説明

DINレール取付型機器

【課題】ロック部材を筐体より突出しないように収納することができるようにする。
【解決手段】DINレール取付型機器100は、筐体110と、DINレール200と嵌合可能なレール溝112と、スライダ溝113と、ロック部材150とを備えている。ロック部材150は、係合側端部151がスライダ溝113よりレール溝112内に突出すると共に、操作側端部152が筐体110より突出するロック位置と、係合側端部151がスライダ溝113よりレール溝112内に突出し、操作側端部152がスライダ溝113内に収納される収納位置とに移動可能であると共に、ロック位置において、係合側端部151をDINレール200の下側係合片部201Dに係合させてレール溝112とDINレール110との嵌合状態を保持可能であり、レール溝112にDINレール110が嵌合されていない場合にのみ収納位置に移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付型機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術のDINレール取付型機器(プログラマブルコントローラ用ユニット)の筐体(ユニット本体)は、その背面部に当該筐体の幅方向に延在するように設けられたレール溝(係合凹部)を有しており、このレール溝にてDINレールに係合し、ロック部材(スライダロック装置)によりDINレールに係止され、DINレールに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3453739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のDINレール取付型機器は、DINレールに取り付けられた状態だけではなく、DINレールより取り外された状態においても、ロック部材が筐体より突出している。このため、以下のような問題がある。すなわち、取り外された状態のDINレール取付型機器を取り扱う作業者が突出したロック部材に手を引っ掛け怪我をしたり、DINレール取付型機器を梱包する際に梱包材にロック部材が引っ掛かり梱包しにくいという問題がある。また、DINレール取付型機器の搬送中にロック部材が破損したり、ロック部材側を下向きにして平置きすることができないという問題もある。さらに、仮にDINレール取付型機器がネジ等による固定機構を有しており、DINレールに取り付けずにネジ等によって固定するような場合、突出したロック部材を回避するための無駄な設置スペースが必要となるという問題もある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ロック部材を筐体より突出しないように収納することができるDINレール取付型機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付型機器であって、筐体と、前記筐体の一面に前記筐体の幅方向に沿って設けられ、前記DINレールと嵌合可能なレール溝と、前記筐体の一面に前記レール溝の幅方向に沿って設けられたスライダ溝と、前記スライダ溝内を前記レール溝に対して進退するように摺動し、前記レール溝に嵌合された前記DINレールの係合片部に一方側端部が係合することにより前記レール溝と前記DINレールとの嵌合状態を保持可能なロック部材と、を備え、前記ロック部材は、前記一方側端部が前記スライダ溝より前記レール溝内に突出すると共に、他方側端部が前記筐体より突出する第1位置と、前記一方側端部が前記スライダ溝より前記レール溝内に突出し、前記他方側端部が前記スライダ溝内に収納される第2位置とに移動可能であると共に、前記第1位置において、前記一方側端部を前記DINレールの係合片部に係合させて前記レール溝と前記DINレールとの嵌合状態を保持可能であり、前記レール溝に前記DINレールが嵌合されていない場合にのみ前記第2位置に移動可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のDINレール取付型機器によれば、ロック部材を筐体より突出しないように収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施の形態のDINレール取付型機器の外観を表す斜視図である。
【図2】筐体を背面側から見た平面図、及び、図2(a)中IIB−IIB断面による筐体の縦断面図である。
【図3】ロック部材を筐体の背面側に対応する面側から見た平面図、及び、図3(a)中IIIB−IIIB断面によるロック部材の縦断面図である。
【図4】ロック部材がアンロック位置に保持された状態での、DINレールに取り付けられたDINレール取付型機器を筐体の背面側から見た平面図、及び、図4(a)中IVB−IVB断面によるDINレール取付型機器の縦断面図である。
【図5】バネ片部の先端部とアンロック用凹部とが係合を解除した状態を表す説明図である。
【図6】ロック部材がロック位置に保持された状態での、DINレールに取り付けられたDINレール取付型機器を筐体の背面側から見た平面図、及び、図6(a)中VIB−VIB断面によるDINレール取付型機器の縦断面図である。
【図7】ロック部材が収納位置に保持された状態での、DINレールより取り外されたDINレール取付型機器を筐体の背面側から見た平面図、及び、図7(a)中VIIB−VIIB断面によるDINレール取付型機器の縦断面図である。
【図8】ロック機構を複数箇所設ける変形例における、DINレール取付型機器の外観を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各図内に「前」「後」「左」「右」「上」「下」の注記がある場合は、明細書中の説明における、前方、後方、左方、右方、上方、下方とは、その注記された方向を指す。
【0010】
図1、図2(a)(b)、及び図3(a)(b)において、本実施形態のDINレール取付型機器100は、DIN(Deutsche Industrie Normen;ドイツ工業規格)に準拠するDINレール200に着脱可能に取り付けられる機器である。DINレール取付型機器100としては、例えば、コントローラユニット、PLC(Programmable Logic Controller)ユニット、インバータユニット、サーボユニット、電源ユニット、I/Oユニット、センサユニット、スイッチユニット、セーフユニット、リレーユニット等の制御機器が用いられる。あるいは、制御機器以外の機器を用いてもよい。このDINレール取付型機器100は、図1に示すように、前面である正面(図示せず)、後面である背面111B、上面111U(図2(b)参照)、下面111D、及び左右の側面111Sを備え、略直方体形状に形成された筐体110と、ロック部材150とを備えている。なお、本実施形態では、筐体110の背面111Bが、特許請求の範囲に記載の筐体の一面に相当する。あるいは、筐体110の背面111B以外の面(例えば筐体110の正面等)を、筐体の一面としてもよい。
【0011】
図1及び図2(a)(b)に示すように、筐体110の背面111Bには、筐体110の幅方向すなわち左右方向に沿いつつ、当該背面111Bの左右方向の全長に亘って延在するように、DINレール200と嵌合可能なレール溝112が設けられている。このレール溝112の上側の端部(以下適宜「上側端部」と称する)114Uには、DINレール200の上側の係合片部(以下適宜「上側係合片部」と称する)201Uと係合する係合部115が突設されている。
【0012】
また、筐体110の背面111Bにおけるレール溝112より下側の面には、レール溝112の幅方向すなわち上下方向に沿いつつ、当該面の上下方向の全長に亘って延在するように、ロック部材150を摺動可能に嵌合するスライダ溝113が設けられている。このスライダ溝113の前側に対応する底面には、ロック部材150に備えられたバネ片部154(詳細は後述)の位置に対応するように、当該底面の下端部から上方に向かって上下方向に沿って延在する溝116が設けられている。
【0013】
図2(a)(b)に示すように、溝116には、ロック部材150に備えられたバネ片部154の先端部154T(図3(b)参照。詳細は後述)と係合可能な3つの凹部117,118,119が設けられている。
【0014】
これら凹部117,118,119のうち、最も下側に設けられた凹部117は、後述の図4(b)に示すように、ロック部材150が後述のアンロック位置に移動する際に、バネ片部154の先端部154Tと係合する凹部である。以下適宜、この凹部117を「アンロック用凹部117」と称する。
【0015】
また、これら凹部117,118,119のうち、アンロック用凹部117と凹部119との間に設けられた凹部118は、後述の図6(b)に示すように、ロック部材150が後述のロック位置に移動する際に、バネ片部154の先端部154Tと係合する凹部である。以下適宜、この凹部118を「ロック用凹部118」と称する。
【0016】
また、これら凹部117,118,119のうち、最も上側に設けられた凹部119は、後述の図7(b)に示すように、ロック部材150が後述の収納位置に移動する際に、バネ片部154の先端部154Tと係合する凹部である。以下適宜、この凹部119を「収納用凹部119」と称する。
【0017】
図1及び図3(a)(b)に示すように、ロック部材150は、スライダ溝113内をレール溝112に対して進退するように上下方向に沿って摺動し、当該ロック部材150の上側に対応する側の端部(一方側端部)である係合側端部151が、レール溝112に嵌合されたDINレール200の下側の係合片部(以下適宜「下側係合片部」と称する)201Dに係合することにより、レール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持可能とする部材である。このロック部材150は、スライダ溝113内をアンロック位置と収納位置との間で上下方向に沿って摺動可能であり、アンロック位置、ロック位置、及び収納位置に移動可能に構成されている。
【0018】
アンロック位置とは、係合側端部151がスライダ溝113内に収納され、ロック部材150の下側に対応する側の端部(他方側端部)である操作側端部152が筐体110より下方に突出する位置(後述の図4(a)(b)に示すロック部材150の位置)である。このアンロック位置は、特許請求の範囲に記載の第3位置に相当する。
【0019】
ロック位置とは、係合側端部151がスライダ溝113より上方すなわちレール溝112内に突出すると共に、操作側端部152が筐体110より下方に突出する位置(後述の図6(a)(b)に示すロック部材150の位置)である。このロック位置は、特許請求の範囲に記載の第1位置に相当する。ロック部材150は、このロック位置において、係合側端部151をDINレール200の下側係合片部201Dに係合させて、レール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持するようになっている(詳細は後述)。
【0020】
収納位置とは、係合側端部151がスライダ溝113よりレール溝112内に突出し、操作側端部152がスライダ溝113内に収納される位置(後述の図7(a)(b)に示すロック部材150の位置)である。この収納位置は、特許請求の範囲に記載の第2位置に相当する。ロック部材150は、レール溝112にDINレール200が嵌合されていない場合、すなわち、DINレール取付型機器100がDINレール200より取り外されている場合にのみ、この収納位置に移動可能に構成されている。
【0021】
また、ロック部材150は、前後方向に対応する方向に沿って設けられた貫通孔153と、この貫通孔153の上側に対応する側の端部に下方に対応する方向に向かって延設され、筐体110の奥行き方向すなわち前後方向に対応する方向に弾性的に撓むことが可能な2つのバネ片部154とを有している。なお、この例では、バネ片部154の数を2つとしているが、バネ片部154の数は2つに限られず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、この例では、バネ片部154を貫通孔153の上側に対応する側の端部に下方に対応する方向に向かって延設しているが、これに限られず、貫通孔153の下側に対応する側の端部に上方に対応する方向に向かって延設してもよい。
【0022】
バネ片部154は、前方に対応する方向に突出するように形成され、スライダ溝113内に設けられた、アンロック位置に対応する上記アンロック用凹部117、ロック位置に対応する上記ロック用凹部118、及び、収納位置に対応する上記収納用凹部119に係合可能な先端部154Tを備えている。このバネ片部154は、ロック部材150がスライダ溝113内を摺動する際に、先端部154Tがアンロック用凹部117、ロック用凹部118、及び収納用凹部119に順次係合することにより、ロック部材150をアンロック位置、ロック位置、及び収納位置に保持可能となっている。
【0023】
具体的には、バネ片部154は、ロック部材150がスライダ溝113内を摺動する際に、前後方向に弾性的に撓みつつ、先端部154Tのアンロック用凹部117、ロック用凹部118、及び収納用凹部119への係合及び係合の解除を行うようになっている。すなわち、バネ片部154は、後側に弾性的に撓んだ状態で、ロック部材150がスライダ溝113内を摺動し、先端部154Tがアンロック用凹部117、ロック用凹部118、及び収納用凹部119のいずれかの凹部に到達した際に、後側への撓みが小さくなることにより、当該到達した凹部に係合し、ロック部材150を対応する位置に保持する。ロック部材150が別の位置に摺動する際には、バネ片部154は、後側に弾性的に撓むことにより、先端部154Tと上記係合した凹部との係合を解除し、ロック部材150の移動を可能とする。
【0024】
また、ロック部材150の操作側端部152は、図3(a)(b)に示すように、窪部155、凹部156、及び突出部157を備えている。窪部155は、左右方向に対応する方向の面において内側に窪んだ部分である。凹部156は、前方に対応する方向の面に設けられている。これら窪部155及び凹部156を操作側端部152に設けることにより、操作者は、操作側端部152が筐体110より下方に突出した状態において、窪部155を把持したり(つまんだり)、凹部156をドライバにより操作することにより操作側端部152を操作してロック部材150を操作することができる。突出部157は、後方に対応する方向の面に突設されており、操作側端部152がスライダ溝113内に収納された際に、スライダ溝113の後方に位置する突き当たり面120(図2(a)(b)参照)に接触し、ストッパとして機能する。
【0025】
ここで、DINレール取付型機器100をDINレール200に取り付ける場合には、まず、操作者は、例えば図示しない壁等に対して図示しないネジ等の固定部材により固定されたDINレール200の上側係合片部201Uに、レール溝112の上側端部114Uに突設された係合部115を係合させて(引っ掛けて)、レール溝112にDINレール200を嵌合する。これにより、DINレール取付型機器100がDINレール200に取り付けられる。但し、この時点では、スライダ溝113に嵌合されたロック部材150は、アンロック位置に保持されており、レール溝112とDINレール200との嵌合状態は保持されていない。
【0026】
図4(a)(b)に示すように、アンロック位置に保持された状態においては、ロック部材150は、バネ片部154の先端部154Tがスライダ溝113の底面に設けられたアンロック用凹部117に係合している。このとき、ロック部材150は、係合側端部151がスライダ溝113内に収納されており、DINレール200の下側係合片部201Dに係合していない。またこれと共に、操作側端部152が筐体110より下方に突出している。すなわち、アンロック位置に保持された状態では、ロック部材150は、係合側端部151をDINレール200の下側係合片部201Dに係合させず、レール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持していない。つまり、ロック部材150がレール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持しない状態となっている。
【0027】
この状態において、操作者が、筐体110より下方に突出した操作側端部152を介してロック部材150を上側に押すと、図5に示すように、バネ片部154が後側に弾性的に撓むことで、当該バネ片部154の先端部154Tとアンロック用凹部117との係合が解除され、ロック部材150が上側に摺動する。そして、バネ片部154の先端部154Tがロック用凹部118の位置まで移動したら、バネ片部154が後側への撓みが小さくなることによってロック用凹部118に係合することにより、ロック部材150がロック位置に保持される。
【0028】
図6(a)(b)に示すように、ロック位置に保持された状態においては、ロック部材150は、バネ片部154の先端部154Tがスライダ溝113の底面に設けられたロック用凹部118に係合している。このとき、ロック部材150は、係合側端部151がスライダ溝113よりレール溝112内に突出しており、DINレール200の下側係合片部201Dに係合している。またこれと共に、操作側端部152が筐体110より下方に突出している。すなわち、ロック位置に保持された状態では、ロック部材150は、係合側端部151をDINレール200の下側係合片部201Dに係合させて、レール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持している。つまり、ロック部材150がレール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持する状態となっている。
【0029】
この状態において、DINレール取付型機器100をDINレール200より取り外す場合には、操作者は、まず筐体110より下方に突出した操作側端部152を介してロック部材150を下側に引いて、ロック部材150をアンロック位置に移動させて、ロック部材150がレール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持しない状態とする。そして、この状態において、DINレール取付型機器100をDINレール200より取り外す。このとき、筐体110より下方に突出したロック部材150を、筐体110より突出しないようにする場合には、ロック部材150を収納位置に移動させればよい。すなわち、操作者は、筐体110より下方に突出した操作側端部152を介してロック部材150を上側に押して、バネ片部154の先端部154Tを収納用凹部119に係合させる。これにより、ロック部材150が収納位置に保持される。
【0030】
図7(a)(b)に示すように、収納位置に保持された状態においては、ロック部材150は、バネ片部154の先端部154Tがスライダ溝113の底面に設けられた収納用凹部119に係合している。このとき、ロック部材150は、係合側端部151がスライダ溝113よりレール溝112内に突出している。またこれと共に、操作側端部152がスライダ溝113内に収納されている。すなわち、収納位置に保持された状態では、ロック部材150は、操作側端部152をスライダ溝113内に収納して、当該ロック部材150が筐体110より下方に突出しない状態となっている。また、この状態では、操作側端部152の突出部157が上記突き当たり面120に接触している。
【0031】
この状態において、DINレール取付型機器100をDINレール200に取り付ける場合には、操作者は、レール溝112内に突出した係合側端部151を介してロック部材150を下側に押すことにより、操作側端部152をスライダ溝113より下方に引き出し、その操作側端部152を下方に引き下げることにより、バネ片部154の先端部154Tをアンロック用凹部117に係合させる。これにより、ロック部材150がアンロック位置に保持されるので、前述のようにして、DINレール取付型機器100をDINレール200に取り付けることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のDINレール取付型機器100は、背面111Bにレール溝112及びスライダ溝113が設けられた筐体110と、スライダ溝113内をレール溝112に対して進退するように摺動し、DINレール200の下側係合片部201Dに係合側端部151が係合することでレール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持可能なロック部材150とを備えている。このロック部材150は、上記アンロック位置、ロック位置、及び収納位置に移動可能であり、レール溝112にDINレール200が嵌合されていない場合にのみ収納位置に移動可能である。
【0033】
これにより、レール溝112にDINレール200が嵌合されていない状態、すなわち、DINレール取付型機器100がDINレール200より取り外された状態において、ロック部材150を収納位置に移動することにより、ロック部材150の操作側端部152がスライダ溝113内に収納され、ロック部材150が筐体110より突出しないようにすることができる。その結果、取り外された状態のDINレール取付型機器100を取り扱う作業者の突出したロック部材150による怪我を防止できると共に、梱包をし易くすることができる。また、DINレール取付型機器100の搬送中にロック部材150が破損するのを防止できると共に、ロック部材150側を下向きにして平置きすることもできる。さらに、仮にDINレール取付型機器100がネジ等による固定機構を有しており、DINレール200に取り付けずにネジ等によって固定するような場合、ロック部材150が突出している場合にはそれを回避するための無駄な設置スペースが必要となるが、本実施形態ではロック部材150を収納できるため設置スペースを小さくできる。
【0034】
また、ロック部材150は、レール溝112にDINレール200が嵌合されていない場合にのみ、収納位置に移動可能であるので、レール溝112にDINレール200が嵌合された状態においては、当該嵌合状態が保持されているか否かに拘わらず、収納位置以外(すなわちロック位置かアンロック位置)に位置することになる。レール溝112にDINレール200が嵌合された状態では、当該嵌合状態の保持(ロック)とその解除(アンロック)とを切り替えるために操作者がロック部材150を操作する必要があるが、ロック部材150が収納位置以外(ロック位置かアンロック位置)に位置することにより操作側端部152が筐体110より突出しているので、操作者は当該操作側端部152を用いてロック部材150を容易に操作できる。
【0035】
さらに、ロック部材150は、操作側端部152がスライダ溝113内に収納される収納位置に位置する際に、係合側端部151がスライダ溝113よりレール溝112内に突出するようになっている。このとき、レール溝112にDINレール200は嵌合されていないので、操作者はレール溝112内に突出した係合側端部151を下側に押すことにより、操作側端部152をスライダ溝113より下方に引き出し、操作側端部152を筐体110より突出させることができる。その結果、操作者は当該操作側端部152を用いてロック部材150を収納位置からロック位置やアンロック位置に操作することができる。
【0036】
またさらに、本実施形態では、次のような効果を得ることができる。すなわち、例えば、ロック部材150がレール溝112とDINレール200との嵌合状態を保持した状態(以下「ロック状態」と記載)で上記収納位置となり、当該嵌合状態を保持しない状態(以下「アンロック状態」と記載)で上記アンロック位置となる構成とした場合、ロック状態においてロック部材150の操作側端部152がスライダ溝113内に収納され筐体110より下方に突出しなくなるため、操作者がロック状態からアンロック状態に切り替えようとしてもロック部材150を操作することが困難となる。
【0037】
本実施形態では、ロック状態においてもロック部材150の操作側端部152が筐体110より下方に突出しているので、操作者は当該操作側端部152を用いてロック部材150を操作し、ロック状態をアンロック状態に容易に切り替えることができる。またアンロック状態においてもロック部材150の操作側端部152が筐体110より突出しているので、当該操作側端部152を用いてロック部材150を操作し、アンロック状態をロック状態に容易に切り替えることができる。このように、ロック状態とアンロック状態の切替操作性を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態では特に、ロック部材150が、スライダ溝113内を摺動する際に、当該スライダ溝113内に設けられたアンロック用凹部117、ロック用凹部118、及び収納用凹部119に順次係合することで、ロック部材150をアンロック位置、ロック位置、及び収納位置に保持可能なバネ片部154を有している。バネ片部154がスライダ溝113内に設けられたアンロック用凹部117、ロック用凹部118、及び収納用凹部119に順次係合することで、ロック部材150をアンロック位置、ロック位置、及び収納位置に保持することができる。
【0039】
なお、実施の形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0040】
(1)ロック機構を複数箇所設ける場合
上記実施形態では、筐体110の背面111Bに1つのスライダ溝113を設け、当該スライダ溝113内にロック部材150を設けていたが、これに限られない。すなわち、筐体の背面に複数のスライダ溝を設け、これら複数のスライダ溝内にロック部材150をそれぞれ個別に設けてもよい。
【0041】
図8において、本変形例のDINレール取付型機器100′は、正面(図示せず)、背面111B′、上面111U′、下面(図示せず)、及び左右の両側面111S′を備え、略直方体形状に形成された筐体110′と、前述のロック部材150とを備えている。なお、本変形例では、筐体110′の背面111B′が、特許請求の範囲に記載の筐体の一面に相当する。あるいは、筐体110′の背面111B′以外の面(例えば筐体110′の正面等)を、筐体の一面としてもよい。
【0042】
筐体110′は、前述の筐体110より幅方向すなわち左右方向の長さが大きな筐体であり、背面111B′には、左右方向に沿いつつ、当該背面111B′の左右方向の全長に亘って延在するように、前述のDINレール200よりも左右方向の長さが大きなDINレール200′と嵌合可能なレール溝112′が設けられている。また、筐体110′の背面111B′におけるレール溝112′より下側の面には、レール溝112′の幅方向すなわち上下方向に沿いつつ、当該面の上下方向の全長に亘って延在するように、ロック部材150を摺動可能に嵌合するスライダ溝113′が複数(この例では3つ)並列して設けられている。これら3つのスライダ溝113′の構成は、それぞれ、前述のスライダ溝113と同様である。また、上記以外の筐体110′の構成は、前述の筐体110とほぼ同様である。
【0043】
ロック部材150は、上記3つのスライダ溝113′内にそれぞれ個別に嵌合されている。すなわち、上記3つのスライダ溝113′内にそれぞれ個別に設けられている。各ロック部材150は、各スライダ溝113′内において、バネ片部154により前述のアンロック位置、ロック位置、及び収納位置のいずれかの位置に個別に保持される。図8に示す例では、各ロック部材150は、ロック位置に保持されている。
【0044】
以上説明した本変形例においては、筐体110′の背面111B′に複数のスライダ溝113′が設けられており、複数のスライダ溝113′内にそれぞれロック部材150が個別に設けられている。これにより、筐体110′の幅方向の長さが比較的大きなDINレール取付型機器100′であっても、複数のロック部材150を用いて、レール溝112とDINレール200との嵌合状態を安定して保持することができる。また、各ロック部材150は各スライダ溝113′内においてバネ片部154によりアンロック位置、ロック位置、及び収納位置のいずれかの位置に個別に保持されるので、DINレール取付型機器100′のDINレール200′への取り付け又は取り外しをする際に、作業者が複数のロック部材150に同時に力をかけて操作する等の必要がなく、作業性を良好に維持できる。
【0045】
(2)その他
以上においては、スライダ溝113,113′を、背面111B,111B′におけるレール溝112,112′より下側の面に設けられていたが、これに限られず、背面111B,111B′におけるレール溝112,112′より上側の面に設けてもよい。この場合も、上記実施形態や(1)の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0047】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0048】
100 DINレール取付型機器
110 筐体
111B 背面
112 レール溝
113 スライダ溝
117 アンロック用凹部(凹部)
118 ロック用凹部(凹部)
119 収納用凹部(凹部)
150 ロック部材
151 係合側端部(他方側端部)
152 操作側端部(一方側端部)
154 バネ片部
200 DINレール
201D 下側係合片部(係合片部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付型機器であって、
筐体と、
前記筐体の一面に前記筐体の幅方向に沿って設けられ、前記DINレールと嵌合可能なレール溝と、
前記筐体の一面に前記レール溝の幅方向に沿って設けられたスライダ溝と、
前記スライダ溝内を前記レール溝に対して進退するように摺動し、前記レール溝に嵌合された前記DINレールの係合片部に一方側端部が係合することにより前記レール溝と前記DINレールとの嵌合状態を保持可能なロック部材と、を備え、
前記ロック部材は、
前記一方側端部が前記スライダ溝より前記レール溝内に突出すると共に、他方側端部が前記筐体より突出する第1位置と、前記一方側端部が前記スライダ溝より前記レール溝内に突出し、前記他方側端部が前記スライダ溝内に収納される第2位置とに移動可能であると共に、前記第1位置において、前記一方側端部を前記DINレールの係合片部に係合させて前記レール溝と前記DINレールとの嵌合状態を保持可能であり、前記レール溝に前記DINレールが嵌合されていない場合にのみ前記第2位置に移動可能に構成されている
ことを特徴とするDINレール取付型機器。
【請求項2】
前記ロック部材は、
前記一方側端部が前記スライダ溝内に収納され、前記他方側端部が前記筐体より突出する第3位置に移動可能であり、当該第3位置と前記第2位置との間で移動可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のDINレール取付型機器。
【請求項3】
前記ロック部材は、
前記スライダ溝内を移動する際に、前記スライダ溝内に設けられた複数の凹部に順次係合することで、前記ロック部材を前記第1位置、前記第2位置、及び前記第3位置に保持可能な少なくとも1つのバネ片部を有している
ことを特徴とする請求項2に記載のDINレール取付型機器。
【請求項4】
前記バネ片部は、
前記筐体の奥行き方向に弾性的に撓みつつ、前記凹部への係合及び係合解除を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のDINレール取付型機器。
【請求項5】
前記スライダ溝は、
前記筐体の一面に複数並列して設けられており、
前記ロック部材は、
前記複数のスライダ溝内にそれぞれ個別に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のDINレール取付型機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−174715(P2012−174715A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32062(P2011−32062)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【特許番号】特許第4844911号(P4844911)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】