説明

DNAを精製するための固相担体を使用するための組成物および方法

生物材料からのDNAの精製のための試薬、方法およびキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金による研究または開発に関する説明
本文書に関する研究は米国立衛生研究所グラント1 R43 CA106124−01によって支援された。米国政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0002】
関連出願へのクロスリファレンス
本文書は、参照により本開示に含まれる、2001年10月12日出願の米国特許出願公開第09/974,798号明細書の継続出願である2003年4月16日出願の米国特許出願公開第10/418,194号明細書の一部継続出願である2004年8月2日出願の米国特許出願公開第10/909,724号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)といった核酸は分子生物学の分野で研究および臨床分析に広く用いられている。液相および固相精製の二つの一般的分類に該当する、多数の核酸精製方法がある。液相精製では、DNAは液相に残る一方、不純物は沈澱および/または遠心分離によって除去される。固相精製では、DNAは固相担体に結合し、一方、不純物は選択的に溶出される。従来の液相および固相精製戦略は、多数の段階および危険な試薬を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここでは核酸を単離および/または精製するための処方物が記載される。その処方物は、少なくとも約1Mの濃度のリチウム塩、少なくとも一種類の界面活性剤、および緩衝剤を含む。その処方物はさらに、EDTAまたはクエン酸塩といったキレート剤を含みうる。その処方物は、カオトロープおよび/または強いカオトロピック物質を欠いている可能性がある。強いカオトロピック物質の例は、グアニジニウム塩、尿素、アンモニウム、セシウム、ルビジウム、カリウム、またはヨウ化物塩である。処方物中に存在するリチウム塩は塩化リチウムでありうる。リチウム塩は、2M〜10Mの濃度、または2M〜6Mの濃度で存在しうる。一部の実施形態では、リチウム塩の濃度は、2M、3M、4M、5M、6M、7M、8M、9Mまたは10M、またはその間の任意の範囲(たとえば5.5M)でありうる。処方物は、たとえば約7ないし約9(たとえば、pH約8、約8.5、または約9)といった、約7を上回るpHを有しうる。一部の実施形態では、単離および/または精製される核酸はDNAである。
【0005】
本処方物の界面活性剤は、処方物の総容量の約10%〜約40%(またはその間の任意の割合)の濃度で存在しうる。処方物中の界面活性剤または界面活性剤は洗浄剤でありうる。洗浄剤は、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性または非イオン性洗浄剤でありうる。一実施形態では、界面活性剤は非イオン性洗浄剤である。適当な非イオン性洗浄剤の例は、ツイーン(Tween)、トリトン(Triton)、ノニデット(Nonidet)、イゲパール(Igepal)またはテルジトール(Tergitol)を含む。たとえば洗浄剤はトリトン(Triton)−Xでありうる。さらに、界面活性剤はジエチルグリコールモノエチルエーテル(DGME)でありうる。DGMEは、処方物の総容量の約5%〜約35%(またはその間の任意の割合)の濃度で存在しうる。一般的に、処方物の他の成分の濃度が増加するにつれ、その他の成分の溶解度を高めるためにDGMEの量も増やされる。一部の実施形態では、界面活性剤はトリトン(Triton)−XおよびDGMEの混合物である。一実施形態では、界面活性剤は5%v/vトリトン(Triton)−Xおよび5%v/vDGMEの混合物である。一実施形態では、界面活性剤は処方物の終容量の約10%v/vの濃度で存在する。
【0006】
一実施形態では、界面活性剤は陰イオン性洗浄剤である。適当な洗浄剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはN−ラウロイルサルコシンを含む。一実施形態では、SDSが陰イオン性洗浄剤である。一実施形態では、洗浄剤は約0.05〜0.2%(またはその間の任意の割合)の濃度で存在する。一実施形態では濃度は約0.1%である。
【0007】
一部の実施形態では、処方物は二種類以上の界面活性剤の混合物を0.1%SDSおよび30%DGMEの濃度で含む。
【0008】
処方物の緩衝剤は少なくとも約8のpKaを有しうる。キレート剤はEDTAまたはクエン酸塩でありうる。
【0009】
一実施形態では、核酸を単離および精製するための処方物は、少なくとも約1Mの濃度のリチウム塩、界面活性剤、緩衝剤、および随意的なキレート剤を含み、溶液が約7を上回るpHを有することを特徴とする。
【0010】
別の一実施形態では、核酸を単離および精製するための処方物は本質的に、少なくとも約1Mの濃度のリチウム塩、少なくとも一種類の界面活性剤、緩衝剤、および随意的なキレート剤から成る。
【0011】
さらに別の一実施形態では、処方物は本質的に、リチウム塩、少なくとも一種類の界面活性剤、緩衝剤、および随意的なキレート剤から成り、処方物が約7を上回るpHを有することを特徴とする。
【0012】
さらに別の一実施形態は本質的に、少なくとも約1Mの濃度のリチウム塩、界面活性剤、緩衝剤、および随意的なキレート剤から成り、処方物が約7を上回るpHを有することを特徴とする。
【0013】
実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための方法もまた提供される。使用する生物材料は、粗試料または核酸の部分精製された混合物でありうる。生物材料の例は、真核細胞、原核細胞、微生物細胞、細菌細胞、植物細胞、マイコプラズマ、原虫、細菌、真菌、ウイルス、酵母、またはリケッチアの試料、またはそのホモジネートを含む。生物材料のその他の例は、全血、骨髄、頸部(cervical)スワブ、ろ紙血、血清、血漿、バフィーコート調製物、唾液、脳脊髄液、または固形動物組織を含む。生物材料のその他の例は、糞便、尿、涙、または汗を含む。生物材料はまた、空気、水、堆積物または土壌から採取した環境試料でありうる。生物材料は、たとえば、培養細胞、固定細胞、および/または組織を含むさまざまな種類の試料でありうる。一実施形態では、生物試料は頸部(cervical)細胞試料である。別の一実施形態では、生物試料は全血である。
【0014】
使用する固相担体は、シリカ、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、またはポリフッ化ビニリデン、またはその組み合わせの成分を含みうる。固相担体は容器に入っていてよく、その容器は遠心管、スピンチューブ、シリンジ、カートリッジ、チャンバー、マルチウェルプレート、または試験管、またはその組み合わせでありうる。固相担体は、生物材料を固相担体と接触させる前に、RNアーゼ溶液で前処理されうる。
【0015】
DNA溶解溶液のリチウム塩は、DNA錯体化塩である。使用されうるリチウム塩の例は、塩化リチウムまたは臭化リチウムを含む。DNA溶解溶液のDNA錯体化塩は、約1Mより高い濃度で存在しうる。一実施形態では、DNA錯体化塩は2Mないし8Mの濃度で存在しうる。一部の実施形態では、DNA錯体化塩の濃度は、約2M、3M、4M、5M、6M、7M、または8Mの濃度、またはその間の任意の濃度(たとえば約5.5M)である。
【0016】
溶解溶液は、随意的に、EDTAまたはクエン酸塩といったキレート剤を含みうる。
【0017】
生物材料をDNA溶解溶液と接触させて混合物を生じ、ここでDNA溶解溶液は7より大のpHで緩衝され、およびDNA溶解溶液はリチウム塩および少なくとも一種類の界面活性剤を含むことを特徴とし;混合物をDNA添加溶液(spiking solution)と接触させ;生物材料中に存在するDNAが固相担体と結合するように、混合物を固相担体と接触させ;固相担体を洗浄溶液で洗浄して、結合した実質的に未分解のDNA以外の生物材料を除去し;および実質的に純粋なおよび未分解のDNAを得るために、DNAをDNA溶出溶液で溶出する段階を含む方法もまた提供される。「実質的に未分解のDNAが固相担体と結合する」とは、実質的に未分解のDNAが固相担体と結合する一方、生物試料中に見出される他の細胞または非細胞成分(たとえば細胞膜またはタンパク質)はおおむね固相担体と結合しないことを意味する。
【0018】
DNAを含む生物材料をDNA溶解溶液で前処理した固相担体と接触させ、ここでDNA溶解溶液は約7より大のpHで緩衝され、およびDNA溶解溶液は界面活性剤およびリチウム塩を含むことを特徴とし;DNA添加溶液を生物材料へ加え;実質的に未分解のDNAおよび非核酸生物物質を含む核酸を放出するために、生物材料を固相担体と接触させ、ここで実質的に未分解のDNAを含む核酸が固相担体と結合することを特徴とし;未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去するために、固相担体を洗浄溶液で洗浄し;および結合した未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で溶出する段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための方法もまた提供される。洗浄溶液は、約7より大のpHで緩衝されうる。一部の実施形態では、洗浄溶液は約7ないし約9(たとえば、pH約8、約8.5、または約9)で緩衝されうる。本方法および/または処方物で使用される溶解および/または洗浄溶液は、カオトロープおよび/または強いカオトロピック物質を欠いてもよい。
【0019】
DNA添加溶液は、アルコールを含みうるかまたはアルコールでありうる。アルコールは、イソプロパノール、エタノール、メタノールなどでありうる。アルコールは、アルコールの混合物でありうる。一実施形態では、DNA添加溶液は100%イソプロパノールである。
【0020】
界面活性剤は洗浄剤でありうる。洗浄剤は、ツイーン(Tween)、トリトン(Triton)、ノニデット(Nonidet)、イゲパール(Igepal)またはテルジトール(Tergitol)といった非イオン性洗浄剤でありうる。洗浄剤は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)またはN−ラウロイルサルコシンといった陰イオン性洗浄剤でありうる。界面活性剤は、洗浄剤の混合物、またはDGMEのような可溶化界面活性剤と洗浄剤の混合物でありうる。
【0021】
DNA添加溶液は、リチウム塩といったアルカリ金属塩を含みうる。DNA添加溶液は、7より大のpHで緩衝されうる。一部の実施形態では、DNA添加溶液は約7ないし約9(たとえば、pH約8、約8.5、または約9)で緩衝されうる。DNA添加溶液は界面活性剤を含みうる。一実施形態では、界面活性剤はDGMEである。
【0022】
(a)DNAを含む生物材料を、DNA溶解溶液が固相担体と結合するように約7より大のpHで緩衝されたDNA溶解溶液で前処理した固相担体と接触させ、ここでDNA結合溶液がDNA錯体化塩を含むことを特徴とし;(b)随意的なDNA添加溶液を混合物へ加え;(c)実質的に未分解のDNAを含む核酸が固相担体と結合するように、生物材料を固相担体と接触させ;(d)実質的に未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去するために、固相担体をDNA洗浄溶液で洗浄し;および(e)実質的に純粋なおよび未分解のDNAを得るために、結合した実質的に未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出する段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための方法もまた提供される。
【0023】
(a)DNAを含む生物材料を、DNA溶解溶液が固相担体と結合するように約7より大のpHで緩衝されたDNA溶解溶液で前処理した固相担体と接触させ、DNA結合溶液は界面活性剤およびDNA錯体化塩を含み;(b)生物試料へ随意的なDNA添加溶液を加え;(c)実質的に未分解のDNAおよび非核酸生物物質を含む核酸を放出するために、生物材料を固相担体と接触させて、実質的に未分解のDNAを含む核酸を固相担体と結合させ;(d)未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去するために、固相担体をで洗浄し;および(e)実質的に純粋なおよび未分解のDNAを得るために、結合した未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出する段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための方法もまた提供される。
【0024】
DNAを含む生物材料を第一のDNA溶解溶液と接触させ、ここで第一のDNA溶解溶液は約7より大のpHで緩衝されおよび濃度約5〜15%v/vで界面活性剤を、および1Mより大の濃度でDNA錯体化塩を含むことを特徴とし、生物材料を第二のDNA溶解溶液と接触させ、ここで第二のDNA溶解溶液は界面活性剤および1Mより大のDNA錯体化塩を含むことを特徴とし;混合物をDNA添加溶液と接触させ;混合物を固相担体と接触させ、ここで生物試料由来の実質的に未分解のDNAを含む核酸が固相担体と結合することを特徴とし;実質的に未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去するために、固相担体をDNA洗浄溶液で洗浄し、DNA洗浄溶液はDNA錯体化塩および界面活性剤を含み;および実質的に未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出する段階を含む、生物材料、たとえば全血から、赤血球(RBC)溶解段階無しに、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを精製するための直接溶解方法もまた提供される。一部の実施形態では、第二のDNA溶解溶液は約7より大のpHで緩衝される。一部の実施形態では、第二のDNA溶解溶液中の界面活性剤の濃度は、約25〜35%v/vである。一部の実施形態では、第二のDNA溶解溶液はまたキレート剤を含む。
【0025】
DNAを含む生物材料を、約7より大のpHで緩衝されたDNA溶解溶液と接触させ、DNA溶解溶液は界面活性剤および1Mより大のDNA錯体化塩を含み;混合物へ、アルコールを含む随意的なDNA添加溶液を加え;実質的に未分解のDNAおよび非核酸生物物質を含む核酸を放出するために、生物材料を固相担体と接触させて、実質的に未分解のDNAを含む核酸を固相担体と結合させ;未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去するために、固相担体をDNA洗浄溶液で洗浄し;および実質的に純粋なおよび未分解のDNAを得るために、結合した未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出する段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを、たとえば固定頸部細胞試料のような生物材料から精製するための方法もまた提供される。一部の実施形態では、DNA溶解溶液中の界面活性剤の濃度は約25〜35%v/vである。一部の実施形態では、DNA溶解溶液はまたキレート剤を含む。
【0026】
ここでは、「実質的に純粋な」とは、核酸定量、制限酵素消化、DNA配列決定、サザンブロッティングなどといったハイブリダイゼーション技術、および、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列準拠増幅(NASBA)、自己維持的配列複製(SSRまたは3SR)、鎖置換増幅(SDA)、および転写媒介増幅(TMA)、定量的PCR(qPCR)といった増幅方法、またはその他のDNA分析のような当業者に公知である以降の分析にDNAが使用されうるように、RNA、糖質、タンパク質、脂質不純物を実質的に含まないことを意味する。
【0027】
ここでは、「実質的に未分解の」DNAとは、非消化または無処理DNAを意味し、当業者によって標準的方法を用いて容易に決定されうる。「実質的に未分解の」DNAは、本明細書に記載の精製方法中に、酵素的、物理的または化学的方法によって損傷されていない。
【0028】
試薬、方法およびキットは、幅広い生物起源および生物形態にわたって実質的に純粋なおよび未分解のDNAを単離するのに用いることができ、そのすべてが広い分子量範囲にわたって回収されうる。得られた実質的に純粋なおよび未分解のDNAは、純度、収率、サイズ、逆転写酵素または他のハイブリダイゼーション処理、増幅、ハイブリダイゼーション能力などについて評価されうる。生物試料は、たとえば、細胞またはウイルス懸濁液およびその沈澱、体液、頸部細胞スワブおよび組織ホモジネートなどを含む。生物試料が細胞またはウイルスを含む場合は、細胞またはウイルスは計数されうる。計数は、たとえば電子細胞計数装置(たとえばCBC5コールターカウンター(Coulter Counter)、コールター社(Coulter Corp.)、フロリダ州ハイアリア(Hialeah))または目視計数チャンバー(たとえば血球計算盤ブライトライン(Bright Line)、アメリカン・オプティカル社(American Optical)、ニューヨーク州バッファロー(Buffalo))といった標準的な細胞計数方法を用いて実施されうる。
【0029】
不定冠詞「a」および「an」および定冠詞「the」は、特許文書で一般的である通り、文脈で明示されない限り、一つ以上という意味で用いられることに注意すべきである。さらに、本文書では「または」の語は、特許出願書類で一般的である通り、離接接続詞「または」または合接接続詞「および.」という意味で用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
核酸の結合および精製のためのカオトロピック塩の使用は本分野でよく知られている。たとえば、クロイタ(Kuroita)他(米国特許第5,990,302号明細書)は、生物材料をリチウム塩およびグアニジニウムイソチオシアナート(GITC)といったカオトロピック剤を含む酸性溶液中で溶解でき、その後RNAをシリカといった核酸結合キャリヤーと接触させることを開示する。RNAはその後、低イオン強度緩衝液中でシリカから溶出することによって精製される。この方法は、カオトロピック塩のグアニジンイソチオシアナートといった危険な物質の使用の点で不利益である。
【0031】
4Mより大のイオン強度のグアニジンイソチオシアナート、グアニジン塩酸塩、ヨウ化ナトリウム、および尿素混合物といったカオトロピック物質の、シリカを基礎とするキャリヤーと併用する組み合わせは、RNA精製のために本分野で教示されている。たとえば、ヒルブラント(Hillebrand)他(WO95/34569)は、RNAを結合させるためにカオトロピック物質を加えるシリカビーズのスラリーを含む一段階法を記載する。
【0032】
カオトロープの使用に対する見かけ上反対の手法は、RNAを単離するためのアンチカオトロープ(本分野で別名「コスモトロープ」)の使用である。ヒルブラント(Hillebrand)他(US2001/0041332)は、開始試料を溶解しおよび洗浄剤/アルコール混合物と共に固相担体と結合するために、塩化アンモニウム(またセシウム、ナトリウムおよび/またはカリウム塩が言及される)といった「アンチカオトロープ」の、PVP(ポリビニルピロリドン)と組み合わせた使用を記載する。セシウムおよびカリウムは低い電荷密度および弱い水和特性のために明らかにカオトロープであると考えられている一方でアンモニウムは限界カオトロープであると考えられていることが一般的に知られているという事実の上(コリンズ(Collins),K.生物系における粘着性イオン(Sticky Ions in Biological Systems),PNAS,92 (1995),5553−5557;ウィッギンズ(Wiggins),P.M.高密度および低密度細胞内水(High and Low 密度 Intracellular Water),Cell and Molecular Biology 47 (5),735−744)、ヒルブラントの方法にはいくつかの不利益が存在する。第一に、その方法はPVPを使用するが、PVPは発がん性物質として調査されている。次に、溶解および溶出のために65〜70℃の加熱段階が必要である。そのような加熱は、非特異的分解または消化による核酸への損傷を生じる可能性があり、結果として、たとえば制限消化物またはブロット分析に不適といった以降の用途の限定を生じうる。
【0033】
核酸および他の生物材料を含む溶液から核酸を選択的に沈澱する方法は、溶液中のDNAまたはRNA分子を選択的に結合する固相を用いる方法とは物理的に異なることに注意すべきである。「沈澱」現象は「溶解」現象の逆である。溶解は、DNAのような溶質の、溶媒によって囲まれた分子への分離による分解を含む。沈澱は、溶媒の除去、および個々のDNA分子の、溶媒から分離する固体への凝集を含む。これらの沈澱および溶解現象は、溶液環境内で起こり、および、DNA精製および分離が起こる個々の異なる固相には依存しない。
【0034】
DNA試料調製の分野を前進させるために、固相DNA精製戦略が必要とされている。また、固相精製戦略に適用可能で、および、自動化への適用可能性を最大化するために、簡単および迅速であるだけでなく範囲が一般的である試薬および方法もまた必要とされている。一般的に低濃度で、室温にて(すなわち20〜25℃)安定であり、危険性がより低く(たとえば腐食性、可燃性、または毒性がより低い)、混合の必要性を無くすために非粒子性であり、およびDNA品質を保護する試薬もまた必要とされている。含水でも乾燥でも、さまざまな生物開始材料を用いて実施できる少数の段階しかない、特に臨床試験施設で見られるように定型の試験に用いられるような方法もまた必要とされている。試薬はPCR緩衝液の緩衝能を妨害することによって以降のDNA分析手順を阻害してはならず、またはDNA増幅に用いられるポリメラーゼ、プライマーまたはオリゴヌクレオチドの分解を引き起こしてはならない。含水でも乾燥でも、さまざまな生物開始材料を用いて実施できる少数の段階しかない、特に臨床試験施設で見られるように定型の試験に用いられるような方法もまた必要とされている。固相精製戦略に用いられる試薬および方法はまた、核酸操作の標準的な実験および/または診断法を妨害してはならない。
【0035】
加えて、核酸を単離および精製することは、より困難な試料型の発見に伴ってより困難になっている。たとえば、HPV(ヒトパピローマウイルス)用の分子に基づく試験での使用のための頸部細胞からDNAを単離および精製することは、頸部がんにおけるHPV感染の役割が明らかになっているため臨床検査施設で急速に採用されている。分子診断試験施設は現在、年間600万件のHPV診断検査を実施する。しかし、分子試験のための頸部試料からのDNAの調製は、増大する需要についてきていない。標準的な操作では、剥離した頸部上皮細胞を、たとえばシュアパス(SurePath)(商標)保存液(トリパス・イメージング社(TriPath Imaging)、ノースカロライナ州バーリントン(Burlington))またはシンプレップ(ThinPrep)(登録商標)パップテスト(Pap Test)(商標)(サイティック社(Cytyc),マサチューセッツ州ボックスボロ(Boxborough))のような保存料を含む液体培地に採取し、および試料はしばしばさまざまな細胞および非細胞成分が混入しており、単離および精製を困難にする。これらの混入物は、粘液、白血球、赤血球、およびタンパク質を含みうる。現在の手作業によるDNA精製方法は、分子に基づくHPV診断薬の臨床検査施設でのさらなる採用を妨げるいくつかの重大な不利益を有する。剥離した頸部細胞を含む試料からのDNAの精製のための、より効率的および効果的な方法が現在緊急に必要とされている。
【0036】
新鮮、凍結、および乾燥生物試料から、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを単離するための固相担体を組み込んだ試薬、方法、およびキットがここでは提供される。精製されたDNAは、核酸定量、制限酵素消化、DNA配列決定、サザンブロッティングなどといったハイブリダイゼーション技術、および、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列準拠増幅(NASBA)、自己維持的配列複製(SSRまたは3SR)、鎖置換増幅(SDA)、および転写媒介増幅(TMA)、定量的PCR(qPCR)といった増幅方法、または他のDNA分析といった広く用いられている分析および診断方法での使用に適している。
【0037】
生物材料および/または試料
生物試料からDNAを精製するための試薬、方法およびキットがここでは提供される。そのような生物試料は、典型的には含水混合物または乾燥の、DNAを含む生物材料を含み、原核または真核細胞の複雑な生物混合物を含む。典型的には、生物材料はまた、RNA、糖質、タンパク質、および脂質を含む。生物材料は、下記を含むがそれらに限定されない:全血のような体液、骨髄、ろ紙血、血清、血漿、バフィーコート調製物、唾液および脳脊髄液、口腔スワブ、培養細胞、固定細胞、頸部細胞スワブ、細菌の細胞懸濁液または組織ホモジネート、たとえば心臓、肝臓および脳のような固形動物組織、糞便および尿のような体老廃物、空気、水、堆積物または土壌から採取された環境試料、植物組織、酵母、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、真菌、原虫、リケッチア、および他の小型微生物細胞。これらの生物材料の溶解物、ホモジネート、または部分精製試料もまた使用されうる。一実施形態では、生物材料は核酸の粗混合物または部分精製混合物である。
【0038】
試薬
試薬の4つの分類がここでは開示される。これらは、DNA溶解溶液、DNA添加溶液、DNA洗浄溶液、およびDNA溶出溶液である。これらの試薬は、適当な固相担体と併用され、実質的に純粋なおよび混入物を含まない未分解DNAを生じるために用いられる。フェノール、およびクロロホルムといった危険な物質、またはグアニジニウム塩、尿素などといった危険なカオトロピック物質を使用せずに、さまざまな生物材料からDNAを精製するために使用されうる試薬。
【0039】
(1)DNA溶解溶液:DNA溶解溶液は、核酸を放出するための生物試料の効率的な溶解を可能にし、および効果的にDNアーゼ活性を阻害する。DNA溶解溶液は下記の成分を有する:リチウム塩;緩衝剤;界面活性剤、たとえば洗浄剤または洗浄剤/界面活性剤混合物;および随意的にキレート試薬。DNA溶解溶液は、グアニジニウム塩、尿素などといった強いカオトロピック物質の添加を必要としない点で独特である。グアニジニウム塩および尿素は、水の構造を破壊する強いカオトロピック塩であり、およびしたがって疎水性相互作用の力を減少させる傾向があり、結果として他の溶質分子に対して強力な作用を生じる。たとえば、尿素は、水に溶解した場合、タンパク質の二次、三次、および四次構造を破壊し、および続いてDNAからのタンパク質の解離を引き起こす。グアニジニウム塩および尿素は、吸熱反応で水に溶解する。グアニジニウム塩および尿素は両方とも、相対カオトロピック強度に従って陽イオンおよび陰イオンを順位づける広く用いられている系であるホフマイスター系列によって定義される通り、強いカオトロピック塩と考えられている(F.ホフマイスター(Hofmeister),塩の作用の理解に関して(On the understanding of the effects of salts ),Arch.Exp.Pathol.Pharmakol.(Leipzig) 24 (1888) 247−260)。
【0040】
強いカオトロピック塩とは異なり、リチウム塩(たとえば塩化リチウムおよび臭化リチウム)の水中での反応は発熱反応であり、および強いコスモトロピックなリチウムイオンによって示される甚だしいイオン−双極子相互作用、および結果として生じる大きな溶解性を示す。これらのような違いは、グアニジニウム塩といった強いカオトロピック物質と、アルカリ金属塩、特に塩化リチウムとの間の違いを示す。
【0041】
たとえば塩化リチウムおよび臭化リチウムを含む、リチウム塩の使用がここで開示される。リチウムイオンは、その高い表面電荷密度および強い水和特性のため、非常にコスモトロピックと考えられている。リチウムイオンは、やはりアルカリ金属類に見られるナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムイオンの半径と比較して小さい半径を有する点で独特である。このことは、表面電荷密度をこの群のその他のイオンよりも大きくする。より大きな表面電荷密度は、水分子とのリチウムイオンの甚だしい相互作用の原因である。これは、リチウムイオンの周囲での水分子の組織化、および第一水和圏を超えてさえこの構造を維持する原因となる。
【0042】
適当なDNA錯体化塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムといったアルカリ金属イオンを含むものを含み、なぜならこれらの陽イオンのすべてがDNA分子のリン酸基と特異的に錯体形成するからである。この錯体化およびその後のDNA分子の中和は、DNA分子の水系環境での不安定化を引き起こし、および固相への結合を促進する。一実施形態はリチウム塩を使用する。リチウム塩は、塩化リチウムおよび臭化リチウムを含むがそれらに限定されない。フッ化リチウムおよびヨウ化リチウムは、コストが塩化および臭化リチウム塩のコストの約5倍であるため、より望ましくないアルカリ塩である。加えて、リチウムイオンは、前述の一覧の中で唯一の明らかにコスモトロピックなイオンである。ナトリウムイオンは境界線上のコスモトロープであり、一方カリウム、ルビジウムおよびセシウムイオンはカオトロピックイオンである(コリンズ(Collins),K.生物系における粘着性イオン(Sticky Ions in Biological Systems),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92(1995),5553−5557)。塩化セシウムは、それ以外のアルカリ金属塩化物塩よりも約5倍高いコストであり(表1)および塩化および臭化リチウム塩よりも限定された溶解度挙動を有する。加えて、塩化ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩は、水中のリチウム塩によって示される溶液の大きな発熱によって示される通り、塩化および臭化リチウム塩と比較してさらにより限定された溶解度挙動を有する(CRC化学および物理学ハンドブック第62版、CRCプレス社、フロリダ州ボカラトン(CRC Handbook of Chemistry and Physics,62nd edition,CRC Press,Boca Raton,Fl.))。
【0043】
固相担体へのDNAの結合は、溶解および/または添加溶液中のアルカリ金属塩の高濃度によって促進される。アルカリ金属塩は2〜10Mの濃度でありうる。実施例2では、溶解溶液において、塩化アンモニウムおよびカリウム塩はそれぞれ3Mおよび3M未満の最大溶解度を有するが、一方で塩化セシウムおよびナトリウム塩は4Mまで容易に溶解することが観察される。表2に見られるように、これらの塩の値は、塩化アンモニウムの値以外は、水溶液で予想される値とほぼ一致する(CRC化学および物理学ハンドブック第62版、CRCプレス社、フロリダ州ボカラトン(CRC Handbook of Chemistry and Physics,62nd edition,CRC Press,Boca Raton,FL))。
【0044】
コスモトロピックなマグネシウムおよびカルシウムイオンを含むアルカリ土類金属塩は、DNAと塩錯体を形成する性質もまた有しているが、DNAを固相担体へ結合するのに必要な高濃度で可溶でない。加えて、たとえば、アルカリ土類金属のベリリウムはアルカリ金属塩の塩化リチウムまたは臭化リチウムよりも約20倍高価であり、およびしたがって本発明における使用のためには現実的でない。
【0045】
DNA溶解溶液は、DNAが吸着機構によって明確な固相に結合するように、リチウム塩を含む。固相へのDNAの吸着を生じさせるためのリチウム塩の使用は、DNAの沈澱のためのリチウムの使用とは異なる。吸着過程において、溶媒分子はDNA分子から分離される。DNAと固相との間の相互作用は、DNA分子相互作用のものよりもエネルギー的に有利であり、そのため沈澱の代わりに固相への吸着が起こる。適当な固相の一例はホウケイ酸である。
【0046】
DNA溶解溶液は、生物材料中の他の材料と比較して、塩化リチウムまたは臭化リチウムといったDNA錯体化リチウム塩の、緩衝液中の、および界面活性剤の存在によって、グアニジニウム塩、尿素などといった危険なカオトロピック物質を使用せずに、固相担体へのDNAの結合を達成する。リチウムイオンは、DNAといった核酸の荷電したリン酸骨格と結合し、高いリチウムイオン濃度ではDNAをより溶けにくくする(カザコフ(Kazakov) S.A.,金属イオンによる核酸結合および触媒反応(Nucleic Acid Binding and Catalysis by Metal Ions)、『生物有機化学:核酸』(BioorganicChemistry: Nucleic Acids),ヘクト(Hecht),S.M.編,オックスフォード大学出版会(Oxford University Press),NY および Oxford,1996)。このように、DNA錯体化塩は、DNAといった核酸に独自の結合特性を与え、そのため核酸はタンパク質、リン脂質などといった他の夾雑物よりも、固相担体へ結合できる。
【0047】
DNA溶解溶液の第二の成分は、溶液のpHを維持する緩衝剤である。さまざまな試料型からの最大のDNA収率のための、独自の中〜高pHのDNA溶解溶液の使用がここで教示される。たとえば、DNA溶解溶液は、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約8.5、または少なくとも約9さえのpHを維持するように緩衝されうる。緩衝剤は少なくとも約8のpKaを有することができ、および10〜100mMの濃度で使用されうる。適当な緩衝剤の一例は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス(Tris))である。随意的に、DNA溶解溶液のpHを調製するために塩基が使用されうる。塩基は、溶液のpHを少なくとも7に上げることができるものでありうる。塩基は、アルカリ金属水酸化物でありうる。そのようなアルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムを含む。
【0048】
DNA溶解溶液は、一つ以上の界面活性剤をさらに含む。界面活性剤は、液体の表面張力を低減する分子を含み、および同様の極性および構造の分子間の引力を低減することによって異なる極性および構造の分子間の可溶化を可能にする。一実施形態では、界面活性剤は、生物材料の溶解を助ける、洗浄剤、または洗浄剤/界面活性剤混合物である。洗浄剤は、細胞膜の溶解およびホモジナイズ処理を円滑にする目的で、脂質およびタンパク質といった膜成分を可溶化するために存在する。界面活性剤は、溶液の溶解性を補助するためおよび溶液の保存性を高めるために存在する。陰イオン性、陽イオン性、非イオン性および双性イオン性洗浄剤はすべて使用されうる。一部の場合には、DNA単離は非イオン性洗浄剤の使用によって最適に達成され、一方で他の場合には、DNA単離は陰イオン性洗浄剤の使用によって最適に達成される。任意の非イオン性または陰イオン性洗浄剤が使用されうるが、非イオン性洗浄剤の例は、ツイーン(Tween)類のもの(ツイーン(Tween)−20、ツイーン(Tween)−40、ツイーン(Tween)−60、ツイーン(Tween)−80など)、トリトン(Triton)類(X−100、X−114、XL−80Nなど)、テルジトール(Tergitol)(XD、TMN−6など)およびノニデット(Nonidet)またはイゲパール(Igepal)(NP−40など)であり、および陰イオン性洗浄剤の例はSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)またはN−ラウロイルサルコシンである。非イオン性洗浄剤は、5〜15%、たとえば約10%の濃度で使用されうる。陰イオン性洗浄剤は、0.05〜0.2%の濃度で使用されうる。別の一実施形態では、洗浄剤および界面活性剤の組み合わせが使用されうる。一実施形態では、界面活性剤はDGME(ジエチルグリコールモノエチルエーテル)である。一実施形態では、洗浄剤トリトン(Triton)−Xおよび界面活性剤DGMEの組み合わせが用いられる。その組み合わせは、5〜15%、たとえば約10%の濃度でありうる。一例では、組み合わせは5%トリトン(Triton)−Xおよび5%DGMEである。さらに別の一実施形態では、組み合わせは、25〜35%、たとえば約30%の濃度でありうる。一例では、組み合わせは0.1%SDSおよび30%DGMEである。
【0049】
中性から高pH緩衝液中でのリチウム塩および洗浄剤または界面活性剤の組み合わせはまた、一般的に生物材料に随伴するDNアーゼといった酵素を変性させるのに役立つ。随意的に、DNA溶解溶液はまた、外来の金属イオンを錯体化するキレート剤を含みうる。キレート剤は、1〜100mMの濃度で、または1〜10mMの濃度で存在しうる。キレート剤の例はEDTAまたはクエン酸塩である。DNA溶解溶液は、他の記載された試薬に対して顕著な長所を有する。DNA錯体化リチウム塩および洗浄剤の中性〜高pH緩衝液中での独特の組み合わせは、フェノール、クロロホルム、およびグアニジニウム塩といった試薬の使用無しにDNAに有害な酵素(たとえばDNアーゼ)を不活性化する一方、DNA添加溶液と組み合わせて使用する際に生物材料の完全な溶解および結合過程の促進を可能にする。
【0050】
(2)DNA添加溶液(spiking solution):DNAの固相への定量的結合を生じるようにDNA分子を脱水するのに用いることができる、DNA添加溶液の使用が本文書で教示される。DNA添加溶液はアルコールでありうる。アルコールの例はイソプロパノール、エタノール、またはメタノールである。一実施形態では、DNA添加溶液は、たとえば100%イソプロパノールのような、100%アルコールである。DNA添加溶液は、代替的に、アルカリ金属塩を含みうる。アルカリ金属塩DNA添加溶液は、たとえば7より大のpHで、緩衝されてもされなくてもよい。アルカリ金属塩DNA添加溶液は、随意的な洗浄剤または界面活性剤を追加で含みうる。一実施形態では、界面活性剤はDGMEである。
【0051】
DNA添加溶液は、DNAの固相への定量的結合を生じるようにDNA分子を脱水する。LiClは、他の塩が十分可溶でない極めて高濃度(13molal)にて溶液からDNAを沈澱させることが観察されている(エマヌエル(Emanuel),C.F.高塩溶媒に溶解されたデオキシリボ核酸のいくつかの物理的性質:塩濃色効果(Some Physical Properties of Deoxyribonucleic Acids Dissolved in a High−Salt Medium: Salt Hyperchromicity,)Biochim.Biophys.Acta42,91−98 (1960))。より高濃度の塩またはアルコールは、ガラス繊維に結合したDNAのより高い収率を結果として生じる。LiClの漸増濃度では、水分子は核酸水和圏から引き離され、代わりに溶液中のLi+と優先的に結合する。一つの研究は、LiClの十分高い濃度では、最終的にDNA構造と結合して残る水分子は無いことを示す(チャトラジ(Chattoraj),D.K.およびビルディ(Birdi),K.S.『生物高分子による水蒸気の吸着』(Adsorption of Water Vapor by Biopolymers,)、『吸着およびギブズ表面過剰』より(Adsorption and the Gibbs Surface Excess),プレナム・プレス社(Plenum Press),NYおよびロンドン,1984)。脱水作用およびその後の表面の中和は、DNA分子が高度に規則化された水溶液から疎水性の増大のために追い出されおよび固相へ結合する原因となる。シリカ固相へのDNA吸着はまた、部分的に、脱水過程中に水分子がDNA分子およびシリカ固相表面の両方から放出される際に起こるエントロピーの増大によってエネルギー的に推進される(メルザック(Melzak),K.A.他『過塩素酸溶液中のシリカへのDNA吸着のための推進力』(Driving Forces for DNA Adsorption to Silica in Perchlorate Solutions),J.Colloid Interface Science181,635−644 (1996))。高塩濃度または高いアルコール組成のどちらかを有するDNA添加溶液の使用は、DNA分子を溶液からより完全に脱水または塩析し、固相への吸着を引き起こす。
【0052】
一実施形態では、DNA添加溶液は、リチウム塩といったアルカリ金属塩の高濃度を含む。一実施形態では、アルカリ金属塩は10〜15Mの濃度である。DNA添加溶液は、pH少なくとも7で緩衝されうる。DNA添加溶液は、塩および緩衝剤の溶解度を補助するための界面活性剤を含みうる。界面活性剤はDGMEでありうる。
【0053】
(3)DNA洗浄溶液:核酸を固相担体へ結合したままにさせる一方で、タンパク質およびリン脂質といった非核酸混入物または不純物を除去する目的で、核酸が結合した固相担体を洗浄するためのDNA洗浄液もまたここで教示される。洗浄溶液は、アルコール、および緩衝剤、塩またはキレート剤(たとえばEDTA)を含む。緩衝剤組成物は、たとえばpH6〜8のトリスHClでありうる。緩衝剤濃度は50〜150mM(たとえば100mM)でありうる。アルコールはエタノールでありうる。アルコール濃度は25〜100%でありうる。EDTA濃度は1〜20mM(たとえば5〜10mM)でありうる。
【0054】
(4)DNA溶出溶液:固相担体と結合したDNAは、DNA溶出溶液を用いて溶出されうる。生物材料の溶解およびDNAの固相担体への結合に、および固相担体の洗浄に用いられる試薬の単純さは、単純なDNA溶出溶液に適する。当業者に公知であるその他のDNA溶出溶液もまた使用されうる。たとえば、使用されうるDNA溶出溶液がベルサジーン(Versagene)(商標)DNA溶出溶液(ジェントラ・システムズ社(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis))である。代替的に、トリス−EDTA(TE)が使用されうる。
【0055】
固相担体
さまざまな固相担体が使用されうる。適当な固相担体は、ガラス繊維といったシリカを基礎とする担体、またはセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンといったその他の材料、およびその組み合わせを含む。固相担体は、プラグフローまたは連続流DNA単離方法を可能にする容器に入れるかまたは固定することができる。代替的に、固相担体の材料は、チューブまたはプレートといった適当な容器に入れるかまたは固定することができる膜、ディスク、またはシリンダーといった独立の固相担体を作製するために、充填されうる。一実施形態では、固相担体は、生物材料との最適の接触を可能にするために、繊維状または粒子状である。固相担体の、試薬との使用に適したサイズは、生物材料の量に従って変化しうる。たとえば、ガラス繊維膜は、さまざまな量のDNAの結合、精製および溶出を可能にするためにさまざまなサイズに切ることができる。
【0056】
一実施形態では、固相担体は、ここに記載のDNA溶解溶液の存在下で、他の生物混入物でなく核酸の固相担体への結合を可能にする材料でありうる。そのような固相担体は、シリカを基礎とするかまたはホウケイ酸ガラス繊維材料でありうる。ガラス繊維材料は、正に帯電したケイ素およびホウ素原子への特異的結合特性のため、およびケイ酸表面の水素結合特性のために、より良い収率を提供する。核酸に対するシリカの特異性のために、他の混入物と相対的により多くのDNAが結合し、および溶出する産物はより実質的に純粋になる。
【0057】
試薬との使用に適した固相担体の形状は、たとえば、シート、カット済みディスク、シリンダー、単繊維、または粒子状物質から成る固相担体でありうる。固相担体の材料は、適当な容器に固定化するかまたは入れることができる膜、ディスク、またはシリンダーといった独立の固相担体を作製するために、充填されうる。必要に応じて、固相担体は適当な容器、たとえば、紙状(たとえば血液スポットカード)、微量遠心管、スピンチューブ、96ウェルプレート、チャンバー、またはカートリッジに入れられる。固相担体が繊維を含む場合、繊維を適当に充填し、最適な核酸結合、およびタンパク質、リン脂質などといった混入物の洗い去りを可能にするための、適当な容器に入れることができる。
【0058】
固相担体は、生物試料中に存在するDNAを分解するために、RNアーゼ溶液で前処理されうる。加えて、前処理カラムを用いることは、従来の方法では典型的には必要である、別個のRNアーゼ消化段階の必要を無くする。
【0059】
随意的に、精製は、RNアーゼ処理カラム(ジェントラ・システムズ社(Gentra Systems,Inc.))の使用によって改善されうる。RNアーゼ処理カラムは、生物試料中に存在するRNAを分解する。加えて、前処理カラムを用いることは、従来の方法では典型的には必要である、別個のRNアーゼ消化段階の必要を無くする。
【0060】
別の一実施形態では、DNA溶解溶液は、固相担体の作製に用いられる材料(たとえば繊維など)へ直接加えられ、および利用者が使用可能な最終形態(たとえば紙、スワブ、ディスク、プラグ、カラムなど)に加工される前に乾燥されうる。RNアーゼ処理カラム(ジェントラ・システムズ社(Gentra Systems,Inc.))の使用は、精製工程中の段階数およびDNA試料を処理するための時間を低減する。
【0061】
本発明がよりよく理解されうるように、固相担体を入れる容器の具体的実施形態をより詳細にここで記載する。一実施形態では、容器は、一つ以上の入口ポートまたは貫通可能なセプタムを上端に備えたカートリッジである。入口ポートは、試料または試薬の入った上流の容器と、メスルアーロックといったコネクタを通じて接続されうる。一つの入口の試料ポートは、生物試料の固相担体への添加に使用されうる。試料ポートの随意的な機能は、試料が試料ポートを通じて移送された後に試料ポートを封じる自己シール機構である。第二の入口は試薬ポートの機能を果たしうる。両方の入口ポートについての随意的な機能は、保護用分離シールである。さらに、入口ポート、分離シールおよび拡散器は随意的なスクリューキャップ内に入れることができる。
【0062】
DNA溶解溶液の汎用性および有効性は、DNA単離のための二つの実行可能な選択的方法を与える。第一の方法では、生物材料は固相担体と接触させられる前にDNA溶解溶液と接触させられる。一実施形態では、生物材料が細胞またはウイルス材料を含む場合、DNA溶解溶液が、細胞を溶解しおよびDNAを含む核酸を放出するために用いられる。第二の方法では、DNA溶解溶液が固相担体へ直接加えられおよび固相担体と結合させられ、それによって一段階を削除し、およびさらに方法を簡略化する。この後者の方法では、処理された固相担体と生物材料を接触させる前に、DNA溶解溶液は固相担体へ直接加えられおよび次いで固相担体上で乾燥される。
【0063】
固相担体の底に、細胞破片、タンパク質および脂質分子の分散および通過に適した孔径を有する随意的な拡散器がある。拡散器は、カートリッジの断面にわたって均一な生物材料の横断を可能にし、および固相担体の上または下のどこでも生物材料の不均一な蓄積を防ぐ。カートリッジの出口は、先細の容器上にきちんと適合する保護キャップを備えている。精製されたDNAは、簡易なおよび混入の無い保存のためのスナップキャップを有するコニカルチューブを含む回収チューブに回収される。容器全体は、処理すべき試料のサイズおよび以降の分析に必要な収量に応じてサイズ変更されうる。
【0064】
別の一実施形態では、容器は固相担体が充填された挿入部品を保持するように設計されたスピンチューブである。固相担体は、シリカ基礎、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、およびその組み合わせでありうる。一実施形態では、担体はシリカ基礎のホウケイ酸ガラス繊維膜である。挿入部品は、スピンチューブに挿入部品を保持するための縁付き上部、および固相担体を支持する一方で液体を通過させる穴あき底部を有しうる。スピンチューブに繋がれたキャップが、挿入部品を覆うために使用されうる。溶液、たとえば、非核酸混入物を含むDNA溶解溶液、DNA洗浄溶液、またはDNAを含むDNAは、溶液を引き出す遠心力によって穴あき底部を通過しおよびスピンチューブの底に回収される。
【0065】
さらに別の一実施形態では、容器は各ウェルに固相担体が充填されたマルチウェルプレート、たとえば、6、12、24、48、96、または384ウェルプレートでありうる。各ウェルの底は、混入物または精製DNAを含む溶液が通過できる出口ポートを有しうる。
【0066】
独自の試薬(DNA溶解溶液、DNA添加溶液、DNA洗浄溶液、およびDNA溶出溶液)との最適な固相担体の独自の組み合わせは、実質的に純粋な、未分解のDNAの単離を結果として生じる。記載の通りDNA溶解および添加溶液の性質は、核酸の優れた溶解および固相担体への結合を可能にする一方、DNA溶出溶液および随意的なRNアーゼ処理カラムは、固相担体からのDNAの優先的な溶出を可能にする。
【0067】
実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物試料および下記のうち一つ以上(たとえばすべて)から調製するための説明方法を含む、DNAを精製するためのキットもまた提供される:別個の溶液としてまたは固相担体上に前処理されたDNA溶解溶液、DNA溶解溶液で処理していないかまたは処理された固相担体、DNA添加溶液、DNA洗浄溶液、DNA溶出溶液またはその任意の組み合わせ。加えて、キットは、プロテイナーゼK溶液、固相担体を入れるための容器、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを入れるための容器、およびその組み合わせといった付加的構成要素を含みうる。実質的に純粋な、未分解のDNAは、当業者に公知である以降の分析、たとえば、核酸定量、制限酵素消化、DNA配列決定、サザンブロッティングなどといったハイブリダイゼーション技術、および、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列準拠増幅(NASBA)、自己維持的配列複製(SSRまたは3SR)、鎖置換増幅(SDA)、および転写媒介増幅(TMA)、定量的PCR(qPCR)といった増幅方法、またはその他のDNA分析における使用に適したDNAである。
【0068】
試薬、方法およびキットは、相対的に混入RNAまたは他の不純物をほとんど含まずそのためDNAをたとえば核酸定量、制限酵素消化、DNA配列決定、サザンブロッティングなどといったハイブリダイゼーション技術、および、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列準拠増幅(NASBA)、自己維持的配列複製(SSRまたは3SR)、鎖置換増幅(SDA)、および転写媒介増幅(TMA)、定量的PCR(qPCR)といった増幅方法、またはその他のDNA分析といった下流の処理に使用できる、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを提供する。
【0069】
方法
ここではDNAを生物材料から精製するための方法が提供される。試薬および固相担体は、選択的な単離方法を与える。
【0070】
方法の一実施形態では、生物材料は生物材料は固相担体と接触させられる前にDNA溶解溶液と接触させられる。DNA溶解溶液は、固相担体へ加えられる前に、生物材料を溶解しおよびDNAを放出するのに用いられる。加えて、DNA溶解溶液は、DNアーゼのような有害な酵素の有害作用を防ぐ。DNA溶解溶液は、沈澱中の培養細胞または白血球を溶解するために、または標準の96ウェルプレートのような培養プレートに接着しているかまたはそれへ回収された細胞を溶解するために成功裡に使用されうる。生物材料は組織塊または小粒子から成り、DNA溶解溶液は有効な溶解能力のために、そのような組織塊を潰してスラリーにするために効果的に使用されうる。DNA溶解溶液の容量は、細胞数または組織サイズに応じて拡大または縮小されうる。生物材料が一旦溶解されると、D
NA添加溶液を溶解物に加えることができ、および次いで固相担体へ加えることができる。
【0071】
別の一実施形態では、DNA溶解溶液を固相担体へ直接加えることができ、それによって一段階を削除し、およびさらに方法を簡略化する。この後者の方法では、処理された固相担体と生物材料を接触させる前に、DNA溶解溶液は固相担体へ加えられおよび次いで固相担体上で乾燥されうる。
【0072】
RNアーゼを、カラムを前処理するために固相担体へ直接、または生物試料中に存在するRNAを分解するために溶解溶液へ加えることができる。前処理カラムおよび/または溶解溶液に加えられたRNアーゼを用いて、従来の方法では典型的には必要である別個の溶解および/またはRNアーゼ消化段階の必要を無くす。
【0073】
生物材料が細胞またはウイルス材料を含む場合、DNA溶解溶液との直接接触、またはDNA溶解溶液および/またはRNアーゼ溶液で前処理された固相担体との接触は、細胞膜および核膜、またはウイルス外被が可溶化および/または破壊する原因となり、それによって核酸および、タンパク質、リン脂質などといった他の混入物質を放出する。
【0074】
三つめの実施形態では、試薬はたとえば全血について有用でありうる直接溶解方法に使用できる。この方法は、他のほとんどの全血精製方法に共通する赤血球溶解段階を実施する必要性を無くす。この方法では、第一のDNA溶解溶液が生物材料へ加えられる。第一のDNA溶解溶液は、アルカリ金属塩および非イオン性洗浄剤を含む。第二のDNA溶解溶液はアルカリ金属塩を含み、および陰イオン性洗浄剤が生物材料へ加えられる。2種類の溶解溶液の使用は、大量の血液の直接溶解中にすべての血球の溶解および可溶化に成功するために有用である。
【0075】
本方法の四つめの実施形態では、DNAはたとえば固定細胞または頸部スワブ培地または固定頸部細胞から効果的に精製されうる。陰イオン性洗浄剤を含む溶解溶液は単に生物材料へ加えられ、ピペットで上下して細胞を溶解およびタンパク質を変性する。溶解段階後に、プロテイナーゼK溶液を用いることは、たとえば頸部スワブ培地のようなある種類の試料に必須でありうる。これらの試料については、プロテイナーゼKが添加されおよび試料はボルテックスで混合される。試料は2〜3時間65℃にてインキュベートされうる。
【0076】
上記の方法のうちいずれかの溶解段階の後、たとえば固相へのDNAの定量的結合を生じるため、DNA分子を脱水するのにDNA添加溶液が使用されうる。次に、核酸が固相担体と結合して残るように、生物材料は随意的に、たとえば遠心分離、ピペッティング、圧力、減圧のような適当な方法によって、またはこれらの方法とDNA洗浄溶液との併用によって除去される。タンパク質、リン脂質などを含む非核酸生物材料の残りは、まず遠心分離によって除去されうる。これを行うことによって、溶解物中の結合していない混入物は固相担体から分離される。
【0077】
その後、結合したDNAは、当業者に公知であるDNA溶出溶液の適当な量を用いて溶出されうる。固相担体は次いで、固相担体からDNAを放出するために遠心分離、または加圧または減圧に供することができ、および次いで適当な容器へ回収されうる。
【0078】
別の一態様として、具体的な手順を含に、ここに記載の試薬および随意的に固相担体と組み合わされた、ここで開示される方法にしたがって生物材料からDNAを精製するのに使用されうるキットが提供される。
【0079】
本発明は下記の詳細な実施例を参照することによってさらに説明される。これらの実施例はさまざまな具体的および例示的な実施形態および方法をさらに説明するために提供される。しかし、本発明の範囲内に留まる一方で多数の変形および改変が実施されうることが理解されるべきである。
【0080】
下記で言及されるすべての原材料はシグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス)といった販売元から容易に入手可能である。すべてのパーセンテージは、特記されない限り、試薬の総容量に基づく容量当たり容量である。
【実施例】
【0081】
実施例1:コスト分析
最高品質の固相DNA精製製品を製造するために、製品はいくつかの点で極めて良好に機能すべきである。固相DNA精製製品は、効果的に純粋なDNA試料をさまざまな試料型から単離しおよびDNAの可能な最高収率を結果として生じるべきである。使い勝手が良いべきであり、つまり段階はあまり煩わしくてはならず、および成分は毒性であってはならずおよび容易に処分できる。さらに、本製品は利用者にとって経済的であるべきである。従って、溶液のための費用効果の高い成分を見出すことが最も重要であった。表1はここで評価された塩それぞれについてコストを示す。
【0082】
【表1】

【0083】
リチウム塩は本方法に有効に働くが、リチウム塩LiFおよびLiIは高価であり、および加えて、LiFは大変危険である。LiClおよびLiBrは共に本方法に有効に働きおよび500グラム当たり60〜65ドルとほぼ同額である。KCl、NaCl、およびNH4Clはすべて経済的であるが、しかし望まれるDNA収率を結果として生じない。
【0084】
実施例2:塩化物塩についてのデータの溶解度および熱、および固相DNA精製手順に関するLiClおよびLiBr塩との比較
いくつかの塩化物塩の溶解度および性能を検討し、および2種類のリチウム塩すなわち塩化リチウムおよび臭化リチウムと比較した。緩衝剤および洗浄剤を基礎とするDNA溶解溶液の両方で得られる最大の溶解度を検討するため、DNA溶解溶液をその他の塩化物塩を用いて調製した。表2はこの研究で測定されたほぼ最大溶解度を示し、および『化学および物理学ハンドブック』(Handbook of Chemistry and Physics)(第62版、CRCプレス社(CRC Press)、フロリダ州ボカラトン(Boca Raton))から得られた20℃へ外挿された溶解度データ表および溶液データの熱の表と比較する。
【0085】
溶解溶液中で試験した塩化物塩の大部分の溶解度は、塩化カリウムおよび塩化アンモニウムの溶解度を除き、リチウムの塩化物および臭化物塩と濃度4Mで同等であった。塩化カリウムの予測される溶解度は、水溶液中ではそれ以外の塩の溶解度と比較した場合塩約3Mだけで低かった。その他の塩は水溶液中で塩4Mよりよく溶解すると予測されたが、しかし塩化アンモニウム塩は、約7Mの予測溶解度と比較して、約3Mまでしか溶解しないことが観察された。これは、溶液中の界面活性剤、たとえばトリトン(Triton)X−100(5%)およびDGME(5%)の存在が原因である可能性があり、なぜなら溶液中のこれらの成分の組み合わせは10%であったからである。塩以外では、DNA溶解溶液の残りはすべての溶液で一定に保たれ、および5%トリトン(Triton)X−100、5%DGME(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、10mM EDTA、10mM TCEP、1%タングステン酸ナトリウムを含み、100mM TRIZMA pH 8.8に溶解した。
【0086】
水中での塩化リチウムおよび臭化リチウムのついての溶液の大きな発熱は、リチウム塩によって一般的に示される大きな溶解度に関して実証を提供した。本実施例ではその他の塩化物塩は溶液の吸熱を示し、これらの塩の溶媒和はリチウム塩に関してほどには水溶液中で有利でないことを示す。
【0087】
【表2】

*注:『化学および物理学ハンドブック』(Handbook of Chemistry and Physics)の表データから20℃へ外挿したデータ
【0088】
実施例3:DNA精製のための洗浄剤の評価
適当に細胞を溶解し、およびまたDNA溶解溶液中で可溶なままである洗浄剤が特定された。ツイーン(Tween)、トリトン(Triton)、テルジトール(Tergitol)、ノニデット(Nonidet)およびイゲパール(Igepal)類の洗浄剤を、いくつかの界面活性剤化合物と共に調べた。
【0089】
これらの洗浄剤処方物のうち多数が、DNA溶解溶液のその他の成分と混合した場合、経時的に鹸化または分解しおよび溶液から沈澱したことが明らかになった。たとえば、これは10%ツイーン(Tween)−20(ポリオキシレンソルビタンモノラウレート)で起こった。同様の性能が、トリトン(Triton)X−100(t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)およびツイーン(Tween)−20の等混合物を用いて見出されたが、この混合物はより長い期間にわたって安定であった。この混合物は、しかし、最終的に鹸化しおよび分離した。DGME(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)が、塩および洗浄剤の組み合わせの溶解を助ける界面活性剤としての試験に選択された。5%トリトン(Triton)−Xおよび5%DGMEの混合物が、第一のDNA溶解溶液の溶解度を維持するために特に良好に働くことが見出された。
【0090】
頸部細胞からのDNA抽出は、この型の試料からのDNAの頑健な回収にはプロテイナーゼK消化が必要であるため、特に困難であることが明らかになった。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在は、最高のプロテイナーゼK活性を得るために、溶解溶液中で非常に良く作用した。最適濃度は、さまざまなDNA溶解溶液をプロテイナーゼK処理と共に系統的に試験することによって決定された。より高濃度のSDS(0.1%SDS終濃度より大)は、室温前後の温度で溶解溶液から析出し、プロテイナーゼK活性が必要より低い原因となる。より低濃度のSDS(0.1%終濃度より小)は完全なプロテイナーゼK活性を許さず、これは頸部細胞のような固定細胞調製物の完全な溶解に有用である。SDSおよびLiCl塩が溶解、添加および結合処理を通じて可溶なままでいられるように、DGMEもまたこの第二のDNA溶解溶液に含められた。
【0091】
全血のための直接溶解処理の開発に関して主な技術的問題は、全血における洗浄剤の溶解効率であった。最初の試験は、細胞溶解のための非イオン性洗浄剤トリトン(Triton)X−100の使用に焦点を当てた。この洗浄剤の使用は、おそらく溶液中に存在する赤血球および赤血球溶解物の妨害が原因で、直接溶解方法での低いDNA回収を結果として生じた。トリトン(Triton)X−100はタンパク質変性剤ではなく、および高いレベルの細胞混入のために、立証されたタンパク質変性剤である洗浄剤を試すことが決められた。溶解効率を高めるために、陰イオン性洗浄剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を、非イオン性洗浄剤の代わりに試験した。これはDNA回収を高めたがしかし、精製膜の目詰まりを結果として生じた。細胞沈澱を用いた試験は、両方の洗浄剤の組み合わせがDNA回収の増加を結果として生じたことを実証した。直接溶解方法における両方の洗浄剤の使用は、DNA回収の増加および膜目詰まりの消失を結果として生じた。洗浄剤添加の順序(陰イオン性/非イオン性に対して非イオン性/陰イオン性)の試験は、最適なDNA回収のためには非イオン性洗浄剤を陰イオン性洗浄剤の前に加えなければならないことを示した。
【0092】
実施例4:直接溶解方法による血液からのDNAの単離
等容の第一のDNA溶解溶液(6M LiCl、5%トリトン(Triton)X−100、5%DGME(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、10mM EDTAを含む100 mMトリス、pH 8.8)を全血 試料へ加えた。完全なホモジナイズを達成するため、結果として生じる溶液をピペッティングで5回上下し、高速にて5回パルスボルテックスし、ピペッティングで20回上下し、および次いで再び5回パルスボルテックスした。ホモジナイズ後、血液の2倍容の第二のDNA溶解溶液(25mMクエン酸塩、2M LiCl、0.1% SDS、30%DGME、を含む5 mMトリス、pH 9.1)を試料へ加えた。試料は第一のDNA溶解溶液について記載したのと同一の過程を経て混合した。2種類の溶解溶液を用いたホモジナイズおよび溶解後、血液の4倍容のDNA添加溶液(10M LiCl、10%DGME、100mMトリス、pH7.9)を各試料に加えた。結果として生じる溶液を混合するためピペッティングで5回上下した。
【0093】
ホモジナイズ後、ホモジナイズしたそれぞれの細胞溶解物600μLをそれぞれの精製カラムへピペットで加えた。精製カラムではホウケイ酸ガラス繊維膜(ワットマン(Whatman)Dガラス繊維膜)がバスケット内に入っており、および減圧溶出器の中に入れた。溶解物は減圧ろ過を用いて膜を通って吸引された。残りの溶解物をカラムへ1回に600mL加え、および減圧ろ過を用いて除いた。
【0094】
各溶解物の減圧ろ過およびその後のホウケイ酸膜表面へのDNAの結合後、400μLのDNA洗浄溶液(5mM EDTA、70%エタノールを含む100mMトリスHCl、pH7.6)をカラム材料に加えおよび30秒間減圧して除去した。DNA洗浄溶液添加および減圧ろ過段階を、同一の溶出チューブへ1回繰り返した。
【0095】
DNAを固相担体から溶出するために、膜の入ったバスケットを微量遠心管へ移し、および50μLのDNA溶出溶液(1mM EDTAを含む10mMトリス、pH7.5)溶液をカラム材料へ加え、5分間インキュベートし、および最高速度にて1分間遠心した。DNA溶出溶液の添加、5分間のインキュベートおよび遠心分離段階を1回繰り返した。5種類の血液量(300mL、500mL、1mL、1.5mLおよび3mL)からの精製を実施し、および電気泳動し、および200ngのラムダHind IIIラダーと比較した。結果は、広い範囲の全血開始容量から直接溶解方法を用いて、未変化の高分子量DNAを全血から精製できたことを示した。
【0096】
実施例5:RBC溶解方法を用いた血液からのDNAの単離
全血試料からのDNAの単離に用いられる一実施形態は、まず血液試料中の赤血球を溶解し、次いで結果として生じる赤血球溶解物から遠心分離を用いて白血球を沈澱する。赤血球溶解物上清を流去しおよび白血球沈澱を洗浄および再沈澱した後、200μLのDNA溶解溶液(6M LiCl、5%トリトン(Triton)X−100、5%DGME(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、10mM EDTAを含む100mMトリス、pH8.8)を沈澱へ加えて、試料を完全にホモジナイズするためにDNA溶解溶液中でボルテックスおよびピペッティングによって白血球を溶解する。ホモジナイズ後、400μLのDNA添加溶液(10M LiCl、10%DGME、100トリス、pH7.9)を白血球溶解物へ加え、および混合物を、バスケット内にホウケイ酸ガラス繊維
膜(ワットマン(Whatman)Dガラス繊維膜)が入った精製カラムへ加え、および2mL微量遠心管の中に入れた。微量遠心管を次いで7000×gにて1分間遠心した。溶解物の遠心分離後、400μLのDNA洗浄溶液(5mMEDTA、70%エタノールを含む100mMトリスHCl、pH7.6)をカラム 材料へ加え、および微量遠心機で最高速度にて1分間遠心した。DNA洗浄溶液添加および遠心分離段階を1回繰り返した。DNAを固相担体から溶出するために、膜の入ったバスケットを新しい微量遠心管へ移し、および50μLのDNA溶出溶液(1mM EDTAを含む10mMトリス、pH7.5)をカラムへ加え、および微量遠心機で最高速度にて1分間遠心した。同一の溶出チューブへ、DNA溶出溶液添加および遠心分離段階を1回繰り返した。
【0097】
キアンプ(QIAamp)血液DNAミディキット(キアゲン社(Qiagen Inc.)、ドイツ)との直接比較において、ベルサジーン(Versagene)血液DNA平均収率は、2mL血液試料について図1に示す通りキアンプ平均収率値の約2倍である(関連統計値について表3を参照)。
【0098】
【表3】


理論収率計算のパーセントは、白血球1個当たり6pgのゲノムDNAが存在するという仮定に基づく。予測される理論収率の70〜80%の高さの収率が一部の例でRBC溶解方法を用いて図2に示す通り2mL血液試料を用いて得られ、ここでDNA溶解溶液処方物はpHおよびLiCl濃度について変化させた(関連統計値について表4を参照)。
【0099】
【表4】

【0100】
実施例6:頸部(cervical)細胞からのDNAの単離
頸部細胞スワブ培地または固定頸部細胞から核酸を抽出することは典型的には困難であるため、それはここで開示される組成物および方法の効率を説明するために効果的に使用できる。しかし、当業者は、開示される組成物および方法はまた、広い範囲の生物試料を用いて効果的に使用でき、および本発明はいかなる試料型での使用にも限定されないことを理解する。
【0101】
頸部細胞試料はシンプレップ(ThinPrep)(登録商標)パップテスト(Pap Test)(商標)(サイティック社(Cytyc),マサチューセッツ州ボックスボロ(Boxborough))に回収され、および2,200×gにて5分間遠心沈降され、および次いで細胞を洗浄するためにPBSに再懸濁された。再懸濁された細胞を微量遠心管に入れ、および14,000×gにて15秒間遠心沈降させた。PBS上清を頸部細胞沈澱から除去した。細胞を再懸濁するために各チューブを強くボルテックスした;これは細胞溶解を大きく促進した。200μLの溶解溶液(25mMクエン酸塩、2M LiCl、0.1%SDS、30%DGMEを含む25mMトリス、pH9.1)を試料に加えて細胞を再懸濁し、および細胞を溶解およびタンパク質を変性するためにピペッティングで上下させた。1.0μLのプロテイナーゼK溶液(20mg/ml)を細胞溶解物に加え、および短いボルテックスによって混合し;次いで試料を65℃にて2〜3時間インキュベートした。400μLの100%イソプロパノールDNA添加溶液を試料に加えた。試料を30秒間パルスボルテックスし、および次いでカラムへの負荷前に2分間静置した。試料を前処理したRNアーゼA処理精製カラム(ジェントラ・システムズ社(Gentra Systems,Inc.))に負荷した。試料を7,000×gにて1分間遠心分離した。精製カラムの入ったバスケットを新しい透明チューブへ移した。200μLのDNA洗浄溶液(5mM EDTA、70%エタノールを含む100mMトリスHCl、pH7.6)を各精製カラムへ加えた。精製カラムを次いで7,000×gにて1分間遠心分離した。追加の200μLのDNA洗浄溶液を各精製カラムへ加えた。精製カラムを次いで7,000×gにて2分間遠心分離した。精製カラムの入ったバスケットを新しい透明チューブへ注意深く移した。50μLのDNA溶出溶液(1mM EDTAを含む10mMトリス、pH7.5)を各精製カラムへ加え、および室温にて5分間インキュベートした。精製カラムを次いで14,000×gにて1分間遠心分離した。
【0102】
ピュアジーン・リキッド・ケミストリ(Puregene Liquid Chemistry)(ジェントラ・システムズ社(Gentra Systems,Inc.))との直接比較において、ベルサジーン(Versagene)固相DNAケミストリ(ジェントラ・システムズ社)平均収率は、下記の表に示される通り、開始頸部試料型にかかわらず同様である。
【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
本明細書で引用されたすべての出版物、特許および特許出願は参照により本開示に含まれる。前述の明細書では本発明はその特定の好ましい実施形態に関して説明され、および多数の詳細が説明のために示されている一方、本発明は追加の実施形態が可能でありおよびここに記載の詳細のうち一部は本発明の基本原理を離れることなく相当に変化されうることが当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、キアンプ(QIAamp)血液DNAミディキット(キアゲン社(Qiagen,Inc.)ドイツ)およびベルサジーン(Versagene)血液DNAキット(ジェントラ・システムズ社(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ)を比較した理論DNA収率の割合を示すグラフである。
【図2】図2は、溶解溶液のリチウム塩およびpHを比較した理論DNA収率の割合を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約1Mの濃度のリチウム塩;
少なくとも一種類の界面活性剤;および
緩衝剤
:を含む、DNAを単離および精製するための処方物。
【請求項2】
さらにキレート剤を含む、請求項1の処方物。
【請求項3】
キレート剤がEDTAまたはクエン酸塩であることを特徴とする請求項2の処方物。
【請求項4】
処方物がカオトロープおよび/または強いカオトロピック物質を欠くことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかの処方物。
【請求項5】
リチウム塩が塩化リチウムであることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれかの処方物。
【請求項6】
リチウム塩が約2〜10Mの濃度であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれかの処方物。
【請求項7】
処方物が約7を上回るpHを有することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれかの処方物。
【請求項8】
処方物が約7ないし約9のpHを有することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれかの処方物。
【請求項9】
界面活性剤が約10〜40%v/vの濃度で存在することを特徴とする請求項1〜8のうちいずれかの処方物。
【請求項10】
少なくとも一種類の界面活性剤がジエチルグリコールモノエチルエーテル(DGME)であることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれかの処方物。
【請求項11】
DGMEが約5%ないし約35%v/vの濃度で存在することを特徴とする請求項10の処方物。
【請求項12】
少なくとも一種類の界面活性剤が洗浄剤であることを特徴とする請求項1〜11のうちいずれかの処方物。
【請求項13】
洗浄剤が陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性または非イオン性洗浄剤、またはその混合物であることを特徴とする請求項12の処方物。
【請求項14】
洗浄剤が陰イオン性および非イオン性洗浄剤の混合物であることを特徴とする請求項12または13の処方物。
【請求項15】
陰イオン性洗浄剤がSDSであることを特徴とする請求項13または14の処方物。
【請求項16】
SDSが0.05〜0.2%v/vの濃度で存在することを特徴とする請求項15の処方物。
【請求項17】
洗浄剤がトリトン(Triton)−Xであることを特徴とする請求項12または13の処方物。
【請求項18】
洗浄剤が0.05〜5.0% v/vの濃度で存在することを特徴とする請求項17の処方物。
【請求項19】
(a)DNAを含む生物材料をDNA溶解溶液と接触させて混合物を形成し、DNA溶解溶液は7より大のpHで緩衝されており、およびDNA溶解溶液はリチウム塩および少なくとも一種類の界面活性剤を含み;
(b)混合物をDNA添加溶液と接触させ;
(c)生物材料中に存在するDNAが固相担体へ結合するように、混合物を固相担体と接触させ;
(d)固相担体を洗浄溶液で洗浄し;および
(e)DNAをDNA溶出溶液で溶出する
:段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から単離するための方法。
【請求項20】
DNA添加溶液がイソプロパノール、エタノールおよび/またはメタノールを含むことを特徴とする請求項19の方法。
【請求項21】
DNA添加溶液がアルコールの混合物を含むことを特徴とする請求項19または20の方法。
【請求項22】
DNA添加溶液が100%イソプロパノールを含むことを特徴とする請求項19または20の方法。
【請求項23】
DNA添加溶液が1Mより多いアルカリ金属塩を含むことを特徴とする請求項19〜22のうちいずれかの方法。
【請求項24】
生物材料が頸部細胞試料であることを特徴とする請求項19〜23のうちいずれかの方法。
【請求項25】
生物材料が全血であることを特徴とする請求項19〜23のうちいずれかの方法。
【請求項26】
生物材料が培養細胞、固定細胞、および/または組織試料であることを特徴とする請求項19〜23のうちいずれかの方法。
【請求項27】
洗浄溶液が約7より高いpHで緩衝されていることを特徴とする請求項19〜26のうちいずれかの方法。
【請求項28】
溶解および/または洗浄溶液がカオトロープおよび/または強いカオトロピック物質を欠くことを特徴とする請求項19〜27のうちいずれかの方法。
【請求項29】
DNA溶解溶液がさらにキレート剤を含むことを特徴とする請求項19〜28のうちいずれかの方法。
【請求項30】
固相担体がシリカ、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、またはポリフッ化ビニリデン、またはその組み合わせの成分を含むことを特徴とする請求項19〜29のうちいずれかの方法。
【請求項31】
固相担体が、生物材料を固相担体と接触させる前に、RNアーゼ 溶液で前処理されていることを特徴とする請求項19〜30のうちいずれかの方法。
【請求項32】
溶解溶液のリチウム塩が塩化リチウムまたは臭化リチウムであることを特徴とする請求項19〜31のうちいずれかの方法。
【請求項33】
溶解溶液のリチウム塩が約1Mより高い濃度で存在することを特徴とする請求項19〜32のうちいずれかの方法。
【請求項34】
溶解溶液のリチウム塩が2Mないし8Mの濃度で存在することを特徴とする請求項19〜33のうちいずれかの方法。
【請求項35】
溶解溶液がさらにキレート剤を含むことを特徴とする請求項19〜34のうちいずれかの方法。
【請求項36】
キレート剤がEDTAまたはクエン酸塩であることを特徴とする請求項35の方法。
【請求項37】
DNA溶解溶液が界面活性剤を約25〜35%v/vの濃度で含むことを特徴とする請求項19〜36のうちいずれかの方法。
【請求項38】
界面活性剤が洗浄剤であることを特徴とする請求項19〜37のうちいずれかの方法。
【請求項39】
洗浄剤が非イオン性洗浄剤であることを特徴とする請求項38の方法。
【請求項40】
非イオン性洗浄剤がツイーン(Tween)、トリトン(Triton)、ノニデット(Nonidet)、イゲパール(Igepal)またはテルジトール(Tergitol)であることを特徴とする請求項39の方法。
【請求項41】
洗浄剤が陰イオン性洗浄剤であることを特徴とする請求項38の方法。
【請求項42】
陰イオン性洗浄剤がSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)またはN−ラウロイルサルコシンであることを特徴とする請求項41の方法。
【請求項43】
界面活性剤が洗浄剤の混合物、または洗浄剤と可溶化界面活性剤の混合物であることを特徴とする請求項19〜37のうちいずれかの方法。
【請求項44】
可溶化界面活性剤がDGMEであるであることを特徴とする請求項43の方法。
【請求項45】
(a)DNAを含む生物材料をDNA溶解溶液で前処理された固相担体と接触させ、DNA溶解溶液は7より大のpHで緩衝されており、およびDNA溶解溶液は界面活性剤およびリチウム塩を含み;
(b)DNA添加溶液を生物材料へ加え;
(c)実質的に未分解のDNAおよび非核酸生物物質を含む核酸を放出するために、生物材料を固相担体と接触させ、実質的に未分解のDNAを含む核酸が固相担体と結合し;
(d)固相担体を洗浄溶液で洗浄して未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去し;および
(e)結合した未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で溶出する
:段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための方法。
【請求項46】
(a)DNAを含む生物材料を第一のDNA溶解溶液と接触させ、第一のDNA溶解溶液は約7より大のpHで緩衝されておりおよび約5〜15%v/vの濃度の界面活性剤および1Mより高い濃度のDNA錯体化塩を含み;
(b)生物材料を第二のDNA溶解溶液と接触させ、第二のDNA溶解溶液は界面活性剤および1Mより高いDNA錯体化塩を含むことを特徴とし;
(c)混合物をDNA添加溶液と接触させ;
(d)混合物を固相担体と接触させ、生物材料由来の実質的に未分解のDNAを含む核酸が固相担体と結合し;
(e)固相担体をDNA洗浄溶液で洗浄して実質的に未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去し、DNA洗浄溶液はDNA錯体化塩およびアルコールを含み;および
(f)実質的に未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出すること
:を含む、赤血球溶解段階を使用せずに、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための直接溶解方法。
【請求項47】
第二のDNA溶解溶液がさらにキレート剤を含むことを特徴とする請求項46の方法。
【請求項48】
(a)DNAを含む生物材料を約7より大のpHで緩衝されたDNA溶解溶液と接触させ、DNA溶解溶液は界面活性剤および1Mより高い濃度でDNA錯体化塩を含み;
(b)生物材料を固相担体と接触させ、実質的に未分解のDNAを含む核酸が固相担体と結合し;
(c)固相担体をDNA添加溶液と接触させ;
(d)固相担体をDNA洗浄溶液で洗浄して未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去し、DNA洗浄溶液はDNA錯体化塩およびアルコールを含み;および
(e)実質的に未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出すること
:を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを生物材料から精製するための方法。
【請求項49】
(a)DNAを含む固定頸部細胞を含む生物材料を約7より大のpHで緩衝されたDNA溶解溶液と接触させ、DNA溶解溶液は約25〜35%v/vの濃度の界面活性剤、キレート剤、および1Mより高いDNA錯体化塩を含み;
(b)混合物へアルコールを含む随意的なDNA添加溶液を加え;
(c)実質的に未分解のDNAを含む核酸および非核酸生物物質を放出させるために、生物材料を固相担体と接触させ、実質的に未分解のDNAを含む核酸を固相担体と結合させ;
(d)固相担体をDNA洗浄溶液で洗浄して未分解のDNAを含む結合した核酸以外の生物材料を除去し;および
(e)実質的に純粋なおよび未分解のDNAを得るために、結合した未分解のDNAを固相担体からDNA溶出溶液で優先的に溶出すること
:の段階を含む、実質的に純粋なおよび未分解のDNAを固定頸部細胞試料から精製するための方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−507994(P2008−507994A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524913(P2007−524913)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/027419
【国際公開番号】WO2006/028616
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(307036096)キアゲン ノース アメリカン ホールディングス, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】