説明

COF用積層板

【課題】十分な剛性と屈曲性を有するCOF用積層板の提供。
【解決手段】無機クロス及び液晶ポリエステルを含み、且つ厚さが150〜300μmである絶縁層10を備え、絶縁層の少なくとも一方の表面に金属層16が設けられたことを特徴とするCOF用積層板1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COF(Chip on Film)用積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロエレクトロニクス分野の技術の発展には目覚ましいものがあり、携帯用電子機器等において小型・軽量化の要求が顕著であり、高密度実装に対する期待が大きくなっている。これに伴い、配線板の多層化、配線ピッチの狭幅化、ビアホールの微細化など、より高度の集積化に耐え得る材料が要求されている。
【0003】
かかる要求に応える基板材料としては、例えば、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは、優れた耐熱性を有し、また機械的、電気的及び化学的特性において他のプラスチック材料に比べて遜色がないことから、例えば、プリント配線板(PWB)、フレキシブルプリント配線板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)用テープ、そしてチップオンフィルム(COF)用テープ等の電子部品用の絶縁基板材料として多用されている。具体的には、前記PWB、FPC、TAB用テープ、COF用テープは、絶縁層であるポリイミド基板の少なくとも片面に、金属導体層として主に銅を被覆した金属被覆ポリイミド基板を加工することによって製造されている。
【0004】
一方で、ポリイミドは吸水率や熱膨張率が比較的大きいという問題点があった。そこで最近では、ポリイミドに代わる絶縁層の材料として熱可塑性液晶ポリマーが注目されている。しかし、熱可塑性液晶ポリマーは、高周波特性や寸法安定性に優れるものの、ポリマーを構成する分子が容易に配向するので、力学的物性に優れた成形物を与える一方、射出成形法やインフレーション成形法によりフィルム状に成形すると、配向方向に割れ易かったり、裂け易いという問題点があった。また、従来のようにフィルム状のまま基材として用いると、基材としての剛性が不十分であるという問題点があった。これに対して、フィルム状の熱可塑性液晶ポリマー以外に、中間シートを用いて、これらを積層した積層板を用いる手法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−309803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で開示されている積層板は、剛性が依然不十分であり、チップ実装に求められる十分な剛性と屈曲性を兼ね備えたものではないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な剛性と屈曲性を有するCOF用積層板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、
本発明は、無機クロス及び液晶ポリエステルを含み、且つ厚さが150〜300μmである絶縁層を備え、該絶縁層の少なくとも一方の表面に金属層が設けられたことを特徴とするCOF用積層板を提供する。
本発明のCOF用積層板においては、前記絶縁層が、複数の絶縁基材が積層されたものであり、前記絶縁基材が、前記無機クロスに前記液晶ポリエステルが含浸されたものであることが好ましい。
本発明のCOF用積層板においては、前記無機クロスがガラスクロスであることが好ましい。
本発明のCOF用積層板においては、前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
本発明のCOF用積層板においては、前記液晶ポリエステルが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記一般式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記一般式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記一般式(3)で表される繰返し単位を10〜35モル%有することが好ましい。
本発明のCOF用積層板においては、前記一般式(3)において、X及び/又はYがイミノ基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な剛性と屈曲性を有するCOF用積層板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るCOF用積層板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図2】図1に示す製造方法において、さらに金属箔を絶縁基材と共に同時に加熱プレス方法を説明するための概略断面図である。
【図3】図1に示す製造方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図である。
【図4】図2に示す製造方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るCOF(Chip on Film)用積層板(以下、「積層板」ということがある。)は、無機クロス及び液晶ポリエステルを含み、且つ厚さが150〜300μmである絶縁層を備え、該絶縁層の少なくとも一方の表面に金属層が設けられたことを特徴とする。かかる積層板は、十分な剛性と屈曲性を有し、チップ実装に十分な機械的特性を有する。
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【0012】
前記絶縁層としては、前記無機クロスに前記液晶ポリエステルが含浸された絶縁基材(以下、「液晶ポリエステル含浸基材」ということがある。)で構成されたものが例示できる。
【0013】
絶縁層は、一枚の絶縁基材からなるものでもよいが、複数の絶縁基材が積層されたものが好ましい。
絶縁層が、複数の絶縁基材が積層されたものである場合、これら複数の絶縁基材は、すべて同じでもよいし、一部が異なっていてもよく、すべて異なっていてもよい。また、絶縁基材の数が複数である場合、その数は2枚以上であればよく、目的に応じて任意に選択できる。
【0014】
絶縁基材一枚の厚さは、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは10〜185μmである。
【0015】
液晶ポリエステルを含浸させる前記無機クロスは、無機繊維からなるシートであり、前記無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ系繊維、ケイ素含有セラミック系繊維等のセラミック繊維が例示できる。そして、前記無機クロスは、主としてガラス繊維からなるシート、すなわちガラスクロスが好ましい。
【0016】
前記ガラスクロスとしては、含アルカリガラス繊維、無アルカリガラス繊維又は低誘電ガラス繊維からなるものが好ましい。また、ガラスクロスを構成する繊維は、その一部にガラス以外のセラミックからなるセラミック繊維又は炭素繊維が混入していてもよい。また、ガラスクロスを構成する繊維は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0017】
これら繊維からなるガラスクロスの製造方法としては、ガラスクロスを形成する繊維を水中に分散させ、必要に応じてアクリル樹脂等の糊剤を添加して、抄紙機にて抄造後、乾燥させることで不織布を得る方法や、公知の織成機を用いる方法が例示できる。
【0018】
繊維の織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が利用できる。織り密度は、10〜100本/25mmであることが好ましい。
前記ガラスクロスの単位面積当たりの質量は、10〜300g/mであることが好ましい。
前記ガラスクロスの厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは10〜180μmである。
【0019】
前記ガラスクロスは、市販品でもよい。容易に入手可能な市販品のガラスクロスとしては、電子部品の絶縁含浸基材用のものが例示でき、旭シュエーベル株式会社、日東紡績株式会社、有沢製作所株式会社等から入手できる。
なお、市販品のガラスクロスで好適な厚さのものとしては、IPC呼称で1035、1078、2116、7628のものが例示できる。
【0020】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0021】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0022】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0023】
液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0024】
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【0025】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0026】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
【0027】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0028】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0029】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0030】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは30〜40モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、特に好ましくは30〜35モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、特に好ましくは30〜35モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0031】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0032】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に二種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0033】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基(−NH−)であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルは溶媒に対する溶解性がより優れたものとなる。
【0034】
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0035】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃〜350℃、さらに好ましくは260℃〜330℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、高過ぎると、溶媒に対する溶解性が低くなり易かったり、後述する液状組成物の粘度が高くなり易かったりする。
【0036】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0037】
前記絶縁基材は、液晶ポリエステル及び溶媒を含む液状組成物(液晶ポリエステル液状組成物)、好ましくは液晶ポリエステルが溶媒に溶解された液状組成物(液晶ポリエステル溶液)を基材に含浸させ、溶媒を除去することで製造できる。
【0038】
前記溶媒としては、用いる液晶ポリエステルが溶解可能なもの、具体的には50℃にて1質量%以上の濃度([液晶ポリエステル]/[液晶ポリエステル+溶媒]×100)で溶解可能なものが、適宜選択して用いられる。
【0039】
前記溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p−クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(N−メチル−2−ピロリドン)等のアミド系化合物(アミド結合を有する化合物);テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン化合物が挙げられ、これらの二種以上を用いてもよい。
【0040】
溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
また、前記非プロトン性化合物としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系化合物を用いることが好ましい。
【0041】
また、溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、双極子モーメントが3〜5である化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める、双極子モーメントが3〜5である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3〜5である化合物を用いることが好ましい。
【0042】
また、溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める、1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0043】
液状組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル及び溶媒の合計量に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜45質量%であり、所望の粘度の液状組成物が得られるように、適宜調整される。
【0044】
液状組成物は、充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を一種以上含んでもよい。
【0045】
前記充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
【0046】
前記添加剤の例としては、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0047】
前記液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
【0048】
液状組成物は、液晶ポリエステル、溶媒、及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより調製することができる。他の成分として充填材を用いる場合は、液晶ポリエステルを溶媒に溶解させて、液晶ポリエステル溶液を得、この液晶ポリエステル溶液に充填材を分散させることにより調製することが好ましい。
【0049】
無機クロスに液状組成物を含浸させる方法としては、浸漬槽中の前記液状組成物に基材を浸漬する方法が例示できる。この方法においては、液状組成物の液晶ポリエステルの含有量、浸漬時間、浸漬した基材の液状組成物からの引き上げ速度を適宜調節することで、基材への液晶ポリエステルの付着量を容易に制御できる。
【0050】
液状組成物を含浸させた基材から溶媒を除去する方法は、特に限定されないが、操作が簡便である点で、溶媒を蒸発させる方法が好ましく、加熱、減圧及び通風のいずれかを単独で、又は二つ以上を組み合わせて蒸発させる方法が例示できる。
【0051】
溶媒を除去して得られた液晶ポリエステル含浸基材における液晶ポリエステルの付着量は、液晶ポリエステル含浸基材に対して30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
【0052】
前記絶縁基材は、溶媒除去後にさらに加熱処理することが好ましい。これにより、含浸されている液晶ポリエステルをより高分子量化でき、耐熱性をより向上させることができる。
【0053】
加熱処理は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。そして、加熱温度は、好ましくは240〜330℃、より好ましくは250〜330℃、さらに好ましくは260〜320℃である。下限値以上とすることで、得られる積層板の耐熱性がより向上する。加熱時間は、好ましくは1〜30時間、より好ましくは1〜10時間である。下限値以上とすることで、得られる積層板の耐熱性がより向上し、上限値以下とすることで、積層体の生産性がより向上する。
【0054】
絶縁層の厚さは、150〜300μmであり、好ましくは160〜290μm、より好ましくは165〜285μm、さらに好ましくは165〜250μmである。下限値以上とすることで、積層板は剛性が向上し、上限値以下とすることで、積層板は屈曲性が向上する。
【0055】
絶縁層の曲げ弾性率は、8〜16GPaであることが好ましい。このような範囲とすることで、チップ実装により優れた剛性を有するものとなる。
【0056】
前記金属層は、絶縁層の少なくとも一方の表面に設けられる。すなわち、絶縁層の一面のみ(片面)に設けられていてもよいし、一面と、これとは反対側の面との両方(両面)に設けられていてもよい。
【0057】
金属層の材質は、銅、アルミ、銀又はこれらから選択される一種以上の金属を含む合金が好ましい。なかでも、より優れた導電性を有する点から、銅又は銅合金が好ましい。そして、金属層は、材料の取扱いが容易で、簡便に形成でき、経済性にも優れる点から、金属箔からなるものが好ましく、銅箔からなるものがより好ましい。金属層を絶縁層の両面に設ける場合、これら金属層の材質は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
金属層の厚さは、好ましくは1〜70μmであり、より好ましくは3〜18μmである。
【0059】
前記積層板は、絶縁層の表面に金属層を設けることで製造できる。
金属層を設ける方法としては、金属箔を絶縁層の表面に融着させる方法、金属箔を絶縁層の表面に接着剤で接着させる方法、絶縁層の表面をめっき法、スクリーン印刷法又はスパッタリング法により、金属粉又は金属粒子で被覆する方法が例示できる。
また、絶縁層が複数の絶縁基材が積層されたものである場合、かかる絶縁層は、例えば、これら複数の絶縁基材を加熱プレスし、互いに融着させることで得られる。
【0060】
図1は、絶縁層として複数の絶縁基材が積層されたものを備えた積層板の製造方法を説明するための概略断面図である。ここに示す積層板1は、絶縁基材11、12、13及び14を用いたものである。
まず、図1(a)に示すように、絶縁基材11、12、13及び14をこの順に、これらの厚さ方向に配置する。なお、ここでは見易くするために、絶縁基材等を互いに離間させて示しているが、加熱プレス時にはすべて重ねて配置される。
【0061】
そして、4枚の絶縁基材のうち、重ね合わせたときに最も外側に位置する(片面が絶縁基材と接触しない)絶縁基材11及び14に、それぞれ金属板91及びクッション材92をこの順に重ねて、4枚の絶縁基材をこれら金属板91及びクッション材92で挟み込み、矢印で示すようにクッション材92側から熱盤等でプレスすることで加熱プレスする。ここで、金属板91は、接触するプレス対象(ここでは、絶縁基材11及び14)の表面に傷を付けないために用いるものであり、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の材質からなり、プレス対象との接触面が滑らかなものであればよい。クッション材92としては、アラミド樹脂;カーボン繊維;アルミナ繊維等の無機繊維の不織布等、耐熱性を有する材質からなるものが好ましい。
【0062】
加熱プレスは、真空条件下、例えば、0.5kPa以下等の減圧下で行うことが好ましい。
加熱プレスのその他の条件は、絶縁基材の種類等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、積層板の表面平滑性が良好となるように調節することが好ましい。
例えば、加熱温度は、前記絶縁基材の作製時に、溶媒除去後の加熱処理を行っている場合には、この加熱処理時の温度に応じて調節することが好ましく、この加熱処理時の最高温度Tmax(℃)よりも高い温度であることが好ましく、Tmaxよりも5℃以上高い温度であることがより好ましい。加熱プレス時の加熱温度の上限値は、用いた液晶ポリエステルの分解温度を下回るように設定すればよいが、前記分解温度よりも30℃以上低い温度であることが好ましい。液晶ポリエステルの分解温度は、例えば、熱重量減少分析等の公知の手法で測定できる。
また、加熱プレス時の圧力は、1〜30MPaであることが好ましく、時間は5〜60分であることが好ましい。
【0063】
次いで、重ねられた絶縁基材のうち、最も外側に位置する絶縁基材11の表面に金属層15を設け、絶縁基材14の表面に金属層16設けることで、図1(b)に示すように、積層板1が得られる。重ねられた絶縁基材11、12、13及び14は、絶縁層10を構成している。
【0064】
上記のように、金属箔を絶縁基材11及び14に融着させて、金属層15及び16を設ける場合には、図2に示すように、絶縁基材11の他の絶縁基材と接触しない面(図中、下向きの表面)に向かい合わせて金属箔15’を配置し、絶縁基材14の他の絶縁基材と接触しない面(図中、上向きの表面)に向かい合わせて金属箔16’を配置して、絶縁基材11、12、13及び14、並びに金属箔15’及び16’を同時に加熱プレスし、金属箔15’から金属層15を、金属箔16’から金属層16をそれぞれ形成することが好ましい。この場合、金属箔15’及び16’を配置すること以外は、図1を参照して説明した方法と同様の方法で加熱プレスすればよい。このように、絶縁基材の加熱プレス時に、重ねたときに最も外側に位置する二つの絶縁基材の表面に、さらに金属箔を重ねて、これら金属箔及び複数の絶縁基材を加熱プレスすることで、金属層を同時に設けることができる。
【0065】
絶縁基材11及び14を金属粉又は金属粒子で被覆して、金属層15及び16を設ける場合には、めっき法を適用することが好ましく、無電解めっき法又は電解めっき法を適用することがより好ましい。また、金属層15及び16の特性をさらに向上させるために、めっき法で形成した金属層15及び16を加熱処理することが好ましく、このときの加熱処理の条件は、前記加熱プレスの条件と同様でよい。
【0066】
上記の説明のように、金属層の形成は、絶縁基材の加熱プレス時と同時か、又はそれ以降に行う。
【0067】
なお、ここでは積層板として、絶縁基材11の表面に金属層15が設けられ、絶縁基材14の表面に金属層16が設けられたものを示しているが、金属層15及び16のいずれか一方が設けられていない積層板でもよく、積層板の構成は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0068】
絶縁基材の加熱プレス時においては、絶縁基材11、12、13及び14をこの順に、これらの厚さ方向に配置したものを一つの構成単位とし、金属板91を介して、この構成単位をさらに厚さ方向に複数配列させて、加熱プレスすることにより、複数の絶縁層(図1(b)に示す絶縁層10)を同時に形成できる。図3は、図1を参照して説明した方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図であり、図4は、図2を参照して説明した方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図である。金属箔も同時に加熱プレスする場合には、図4に示すように、金属箔15’、絶縁基材11、12、13及び14、並びに金属箔16’をこの順に、これらの厚さ方向に配置したものを一つの構成単位とし、金属板91を介して、この構成単位をさらに厚さ方向に複数配列させればよい。なお、図3及び4においては、前記構成単位の数が3である場合を例示しているが、前記構成単位の数はこれに限定されず、加熱プレスを行うのに支障が無い限り、2以上であればいくつでもよい。
【0069】
ここまでは、絶縁層を構成する絶縁基材が複数の場合について説明したが、絶縁基材が一枚の場合には、上記の製造方法において、複数の絶縁基材に代えて一枚の絶縁基材を用い、複数の絶縁基材を加熱プレスする操作を省略することで、同様に積層板を製造できる。
【0070】
本発明に係る積層板は、絶縁層が無機クロス及び液晶ポリエステルを含んでいることで、チップ実装に適した十分な剛性を有し、絶縁層の厚さを150〜300μmとしたことで、十分な屈曲性を有する。積層板の剛性は、例えば、積層板又は絶縁基材の曲げ弾性率で評価できる。
そして、積層板の金属層を、エッチング等により所望のパターンにパターニングすることで、COFが得られる。
【実施例】
【0071】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度は、以下の方法で測定した。
【0072】
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0073】
<液晶ポリエステル液状組成物の製造>
[製造例1]
(液晶ポリエステルの製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(1976g、10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド(1474g、9.75モル)、イソフタル酸(1620g、9.75モル)及び無水酢酸(2374g、23.25モル)を仕込み、反応器内のガスを窒素ガスで十分に置換した後、窒素ガス気流下で攪拌しながら、15分間かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して3時間還流させた。
次いで、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、170分間かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了時点とみなし、反応器から内容物を取り出した。この内容物を室温まで冷却し、得られた固形物を粉砕機で粉砕し、比較的低分子量の液晶ポリエステルの粉末を得た。この液晶ポリエステル粉末の流動開始温度は235℃であった。この液晶ポリエステル粉末を窒素ガス雰囲気下において223℃で3時間加熱処理することにより、固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
【0074】
(液晶ポリエステル液状組成物の製造)
得られた液晶ポリエステル(2200g)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(7800g)に加え、100℃で2時間加熱して、液晶ポリエステル液状組成物(液晶ポリエステル溶液)を得た。東機産業社製のB型粘度計「TVL−20型」(ローターNo.21、回転速度5rpm)を用いて、23℃において、この液晶ポリエステル液状組成物の粘度を測定したところ、0.32Pa.s(320cP)であった。
【0075】
<COF用積層板の製造>
[実施例1]
図1及び2を参照して説明した製造方法により、積層板を製造した。より具体的には以下の通りである。
(絶縁基材の製造)
製造例1で得られた液晶ポリエステル液状組成物に、ガラスクロス(有沢製作所社製、厚さ45μm、IPC呼称1078)を室温で1分間浸漬した後、熱風式乾燥機を用いて、溶媒を蒸発させて乾燥させ、液晶ポリエステル含浸基材である絶縁基材を得た。
【0076】
(絶縁基材の加熱処理)
熱風式乾燥機を用いて、得られた絶縁基材を、窒素ガス雰囲気下、290℃で3時間加熱処理した。
【0077】
(COF用積層板の製造)
アラミドクッション材(イチカワテクノファブリクス社製、厚さ3mm)の上に、SUS304板(厚さ5mm)、スペーサー用銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)、積層用銅箔(福田金属社製「CF−T9D−SV」、厚さ12μm)、3枚の前記絶縁基材、積層用銅箔(福田金属社製「CF−T9D−SV」、厚さ12μm)、スペーサー用銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)、及びSUS304板(厚さ5mm)をこの順に重ね、その上にさらにアラミドクッション材(イチカワテクノファブリクス社製、厚さ3mm)を載せた。そして、この状態で、高温真空プレス機(北川精機社製「KVHC−PRESS」、縦300mm、横300mm)を用いて、0.2kPaの減圧下、340℃、5MPaの条件で20分間加熱プレスすることにより、銅箔付き多層絶縁基材であるCOF用積層板を得た。得られたCOF用積層板の主たる構成を表1に示す。なお、表1中、「LCP」は液晶ポリエステルを意味する。
【0078】
[実施例2]
表1に示すように、前記絶縁基材を3枚に代えて4枚用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でCOF用積層板を得た。
【0079】
[実施例3]
表1に示すように、前記絶縁基材を3枚に代えて5枚用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でCOF用積層板を得た。
【0080】
[比較例1]
表1に示すように、前記絶縁基材を3枚に代えて1枚用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でCOF用積層板を得た。
【0081】
[比較例2]
表1に示すように、前記絶縁基材を3枚に代えて2枚用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でCOF用積層板を得た。
【0082】
[比較例3]
表1に示すように、前記絶縁基材を3枚に代えて6枚用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でCOF用積層板を得た。
【0083】
[比較例4]
(絶縁基材の製造)
製造例1で得られた液晶ポリエステル液状組成物を、銅箔(福田金属社製「CF−T9D−SV」、厚さ12μm)のマット面上に流延塗布した後、窒素ガス雰囲気下、290℃で3時間加熱処理した。次いで、銅箔をエッチング除去することで、単層の液晶ポリエステルフィルム(以下、「液晶ポリエステルフィルム(1)」という。)である絶縁基材を得た。また、加熱処理の温度を290℃に代えて310℃としたこと以外は同様の方法で、単層の液晶ポリエステルフィルム(以下、「液晶ポリエステルフィルム(2)」という。)である絶縁基材を得た。示差走査熱量分析により、液晶ポリエステルフィルム(1)及び(2)の融点を測定した結果、それぞれ335℃及び347℃であった。
【0084】
(COF用積層板の製造)
アラミドクッション材(イチカワテクノファブリクス社製、厚さ3mm)の上に、SUS304板(厚さ5mm)、スペーサー用銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)、積層用銅箔(福田金属社製「CF−T9D−SV」、厚さ12μm)、液晶ポリエステルフィルム(2)、液晶ポリエステルフィルム(1)、液晶ポリエステルフィルム(1)、液晶ポリエステルフィルム(2)、積層用銅箔(福田金属社製「CF−T9D−SV」、厚さ12μm)、スペーサー用銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)、及びSUS304板(厚さ5mm)をこの順に重ね、その上にさらにアラミドクッション材(イチカワテクノファブリクス社製、厚さ3mm)を載せた。そして、この状態で、高温真空プレス機(北川精機社製「KVHC−PRESS」、縦300mm、横300mm)を用いて、0.2kPaの減圧下、340℃、5MPaの条件で20分間加熱プレスすることにより、銅箔付き多層絶縁基材であるCOF用積層板を得た。得られたCOF用積層板の主たる構成を表1に示す。
【0085】
<COF用積層板の評価>
(曲げ弾性率の評価)
上記各実施例及び比較例で得られたCOF用積層板について、3点曲げ試験により曲げ弾性率を測定した。すなわち、COF用積層板の銅箔をエッチング除去した後、幅10mmの短冊状に切り出した3個の試験片を作製し、それぞれの試験片に対して、下部支点間距離が「16×絶縁基材の厚さ(mm)+6.4mm」となるように位置を調整し、0.5mm/分の速度で曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
(屈曲性の評価)
上記各実施例及び比較例で得られたCOF用積層板を、幅1cm、長さ5cmの大きさに切断して試験片とし、その長手方向の両端を持って同方向に5回曲げたときの試験片の形状から、下記基準に従って屈曲性を評価した。結果を表1に示す。
◎:試験片の両端を接触させることができ、屈曲箇所に歪みがない。
○:試験片の両端を接触させることができるが、屈曲箇所に歪みがある。
×:試験片の両端を接触させようとすると、試験片が折れる。
【0087】
【表1】

【0088】
上記評価結果から明らかなように、実施例1〜3の積層板は、絶縁層が絶縁基材として液晶ポリエステル含浸基材を用いたものであり、絶縁層の厚さが所定の範囲であることで、十分な剛性と屈曲性を有していた。
これに対して、比較例1及び2の積層板は、絶縁層が絶縁基材として液晶ポリエステル含浸基材を用いたものであったが、絶縁層の厚さが薄くて剛性が低過ぎたため、曲げ弾性率を測定できなかった。また、比較例3の積層板は、同様に絶縁層が絶縁基材として液晶ポリエステル含浸基材を用いたものであったが、絶縁層の厚さが厚く、屈曲性が不十分であった。また、比較例4の積層板は、絶縁層が絶縁基材として液晶ポリエステルフィルムを用いたものであったため、剛性が低過ぎ、曲げ弾性率を測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、マイクロエレクトロニクス分野でのCOFに利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・COF用積層板、10・・・絶縁層、11,12,13,14・・・絶縁基材、15,16・・・金属層、15’,16’・・・金属箔、91・・・金属板、92・・・クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機クロス及び液晶ポリエステルを含み、且つ厚さが150〜300μmである絶縁層を備え、該絶縁層の少なくとも一方の表面に金属層が設けられたことを特徴とするCOF用積層板。
【請求項2】
前記絶縁層が、複数の絶縁基材が積層されたものであり、前記絶縁基材が、前記無機クロスに前記液晶ポリエステルが含浸されたものであることを特徴とする請求項1に記載のCOF用積層板。
【請求項3】
前記無機クロスがガラスクロスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOF用積層板。
【請求項4】
前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のCOF用積層板。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【請求項5】
前記液晶ポリエステルが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記一般式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記一般式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記一般式(3)で表される繰返し単位を10〜35モル%有することを特徴とする請求項4に記載のCOF用積層板。
【請求項6】
前記一般式(3)において、X及び/又はYがイミノ基であることを特徴とする請求項4又は5に記載のCOF用積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−4952(P2013−4952A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138222(P2011−138222)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)