説明

CL−20のモノアミンおよびジアミン誘導体

本発明は、ヘキサ−ニトロ−ヘキサアザイソヘキサウルチタン(CL−20)の新規なモノアミンおよびジアミン誘導体の合成を記載する。この合成は、アシル化されたCL−20前駆体の第2級アミン基をニトロリシスに対して保護するための、フルオロアシル化化合物の新規な使用により実施される。こうして、CL−20のモノアミンおよびジアミン誘導体を得て、次に、これを中間体として利用して、親化合物と異なる物理的および化学的性質をもつさらなる新規な誘導体を生成させることができる。式(I)(X=H、Y=HまたはNO)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CL−20の誘導体の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
爆発性の、2,4,6,8,10,12−ヘキサニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(hexaazaisowurtzitane)は、CL−20として知られており、エネルギー密度が高い爆薬(explosive)であるが、いくつかの用途には、余りにも高感度である。その純粋な形においては、それは砕けやすいので、爆発事故を起こし得るCL−20の粉末と粉塵を放出する。
【0003】
このような突発事故の可能性を減らすために、爆薬の結晶は結合剤で被覆される。結合剤により、爆薬組成物を望みの形状にし、その感度を低下させることができる。しかし、特定の状況において爆薬と結合剤の相互作用は弱く、その場合には、被覆物がCL−20結晶から分離する傾向がある。
【0004】
1つの解決策は、混合物の感度を低下させるために、CL−20と、より低感度であるが、やはり爆発性の化合物を混合することである。このやり方で、CL−20を、ジニトロテトラオキサジアザシクロドデカン(TEX)と混合して、CL−20より低感度の混合物が得られている(K.E.Lee他,“An insensitive alternative to pressed explosive LX−I4(圧縮爆薬LX−14の低感度代替品)”,pg.38,National Defense Industrial Association(米国国防産業協会),2000,Insensitive Munitions and Energetic Materials Technology(低感度弾薬と火薬技術),November 27th−30th 2000,San Antonio,Texas)。
【0005】
別の解決策は、ニトロヘキサアザイソウルチタン残基を保持したままで、CL−20の化学構造の修飾を見出すことである。これは、CL−20前駆体誘導体を生成させる経路を見出すことができないために、今まで、未解決の課題である。
【0006】
本出願人は、この問題を、フルオロアシル化化合物を用いる、強いニトロ化剤に対する選択的保護による、CL−20のモノアミンおよびジアミン誘導体の化学合成を通じて解決し、続いてさらに化学修飾された誘導体を生成させる手段を提供する。本出願人は、本明細書において、CL−20の、新しいペンタ−ニトロヘキサアザイソウルチタン誘導体とテトラ−ニトロ−ヘキサアザイソウルチタン誘導体を記載する。この合成経路により、保護されたポリニトロヘキサアザイソウルチタン残基を選択的にニトロ化し、脱保護して、次の化学誘導のための遊離アミンサイトを露出させることが可能である。
【0007】
WardleとHinshawは、英国特許出願2333292 Aにおいて、2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンをニトロ化すると、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンが得られることを記載する。本出願人等は、それに記載されている請求範囲を確証できなかったし、また、英国特許出願2333292 Aの執筆者は、この化合物の合成方法について実験の詳細を全く記載していないことを注意しておく。比較例が下に記載される。
【0008】
Chung他,J.Heterocyclic Chem.,vol.37,1647,2000、は、英国特許出願2333292 Aに記載された方法による、2,6,8,10,12−ペンタアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンのニトロ化により、CL−2が生成することを開示する。これは、本出願人により、下に記載される比較例において確認される。これらの比較例は、WardleとHinshawにより特許請求されたニトロ化は実施され得ないことを支持する証拠となる。仮にWardleとHinshawが正しいとすると、その比較例において示される、試みられたニトロ化は、ヘキサ−ニトロ誘導体でなくペンタ−ニトロ誘導体を生じたであろう。これは、観察されなかった。
【0009】
H.Bazaki他,Propellants,Explosives,Pyrotechnics 23,333−336(1998)(p.333の2項とp.334の3.1項)は、ニトロ化剤と、ヘキサベンジルヘキサアザイソウルチタン(特開平08−208655の方法により合成された)製品から合成された前駆体とを用いる、AC−HNIWの調製は、不純物として、PNIW(モノ−アミノ−ペンタニトロ−ヘキサアザイソウルチタン(本明細書においてモノ−アミン誘導体として参照される))を生じることを開示する。しかし、この論文は、化合物(PNIW)の生成と分離についても、さらに言えばそれの生成方法についても、実施可能な程度の開示を全く記載していない。
【0010】
Hamilton他は、ジアミン誘導体である、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンを生成させるために、2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンのニトロリシスを用いることを示唆した(ICT Conference on Energetic Materials(火薬に関するICT会議),Karlsruhe,Germany,2000,21−1〜21−8)。しかし、本出願人等は、彼らの示唆した経路により、ジアミン誘導体を生成させることができなかった。比較例は下に記載される。
【0011】
WangとChenは、ヘキサアザイソウルチタンのN−ニトロ誘導体の生成熱についてだけ理論的研究を記載した(Huoyao Jishu(1993),9(2),35−43)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、本出願人の知る限り、本明細書に記載される、モノ−アミンおよびジアミン誘導体の合成は従来技術には存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって、式(I)の化合物が提供される。
【0014】
【化4】

(式中、
X=Hであり、
Y=HまたはNOである。)
【0015】
式(I)の化合物は、それ自体爆薬である、あるいは、これらを、爆薬およびそれらの組成物の調製の前駆体および/または中間体として用いることができる。衝撃感度研究(Rotter衝撃試験、5kg)は、モノ−アミン誘導体の不感度指数の値(Figure of Insensitiveness)が約16であり、ジ−アミン誘導体の値が約12であることを示している。
【0016】
比較的簡単な化学を用いて、ポリ−ニトロ−ヘキサアザイソウルチタン残基を続いて修飾できるようにする親分子と異なる化学的および物理的性質を有するCL−20の誘導体を生成させるために、この残基のn−4およびn−10位の一方または両方へ遊離アミン基を導入する。
【0017】
n−4およびn−10サイトの反応性により、式(I)の化合物から誘導体が合成され得ることを例示するために、具体例が下に示される。誘導化学の広がりは、当業者により期待されているものより実際には限定されていることが出願人には分かったが、言うまでもなく、構造上の可能性は非常に広範である。
【0018】
式(I)の化合物から合成されるポリ−ニトロ誘導体は、化合物内のニトロ基の化学量論的な比が大きいことから、エネルギーリッチであろう。しかしながら、これらの誘導体は、それら自体では爆発性材料でないかもしれないが、それらは、それらが誘導されたCL−20に比べて、修飾された化学的および物理的性質を有している。
【0019】
誘導体のエネルギー的性質の概念に基づくさらなる応用と組立てにおいて。ヒドロキシ末端ポリブタジエン(HTPB)のような不活性結合剤、あるいは、ポリ−NIMMOとして知られているポリ−(3−ニトラトメチル−3−メチルオキセタン)のような高エネルギー結合剤と誘導体とを化学的に結合させて新しい爆薬組成物を生成できることは明らかである。やはり、これらの新しい組成物は、CL−20自体と比べて、爆発挙動は修飾されているであろう。
【0020】
式(II)の化合物から出発して、式(I)の化合物を合成する経路が提供される。
式(II)は、
【0021】
【化5】

からなり、
X=Y=Hであり、または
X=Ac、およびY=Hであり、
AcはCOCH、COCHR(R=C〜C10アルキル(線状、分岐状)、−CH−C、C〜C10アリールアルキル)であり、
合成経路は以下の逐次ステップ;
(1)n−4および/またはn−10位の(複数の)非アシル化第2級アミン基を保護するためのフルオロアシル化ステップ、次の、
(2)ステップ(1)の生成物のニトロリシスステップ、次の、
(3)ステップ(2)の生成物のソルボリシスによる脱保護ステップ、
を含む。
【0022】
式(II)の出発材料の合成は、WO9623792およびEP 0753519に見出される。
【0023】
ステップ(1)は、アセチル化されていない(n−4およびn−10位の)第2級アミン基の少なくとも1つをフルオロアシル化試薬と反応させることにより実施される。特定の実施形態において、フッ素化アシル試薬は、無水トリフルオロ酢酸、あるいは、トリフルオロ酢酸と無水トリフルオロ酢酸との混合物のようなトリ−フルオロアシル化化合物、あるいは、無水ペンタフルオロプロピオン酸のようなペンタフルオロ無水物、あるいは、CFCOClである。
【0024】
n−4およびn−10位の窒素原子を保護する基として使用される場合に、トリフルオロアセチル基は、ヘキサアザイソウルチタン化合物のニトロリシスに対する優れた保護となる。実際、遊離アミン基の窒素原子の保護基を生成する手段としてトリフルオロアシル化を用いることによって、この経路により式(I)の化合物を合成することが可能になる。
【0025】
フルオロアシル化剤の選択に応じて、非選択的に、または選択的に、フルオロアシル化を実施できることが見出された。このことを、転じて、最終目的生成物のアミンの化学量論組成を選択するために利用することができる。トリフルオロ酢酸は、式(II)のジ−アミン誘導体を完全にフルオロアシル化することが見出され、一方、トリフルオロ酢酸と無水トリフルオロ酢酸との混合物はn−4またはn−10の第2級アミンの1つだけを選択的にフルオロアセチル化することが見出された。
【0026】
ステップ(2)は、濃硝酸と濃硫酸または、硝酸/発煙硫酸(oleum)のような別のニトロ化剤を用いて、ステップ(1)の生成物のニトロリシスにより実施される。当業者は、これらに限定されないが、N(五酸化二窒素)、ならびに、NOBFとNOBFのような他のよく知られたニトロ化剤により、このニトロリシスは同様に効果的に実施されるであろうということを理解するであろう。
【0027】
ステップ(3)は、エタノール(および、場合によっては酢酸ナトリウム)のようなアルコールを用いる、ステップ(2)において生成した化合物のソルボリシスにより実施される。ソルボリシスは、メタノールまたはプロパノールのようなアルコール、ならびに水の使用によっても同様に実施され得るであろう。当業者は、例えばプロピオン酸ナトリウムとエタノールのような、カルボン酸塩とアルコールとの組合せを用いてもまたソルボリシスを実施できるであろうということを理解するであろう。
【0028】
工業的な実施においては、モノ−アミン誘導体またはジ−アミン誘導体の合成を、1つの出発物質から開始することが商業的には望ましいであろう。X=Y=Hである式Iの化合物が出発物質である場合には、テトラ−ニトロ誘導体またはペンタ−ニトロ誘導体のいずれかを生成する手段が、それぞれ、完全な、または選択的なソルボリシスにより得られる。
【0029】
テトラ−ニトロ誘導体の完全なソルボリシスを成し遂げるために、酢酸ナトリウム(または他のカルボン酸塩)が、ソルボリシスを実施するために必要とされる(すなわち、より強い条件が必要とされる)。ペンタ−ニトロ誘導体のソルボリシスは、酢酸ナトリウム(または他のカルボン酸塩)を必要としない。テトラニトロ誘導体の選択的ソルボリシスを実施することが望ましい場合には、エタノールまたの他のアルコールのみが用いられるべきである。
【0030】
さらに、X=Y=Hである場合において、上の3ステップの合成経路により、アシル化剤の強さに応じて、テトラ−ニトロヘキサアザイソウルチタン誘導体(テトラ−ニトロ誘導体)またはペンタ−ニトロ誘導体のいずれかが生成する。無水トリフルオロ酢酸のような強いフルオロアシル化剤を使用すると、ジ−アミン出発物質が完全にアシル化され、一方、トリフルオロ酢酸と無水トリフルオロ酢酸のような、より弱いフルオロアシル化剤を使用すると、ジ−アミンを部分的にのみアシル化してモノ−アミンを生成するであろう。前者の場合において、次のニトロリシスとソルボリシスによりペンタ−ニトロ誘導体が生成し、後者の場合には、テトラ−ニトロ誘導体が生成するであろう。
【0031】
やはり、式(I)においてX=Y=Hである場合に、ペンタ−ニトロ誘導体を生成する別の方法は、合成経路に、ステップ(1)の前に、さらにアシル化ステップを付け加えることである。この様にすると、ジ−アミン出発物は、アセチル化モノ−アミン中間体(すなわち、X=H、Y=Ac)に変換される。
【0032】
こうして、アシル化誘導体を生成させるための、ステップ(1)の前のさらなるアシル化ステップが提供され、そのステップにおいては、テトラ−アシル化ジ−アミン出発物質がアシル化されてペンタ−アシル化モノ−アミン中間体が生成する。
【0033】
このアシル化ステップは、X=Y=Hである式(I)の化合物を、無水酢酸と酢酸(AcOH/AcO)のようなアセチル化剤と反応させることにより都合よく実施され得る。当業者は、アシル無水物(acyl anhydride)、酸無水物および酸塩化物のような他の通常のアシル化剤は、同様にこの反応を実施するために使用され得るであろうということを理解するであろう。
【0034】
式(I)において、X=Y=Hである場合に、ペンタ−ニトロ誘導体を生成させる別の手段は、ステップ(2)とステップ(3)の間に、さらなるソルボリシスステップ(ステップ5)と、その後のさらなるニトロリシスステップ(ステップ6)を付け加えることである。
【0035】
こうして、反応の組立てにさらに2つのステップが付加され、ステップ(2)の後であってステップ(3)の前に次の2つの連続したステップが付け加えられる:
(5)ステップ(2)の生成物がソルボリシスにより選択的に脱保護されるステップ、次の、
(6)ステップ(5)の生成物のニトロリシス。
【0036】
ステップ(5)の選択的脱保護は、エタノールを用いることにより実施され得るが、ソルボリシスによる選択的脱保護は、メタノールまたはプロパノールのようなアルコール、ならびに水を用いても同様に実施され得るであろう。
【0037】
ステップ(6)は、濃硝酸と硫酸、あるいは、硝酸/発煙硫酸のような別のニトロ化剤を用いることにより実施され得る。当業者は、NまたはNOBFとNOBFのような他のニトロ化剤はこのニトロリシスを同様に効果的に実施するであろうということを理解するであろう。
【0038】
式(I)の化合物を、ポリ−ニトロ−ヘキサアザイソウルチタン残基から誘導される化合物製造の中間体または前駆体として使用することができる。n−4および/またはn−10位の遊離アミン基は、これらのアミンサイトが他の試薬との置換および付加反応に関与することを可能にしている。
【0039】
このような誘導化合物は、それら自体、爆発性または非爆発性であり得るが、ほとんどの例において、それらは、爆薬として使用される材料に組み込まれるのに十分な高いエネルギーをもつであろう。
【0040】
これらの化合物は最初に期待されていたよりも反応性が低いので、式(I)から生成物を誘導する可能性は最初に期待したよりも範囲が限られている。例えば、これらのモノ−アミンおよびジ−アミン誘導体は、ハロゲン化アルキル、または臭化ベニルのようなハロゲン化フェニルと反応しないことが見出された。さらに、アセチル化には硫酸の存在が必要であった。
【0041】
こうして、式(III)の化合物が提供される。
【0042】
【化6】

式中、
およびRは独立に以下から選択される:
〜C10アルキル、C10アルキルアリール、CH−C
〜C10ポリエーテル、C〜C10フッ素化ポリエーテル、C〜C10フッ素化アルキル、CH−C
COR’(R’=C〜C10アルキル、COCl、COCCl
CONHR”(R”=H、C〜C10アルキル、COCl、COCCl
C(O)C2m2p+1(mおよびpは整数であり、1乃至19の範囲から独立に選択され、m+pは20以下である。)
COCF
【0043】
式(I)の化合物をハロゲン化アシル(例えば、臭化アシルまたは塩化アシル)と反応させることを含む、式(I)の化合物から出発する、式(III)の化合物への合成経路が提供される。
【0044】
ハロゲン化アシルには、C〜C10アルキルハロゲン化アシル、C〜C10アルキルアリールハロゲン化アシル、CH−アリールハロゲン化アシル、
ならびに、R−ハロゲン化アシル(ここでRには以下が含まれる:
〜C10ポリエーテル、C〜C10フッ素化ポリエーテル、C〜C10フッ素化アルキル、CH−フッ素化フェニル、
COR’(R’=C〜C10アルキル、COCl、COCCl
CONHR”(R”=H、C〜C10アルキル、COCl、COCCl
C(O)C2m2p+1(mおよびpは整数であり、1乃至19の範囲から独立に選択され、m+pは20以下である。)およびCOCF。)
が含まれ得る。
【0045】
特定の実施形態において、アルキルハロゲン化アシルは塩化アセチルである。
【0046】
式(I)化合物をアシル無水物と反応させることを含む、式(I)の化合物から出発する式(III)の化合物の合成経路が提供される。
【0047】
アシル無水物には、C〜C10アルキルアシル無水物、C〜C10アルキルアリールアシル無水物、CH−アリールアシル無水物、およびR−アシル無水物(ここで、Rには、C〜C10ポリエーテル、C〜C10フッ素化ポリエーテル、C〜C10フッ素化アルキル、CH−フッ素化フェニルが含まれる)、ならびに、Rアシル無水物(ここで、Rには、以下が含まれる:
COR’(R’=C〜C10アルキル、COCl、COCCl)、
CONHR”(R”=H、C〜C10アルキル、COCl、COCCl)、
C(O)C2m2p+1(mおよびpは整数であり、1乃至19の範囲から独立に選択され、m+pは20以下である。)およびCOCF。)
が含まれ得る。
【0048】
特定の実施形態において、アシル無水物は無水酢酸である。
【0049】
式(I)化合物をイソシアネートと反応させることを含む、式(I)の化合物から出発する式(III)の化合物の合成経路が提供される。
【0050】
特定の実施形態において、このイソシアネートは、N−(クロロカルボニル)イソシアネートまたはトリクロロアセチルイソシアネートである。
【0051】
さらなる実施形態において、式(III)の化合物をイソシアネートと反応させた後、その生成物を、さらに、クロロカルボニルアセテートおよびアルコールと反応させてヘキサアザイソウルチタンのウレタン誘導体を生成させることができる。
【0052】
特定の実施形態において、アルコールはメタノールまたはエタノールである。
【0053】
これから、本発明は、実施例により、また図を参照して説明される。
【0054】
図1は、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による合成経路(反応スキーム1)を示す図である。
図2は、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による合成経路(反応スキーム2)を示す図である。
図3は、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による代替の合成経路(反応スキーム3)を示す図である。
図4は、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による代替の合成経路(反応スキーム4)を示す図である。
図5は、無水トリクロロ酢酸を用いる、モノ−アミンまたはジ−アミン誘導体のアセチル化の合成経路(これらの反応は濃硫酸の添加により触媒されなければならない)を示す図である。
図6は、ジ−アミン誘導体から出発し、試薬としてイソシアネートを用いる、CL−20のアミド誘導体の合成経路を示す図である。
図7は、モノ−アミン誘導体から出発し、試薬としてイソシアネートを用いる、アミドクロリドまたはアミド(さらなるメタノリシスによる)の合成経路を示す図である。
図8は、ジ−アミン誘導体から出発し、試薬としてイソシアネートを用いる、アミドクロリドまたはアミド(さらなるメタノリシスによる)の合成経路を示す図である。
図9は、試薬としてイソシアネートを用い、モノ−アミンまたはジ−アミンから出発して、それぞれモノ−アミドまたはジ−アミドを生成する、アミドの合成経路を示す図である。
図10は、CL−20がジアミンのニトロリシスによりどのように生成するかを示す図である。
【0055】
式(I)の化合物の合成
反応スキーム1
(a)2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの合成
この反応は3つのステップを含む。
【0056】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(A)からの、2,6,8,12−テトラアセチル−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(B)の調製、
(2)2,6,8,12−テトラアセチル−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(B)のニトロ化による、2,6,8,12−テトラニトロ−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(C)の生成、および
(3)2,6,8,12−テトラニトロ−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(C)からの2つのトリフルオロアセチル基の除去による、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(D)の生成。
【0057】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(B)の調製
化合物A(6.0g)を無水トリフルオロ酢酸(30ml)に懸濁させ、38℃で48時間撹拌した。24時間後に分取し、分析した試料により、反応がこの段階で完了したことが示された。過剰の無水物をロータリーエバポレータで除去してピンク−白色の固体を得た。この固体をクロロホルムに溶かし、蒸発させて乾かし、次いで、この過程を繰り返した。得られた固体を減圧下に50℃で8時間乾燥させて、9.62gを得た。粗収率は102%であった。
【0058】
NMRおよびIR分析により、得られた固体が化合物(B)であることが示された。
【0059】
H NMR(DMSO−d6):δ2.06(広幅s,12.4H,4×COCH)、6.63〜7.00ppm(m,6.0H,6×CH)。
19F NMR:δ66.52および66.88ppm。
【0060】
(2)2,6,8,12−テトラニトロ−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(C)の調製
SOが30%の発煙硫酸(fuming sulphuric acid)(5.0ml)を99.5%の硝酸(30.0ml)に滴下することにより、ニトロ化用の酸を調製した。氷/水の浴を用いて、添加過程の間、反応混合物の温度を15℃未満に保った。次に、混合酸を5℃まで冷却して、その後、激しく撹拌しながら、固体漏斗を通して粗化合物B(7.0g)を素早く添加した。化合物(B)の全てが溶解したら、その溶液を50℃で4時間加熱した。この時点での試料のTLC分析により、ニトロ化が不十分な生成物の存在が示されたので、60℃でさらに1.5時間、加熱を続けた。溶液の加熱を止め、氷/水の混合物(500ml)に投入した。生成した沈殿を濾過により取り出し、洗浄液が中性になるまで水で洗い、次に、真空デシケータ内で一夜乾燥して微細な白色固体を得た(6.59g、粗収率は92%)。
【0061】
NMRおよびIR分析により、得られた固体が化合物(C)であることが示された。
【0062】
H NMR(DMSO−d6):δ7.31〜7.41(m,3.6H,4×CH)、8.01ppm(s,2.0H,2×CH)
19F NMR:δ67.24から66.7ppm(m)。
【0063】
(3)2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(D)の調製
粗化合物(C)(0.8g)を、予め調製した酢酸ナトリウム(140mg)の無水エタノール(14ml)溶液に加えた。粗化合物(C)が溶解した後、沈殿が直ちに生成し、混合物が黄色に着色した。撹拌をさらに10分間続け、次に、析出物を濾別し、水で洗い、真空デシケータ内で一夜乾燥して白色固体を得た(303mg、収率は58.7%)。
【0064】
NMRおよびIR分析により、得られた固体が化合物(D)であることが示された。DSC(10K/min)により、183℃で分解が開始することが示された。これらのDSC条件では、爆発性の発熱は全くなかった。このことは、化合物(D)が、CL−20に比べて、熱的に安定な爆薬であることを示している。
【0065】
H NMR(DMSO−d6):δ5.44(s,1.9H,2×NH)、6.28(s,4.1H,4×CH)、7.57ppm(s,2.0H,2×CH)。
13C NMR(アセトン−d6):δ72.48、72.98ppm。
1H−13C相関:5.44ppm(H−4,H−10)(カップリングなし)、6.28(H−3,H−5,H−7,H−9)(72.48 9C−3,C−5,C−7,C−9)にカップリング)、7.57ppm 9H−1,H−11)(72.98(C−1,C−11)にカップリング)
【0066】
反応スキーム2
(b)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの合成
反応は4つのステップを含む。
【0067】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(A)からの、2,6,8,10,12−ペンタアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(E)の調製;
(2)2,6,8,10,12−ペンタアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(E)からの、2,6,8,10,12−ペンタアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(F)の調製;
(3)2,6,8,10,12−ペンタアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(F)のニトロ化による、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)の生成;および
(4)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)からのトリフルオロアセチル基の除去による、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(H)の生成。
【0068】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
氷酢酸(15ml)と無水酢酸(10ml)の混合物中の化合物(A)(1.0g)の懸濁液を60℃で12時間撹拌した。過剰の酢酸/無水酢酸混合物をロータリーエバポレータで除去した(60℃)。残った反応混合物を減圧下に60℃で6時間乾燥して白色固体を得た。この固体をメタノール(200ml)でスラリとし(60℃)、高温濾過した。フィルタに残った固体を回収し、同様にして、さらに2回高温メタノールで抽出した。抽出液を合わせ、メタノールをロータリーエバポレータで除去し、残った白色(僅かに着色)固体を減圧下に50℃で乾燥した(6.7g、粗収率は99.5%、融点は302〜304℃(DSC、ex metanol)。
【0069】
NMRおよびIR分析により、得られた固体は化合物(E)であることが示された。
【0070】
H NMR(DMSO−d):δ1.90〜2.04(m,12.0H,4×COCH)、2.18〜2.31(m,3.1H,COCH)、4.66〜4.85(m,0.8H,NH)、5.55〜5.58(m,1.9H,2×CH)、6.21〜6.77ppm(m,4.0H,4×CH)。
【0071】
(2)2,6,8,10,12−ペンタアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
粗化合物(E)(3.0g)を、38℃で48時間、無水トリフルオロ酢酸(12ml)中で撹拌した。得られた透明溶液を蒸発させて乾かし、得られた固体を、クロロホルムに再溶解し蒸発させて乾燥した(2回)。この固体を減圧下に50℃で乾燥してピンクがかった白色固体を得た(3.3.8g、粗収率は90%)。
【0072】
NMRおよびIR分析により、得られた固体が化合物(F)であることが示された。
【0073】
H NMR(DMSO−d):δ1.94〜2.09(m,12.5H,4×COCH)、2.28〜2.36(m,3.6H,1×COCH3)、6.45〜7.08ppm(m,6.0H,6×CH)。
19F NMR:δ67.66および66.86ppm。
【0074】
(3)2,6,8,10,12−ペンタアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
SOが30%の発煙硫酸(6.0ml)を99.5%の硝酸(13.0ml)に滴下することにより、ニトロ化用の混合物を作成した。氷/水の浴に反応容器を浸けることにより、添加の間、温度を15℃未満に保った。混合酸を5℃まで冷却して、その後、激しく撹拌しながら、固体漏斗を通して粗化合物F(2.0g)を素早く添加した。固体が完全に溶解したら、フラスコを60℃で3時間加熱した。反応混合物を放冷し、その後、氷/水の混合物(200ml)に投入した。フラスコを2回水で洗った(2x50ml)。濃い白色の析出物を濾別し、洗浄液が中性になるまで水で洗い、真空デシケータ内で一夜乾燥した(1.2g、粗収率は58%)。
【0075】
MNRおよびIR分析により、得られた固体が化合物(G)であることが示された。
【0076】
H NMR(DMSO−d):δ7.54〜7.97(m,2.0H,2×CH)、8.12(s,1.6H,2×CH)、8.29ppm(d,J=7Hz,1.4H 2×CH)。
19F NMR:67.99ppm。
【0077】
粗物質のTLC分析により、CL−20が主な不純物であることが示された。NMRで調べることにより、粗生成物の約37%がCL−20であることが示された。
【0078】
(4)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)からの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(H)の調製
粗化合物(G)(2.0g)を無水メタノール(2ml)に溶解し、室温で48時間撹拌した(この間に、溶液は段々と黄色に着色していった)。溶剤をロータリーエバポレータで除去し、得られた固体を減圧下に50℃で乾燥して、黄色の固体を得た(1.2g)。この固体のTLC分析により、これは2つの主な成分からなり、その1つはCL−20であることが示唆された。シリカゲル(Merck Kieselgel 60 F254)を充填した直径2cmの40cmナイロンカラムを用い、n−ヘプタン/酢酸エチル(3:2)混合物を溶離液として用いて、生成物の一部をカラムクロマトグラフィにより分離した。展開後、カラムを切断し、生成物をシリカゲルから抽出した。
【0079】
MNRおよびIR分析により、精製された固体が化合物(H)であることが示された。
【0080】
H NMR(DMSO−d):δ5.99(広幅s,0.8H,NH)、6.67〜6.72(m,2.0H,2×CH)、7.88(s,1.9H,2×CH)、7.94ppm(d,J=8Hz,2H,2×CH)。
【0081】
13C NMR:71.19、73.25、74.21ppm。
H−H相関(COSY45):5.99(H−4)(6.67〜6.72(H−3,H−5)にカップリング)、6.67〜6.72(7.94(H−9,H−11)にカップリング)。
H−13C相関:6.67〜6.72(73.25にカップリング)、7.88(74.21ppmにカップリング)、7.94(71.19にカップリング)。
【0082】
精製された固体のDSC(10K/min)では、168℃での爆発性発熱分解の開始が記録され、化合物(H)が爆発性化合物であることを示している。
【0083】
反応スキーム3
(c)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの合成
図3は、化合物Hを製造する別の合成経路を示している。それは図2の経路より多くのステップを含むが、試薬がより効率的である。この反応は5つのステップを含む。
【0084】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(A)からの、2,6,8,12−テトラアセチル−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(B)の調製;
(2)2,6,8,12−テトラアセチル−4,10−ビス(トリフルオロアセチル)−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(B)からの、2,6,8,12−テトラニトロ−4,10−(ビス)トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(C)の調製;
(3)2,6,8,12−テトラニトロ−4,10−(ビス)トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(C)からの、2,6,8,12−テトラニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(J)の調製;
(4)2,6,8,12−テトラニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(J)からの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)の調製;および
(5)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)からの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(H)の調製
上のステップ(1)および(2)は、前記反応スキーム(1)に関連して記載された方法のステップ(1)および(2)にあたる。
【0085】
(3)2,6,8,12−テトラニトロ−4,10−(ビス)トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,12−テトラニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
化合物(C)(2.0g)を無水エタノール(10ml)に溶解し、室温で48時間撹拌した。過剰のメタノールをロータリーエバポレータにより除去して黄色の固体を得、それを減圧下に50℃で6時間乾燥した(1.73g、105%)。
【0086】
NMRおよびIR分析により、その固体が化合物Jであることが示された。
【0087】
(2)2,6,8,12−テトラニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
化合物(J)(1.0g)を激しく撹拌しながら、SOが30%の発煙硫酸(0.2ml)と99.5%の硝酸(3.0ml)との混合物(氷で冷却した)に、素早く加えた。この混合物を放置してゆっくりと室温まで温め、次に、4時間撹拌した。次に、反応混合物を、氷/水の混合物(100ml)に投入し、生成した白色沈殿を濾過により取り出し、数回多量の水で洗い、その後、真空デシケータ内で一夜乾燥した(0.96g、粗収率は87%)。
【0088】
NMRおよびIR分析により、この固体が化合物(G)であることが示された。
H NMR(d−アセトン):7.70〜7.87(m,2.6H,2×CH)、8.15(s,2.1H,2×CH)、8.26ppm(d,J=7Hz,2.0H,2×CH)
13C NMR(d−アセトン):71.21、73.26、74.22ppm。
19F NMR(d−アセトン):68.41ppm。
【0089】
(3)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
化合物(G)(0.50g)を無水メタノール(10.0ml)に溶解し、室温で48時間撹拌した。次に、この溶液を蒸発させて乾かし、得られた黄色っぽい固体を減圧下に50℃で6時間乾燥した(0.45g)。
【0090】
この固体のNMR分析により、この固体は主に化合物(H)であることが示された。
【0091】
H NMR(アセトン−d):5.96(s,0.8H,NH)、6.66〜6.71(m,2.0H,2×CH)、7.84(2.1H,2×CH)、7.93ppm(d,J=8Hz,2H,2×CH)。
【0092】
TLCおよびNMRで調べることにより、主な不純物はCL−20(最終生成物の約10%)と化合物(J)であることが示された。
【0093】
図2の反応方法は、特に、化合物(A)から化合物(E)の調製と、次の化合物(F)の調製で、試薬の効率が悪いことが見出された。最終のニトロ化生成物は、ほぼ40%のCL−20を不純物として含んでいることが見出された。
【0094】
図2の反応スキームに関して使用されたニトロ化と同じ仕方で実施された、化合物(B)のニトロ化では、2種の過度にニトロ化された生成物であるCL−20とペンタニトロ−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンをほとんど全く含んでいない生成物が得られる。これは、用いられた激しいニトロ化条件の下で、N−COCF基が安定であること、また、COCF基はニトロ化反応における効果的な保護基であることを示唆している。化合物(F)のニトロ化生成物中の不純物であるCL−20は、粗出発物質(B)中に化合物(E)が存在する結果である。
【0095】
反応スキーム4
(D)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの合成
この反応は3つのステップを含む。
【0096】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(A)からの、2,6,8,12−テトラアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(K)の調製、
(2)2,6,8,12−テトラアセチル−2,6,8,12−テトラアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(K)からの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)の調製、
(3)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,12−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(G)からの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(H)の調製
【0097】
(1)2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,12−テトラアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
化合物(A)(3.0g)をトリフルオロ酢酸(25ml)中で撹拌し、その後、無水トリフルオロ酢酸(10ml)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。過剰のトリフルオロ酢酸/無水トリフルオロ酢酸の混合物をロータリーエバポレータで除去して粘性のある液体を得た。この液体にメタノール(5ml)を滴下し、次に、揮発成分をロータリーエバポレータで除去して白色固体を得た。この固体をメタノール(10ml)に溶解し、4.5時間還流した。還流を続けていると、白色固体が溶液から析出した。次に、この懸濁液からメタノールを蒸発させ、得られた固体を減圧下に50℃で乾燥した(2.85g、粗収率は74%、融点(DSC、ex methanol)は292℃)。
【0098】
NMRおよびIR分析により、得られた固体は化合物(K)であることが示された。
【0099】
(2)2,6,8,12−テトラアセチル−2,6,8,12−テトラアセチル−4−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−4−トリフルオロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
SOが30%の発煙硫酸(0.4ml)を99.5%の硝酸(3.0ml)に滴下することにより、ニトロ化用の混合物を調製した。添加の間、氷/水の浴に反応容器を浸けることにより、温度を15℃未満に保った。反応容器を氷/水の浴に保ったままで、激しく撹拌しながら、粗化合物(K)(500mg)を素早く加えた。次に、反応混合物を70℃で3時間加熱した(その後、TLC分析で反応が完了したことが示された)。反応混合物を放冷し、その後、氷/水(100ml)の浴に投入した。析出物を濾別し、洗浄液が中性になるまで水で洗い、真空デシケータ内で一夜乾燥した(390mg、収率は69%)。
【0100】
TLC分析により、得られた固体が化合物(G)であることが示された。
【0101】
(3)2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,12−トリフルオロアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンからの、2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタンの調製
粗化合物(G)を無水メタノール(10ml)に溶解し、室温で48時間撹拌した。この溶液を蒸発させて乾かし、得られた黄色っぽい固体を減圧下に50℃で6時間乾燥した(331mg、粗収率105%)。
【0102】
TLCおよびNMR分析により、この固体が主に化合物(H)で、CL−20が主な不純物であることが示された。
【0103】
合成された誘導体
以下の反応スキームは、式(III)の化合物が式(I)の化合物から如何に誘導され得るかについての特定の実施形態を例示している。
【0104】
反応スキーム5
WNH:2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
WNA:4−アセチル−2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
WNHのアセチル化;WNAの生成
WNH(50mg)を塩化アセチル(1.0ml)に懸濁させ、濃硫酸(2滴)を加えた。この反応混合物を室温で8分間撹拌した(その間に懸濁物質は溶解した)。次に、反応混合物を砕いた氷(30g)の上に注ぎ、45分間放置した。析出物を濾過により集め、洗浄液が中性になるまで水で洗い、次に、真空デシケータで一夜乾燥した(42mg、粗収率76%)。
【0105】
IR(KBrディスク):1703.8cm−1(CO伸縮)
H NMR(アセトン−d6):2.49(s,3.00H)、7.52〜7.71(m,1.0H)および8.03〜8.33ppm(m,4.80H)
13C NMR(アセトン−d6):20.49、67.53、71.60、72.37、74.88および169.29ppm。
【0106】
WNのアセチル化;WNの生成
WNH(20mg)を無水酢酸(2.0ml)に懸濁させ、濃硫酸(1滴)を加えた。懸濁固体の全ては直ちに溶解した。この溶液を室温で24時間撹拌した。この段階でのTLC分析により、出発物質は全く残っておらず、また、1種の新しい生成物(Rはより大きい)が生成したことが示された。反応物を、氷/水(50ml)に投入し、析出物を濾別し、水で洗った。収量は21mg(乾燥後)。
【0107】
H NMR(アセトン−d6):δ2.46(s,6.51H)、7.30(m)+7.42(m)(2.11H)、7.85(s)+7.96ppm(m)4.00H)。
13C NMR(アセトン−d6):66.2、67.5、70.2、71.6、74.7、169.8ppm。
【0108】
反応スキーム6
WN:2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
WNA:4,10−ジアセチル−2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
【0109】
WNHとEtNCOの反応;WN(CONHEt)の生成
WNH(200mg)、無水CuCl(5〜10mg)およびEtNCO(1.0ml)をアセトニトリル(4.0ml)に溶解した。この溶液を55℃で20時間加熱し、揮発成分をロータリーエバポレータで除去し、残留物を、水(2x5ml)とEtOAc(2x5ml)を用いて分液漏斗に移した。水性層をさらなるEtOAc(2x20ml)を用いて抽出し、抽出液を合わせ、水で洗い、次に濃縮した。乾燥させて黄色の固体を得た(263mg)。粗WN(CONHEt)の試料(20mg)を、溶離液として3/2(vol)n−ヘプタン/EtOAcを用いて、カラムで精製した(Fisher製の5cm「Trikonex」フラッシュチューブ)。Rが小さい成分を回収し、n−ヘプタン/EtOAc(1/2)を用いて再度カラム(Trikonex)にかけた。
【0110】
H NMR(アセトン−d6):δ1.13(t 3.94H)、3.28(q,2.10H)、6.73(br s,0.99H,NH)、7.67(d,J=8.0Hz 2.21H)7.99(s,1.99H)、8.08ppm(d,J=8.0Hz,2.00H)
13C NMR(アセトン−d6):15.1、36.8、71.1、71.3、74.8ppm。
【0111】
反応スキーム7
EtNCO:N−エチルイソシアネート
WN(CONHEt):4−(N−エチルカルボキサミド)−2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
WN(CONH):4−カルボキサミド−2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
WNHとClCCONCOの反応;WH(CONHCOCCl)の生成
(a)WNH(30mg)を、窒素フラッシングを行ったフラスコ内で、アセトニトリル(3.0ml)に溶解した。この溶液を60℃で撹拌した。注射器によりセプタムキャップを通してトリクロロアセチルイソシアネート(0.2ml)を加え、撹拌を4時間続けた。揮発成分をロータリーエバポレータにより除去して、黄色/オレンジの粘着性固体を得た。最初にDCMを、次に、EtOを用いる粉砕・溶解(trituration)では、結晶化せず、この物質は2つの溶剤に可溶であった。試料を50℃で減圧下に長時間かけて乾燥した。単離した物質のTLC分析により、全ての出発物質が反応したこと、また、新しい生成物が生成した(低Rの恐らく単一のスポットであるが、大きなテール(tail)がある)ことが示された。H NMRスペクトルにより、出発物質のないこと、また、かご(cage)構造が保持されていることが確認された(主なシグナルは全て7ppm未満)。13Cスペクトルには3つのピークだけがあった。
【0112】
H NMR(アセトン−d):δ7.50(br s,1.66H)、7.65(d,J=7.7Hz,2.08H)、7.85(br s,1.19H)、8.10(s,1.56H)、8.19(m,1.51H)、8.36ppm(s,1.00H)。
13C NMR(アセトン−d):71.3、71.7、72.2、75.0、75.1、150.2ppm。
【0113】
(b)WNH(1.0g)をアセトニトリル(10.0ml)に溶解し、Nの下で撹拌した。トリクロロアセチルイソシアネート(0.3ml)を注射器によりセプタムキャップを通して加えた。この溶液を室温で20分間撹拌し、その後、揮発成分をロータリーエバポレータで除去した。残留物のTLC分析により、大量の出発物質の存在が示された。この手順を、さらなる量のC1CCONCO(0.2ml)により繰り返した。最終生成物のH NMRスペクトルは、前の反応によるものと実質的に同じであった。
【0114】
WN(CONHCOCCl)のメタノリシス;WN(CONH)の生成
WN(CONHCOCCl)をMeOH(10.0ml)に溶解し、濃硫酸(5滴)を加え、この溶液を2時間還流した。過剰の溶剤をロータリーエバポレータにより除去し、残留物を水と酢酸エチルで洗って分液漏斗に入れた。有機層を取り出し、それを水性部分のEtOAcの抽出液(2x10ml)と合わせ、次に、その有機層を水で洗った(2x20ml)。EtOAcをロータリーエバポレータで除去し、残った黄色の固体を減圧下に乾燥した(0.524g)。TLC分析により、HNIW(出発物質からの不純物)を含めて、いくつかの成分が存在することが示された。Trikonexカラム(n−ヘプタン/EtOAc(3/2))で試料(30mg)を精製して、HNIW(WNH中の不純物)を除去した。
【0115】
H NMR(アセトン−d):δ6.49(br s,1.86H,NH)、7.69(d,J=8.0Hz,2.37H)、8.00(s,2.01H)、8.11ppm(d J=8.0Hz,2.00H)
13C NMR(アセトン−d6):70.9、71.4、74.8、154.9ppm。
【0116】
反応スキーム8
C1CCONCO:N−トリクロロアセチルイソシアネート
WN(CONH:4,10−ビス(カルボキサミド)−2,6,8,12−へキサアザイソウルチタン
WN(CONHCOC1):4−(N−トリクロロアセチルカルボキサミド)−2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−へキサアザイソウルチタン
WN(CONHCOCC1:4,10−ビス(N−トリクロロアセチルカルボキサミド)−2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−へキサアザイソウルチタン
【0117】
WNとC1CCONCOの反応;WN(CONHCOCC1の生成
アセトニトリル(2.0ml)中のWN(100mg)をNの下で撹拌し、また、アセトニトリル(2.0ml)中のトリクロロアセチルイソシアネート(400mg)をNの下で撹拌し、セプタムキャップを通して注射器でトリクロロアセチルイソシアネート(0.10ml)を加えた。約3分以内に完全に溶解したが、撹拌をさらに7分間続けた。次に、揮発成分をロータリーエバポレータで除去すると黄色の薄い層が残った。これを減圧下に50℃で乾燥すると、この間に、これは結晶化して、非常に薄い黄色の固体が得られた(258mg)。
【0118】
H NMR(アセトン−d):7.52 9s(brベース,4.00H)、7.87(br s,0.91H)、7.97ppm(s,1.75H)。
13C NMR(アセトン−d):70.6、74.8、92.7、150.5、150.6、160.0、160.1ppm。
【0119】
WN(CONHCOCC1のメタノリシス;WN(CONHの生成
WN(CONHCOCC1(30mg)をMeOH(3.0ml)に溶解し、濃硫酸(2滴)を加え、この溶液を7.5時間還流した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去し、残った厚い層に水(3.0ml)を加えた。生成した赤い固体析出物を濾別した。水で洗っていると、この物質が水溶性であることが分かった。これを、溶液として一夜放置し、次に、EtOAc(3x30ml)で抽出した。有機抽出液を合わせて、水で洗った(2x20ml)。抽出液を蒸発させて乾かし、減圧下に乾燥して、薄いオレンジ色の固体を得た(21mg)。
【0120】
NMR(アセトン−d):6.46(br s,3.46H,NH)、7.44(s,4.00H)、7.79ppm(s,1.92H)
【0121】
反応スキーム9
ClCONCO:N−クロロカルボニルイソシアネート
WN(CONHCOOEt):4−(N−エトキシカルボニルカルボキサミド)−2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−へキサアザイソウルチタン
【0122】
WNHと(i)CICONCO、(ii)EtOHの反応;WN(CONHCOOEt)の生成
WNH(50mg)を窒素の下で無水アセトニトリル(1.0ml)に溶解した。セプタムを通して注射器によりN−(クロロカルボニル)イソシアネート(0.20ml)を加え、この溶液を室温で90分間撹拌した。揮発成分をロータリーエバポレータにより除去し、残留物をEtOH(1.0ml)と反応させた。過剰のEtOHを蒸発させると、粘性のある液体が残され、それは放置(2時間)しても固化しなかった。減圧下に60℃で乾燥すると、最後にいくらかの物質が固化し、いくらかは粘性のある層として残った(103mg)。Trikonexカラム(n−ヘプタン/EtOAc(3/2))で試料を精製して、HNIW(WHH中の不純物)を除去した。
【0123】
H NMR:(アセトン−d):δ1.24(t,12.81)4.14(q,7.90H)、7.65(d,J=8.0Hz,2.02H)、8.03(s,1.99H)、8.14(d,J=7.9Hz,2.00H)、9.10ppm(br s,1.22H,NH)。
13C NMR(アセトン−d):14.6、63.0、71.4、71.5、75.0、151.4、151.9、152.8ppm。
【0124】
反応スキーム10
WN(CONHCOOEt):4,10−ビス(N−エトキシカルボニルカルボキサミド)−2,6,8,10,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
【0125】
WNと、(i)CICONCO、(ii)EtOHの反応;WN(CONHCOOEt)の生成
NH(50mg)をNの下で無水アセトニトリル(1.0ml)に懸濁させた。セプタムキャップを通して注射器でN−(クロロカルボニル)イソシアネート(0.20ml)を加えた。懸濁液はほとんど直ちに透明になって薄い黄色の溶液となり、これを室温で10分間撹拌した。揮発成分をロータリーエバポレータにより除去すると、粘性のある液体が残され、これにエタノール(1.0ml)を加えた。発熱が認められ、白色の析出物が直ぐに生成した。過剰のEtOHを蒸発させて、黄色の固体を得た。この物質のH NMRスペクトルは、典型的なヘキサアザイソウルチタンの、2:1の比のメチンシグナルを示した。N−Hの存在は、FTIRにより確認されると思われた。
【0126】
H NMR:(アセトン−d):δ1.22(t,7.67H)、4.17(q,4.80H)、7.42(s,3.99H)、7.85(s,2.00H)、9.50ppm(br s,1.50H,NH)。
13C NMR(アセトン−d):14.5 62.9、70.6、74.8、151.9、152.8ppm。
【0127】
反応スキーム11
WN4(NO)2:4,10−ジニトロ−2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
【0128】
WNとNの反応;WN(NO)の生成
WN4(NO):4−ニトロソ−2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン
WH(NO)H(25mg)をHOAc(1.0ml)に懸濁させ、その後、N(0.75ml)を加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌し、この時点で、TLCにより、出発物質が全く残っていないことが示された。主なスポット(Rが大きい)をWN(NO)であると推定し、よりRが小さい非常にかすかなスポットをWN(NO)Hであると推定した。固体を濾過により取り出した。濾液を氷/水の中に投入しても、さらなる析出はなかった。固体のNMRスペクトルにより、新しい生成物は、WN(NO)Hでも、HNIWでもないことが確認され、ほぼ間違いなくWN(NO)であった。
【0129】
H NMR(アセトン−d6):δ7.96(s,1.00H)、8.10(s,2.00H)、8.22(m,1.14H)、8.28(m,1.11H)、8.54ppm(s,0.94H)
13C NMR(アセトン−d6):61.6、62.4、73.5、74.7、74.9(w)、75.2、75.7ppm(w)。
【0130】
比較分析
下の比較例と図1、2および3の合成経路は、出発物質として、2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物A)を用いる。化合物Aの製造は国際特許出願WO9623792と欧州特許EP 0753519に詳しい。
【0131】
比較例1
2、6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物A)をニトロ化して、2、6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物D)を生成させることを試みた。
【0132】
化合物A(100mg)を濃硫酸(0.45ml)に溶解し、0℃に冷却した。硝酸(90または99.5wt%、4または6当量)を加えた。必要とされる時間、この溶液を0℃に保ち、次に、氷(10g)の上に注いだ。析出した固体を濾別し、水で洗い、乾燥した。生成物が薄層クロマトグラフィとH NMR分光法により分析された。TLCにより、生成混合物中の成分の数が示され、存在する場合には、2,4,6,8,10,12−ヘキサニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(CL−20)が同定された。NMRにより、ニトロ化されずに残ったN−アセチル基の割合、CL−20の含量およびNH基の存在が示された。次の実験結果が代表的である。
【0133】
実験1(90wt%の硝酸を使用、4当量、0℃に20時間保った)
生成物は、大部分、2−アセチル−4,6,8,10,12−ペンタニトロへキサアザイソウルチタンであり、約15%がCL−20であった。約22%のN−アセチル基がニトロ化されずに残った。
【0134】
実験2(99.5wt%の硝酸を使用、4当量、0℃に4時間保った)
生成物は、約3%のCL−20を含み、約39%のN−アセチル基がニトロ化されずに残った。
【0135】
実験3(99.5%の硝酸を使用、4当量、0℃に23時間保った)
生成物は約56%のCL−20を含んでいた。約5%のN−アセチル基がニトロ化されずに残り、その物質の大部分は、2−アセチル−4,6,8,10,12−ペンタニトロヘキサアザイソウルチタンからなっていた。
【0136】
NH基が存在するというNMRの証拠は全くなかった。これは、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサイソウルチタン(化合物D)が反応生成物中に存在していなかったことを示している。
【0137】
比較例2
Hamilton他(ICT Conference on Energetic Materials(爆薬についてのICT会議),Karlsruhe,Germany,2000,21−1 〜 21−8)の方法論に基づいて、化合物(D)を得るために、Hamiltonにより示唆されたニトロ化条件を変動させて、2,6,8,12−テトラアセチル−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物A)をニトロ化して、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物D)を生成させることが試みられた。濃硫酸(0.0072ml)と99.5%の硝酸(0.50ml)の混合物を冷却した後、化合物A(175mg)を溶解し、直ちに85℃に加熱した。必要とされる時間の後に、溶液を冷却し、氷(5g)に入れた。析出固体を濾別し、水で洗い、乾燥した。生成物は薄層クロマトグラフィとH NMRにより分析された。
【0138】
次の実験結果が代表的である。
【0139】
実験1(85℃に30分間保った)
生成物は約57%のCL−20を含んでおり、約15%のN−アセチル基がニトロ化されていなかった。
【0140】
実験2(85℃に5分間保った)
生成物は、約1%のCL−20を含んでおり、約57%のN−アセチル基がニトロ化されずに残った。NH基が存在するというNMRの証拠は全くなかった。これは、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物D)が反応生成物中に存在していなかったことを示している。
【0141】
こうして、先行技術の方法を用いて、2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン(化合物D)を生成させることは、これまで可能でなかったことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】2,6,8,12−テトラニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による合成経路(反応スキーム1)を示す図である。
【図2】2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による合成経路(反応スキーム2)を示す図である。
【図3】2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による代替の合成経路(反応スキーム3)を示す図である。
【図4】2,6,8,10,12−ペンタニトロ−2,4,6,8,10,12−ヘキサアザイソウルチタン製造の、本発明による代替の合成経路(反応スキーム4)を示す図である。
【図5】無水トリクロロ酢酸を用いる、モノ−アミンまたはジ−アミン誘導体のアセチル化の合成経路(これらの反応は濃硫酸の添加により触媒されなければならない)を示す図である。
【図6】ジ−アミン誘導体から出発し、試薬としてイソシアネートを用いる、CL−20のアミド誘導体の合成経路を示す図である。
【図7】モノ−アミン誘導体から出発し、試薬としてイソシアネートを用いる、アミドクロリドまたはアミド(さらなるメタノリシスによる)の合成経路を示す図である。
【図8】ジ−アミン誘導体から出発し、試薬としてイソシアネートを用いる、アミドクロリドまたはアミド(さらなるメタノリシスによる)の合成経路を示す図である。
【図9】試薬としてイソシアネートを用い、モノ−アミンまたはジ−アミンから出発して、それぞれモノ−アミドまたはジ−アミドを生成する、アミドの合成経路を示す図である。
【図10】CL−20がジアミンのニトロリシスによりどのように生成するかを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
【化1】

(式中、
X=Hであり、
Y=HまたはNOである。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物の爆薬としての使用。
【請求項3】
爆薬組成物の調製における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項4】
爆薬化合物または爆薬組成物の合成前駆体としての請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項5】
ポリ−ニトロ−ヘキサアザイソウルチタン誘導体の調製における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
式(II)
【化2】

(X=Y=Hであり、または
X=AcおよびY=Hであり、
Acは−COCH、−COCHR(RはC〜C10アルキル(線状または分岐状)、−CH−C、C1〜10アリールアルキルである。)である。)
の化合物から出発し、
(1)n−4および/またはn−10位の(複数の)非アシル化第2級アミン基を保護するためのフルオロアシル化ステップ、次の、
(2)ステップ(1)の生成物のニトロリシスステップ、次の、
(3)ステップ(2)の生成物のソルボリシスによる脱保護ステップ、
を含む、
請求項1に記載の化合物の合成経路。
【請求項7】
ステップ(1)がフルオロアシル化剤を用いて行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロアシル化剤がトリフルオロアセチル化剤である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トリフルオロアセチル化剤が無水トリフルオロ酢酸を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トリフルオロアセチル化剤が、トリフルオロ酢酸と無水トリフルオロ酢酸との混合物を含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記トリフルオロアセチル化剤が塩化トリフルオロエタノイルを含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
トリフルオロ酢酸と無水トリフルオロ酢酸との混合物の使用を含む、2つの第2級アミン基の選択的フルオロアセチル化法。
【請求項13】
ソルボリシスが加水分解を含む請求項6に記載の方法。
【請求項14】
ソルボリシスが、カルボン酸塩と組合せてアルコールを使用して実施される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エタノール中の酢酸ナトリウムを使用する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
エタノール中のプロピオン酸ナトリウムを使用する請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ハイドロリシスがアルコールを用いて実施される請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記アルコールがメタノールまたはエタノールを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ニトロリシスが、硝酸・発煙硫酸のようなニトロ化剤を用いて行われる請求項6に記載の方法。
【請求項20】
X=Y=Hである式(II)の化合物を、ステップ(1)の前に、アシル化剤と反応させる追加のアシル化ステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項21】
前記アシル化剤がアセチル化剤である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アセチル化剤が無水酢酸と酢酸ナトリウムを含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
X=Y=Hである場合に、
ステップ(2)の後に、2つの追加のステップ:
(5)ステップ(2)の生成物をソルボリシスにより選択的に脱保護してモノ−アミン誘導体を生成させるステップ、次の、
(6)ステップ(5)の生成物のニトロリシスのステップ、
をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項24】
例と図を参照して十分に明細書に記載された請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
例と図を参照して十分に明細書に記載された請求項6に記載の化合物の製造方法。
【請求項26】
式(III)の化合物。
【化3】

(式中、
およびRは以下から独立に選択される:
〜C10アルキル、C10アルキルアリール、−CH−C
〜C10ポリエーテル、C〜C10フッ素化ポリエーテル、C〜C10フッ素化アルキル、CH−C、COR’(R’=C〜C10アルキル、−COCl、−COCCl)、CONHR”(R”=H、C〜C10アルキル、−COCl、−COCCl)、
CONHCO
C(O)C2m2p+1(mおよびpは整数であり、1乃至19の範囲から独立に選択され、m+pは20以下である。)
COCF。)
【請求項27】
式(I)の化合物から出発し、式(I)の化合物をハロゲン化アシルと反応させることを含む、式(III)の化合物の製造方法。
【請求項28】
前記ハロゲン化アシルが、C〜C10アルキルハロゲン化アシル、C〜C10アルキルアリールハロゲン化アシル、CH−アリールハロゲン化アシルおよびR−ハロゲン化アシル(Rには以下が含まれる:
〜C10ポリエーテル、C〜C10フッ素化ポリエーテル、C〜C10フッ素化アルキル、CH−フッ素化フェニル、
COR’(R’=C〜C10アルキル、COCl、COCCl)、
CONHR”(R”=H、C〜C10アルキル、COCl、COCCl)、
C(O)C2m2p+1(mおよびpは整数であり、1乃至19の範囲から独立に選択され、m+pは20以下である。)およびCOCF。)、
を含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ハロゲン化アシルが塩化アシルまたは臭化アシルである請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ハロゲン化アシルが塩化アセチルを含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
式(I)の化合物から出発し、式(I)の化合物をアシル無水物と反応させることを含む、式(III)の化合物の製造方法。
【請求項32】
前記ハロゲン化アシルが、C〜C10アルキルアシル無水物、C〜C10アルキルアリールアシル無水物、CH−アリールアシル無水物およびR−アシル無水物(ここで、Rは、C〜C10ポリエーテル、C〜C10フッ素化ポリエーテル、C〜C10フッ素化アルキル、CH−フッ素化フェニルを含む。)ならびにRアシル無水物(ここで、Rには、以下が含まれる:
COR’(R’=C〜C10アルキル、COCl、COCCl)、
CONHR”(R”=H、C〜C10アルキル、COCl、COCCl)、
C(O)C2m2p+1(mおよびpは整数であり、1乃至19の範囲から独立に選択され、m+pは20以下である。)およびCOCF。)、
を含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アシル無水物が無水酢酸を含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
式(I)の化合物から出発し、式(I)の化合物をイソシアネートと反応させることを含む、式(III)の化合物の製造方法。
【請求項35】
前記イソシアネートがN−(クロロカルボニル)イソシアネートを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記イソシアネートがトリクロロアセチルイソシアネートを含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
誘導された生成物をアルコールと反応させる追加のステップをさらに含む請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記アルコールがメタノールである請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ポリ−ニトロ−ヘキサアザイソウルチタン誘導体の第2級アミンをニトロ化に対して保護するためのフルオロアセチル化剤の使用。
【請求項40】
前記フルオロアセチル化誘導体がトリフルオロ酢酸を含む請求項15に記載の使用。
【請求項41】
ポリ−ニトロ−ヘキサアザイソウルチタン誘導体の第2級アミンをスルホン化に対して保護するためのフルオロアセチル化剤の使用。
【請求項42】
前記フルオロアセチル化剤がトリフルオロ酢酸を含む請求項41に記載の使用。
【請求項43】
実施例と図を参照して十分に明細書に記載された式(I)の化合物。
【請求項44】
実施例と図を参照して十分に明細書に記載された式(II)の化合物。
【請求項45】
実施例と図を参照して十分に以上に記載された式(III)の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−519218(P2006−519218A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502338(P2006−502338)
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000844
【国際公開番号】WO2004/076383
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(503450852)イギリス国 (6)
【Fターム(参考)】