説明

CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団

【課題】ヒトにおける疾患および病気、特に、神経性および心臓性の疾患および病気の新規な改善された有効な処置方法を提供すること。
【解決手段】単離された細胞集団の細胞が骨髄由来であり、細胞集団の91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
a) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
b) インターロイキン−6(IL-6);
c) 神経成長因子(NGF);
d) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
e) ニューロトロフィン−3(NT-3);
f) インターロイキン−7(IL-7);
g) インターロイキン−11(IL-11);
h) 幹細胞因子(SCF);
i) 血管内皮成長因子(VEGF);
i) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
j) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団、ならびに該細胞集団を含む医薬組成物に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、「Cell Populations Which Co-Express CD49c and CD90」の題名の2001年9月21日に出願された米国出願第09/960,244号の一部継続出願であり、この教示はその全体が本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
中枢神経系(すなわち、脳および脊髄)、末梢神経系および心臓の多数の病気および疾患がヒトに有害に影響する。これらの病気および疾患としては、例えば、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、外傷性脳損傷、脳腫瘍、ファブリー病、うっ血性心不全および心筋梗塞が挙げられる。臨床的管理ストラテジーは、損傷組織(例えば、ニューロン、グリア細胞、心筋)の交換または修復よりもむしろ、例えば、さらなる損傷または傷害の防止に頻繁に焦点が合わされ;外来ステロイドおよび合成、非細胞性医薬品での処置を含み;ステロイドまたは合成薬物の継続投与に依存しうる種々の程度の成功を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、脊髄損傷の大多数は圧迫損傷であり、残りの症例は脊髄の完全な離断を含む。脊髄損傷の現在の治療処置は、外科的および非外科的手順により脊椎を物理的に安定化させることによる、およびステロイド治療で炎症応答を阻害することによるさらなる脊髄損傷の予防を含む。従って、ヒトにおける疾患および病気、特に、神経性および心臓性の疾患および病気の新規な改善された有効な処置方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕単離された細胞集団の細胞が骨髄由来であり、細胞集団の91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
a) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
b) インターロイキン−6(IL-6);
c) 神経成長因子(NGF);
d) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
e) ニューロトロフィン−3(NT-3);
f) インターロイキン−7(IL-7);
g) インターロイキン−11(IL-11);
h) 幹細胞因子(SCF);
i) 血管内皮成長因子(VEGF);
j) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
k) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団、
〔2〕a) 骨髄細胞を低酸素条件下でインキュベートし、細胞が組織培養処理表面に付着し得る場合に付着性コロニー形成単位(CFU)を生じる工程;および
b) 2500細胞/cm2未満の播種密度で、付着性CFU中で細胞を増殖する工程
を含む方法により骨髄から得られ得、
91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
c) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
d) インターロイキン−6(IL-6);
e) 神経成長因子(NGF);
f) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
g) ニューロトロフィン−3(NT-3);
h) インターロイキン−7(IL-7);
i) インターロイキン−11(IL-11);
j) 幹細胞因子(SCF);
k) 血管内皮成長因子(VEGF);
l) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
m) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団、
〔3〕a) 骨髄細胞を低酸化ストレス条件下でインキュベートし、細胞が組織培養処理表面に接着し得る場合に付着性コロニー形成単位(CFU)を生じる工程;および
b) 2500細胞/cm2未満の播種密度で、付着性CFU中で細胞を増殖する工程
を含む方法により、骨髄から得られ得、
91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
c) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
d) インターロイキン−6(IL-6);
e) 神経成長因子(NGF);
f) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
g) ニューロトロフィン−3(NT-3);
h) インターロイキン−7(IL-7);
i) インターロイキン−11(IL-11);
j) 幹細胞因子(SCF);
k) 血管内皮成長因子(VEGF);
l) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
m) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団、
〔4〕骨髄がヒト骨髄である〔1〕〜〔3〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔5〕低酸素条件が15%未満、10%未満または5%未満の酸素である〔2〕記載の単離された細胞集団、
〔6〕低酸素条件が2〜7%の酸素である〔2〕記載の単離された細胞集団、
〔7〕低酸素条件が5%の酸素である〔2〕記載の単離された細胞集団、
〔8〕低酸化ストレス条件が、
細胞集団の供給源を
a) グルタチオン;
b) ビタミンC;
c) カタラーゼ;
d) ビタミンE;および
e) N-アセチルアシステイン
からなる群より選択される化合物と共に培養することを含む、〔3〕記載の単離された細胞集団、
〔9〕播種密度が1000細胞/cm2未満、100細胞/cm2未満、50細胞/cm2未満、または30細胞/cm2未満である、〔2〕〜〔8〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔10〕単離された細胞集団の細胞が
a) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
b) インターロイキン−6(IL-6);
c) 神経成長因子(NGF);
d) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
e) ニューロトロフィン−3(NT-3);
f) インターロイキン−7(IL-7);
g) インターロイキン−11(IL-11);
h) 幹細胞因子(SCF);
i) 血管内皮成長因子(VEGF);
j) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
k) シスタチン−C
からなる群より選ばれる少なくとも3つの栄養因子を発現する〔1〕〜〔9〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔11〕単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたりP53の0〜3000転写産物をさらに発現する〔1〕〜〔10〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔12〕単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたり
a) 0〜100転写産物;
b) 0〜1000転写産物;
c) 0〜1500転写産物;
d) 0〜2000転写産物;および
e) 0〜3000転写産物
からなる群より選択される数のP53の転写産物をさらに発現する、〔1〕〜〔10〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔13〕単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたりP21の0〜20000転写産物をさらに発現する〔1〕〜〔12〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔14〕単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたり
a) 0〜100転写産物;
b) 0〜500転写産物;
c) 0〜1000転写産物;
d) 0〜5000転写産物;
e) 0〜10000転写産物;
f) 0〜15000転写産物;および
g) 0〜20000転写産物
からなる群より選択される数のP21の転写産物をさらに発現する、〔1〕〜〔12〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔15〕30回の集団倍加よりも長くインビトロで培養された〔1〕〜〔14〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔16〕40回の集団倍加よりも長くインビトロで培養された〔1〕〜〔14〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔17〕50回の集団倍加よりも長くインビトロで培養された〔1〕〜〔14〕いずれか記載の単離された細胞集団、
〔18〕〔1〕〜〔17〕いずれか記載の単離された細胞集団を含む医薬組成物
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ヒトにおける疾患および病気、特に、神経性および心臓性の疾患および病気の新規な改善された有効な処置方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1A、1Bおよび1Cは、赤血球溶解後の骨髄吸引液から作製されたマスターおよびワーキングセルバンクの細胞集団のフローサイトメトリー分析を説明する。
【図2】図2A、2B、および2Cは、密度分離後の骨髄吸引液から作製されたマスターおよびワーキングセルバンクの細胞集団のフローサイトメトリー分析を説明する。
【図3】図3は、ヒト骨髄吸引液に由来するコロニー形成単位(CFU)の一次セルバンクのエキソビボ拡大の間のCD49cおよびCD90細胞を共発現する細胞の収量(細胞数)を説明する。
【図4】図4は、培養中のCD49cおよびCD90細胞集団を共発現する細胞集団の倍加速度を説明する。
【図5】図5は、脊髄損傷後ならびにCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の移植後のラットに関するBasso-Beattie-Bresnahan(BBB)指数を説明する。挫傷後19日目に、細胞移植を受けたラットは、PBS対照のみを受けたラットよりも大いなる改善を示した。
【図6】図6Aは、圧力変化のピークポジティブ速度(peakpositive rate)(+dp/dt)により測定される心筋梗塞の実験的誘導後の心機能に対する初期筋細胞決定細胞(early-myocyticdetermined cell)(EMD)および未改変細胞の効果を示す。処置後4週間、未改変細胞または初期筋細胞決定細胞を受けたラットは有意に高い+dp/dt値を有していた。(ANOVAにより*p<0.05) 図6Bは、心筋梗塞の実験的誘導および初期筋細胞決定細胞(EMD)および未改変細胞での処置後の雄および雌ラットにおける性別差を示す。(ANOVAにより*p<0.05) 図6Cは、心筋梗塞の実験的誘導および初期筋細胞決定細胞(EMD)または未改変細胞での処置後のラットにおける4週+dp/dt値から0週+dp/dt値を減算し、「δ+dp/dt」を誘導することにより処置の過程における心臓機能の変化を示す。(ANOVAにより*p<0.05,**p<0.01) 図6Dは、心筋梗塞の実験的誘導ならびに初期筋細胞決定細胞(EMD)および未改変細胞での処置後の雄および雌ラットにおける性別差を示す。(ANOVAにより*p<0.05,**p<0.01)
【図7】図7Aおよび7Bは、圧力変化のピークネガティブ速度(peaknegative rate)(-dp/dt)により測定される心筋梗塞の実験的誘導後のラットの心機能における初期筋細胞決定細胞(EMD)および未改変細胞での処置の効果を示す。(ANOVAにより*p<0.05,**p<0.01)
【図8】図8Aおよび8Bは、等容性左心室圧力減衰の時定数(タウ)により測定される心筋梗塞の実験的誘導後のラットの心機能における未改変細胞および初期筋細胞決定細胞(EMD)の効果を示す。(ANOVAにより*p<0.05,**p<0.01)
【図9】図9は、心筋梗塞の実験的誘導および未改変細胞または初期筋細胞決定細胞(EMD)での続く処置後のラットから得られた心筋における組織学的スコア(線維症/生存組織領域)を示す。
【図10】図10Aおよび10Bは、心筋梗塞の実験的誘導および続くビヒクル(図10A)または未改変細胞(図10B)での続く処置後のラットから得られた心筋組織切片のH&Eおよび三色染色である。白線は、心筋梗塞の領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の要旨
本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団、およびこれらの細胞の集団を用いてヒトにおける神経性または心臓性の疾患等の疾患を処置する方法に関する。
【0009】
ある態様では、本発明は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な(homogenous)細胞集団である。
【0010】
別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現するが、骨シアロタンパク質(BSP)を発現しない実質的に相同な細胞集団である。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団であり、ここで細胞集団はCD34および/またはCD45を発現しない。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、CD49c、CD90、ならびにBDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養性因子を共発現する実質的に相同な細胞集団である。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、低酸化ストレス(oxidative stress)条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度にて細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、低酸化ストレス条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度にて細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、低酸化ストレス条件下で約50細胞/cm2未満の播種密度にて細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、低酸化ストレス条件下で約30細胞/cm2未満の播種密度にて細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法をである。
【0017】
本発明のさらなる態様は、低酸化ストレス条件下で約75,000細胞/cm2未満の播種密度にて細胞集団の供給源を培養して接着細胞集団を作製し、低酸化ストレス条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度にて接着細胞集団を培養することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。CD49cおよびCD90を共発現する細胞が培養した細胞集団から選択される。
【0018】
本発明の別の態様は、低酸素(oxygen)条件下で約50細胞/cm2未満の播種細胞密度にて細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、低酸素条件下で約30細胞/cm2未満の播種細胞密度にて細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、低酸素条件下で約75,000細胞/cm2未満の播種細胞密度にて細胞集団の供給源を培養して接着細胞集団を作製し;低酸素条件下で約100細胞/cm2未満の初期密度で接着細胞集団を培養し、培養した接着細胞集団からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択することによるCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0021】
本発明の別の態様は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、変性または急性の損傷疾患を患うヒトの処置方法である。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む神経性疾患を患うヒトの処置方法を含む。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む心臓性疾患を患うヒトの処置方法である。
【0024】
本発明のさらなる態様は、低酸素条件下で約100細胞/cm2未満の播種細胞密度にて細胞集団の供給源を培養すること;培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択すること;およびCD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団をヒトに投与することによる神経性疾患を患うヒトの処置方法である。
【0025】
なおさらなる態様では、本発明は、細胞集団の供給源を培養すること;培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択すること;およびCD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団をヒトに投与することを含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法を含む。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、細胞集団の供給源を培養すること;培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択すること;およびCD49cおよびCD90を共発現する細胞を改変して運命づけられた(committed)前駆細胞にすることを含む、運命づけられた前駆細胞の作製方法である。
【0027】
本発明のさらなる態様は、細胞集団の供給源を培養すること;培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択すること;CD49cおよびCD90を共発現する細胞を改変し、運命づけられた前駆細胞にすること;および改変細胞をヒトに投与することを含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法を含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することによる変性または急性の損傷疾患を患うヒトの処置方法に関する。
【0029】
別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物を提供する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法である。
【0032】
別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現するが、骨シアロタンパク質(BSP)を発現しない実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、変性または急性の損傷疾患を患うヒトの処置方法である。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現するが、骨シアロタンパク質を発現しない実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法である。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団である。
【0035】
本発明のさらなる態様は、CD49c、CD90、および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現するが、骨シアロタンパク質を発現しない実質的に相同な細胞集団である。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団である。
【0037】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団である。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること、ならびにプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで培養した細胞集団の供給源を処理することを含む、CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0039】
さらに別の態様では、本発明は、低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理することを含む、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0040】
本発明の別の態様は、低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチラーゼインヒビターで処理することを含む、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4、Nkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理することを含む、CD49c、CD90、GATA4、Irx4、Nkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0042】
本発明のさらなる態様は、CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理することを含む、CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0043】
さらに別の態様では、本発明は、 CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理することを含む、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0044】
本発明の別の態様は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理することを含む、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0045】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法を提供する。
【0046】
本発明のさらなる態様は、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法である。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4、Nkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法である。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること;培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理すること;および処理した細胞集団を個体に投与することを含む、個体における心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法である。
【0050】
本発明の別の態様は、 CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理すること;おより処理した細胞をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法を含む。
【0051】
本発明のさらなる態様は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団と少なくとも1つの運命づけられた前駆細胞型を含む細胞の集団とを合わせる工程を含む、運命づけられた前駆細胞型を形成する方法を含む。
【0052】
本発明の別の態様は、CD49c、CD90を共発現し、低酸素条件下で培養した場合に約144時間未満の倍加時間を有する実質的に相同な細胞集団である。
【0053】
本発明のさらなる態様は、CD49c、CD90を共発現し、低酸素条件下で培養した場合に約144時間未満の倍加時間を有し、低酸素条件下で約100細胞/cm2の播種密度にて細胞集団の供給源を培養することを含む方法により形成される実質的に相同な細胞集団である。
【0054】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物を含む。
【0055】
なおさらなる態様では、本発明は、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物を含む。
【0056】
さらに別の態様では、本発明は、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4、およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物を含む。
【0057】
本発明の別の態様は、CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物である。
【0058】
本明細書中に記載される本発明は、ヒトにおける病気または疾患を処置するための細胞の実質的に相同な集団を提供する。本発明の細胞ベース治療の利点としては、例えば、組織への細胞の取り込み(例えば、中枢神経系組織、末梢神経系組織、心臓組織);取り込まれる細胞は、損傷、外傷、または変性した組織の置換または修復を促進するためにニューロン細胞、グリア細胞または他の細胞(例えば、心筋)に分化または発達する潜在力を有し、それにより変性、急性損傷、外傷性、神経性または心臓性疾患のより持続する処置を生じる;および処置療法において特徴づけられた増殖できる細胞の集団を使用する能力が挙げられる。本発明の細胞は、有益なサイトカインおよび栄養因子(例えば、BDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1)を分泌する潜在力を有する。
【0059】
従って、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団でのヒトの処置は、ヒトにおける、変性、急性損傷、神経性(例えば、パーキンソン病、ALS、脳卒中、外傷性脳損傷、脳腫瘍)または心臓性疾患(例えば、うっ血性心不全、心筋梗塞)による損害を潜在的に逆転するか、減少するか、または修復することができ、それによりヒトの生活の質および平均余命を増大する。
【0060】
発明の詳細な説明
発明の工程または発明の部分の組み合わせのいずれかとしての本発明の特徴および他の細部がより詳細に記載され、特許請求の範囲において指摘される。本発明の特定の態様が本発明の限定のためではなく、説明のために示されることが理解される。本発明の原理的特徴は、発明の範囲を逸脱することなく種々の態様において使用されうる。
【0061】
本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に均一(homogeneous)な細胞集団に関する。本発明はまた、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞の実質的に均一な細胞集団に関する。本発明はさらに、CD49cおよびCD90を共発現するが、骨シアロタンパク質(BSP)を発現しない細胞の実質的に均一な細胞集団に関する。本発明はまた、CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子(例えば、GATA4、Irx4およびNkx2.5)を共発現する細胞の実質的に相同な細胞集団に関する。本発明はさらに、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団に関する。
【0062】
本明細書中で使用される「実質的に相同(homogenous)」は、細胞の総数の大多数(例えば、約100%〜約70%;約100%〜約90%)が目的の特定の特徴(例えば、CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;CD34および/またはCD45の最小の発現を伴ってCD49cおよびCD90を発現する)を有する細胞の集団をいう。
【0063】
ある態様では、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に相同な集団は、細胞の約80%〜約90%が細胞表面抗原CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団である。別の態様では、細胞の実質的に相同な集団は、細胞の約70%〜約80%が細胞表面抗原CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団である。さらなる態様では、細胞の実質的に相同な集団は、個々の細胞の少なくとも一部がCD49c、CD90およびテロメラーゼを発現する細胞の集団である。ある態様では、個々の細胞の大部分は各々、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する。
【0064】
本明細書中で使用される「共発現」は、単一細胞上または内;あるいは、細胞の収集物上または内での2つ以上の分子、例えば、CD49cおよびCD90;CD49c、CD90およびテロメラーゼ;CD49c、CD90、GATA4、Nkx2.5およびIrx4;CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Nkx2.5およびIrx4の同時検出をいう。
【0065】
本発明の実質的に相同な細胞集団は、集団の単一細胞上にCD49c、CD90およびテロメラーゼを;または集団の単一細胞上にCD49cおよびCD90を共発現する。集団の各細胞上にCD49c、CD90および、任意に、テロメラーゼを共発現する本発明の細胞集団はまた、細胞集団の総数の細胞の少なくとも一部(例えば、約10%、約20%、約50%、約70%、約80%、約90%)上に他のタンパク質(例えば、GATA4、Irx4およびNkx2.5等の心臓関連転写因子)を共発現しうる。
【0066】
細胞(例えば、骨髄間質細胞)におけるCD49cおよびCD90の共発現を検出するための技術は十分に確立されている。例えば、細胞上のCD49cおよびCD90の共発現は、複数色サイトメーター分析によって検出されうる。CD49cは、フルオレセイン標識プローブを使用して検出され得、CD90はテキサスレッドプローブを用いて検出されうる。CD49cおよびCD90細胞表面抗原は、複数色を検出しうる複数のフィルターを備えたフローサイトメーターの補助により可視化されうる。目的の分子を検出するための技術はまた、ELISA、RIA、免疫蛍光顕微鏡および定量的PCRを含みうる。
【0067】
別の態様では、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現するが、骨シアロタンパク質を発現しない本発明の実質的に相同な細胞集団である。
【0068】
CD49cおよびCD90および、任意に、テロメラーゼを共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、約144時間〜約48時間未満の倍加時間を有する。ある態様では、細胞集団の倍加時間は約144時間未満である。別の態様では、細胞集団の倍加時間は約72時間未満である。さらに別の態様では、細胞集団の倍加時間は約65時間未満である。さらに別の態様では、倍加時間は約48時間未満である。さらなる態様では、倍加時間は約35時間未満である。さらなる態様では、倍加時間は約30時間未満である。本発明の細胞の倍加時間は、例えば、培養細胞の密度(例えば、100細胞/cm2)および/または細胞を培養するのに使用される酸素の濃度(例えば、約5%酸素などの低酸素濃度)に依存して変化しうる。
【0069】
CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団は、予め選択された表現型(例えば、軟骨細胞、星状細胞、オリゴデンドロサイト、ニューロン、骨、破骨細胞、骨芽細胞、心筋細胞、膵島細胞、骨格筋、平滑筋、肝細胞および網膜神経節細胞)に分化する潜在力を有しうる。予め選択された表現型に分化する潜在力は、機能的細胞型に変化させる細胞集団の能力という。
【0070】
CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団は、約20集団倍加〜約50集団倍加後に、P21およびP53からなる群より選ばれる少なくとも1つの細胞老化マーカーを実質的に発現しない。老化マーカーは、細胞における老化または加齢と関連する任意のマーカーである(例えば、P21、P53)。老化マーカーは、細胞質、核または細胞表面マーカーでありうる。
【0071】
一態様において、本発明の細胞は、約20集団倍加を受け、CD49cおよびCD90をなお共発現するが、P21およびP53からなる群より選択される少なくとも1つの細胞老化マーカーを実質的に発現しない。別の態様において、本発明の細胞は、約30集団倍加を受け、CD49cおよびCD90をなお共発現するが、P21およびP53からなる群より選択される少なくとも1つの細胞老化マーカーを実質的に発現しない。さらに別の態様において、本発明の細胞は、約40集団倍加を受け、CD49cおよびCD90をなお共発現するが、P21およびP53からなる群より選択される少なくとも1つの細胞老化マーカーを実質的に発現しない。さらに別の態様において、本発明の細胞は、約50集団倍加を受け、CD49cおよびCD90をなお共発現するが、P21およびP53からなる群より選択される少なくとも1つの細胞老化マーカーを実質的に発現しない。当業者であれば、確立された技術(例えば、フローサイトメトリー、定量的PCR)を用いて、細胞が集団倍加を受けたときを決定することができ(Freshney,R.I. "Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Techniques" NewYork, Wiley-Liss (1994))、細胞集団がCD49cおよびCD90を共発現するかどうか、およびP21およびP53からなる群より選択される少なくとも1つの細胞老化マーカーを実質的に発現しないかどうかを決定することができよう。
【0072】
CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、細胞の約20〜約50の集団倍加後のP21またはP53の発現をさらに含み得る。老化マーカー(例えば、P21、P53)の発現は、老化マーカーの(例えば、18srRNA GAPDH(グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、アクチンに対する)相対発現である。本明細書で使用される「相対発現」は、標準または参照マーカー(例えば、18srRNA、アクチン、GFAP)の発現に対する目的分子(例えば、CD49c、CD90、テロメラーゼ、CBFA1、BSP、BDNF、IL-6、MCP-1)の発現(例えば、核酸、タンパク質)である。好ましい態様において、P53の発現は、18srRNAの106転写物あたり約3000まで(例えば、0、100、1000、1500、2000)のP53転写物の相対発現であり、P21の発現は、18srRNAの106転写物あたり約20,000までのP21転写物の相対発現である。
【0073】
一態様において、P53の発現は、18s rRNAの106転写物あたり約3000のP53転写物である。別の態様において、P53の発現は、18srRNAの106転写物あたり約2000のP53転写物である。さらに別の態様において、P53の発現は、18s rRNAの106転写物あたり約1000のP53転写物である。
【0074】
別の態様において、P21の発現は、18s rRNAの106転写物あたり約20,000まで(例えば、0、100、1000、5000、10000、15000、20000)のP21転写物である。さらに別の態様において、P21の発現は、18srRNAの106転写物あたり約15,000のP21転写物である。さらに別の態様において、P21の発現は、18s rRNAの106転写物あたり約500のP21の発現である。
【0075】
一態様において、骨系統マーカーコア結合因子1(CBFA1)(Otto, F.ら, Cell 89(5)765-771 (1979))の発現は、18s rRNAの106転写物あたり約5000の骨系統マーカー転写物である。別の態様において、骨系統マーカーCBFA1の発現は、18srRNAの106転写物あたり約3000の骨系統マーカー転写物である。さらに別の態様において、骨系統マーカーCBFA1の発現は、18srRNAの106転写物あたり約1000の骨系統マーカー転写物である。
【0076】
本発明の実質的に相同な細胞集団は、任意のヒト組織(例えば、骨髄、脂肪、皮膚、胎盤、筋肉、臍帯血)由来細胞集団であり得る。好ましい態様において、実質的に相同な細胞集団は、骨髄細胞(例えば、ヒト骨髄間質細胞)由来である。本発明の細胞は、任意のヒト組織に「由来する」ということができる。組織由来細胞は、例えば、細胞(例えば、骨髄細胞)の供給源の溶解により入手し得る。例えば、骨髄間質細胞は、骨髄吸引物の塩化アンモニウム溶解後の全骨髄吸引物に由来する。塩化アンモニウムは、吸引物から赤血球を除き、得られた細胞ペレットを用いて、CD49cおよびCD90細胞を共発現する実質的に均一な本発明の細胞集団を作製する。あるいはまた、本発明の細胞集団を誘導するために骨髄を処理する(例えば、密度勾配遠心分離による分画、NH2Cl溶解、蛍光表示式分取、磁気分取)。例えば、骨髄吸引物または溶解骨髄細胞を密度勾配に通し、溶解の結果としての細胞デブリから本発明の細胞を分離する。代替的または追加的に、骨髄吸引物または溶解骨髄細胞は、密度勾配を形成し得る。
【0077】
全骨髄吸引物は、ヒトから入手され、固相と接触させて培養する。代替的または追加的に、全骨髄吸引物を処理して単核細胞画分を作製することができ、次いで、これを固相と接触させて培養する。固相は、例えば、プラスチック(例えば、組織培養処理プラスチック)であり得る。
【0078】
単核細胞画分は、確立された手順による密度勾配における全骨髄吸引物から得られ得る。あるいはまた、単核細胞画分は、骨髄吸引物に含まれる赤血球の溶解により得られ得る。溶解は、骨髄吸引物を塩化アンモニウムと混合することにより行われる。
【0079】
ヒト骨髄細胞を、充分確立された技術を用いて得られた腸骨稜および骨髄間質細胞集団の吸引物により健常ヒトドナーから得る。例えば、CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、ヒト腸骨稜骨髄吸引物から得られ、単核細胞画分まで処理され、単核細胞画分から骨髄間質細胞が、プラスチックへの付着傾向および規定の細胞培養培地に応じた分配傾向に基づいて、選択的に増殖させる。プラスチック付着性細胞は、事実上、コロニー形成単位線維芽様細胞(Cfu-f)と呼ばれる自己再生細胞のみが増殖するよう仕向けられる細胞濃度まで最適に増殖する。Cfu-f由来細胞を、CD49cおよびCD90を共発現する細胞について解析し、継代培養し、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団を作製する。
【0080】
骨髄吸引物または骨髄吸引物の細胞画分を、固相と接触させて培養し、得られた細胞培養物から、固相への付着傾向に基づいて中間細胞集団を単離する。骨髄吸引物または骨髄吸引物の細胞画分を、約20%未満、好ましくは約1%から約10%、最も好ましくは約2%から約7%酸素の溶解酸素濃度で培養する。好ましい態様において、溶解酸素濃度は約5%酸素である。得られた接着性細胞集団を増殖させてCD49cおよびCD90を共発現する実質的に均一な細胞集団を得る。
【0081】
骨髄細胞の増殖は、約2500細胞/cm2未満、好ましくは約1000細胞/cm2未満、最も好ましくは約100細胞/cm2未満の播種密度で行われる。特定の態様において、増殖工程における初期細胞密度は、約30細胞/cm2〜約50細胞/cm2である。播種密度は、単核骨髄細胞から得られたcm2あたりの付着細胞の数であり得る。
【0082】
骨髄細胞を培養するために標準培地調製物を使用することができる。例えば、培地は、4mM L-グルタミン、および0〜10%lot選択ウシ胎児血清(FSB)、好ましくは約10% FSBを補給した最少必須培地-α改変であり得る。培養工程は、任意の適当な期間、例えば約3〜約25日間、最も好ましくは約3〜約15日間、行われ得る。
【0083】
中間細胞集団は、固相への付着傾向に基づいて上記の細胞培養物から単離される。中間細胞集団は、事実上、コロニー形成単位線維芽様細胞(Cfu-f)と呼ばれる自己再生細胞のみが増殖するよう仕向けられる細胞濃度まで最適に増殖する。Cfu-f由来細胞を、規定の条件下で継代培養し、実質的に均一な細胞集団を作製する(実施例1)。本発明に従って、増殖により、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に均一な細胞集団が得られる。
【0084】
別の態様において、実質的に相同な細胞集団は、CD34および/またはCD45を発現しない。CD34およびCD45の存在または非存在は、抗原特異的ELISAアッセイ、定量的PCRまたはフローサイトメトリーを含む常法を用いて、CD49cおよびCD90を共発現する骨髄単核細胞上で検出され得る。CD49cおよびCD90を共発現するが、CD34および/またはCD45のいずれか、または両方を発現しない細胞を培養により増殖させ、本発明の方法において使用するまで保存する。
【0085】
さらに別の態様において、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に均一な集団は、脳由来神経栄養因子(BDNF)(Barde,Y.A.ら, EMBO J., 1(5):549-553 (1982))、神経成長因子(NGF)(Levi-Montalcini, R., Arch Biol76(2):387-417 (1965))、ニュートロフィン(NT-3)(Mohn, A.ら, Nature 344:339-341 (1990))、インターロイキン−6(IL-6)(Barton,B.E., Clin. Immumol. Immunopathol. 85(1):16-20 (1997))、インターロイキン−7(IL-7)、インターロイキン−11(IL-11)、幹細胞因子(SCF)、マクロファージケモアトラクチンタンパク質−1(MCP-1)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9)およびシスタチン−Cならびに血管内皮成長因子(VEGF)(Moore,MA.ら, Ann. N.Y. Acd. Sci., 938:36-45 (2001); Kollermann, J.ら, Am. J. Clin.Pathol. 116:115-121 (2002))からなる群より選択される栄養因子を発現する。
【0086】
CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団におけるBDNF、NGF、NT-3、IL-6、IL-7、IL-11、SCF、VEGF、MCP-1、MMP-9およびシスタチン−Cの発現は、化学的に規定された培地における細胞のエキソビボ培養を含む多様な技術により強化され得る。
【0087】
さらに別の態様において、本発明は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団である。テロメラーゼの発現は、相対発現、例えば、18srRNAの106転写物あたり約1の転写物〜18s rRNAの106転写物あたり約10の転写物の相対発現である。一態様において、テロメラーゼの発現は、18srRNAの106転写物あたり約1の転写物である。別の態様において、テロメラーゼの発現は、18s rRNAの106転写物あたり約5の転写物である。さらに別の態様において、テロメラーゼの発現は、18srRNAの106転写物あたり約10の転写物である。
【0088】
CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団は、約144時間未満、約72時間未満または約48時間未満の倍加時間を有する。
【0089】
CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団は、予め選択された表現型(例えば、軟骨細胞、星状細胞、希突起膠細胞、ニューロン、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、心筋細胞、膵島細胞、骨格筋、平滑筋、肝細胞および網膜神経節細胞)に分化する潜在性を有する。
【0090】
CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団は、細胞の約20〜約50の集団倍加後のP21またはP53の発現をさらに含み得る(例えば、20、30、40または50集団倍加)。P53の発現は、18srRNAの106転写物あたり約3000までのP53転写物の相対発現である(例えば、18s rRNAの106転写物あたり3000、2000または1000転写物)。P21の発現は、18srRNAの106転写物あたり約20000までのP21転写物の相対発現である(例えば、18s rRNAの106転写物あたり20000、15000または5000転写物)。
【0091】
別の態様において、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団は、CD34および/またはCD45を発現しない。さらに別の態様において、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団は、BDNF、IL-6およびMCP-1からなる群より選択される少なくとも1種の栄養因子を発現する。
【0092】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源(例えば、ヒト骨髄細胞)を培養する工程、および培養した細胞集団の供給源から、CD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。一態様において、細胞集団の供給源は、低酸素条件下(例えば、大気未満)で培養される。本明細書で使用される「低酸素条件」は、大気中の酸素未満の濃度(例えば、体積、重量またはモル基準の酸素のパーセント)をいう。
【0093】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源(例えば、ヒト骨髄細胞)を培養する工程、および培養した細胞集団の供給源から、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞を選択する工程を含む、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、細胞集団の供給源を培養する工程、および培養した細胞集団の供給源から、CD49c、CD90および骨系統マーカーを共発現する細胞を選択する工程を含む、CD49cおよびCD90を共発現するが、サリオプロテイン(salioprotein)を発現しない実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0095】
一態様において、酸素(O2)の濃度は約21モルパーセント(容積)未満である。別の態様において、酸素(O2)の濃度は約23重量%(容積)未満である。好ましい態様において、低酸素条件は、約15容積%(モルパーセント)未満の酸素濃度、より好ましくは約10容積%未満の酸素濃度、最も好ましくは約5容積%未満の酸素濃度である。別の態様において、細胞集団の供給源は、約100細胞/cm2未満の播種密度(例えば、95、90、80、50、30、25細胞/cm2)で、低酸素条件下(例えば、大気未満、約5%酸素未満)で培養される。
【0096】
さらなる態様において、本発明は、細胞集団(ヒト骨髄細胞)の供給源を培養する工程、および低酸素ストレス下(例えば、グルタチオン、ビタミンC、カタラーゼ、ビタミンE、N-アセチルアシステイン)で細胞集団の供給源を培養することにより、培養した細胞集団の供給源から、CD49c、CD90および骨系統マーカーを共発現する細胞を選択する工程を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。本明細書で使用される「低酸素ストレス」は、培養細胞を損傷するフリーラジカルがないか、または最少である条件をいう。
【0097】
CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;またはCD49cおよびCD90を共発現するが、骨サリオプロテイン(BSP)を発現しない実質的に相同な細胞集団の作製方法は、細胞集団の供給源(例えば、骨髄細胞吸引物)を培養する前に細胞集団の供給源を溶解する工程をさらに含み得る。例えば、骨髄細胞吸引物の溶解は、造血細胞の溶解をもたらし得、非造血細胞を非溶解のままにする。追加的または代替的に、該方法は、細胞集団の供給源(例えば、骨髄細胞吸引物)を培養する前に細胞集団の供給源を(例えば、密度勾配中の通過またはその形成、NH2Cl溶解により)分画する工程をさらに含み得る。
【0098】
本発明の方法により作製される細胞はまた、少なくとも1つの栄養因子(例えば、BDNF、NGF、NT-3、IL-6、IL-7、IL-11、SCF、MCP-1、MMP-9およびシスタチン−CならびにVEGF)を発現し得る。別の態様において、本発明の方法により作製される、CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;CD49cおよびCD90を共発現するが、骨サリオプロテイン(BSP)を発現しない実質的に相同な細胞集団は、CD34および/またはCD45を発現しない。
【0099】
さらに別の態様において、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、変性または急性損傷疾患を患うヒトの処置方法である。変性または急性損傷疾患を患うヒトを処置するために使用される細胞もまた、CD34および/またはCD45を発現しない。
【0100】
変性疾患は、特定の細胞型(例えば、ニューロン、筋肉、結合、上皮)の低下(例えば、機能、構造、生化学)が有害な臨床状態をもたらす疾患である。例えば、パーキンソン病は、周期的な筋肉の振せん、硬直した動作、加速歩行、前かがみな姿勢および過面状顔貌を特徴とする中枢神経系(例えば、基底ガングリア)における変性疾患である。CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団で処置し得る変性疾患は、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、うっ血性心不全、心血管病、運動失調および脊髄筋ジストロフィーであり得る。
【0101】
急性損傷疾患は、1回の事象または複数回の事象が有害な臨床状態をもたらす状態である。急性損傷疾患をもたらす事象は、鈍力もしくは圧迫などの外的事象、または突発虚血(例えば、卒中もしくは心臓発作)などの内的事象であり得る。CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;CD49cおよびCD90を共発現するが、骨サリオプロテイン(BSP)を発現しない、本発明の実質的に相同な細胞集団で処置し得る急性損傷疾患は、例えば、脊髄損傷、脳外傷、心筋梗塞、うっ血性心不全および卒中であり得る。
【0102】
さらなる態様において、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、心臓病を患うヒトの処置方法を含む。心臓病は心臓の疾患である。心臓の疾患は、心筋、心臓の血管の結合組織の疾患であり得る。心臓病を患うヒトを処置するために使用される細胞もまた、CD34および/またはCD45を発現しない。本発明の細胞によって処置され得る心臓病は、例えば、心筋梗塞、うっ血性心不全、心筋炎、血管心臓病、心筋症、虚血性心疾患、心臓移植および移植前ブリッジであり得る。
【0103】
本発明のさらなる態様は、CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;またはCD49c、CD90および骨系統マーカーを共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法を含む。本明細書で使用される「神経性疾患」は、神経性疾患に罹患していない哺乳動物(例えば、ヒト)の正常な神経系または神経系から任意の様式で逸脱した神経系(中枢または末梢神経系)の任意の状態をいう。神経性疾患は、中枢(脳または脊髄)または末梢神経系の症状であり得る。神経性疾患は、例えば、疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ファブリー病)、急性損傷疾患(例えば、卒中、脳損傷、脊髄損傷)または疾患と急性損傷疾患の組み合わせの結果または結末であり得る。CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団で処置し得る他の神経性疾患としては、例えば、異染性ジストロフィー、副腎白質萎縮症、カナバン病、ペリツェウス−メルツバッハー病、ニーマン−ピック病および脳腫瘍が挙げられる。
【0104】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源(例えば、骨髄、脂肪、臍帯血、皮膚)を培養する(例えば、低酸素条件;大気未満の酸素条件;約5%酸素)工程、および培養した細胞集団の供給源から、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択する工程を含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法を含む。選択されたCD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団は、ヒトに投与される。
【0105】
一態様において、ヒトに投与された実質的に相同な細胞集団は、CD49cおよびCD90を共発現するが、CD34および/またはCD45を欠く。別の態様において、ヒトに投与された実質的に相同な細胞集団は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する。さらに別の態様において、ヒトに投与された実質的に相同な細胞集団は、CD49cおよびCD90を共発現するか、またはCD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現し、BDNF、NGF、NT-3、IL-6、IL-7、IL-11、SCF、MCP-1、MMP-9およびシスタチン−Cからなる群より選択される少なくとも3つの栄養因子(例えば、BDNF、IL-6およびMCP-1)を発現する。
【0106】
本発明の細胞の実質的に均一な集団からのサイトカインおよび栄養因子の合成および分泌は、移植部位付近または遠位の周辺細胞を、変性、急性損傷または神経性疾患の結果としてのさらなる損傷から保護し得る。本発明の細胞の実質的に均一な集団からのサイトカインおよび栄養因子の合成および分泌はまた、代替的に、CD49cおよびCD90を共発現するか、またはCD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団で処置した宿主(例えば、急性損傷、神経性疾患、心臓病または変性疾患を患うヒト)の細胞または組織の再生を促進し得る。
【0107】
CD49cおよびCD90を共発現するか、またはCD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、ヒトに投与されると、ヒトにおいて細胞性シグナル伝達および生理学的合図に応答し、損傷または外傷の領域へ移動し、したがって、目的のタンパク質および遺伝子のための送達ビヒクルとして使用し得うる。
【0108】
別の態様において、本発明は、低酸素条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養し、培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択し、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団をヒトに投与することにより、神経性疾患(例えば、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、卒中、脳外傷、ファブリー病症状、異染性ジストロフィー、副腎白質萎縮症、カナバン病、ペリツェウス−メルツバッハー病、ニーマン−ピック病および脳腫瘍)を患うヒトの処置方法である。
【0109】
神経性疾患を患う患者への本発明の実質的に相同な細胞集団の移植は、本発明の細胞が神経性疾患を有するヒトの罹患神経組織において正常に機能する細胞に分化することをもたらし、それにより、例えば、パーキンソン病、ALS、脊髄損傷、脳腫瘍、卒中を含む無数の神経性疾患を処置し得る。同様に、本発明の相同な細胞集団は、火傷、心臓病、糖尿病、変形性関節症および慢性関節リウマチなどの非神経性疾患を患うヒトを処置するために使用し得る。特定の態様において、心臓病(例えば、心筋梗塞)を患う患者(本明細書において、個体、特にヒトともいう)に投与される本発明の実質的に相同な細胞集団は、心臓の筋肉細胞(本明細書において、心筋細胞ともいう)に分化し得る。
【0110】
本発明の細胞集団は、ヒトにおいて、(例えば、移植の部位で、または組織または器官に取り込まれたとき)固有のシグナルおよび数多くの細胞型(例えば、ニューロン、グリア、星状細胞、希突起膠細胞)に分化する外来の合図に応答する能力を有し得る。本発明の細胞集団は、ヒトを処置するのに使用するための容易に入手可能な細胞の供給源を提供し得る。本発明の細胞集団は、成体または胚性組織から容易に単離され得、高速で増殖し、広く拡張される可能性を有し、長期間安定であり得、外来シグナルに応答し得、充分な治療量の目的分子を産生し得る。
【0111】
したがって、本発明の別の態様は、細胞集団の供給源(例えば、骨髄細胞、ヒト骨髄細胞、脂肪、臍帯血、皮膚)を培養(例えば、低酸素条件、5%酸素)し、培養した細胞集団の供給源から、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択することにより、運命づけられた(committed)前駆細胞を作製する方法である。CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団は、改変されて、運命づけられた前駆細胞になる。培養した細胞集団の供給源からのCD49cおよびCD90を共発現する細胞の選択は、低酸素条件(例えば、大気中の酸素未満の酸素、5%酸素)により達成される。
【0112】
本明細書で使用される「運命づけられた前駆細胞」は、供給源(例えば、ヒト骨髄細胞、脂肪、臍帯血、皮膚)から得られる、特定の目的のための細胞に成長する前駆細胞をいう。運命づけられた前駆細胞は、例えば、ニューロン、グリア、星状細胞、希突起膠細胞または心臓の筋肉細胞などに分化または成長し得るヒト骨髄由来CD49c/CD90細胞であり得る。
【0113】
別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源(例えば、骨髄細胞吸引物)を培養し、培養した細胞集団の供給源から、CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;またはCD49c、CD90および骨系統マーカーを共発現する細胞を選択する(例えば、低酸素培養条件により)ことにより、神経性疾患を患うヒトの処置方法である。例えばCD49cおよびCD90を共発現する選択された細胞集団は、改変されて、運命づけられた前駆細胞になり、神経性疾患(例えば、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、卒中、脳外傷、ファブリー病症状、異染性ジストロフィー、副腎白質萎縮症、カナバン病、ペリツェウス−メルツバッハー病、ニーマン−ピック病および脳腫瘍)を有するヒトに投与される。
【0114】
CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;またはCD49cおよびCD90を共発現するが、骨サリオプロテイン(BSP)を発現しない、本発明の実質的に相同な細胞集団の細胞が運命づけられた前駆細胞になるか否かを評価するための技術は、当業者の専門知識の範囲内である。例えば、CD49cおよびCD90を共発現する細胞は、培養、選択および改変されて、noggin、musashiまたはSox2などのニューロン細胞マーカーを産生および発現し得、これは、細胞が運命づけられた神経前駆細胞であることを示し得る。細胞が運命づけられた神経前駆細胞になったかどうかを決定するための技術は、充分確立されており、当業者に知られている(例えば、定量的PCR、フローサイトメトリー)。
【0115】
CD49cおよびCD90を共発現する細胞は、運命づけられた前駆細胞を作製するための細胞集団の供給源から選択され得る。CD49cおよびCD90を共発現する選択された細胞(本明細書において「選択された細胞」ともいう)は、例えば、


において培養することにより改変されて運命づけられた前駆細胞になり得る。
【0116】
選択された細胞は、培養物から直接使用することができ、またはさらなる使用のために(例えば、液体窒素中での凍結により)保存することもできる。
【0117】
一態様において、本発明の運命づけられた前駆細胞は、CD34および/またはCD45を発現しない。別の態様において、本発明の運命づけられた前駆細胞は、BDNF、NGF、NT-3、IL-6、IL-7、IL-11、SCF、MCP-1、VEGF、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9)およびシスタチン−Cからなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子(例えば、BDNF、IL-6およびMCP-1)を発現する。
【0118】
さらなる態様において、本発明は、細胞集団の供給源(例えば、骨髄、ヒト骨髄、脂肪、臍帯血、皮膚)を培養する工程、および培養した細胞集団の供給源から、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択する工程を含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法である。選択された細胞は、改変されて、運命づけられた前駆細胞になる。運命づけられた前駆細胞は、ヒトに投与される。
【0119】
別の態様において、本発明は、CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団である。CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団は、テロメラーゼの発現をさらに含み得る。好ましい態様において、CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団は、ヒト骨髄細胞由来である。
【0120】
本明細書で使用される「心臓関連転写因子」は、心臓の筋肉細胞に関連するか、またはこれにより発現される遺伝子の転写を調節する、タンパク質またはタンパク質をコードする遺伝子またはタンパク質の部分をいう。特定の態様において、心臓関連転写因子は、GATA-結合転写因子4(GATA4)(Auda-Boucher, Gら, Dev. Bio. 225:214-225 (2000));Iroquois ホメオボックス遺伝子4(Irx4) (Bao, Z.ら, Science 283:1161-1164 (1999);Auda-Boucher, Gら, Dev. Bio. 225:214-225 (2000));およびNkx2.5/CSX(心臓特異的ホメオボックス)、「Nkx2.5」ともいう(Bao,Z.ら, Science 283:1161-1164 (1999); Auda-Boucher,
Gら, Dev. Bio. 225:214-225(2000))からなる群より選択される。
【0121】
CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子ならびに任意にテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団は、心臓の筋肉細胞(本明細書において、心筋細胞ともいう)に分化し得る。CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子ならびに任意にテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団はまた、少なくとも1つの栄養因子(例えば、IL-6、VEGF、MCP-1およびBDNF)を発現し得る。
【0122】
別の態様において、本発明は、CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現するが、骨シアロプロテイン(sialoprotein)を発現しない実質的に相同な細胞集団を提供する。骨シアロプロテイン(sialoprotein)を発現しない実質的に相同な細胞集団はまた、心臓関連転写因子(例えば、GATA4、Irx4、Nkx2.5)を発現し得る。
【0123】
さらなる態様において、本発明は、CD49c、CD90、およびGATA4、Irx4、Nkx2.5からなる群より選択される少なくとも1種を共発現する実質的に相同な細胞集団を提供する。この実質的に相同な細胞集団は、さらにテロメラーゼを発現し得る。
【0124】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源を低酸素条件下で培養する工程、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビター(例えば、キレリトリン(chelerythrine)、H-7デヒドロクロリド、K252a、サウロスポリン、ビスインドリルマレイミドI〜VおよびカルホスチンC)およびDNAメチル化インヒビター(例えば、アザシチジン)で処理する工程を含む、CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。該方法は、処理した細胞集団からCD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する細胞を選択する工程をさらに含み得る。
【0125】
好ましい態様において、本発明の方法において使用される細胞集団の供給源としては、骨髄供給源が挙げられる。より好ましい態様において、骨髄供給源は成体骨髄供給源である。
【0126】
特定の態様において、本発明の方法において使用されるプロテインキナーゼCインヒビターはキレリトリンであり、DNAメチル化インヒビターは5-アザシチジンである。
【0127】
さらなる態様において、本発明は、細胞集団の供給源を低酸素条件下で培養する工程、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0128】
CD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、プロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理しなかった、少なくとも1種の心臓関連転写因子を発現しない本発明の細胞よりも長時間の倍加時間(例えば、約72時間未満、約65時間未満、約60時間未満)を有する。本発明の細胞集団は標識し得る。標識された細胞は、個体(例えば、ラット、マウスなどの実験動物またはヒト)に投与することができ、標識された細胞の運命を投与後のある時間(例えば、日、月、年)に調べる。細胞は、個体における局在を可能にするため、放射性標識、蛍光により標識、または他の化合物(例えば、ビオチン)により標識され得る。
【0129】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源(例えば、成体骨髄細胞)を低酸素条件下で培養する工程、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビター(例えば、キレリトリン)およびDNAメチル化インヒビター(例えば、5-アザシチジン)で処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0130】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団の供給源を低酸素条件下で培養する工程、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。該方法は、処理した細胞集団からCD49c、CD90、テロメラーゼ、ならびにGATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選択される少なくとも1種を共発現する細胞を選択する工程をさらに含み得る。
【0131】
さらなる態様において、本発明は、細胞集団の供給源を低酸素条件下で培養する工程、および培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する細胞は、処理した細胞から選択され得る。
【0132】
本発明のさらなる態様は、CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、および少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法を含む。
【0133】
さらに別の態様において、本発明は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0134】
本発明の別の態様は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法である。
【0135】
本発明の方法は、処理した細胞からCD49c、CD90および少なくとも1種の心臓関連転写因子(例えば、GATA4、Irx4、Nkx2.5)を共発現する細胞;およびCD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する細胞を選択する工程をさらに含み得る。
【0136】
一態様において、本発明の細胞集団は、幹細胞集団であり得る。別の態様において、本発明の細胞集団は、単離された細胞集団または単離された細胞幹集団であり得る。
【0137】
本発明の細胞集団、特に、少なくとも1種の心臓関連転写因子を共発現する細胞集団は、ヒトにおいて心筋梗塞またはうっ血性心不全などの心臓病を処置するために使用し得る。一態様において、本発明は、CD49c、CD90、少なくとも1種の心臓関連転写因子および任意にテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、個体(例えば、ヒト)における心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法を含む。
【0138】
特定の態様において、ヒトの心筋梗塞を処置するために使用される細胞により発現される心臓関連転写因子は、GATA4、Irx4およびNkx2.5(本明細書では、「Nkx2.5/CSX」ともいう)からなる群より選択される。
【0139】
好ましい態様において、本発明の細胞集団は、心臓病の位置(例えば、心筋梗塞、うっ血性心不全)の近傍に投与される。例えば、心筋梗塞を患うヒトにおいて、本発明の細胞集団は、心筋梗塞(例えば、梗塞部位の心臓筋肉内)の近傍に投与される。本発明の細胞は、心臓筋肉内または心臓の空間(心室空間または心房空間)内に直接投与され得る。
【0140】
さらに別の態様において、本発明は、細胞集団(例えば、成人骨髄細胞)の供給源を低酸素条件下で培養すること、培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビター(例えば、キレリトリン)およびDNAメチル化インヒビター(例えば、5-アザシチジン)で処理すること、および処理した細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法を含む。
【0141】
さらに別の態様において、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団(例えば、成人骨髄細胞)をプロテインキナーゼCインヒビター(例えば、キレリトリン)およびDNAメチル化インヒビター(例えば、5-アザシチジン)で処理することを含む、ヒトにおける心筋梗塞またはうっ血性心不全の処置方法を含む。処理された細胞は、ヒトに投与される。プロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理された細胞集団は、テロメラーゼを共発現する細胞集団をさらに含み得る。該方法は、処理した細胞からCD49c、CD90、少なくとも1種の心臓関連転写因子(例えば、GATA4、Irx4、Nkx2.5)および任意にテロメラーゼを共発現する細胞を共発現する細胞を選択する工程をさらに含み得る。
【0142】
さらに別の態様において、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団を、少なくとも1種の運命づけられた前駆細胞型を含む細胞の集団と合わせる工程を含む、運命づけられた前駆細胞型を形成する方法を含む。運命づけられた前駆細胞型は、インビトロまたはインビボで形成され得る。運命づけられた前駆細胞型の形成は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することによりインビボで形成され得る。例えば、該方法は、本発明の実質的に相同な細胞集団をニューロン細胞集団(例えば、中枢神経系または末梢神経系)と合わせることにより、ニューロン細胞を形成するために使用され得る。
【0143】
特定の態様において、運命づけられた前駆細胞型を形成するために本発明の細胞と合わせた細胞の集団は、神経細胞の集団および心臓筋肉細胞の集団からなる群より選択される。一態様において、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団はテロメラーゼも発現する。さらに別の態様において、CD49cおよびCD90ならびに任意にテロメラーゼを共発現する細胞の集団は、少なくとも1種の心臓関連転写因子も発現する。別の態様において、運命づけられた前駆細胞型を形成するために使用される細胞の実質的に均一な集団は単離される。さらなる態様において、運命づけられた前駆細胞型を形成する方法において使用される細胞の実質的に均一な集団は実質的に均一な幹細胞集団である。
【0144】
本発明のさらなる態様は、CD49c、CD90を共発現し、低酸素条件(例えば、約15容積%未満の酸素、約10容積%未満の酸素、約5容積%未満の酸素)下で培養したとき、約144時間未満の倍加時間(例えば、約72時間未満、約48時間未満、約65時間未満、約35時間未満)を有する実質的に相同な細胞集団である。
【0145】
さらに別の態様において、本発明は、CD49c、CD90を共発現し、低酸素条件(例えば、約15容積%未満の酸素、約10容積%未満の酸素、約5容積%未満の酸素)下で培養したとき、約144時間未満の倍加時間(例えば、約72時間未満、約48時間未満、約65時間未満、約35時間未満)を有する実質的に相同な細胞集団であって、低酸素条件で約100細胞/cm2の播種密度で細胞集団供給源を培養する工程を含む方法により形成される実質的に相同な細胞集団である。
【0146】
別の態様において、本発明は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に均一な細胞集団(例えば、約5×105〜2×106細胞)を含有する医薬組成物を含む。一態様において、医薬組成物は、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に均一な細胞集団を少なくとも約105個有する。別の態様において、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に均一な細胞集団を少なくとも約106個有する。医薬組成物を構成する細胞は、CD34および/またはCD45を発現し得ない、および/またはBDNF、NGF、NT-3、IL-6、IL-7、IL-11、SCF、MCP-1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9)、シスタチン−CおよびVEGFからなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し得る。
【0147】
さらなる態様において、本発明は、CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に均一な細胞集団を含有する医薬組成物を含む。
【0148】
なおさらなる態様において、本発明は、CD49c、CD90、少なくとも1種の心臓関連転写因子および任意にテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物を含む。
【0149】
別の態様において、本発明は、CD49c、CD90、GATA4、Irx4、Nkx2.5および任意にテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団を含有する医薬組成物を含む。
【0150】
CD49cおよびCD90を共発現する;CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する;またはCD49cおよびCD90を共発現するが、BSPを発現しない、本発明の実質的に相同な細胞集団は、神経性疾患を患うヒトに投与され得る。本発明の実質的に相同な細胞集団の「治療有益量」は、臨床的に関連する神経性疾患(例えば、脊髄損傷)を有する被験体において神経機能を強化するのに十分な量である。
【0151】
本発明の細胞は、例えば、中枢神経系(例えば、脳または脊髄)、末梢神経系または心臓組織(例えば、心筋)に、例えば、移植、配置または投与され得る。本発明の細胞についての神経系または心臓組織中への配置部位は、特に神経の疾患または心臓の疾患に基づいて決定される(例えば、障害性脊髄実質への直接注射、髄腔内注射、心臓内注射、または静脈注射)。たとえば、本発明の細胞は、パーキンソン病に罹患している患者の黒質中または近傍に配置され得る。同様に、本発明の細胞は、脊髄損傷に罹患している患者の脊髄(たとえば、頸部、胸部、腰部または仙椎)中または近傍に配置され得る。同じく、本発明の細胞は、心筋梗塞または他の心臓の疾患に罹患している患者の心筋(例えば、心室または心房の心筋)内に投与され得る。
【0152】
本発明の細胞は、中枢神経系、末梢神経系、心臓の心室空間、または心臓の心房空間の腔または空間に配置または移植され得る。たとえば、本発明の細胞は、脳の脳室、脊髄のクモ膜下腔、脊髄の脊柱管、心臓の心室または心房に配置され得る。当業者は、患者の神経状態および健康状態の状況に応じて、細胞の配置に最も適切な手法(たとえば、針注射または配置、より侵襲性のある手術)を決定できるだろう。
【0153】
また、本発明の細胞の投与経路、すなわち本発明の細胞が薬学的担体と混合された場合に、本発明に包含される投与経路は、たとえば、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下経路投与、経口投与、または鼻腔投与を含む。
【0154】
CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞は、単独で、または通常の賦形剤、例えば、本発明の細胞と有害的に反応しない、腸内又は非経口適用に適切な、薬学的、又は生理学的に許容され得る有機、または無機の担体物質との混合物として投与され得る。好適な薬学的に許容され得る担体は、水、塩溶液(リンガー溶液など)、アルコール、油、ゼラチンおよびラクトース、アミロースまたはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース(hydroxymethycellulose)、およびポリビニルピロリジンを含む。かかる試料は、滅菌され、所望であれば、潤滑剤、保存薬、安定薬、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に作用する塩、緩衝液、着色剤、および/または芳香剤などの、本発明の細胞と有害的に反応しない補助(auxillary)剤と混合され得る。
【0155】
非経口の適用が必要とされまたは所望される場合、特に適切な細胞用混合剤は、注射可能な滅菌溶液、好ましくは油性または水性の溶液、ならびに懸濁液、乳化液、またはインプラントであり、座薬やGELFOAM(登録商標)への浸漬を含む。特に、非経口投与用担体は、デキストロース水溶液、塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ピーナッツ油、ゴマ油およびポリオキシエチレン−ブロックポリマーを含む。本発明での使用に適切な製薬混合剤は、当業者にとって周知であり、たとえば、薬学科学(PharmaceuticalSciences) (第17版、Mack Pub. Co.、イーストン、ペンシルバニア)および国際公開第96/05309号パンフレットに開示され、この2つの教示は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0156】
CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に相同な集団は、神経の疾患に罹患しているヒトに投与する場合、単独で、または任意に組み合わせて使用することができる。たとえば、ステロイドまたは医薬合成薬を本発明の細胞と同時に投与することができる。同様に、脊髄損傷の処置には、棘が物理的に安定されたヒトへの本発明の細胞の投与/移植を含むことができる。
【0157】
ヒトに移植される細胞の実数を含む、ヒトへの細胞の投与または移植の用量および頻度(単回または複数回用量)は、処置される特定の疾患(たとえば、神経の疾患、心筋梗塞などの心臓の疾患、変性病、急性の損傷)、大きさ、年齢、性別、健康状態、体重、ボディマス指数、ヒトの治療食、神経の疾患の症状の性質および程度(たとえば、発症初期のパーキンソン病対進行したパーキンソン病、脊髄損傷対脊髄の部分的もしくは完全な切断)、または心臓の疾患(たとえば、充血性心臓疾患、心筋梗塞)、同時に行う処置の種類(たとえば、ステロイド)、神経または心臓の疾患由来の合併症、処置への耐性の程度または他の健康に関連した問題を含む、種々の因子に応じて変更し得る。
【0158】
神経または心臓の疾患をもつヒトは、本発明の細胞(たとえば、約106個の細胞)で、いくつかの投与経路により(例えば、クモ膜下腔内、静脈内)、数日間(たとえば30日)処置され得る。
【0159】
本発明の方法は、ヒト科哺乳動物以外の哺乳動物における神経の疾患を処置するのに使用され得ることが想定される。たとえば、獣医学的処置を必要とする非ヒト哺乳動物には、たとえば、コンパニオン動物(たとえば、イヌ、ネコ)、牧場動物(たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ)および実験動物(たとえば、ラット、マウス、モルモット)が挙げられる。
【0160】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらは何ら限定することを意味するものではない。
【実施例】
【0161】
実施例1:赤血球溶解後に骨髄吸引液からの細胞のコロニー形成単位または「CFU」としての付着物の単離
骨髄細胞を健康な成人のヒトのボランティアの腸骨稜から吸引した。吸引液の赤血球成分は、155mM 塩化アンモニウム、10mM 重炭酸カリウムおよび0.1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、pH7.2からなる塩化アンモニウムバッファーと、吸引液とを、髄吸引液対バッファーの比率1:20で混合することにより溶解させた。得られた細胞懸濁液は、2秒間ボルテックスをかけ、常温で2分間インキュベートし、次いで遠心分離した(500×gで10分)。得られた単核性細胞のペレットを完全培地中で再懸濁し、遠心分離した(500×gで10分)。完全培地は、4mM グルタミンと10%血清−ロット選択したウシ胎仔血清(FBS、Gibco BRL、ロックビレ、メリーランド)を補足した最小必須培地(MinimalEssential Medium)−α(Gibco
BRL、ロックビレ、メリーランド)である。細胞ペレットは、次いで、完全培地中で再懸濁し、2回遠心分離した(500×gで10分)。
【0162】
得られたペレットを完全培地中で再懸濁し、生きている細胞の数をトリパンブルー排除により決定した。単核性細胞懸濁液を次いで、組織培養処理されたT75フラスコ中に50,000細胞/cm2の密度で接種し、5%二酸化炭素、5%酸素、および90%窒素からなる雰囲気中、37℃でインキュベートした。培養5日目に、付着していない細胞と条件化培地(本明細書では「消費培地」ともいう)をフラスコから吸引し、付着した細胞に新しい完全培地を再び供給した。付着したコロニー形成単位(CFU)は、さらに3〜5日間で拡大した。
【0163】
CFUの世代は、T75フラスコと同じ条件下で同時に開始した6ウェルプレートにおいてモニターした。消費培地を6ウェルプレートから除去し、付着した細胞を100%メタノール中で5分間固定し、次いでメチレンブルーで染色してCFUを目に見えるようにした。75,000細胞/cm2の接種開始時の密度は、効率的にCFUを生じた。FICOLL(登録商標)密度勾配分離または塩化アンモニウム溶解のいずれかにより骨髄吸引液を処理した後、CFUの効率は、酸素濃度に劇的に影響を受けた。
【0164】
培養7日後、生じたCFUの純度(CD49cおよびCD90を共発現する細胞の割合)を、フローサイトメトリーにより決定した。T75フラスコをハンクス平衡塩溶液(Hank'sBalanced Salt Solution) (HBSS;セルグロテクノロジーズ(CellGro Technologies))で2回洗浄し、0.1%トリプシン/1mM EDTA溶液(ライフテクノロジーズ(Life Technologies) )で37℃で、10分間処理した。培養物をインキュベーターから取り出し、10mLの完全培地を添加した。フラスコから細胞を磨り潰し、50mL容の遠心管に移して、遠心分離した(500×gで5分間)。得られたペレットを10mLのHBSS中に再懸濁した。
【0165】
再懸濁した細胞(約106個)を12×75mmフローサイトメトリー管内に等分し、500×gで5分間再ペレット化した(repelleted)。HBSSを除去し、25mLの以下の抗体(すべてベクトン・ディケンソン(Becton Dickenson) から得た)、単独でまたは組み合わせて、各管内に入れた:マウスIgGlk−FITCまたは−PE(クローンMOPC−21)CD49c−PE(クローンC3II.1)、CD90−FITC(クローン5E10)、CD45−FITCまたは−PE(クローンHI30)。管をゆっくりとボルテックスにかけ、30分間4℃でインキュベートした。細胞を次いでHBSS/1%ウシ血清アルブミン中で洗浄し、遠心分離し(30分、4℃)および得られた細胞ペレットを250μlの2%パラホルムアルデヒド/HBSSの添加により固定化した。ベクトン−ディケンソンFACSバンテージSEサイトメーターを用いてフローサイトメトリー分析を行ない、CELLQUEST(登録商標)ソフトウエアを用いて分析した。図1A、1Bおよび1Cは、2,500〜10,000事象/パネルから集めたデータを表わす結果を示す。マウスIgGlイソ型対照を用いる非特異的な抗体染色についての補正後、培養した骨髄細胞におけるCD45、CD49cおよびCD90の細胞発現を評価した。初めに塩化アンモニウム溶解を用いて精製された単核性細胞由来の付着した集団は、類似の培養段階で約70%のCD49c陽性細胞を含んでいた(図1A)。CD49cを発現しなかった細胞の大部分は、造血/髄系マーカーCD45の発現について陽性であり(図1A、LR四分円)、単離したヒト骨髄由来のCD49c陽性細胞集団は、直接的に公知の造血前駆物質に関連しなかったことを示した。94%を超える付着した集団は、CD90およびCD49c陽性であった(図1B)。
【0166】
実施例2:密度分離後の骨髄吸引液からの付着したCFUの単離
骨髄細胞を健康な成人のヒトのボランティアの腸骨稜から吸引した。骨髄吸引液をカルシウムおよびマグネシウム無含のリン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈して、7×106細胞/mLの単核性細胞濃度を達成し、等量のHISTOPAQUE(登録商標)1.119(シグマ、セントルイス、ミズーリ)上に重層し、遠心分離した(700×gで30分)。得られた単核性細胞画分を、PBSを含む清潔な遠心管に移し、遠心分離した(500×gで10分)。細胞ペレットをPBSに再懸濁し、遠心分離した(500×gで10分)。上清を細胞ペレットから吸引し、細胞を完全培地に再懸濁した。
【0167】
生きている細胞の数をトリパンブルー排除により決定した。細胞懸濁液を次いで、組織培養処理されたT75フラスコ中に50,000細胞/cm2の密度で接種し、5%二酸化炭素、5%酸素、および90%窒素の雰囲気中、37℃でインキュベートした。培養5日目に、付着していない細胞と条件化培地(本明細書では「消費培地」ともいう)をフラスコから吸引し、付着した細胞に新しい完全培地を再び供給した。付着したCFUは、さらに3〜5日間で拡大した。
【0168】
生じたCFUのサイトメトリー分析は、約50%の付着した集団がインビトロで7日でマーカーCD49cを発現していたことを示した(図2A、ULとUR四分円の合計)。CD49cを発現しなかった細胞の大部分は、造血/髄系マーカーCD45の発現について陽性であり(図2A、LR四分円)、この手順により単離したヒト骨髄由来のCD49c陽性細胞集団は、公知の造血前駆物質に直接的には関連しなかったことを示した。91%を超える付着した集団は、CD90およびCD49c陽性であった(図2B)。
【0169】
実施例3:CFUからの一次およびマスターセルバンク(Master Cell Bank)の生産
培養7〜10日後、実施例1に記載の方法を用いて生じたCFUを、0.25%トリプシン/1mM EDTA溶液(ライフテクノロジーズ(LifeTechnologies) )でT75フラスコから取り出した。37℃、10分間後、トリプシンを10mLの完全培地で不活性化した。細胞をHBSSで1回洗浄し、グリセロール細胞凍結培地(GlycerolCell Freezing Medium)(登録商標)(シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.) 中で再懸濁した。4.0×105細胞/バイアルを含む懸濁液のアリコート(本明細書において「一次セルバンク」または「接種セルバンク」と呼ばれる)を、CryoMed(フォーマ(Forma))制御速度フリーザーを用いて液体窒素の蒸気で1℃/分で冷却し、Cryo Plus液体窒素保存容器(フォーマ)中に保存した。
【0170】
細胞のアリコートを一次セルバンクから取り出し、完全培地中の500cm2 組織培養処理されたプレート(コーニング(Corning))において30細胞/cm2の密度で培養し、5%二酸化炭素、5%酸素、および90%窒素からなる雰囲気中、37℃でインキュベートした。培養2 週間後、細胞をトリプシンでプレートから取り出し、4.0×105細胞/バイアルで低温保存した(本明細書では「マスターセルバンク」または「生産セルバンク」という)。
【0171】
マスターセルバンクにおける細胞の純度(CD49c/CD90を共発現する細胞の割合)は、前記と同じ方法を用いるフローサイトメトリーで決定した。得られた集団の非常に大部分(>98%)はCD90を発現し、骨髄系関連マーカーCD45の任意の発現を実質上欠如した(図1C、LR四分円)。したがって、本明細書に記載のような拡大手順により、CD49cおよびCD90を共発現し、かつマーカーCD45の有意な発現を欠如した付着細胞の実質的に相同な集団を生産する。
【0172】
同様に、実施例2の方法を用いて誘導されたCFUから生じたマスターセルバンクは、得られた細胞集団の大部分の細胞(>98.8%)がCD90を発現し(図2C)、骨髄系関連マーカーCD45の任意の発現を実質上欠如した(図2C、LR四分円)ことを示した。したがって、本明細書に記載のような拡大手順により、CD49cおよびCD90を共発現し、かつマーカーCD45の有意な発現を欠如した付着細胞の実質的に相同な集団を生産する。
【0173】
実施例4:CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団の拡大能力
CFUの一次セルバンクを25mLの骨髄吸引液から得て、実施例1および2の方法を用いて凍結したアリコートとして保存した。アリコートを解凍し、拡大し、凍結して、実施例3に記載のようなマスターセルバンクを得た。細胞のアリコートをマスターセルバンクから取り出し、完全培地中の500cm2組織培養処理されたプレート(コーニング(Corning))において30細胞/cm2の密度で培養し、5%二酸化炭素、5%酸素、および90%窒素からなる雰囲気中、37℃でインキュベートした。培養2週間後、細胞をトリプシンでプレートから取り出し、2〜10×106細胞/バイアルで低温保存した。このプロセスを連続的に繰り返し、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の追加のセルバンクを生産した。
【0174】
各連続した拡大終了時に単独のアリコートから得られる細胞数を、トリパン排除により決定し、アリコート数をかけて、収率を計算した(図3)。4個の連続した拡大物は、潜在的に、単独のドナーから得られた25mLの骨髄吸引液から1×1017細胞にまで発生させることができる。細胞倍化数を、以下の式を用いて細胞収率から計算した:(Log(最終の細胞数)−Log(開始時の細胞数)/Log(2)(「(2)」は倍加を示す)。細胞集団は、各拡大期間中、約8の倍加を経た(図4)。倍加速度(培養日数×24/倍加)は30時間であり、少なくとも50の倍加については一定のままであった。30の倍加後でさえ、集団は、巨大な、成熟したまたは終末分化した細胞の平板状の形態の形跡が見られない、小さな、分裂中の細胞の特徴的な形態を一様に保持していた。
【0175】
実施例5:細胞成長のレギュレーターをコードする転写物の発現およびCD49cおよびCD90を共発現する細胞集団による骨芽細胞分化
テロメラーゼ、p21、p53、CBFA1およびBSPについての転写物の発現は、定量ポリメラーゼ鎖反応(qPCR)を用いて決定した。簡単には、CFUのマスターセルバンクを骨髄吸引液から得て、実施例1の方法を用いて凍結したアリコートとして保存した。アリコートを解凍し、完全培地中の組織培養処理されたT75フラスコにおいて30細胞/cm2の密度で培養し、5%二酸化炭素、5%酸素、および90%窒素からなる雰囲気中、37℃でインキュベートした。
【0176】
培養2週間後、細胞を96ウエルプレート中に3000細胞/ウエルで接種した。RNAを、QIAGEN RNeasy試薬およびQiagen Biorobot3000を用いて単離した。抽出したRNAのアリコートを用いて、cDNAを合成した。RNAをプロメガ(Promega)MMLV、dNTPS、デカマーおよびRNasinと混合し、37℃で1時間インキュベートして、熱不活性化した。定量PCR(qPCR)、cDNAサンプルを応用バイオシステムズSYBRグリーンPCRコア試薬(AppliedBiosystems SYBR Green PCR Core reagents) およびアンプリコン特異的プライマーと、以下に示すように、384ウエルフォーマット中で混合した。384ウエルプレートを次いでqPCR分析用の応用バイオシステムズABIプリズム(Prism)7900に移した。qPCRプログラムは、ポリメラーゼを活性化するために、50℃で2分サイクル、次いで90℃で10分サイクルを必要とした。これは、次いで、95℃で15秒の溶解と60℃で1分の伸長/アニーリングからなる40回の増幅サイクルを行なった。
【0177】
サイクル限界値を、標準曲線を用いて相対的な転写物の数に変換し、次いで対応する18sを用いて正規化した。データは、106 個の18s転写物あたりの転写物の割合として表される。qPCRプライマーの名称、ジーンバンクID、bp位置および配列は以下のとおり:
18s−1F,K03432,1742−1760bp,5’−ATG GGG ATC GGG GAT TGC A−3’(配列番号:1);
18s−1R,K03432,1871−1890bp,5’−CCG ATC CGA GGG CCT CAC TA−3’(配列番号:2);
BSP−1F,NM000582,483−508bp,5’−CAC TCC AGT TGT CCC CAC AGT AGA CA3’(配列番号:3);
BSP−1R,611−632bp,5’−TCG CTT TCC ATG TGT GAG GTG A−3’(配列番号:4);
CBFA1−1F,L40992,389−407bp,5’−GGC CGG AGT GGA CGA GGC AA−3’(配列番号:5);
CBFA1−1R,L40992,504−529bp,5’−CAT CAA GCT TCT GTC TGT GCC TTC TG−3’(配列番号:6);
p21−1F,S67388,52−72bp,5’−ACC GAG GCA CTC AGA GGA GGC−3’(配列番号:7);
p21−1R,S67388,171−191bp,5’−GCC ATT AGC GCA TCA CAG TCG−3’(配列番号:8);
p53−qFP4,M14694,521−545bp,5’−GAT GTT TTG CCA ACT GGC CAA GAC C−3’(配列番号:9);
p53−qRP4,M14694,674−698bp,5’−AGG AGG GGC CAG ACC ATC GCT ATC T−3’(配列番号:10);
Telo−1F;AF015950,1500−1525bp,5’−ACA ACG AAC GCC GCT TCC TCA GGA AC−3’(配列番号:11);および
Telo−1R,AF015950,1625−1650bp,5’−GCC GGA ACA CAG CCA ACC CCT GG−3’(配列番号:12)。
【0178】
テロメラーゼ活性は、テロメアの維持に必須であり、これは染色体の末端に位置するDNA配列である。ほとんどのヒト細胞は、テロメラーゼを欠失しているため、テロメアは細胞増殖が停止するまで分裂毎に短くなる(Harley,C.B.,Mutation Research 256(2−6);271−282(1991);Hara,E.ら,Biochem Biophys Res Commun179(1):528−534(1991);Shay,J.W.ら,Exp Cell Res 196(1):33−39(1991))。CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団は、約13個の転写物/106個の18SrRNAの転写物のレベルでテロメラーゼを発現し、それは、この細胞集団が一定の速度で増殖し続けたという所見と一致している。
【0179】
p53腫瘍サプレッサーは、DNA損傷に対する細胞応答において主要な役割を果たし、この遺伝子の不活性化は発癌における重要な段階である。p53発現は、DNA損傷に応答してアップレギュレートされる。この欠損細胞の増殖を防ぐ能力には、p21を含むいくつかの成長阻止遺伝子の活性化が含まれる(Burns,T.F.ら,Oncogene 20(34):4601−4612(2001))。CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、約670個のp53転写物/106個の18SrRNAの転写物を発現した。このレベルのp53では、腫瘍サプレッサーp53が誘導されないことを示している。
【0180】
p21は、強力な細胞周期インヒビターであり、細胞周期の間でのその発現は、転写レベルでしっかりと制御されている(Gartel,A.L.ら,Exp Cell Res 246(2):280−289(1999))。p21は、DNA損傷に加えて酸化ストレスに応答して成長阻止された細胞において誘導される(Yin,Y.ら,Mol Carcinog 24(1):15−24(1999))。CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、p21を約1690個の転写物/106個の18SrRNAの転写物で発現した。このレベルのp21では、p21が誘導されなかったこと、およびp21が低レベルのp53と実施例4において測定された短い倍加時間の両方と一致していることを示す。
【0181】
転写因子、CBFA1、は、骨芽細胞分化および骨形成に必須である(Otto,F.,Cell 89(5):765−771(1997))。骨シアロプロテイン(bonesialoprotein) (BSP)は、骨の細胞外マトリックス中において顕著な無機物関連タンパク質であり、完全に分化した骨芽細胞により発現される(Benson,M.D.ら,J Biol Chem 275(18):13907−13917(2000))。CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、約130個のCBFA1転写物/106個の18SrRNAの転写物を発現し、BSPは存在しなかったが、これは本発明の細胞集団が骨芽細胞にまで有意に分化しなかった先祖を表わすことを示している。骨芽細胞の分化は、Ducy,P.,Dev Dyn 219(4):461−471(2000))に記載されている。
【0182】
実施例6:CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団による神経栄養因子およびサイトカインの分泌
実施例1で得られたマスターセルバンクのアリコートを解凍してT75フラスコ上で完全培地と共に2500細胞/cm2 で平板培養し、5%O2でインキュベートした。その次の日に、培地を除去し、新しい完全培地と取り替えた。上清を8時間後にT75から回収し、細胞をカウントした(細胞カウント=280,000の細胞)。上清を1mlチューブに等分し、−20℃で保存した。別のT75を同じ方法で3日後に処理した(細胞カウント=243万)。上清を室温でゆっくりと解凍し、市販のキット:BDNF(ケミコン(Chemicon))、NGF(ケミコン)、MCP−1(RアンドDシステムズ(Rand D Systems) 、およびIL−6(RアンドDシステムズ)を用いて、以下の神経栄養因子/サイトカインの分泌についてELISAによりアッセイした。上清について多段階希釈を行い、測定値がアッセイの標準的な範囲内にあることを確認した。さらに、前もって決定された量のサイトカインを分泌している対照の細胞から得られた培地を、平行して操作し、アッセイの有効性を確認した。標準時間(24時間)および細胞数(100万個)でELISAから得られたそのままのデータを正規化することによって値を得たが、この値を以下のように「24時間あたりの100万個の細胞あたりの分泌されたサイトカインのピコグラム」として表現する:
サイトカイン 分泌量(pg/106 細胞/日)
MCP−1 1009.15
IL−6 18567.60
BDNF 8.88
NGF 80.12

【0183】
実施例7:CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団の急性ラット脊髄損傷モデルへの移植
次に、外傷損傷後に神経単位の死滅、炎症および損傷した神経単位の進行性の損失が、経時的に起こる。CD49cおよびCD90を共発現する本発明の実質的に相同な細胞集団は、急性の神経損傷の間に結果を改善した。実施例1に記載のように調製した細胞集団を、成体のメスのスプラーグ−ダウレイ(Sprague-Dawley)ラットの挫傷を負わせた脊髄内に移植した。
【0184】
スプラーグ−ダウレイラットの胸部脊髄を、全身麻酔下でT10のレベルで椎弓切除により剥き出しにした。椎弓切除を完了した後、10gmの杆体を25mmの高さから落として、NYU脊髄衝撃装置を用いて剥き出しの脊髄上に中程度の重篤さの脊髄損傷を生じた(Constantini,S.ら,J Neurosurg 80(1):97−111(1994))。手術の間、ラットの体温は、37℃に保たれていた。回復の間、温度と湿度を調整したチャンバーにラットを一晩置いた。衝撃損傷後7日で、脊髄を再び剥き出しにした。30ゲージ針を備えた50mL容の耐ガス性ハミルトン(Hamilton)シリンジ(VWRサイエンティフィック・プロダクツ(Scientific Products)、ブリッジポート、ニュージャージー)を用いて、250,000個の本発明の細胞を25,000個/μlの濃度で脊髄に移植した。細胞を2mL/分の速度でT10レベルで空洞(syrninx)の中心に注射した。針を脊髄から取り出すまえにさらに5分間そのままにした。続く手術では、すべての動物は、手術後直ぐに静脈注射(i.v.)で30mg/kgのメチルプレドニゾロンを受けた。免疫拒絶を防ぐために、移植の日前の3日間シクロスポリンA(CsA)を10mg/kgで皮下注射で与え、その後維持した。
【0185】
移植前の日に(損傷後6日目)、バソ−ビアティエ−ブレスナハン(Basso-Beattie-Bresnahan) 開放運動試験(BBB試験)(Basso,D.B.ら、J Neurotrauma 12(1):1−21(1995))を行なった。BBBスコアーを用いて、1週間、各後肢について行動試験を行なった。処置状態を隠してスコアリングを行なった。挫傷を負わせた後19日で、CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に相同な集団を受けた動物は、PBSのみを受けた動物に比べてBBBスコアーについてより大きな改善を示した(10.6±1.2対8.5±0.3)(図5)。
【0186】
移植後2週間で、いくつかの動物から挫傷を受けた脊髄を取り出し、神経線維の再生に関する証拠について試験した。SMI32(スターンベージャー・モノクローナルズ社(Sternberger Monoclonals Inc), ルタービレ、メリーランド)抗体を、空洞中で再生している線維について免疫染色するために、1:4000の希釈で用いた。挫傷を受けた空洞内において成長している神経線維が観察された。
【0187】
実施例8:CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に相同な集団による神経分化のレギュレーターをコードする転写物の発現
Sox−2およびMusashiについての転写物の発現は、定量ポリメラーゼ鎖反応(qPCR)を用いて決定した。簡単には、CFUのマスターセルバンクを骨髄吸引液から得て、実施例1の方法を用いて凍結したアリコートとして保存した。アリコートを解凍し、細胞を完全培地中で2000細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、5%二酸化炭素、5%酸素および90%窒素からなる雰囲気中、37℃で3日間インキュベートした。培養3日目に、細胞を5μM ニフェジピン(L−型カルシウムチャンネルブロッカー)で処理した。処理の24時間後、QIAGEN(登録商標)RNeasy試薬およびQiagen Biorobot3000を用いてRNAを単離した。抽出したRNAのアリコートを用いて、cDNAを合成した。特に、RNAをプロメガ(Promega)MMLV、dNTPS、デカマーおよびRNasinと混合し、37℃で1時間インキュベートして、熱不活性化した。
【0188】
定量PCR、cDNAサンプルをアプライドバイオシステムズSYBRグリーンPCRコア試薬(Applied Biosystems SYBR Green PCRCore reagents) およびアンプリコン特異的プライマーと、以下に示すように、384ウエルフォーマット中で混合した。384ウェルプレートを次いでqPCR分析用のアプライドバイオシステムズABIプリズム7900に移した。qPCRプログラムは、ポリメラーゼを活性化するために50℃で2分サイクル、次いで95℃で10分サイクルを必要とした。この後、次いで、95℃で15秒の溶解と60℃で1分の伸長/アニーリングからなる40回の増幅サイクルを行なった。サイクル限界値を、標準曲線を用いて相対的な転写物の数に変換し、次いで対応する18sを用いて正規化した。データは、106個の18s転写物あたりの転写物の割合として表される。
【0189】
qPCRプライマーの名称、ジーンバンクID、bp位置および配列は以下のとおり:
18s−1F,K03432,1742−1760bp,5’−ATG GGG ATC GGG GAT TGC A−3’(配列番号:1);
18s−1R,K03432,1871−1890bp,5’−CCG ATC CGA GGG CCT CAC TA−3’(配列番号:2);
Sox−2F,Z31560,517−541bp,5’−GGC AGC TAC AGC ATG ATG CAG GAC C−3’(配列番号:13);
Sox−2R,624−647bp,5’−CTG GTC ATG GAG TTG TAC TGC AGG−3’(配列番号:14);
Musashi−1F,AB012851,370−389bp,5’−CAA GAT GGT GAC TCG AAC GA−3’(配列番号:15);
Musashi−1R,480−499bp,5’−GGT TTT GTC AAA CAT CAG CA−3’(配列番号:16)。
【0190】
遺伝子Sox−2は、脳発生の間に神経管を通じて発現され、初期の神経外胚葉の生存に必須である哺乳類精巣決定遺伝子に関連した保存細胞核転写因子をコードする(Uwanogho,Mech.Dev.49:23−36(1995))。また、Sox−2の発現は、成体の神経幹細胞の制限された集団における発生を超えて持続し、神経の発生運命を制御する際のこの因子のさらなる役割を提示している(Zappone,Development 127:2367−2382(2000))。完全培地中における刺激していない状態下で、CD49cおよびCD90を共発現する細胞は、約4個のSox−2転写物/106個の18S RNAの転写物を発現した。しかしながら、ニフェジピンに応答して、CD49cおよびCD90を共発現する細胞は、28個のSox−2転写物/106個の18S RNAの転写物を発現し、約7倍増加した。このSox−2発現の増加は、ある種の後成処理に応答して、CD49cおよびCD90を共発現する細胞が、初期の神経集団に関連した特性を示すことができることを提示している。
【0191】
遺伝子Musashiは、発生中の神経系内で高度に発現されるRNA結合タンパク質をコードし、Sox−2のように、哺乳類の神経幹細胞においても発現される(Sakakibara,Dev Biol 176:230−242(1996))。さらに、Musashiの発現は、多数の神経単位の集団の正常な発生について必要とされる(Nakamura,Neuron 13:67−81(1994))。完全培地中において刺激されていない条件下で、CD49cおよびCD90を共発現する細胞は、約0.005個のMusashi転写物/106個の18S RNAの転写物を発現した。しかしながら、ニフェジピンを用いる24時間の刺激に応答して、CD49cおよびCD90を共発現する細胞は、0.093個の転写物/106個の18S RNAの転写物を発現し、約17倍増加した。このSox−2発現の増加は、ある種の後成処理に応答して、CD49cおよびCD90を共発現する細胞が、初期の神経集団に関連した特性を示すことができることを提示している。
【0192】
実施例9:心筋梗塞に関するヒト成人骨髄幹細胞(hABM−SC)の心臓内注射の効果
実験的な心筋梗塞を誘導されたラット動物モデルにおける直接的な心臓内注射後に心臓機能を回復するhABM−SCの能力を決定した。これらの動物におけるhABM−SCの分布および配置を決定することができる。
【0193】
材料と方法
心臓内注射用の初期筋細胞決定細胞(Early-Myocytic Determined Cells) (EMD)
初期筋細胞決定細胞を産生するために心臓関連転写因子の発現を誘導する条件下で、hABM−SCを培養した。DNAメチル化インヒビター(たとえば、アザシチジン)およびプロテインキナーゼCインヒビター(たとえば、セレリチン(chelerythrine))の存在下でhABM−SCを培養することで初期筋細胞決定細胞を得た。本発明の初期筋細胞決定細胞は、CD49c、CD90および少なくとも1つのNkx2.5、Irx4およびGATA4などの心臓関連転写因子を共発現する。
【0194】
「初期筋細胞決定細胞(EMD)」は、本明細書で用いられている場合、心筋細胞に部分的に分化している細胞を意味する。細胞が初期筋細胞決定細胞であるかどうかを決定する基準は、たとえば、細胞による少なくとも一つの心臓関連転写因子の発現を含む。初期筋細胞決定細胞は、心臓細胞(たとえば、心筋の細胞、本明細書では心筋細胞(cardiomyocytes)ともいう)になることができる。
【0195】
心筋発生、心筋細胞の発生または分化は、種々のタンパク質や遺伝子の時間特異的および分布特異的な発現により特徴づけられる。遺伝子Nkx2.5/CSX(心臓特異的ホメオボックス)を、心臓発生の間に発現される最も初期の遺伝子の一つとして、続く別のホメオボックス遺伝子、イロクォイ(Iroquois)ホメオボックス遺伝子4(Irx4)により近接して同定した(Bao,Z.ら、Science 283:1161−1164(1999);Auda−Boucher,G.ら,Dev.Biol.225:214−225(2000))。転写レギュレーター、GATA結合転写因子4(GATA4)、は、心臓に豊富にあり、筋細胞分化に重要なものである(Auda−Boucher,G.ら,Dev.Biol.225:214−225(2000))。Nkx2.5、Irx4およびGATA4の同時発現は、心筋細胞に特有のものである(Mably,J.D.ら、Circulation Rec.79(1):4−13(1996))。hABM−SCにおけるNkx2.5、Irx4およびGATA4に関する転写物の同時発現は、以下の条件下でhABM−SCを培養することにより達成された。
【0196】
マスターセルバンクの細胞を完全培地中の96ウェルフォーマットで培養し、5%二酸化炭素、5%酸素および90%窒素からなる雰囲気中、37℃でインキュベートした。培養2日後、細胞を、完全培地中において、3〜7日間、30μMの5−アザシチジン(DNAメチル化インヒビター)および5μMのセレリチン(プロテインキナーゼCインヒビター)の存在下で培養した。H−7ジヒドロクロリド、K252a、スタウロスポリン、ビスインドリルマレイミドI−V、およびカルホスチンCなどの他のプロテインキナーゼCインヒビターも、初期筋細胞分化細胞を作製するために、本発明の方法および培養条件に使用することができる。さらに、5−アザ−2−デオキシシチド、5−アザ−グアニン、5−アザ−デオキシグアニンなどの他のDNAメチル化インヒビターも、初期筋細胞分化細胞を作製するために、本発明の方法および培養条件に使用することもできる。
【0197】
アザシチジンおよびセレリチンの存在下で培養して2日後に、RNAを培養中の細胞から単離した。抽出したRNAのアリコートを用いて、心臓関連転写因子の発現の分析のためのcDNAを合成した。RNAをプロメガ・モロニー・マウス白血病ウイルス(PromegaMoloney Murine Leukemia Virus) (MMLV)逆転写酵素と混合した。cDNA、dNTP、デカマーおよびRNasinを約37℃で約1時間インキュベートして、熱不活性化した。定量ポリメラーゼ鎖反応(qPCR)、cDNAサンプルをアプライドバイオシステムズSYBRRグリーンPCR 2Xマスターミックス(AppliedBiosystems SYBRR GREEN PCR 2X MASTER MIX)(登録商標)およびアンプリコン特異的プライマーと、384ウエルフォーマット中で混合した。ABI PRISM 7900HT(登録商標)は、約50℃で約2分、約95℃で約10分、約95℃で15秒の溶解と約60℃で1分の伸長/アニーリングからなる約40回の増幅サイクルの標準プログラムを用いてqPCRを行なった。サイクル限界値を、標準曲線を用いて相対的な転写物の数に変換し、次いで対応する18s RNA転写物に対して正規化した。データは、106個の18s RNA転写物あたりの転写物の割合として表された。評価された転写物についての対照値は、0.001〜0.003の範囲内であった。GATA4は、0.71の転写物に、Irx40は0.023の転写物のレベルに、Nkx2.5は0.023の転写物に、すべて106個の18s RNAに比べて誘導された。少なくとも一つの心臓関連転写因子、たとえば、GATA4、Irx4およびNkx2.5、を発現した細胞は、初期筋細胞決定細胞または初期筋細胞決定hABM−SCである。
【0198】
GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する初期筋細胞決定細胞を、完全培地と共に約30細胞/cm2 で平板培養し、約5%二酸化炭素、約5%酸素および約90%窒素からなる雰囲気下で約37℃でインキュベートした。培養7日後にすべての培地を30μM 5−アザシチジンおよび5μM セレリチンを含む新しい完全培地と取り替えて、細胞を約3日間培養し、次いで完全培地をかえて、さらに7日培養した。初期筋細胞決定細胞は、未改変の細胞のものの約2倍の倍加時間を有していた。初期筋細胞決定細胞は、IL−6、VEGF、MCPIおよびBDNFなどの栄養因子を分泌することができる。
【0199】
心臓内注射用未改変細胞
ドナー059由来hABM−SCは、これはDNAメチル化インヒビター(たとえば、5−アザシチジン)およびプロテインキナーゼCインヒビター(たとえば、塩化セレリチン)の存在下で培養されなかったが、本明細書の本実施例では「未改変hABM−SC」または「未改変細胞」という。未改変hABM−SCは、CD49cおよびCD90並びにテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団であり、実施例1〜8に記載のように調製された。
【0200】
心筋梗塞の実験的誘導
確立された方法に従って、正中胸骨切開を経て左前下行性(LAD)冠状動脈周辺に不変の絹糸状結紮(permanent silk ligature) を配置することで、オスおよびメスのスプラーグ−ダウレイ(Sprague-Dawley)ラット(約3ヵ月齢)において、心筋梗塞を実験的に誘導した(Muller−Ehmsen,J.ら,Circulation105:1720−1726(2002))。処置の5日後、10mg/kgのシクロスポリンA処理の標準摂生法を用いて、ラットを処理し、それを4週間の実験期間中、続けた。
【0201】
梗塞形成の誘導後約7〜8日で、ラットを麻酔し、挿管して、肋間切開を行なって、心尖を剥き出しにした。超音波ミラー(Millar)カテーテルを心室壁を通して挿入し、圧力/測定時間、dp/dt、を約30〜60秒間で得た。梗塞生産と心臓機能の圧力/時間測定のこのモデルは、標準的な、充分特徴付けされたモデルであり、それにより心臓機能に対する細胞治療法の効果が評価される(Meuller−Ehmsen,J.ら,Circulation105:1720−1726(2002))。ベースラインの測定後、表1に概説する3つの処理群の一つにラットを置いた。
【0202】
表1

群 処理 動物番号 処理継続時間

賦形剤 100 μL 7オス 4週間
7メス
未改変細胞 5×106 hABM-SC/100 μL 7オス 4週間
7メス
初期筋細胞 5×106 hABM-SC/100 μL 7オス 4週間
決定細胞 7メス

【0203】
初期筋細胞決定細胞、未改変細胞または賦形剤(PBS中4.5%グルコース)を30ゲージの低死腔針を備えた100μL容のハミルトンシリンジを用いて心臓に送達した。初期筋細胞決定細胞または未改変細胞の用量は、1×106個の細胞を含む20μlのPBS/4.5%グルコースの5 回の注射(unjection) であった(合計100μlのPBS/4.5%グルコース中、5×106細胞)。20μlの5回に分けた注射を2〜3分の時間をかけておこなった。目に見えるようにした梗塞の周囲に等しい間隔で4回の注射を行ない、5回目は、梗塞形成を変色して示す領域によって決定した、梗塞形成をともなう領域の中心部に直接入れた。注射後、切開部を縫合して閉じ、気胸を低減して、動物を人工呼吸器から引き離し、管状器官を取り除いた。意識を回復するまでラットをそのケージに戻した。実験を継続している間、日常的な臨床観察を記録した。
【0204】
注射後4週間(梗塞形成後5週間)で、動物を再び麻酔し、正中胸骨切開を経て心臓を剥き出し、ミラーカテーテルを挿入した。Dp/dt測定を前記のように行い、その後、ラットを放血をへて安楽死させた。心臓を回収し、液浸固定して、パラフィンで包埋し、切片を切り出し、ヘモトキシリン/エオシン(H&E)およびトリクロームで染色し、光学顕微鏡を用いて、組織学的に分析した。
【0205】
データを、第三者により機械的に分析した。
データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として示される。平均値の実質的に有意な差は、分散分析(ANOVA)により決定した。
【0206】
結果
改変細胞または未改変細胞のいずれかを用いる処理により、賦形剤処理した対照の梗塞発現(infracted)ラットと比較した場合に、処理の4週間後の心臓機能のいくつかの測定基準に有意な改善が生じた。心臓組織の組織学的分析は、機能データを支持している。
【0207】
心臓組織の機能測定:
機能データについて統計分析を行なった。処理時でのいくつかのラットの死亡ならびに2つの処理後のデータ記録の損失により、6つの動物/性別/処理群についての機能データが得られた。機能データを以下の測定基準:+dp/dt(図6Aおよび6B)、Δ+dp/dt(図6Cおよび6D)、Δ−dp/dt(図7Aおよび7B)としてならびにτ(図8Aおよび8B)として分析した。
【0208】
図6Aに示されるように、未改変細胞および改変細胞での処理により、注射後4週間で圧力発生(+dp/dt)の最大速度において有意な増加が生じた。処理前の値は、各群の間で有意な違いはなかった。
【0209】
図6Bに示されるように、賦形剤処理したオスは、メスと比べた場合、有意に低い+dp/dt値を有していた。しかしながら、賦形剤に比例した増加の程度は、オスとメスとでほぼ等しく、改変細胞で処理したラットではより少なかった。
【0210】
+dp/dt測定値を改善が有意であったという最終的な確認として、「Δ+dp/dt」として示される測定基準を導いた。Δ+dp/dtは、個々の動物で得られ、処理群の値によって平均された処理前および処理後の+dp/dt値の間の絶対的な変化である(図6C)。Δ+dp/dt測定値は、実験期間中賦形剤動物がこの測定基準において減少を示す(低下した心臓機能を示す負のΔ)一方で、改変細胞または未改変細胞のいずれかを受けた動物が、圧力発生測定基準によって規定された心臓機能の有意な増加を示した(増加した心臓機能を示す正のΔ)。
【0211】
図6Dに示されるように、賦形剤で処理されたメスと比べた場合、賦形剤で処理されたオスは、心臓機能により大きな低下を有した(負のΔ)。しかしながら、オスおよびメスは、改変細胞または未改変細胞での処理後、等しい増加(正のΔ)を示した。
【0212】
圧力発生(「−dp/dt」)の最小速度も決定した。+dp/dtについて記載したのと同様の分析を行なった(図7Aおよび7B)。結果を「Δ−dp/dt」として示すが、処理前測定値および処理後測定値について同様のパターンが観察された。処理後4週間で、未改変細胞または改変細胞のいずれかを受けたラットは、有意により高い−dp/dt値を示した(示さず)。+dp/dt値と異なり、オスとメスのラットの間では−dp/dtに差が見られなかった。
【0213】
図7Aに示されるように、Δ−dp/dtは、賦形剤処理された動物で低下した。しかしながら、改変細胞または未改変細胞のいずれかを受けた動物は、Δ−dp/dtで規定されるように、心臓機能において有意で強い増加を示した。図7Aは、4週目の+dp/dt値から0週目の+dp/dt値を引くことにより実験期間の間の心臓機能において発現される変化(「Δ−dp/dt」)が、賦形剤処理されたラットが実験期間の間、心臓機能を低下した(負のΔ)一方、改変細胞または未改変細胞のいずれかで処理された動物が心臓機能において有意な改善を示したことの証拠となることを示している。+dp/dtと異なり、オスとメスの間の応答では有意な差がなかった。
【0214】
この実験において得られた第3の測定基準は、等容の左心室圧減衰の時間定数であり、τ(t)と名付けた(図8Aおよび8B)。増大したτ値が、冠状動脈疾患、心筋梗塞、および拡張期心臓疾患を含むヒトにおける多くの心臓病状において報告されており、したがって、心臓機能の指標となっている(Bolognesi,R.ら,J.Am.Soc.Echocardiogr.14(8):764−72(2001);Dawso,J.R.,ら,Br.Heart J.61(3):248−257(1989))。+dp/dtおよび−dp/dt測定で一致して、改変細胞または未改変細胞のいずれかを受けたラットは、処理の4週間後に減少したτ値を示し(図8A)、増大した左心室コンプライアンスを示した。+dp/dtで観察した場合、賦形剤処理したオスは、実験期間中τがより大きく減少する傾向にあり、両方の性別では、それぞれの賦形剤対照について正規化した場合、両方の試験品に応じてτの回復の程度が等しいことが示された(図8B)。
【0215】
心臓組織の組織学的分析:
心臓の切片をH&Eおよびトリクロームで染色した。トリクローム染色は、筋肉組織に対するコラーゲンの顕在化を可能にする。コラーゲンは、瘢痕組織の存在、即ち、再生が存在しないことを示すことができ、H&Eおよびトリクローム染色は、正常な心筋と比べて、実験処理群(賦形剤、未改変細胞、初期筋細胞決定細胞)における動物から得られる心臓組織におけるコラーゲンの相対量を定量するのに有用であり得る。表2で示したスケールは、定量的な機能データを組織学的分析と関連させるのに用いられた。
【0216】
表2
スケール 線維症領域/生存可能組織領域(AF:AV)
0 非常に小さい
1 小さい
2 軽い
3 中程度
4 大きい
5 非常に大きい
【0217】
図10Aおよび10Bは、賦形剤処理したラット(図10A、スコア4)および未改変細胞で処理したラット(図10B、スコア1)との間の相対的な違いを示している。スコアは、各切片が約4mmの間隔の心尖(cardiacapex) から始まる心臓組織の3つのスライドの目視検査後に得られた。スコアを、心臓の3つの部位の全域の平均に基づいて示した。
【0218】
0のスコアは、心尖から心臓組織における心房まで線維症がわずかから全くないことに特徴があった。1のスコアは、心尖での線維症がわずかで、かつ心房付近の線維の量が少ないことに特徴があった。2のスコアは、心尖での線維症が軽く、かつ心臓組織における心房に向かって線維症組織:生存可能組織の割合が迅速に減少することに特徴があった。3のスコアは、心尖での線維症が中程度で、かつ心臓組織における心房に向かって線維症組織:生存可能組織の割合が迅速に減少することに特徴があった。4のスコアは、心尖での線維症が大きく、かつ心臓組織における心房に向かって線維症組織:生存可能組織の割合が急激でなくゆるやかに減少すること特徴があった。5のスコアは、心尖での線維症が非常に大きく、かつ心臓組織における心房に向かって線維症組織:生存可能組織の割合が線形で減少すること特徴があった。
【0219】
賦形剤のみで処理されたラットから得られた平均スコアは、(4.4±0.68)であった。平均スコアは、改変細胞で処理されたラット(1.33±0.68)または未改変細胞で処理されたラット(1.00±0.45)から得られた。4および1のスコアの視覚表示を、それぞれ図10Aおよび10Bに指示する。
【0220】
これらのデータは、梗塞の大きさにおける有意な低減が初期筋細胞決定細胞および未改変細胞で処理したラットに見られたことを示す。一般的に、メスにおける梗塞の大きさは、オスに比べて小さかった。初期筋細胞決定細胞または未改変細胞で処理されたラットは、一致した性の賦形剤対照よりも約2ポイント低い組織のスコアを有していた(図9、10Aおよび10B)。
【0221】
均等物
本発明は、その好ましい態様に関して特に示されかつ記載されているが、添付した特許請求の範囲に包含される本発明の範囲からそれることなく、形式および詳細において種々の変更が本明細書においてなされ得ることは当業者であれば、理解できるだろう。
【0222】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団。
[2]テロメラーゼの発現が、106個の18srRNAの転写産物当たり約1個のテロメラーゼの転写産物〜106個の18s rRNAの転写産物当たり約10個のテロメラーゼの転写産物よりも多い相対的発現である[1]記載の細胞集団。
[3]約144時間未満の倍加時間を有してなる[1]記載の細胞集団。
[4]約72時間未満の倍加時間を有してなる[1]記載の細胞集団。
[5]約48時間未満の倍加時間を有してなる[1]記載の細胞集団。
[6]予め選択された表現型に分化する潜在力を有してなる[1]記載の細胞集団。
[7]軟骨細胞、星状細胞、稀突起膠細胞、ニューロン、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、心筋細胞、膵島細胞、骨格筋、平滑筋、肝細胞および網膜神経節細胞からなる群より選ばれる予め選択された表現型に分化する潜在力を有してなる[1]記載の細胞集団。
[8]約20〜約50集団の細胞の倍加後にP21またはP51の発現をさらに含み、P53の発現が、106個の18rRNAの転写産物当たり約3000個のP53の転写産物までの相対的発現であり、P21の発現が、106個の18srRNAの転写産物当たり約20,000個のP21の転写産物までの相対的発現である[1]記載の細胞集団。
[9]細胞が骨髄、皮膚、脂肪、臍帯血、筋肉および胎盤供給源からなる群より選ばれる供給源に由来する[1]記載の細胞集団。
[10]細胞が骨髄に由来する[1]記載の細胞集団。
[11]骨髄細胞がヒト骨髄細胞である[1]記載の細胞集団。
[12]細胞集団がCD34および/またはCD45を発現しない[1]記載の細胞集団。
[13]細胞が、BDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[1]記載の細胞集団。
[14]CD49cおよびCD90を共発現し、CD34および/またはCD45を発現しない実質的に相同な細胞集団。
[15]CD49c、CD90、ならびにBDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を共発現する実質的に相同な細胞集団。
[16]CD49cおよびCD90を共発現するが、骨シアロタンパク質を発現しない実質的に相同な細胞集団。
[17]細胞がまたテロメラーゼを発現する[16]記載の細胞集団。
[18]細胞が約144時間未満の倍加時間を有してなる[16]記載の細胞集団。
[19]細胞が約72時間未満の倍加時間を有してなる[16]記載の細胞集団。
[20]細胞が約48時間未満の倍加時間を有してなる[16]記載の細胞集団。
[21]細胞が予め選択された表現型に分化する潜在力を有してなる[16]記載の細胞集団。
[22]予め選択された表現型が、軟骨細胞、星状細胞、稀突起膠細胞、ニューロン、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、心筋細胞、膵島細胞、骨格筋、平滑筋、肝細胞および網膜神経節細胞からなる群より選ばれる[21]記載の細胞集団。
[23]約20〜約50集団の細胞の倍加後にP21またはP53の発現をさらに含み、P53の発現が、106個の18srRNAの転写産物当たり約3000個のP53の転写産物までの相対的発現であり、P21の発現が、106個の18s rRNAの転写産物当たり約20,000個のP21の転写産物までの相対的発現である[16]記載の細胞集団。
[24]細胞が骨髄、皮膚、脂肪、臍帯血、筋肉および胎盤供給源からなる群より選ばれる供給源に由来する[16]記載の細胞集団。
[25]細胞が骨髄に由来する[16]記載の細胞集団。
[26]骨髄細胞がヒト骨髄細胞である[25]記載の細胞集団。
[27]細胞集団がCD34および/またはCD45を発現しない[16]記載の細胞集団。
[28]BDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[16]記載の細胞集団。
[29]a)低酸素条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[30]細胞集団の供給源が骨髄である[29]記載の方法。
[31]骨髄がヒト骨髄である[29]記載の方法。
[32]低酸素条件が約15%未満の酸素である[29]記載の方法。
[33]低酸素条件が約10%未満の酸素である[32]記載の方法。
[34]低酸素条件が約5%酸素である[29]記載の方法。
[35]骨髄を培養する前に骨髄を溶解することをさらに含む[30]記載の方法。
[36]骨髄を培養する前に骨髄を分画することをさらに含む[30]記載の方法。
[37]骨髄が密度勾配を通過することにより分画される[36]記載の方法。
[38]骨髄がNH2Cl溶解により分画される[36]記載の方法。
[39]骨髄が蛍光活性化分類により分画される[36]記載の方法。
[40]骨髄が磁性分類により分画される[36]記載の方法。
[41]CD49cおよびCD90を共発現する細胞がCD34および/またはCD45を発現しない[29]記載の方法。
[42]培養した供給源から選ばれた細胞がBDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[29]記載の方法。
[43]a)低酸化ストレス条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[44]細胞集団の供給源が骨髄である[43]記載の方法。
[45]骨髄がヒト骨髄である[43]記載の方法。
[46]a)低酸化ストレス条件下で約50細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[47]a)低酸化ストレス条件下で約30細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[48]a)低酸化ストレス条件下で約75,000細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養し、接着細胞集団を生成する工程;
b)低酸化ストレス条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度で接着細胞集団を培養する工程;および
c)培養した接着細胞集団からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[49]a)低酸素条件下で約50細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[50]a)低酸素条件下で約30細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[51]a)低酸素条件下で約75,000細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養し、接着細胞集団を生成する工程;
b)低酸素条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度で接着細胞集団を培養する工程;および
c)培養した接着細胞集団からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程
を含む、CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[52]細胞集団の供給源が骨髄である[51]記載の方法。
[53]骨髄がヒト骨髄である[52]記載の方法。
[54]低酸素条件が約5%の酸素である[51]記載の方法。
[55]骨髄を培養する前に骨髄を溶解することをさらに含む[51]記載の方法。
[56]骨髄を培養する前に骨髄を分画することをさらに含む[51]記載の方法。
[57]骨髄が密度勾配を通過することにより分画される[56]記載の方法。
[58]骨髄がNH2Cl溶解により分画される[56]記載の方法。
[59]骨髄が蛍光活性化分類により分画される[56]記載の方法。
[60]骨髄が磁性分類によって分画される[56]記載の方法。
[61]CD49cおよびCD90を共発現する細胞がCD34および/またはCD45を発現しない[51]記載の方法。
[62]培養した供給源から選択された細胞がBDNF、IL-6およびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[51]記載の方法。
[63]CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、変性または急性損傷疾患を患うヒトの処置方法。
[64]CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与する工程を含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法。
[65]細胞集団がCD34および/またはCD45を発現しない[64]記載の方法。
[66]CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、心臓病を患うヒトの処置方法。
[67]a)低酸素条件下で約100細胞/cm2未満の播種密度で細胞集団の供給源を培養すること;
b)培養した細胞集団の供給源からD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団を選択すること;および
c)CD49cおよびCD90を共発現する細胞の集団をヒトに投与すること
を含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法。
[68]CD49cおよびCD90を共発現する細胞が、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脳卒中、外傷性脳損傷、ファブリー病疾患、異染色性ジストロフィー、副腎白質萎縮症、キャナバン病、ペリツェーウスメルツバッヒャー病、ニーマンピック病および脳腫瘍からなる群より選ばれる神経性疾患を患うヒトに投与される[67]記載の方法。
[69]細胞集団の供給源が骨髄である[67]記載の方法。
[70]骨髄がヒト骨髄である[69]記載の方法。
[71]低酸素条件が約15%未満の酸素である[67]記載の方法。
[72]低酸素条件が約10%未満の酸素である[71]記載の方法。
[73]低酸素条件が約5%酸素である[68]記載の方法。
[74]培養した供給源から選択された細胞が、BDNF、IL-6およびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[67]記載の方法。
[75]a)細胞集団の供給源を培養する工程;
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択する工程;および
c)CD49cおよびCD90を共発現する細胞を改変して運命づけられた前駆細胞にする工程
を含む、運命づけられた前駆細胞の作製方法。
[76]CD49cおよびCD90を共発現する細胞が、低酸素条件により培養した細胞集団の供給源から選択される[75]記載の方法。
[77]低酸素条件が約5%酸素である[76]記載の方法。
[78]細胞集団の供給源が骨髄である[75]記載の方法。
[79]骨髄がヒト骨髄である[78]記載の方法。
[80]CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、変性または急性損傷疾患を患うヒトの処置方法。
[81]a)細胞集団の供給源を培養する工程;
b)培養した細胞集団の供給源からCD49cおよびCD90を共発現する細胞を選択すること;
c)CD49cおよびCD90を共発現する細胞を改変して運命づけられた前駆細胞にすること;
d)運命づけられた前駆細胞をヒトに投与すること
を含む、神経性疾患を患う患者の処置方法
[82]CD49cおよびCD90を共発現する細胞が、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脳卒中、外傷性脳損傷、ファブリー病疾患、異染色性ジストロフィー、副腎白質萎縮症、キャナバン病、ペリツェーウスメルツバッヒャー病、ニーマンピック病および脳腫瘍からなる群より選ばれる神経性疾患を患うヒトに投与される[81]記載の方法。
[83]細胞集団の供給源が骨髄である[81]記載の方法。
[84]骨髄がヒト骨髄である[83]記載の方法。
[85]細胞集団の供給源が低酸素条件下で培養される[81]記載の方法。
[86]骨髄が蛍光活性化分類により分画される[81]記載の方法。
[87]骨髄が磁性分類により分画される[81]記載の方法。
[88]低酸素条件が約5%酸素である[85]記載の方法。
[89]培養供給源から選択された細胞が、BDNF、IL-6およびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[81]記載の方法。
[90]CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有してなる医薬組成物。
[91]CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団が少なくとも約105個の細胞を有してなる[90]記載の医薬組成物。
[92]CD49cおよびCD90を共発現する実質的に相同な細胞集団が少なくとも約106個の細胞を有してなる[90]記載の医薬組成物。
[93]細胞集団がCD34および/またはCD45を発現しない[90]記載の医薬組成物。
[94]細胞集団がBDNF、IL-6、NGFおよびMCP-1からなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[90]記載の医薬組成物。
[95]CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団を含有してなる医薬組成物。
[96]CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、神経性疾患を患うヒトの処置方法。
[97]CD49c、CD90および骨直系マーカーを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、変性または急性損傷疾患を患うヒトの処置方法。
[98]CD49c、CD90および骨直系マーカーを共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む神経性疾患を患うヒトの処置方法。
[99]CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団。
[100]テロメラーゼの共発現をさらに含む[99]記載の実質的に相同な細胞集団。
[101]細胞がヒト骨髄細胞に由来する[99]記載の実質的に相同な細胞集団。
[102]心臓関連転写因子がGATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選択される[99]記載の実質的に相同な細胞集団。
[103]標識をさらに含有してなる[99]記載の実質的に相同な細胞集団。
[104]細胞集団が心筋細胞に分化する[99]記載の実質的に相同な細胞集団。
[105]細胞がIL-6、VEGF、MCP1およびBDNFからなる群より選ばれる少なくとも1つの栄養因子を発現する[99]記載の実質的に相同な細胞集団。
[106]CD49c、CD90、および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現するが、骨シアロタンパク質を発現しない実質的に相同な細胞集団。
[107]心臓関連転写因子がGATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選ばれる[106]記載の実質的に相同な細胞集団。
[108]CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団。
[109]CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団。
[110]a)低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処置する工程
を含む、CD49c、CD90および少なくとも心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[111]細胞集団の供給源が骨髄供給源を含む[110]記載の方法。
[112]プロテインキナーゼCインヒビターがセレリチリンである[110]記載の方法。
[113]DNAメチル化インヒビターが5-アザシチジンである[112]記載の方法。
[114]処理した細胞集団がGATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選ばれる心臓関連転写因子を共発現する[110]記載の方法。
[115]a)低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程
を含むCD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[116]a)低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程
を含むCD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[117]細胞集団の供給源が骨髄供給源を含む[116]記載の方法。
[118]プロテインキナーゼCインヒビターがセレリチリンである[116]記載の方法。
[119]DNAメチル化インヒビターが5-アザシチジンである[118]記載の方法。
[120]a)低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養する工程;および
b)培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼAインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程
を含む、CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[121]CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90および少なくとも1つの候補関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[122]CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[123]CD49c、CD90およびテロメラーゼを共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理する工程を含む、CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団の作製方法。
[124]CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおける心筋梗塞の処置方法。
[125]心臓関連転写因子がGATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選ばれる[124]記載の方法。
[126]CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含むヒトにおける心筋梗塞の処置方法。
[127]CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含むヒトにおける心筋梗塞の処置方法。
[128]CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含むヒトにおける心筋梗塞の処置方法。
[129]a)低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること;
b)培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理すること;および
d)処理した細胞集団をヒトに投与すること
を含む、ヒトにおける心筋梗塞の処置方法。
[130]処理した細胞集団が心筋梗塞の近位に投与される[129]記載の方法。
[131]処理した細胞集団が心筋に投与される[130]記載の方法。
[132]処理した細胞集団からCD49c、CD90、および少なくとも1つの心臓特異的マーカーを共発現する細胞の集団を選択することをさらに含む[129]記載の方法。
[133]選択された細胞集団が、テロメラーゼを発現する細胞をさらに含む[132]記載の方法。
[134]心臓特異的マーカーがGATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選択される[132]記載の方法。
[135]細胞集団の供給源が骨髄供給源を含む[129]記載の方法。
[136]a)CD49cおよびCD90を共発現する細胞集団をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理すること;
b)処理した細胞をヒトに投与すること
を含む、ヒトにおける心筋梗塞の処置方法。
[137]細胞集団が骨髄に由来する[136]記載の方法。
[138]細胞集団がテロメラーゼを共発現する細胞を含む[136]記載の方法。
[139]細胞集団が、GATA4、Irx4およびNkx2.5からなる群より選ばれる少なくとも1つの心臓関連転写因子を発現する[136]記載の方法。
[140]CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおけるうっ血性心不全の処置方法。
[141]CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおけるうっ血性心不全の処置方法。
[142]CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおけるうっ血性心不全の処置方法。
[143]CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団をヒトに投与することを含む、ヒトにおけるうっ血性心不全の処置方法。
[144]a)低酸素条件下で細胞集団の供給源を培養すること;
b)培養した細胞集団の供給源をプロテインキナーゼCインヒビターおよびDNAメチル化インヒビターで処理すること
d)処理した細胞集団をヒトに投与すること
を含む、ヒトにおけるうっ血性心不全の処置方法。
[145]CD49cおよびCD90を共発現する細胞の実質的に相同な集団と少なくとも1つの運命づけられた前駆細胞型を含む細胞の集団とを合わせる工程を含む、運命づけられた前駆細胞型の形成方法。
[146]前記細胞の集団が、神経細胞の集団および心筋細胞の集団からなる群より選ばれる[145]記載の方法。
[147]細胞の集団がテロメラーゼを発現する[145]記載の方法。
[148]CD49c、CD90を共発現し、低酸素条件下で培養した場合、約144時間未満の倍加時間を有してなる実質的に相同な細胞集団。
[149]倍加時間が約72時間未満である[148]記載の実質的に相同な細胞集団。
[150]倍加時間が約48時間未満である[148]記載の実質的に相同な細胞集団。
[151]倍加時間が約65時間未満である[148]記載の実質的に相同な細胞集団。
[152]倍加時間が約35時間未満である[148]記載の実質的に相同な細胞集団。
[153]低酸素条件が約5%未満の酸素である[148]記載の実質的に相同な細胞集団。
[154]CD49c、CD90を共発現し、低酸素条件下で培養した場合、約144時間未満の倍加時間を有してなり、低酸素条件下で約100細胞/cm2の播種密度で細胞集団供給源を培養する工程を含む方法により形成される、実質的に相同な細胞集団。
[155]CD49c、CD90および少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有してなる医薬組成物。
[156]CD49c、CD90、テロメラーゼおよび少なくとも1つの心臓関連転写因子を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有してなる医薬組成物。
[157]CD49c、CD90、テロメラーゼ、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有してなる医薬組成物。
[158]CD49c、CD90、GATA4、Irx4およびNkx2.5を共発現する実質的に相同な細胞集団を含有してなる医薬組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された細胞集団の細胞が骨髄由来であり、細胞集団の91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
a) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
b) インターロイキン−6(IL-6);
c) 神経成長因子(NGF);
d) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
e) ニューロトロフィン−3(NT-3);
f) インターロイキン−7(IL-7);
g) インターロイキン−11(IL-11);
h) 幹細胞因子(SCF);
i) 血管内皮成長因子(VEGF);
j) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
k) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団。
【請求項2】
a) 骨髄細胞を低酸素条件下でインキュベートし、細胞が組織培養処理表面に付着し得る場合に付着性コロニー形成単位(CFU)を生じる工程;および
b) 2500細胞/cm2未満の播種密度で、付着性CFU中で細胞を増殖する工程
を含む方法により骨髄から得られ得、
91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
c) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
d) インターロイキン−6(IL-6);
e) 神経成長因子(NGF);
f) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
g) ニューロトロフィン−3(NT-3);
h) インターロイキン−7(IL-7);
i) インターロイキン−11(IL-11);
j) 幹細胞因子(SCF);
k) 血管内皮成長因子(VEGF);
l) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
m) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団。
【請求項3】
a) 骨髄細胞を低酸化ストレス条件下でインキュベートし、細胞が組織培養処理表面に接着し得る場合に付着性コロニー形成単位(CFU)を生じる工程;および
b) 2500細胞/cm2未満の播種密度で、付着性CFU中で細胞を増殖する工程
を含む方法により、骨髄から得られ得、
91%を超える細胞がCD49cおよびCD90細胞表面ポリペプチドを共発現し、単離された細胞集団の細胞が
c) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
d) インターロイキン−6(IL-6);
e) 神経成長因子(NGF);
f) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
g) ニューロトロフィン−3(NT-3);
h) インターロイキン−7(IL-7);
i) インターロイキン−11(IL-11);
j) 幹細胞因子(SCF);
k) 血管内皮成長因子(VEGF);
l) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
m) シスタチン−C
からなる群より選択される少なくとも1つの栄養因子を発現し、単離された細胞集団の細胞がポリペプチドCD34、CD45または骨シアロタンパク質を発現せず、該細胞集団が30回の細胞倍加後に30時間以下の倍加時間を維持する、単離された細胞集団。
【請求項4】
骨髄がヒト骨髄である請求項1〜3いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項5】
低酸素条件が15%未満、10%未満または5%未満の酸素である請求項2記載の単離された細胞集団。
【請求項6】
低酸素条件が2〜7%の酸素である請求項2記載の単離された細胞集団。
【請求項7】
低酸素条件が5%の酸素である請求項2記載の単離された細胞集団。
【請求項8】
低酸化ストレス条件が、
細胞集団の供給源を
a) グルタチオン;
b) ビタミンC;
c) カタラーゼ;
d) ビタミンE;および
e) N-アセチルアシステイン
からなる群より選択される化合物と共に培養することを含む、請求項3記載の単離された細胞集団。
【請求項9】
播種密度が1000細胞/cm2未満、100細胞/cm2未満、50細胞/cm2未満、または30細胞/cm2未満である、請求項2〜8いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項10】
単離された細胞集団の細胞が
a) 脳由来神経栄養因子(BDNF);
b) インターロイキン−6(IL-6);
c) 神経成長因子(NGF);
d) マクロファージケモアトラクタントタンパク質−1(MCP-1);
e) ニューロトロフィン−3(NT-3);
f) インターロイキン−7(IL-7);
g) インターロイキン−11(IL-11);
h) 幹細胞因子(SCF);
i) 血管内皮成長因子(VEGF);
j) マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP-9);および
k) シスタチン−C
からなる群より選ばれる少なくとも3つの栄養因子を発現する、請求項1〜9いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項11】
単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたりP53の0〜3000転写産物をさらに発現する請求項1〜10いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項12】
単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたり
a) 0〜100転写産物;
b) 0〜1000転写産物;
c) 0〜1500転写産物;
d) 0〜2000転写産物;および
e) 0〜3000転写産物
からなる群より選択される数のP53の転写産物をさらに発現する、請求項1〜10いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項13】
単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたりP21の0〜20000転写産物をさらに発現する請求項1〜12いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項14】
単離された細胞集団の細胞が18s rRNAの106転写産物あたり
a) 0〜100転写産物;
b) 0〜500転写産物;
c) 0〜1000転写産物;
d) 0〜5000転写産物;
e) 0〜10000転写産物;
f) 0〜15000転写産物;および
g) 0〜20000転写産物
からなる群より選択される数のP21の転写産物をさらに発現する、請求項1〜12いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項15】
30回の集団倍加よりも長くインビトロで培養された請求項1〜14いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項16】
40回の集団倍加よりも長くインビトロで培養された請求項1〜14いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項17】
50回の集団倍加よりも長くインビトロで培養された請求項1〜14いずれか記載の単離された細胞集団。
【請求項18】
請求項1〜17いずれか記載の単離された細胞集団を含む医薬組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−183307(P2009−183307A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126234(P2009−126234)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【分割の表示】特願2003−529923(P2003−529923)の分割
【原出願日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願人】(504107144)ガーネット バイオセラピューティクス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】