説明

CPAPシステムの流量及び圧力推定を向上させる方法並びに装置

【課題】呼吸サイクル全体を通じて供給された圧力の精度を向上させたCPAP装置を提供する。
【解決手段】流れ発生器のマスク圧力の推定値は、流量導関数が正である時間間隔ごとでは実際のマスク圧力を大幅に超過する。他方で、測定及び推定マスク圧力は、流量導関数が負である時間間隔では実質的に同一である。患者インターフェースにおける圧力の揺れが、流れ発生器からの空気流量の増加時における空気供給導管中の空気流のイナータンスを示す圧力降下を考慮に入れて、空気供給導管を通過する流量発生器からの空気流量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠呼吸障害を治療するために一定量の空気を陽圧で患者に供給する方法及び装置に関する。本発明は患者回路のモデル精度を向上させる方法に関する。1つの事例では、本発明は、呼吸サイクル全体を通じて供給された圧力の精度を向上させる方法及び装置に関する。本発明の別の事例は、開放性無呼吸及び閉鎖性無呼吸を測定するアルゴリズムを使用する際に応用されるものである。本発明は、患者回路の動的特徴を推定しなければならない全てのアルゴリズムに応用可能である。
【発明の背景】
【0002】
A.陽圧CPAP装置の概要
米国特許第4944310号明細書に教示された「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)及び他の形態の睡眠呼吸障害(SDB)を治療する経鼻式持続的気道陽圧法(経鼻式CPAP)」というサリバン(Sullivan)による発明以来、装置を使用してレスメド社(ResMed Limited)製のMIRAGE(登録商標)及びULTRA MIRAGE(登録商標)のようなマスクに供給された圧力を制御することによって患者の快適さを高めることに多大な努力が注がれてきた。
【0003】
レスメド社製のS7(商標)及びS8(商標)のような、幾つかのCPAP送風器装置が、患者の呼吸サイクル全体を通じて一定の陽圧、例えば、15cmHOで、ある一定量の空気を供給する。電気モータ及び扇風器を具備する送風器が、マスクのような患者インターフェースに特定の圧力を供給するために構成されうる。患者が、このようなシステムを使って息を吸うとき、マスク内の圧力が僅かな量だけ低下しうる。患者が、このようなシステムを使って息を吐くとき、マスク内の圧力は僅かな量だけ上昇しうる。マスク圧力におけるこれらの変動は、「揺れ」と呼ばれる。幾つかの送風器は、この揺れを低減するために、マスク圧力に対する患者の労作の影響を打ち消すフィードバックを圧力コントローラで利用する。これらの装置は、マスク圧力及び流量を測定及び監視して、マスク圧力を一定値に維持するように流れ発生器制御を調節する必要がある。
【0004】
B.精確なマスク圧力測定の必要性
これらの装置の各々に必要とされるものは、患者インターフェースにおいて圧力及び流量を測定する方法である。マスクにおける圧力及び流量を精確に測定するために、これらをマスクにおいて測定するか又はこれらを圧力発生器の近傍で測定し、且つ様々な要因を補正するが、これらの要因の1つが、圧力センサとマスクとの間のある一定の長さの管系内部における圧力損失である。
【0005】
i.管系内部における損失による圧力補正
CPAP装置の管系内部における圧力損失を論じた米国特許は、「Administration Of CPAP Treatment Pressure In Presence Of Apnea」と題する同第6817361号明細書、「Assisted Ventilation To Match Patient Respiratory Need」と題する同第6810l876号明細書、「Methods And Apparatus For Determining Instantaneous Elastic Recoil And Assistance Pressure During Ventilatory Support」と題する同第6688307号明細書、「Determination Of Patency Of The Airway」と題する同第6675797号明細書、「Method For Calculating The Instantaneous Inspired Volume Of A Subject During Ventilatory Assistance」と題する同第6575163号明細書、「Assisted Ventilation To Match Patient Respiratory Need」と題する同第6532957号明細書、「Administration Of CPAP Treatment Pressure In Presence Of APNEA」と題する同第6502572号明細書、「Method For Providing Ventilatory Assistance In A Spontaneously Breathing Subject」と題する同第6484719号明細書、「Administration Of CPAP Treatment Pressure In Presence Of APNEA」と題する同第6367474号明細書、「Apparatus And Method For Controlling The Administration Of CPAP Treatment」と題する同第6363933号明細書、「Determination Of The Occurrence Of An Apnea」と題する同第6138675号明細書、「Determination Of Patency Of Airway」と題する同第6029665号明細書、「Detection Of Apnea And Obstruction Of The Airway in The Respiratory System」と題する同第5704345号明細書、及び「Control For CPAP Apparatus」と題する同第5551419号明細書である。
【0006】
これらの特許は、空気圧発生器の近傍に流量及び圧力変換器を取り付け、次いで、管系を通過する流量と管系の圧力−流量特徴の知識(例えば、ルックアップ表による)とから、空気圧発生器からマスクまでの管系に沿った圧力損失を計算することによって、マスクにおける又はその近傍の空気流量及びマスク圧力の測定に対する別法を提案する。その場合に、マスクにおける圧力は、圧力発生器における圧力から管圧力降下を差し引くことによって計算される。
【0007】
圧力測定点からマスクまでの圧力損失は、公式、即ち、
ΔP=R*Q^2
に従って、送風器における流量と、測定点からマスクまでの(二次の)抵抗とから計算されたが、上式で、ΔPはホース圧力降下であり、Rはホース抵抗であり、且つQは流量である。その場合に、マスク圧力は、測定されたセンサ圧力からホース圧力降下を差し引くことによって計算される。この技法を使用するためには、流量センサ、例えば、呼吸気流計及び差圧変換器が必要である。例えば、米国特許第6810876号明細書、17欄25〜50行を参照されたい。
【0008】
米国特許第5551419号明細書も、マスク内の空気圧が、基部ユニット筐体及び圧力発生器の内部圧力と供給ホース中の圧力降下との関数であることを認識する。それは、後者をホース通過流量の関数として説明し、マスクにおける圧力を精確に示す信号を生成するために圧力信号と流量信号とを組み合わせることが必要であると結論する。米国特許第5551419号明細書、5欄7〜12行を参照されたい。
【0009】
安定したマスク圧力を維持するために、圧力発生器において望ましい瞬間圧力を生成するように、管に沿った圧力降下がマスクにおける望ましい設定圧力に追加される。幾つかの事例では、圧力発生器のコントローラは、望ましい圧力がより精確に実現されるように、圧力変換器からの負のフィードバック入力を有する。例えば、米国特許第5704345号、8欄26〜55行を参照されたい。
【0010】
ii.揺れを管理できないこと
患者の快適さのために管理されねばならない1つの重要な要因は、例の揺れである。例えば、ReSMed S8吸入及び呼吸治療装置では、特定の圧力安定要件が満たされることを保証するために、吸気相と呼気相との間の差圧、即ち、揺れは、独国MDS仕様を満たすように0.5hPa(「ヘクトパスカル」)を超えてはならない。1hPa=1.04cmHO。吸気及び呼気の設定通気圧からの変動に関する許容限度は、
通気圧<10hPa:*p<=0.5hPa
通気圧>=10hPa:*p<=1hPa
である。
【0011】
圧力センサがマスクに存在しないとき、マスク圧力を測定する従来技術の技法は、揺れをこれらの要件と一致するように制御できなかった。必要とされることは、揺れのより適切な制御を実現するために、情報が圧力発生器にフィードバックされうるように、より精確にマスク圧力を測定することである。
【0012】
iii.動的特性を予測できないこと
マスク圧力測定は又、他の治療及び制御関連アルゴリズムにおいても使用されうる。このような1つのアルゴリズムが、強制振動を使用する閉鎖性呼吸器無呼吸と開放性呼吸器無呼吸との区別である(例えば、デビッド バシン(David Bassin)の「Discriminating Closed and Open Respiratory Airway Apneas by Forced Oscillation Measurements at the Flow Generator」、米国特許仮出
願第60/823973号明細書)。このアルゴリズムは、マスク圧力及び流量の精確な
測定を必要とする。従来技術で提示されたホース降下モデルは、空気供給システムの動的特徴を精確にモデル化できず、したがってマスク圧力及び流量を精確にモデル化することができない。
【発明の概要】
【0013】
A.マスク圧力誤差の識別
流れ発生器の箇所における又はその近傍の流量及び圧力の測定値に基づくマスク圧力の推定値と、高品質の圧力変換器を使用してマスクにおいて精確に測定された真のマスク圧力との間に、従来技術のCPAP装置では相違が存在することが突き止められている。この相違は、患者の呼吸及び強制振動によって引き起こされうるマスク圧力及び流量の変化時に著しい。
【0014】
B.推定マスク圧力と流量導関数との間の関係
空気供給システムにおける推定圧力損失は下式、即ち、
【数1】


のように、より適切にモデル化される。ここで、Qはホースを通過する流量であり、K及びKは経験的に求められた定数であり、且つKは分析的に求められたフローイナータンスである。
【0015】
強制振動(〜4Hz)時のようなより高い周波数変化の事例では、このモデルは、圧力損失を遙かにより精確にモデル化する。
【0016】
圧力及び流量振動が複素数として表され、且つ動作点付近で線形化される場合、圧力振動は、下式、即ち、
【数2】


として計算されうる。
【0017】
上式で、
【数3】


は平均流量であり、ωは振動周波数であり、且つQACは複素数として表された流量振動である。
【0018】
C.マスク圧力の揺れと流量導関数との間の関係
注意深い観察及び測定によって、予期しないことであったが、この相違は、流れ発生器の箇所において又はその近傍で測定された流量の導関数が正であるときに最も著しく、その箇所における流量の導関数が負であるときに僅かであることが測定された。さらには、流量の導関数dQ/dtが正であるとき、相違ΔPは、時間に関して流量の導関数に比例することが判明した。即ち、
ΔP=(k)dQ/dt
である。
【0019】
i.圧力イナータンスの経験的理解
この相違の大きさは、流動する空気の慣性の物理的効果に関連し、この効果は、差圧によって引き起こされた加速度の抵抗となることも判明した。空気の圧縮及び全ての熱力学的効果を無視すると、
ΔP=(ρl/A)dQ/dt
である。ここで、ρは空気密度であり、lは管系の長さであり、Aは管系の断面積であり、且つQは時間の関数としての流量である。空気は圧縮可能であり、圧縮により温度変化を蒙るけれども、上記の公式は、正のdQ/dtに関して観察されたデータに非常によく適合するが、それは、この効果が空気のイナータンスであることを示唆する。しかし、この公式は、それが何故に負の流量導関数に関しては同様の相違が存在しないかを説明しないので、経験的であると考えねばならない。
【0020】
D.本発明の態様
本発明の一態様によれば、CPAP装置の流れ発生器における圧力の推定値に基づくマスク圧力の測定を向上させる方法及び装置が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、揺れを予め設定された制限値の間に維持するように、呼気時の圧力を第1の水準から精確に第2の水準まで低減する、睡眠呼吸障害を治療するCPAP装置が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、送風器によって生成された圧力が閾値を超えるときにモータを惰性動作させることによって、及び揺れを予め設定された制限値の間に精確に維持するように圧力を調整することによって、送風器の電気モータによって生成された圧力を制御する方法が提供される。2004年6月18日に出願された、参照により本明細書に組み込まれる同時係属の米国特許出願第10/871970号明細書を参照されたい。
【0023】
本発明の別の態様では、第1の圧力水準は、流量の導関数が実行時に計算され、負にならないようにクリッピングされ、且つ所定の値によって上限が設定される自動的なアルゴリズムに従って決められる。制限の目的は、マスクにおける漏れの幾つかの悪影響を回避することである。
【本発明の詳細な説明】
【0024】
A.典型的な装置の説明
図1は本発明の実施形態に係る装置を示す。ブラシレス電気モータ10にインペラ12が取り付けられている。インペラ12は、渦形室36の中に位置する。モータ10は、モータコントローラ24(適切なコントローラにはTMS320LC2402又はMC33035ICが含まれる)の制御下にある。モータは、モータの回転数及び電流をそれぞれ示す信号を供給するセンサ32、34を含む。モータの巻回が励磁されるとき、インペラは回転する。空気が、インペラの入口を介して引き込まれて運動量を獲得する。空気がインペラから流出して渦形室に流入するとき、その空気は速度が変化して圧力を発生する。空気が渦形室から流出し、流量及び圧力センサ28、30(SMI5652−003流量センサ及びSMI5652−008又はMPX2010圧力センサのような)をそれぞれ通過して、空気供給導管16(例えば、スムース−ボアプラスチックス社(Smooth−bore Plastics)製)に達し、次に、この導管は、例示された実施形態では、鼻マスク、例えば、レスメド社製のMIRAGE(登録商標)又はULTRA MIRAGE(登録商標)マスクである患者インターフェース18に連結される。患者インターフェースの他の形態、例えば、全顔マスク、鼻プロング、及び鼻クッションが使用されてもよい。
【0025】
流量及び圧力センサ28、30は、データをマイクロコントローラ14に供給する。適切なマイクロコントローラは、2〜20MHzのクロックレート、8×10ビットのA/D変換器、並びに多様な入力及び出力特性を有する32ビットの縮小命令セットコンピューティング装置である日立(HITACH)SH7032/34を含む。マイクロコントローラ14は、アクセラレイテッド テクノロジーズ社(Accelerated Thechnologies Incorporated)製のNucleus Plusリアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を使用する。本発明の1つの形態では、本装置は所定のCPAP圧力を供給するが、このような装置は、レスメド社製のS7 ELITEである。本発明の別の形態では、マイクロコントローラ14は、無呼吸及び呼吸器系の気道閉塞を検出する方法並びに装置を教示する米国特許第5704345号明細書(バーソン−ジョーンズ(Berthon−Jones))に従ってCPAP治療を施すようにプログラムされる。米国特許5704345号明細書の内容は、ここに相互参照によって組み込まれる。
【0026】
本装置は、表示器22、例えば、2ライン×16キャラクタLCD又は同様の表示器装置を含む。本装置は、キーパッド26、例えば、バックライト式シリコーンスイッチを使用するものを含む。本装置は又、スカイネット社(SKYNET)製の絶縁等級IIの24Vで40Wを供給する電源も含む。本装置は、外部装置との通信を可能とするインターフェース20を含みうる。例えば、適切なインターフェースチップは、マキシム社(MAXIM)からのMAX3130/MAX3131である。これらのチップはIrDA及びRS−232通信の両方を行う。
【0027】
レスメド社製のS7 ELITEのようなCPAP装置は、本発明を組み込むように適合されうる。一般に、本発明の実施形態に係るCPAP装置のコントローラは、4から25cmHOまでの範囲内のCPAP圧力を供給するようにプログラムされる。本装置の自動調節形態では、AutoSet SPIRITのように、及び上述の米国特許第5704345号明細書に教示されているように、CPAP装置は、鼾、無呼吸、又は流量平坦化によって示される気道の一部の又は完全な閉塞を克服若しくは防止するためにCPAP圧力を増大するようにプログラムされる。
【0028】
B.マスク圧力が流れ発生器推定値よりも降下する
図2は、流れ発生器の近傍に配置された図1の流量及び圧力センサ28及び30に基づいて従来技術によるマスク圧力の推定値と比較された、マスク中のハネウェル(Honeywell)圧力変換器で測定された実際のマスク圧力の典型的な比較を示す。この図で分かるように、流れ発生器のマスク圧力の推定値は、流量導関数が正である時間間隔ごとでは実際のマスク圧力を大幅に超過する。他方で、測定及び推定マスク圧力は、流量導関数が負である時間間隔では実質的に同一であることが理解されうる。
【0029】
図4は、同じデータに基づいており、フローイナータンスを補正していない揺れを示す。この図で理解されうるように、「1分揺れ」として識別された曲線で示された揺れが、あらゆる箇所で0.5cmHO制限を上回っている。
【0030】
図6は、フローイナータンスの補正、即ち、
ΔP=(ρl/A)dQ/dt
が行われている揺れを示す。この図で理解されうるように、「1分揺れ」として示された揺れは、あらゆる箇所で0.5cmHO制限を下回っている。0.5cmHOは、揺れに関する0.5hPa標準を満たすことに留意されたい。
【0031】
フローイナータンスの補正は、以下の値を使って計算された。即ち、
ρ=空気密度(1.19kg/m^3)
l=長さ(2m)
A=断面積(d=0.019m)、[A=Πd^2/4]
これらの値で、dQ/dt=1.6L/s^2、及びΔP=13.43Pa=1.4mmHOが得られる。
【0032】
C.イナータンス公式に関する基本原理
使用された方程式に関して、流れ発生器がマスク圧力を増大させるように加速するとき、圧力の増大の結果として加速される空気質量の慣性の効果を含むべき理論的基本原理が伴う。この計算は、差圧下で流動する空気の質量の運動量の変化に基づいている。図3に示されているように、断面積Aの管系の長さlを占有する、密度ρの空気の質量を考えられたい。それは、密度掛ける容積によって与えられる質量m、即ち、
m=ρlA
を有する。この質量mは、
v=Q/A
によって流量Qに関連付けられる速度vで左側に流動している。質量mの運動量Γはmvであり、即ち、
Γ=ρlQ
である。流れ発生器が質量の背後で圧力を増大させたことにより、質量mの両端に差圧ΔPが存在する。これは質量に力AΔPを及ぼし、この質量を加速してその運動量を増大させる。即ち、
AΔP=dΓ/dt=ρldQ/dt
ΔP=(ρl/A)dQ/dt
である。
【0033】
実際の測定から、流量導関数が正のとき、この公式は正確な値のみを与えることに本発明者は留意する。
【0034】
D.イナータンス公式の実施態様
流量の導関数は、実行時の変換値として計算される。この変換値は、導関数の負の値に関してゼロに設定され、且つ導関数の正の最大値が切り捨てられることによって、導関数とは異なる。これが、図5では、計算された導関数のクランピングと呼ばれる。図5は、連続的なサンプリング時間で連続的なQ値を差し引くことから測定された、dQ/dtの実際値からの変換値を示す。したがって、実際の導関数が負であれば、変換されたdQ/dtは0であり、実際の導関数が2.5L/S^2を超えれば、変換されたdQ/dtは、この値2.5L/S^2であり、そうでなければ、変換されたdQ/dtは実際値に設定される。本出願は、2.5L/S^2で変換されたdQ/dtのクリッピングを説明するが、クリッピングは他の制限値でも行われうることが理解されるべきである。クリッピング制限は、例えば、マスクの取外し又は咳き込みによる流量の突発的な変化に対して補償するための安全又は保護機構である。使用に際して、クリッピングは1を超える任意の値でよい。
【0035】
i 圧力低減アルゴリズム
一般に、シーケンスは以下の段階を踏む。
(i)吸気から呼気への移行を検出すると、より少ないエネルギーがモータに入力され、dQ/dtは負である。
(ii)呼気時に患者マスク(又はどんなインターフェースが利用されても)内の圧力が最低圧力水準に達するとき、その圧力を呼気に適切な水準に維持するように、より多くのエネルギーがモータに入力される。
(iii)呼気から吸気への移行を検出すると、圧力を制御するためにモータ電流が変更され、その結果として、モータ回転数が増大される。これは、流量の増大を引き起こし、dQ/dtは正である。dQ/dtが計算され、その変換された(クランピングされた)値によって置き換えられる。
(iv)マスク内の圧力に起因しうる値は、ΔP=(ρl/A)dQ/dtだけ減少するが、前式で、ρは空気密度であり、lは管系の長さであり、Aは管系の断面積であり、Qは時間の関数としての流量であり、且つdQ/dtは流量導関数の変換された(クランピングされた)値である。
【0036】
本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、これらの実施形態は本発明の原理の応用を例示するものに過ぎないことが理解されるべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、数多くの変更が本発明に実施されてもよく、且つ他の配置も考案されうる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るCPAP装置を示す。
【図2】イナータンス補正前における、実際のマスク圧力とマスク圧力の流れ発生器推定値との比較を示す。
【図3】非定流時における空気の柱の動きを模式的に示す。
【図4】フローイナータンスの補正を行わない揺れを示す。
【図5】流量の計算された導関数のクランピングを示す。
【図6】フローイナータンスの補正が行われた揺れを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ発生器と、患者インターフェースと、空気を前記流れ発生器から前記患者インターフェースまで供給する空気供給導管と、前記流れ発生器からの圧力を測定する圧力センサと、前記流れ発生器からの流量を測定する流量センサと、空気が前記空気供給導管を介して前記患者インターフェースに望ましい圧力で供給されるようにする制御機構とを有するCPAP装置において、前記患者インターフェース内の圧力を制御する方法であって、
前記流れ発生器を制御するステップを含み、
流量の増加時の前記患者インターフェース内の圧力が、前記圧力センサにおいて測定された圧力よりも、前記空気供給導管内の空気のイナータンスを示す量だけ大きくなるように制御される、方法。
【請求項2】
前記イナータンスがΔP=(ρl/A)dQ/dtであり、前式でρは流量の密度であり、lは前記空気供給導管の長さであり、Aは前記空気供給導管の断面積であり、dQ/dtは流量の変化率である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給導管内の空気のイナータンスを示す前記量が、所定の値によって制限される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
流れ発生器と、患者インターフェースと、空気を前記流れ発生器から前記患者インターフェースまで供給する空気供給導管と、前記流れ発生器からの圧力を測定する圧力センサと、前記流れ発生器からの流量を測定する流量センサと、空気が前記空気供給導管を介して前記患者インターフェースに望ましい圧力で供給されるようにする制御機構とを有するCPAP装置において、前記患者インターフェース内の圧力を制御する方法であって、
前記流れ発生器を制御するステップを含み、
流量の増加時の前記患者インターフェース内の圧力が、前記圧力センサにおいて測定された圧力よりも、前記空気供給導管内の空気の流量の導関数に応じる量を示す量だけ大きくなるように制御される、方法。
【請求項5】
前記流量の導関数に応じる前記量がΔP=(ρl/A)dQ/dtであり、前式でρは流量の密度であり、lは前記空気供給導管の長さであり、Aは前記空気供給導管の断面積であり、dQ/dtは流量の変化率である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記流量の導関数に応じる前記量が、所定の値によって制限される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
流れ発生器と、患者インターフェースと、空気を前記流れ発生器から前記患者インターフェースまで供給する空気供給導管と、前記流れ発生器からの圧力を測定する圧力センサと、前記流れ発生器からの流量を測定する流量センサと、空気が前記空気供給導管を介して前記患者インターフェースに望ましい圧力で供給されるようにする制御機構とを有するCPAP装置において、前記患者インターフェース内の圧力を、前記圧力センサにおいて測定された圧力よりも、前記空気供給導管内の空気のイナータンスを示す量だけ大きいものとして推定する方法。
【請求項8】
前記イナータンスがΔP=(ρl/A)dQ/dtであり、前式でρは流量の密度であり、lは前記空気供給導管の長さであり、Aは前記空気供給導管の断面積であり、dQ/dtは流量の変化率である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記空気供給導管内の前記空気のイナータンスを示す前記量が、所定の値によって制限される、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−91007(P2012−91007A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−286173(P2011−286173)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2008−535848(P2008−535848)の分割
【原出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD