説明

CXCL10産生抑制剤

【課題】CXCL10の産生亢進に起因する疾患の予防・治療薬の提供。
【解決手段】iC3b及びC4bから選ばれる補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドを有効成分とするCXCL10産生抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸炎、関節炎、乾癬、SLE等の予防・治療剤として有用なCXCL10産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、多様な病態を指す疾患の総称であり、その特徴は、免疫学的寛容機構が壊れ、自分自身の正常な細胞や組織に対して過剰に応答することにより自己組織障害を惹起するものである。例えば、その中のひとつである全身性エリテマトーデス(SLE)は、10万人あたり10〜100人が発症する難病である。しかしながら、これを治療する有効な手立ては、免疫抑制剤やステロイドなど治療薬は限られている。
【0003】
近年、補体のC4がSLE発症の遺伝的素因になっている可能性が示され(非特許文献1及び2)、またI型インターフェロン(type I IFN)がこれに関与していることが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、これら事実を踏まえた有効な治療法は、未だ開発されていないのが現状である。また、最近の報告として、補体受容体のCR2がtype I IFNのレセプターとして機能する可能性が示され(非特許文献4)、B細胞の制御機構がCR2を介してtype I IFNが関与するという新たなモデルが提唱されつつある(非特許文献5)。
【0004】
Type I IFNの発現誘導と、type I IFNの本来のレセプターであるインターフェロンレセプター(IFNR)シグナル伝達機構は、様々なシグナル伝達機構の中でも、詳しく調べられているものの一つである。特に、近年では、Toll-like receptors (TLRs)のシグナル伝達機構解明に伴い、type I IFNの誘導機構が明らかになってきている。例えば、TLRsに菌体成分やウイルスなどが結合すると、autocrine/paracrineにIFN−βの産生が誘導され、CXC chemokine interferon (IFN)-γ-inducible protein-10 (IP−10/CXCL10)などのIFN誘導性蛋白質が産生されることが知られている(非特許文献6及び7)。
SLEを始め、大腸炎、関節炎、乾癬、全身性硬化症、自己免疫神経炎症性疾患等の免疫疾患は、CXCL10の産生亢進によって発症することが示唆されていることから、CXCL10の産生を抑制することは斯かる疾患の予防・治療に有効であると考えられる。
【0005】
補体は、免疫反応の一部を担うことにより、種々の生体反応に関与することは良く知られているが、補体断片にCXCL10産生抑制作用が有ることはこれまでに知られていない。
【非特許文献1】Yang, Y., E. K. Chung, B. Zhou, K. Lhotta, L. A. Hebert, D. J. Birmingham, B. H. Rovin, and C. Y. Yu., The intricate role of complement component C4 in human systemic lupus erythematosus. Curr Dir Autoimmun 7:98-132(2004).
【非特許文献2】Manderson, A. P.. M. Botto, and M. J. Walport., The role of complement in the development of systemic lupus erythematosus. Annu Rev Immunol 22:431-456(2004).
【非特許文献3】Banchereau, J., and V. Pascual., Type I interferon in systemic lupus erythematosus and other autoimmune diseases. Immunlty 25:383-392(2006).
【非特許文献4】Asokan, R., J. Hua. K. A. Young. H. J. Gould, J. P. Hannan, D. M. Kraus, G. Szakonyi, G. J. Grundy, X. S. Chen, M. K. Crow, and V. M. Holers., Characterization of human complement receptor type 2 (CR2/CD21) as a receptor for IFN-alpha: a potential role in systemic lupus erythematosus. J Immunol 177:383-394(2006).
【非特許文献5】Holers, V. M., and L. Kulik., Complement receptor 2, natural antibodies and innate immunity: Inter-relationships in B cell selection and activation. Mol Immunol 44:64-72(2007).
【非特許文献6】Toshchakov. V., B. W. Jones, P. Y. Perera, K. Thomas, M. J. Cody, S. Zhang, B. R. Williams, J. Major, T. A. Hamilton, M. J. Fenton, and S. N. Vogel., TLR4, but not TLR2, mediates IFN-beta-induced STATlalpha/beta-dependent gene expression in macrophages. Nat Immunol 3:392-398(2002).
【非特許文献7】Thomas, K. E., C. L. Galligan, R. D. Newman, E. N. Fish, and S. N. Vogel., Contribution of interferon-beta to the murine macrophage response to the toll-like receptor 4 agonist, lipopolysaccharide. J Bio Chem 28l:31l19-31130(2006).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、type 1 IFNの介在すると考えられる免疫系を中心とした種々の疾患の中で、CXCL10の産生亢進に起因する疾患の予防・治療薬を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題に関し、補体断片に着目して検討したところ、iC3b及びC4bに代表される補体断片が、IFN−βの刺激により誘導されるCXCL10の産生を抑制する作用を有し、CXCL10の産生亢進に起因する疾患の予防・治療に有用であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に係るものである。
1)iC3b及びC4bから選ばれる補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドを有効成分とするCXCL10産生抑制剤。
2)以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドを有効成分とするCXCL10産生抑制剤。
(a)配列番号:2のアミノ酸残基23〜667番、785〜1303番及び1325〜1663番の領域から構成されるポリペプチド
(b)配列番号:4のアミノ酸残基20〜675番、757〜1446番及び1454〜1744番の領域から構成されるポリペプチド
(c)上記(a)又は(b)のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つCXCL10産生抑制活性を有するポリペプチド
3)CXCL10の産生亢進状態を予防、改善及び/又は治療するものである上記1)又は2)に記載のCXCL10産生抑制剤。
4)XCL10の産生亢進状態が大腸炎、関節炎、乾癬、全身性硬化症、自己免疫神経炎症性疾患及びSLEから選ばれる疾患又は症状である上記3)のCXCL10産生抑制剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書におけるアミノ酸、ポリペプチド、塩基配列等の略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野における慣用記号に従うものとする。
【0010】
本発明のCXCL10産生抑制剤は、iC3b及びC4bから選ばれる補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドを有効成分とするものである。
iC3bは、補体の活性化(古典経路・2次経路・マンノースレクチン経路全ての活性化経路)によって生じる補体成分のC3の分解産物の一つである。具体的には、配列番号:2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、すなわち配列番号:1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド(ヒトC3遺伝子)の発現物が限定分解されたものが該当する。限定分解され切断される部分は、配列番号:2で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基672〜784番と1304〜1324番の部分であり、除かれた部分はiC3bとは異なる補体断片産物(それぞれC3aとC3f)となる。ちなみに、シグナルペプチドの部分(配列番号:2で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1〜22番)と、プロペプチドの部分(配列番号:2で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基668〜671番)は、分解されてから産生分泌される部分である。
斯かるiC3bは、C3を酵素処理することにより人為的に作出することが可能である。
【0011】
C4bは、補体の活性化(古典経路・マンノースレクチン経路の活性化経路)によって生じる補体成分のC4の分解産物の一つである。具体的には、配列番号:4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、すなわち配列番号:3で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド(ヒトC4遺伝子)の発現物が限定分解されたものが該当する。(ヒトC4遺伝子には2つの遺伝子C4AとC4Bが知られており、相同性は非常に高い。代表例として本件ではC4A遺伝子配列とそのアミノ酸配列を記載した。)限定分解され除かれる部分は、配列番号:4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基680〜756番である。この部分は、切り出された後、C4bとは異なる補体断片産物(C4a)となる。ちなみに、シグナルペプチドの部分(配列番号:4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1〜19番)と、プロペプチドの部分(配列番号:4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基676〜679番および1447〜1453番)は、分解されてから産生分泌される部分である。
斯かるC4bは、C4を酵素処理することにより人為的に作出することが可能である。
【0012】
本発明においては、iC3b又はC4bに換えて或いはこれらと共に、これらと機能的に同等のポリペプチドを用いることができる。
ここで「iC3b又はC4bと同等の機能を有するポリペプチド」とは、例えば、以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列(改変されたアミノ酸配列)からなり、且つiC3b又はC4bの持つCXCL10産生抑制活性を有する哺乳動物のペプチドが挙げられる。
(a)配列番号:2のアミノ酸残基23〜667番、785〜1303番及び1325〜1663番の領域から構成されるポリペプチド
(b)配列番号:4のアミノ酸残基20〜675番、757〜1446番及び1454〜1744番の領域から構成されるポリペプチド
ここで、「CXCL10産生抑制活性」とは、例えば、血液細胞に対してl型IFNの刺激によりCXCL10が産生される系において、その産生を抑制する作用を意味する。また、哺乳動物としては、例えばヒト、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ラット、ウサギなどが例示できる。
【0013】
ここで、「1若しくは複数」の範囲は、該ポリペプチドがCXCL10産生を抑制する活性を有すること限度として特に限定されないが、例えば、1〜30個、好ましくは1〜15個、更に好ましくは1〜数個、例えば1〜5個、より好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個、更に特に好ましくは1又は2個が挙げられる。
【0014】
また、当該ポリペプチドにおけるアミノ酸の置換としては、特に制限されないが、ポリペプチドの表現型に変化を来さないという観点から、類似アミノ酸同士による置換が好ましい。具体的には、類似アミノ酸としては、以下のようにグループ分けができる:
芳香族アミノ酸:Phe、Trp、Tyr
脂肪族アミノ酸:Ala、Leu、Ile、Val
極性アミノ酸:Gln、Asn
塩基性アミノ酸:Lys、Arg、His
酸性アミノ酸:Glu、Asp
水酸基を有するアミノ酸:Ser、Thr
側鎖の小さいアミノ酸:Gly、Ala、Ser、Thr、Met
【0015】
更に、上記ポリペプチドにおけるアミノ酸の欠失、挿入又は付加については、ポリペプチドの高次構造に大きく影響しない領域、例えばN末端領域又はC末端領域において為されていることが望ましい。
【0016】
特定のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加させる技術は公知であり、例えば後述するサイトスペシフィック・ミュータゲネシスなどのような各種方法を採用することができる。
【0017】
本発明の補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドは、C3、C4又はこれらのアミノ酸改変体(例えば、配列番号:2又は4で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド)を、血漿からの精製、遺伝子工学的手法、化学合成又はこれらを組み合わせることにより製造し、これらを公知の方法により限定分解等することにより製造できる。また、市販品を用いることもできる。
例えば、iC3bについては、血漿から公知の方法(例えば、1)J Exp Med 152:1625-1644(1980)., 2)J Biol Chem 256:3995-4006(1981)., 3)Adv Immunol 37:217-267(1985)., 4)Immunology 60:553-558(1987))或いは遺伝子工学的手法によってC3を製造し、公知の方法( 1)J Immunol 167:1490-1499(2001)., 2)J Biol Chem 263:14586-14591(1988)., 3)J Immunol 160:5596-5604(1998))によりC3を限定分解してC3bとし、これにfactor H及びfactor Iを作用させてiC3bを分離精製することにより製造できる。
【0018】
また、C4bについては、血漿から公知の方法(例えば、J Exp Med 152:1625-1644.)或いは遺伝子工学的手法によってC4を製造し、公知の方法( 1)J Immunol Methods 157:39-48(1993)., 2)J Biol Chem 278:38476-38483(2003)., 3)J Immunol 172:1670-1680(2004))により、例えばC4とC1sを反応させて、C4b monomerとdimerを得、これを分離することよりC4bを得ることができる。
【0019】
本遺伝子工学的手法によるC3、C4又はこれらのアミノ酸改変体の取得は、C3遺伝子及びC4遺伝子の配列情報に基づき、通常の遺伝子組換え技術〔例えば、Science, 224, 1431 (1984) ; Biochem. Biophys. Res. Comm., 130, 692 (1985);Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80, 5990 (1983)など参照〕を用いることによって行うことができる(C3:Proc Natl Acad Sci U S A 82:708-712(1985); J Biol Chem 274:5120-5130(1999); Methods Enzymol 223:46-61(1993);C4: Cell 36:907-914(1984); Immunogenetics 21:173-180(1985); Proc Natl Acad Sci U S A 87:6868-6872(1990); J Biol Chem 267:4171-4176(1992); Methods Enzymol 223:46-61(1993); Complement 1:187-193(1984)参照)。
【0020】
すなわち、当該遺伝子が宿主細胞中で発現できる組換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養し、次いで得られる培養物からC3、C4又はこれらのアミノ酸改変体を回収することにより行われる。
【0021】
宿主細胞としては、原核生物及び真核生物のいずれも用いることができる。例えば原核生物の宿主としては、大腸菌、枯草菌などの一般的に用いられるもののいずれでもよく、好適には大腸菌、とりわけエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12株を例示できる。真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、酵母などの細胞が含まれ、前者としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞〔Cell, 23: 175 (1981)〕、例えばCOS−1、COS−7やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞及びそのジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 77: 4216 (1980)〕などが、後者としては、サッカロミセス属酵母細胞などが好適に用いられる。勿論、これらに限定される訳ではない。
【0022】
原核生物細胞を宿主とする場合は、該宿主細胞中で複製可能なベクターを用いて、このベクター中にC3、C4又はこれらのアミノ酸改変体をコードする遺伝子が発現できるように該遺伝子の上流にプロモーター及びSD(シャイン・アンド・ダルガーノ)配列、更に蛋白合成開始に必要な開始コドン(例えばATG)を付与した発現プラスミドを好適に利用できる。上記ベクターとしては、一般に大腸菌由来のプラスミド、例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13などがよく用いられるが、これらに限定されず既知の各種のベクターを利用することができる。大腸菌を利用した発現系に利用される上記ベクターの市販品としては、例えばpGEX−4T(Amersham Pharmacia Biotech社)、pMAL−C2,pMAL−P2(New England Biolabs社)、pET21,pET21/lacq(Invitrogen社)、pBAD/His(Invitrogen社)などを例示できる。
【0023】
脊椎動物細胞を宿主とする場合の発現ベクターとしては、通常、発現しようとするC3、C4又はこれらのアミノ酸改変体をコードする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終了配列を保有するものが挙げられ、これは更に必要により複製起点を有していてもよい。該発現ベクターの例としては、具体的には、例えばSV40の初期プロモーターを保有するpSV2dhfr〔Mol. Cell. Biol., 1: 854 (1981)〕などが例示できる。上記以外にも既知の各種の市販ベクターを用いることができる。動物細胞を利用した発現系に利用されるベクターの市販品としては、例えばpEGFP−N,pEGFP−C(Clontrech社)、pIND(Invitrogen社)、pcDNA3.1/His(Invitrogen社)などの動物細胞用ベクター、pFastBac HT(GibciBRL社)、pAcGHLT(PharMingen社)、pAc5/V5−His,pMT/V5−His,pMT/Bip/V5−his(以上Invitrogen社)などの昆虫細胞用ベクターなどが挙げられる。
【0024】
また、酵母細胞を宿主とする場合の発現ベクターの具体例としては、例えば酸性ホスフアターゼ遺伝子に対するプロモーターを有するpAM82〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80: 1 (1983)〕などが例示できる。市販の酵母細胞用発現ベクターには、例えばpPICZ(Invitrogen社)、pPICZα(Invitrogen社)なとが包含される。
【0025】
プロモーターとしても特に限定なく、エッシェリヒア属菌を宿主とする場合は、例えばトリプトファン(trp)プロモーター、lppプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、PL/PRプロモーターなどを好ましく利用できる。宿主がバチルス属菌である場合は、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。酵母を宿主とする場合のプロモーターとしては、例えばpH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどを好適に利用できる。また、動物細胞を宿主とする場合の好ましいプロモーターとしては、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどを例示できる。
【0026】
尚、発現ベクターとしては、通常の融合蛋白発現ベクターも好ましく利用できる。該ベクターの具体例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させるためのpGEX(Promega 社)などを例示できる。
また、成熟ポリペプチドのコード配列が宿主細胞からのポリペプチドの発現、分泌を助けるポリヌクレオチド配列としては、分泌配列、リーダ配列などが例示できる。これらの配列には、細菌宿主に対して融合成熟ポリペプチドの精製に使用されるマーカー配列(ヘキサヒスチジン・タグ、ヒスチジン・タグ)、哺乳動物細胞の場合はヘマグルチニン(HA)・タグが含まれる。
【0027】
所望の組換えDNA(発現ベクター)の宿主細胞への導入法及びこれによる形質転換法としては、特に限定されず、一般的な各種方法を採用することができる。
【0028】
また得られる形質転換体は、常法に従い培養でき、該培養により所望のように設計した遺伝子によりコードされる目的蛋白質が、形質転換体の細胞内、細胞外又は細胞膜上に発現、生産(蓄積、分泌)される。
【0029】
該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択利用でき、培養も宿主細胞の生育に適した条件下で実施できる。
【0030】
かくして得られる組換え蛋白質は、所望により、その物理的性質、化学的性質などを利用した各種の分離操作〔「生化学データーブックII」、1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年 6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274 (1986); Eur. J. Biochem., 163, 313 (1987)など参照〕により分離、精製できる。
【0031】
該方法としては、具体的には、通常の再構成処理、蛋白沈澱剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧ショック法、超音波破砕、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せが例示でき、特に好ましい方法としては、C3又はC4に対する特異的な抗体を結合させたカラムを利用したアフィニティクロマトグラフィーなどを例示することができる。
【0032】
C3、C4又はこれらのアミノ酸改変体をコードする遺伝子は、本明細書に開示した塩基配列情報に基づいて、一般的遺伝子工学的手法により容易に製造・取得することができる〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)など参照〕。すなわち、C3遺伝子又はC4遺伝子が発現される適当な起源より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから本発明遺伝子に特有の適当なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択することにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613 (1981);Science, 222, 778 (1983)など〕。C3遺伝子及びC4遺伝子取得の一例を以下に示す。
【0033】
<C3遺伝子>
1)既存の報告より(de Bruijn, M. H., and G. H. Fey.,Proc Natl Acad Sci U S A 82:708-712(1985);Oran, A. E., and D. E. Isenman.,J Biol Chem 274:5120-5130(1999))、ヒト肝臓由来cDNAを鋳型にして、C3の全長cDNAをPCR法により増幅する。
2)プライマー対は、C3の完全長配列を増幅できるプライマー対であれば良い。また、任意のプラスミドベクターのマルチクローニングサイトへの移入を目的とし、プライマー配列に任意の制限酵素認識配列を付加しても良い。プライマー配列の一例として、5’-ccc tgcact gtc cca gca ccatg gga cc -3’(配列番号5)と5’-tgg ttg tct ttg ggt gcc cca act ga -3’(配列番号6)のプライマー対を用いる。
3)PCR増幅したC4 cDNAを哺乳細胞発現用プラスミドベクター(pSV, pMT−2,pcDNAシリーズなど)にライゲーションし、DNA配列を確認する。
【0034】
<C4遺伝子>
1)既存の報告より(Belt, K. T., M. C. Carroll, and R. R. Porter.,Cell 36:907-914(1984);Belt, K. T., C. Y. Yu, M. C. Carroll, and R. R. Porter.,Immunogenetics 21:173-180(1985))、ヒト肝臓由来cDNAを鋳型にして、C4AもしくはC4Bの全長cDNAをPCR法により増幅する。(C4AとC4Bは、98%以上相同である。)
2)プライマー対は、C4の完全長配列を増幅できるプライマー対であれば良い。また、任意のプラスミドベクターのマルチクローニングサイトへの移入を目的とし、プライマー配列に任意の制限酵素認識配列を付加しても良い。プライマー配列の一例として、5’-cct ctc ttg gat cct cca gcc atg agg-3’(配列番号7)と5’-atg gca atc agg ggt gcc cag gtg tga-3’(配列番号8)のプライマー対を用いる(このプライマー対はC4A,C4Bの両者が増幅される)。
3)PCR増幅したC4 cDNAを哺乳細胞発現用プラスミドベクター(pSV, pMT−2, pcDNAシリーズなど)にライゲーションし、DNA配列を確認する。
【0035】
上記の遺伝子の人為的改変手段としては、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987);同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105 (1986)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983)〕及びそれらの組合せ方法などが例示できる。より具体的には、DNAの合成は、ホスホルアミダイト法又はトリエステル法による化学合成によることもでき、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置上で行うこともできる。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適当な条件下で該鎖を共にアニーリングさせるか、又は適当なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用い相補鎖を付加するかによって、化学合成した一本鎖生成物から得ることもできる。
【0036】
本発明のポリペプチドは、配列番号:2又は4に示すアミノ酸配列情報に従って、一般的な化学合成法により製造することができる。該方法には、通常の液相法及び固相法によるペプチド合成法が包含される。
【0037】
ペプチド合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていく所謂ステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含する。本発明ポリペプチドの合成は、そのいずれによってもよい。
【0038】
ペプチド合成に採用される縮合法も常法に従うことができる。例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドなど)法、ウッドワード法などに従うことができる。
【0039】
これら各方法に利用される溶媒も、この種ペプチド縮合反応に使用されることの知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルなど及びこれらの混合溶媒などを挙げることができる。
【0040】
尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸乃至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第3級ブチルエステルなどの低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステルなどのアラルキルエステルなどとして保護することができる。
【0041】
また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばチロシン残基の水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第3級ブチル基などで保護してもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。更に、例えばアルギニン残基のグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、p−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基などの適当な保護基により保護することができる。
【0042】
保護基を有するアミノ酸、ペプチド及び最終的に得られる本発明ポリペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸などを用いる方法などに従って実施することができる。
【0043】
かくして得られる本発明ポリペプチドは、前記した各種の方法、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、向流分配法などのペプチド化学の分野で汎用される方法に従って、適宜精製することができる。
【0044】
斯くして得られる本発明の補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドは、後記実施例に示すとおり、IFN−β刺激によるCXCL10産生を抑制する作用を有することから、CXCL10産生が亢進されていると考えられている疾患、例えば大腸炎c(olitis)[1)Am J Pathol 155:331-336(1999), 2)J Immunol 17l:1401-1406(2003), 3)Inflamm Bowel Dis ll:799-805(2005)]、関節炎(arthritis)[J Immunol 169:2685-2693(2002).]、乾癬(psoriasis)[1)Endocrinol 148:2317-2325 (2007)., 2)J Invest Dermatol 124,1225-1233(2005)]、全身性硬化症(systemic sclerosis)[J Dermatol Sci 35:43-51(2004)]、自己免疫神経炎症性疾患(autoimmune neuroinflammatory diseases)[J Cell Biochem 92:213-222(2004)]、SLE[1) Cytokine 12:l561-1565(2000)., 2) Genes Immun 7:156-168]等に対して、その産生量を抑制する作用により有効に作用すると考えられる。
本発明のCXCL10産生抑制剤は、本発明の補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドから選ばれる少なくとも1種を活性成分として、それらの薬学的有効量を、適当な医薬担体乃至希釈剤と共に含有させて医薬組成物(医薬製剤形態)に調製される。
【0045】
該医薬製剤の調製に利用される医薬担体としては、製剤形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤或は賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。特に好ましい医薬製剤としては、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調製剤、界面活性剤などを適宜使用して調製される。
【0046】
上記において安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミンや通常のL-アミノ酸、糖類、セルロース誘導体などを例示できる。これらは単独で又は界面活性剤などと組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。
【0047】
L-アミノ酸としては、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸などのいずれでもよい。
【0048】
糖類としても、特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖などの単糖類;マンニトール、イノシトール、キシリトールなどの糖アルコール;ショ糖、マルトース、乳糖などの二糖類;デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの多糖類など及びそれらの誘導体などを使用できる。
【0049】
界面活性剤としても、特に限定はなく、イオン性及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。その具体例としては、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系などを使用できる。
【0050】
セルロース誘導体としても、特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用できる。
【0051】
上記糖類の添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.01−10mg程度の範囲とするのが適当である。界面活性剤の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.0001−0.01mg程度の範囲とするのが適当である。ヒト血清アルブミンの添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.001−0.1mg程度の範囲とするのが適当である。L−アミノ酸の添加量は、有効成分1μg当り約0.001−10mg程度とするのが適当である。また、セルロース誘導体の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.001−0.1mg程度の範囲とするのが適当である。
【0052】
上記医薬製剤中には、また各種の添加剤、例えば緩衝剤、等張化剤、キレート剤などをも添加することができる。緩衝剤としては、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε-アミノカプロン酸、グルタミン酸及び/又はそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)などを例示できる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンなどを例示できる。またキレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸などを例示できる。
【0053】
上記医薬製剤は、溶液製剤として調製できる他に、これを凍結乾燥し保存し得る状態にした後、用時水、生理的食塩水などを含む緩衝液などで溶解して適当な濃度に調製される凍結乾燥剤形態とすることも可能である。
【0054】
上記医薬製剤の投与単位形態は、医療目的に応じて適宜選択できる。その代表例には、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤などの固体投与形態及び溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、エリキシルなどの液剤投与形態が含まれる。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、軟膏剤、経肺投与剤などに分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形乃至調製することができる。
【0055】
例えば、錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。
【0056】
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠とすることができ、また二重錠ないしは多層錠とすることもできる。
【0057】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
【0058】
カプセル剤は、常法に従い通常活性成分を上記で例示した各種の製剤担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填して調製される。
【0059】
経口投与用液体投与形態は、慣用される不活性希釈剤、例えば水、を含む医薬的に許容される溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシルなどを包含し、更に湿潤剤、乳剤、懸濁剤などの助剤を含ませることができ、これらは常法に従い調製される。
【0060】
非経口投与用の液体投与形態、例えば滅菌水性乃至非水性溶液、エマルジョン、懸濁液などへの調製に際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びオリーブ油などの植物油などを使用でき、また注入可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチルなどを配合できる。これらには更に通常の溶解補助剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、分散剤などを添加することもできる。滅菌は、例えばバクテリア保留フィルターを通過させる濾過操作、殺菌剤の配合、照射処理及び加熱処理などにより実施できる。また、これらは使用直前に滅菌水や適当な滅菌可能媒体に溶解することのできる滅菌固体組成物形態に調製することもできる。
【0061】
坐剤や膣投与用製剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン及び半合成グリセライドなどを使用できる。
【0062】
ペースト、クリーム、ゲルなどの軟膏剤の形態に成形するに際しては、希釈剤として、例えば白色ワセリン、パラフイン、グリセリン、セルロース誘導体、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト及びオリーブ油などの植物油などを使用できる。
【0063】
経鼻又は舌下投与用組成物は、周知の標準賦形剤を用いて、常法に従い調製することができる。
【0064】
経肺投与剤は、前述した各種液剤形態の医薬製剤を凍結乾燥により粉末化するか、該工程において必要に応じてアミノ酸、糖などの安定化剤、吸入時の粒子系などを考慮した安定化剤を利用して、通常のこの種経肺投与剤と同様にして調製することができる。
【0065】
尚、上記医薬製剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品などを含有させることもできる。
上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独で又はブドウ糖やアミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じ単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与され、坐剤は直腸内投与され、経膣剤は膣内投与され、経鼻剤は鼻腔内投与され、舌下剤は口腔内投与され、経肺投与剤は気管支ないし肺胞内にネブライザーなどを用いて投与され、軟膏剤は経皮的に局所投与される。
上記医薬製剤中に含有されるべき有効成分の量及びその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。一般的には、1日当り体重1kg当り、約0.01μg−10mg程度、好ましくは約0.1μg−1mg程度をヒトに投与するのがよく、該製剤は1日に1−数回に分けて投与することができる。
【0066】
本発明のCXCL10産生抑制剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択される。通常、製剤中に約0.00001−70重量%、好ましくは0.0001−5重量%程度が含まれる量とするのが適当である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の内容を具体的に実験例で示すが、本発明内容は、これに限定されるものではない。
【0068】
実施例1
<材料>
ヘパリンは持田製薬株式会社より、RPMI1640(L-グルタミン含有)はSigma社より、精製補体断片のiC3b, C4bはCalbiochem社より、ヒトInterferon (IFN)-β1aはPBL Biomedical Laboratories社より、それぞれ購入した。本試験に使用した全ての試薬は、市販されている高純度のものを使用した。
【0069】
<血液培養法>
健常人のヒト抹消血より、10 U/mlのヘパリン添加条件下にて採血した。採血は、血液使用目的の説明後、血液提供者の同意のもとに行なった。採血した血液の容量1に対して、9倍容量の10 %牛胎児血清添加RPMI1640(培養液)を混合した(血液:培養液 = 1 : 9)。混合する際に、type I IFN刺激として IFN-β1aを最終濃度10 U/mlとなるように混合した。また、同時に、補体断片であるiC3b及びC4bを添加した。混合後、37℃のCO2インキュベータ(CO2 濃度5%)にて培養した。培養用の培養器には、24 well及び96 wellのカルチャー用プレート(BD Bioscience)を使用した。培養時の混合液の容量は、24 wellでは 1 ml/well, 96 wellでは 0.1 ml/wellにて培養した。18時間の培養後、混合液を回収し、450 x g, 5分間遠心して培養上清を回収した。回収した上清中に含まれるCXCL10を下記の方法にて測定した。
【0070】
<CXCL10測定>
CXCL10は、市販されているCXCL10測定kit(R & D systems)を用いて測定した。測定は、ELISAであり、添付されている説明書に従い操作した。具体的には、150 μlの Assay Diluent RD1-56 (kit構成品)を各ELISA反応用プレート(kit構成品)のwellに添加し、更に、サンプル(回収した培養上清)を100μl各wellに入れた。その後、シール(kit構成品)にて各wellを密封し、室温に2時間放置した。放置後、サンプル吸引し、Wash buffer(kit構成品)を400 μlづつ各wellに入れて洗浄した。この操作を更に3回(計4回)繰返して洗浄した。洗浄後、200 μlづつIP-10 Conjugate(kit構成品)を各wellに入れて、同様にして室温に2時間放置した。放置後、上記と同じように洗浄した。洗浄後、200 μlの Substrate Solution(kit構成品)を各wellに入れて、遮光して30分間室温に放置した。放置後、50μlづつStop Solution(kit構成品) を各wellに入れて発色反応を止めた。その後、450 nmの吸光度を測定した(レファレンス波長として570 nmを測定)。測定に用いたプレートリーダーは、WellRedear SK603(生化学工業社)を用いた。
【0071】
その結果、添加した補体断片の容量依存的に、血液細胞からのCXCL10の産生が抑制されることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】iC3b又はC4bを添加することにより、CXCL10の産生が抑制されたことを示す図である。横軸に、添加された補体断片の終濃度を、縦軸にCXCL10産生量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
iC3b及びC4bから選ばれる補体断片又はこれらと機能的に同等なポリペプチドを有効成分とするCXCL10産生抑制剤。
【請求項2】
以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドを有効成分とするCXCL10産生抑制剤。
(a)配列番号:2のアミノ酸残基23〜667番、785〜1303番及び1325〜1663番の領域から構成されるポリペプチド
(b)配列番号:4のアミノ酸残基20〜675番、757〜1446番及び1454〜1744番の領域から構成されるポリペプチド
(c)上記(a)又は(b)のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つCXCL10産生抑制活性を有するポリペプチド
【請求項3】
CXCL10の産生亢進状態を予防、改善及び/又は治療するものである請求項1又は2記載のCXCL10産生抑制剤。
【請求項4】
CXCL10の産生亢進状態が大腸炎、関節炎、乾癬、全身性硬化症、自己免疫神経炎症性疾患及びSLEから選ばれる疾患又は症状である請求項3記載のCXCL10産生抑制剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−280569(P2010−280569A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247962(P2007−247962)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000153258)株式会社JIMRO (6)
【Fターム(参考)】