説明

CIP用型材

【課題】複雑な形状を有する圧縮成形体を形成することができるCIP用型材であって、取扱いが容易で、均質な圧縮成形体の成形に適したものを提供する。
【解決手段】本発明のCIP用型材1は、圧縮成形用の粉末24を充填するための開口部20を有する容器体12と、前記開口部20を封止する蓋体14とを備え、前記容器体12と前記蓋体14とは、発泡度5〜15倍の熱可塑性の発泡プラスチックから成る自立性のシート状発泡材料から形成され、前記容器体12が、前記シート状発泡材料を加熱して成形された内部形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間静水圧成形法(CIP)に用いる型材に関し、特に人工関節のセラミック部材の成形に用いるCIP用型材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミック部品の製造には、セラミック粉末を圧縮成形し、得られた圧縮成形体を焼成する方法が採用されている。特に、緻密で均質なセラミック部材を得るためには、圧縮成形の時に等方的な圧縮をかけることが重要である。そこで、圧縮成形には、湿式の冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)が好ましく使用されている。湿式のCIPは、液体を圧力媒体として全方位から等方的な圧力を粉体に加圧する成形法であり、粉体を充填したラバー型を圧力媒体中に浸漬し、加圧成形を行う。
【0003】
しかしながら、ラバー型を用いたCIPでは、ラバー型は、加圧により弾性変形して小寸法になるが、減圧すると形状が復元する、いわゆるスプリングバックを起こす。このときに、複雑な形状の圧縮成形体であると、スプリングバックによって縁部の欠損が起こる。特に、セラミック粉末の圧縮成形体は脆いため、欠損だけでなく破壊することもある。そのため、複雑な形状のセラミック部材を作成するときには、(1)単純な形状の圧縮成形体を作成し、所望の形状に切削加工した後に本焼成する、(2)圧縮成形体が脆い場合には、単純な形状の圧縮成形体を作成し、仮焼により硬度を上げてから切削加工し、その後に本焼成する、(3)切削量が少ない場合は、単純な形状の圧縮成形体を作成し、本焼成した後に研削加工を行う、などの加工方法で製造されている。そのため、切削屑として材料の一部が廃棄されてコスト高になる問題と、工程数の増加により製造時間が長くなる問題とがあった。
【0004】
これらの問題を解決するために、ラバー型と粉末との間に別材料を介在させる方法がいくつか提案されている。
第1の解決方法は、BIP(Bingham Semi-solid/fluid Isostatic Pressing)と呼ばれる方法である(例えば非特許文献1参照。)。ラバー型の中に、前もって半固形性物質(ビンガム流体)から成る半固形モールドを成形しておき、そのモールド内に粉末材料を充填する。ラバー型ごとCIPにより加圧すると、半固形モールドは等方的に粉末材料を圧縮するが、このとき半固形モールドは塑性変形するため、減圧してもスプリングバックすることはない。よって、複雑な形状の圧縮成形体を成形することができる。
【0005】
第2の解決方法は、ラバー型の内部に、スプリングバック量の少ない材料から成る内張り層を備えたラバー型を使用する方法である(例えば特許文献1及び特許文献2参照。)。内張り層の材料としては、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム類、発泡スチロールのような発泡材が挙げられている。ラバー型内の内張り層の中に粉末材料を充填して、ラバー型ごとCIPにより加圧すると、粉末材料は等方的に圧縮される。このとき、内張り層がスプリングバック量の少ない材料から形成されているので、減圧時のスプリングバックが少なく、圧縮成形体に与えるストレスを小さくできる。よって、複雑な形状の圧縮成形体を成形することができる。
【0006】
特に、第2の解決方法は、ラバー型から圧縮成形体に不純物が混入することを防止できる利点もある。従来のラバー型は、型の内面に圧縮成形体が直接接触する状態で使用されていたので、ラバーに含まれる成分(例えばイオウ)が圧縮成形体に混入する恐れがある。また、同じラバー型を用いて異なる成分の圧縮成形体を形成することがあるので、先に圧縮成形した粉末がラバー型の内面に残留して、後に圧縮成形した粉末に混入する恐れがあった。これに対して、第2の解決方法によれば、ラバー型の内面に内張り層を形成するので、ラバー型の成分が圧縮成形体に混入することがない。また、1回使用した内張り層は、圧縮成形の際につぶれてしまうので、圧縮成形のたびに新たな内張り層が準備されると推測される。よって、同じラバー型を使用したとしても、内張り層を交換するので、先に圧縮成形した粉末が後の圧縮成形体に混入することはない。
【特許文献1】特公平7−108477号公報
【特許文献2】特公平5−70561号公報
【非特許文献1】津守不二夫、他4名、「半固形静水圧成形法を利用した複雑形状部品の作製」、マテリアルインテグレーション、2003年、第16巻、第8号、P60−64
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、図4に示すような大腿骨コンポーネント44と脛骨コンポーネント46とから構成された人工膝関節42では、大腿骨コンポーネント44にセラミック材料を使用することがある。大腿骨コンポーネント44は、CIP法によってセラミック粉末の圧縮成形体を成形し、圧縮成形体を切削加工により大腿骨コンポーネント44の形状に加工し、その後に焼成して製造される。ブロック状の圧縮成形体から大腿骨挿入部52を削り出すのは容易ではなく、加工時間の多くをこの大腿骨挿入部の形成に費やすことになる。そこで、圧縮成形体を成形する段階で、大腿骨挿入部52に相当する断面凹部を形成することが望まれる。しかしながら、断面凹部を有するラバー型を使用すると、減圧時のスプリングバックによって圧縮成形体が破壊してしまう。
【0008】
断面凹部を備えた圧縮成形体は、上述の2つの方法よって成形することができる。
しかしながら、非特許文献1の方法では、ビンガム流体の形状保持性に不安があるため、半固形モールドは長期間の保管には適さず、また振動のかかる運搬に適さない。そのため、圧縮成形体を製造する場所で、製造する日からそれほど離れていない日に、半固形モールドを製造しなくてはならない。また、ビンガム流体が密度の高い材料であるので、半固形モールドの重量が重くなりやすい。さらに、使用後のビンガム流体の処理が容易ではないという問題もある。
【0009】
また、特許文献1及び特許文献2の方法では、中子を使用して、断面凹部を備えた圧縮成形体を形成することができる。しかしながら、中子を介して圧縮された凹部と、液体の圧力媒体から直接に圧縮された外面とでは、圧力の大きさも、圧力のかかり方も異なっている。その相違は、極めて僅かであるが、人工膝関節のように極めて緻密で且つ均質なセラミック部材を必要とする場合には、無視することができない場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、複雑な形状を有する圧縮成形体を形成することができるCIP用型材であって、取扱いが容易で、均質な圧縮成形体の成形に適したものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のCIP用型材は、圧縮成形用の粉末を充填するための開口部を有する容器体と、前記開口部を封止する蓋体とを備え、前記容器体と前記蓋体とは、発泡度5〜15倍の熱可塑性の発泡プラスチックから成る自立性のシート状発泡材料から形成され、前記容器体が、前記シート状発泡材料を加熱して成形された内部形状を有する。
【0012】
本発明のCIP用型材は、発泡プラスチックから成るので、圧縮成形を行うと不可逆的に塑性変形して、減圧後もスプリングバックしない。また、発泡材料なので軽量であり、プラスチックなので化学的に安定で取扱いやすく長期の保存にも適している。
特に、本発明のCIP用型材は、型材の成形加工とCIP法による圧縮成形体の形成とにおいて、従来の型材よりも有利である。
まず、型材の成形加工では、加熱下での加工法により所望の内部形状を有する容器体を容易に成形できる。特に、シート状発泡材料の発泡度を5〜15倍に規定しているので、成形加工性が高く、割れや切れ等を生じることなく複雑な形状の容器体を成形できる。
そして、CIP法による圧縮成形体の形成では、型材が均一な厚さのシート状材料から構成されているので、圧縮成形体のすべての面に等しく圧力をかけることが可能で、その結果、極めて均質な圧縮成形体を得ることができる。そして、シート状発泡材料の発泡度が5〜15倍であると、CIP法で粉末を圧縮成形するときに、粉末の体積縮小に伴って型材全体も適切に縮小するので、圧縮成形体の表面にシワの跡が残ることがない。そして、型材が自立性を有するので、別部材による支持が不要となり、ラバー型のような自立性の外型を使用せずにCIP法を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明のCIP用型材は、複雑な形状を有する圧縮成形体を形成することができ、取扱いが容易で、均質な圧縮成形体の成形に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2に示すCIP用型材1は、図4に示す人工膝関節42用の大腿骨コンポーネント44を構成するセラミック部材を形成するための型材である。本実施の形態では、大腿骨コンポーネント44よりも大きめに作成し、後に構造を切削加工することを前提とした圧縮成形体を成形するための型材1を示す。
本実施の形態の型材1は、大腿骨コンポーネント44の前壁部分48、後壁部分50及び大腿骨挿入部52に対応して、前壁突条部480、後壁突条部500及び挿入用凹部520を備えている。また、大腿骨コンポーネント44の関節面54の曲面に近似した曲面540も備えている。
【0015】
本発明の型材1は、本体10と封止部14とに大きく分けることができる。
本体10は、平坦なフランジ16と、フランジ16から突出した容器体12を備えている。容器体12及びフランジ16は、ほぼ均一な厚さのシート状発泡材料から、継ぎ目なく一体に形成されている。容器体12は、内部に空洞18を有している。容器体12は、空洞18に粉末を充填するための開口部20を備えており、本実施の形態の型材1では、フランジ16と同じ面内に開口部20が形成されている。
なお、本発明の型材1は、フランジ16を備えない形態にすることもできるが、フランジ16があれば、本体10と蓋体14との固定に利用でき、また、容器体12の空洞18に粉末を充填する際に本体10を支持しやすくなるので、フランジ16を備えるのが好ましい。
【0016】
容器体12の内部形状、すなわち空洞18の寸法形状は、成形したい圧縮成形体の外部形状に対応するように形成されている。
空洞18は、CIP法による圧縮成形を行うと寸法が縮小し、その縮小後の空洞18の寸法形状が、得られる圧縮成形体の外形の寸法形状となる。よって、空洞18の寸法形状は、圧縮成形による収縮率を考慮して決定しなくてはならない。収縮の程度は、用いる粉末の種類、粉末の充填の程度、及び圧縮成形時に使用する圧力等によって相違するので、それぞれの条件による収縮率を見積もって空洞18の寸法を決定するのがよい。
また、圧縮成形体の焼成時にも収縮が起こるので、焼成による収縮も考慮して、空洞18の寸法を決定するのがよい。
本発明のCIP用型材を利用すると、ニアネットシェープにより圧縮成形体を製造できることから、空洞18の寸法形状は、圧縮成型時の収縮と焼成による収縮とを考慮して決定すべきである。
【0017】
フランジ16の一端には、シート状の蓋体14が接続されている。この蓋体14を折り曲げてフランジ16に重ねることにより、開口部20を封止する。
蓋体14は、フランジ16と接触する面が平坦であってもよいが、特に、開口部20に嵌め込むための嵌込み部22を備えているのが好ましい。嵌込み部22は、適当な高さで突出した凸部であり、その正面形状は、開口部20の内縁の形状と同形状にされている。この嵌込み部22の突出方向が開口部20に向くように、蓋体14とフランジ16とを対向させて重ねれば、嵌込み部22を開口部20の内縁20に係合できるようになっている。嵌込み部22を備えることにより、蓋体14が開口部20を封止する封止機能を高めることができる。嵌込み部22の突出高さは任意であるが、高すぎると嵌め込みにくく、低すぎると開口部20の内縁に係止しないので、適当な高さに調節するのが好ましい。通常は、5〜20mm程度の高さが好適である。
なお、図示した蓋体14は、フランジ16と一体にされているが、切り離されて別体にされていても構わない。
【0018】
本体10及び蓋体14は、熱可塑性の発泡プラスチックから成るシート状発泡材料から形成されている。発泡プラスチックの材料物性を示す指標の1つに、「発泡度」がある。発泡度とは、発泡工程を経ることにより、材料の体積が何倍に膨張したかを示す指標であり、発泡後の材料の比体積を発泡前の比体積で除して求めることができる。一般に発泡プラスチックの発泡度は5〜100倍であるが、本発明では、発泡度5〜15倍の発泡材料が好ましい。発泡度が5倍未満であると、加熱下での型材1の加工性が低下し、複雑な形状の容器体12を形成するのが困難になる。また、型材1が縮小しにくくなるので、粉末の圧縮成形時に型材が縮小せず、シワを生じてしまう可能性が高くなる。そして、発泡度が15倍より高いと、シート形状にしたときの発泡材料の強度が低くなり、自立性の型材1を形成するのが難しくなる。
【0019】
本発明の型材1に使用するシート状発泡材料には、ポリスチレンペーパー(PSP)、発泡ポリプロピレンシート及び発泡ポリエチレンシート等の発泡プラスチックのシートが利用できる。特に、本発明のようなディスポーザブルな型材を製造する材料としては、ポリスチレンペーパーが好ましい。ポリスチレンペーパーは、高温下での物性が加熱下での成形加工に適しているので複雑な形状に成形しやすく、また、表面が平滑なので、空洞18に粉末を充填しやすく、圧縮成形後の離型性にも優れている。そして、工業的に広く製造されているので比較的安価で入手可能であり、燃やしても有毒ガスが発生しないので、使用後の処理も容易である。
【0020】
シート状発泡材料の厚さは、1〜10mmであるのが好ましい。1mm未満であると、自立性のある型材1を形成するのが困難になり、外型が必要になるので好ましくない。また、10mmより厚いと、加熱下での加工性が劣化して、複雑な形状の容器体12を形成しにくくなるので好ましくない。
【0021】
本発明の型材1は、CIP法において液体の圧力媒体が圧縮成形体にまで浸入しないように、型材1全体をビニルシートなどの可撓性防水シートで覆うことができる。防水シートには、型材1の表面に密着できる程に軟質で、スプリングバックを起こさない非弾性材料であることが求められる。よって、本発明では、防水シートとしてラバーシートを使用するのは好ましくない。なお、防水シートを型材1に密着させる際には、防水シートに多少のシワが寄っても、圧縮成形体に悪影響を与えることはない。
【0022】
本発明の型材1が防水性に優れている場合、すなわち、シート状発泡材料が独立気泡を有する防水性であり、且つ容器体12の空洞18に粉末を充填した後に蓋体14で完全に密封できれば、防水シートを使用することなく、型材1を圧力媒体中に直接投入することが可能になる。例えば、嵌込み部22を開口部20の内縁に嵌め込み、且つ防水性に優れた接着剤によって開口部20の周囲及びフランジを接着すれば、密封性を高めることができる。このように型材単独で圧縮成形可能であれば、ラバー型やビニルシートにかかるコストを削減でき、且つ製造時の作業を簡略化できる。
【0023】
型材1の本体10や蓋体14の嵌込み部22を継ぎ目なく成形するには、加熱下による成形加工が最適である。従来から知られている熱可塑性樹脂シートの成形加工技術を使用することができる。以下に成形加工の一例を説明する。
商業的に入手可能なシート状発泡材料は、長く巻き取った原反、又は所定の寸法に切り取ったボード状である。このシート状発泡材料をヒーターで均一に加熱軟化した後に、突出した容器体12の形状を有する型に押しつけ、さらに、空気圧の差(通常は型のある側から真空に吸引する)により型に密着させる。その後にシートを冷却することにより、容器体12を備えた型材1を形成することができる。
【0024】
以下に、図3を参照して、本発明のCIP用型材1を使用した圧縮成形体の成形方法を説明する。
圧縮成形体を形成するための粉末24(例えばセラミック粉末)を、容器体12の開口部20から空洞18の中に充填する(図3(A)参照)。適度に圧迫しながら所定量の粉末24を充填したら、蓋体14を折り曲げてフランジ16に重ねて、開口部20を封止する。蓋体14が嵌込み部22を有している場合には、嵌込み部22を開口部20から空洞18内に嵌め込み、開口部20の内縁に係止させることができる。さらに、蓋体14とフランジ16とを接着剤で接着することもできる。
封止が完了した型材1をビニル袋(図示せず)の中に入れ、ビニル袋の内部を真空に吸引してビニル袋を型材1に密着させ、そしてビニル袋の口を封止する。
【0025】
ビニル袋に入れた型材1は、CIP用加圧装置60の高圧容器62内に配置され、液体の圧力媒体64によって静水圧をかけられる(図3(B)参照)。型材1への加圧及び減圧は、高圧容器62に開口した穴Hを介して圧力媒体の液圧を制御することにより行われる。所定圧力下で所定時間の圧縮加工が行われた後、圧力媒体の液圧を減圧する。
【0026】
圧力媒体64の減圧が完了したら、ビニル袋から型材1を取り出し、さらにその中の圧縮成形体26を取り出す(図3(C)参照)。このとき、型材1は、紙片状に薄くなっており、また手で簡単に破ることができる。そのため、型材1を破りながら剥離して、圧縮成形体26を取り出してもよい。
得られた圧縮成形体26は、切削工具による切削加工が可能な程度の硬度を有していることと、また焼成後のセラミック焼結体は極めて高硬度で、通常の工具では切削不能(代わりに研削で加工する)になることから、焼成前の圧縮成形体26の段階で、所望の形状(本実施の形態では、人工膝関節用の大腿骨コンポーネント44)に切削加工をするのが望ましい。
【0027】
なお、圧縮成形体1に付着した型材1は、意図的に剥離しなくても、その後の工程によって実質的に剥離すること、又は消失させることができる。
例えば、型材1が付着した状態で圧縮成形体26を切削加工することができる。型材1は、圧縮成形体26や切削工具に比べて硬度が低いので、圧縮成形体26に付着したまま切削加工が可能である。もし、切削加工後の圧縮成形体26に型材1が残留した場合には、手や器具により剥離してもよいが、そのまま圧縮成形体26を焼成するのが最も簡便である。圧縮成形体26に付着した型材1は、焼成工程において燃焼し消失する。
また、圧縮成形体26の切削が不要な場合には、型材1が圧縮成形体26の全体に付着した状態で焼成して、型材1を燃焼させ消失させることもできる。
【0028】
圧縮したままの、又は所望形状に切削加工した圧縮成形体26を、1段階又は2段階で焼成することにより、セラミック焼結体が得られる。セラミック焼結体は、必要に応じて研削加工により形状を整え、表面を鏡面仕上げすることができる。例えば、大腿骨コンポーネント44では、大腿骨関節面54を鏡面加工して、摺動性を高めている。
【0029】
本実施の形態では、従来では圧縮成形体26を削って形成していた挿入用凹部520が、圧縮成形体26を成形できるので、大腿骨挿入部52を形成するにあたり、従来に比べて切削量を格段に減少させることができ、複雑な形状のセラミック部材の加工時間を半減することができる。
【0030】
このように、本発明の型材1を用いることにより、スプリングバックで破壊してしまう複雑な形状の圧縮成形体を形成することができる。また、圧縮成形体の全体を、極めて均一な圧力によって成形できるので、従来の方法に比べて均質な圧縮成形体を得ることができる。
また、本発明はラバー型を使用しないので、ラバー型に含まれる成分が圧縮成形体に混入する恐れがない。また、本発明の型材1は、1回使用のディスポーザブルタイプの型材であるので、使い回しするラバー型で懸念されるような「先に圧縮成形した粉末が後に圧縮成形した粉末に混入する」という可能性は、全くない。また、ラバー型の劣化を促進する原因となる超高圧による圧縮成形も、何ら気にせずに行うことができる。よって、本発明の型材は、人工関節用部材のように、不純物の混入が許されず且つ緻密なセラミック部材が求められる部品の製造に最適である。
【実施例1】
【0031】
厚さ2mm、発泡度10倍のポリスチレンペーパーから、図1に示すような大腿骨コンポーネント用のCIP用型材1を成形した。型材1の寸法は、容器体12の空洞18の深さdが10cm、曲面540の曲率半径が約5cm、挿入用凹部520は、前壁突条部480と後壁突条部500の間の幅wが約6cm、前壁突条部480から挿入用凹部520の底までの高さtが約4cmであった。また、蓋体14には、嵌込み部22を有さない平坦なものを使用した。
【0032】
圧縮成形用の粉末24には、ジルコニアを使用し、容器体12の空洞18に粉末24を入れ、型材1に振動を与えることにより、粉末24を適度な充填率で充填した。蓋体14で封をした後に、型材1をビニル袋に入れ、袋の内部を真空に吸引してビニル袋を型材1に密着させた後、袋を封止した。
ビニル袋入りの型材1をCIP用加圧装置60の高圧容器62に入れ、水を圧力媒体に使用して、圧力1tonで数分間維持して、CIPを行った。
得られた圧縮成形体は、割れや欠損はなかった。また表面が滑らかであった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかるCIP用型材の概略斜視図である。
【図2】本発明にかかるCIP用型材の概略斜視図である。
【図3】本発明にかかるCIP用型材を用いたCIP法の手順を示す概略図である(A〜C)。
【図4】人工膝関節の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 CIP用型材、 10 型材の本体、 12 容器体、 14 蓋体、 16 フランジ、 18 空洞、 20 開口部、 22 嵌込み部、 24 粉末、 26 圧縮成形体、 42 人工膝関節、 44 大腿骨コンポーネント、 46 脛骨コンポーネント、 48 前壁部分、 50 後壁部分、 52 大腿骨挿入部、 54 大腿骨関節面、 56 脛骨関節面、 60 CIP用加圧装置、 62 高圧容器、 64 液体の圧力媒体、 480 前壁突条部、 500 後壁突条部、 520 挿入用凹部、 540 曲面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮成形用の粉末を充填するための開口部を有する容器体と、前記開口部を封止する蓋体とを備え、
前記容器体と前記蓋体とは、発泡度5〜15倍の熱可塑性の発泡プラスチックから成る自立性のシート状発泡材料から形成され、
前記容器体が、前記シート状発泡材料を加熱して成形された内部形状を有するCIP用型材。
【請求項2】
前記蓋体が、前記開口部に対応する位置に嵌込み部を備え、
前記嵌め込み部は、前記開口部の形状と同一の正面形状を有する突出部分であり、
前記蓋体により前記開口部を封止したときに、前記嵌め込み部が前記開口部の内縁と係合して前記開口部を封止することを特長とする請求項1に記載のCIP用型材。
【請求項3】
前記シート状発泡材料が、独立気泡を有する防水性材料であり、
前記容器体と前記蓋体とが完全密封可能にされていることを特長とする請求項1又は2に記載のCIP用型材。
【請求項4】
前記シート状発泡材料が、ポリスチレンペーパーであることを特長とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のCIP用型材。
【請求項5】
前記シート状発泡材料の厚さが1〜10mmであることを特長とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のCIP用型材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−49496(P2008−49496A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225547(P2006−225547)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】