)をもたらす。受容体の放出もまた、腫瘍細胞によって見られ、CD44のヒト血清濃度が最大で10倍まで増加する。高CD44血清濃度は、悪性腫瘍(例外として卵巣癌)を示唆する。
【0003】
標準型のCD44は、分子量が約37kDのものとして存在する。転写後修飾は、その分子量を80〜90kDに増加させる。このような転写後修飾として、アスパラギン残基でのアミノ末端細胞外ドメインN結合型糖鎖合成と、細胞外ドメインのカルボキシル末端にあるセリン/スレオニン残基でのO結合型糖鎖合成と、グルコサミノグリカン付加とが挙げられる。スプライス変異体の大きさは、80〜250kDの範囲内である。
HA、哺乳類の細胞外マトリックス(ECM)上に位置した多糖類は、主要なCD44リガンドであると考えられている。しかし、CD44がコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等にも結合するという知見もある。HA結合と糖鎖形成との間に相互関係があるように見える。不活性アッセイCD44(HAとは結合せず)は、高レベルの糖鎖形成を有し、活性CD44(結合HA)では最も低い。その一方で、誘導型CD44(サイトカイン、モノクローン抗体、成長因子等で活性化されない限り、HAとは結合しないか結合しても弱い)は、糖鎖形成レベルが活性型と不活性型との間にある。
CD44は、その機能のいくつかを細胞、刺激、および環境の相互作用に依存するシグナル伝達経路を介して調節することができる。このような経路のいくつかとして、NFκBシグナル伝達カスケード(炎症反応に関与)、Ras−MAPKシグナル伝達経路(細胞周期および増殖の活性化と関連)、Rhoファミリー・タンパク質(細胞骨格再組織化および細胞遊走と関連)、ならびにPI3−K関連シグナル伝達経路(細胞生存に関係)が挙げられる。前述の機能の全てが要疾患開始および進行と密接に関連している。CD44も、種々の付加的な機構によって癌に影響を与えることが示されている。そのようなものとして、悪性腫瘍に関与するCD44の細胞表面上に存在する細胞表面プロテオグリカンによって、成長因子、ケモカイン、およびサイトカインの表示が挙げられる。また、CD44−HA複合体の内在化後のリソゾーム・ヒアルロニダーゼによるHAの細胞内分解は、腫瘍侵襲性の可能性とECMを介した血管形成の誘導とを潜在的に増加させることができる。加えて、生存またはアポトーシス・シグナルの伝達が、標準または可変的なCD44受容体を介して起こることが示された。CD44もまた、細胞分化および細胞遊走に関与することが示唆されている。全てではないにしても、これらの機能の多くは環境および細胞依存性であり、いくつかは様々な知見をもたらす。したがって、何らかの結論が引き出す前に、より多くの研究が必要である。
癌でのCD44の潜在的な機能的役割を確認するために、CD44の発現研究を実施して、受容体の差次的発現が疾患進行と相関するかどうかが決定された。しかし、一貫性のない知見が大多数の腫瘍型で観察され、このことは、おそらく、研究者間での試薬の併用、技術、病理学的スコアリング、および細胞型の違いによるものだろう。腎細胞癌および非ホジキンリンパ腫が、高CD44発現腫瘍を有する患者で、生存期間が低もしくは非CD44発現対応物よりも一貫して短かった。
【0004】
CD44は、癌との関連性があることから、抗癌薬物療法開発の標的であった。CD44の標準型または変異体型が腫瘍進行にとって必要であるかどうかについての論争が今でもなお存在する。両方の見解を支持する生体内(in vivo)動物データが存在し、それはまた腫瘍型さらには細胞型依存型である可能性もある。異なる治療的なアプローチには、可溶性CD44タンパク質、ヒアルロナン合成DNA、ヒアルロニダーゼの注射、CD44アンチセンスおよびCD44特異的抗体の使用が含まれた。各アプローチは、ある程度の成功をもたらし、それによって抗CD44癌薬物療法の支持が得られた。
モノクローン抗体に特異的な変異体および標準CD44が実験的に作られた。しかし、ほとんどの場合、これらの抗体は、固有の生物学的活性を持たず、むしろそれらが認識するCD44の型に対して特異的に結合する。しかし、いくつかは、生体外(in vitro)または生体内(in vivo)のいずれかで活性を示すが、両方では活性を示さないものであった。いくつかの抗CD44抗体が細胞現象の媒介となることが示された。例えば、ヒト赤血球ルセラン抗原CD44標準型に対するマウス抗体A3D8は、CD2(9−1抗体)およびCD3(OKT3抗体)媒介T細胞活性化を強化することが示され、別の抗CD44抗体が類似の効果を有した。A3D8もまた、単球からのIL−1放出およびTリンパ球のIL−2放出を誘導した。興味深いことに、ダウノルビジン、ミトキサントロン、およびエトポシド等の薬物と併用させたA3D8の使用は、二次メッセンジャー・セラミドの生成を抑制することによるHL60およびNB4AML細胞でのアポトーシス誘導を阻害した。固有の活性を持たず、かつCD44の類似のエピトープに対するJ173抗体は、薬物誘導アポトーシスを阻害しなかった。CD44由来の85−110KDおよび200KDに対するNIH44−1抗体は、CD44の凝集または架橋結合のいずれかと著者が推測した経路を介して、T細胞増殖を増強した。ひとまとめにして考えると、癌に対するものではない(例えば、リンパ球の活性化)ことから、癌薬物療法としての使用に適している等の抗体は、細胞増殖を誘導し、あるいは細胞毒性の薬剤を使用した場合に癌細胞の薬物誘導死を阻害したという証拠はない。
生体内(in vivo)で抗腫瘍効果を示すいくつかの抗CD44抗体が記述された。抗体1.1ASML(CD44のv6変異体に対するマウス抗ラットIgG1)は、ラット膵臓腺癌BSp73ASMLのリンパ節および肺転移を減少させることが示された。処置された動物の生存性が同時に高まった。この抗体は、リンパ節転移増殖の前に投与された場合に効果的であり、リンパ節での細胞増殖に干渉すると推論された。生体外(in vitro)での腫瘍細胞に対して抗体が直接細胞毒性を示すことはなく、抗体は補体媒介細胞毒性または免疫効果細胞機能を高めることは無かった。ヒト細胞に対する抗体の有用性は、記載されなかった。
【0005】
ブレイヤー(Breyer)他は、CD44に対する市販の抗体を使用して同所移植ラット・グリア芽細胞腫の進行を止めることを記載した。ラット・グリア芽細胞腫培養細胞株C6を前頭葉に移植し、1週間後、そのラットに対して脳内注射による抗体処置を3回おこなった。処置されたラットは、腫瘍成長の減少を示し、緩衝液またはイソタイプ対照処置ラットよりも高い体重を示した。抗体は、細胞外マトリックス成分によって被覆されたカバーガラスに対する生体外(in vitro)細胞粘着を阻害することが可能になった。しかし、細胞に対する直接的な細胞傷害効果は何ら有しなかった。ヒト細胞については、この抗体の試験がおこなわれなかった。
CD44(IM−7.8.1)に対する抗体の有効性とCD44v10(K926)に対する抗体の有効性とを比較する研究を実施した。両方のイソ型を発現するCD44高転移性マウス黒色腫株B16F10を静脈注射(i.v.)によってマウスに移植した。2日後、研究期間中にわたって3日目毎に抗体を投与した。両方の抗体は、50%を上回る肺転移数の著しい減少を生じ、2つの抗体間で有効性に関する有意差はなかった。抗体は、生体外(in vitro)での増殖に影響を及ぼさなかったことから、著者であるザバズキ(Zawadzki)他はCD44とそのリガンドとの相互作用を抗体が阻害することで腫瘍増殖の阻害が生じたと推測した。IM−7.8.1を用いた別の研究では、ザルカ(Zahalka)他は抗体およびそのF(ab’)2フラグメントがマウスT細胞リンパ腫LBによるリンパ節浸潤を阻害することが可能であることを証明した。このことは、マウスに対して生存上重要な利点を与えた。ヴァラッハ−ダヤン(Wallach−Dayan)等は、自発的に腫瘍を形成しないLB−TRマウス・リンパ腫をCD44v4−v10によってトランスフェクションすることで腫瘍を形成する能力を与えられたことを示した。IM−7.8.1投与は、イソ型対照抗体と比較して、移植したトランスフェクト細胞の腫瘍サイズを減少させた。これらの研究のいずれもこの抗体の関するヒト有用性を示さなかった。
マウスIgG2aであるGKW.A3は、ヒトCD44に対して特異的であり、SCIDマウス内のヒト黒色腫異種移植片の形成および転移を妨げる。抗体を転移性ヒト培養細胞株SMMU−2と混合して皮下注射した。処置を3週間続けた。4週間後、未処置の動物では100%であったのに対して、10匹のマウスのうちわずか1匹だけが注射部位に腫瘍を発現した。抗体のF(ab’)2フラグメントは、腫瘍形成の同一阻害を示したことから、作用機序が補体または抗体依存型の細胞障害性に依存しないことが示唆された。第1回目の抗体注射の1週間前に腫瘍細胞を注射した場合、80%の動物がその最初の部位で腫瘍を発現した。しかし、注目すべきことは、生存期間がそれでも著しく増加したことである。抗体遅延投与は原発腫瘍形成に無効であったにもかかわらず、肺、腎臓、副腎、肝臓、および腹膜への転移を完全に阻止した。この抗体は、生体外(in vitro)で培養細胞株に対して何ら直接的な細胞障害性を持たず、またSMMU−2細胞の増殖に干渉もしなかったことから、転移または増殖に悪影響を与えることで腫瘍形成に対するその主要な効果を持つように見える。この抗体の注目すべき特徴の一つは、CD44のイソ型全てを認識することであり、このことは治療上の使用に対する可能性に限界があることを示唆している。
【0006】
ストロベル(Strobel)他は、抗CD−44抗体(クローン515)を使用してマウス異種移植モデルでのヒト悪性腫瘍細胞の腹膜移植を阻害することを記載した。ヒト卵巣培養細胞株36M2を、抗CD44抗体または対照抗体の存在下、マウスに対して腹腔内(i.p.)移植し、それに続く20日間にわたって処置を投与した。5週間後、抗体処置群の腹腔内の小結節が著しく少なかった。抗CD44処置群および対照処置群の両方から得た小結節が同一の大きさであったことから、細胞がひとたび移植されると、抗体は腫瘍の成長に対しては何ら効果を示さないことが示唆される。細胞を皮下移植した場合、腫瘍成長にもなんら影響がなかったことから、抗体そのものは抗増殖性または細胞毒性効果を持たないことが示された。また、生体外(in vitro)での細胞増殖に対しても抗体の効力はみられなかった。
BIWA1と表されるVFF−18もまた、CD44のv6変異体に対する高親和性抗体であり、そのポリペプチドの360〜370領域に特異的である。この抗体は、患者12人の第1相臨床実験で99mテクネチウム標識複合体として用いられた。抗体を、頭頸部の扁平上皮癌の患者で安全性および標的可能性について試験した。注射後40時間で、注射投与量の14%が腫瘍に取り込まれ、腎臓、脾臓、および骨髄での蓄積は最小であった。腫瘍結合選択性が高いことは、この抗体の非常に高い親和性が腫瘍のより深い層への浸透を防ぐにもかかわらず、放射免疫治療でのこの抗体の役割を示唆している。BIWA1の適用をさらに限定しているものは、マウス抗体の免疫原性(患者12人のうち11人がヒト抗マウス抗体(HAMA)を発現した)、腫瘍全体にわたる不均一な蓄積、および抗体可溶性CD44複合体の形成である。WO02/094879は、HAMA反応を克服するように設計されたVFF−18のヒト化バージョン(BIWA4と称される)を開示している。BIWA4は、親VFF18抗体よりも抗原結合親和性が著しく低いことがわかった。驚くべきことに、低親和性BIWA4抗体は、高親和性BIWA8ヒト化VFF−18抗体よりも優れた腫瘍取り込み特性を有した。99mテクネチウム標識および186レニウム標識BIWA4抗体を患者33人の第1相臨床試験で評価することで、186Re標識BIWA4の場合の安全性、耐用性、腫瘍蓄積、および最大耐量を決定した。99mTc標識BIWA4の腫瘍関連取り込みであると思われる。186Re標識BIWA4の全ての用量で、数は安定した疾患であったにもかかわらず、何ら腫瘍反応がみられなかった。用量規定毒性が60mCi/m2で生じた。深刻な有害事像(血小板減少症、白血球減少症、および発熱)を呈すると思われる患者33人のうちの12人による有害実像の率が50〜65%であり、またそれらのうちの6人(全員が186Re標識BIWA4で処理)が疾患進行によって処置または追跡調査の過程で死亡した。患者2人がヒト抗ヒト抗体(HAHA)を発現した。186Re標識BIWA4の用量を段階的に増大させる第1相試験を患者20人で実施した。経口粘膜炎と用量規定血小板減少症および白血球細胞減少症とが観察され、1人の患者がHAHA反応を発現した。安定した疾患は、最高用量60mCi/m2で処置された5人の患者で認められた。達成された効能についての安全性および耐溶性の両方で許容可能であると考えられるにもかかわらず、これらの研究は、臨床研究での他の非放射性同位元素複合生物学的療法と比較して高率の有害事像を持つ。米国特許出願第2003/0103985号は、腫瘍治療で使用されるBIWI1と称されるメイタンシドと複合化したVFF−18のヒト化バージョンを開示する。ヒト化VFF18抗体(BIWA4)は、毒素と複合化する場合(すなわちBIWI1)、ヒト表皮状外陰癌(咽頭または乳癌の扁平上皮癌)のマウス・モデルで顕著な抗腫瘍効果を持つことがわかった。非複合化バージョン(BIWA4)は、抗腫瘍効果を示さず、また複合化バージョン(BIWI1)はヒトでの安全性または有効性についての証拠を何ら示さなかった。
【0007】
MabU36は、UM−SCC−22Bヒト下咽頭癌細胞免疫化ならびに癌および組織特異性の選択によって産生するマウスIgG1抗体である。cDNAクローニングおよび配列分析を介した抗原の特徴付けは、MabU36の標的としてケラチノサイト特異的CD44スプライス変異体エピカンのv6ドメインを同定した。免疫組織化学研究は、細胞膜に限定されるエピトープを示す。さらにまた、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の94%がMabU36によって強く標識され、これらの腫瘍の範囲内で細胞が均一に染色された。患者10人での99mTc標識MabU36研究は、HNSCC癌の選択的蓄積を示した(2日で20.4+/−12.4%注入量/kg)。副作用は報告されなかったけれども、患者二人にHAMAが発現した。放射性ヨウ素化マウスMabU36での研究では、患者18人中3人がHAMAの症状を呈し、HNSCCでの選択的同種取り込みがみられた。MabU36の抗原性を減少させ、かつHAMAの率を低下させるために、キメラ抗体を作製した。キメラまたは本来のマウスMabU36はいずれもADCC活性を持たない。MabU36の野生型機能活性の証拠はない。治療薬としてのMabU46の有用性を186Re標識キメラMabU36を用いて判断した。この用量を段階的に増大させる第1相試験では、患者13人がスカウティング用量(scouting dose)の99mTc標識キメラMabU36を受けた後に186Re標識キメラMabU36を受けた。急性有害事象は報告されなかったが、患者3人のうち2人に、処置用量規制骨髄毒性(1.5GBq/m2)後に急性有害事象がみられ、最大耐量(1.0GBq/m2)で処置された1人の患者に血小板減少症が観察された。腫瘍サイズに対しては何らかの効果がみられたが、処置に対する目的反応に関する判定基準は満たさなかった。顆粒球コロニー刺激因子を用いる戦略を使用した186Re標識キメラMabU36のさらなる研究は、全血再注入を刺激して、最大許容活性を2.8Gyまで倍加させた。頭頸部の種々の腫瘍を有する9人の患者に対するこの研究では、3人が薬物関連貧血症のため輸血を必要とした。他の毒性として、グレード3の骨髄毒性とグレード2の粘膜炎とが挙げられる。安定した疾患が患者5人で3〜5ヶ月で達成されたにもかかわらず、目的腫瘍反応は何ら報告されなかった。したがって、MabU36が高特異的抗体であるにもかかわらず、達成された臨床効果に関連した治療に伴う毒性のため、抗癌効果を達成するために放射性免疫複合体が必要であるという欠点がその有用性を制限する。
要約すると、CD44v6(1.1ASML)およびCD44v10(K926)モノクローン抗体によって転移性膵臓腺癌を注射されたラットまたは悪性黒色腫を注射されたマウスでの転移活性がそれぞれ減少することが示された。別の抗CD44v6抗体(VFF−18およびその誘導体)は、メイタンシノイドまたは放射性同位元素と複合体を形成した場合のみに、抗腫瘍効果を持つことが示された。抗標準CD44モノクローン抗体もまた、ラット・グリア芽細胞種(抗CD44)による脳内進行、マウスT細胞リンパ腫(IM−7.8.1)によるリンパ節浸潤を抑制するほかに、ヌード・マウスのヒト卵巣癌培養細胞株(クローン515)の移植、マウス悪性腫瘍培養細胞株(IM−7.8.1)の肺転移、およびSCIDマウスでのヒト悪性腫瘍培養細胞株(GKW.A3)の転移を阻害することが示された。放射性同位元素は、MabU36抗CD44v6抗体およびその誘導体と複合体を形成し、著しい毒性を伴う臨床試験で抗腫瘍活性を有した。これらの結果は、潜在的な癌治療として抗CD44モノクローン抗体の開発を奨励し、かつ支持するものであるにもかかわらず、効果、安全性、またはヒト癌への適用性についての限界を示している。
したがって、もし癌細胞の細胞障害性を媒介する抗体組成物が単離された場合、その細胞上のCD44の細胞表面発現とのその親和性の機能として、有益な診断的および治療的手順が実現するであろう。
【0008】
先行特許:
米国特許第5,750,102号は、患者由来の細胞または組織からクローニングすることが可能であるMHC遺伝子をその患者の腫瘍細胞にトランスフェクションするプロセスを開示している。次に、これらのトランスフェクト細胞を用いて患者に対するワクチン接種をおこなった。
米国特許第4,861,581号は、哺乳類の腫瘍細胞および正常細胞の、細胞外ではなく細胞内の構成要素に対して、特異的なモノクローン抗体を得るステップと、治療を受けた哺乳類組織に標識抗体を接触させて腫瘍細胞を殺すステップと、変性している腫瘍細胞の細胞内構成要素に対する標識抗体の結合を測定することによって、治療の有効性を決定するステップとを有するプロセスを開示している。ヒト細胞内抗体に対する抗体を調製する際に、特許権者は悪性細胞がそのような抗原の簡便な供給源を表すことを認識する。
米国特許第5,171,665号は、新規抗体とそれを生産するための方法とを提供する。具体的には、この特許はヒト腫瘍(例えば大腸および肺の腫瘍)に関連したタンパク質抗原に強く結合する一方で、正常細胞に対する結合がかなり小さい性質を持つモノクローン抗体の形成を示唆している。
米国特許第5,484,596号は、癌治療の方法を提供するもので、この方法は、ヒト癌患者から腫瘍組織を外科的に取り除くこと、腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を得ること、この腫瘍細胞に放射線照射して生存可能ではあるが非発癌性にすること、ならびに該細胞を用いて原発腫瘍の再発を阻害する一方で同時に転移を阻害することができる患者のためのワクチンを調製することを含む。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローン抗体の開発を教示する。第4段落45行(以下参照)に示されるように、特許権者はヒト腫瘍形成で活発な特異的免疫療法を発現するモノクローン抗体の開発に自発腫瘍細胞を利用している。
米国特許第5,693,763号は、ヒト癌に特有であり、起源である上皮組織に依存しない糖蛋白抗原を教示している。
米国特許第5,783,186号は、Her2発現細胞でアポトーシスを誘導する抗Her2抗体、この抗体を産生するハイブリドーマ培養細胞株、この抗体を用いて癌を処置する方法、およびこの抗体を含む医薬組成物に関する。
米国特許第5,849,876号は、腫瘍および非腫瘍組織源から精製されたムチン抗原に対するモノクローン抗体生産のための新規ハイブリドーマ培養細胞株を記載している。
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に対して特異的な抗体を産生するヒト・リンパ球を生産する方法、モノクローン抗体を産生する方法、さらにまたこの方法によって生産されるモノクローン抗体に関する。この特許は、より具体的には、癌の診断および処置に有用な抗HDヒト・モノクローン抗体の生産に関する。
米国特許第5,869,045号は、ヒト癌細胞と反応する抗体、抗体フラグメント、抗体複合体、および単鎖免疫毒素に関する。これらの抗体が作用する機能は、それらの分子がヒト癌の表面に存在する細胞膜抗原と反応するという点で、さらに該抗体が、結合に続いて、癌細胞内に内在化することができるという点で、2倍であることから、これらの抗体が抗体薬物および抗体毒素複合体形成に特に有用となる。それらの非修飾型では、これらの抗体もまた特定の濃度で細胞毒性を示す。
米国特許第5,780,033号は、腫瘍治療および予防のための抗体の使用を開示する。しかし、この抗体は、高齢の哺乳類から得た抗核自己抗体である。この場合、自己抗体は免疫系で見いだされる自然抗体の一種であると考えられる。自己抗体が「高齢の哺乳類」から生ずることから、処置されている患者から自己抗体が実際に生ずる必要はない。また、この特許は老いた哺乳類に由来する天然かつモノクローンの抗核自己抗体と、モノクローン抗核自己抗体を産生するハイブリドーマとを開示する。
米国特許第5,916,561号は、CD44遺伝子の変異エクソンv6に対する特異的抗体VFF−18およびその変異体を開示している。この抗体は、ラットCD44v6変異体よりもヒトCD44v6変異体を認識する点で、比較抗体を凌ぐ改善である。また、この抗体はCD44v6発現の診断用アッセイを開示する。この抗体に関しては、生体外(in vitro)または生体内(in vivo)機能はみられなかった。
米国特許第5,616,468号は、CD44遺伝子のヒト・エクソン6Aによってコードされた配列を含む合成ペプチドに対して産生されたモノクローン抗体Var3.1を開示している。具体的には、この抗体は90kD型のヒトCD44には結合しないことから、Hermes−3抗体と区別される。CD44のv6変異体を検出する方法が提供されるとともに、この抗原に基づいた悪性形質転換をスクリーニングして検査する方法もまた、提供する。また、血清中に含まれる抗原の検出に基づいた炎症疾患のスクリーニング法も、提供する。
米国特許第5,879,898号は、43アミノ酸ペプチドを産生するヒトCD44変異体6の129bpエクソンに結合する特異的抗体を開示している。このモノクローン抗体は、いくつかのハイブリドーマ培養細胞株MAK<CD44>M−1.1.12、MAK<CD44>M−2.42.3、およびMAK<CD44>M−4.3.16で産生される。抗体は、新規CD44v6アミノ酸配列の少なくともヘキサペプチドを含む融合タンパク質から生ずる。さらに、癌診断用として用いることができるエクソン6変異体の検出のための免疫アッセイが開示されている。注目に値すべきことは、この開示された抗体の生体外(in vitro)または生体内(in vivo)機能が存在しないことである。
米国特許第5,942,417号は、CD44様ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、このポリヌクレオチドおよびその変異体を用いて組換え体タンパク質を製造する方法とを開示する。抗体は、これらのポリペプチドに対してクレームされるが、具体的な例がなく、また具体的もなく、そのような抗体を分泌する寄託クローンも存在しない。ノーザン・ブロットは、いくつかの種類の組織でポリヌクレオチドの外観を示すが、このポリペプチドの翻訳および発現があるという付随的な証拠は存在しない。したがって、このポリペプチドの遺伝子産物に対して作られる抗体があること、それらの抗体が生体外(in vitro)または生体内(in vivo)機能のいずれかを持つと思われるということ、ならびにそれらがヒト眼疾患に関連するかどうかについての証拠はない。
米国特許第5,885,575号は、CD44の変異エピトープと反応する抗体と、この抗体を用いることで変異体を同定する方法とを開示している。この変異体は、コードする単離ポリヌクレオチドをラット細胞から単離されたものであり、この変異体に対する抗体mAb1.1ASMLは分子量120kD、150kD、180kD、および200kDのタンパク質を認識する。モノクローン抗体1.1ASMLの投与は、同種同系のラットでラットBsp73ASMLの成長および転移を遅らせた。注目に値すべきことは、1.1ASMLは、LCLC97ヒト大細胞型肺癌に対する活性の欠如によって示されるように、ヒト腫瘍を認識しない。ヒト相同体は、LCL97から単離されたが、この相同体を認識する等価抗体は産生されなかった。したがって、ラットCD44の変異体に特異的な抗体が産生され、かつラット腫瘍の成長および転移に影響を及ぼすことが示されたにもかかわらず、ヒト腫瘍に対するこの抗体の効果についての証拠はない。より具体的には、発明者はこの抗体がヒト癌を認識しないと指摘している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,750,102号
【特許文献2】米国特許第4,861,581号
【特許文献3】米国特許第5,171,665号
【特許文献4】米国特許第5,484,596号
【特許文献5】米国特許第5,693,763号
【特許文献6】米国特許第5,783,186号
【特許文献7】米国特許第5,849,876号
【特許文献8】米国特許第5,869,268号
【特許文献9】米国特許第5,869,045号
【特許文献10】米国特許第5,780,033号
【特許文献11】米国特許第5,916,561号
【特許文献12】米国特許第5,616,468号
【特許文献13】米国特許第5,879,898号
【特許文献14】米国特許第5,942,417号
【特許文献15】米国特許第5,885,575号
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、以前に、癌疾患の処置に有用であるカスタマイズ化された抗癌抗体を個々に選択するプロセスに関する「個々の患者に特異的な抗癌抗体」と題した米国特許第6,180,357号の交付を受けた。この書類の目的のために、用語「抗体」および「モノクローン抗体」(mAb)を同義的に用い、ハイブリドーマ(例えばマウスもしくはヒト)および免疫複合体によって産生される免疫グロブリン、必要に応じて免疫グロブリンのフラグメント、ならびに免疫グロブリン由来の組換えタンパク質、例えばキメラおよびヒト化免疫グロブリン、F(ab’)およびF(ab’)2フラグメント、単鎖抗体、組換え免疫グロブリン可変領域(Fv)、融合タンパク質等のことをいう。いくつかのアミノ酸配列がタンパク質の構造または機能に対して有意に作用することなくポリペプチド内で変化し得ることは、当該技術分野で十分認識されている。抗体の分子再配置では、主鎖領域の核酸もしくはアミノ酸配列での修飾が通常、許容的であり得る。これらは、限定されるものではないが、置換(好ましくは保存的置換)、欠失、または付加が挙げられる。さらに、標準的な化学療法(例えば、放射性核種)を本発明のCDMABとともに活用することで、上記化学療法の使用に重点を置く。CDMABもまた、毒素、細胞毒部分、酵素(例えばビオチン複合酵素)、または造血細胞と複合体を形成することができる。
この出願は、癌疾患修飾モノクローン抗体をコードするハイブリドーマ培養細胞株を単離するために、’357特許で教示されたように患者特異的抗癌抗体を生産するための方法を、実質的に利用する。これらの抗体は、1つの腫瘍に対して特異的に作られるので、癌治療のカスタマイズが可能になる。この出願の文脈の中で、細胞致死(細胞毒性)または細胞成長阻害(細胞静止)特性のいずれかを持つ抗癌抗体を以下、細胞毒性という。これらの抗体を、癌の病期分類および診断の補助に用いることができ、腫瘍転移と同様に原発腫瘍の処置に用いることができる。
個別的な抗癌処置が期待されることで、患者を管理する方法にも変化がもたらされる。考えられる臨床シナリオは、診察時に腫瘍試料を得て、それを保存(バンク)することである。この試料を用いて、既存の癌疾患修飾抗体のパネルによる癌のタイプ分けができる。患者は、従来通りに病期分類されるが、利用可能な抗体を用いて患者をさらに病期分類することができる。患者を既存の抗体で直ちに処置することができる。さらに/あるいは、腫瘍に対して特異的な抗体のパネルを、本明細書中に概説される方法を用いて、またはファージ提示ライブラリを本明細書に開示したスクリーニング方法と組み合わせて用いることで、生産することができる。生ずるすべての抗体を抗原抗体のライブラリに加える。なぜなら、他の腫瘍は処置しているエピトープと同じエピトープのいくつかを持ち得るからである。この方法により生産さされる抗体は、該抗体に結合する癌を有する任意の数の患者での眼疾患処置に有用であると考えられる。
【0011】
米国特許第6,180,357号のプロセスを実質的に用いると、マウス・モノクローン抗体H460−16−2が、患者の肺腫瘍生検によって得られた細胞によるマウスの免疫化後に得られた。H460−16−2抗原が、異なる組織に由来する広範囲のヒト培養細胞株の細胞表面上で発現した。乳癌培養細胞株MDA−MB−231(MB−231)および皮膚癌細胞A2058は、生体外(in vitro)でのH460−16−2の細胞毒性効果の影響を受けやすい。
培養中のMB−231細胞に対するH460−16−2の細胞毒性の結果は、該細胞がマウスに移植された場合、H460−16−2の抗腫瘍活性が癌細胞に向けられることで、さらに拡大された(S.N.10/603,000に概説されたように)。症状発現前異種移植腫瘍モデルは、治療効力の有効な予測手段と考えられる。
ヒト乳癌予防生体内(in vitro)モデルでは、H460−16−2処置は、アイソタイプ対照抗体と比較して処置期間中の腫瘍成長抑制が有意に効果的(p<0.0001)であった。このアイソタイプ対照抗体は、H460−16−2と構造およびサイズが同一ではなるが、MB−231細胞と結合することができない。処置相の終了後、H460−16−2を与えられたマウスの腫瘍は、対照群のわずか1.3パーセントまでしか成長しなかった。後処置追跡調査期間中、H460−16−2の処置効果が持続し、処置群での平均腫瘍容積が、測定相の終わりまで対照群よりも有意に小さいままであった。抗体効力の測定として生残性を用い、後処理70日目でH460−16−2処置群での致死リスクが抗体緩衝液対照群の訳71パーセントであると推定された(p=0.028)。これらのデータは、対照処置群と比較して、H40−16−2によって延命効果が与えられることを証明した。体重減少および臨床苦痛等の毒性の兆候をなんら誘導しなかったことから、H460−16−2処置は安全に見えた。したがって、H460−2処置は、ヒト乳癌の安定したモデルで対照処置群と比較して腫瘍成長を遅延させて生存を高めることから、有効であった。
【0012】
さらに、H460−16−2は、確立された生体内(in vivo)腫瘍モデル(S.N.10/603,000に概説されるように)でMB−231細胞に対する抗腫瘍活性を示した。H460−16−2による処置を標準の化学療法薬であるシスプラチンと比較したところ、シスプラチンとH460−16−2処置群とが、抗体希釈緩衝液またはアイソタイプ対照降誕のいずれかによって処置された群と比較して、腫瘍容積が有意に小さいこと(p<0.001)が示された。H460−16−2処置が腫瘍抑制を媒介した。この腫瘍抑制はシスプラチン化学療法による腫瘍抑制の約2/3であったが、有意な(19.2%)体重減少は見られず(p<0.003)、また臨床苦痛(例えば、シスプラチン処置で観察された2件の処置関連死を含む)が見られなかった。H460−16−2の抗腫瘍活性およびその最小毒性から、H460−16−2が魅力的な抗癌治療薬となる。
後処置期間では、H460−16−2は有意な延命効果(p<0.02)を示した。H460−16−2群での致死リスクが、処置後70日未満ではアイソタイプ対照抗体群での致死リスクの約半分であった。観察された延命効果は、後処理120日以上にわたって続き、アイソタイプ対照およびシスプラチン処置マウスの100パーセントが死亡したのに対して、H460−16−2処置群では67パーセントであった。H460−16−2は、アイソタイプ対照抗体群と比較して、腫瘍成長を26パーセントまで遅らせることで腫瘍抑制を維持した。後処理31日目で、H460−16−2は、アイソタイプ対照群と比較して48パーセントまで腫瘍成長を減少させることで(処置の終わりに観察された49パーセント減少と同等)、腫瘍サイズを制限した。乳癌の定着腫瘍モデルでは、これらの結果は、処置相を超えて腫瘍抑制を保ち、かつ全身腫瘍組織量を減らして、哺乳類での生存を高める抗体の能力を示すH460−16−2の可能性を示している。
薬物標的としてH460−16−2を検証するために、正常ヒト組織でのH460−16−2の発現は既に決定された(S.N.10/603,000)。この研究は、抗CD44抗体(クローンL178)との比較によって拡大された。H460−16−2によるIHC染色によって、大部分の組織は、再びH460−16−2抗原を発現させることに失敗し、肝臓、腎臓(管状上皮細胞の縁染色を除く)、心臓、および肺という不可欠な器官の細胞を含む。組織染色から得られた結果は、H460−16−2が種々の細胞型に対する結合が制限されていることを示したが、浸潤マクロファージ、リンパ球、および線維芽細胞に対する結合を有した。L178抗体は、類似の染色パターンを示した。しかし、重要ないくつかの違いがあった。すなわち、H460−16−2に比べてリンパ球の染色がより強く、またL178による幅広い分布を呈することである。また、肝臓試料の1つでは、L178がクッパー細胞を染色し、その一方でH460−16−2による染色はみとめられなかった。乳癌患者におけるH460−16−2抗原の局在化およびその広がりは、患者に対するH460−16−2免疫療法の有益性の評価および効果的臨床試験の設計で重要である。癌患者の乳房腫瘍でのH460−16−2抗原発現に対処するために、個々の乳癌患者50人から得た腫瘍試料をH4460−16−2抗原の発現について事前にスクリーニングした(S.N.10/603,000)。本研究は、L178に対してH460−16−2の染色を比較した。本研究の結果は、以前の結果と類似しており、組織試料の62パーセントがH460−16−2抗原に関して陽性に染色され、乳房腫瘍組織の76パーセントがL178エピトープに関して陽性に染色されることが示された。患者試料内でのH460−16−2の発現は、染色が悪性細胞に限定されていたことから、癌細胞に対して特異的であるように見えた。対照的に、H460−16−2は乳癌患者由来の正常組織の10試料のうち4つの試料を染色し、一方L178は6つを染色した。H460−16−2およびL178抗原の両方での乳房腫瘍発現は、主に悪性細胞の細胞膜に局在化するように見え、CD44を治療のための魅力的な標的にする。H460−16−2発現は、さらに乳房腫瘍の発生、処置、および予後に重要な役割を果たすホルモン・エストロゲンおよびプロゲステロンの受容体の乳房腫瘍発現に基づいて評価した。H460−16−2抗原の発現とエストロゲンまたはプロゲステロンのいずれかに対する受容体の発現との間に、相互関係が存在しないことが明らかであった。腫瘍の病期分類または癌が進行する度合いに基づいて腫瘍を分析した場合も、H460−16−2抗原と腫瘍病期分類との間に明らかな相関はなかった。同様の結果は、L178で得られた。
【0013】
H460−16−2の潜在的な治療上の利点をさらに広げるために、種々のヒト癌組織での抗原の頻度および局在化もまた、既に決定されていた(S.N.10/603,000)。本研究は、H460−16−2の染色をクローンL178と比較した。これらの腫瘍型の大部分もまた、L178抗原が陽性でもあった。ヒト乳房腫瘍組織と同様に、H460−16−2およびL178局在化は、腫瘍細胞膜上でも生じた。しかし、H460−16−2抗体と比較して、L178による実質的により多くの膜局在化があった。また、H460−16−2およびL178の両方で染色された腫瘍型の組織の43%が、L178抗体による染色がより強いことが示された。これらは、文献からのIHCデータとの比較に基づいて、本明細書中に示されたIHCデータと性格に一致するCD44の形態がないように見えた。CD44の標準的形態は、通常、ヒト脳で発現され、H460−16−2抗原は発現されない。汎CD44イソフォームに対する抗体は、肝臓(クッパー細胞を含む)を染色せず、生殖周期のすべての相で子宮内膜腺を陽性染色する。H460−16−2抗原は明らかにクッパー細胞上に存在し、生殖周期の分泌子宮内膜腺上のみに存在する。H460−16−2抗原は、明らかに組織マクロファージ上に存在し、また変異体形態V4/5およびV8/9は副次的なマクロファージ染色を示す。抗CD44L178と比較してH460−16−2で見られる類似はしているが異なった結合パターンは、H460−16−2抗原がCD44の固有のエピトープであることを示している。
本明細書中に概説されるように、追加の生化学的データもまた、H460−16−2によって認識される抗原がCD44の形態の1つであることを示している。このことは、CD44と反応するモノクローン抗体(L178)が、免疫沈降によってH460−16−2に結合したタンパク質を同定することを示す研究によって、支持される。ウエスタン・ブロッティングによる研究もまた、H460−16−2によって認識されたCD44のエピトープがv6またはv10に存在しないことを示唆している。H460−16−2エピトープもまた、炭水化物および立体配座依存性によって特徴づけられる一方で、多くの抗CD44抗体がCD44のペプチド部分に向けられる。これらのIHCおよび生化学的結果は、H460−16−2がCD44抗原の変異体と結合することを示す。したがって、証拠の優位性は、H460−16−2が、CD44変異体上に存在する固有の炭水化物依存型立体配座エピトープのライゲーションを介して抗癌効果を媒介する。
全体として、このデータは、H460−16−2抗原が癌関連抗原であり、ヒトで発現され、さらに病理学的関連性のある癌標的であることを示している。さらに、このデータはヒト癌組織に対するH460−16−2の結合を示し、診断、治療の予測、あるいは予後であり得るアッセイに適当に使用することができる。また、この抗原の細胞膜局在化は、ほとんどの非悪性腫瘍での抗原の発現を欠いていることによる細胞の癌病期分類を示し、この観察によって、診断、治療の予測、または予後であり得るアッセイに使用されるこの抗原、その遺伝子または誘導体、およびそのタンパク質または変異体の使用を可能にする。
【0014】
他の研究は、抗CD44抗体の使用を伴うもので、H460−16−2によって示されない治療可能性の限界を有する。H460−16−2は、生体外(in vitro)および生体内(in vivo)抗腫瘍活性を示す。既に説明した抗体、例えばMAK<CD44>M−1.1.12、MAK<CD44>M−2.42.3、およびMAK<CD44>M−4.3.16は、それらおよびVFF−18に起因する生体外(in vitro)および生体内(in vivo)細胞毒性を有するものではなく、またVFF−18およびMabU36も内因性の腫瘍細胞毒性を示さなかった。さらに加えて、生体内(in vivo)腫瘍効果を持つ他の抗CD44抗体もまた、H460−16−2で明白でない特定の限界がある。例えば、ASML1.1、K926、抗CD44、およびIM−78.1は、ラット、マウス、異種移植モデルでのラットおよびマウス腫瘍成長に対する生体内(in vivo)抗腫瘍活性をそれぞれ示す。H460−16−2は、ヒト癌モデルでの抗腫瘍活性を示す。H460−16−2もまた、ヒトCD44に向けられたものであり、一方ASML1.1等の抗体はラットCD44のみを認識する。クローン515抗CD44抗体は、ヒト卵巣培養細胞株の腹膜腫瘍移植を阻害するが、腫瘍成長を抑制または阻害しない。H460−16−2は、SCIDマウス異種移植モデルでのヒト乳房腫瘍成長を抑制することが可能である。GKW.A3は、抗ヒトCD44モノクローン抗体であり、予防的ではあるが確立されたものではないモデルで、マウスでのヒト転移性黒色腫の腫瘍成長を阻害することが可能である。H460−16−2は、ヒト乳癌の予防的および確立されたマウス異種移植モデルでの顕著な抗腫瘍活性を示した。その結果、H460−16−2が既に記述された抗CD44抗体と比較して優れた抗腫瘍特性を有することはまったく明瞭である。SCIDマウスでのヒト乳房腫瘍に対する生体外(in vitro)および生体内(in vivo)抗腫瘍活性の両方を示し、ヒトCD44に向けられる。ヒト乳癌の予防的および確立(より臨床的に関連)モデルで活性も示す。
【0015】
全体として、本発明はH460−16−2抗原を治療薬の標的として使用することを教示しており、投与された場合、哺乳類で抗原を発現している癌の全身腫瘍組織量を減少させることができ、また処置された哺乳類の生存期間の延長に至ることもできる。この発明はまた、CDMAB(H460−16−2)およびその誘導体を使用し、それの抗原を標的化し、哺乳類で抗原を発現している癌の全身腫瘍組織量を減少させ、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳類の生存を伸ばすことを教示している。さらに、この発明はまた、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳類の診断、治療の予測、および予後に有用であり得る癌細胞でのH460−16−2抗原の検出を用いることが教示されている。
もし患者が治療または転移発現の最初の過程に対して、患者が無反応である場合、その腫瘍に対する特異的抗体を生成するプロセスを繰り返して、再処置をおこなうことができる。さらに、その患者から得た赤血球細胞と抗癌抗体との複合体を作り、それを再注入することで転移の処置をおこなうことができる。転移癌および転移に対しては効果的な処置が殆どなく、大抵の場合、死に至る哀れな結果の兆しになる。しかし、転移によって血管新生がかなり生じるので、赤血球は抗癌抗体の送達によってその腫瘍部位に抗体を集中させる効果を奏することができる。転移前であっても、大部分の癌細胞の生存は、宿主の血液供給に依存していることから、同様に、赤血球に結合させた抗癌抗体は元位置(in situ)の腫瘍に対して有効であるにちがいない。あるいは、そのような抗体と、他の造血細胞、例えばリンパ球、マクロファージ、単球、およびナチュラルキラー細胞とを結合させることも可能である。
【0016】
一般に抗体には5つの種類があり、各々がそのH鎖によって与えられる機能と関係している。裸の抗体による癌細胞致死によって、抗体依存型細胞媒介細胞毒性(ADCC)または補体依存細胞毒性(CDC)のいずれかを通して媒介されると、一般に考えられている。例えば、IgMおよびIgG2a抗体は、補体系C−1成分の結合によってヒト補体を活性化し得ることから、腫瘍溶解に至ることができる補体活性化の古典経路を活性化させることができる。ヒト抗体については、最も効果的な補体活性化抗体は、概ねIgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3アイソタイプのマウス抗体は、細胞毒性細胞を補充する場合に効果的であり、単球、マクロファージ、顆粒球、および特定のリンパ球によって細胞致死に至るFc受容体を持つ。IgG1およびIgG3アイソタイプのヒト抗体は、ADCCを媒介する。
抗体媒介癌致死の別の可能性のある機構は、抗体の使用を介するものと考えられ、それは細胞膜およびその関連糖蛋白または糖脂質(所謂触媒抗体)内の種々の化学結合の加水分解を触媒するために機能する。
より広く受け入れられている抗体媒介癌細胞致死の付加的機構が2つある。最初の1つは、癌細胞に存在する推定上の抗原に対して免疫応答を生ずるために身体に、身体を誘導するためにワクチンとして抗体を使用することである。第2は、標的成長受容体に対して抗体を用いることで、それらの機能と干渉するか、その機能が効果的に喪失されるようにして、上記受容体を下方制御することである。
【0017】
したがって、本発明の目的は、癌細胞に関して細胞毒性がる特定の個人に由来する細胞から疾病患修飾抗体を産生し、その一方で同時に非癌細胞に対して非毒性であり、ハイブリドーマ培養細胞株および該ハイブリドーマ培養細胞株がコードされる対応の単離モノクローン抗体およびその結合フラグメントを単離する方法を利用することである。
本発明の別の目的は、ATCCにPTA−4621として寄託されたクローンによってコードされる単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントに対して特異的に結合するCD44の抗原性部分を発現する細胞の存在を決定するためにATCCにPTA−4621として寄託されたクローンによってコードされる単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントを利用する方法を教示することである。
本発明のさらなる目的は、ATCCにPTA−4621として寄託されたクローンによってコードされ、CD44の抗原性部分に対して抗体特異的に結合する単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して、癌患者を持つ患者の生存を高める方法を教示することである。
本発明のさらなる目的は、CDMABおよびその抗原結合フラグメントを教示することである。
本発明のさらなる目的は、ADCCを介して細胞毒性が媒介されるCDMABを産生することである。
本発明のさらなる目的は、CDCを介して細胞毒性が媒介されるCDMABを産生することである。
本発明のさらなる目的は、細胞毒性が細胞化学結合の加水分解を触媒する能力の関数であるCDMABを生産することである。
本発明のさらなる目的は、診断、予後、および癌のモニタリングにとって毛結合アッセイが有用であるCDMABを生産することである。
この発明の他の目的および利点は、図および実施例、この発明の特定の実施形態によって述べられる以下の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
特許または出願ファイルは、少なくとも1枚のカラー仕上げされた図面を含む。カラー図面を有するこの特許または特許出願公報の写しは、特許庁に請求して必要な手数料を支払うことで得られる。
【図1】H460−16−2によって精査したMADA−MB−468膜のウエスタン・ブロットである。レーン1:還元条件下で分離した膜タンパク質。レーン2:非還元条件下で分離した膜タンパク質。分子量マーカーを左側に示す。
【図2】H460−16−2によって精査した膜のウエスタン・ブロット。レーン1:MADA−MB−468膜。レーン2:MDA−MB−231膜。 分子量マーカーを左側に示す。
【図3】MADA−MB−468膜タンパク質の2次元ウエスタン・ブロットおよびSDS−PAGE。パネルAは、H460−16−2で認識された2つのタンパク質の位置を示す。パネルBは、アイソタイプ対照抗体を用いて精査した同様のブロットを示す。パネルCは、MADA−MB−468膜のシプロ・ルビー(SYPRO Ruby)染色ゲルを示す。矢印は、パネルAに対応するタンパク質スポットの位置を示す。
【図4】MDA−MB−231膜タンパク質の2次元ウエスタン・ブロット。主結合タンパク質を矢印で示す。
【図5】MDA−MB−231膜へのH460−16−2の結合に対する脱グリコシル化の効果。パネルAは、ウエスタン・ブロットでのH460−16−2と、未処理MDA−MB−231細胞膜(レーン2)、37℃、24時間でグリコシダーゼ処理した膜(本文参照)(レーン3)、および25℃、24時間でグリコシダーゼ処理した膜(レーン4)との結合を示す。レーン1は、分子量マーカーの位置を示す。パネルBは、同様のブロットへの高マンノース結合レクチンGNAの結合を示す。
【図6】H460−16−2で免疫沈降したMDA−MB−231膜タンパク質のSDS−PAGE(パネルA)およびウエスタン・ブロット(パネルB)。レーン1:全MDA−MB−231膜タンパク質。レーン2:H460−16−2免疫沈降タンパク質。矢印は、80〜90kDのH460−16−2結合タンパク質を示す。
【図7】H460−16−2(パネルA)、抗CD44(クローンL178、パネルB)、および抗HSP90(パネルC)を用いて精査したタンパク質のウエスタン・ブロット。レーン1:全MDA−MB−231膜タンパク質。レーン2:H460−16−2免疫沈降タンパク質。レーン3:分子量標準。
【図8】H460−16−2(パネルA、レーン2)を用いて精査したタンパク質のウエスタン・ブロット、抗CD44(クローンL178、パネルB、レーン2)、抗CD44var6(クローンVFF−7、パネルC、レーン2)、および抗CD44var10(クローンVFF−14、パネルD、レーン2)。各ブロットのレーン1は、分子量標準を含む。
【図9】FACSによるH460−16−2結合の典型的なヒストグラム。H460−16−2(20μg/mL)、107.3アイソタイプ対照(20μg/mL)、および抗EGFR(5μg/mL)結合のヒストグラムを、乳癌(MDA−MB−231およびMDA−MB−468)ならびに正常(Hs578BstおよびCCD−27sk)培養細胞株について示した。
【図10】正常ヒト・アレイから得た扁桃腺組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)によって得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。リンパ小節(黒色矢印)のマントルゾーンにより限定された染色であり、かつ弱く染まった芽中心(緑色矢印)を残すAR460−16−2と比べて、L178によるリンパ球の染色が強くかつ幅広く分布している。倍率は200倍である。
【図11】正常ヒト組織アレイから得た肝臓組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)によって得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178による肝類洞クッパー細胞染色(矢印)が示されるが、H460−16−2によるものはない。倍率は200倍である。
【図12】乳癌腫瘍(浸潤性導管癌)に対するH460−16−2の典型的な顕微鏡写真。パネルに示す黄色および橙色の矢印は、それぞれ間質細胞および悪性細胞シートを示している。倍率は100倍である。
【図13】ヒト乳癌組織アレイから得られたベージェット病乳房組織に対するH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)により得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178によって悪性細胞(矢印)が膜染色されているのに対して、H460−16−2による染色はネガティブである。倍率は200倍である。
【図14】ヒト多重腫瘍組織アレイから得た子宮頸部扁平上皮癌組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)により得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178よりもH460−16−2のほうが強く悪性腫瘍を膜染色している。倍率は200倍である。
【図15】ヒト多重腫瘍組織アレイから得た腺癌肺組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)により得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178による悪性細胞(矢印)のスコアは+++であり、H460−16−2によるスコアは±である。倍率は200倍である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
ウエスタン・ブロットによる結合タンパク質の同定
抗体H460−16−2によって認識される抗原を同定するために、この抗原を発現する細胞膜をゲル電気泳動にかけ、さらに膜へ移した。ウエスタン・ブロットは、この抗体によって検出されるタンパク質を決定するために用いた。
1.膜調製
先行研究は、乳癌培養細胞株MDA−MB−231(MB−231)およびMDA−MB−468(MB−468)に対するH460−16−2のFACSによる結合を示した。したがって、これら2種類の培養細胞株から得た膜試料を用いて抗原の同定をおこなった。全細胞膜は、MB−231またはMB−468乳癌細胞の密集培養から調製した。培地をフラスコから取り除き、細胞をPBSで3回洗浄した。最終洗浄後、解離緩衝液(ギブコ(Gibco)−BRL、グランドアイランド、NY)、37℃、5分間によって細胞を解離させた。細胞を回収し、1,200rpmで4℃、10分間遠心した。遠心後、細胞ペレットを、1mLの低張緩衝液(10μg/mLロイペプチン、10μg/mLアプロトニン、および25μg/mL4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドを含有)に再懸濁した。次に、急速凍結および解凍を5回繰り返して細胞の溶解をおこなった。細胞溶解物を9,500rpmで4℃、10分間遠心し、核粒子を取り除いた。上清を回収し、続いて75,000xgで4℃、57分間遠心した。管から上清を注意深く取り除き、ペレットを0.5ないし1mLの高張溶解緩衝液(1パーセントのトリトンX100を含有)に再懸濁した。次に、タンパク質含有量について膜をアッセイし、−80℃で保存した。
2.1次元SDS−PAGE
膜タンパク質の分離を、1次元SDSポリアクリルアミド・ゲル電気泳動でおこなった。20μgの膜タンパク質を12パーセントSDS−PAGEゲルのレーン上に載せた。前染色分子量マーカー(バイオラド(Biorad)、ミシサーガ、ON)を参照レーンに加えた。ジチオスレイトル(DTT)の非存在下、非還元条件下で電気泳動することで、試料の分離をおこなった。電気泳動は、100Vで10分間、続いて150Vで65分間おこなった。40Vで16時間にわたりエレクトロブロッティングをおこなうことで、タンパク質をゲルからPVDF(ミリポア(Millipore)、ビルリカ、MA)膜に移した。ゲルからその膜への前染色マーカーの完全移動を示すことで、定量的な移動を評価した。
移動後、5パーセント・スキムミルク粉末含有トリス(Tris)緩衝食塩水(0.5パーセントのツウィーン(Tween)含む)(TBST)で2時間にわたり、膜のブロッキングをおこなった。次に膜を、3パーセント・スキムミルク粉末含有TBSTに希釈した2〜2.5μg/mLのH460−16−2で2時間インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、ジャクソン・イムノロジカルズ(Jackson Immunologicals)(ウエスト・グローブ、PA)から入手した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と複合化したヤギ抗マウスIgG(Fc)で1時間インキュベートした。このインキュベーションの後にTBSTで3回洗浄し、続いてHRP基質TMB(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリントン、ONから入手した基質キット)によるインキュベーションをおこなった。
【0020】
図1は、記載どおりのウエスタン・ブロットの結果を示す。H460−16−2は明らかに、MB−468膜タンパク質の2分子量(MW)領域に結合する(レーン2)。分子量標準と比較することで、抗体がMW80〜90kDおよびMW120〜150kDのタンパク質に結合する。抗体H460−16−2によって認識されたエピトープは、立体配座エピトープであると考えられる。なぜなら、この抗体は、DTT存在下、還元条件下でゲルから移されたスポットに結合することができなかったからである(レーン1)。図2は、H460−16−2とMB−468(レーン1)およびMB−231(レーン2)細胞由来の膜との結合を比較する。MB−468膜では、H468−16−2が80〜90kDおよび120〜150kD両方のタンパク質と等しい強度で結合する。MB−231膜では、主結合タンパク質は80〜90kDタンパク質であり、120〜150kDの範囲内で同定された結合タンパク質の強度が劣る。
3.2次元SDS−PAGE
結合実体の分解能をより良くし、かつさらに詳しくタンパク質を特徴づけるために、2次元電気泳動を実施した。上記のとおりに調製した全膜タンパク質(70〜200μg)を、プラスワン2−Dクリーンアップ・キット(アマシャム(Amersham):ベー・ド・ウルフェ、QC)を用いて沈降させた後、pH範囲が3〜10の両性電解質含有再水和緩衝液で再懸濁させた。試料を遠心して粒状物質を取り除き、続いて再水和溶液IPGストライプ(アマシャム(Amersham):ベー・ド・ウルフェ、QC)上に載せた。以下のプロトコル、すなわちすなわち再水和16時間;500V、250V時間、1,000V、50V時間;5,000V、7,500V時間を用いて、タンパク質のフォーカシングをおこなった。次に、ストライプをストライプ・ホルダーから取り出し、SDS−PAGE平衡緩衝液でインキュベートした。15分後、ストライプを8パーセント・ゲル上に置き、アガロース溶液で密封した。前染色MWマーカーをストライプの脇に載せた。電気泳動を100Vで10分間、続いて150Vで65分間おこなった。複数のゲルのうちの1枚を10パーセント・メタノール/7パーセント酢酸で30分間にわたり固定した後、蛍光染料シプロ・ルビー(SYPRO Ruby)(登録商標)(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、ユージン、OR)で染色した。タンパク質スポットは、UV光下で可視化した。第2および第3のゲルについては、40Vで16時間にわたりエレクトロブロッティングをおこなうことで、それらのゲルからタンパク質をPVDF(ミリポア)膜に移した。定量的移動の評価は、ゲルから膜への前染色マーカーの完全移動を測定することでおこなった。
移動後、5パーセント・スキムミルク粉末含有トリス(Tris)緩衝食塩水(0.5パーセントのツウィーン(Tween)含む)(TBST)で2時間にわたり、膜のブロッキングをおこなった。次に、膜の1つを3パーセント・スキムミルク粉末含有TBSTに希釈した2〜2.5μg/mLのH460−16−2で2時間にわたりインキュベートした。同様の膜を同様の濃度のアイソタイプ対照(マウス抗トリニトロフェノール、IgG1、κ;クローン107.3(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON))でインキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、ジャクソン・イムノロジカルズ(Jackson Immunologicals)(ウエスト・グローブ、PA)から入手した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と複合化したヤギ抗マウスIgG(Fc)で1時間インキュベートした。このインキュベーションの後にTBSTで3回洗浄し、続いてHRP基質TMB(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリントン、ONから入手した基質キット)によるインキュベーションをおこなった。
【0021】
図3aは、H460−16−2でインキュベートしたMB−468膜から得たウエスタン・ブロットを示す。2つの異なる結合スポットが観察され、1次元電気泳動で得られたものと分子量が一致する。1つは、MW標準に基づいた分子量が約80〜90kDであり、pI3〜4と推定されるゲルの酸性部分に観察された。第2のスポットは、MW標準に基づいた分子量約120〜150kDにあり、80〜90kDタンパク質よりも塩基性側のpIを有している。図3bは、アイソタイプ対照抗体とインキュベートした膜から得たウエスタン・ブロットを示す。このブロットでは何らスポットが見えなかったことから、H460−16−2の結合が人食い的結合ではなかったことを示している。図3cは、MB−468膜タンパク質のシプロ・ルビー(SYPRO Ruby)(登録商標)染色2Dゲルを示す。注目すべきことは、同様のウエスタン・ブロットをMB−231膜で流した場合、80〜90kDスポットのみが観察されることである(図4)。
【実施例2】
【0022】
H460−16−2によって結合した抗体のグリコシル化の決定
抗体H460−16−2によって認識された抗原が糖タンパク質であるかどうかを決定するために、製造元のプロトコル(デグリコプロ(DeglycoPro)脱グリコシル化キット;プロザイム(Prozyme)、サンリアンドロ、CA)に従って、室温または37℃で24時間にわたり、MB−231膜をPNGアーゼF、エンド−O−グリコシダーゼ、およびシアリダーゼAとインキュベートした。記載どおりに1−Dポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によって膜を分離した後、記載どおりにウエスタン・ブロットをH460−16−2で実施した。
ウエスタン・ブロットの結果を図5に示す。グリコシダーゼ処理していないMB−468膜では、H460−16−2は予測85〜95kDバンドを認識した(図5、パネルA、レーン2)。25℃でグリコシダーゼ処理された膜では、このバンドが明確に低分子側に移動している(レーン4)。37℃でグリコシダーゼ処理された膜では、H460−16−2の結合が取り除かれている(レーン3)。脱グリコシル化の完全性を決定するために、同様のブロットを、高マンノース結合ガランサス・ニバリス(galanthus nivalis)凝集素(GNA)を用いて精査した。図5で観察された結果では、パネルBは、25℃(レーン4)では脱グリコシル化が不完全であり、また37℃(レーン3)では本質的に完了していることを示す。したがって、完全脱グリコシル化の条件下で、H460−16−2はそれの抗原に結合することは不可能である。
これらを合わせると、これらの結果は80〜90kDバンドが糖タンパク質であることを示唆している。また、これらの結果は、H460−16−2によって認識されたエピトープが炭水化物依存型である証拠を示している。
【実施例3】
【0023】
H460−16−2によって結合した抗原の同定
1.免疫沈降
1mLのプロテインGダイナビーズ(Dynabeads)(ダイナル(DYNAL))を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で3回洗浄し、洗浄済みのビーズに対して2,500μgのH460−16−2を加えて、全量を500μlにした。この混合物を1時間にわたってやさしく混ぜ合わせながらインキュベートした。未結合抗体を除去し、H460−16−2被覆ビーズを、0.1パーセントのツウィーン(Tween)20を含む2.5mL容量の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。H460−16−2被覆ビーズを5mLの0.2Mトリエタノールアミン(pH8.2)で2回洗浄した後、5mLを加えた。20mMジメチルピメリミデートを含む5mLの0.2Mトリエタノールアミン(pH8.2)の存在下、30分間にわたりやさしく混ぜ合わせることで、H460−16−2をビーズに化学的に架橋させた。反応停止は、5mLの50mMトリス(pH7.5)を添加することによっておこなった。15分間インキュベートした後、H460−16−2架橋ビーズを0.1パーセントのツウィーン(Tween)20を含有するPBSで3回洗浄した。H460−16−2架橋ビーズを0.1Mクエン酸(pH3)で3分間インキュベートして前溶離させた後、0.1パーセント・ツウィーン(Tween)20含有の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。
MB−231細胞から得た3mgの全膜タンパク質を、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)(0.1パーセント・ツウィーン(Tween)20、5パーセント・グルコース、5パーセント・マンノース、5パーセント・ガラクトース、およびプロテアーゼ阻害剤)中で、H460−16−2化学的架橋ビーズとともに、4℃で4時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、免疫沈降物を、150mMNaClおよび0.1パーセント・ツウィーン(Tween)20を含むPBSで3回洗浄した。H460−16−2架橋ビーズを0.1Mクエン酸(pH3)で4分間インキュベートすることで、ビーズからタンパク質を溶離させた。溶離タンパク質を−80℃で保存した。3mgのタンパク質からの免疫沈降タンパク質を8パーセント非還元SDS−PAGEゲルの1つのレーンに載せた。前染色分子量マーカー(バイオラド(Biorad)、ミシサーガ、ON)の試料を参照レーンに加えた。試料を、100Vで10分間、続いて150Vで60分間にわたり電気泳動をおこなうことで分離した。タンパク質を、シプロ・ルビー(SYPRO Ruby)(登録商標)で染色した。
平行のウエスタン・ブロットでは、記載どおりにMB−231膜タンパク質100μgから免疫沈降させたタンパク質を電気泳動で分離した。40Vで16時間にわたり電気泳動をおこなうことで、タンパク質をゲルからPVDF(ミリポア、ビルリカ、MA)膜に移した。定量的移動の評価は、ゲルから膜への前染色マーカーの完全移動を測定することでおこなった。
移動後、5パーセント・スキムミルク粉末含有トリス(Tris)緩衝食塩水(0.5パーセントのツウィーン(Tween)含む)(TBST)で2時間にわたり、膜のブロッキングをおこなった。次に、3パーセント・スキムミルク粉末含有TBSTに希釈した5μg/mLのH460−16−2を用いて、膜を調べた。TBSTで3回洗浄した後、膜を、適当な二次抗体、すなわちジャクソン・イムノロジカルズ(Jackson Immunologicals)(ウエスト・グローブ、PA)から入手した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と複合化したヤギ抗マウスIgG(Fc)で、1時間インキュベートした。このインキュベーションの後にTBSTで3回洗浄し、続いてHRP基質TMB(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリントン、ONから入手した基質キット)によるインキュベーションをおこなった。
図6は、H460−16−2によって免疫沈降したタンパク質から得たゲルおよびブロットを示す。ゲル(パネルA)上では、免疫沈降タンパク質を含むレーンに80〜90kD領域のバンドがある(レーン2、矢印参照)。高分子量のバンドは、無傷の抗体から構成される。この試料にはほかのタンパク質は存在しない。対応するウエスタン・ブロット(パネルB)では、H460−16−2は免疫沈降タンパク質(レーン2)と強く反応し、全膜(レーン1)でみられたものと類似の結合プロフィールを伴う。
【0024】
2.質量分析
H460−16−2によって免疫沈降した80〜90kDタンパク質に対応するゲルの領域(図6、パネルA、レーン2)を、滅菌したピペットのチップを用いて切り出した。次に、質量分析によるタンパク質の同定に、このゲル・プラグを用いた。
この試料を、トリプシン(プロゲスト(ProGest))を用いたロボット式のイン・ゲル消化にかけて、結果として生じた消化上清の一部をMALDI/MS分析に用いた。スポッティングは、ジップチップ(ZipTips)を用いて無人操作(ProMS)でおこなった。すなわち、60パーセント・アセトニトリル、0.2パーセントTFAに調製したマトリックス(α−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸)でC18物質からペプチドを溶離させた。この試料の分析を、200nL/分の流速で75μmC18カラムを用いてマイクロマス(Micromass)Q−Tof2上でナノLC/MS/MSによっておこなった。マスコット(MASCOT)のローカル・コピーを用いて、MS/MSデータを調べた。
H460−16−2免疫沈降物質のLC/MS/MS分析によって同定されたタンパク質を表1に示す。割り当てられたスコアは、一致したペプチドの数と同一性のレベルとに基づいた複合スコアである。
【0025】
【表1】
試料中に存在する唯一のタンパク質がヒトCD44、すなわちリンパ球および複数の種類の癌細胞の細胞表面上にある80kD糖タンパク質と一致した。
【0026】
3.確認
推定上の抗原の確認は、既知の抗CD44モノクローン抗体がH460−16−2によって免疫沈降したタンパク質と反応するかどうかを決定することで、おこなった。全MB−231膜タンパク質およびH460−16−2免疫沈降タンパク質を1次元SDS−PAGEで分離した。電気泳動およびウエスタン・ブロットは、上記のとおりに実施した。膜を、3パーセント・スキムミルク粉末含有のTBSTで希釈した5〜10μg/mLのH460−16−2、抗CD44(クローンL178、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)または抗HSP90(負の対照、クローン16F1(ストレスゲン(Stressgen)、ビクトリア、BC))と2時間にわたってインキュベートした。図7は、記載したとおりのウエスタン・ブロットの結果を示す。パネルAは、H460−16−2と全膜タンパク質(レーン1)および免疫沈降タンパク質(レーン2)との結合を示す。主結合タンパク質は、80〜90kD領域にあるが、120〜150kD領域にあるバンドもまた全膜タンパク質に見られる。L178を用いて平行ブロットの精査をおこなった場合(パネルB)、類似のパターンが見られた。L178は、H460−16−2によって免疫沈降したタンパク質に強く結合した。全膜タンパク質に対するH460−16−2およびL178の結合パターンはかなり類似している(パネルAおよびB、レーン1)、負の対照抗HSP90によって精査した平行ブロット(パネルC)は、この抗体が免疫沈降物質には結合しなかったが、全膜試料内の異なる90kDタンパク質には結合したことを示した。この結果は、HSP90が偏在かつ「粘着性」細胞シャペロン・タンパク質であることから、免疫沈降タンパク質に対する抗CD44の結合が特異的であり、汚染タンパク質の存在によるものではないこと確証する。
【0027】
図8は、H460−16−2の特異性を既知抗CD44抗体のものと比較した実験の結果を示す。MDA−MB−231膜を電気泳動で分離し、記載どおりにPVDF膜に移した。膜をH460−16−2(パネルA)、抗CD44(クローンL178、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、パネルB)、抗CD44var6(クローンVFF−7、ベンデル・メドシステムズ(Bender Medsystems)(サンブルノ、CA)、パネルC)、および抗CD44var10(クローンVFF−14、ベンデル・メドシステムズ(Bender Medsystems)、パネルD)を用いて精査した。H460−16−2およびL178は、80〜90kDおよび120〜150kDタンパク質と反応し、ウエスタン・ブロットで同一の結合パターンを有する。対照的に、CD44変異体6および10に特異的な抗体は、H460−16−2および互いと、異なる結合を示す。両方の変異抗体は、より幅広い範囲のタンパク質と結合し、ゲルの80kD領域との強い結合は示さない。したがって、H460−16−2が変異体6または変異体10に向けられることはありそうもない。
質量分析による同定は、既知の抗体を用いた確認と同様に、H460−16−2に対する抗原がCD44の一形態であることを示している。このことはまた、CD44が重量あたり約50パーセントのN結合糖を有すると思われることから、実施例2の脱グリコシル化実験と整合している。これらの実験もまた、H460−16−2がCD44の炭水化物依存型エピトープに結合することを示す。
【実施例4】
【0028】
ブダペスト条約にもとづいて、米国20110−2209バージニア州(VA)マナサス、大学通り10801の米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)に2002年9月4日、寄託番号PTA−4621としてハイブリドーマ培養細胞株H460−16−2を寄託した。37CFR1.808によれば、寄託者は、寄託材料の公共性に対する有効性に課せられたすべての制限が特許の付与によって即座に取り除かれることを確証する。
抗体生産:
H460−16−2モノクローン抗体は、回収および再播種を2回/週おこなうとともにプロテインGセファロース4ファスト・フロー(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)、ベー・ド・ウルフェ、QC)による標準的抗体精製手順を用いて、CL−1000フラスコ(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)でハイブリドーマを培養することで産生された産生された。ヒト、ヒト化、キメラ化、またはマウス抗体であるモノクローン抗体を用いることは、この発明の範囲内である。H460−16−2を、細胞毒性アッセイで、いくつかの正の対照(抗Fas(EOS9.1、IgM、カッパ、10μg/mL、イー・バイオサイエンス(eBioscience)、サンディエゴ、CA)、抗Her2/neu(IgG1、カッパ、10μg/mL、インテル・メディコ(Inter Medico)、マークハム、ON)、抗EGFR(C225、IgG1、カッパ、5μg/mL、セダルレーン(Cerdarlane)、ホーンビー、ON)、シクロヘキシミド(100μM、シグマ(Sigma)、オークビル、ON)、NaN3(0.1パーセント、シグマ(Sigma)、オークビル、ON))、および負の対照(107.3(抗TNP、IgG1、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、G155−178(抗TNP、IgG2a、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、MPC−11(抗原特異性未知、IgG2b、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、J606(抗フルクトサン、IgG3、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、IgG緩衝液(2パーセント))と比較した(表3)。乳癌(MB−231、MB−468)、黒色種(A2058、A375)、大腸癌(HIT−29)、肺癌(NCI−H460、A549)、卵巣腫瘍(OVCAR−3)、前立腺癌 (PC−3)、および非癌(CCD−27sk、Hs578.Bst、Hs888.Lu)培養細胞株を試験した(すべてをATCC、マナサス、VAから入手)。生/死細胞毒性アッセイは、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)(ユージーン、OR)から得た。このアッセイは、以下に概説する変更を加えて製造元の指示にしたがっておこなった。アッセイをおこなう前に、所定の適当な密度で細胞をプレーティングした。2日後、100μLの精製抗体を培地に希釈した後、細胞プレートに移して5パーセントCO2インキュベータ内で5日間にわたりインキュベートした。次に、プレートを逆さまにして空にし、拭き取って乾かした。MgCl2およびCaCl2を含む室温DPBSをマルチチャンネル小型容器から各ウエルに分注し、3回軽くたたき、逆さまにして空にした後、拭き取って乾かした。MgCl2およびCaCl2を含むDPBSで希釈した50μLの生/死用蛍光色素を各ウエルに添加し、5パーセントCO2インキュベータで37℃、30分間にわたりインキュベートした。パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)HTS7000蛍光プレートリーダーを用いてプレートの読み取りをおこない、データをマイクロソフト・エクセル(Microsft Excel)で分析し、さらに結果を一覧にして表2に示した。データは、三重反復試験した4回の実験の平均値を表し、以下のようにして定量的に示した。すなわち、閾値細胞毒性よりも高い値が得られた実験が4/4の場合(+++)、閾値細胞毒性よりも高い値が得られた実験が3/4の場合(++)、および閾値細胞毒性よりも高い値が得られた実験が2/4の場合(+)とした。表2中の印の無い細胞は、一貫性の無い閾値細胞毒性よりも低い効果のものを表した。H460−16−2抗体はA2058黒色腫細胞およびMBー231乳癌細胞で選択的細胞毒性を示したが残りの癌細胞に対しては細胞毒性を生じなかったことから、癌細胞に対する特異的な細胞毒性があることが示される。重要なことは、単離抗体がいくつかの非癌細胞、例えばCCD−27sk、Hs578.Bst、またはHs888.Luに対して細胞毒性を生じなかったことである。細胞毒性化学剤は、期待される細胞毒性を誘導する一方で、比較のために挙げられるいくつかの他の抗体もまた予想通りに機能して、生物学的細胞アッセイの限界を与えた。
【0029】
【表2】
【0030】
細胞の単層をDPBS(Ca++およびMg++を含まない)で最初に洗浄することで、FACS用に細胞を調製した。次に、細胞解離緩衝液(インビトロゲン(INVITROEN)、バーリントン、ON)を用いて、37℃で細胞培養プレートから細胞を遊離させた。遠心後、細胞を収集し、MgCl2、CaCl2、および25パーセントのウシ胎仔血清を含むDPBS(洗浄用メジウム)に4℃で再懸濁して係数し、適当な細胞密度になるように等分割し、遠心して細胞をペレットにし、30分間、氷上で試験抗体(H460−16−2)または対照抗体(アイソタイプ対照、抗Her2/neuまたは抗EGFR)20μg/mLの存在下、染色用メジウム(MgCl2、CaCl2、および2パーセントのウシ胎仔血清を含むDPBS)に4℃で再懸濁した。アレクサ・フルオール(Alexa Fluor)488複合二次抗体を添加する前に、細胞を洗浄用メジウムで1回洗浄した。次に、アレクサ・フルオール488複合抗体含有染色用メジウムを20分間にわたり添加した。次に、細胞を最後の時間に洗浄し、1μg/mLヨウ化プロピジウム含有染色用メジウムに再懸濁した。細胞のフローサイトメトリーによる獲得を、セルクエスト(CellQuest)ソフトウェア(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)を用いたDACスキャン上に試料を流すことで評価した。細胞の前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)を、FSCおよびSSC検出器で電圧および振幅利得を調製することで設定した。3つの蛍光チャンネル(FL1、FL2、およびFL3)に対する検出器を、細胞が約1〜5単位の蛍光強度中央値を持つ均一なピークを持つようにして、精製アイソタイプ対照抗体で染色した後にアレクサ・フルオール488複合二次抗体で染色した細胞を流すことで調整した。生細胞は、FSCゲーティングおよびヨウ化プロピジウム排除によって獲得した。各試料について、約10,000個の生細胞を分析のために獲得し、その結果を表3に示した。
表3は、アイソタイプ対照群を上回る平均蛍光強度の倍増を一覧にしてまとめたものであり、また定量的に5未満(−)、5ないし50(+)、50ないし100(++)、100超(+++)として示し、括弧内は染色された細胞の割合である。
【0031】
【表3】
H460−16−2抗体の典型的なヒストグラムを図9用に編集し、いくつかの例での図示された双ピークを包含する結合特性を明示する。黒色種および乳癌細胞を含むいくつかの細胞型に対しては、アイソタイプ対照の100倍を上回ってH460−16−2が結合し、肺、大腸、前立腺、および卵巣腫瘍細胞に対しては5ないし100倍上回って結合した。これらは、H460−16−2抗体の非癌細胞への結合であったが、そのような結合による細胞毒性は生じなかった。このことは、結合がその同種抗原への抗体結合の結果を必ずしも予測するものではなく、非自明的な知見であったことを明示している。このことは、異なる細胞での抗体結合の状況が抗体結合よりはむしろ細胞毒性の決定因子であったことを示唆した。
【実施例5】
【0032】
正常ヒト組織染色
IHC研究は、ヒトでのH460−16−2抗原分布を特徴づけるために、既におこなわれた(S.N.10/603,000)。本研究は、H460−16−2をCD44に対する抗体(L178)と比較する。なぜなら、H460−16−2抗原は、生化学的方法で既に決定されたように、CD44の標準型の癌変異体であるかもしれないからである。59の正常ヒト組織に対する抗体の結合を、ヒト、正常器官組織アレイ(イムジェネックス(Imgenex)、サンジエゴ、CA)を用いて実施した。すべての一次抗体(H460−16−2、L178抗CD44(抗HCAM、BDファーミンゲン(PharMingen)、オークビル、ONとしても知られている)、およびマウスIgG1負対照(ダコ(Dako)、トロント、ON))を抗体希釈緩衝液(ダコ(Dako)、トロント、ON)で希釈し、濃度を5μg/mlとした(以前の最適化ステップで最適濃度であると見いだされた)。負対照抗体は、製造元によってすべての哺乳類組織に対して負(ネガティブ)であることが示されている。IHCに関する手順は以下の通りである。
組織切片を1時間にわたって58℃のオーブンで乾燥させることで、脱パラフィン化処理を行い、ガラスドーゼ(コプリン・ジャー)内でキシレンに各回4分ずつ5回浸した。一連のエタノール勾配(100%〜75%)で洗浄した後、切片を水中で再度水和させた。スライドをpH6の10mMクエン酸緩衝液(ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)に浸し、次に各回5分に設定して高、中、および低電力で電子レンジにかけ、最終的に冷PBSに浸した。次に、スライドを3%過酸化水素溶液に6分間浸し、PBSで各回5分ずつ3回洗浄し、乾燥し、汎用ブロッキング溶液(ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)で室温、5分間にわたりインキュベートした。H460−16−2、L178、またはアイソタイプ対照抗体(アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)グルコース・オキシダーゼに対する抗体であり、グルコース・オキシダーゼは哺乳類組織に存在せず、また誘導もされない)を抗体希釈緩衝液(ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)で希釈してその作用濃度(各抗体について5μg/mL)にし、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで各回5分ずつ3回洗浄した。一次抗体の免疫活性は、室温で30分間にわたり、供給(ダコ・エンビジョン・システム(Daco Envision System)、トロント、オンタリオ)されたとおりにHRP複合二次抗体で検出/可視化した。このステップの後で、スライドをPBSで各回5分ずつ3回洗浄し、DAB(3,3‘−ジアミノベンジジンテトラヒドラクロリド、ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)色原体基質溶液を添加することによって呈色反応を引き起こして室温での10分間の免疫ペロキシダーゼ染色をおこなった。スライドを水道水で洗うことで、呈色反応を停止させた。マイヤーのヘマトキシリン(シグマ・ダイアグノスティックス(Sigma Diagnostics)、オークビル、ON)で対比染色をおこなった後に、スライドをエタノール勾配(75〜100%)で脱水させ、キシレンできれいにした。マウンティング用のメジウム(ダコ・ファラマウント(Dako Faramount)、トロント、オンタリオ)を用いることで、スライドカバースリップを載せた。スライドをアキソバート(Axiovert)200(ツワイス・カナダ(Zeiss Canada)、トロント、ON)を用いて顕微鏡観察し、デジタル画像を獲得し、ノーザン・エクリプス・イメージング・ソフトウェア(Northern Eclipse Imaging Software)(ミシサーガ、ON)を用いて保存した。結果の読み取り、スコアリング、および解釈を病理学者がおこなった。
【0033】
表4は、正常ヒト組織のアレイをH460−16−2およびL178抗CD44で染色した結果をまとめたものを示す。H460−16−2による組織染色は、既に記載されたもの(S.N.10/603,000)と同様である。再び注目すべきことは、抗原が一般に重要臓器(例えば、肝臓、腎臓、心臓、および肺)の細胞には存在しないことである。H460−16−2抗体は、マクロファージおよびリンパ球に結合し、それらの存在はそれらの切片状態にある器官のいくつかで観察される。しかし、L178抗CD44抗体によるリンパ球のより高強度の染色および広範囲な分布が見られた(図10)。
H460−16−2に対して正(ポジティブ)である組織もまた、L178抗CD44(場合によっては強度が高い)に対しても一般に正(ポジティブ)である。例えば肝臓(図11)および食道の一試料でわずかな例外があるにもかかわらず、H460−16−2に対して負(ネガティブ)である組織もまた、L178抗CD44に対して一般に負(ネガティブ)である。これらの結果は、H460−16−2が、L178抗CD44抗体によって認識される組織のわずかに小さいサブセットに結合し、組織内では染色の強度もしばしば弱いことを示している。これらの結果は、H460−16−2に対する抗原が正常組織で幅広く発現され、抗体が特異的に限られた数のヒト組織に結合することを示している。また、これらのIHC研究で使用したL178抗CD44によって認識されたものよりもわずかに異なる変異体に対するものであるにもかかわらず、CD44のエピトープに対して、H460−16−2が向けられている点で、生化学的データを支持している。
【0034】
【表4】
【実施例6】
【0035】
ヒト乳房腫瘍組織染色
以前のIHCの比較研究は、ヒト乳癌とのH460−16−2抗原の癌関連性、およびH460−16−2抗体がヒト癌を認識しようとするかについてを決定するためにおこなわれた(S.N.10/603,000)。ここで、L178抗CD44染色と、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)グルコース・オキシダーゼに対する抗体と、哺乳類組織には存在せず、また誘導もされない酵素(負の対照)とを比較した。50人の乳癌患者から得られた乳癌組織アレイと乳癌患者の非腫瘍性乳房組織に由来する9つの試料とを用いた(イムジェネックス・コーポレーション(Imgenex Corporation)、サンジエゴ、CA)。以下の情報は、各患者について提供された。すなわち、年齢、性別、対癌米国合同委員会(AJCC)腫瘍病期、リンパ節、エストロゲン受容体(ER)、およびプロゲステロン受容体(PR)状態。実施例5のIHCの手順に従った。すべての抗体は作用濃度5μg/mlで使用した。
【0036】
表5および6は、それぞれ乳癌組織アレイのH460−16−2およびL178抗CD44抗体染色をまとめたものである。全体的に、試験した50人の患者の62パーセントがH460−16−2抗原に対して正(ポジティブ)であり、CD44に対しては76パーセントであった。H460−16−2およびL178抗CD44がともに同一の組織を染色した場合では、43%の試料で、H460−16−2に比べて高強度の染色がL178抗CD44によって得られた。H460−16−2およびCD44抗原の両方について、乳癌患者由来の10個の正常乳房組織試料のうち4および6個のみがそれぞれ正(ポジティブ)であった。エステロゲン受容体状態とプロゲステロン受容体状態との間に明らかな相関があることは証明されなかった。また、より高い腫瘍病期でH460−16−2およびCD44抗原の正の発現が高くなる傾向があるようには見えなかった。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
H460−16−2染色は、間質細胞が明らかに負(ネガティブ)であり、悪性細胞シートがかなり正(ポジティブ)である図12に示されるように、正常細胞と比較して、癌細胞に対して特異的であった。H460−16−2抗原で見られる細胞局在化パターンは、大部分の例で細胞膜に限定された。L178抗CD44抗体は、より多くの乳癌試料を染色し、H460−16−2と比べて細胞質局在よりも膜局在の度合いが高いことを示した(表7)。L178抗CD44はまた、H460−16−2の場合ではみられなかったが、ぺージェット病の悪性細胞を染色した(図13)。L178抗CD44は、H460−16−2と同様に乳癌患者由来の正常細胞の同じ試料を染色した(H460−16−2試料について部分的に脱落(スラフ)した1つをプラス)。これらの結果は、H460−16−2に対する抗原がほぼ乳癌患者の3分の2で発現される可能性があることを示唆している。染色パターンは、患者試料で、その抗体が悪性細胞に対する高い特異性を持ち、またH460−16−2抗原が細胞膜に局在化していることから、それが魅力的かつ製薬化可能な(drugable)標的となることを示している。H460−16−2対L178抗CD44抗体の、類似しているにもかかわらずより制限された染色は、H460−16−2エピトープがよりいっそう制限されたCD44の変異体である可能性を、ここでも示している。
【0039】
【表7】
【実施例7】
【0040】
ヒト腫瘍組織染色
H460−16−2が乳癌のみならず他のヒト癌組織で発現するかどうかを決定するために、既にH460−16−2が多重ヒト腫瘍組織アレイで使用された(S.N.10/603,000、イムジェネックス(Imgenex)、サンジエゴ、CA)。それらの研究を進める際に、H460−16−2の染色パターンをL178抗CD44の染色パターンと比較した。各患者について、年齢、性別、器官、および診断に関する情報を得た。使用した染色手順は、実施例5で概説したものと同様にした。同じ負の対照抗体をヒト乳房腫瘍組織アレイで説明したように用いた。すべての抗体は、作用濃度5μg/mLで使用した。
【0041】
表8に概説されるように、既に記載されたもの(S.N.10/603,000)と整合する結果が得られたことに加え、乳房のほかに多数の様々なヒト癌がH460−16−2によって染色された。乳癌で見られるように、H460−16−2染色は膜上に局在化(図14)し、いくつかの癌では、癌細胞の細胞質内にも局在化した。L178抗CD44抗体は、細胞質に比べて膜でより高かく、さらにまたH460−16−2で観察されたものよりもより高い強度で正(ポジティブ)に腫瘍組織を染色する割合が高かった(図15)。
【0042】
【表8】
【0043】
したがって、H460−16−2抗原は乳癌の膜のみに単に見いだされるだけではなく、かなり多様な腫瘍型の膜上にも見いだされると考えられる。これらの結果は、H460−16−2が乳癌の他に広範囲の腫瘍型で治療薬としての可能性があることを示している。また、L178抗CD44と比較してH460−16−2が類似はしていても異なった染色パターンを持つことは、H460−16−2がCD44変異体上に存在するエピトープを認識することを意味している。
証拠の優位性は、CD44の変異体に存在する炭水化物依存型立体配座エピトープの結合を介して、H460−16−2が抗癌効果を媒介することを示している。実施例3では、H460−16−2抗体を用いて、MB−231細胞等の発現細胞から同種L178抗CD44を免疫沈降させることができることが明らかにされた。さらに、限定されるものではないが、FACS、細胞ELISA、またはIHCによって示される技術を用いて、特異的に結合するCD44抗原分を発現する細胞および/または組織の検出にH460−16−2抗体が使用可能であることを示すことができた。
したがって、免疫沈降H460−16−2抗原は、そのようなFACS,細胞ELISA、またはIHCアッセイを用いて、そのような細胞または組織に対するH460−16−2の結合を阻害し得ることを示すことができた。さらに、H460−16−2抗体と同様に、他の抗CD44抗体を用いて、他の形態のCD44抗原の免疫沈降および単離をおこなうことができ、さらにその抗原を使用して、同一種類のアッセイを用いて抗原を発現する細胞または組織に対する抗体の結合を阻害することもできる。また、もしすべての形態のCD44(すなわち汎CD44抗体)を認識する抗CD44抗体がその同種抗原を単離するために使用されるならば、その抗原はまた、該抗原を発現する細胞または組織に対するH460−16−2の結合を阻止することができるので、その抗原を発現する細胞および組織上のCD44のエピトープに対するH460−16−2の結合も示される。あるいは、両方の抗体が含まれる競合結合アッセイ、ELISA、細胞ELISA、FACS、またはその他のアッセイでH460−16−2と汎CD44抗体とを比較することもまた、その抗体を発現する細胞および組織上でのCD44のエピトープに対するH460−16−2の結合を示すことができる。
【0044】
この明細書で言及されるすべての特許および刊行物は、本発明が関係する当該技術分野の当業者のレベルを示している。すべての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物が具体的および個別的に参照によって組み込まれることを示されるのと同等の範囲で、本明細書中に援用される。
本発明の一定の形態が例証される一方で、それが本明細書に記載および示された部分の特定の形態または配置に限定されるものではないことが理解される。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更をおこなうことが可能であり、また本発明は明細書に示されたものや、記載されたものに限定されることを考慮しているものではないことが、容易に理解されよう。当業者は、ここに内在されるものと同様に、本発明が目的を実行することや、指摘した結果および利点を得たりするのに十分適していることを、容易に理解し得る。本明細書中に記載されているいっさいのオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的に関連した化合物、方法、手順、および技術が、現在のところ好ましい実施形態の典型的なものであり、例示を意図したものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。当業者は、本発明の精神の中に包含され、かつ添付した特許請求の範囲に定義されるその中での変更および他の用途を思いつくであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、特許請求の範囲に記載したように本発明はそのような特定の実施形態に、過度に限定されるものではないことを理解すべきである。実際、当業者に容易である本発明を実行するための記載されたモードの種々の修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
この発明は、腫瘍細胞の細胞毒性の媒介と、より詳しくは細胞毒性応答を開始させるための手段として、必要に応じて1種類以上の化学療法薬を併用させる癌疾患修飾抗体(CDMAB)の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト白血球に対するモノクローン抗体の確立は、CD44抗原の発見をもたらした。単鎖ヒアルロン酸(HA)結合糖タンパク質が多種多様の正常組織および全ての種類の造血細胞で発現した。そのことは、リンパ球活性化およびホーミングに元来、関係していた。現在のところ、推定上の生理学的役割として、炎症性遺伝子の活性化、細胞周期の変調、細胞増殖の誘導、分化および発現の誘導、細胞骨格の再編成および細胞遊走、ならびにアポトーシスに対する細胞生存/耐性も挙げられる。
ヒトでは、CD44の単一遺伝子コピーは第11染色体の短腕部11p13領域に位置する。この遺伝子は19のエクソンを含み、最初の5つは定常であり、次の9つは可変であり、その後の3つは定常であり、さらに最後の2つは可変である。選択的スプライシングによって生じ得る異性体の数は1,000を越える。しかし、現在、自然発生的な変異体で同定されているものは、わずかに数ダースだけである。
CD44標準糖タンパク質は、N末端細胞外(20アミノ酸のリーダー配列および膜近位領域(85アミノ酸))、ドメイン(270アミノ酸)、膜貫通領域(21アミノ酸)、ならびに細胞質尾部(72アミノ酸)からなる。細胞該領域は、N末端に連結モジュールも有する。この領域は、長さが92アミノ酸であり、他のHA結合連結タンパク質と相同性を示す。高相同性がマウス型のCD44とヒト型のCD44との間にある。タンパク質の変異型は、エクソン5のカルボキシ末端に挿入され、発現された際に細胞外に位置する。
血清可溶型のCD44もまた、自然発生的に生じるとともに、停止コドン(可変領域内)またはタンパク質分解活性から生じ得る。TNF−αを含む種々の刺激による細胞の活性化は、CD44受容体の放出(shedding)をもたらす。受容体の放出もまた、腫瘍細胞によって見られ、CD44のヒト血清濃度が最大で10倍まで増加する。高CD44血清濃度は、悪性腫瘍(例外として卵巣癌)を示唆する。
【0003】
標準型のCD44は、分子量が約37kDのものとして存在する。転写後修飾は、その分子量を80〜90kDに増加させる。このような転写後修飾として、アスパラギン残基でのアミノ末端細胞外ドメインN結合型糖鎖合成と、細胞外ドメインのカルボキシル末端にあるセリン/スレオニン残基でのO結合型糖鎖合成と、グルコサミノグリカン付加とが挙げられる。スプライス変異体の大きさは、80〜250kDの範囲内である。
HA、哺乳類の細胞外マトリックス(ECM)上に位置した多糖類は、主要なCD44リガンドであると考えられている。しかし、CD44がコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等にも結合するという知見もある。HA結合と糖鎖形成との間に相互関係があるように見える。不活性アッセイCD44(HAとは結合せず)は、高レベルの糖鎖形成を有し、活性CD44(結合HA)では最も低い。その一方で、誘導型CD44(サイトカイン、モノクローン抗体、成長因子等で活性化されない限り、HAとは結合しないか結合しても弱い)は、糖鎖形成レベルが活性型と不活性型との間にある。
CD44は、その機能のいくつかを細胞、刺激、および環境の相互作用に依存するシグナル伝達経路を介して調節することができる。このような経路のいくつかとして、NFκBシグナル伝達カスケード(炎症反応に関与)、Ras−MAPKシグナル伝達経路(細胞周期および増殖の活性化と関連)、Rhoファミリー・タンパク質(細胞骨格再組織化および細胞遊走と関連)、ならびにPI3−K関連シグナル伝達経路(細胞生存に関係)が挙げられる。前述の機能の全てが要疾患開始および進行と密接に関連している。CD44も、種々の付加的な機構によって癌に影響を与えることが示されている。そのようなものとして、悪性腫瘍に関与するCD44の細胞表面上に存在する細胞表面プロテオグリカンによって、成長因子、ケモカイン、およびサイトカインの表示が挙げられる。また、CD44−HA複合体の内在化後のリソゾーム・ヒアルロニダーゼによるHAの細胞内分解は、腫瘍侵襲性の可能性とECMを介した血管形成の誘導とを潜在的に増加させることができる。加えて、生存またはアポトーシス・シグナルの伝達が、標準または可変的なCD44受容体を介して起こることが示された。CD44もまた、細胞分化および細胞遊走に関与することが示唆されている。全てではないにしても、これらの機能の多くは環境および細胞依存性であり、いくつかは様々な知見をもたらす。したがって、何らかの結論が引き出す前に、より多くの研究が必要である。
癌でのCD44の潜在的な機能的役割を確認するために、CD44の発現研究を実施して、受容体の差次的発現が疾患進行と相関するかどうかが決定された。しかし、一貫性のない知見が大多数の腫瘍型で観察され、このことは、おそらく、研究者間での試薬の併用、技術、病理学的スコアリング、および細胞型の違いによるものだろう。腎細胞癌および非ホジキンリンパ腫が、高CD44発現腫瘍を有する患者で、生存期間が低もしくは非CD44発現対応物よりも一貫して短かった。
【0004】
CD44は、癌との関連性があることから、抗癌薬物療法開発の標的であった。CD44の標準型または変異体型が腫瘍進行にとって必要であるかどうかについての論争が今でもなお存在する。両方の見解を支持する生体内(in vivo)動物データが存在し、それはまた腫瘍型さらには細胞型依存型である可能性もある。異なる治療的なアプローチには、可溶性CD44タンパク質、ヒアルロナン合成DNA、ヒアルロニダーゼの注射、CD44アンチセンスおよびCD44特異的抗体の使用が含まれた。各アプローチは、ある程度の成功をもたらし、それによって抗CD44癌薬物療法の支持が得られた。
モノクローン抗体に特異的な変異体および標準CD44が実験的に作られた。しかし、ほとんどの場合、これらの抗体は、固有の生物学的活性を持たず、むしろそれらが認識するCD44の型に対して特異的に結合する。しかし、いくつかは、生体外(in vitro)または生体内(in vivo)のいずれかで活性を示すが、両方では活性を示さないものであった。いくつかの抗CD44抗体が細胞現象の媒介となることが示された。例えば、ヒト赤血球ルセラン抗原CD44標準型に対するマウス抗体A3D8は、CD2(9−1抗体)およびCD3(OKT3抗体)媒介T細胞活性化を強化することが示され、別の抗CD44抗体が類似の効果を有した。A3D8もまた、単球からのIL−1放出およびTリンパ球のIL−2放出を誘導した。興味深いことに、ダウノルビジン、ミトキサントロン、およびエトポシド等の薬物と併用させたA3D8の使用は、二次メッセンジャー・セラミドの生成を抑制することによるHL60およびNB4AML細胞でのアポトーシス誘導を阻害した。固有の活性を持たず、かつCD44の類似のエピトープに対するJ173抗体は、薬物誘導アポトーシスを阻害しなかった。CD44由来の85−110KDおよび200KDに対するNIH44−1抗体は、CD44の凝集または架橋結合のいずれかと著者が推測した経路を介して、T細胞増殖を増強した。ひとまとめにして考えると、癌に対するものではない(例えば、リンパ球の活性化)ことから、癌薬物療法としての使用に適している等の抗体は、細胞増殖を誘導し、あるいは細胞毒性の薬剤を使用した場合に癌細胞の薬物誘導死を阻害したという証拠はない。
生体内(in vivo)で抗腫瘍効果を示すいくつかの抗CD44抗体が記述された。抗体1.1ASML(CD44のv6変異体に対するマウス抗ラットIgG1)は、ラット膵臓腺癌BSp73ASMLのリンパ節および肺転移を減少させることが示された。処置された動物の生存性が同時に高まった。この抗体は、リンパ節転移増殖の前に投与された場合に効果的であり、リンパ節での細胞増殖に干渉すると推論された。生体外(in vitro)での腫瘍細胞に対して抗体が直接細胞毒性を示すことはなく、抗体は補体媒介細胞毒性または免疫効果細胞機能を高めることは無かった。ヒト細胞に対する抗体の有用性は、記載されなかった。
【0005】
ブレイヤー(Breyer)他は、CD44に対する市販の抗体を使用して同所移植ラット・グリア芽細胞腫の進行を止めることを記載した。ラット・グリア芽細胞腫培養細胞株C6を前頭葉に移植し、1週間後、そのラットに対して脳内注射による抗体処置を3回おこなった。処置されたラットは、腫瘍成長の減少を示し、緩衝液またはイソタイプ対照処置ラットよりも高い体重を示した。抗体は、細胞外マトリックス成分によって被覆されたカバーガラスに対する生体外(in vitro)細胞粘着を阻害することが可能になった。しかし、細胞に対する直接的な細胞傷害効果は何ら有しなかった。ヒト細胞については、この抗体の試験がおこなわれなかった。
CD44(IM−7.8.1)に対する抗体の有効性とCD44v10(K926)に対する抗体の有効性とを比較する研究を実施した。両方のイソ型を発現するCD44高転移性マウス黒色腫株B16F10を静脈注射(i.v.)によってマウスに移植した。2日後、研究期間中にわたって3日目毎に抗体を投与した。両方の抗体は、50%を上回る肺転移数の著しい減少を生じ、2つの抗体間で有効性に関する有意差はなかった。抗体は、生体外(in vitro)での増殖に影響を及ぼさなかったことから、著者であるザバズキ(Zawadzki)他はCD44とそのリガンドとの相互作用を抗体が阻害することで腫瘍増殖の阻害が生じたと推測した。IM−7.8.1を用いた別の研究では、ザルカ(Zahalka)他は抗体およびそのF(ab’)2フラグメントがマウスT細胞リンパ腫LBによるリンパ節浸潤を阻害することが可能であることを証明した。このことは、マウスに対して生存上重要な利点を与えた。ヴァラッハ−ダヤン(Wallach−Dayan)等は、自発的に腫瘍を形成しないLB−TRマウス・リンパ腫をCD44v4−v10によってトランスフェクションすることで腫瘍を形成する能力を与えられたことを示した。IM−7.8.1投与は、イソ型対照抗体と比較して、移植したトランスフェクト細胞の腫瘍サイズを減少させた。これらの研究のいずれもこの抗体の関するヒト有用性を示さなかった。
マウスIgG2aであるGKW.A3は、ヒトCD44に対して特異的であり、SCIDマウス内のヒト黒色腫異種移植片の形成および転移を妨げる。抗体を転移性ヒト培養細胞株SMMU−2と混合して皮下注射した。処置を3週間続けた。4週間後、未処置の動物では100%であったのに対して、10匹のマウスのうちわずか1匹だけが注射部位に腫瘍を発現した。抗体のF(ab’)2フラグメントは、腫瘍形成の同一阻害を示したことから、作用機序が補体または抗体依存型の細胞障害性に依存しないことが示唆された。第1回目の抗体注射の1週間前に腫瘍細胞を注射した場合、80%の動物がその最初の部位で腫瘍を発現した。しかし、注目すべきことは、生存期間がそれでも著しく増加したことである。抗体遅延投与は原発腫瘍形成に無効であったにもかかわらず、肺、腎臓、副腎、肝臓、および腹膜への転移を完全に阻止した。この抗体は、生体外(in vitro)で培養細胞株に対して何ら直接的な細胞障害性を持たず、またSMMU−2細胞の増殖に干渉もしなかったことから、転移または増殖に悪影響を与えることで腫瘍形成に対するその主要な効果を持つように見える。この抗体の注目すべき特徴の一つは、CD44のイソ型全てを認識することであり、このことは治療上の使用に対する可能性に限界があることを示唆している。
【0006】
ストロベル(Strobel)他は、抗CD−44抗体(クローン515)を使用してマウス異種移植モデルでのヒト悪性腫瘍細胞の腹膜移植を阻害することを記載した。ヒト卵巣培養細胞株36M2を、抗CD44抗体または対照抗体の存在下、マウスに対して腹腔内(i.p.)移植し、それに続く20日間にわたって処置を投与した。5週間後、抗体処置群の腹腔内の小結節が著しく少なかった。抗CD44処置群および対照処置群の両方から得た小結節が同一の大きさであったことから、細胞がひとたび移植されると、抗体は腫瘍の成長に対しては何ら効果を示さないことが示唆される。細胞を皮下移植した場合、腫瘍成長にもなんら影響がなかったことから、抗体そのものは抗増殖性または細胞毒性効果を持たないことが示された。また、生体外(in vitro)での細胞増殖に対しても抗体の効力はみられなかった。
BIWA1と表されるVFF−18もまた、CD44のv6変異体に対する高親和性抗体であり、そのポリペプチドの360〜370領域に特異的である。この抗体は、患者12人の第1相臨床実験で99mテクネチウム標識複合体として用いられた。抗体を、頭頸部の扁平上皮癌の患者で安全性および標的可能性について試験した。注射後40時間で、注射投与量の14%が腫瘍に取り込まれ、腎臓、脾臓、および骨髄での蓄積は最小であった。腫瘍結合選択性が高いことは、この抗体の非常に高い親和性が腫瘍のより深い層への浸透を防ぐにもかかわらず、放射免疫治療でのこの抗体の役割を示唆している。BIWA1の適用をさらに限定しているものは、マウス抗体の免疫原性(患者12人のうち11人がヒト抗マウス抗体(HAMA)を発現した)、腫瘍全体にわたる不均一な蓄積、および抗体可溶性CD44複合体の形成である。WO02/094879は、HAMA反応を克服するように設計されたVFF−18のヒト化バージョン(BIWA4と称される)を開示している。BIWA4は、親VFF18抗体よりも抗原結合親和性が著しく低いことがわかった。驚くべきことに、低親和性BIWA4抗体は、高親和性BIWA8ヒト化VFF−18抗体よりも優れた腫瘍取り込み特性を有した。99mテクネチウム標識および186レニウム標識BIWA4抗体を患者33人の第1相臨床試験で評価することで、186Re標識BIWA4の場合の安全性、耐用性、腫瘍蓄積、および最大耐量を決定した。99mTc標識BIWA4の腫瘍関連取り込みであると思われる。186Re標識BIWA4の全ての用量で、数は安定した疾患であったにもかかわらず、何ら腫瘍反応がみられなかった。用量規定毒性が60mCi/m2で生じた。深刻な有害事像(血小板減少症、白血球減少症、および発熱)を呈すると思われる患者33人のうちの12人による有害実像の率が50〜65%であり、またそれらのうちの6人(全員が186Re標識BIWA4で処理)が疾患進行によって処置または追跡調査の過程で死亡した。患者2人がヒト抗ヒト抗体(HAHA)を発現した。186Re標識BIWA4の用量を段階的に増大させる第1相試験を患者20人で実施した。経口粘膜炎と用量規定血小板減少症および白血球細胞減少症とが観察され、1人の患者がHAHA反応を発現した。安定した疾患は、最高用量60mCi/m2で処置された5人の患者で認められた。達成された効能についての安全性および耐溶性の両方で許容可能であると考えられるにもかかわらず、これらの研究は、臨床研究での他の非放射性同位元素複合生物学的療法と比較して高率の有害事像を持つ。米国特許出願第2003/0103985号は、腫瘍治療で使用されるBIWI1と称されるメイタンシドと複合化したVFF−18のヒト化バージョンを開示する。ヒト化VFF18抗体(BIWA4)は、毒素と複合化する場合(すなわちBIWI1)、ヒト表皮状外陰癌(咽頭または乳癌の扁平上皮癌)のマウス・モデルで顕著な抗腫瘍効果を持つことがわかった。非複合化バージョン(BIWA4)は、抗腫瘍効果を示さず、また複合化バージョン(BIWI1)はヒトでの安全性または有効性についての証拠を何ら示さなかった。
【0007】
MabU36は、UM−SCC−22Bヒト下咽頭癌細胞免疫化ならびに癌および組織特異性の選択によって産生するマウスIgG1抗体である。cDNAクローニングおよび配列分析を介した抗原の特徴付けは、MabU36の標的としてケラチノサイト特異的CD44スプライス変異体エピカンのv6ドメインを同定した。免疫組織化学研究は、細胞膜に限定されるエピトープを示す。さらにまた、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の94%がMabU36によって強く標識され、これらの腫瘍の範囲内で細胞が均一に染色された。患者10人での99mTc標識MabU36研究は、HNSCC癌の選択的蓄積を示した(2日で20.4+/−12.4%注入量/kg)。副作用は報告されなかったけれども、患者二人にHAMAが発現した。放射性ヨウ素化マウスMabU36での研究では、患者18人中3人がHAMAの症状を呈し、HNSCCでの選択的同種取り込みがみられた。MabU36の抗原性を減少させ、かつHAMAの率を低下させるために、キメラ抗体を作製した。キメラまたは本来のマウスMabU36はいずれもADCC活性を持たない。MabU36の野生型機能活性の証拠はない。治療薬としてのMabU46の有用性を186Re標識キメラMabU36を用いて判断した。この用量を段階的に増大させる第1相試験では、患者13人がスカウティング用量(scouting dose)の99mTc標識キメラMabU36を受けた後に186Re標識キメラMabU36を受けた。急性有害事象は報告されなかったが、患者3人のうち2人に、処置用量規制骨髄毒性(1.5GBq/m2)後に急性有害事象がみられ、最大耐量(1.0GBq/m2)で処置された1人の患者に血小板減少症が観察された。腫瘍サイズに対しては何らかの効果がみられたが、処置に対する目的反応に関する判定基準は満たさなかった。顆粒球コロニー刺激因子を用いる戦略を使用した186Re標識キメラMabU36のさらなる研究は、全血再注入を刺激して、最大許容活性を2.8Gyまで倍加させた。頭頸部の種々の腫瘍を有する9人の患者に対するこの研究では、3人が薬物関連貧血症のため輸血を必要とした。他の毒性として、グレード3の骨髄毒性とグレード2の粘膜炎とが挙げられる。安定した疾患が患者5人で3〜5ヶ月で達成されたにもかかわらず、目的腫瘍反応は何ら報告されなかった。したがって、MabU36が高特異的抗体であるにもかかわらず、達成された臨床効果に関連した治療に伴う毒性のため、抗癌効果を達成するために放射性免疫複合体が必要であるという欠点がその有用性を制限する。
要約すると、CD44v6(1.1ASML)およびCD44v10(K926)モノクローン抗体によって転移性膵臓腺癌を注射されたラットまたは悪性黒色腫を注射されたマウスでの転移活性がそれぞれ減少することが示された。別の抗CD44v6抗体(VFF−18およびその誘導体)は、メイタンシノイドまたは放射性同位元素と複合体を形成した場合のみに、抗腫瘍効果を持つことが示された。抗標準CD44モノクローン抗体もまた、ラット・グリア芽細胞種(抗CD44)による脳内進行、マウスT細胞リンパ腫(IM−7.8.1)によるリンパ節浸潤を抑制するほかに、ヌード・マウスのヒト卵巣癌培養細胞株(クローン515)の移植、マウス悪性腫瘍培養細胞株(IM−7.8.1)の肺転移、およびSCIDマウスでのヒト悪性腫瘍培養細胞株(GKW.A3)の転移を阻害することが示された。放射性同位元素は、MabU36抗CD44v6抗体およびその誘導体と複合体を形成し、著しい毒性を伴う臨床試験で抗腫瘍活性を有した。これらの結果は、潜在的な癌治療として抗CD44モノクローン抗体の開発を奨励し、かつ支持するものであるにもかかわらず、効果、安全性、またはヒト癌への適用性についての限界を示している。
したがって、もし癌細胞の細胞障害性を媒介する抗体組成物が単離された場合、その細胞上のCD44の細胞表面発現とのその親和性の機能として、有益な診断的および治療的手順が実現するであろう。
【0008】
先行特許:
米国特許第5,750,102号は、患者由来の細胞または組織からクローニングすることが可能であるMHC遺伝子をその患者の腫瘍細胞にトランスフェクションするプロセスを開示している。次に、これらのトランスフェクト細胞を用いて患者に対するワクチン接種をおこなった。
米国特許第4,861,581号は、哺乳類の腫瘍細胞および正常細胞の、細胞外ではなく細胞内の構成要素に対して、特異的なモノクローン抗体を得るステップと、治療を受けた哺乳類組織に標識抗体を接触させて腫瘍細胞を殺すステップと、変性している腫瘍細胞の細胞内構成要素に対する標識抗体の結合を測定することによって、治療の有効性を決定するステップとを有するプロセスを開示している。ヒト細胞内抗体に対する抗体を調製する際に、特許権者は悪性細胞がそのような抗原の簡便な供給源を表すことを認識する。
米国特許第5,171,665号は、新規抗体とそれを生産するための方法とを提供する。具体的には、この特許はヒト腫瘍(例えば大腸および肺の腫瘍)に関連したタンパク質抗原に強く結合する一方で、正常細胞に対する結合がかなり小さい性質を持つモノクローン抗体の形成を示唆している。
米国特許第5,484,596号は、癌治療の方法を提供するもので、この方法は、ヒト癌患者から腫瘍組織を外科的に取り除くこと、腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を得ること、この腫瘍細胞に放射線照射して生存可能ではあるが非発癌性にすること、ならびに該細胞を用いて原発腫瘍の再発を阻害する一方で同時に転移を阻害することができる患者のためのワクチンを調製することを含む。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローン抗体の開発を教示する。第4段落45行(以下参照)に示されるように、特許権者はヒト腫瘍形成で活発な特異的免疫療法を発現するモノクローン抗体の開発に自発腫瘍細胞を利用している。
米国特許第5,693,763号は、ヒト癌に特有であり、起源である上皮組織に依存しない糖蛋白抗原を教示している。
米国特許第5,783,186号は、Her2発現細胞でアポトーシスを誘導する抗Her2抗体、この抗体を産生するハイブリドーマ培養細胞株、この抗体を用いて癌を処置する方法、およびこの抗体を含む医薬組成物に関する。
米国特許第5,849,876号は、腫瘍および非腫瘍組織源から精製されたムチン抗原に対するモノクローン抗体生産のための新規ハイブリドーマ培養細胞株を記載している。
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に対して特異的な抗体を産生するヒト・リンパ球を生産する方法、モノクローン抗体を産生する方法、さらにまたこの方法によって生産されるモノクローン抗体に関する。この特許は、より具体的には、癌の診断および処置に有用な抗HDヒト・モノクローン抗体の生産に関する。
米国特許第5,869,045号は、ヒト癌細胞と反応する抗体、抗体フラグメント、抗体複合体、および単鎖免疫毒素に関する。これらの抗体が作用する機能は、それらの分子がヒト癌の表面に存在する細胞膜抗原と反応するという点で、さらに該抗体が、結合に続いて、癌細胞内に内在化することができるという点で、2倍であることから、これらの抗体が抗体薬物および抗体毒素複合体形成に特に有用となる。それらの非修飾型では、これらの抗体もまた特定の濃度で細胞毒性を示す。
米国特許第5,780,033号は、腫瘍治療および予防のための抗体の使用を開示する。しかし、この抗体は、高齢の哺乳類から得た抗核自己抗体である。この場合、自己抗体は免疫系で見いだされる自然抗体の一種であると考えられる。自己抗体が「高齢の哺乳類」から生ずることから、処置されている患者から自己抗体が実際に生ずる必要はない。また、この特許は老いた哺乳類に由来する天然かつモノクローンの抗核自己抗体と、モノクローン抗核自己抗体を産生するハイブリドーマとを開示する。
米国特許第5,916,561号は、CD44遺伝子の変異エクソンv6に対する特異的抗体VFF−18およびその変異体を開示している。この抗体は、ラットCD44v6変異体よりもヒトCD44v6変異体を認識する点で、比較抗体を凌ぐ改善である。また、この抗体はCD44v6発現の診断用アッセイを開示する。この抗体に関しては、生体外(in vitro)または生体内(in vivo)機能はみられなかった。
米国特許第5,616,468号は、CD44遺伝子のヒト・エクソン6Aによってコードされた配列を含む合成ペプチドに対して産生されたモノクローン抗体Var3.1を開示している。具体的には、この抗体は90kD型のヒトCD44には結合しないことから、Hermes−3抗体と区別される。CD44のv6変異体を検出する方法が提供されるとともに、この抗原に基づいた悪性形質転換をスクリーニングして検査する方法もまた、提供する。また、血清中に含まれる抗原の検出に基づいた炎症疾患のスクリーニング法も、提供する。
米国特許第5,879,898号は、43アミノ酸ペプチドを産生するヒトCD44変異体6の129bpエクソンに結合する特異的抗体を開示している。このモノクローン抗体は、いくつかのハイブリドーマ培養細胞株MAK<CD44>M−1.1.12、MAK<CD44>M−2.42.3、およびMAK<CD44>M−4.3.16で産生される。抗体は、新規CD44v6アミノ酸配列の少なくともヘキサペプチドを含む融合タンパク質から生ずる。さらに、癌診断用として用いることができるエクソン6変異体の検出のための免疫アッセイが開示されている。注目に値すべきことは、この開示された抗体の生体外(in vitro)または生体内(in vivo)機能が存在しないことである。
米国特許第5,942,417号は、CD44様ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、このポリヌクレオチドおよびその変異体を用いて組換え体タンパク質を製造する方法とを開示する。抗体は、これらのポリペプチドに対してクレームされるが、具体的な例がなく、また具体的もなく、そのような抗体を分泌する寄託クローンも存在しない。ノーザン・ブロットは、いくつかの種類の組織でポリヌクレオチドの外観を示すが、このポリペプチドの翻訳および発現があるという付随的な証拠は存在しない。したがって、このポリペプチドの遺伝子産物に対して作られる抗体があること、それらの抗体が生体外(in vitro)または生体内(in vivo)機能のいずれかを持つと思われるということ、ならびにそれらがヒト眼疾患に関連するかどうかについての証拠はない。
米国特許第5,885,575号は、CD44の変異エピトープと反応する抗体と、この抗体を用いることで変異体を同定する方法とを開示している。この変異体は、コードする単離ポリヌクレオチドをラット細胞から単離されたものであり、この変異体に対する抗体mAb1.1ASMLは分子量120kD、150kD、180kD、および200kDのタンパク質を認識する。モノクローン抗体1.1ASMLの投与は、同種同系のラットでラットBsp73ASMLの成長および転移を遅らせた。注目に値すべきことは、1.1ASMLは、LCLC97ヒト大細胞型肺癌に対する活性の欠如によって示されるように、ヒト腫瘍を認識しない。ヒト相同体は、LCL97から単離されたが、この相同体を認識する等価抗体は産生されなかった。したがって、ラットCD44の変異体に特異的な抗体が産生され、かつラット腫瘍の成長および転移に影響を及ぼすことが示されたにもかかわらず、ヒト腫瘍に対するこの抗体の効果についての証拠はない。より具体的には、発明者はこの抗体がヒト癌を認識しないと指摘している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,750,102号
【特許文献2】米国特許第4,861,581号
【特許文献3】米国特許第5,171,665号
【特許文献4】米国特許第5,484,596号
【特許文献5】米国特許第5,693,763号
【特許文献6】米国特許第5,783,186号
【特許文献7】米国特許第5,849,876号
【特許文献8】米国特許第5,869,268号
【特許文献9】米国特許第5,869,045号
【特許文献10】米国特許第5,780,033号
【特許文献11】米国特許第5,916,561号
【特許文献12】米国特許第5,616,468号
【特許文献13】米国特許第5,879,898号
【特許文献14】米国特許第5,942,417号
【特許文献15】米国特許第5,885,575号
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、以前に、癌疾患の処置に有用であるカスタマイズ化された抗癌抗体を個々に選択するプロセスに関する「個々の患者に特異的な抗癌抗体」と題した米国特許第6,180,357号の交付を受けた。この書類の目的のために、用語「抗体」および「モノクローン抗体」(mAb)を同義的に用い、ハイブリドーマ(例えばマウスもしくはヒト)および免疫複合体によって産生される免疫グロブリン、必要に応じて免疫グロブリンのフラグメント、ならびに免疫グロブリン由来の組換えタンパク質、例えばキメラおよびヒト化免疫グロブリン、F(ab’)およびF(ab’)2フラグメント、単鎖抗体、組換え免疫グロブリン可変領域(Fv)、融合タンパク質等のことをいう。いくつかのアミノ酸配列がタンパク質の構造または機能に対して有意に作用することなくポリペプチド内で変化し得ることは、当該技術分野で十分認識されている。抗体の分子再配置では、主鎖領域の核酸もしくはアミノ酸配列での修飾が通常、許容的であり得る。これらは、限定されるものではないが、置換(好ましくは保存的置換)、欠失、または付加が挙げられる。さらに、標準的な化学療法(例えば、放射性核種)を本発明のCDMABとともに活用することで、上記化学療法の使用に重点を置く。CDMABもまた、毒素、細胞毒部分、酵素(例えばビオチン複合酵素)、または造血細胞と複合体を形成することができる。
この出願は、癌疾患修飾モノクローン抗体をコードするハイブリドーマ培養細胞株を単離するために、’357特許で教示されたように患者特異的抗癌抗体を生産するための方法を、実質的に利用する。これらの抗体は、1つの腫瘍に対して特異的に作られるので、癌治療のカスタマイズが可能になる。この出願の文脈の中で、細胞致死(細胞毒性)または細胞成長阻害(細胞静止)特性のいずれかを持つ抗癌抗体を以下、細胞毒性という。これらの抗体を、癌の病期分類および診断の補助に用いることができ、腫瘍転移と同様に原発腫瘍の処置に用いることができる。
個別的な抗癌処置が期待されることで、患者を管理する方法にも変化がもたらされる。考えられる臨床シナリオは、診察時に腫瘍試料を得て、それを保存(バンク)することである。この試料を用いて、既存の癌疾患修飾抗体のパネルによる癌のタイプ分けができる。患者は、従来通りに病期分類されるが、利用可能な抗体を用いて患者をさらに病期分類することができる。患者を既存の抗体で直ちに処置することができる。さらに/あるいは、腫瘍に対して特異的な抗体のパネルを、本明細書中に概説される方法を用いて、またはファージ提示ライブラリを本明細書に開示したスクリーニング方法と組み合わせて用いることで、生産することができる。生ずるすべての抗体を抗原抗体のライブラリに加える。なぜなら、他の腫瘍は処置しているエピトープと同じエピトープのいくつかを持ち得るからである。この方法により生産さされる抗体は、該抗体に結合する癌を有する任意の数の患者での眼疾患処置に有用であると考えられる。
【0011】
米国特許第6,180,357号のプロセスを実質的に用いると、マウス・モノクローン抗体H460−16−2が、患者の肺腫瘍生検によって得られた細胞によるマウスの免疫化後に得られた。H460−16−2抗原が、異なる組織に由来する広範囲のヒト培養細胞株の細胞表面上で発現した。乳癌培養細胞株MDA−MB−231(MB−231)および皮膚癌細胞A2058は、生体外(in vitro)でのH460−16−2の細胞毒性効果の影響を受けやすい。
培養中のMB−231細胞に対するH460−16−2の細胞毒性の結果は、該細胞がマウスに移植された場合、H460−16−2の抗腫瘍活性が癌細胞に向けられることで、さらに拡大された(S.N.10/603,000に概説されたように)。症状発現前異種移植腫瘍モデルは、治療効力の有効な予測手段と考えられる。
ヒト乳癌予防生体内(in vitro)モデルでは、H460−16−2処置は、アイソタイプ対照抗体と比較して処置期間中の腫瘍成長抑制が有意に効果的(p<0.0001)であった。このアイソタイプ対照抗体は、H460−16−2と構造およびサイズが同一ではなるが、MB−231細胞と結合することができない。処置相の終了後、H460−16−2を与えられたマウスの腫瘍は、対照群のわずか1.3パーセントまでしか成長しなかった。後処置追跡調査期間中、H460−16−2の処置効果が持続し、処置群での平均腫瘍容積が、測定相の終わりまで対照群よりも有意に小さいままであった。抗体効力の測定として生残性を用い、後処理70日目でH460−16−2処置群での致死リスクが抗体緩衝液対照群の訳71パーセントであると推定された(p=0.028)。これらのデータは、対照処置群と比較して、H40−16−2によって延命効果が与えられることを証明した。体重減少および臨床苦痛等の毒性の兆候をなんら誘導しなかったことから、H460−16−2処置は安全に見えた。したがって、H460−2処置は、ヒト乳癌の安定したモデルで対照処置群と比較して腫瘍成長を遅延させて生存を高めることから、有効であった。
【0012】
さらに、H460−16−2は、確立された生体内(in vivo)腫瘍モデル(S.N.10/603,000に概説されるように)でMB−231細胞に対する抗腫瘍活性を示した。H460−16−2による処置を標準の化学療法薬であるシスプラチンと比較したところ、シスプラチンとH460−16−2処置群とが、抗体希釈緩衝液またはアイソタイプ対照降誕のいずれかによって処置された群と比較して、腫瘍容積が有意に小さいこと(p<0.001)が示された。H460−16−2処置が腫瘍抑制を媒介した。この腫瘍抑制はシスプラチン化学療法による腫瘍抑制の約2/3であったが、有意な(19.2%)体重減少は見られず(p<0.003)、また臨床苦痛(例えば、シスプラチン処置で観察された2件の処置関連死を含む)が見られなかった。H460−16−2の抗腫瘍活性およびその最小毒性から、H460−16−2が魅力的な抗癌治療薬となる。
後処置期間では、H460−16−2は有意な延命効果(p<0.02)を示した。H460−16−2群での致死リスクが、処置後70日未満ではアイソタイプ対照抗体群での致死リスクの約半分であった。観察された延命効果は、後処理120日以上にわたって続き、アイソタイプ対照およびシスプラチン処置マウスの100パーセントが死亡したのに対して、H460−16−2処置群では67パーセントであった。H460−16−2は、アイソタイプ対照抗体群と比較して、腫瘍成長を26パーセントまで遅らせることで腫瘍抑制を維持した。後処理31日目で、H460−16−2は、アイソタイプ対照群と比較して48パーセントまで腫瘍成長を減少させることで(処置の終わりに観察された49パーセント減少と同等)、腫瘍サイズを制限した。乳癌の定着腫瘍モデルでは、これらの結果は、処置相を超えて腫瘍抑制を保ち、かつ全身腫瘍組織量を減らして、哺乳類での生存を高める抗体の能力を示すH460−16−2の可能性を示している。
薬物標的としてH460−16−2を検証するために、正常ヒト組織でのH460−16−2の発現は既に決定された(S.N.10/603,000)。この研究は、抗CD44抗体(クローンL178)との比較によって拡大された。H460−16−2によるIHC染色によって、大部分の組織は、再びH460−16−2抗原を発現させることに失敗し、肝臓、腎臓(管状上皮細胞の縁染色を除く)、心臓、および肺という不可欠な器官の細胞を含む。組織染色から得られた結果は、H460−16−2が種々の細胞型に対する結合が制限されていることを示したが、浸潤マクロファージ、リンパ球、および線維芽細胞に対する結合を有した。L178抗体は、類似の染色パターンを示した。しかし、重要ないくつかの違いがあった。すなわち、H460−16−2に比べてリンパ球の染色がより強く、またL178による幅広い分布を呈することである。また、肝臓試料の1つでは、L178がクッパー細胞を染色し、その一方でH460−16−2による染色はみとめられなかった。乳癌患者におけるH460−16−2抗原の局在化およびその広がりは、患者に対するH460−16−2免疫療法の有益性の評価および効果的臨床試験の設計で重要である。癌患者の乳房腫瘍でのH460−16−2抗原発現に対処するために、個々の乳癌患者50人から得た腫瘍試料をH4460−16−2抗原の発現について事前にスクリーニングした(S.N.10/603,000)。本研究は、L178に対してH460−16−2の染色を比較した。本研究の結果は、以前の結果と類似しており、組織試料の62パーセントがH460−16−2抗原に関して陽性に染色され、乳房腫瘍組織の76パーセントがL178エピトープに関して陽性に染色されることが示された。患者試料内でのH460−16−2の発現は、染色が悪性細胞に限定されていたことから、癌細胞に対して特異的であるように見えた。対照的に、H460−16−2は乳癌患者由来の正常組織の10試料のうち4つの試料を染色し、一方L178は6つを染色した。H460−16−2およびL178抗原の両方での乳房腫瘍発現は、主に悪性細胞の細胞膜に局在化するように見え、CD44を治療のための魅力的な標的にする。H460−16−2発現は、さらに乳房腫瘍の発生、処置、および予後に重要な役割を果たすホルモン・エストロゲンおよびプロゲステロンの受容体の乳房腫瘍発現に基づいて評価した。H460−16−2抗原の発現とエストロゲンまたはプロゲステロンのいずれかに対する受容体の発現との間に、相互関係が存在しないことが明らかであった。腫瘍の病期分類または癌が進行する度合いに基づいて腫瘍を分析した場合も、H460−16−2抗原と腫瘍病期分類との間に明らかな相関はなかった。同様の結果は、L178で得られた。
【0013】
H460−16−2の潜在的な治療上の利点をさらに広げるために、種々のヒト癌組織での抗原の頻度および局在化もまた、既に決定されていた(S.N.10/603,000)。本研究は、H460−16−2の染色をクローンL178と比較した。これらの腫瘍型の大部分もまた、L178抗原が陽性でもあった。ヒト乳房腫瘍組織と同様に、H460−16−2およびL178局在化は、腫瘍細胞膜上でも生じた。しかし、H460−16−2抗体と比較して、L178による実質的により多くの膜局在化があった。また、H460−16−2およびL178の両方で染色された腫瘍型の組織の43%が、L178抗体による染色がより強いことが示された。これらは、文献からのIHCデータとの比較に基づいて、本明細書中に示されたIHCデータと性格に一致するCD44の形態がないように見えた。CD44の標準的形態は、通常、ヒト脳で発現され、H460−16−2抗原は発現されない。汎CD44イソフォームに対する抗体は、肝臓(クッパー細胞を含む)を染色せず、生殖周期のすべての相で子宮内膜腺を陽性染色する。H460−16−2抗原は明らかにクッパー細胞上に存在し、生殖周期の分泌子宮内膜腺上のみに存在する。H460−16−2抗原は、明らかに組織マクロファージ上に存在し、また変異体形態V4/5およびV8/9は副次的なマクロファージ染色を示す。抗CD44L178と比較してH460−16−2で見られる類似はしているが異なった結合パターンは、H460−16−2抗原がCD44の固有のエピトープであることを示している。
本明細書中に概説されるように、追加の生化学的データもまた、H460−16−2によって認識される抗原がCD44の形態の1つであることを示している。このことは、CD44と反応するモノクローン抗体(L178)が、免疫沈降によってH460−16−2に結合したタンパク質を同定することを示す研究によって、支持される。ウエスタン・ブロッティングによる研究もまた、H460−16−2によって認識されたCD44のエピトープがv6またはv10に存在しないことを示唆している。H460−16−2エピトープもまた、炭水化物および立体配座依存性によって特徴づけられる一方で、多くの抗CD44抗体がCD44のペプチド部分に向けられる。これらのIHCおよび生化学的結果は、H460−16−2がCD44抗原の変異体と結合することを示す。したがって、証拠の優位性は、H460−16−2が、CD44変異体上に存在する固有の炭水化物依存型立体配座エピトープのライゲーションを介して抗癌効果を媒介する。
全体として、このデータは、H460−16−2抗原が癌関連抗原であり、ヒトで発現され、さらに病理学的関連性のある癌標的であることを示している。さらに、このデータはヒト癌組織に対するH460−16−2の結合を示し、診断、治療の予測、あるいは予後であり得るアッセイに適当に使用することができる。また、この抗原の細胞膜局在化は、ほとんどの非悪性腫瘍での抗原の発現を欠いていることによる細胞の癌病期分類を示し、この観察によって、診断、治療の予測、または予後であり得るアッセイに使用されるこの抗原、その遺伝子または誘導体、およびそのタンパク質または変異体の使用を可能にする。
【0014】
他の研究は、抗CD44抗体の使用を伴うもので、H460−16−2によって示されない治療可能性の限界を有する。H460−16−2は、生体外(in vitro)および生体内(in vivo)抗腫瘍活性を示す。既に説明した抗体、例えばMAK<CD44>M−1.1.12、MAK<CD44>M−2.42.3、およびMAK<CD44>M−4.3.16は、それらおよびVFF−18に起因する生体外(in vitro)および生体内(in vivo)細胞毒性を有するものではなく、またVFF−18およびMabU36も内因性の腫瘍細胞毒性を示さなかった。さらに加えて、生体内(in vivo)腫瘍効果を持つ他の抗CD44抗体もまた、H460−16−2で明白でない特定の限界がある。例えば、ASML1.1、K926、抗CD44、およびIM−78.1は、ラット、マウス、異種移植モデルでのラットおよびマウス腫瘍成長に対する生体内(in vivo)抗腫瘍活性をそれぞれ示す。H460−16−2は、ヒト癌モデルでの抗腫瘍活性を示す。H460−16−2もまた、ヒトCD44に向けられたものであり、一方ASML1.1等の抗体はラットCD44のみを認識する。クローン515抗CD44抗体は、ヒト卵巣培養細胞株の腹膜腫瘍移植を阻害するが、腫瘍成長を抑制または阻害しない。H460−16−2は、SCIDマウス異種移植モデルでのヒト乳房腫瘍成長を抑制することが可能である。GKW.A3は、抗ヒトCD44モノクローン抗体であり、予防的ではあるが確立されたものではないモデルで、マウスでのヒト転移性黒色腫の腫瘍成長を阻害することが可能である。H460−16−2は、ヒト乳癌の予防的および確立されたマウス異種移植モデルでの顕著な抗腫瘍活性を示した。その結果、H460−16−2が既に記述された抗CD44抗体と比較して優れた抗腫瘍特性を有することはまったく明瞭である。SCIDマウスでのヒト乳房腫瘍に対する生体外(in vitro)および生体内(in vivo)抗腫瘍活性の両方を示し、ヒトCD44に向けられる。ヒト乳癌の予防的および確立(より臨床的に関連)モデルで活性も示す。
【0015】
全体として、本発明はH460−16−2抗原を治療薬の標的として使用することを教示しており、投与された場合、哺乳類で抗原を発現している癌の全身腫瘍組織量を減少させることができ、また処置された哺乳類の生存期間の延長に至ることもできる。この発明はまた、CDMAB(H460−16−2)およびその誘導体を使用し、それの抗原を標的化し、哺乳類で抗原を発現している癌の全身腫瘍組織量を減少させ、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳類の生存を伸ばすことを教示している。さらに、この発明はまた、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳類の診断、治療の予測、および予後に有用であり得る癌細胞でのH460−16−2抗原の検出を用いることが教示されている。
もし患者が治療または転移発現の最初の過程に対して、患者が無反応である場合、その腫瘍に対する特異的抗体を生成するプロセスを繰り返して、再処置をおこなうことができる。さらに、その患者から得た赤血球細胞と抗癌抗体との複合体を作り、それを再注入することで転移の処置をおこなうことができる。転移癌および転移に対しては効果的な処置が殆どなく、大抵の場合、死に至る哀れな結果の兆しになる。しかし、転移によって血管新生がかなり生じるので、赤血球は抗癌抗体の送達によってその腫瘍部位に抗体を集中させる効果を奏することができる。転移前であっても、大部分の癌細胞の生存は、宿主の血液供給に依存していることから、同様に、赤血球に結合させた抗癌抗体は元位置(in situ)の腫瘍に対して有効であるにちがいない。あるいは、そのような抗体と、他の造血細胞、例えばリンパ球、マクロファージ、単球、およびナチュラルキラー細胞とを結合させることも可能である。
【0016】
一般に抗体には5つの種類があり、各々がそのH鎖によって与えられる機能と関係している。裸の抗体による癌細胞致死によって、抗体依存型細胞媒介細胞毒性(ADCC)または補体依存細胞毒性(CDC)のいずれかを通して媒介されると、一般に考えられている。例えば、IgMおよびIgG2a抗体は、補体系C−1成分の結合によってヒト補体を活性化し得ることから、腫瘍溶解に至ることができる補体活性化の古典経路を活性化させることができる。ヒト抗体については、最も効果的な補体活性化抗体は、概ねIgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3アイソタイプのマウス抗体は、細胞毒性細胞を補充する場合に効果的であり、単球、マクロファージ、顆粒球、および特定のリンパ球によって細胞致死に至るFc受容体を持つ。IgG1およびIgG3アイソタイプのヒト抗体は、ADCCを媒介する。
抗体媒介癌致死の別の可能性のある機構は、抗体の使用を介するものと考えられ、それは細胞膜およびその関連糖蛋白または糖脂質(所謂触媒抗体)内の種々の化学結合の加水分解を触媒するために機能する。
より広く受け入れられている抗体媒介癌細胞致死の付加的機構が2つある。最初の1つは、癌細胞に存在する推定上の抗原に対して免疫応答を生ずるために身体に、身体を誘導するためにワクチンとして抗体を使用することである。第2は、標的成長受容体に対して抗体を用いることで、それらの機能と干渉するか、その機能が効果的に喪失されるようにして、上記受容体を下方制御することである。
【0017】
したがって、本発明の目的は、癌細胞に関して細胞毒性がる特定の個人に由来する細胞から疾病患修飾抗体を産生し、その一方で同時に非癌細胞に対して非毒性であり、ハイブリドーマ培養細胞株および該ハイブリドーマ培養細胞株がコードされる対応の単離モノクローン抗体およびその結合フラグメントを単離する方法を利用することである。
本発明の別の目的は、ATCCにPTA−4621として寄託されたクローンによってコードされる単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントに対して特異的に結合するCD44の抗原性部分を発現する細胞の存在を決定するためにATCCにPTA−4621として寄託されたクローンによってコードされる単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントを利用する方法を教示することである。
本発明のさらなる目的は、ATCCにPTA−4621として寄託されたクローンによってコードされ、CD44の抗原性部分に対して抗体特異的に結合する単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を介して、癌患者を持つ患者の生存を高める方法を教示することである。
本発明のさらなる目的は、CDMABおよびその抗原結合フラグメントを教示することである。
本発明のさらなる目的は、ADCCを介して細胞毒性が媒介されるCDMABを産生することである。
本発明のさらなる目的は、CDCを介して細胞毒性が媒介されるCDMABを産生することである。
本発明のさらなる目的は、細胞毒性が細胞化学結合の加水分解を触媒する能力の関数であるCDMABを生産することである。
本発明のさらなる目的は、診断、予後、および癌のモニタリングにとって毛結合アッセイが有用であるCDMABを生産することである。
この発明の他の目的および利点は、図および実施例、この発明の特定の実施形態によって述べられる以下の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
特許または出願ファイルは、少なくとも1枚のカラー仕上げされた図面を含む。カラー図面を有するこの特許または特許出願公報の写しは、特許庁に請求して必要な手数料を支払うことで得られる。
【図1】H460−16−2によって精査したMADA−MB−468膜のウエスタン・ブロットである。レーン1:還元条件下で分離した膜タンパク質。レーン2:非還元条件下で分離した膜タンパク質。分子量マーカーを左側に示す。
【図2】H460−16−2によって精査した膜のウエスタン・ブロット。レーン1:MADA−MB−468膜。レーン2:MDA−MB−231膜。 分子量マーカーを左側に示す。
【図3】MADA−MB−468膜タンパク質の2次元ウエスタン・ブロットおよびSDS−PAGE。パネルAは、H460−16−2で認識された2つのタンパク質の位置を示す。パネルBは、アイソタイプ対照抗体を用いて精査した同様のブロットを示す。パネルCは、MADA−MB−468膜のシプロ・ルビー(SYPRO Ruby)染色ゲルを示す。矢印は、パネルAに対応するタンパク質スポットの位置を示す。
【図4】MDA−MB−231膜タンパク質の2次元ウエスタン・ブロット。主結合タンパク質を矢印で示す。
【図5】MDA−MB−231膜へのH460−16−2の結合に対する脱グリコシル化の効果。パネルAは、ウエスタン・ブロットでのH460−16−2と、未処理MDA−MB−231細胞膜(レーン2)、37℃、24時間でグリコシダーゼ処理した膜(本文参照)(レーン3)、および25℃、24時間でグリコシダーゼ処理した膜(レーン4)との結合を示す。レーン1は、分子量マーカーの位置を示す。パネルBは、同様のブロットへの高マンノース結合レクチンGNAの結合を示す。
【図6】H460−16−2で免疫沈降したMDA−MB−231膜タンパク質のSDS−PAGE(パネルA)およびウエスタン・ブロット(パネルB)。レーン1:全MDA−MB−231膜タンパク質。レーン2:H460−16−2免疫沈降タンパク質。矢印は、80〜90kDのH460−16−2結合タンパク質を示す。
【図7】H460−16−2(パネルA)、抗CD44(クローンL178、パネルB)、および抗HSP90(パネルC)を用いて精査したタンパク質のウエスタン・ブロット。レーン1:全MDA−MB−231膜タンパク質。レーン2:H460−16−2免疫沈降タンパク質。レーン3:分子量標準。
【図8】H460−16−2(パネルA、レーン2)を用いて精査したタンパク質のウエスタン・ブロット、抗CD44(クローンL178、パネルB、レーン2)、抗CD44var6(クローンVFF−7、パネルC、レーン2)、および抗CD44var10(クローンVFF−14、パネルD、レーン2)。各ブロットのレーン1は、分子量標準を含む。
【図9】FACSによるH460−16−2結合の典型的なヒストグラム。H460−16−2(20μg/mL)、107.3アイソタイプ対照(20μg/mL)、および抗EGFR(5μg/mL)結合のヒストグラムを、乳癌(MDA−MB−231およびMDA−MB−468)ならびに正常(Hs578BstおよびCCD−27sk)培養細胞株について示した。
【図10】正常ヒト・アレイから得た扁桃腺組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)によって得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。リンパ小節(黒色矢印)のマントルゾーンにより限定された染色であり、かつ弱く染まった芽中心(緑色矢印)を残すAR460−16−2と比べて、L178によるリンパ球の染色が強くかつ幅広く分布している。倍率は200倍である。
【図11】正常ヒト組織アレイから得た肝臓組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)によって得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178による肝類洞クッパー細胞染色(矢印)が示されるが、H460−16−2によるものはない。倍率は200倍である。
【図12】乳癌腫瘍(浸潤性導管癌)に対するH460−16−2の典型的な顕微鏡写真。パネルに示す黄色および橙色の矢印は、それぞれ間質細胞および悪性細胞シートを示している。倍率は100倍である。
【図13】ヒト乳癌組織アレイから得られたベージェット病乳房組織に対するH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)により得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178によって悪性細胞(矢印)が膜染色されているのに対して、H460−16−2による染色はネガティブである。倍率は200倍である。
【図14】ヒト多重腫瘍組織アレイから得た子宮頸部扁平上皮癌組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)により得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178よりもH460−16−2のほうが強く悪性腫瘍を膜染色している。倍率は200倍である。
【図15】ヒト多重腫瘍組織アレイから得た腺癌肺組織切片でH460−16−2(A)および抗CD44(L178)抗体(B)により得られた結合パターンを示す典型的な顕微鏡写真。L178による悪性細胞(矢印)のスコアは+++であり、H460−16−2によるスコアは±である。倍率は200倍である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
ウエスタン・ブロットによる結合タンパク質の同定
抗体H460−16−2によって認識される抗原を同定するために、この抗原を発現する細胞膜をゲル電気泳動にかけ、さらに膜へ移した。ウエスタン・ブロットは、この抗体によって検出されるタンパク質を決定するために用いた。
1.膜調製
先行研究は、乳癌培養細胞株MDA−MB−231(MB−231)およびMDA−MB−468(MB−468)に対するH460−16−2のFACSによる結合を示した。したがって、これら2種類の培養細胞株から得た膜試料を用いて抗原の同定をおこなった。全細胞膜は、MB−231またはMB−468乳癌細胞の密集培養から調製した。培地をフラスコから取り除き、細胞をPBSで3回洗浄した。最終洗浄後、解離緩衝液(ギブコ(Gibco)−BRL、グランドアイランド、NY)、37℃、5分間によって細胞を解離させた。細胞を回収し、1,200rpmで4℃、10分間遠心した。遠心後、細胞ペレットを、1mLの低張緩衝液(10μg/mLロイペプチン、10μg/mLアプロトニン、および25μg/mL4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドを含有)に再懸濁した。次に、急速凍結および解凍を5回繰り返して細胞の溶解をおこなった。細胞溶解物を9,500rpmで4℃、10分間遠心し、核粒子を取り除いた。上清を回収し、続いて75,000xgで4℃、57分間遠心した。管から上清を注意深く取り除き、ペレットを0.5ないし1mLの高張溶解緩衝液(1パーセントのトリトンX100を含有)に再懸濁した。次に、タンパク質含有量について膜をアッセイし、−80℃で保存した。
2.1次元SDS−PAGE
膜タンパク質の分離を、1次元SDSポリアクリルアミド・ゲル電気泳動でおこなった。20μgの膜タンパク質を12パーセントSDS−PAGEゲルのレーン上に載せた。前染色分子量マーカー(バイオラド(Biorad)、ミシサーガ、ON)を参照レーンに加えた。ジチオスレイトル(DTT)の非存在下、非還元条件下で電気泳動することで、試料の分離をおこなった。電気泳動は、100Vで10分間、続いて150Vで65分間おこなった。40Vで16時間にわたりエレクトロブロッティングをおこなうことで、タンパク質をゲルからPVDF(ミリポア(Millipore)、ビルリカ、MA)膜に移した。ゲルからその膜への前染色マーカーの完全移動を示すことで、定量的な移動を評価した。
移動後、5パーセント・スキムミルク粉末含有トリス(Tris)緩衝食塩水(0.5パーセントのツウィーン(Tween)含む)(TBST)で2時間にわたり、膜のブロッキングをおこなった。次に膜を、3パーセント・スキムミルク粉末含有TBSTに希釈した2〜2.5μg/mLのH460−16−2で2時間インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、ジャクソン・イムノロジカルズ(Jackson Immunologicals)(ウエスト・グローブ、PA)から入手した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と複合化したヤギ抗マウスIgG(Fc)で1時間インキュベートした。このインキュベーションの後にTBSTで3回洗浄し、続いてHRP基質TMB(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリントン、ONから入手した基質キット)によるインキュベーションをおこなった。
【0020】
図1は、記載どおりのウエスタン・ブロットの結果を示す。H460−16−2は明らかに、MB−468膜タンパク質の2分子量(MW)領域に結合する(レーン2)。分子量標準と比較することで、抗体がMW80〜90kDおよびMW120〜150kDのタンパク質に結合する。抗体H460−16−2によって認識されたエピトープは、立体配座エピトープであると考えられる。なぜなら、この抗体は、DTT存在下、還元条件下でゲルから移されたスポットに結合することができなかったからである(レーン1)。図2は、H460−16−2とMB−468(レーン1)およびMB−231(レーン2)細胞由来の膜との結合を比較する。MB−468膜では、H468−16−2が80〜90kDおよび120〜150kD両方のタンパク質と等しい強度で結合する。MB−231膜では、主結合タンパク質は80〜90kDタンパク質であり、120〜150kDの範囲内で同定された結合タンパク質の強度が劣る。
3.2次元SDS−PAGE
結合実体の分解能をより良くし、かつさらに詳しくタンパク質を特徴づけるために、2次元電気泳動を実施した。上記のとおりに調製した全膜タンパク質(70〜200μg)を、プラスワン2−Dクリーンアップ・キット(アマシャム(Amersham):ベー・ド・ウルフェ、QC)を用いて沈降させた後、pH範囲が3〜10の両性電解質含有再水和緩衝液で再懸濁させた。試料を遠心して粒状物質を取り除き、続いて再水和溶液IPGストライプ(アマシャム(Amersham):ベー・ド・ウルフェ、QC)上に載せた。以下のプロトコル、すなわちすなわち再水和16時間;500V、250V時間、1,000V、50V時間;5,000V、7,500V時間を用いて、タンパク質のフォーカシングをおこなった。次に、ストライプをストライプ・ホルダーから取り出し、SDS−PAGE平衡緩衝液でインキュベートした。15分後、ストライプを8パーセント・ゲル上に置き、アガロース溶液で密封した。前染色MWマーカーをストライプの脇に載せた。電気泳動を100Vで10分間、続いて150Vで65分間おこなった。複数のゲルのうちの1枚を10パーセント・メタノール/7パーセント酢酸で30分間にわたり固定した後、蛍光染料シプロ・ルビー(SYPRO Ruby)(登録商標)(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、ユージン、OR)で染色した。タンパク質スポットは、UV光下で可視化した。第2および第3のゲルについては、40Vで16時間にわたりエレクトロブロッティングをおこなうことで、それらのゲルからタンパク質をPVDF(ミリポア)膜に移した。定量的移動の評価は、ゲルから膜への前染色マーカーの完全移動を測定することでおこなった。
移動後、5パーセント・スキムミルク粉末含有トリス(Tris)緩衝食塩水(0.5パーセントのツウィーン(Tween)含む)(TBST)で2時間にわたり、膜のブロッキングをおこなった。次に、膜の1つを3パーセント・スキムミルク粉末含有TBSTに希釈した2〜2.5μg/mLのH460−16−2で2時間にわたりインキュベートした。同様の膜を同様の濃度のアイソタイプ対照(マウス抗トリニトロフェノール、IgG1、κ;クローン107.3(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON))でインキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、ジャクソン・イムノロジカルズ(Jackson Immunologicals)(ウエスト・グローブ、PA)から入手した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と複合化したヤギ抗マウスIgG(Fc)で1時間インキュベートした。このインキュベーションの後にTBSTで3回洗浄し、続いてHRP基質TMB(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリントン、ONから入手した基質キット)によるインキュベーションをおこなった。
【0021】
図3aは、H460−16−2でインキュベートしたMB−468膜から得たウエスタン・ブロットを示す。2つの異なる結合スポットが観察され、1次元電気泳動で得られたものと分子量が一致する。1つは、MW標準に基づいた分子量が約80〜90kDであり、pI3〜4と推定されるゲルの酸性部分に観察された。第2のスポットは、MW標準に基づいた分子量約120〜150kDにあり、80〜90kDタンパク質よりも塩基性側のpIを有している。図3bは、アイソタイプ対照抗体とインキュベートした膜から得たウエスタン・ブロットを示す。このブロットでは何らスポットが見えなかったことから、H460−16−2の結合が人食い的結合ではなかったことを示している。図3cは、MB−468膜タンパク質のシプロ・ルビー(SYPRO Ruby)(登録商標)染色2Dゲルを示す。注目すべきことは、同様のウエスタン・ブロットをMB−231膜で流した場合、80〜90kDスポットのみが観察されることである(図4)。
【実施例2】
【0022】
H460−16−2によって結合した抗体のグリコシル化の決定
抗体H460−16−2によって認識された抗原が糖タンパク質であるかどうかを決定するために、製造元のプロトコル(デグリコプロ(DeglycoPro)脱グリコシル化キット;プロザイム(Prozyme)、サンリアンドロ、CA)に従って、室温または37℃で24時間にわたり、MB−231膜をPNGアーゼF、エンド−O−グリコシダーゼ、およびシアリダーゼAとインキュベートした。記載どおりに1−Dポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によって膜を分離した後、記載どおりにウエスタン・ブロットをH460−16−2で実施した。
ウエスタン・ブロットの結果を図5に示す。グリコシダーゼ処理していないMB−468膜では、H460−16−2は予測85〜95kDバンドを認識した(図5、パネルA、レーン2)。25℃でグリコシダーゼ処理された膜では、このバンドが明確に低分子側に移動している(レーン4)。37℃でグリコシダーゼ処理された膜では、H460−16−2の結合が取り除かれている(レーン3)。脱グリコシル化の完全性を決定するために、同様のブロットを、高マンノース結合ガランサス・ニバリス(galanthus nivalis)凝集素(GNA)を用いて精査した。図5で観察された結果では、パネルBは、25℃(レーン4)では脱グリコシル化が不完全であり、また37℃(レーン3)では本質的に完了していることを示す。したがって、完全脱グリコシル化の条件下で、H460−16−2はそれの抗原に結合することは不可能である。
これらを合わせると、これらの結果は80〜90kDバンドが糖タンパク質であることを示唆している。また、これらの結果は、H460−16−2によって認識されたエピトープが炭水化物依存型である証拠を示している。
【実施例3】
【0023】
H460−16−2によって結合した抗原の同定
1.免疫沈降
1mLのプロテインGダイナビーズ(Dynabeads)(ダイナル(DYNAL))を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で3回洗浄し、洗浄済みのビーズに対して2,500μgのH460−16−2を加えて、全量を500μlにした。この混合物を1時間にわたってやさしく混ぜ合わせながらインキュベートした。未結合抗体を除去し、H460−16−2被覆ビーズを、0.1パーセントのツウィーン(Tween)20を含む2.5mL容量の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。H460−16−2被覆ビーズを5mLの0.2Mトリエタノールアミン(pH8.2)で2回洗浄した後、5mLを加えた。20mMジメチルピメリミデートを含む5mLの0.2Mトリエタノールアミン(pH8.2)の存在下、30分間にわたりやさしく混ぜ合わせることで、H460−16−2をビーズに化学的に架橋させた。反応停止は、5mLの50mMトリス(pH7.5)を添加することによっておこなった。15分間インキュベートした後、H460−16−2架橋ビーズを0.1パーセントのツウィーン(Tween)20を含有するPBSで3回洗浄した。H460−16−2架橋ビーズを0.1Mクエン酸(pH3)で3分間インキュベートして前溶離させた後、0.1パーセント・ツウィーン(Tween)20含有の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。
MB−231細胞から得た3mgの全膜タンパク質を、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)(0.1パーセント・ツウィーン(Tween)20、5パーセント・グルコース、5パーセント・マンノース、5パーセント・ガラクトース、およびプロテアーゼ阻害剤)中で、H460−16−2化学的架橋ビーズとともに、4℃で4時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、免疫沈降物を、150mMNaClおよび0.1パーセント・ツウィーン(Tween)20を含むPBSで3回洗浄した。H460−16−2架橋ビーズを0.1Mクエン酸(pH3)で4分間インキュベートすることで、ビーズからタンパク質を溶離させた。溶離タンパク質を−80℃で保存した。3mgのタンパク質からの免疫沈降タンパク質を8パーセント非還元SDS−PAGEゲルの1つのレーンに載せた。前染色分子量マーカー(バイオラド(Biorad)、ミシサーガ、ON)の試料を参照レーンに加えた。試料を、100Vで10分間、続いて150Vで60分間にわたり電気泳動をおこなうことで分離した。タンパク質を、シプロ・ルビー(SYPRO Ruby)(登録商標)で染色した。
平行のウエスタン・ブロットでは、記載どおりにMB−231膜タンパク質100μgから免疫沈降させたタンパク質を電気泳動で分離した。40Vで16時間にわたり電気泳動をおこなうことで、タンパク質をゲルからPVDF(ミリポア、ビルリカ、MA)膜に移した。定量的移動の評価は、ゲルから膜への前染色マーカーの完全移動を測定することでおこなった。
移動後、5パーセント・スキムミルク粉末含有トリス(Tris)緩衝食塩水(0.5パーセントのツウィーン(Tween)含む)(TBST)で2時間にわたり、膜のブロッキングをおこなった。次に、3パーセント・スキムミルク粉末含有TBSTに希釈した5μg/mLのH460−16−2を用いて、膜を調べた。TBSTで3回洗浄した後、膜を、適当な二次抗体、すなわちジャクソン・イムノロジカルズ(Jackson Immunologicals)(ウエスト・グローブ、PA)から入手した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と複合化したヤギ抗マウスIgG(Fc)で、1時間インキュベートした。このインキュベーションの後にTBSTで3回洗浄し、続いてHRP基質TMB(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、バーリントン、ONから入手した基質キット)によるインキュベーションをおこなった。
図6は、H460−16−2によって免疫沈降したタンパク質から得たゲルおよびブロットを示す。ゲル(パネルA)上では、免疫沈降タンパク質を含むレーンに80〜90kD領域のバンドがある(レーン2、矢印参照)。高分子量のバンドは、無傷の抗体から構成される。この試料にはほかのタンパク質は存在しない。対応するウエスタン・ブロット(パネルB)では、H460−16−2は免疫沈降タンパク質(レーン2)と強く反応し、全膜(レーン1)でみられたものと類似の結合プロフィールを伴う。
【0024】
2.質量分析
H460−16−2によって免疫沈降した80〜90kDタンパク質に対応するゲルの領域(図6、パネルA、レーン2)を、滅菌したピペットのチップを用いて切り出した。次に、質量分析によるタンパク質の同定に、このゲル・プラグを用いた。
この試料を、トリプシン(プロゲスト(ProGest))を用いたロボット式のイン・ゲル消化にかけて、結果として生じた消化上清の一部をMALDI/MS分析に用いた。スポッティングは、ジップチップ(ZipTips)を用いて無人操作(ProMS)でおこなった。すなわち、60パーセント・アセトニトリル、0.2パーセントTFAに調製したマトリックス(α−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸)でC18物質からペプチドを溶離させた。この試料の分析を、200nL/分の流速で75μmC18カラムを用いてマイクロマス(Micromass)Q−Tof2上でナノLC/MS/MSによっておこなった。マスコット(MASCOT)のローカル・コピーを用いて、MS/MSデータを調べた。
H460−16−2免疫沈降物質のLC/MS/MS分析によって同定されたタンパク質を表1に示す。割り当てられたスコアは、一致したペプチドの数と同一性のレベルとに基づいた複合スコアである。
【0025】
【表1】
試料中に存在する唯一のタンパク質がヒトCD44、すなわちリンパ球および複数の種類の癌細胞の細胞表面上にある80kD糖タンパク質と一致した。
【0026】
3.確認
推定上の抗原の確認は、既知の抗CD44モノクローン抗体がH460−16−2によって免疫沈降したタンパク質と反応するかどうかを決定することで、おこなった。全MB−231膜タンパク質およびH460−16−2免疫沈降タンパク質を1次元SDS−PAGEで分離した。電気泳動およびウエスタン・ブロットは、上記のとおりに実施した。膜を、3パーセント・スキムミルク粉末含有のTBSTで希釈した5〜10μg/mLのH460−16−2、抗CD44(クローンL178、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)または抗HSP90(負の対照、クローン16F1(ストレスゲン(Stressgen)、ビクトリア、BC))と2時間にわたってインキュベートした。図7は、記載したとおりのウエスタン・ブロットの結果を示す。パネルAは、H460−16−2と全膜タンパク質(レーン1)および免疫沈降タンパク質(レーン2)との結合を示す。主結合タンパク質は、80〜90kD領域にあるが、120〜150kD領域にあるバンドもまた全膜タンパク質に見られる。L178を用いて平行ブロットの精査をおこなった場合(パネルB)、類似のパターンが見られた。L178は、H460−16−2によって免疫沈降したタンパク質に強く結合した。全膜タンパク質に対するH460−16−2およびL178の結合パターンはかなり類似している(パネルAおよびB、レーン1)、負の対照抗HSP90によって精査した平行ブロット(パネルC)は、この抗体が免疫沈降物質には結合しなかったが、全膜試料内の異なる90kDタンパク質には結合したことを示した。この結果は、HSP90が偏在かつ「粘着性」細胞シャペロン・タンパク質であることから、免疫沈降タンパク質に対する抗CD44の結合が特異的であり、汚染タンパク質の存在によるものではないこと確証する。
【0027】
図8は、H460−16−2の特異性を既知抗CD44抗体のものと比較した実験の結果を示す。MDA−MB−231膜を電気泳動で分離し、記載どおりにPVDF膜に移した。膜をH460−16−2(パネルA)、抗CD44(クローンL178、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、パネルB)、抗CD44var6(クローンVFF−7、ベンデル・メドシステムズ(Bender Medsystems)(サンブルノ、CA)、パネルC)、および抗CD44var10(クローンVFF−14、ベンデル・メドシステムズ(Bender Medsystems)、パネルD)を用いて精査した。H460−16−2およびL178は、80〜90kDおよび120〜150kDタンパク質と反応し、ウエスタン・ブロットで同一の結合パターンを有する。対照的に、CD44変異体6および10に特異的な抗体は、H460−16−2および互いと、異なる結合を示す。両方の変異抗体は、より幅広い範囲のタンパク質と結合し、ゲルの80kD領域との強い結合は示さない。したがって、H460−16−2が変異体6または変異体10に向けられることはありそうもない。
質量分析による同定は、既知の抗体を用いた確認と同様に、H460−16−2に対する抗原がCD44の一形態であることを示している。このことはまた、CD44が重量あたり約50パーセントのN結合糖を有すると思われることから、実施例2の脱グリコシル化実験と整合している。これらの実験もまた、H460−16−2がCD44の炭水化物依存型エピトープに結合することを示す。
【実施例4】
【0028】
ブダペスト条約にもとづいて、米国20110−2209バージニア州(VA)マナサス、大学通り10801の米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)に2002年9月4日、寄託番号PTA−4621としてハイブリドーマ培養細胞株H460−16−2を寄託した。37CFR1.808によれば、寄託者は、寄託材料の公共性に対する有効性に課せられたすべての制限が特許の付与によって即座に取り除かれることを確証する。
抗体生産:
H460−16−2モノクローン抗体は、回収および再播種を2回/週おこなうとともにプロテインGセファロース4ファスト・フロー(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)、ベー・ド・ウルフェ、QC)による標準的抗体精製手順を用いて、CL−1000フラスコ(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)でハイブリドーマを培養することで産生された産生された。ヒト、ヒト化、キメラ化、またはマウス抗体であるモノクローン抗体を用いることは、この発明の範囲内である。H460−16−2を、細胞毒性アッセイで、いくつかの正の対照(抗Fas(EOS9.1、IgM、カッパ、10μg/mL、イー・バイオサイエンス(eBioscience)、サンディエゴ、CA)、抗Her2/neu(IgG1、カッパ、10μg/mL、インテル・メディコ(Inter Medico)、マークハム、ON)、抗EGFR(C225、IgG1、カッパ、5μg/mL、セダルレーン(Cerdarlane)、ホーンビー、ON)、シクロヘキシミド(100μM、シグマ(Sigma)、オークビル、ON)、NaN3(0.1パーセント、シグマ(Sigma)、オークビル、ON))、および負の対照(107.3(抗TNP、IgG1、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、G155−178(抗TNP、IgG2a、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、MPC−11(抗原特異性未知、IgG2b、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、J606(抗フルクトサン、IgG3、カッパ、20μg/mL、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)、IgG緩衝液(2パーセント))と比較した(表3)。乳癌(MB−231、MB−468)、黒色種(A2058、A375)、大腸癌(HIT−29)、肺癌(NCI−H460、A549)、卵巣腫瘍(OVCAR−3)、前立腺癌 (PC−3)、および非癌(CCD−27sk、Hs578.Bst、Hs888.Lu)培養細胞株を試験した(すべてをATCC、マナサス、VAから入手)。生/死細胞毒性アッセイは、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)(ユージーン、OR)から得た。このアッセイは、以下に概説する変更を加えて製造元の指示にしたがっておこなった。アッセイをおこなう前に、所定の適当な密度で細胞をプレーティングした。2日後、100μLの精製抗体を培地に希釈した後、細胞プレートに移して5パーセントCO2インキュベータ内で5日間にわたりインキュベートした。次に、プレートを逆さまにして空にし、拭き取って乾かした。MgCl2およびCaCl2を含む室温DPBSをマルチチャンネル小型容器から各ウエルに分注し、3回軽くたたき、逆さまにして空にした後、拭き取って乾かした。MgCl2およびCaCl2を含むDPBSで希釈した50μLの生/死用蛍光色素を各ウエルに添加し、5パーセントCO2インキュベータで37℃、30分間にわたりインキュベートした。パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)HTS7000蛍光プレートリーダーを用いてプレートの読み取りをおこない、データをマイクロソフト・エクセル(Microsft Excel)で分析し、さらに結果を一覧にして表2に示した。データは、三重反復試験した4回の実験の平均値を表し、以下のようにして定量的に示した。すなわち、閾値細胞毒性よりも高い値が得られた実験が4/4の場合(+++)、閾値細胞毒性よりも高い値が得られた実験が3/4の場合(++)、および閾値細胞毒性よりも高い値が得られた実験が2/4の場合(+)とした。表2中の印の無い細胞は、一貫性の無い閾値細胞毒性よりも低い効果のものを表した。H460−16−2抗体はA2058黒色腫細胞およびMBー231乳癌細胞で選択的細胞毒性を示したが残りの癌細胞に対しては細胞毒性を生じなかったことから、癌細胞に対する特異的な細胞毒性があることが示される。重要なことは、単離抗体がいくつかの非癌細胞、例えばCCD−27sk、Hs578.Bst、またはHs888.Luに対して細胞毒性を生じなかったことである。細胞毒性化学剤は、期待される細胞毒性を誘導する一方で、比較のために挙げられるいくつかの他の抗体もまた予想通りに機能して、生物学的細胞アッセイの限界を与えた。
【0029】
【表2】
【0030】
細胞の単層をDPBS(Ca++およびMg++を含まない)で最初に洗浄することで、FACS用に細胞を調製した。次に、細胞解離緩衝液(インビトロゲン(INVITROEN)、バーリントン、ON)を用いて、37℃で細胞培養プレートから細胞を遊離させた。遠心後、細胞を収集し、MgCl2、CaCl2、および25パーセントのウシ胎仔血清を含むDPBS(洗浄用メジウム)に4℃で再懸濁して係数し、適当な細胞密度になるように等分割し、遠心して細胞をペレットにし、30分間、氷上で試験抗体(H460−16−2)または対照抗体(アイソタイプ対照、抗Her2/neuまたは抗EGFR)20μg/mLの存在下、染色用メジウム(MgCl2、CaCl2、および2パーセントのウシ胎仔血清を含むDPBS)に4℃で再懸濁した。アレクサ・フルオール(Alexa Fluor)488複合二次抗体を添加する前に、細胞を洗浄用メジウムで1回洗浄した。次に、アレクサ・フルオール488複合抗体含有染色用メジウムを20分間にわたり添加した。次に、細胞を最後の時間に洗浄し、1μg/mLヨウ化プロピジウム含有染色用メジウムに再懸濁した。細胞のフローサイトメトリーによる獲得を、セルクエスト(CellQuest)ソフトウェア(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、オークビル、ON)を用いたDACスキャン上に試料を流すことで評価した。細胞の前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)を、FSCおよびSSC検出器で電圧および振幅利得を調製することで設定した。3つの蛍光チャンネル(FL1、FL2、およびFL3)に対する検出器を、細胞が約1〜5単位の蛍光強度中央値を持つ均一なピークを持つようにして、精製アイソタイプ対照抗体で染色した後にアレクサ・フルオール488複合二次抗体で染色した細胞を流すことで調整した。生細胞は、FSCゲーティングおよびヨウ化プロピジウム排除によって獲得した。各試料について、約10,000個の生細胞を分析のために獲得し、その結果を表3に示した。
表3は、アイソタイプ対照群を上回る平均蛍光強度の倍増を一覧にしてまとめたものであり、また定量的に5未満(−)、5ないし50(+)、50ないし100(++)、100超(+++)として示し、括弧内は染色された細胞の割合である。
【0031】
【表3】
H460−16−2抗体の典型的なヒストグラムを図9用に編集し、いくつかの例での図示された双ピークを包含する結合特性を明示する。黒色種および乳癌細胞を含むいくつかの細胞型に対しては、アイソタイプ対照の100倍を上回ってH460−16−2が結合し、肺、大腸、前立腺、および卵巣腫瘍細胞に対しては5ないし100倍上回って結合した。これらは、H460−16−2抗体の非癌細胞への結合であったが、そのような結合による細胞毒性は生じなかった。このことは、結合がその同種抗原への抗体結合の結果を必ずしも予測するものではなく、非自明的な知見であったことを明示している。このことは、異なる細胞での抗体結合の状況が抗体結合よりはむしろ細胞毒性の決定因子であったことを示唆した。
【実施例5】
【0032】
正常ヒト組織染色
IHC研究は、ヒトでのH460−16−2抗原分布を特徴づけるために、既におこなわれた(S.N.10/603,000)。本研究は、H460−16−2をCD44に対する抗体(L178)と比較する。なぜなら、H460−16−2抗原は、生化学的方法で既に決定されたように、CD44の標準型の癌変異体であるかもしれないからである。59の正常ヒト組織に対する抗体の結合を、ヒト、正常器官組織アレイ(イムジェネックス(Imgenex)、サンジエゴ、CA)を用いて実施した。すべての一次抗体(H460−16−2、L178抗CD44(抗HCAM、BDファーミンゲン(PharMingen)、オークビル、ONとしても知られている)、およびマウスIgG1負対照(ダコ(Dako)、トロント、ON))を抗体希釈緩衝液(ダコ(Dako)、トロント、ON)で希釈し、濃度を5μg/mlとした(以前の最適化ステップで最適濃度であると見いだされた)。負対照抗体は、製造元によってすべての哺乳類組織に対して負(ネガティブ)であることが示されている。IHCに関する手順は以下の通りである。
組織切片を1時間にわたって58℃のオーブンで乾燥させることで、脱パラフィン化処理を行い、ガラスドーゼ(コプリン・ジャー)内でキシレンに各回4分ずつ5回浸した。一連のエタノール勾配(100%〜75%)で洗浄した後、切片を水中で再度水和させた。スライドをpH6の10mMクエン酸緩衝液(ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)に浸し、次に各回5分に設定して高、中、および低電力で電子レンジにかけ、最終的に冷PBSに浸した。次に、スライドを3%過酸化水素溶液に6分間浸し、PBSで各回5分ずつ3回洗浄し、乾燥し、汎用ブロッキング溶液(ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)で室温、5分間にわたりインキュベートした。H460−16−2、L178、またはアイソタイプ対照抗体(アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)グルコース・オキシダーゼに対する抗体であり、グルコース・オキシダーゼは哺乳類組織に存在せず、また誘導もされない)を抗体希釈緩衝液(ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)で希釈してその作用濃度(各抗体について5μg/mL)にし、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで各回5分ずつ3回洗浄した。一次抗体の免疫活性は、室温で30分間にわたり、供給(ダコ・エンビジョン・システム(Daco Envision System)、トロント、オンタリオ)されたとおりにHRP複合二次抗体で検出/可視化した。このステップの後で、スライドをPBSで各回5分ずつ3回洗浄し、DAB(3,3‘−ジアミノベンジジンテトラヒドラクロリド、ダコ(Dako)、トロント、オンタリオ)色原体基質溶液を添加することによって呈色反応を引き起こして室温での10分間の免疫ペロキシダーゼ染色をおこなった。スライドを水道水で洗うことで、呈色反応を停止させた。マイヤーのヘマトキシリン(シグマ・ダイアグノスティックス(Sigma Diagnostics)、オークビル、ON)で対比染色をおこなった後に、スライドをエタノール勾配(75〜100%)で脱水させ、キシレンできれいにした。マウンティング用のメジウム(ダコ・ファラマウント(Dako Faramount)、トロント、オンタリオ)を用いることで、スライドカバースリップを載せた。スライドをアキソバート(Axiovert)200(ツワイス・カナダ(Zeiss Canada)、トロント、ON)を用いて顕微鏡観察し、デジタル画像を獲得し、ノーザン・エクリプス・イメージング・ソフトウェア(Northern Eclipse Imaging Software)(ミシサーガ、ON)を用いて保存した。結果の読み取り、スコアリング、および解釈を病理学者がおこなった。
【0033】
表4は、正常ヒト組織のアレイをH460−16−2およびL178抗CD44で染色した結果をまとめたものを示す。H460−16−2による組織染色は、既に記載されたもの(S.N.10/603,000)と同様である。再び注目すべきことは、抗原が一般に重要臓器(例えば、肝臓、腎臓、心臓、および肺)の細胞には存在しないことである。H460−16−2抗体は、マクロファージおよびリンパ球に結合し、それらの存在はそれらの切片状態にある器官のいくつかで観察される。しかし、L178抗CD44抗体によるリンパ球のより高強度の染色および広範囲な分布が見られた(図10)。
H460−16−2に対して正(ポジティブ)である組織もまた、L178抗CD44(場合によっては強度が高い)に対しても一般に正(ポジティブ)である。例えば肝臓(図11)および食道の一試料でわずかな例外があるにもかかわらず、H460−16−2に対して負(ネガティブ)である組織もまた、L178抗CD44に対して一般に負(ネガティブ)である。これらの結果は、H460−16−2が、L178抗CD44抗体によって認識される組織のわずかに小さいサブセットに結合し、組織内では染色の強度もしばしば弱いことを示している。これらの結果は、H460−16−2に対する抗原が正常組織で幅広く発現され、抗体が特異的に限られた数のヒト組織に結合することを示している。また、これらのIHC研究で使用したL178抗CD44によって認識されたものよりもわずかに異なる変異体に対するものであるにもかかわらず、CD44のエピトープに対して、H460−16−2が向けられている点で、生化学的データを支持している。
【0034】
【表4】
【実施例6】
【0035】
ヒト乳房腫瘍組織染色
以前のIHCの比較研究は、ヒト乳癌とのH460−16−2抗原の癌関連性、およびH460−16−2抗体がヒト癌を認識しようとするかについてを決定するためにおこなわれた(S.N.10/603,000)。ここで、L178抗CD44染色と、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)グルコース・オキシダーゼに対する抗体と、哺乳類組織には存在せず、また誘導もされない酵素(負の対照)とを比較した。50人の乳癌患者から得られた乳癌組織アレイと乳癌患者の非腫瘍性乳房組織に由来する9つの試料とを用いた(イムジェネックス・コーポレーション(Imgenex Corporation)、サンジエゴ、CA)。以下の情報は、各患者について提供された。すなわち、年齢、性別、対癌米国合同委員会(AJCC)腫瘍病期、リンパ節、エストロゲン受容体(ER)、およびプロゲステロン受容体(PR)状態。実施例5のIHCの手順に従った。すべての抗体は作用濃度5μg/mlで使用した。
【0036】
表5および6は、それぞれ乳癌組織アレイのH460−16−2およびL178抗CD44抗体染色をまとめたものである。全体的に、試験した50人の患者の62パーセントがH460−16−2抗原に対して正(ポジティブ)であり、CD44に対しては76パーセントであった。H460−16−2およびL178抗CD44がともに同一の組織を染色した場合では、43%の試料で、H460−16−2に比べて高強度の染色がL178抗CD44によって得られた。H460−16−2およびCD44抗原の両方について、乳癌患者由来の10個の正常乳房組織試料のうち4および6個のみがそれぞれ正(ポジティブ)であった。エステロゲン受容体状態とプロゲステロン受容体状態との間に明らかな相関があることは証明されなかった。また、より高い腫瘍病期でH460−16−2およびCD44抗原の正の発現が高くなる傾向があるようには見えなかった。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
H460−16−2染色は、間質細胞が明らかに負(ネガティブ)であり、悪性細胞シートがかなり正(ポジティブ)である図12に示されるように、正常細胞と比較して、癌細胞に対して特異的であった。H460−16−2抗原で見られる細胞局在化パターンは、大部分の例で細胞膜に限定された。L178抗CD44抗体は、より多くの乳癌試料を染色し、H460−16−2と比べて細胞質局在よりも膜局在の度合いが高いことを示した(表7)。L178抗CD44はまた、H460−16−2の場合ではみられなかったが、ぺージェット病の悪性細胞を染色した(図13)。L178抗CD44は、H460−16−2と同様に乳癌患者由来の正常細胞の同じ試料を染色した(H460−16−2試料について部分的に脱落(スラフ)した1つをプラス)。これらの結果は、H460−16−2に対する抗原がほぼ乳癌患者の3分の2で発現される可能性があることを示唆している。染色パターンは、患者試料で、その抗体が悪性細胞に対する高い特異性を持ち、またH460−16−2抗原が細胞膜に局在化していることから、それが魅力的かつ製薬化可能な(drugable)標的となることを示している。H460−16−2対L178抗CD44抗体の、類似しているにもかかわらずより制限された染色は、H460−16−2エピトープがよりいっそう制限されたCD44の変異体である可能性を、ここでも示している。
【0039】
【表7】
【実施例7】
【0040】
ヒト腫瘍組織染色
H460−16−2が乳癌のみならず他のヒト癌組織で発現するかどうかを決定するために、既にH460−16−2が多重ヒト腫瘍組織アレイで使用された(S.N.10/603,000、イムジェネックス(Imgenex)、サンジエゴ、CA)。それらの研究を進める際に、H460−16−2の染色パターンをL178抗CD44の染色パターンと比較した。各患者について、年齢、性別、器官、および診断に関する情報を得た。使用した染色手順は、実施例5で概説したものと同様にした。同じ負の対照抗体をヒト乳房腫瘍組織アレイで説明したように用いた。すべての抗体は、作用濃度5μg/mLで使用した。
【0041】
表8に概説されるように、既に記載されたもの(S.N.10/603,000)と整合する結果が得られたことに加え、乳房のほかに多数の様々なヒト癌がH460−16−2によって染色された。乳癌で見られるように、H460−16−2染色は膜上に局在化(図14)し、いくつかの癌では、癌細胞の細胞質内にも局在化した。L178抗CD44抗体は、細胞質に比べて膜でより高かく、さらにまたH460−16−2で観察されたものよりもより高い強度で正(ポジティブ)に腫瘍組織を染色する割合が高かった(図15)。
【0042】
【表8】
【0043】
したがって、H460−16−2抗原は乳癌の膜のみに単に見いだされるだけではなく、かなり多様な腫瘍型の膜上にも見いだされると考えられる。これらの結果は、H460−16−2が乳癌の他に広範囲の腫瘍型で治療薬としての可能性があることを示している。また、L178抗CD44と比較してH460−16−2が類似はしていても異なった染色パターンを持つことは、H460−16−2がCD44変異体上に存在するエピトープを認識することを意味している。
証拠の優位性は、CD44の変異体に存在する炭水化物依存型立体配座エピトープの結合を介して、H460−16−2が抗癌効果を媒介することを示している。実施例3では、H460−16−2抗体を用いて、MB−231細胞等の発現細胞から同種L178抗CD44を免疫沈降させることができることが明らかにされた。さらに、限定されるものではないが、FACS、細胞ELISA、またはIHCによって示される技術を用いて、特異的に結合するCD44抗原分を発現する細胞および/または組織の検出にH460−16−2抗体が使用可能であることを示すことができた。
したがって、免疫沈降H460−16−2抗原は、そのようなFACS,細胞ELISA、またはIHCアッセイを用いて、そのような細胞または組織に対するH460−16−2の結合を阻害し得ることを示すことができた。さらに、H460−16−2抗体と同様に、他の抗CD44抗体を用いて、他の形態のCD44抗原の免疫沈降および単離をおこなうことができ、さらにその抗原を使用して、同一種類のアッセイを用いて抗原を発現する細胞または組織に対する抗体の結合を阻害することもできる。また、もしすべての形態のCD44(すなわち汎CD44抗体)を認識する抗CD44抗体がその同種抗原を単離するために使用されるならば、その抗原はまた、該抗原を発現する細胞または組織に対するH460−16−2の結合を阻止することができるので、その抗原を発現する細胞および組織上のCD44のエピトープに対するH460−16−2の結合も示される。あるいは、両方の抗体が含まれる競合結合アッセイ、ELISA、細胞ELISA、FACS、またはその他のアッセイでH460−16−2と汎CD44抗体とを比較することもまた、その抗体を発現する細胞および組織上でのCD44のエピトープに対するH460−16−2の結合を示すことができる。
【0044】
この明細書で言及されるすべての特許および刊行物は、本発明が関係する当該技術分野の当業者のレベルを示している。すべての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物が具体的および個別的に参照によって組み込まれることを示されるのと同等の範囲で、本明細書中に援用される。
本発明の一定の形態が例証される一方で、それが本明細書に記載および示された部分の特定の形態または配置に限定されるものではないことが理解される。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更をおこなうことが可能であり、また本発明は明細書に示されたものや、記載されたものに限定されることを考慮しているものではないことが、容易に理解されよう。当業者は、ここに内在されるものと同様に、本発明が目的を実行することや、指摘した結果および利点を得たりするのに十分適していることを、容易に理解し得る。本明細書中に記載されているいっさいのオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的に関連した化合物、方法、手順、および技術が、現在のところ好ましい実施形態の典型的なものであり、例示を意図したものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。当業者は、本発明の精神の中に包含され、かつ添付した特許請求の範囲に定義されるその中での変更および他の用途を思いつくであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、特許請求の範囲に記載したように本発明はそのような特定の実施形態に、過度に限定されるものではないことを理解すべきである。実際、当業者に容易である本発明を実行するための記載されたモードの種々の修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞表面上でCD44の抗原性部分を発現するヒト腫瘍細胞の細胞毒性を媒介するためのプロセスであって、
単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントに前記腫瘍細胞を接触させることを含み、
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが前記発現されたCD44の抗原性部分と結合する単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントであり、
前記抗原性部分がPTA−4621としてATCCに寄託されたクローンによってコードされるモノクローン抗体の同定特性を持つ抗体に結合するという性質を持つことで、細胞毒性が前記結合の結果として生ずる、ヒト腫瘍細胞の細胞毒性を媒介するためのプロセス。
【請求項2】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト化されている、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項3】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントが、限定されるものではないが、細胞毒性部分、酵素、放射活性化合物、および造血細胞からなる群から選択される構成要素と複合体を形成する、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項4】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントがキメラ化されている、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項5】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントがマウスのものである、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項6】
前記ヒト腫瘍組織試料が、大腸、卵巣、肺、および乳房組織から選択される組織で生じる腫瘍から得られる、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項1】
細胞表面上でCD44の抗原性部分を発現するヒト腫瘍細胞の細胞毒性を媒介するためのプロセスであって、
単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントに前記腫瘍細胞を接触させることを含み、
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが前記発現されたCD44の抗原性部分と結合する単離モノクローン抗体またはその抗原結合フラグメントであり、
前記抗原性部分がPTA−4621としてATCCに寄託されたクローンによってコードされるモノクローン抗体の同定特性を持つ抗体に結合するという性質を持つことで、細胞毒性が前記結合の結果として生ずる、ヒト腫瘍細胞の細胞毒性を媒介するためのプロセス。
【請求項2】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト化されている、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項3】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントが、限定されるものではないが、細胞毒性部分、酵素、放射活性化合物、および造血細胞からなる群から選択される構成要素と複合体を形成する、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項4】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントがキメラ化されている、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項5】
前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメントがマウスのものである、請求項1にもとづくプロセス。
【請求項6】
前記ヒト腫瘍組織試料が、大腸、卵巣、肺、および乳房組織から選択される組織で生じる腫瘍から得られる、請求項1にもとづくプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−31183(P2012−31183A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198848(P2011−198848)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2006−523500(P2006−523500)の分割
【原出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(509018384)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2006−523500(P2006−523500)の分割
【原出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(509018384)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (5)
【Fターム(参考)】
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