説明

DNA精製方法および精製されたDNA

【課題】組み合わせて、あるいは独立に使用できるプラスミドDNA分離、単離および/または精製の方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの宿主細胞不純物を含むプラスミドDNAの混合物からプラスミドDNAを精製する方法であって、以下の工程:(a)前記混合物に十分な塩を添加して、疎水性相互作用媒体に対する前記少なくとも一つの宿主細胞不純物の選択的結合を可能にすることにより溶液を調製する工程、(b)少なくとも一つの不純物が疎水性相互作用媒体と結合して複合体を形成する条件下で、前記プラスミドDNAを含有する溶液を前記疎水性相互作用媒体と接触させる工程、かつ、(c)前記複合体および疎水性相互作用媒体から未結合のプラスミドDNAを回収する工程を含み、溶剤、界面活性剤、グリコール、ヘキサミンコバルト、スペルミジンおよびポリビニルピロリドンの不在下で実施することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1999年5月28日に出願された米国暫定特許出願第60/136772号の利益を請求するものであり、この全体を参照としてここに含めることとする。
【0002】
本発明は、プラスミドDNAを含む水溶液から、宿主細胞不純物、例えばエンドトキシン、RNA、タンパクおよび宿主細胞DNAの除去を含むプラスミドDNAの精製方法、並びに、疎水性相互作用媒体を用いたスーパーコイル化およびニック化または弛んだプラスミドDNAの混合物を含有する水溶液からスーパーコイル化プラスミドDNAを分離および精製する方法を提供する。また、小規模、例えば研究またはベンチスケールの、DNA精製の改善された方法およびかかる方法に用いられる装置も提供する。本発明は、精製および/または分離されたDNA、例えばプラスミド、好ましくはスーパーコイル化DNAを提供する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療は、ヒトの疾患を治癒するための新たな治療パラダイムを与える。例えば嚢胞性繊維症、種々のタイプのガン等の、遺伝的に引き起こされた疾患の治療、および疾患に対する免疫化のためにDNAを使用することは、現在広く求められている治療の有望な方法である。遺伝子産物と相互作用する、あるいはそれ自身遺伝子産物である薬剤を用いることにより疾患の表現形を変更するよりはむしろ、遺伝子治療は理論上特定の遺伝子を変更して疾患治療または処置をもたらすことができる。また、遺伝子治療は、薬剤輸送システムとしても使用されうる。これを達成するために、有益な産物(RNA、ペプチド、タンパク等)を生じる遺伝子またはそれ自身が有益な産物である遺伝子(例えばアンチセンスDNAの使用)は、個人の同種、異種または自己由来の細胞のDNAまたは細胞、あるいは、後に個人にin vivo、ex vivoまたはin vitroで投与される宿主細胞に挿入される。例えば、血管手術中に、抗凝塊因子を形成する遺伝子が血管の細胞のDNAに挿入されて、危険な血液凝固の形成を妨げることを助けることができる。多くの他の状態も、この一般的なアプローチを用いた処置に役立つ。
【0004】
遺伝子治療は、嚢胞性繊維症、心臓疾患、ガン、関節炎および他の病気を含む4000以上の公知の遺伝疾患の多くを処置するための強力なツールであると期待される。遺伝子治療は、一般的に個人に遺伝子物質(DNA)の輸送を必要とする。遺伝子輸送または遺伝物質の輸送は、直接的に、遺伝子含有ウイルスまたはプラスミドDNAを血液または組織に投与することによって、間接的に、外来DNAを保有するように実験室で操作された細胞の導入を介して、または、当該技術分野で周知のキャリアー技術または種々のカプセル化を介して行うことができる。最近の報告では、DNAの直接的輸送も可能であろうということが示唆されている。いくつかの異なるシステムが、体性遺伝子輸送について考慮され、用いられている。例えば、DNA(裸のまたは複合体の)、RNAウイルス(レトロウイルス)、およびDNAウイルス(アデノウイルス、アデノ関連性ウイルス[AAV]、ヘルペスウイルスおよびポックスウイルス)を含む。
【0005】
プラスミドDNAの使用のような遺伝子治療の非ウイルス方式の重要な利点は、大量に調製しやすいこと、安全性が高いこと、宿主細胞DNAに対する異種DNAの組み込みが一般的に欠如していること、および、実際に非限定的なサイズおよび数の遺伝子または遺伝子フラグメントを使用できることである。さらに、遺伝子治療におけるプラスミドDNAの使用は、所望でない免疫応答を患者に引き起こし得る外来の遺伝子またはタンパクの使用を一般に含まない。さらに、プラスミドDNAの使用に代わるもの、例えばウイルスベクター等は、製造が比較的高価である。
【0006】
プラスミドDNAを製造するために現在用いられている方法は、スーパーコイル化プラスミドDNAとニック化(または弛んだ)DNA人工物の混合物を一般的に提供し、これはプラスミドDNAの最終的な応用に一般的には有用でない。本発明の方法は、スーパーコイル化およびニック化プラスミドDNAの非破壊的分離を提供し、この方法はスーパーコイル化プラスミドDNAの回収および使用により例示されるが、当業者はプラスミドDNAの各分離された形態が、開示された方法の有益な産物であると理解するであろう。さらに、本願開示は、遺伝子治療においてスーパーコイル化プラスミドDNAの優れた純度の必要性を強調するが、当業者は、プラスミドDNAが、遺伝子治療調製物における使用を越えて組み換え分子生物学において広く使用されること、並びに、開示された発明が、単離かつ精製されたスーパーコイル化プラスミドDNAの調製方法として広い利用可能性を見出すことを理解するであろう。
【0007】
現在、プラスミドDNAの二つの形態の分離のための利用可能な方法は、ポリエチレングリコール(PEG)のような添加剤、界面活性剤およびその他の成分、例えばヘキサミンコバルト、スペルミジンおよびポリビニルピロリドン(PVP)の使用と併せて、イオン交換クロマトグラフィー(遺伝子治療用プラスミドの精製の新規、急速な方法(Bhikhabhai R. Ollivier M. and Blanche F., Amersham Pharmacia Biotech R&D, 75184 Uppsala, Sweeden and RPR Gencell, Rhone-Poulenc Roer, Center de Recherche de Vitry-Alfortville, 13 quai Jules Guesde, 94400 Vitry sur Siene, France. Publication number: 18-1129-51; Preparative purification of supercoiled plasmid DNA using anion exchange chromatography, Duarte Miguel Prazeres, Thomas Schleup, Charles Cooney, Journal of Chromatography A, 606(1998), 31-45)またはサイズ排除クロマトグラフィー(Prazeres, D.M., A comparison of Gel Filtration Chromatographic Supports for Plasmid Purification, Biotechnology Techniques Vol.11,No.6, June 1997, p417-420)を利用する。近年、添加剤としてPEGを用いたスーパーコイル化プラスミドDNAの精製に関して、特許が付与された(Horn, et al(U.S. Patent No.5707812)。しかしながら、現在知られている方法は、スーパーコイル化およびニック化(または弛んだ)DNAの効率的かつコストのよい分離を提供することはできない。さらに、多くの公知の方法は、PEGまたはその他の添加剤を用いる不都合があり、これらは、困難であり、より時間がかかり、かつより高価な、さらなる分離、処理および品質制御方法を必要とするので、プラスミドDNAの製造において望ましくない。
【0008】
プラスミドDNAのスーパーコイル化および弛んだ形態の公知の分離方法の別形態は、非常に高価な、専売樹脂を利用する。これはまた、プロセッシングの際に、アセトニトリル、エタノールおよびその他の成分、例えばトリエチルアミンおよびテトラブチルアンモニウムホスファートのような溶剤を利用する。これらの方法は、一般に、溶剤の使用のために、大規模製造に適していない。さらに、これらは、出発材料中の豊富に混入した弛んだプラスミドDNAがこれらの樹脂の分離能力を低減しがちなので、顕著な量の弛んだプラスミドDNAを有する出発材料に適用できない(Green, A.P.ら Bio.Pharm. Vol.10, No.5, pages52-62, May 1997)。
【0009】
スーパーコイル化および弛んだDNAを分離するさらなる方法は、サイズ排除クロマトグラフィーであり、サイズにおけるわずかな差に基づいてプラスミドDNAの二つの形態を分離すること含む。これらのカラムは、比較的長いものになりがちであり、スケールアップの問題があり、大規模製造における実施を不可能にする。さらに、サイズ排除方法は、濃縮されたサンプル溶液を必要とし、DNAの高い粘度特性のために、プラスミドDNA溶液には不都合である。プラスミド精製のためのゲル濾過クロマトグラフィー支持体の比較(A comparison of gel filtration chroatographic supports for plasmid purification) G.N.M. Ferreira, J.M.S. Cabral and D.M.F. Prazeres, Biotechnology Techniques, Volume 11, No.6, June 1997, pp417-420参照。
【0010】
細菌調製物から精製され、かつ、しばしば弛んだおよびスーパーコイル化プラスミドDNAの混合物を含むプラスミドDNA調製物は、多くの細菌宿主によって産生されるエンドトキシンが、そのプラスミドDNAを受けた宿主に発熱またはセプシスのような炎症反応を引き起こすことが知られているので、FDAによって要求されるようなエンドトキシン除去を必要とする。これらのエンドトキシンは、一般的にリポポリサッカリドまたはそのフラグメントであり、これらは例えば遺伝子治療のためのプラスミドDNAの発現および製造に用いられる、宿主細胞膜または高分子のような、グラム陰性菌の外膜の成分であり、かつ、宿主細胞の人工産物またはより大きな人工産物の一部としてDNA調製物中に存在する。かくして、エンドトキシンの除去は、治療または予防的使用のためのプラスミドDNAの精製に重要かつ必須の工程である。
【0011】
プラスミドDNA溶液からのエンドトキシンの除去は、始めはエンドトキシンの陰性チャージ構造を用いていた;しかしながら、プラスミドDNAも陰性にチャージしており、分離は通常、アニオン交換樹脂を用いて行われている。これは、両方の分子を結合し、ある条件下で、エンドトキシンを結合しつつプラスミドDNAを優先的に溶出する。かかる分離は、顕著な量のエンドトキシンがプラスミドDNAと共に溶出するので、部分的な除去のみをもたらし、および/または非常に僅かなプラスミドDNAの回収しかできない。他の特許された方法は、界面活性剤を利用するが、これは問題を提起しうる。(エンドトキシンの消耗または除去の方法(Process for the depletion of removal of endotoxins), Coplan, Metin, Moritz, Peter, Schorr, Joachim, U.S.Patent Number:5747663)。さらに、これらの樹脂の結合力は、樹脂がエンドトキシンとプラスミドDNAの両方によって占められるので、103から104EU(エンドトキシンユニット)/ml樹脂のオーダーであり、例えば、通常、50000EU/mlから2000EU/mlの報告された能力に基づいて、3から80リットルの樹脂を必要とする(Green,A.P.ら.Bio.Pharm.Vol.10, No.5, pages52-62, May 1997. Sterogene technical profile DNA Etox, Sterogene, 5922 Farnsworth Cr.,Carlsbad, CA92008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】U.S. Patent No.5707812
【特許文献2】U.S. Patent No.5747663
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Bhikhabhai R. Ollivier M. and Blanche F., Amersham Pharmacia Biotech R&D, 75184 Uppsala, Sweeden and RPR Gencell, Rhone-Poulenc Roer, Center de Recherche de Vitry-Alfortville, 13 quai Jules Guesde, 94400 Vitry sur Siene, France. Publication number: 18-1129-51
【非特許文献2】Preparative purification of supercoiled plasmid DNA using anion exchange chromatography, Duarte Miguel Prazeres, Thomas Schleup, Charles Cooney, Journal of Chromatography A, 606(1998), 31-45
【非特許文献3】Prazeres, D.M., A comparison of Gel Filtration Chromatographic Supports for Plasmid Purification, Biotechnology Techniques Vol.11,No.6, June 1997, p417-420
【非特許文献4】Green, A.P.ら Bio.Pharm. Vol.10, No.5, pages52-62, May 1997
【非特許文献5】A comparison of gel filtration chroatographic supports for plasmid purification, G.N.M. Ferreira, J.M.S. Cabral and D.M.F. Prazeres, Biotechnology Techniques, Volume 11, No.6, June 1997, pp417-420
【非特許文献6】Green,A.P.ら.Bio.Pharm.Vol.10, No.5, pages52-62, May 1997. Sterogene technical profile DNA Etox, Sterogene, 5922 Farnsworth Cr.,Carlsbad, CA92008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、組み合わせて、あるいは独立に使用できるプラスミドDNA分離、単離および/または精製の方法を提供する。特に、本発明は、スーパーコイル化および弛んだプラスミドDNAの分離、精製および/または単離方法、並びに、エンドトキシン含有成分またはフラグメントのような宿主細胞不純物からプラスミドDNAを分離、精製および/または単離する方法を提供する。精製、分離および/または単離されたプラスミドDNA、特にスーパーコイル化プラスミドDNA組成物も、本発明により提供される。また、本発明は、プラスミドDNAの研究−またはベンチ−スケール分離、単離および/または精製の方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、混合物に存在する他の成分から所望のタイプのポリヌクレオチドを単離する方法を提供し、所望のタイプのポリヌクレオチドに富んだ組成物を産生する。この方法は、ポリヌクレオチドを含む混合物を疎水性相互作用媒体と接触させることにより、所望でない成分からポリヌクレオチドを分離することを含む。他の成分からポリヌクレオチドを分離すること、並びに、ポリヌクレオチドのタイプの分離は、変化するイオン条件下で、疎水性相互作用媒体に対する、ポリヌクレオチドおよび他の所望でない成分の異なる親和性によってもたらされる。かくして、本発明の方法では、ポリヌクレオチドと比べてリポポリサッカリドおよびリポプロテインに対してより優先的に結合する疎水性相互作用媒体が用いられる。かかる優先的結合は、分離処理に用いられるイオン条件の範囲にわたって生じるものである。また、本発明は、スーパーコイル化DNAおよび弛んだDNAを分離する方法も含む。この方法は、スーパーコイル化DNAが弛んだDNAよりも疎水性相互作用媒体に対して優先的に結合するイオン条件を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スーパーコイル化および弛んだプラスミドDNAを分離する例示的方法を実施することに関する種々の工程の流れ図を示す。
【図2】例示方法で用いられる、結合したリガンド化学を備えた種々の疎水性相互作用支持体の概念図である。
【図3】プラスミドDNAからエンドトキシンを分離する例示的方法を実施することに関する種々の工程の流れ図を示す。
【図4】(内部)は、SYBR GOLDで染色した実施例5(ブチルHIC)からのアガロースゲルのスキャンイメージを示し、レーン1はスーパーコイル化DNAラダーを含み、レーン2および3はピーク1からのサンプルを含み(弛んだもの)、レーン3−5はピーク2(スーパーコイル化)からのサンプルを含む。(レーンは左から右に番号付けされている。)分量に対する吸収の実施例5からのクロマトグラムは、弛んだ(ピーク1)とスーパーコイル化DNA(ピーク2)の分離を示す。
【図5】(内部)は、SYBR GOLDで染色した実施例6(ブチルHIC)からのアガロースゲルのスキャンイメージを示し、レーン1はマーカーを含み、レーン2および3はピーク1からのサンプルを含み(弛んだもの)、レーン4−6はピーク2(スーパーコイル化形態)からのフラクションを含む。(レーンは左から右に番号付けされている。)実施例6からのクロマトグラムは、弛んだ(ピーク1)とスーパーコイル化DNA(ピーク2)形態の分離を示す。
【図6】(内部)は、実施例7からのアガロースゲルのスキャンイメージを示し、レーン1はマーカーを含み、レーン2および3はカラムに添加された物質を含み、レーン4は人工産物ピークの物質を含み、レーン5は2.4M AS Elutionの物質を含み、かつ、レーン6は、1M AS Elutionの物質を含む(レーンは左から右に番号付けされている)。クロマトグラムはプラスミドDNAの弛んだおよびスーパーコイル化形態の分離を示す。ここで、人工産物ピークは、広い最初の(左)ピークであり、右に、それぞれ弛んだおよびスーパーコイル化ピークが続いている。
【図7】(内部)は、実施例8(ヘキシルHIC)からのアガロースゲルのスキャンイメージを示し、レーン1はマーカーを含み、レーン2−4はピーク1の物質を含み(弛んだもの)、レーン5および6はピーク2(スーパーコイル化形態)からのフラクションを含む。(レーンは左から右に番号付けされている。)このクロマトグラムは、スーパーコイル化形態から弛んだものを分離することを示す。
【図8】実施例9のSYBR GOLD染色したサンプルのアガロースゲル電気泳動のスキャンイメージを示し、レーン1はマーカーを含み、レーン2はカラムに充填された物質を含み、レーン3、4および5は、それぞれウォッシュ1、2および3を含み、レーン6は1M溶出物を含み、かつ、レーン7は水溶出物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法に用いられる塩濃度を記述する際に、異なる塩の等価イオン強度を用いることができると解される。また、特にエンドトキシンを除去および/または消失させる方法に関して、これらの方法を、プラスミドおよび非プラスミドDNAに適用できる解釈することもできる。
【0018】
汚染した宿主細胞不純物からプラスミドDNAを分離、単離および/または精製する方法を提供することが本発明の目的である。
【0019】
プラスミドDNAおよびエンドトキシン含有成分またはフラグメントの分離、精製および/または単離の方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0020】
精製、分離および/または単離されたプラスミドDNA、特にスーパーコイル化プラスミドDNA、の組成物も、本発明により提供される。
【0021】
ある実施態様では、本発明は、エンドトキシンと他の宿主細胞不純物(すなわち、RNA、染色体DNA、タンパク)とをプラスミドDNAから分離する方法を提供する。この方法は、エンドトキシンと他の汚染物質とが疎水性相互作用媒体に結合して複合体を形成する条件下で、細胞溶解物を疎水性相互作用媒体と接触させ、プラスミドDNAと複合体を分離することを含む。この実施態様の方法で分離されたエンドトキシンは、グラム陰性菌由来のエンドトキシンおよびフラグメントを含み、かつ、これらのエンドトキシンおよびエンドトキシンフラグメントに結合した細胞性および亜細胞性成分を含む。疎水性相互作用媒体は、t-RNA、r−RNAおよびm−RNAを含むRNA、宿主細胞タンパクおよび染色体DNAも結合する。本発明で使用できる疎水性相互作用媒体は、樹脂、膜または他の支持媒体の形態であってもよい。
【0022】
この実施態様の好ましい形態は、エンドトキシンを含む存在する他の汚染宿主細胞成分を含むプラスミドDNAの混合物を、エンドトキシンと宿主細胞不純物が疎水性相互作用媒体に優先的に結合し維持されるような方法で、疎水性相互作用媒体を含むカラムまたはベッドマトリックスに充填することを含み、プラスミドDNAは、充填処理からの流出物(フロースルー)として、または疎水性相互作用媒体に対する宿主細胞不純物およびエンドトキシンの維持を妨げないような疎水性相互作用媒体の任意的洗浄において回収される。プラスミドDNAの回収後、カラムまたはベッドマトリックスを、例えばカラムまたはベッドマトリックスの周りの塩濃度を変更することによってカラムまたはベッドの疎水性相互作用条件を変更、変化または修正することにより、結合または維持された宿主細胞不純物およびエンドトキシンを溶出することによって再生できる。
【0023】
本発明の別の実施態様は、イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーのいずれかまたは両方を用いない分離方法を提供する。
【0024】
この実施態様のある好ましい形態では、カラムまたはベッドボリュームは、疎水性相互作用カラムに汚染された不純物の選択的結合を可能にする濃度、好ましくは約2Mの濃度に、硫酸アンモニウム反応溶液を用いて最初に平衡化される。本発明の方法に用いられる塩は、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、SO42-、Cl-、Br-、NO3-、Mg2+、Li+、Na+、K+およびNH4+からなるがこれらに限定されない群から選択されたアニオンまたはカチオンの混合物を含む。塩の混合物も使用できる。さらに、プラスミドDNAと他の汚染不純物、例えばエンドトキシン等の混合物は、好ましくは、カラムまたはベッドマトリックスと接触させる前に透析バッファーを用いて透析して、硫酸アンモニウム反応溶液における、エンドトキシンおよびプラスミドDNAおよびエンドトキシンのような他の汚染不純物の疎水性を変更しうる塩および他の汚染物質を除く。この反応溶液は、好ましくは、例えば、Tris−HClを用いて、限定されないが6.8から8.5、好ましくは7.4の範囲のpHに緩衝化される。他のバッファーが当業者に知られており、限定されないが、例えば、Tris、TES(N−tris(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタン−スルホン酸)、Tricine(N−tris(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、リン酸塩、PIPES(ピペラジン-N,N'-bis(2−エタンスルホン酸))、MOPS(3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸)、MEPES(3−N(N−モルホリノ)エチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)、およびBicine(N,N−bis(2−ヒロキシエチル)グリシン)を用いることができる。
【0025】
本発明の方法は、単離および/または精製されたプラスミドDNA、およびプラスミドDNAを含む組成物を提供する。これは、実質的に低減されたエンドトキシン含量を備えるか、エンドトキシンを含まず、プラスミドDNAのエンドトキシン負荷は、95%、好ましくは98%より多く、さらに好ましくは99%より多く、あるいは99.9%より多く、最も好ましくは99.99%から99.999%まで低減される。本発明の方法は、エンドトキシンの大量の当初負荷を分離するために用いることができ、例えば、少なくとも600000から3百万EU/ml疎水性マトリックスの能力であることを条件に、例えば少なくとも200000から400000エンドトキシンユニット(EU)/溶液のミリリットルである。さらに、本発明の方法は、約10未満から約2500EU未満の範囲または約1未満から約300EU/mgDNA未満の範囲を含む産物プラスミドDNA組成物を提供する。または、本発明の方法は、約50未満から約1000未満のエンドトキシンユニット(EU)の範囲、または、約10未満から約50EU/mgDNA未満の範囲を含む産物プラスミドDNA組成物を提供する。本発明の方法は、また、タンパク含量を0.1%(w/w)RNA未満から1%(w/w)未満に低減し、染色体DNAを1%(w/w)未満に低減する。
【0026】
別の実施態様では、本発明は、弛んだプラスミドDNAからスーパーコイル化プラスミドDNAを分離する方法を提供し、この方法は、スーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNAの両方が、疎水性相互作用媒体に結合して、結合第一混合物を形成する第一の条件下で疎水性相互作用媒体とスーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNAの混合物とを接触させる工程;結合第一混合物の周りの第一の条件を第二の条件に変化させ、弛んだプラスミドDNAを結合第一混合物から除去し、第二結合混合物と弛んだプラスミドDNAを含む別個の成分を形成する工程;および、前記結合第二混合物の周りの第二の条件を第三の条件へと変更し、スーパーコイル化プラスミドDNAを前記第二結合混合物から取り出し、疎水性相互作用媒体とスーパーコイル化プラスミドDNAとを含む別個の成分を形成する工程を含む。
【0027】
この態様の別の形態では、変化および変更は、溶出バッファーまたは溶液のpH条件を、弛んだおよびスーパーコイル化形態が、異なるpH条件で、塩条件を変化させてまたは変化させずに溶出できるように変化させることによって行うことができる。
【0028】
この態様の別の形態では、変化および変更は、定組成溶離を介して実施でき、結合したプラスミドを含むカラムを通した際に、好ましくはプラスミドDNAの両方の形態を溶出しうる塩濃度である同じ組成の溶液が、別個の画分に、直接的に二つの形態を別個に溶出する。
【0029】
別の実施態様では、塩条件および/または他の条件は、プラスミドの弛んだ形態が非結合画分として回収され、スーパーコイル化形態が樹脂に結合しているように変更されうる。スーパーコイル化形態は、上記条件を用いて後で溶出できる。
【0030】
この態様の別の形態では、変化および変更は、競合的にリガンドに結合し(“ディスプレーサー”)、結合したプラスミドDNA形態を分離成分としてマトリックスから除去する分子または分子の混合物の使用により実施することができる。
【0031】
この態様の別の形態では、疎水性相互作用等を介して結合できる分子または分子の混合物が、プラスミドDNA溶液と混合されてもよい。これは、カラムに充填した後に置換されて、異なる形態のDNAの分離をもたらす。
【0032】
この実施態様の上記二つの変形では、共通して“置換(displacement)”および“正面(frontal)”方式のクロマトグラフィーが挙げられる。添加された分子は、産物と共溶出することができ、多くの場合、当該技術分野で公知の方法を用いて有効に分離できる。
【0033】
置換クロマトグラフィーは、樹脂に結合した二つ以上の分子が、樹脂に対してより高い親和性を備え、連続的に置換し、かくして二つ以上の結合分子の溶出をもたらすディスプレーサー分子を用いて置換されるクロマトグラフィーの方式である。最近、ポリメチルメタクリラート、アクリル酸およびポリジメチルアミノエチルメタクリラートを含むトリブロックコポリマーからなる疎水性相互作用樹脂のディスプレーサーが同定された(Ruaan et al"Hydrophobic displacement chromatography of proteins using triblock copolymers as displacers, 1998 AIChE meetingを参照)。他のディスプレーサーは、疎水性相互作用樹脂を用いた置換クロマトグラフィー用に開発されてきた(Shukla et.al.Hydrophobic displacement chromatography of proteins in 1998 Annual AIChE meeting参照)。2−(2−ブトキシエトキシ)エタノールのようなディスプレーサーは、逆相クロマトグラフィーにおけるディスプレーサーとして使用されており、有益であろう。
【0034】
二つの形態のプラスミドを結合させた後、上記のようなディスプレーサーを用いて、ここに記載したHIC(疎水性相互作用カラム)樹脂から連続的にスーパーコイル化および弛んだDNAを置換する。
【0035】
“正面”方式のクロマトグラフィーでは、カラムは、樹脂に対する親和性において相違するバイナリー混合物を用いて充填され、継続的にカラムに過充填することにより、一方の成分が他を置換し、二つの成分の連続的溶出をもたらす。本発明にこの方法を適用する場合、二つの形態のDNAが、例えば、HICカラムに充填され、サンプルの過充填が、弛んだ形態の置換を引き起こす置換効果をもたらし、スーパーコイル化形態から別個に回収されうる。
【0036】
この実施態様の一つの形態では、変化および変更は、結合第一混合物を、連続的に変化する硫酸アンモニウムのような塩の濃度を備えた硫酸アンモニウム溶液のような塩溶液と混合することによる、弛んだプラスミドDNAとスーパーコイル化プラスミドDNAの勾配溶出の連続的方法に組み合わせられる。この濃度は好ましくは、硫酸アンモニウムのような塩が約3Mから約1Mの間で変化する。弛んだプラスミドDNAは、第一の溶出量に本発明のこの実施態様の形態で回収され、スーパーコイル化プラスミドDNAは、第二溶出量に回収される。
【0037】
この実施態様の他の好ましい形態では、スーパーコイル化および弛んだ形態のプラスミドDNAが、DNAの両形態をベッドまたはカラムの疎水性相互作用媒体に高い塩濃度、または2.5Mから4M、好ましくは3Mの硫酸アンモニウムの様な等価イオン強度で最初に結合させ、次いで、ステップ勾配または連続勾配式のいずれかで、塩濃度または等価イオン強度を約2.45Mから約2.35Mの硫酸アンモニウムの第一範囲に、次いで、約0M(おそらく1M)から約2.3Mの硫酸アンモニウムの第二範囲に変化させることにより(ステップ溶出態様)、または、約1から約30のカラムまたはベッドボリューム、好ましくは少なくとも6のカラムまたはベッドボリュームの量にわたって、約2.5Mから約4Mの範囲から約0M(あるいは1M)から約2.3Mの第二範囲に硫酸アンモニウム濃度を連続的に変化させることにより(連続勾配態様)、二つの別個の形態のプラスミドDNAをカラムから溶出させる。これらのいずれの形態においても、弛んだプラスミドDNAは、約2.35Mから約2.45Mの範囲の塩(硫酸アンモニウム)濃度でカラムまたはベッド媒体から溶出するが、スーパーコイル化プラスミドDNAは、約0Mから約2.3Mの範囲の塩(硫酸アンモニウム)濃度でカラムまたはベッド媒体から溶出する。
【0038】
別の実施態様において、本発明は、スーパーコイル化プラスミドDNAを単離する方法を提供し、この方法は、 スーパーコイル化プラスミドが、非スーパーコイル化プラスミドよりも媒体に優先的に結合するイオン条件下で、疎水性相互作用媒体にスーパーコイル化プラスミドを含むサンプルを適用する工程、および イオン条件を調節して、結合したスーパーコイル化プラスミドを前記媒体から溶出する工程を含む。
【0039】
他の好ましい実施態様では、本発明は、混合物において、弛んだDNAよりもスーパーコイル化DNAの量を豊富にする方法を提供し、この方法は、(1)スーパーコイル化DNAが疎水性相互作用媒体に優先的に結合するようなイオン条件下で、スーパーコイル化DNAおよび弛んだDNAを含む混合物を、アルキル部を含む疎水性相互作用媒体と相互作用させる工程;(2)弛んだDNAを優先的に除くイオン条件下で、弛んだDNAおよびスーパーコイル化DNAを含む疎水性相互作用媒体を処理する工程;および(3)疎水性相互作用媒体からスーパーコイル化DNAを溶出する工程を含む。
【0040】
さらに好ましい態様では、本発明は、DNAを含む組成物からリポポリサッカリド(LPS)を除く方法を提供し、この方法は、(1)LPSがDNAよりも優先的に疎水性相互作用媒体に結合するようなイオン条件下で、DNAおよびLPSを含む混合物を、アルキル部を含む疎水性相互作用媒体と相互作用させる工程;および(2)DNAおよびLPSを含む疎水性相互作用媒体を、DNAの選択的除去を可能にするイオン条件で処理する工程を含む。
【0041】
本発明の方法は、単離および/または精製されたスーパーコイル化プラスミドDNA、およびスーパーコイル化プラスミドDNAを含有する組成物を提供する。これは、好ましくはエンドトキシンを含まず、本発明の方法によって製造された組成物に存在するスーパーコイル化プラスミドDNAの量は全プラスミド量の少なくとも約50重量%から少なくとも約99重量%、好ましくは少なくとも約60重量%から少なくとも約95重量%、さらに好ましくは少なくとも約70重量%から少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約75重量%から少なくとも約85重量%のスーパーコイル化プラスミドDNAとされる。
【0042】
重量パーセントは、ここに例示されるように、各成分の量に対応する面積を有するピークをもたらすDNA−NPR HPLCカラムにおけるHPLC分離により、勾配を介して、測定される。スーパーコイル化形態のパーセントは、スーパーコイル化および弛んだプラスミドDNAピークの全面積に対するスーパーコイル化DNAに対応するピーク面積のフラクションとして算出された。
【0043】
本発明の方法で用いられる好ましい疎水性相互作用媒体は、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂を含む。これは、例えば、メタクリラートポリマーまたはコポリマー骨格を有する、例えばメタクリラート/エチレングリコールおよび/またはメタクリラート/プロピレングリコールコポリマー(TosoHaas, Montgomeryville,PA)、および/またはアガロースまたはセファロース(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)、例えば、架橋または非架橋の、アガロース、セファロース、デキストラン、シリカ含有ポリマー、有機ポリマー(天然または合成)、セラミック含有またはゲルマトリックス、骨格、またはこれらと、C3からC10アルキル、分枝状または直鎖状、ペンダント結合(pendent)側鎖リガンドとの組合せのあらゆる組合せを含む。好ましいペンダント結合リガンドは、プロピル、ブチル、ヘキシルおよび/またはオクチルリガンドを含む。これらのリガンドは、本発明の分離、精製および/または単離方法において利用される好ましい結合相互作用を提供する。当業者であれば、疎水性相互作用樹脂が、本発明の方法でも使用できるような、これらのアルキルリガンドに加えてまたはその代わりに、リガンドを含んでもよいことを認識できる。かかるリガンドの例は、限定されないが、フェニル、オクチル、ブチル、プロピル、ネオペンチル、ヒドロキシプロピル、ベンジル、オクタデシル、ジフェニル、およびメチル、並びにこれらの置換および非置換誘導体、およびこれらの組合せを含む。本発明で使用できる適切な樹脂または媒体物質は、例えば、欧州特許第964057、欧州出願第99109441、JP2000035423、JP99127700およびJP98127665(Kitamuraら)に記載されたものを含み、これらの全内容をここに参照として含める。
【0044】
疎水性相互作用媒体は、カラムまたはベッドリアクターに収容または充填されてもよいビーズの形態であってもよく、また、架橋した多孔性媒体であってもよい。ビーズ媒体のサイズは、2.5μmから100μm以上までの範囲とすることができる。ビーズ媒体のサイズは、好ましくは直径が約30から約110μmの範囲、例えば約35から約100μmの直径、または35から90μmの直径である。疎水性相互作用媒体は、セルロースまたはセルロース誘導体骨格、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンおよびこれらの誘導体および/または濾過および分離技術で公知の他の物質のような膜の形態で存在し、プラスチックを含み、マイクロタイタープレートおよびペトリまたは細胞培養皿および容器を含む。
【0045】
“Streamline”(Amersham Pharmacia biotech)カラムに使用されるビーズは、通常、種々の密度を備えたより大きなサイズであり、これらに限定されないがAmersham Pharmacia Biotech, Biosepra Incを含む種々の製造者によって製造され、これでは、浄化された溶解物はこれらの“引き延ばされたベッド(expanded bed)”カラムを通して流されて、疎水性相互作用リガンドを含むビーズに対する結合を介して汚染物質を除去する。
【0046】
より小さいビーズサイズは、通常、HPLCを含む高性能分離において用いられる。これでは、この発明は、プラスミドDNAおよび/または異なる形態のDNAを定量的に分析する方法を提供するために利用される。
【0047】
この発明における使用の目的のためのビーズは、特に、プラスミドDNAの二つの形態の分離は、プラスミドDNAは一般的にあまりに大きくて、細孔を占めることができないので、多孔性である必要がなく、かくして、さらなる収容力を与える。しかしながら、汚染物質結合の目的で、RNA、タンパク、エンドトキシンおよびDNAフラグメントのような汚染分子が細孔のサイズ以下であるので、細孔は収容力を有効に増大させることができる。この場合、多孔性が機能し、かくして、多孔性樹脂は有益である。
【0048】
本発明の方法は、好ましくは、有機溶媒、添加剤または界面活性剤、例えばグリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサミンコバルト、スペルミジンまたはポリビニルピロリドンを必要としない。これらは、後に、遺伝子治療等で使用する前に産物であるスーパーコイル化プラスミドDNAから分離する必要がある。
【0049】
本発明の方法は、スーパーコイル化プラスミド、弛んだプラスミドDNAおよびエンドトキシンのような細胞性汚染物の疎水性の差を利用する。
【0050】
ここに記載した方法は、スーパーコイル化プラスミドDNA、コスミドおよびファージミドベクターを精製および単離するために使用できる。これらのベクターおよびプラスミドDNAは、あらゆる起源から精製することができる。さらに、エンドトキシン、RNA、タンパクおよび染色体DNAを含む汚染物の同様の混合物がこれらの調製物に存在しうるので、酵母および哺乳動物細胞に存在するコスミドおよびプラスミドDNAも精製できる。また、これらの起源からプラスミドおよびコスミドDNAのスーパーコイル化形態を得る必要性もあり、かくして、ここに記載されている方法は、これらの応用の多くにおいてDNAを精製することに使用できる。
【0051】
“疎水性相互作用媒体”とは、(a)支持体部と(b)当該支持体部に直接的または間接的に結合された疎水性部とを含む物質である。支持体部および疎水性部の例は、ここに記載されており、また、当該技術分野において公知である。疎水性部は、ここに記載された分離方法に使用される優先的結合のベースを提供する。“疎水性相互作用媒体”の種々の例は、当該技術分野において知られており、ここに記載されている。ここで用いられる別の用語も、疎水性相互作用媒体を示し、その例は、“樹脂”、“マトリックス”、“カラム”、“媒体”、“ビーズ”そして“疎水性相互作用リガンド”である。
【0052】
“DNA”とは、限定されないが、プラスミド(スーパーコイル化および/または弛んだまたはニック化)、コスミドまたは人工染色体を含む。
【0053】
“ニック化(nicked)”または“弛んだ(relaxed)”DNAとは、スーパーコイル化していないDNAを意味する。“スーパーコイル化(supercoiled)”DNAとは、当該技術分野において周知の用語である。
【0054】
“汚染不純物(contaminating impurity)”とは、それからDNAを分離または単離することが望まれるあらゆる物質である。汚染不純物は、限定されないが、宿主細胞タンパク、エンドトキシン、宿主細胞DNAおよび/またはRNAを含む。何が汚染不純物と考えられるかは、本発明の方法が実施される状況に依存すると理解される。“汚染不純物”は、宿主細胞誘導物であっても、そうでなくてもよい。すなわち、宿主細胞不純物であっても、そうでなくてもよい。
【0055】
第一成分(DNA等)の“単離(isolating)”または“精製(purifying)”とは、始めに第一成分が一緒に見出される別の成分からの第一成分の豊富化を意味する。所望および/または得られる精製の程度を以下に記載する。好ましくは、本発明の方法は、約5倍の豊富化、好ましくは約10倍の豊富化、好ましくは約20倍の豊富化、好ましくは約50倍の豊富化、好ましくは約100倍の豊富化、好ましくは約200倍の豊富化、好ましくは約500倍の豊富化、好ましくは約1000倍の豊富化をもたらす。あるいは、精製の程度は、別の成分に関して、あるいは結果的な調製物に関して、第一成分のパーセントとして表現される。かかるパーセントの例は、ここに与えられている。
【0056】
成分の“優先的(preferential)”または“選択的(selective)”結合または除去(取り出し)とは、所定の条件について、別の成分よりも大きな程度で、第一成分が結合または除去(取り出し)されることを意味する。
【0057】
当業者に知られているように、“除去(または、取り出し)(removal)”または“結合(binding)”は、必須に、あるいは好適にさえ、完全な、または100%の除去または結合を意味しない。
【0058】
“水性(aqueous)”溶液は、一般的に、水をベースとする溶液(すなわち、主要溶媒が水である)を示す。これは、溶剤が100%水であってもなくてもよい。
【0059】
組み換え細菌細胞に産生されたプラスミドDNAの単離は、細胞の溶解および細胞破片の除去を含み、これは、種々の方法を介して達成できる。最終的な溶液は、通常、他の汚染物のなかで極めて高い量のエンドトキシンを含む、プラスミドDNAを含む。本発明の方法は、第一段階として疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて、顕著な量の重要汚染物、例えばRNA、ゲノムDNA、タンパクおよびエンドトキシンを除去する。ここで、プラスミドDNAは結合せずに流れる。本発明の方法は、細菌溶解により得られた混合溶液を、pH範囲が6.8から8.5、好ましくはpHが6.8から7.4の、好ましくは2M硫酸アンモニウムを含み、任意に10mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むバッファーに任意に透析すること、および、この任意に透析した溶液を、好ましくは、予め、pH範囲が6.8から8.5(好ましくは6.8から7.4)の、2M硫酸アンモニウム、そして任意に10mMのEDTAを含むバッファーで平衡化した、プロピル、ブチル、オクチルまたはヘキシルリガンドのいずれかまたは混合物のような疎水性相互作用リガンドを有するクロマトグラフィー支持体を含む収容型クロマトグラフィーカラムを通して流すことを含む。フロースルー溶液は、通常、硫酸アンモニウムのような塩の約2Mの濃度であり、優勢に、2%未満の汚染物を含むプラスミドDNA(スーパーコイル化および弛んだものの混合物)を含む。上流の工程のバリエーションに依存して、スーパーコイル化DNAのパーセントは、50から95重量%、通常約75から85%、あるいは80から85%の範囲とすることができ、混合物からのプラスミドDNAの弛んだ形態の除去を含む、さらなる精製を必要とする。
【0060】
本発明の方法は、エンドトキシンレベルが特定のレベルより低い、すなわち、通常<10EU/mgプラスミドDNAである、精製されたプラスミドDNAを製造することを可能にする。本発明のエンドトキシン除去方法は、大規模または小規模生産に適しており、治療および研究用グレードの物質の経済的な製造を可能にする。これらの方法は、ここに記載される、疎水性樹脂に対するエンドトキシンの選択的結合を利用し、大規模生産では、使用された樹脂のミリリットル当たり1ミリオンユニットを越える収容力を有する。
【0061】
慣例的に利用できるエンドトキシン除去の方法は、低い収容力を有し(1000から50000EU/樹脂のミリリットル)、および/または低いプラスミドDNA回収をもたらし、および/または化学的成分および/または方法の使用を含み、治療用グレードの物質の調製には容易には使用できない(米国特許第5747663)。本発明のエンドトキシン除去方法は、エンドトキシン−およびプラスミドDNA−含有溶液を、エンドトキシンをプラスミドDNAよりも顕著により疎水性として、エンドトキシンの、ブチル、オクチル、および/またはヘキシル基のような疎水性相互作用リガンドを含む樹脂に対する結合または優先的相互作用および分離をプラスミドDNAよりも確実にする、約2Mの濃度の硫酸アンモニウムまたは塩化ナトリウムのような塩に懸濁することを含む。使用される塩濃度は、好ましくは、RNA、タンパクおよびエンドトキシンに結合するように最適化することができる。エンドトキシンが、ここに記載した疎水性相互作用リガンドに対して優れた親和性を有するので、より低い塩濃度でも、エンドトキシン結合のみを提供するには十分である。
【0062】
エンドトキシン除去のこの方法の魅力的な特徴は、簡単かつ>95%のプラスミドDNAの回収率に加えて、約1000000EU/ml樹脂、エンドトキシンに対する樹脂の大きな収容力である。例えば、500mgのプラスミドと10ミリオンEUのエンドトキシンとを含有するプラスミドDNA溶液は10mlの樹脂を用いて精製できるが、一方、かかるアニオン交換樹脂における貧弱な回収率という不都合を伴って、少なくとも1000から4000mlのアニオン交換樹脂が、プラスミドDNAとエンドトキシンを結合するために求められている。それゆえ本発明の方法は、100から400倍の樹脂のコストを節約することができ、さらにカラムコストを節約し、産物の回収率を増やすことができる。商業的に入手可能なDNA Etox樹脂は、本発明の方法で用いられている樹脂よりも現在少なくとも8倍高価である。エンドトキシン除去に使用できる専売的化学を利用した他の商業的樹脂(PolyFlo-PureSyn Inc.,87 Great Valley Pkwy Malvern, PA 19355)は、5から10倍高価であり、溶剤とイオン対形成化学物質の使用を必要とする。
【0063】
本発明の方法は、より低い性質の出発物質(すなわち、弛んだおよびスーパーコイル化DNAの混合物からなる出発物質)から90%より多くのスーパーコイル化プラスミドDNAを含む高い量のプラスミドDNAを提供する。さらに、本発明の方法は、遺伝子治療のためのプラスミドDNAの製造に通常使用される大規模処理に利用できる。本発明の方法は、通常、質の低減をもたらす、すなわちプラスミドDNAの弛んだ/ニック化形態の生成をもたらすバリエーションとは独立に、高い品質のプラスミドDNAの信頼できる製造を可能にする。これらのバリエーションは、プラスミドDNAを製造するバクテリアの増殖およびその後の単離および精製工程に生じうる。
【0064】
本発明の、スーパーコイル化および弛んだプラスミドDNAを分離する方法、および、プラスミドDNAとエンドトキシンを分離する方法は、例えば、C4からC10アルキル、分枝状または直鎖状、リガンドを含み、かつ、好ましくはブチルまたはヘキシルリガンドを含む疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に対して、プラスミドDNAの形態およびエンドトキシンが異なる結合特異性を示すことを見出したことに基づく。これらのリガンドは、本発明の分離、精製および/または単離方法に利用される優先的結合相互作用を与える。当業者であれば、疎水性樹脂が、これらのアルキルリガンドに加えて、またはこれらに変えて、本発明の方法で使用することができる、リガンドを含んでもよいことを理解できるであろう。かかるリガンドの例も上述されている。以下の非限定的な例は、本発明の方法を例示する。以下の一般的な方法を用いることができる。
【0065】
遺伝子治療の応用のためのプラスミドを、適切な宿主細菌、例えば大腸菌(Escherchia coli)から、培養(fermentation)後に抽出した。開示された発明の以下の例では、プラスミドpE1A-K2を含むE.coli STBL-2が用いられた。プラスミドpE1-A-K2は、アデノウイルスタイプ5の抑制遺伝子を含み、選択マーカーとしてカナマイシン遺伝子を含むpUCプラスミド誘導体である。培養は、無機塩、例えばカリウム一塩基ホスファート(potassium mono basic phosphate)、ナトリウム二塩基ホスファート(sodium dibasic phosphate)、硫酸アンモニウムおよび硫酸マグネシウムを含む適切な酵母抽出物/グルコース培地において、pH6.5から7.8、好ましくは7.0、37℃の温度において、好気的に行われる。エアレーションは、培地のボリューム当たり空気が1ボリュームにセットされ、攪拌が800rpmにセットされる。グルコースが培地から消費されるまで細胞をこの方式で増殖させ、発酵槽のDOをグルコース供給と攪拌によって調節する。この供給物は、グルコースの濃縮溶液(160g/L)および酵母エキス(80g/L)および塩(1.5g/Lの硫酸アンモニウム、MgSO4、リン酸バッファー中に1.5g/L)を含む。培養完了後、この細胞を、遠心し、または、ウルトラまたはマイクロ濾過膜を通して濾過することによって回収し、pH7.4のTE(以下参照)バッファーを用いて洗浄する。細胞を、優しく攪拌しながら、0.15Nから0.2NのNaOHおよび1%ドデシル硫酸ナトリウムの同量の溶液(pH11.5から13)と懸濁液とを接触させることによって溶解する。アルカリ性溶液を、酢酸カリウム溶液を用いて中和する。この物質を、遠心分離または一連の深さのフィルターに懸濁液を通過させることにより浄化する。プラスミド溶液を、限外濾過膜により濃縮し、pH7でTEバッファーに対してダイアフィルトレーションする。ダイアフィルトレーション濃縮水は、ここに記載された媒体に直接適用することができる。
【0066】
溶解物のプラスミドDNA含量は、一般的には、全核酸の2%未満であり、内容物の大半は、RNAまたは染色体DNAである。さらに、溶解物は、エンドトキシンおよび細胞性タンパクで汚染(混入)されている。
【0067】
また、本発明は、単離または精製されたDNAの小規模、研究用規模またはベンチスケールの生産の方法、並びにこの方法で使用される装置カラムおよび分離器も提供する。当業者であれば、プラスミドDNAの小規模製造が、大規模製造と比較して別の問題を持ち込むことを理解するであろう。特に、小規模分離は、出発物質において大きな比率を占める汚染RNAの分離を必要とし、上述したように、大規模出発物質におけるプラスミド−RNA比は約2%(wt/wt)であるが、小規模の比率は約0.1%(wt/wt)である。さらに、小規模サンプルの培養ボリュームは、大規模分離においては約5Lから約1000Lであるのに対し、一般的に約2mLから約2Lである。本発明の小規模分離は、約1から約20ml、通常は約10mlから約15mlの範囲の反応器またはカラムベッドボリュームを用いて、約100μgから約1mgのプラスミドを含む。それゆえ、本発明は、エンドトキシン、RNAおよび弛んだDNAのような不純物から、単離および/または精製されたDNA、好ましくはスーパーコイル化DNAを効率的に小規模で製造することを可能にする。
【0068】
種々の方法が例示に用いられているが、当業者であれば、別の調製方法および出発物質を本発明において使用できることを理解できるであろう。
【実施例】
【0069】
実施例1:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用するエンドトキシンの除去(スモールスケール)
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、濾過法を通じて精製した。これを通じて使用された全てのバッファーは、0.2μmフィルターを通じて濾過され、エンドトキシンのためのサンプルをポリスチレンサンプルチューブに貯蔵した。
【0070】
ダイアフィルトレーション残余物(〜400ml)をTE pH7.4(50mM Tris、10mM EDTA、HClでpH7.4に調節)内に透析し、実験のために使用した。サンプルを2Mにするために必要とされる硫酸アンモニウム(AS)を、100mlのTEプラス2M AS、pH7.4バッファーに加え、部分的に溶解した。この溶液を透析サンプルに加え、最終容量を575mlとし、その475mlを実験のために使用した。
【0071】
2.6cmの直径、15cmのベッド長、約75mlのベッド容量を有するブチル650Sカラム(TosoHaas Inc., 156 Keystone Drive, Montgomerville, PA 18936社製のButyl 650S樹脂)をパックし、2M ASを含むTEバッファー、pH7.4で平衡化した。サンプルを、5ml/分の流速で乗せた。フロースルーを回収し、サンプルを分析のために採取した(DNA濃度、アガロースゲル、およびエンドトキシンアッセイ)。エンドトキシンアッセイをスパイクで実施し、サンプルを適切に希釈し、許容可能だと考慮される範囲でPPC(Positive Product Control)回収物を得た。BW出版物No. P50-650U-5, Kinetic-QCL Test Kit Manualに記載されたBio Whittaker Kinetic-QCL Chromogenic LALアッセイを使用して、エンドトキシン濃度を測定した。サンプルの搭載に引き続き、2M硫酸アンモニウムを含むTEをカラムを通じて流し、回収し、サンプル化した。次いでカラムをTEバッファー、pH7.4、USP精製水で洗浄し、0.5N水酸化ナトリウムで清浄化し、>15容量のUSP精製水でリンスした。エンドトキシンは、表1に示されるようにこれらの洗浄物のそれぞれで存在した。この顕著なエンドトキシン除去効率に加えて、十分量のRNA、タンパク質、及びDNA断片が除去され、サンプルは顕著に精製された。
【0072】
【表1】

樹脂のml当たりのエンドトキシン容量 3百万EU/ml
サンプル中のエンドトキシンの減少 99.992%
【0073】
実施例2:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用するエンドトキシンの除去(ラージスケール)
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、濾過法を通じて精製した。
【0074】
ダイアフィルトレーション残余物(〜650ml)をTE pH7.4(50mM Tris、10mM EDTA、HClでpH7.4に調節)内に透析し、実験のために使用した。サンプルを2Mにするために必要とされる硫酸アンモニウムを、1200mlのTEプラス2M AS、pH7.4バッファーに加え、部分的に溶解した。この溶液の容量を、1300mlまでにした。この溶液を透析サンプルに加え、最終容量を1950mlとし、HClを使用してpHを7.4に調節した。
【0075】
5cmの直径、15cmのベッド長、約275mlのベッド容量を有するブチル650Sカラムをパックし、2M ASを含むTEバッファー、pH7.4で平衡化した。サンプルを、20ml/分の流速で乗せた。フロースルーを回収し、サンプルを分析のために採取した(上述の通りDNA濃度、アガロースゲル、およびエンドトキシンアッセイ)。サンプルの搭載に引き続き、2M硫酸アンモニウムを含むTEをカラムを通じて流し、回収し、サンプル化した。次いでカラムをTEバッファー、pH7.4、USP精製水で洗浄し、0.5N水酸化ナトリウムで清浄化し、>15容量のUSP精製水でリンスした。エンドトキシンは、表2に示されるようにこれらの洗浄物のそれぞれで存在した。この顕著なエンドトキシン除去効率に加えて、十分量のRNA、タンパク質、及びDNA断片が除去され、サンプルは顕著に精製された。
【0076】
【表2】

樹脂のml当たりのエンドトキシン容量 64万EU/ml
サンプル中のエンドトキシンの減少 99.993%
【0077】
実施例3:ヘキシル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用するエンドトキシンの除去(スモールスケール)
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、濾過法を通じて精製した。上清を20mMリン酸カリウムバッファー(6.8のpHを得るような割合で20mMリン酸カリウム二塩基酸と組み合わせた20mMリン酸カリウム一塩基酸溶液)、pH6.8内に透析し、サンプルを2Mにするために必要とされる硫酸アンモニウムを、20mlの2M ASを含むKPB(20mMリン酸カリウムバッファー)、pH6.8バッファーに加え、溶解した。この溶液を5mlの透析サンプルに加え、最終容量を25mlとし、pHを6.8に調節した。
【0078】
1.6cmの直径、4cmのベッド長、約8mlのベッド容量を有するヘキシル650S(TosoHaas)カラムをパックし、2M ASを含むKPB、pH6.8で平衡化した。サンプルを、2ml/分の流速で乗せた。フロースルーを回収し、サンプルを分析のために採取した(DNA濃度、アガロースゲル、およびエンドトキシンアッセイ、上記参照)。サンプルの搭載に引き続き、2M硫酸アンモニウムを含むKPBをカラムを通じて流し、回収し、サンプル化した。次いでカラムをKPB、pH6.8、USP精製水で洗浄し、0.5N水酸化ナトリウムで清浄化し、>15容量のUSP精製水でリンスした。エンドトキシンは、表3に示されるようにこれらの洗浄物のそれぞれで存在した。この顕著なエンドトキシン除去効率に加えて、十分量のRNA、タンパク質、及びDNA断片が除去され、サンプルは顕著に精製された。
【0079】
【表3】

樹脂のml当たりのエンドトキシン容量 3.7百万EU/ml
サンプル中のエンドトキシンの減少 99.999%
【0080】
実施例4:オクチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用するエンドトキシンの除去(スモールスケール)
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、上述の濾過法を通じて精製した。上清を実験のために使用した。サンプルを2Mにするために必要とされる硫酸アンモニウムを、20mlのTEプラス2M AS、pH7.4バッファーに加え、溶解した。この溶液を10mlの透析サンプルに加え、最終容量を25mlとし、pHを7.4に調節した。
【0081】
1.0cmの直径、10cmのベッド長、約8mlのベッド容量を有するOctyl Sepharose 4 Fast Flowカラム(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)をパックし、2M ASを含むTE、pH7.4で平衡化した。サンプルを、2ml/分の流速で乗せた。フロースルーを回収し、サンプルを分析のために採取した(DNA濃度、アガロースゲル、およびエンドトキシンアッセイ)。サンプルの搭載に引き続き、2M硫酸アンモニウムを含むTEをカラムを通じて流し、回収し、サンプル化した。次いでカラムをTE、pH7.4、USP精製水で洗浄し、0.5N水酸化ナトリウムで清浄化し、>15容量のUSP精製水でリンスした。エンドトキシンは、表4に示されるようにこれらの洗浄物のそれぞれで存在した。
【0082】
【表4】

樹脂のml当たりのエンドトキシン容量 7.41百万EU/ml
サンプル中のエンドトキシンの減少 99.996%
【0083】
実施例5:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー−勾配溶出を使用する、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドDNAの分離
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、上述の濾過法を通じて精製した。エンドトキシン、RNA、タンパク質、染色体DNA等のような主要な混在物を除去するためのプラスミドDNAのグロス精製を、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して実施し、そこで2M硫酸アンモニウムの濃度で、プラスミドDNAはカラムをフロースルーし、混在物はカラムに結合する(上記参照)。
【0084】
プラスミドDNAを含むフロースルーを透析し、いずれかのさらなる精製を提供しないアニオン交換(Bio Sepra)カラムで処理した。Qアニオン交換カラム及びダイアフィルトレーションを通じた処理は、ブチルカラムでの分離を達成するために必要ではない。Qアニオン交換カラムからの溶出物を、30kD再生産セルロース膜(0.1m2, Millipore Corporation)を使用してダイア濾過した。透析物質を、固体の硫酸アンモニウムを使用して3M硫酸アンモニウムに調節した。
【0085】
2.6cmの直径、約15cmのベッド長のブチル(Toyopearl Butyl 650S - TosoHaas)カラムを、15-20ml/分の流速でパックした。カラムをTris-EDTAバッファーpH7.4中の3M硫酸アンモニウムで平衡化した。サンプルを、5ml/分の流速で乗せた。プラスミドは3M硫酸アンモニウムでカラムに結合した。カラムを2-3カラム容量のバッファー中の3M硫酸アンモニウムで洗浄した。次いでカラムを、6ベッド容量で3Mから1Mの硫酸アンモニウム濃度の勾配で溶出した。勾配溶出の間で、二つのピークが生じ、第一のピークはプラスミドDNAの弛んだ形態を含み、第二のピークはプラスミドDNAのスーパーコイル化形態を含むことが、フラクションのアガロースゲルで明らかとなった(図4A)。クロマトグラムは図4Bに示されている。その結果を、二つの形態のパーセンテージを測定するために使用されるHPLCアッセイによりさらに確認した(表5)。
【0086】
アッセイの感度の制限内で、開始材料は50-60%のスーパーコイル化形態のみを含むのに対して、第二のピークは85%のスーパーコイル化形態を含むことが確認された。少なくとも90%の開始材料中のスーパーコイル化プラスミドDNAが回収された。ピークの感度限界は、15cmのカラム長でさえ分離を効果的にするのに十分であった。これは、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドの効果的な分離を示す。この優れた分離に加えて、残余量のRNA、タンパク質、及びエンドトキシンが除去され、遺伝子治療に対する特異的条件に適合する産物が生じた。
【0087】
【表5】

【0088】
実施例6:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー−勾配溶出ロングカラムを使用する、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドDNAの分離
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、上述の濾過法を通じて精製した。エンドトキシン、RNA、タンパク質、染色体DNA等のような主要な混在物を除去するためのプラスミドDNAのグロス精製を、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して実施し、そこで2M硫酸アンモニウムの濃度で、プラスミドDNAはカラムをフロースルーし、混在物はカラムに結合する(上記参照)。プラスミドDNAを含むフロースルーを透析し、いずれかのさらなる精製を提供しないアニオン交換(Bio Sepra)カラムで処理した。Qアニオン交換カラムからの溶出物を、30kD再生産セルロース膜を使用してダイア濾過した。透析物質を、実施例5で上述のように、固体の硫酸アンモニウムを使用して3M硫酸アンモニウムに調節した。
【0089】
2.6cmの直径、約30cmのベッド長のブチル(Toyopearl Butyl 650S - TosoHaas)カラムを、15-20ml/分の流速でパックした。カラムをTris-EDTAバッファーpH7.4中の3M硫酸アンモニウムで平衡化した。サンプルを、5ml/分の流速で乗せた。プラスミドは3M硫酸アンモニウムでカラムに結合した。カラムを2-3カラム容量で3M硫酸アンモニウムバッファー溶液で洗浄した。次いでカラムを、6ベッド容量で3Mから1Mの硫酸アンモニウム濃度の勾配で溶出した。勾配溶出の間で、二つのピークが生じ、第一のピークはプラスミドDNAの弛んだ形態を含み、第二のピークはプラスミドDNAのスーパーコイル化形態を含むことが、フラクションのアガロースゲルで明らかとなった(図5A)。クロマトグラムは図5Bに示されている。その結果を、二つの形態のパーセンテージを測定するために使用されるHPLCアッセイによりさらに確認した(表6)。
【0090】
アッセイの感度の制限内で、開始材料は50%のスーパーコイル化形態のみを含むのに対して、第二のピークは90%のスーパーコイル化形態を含むことが確認された。ピークのベースラインの感度限界が、より長いカラムで得られた。この実施例は、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用する、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドの効果的な分離を示す。この優れた分離に加えて、残余量のRNA、タンパク質、及びエンドトキシンが除去され、遺伝子治療に対する特異的条件に適合する産物が生じた。
【0091】
【表6】

【0092】
実施例7:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー−段階溶出ロングカラムを使用する、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドDNAの分離
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、上述の濾過法を通じて精製した。エンドトキシン、RNA、タンパク質、染色体DNA等のような主要な混在物を除去するためのプラスミドDNAのグロス精製を、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して実施し、そこで2M硫酸アンモニウムの濃度で、プラスミドDNAはカラムをフロースルーし、混在物はカラムに結合する(上記実施例1参照)。フロースルー及び洗浄物をプールし、接線フロー濾過を使用して30kD超濾過膜を使用して濃縮した。濃縮したプラスミドDNAを、固体の硫酸アンモニウムを使用して3M硫酸アンモニウムに調節した。
【0093】
1cmの直径、約30cmのベッド長のブチル(Toyopearl Butyl 650S - TosoHaas)カラムを、6ml/分の流速でパックした。カラムをTris-EDTAバッファーpH7.4中の3M硫酸アンモニウムで平衡化した。サンプルを、2ml/分の流速で乗せた。プラスミドは3M硫酸アンモニウムでカラムに結合した。カラムを2-3カラム容量で3M硫酸アンモニウムバッファー溶液で洗浄した。次いでカラムを、2-3カラム容量を使用して、各種の濃度の硫酸アンモニウム−2.8M、2.7M、2.6M、2.55M、2.5M、2.4M、1Mで溶出した。ピークを、2.4M及び1Mの溶出物で観察した。ピークのアガロースゲル電気泳動が、図6Aに示されている。ゲルは、スーパーコイル化及び弛んだ形態の明らかな分離を示す。2.4Mの溶出物は弛んだ形態を含み、1Mの溶出物はスーパーコイル化DNAを含む。クロマトグラムは図6Bに示されている。その結果を、二つの形態のパーセンテージを測定するために使用されるHPLCアッセイによりさらに確認した(表7)。
【0094】
アッセイの感度の制限内で、開始材料は62%のスーパーコイル化形態のみを含むのに対して、第二のピークは93%のスーパーコイル化形態を含むことが確認された。これらの結果を後の実験によって確認し、2.3M及び2.2Mの溶出物は感度原型を提供せず、2.4Mの溶出物は弛んだ形態の有意な除去を繰り返し提供し、それによって1M溶出物中のスーパーコイル化形態が富化された。段階溶出を使用して達成された分離は、ラージスケールの分離で有意であり、それは段階溶出を使用してより迅速に実施される。この実施例は、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーの段階溶出を使用する、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドの効果的な分離を示す。この優れた分離に加えて、残余量のRNA、タンパク質、及びエンドトキシンが除去され、遺伝子治療に対する特異的条件に適合する産物が生じた。
【0095】
【表7】

【0096】
実施例8:ヘキシル疎水性相互作用クロマトグラフィー−勾配溶出ロングカラムを使用する、スーパーコイル化及び弛んだ形態のプラスミドDNAの分離
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、上述の濾過法を通じて精製した。エンドトキシン、RNA、タンパク質、染色体DNA等のような主要な混在物を除去するためのプラスミドDNAのグロス精製を、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して実施し、そこで2M硫酸アンモニウムの濃度で、プラスミドDNAはカラムをフロースルーし、混在物はカラムに結合する(例えば上記実施例1参照)。プラスミドDNAを含むフロースルーを透析し、いずれかのさらなる精製を提供しないアニオン交換カラムで処理した。Qカラムからの溶出物を、30kD再生産セルロース膜を使用してダイア濾過した。透析物質を、実施例5で上述のように、固体の硫酸アンモニウムを使用して3M硫酸アンモニウムに調節した(上記参照)。
【0097】
1cmの直径、約30cmのベッド長のヘキシル(Toyopearl Hexyl 650C - TosoHaas)カラムを、5ml/分の流速でパックした。カラムをTris-EDTAバッファーpH7.4中の3M硫酸アンモニウムで平衡化した。サンプルを、2ml/分の流速で乗せた。プラスミドは3M硫酸アンモニウムでカラムに結合した。カラムを2-3カラム容量で3M硫酸アンモニウムバッファー溶液で洗浄した。次いでカラムを、6ベッド容量で3Mから1Mの硫酸アンモニウム濃度の勾配で溶出した。勾配溶出の間で、二つのピークが生じ、第一のピークは主にプラスミドDNAの弛んだ形態を含み、第二のピークは主にプラスミドDNAのスーパーコイル化形態を含むことが、フラクションのアガロースゲルで明らかとなった(図7A)。
【0098】
クロマトグラムは図7Bに示されている。質的に、第二のピークは、アガロースゲル電気泳動に基づいて、開始材料より顕著に高い割合のスーパーコイル化プラスミドを含んだ。Butylの35:mと比較して、Hexylの100:mのビーズサイズという事実を考慮して、ピークの優れた感度限界が得られた。
【0099】
実施例9:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用するエンドトキシンの除去(塩化ナトリウム使用)
プラスミドpE1A-K2を有する大腸菌細胞を生育し、化学的方法を使用して溶解し、濾過法を通じて精製した。上清を実験のために使用した。サンプルをアニオン交換カラム(Q Hyper D - BIOSEPRA Inc.)を通じて精製した。カラムからの2M 塩化ナトリウム溶出物を、この実験のために使用した。サンプルは、2M NaClを含む50mM Tris 10mM EDTA pH7.4バッファーに存在した。直径1cm、長さ20cm、約10mlの容量を有するブチルHICカラム(Butyl 650S樹脂を使用 - TosoHaas)をパックし、2M塩化ナトリウムを含むTEで平衡化した。サンプルを2ml/分の流速で乗せた。フロースルーを回収し、サンプルを分析のために採取した(DNA濃度、アガロースゲル、エンドトキシンアッセイ)。サンプルの搭載に引き続き、2M硫酸アンモニウムを含むTEをカラムを通じて流し、回収してサンプル化した。その後カラムをTE pH7.4で洗浄した。
【0100】
【表8】

樹脂のml当たりのエンドトキシン容量 1540EU/ml
サンプル中のエンドトキシンの減少 98%
【0101】
実施例10:ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用する、スモールスケールプラスミド精製
Qiagen's Miniprepキットとして一般的に周知である商業的に入手可能なキットを使用して、スモールスケールプラスミドDNA精製を実施する。ここに記載された方法を、商業的なキットに対するいくつかの利点を提供するためにプラスミドDNAの精製のために使用できる。以下のサンプルは、スモールスケールでのプラスミドDNAの精製のための、本発明の疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用を説明する。
【0102】
精製のための開始材料は、標準法を通じて得られた。特に、約4.65Kbのプラスミドを有する大腸菌細胞を、37℃で100μg/mlのアンピシリンを含むLuria Brothで生育させた。細胞を2.7のODで回収した。細胞を遠心分離を通じて培地から回収した。その後細胞ペレットを、50mM Tris-HCl、10mM EDTA pH8.0に再懸濁した。等量の200mM NaOH、1%SDS溶液を加え、十分に混合し、室温で5分インキュベートした。この工程は細胞の溶解を引き起こし、プラスミドDNAを含む細胞内容物を放出させる。3.1M酢酸カリウム(pH5.5)より成る中和溶液を、等量(元々の)で加え、十分に混合した。中和溶解物を、チーズクロス及びフィルターを通じて濾過し、沈降物を除去した。透明な溶解物を、70%イソプロパノール(3mlの透明な溶解物当たり2.1mlのイソプロパノールを加える)で沈降させた。沈降物を遠心分離を通じて分離し、ペレットを70%エタノールで洗浄し、乾燥して10mM Tris-HCl、0.1mM EDTAバッファー、pH8.0に溶解した。沈降物を使用まで−20℃で凍結し、精製実験の開始材料として使用した。
【0103】
20mlのベッド容量、10cmのベッド長を有するブチル650Sカラムを、1.6cmの直径のカラム(Pharmacia XK16/20)にパックし、50mM Tris-HCl、10mM EDTA(TE)バッファー、pH7.4中の2.2M硫酸アンモニウム(AS)で平衡化した。搭載のためのサンプルを2.2Mの最終濃度で固体の硫酸アンモニウムを加えることによって調製した。サンプルをTris-EDTA、pH7.4中の2.2M ASで10mlに希釈した。
【0104】
精製条件は、プラスミドDNAがフロースルーに回収され、混在物が樹脂に結合するようにデザインした。
【0105】
サンプルを2ml/分で乗せ、フロースルーを回収した。カラムをTEバッファー中の2.2M ASの35mlで洗浄し、洗浄物1(10ml)、洗浄物2(14.5ml)及び洗浄物3分画(10ml)として回収した。ピークは洗浄の間で生じた。カラムを、TEバッファー、pH7.4中の1M ASの55mlで溶出し、1M洗浄物1(10ml)及び1M洗浄物2(45ml)として回収した。ピークは1M AS溶出の間で生じた。カラムを50mlのUSP-精製水で溶出した。ピークが生じた。以下の表は、上述の分画のそれぞれで存在する全核酸を示す。濃度は、260nmでの吸光度に基づいて計算された(Conc. (μg/ml)=A260*50)。
【0106】
【表9】

【0107】
サンプルのアガロースゲル電気泳動を実施した。図8は、ゲルの写真コピーを示す。ゲルの写真は、洗浄物分画(レーン3,4,5)においてプラスミドDNAを示す。ロードサンプル(レーン2)とは対照的に、視覚化可能なRNAは洗浄物分画では見られない。溶出物分画は、レーン6及び7に示されるようにRNAを含む。洗浄物プールにおけるエンドトキシンを、Kinetic QCLエンドトキシンアッセイを使用して測定した。エンドトキシンは、0.005EU/mlであるこのアッセイの感度レベルでサンプル中で検出されなかった。プラスミドの収率は、100mlの培養物から733μgであり、それは商業的なキットで入手可能なものと同様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの宿主細胞不純物を含むプラスミドDNAの混合物からプラスミドDNAを精製する方法であって、以下の工程:
(a)前記混合物に十分な塩を添加して、疎水性相互作用媒体に対する前記少なくとも一つの宿主細胞不純物の選択的結合を可能にすることにより溶液を調製する工程、
(b)少なくとも一つの不純物が疎水性相互作用媒体と結合して複合体を形成する条件下で、前記プラスミドDNAを含有する溶液を前記疎水性相互作用媒体と接触させる工程、かつ、
(c)前記複合体および疎水性相互作用媒体から未結合のプラスミドDNAを回収する工程
を含み、溶剤、界面活性剤、グリコール、ヘキサミンコバルト、スペルミジンおよびポリビニルピロリドンの不在下で実施する方法。
【請求項2】
少なくとも一つの不純物が、RNA、エンドトキシン、染色体DNAおよびタンパクからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの不純物がエンドトキシンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
塩が、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、SO42-、Cl-、Br-、NO3-、Mg2+、Li+、Na+、K+およびNH4+からなる群から選択されたアニオンまたはカチオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
塩が、2Mから4Mの濃度範囲の硫酸アンモニウムである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
硫酸アンモニウムが約2Mの濃度で存在する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
溶液が、2Mから4Mの濃度範囲のナトリウム塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ナトリウム塩が塩化ナトリウムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ナトリウム塩が約2Mの濃度の塩化ナトリウムである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
溶液のpHが約6.8から約7.4の範囲を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
溶液のpHが約7.4である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
疎水性相互作用媒体が、ペンダント結合した疎水性基を備えたクロマトグラフィー支持体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ペンダント結合した基が、C3からC10アルキル基およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
疎水性相互作用媒体が、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニルまたはデシルリガンドの少なくとも一つに結合したメタクリラートポリマーまたはコポリマー骨格からなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
媒体が、メタクリラートエチレングリコールコポリマー骨格または架橋結合したアガロース骨格の少なくとも一方である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
樹脂が、15から100μmの粒径のビーズ形態である、請求項12記載の方法。
【請求項17】
スーパーコイル化プラスミドDNAを、スーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNA、そして任意に少なくとも一つの宿主細胞不純物の混合物から分離する方法であって、以下の工程:
(a)スーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNA、並びに、存在する場合には、少なくとも一つの宿主細胞不純物の混合物に、塩を添加することにより溶液を調製する工程、
(b)スーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNAの両方が、疎水性相互作用媒体に結合して、結合第一混合物を形成する第一の条件下で疎水性相互作用媒体と溶液とを接触させる工程;
(c)結合第一混合物の周りの第一の条件を第二の条件に変化させ、弛んだプラスミドDNAを結合第一混合物から除去し、第二結合混合物と弛んだプラスミドDNAを含む別個の成分を形成する工程;および
(d)前記結合第二混合物の周りの第二の条件を第三の条件へと変更し、スーパーコイル化プラスミドDNAを前記第二結合混合物から取り出し、疎水性相互作用媒体とスーパーコイル化プラスミドDNAとを含む別個の成分を形成する工程を含む方法。
【請求項18】
少なくとも一つの宿主細胞不純物が、RNA、エンドトキシン、染色体DNAおよびタンパクからなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも一つの宿主細胞不純物がエンドトキシンである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
疎水性相互作用媒体が、ペンダント結合した疎水性基を備えたクロマトグラフィー支持体を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記ペンダント結合した基が、C3からC10アルキル基からなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
疎水性相互作用媒体が、リガンドとして、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニルまたはこれらの混合物の少なくとも一つに結合したメタクリラートポリマーまたはコポリマー骨格からなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
媒体が、メタクリラートエチレングリコールコポリマー骨格または架橋結合したアガロースの少なくとも一方である、請求項20記載の方法。
【請求項24】
媒体が、15から100μmの粒径のビーズ形態の樹脂である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
塩が、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、SO42-、Cl-、Br-、NO3-、Mg2+、Li+、Na+、K+およびNH4+からなる群から選択されたアニオンまたはカチオンを含む、請求項17記載の方法。
【請求項26】
塩が、2.5Mから4Mの濃度範囲の硫酸アンモニウムである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第一の条件が、約2.5Mから4Mの濃度範囲で存在する硫酸アンモニウムを含む塩溶液で前記媒体を平衡化することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項28】
第二の条件が、約2.35Mから約2.45Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む塩溶液で媒体を洗浄することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項29】
第三の条件が、約1Mから2.3Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む塩溶液で前記結合第二混合物を洗浄することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項30】
プラスミドDNAからエンドトキシンを分離する方法であって、前記エンドトキシンが前記疎水性相互作用媒体と結合して複合体を形成する条件下で、エンドトキシンとプラスミドDNAの混合物を疎水性相互作用媒体と接触させ、かつ、前記プラスミドDNAと前記複合体とを分離することを含む方法。
【請求項31】
塩が、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、SO42-、Cl-、Br-、NO3-、Mg2+、Li+、Na+、K+およびNH4+からなる群から選択されたアニオンまたはカチオンを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記混合物が、1.5から4Mの濃度範囲のアンモニウム塩をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記アンモニウム塩が、約2Mの濃度で存在する硫酸アンモニウムである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
疎水性相互作用媒体が、ペンダント結合した疎水性基を備えたクロマトグラフィー支持体を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記ペンダント結合した基が、C3からC10アルキル基からなる群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
疎水性相互作用媒体が、リガンドとして、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニルまたはこれらの混合物の少なくとも一つに結合したメタクリラートポリマーまたはコポリマー骨格からなる群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
媒体が、メタクリラートエチレングリコールコポリマー骨格または架橋結合したアガロースの少なくとも一方である、請求項34記載の方法。
【請求項38】
媒体が、15から100μmの粒径のビーズ形態の樹脂である、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記混合物が、約6.8から約7.4の範囲のpHを有する、請求項30記載の方法。
【請求項40】
pHが約7.4である、請求項35記載の方法。
【請求項41】
弛んだプラスミドDNAからスーパーコイル化プラスミドDNAを分離する方法であって、スーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNAの両方が前記疎水性相互作用媒体と結合して結合第一混合物を形成するような第一の条件下で、スーパーコイル化プラスミドDNAおよび弛んだプラスミドDNAの混合物を疎水性相互作用媒体と接触させ、結合第一混合物の周りの第一の条件を第二の条件に変化させて、弛んだプラスミドDNAを結合第一混合物から除去して、第二結合混合物と弛んだプラスミドDNAを含む別個の成分を形成し、かつ、前記結合第二混合物の周りの第二の条件を第三の条件へと変更し、スーパーコイル化プラスミドDNAを前記第二結合混合物から取り出して、疎水性相互作用媒体とスーパーコイル化プラスミドDNAとを含む別個の成分を形成することを含む方法。
【請求項42】
疎水性相互作用媒体が、ペンダント結合した疎水性基を備えたクロマトグラフィー支持体を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記ペンダント結合した疎水性基が、C3からC10アルキル基およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
疎水性樹脂が、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルリガンドの少なくとも一つに結合したメタクリラートポリマーまたはコポリマー骨格である、請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記樹脂が、メタクリラートおよびエチレングリコールコポリマー骨格または架橋結合したアガロースの少なくとも一方である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記樹脂が、35から100μmの粒径のビーズ形態である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
第一の条件が、約2.5Mから4Mの濃度範囲の硫酸アンモニウムを含む塩溶液で前記混合物および媒体を平衡化することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項48】
第二の条件が、約2.35Mから約2.45Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む塩溶液で前記第一結合混合物を洗浄することを含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
第三の条件が、約1Mから2.3Mの濃度の硫酸アンモニウムを含む塩溶液で前記第二結合混合物を洗浄することを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記変化および変更が、前記結合第一混合物と、連続的に変化する濃度の硫酸アンモニウムを含む塩溶液を含む硫酸アンモニウムとを混合することによる弛んだプラスミドDNAおよびスーパーコイル化プラスミドDNAの勾配溶出を含み、前記濃度が約3Mから約1Mの硫酸アンモニウムまで変化し、かつ、前記弛んだプラスミドDNAが第一の溶出量に回収され、かつ、前記スーパーコイル化プラスミドDNAが第二の溶出量に回収される、請求項17ないし41のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記分離した弛んだプラスミドDNA成分と前記分離したスーパーコイル化プラスミドDNAとが回収および単離される、請求項41記載の方法。
【請求項52】
混合物において、弛んだDNAよりもスーパーコイル化DNAの量を増やす方法であって、以下の工程:
(1)スーパーコイル化DNAが疎水性相互作用媒体に優先的に結合するようなイオン条件下で、スーパーコイル化DNAおよび弛んだDNAを含む混合物を、アルキル部を含む疎水性相互作用媒体と相互作用させる工程;
(2)弛んだDNAを優先的に除くイオン条件下で、弛んだDNAおよびスーパーコイル化DNAを含む疎水性相互作用媒体を処理する工程;および
(3)疎水性相互作用媒体からスーパーコイル化DNAを溶出する工程を含む方法。
【請求項53】
DNAを含む組成物からリポポリサッカリド(LPS)を除く方法であって、
(1)LPSがDNAよりも優先的に疎水性相互作用媒体に結合するようなイオン条件下で、DNAおよびLPSを含む混合物を、アルキル部を含む疎水性相互作用媒体と相互作用させる工程;および
(2)DNAおよびLPSを含む疎水性相互作用媒体を、DNAの選択的抽出を可能にするイオン条件で処理する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−50463(P2012−50463A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−267892(P2011−267892)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【分割の表示】特願2001−500643(P2001−500643)の分割
【原出願日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願人】(502075995)キャンブレックス・バイオ・サイエンス・ボルチモア・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】