説明

DNA/RNAキメラオリゴヌクレオチド

【課題】 ヌクレアーゼに対する耐性を有しかつ生体内で毒性を有しない核酸分子を提供すること。
【解決手段】
プリンリボヌクレオチドとピリミジンデオキシリボヌクレオチドから構成されるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドからなるアプタマーが開示される。本発明にかかるアプタマーは,標的に対して2’−フルオロ修飾RNAと匹敵する結合活性を示し,かつヌクレアーゼに対して天然のDNAと同程度の耐性を有する。さらに,体内で標的に作用した後には,通常のDNAやRNAと同様の経路により代謝され,非天然物質の不適切な代謝や蓄積に起因する副作用が生ずるおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドからなるキメラオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
RNA分子を,アンチセンスオリゴヌクレオチド,siRNA,アプタマーなどの機能性分子としてヒト生体内で有効に作用させるためには,RNA分子の生体内における安定性,標的物質に対する結合親和性および特異性,ならびに細胞内への取り込み能力を高めるとともに,生体に及ぼす毒性を低下させる必要がある。中でも,ヒトの細胞および血清中には外来核酸分子を分解する活性を有するヌクレアーゼが大量に存在するため,ヌクレアーゼに対するRNA分子の耐性を高めることが重要である。この目的のため,RNA分子の主鎖結合や糖部分に化学的修飾を加えた種々の核酸類似体が開発されている。これらには,例えば,ホスホロチオエートヌクレオチド間結合,PNA,2'−O−メチル置換,2'−フルオロ置換,反転塩基などが含まれる。
【0003】
しかしながら,これらの核酸類似体は,ヌクレアーゼに対する安定性は高まる一方で,標的物質に対する結合親和性が低下したり,生体内で非特異的結合を示したり,適切に代謝されず毒性をもつ可能性があることが指摘されている。
【0004】
本発明に関連性のある従来技術文献としては以下のものが挙げられる。
【非特許文献1】Sandeep Verma and Fritz Eckstein, MODIFIED OLIGONUCLEOTIDES: Synthesis and Strategy for User Annu.Rev.Biochem. 1998. 67: 99-134
【非特許文献2】Jens Kurreck, Antisense technologies: Improvement through novel chemical modifications, Eur.J.Biochem. 270, 1628-1644 (2003)
【非特許文献3】Sumedha D.Jayasena, Aptamers: An Emerging Class of Molecules That Rival Antibodies in Diagnostics, Clinical Chemistry 45:9, 1628-1650 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,ヌクレアーゼに対する耐性を有しかつ生体内で毒性を有しない核酸分子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは,プリンリボヌクレオチドとピリミジンデオキシリボヌクレオチドから構成されるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドが,血清中でDNAと同程度の安定性を示し,かつアプタマーとして標的物質に対する十分な結合親和性を有することを見いだした。
【0007】
本発明は,ATP,GTP,dCTP,dTTPおよびdUTPからなる群より選択される2−5種類のヌクレオチドを連結させたオリゴヌクレオチドからなるアプタマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,ホスホジエステル結合により連結されたプリンリボヌクレオチドとピリミジンデオキシリボヌクレオチドから構成されることを特徴とする。すなわち,本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,アデノシン3リン酸(ATP),グアノシン3リン酸(GTP),デオキシシチジン3リン酸(dCTP),デオキシチミジン3リン酸(dTTP)およびデオキシウリジン3リン酸(dUTP)の5種のヌクレオチドのうち,2種または3種または4種または5種から構成される。ヌクレオチド配列は任意に選択することができ,本発明のオリゴヌクレオチドの意図される機能および標的分子(核酸,蛋白質,糖など)に応じて,適宜設計することができる。
【0009】
さらに,本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,所望のヌクレアーゼ耐性を奏する限り,付加的な配列をさらに含んでいてもよい。例えば,本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドを別のDNAオリゴヌクレオチドまたはRNAオリゴヌクレオチドと連結させてハイブリッド型のオリゴヌクレオチドとしてもよく,あるいは,5'末端側および/または3'末端側に,さらにヌクレアーゼ耐性を高める末端修飾や,オリゴヌクレオチドの合成,精製,定量,製剤化,担体との結合などに便利な付加物を含んでいてもよい。
【0010】
ヌクレアーゼとは,核酸分子のホスホジエステル結合を切断する加水分解酵素の総称であり,RNAを分解するRNA分解酵素およびDNAを分解するDNA分解酵素が含まれる。細胞内および血清中には大量のヌクレアーゼが存在しており,外来の核酸分子はヌクレアーゼによる分解を受けるため,天然型の核酸分子の半減期は,その長さによっても異なるが,RNAの場合には数分から数十分程度,DNAの場合には30分から数時間程度である。これに対し,本発明にしたがって得られるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,ヌクレアーゼに対して天然型のRNAより高く,天然型のDNAと同程度の耐性を有する。これは,DNAとRNAとのキメラ構造としたことにより,RNA分解酵素により認識されにくくなったためであると考えられる。ヌクレアーゼ耐性とは,ヌクレアーゼによる加水分解を受けにくい性質をいい,所与の条件下で核酸分子をヌクレアーゼと接触させたときに,核酸分子が分解される半減期の長さを指標として表すことができる。本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,dATP,dGTP,dCTPおよびdTTPから構成される天然型DNAや,2’−フルオロ修飾RNAと同程度のヌクレアーゼ耐性を有する。
【0011】
本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの両方を基質として核酸鎖の伸長を行うことができるポリメラーゼ(本明細書において「DNA/RNAポリメラーゼ」と称する)を用いて製造することができる。合成は,目的とするヌクレオチド配列を有するテンプレートおよびこのテンプレートに対応するプライマーの存在下で,ATP,GTP,dCTPおよびdTTP,またはATP,GTP,dCTPおよびdUTPを連結させることにより行う。なお,T7ポリメラーゼなど特定のプロモーター配列を認識しうるポリメラーゼを用いる場合には,テンプレート中にそのプロモータ配列を組み込んでおけばよく,プライマーは不要である。リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの両方を基質としうるポリメラーゼとしては,天然のRNA分解酵素であってしてDNAも基質としてある程度認識するポリメラーゼおよび天然のDNA分解酵素であってしてRNAも基質としてある程度認識するポリメラーゼ,および基質の認識を変化させた変異型ポリメラーゼを用いることができる。変異型ポリメラーゼの例としては,T7 R&DNAポリメラーゼ(Gudima, S.O. et al., FEBS Lett. 439 (1998) 302-306)が挙げられる。ヌクレオチドを連結させる反応の条件は,ポリメラーゼによって様々でありうるが,当業者は最適な反応条件を適宜選択することができる。
【0012】
あるいは,本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,化学合成により製造してもよい。化学合成は,通常のDNAオリゴヌクレオチドの合成方法とRNAオリゴヌクレオチドの合成方法を適宜組み合わせることにより行うことができる。例えば,DNA合成機を用いたホスホトリエステル法またはホスホロアミダイト法により合成することができる。リボヌクレオシドのホスホロアミダイトユニットとしては2'位TBS体を用い,キメラオリゴヌクレオチド合成完了後にテトラブチルアンモニウムフロリドによって保護基除去が可能である。本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,ヌクレアーゼ耐性を高めた2’−F−修飾RNAと比較して,安価で合成することができる。
【0013】
本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,ヌクレアーゼに対して耐性を有し,特に血清中では天然型DNAと同程度の安定性を示す。また,本発明のDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,ホスホジエステル結合により連結された天然のヌクレオチドユニットから構成されるものであるため,生体内で標的に作用した後には,通常のDNAやRNAと同様の経路により代謝され,非天然物質の不適切な代謝や蓄積に起因する副作用が生ずるおそれがない。
【0014】
さらに本発明にかかるDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,下記の実施例において示されるように,アプタマーとして標的物質に対して十分に高い結合活性を有している。これは,DNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドが天然型DNAより安定な二次構造をとりやすいためであると考えられる。したがって,本発明のDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,アンチセンスオリゴヌクレオチドやアプタマーとして生体内で用いるのに好適である。アンチセンスオリゴヌクレオチドとは,標的とする蛋白質をコードするmRNAに特異的に結合してその翻訳を阻害しうるオリゴヌクレオチドである。アプタマーとは,蛋白質や糖などの特定の分子に結合する核酸リガンドを表す。本発明のDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,特にアプタマーとして有用である。アプタマーは,実施例3に例示されるようにして,ATP,GTP,dCTP,dTTPおよびdUTPからなる群より選択される2−5種類のヌクレオチドを連結させた複数のオリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドライブラリを用いて,SELEX法により取得することができる。
【0015】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
キメラ核酸の血清中での安定性
1.キメラ核酸および2'-フルオロRNAの合成
ヒト血清中での核酸の安定性を比較する目的で25bpのDNA,2'フルオロRNA,DNA/RNAキメラ核酸の3種類の核酸を調製した。核酸の配列は以下のとおりである。
1. DNA
5'-TTATCGTCGATCTGTAGTGCTGAGA-3'
(配列番号1)
2. 2'-フルオロRNA
5'-UUAUCGUCGAUCUGUAGUGCUGAGA-3'
(ATP, GTP, 2'F-UTP, 2'F-CTP)
(配列番号2)
3. DNA/RNAキメラ
5'-TTATCGTCGATCTGTAGTGCTGAGA-3'
(ATP, GTP, dTTP, dCTP)
(配列番号3)
【0017】
オリゴヌクレオチドはDNA自動合成機(Applied Biosystems 3400 DNA synthesizer)を用いてホスホアミダイト法により化学合成した。合成には1 μmolのCPG樹脂(Bz-A-RNA CPG,Glen Research社)を用い,dC-CEホスホアミダイト,dT-CEホスホアミダイト,Bz-A-CEホスホアミダイト,dmf-G-CEホスホアミダイト,2'-F-Ac-C-CEホスホアミダイト,2'-F-U-CEホスホアミダイト(Glen Research社)は,それぞれ0.1Mのアセトニトリル溶液に溶解して用いた。合成終了後,アルゴンガスを5分間通じて樹脂を乾燥後,メタノール性アンモニア(2 mL)を加え室温にて24時間反応した。反応溶液をガラスフィルターで濾過後,ろ液を減圧下溶媒留去し,残渣にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1M-テトラヒドロフラン溶液)を加え室温にて20時間反応した。この反応溶液をC-18逆相カラムクロマトグラフィー(φ1X14 cm, 0-50 %アセトニトリル/0.1N トリエチルアンモニウム酢酸バッファ)により精製し,得られた核酸に塩酸水溶液(pH 2.0)(8 mL)を加え,室温で10分間処理することで5'末端の4, 4'-ジメトキシトリチル基を除去した。この反応液をアンモニア水で中和した後,濃縮し,C-18逆相HPLC(YMS社,J'sphere ODN-M80, 5-35%アセトニトリル/0.1N トリエチルアンモニウム酢酸バッファ)で精製後,脱塩処理し,目的の核酸を得た。
【0018】
2.核酸の5'末端標識反応
キメラ核酸,2'-フルオロRNAおよびDNAの3種の核酸は,T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて5'末端をアイソトープで標識した。
【0019】
【表1】

上記の溶液を37℃で30分間リン酸化反応し,反応溶液を滅菌水で50 μLにメスアップした後,MicroSpin G25 カラム(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて未反応の[γ-32P]ATPを除去した。
【0020】
3. 90%ヒト血清中での安定性比較
5'末端標識したキメラ核酸,2'-フルオロRNAおよびDNAを用いて90%ヒト血清中での安定性比較を行った。
【0021】
【表2】

以上の溶液を混合し,37℃で反応した。反応開始後,経時的(0,1,4,8.5,18,25,31.5時間後)に反応溶液を2 μLずつサンプリングした。回収したサンプルはローディングバッファ 10 μLと混和し,そのうちの5 μLを 20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(23 X 23 X0.05 cm, 1 X TBE, 800 V, 1.5時間)により分離し,イメージアナライザーを用いて解析した。
【0022】
完全長の核酸分子の残存率を時間に対してプロットした(図1)。グラフより求めた90%ヒト血清中での半減期(完全長残存率)は,DNA,キメラ核酸および2'-フルオロRNAの3種ともに同程度の値を示した。
【表3】

【実施例2】
【0023】
キメラ核酸アプタマーの作製
1.キメラ核酸プール合成用二本鎖鋳型DNAの調製
キメラ核酸プール合成のための二本鎖DNAは,下記のPCR条件により合成した。
5'-SELEXプライマー: 5'-GCTCTAGATAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGGAAGTAACAGG-3' (45 mer)
(配列番号4)
3'-SELEX プライマー: 5'-CTGGTACCGTCACCTCTTCTCAC-3' (23 mer)
(配列番号5)
SELEX-テンプレート: 3'-GGGAGAAGGGAAGTAACAGG-N30-GTGAGAAGAGGTGACGGTACCAG-5' (73 mer)
(N30は30merのランダム配列を示す)
(配列番号6)
テンプレート全長(98 mer)
5'-GCTCTAGATAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGGAAGTAACAGG-N30-GTGAGAAGAGGTGACGGTACCAG-5'
(配列番号7)
(N30は30merのランダム配列を示し,下線はT7 プロモータを示す)
【0024】
【表4】

【0025】
PCR反応終了後,反応溶液をフェノール抽出およびクロロホルム抽出した後,エタノール沈殿し,40 ng/μLとなるよう滅菌水に溶解した。
【0026】
2.転写によるキメラ核酸の合成
キメラ核酸プールは下記の転写反応により合成した。
【表5】

【0027】
反応溶液を37℃で17.5時間伸長反応した後,TE飽和フェノール抽出,クロロホルム抽出,エタノール沈殿を行った。得られた核酸ペレットをローディングバッファ(脱イオンホルムアミド,0.05%-ブロモフェノールブルー,0.05%-キシレンシアノールFF)に溶解し,12%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(10 X 10 X0.1 cm, 1 X TBE, 300 V, 1時間)にて目的物を精製した。得られた核酸プールを以後に行うSELEXに用いた。
【実施例3】
【0028】
キメラ核酸を用いたSELEX
1.アニーリング
【表6】

上記の溶液を90℃で5分加熱変性し,20分で25℃にまで徐々に冷却した。
【0029】
2.フィルターバインディング法
サイクル1から6はフィルターバインディング法を用いてセレクションを行った。まず始めに,ネガティブセレクションによりフィルター非特異的に結合する核酸を除去後,ポジティブセレクションによりタンパク質特異的に結合する核酸の選抜を行った。
【0030】
2−1.フィルターバインディング法:ネガティブセレクション
ネガティブセレクションは下記の条件で行った。前述のアニーリングしたキメラ核酸溶液とニトロセルロースフィルターをエッペンドルフチューブに入れ,4℃で1時間反応した。反応後,回収した核酸溶液を新たなニトロセルロースフィルターで濾過し,さらに60 μLの1 X SELEX バッファを濾過してフィルター洗浄を行った。ろ液は全て回収した。
【0031】
2−2.フィルターバインディング法:ポジティブセレクション
ポジティブセレクションは下記の条件で行った。
【0032】
【表7】

上記の反応溶液を以下に示す条件で反応させた。
【表8】

【0033】
反応後,ニトロセルロースフィルターで濾過した。フィルターは1 X SELEX バッファ 200 μLを3回濾過することにより洗浄を行った。この洗浄済みフィルターにTE飽和フェノール 400 μL,7M 尿素 200 μLを加えて激しく撹拌した。続いて,滅菌水200 μL,クロロホルム400 μLを加え激しく撹拌した後,遠心分離を行い(15000 rpm, 4℃, 5 min),上層を回収した。回収した溶液をクロロホルム抽出し,この抽出液にグリコーゲン20 μgを添加してエタノール沈澱した。得られたペレットは20 μLの滅菌水に溶解後,逆転写反応に用いた。
【0034】
3.ゲルシフト法
サイクル7〜8はゲルシフト法を用いてセレクションを行った。
【0035】
【表9】

上記の溶液を以下に示す条件で反応させた。
【表10】

【0036】
反応後,8 %アクリルアミドゲル電気泳動(10x10x0.1 cm, 1xTBE, 100 V, 1 hr, 4℃または25℃)にて目的のタンパク質・核酸複合体を切り出した。切り出したゲル断片をエッペンドルフチューブに移し,TE 100 μLを加えて室温で一晩抽出した。この抽出液を回収し,グリコーゲン20 μgを加え,エタノール沈澱した。得られたペレットは20 μLの滅菌水に溶解した後,逆転写反応に用いた。
【0037】
4.逆転写反応
【表11】

【0038】
上記の反応溶液を70℃で5分加熱変性した後,氷上で1分以上静置し,以下の溶液を加えた。
【表12】

【0039】
上記の溶液を42℃で50分間伸長反応させた後,70℃で15分間加熱変性し,これを鋳型に用いてPCRを行った。
【0040】
5.PCR
【表13】

【0041】
PCR反応終了後,反応溶液をフェノール抽出およびクロロホルム抽出した後,エタノール沈殿し,40 ng/μLとなるよう滅菌水に溶解した。(なお9サイクルにおける配列の確認はこのPCR産物を用いておこなった。)
【0042】
6.転写反応
【表14】

【0043】
上記の溶液を37℃で6時間以上伸長反応後,TE飽和フェノール抽出,クロロホルム抽出,エタノール沈殿して得られた核酸ペレットを1 X ローディングバッファに溶解し,12%変性ポリアクリルアミドゲルを用いたPAGE精製により,目的物を精製した。得られたキメラ核酸プールのUV吸収を測定し濃度を算出したのち,次のサイクルに用いた。上記の操作を1サイクルとしてアプタマーが得られるまで繰り返し行った。
【0044】
7.キメラ核酸プールの配列確認
セレクションを9サイクル行った後,セレクションされた核酸の配列を下記の操作で確認した。9サイクル目のPCR産物のクローニングはpGEM-T Easy Vector Systems (Promega社)を用いて行った。PCR産物 20 ngにpGEM-T Easy Vector 50 ng,Rapid LigationBuffer 5μL,T4 DNA リガーゼ(3 ユニット/μL) 1 μLを加え,滅菌水で全量を10 μLとし,室温で30分間反応した。この反応液5 μLとE. coli. JM109コンピテントセル50 μLを緩やかに混和し,氷上に10分間静置した後,37℃で1分間インキュベーションし,即座に氷上に移し5分間静置した。これに,SOC培地 450 μLを加えて緩やかに混和し,37℃で40分間回復培養を行った。LB寒天培地(アンピシリン,X-Gal,IPTG添加)に反応液をまき,37℃で一晩培養した。得られたコロニーはLB液体培地(アンピシリン添加)に植菌し,37℃で一晩振とう培養した後,Quantum Prep Plasmid Miniprep Kit (Bio-Rad社)を用いてプラスミドを単離し,シークエンシングによって配列を確認した。
【0045】
SELEXで獲得したキメラ核酸アプタマー(VNM9-D01)の配列を以下に示す (A, G; RNA型,C, T; DNA型)
5'-GGGAGAAGGGAGTAACAGGGGTCCCGCGCGTCTGACTAGGTGGGGATCCGTGAGAAGAGGTGACGGTACCAG-3'
(配列番号8)
【実施例4】
【0046】
キメラ核酸アプタマーの結合活性の測定 (フィルターバインディングアッセイ)
1.キメラ核酸クローンの合成
キメラ核酸の合成に用いる鋳型DNAは下記の通り作成した。
【表15】

【0047】
PCR反応終了後,反応溶液をフェノール抽出およびクロロホルム抽出,エタノール沈殿を行い,40 ng/μLとなるよう滅菌水に溶解した後,転写反応のテンプレートとして用いた。
【0048】
2. 転写反応によるキメラ核酸の合成
転写反応によるキメラ核酸の合成は以下のように行った。
【表16】

【0049】
上記の反応溶液を37℃で3時間以上伸長反応した後,TE飽和フェノール抽出,クロロホルム抽出,エタノール沈殿した。得られたペレットは1 x ローディングバッファに溶解後,12%変性ポリアクリルアミドゲルを用いたPAGE精製により,目的物を精製した。以上の様に合成した核酸10 pmolを下記の条件にて脱リン酸化した。
【0050】
【表17】

【0051】
反応溶液を37℃で30分間脱リン酸化反応した後,TE飽和フェノール/クロロホルム抽出(2回),クロロホルム抽出,エタノール沈殿した。得られたペレットは滅菌水10 μLに溶解し,一部を下記のT4ポリヌクレオチドキナーゼによる5'末端のRIラベル化反応に用いた。
【表18】

【0052】
上記の溶液を37℃で30分間ラベル化反応後,反応溶液を滅菌水で50 μLにメスアップした後,MicroSpin G25 カラム(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて未反応の[γ-32P]ATPを除去した。
【0053】
3.フィルターバインディングアッセイ
本発明のキメラ核酸アプタマー(VNM9-D01)のヒトVEGFに対する結合活性は,上述の通り5'末端標識したキメラ核酸クローンを用いて下記のように評価した。ポジティブコントロールとしては,ヒトVEGFに対するアプタマーであるARC245(Burmeister, P. E., et al., Chem. & Biol., 2005, 12, 25-33)を用いた。
ARC245:
5'-AUGCAGUUUGAGAAGUCGCGCAU-3'
(2'-OMeRNA, 23 mer)
(配列番号9)
【0054】
キメラ核酸溶液
キメラ核酸クローン0.1 pmolを1 X PBSM (137 mM NaCl, 8.1 mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM KH2PO4, 1 mM MgCl2) 1 mLに溶解し,90℃で5分間加熱変性した後,20分間で25℃まで冷却した。
【0055】
VEGF溶液
【表19】

【0056】
上記の100 nM VEGF溶液を原液とし,1 X PBSMを用いて10 nM, 1 nM, 0.1 nM, 0.01 nMとなるように希釈した。
【0057】
フィルターバインディングアッセイ
【表20】

【0058】
上記の反応溶液を37℃で5分間インキュベーションした後,ニトロセルロースフィルターの下にナイロンメンブレンを重ね,反応溶液を濾過した。フィルターは1 X PBSM 200 μL を3回濾過することにより洗浄した。洗浄済みフィルターは乾燥後,イメージアナライザーを用いて解析した。
【0059】
核酸のVEGFへの結合割合は下記の式により算出した。
【表21】

【0060】
結果を図2に示す。poolは,キメラ核酸ランダム配列プールである。また,結合活性の値からVEGFに対するKdを求めたところ,以下のとおりであった。
VNM9 D01: Kd = 1.7 nM
ARC245: Kd = 4.0 nM(文献値 2.1 nM)
【0061】
以上の結果から,本発明のDNA/RNAキメラ核酸を用いることにより,標的と結合しうるアプタマーを得られることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドは,アンチセンスオリゴヌクレオチドやアプタマーとして,生化学研究,診断および医療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は,90%ヒト血清中でのDNA/RNAキメラオリゴヌクレオチドの安定性を示す。
【図2】図2は,DNA/RNAキメラアプタマーの結合活性評価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATP,GTP,dCTP,dTTPおよびdUTPからなる群より選択される2−5種類のヌクレオチドを連結させたオリゴヌクレオチドからなるアプタマー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−125374(P2008−125374A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311103(P2006−311103)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(301023364)株式会社ジェネティックラボ (10)
【出願人】(502305630)
【Fターム(参考)】