説明

E型肝炎ウィルスワクチン及びその接種方法

【課題】腸管外注射によって本発明のペプチドワクチン組成物を患者に投与することによって、HEVによるヒトへの感染を防ぐこと。
【解決手段】個体にE型肝炎ウイルス(HEV)に対する免疫を与えるのに使用されるワクチン組成物に於て、薬理学的に容認されるキャリヤー中で、HEVゲノムの第二開放型読み枠によってコードされたカプシドタンパク質のC−末端42アミノ酸を含有するペプチドを有する、ワクチン組成物であって、
ただし、上記ワクチンは、「哺乳動物にE型肝炎ウイルス(HEV)に対する免疫を与えるのに使用されるワクチン組成物に於て、薬理学的に容認されるキャリアー中で、次の配列の1つ:
(i)配列 ID No.17、
(ii)配列 ID No.18及び
(iii)内部で一致している、配列 ID No.17と18の間の変異配列、
によって同定されるアミノ酸配列からなるペプチドを含有する、組成物」ではない、
ワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1990年4月5日出願された米国特許出願第07/505,888号明細書の一部継続出願であり、これは1989年10月13日に出願された米国特許出願第420,921号
明細書の一部継続出願であり、これは1989年6月16日に出願された米国特許第367,486号明細書の一部継続出願であり、これは1989年4月11日に出願された米国特許第336,672号明細書の一部継続出願であり、これは1988年6月17日に出願された米国特許第208,997号明細書の一部継続出願である。これらのすべてを、参考資料として記載する。
【0002】
(1.発明の分野)
本発明は、E型肝炎ウィルスとも呼ばれる腸内で伝達される非A/非B型肝炎ウィルス剤に関連する抗原及び抗体ワクチン組成物及びワクチン接種方法に関する。
【0003】
(2.参考資料)
アランカレ(Arankalle),V.A.,等、The Lancet,550(3月12日,1988).
ブラッドレイ(Bradley),D.W.,等、J Gen.Virol.,69:1 (1988).
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ゾラ(Zola),H.,“モノクロナール抗体:技術のマニュアル”(Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques),CRCPress,Boca Raton,LA,1987 .
【背景技術】
【0004】
(3.発明の背景)
腸内で伝達される非-A/非-B型肝炎ウィルス剤(ET-NANB,,E型肝炎ウィルス又はHEVとしても呼ばれる)は、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、メキシコ、及びインド亜大陸に於ていくつもの伝染性及び散発性症例中で肝炎の原因として報告されている。ウィルスは接近した身体接触によっても広がるが、感染は大便で汚染された水も通常原因となる。ウィルスは慢性感染を生じないと考えられる。
【0005】
HEVに関するウィルス病因学は、ためられた大便分離物による自然な感染によって説明されている。免疫電子顕微鏡法(IEM)試験によれば、感染者から得られた大便中に直径27−34nmを有するウィルス粒子が確認されている。ウィルス粒子は、地理的に異なる地域の感染者から得られた血清中で抗体と反応する。このことは単一ウィルス剤又はウィルスクラスが世界じゅうで観察されるHEV肝炎の大部分に関与していることを示唆する。抗体反応は、腸管外で伝達されるNANBウィルス(肝炎Cウィルス又はHCVとしても知られている)で感染されたヒトから得られた血清中にみられ、2つのNANB型の間で異なる特異性を示す。
【0006】
血清学的相違に加えて、2つのタイプのNANB感染は、明らかな臨床上の相違を示す。HEVは、特徴的に急性感染であり、しばしば熱及び関節炎、及び門脈炎症及び肝バイオプシー検体中に胆汁の停滞を伴う(アランカレ(Arankalle)。
【0007】
この症状は通常6週間以内で解消する。これに反してHCVは、症例の約50%で慢性感染を生じる。熱及び関節炎はめったに観察されず、そして炎症は、主に実質分布(Parenchymal distribution)を有する(クーロー(Khuroo)1980)。
【0008】
HEVの進行は、一般に健康人で一様でない、そして感染した人々の大部分はHCVで観察される慢性後遺症を有することなく回復する。しかしこの疾病の1つの特有の伝染性特徴は、妊婦に観察される、著しく高い死亡数である。これは多くの研究でほぼ10−20%であると報告されている。この発見は、多くの伝染病学の研究で観察されているが、現在説明されていないままである。これがウィルス病原性を招くかどうかは、ウィルスと免疫抑制された(妊娠)ホストの相互間で死にいたる影響、又は感受性栄養失調母集団の衰弱させられた胎児の健康への影響によって明らかにされねばならない。
【0009】
2つのウィルス剤も霊長目動物のホスト罹病性に基づいて区別することができる。HCVでなくHEVをマカクザル(Cynornolgus monokeys)に伝染することができる。HCVをHEVよりもチンパンジーに容易に伝染することができる(Bradley,1987)。
【0010】
初期の分野の特許出願に、HEVクローン及びHEVゲノム配列全体の配列が記載されている。HEVクローンから、HEVゲノムコード化域から導かれる組換え型ペプチドを産出する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(4.発明の要約)
(項目1)ヒトにE型肝炎ウィルス(HEV)に対する免疫を与えるのに使用されるワクチン組成物に於て、薬理学的に容認されるキャリヤー中で、HEVゲノムの第二開放型読み枠によってコード化されたカプシドタンパク質のC-末端42アミノ酸を含有するペプチドを有する、上記ワクチン組成物。
(項目2)ペプチドは、次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.13、 (ii) 配列 ID No.14及び (iii) 内部で一致している、配列 ID No.13と14の間の変異によって同定されるアミノ酸配列を含有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)ペプチドは、次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.15、 (ii) 配列 ID No.16及び (iii) 内部で一致している、配列 IDNo.15と16の間の変異 によって同定されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の組成物。
(項目4)ペプチドは、次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.17、 (ii) 配列 ID No.18及び (iii) 内部で一致している、配列 IDNo.17と18の間の変異 によって同定されるアミノ酸配列を含有する、項目1に記載の組成物。
(項目5)ペプチドは、次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.19、 (ii) 配列 ID No.20及び (iii) 内部で一致している、配列 IDNo.19と20の間の変異 によって同定されるアミノ酸配列を含有する、項目1に記載の組成物。
(項目6)ペプチド抗原をキャリヤータンパク質に共有結合する、項目1に記載の組成物。
(項目7)項目1に記載のワクチン組成物を、筋肉内注射によって患者に投与することから成る、E型肝炎ウィルスのヒトへの感染を阻害する方法。
(項目8)ワクチン組成物中のペプチドは、次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.13、 (ii) 配列 ID No.14、 (iii) 内部で一致している、配列ID No.13と14の間の変異、 (iv) 配列 ID No.15、 (v) 配列 ID No.16、 (vi) 内部で一致している、配列 ID No.15と16の間の変異、(Vii) 配列 ID No.17、 (viii) 配列 ID No.18、 (ix) 内部で一致している、配列 ID No.17と18の間の変異、 (x) 配列ID No.19、 (xi) 配列 ID No.20、及び (xii) 内部で一致している、配列 ID No.19と20の間の変異 によって同定されるアミノ酸配列を含有する、項目6に記載の方法。
(項目9)ワクチン組成物中のペプチドは、次の配列の1つ: (Vii) 配列 ID No.17、 (viii) 配列 ID No.18、及び (ix) 内部で一致している、配列ID No.17と18の間の変異 によって同定されるアミノ酸配列を含有する、項目8に記載の方法。
(項目10)ワクチン中のペプチドは、配列 ID No.17によって同定されるアミノ酸配列を含有する、項目9に記載の方法。
(項目11)E型肝炎ウィルス(HEV)感染を中和することができる抗体を含有するワクチン組成物であって、その作用は培養された第一ヒト肝細胞のHEV感染を遮断するその組成物の能力によって実証される、上記ワクチン組成物。
(項目12)次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.13、 (ii) 配列 ID No.14、 (iii) 内部で一致している、配列 ID No.13と14の間の変異、(iv) 配列 ID No.15、 (v) 配列 ID No.16、 (vi) 内部で一致している、配列 ID No.15と16の間の変異、 (Vii) 配列ID No.17、 (viii) 配列 ID No.18、 (ix) 内部で一致している、配列 ID No.17と18の間の変異、 (x) 配列 ID No.19、(xi) 配列 ID No.20、及び (xii) 内部で一致している、配列 ID No.19と20の間の変異 を含有するペプチドと免疫反応する抗体を含有する、項目11に記載のワクチン組成物。
(項目13)組成物中の抗体は、 (i) 配列 ID No.13、 (ii) 配列 ID No.14、又は (iii) 内部で一致している、配列 ID No.13と14の間の変異、及び(iv) 配列 ID No.15、 (v) 配列 ID No.16、又は (vi) 内部で一致している、配列 ID No.15と16の間の変異 によって同定される配列を含有するペプチドと免疫反応する、項目12に記載の組成物。
(項目14)患者に項目11に記載のワクチン組成物を、腸管外注射によって投与することから成る、ヒトへのHEV感染を防ぐ又はこの感染を治療する方法。
(項目15)抗体組成物は、次の配列の1つ: (vii) 配列 ID No.17、 (viii) 配列 ID No.18、及び (ix) 内部で一致している、配列ID No.17と18の間の変異 によって同定されるアミノ酸配列を含有するペプチドに対して免疫反応する抗体を含有する、項目14に記載の方法。
(項目16)抗体組成物は、次の配列の1つ: (i) 配列 ID No.13、 (ii) 配列 ID No.14、又は (iii) 内部で一致している、配列ID No.13と14の間の変異、及び (iv) 配列 ID No.15、 (v) 配列 ID No.16、 (vi) 内部で一致している、配列 ID No.15と16の間の変異を含有するペプチドと免疫反応する抗体を含有する、項目15に記載の方法。
(項目17)組成物中の抗体は、配列 ID No.15によって同定される配列を含有するペプチドと免疫反応する、項目16に記載の方法。
【0012】
1つの目的によれば、本発明はE型肝炎ウィルス(HEV)に対してヒトを免疫化するためのペプチドワクチン組成物に関する。この組成物は、薬理学的に容認されるキャリヤー及びHEVゲノムの第二開放型読み枠によってコード化された推定上のカプシドタンパク質のC-末端42アミノ酸を含有するペプチドを含有する。ペプチドは、次の配列の1つによって同定されるアミノ酸配列を含有するのが好ましい:
(i) 配列IDNo.13
(ii) 配列IDNo.14
(iii) 内部で一致している、配列IDNo.13と14の間の変異、
(iv) 配列IDNo.15
(v) 配列IDNo.16
(vi) 内部で一致している、配列IDNo.15と16の間の変異、
(vii) 配列IDNo.17
(viii) 配列IDNo.18、
(ix) 内部で一致している、配列IDNo.17と18の間の変異、
(x) 配列IDNo.19
(xi) 配列IDNo.20、及び
(xii) 内部で一致している、配列IDNo.19と20の間の変異。
【0013】
この目的に関連して、本発明は腸管外注射、たとえば筋肉内又は静脈内注射によって上記ペプチドワクチン組成物を患者に投与することによって、HEVによるヒトへの感染を防ぐ方法に関する。
【0014】
他の目的によれば、E型肝炎ウィルス(HEV)感染を中和するのに有効な抗体ワクチン組成物に関し、これは培養された第一ヒト肝細胞(Primary humanhepatocyte)のHEV感染を遮断するこの組成物の能力によって証明される。
【0015】
抗体組成物は、上記(i)-(xii)配列の1つを含有するペプチドと、及び好ましくは配列(i)-(iii)及び(iv-vi)に対応するペプチドと免疫反応する抗体を含有する。この目的に関連して、本発明は、腸管外注射によって上記抗体組成物を患者に投与して、ヒトへのHEV感染を予防又は治療する方法に関する。
【0016】
本発明のこれらの及び他の目的及び特徴は、次の本発明の詳細な説明が添付図面と共に説明される場合により十分に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
(I 定義)
下記の言葉は、ここで次の意味を有する。
【0018】
1.“腸内で伝達される非-A/非 B型肝炎ウィルス剤”、“E型肝炎ウィルス”、又は“HEV”は、ウィルスタイプ、又はウィルスクラスを意味し、これは(i)水中感染肝炎を生じ、(ii)マカクザルに伝染することができ、(iii)A型肝炎ウィルス(HAV)、B型肝炎ウィルス(HBV)、C型肝炎ウィルス(HCV)及びD型肝炎ウィルスを血清学的に区別し、そして(iv)ATCC寄託No.67717によって同定される大腸菌BB4中に運ばれるプラスミドpTZKF1(ET1.1)中に挿入される1.33KbcDNAと相同である。
【0019】
2.2種の核酸フラグメントはManiatis等、前記文献、第320頁−第323頁に記載されたハイブリダゼーション条件下で相互にハイブリッド化することができる場合、これらは相同である。しかしながら、次の洗浄条件:2×SCC、0.1%SDS、室温で2回、夫々30分間;次いで2×SCC、室温で2回、夫々10分間を使用して相同配列が、多くても約25−30%塩基対誤対合を含有することを同定することができる。相同核酸鎖は15−25%塩基対誤対合を含有するのが好ましく、さらに好ましくは5−15%塩基対誤対合を含有する。これらの相同性度合を、従来よく知られている様に、遺伝子ライブラリー(又は遺伝子材料の他の起源)からクローンの同定のためにより一層結合しない洗浄条件を使用することによって選択することができる。
【0020】
3.2種のアミノ酸配列又は2種のヌクレオチド(2つのヌクレオチド配列間の相同性に対する別の同定に於て)はかなり相同(この言葉はこの明細書中で使用されるのが好ましい)であり、それはこれらが、突然変異ギャップマトリックス及びギャップペナルティ−6又はそれ以上を有するプログラムALIGNを用いて共線スコア>5(標準偏差単位で)を有する場合である。デイホフ(Dayhoff),M.O.,“Atlasof Protein Sequence and Structure”(1972)、第5巻、National Biochemical Researeh Foundation,第101頁−第110頁、及びこの巻の増補2、第1頁−第10頁参照。2種の配列(又はその一部、好ましくは長さが少なくとも30個のアミノ酸)は相同であるのがより好ましく、それはそのアミノ酸が上記ALIGNプログラムを用いて最適に一列に並べられる時50%より大きい又は50%で同一である。
【0021】
4.DNAフラグメントが、ウィルス剤ゲノムの領域として同一又は実質上同一の塩基対配列を有する場合、これをHEVウィルス剤から導く。
【0022】
5.タンパク質が、ET-NANBウィルス剤から導かれるDNA又はRNAフラグメントの開放型読みの枠によってコード化される場合、HEVウィルス剤から導かれる。
【0023】
6.アミノ酸配列で約70%より大きく相同である2種又はそれ以上の公知のペプチド配列に於て、第三配列中の夫々のアミノ酸が公知配列中で少なくとも1種のアミノ酸と同一である場合、第三アミノ酸配列は公知配列と内部で一致している。
【0024】
(II.HEV抗原ワクチン)
筋肉内注射(i.m.)によって、HEV感染を防ぐのに有効なHEV抗原ワクチンを製造及び使用する方法を、この欄に記載する。
【0025】
(A.HEV遺伝子配列)
HEVゲノムクローン、及び種々のHEV鎖に対する全HEVゲノムに対応する配列が、公表された方法(タム(Tam)、ヤーブロー(Yabough))に従って及び上記特許出願中に記載されている様に得られる。簡単に、公知のHEV感染を有するマカクザルの胆汁から単離されたRNAをCDNAフラグメントとしてクローン化し、フラグメントライブラリーとなし、ライブラリーを判別ハイブリダゼーションによって感染及び非感染胆汁ソースから放射能標識されたCDNASに選別する。
【0026】
同定されたクローン中のHEVフラグメントのクローン化領域の塩基対配列を標準配列法によって決定する。図1に関して、陽性-センス極性のほぼ7.5キロベース(Kb)一本鎖及びポリアルデニル化RNAゲノムを有するウィルスである。
3種の開放型読み枠(ORFs)は、RNA-指向RNAポリメラーゼのドメイン及びヘリカーゼでポリペプチドをコード化するORF1、ウィルス推定上のカプシドタンパク質をコード化するORF2、及びORF3としてHEVに指定する。
【0027】
HEVのゲノム組織化は、その非構造遺伝子を5'末端で、そして構造遺伝子を3'末端で指定する。サイズがほぼ2.0Kbと3.7Kbの2種のサブゲノムポリアデニル化転写体を感染された肝臓中で検出し、その3'末端で7.7Kb-完全な長さのゲノム転写体を用いて共終結(co-tarminated)する。HEVのゲノム組織化及び発現計画は、RNAウィルスの新しい分類又は恐らくカリシウィルス科内の別個の属に対する原型ヒト病原体であろうと示唆される。
【0028】
図7に示される遺伝及びペプチド配列は、HEVのビルマ(B)(上部ライン)及びメキシコ(M)株(下部ライン)のORF-2及びORF-3領域に対応する。中央のラインに示される塩基は、保存ヌクレオチドを示す。比較で使用される番号づけシステムはビルマ配列に基づく。ビルマ配列はSEQ ID No.1を有し、メキシコ配列はSEQ ID No.2を有する。ORF2に対応する領域は、夫々ビルマ株及びメキシコ株に対してSEQ ID No.3及び4を有する。406.3−2に対応する領域は、夫々ビルマ株及びメキシコ株に対してSEQ ID No.5及び6を有する。SG3に対応する領域は、夫々ビルマ株及びメキシコ株に対してSEQ ID No.7及び8を有する。C2に対応する領域は、夫々ビルマ株メキシコ株に対してSEQ ID No.9及び10を有する。406.4−2に対応する領域は、夫々ビルマ株及びメキシコ株に対してSEQ ID No.11及び12を有する。
【0029】
(B.組換えペプチド抗原)
HEVのビルマ株及びメキシコ株の第三及び第二開放型読み枠に対応するアミノ酸配列を、夫々図8及び9に示す。示された配列リストは次の通りである: SEQ ID No.13及び14は、夫々ペプチド406.3−2(B)及び406.3−2(M)に対するアミノ酸配列に対応する。夫々のペプチドは、ORF2配列(図9)中に示されている様に、ORF2によってコード化されたカプシドタンパク質のC-末端領域中の42アミノ酸ペプチドである。
【0030】
SEQ ID No.15及び16は、夫々ペプチドSG3(B)及びSG3(M)に対するアミノ酸配列に対応する。夫々のペプチドは、HEVカプシドのカルボキシル324アミノ酸を含有する。
【0031】
SEQ ID No.17及び18は、夫々ペプチドC2(B)及びC2(M)に対するアミノ酸配列に対応する。夫々はHEVタンパク質のカルボキシルアミノ酸を含有する。
【0032】
SEQ ID No.19及び20は、夫々ビルマ株及びメキシコ株ORF2によってコード化された完全な推定上のカプシドタンパク質に対するアミノ酸配列に対応する。
【0033】
SEQ ID No.21及び22は、夫々406.4−2(B)及び406.4−2(M)に対するアミノ酸配列に対応する(図8)。これらはORF3によってコード化された33アミノ酸配列である。
【0034】
HEV抗原の種々の株から得られた上記特定化された配列と内部で一致している配列も予想される。これらは配列ID No.13、配列ID No.14及び配列ID No.13と14の間の内部で一致する変異、配列ID No.15、配列ID No.16、及び配列ID No.15と16の間の内部で一致する変異、配列ID No.17、配列ID No.18;及び配列ID No.17と18の間の内部で一致する変異、配列ID No.19、配列ID No.20;配列ID No.19と20の間の内部で一致する変異を含有する。
【0035】
たとえばHEV406.3−2抗原は、ビルマ(B)株及びメキシコ(M)株に対する下記の配列相同性を有する。配列比較中の単一ドットは、確認される高-確率又は“中立”アミノ酸置換を示す。空白は非-中立置換を示す。
【0036】
【数1】

これらの2つの配列と内部で一致する配列は、次の配列の1つを有する:
【0037】
【数2】

(式中X/Yはアミノ酸X又はアミノ酸Yのどちらかを示す。)
ビルマ株及びメキシコ株に対する、長さ124アミノ酸のORF3アミノ酸配列は、124アミノ酸中で87.1%同一性を有する。オーバーラップの659アミノ酸を有する、ORF2アミノ酸配列は、659アミノ酸中で93.O%同一性を有する。
【0038】
406.3−2(M)ペプチドを製造するために、例3に記載されたラムダgt11 406.3−2をグルタチオンS-トランスフエラーゼベクターpGEXにサブクローン化し、例3及びTam参考文献中に詳述した様に、3-2(M)抗原を発現する。
【0039】
406.3−2(B)抗原を、pBET1プラスミドのPCR増幅による上記のビルマSEQID No.5のPCR増幅によって製造することができる。このプラスミドは、ビルマ株HEV配列に対するORF2及びORF3にわたる2.3Kb挿入を含有する。プラスミドをNcoI部位を含有する5'プライマー及びBan HI部位を含有する3'プライマー(サカイ)を用いて、PCR増幅によって増幅する。増幅されたフラグメントをpGEXベクターのNcoI/Bam HI部位中に挿入し、例3に記載した様に大腸菌発現系中で発現させる。
【0040】
SG3(B)ペプチドを、HEV(B)の完全なORF2及びORF3領域を含有するgt10ファージBET1クローンプラスミドを用いて、5'Eco RI-NcoI及び3'Bam HIリンカーでSEQ ID No.7配列を先ず増幅して製造する。増幅されたフラグメントを、製造業者の指示に従ってブルースクリプトTMベクター(ストラタジーン、サンジェゴ、カルファルニア)のEcoRI/Bam HI部位に挿入する。ベクター増殖及び収穫の後、クローン化挿入物をNco I及びBam HIの消化によって遊離し、ゲルを精製する。精製されたフラグメントを、pGEXベクターのNcoI/Bam HI部位中に挿入し、例3に記載した様に大腸菌発現系中で発現させる。SG3(M)ペプチドを、SEQ ID No.7の代わりにSEQID No.8を用いて、同様に製造することができる。
【0041】
C2(B)ペプチドを、例5中に記載した様に製造する。簡単に、gt10ファージBETIプラスミドにEco RIを取込み、SEQ ID No.10 C2配列を遊離し、このフラグメントをpATH10trpE融合ベクター中に挿入し、組換え融合タンパク質が大腸菌ホスト中で発現する。
【0042】
C2(M)ペプチドを、実質上上述の様に、Eco RI部位を含有する5'プライマー及びBam HI部位を含有する3'プライマーを用いて、SEQ IDNo.10のPCR増幅によって製造することができる。増幅されたフラグメントをpGEXベクターのEco RI/Bam HI部位に挿入し、例3に記載した様に大腸菌発現系中で発現させる。
【0043】
カプシドタンパク質(B)を、Nco I部位を含有する5'プライマー及びBam HI部位を含有する3'プライマーを用いてgt10BET1プラスミドから、SEQID No.3のPCR増幅によって上述の様に実質上製造する。増幅されたフラグメントをpGEXベクターのNco I/Bam HI部位に挿入し、例3に記載した様に、大腸菌発現系中で発現する。カプシドタンパク質(M)を同様に製造する。
【0044】
406.4−2(M)ペプチドを製造するために、例3に記載したラムダgt11 406.4−2をグルタチオンS-トランスフェラーゼベクターpGEXにサブクローン化し、例3に詳述様に3−2(M)抗原を発現する。
【0045】
406.4−2(B)抗原を、Nco I部位を含有する5'プライマー及びBam HI部位を含有する3'プライマーを用いてPCR増幅によって上記のビルマSEQID No.11のPCR増幅によって製造することができる。増幅されたフラグメントをpGEXベクターのNco I/Bam HI部位に挿入し、例3に記載した様に大腸菌発現系中で発現する。
【0046】
選択された部分を含有する他のHEVペプチド、好ましくは406.3−2配列を含有するHEVカプシドタンパク質のC-末端部分を、上記HEVゲノム-挿入プラスミドを用いて、上記及び例3及び5に詳述した様に、所望の配列の増幅及び適する発現ベクターへクローン化することで同様に製造することができることが分る。
【0047】
組換えペプチドを製造するのに使用されるコード化配列を、上記及び他の文献(Tam)で詳述されたクローン化ベクターから又は合成ヌクレオチド合成から、PCRスライス法を用いて導き、公知方法に従ってオリゴヌクレオチドフラグメントをヌクレオチド配列形成に参加させる。
【0048】
(C.成熟カプシドタンパク質)
HEVペプチド抗原は、霊長類の肝臓から、好ましくはヒト又はマカクザルの肝臓から得られた第一肝細胞中で増殖された精製HEVウィルスからも得られる。培養のための第一霊長類肝細胞を製造方法及び培養中に長期間肝-特異的機能を保存するのに有効な培養地条件を、下記例1でヒト肝細胞に関して詳述する。
【0049】
培養増殖の3日後、細胞に、例2に詳述する様に、HEV-感染されたマカクザル大便プールの集団接種で感染させる(第4の経路)。細胞中に場殖するHEVウィルスの存在及びレベルを、間接的な免疫蛍光法によって測定することができる。たとえば第一細胞がマカクザルである場合、その細胞をヒトHEV抗-血清で免疫反応させ、次いでウサギ抗-ヒトIgG抗体と免疫反応させる。
【0050】
あるいは、HEVウィルスを、例2に詳述する様に開始cDNA形成を伴う選択的増幅法、及びPCR増幅によるHEV cDNA配列のPCR増幅によって検出し、測定することができる。ウィルス粒子を、培養培地中でHEV感染されたヒト肝細胞から、限外濾過によって30%ショ糖クッションを介してウィルスをペレット化することによって単離することができる。所望ならばペレット状ウィルスを10−40%ショ糖傾斜を介してゾーン遠心法によって更に精製することができる。
【0051】
可溶性培養-培地成分からウィルス粒子を分離する他の方法を使用することができる。たとえば澄明化された培養培地をサイズ-排除(size-exclusion)マトリックスに通し、サイズ排除にて可溶性成分を分離する。
【0052】
あるいは、澄明化された培養培地を、ウィルス粒子を保持するが溶質(非-粒子の)培養培地成分を通すことができる10−20nmの細孔サイズを有する限外濾過膜に通すことができる。
【0053】
本発明は、完全なHEVカプシドタンパク質中でグリコシル化及び他のポスト-翻訳変化が可能である。ウィルス粒子からのカプシド単離を、標準法、たとえばイオン交換及びサイズ-排除クロマトグラフィー及びHPLC精製によって、ウィルス粒子を溶解媒体、たとえば非-イオン界面活性剤溶液中で溶解した後に実施することができる。タンパク質を、たとえば抗-HEV抗血清から精製された抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。
(D.ワクチン組成物の製造)
上記の組換え又は完全なHEVカプシド又はカプシドフラグメントペプチド(HEVカプシド抗原)を、公知方法に従ってワクチン組成物に挿入し、注射される抗原の抗原性を増加する。
【0054】
ある組成物中、HEV抗原をキャリヤータンパク質、たとえばキーホールカサガイヘモシアニンに共有結合し、溶液の形で又はアジュバントと組合せた形で注射する。その代わりにHEV抗原を融合タンパク質の一部として製造する場合、タンパク質の非-HEV部分は、キャリヤータンパク質として役立つ。誘導された又は融合のタンパク質を薬学的に容認されるキャリヤー、たとえば溶液又はアジュバント、たとえば加工ミヨウバン中に入れる。
【0055】
その代わりに遊離のペプチドそれ自体、たとえばHEV C2ペプチドをミヨウバン中で生成するか又はアジュバントなしで使用する。適するアジュバント化ワクチンは、約1mgペプチド抗原/mgミヨウバンの好ましい抗原濃度を有し、注射1本につきミヨウバン80mgを越えてはならない。
【0056】
(III.抗原ワクチン法)
他の目的で、本発明は、患者に本発明のワクチン組成物を腸管外注射、たとえば筋肉内又は静脈内注射によって投与することによってE型肝炎ウィルスによるヒトへの感染を防ぐ方法に関する。上記方法に使用するための好ましいワクチン組成物は、HEV抗原が次の配列によって同定されるペプチド中に配列を含有するワクチン組成物である:
配列ID No.13、配列ID No.14、及び配列ID No.13と14の間の内部で一致する変異;配列ID No.15;配列ID No.16;及び配列ID No.15と16の間の内部で一致する変異;配列ID No.17、配列ID No.18;及び配列ID No.17と18の間の内部で一致する変異、配列ID No.19、配列ID No.20;配列ID No.19と20の間の内部で一致する変異。
【0057】
抗原ワクチン組成物を一連の接種で、たとえば4週間間隔で2−3本の筋肉内注射で投与する。
【0058】
例7中に詳述される方法で、マカクザルに変換されたミヨウバンアジュバント中に生成された又はアジュバント不含のC2融合タンパク質trpE-C2(B)を筋肉内注射する。動物4匹に、1ケ月の間隔で2本の注射としてミヨウバンとtrpE-C2(B)抗原を与える。別の動物2匹に同じ接種スケジュールでミヨウバンのみを与える。動物のどれも二次注射後4週間で抗-HEV血清抗体の存在を示さない。これは非融合C2HEV抗原を用いるウエスタンブロッティングによって又は別の蛍光抗体遮断検定法によって判別される。
【0059】
この段階で、実験動物4匹のうちの2匹に非-アジュバント化された、不溶性trpE-C2ペプチド抗原の三次接種を行う。4週間後、この動物は、ウエスタンブロットによって明らかなように抗HEV抗体を示す。これらの結果は、trpE-C2抗原はミヨウバンの不在下に投与した時により一層効果的であり、恐らくこれはミヨウバン共-沈殿処理の間の抗原のミヨウバン-変性のためであろうと考えられる。
【0060】
最後の接種1ケ月後、動物をHEVに対して高い感染性であることを前もって示す三次-排泄ヒト大便の静脈内注射によって又はメキシコ-株ヒトHEV大便サンプルによって攻撃する。接種後の選択された間隔で、動物から得られた血清を使用し、壊死及び肝細胞分解としてALT(アラニントランスフエラーゼ)レベルを測定する。肝バイオプシーサンプルも直接免疫検定法(FA)によってHEV抗原の存在を検定する。
【0061】
図2AはTrpE-C2の三次投薬量が与えられた動物のうちの1匹でビルマ株HEVウィルスによって感染後の肝ALTレベル期間に於ける変化を示す。観察される様に、感染後、71/2週間で増加するALTレベルの形跡はない。肝バイオプシーサンプルもHEV抗原の形跡を示さない。
【0062】
図2Bは、ビルマ株HEVで静脈内感染されたコントロール動物(ミヨウバンのみ注射)のHEV(B)感染後に測定されるALTレベルを示す。増加されたALTレベルは、ワクチン防御の不在下に期待される感染のレベルを示す。HEV抗原は肝バイオプシーサンプル中にも検出される。類似の結果がtrpE-C2ミヨウバン組成物の2本の注射を与えるが、三次ミヨウバン不含ワクチン接種を与えない動物中に上記の様に観察される。
【0063】
図3Aは、trpE-C2の三次投薬量を与えられた動物のうちの1匹中で、メキシコ株HEVウィルスで感染後、肝ALTレベルに於ける変化を示す。再び32日目に増加するALTレベルの形跡はない(32日目にこれに関係なく動物が死亡する。)肝バイオプシーもHEVの最小の形跡を示す。この結果は、あるHEV株に対して向けられる抗原ワクチンが、他のHEV株に対して防御免疫を与えることができるを実証する。
【0064】
図3Bは、HEVのメキシコ株で静脈内感染されたコントロール動物(ミヨウバンだけの注射)のHEV感染後に測定されるALTレベルを示す。高いレベルの感染(ALT活性)が観察される。同様な結果が、trpE-C2ミヨウバン組成物の2本の注射を与えるが、三次ミヨウバン不含ワクチン接種を与えない動物中に上述の様に観察される。
【0065】
報告されたワクチン接種の詳細を、例5中に記載する。
【0066】
(IV.ワクチン組成物)
もう1つの目的で、本発明は、中和HEV感染に有効な抗体ワクチン組成物に関し、これは培養されたHEV-感染性第一肝細胞中でHEV感染を遮断するその組成物の能力によって証明される。2つの典型的な第一細胞はヒト及びマカクザル細胞である。
【0067】
組成物中の抗体は、配列の1つ:配列ID No.13;配列ID No.14、及び配列ID No.13と14の間の内部で一致する変異;を含有するペプチドと免疫反応するのが好ましい。下記の様に、406.3−2抗原(M)に対して製造された抗体は、ヒト第一肝細胞中でHEV感染を遮断するのに有効である。
【0068】
SEQ ID No.13又は14のカルボキシ末端を含有するより大きいカプシドペプチド又はタンパク質と免疫反応する抗体も好ましい。これらは、特に配列IDNo.15;配列ID No1;及び配列ID No.15と16の間の内部で一致する変異を含有する。下記の様にヒト第一肝細胞のHEV感染を防ぐのに有効であるヒト血清はこれらの配列で規定されたSG3ペプチドと免疫反応する。
【0069】
配列ID No.17、配列ID No.18;及び配列ID No.17と18の間の内部で一致する変異によって規定されるtrpE-C2と免疫反応する抗体も好ましく、配列IDNo.19、配列ID No.20;配列ID No.19と20の間の内部で一致する変異によって規定されるような完全なカプシドタンパク質と免疫反応する抗体も同様である。
【0070】
たとえばウサギ又はヤギの様な適する動物を上記の特定化されたHEV抗原の1つで免疫化することによって製造される抗血清から、抗体がポリクロナール抗体として得られる。あるいは、ポリクロナール抗体がヒト又は他の霊長目動物HEV抗血清から得られる。抗血清から得られる抗HEVポリクロナール抗体を標準法に従って、たとえば部分的に精製された血清IgG分画を得るのによく行われる様に精製する又は一部精製する(たとえばAntibodies:A Laboratory Manual,1988,コールドスプリングスハーバー研究所参照)。あるいは抗-HEV抗体を、上記カプシド抗原の1つで誘導された固形支持体を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって精製された形で得られる。
【0071】
他の実施態様に於て、抗体はハイブリドーマセルラインによって分泌されたモノクロナール抗体である。ハイブリドーマセルラインを製造するために、免疫された動物、好ましくはマウス又はヒトからのリンパ球を、確立した方法(たとえばエンゲルマン、ゾラ)に従って適する不滅化融合パートナーで不滅化する。
【0072】
あるいはヒトモノクロナール抗体を、培養されたリンパ球から得られた軽い及び重いヒト抗-HEVIgG遺伝子を、適する発現ベクターに挿入する、組換え法によって産生し、これを使用して適するホストを共-感染(co-infect)する。ヒトリンパ球から軽い及び重いヒト抗-HEVIgGを得る及びクローン化する方法、及び共-感染されたホスト細胞中でクローン化遺伝子を発現させる方法は、公知である(larrick)。
【0073】
抗-HEV抗体を、一般に筋肉内、皮下又は静脈内経路による、適する注射用溶液に処方し、ワクチン組成物となす。
【0074】
(B.抗体-406.3−2抗体の中和活性)
上述の様に製造された抗体の中和可能性を実証するために、406.3−2(B)抗原に対する抗体を、培養されたヒト第一肝細胞中でHEV感染を遮断するその能力に関してテストする。
【0075】
第一肝細胞を、公表された処理に従って及び例1に詳述する様に、製造し、培養する。特有の培養条件は、特殊な肝細胞機能を損失することなく培養の間長期の細胞増殖を可能にし、これは例1に記載する様に最初の培養後数ケ月までに肝-特異性タンパク質、たとえば血清アルブミンを産生し、分泌する、細胞の連続能力によって明らかである。
【0076】
培養された細胞に、正常のヒト血清又はマカクザル大便調製物を接種する。細胞中でHEV感染を実証するために一組のHEV RNAの存在に関する感染後1−11日目で一組の逆転写酵素を用いてcDNA'sを生じること及びポリメラーゼ鎖反応(PCR)によってHEV-特異cDNAを増幅することを調べる。増幅されたフラグメントは、長さ551塩基対を有すると予想される。図4は、増幅されたHEV配列を検出するためのHEVORF2放射能標識されたプローブを用いて増幅された材料のサザンブロットを示す。
【0077】
結果を図4中に示す。レーン1−3はコントロールである。レーン4は正常(非-感染)血清を接種された細胞から得られる全部増幅された材料である。レーン5−11は夫々犬大便サンプルで感染3時間後、1日後、3日後、5日後、7日後、11日後の増幅された材料を示す。結果は、HEVが最初の感染1日後以内にヒト第一肝細胞中で増殖することを示す(レーン6)。5日後感染までHEV複製のレベルで時間-依存増加かあり(レーン7及び8)、これはその後減少する(レーン9−11)。非感染第一細胞から単離された全細胞RNA中にHEVの形跡はない。
【0078】
抗原ペプチド406.3−2(B)及び406.4−2(M)及び406.4−2(B)に対するウサギ抗血清を製造する。上述の様に、406.3−2ペプチドは、HEVカプシドタンパク質のカルボキシ末端域から、及び406.4−2ペプチドはHEVORF3によってコード化されたペプチドから由来する。HEV抗原の1種に対する前免疫ウサギ血清又はウサギ抗血清を犬大便接種原に1:20希釈で加え、抗体をウィルス調製物と共に培養する。次いで抗体-処理された大便サンプルを使用して、ヒト第一肝細胞を感染する。14日後、細胞をHEV感染に関して、RT/PCR/サザンブロット法によって調べるが、448塩基対増幅されたフラグメントを生じると予想されるプライマーを使用する。
【0079】
結果を図5に示す。この図4レーン中で1及び3は、ヒト前免疫血清と共に前もって培養された犬大便サンプルで感染された細胞から得られた増幅RNAを示す。図中の448塩基対バンドはHEV感染を示す。第二レーンは、抗-406.3−2(B)ウサギ抗血清にさらされた細胞に相当し、HEV感染のほぼ完全な不在を示す。レーン4は、抗406.4−2(M)ウサギ抗血清にさらされた細胞からの、増幅された材料を示す。抗体は、HEV感染に対してほとんど又は全く防御効果を示さない。
【0080】
(C.中和HEV抗血清)
本発明に従って、中和抗体の他の起源は、ヒトHEV抗血清であり、これは上記406.3−2抗原及びSG3抗原への免疫特異反応によって特徴づけられる。
【0081】
ヒトHEV抗血清の中和抗体特徴を調べるために、ヒト抗血清のパネルを、実質的に上述した様に培養された肝細胞のHEV感染を遮断する能力に関してテストする。10種のHEV陽性ヒト抗血清を下記表1に示し、この血清はインド、パキスタン、及びメキシコでHEV感染した患者から由来する。
【0082】
簡単に、培養された細胞を、正常のプール血清又はHEV抗血清で処理されたザメル(Samel)(ビルマ株)で処理されたHEV-陽性犬大便にさらし、PCR増幅及びHEV放射能標識されたプローブを用いるサザンブロットによってHEV-特異核酸配列の存在についてテストする。サザンブロットを図6中に示す。12種の血清サンプルのレーン番号を下記表1中に括弧で示す。図6から及び表1から明らかな様に、中和HEVに有効な抗血清は、インド10(レーン2)、インド18(レーン13)、インド210(レーン15)、インド265(レーン8)、パキスタン143(レーン9)、及びパキスタン336(レーン10)である。しかし他のヒト血清は、HEV感染を中和するその能力で極めて小さい効果(レーン11、メキシコ387C)又は全く効果のない(レーン4、インド29;レーン6、インド242;レーン7、インド259;レーン12、メキシコ387C〔IgG〕)ことを示す。陰性コントロールとして、正常ヒト血清プールは、全くHEVに対する中和活性を示さない。
【0083】
【表1】

数種のヒト抗血清を上述の406.3−3(M)、406.4−2(M)及び406.4−2(B)
に対するそのIgG及びIgM免疫反応性に関してテストする。IgM抗体との反応は早期-相感染しがちであり、一方IgGとの免疫反応性は、感染の早期及び後期段階両方を示す。反応をELISAテストで測定する。その結果を表2A及び2B中に示す。そこで“+”表示は、陽性反応を示す;表中の番号は示される特異組換えタンパク質に対するIgGの希釈力価を示す。
【0084】
【表1A】

【0085】
【表1B】

表からのデータは、中和可能なこれらのヒト抗血清がIgG ELISAによってHEV3−2(M)エピトープに対する抗体に陽性であることを示す。インド29は、HEV3−2(M)に対するIgGに陽性でなく、HEV感染を中和しない(レーン4)

【0086】
インド242及びインド259はHEV406.3−2(M)に対するIgGに陽性であるが、これらは早期段階HEV感染を示すHEV406.3−2(M)に対するIgMにも陽性である。したがってこれらの特別なサンプル中で、誘発されたHEV3−2(M)に対するIg(G)のレベルは、第一ヒト肝細胞のHEV感染を中和するのに十分である。
【0087】
HEV3−2エピトープに対する免疫反応性とHEV-感染したヒトの血清の中和活性との関連を更に調べるために、ウエスタンブロッテイングをこれらのヒト血清サンプル上で行い、表3に示される結果が得られる。この表中から明らかな様に、インド18、インド265及びHEV感染を中和することが前もって示される、特にインド210は、ウエスタンブロッティング分析でHEV406.3−2(M)に対して免疫反応性であり、その免疫反応性はその中和抗体と関連する。
【0088】
HEV406.3−2(M)へのこれらの血清の特異的免疫反応性に関する確認として、ウエスタン分析は、HEVビルマ株のORF-2の329カルボキシ-末端アミノ酸(ヌクレオチド6146-7129)を含有する、融合タンパク質SG3(B)に対して行われる。HEV406.3−2(M)及びSG3〔又はHEV406.3−2(B)〕に対するこれらの血清の免疫反応性は完全につり合う(表3)。
【0089】
【表3】

かくて中和抗体の適する起源を 提供するヒトHEV抗血清は、(a)406.3−2抗原、及び(b)SG3抗原との免疫反応性によって特徴づけられるものであり、両方の抗原はウエスタンブロット中での免疫反応性によって明らかである。すなわちそこではこれらの抗原がさらされて得られる立体配置中にあるからである。
【0090】
更に一般的に、好ましい本発明のワクチン組成物は、406.3-2抗原性ペプチド及びSG3抗原性ペプチドに対する免疫特異性抗体を含有する。ワクチン組成物は、腸管外注射のための適するキャリヤー中に免疫特異的抗体を含有する。
【0091】
抗体ワクチン組成物を、本発明の他の目的に従ってヒトに於けるHEV感染の予防又は治療に使用する。
【0092】
本発明の種々の方法及び組成物を示す例を以下に示すが、これによって本発明は限定されない。
【実施例】
【0093】
(材料)
酵素:DNAseI及びアルカリホスファターゼがベーリンガーマンハイムバイオケミカルス(BMB,インディアナポリス、IN)から得られる。EcoRI、EcoRIメチラーゼ、DNAリガーゼ、及びポリメラーゼIがニューイングランドバイオラボス(NEB,ベベリーMA);RNaseAがシグマ(セントルイス、MO)から得られる。
【0094】
他の試剤;ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、S-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスファターゼ(BCIP)、S-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-B-D-ガラクトピラノシド(Xgal)及びイソプロピルB-D-チオガラクトピラノサイド(IPTG)
がシグマから得られる。
【0095】
CDNA合成キット及び無作為なプライミング標識キットは、ベーリンガーマンハイムバイオケミカルス(BMB,インディアナポリス,IN)から入手できる。
【0096】
(例1)
(ヒト第一肝細胞の培養)
(A.肝細胞の単離)
肝細胞を、スタンフォード大学医療センターから得られたヒト肝臓から単離する。肝臓をその場で潅流するか又は研究所で潅流用くさびとして摘出する。最初の潅流を10分間、60m/分で、10mM HEPES(pH7.4)及び0.5mM〔エチレンビス(オキシエチレンニトリロ〕-テトラ酢酸で補足されたCa++-,Mg++-不含ハンクスのバランスのとれた塩溶液を用いて行う。潅流を更に20分間、10mM HEPES(pH7.4)及び100U/mlコラゲナーゼ(タイプI、シグマケミカル社、セントルイス、MO)で補足されたウィリアムス培地E(WME)を用いて続ける。
【0097】
潅流後、肝臓のうを微細な鉗子を用いて除き、肝細胞をコラゲナーゼ溶液中で穏やかに振とうして除去する。肝細胞懸濁液を、数枚のカーゼ層を通して濾過し、10%胎児ウシ血清(FBS)を含有するWMWの等容量と混合する。肝細胞を、50Xgで5分間遠心分離して沈降させ、5%FBSを含有するWME中に再懸濁する。肝細胞を沈降させ、更に2回同一方法で同一方法で再懸濁する。最終細胞調製物を、トリパンブルーを用いて生存率を調べる前に数枚のカーゼ層を通じて濾過する。細胞に、コラーゲンで前-被覆された60mmプリマリア(Primaria)プレート(ファルコン)につき密度2×106細胞で塗布する(コラボラティブリサーチ)。
【0098】
培養を37℃で5% CO2中で3時間培養し、付着させ、その後毎48時間ごと培地を血清不含処方に変える。血清一不含処方は、上記の様に増殖ファクター、ホルモン、10mMHEPES(pH7.4)、100μg/mlグルタミシンで補足されたWME-ベース培地である(ランホード)。
【0099】
(B.肝臓-特異性タンパク質の検出)
ヒト肝細胞培養を、種々の時間の間血清不含培地中で保ち、〔35S〕-メチオニンで24時間標識する。培地を1mM PMSF、1mM EDTA及び1%NP40を含有するように調整する。種々のプラズマタンパク質に特異的な抗体は、タンパク質A-アガロースビーズに結合し、ビーズをPBSで洗滌し、標識された培地のアリコートを、抗体-ビーズサンプレックスと共に16時間、4℃で培養する。ビーズを1%NP40を含有する緩衝液で3回洗滌し、免疫沈殿したタンパク質を2%SDSおよび2%2-メルカプトエタノールを含有するゲル電気泳動サンプルで溶離する。サンプルを傾斜SDS-PAGE(4ないし15%)及びオートラジオグラフィーによって分析する。
【0100】
(例2)
(第一ヒト肝細胞の試験管内HEV感染)
(A.ヒト肝細胞のHEV感染)
HEV-感染されたマカクザル#73大便プール(第四経路)を、第一ヒト肝細胞の感染用接種原として使用する。接種原の種々の量を血清不含培地(SFM)1ml中に希釈し、3時間の培養期間で培養液に加える。次いでこの溶液を新鮮なSFM 2mlで補足し、混合物全体を一晩培養する。次の日、細胞単層を、3回WME(10mM HEPES,pH7.4)で洗滌し、その後2日間隔で変わる新鮮なSFMに変える。
【0101】
(B.免疫蛍光染色法)
第一マカクザル肝細胞を単離し、上記の様にコラーゲン被覆されたカバーリップ(Coverlip)で組織培養プレート中に塗布する。カバーリップ上の細胞に、HEV-感染されたマカクザル#73大便プールか又はNIH正常ヒト血清で、最初の塗布3日後に感染させる。感染を2時間続ける。
【0102】
カバーリップ上の細胞を、90%アセトン中で室温で1分間固定する。次いでカバーリップを空気乾燥する。カバーリップを、1時間PBS中の1%カギ血清中で遮断し、PBSで3回洗滌し、HEV組換えタンパク質1L6,4−2及び6-1-4に対するウサギ抗血清の混合物と室温で3時間培養する。カバーリップを再びPBSで3回洗滌し、PBS-1%ヤギ血清中に希釈されたフルオレセインイソチオシアナート複合(FITC)ヤギ抗-ウサギIgG(H+L)(Zymed)と30分間反応させる。カバーリップをPBSで3回洗滌し、空気乾燥した後、FITCグリセロール溶液で量を増加して、蛍光顕微鏡下に調べる。
【0103】
(C.逆転写/ポリメラーゼ鎖反応(RT/PCR))
第一マカクザル肝細胞のHEV感染をRT/PCR検定法によって評価する。cDNA合成及びPCRに対するプライマーは、完全な長さのHEV cDNAのヌクレオチド配列に基づく(A.タム等)。プライマーHEV3.2SF1(nt6578-6597)及びHEV3.2SF2(nt 6650-6668)は、ウィルスゲノムのORF2域からセンス極性であり、そしてHEV3.2SR1(nt7108-7127)及びHEV3.2SR2(nt 7078-7097)は領域内でアンチセンスプライマーである。シエカー(Sherker)等の方法に従って一工程グアニジウム処理又はHE−感染上澄みを用いてHEV-感染細胞から全細胞RNAの抽出後、RNAサンプルのアリコートを、95℃で5分間熱−変性し、室温で5分間、次いで42℃で60分間逆転写を行う。この際RNasin(プロメガ)20単位、夫々デオキシリボヌチレオチド1mM(パーキン-エルマーセトス)の濃度で1×PCR緩衝液(パーキン-エルマーセトス)、及びHE3.2SR1プライマー2.5μMを含有する反応容量20μl中に、反応あたり200単位のMMLV-逆転写酵素(BRL)及びHEV3.2SR1プライマー2.5μMを使用する。次いで反応混合物を、95℃で5分間熱処理し、MMLV-逆転写酵素を変性する。
【0104】
cDNA合成生成物10マイクロリットルを、PCRのために50μlの最終容量でHEV3.2SF1プライマー0.5μM、Taq DNAポリメラーゼ1.25単位(AmpliTaq,パーキン-エルマーセトス)、及び1×PCR緩衝液と共に使用し、鉱油50μlで薄くおおい、PCR40サイクルをパーキン‐エルマーサーモサイクラー中で行う(95℃×1分;52℃×2分;72℃×30秒)。第一ランドRCR生成物10マイクロリットルを、内部PCRプライマーHEV3.2SF2及びHEV3.2SR2を含有する全容量59μl中でもう40サイクルの組み込まれたPCRを行う(95℃×1分;55℃×2分;72℃×30秒)。
【0105】
第一及び第二-ラウンドRCR生成物をアガロース電気泳動に付し、エチジウムブロマイド染色及びUV光線下に写真をとる。その結果を図4に示し、上述の様に表わされる。サザン転移を行い、フィルターをプライマー(nt6782-6997)を除いて〔32P-dCTP〕‐標識された内部試料HEVORF2-7でバイブリット化し、オートラジオグラフィーを行う。
【0106】
(例3)
(406.3-3及び406.4-2抗原の製造)
TZKF1プラスミド(ET1.1)、ATCC寄託番号67717をEcoRIで消化し、1.33KbHEV挿入を遊離し、これを線状プラスミドからゲル電気泳動によって精製する。精製フラグメントを、標準消化緩衝液(0.5MトリスHCl,pH7.5;1mg/mlBSA;10mM MnCl2)中に懸濁し、約1mg/mlの濃度となし、DNAseIを用いて室温で約5分間消化する。この反応条件は、先立っての換算法から決定される。この方法で、主に100-300塩基対フラグメントを製造するのに必要な培養時間が決定される。材料をエタノール沈殿の前にフエノール/クロロホルムで抽出する。
【0107】
消化混合物中のフラグメントを二本鎖末端化し、EcoRエリンカーと連結する。
生じるフラグメントを1.2%アガロースゲル上でPhi X 174/Hae III及びラムダ/Hind IIIサイズマーカーを使用して電気泳動(5-10v/cm)で分析する。100-300bp分画をNA45ストリップ(シライヒヤー(Schleicher)及びシュエル(Schuell))上で溶離し、次いでこれを1.5mlマイクロチューブ中に溶離液(1MNaCl,50mMアルギニン、pH9.0)を入れ、67℃で30−60分間培養する。溶離されたDNAをフエノール/クロロホルム抽出し、次いでエタノール2容量で沈殿させる。ペレットを、TE20ml(0.01MトリスHCl,pH7.5,0.001MEDTA)中に再懸濁する。
【0108】
(B.発現ベクター中でクローニング)
ラムダgtllファージベクター(ヒュー)が、プロメガバイオテク(Promega Biotec)(マジソン、WI)から得られる。このクローニングベクターは、ベータガラクトシダーゼ翻訳終結コドンかち上流に特有のEcoRIクローニング部位53塩基対を有する。コード配列5)から直接に又はcDNAの増幅後に与えられる、上記ゲノムフラグメントを、Eco RI-切断gtll 0.5−1.0mg、上記サイズのフラグメント0.3−3ml、リゲージョン緩衝液(上記)0.5ml、リガーゼ(200単位)0.5ml及び5mlまで蒸留水を混合してEcoRI部位に導入する。混合物を14℃で一晩培養し、標準法(Maniatis、第256頁-第268頁)に従って、試験内でパッケージングする。
【0109】
パーケージングされたファージを使用し、ケビンムーア博士から得た大腸菌株KM392に感染する。あるいはアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC #37197)から得られる大腸菌株Y1090を使用することができる。感染された微生物を塗布し、生じるコロニーをX-golの存在下に標準X-galサブスレートプラーク試験法(Maniatis)を用いてベーターガラクトシダーゼ活性(クリアープラーク)の損失を調べる。ファージプラークの約50%は、ベーターガラクトシダーゼ酵素活性の損失を示す(組換え体)。
【0110】
(C.HEV組換えタンパク質のスクリーニング)
HEV回復期抗血清が、メキシコ、ボルネオ、パキスタン、ソマリア、及びビルマで記録されるHEV発生の間感染した患者から得られる。血清はET-NANB肝炎の数人の他の患者のそれぞれから得た大便試料中でVLPsと免疫反応する。
【0111】
上記のファージストック約104pfuを感染下大腸菌KM392細胞のローン(Lawn)を150mmプレート上に広げ、培養し、5−8時間、37℃で逆向きにする。(invented)ローンをニトロセルロースシートでおおい、プラークから紙へ発現したHEV組換えタンパク質の転移を生じさせる。プレート及びフィルターを対応するプレート及びフィルター位置に合わせるために表示する。
【0112】
フィルターを2回、TBST緩衝液(10mMトリス、pH8.0、150mM NaCl、0.05%トウーン20)中で洗滌し、AIB(1%ゼラチンを有するTBST緩衝液)AIBで遮断し、抗血清(AIB中で1:50に希釈される、12−15ml/プレート)の添加後、一晩培養する。シートを2回TBST中で洗滌し、次いで酵素-標識された抗-ヒト抗体と接触させ、抗血清によって確認される抗原を含有するフィルター部位で標識された抗体を付着する。最終洗滌の後、フィルターをアルカリ性ホスファターゼ緩衝液(100mトリス、9.5、100mM NaCl、5mM MgCl2)5ml中でBCIP(4℃で保たれた50mg/mlストック液)16mlと混合されたNBT(4℃で保たれた50mg/mlストック液)33mlを含有する基質培地中に展開する。紫色が抗原産生のポイントを表わし、抗血清によって確認される。
【0113】
(D.スクリーニングプレート化)
前段階で測定された抗原産生域を約100-200pfuで82mmプレート上にくり返す。5−8時間培養を開始し、NBT-BCIP展開による上記段階をHEV抗体と反応することができる抗原を分泌するファージをプラーク精製するためにくり返す。同定されたプラークを取り出し、ファージ緩衝液中に溶離する(Maniatis、第443頁)。
【0114】
選択される2種のサブクローンは、上記配列の406.3-2及び406.4-2クローンである。これらの配列を、メキシコの大便から由来する増幅cDNAライブラリーから単離する。この欄で示す技術を用いて、これらのクローンによって発現したポリペプチドを、世界じゅうから得られる、多くの種々のヒトHEV陽性血清に対する免疫反応性についてテストする。下記表4中に示すように、8種の血清は、406.4-2によって発現するポリペプチドと免疫反応し、6種の血清は、406.3-2クローンによって発現するポリペプチドと免疫反応する。
【0115】
比較のために、表には種々のヒト血清と非構造ペプチドY2との反応性を示す。血清のただ1つがこのクローンによって発現するポリペプチドと反応する。非免疫反応性は、gtllベクターの正常発現生成物に対して見られない。
【0116】
【表4】

ここでY2は、HEVゲノムの第一開放型読み枠からのHEV配列157塩基対配列によってコード化された配列を示す。
【0117】
(E.406.3-2抗原を産生)
上記の406.3-2gtllプラスミドをEcoRIで消化し、5'フラグメント末端でNco I部位を及び3'フラグメント末端でBam HI部位を加えるリンカーの存在下で遊離されたHEVフラグメントを増幅する。増幅された材料をNcoI及びBam HIで消化し、製造業者の指示に従ってグルタチオン-S-トランスフエラーゼベクターpGEX発現ベクターのNco I/Bam HI中に挿入する。
【0118】
pGEXプラスミドを使用して、大腸菌ホスト細胞を形質転換し、pGEXベクターで十分に形質転換された細胞を、抗-HEVヒト抗血清を用いて免疫蛍光法によって同定する。
【0119】
(F.406.4-2抗原を産生)
上記406.4-2gtllプラスミドをEcoRIで有し消化し、遊離されたHEVフラグメントをPCRによって増幅し、増幅されたフラグメントを上記pGEX発現ベクターのNco I/Bam HI部位に挿入する。406.4-2のペプチド発現は、406.3-2融合ペプチドに対して示した発現と類似する。
【0120】
(G.抗体を製造)
上記の様に製造された、406.3-2(M)及び406.4-2(M)融合タンパク質を使用して、標準処理に従ってウサギを免疫し、HEV-特異性抗血清を発生する。
【0121】
(例4)
(抗3.2(M)抗体の中和活性)
(A.試験管内感染)
第一ヒト肝細胞がHEV感染及び複製を許すことを証明するために、細胞を正常ヒト血清(NIH正常ヒト血清プール)か又はHEV感染されたマカクザル大便調製物(犬#73)にさらす。感染40日後に、全細胞RNAを逆転写(RT)/ポリメラーゼ鎖反応(PCR)試験のために調製し、第一ヒト肝細胞の感染能力をHEVで評価する。結果は、第一ヒト肝細胞がHEV増殖を援助できることを示す(図4)。
【0122】
定量PCRをあてはめられないが、HEV-感染された第一ヒト肝炎細胞から単離された全細胞RNAは、32P-dCTP標識されたHEV-特異的プローブでのハイブリダゼーションの範囲によって予想される様に、高いレベルのウィルス複製を示す(レーン5)。正常ヒト血清プールで処理された第一ヒト肝細胞から単離された全細胞RNA中にHEVの形跡はない。RT/PCR試験に関する陰性コントロールとして、キャリヤーオーバー又は交差-汚染は検出されない(レーン1,2及び3)本来のHEV-感染マカクザル大便(犬#73)をPT/PCR試験での陽性コントロールとして使用する。
【0123】
(B.抗体の中和活性)
抗3-2(M)、-4-2-(M)の中和活性を調べるために、夫々のウサギ抗血清を、第一ヒト肝細胞のHEV感染用ウィルス接種原を用いて最終希釈1:20で使用する。希釈された抗体及びウィルス接種原を培養細胞の感染前に一緒に培養する。ウサギ抗-3-2-(M)は、HEV感染に対する中和活性の高いレベルを示す(図5、レーン2対レーン1)。極めて僅かな中和活性は、ウサギ抗体-4-2(M)中に観察される(レーン4対レーン3)。
【0124】
この結果は、HEV3-2(M)、しかしHEN4-2(M)又は4-2(B)ではない組換えタンパク質がHEV感染に対する保護抗体を誘発することができる中和エピトープをコード化することを示唆する。メキシコクローン3-2(M)及びビルマクローン3-2(B)がアミノIIIレベルで90.5%相同性(ヌクレオチトルベルで79.8%)を共有するという事実は、3-2(M)に対して集められた抗体が感染の許された細胞からメキシコ又はビルマ株のHEVを交差-中和又は交差-保護しなければならないことを示唆する。
【0125】
(例5)
(HEVに対するワクチン保護)
(A.trpE-C2ペプチドの製造)
HEVの1.8Kb3’末端部分に対応して2.3Kbインサートを含有するpBET1プラスミドを記載する(Tam)。プラスミドをEcoRIで消化し、約600bp及び1400bpのサイズを有する2種のHEVフラグメントを遊離し、そのうち1210bpはコード化配列を含有する。より大きいフラグメントを、電気泳動によって精製し、pATH10trpE融合ベクターのEco RIに挿入する。このベクターはT.J.ケルナー(Koerner)等から得られる(Department of Microbiology,UCLA)。組換えベクターを使用して、大腸菌DH52F'ホストを形質転換する。
【0126】
pATHC2からの組換えtypE-C2融合タンパク質を、デークマン(Dieckmann)等の処理の変化によって単離する。pATHC2プラスミドを含有する微生物を、トリプトファンを含有する増殖培地中に一晩増殖する。一晩培養物2mlを新たな増殖培地100ml中で培養し、37℃で更に4時間増殖する。微生物ブロースをトリプトファン不含の新たな増殖培地1lに加え、30℃で1.5時間増殖させる。インドールアクリルIII(1mg/ml)10mlを加え、増殖を更に5〜10時間30℃で続ける。微生物細胞を遠心分離によって集める。細胞ペレットをリゾチームを含有する低張溶液中に再懸濁し、微生物細胞壁を分解する。塩化ナトリウム及び界面活性剤NP-40を、懸濁液に加え、細胞の高張溶菌を生じる。溶菌された細胞溶液を高波処理する。溶液を遠心分離する。生じるタンパク質ペレットをダウンス(dounce)ホモジナイザーを用いて10mMトリスpH7.5約50ml中に再懸濁する。溶液中のタンパク質約75%はtrpE-C2タンパク質から成る。
【0127】
(B.ワクチンの製造)
加工ミヨウバンアジュバンドを、標準法に従って製造する。簡単に10%ミヨウバン懸濁液を1N NaOHでpH6.6に滴定し、次いで4℃で一晩撹拌する。懸濁液を、低速度の遠心分離によって澄明化し、上澄みをデカンテーションする。0.9%NaCl+1:20,000ホルマリンの少量を夫々のペレットに加え、渦によって懸濁する。
抗原ワクチン組成物を製造するために、上記のtrp E-C2タンパク質を0.9% NaCl溶液中で所望の最終抗原濃度に加える。
【0128】
非-アジュバンド化された不溶性trpE-C2ペプチドをA欄に上述した様に製造する。
【0129】
(C.ワクチン接種)
8901,8903,8910,9902,及び9904で示される6匹のマカクザルを、ワチクン接種調査に使用する。サル、8901,及び8902,8903、及び8910の4匹をミヨウバンアジュバンド化されたtrpE-C2組成物(C2ペプチドの約50μgを含有する)1.0mlで静脈内注射して免疫化する。他の2匹の動物にはアジュバンドのみを与える。1ケ月後、6匹の動物に最初と同様に二次ワクチン接種をする。
【0130】
二次ワクチン接種4週間後、動物から得られた血清を、融合していないC2タンパク質を用いてウエスタンブロッティングによって抗-HEV抗体に関してテストする。この段階で、動物8901及び8902の夫々に、非-アジュバント化、不活性trp-E-C2組成物(夫々約80μgtrpE-C2ペプチドの全IV投薬量)によって三次ワクチン接種を行い、両方の動物はウエスタンブロッティングによって4週間後抗HEVを示す。
【0131】
動物8901,8903,及び9002は、前もって高い感染を示す10%第三経路犬大便(ビルマ株)夫1mlでIVを攻撃する。動物80902,8910、及び9004は、証明された感染性ヒト大便、単離物#14、1mlでIVを攻撃する。この大便は犬で厳しい疾患を及びチンパンジーに穏やかな疾患を生じることが知られている。結果を上述した図2A、2B、及び3A、及び3Bに示す。
【0132】
本発明を特別な実施態様、方法、構成及び使用に関して記載したが、種々の変更及び変換を本発明から離れずに行うことができることは当業者にとって明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、HEVゲノム、ゲノム中の開放型読み枠、及びペプチド406.3−2,GS3、及びtrpE−C2に関する近似のコード域を示す。
【図2】図2A及び2Bは、trpE−C2 HEV抗原(2A)又はミヨバンコントロール(2B)で前もって免疫化された動物中でビルマ-株HEV大便サンプルでマカクザルに感染させた後に観察される血液ALTレベルを示す。
【図3】図3A及び3Bは、trpE−C2HEV抗原(3A)又はミヨバンコントロール(3B)で前もって免疫化された動物中でメキシコ-株HEV大便サンプルでマカクザルに感染させた後に観察される血液ALTレベルを示す。
【図4】図4は、非-感染ヒト第一肝細胞から得られたPCR-増幅されたRNAのサザンブロット(レーン4)及び3時間ないし11日へ時間を増加してHEVで感染させた第一肝細胞(レーン5-11)を示す。
【図5】図5は、伝染性ウィルスを正常の前もって免疫されたウサギ血清と共に(レーン1及び3)又はHEV抗原HEV406.3−2(B)(レーン2)及びHEV406.4−2(M)(レーン4)に対するウサギ抗血清と共に前もって培養するHEV-感染したヒト第一肝細胞から得られたPCR-増幅されたRNAのサザンブロットを示す。
【図6】図6は、正常ヒト血清(レーン1)及び一連の異なるHEV-陽性免疫血清の1つ(レーン2-12)と共に前もって培養されたHEV-感染されたヒト第一肝細胞から得られたPCR-増幅されたRNAのザザンブロットを示す。
【図7−1】図7は、HEVのビルマ株(上部ライン)及びメキシコ株(下部ライン)に関するHEVORF2及びORF3のヌクレオチド配列を示す。
【図7−2】図7−1の続き
【図7−3】図7−2の続き
【図7−4】図7−3の続き
【図8】図8は、HEVのビルマ株(上部ライン)及びメキシコ株(下部ライン)に関するORF3ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図9−1】図9は、HEVのビルマ株(上部ライン)及びメキシコ株(下部ライン)に関するORF2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図9−2】図9−1の続き
【図10】記載無し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体にE型肝炎ウイルス(HEV)に対する免疫を与えるのに使用されるワクチン組成物に於て、薬理学的に容認されるキャリヤー中で、HEVゲノムの第二開放型読み枠によってコードされたカプシドタンパク質のC−末端42アミノ酸を含有するペプチドを有する、ワクチン組成物であって、
ただし、上記ワクチンは、「哺乳動物にE型肝炎ウイルス(HEV)に対する免疫を与えるのに使用されるワクチン組成物に於て、薬理学的に容認されるキャリアー中で、次の配列の1つ:
(i)配列 ID No.17、
(ii)配列 ID No.18及び
(iii)内部で一致している、配列 ID No.17と18の間の変異配列、
によって同定されるアミノ酸配列からなるペプチドを含有する、組成物」ではない、
ワクチン組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが、次の配列の1つ:
(i)配列 IDNo. 13、
(ii)配列 IDNo. 14及び
(iii)内部で一致している、配列 ID No. 13と14の間の変異
によって同定されるアミノ酸配列を含有する、請求項に1記載の組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、次の配列の1つ:
(i)配列 IDNo. 15、
(ii)配列 IDNo.16及び
(iii)内部で一致している、配列 ID No.15と16の間の変異
によって同定されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、次の配列の1つ:
(i)配列 IDNo. 19、
(ii)配列 IDNo. 20及び
(iii)内部で一致している、配列 ID No. 19と20の間の変異
によって同定されるアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ペプチド抗原をキャリヤータンパク質に共有結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
E型肝炎ウイルス(HEV)感染を中和することができる抗体を含有するワクチン組成物であって、その作用は培養された第一ヒト肝細胞のHEV感染を遮断するその組成物の能力によって実証される、上記ワクチン組成物。
【請求項7】
次の配列の1つ:
(i)配列 IDNo. 13
(ii)配列 IDNo. 14、
(iii)内部で一致している、配列 ID No. 13と14の間の変異、
(iv)配列 IDNo. 15、
(v)配列 IDNo. 16、
(vi)内部で一致している、配列 ID No. 15と16の間の変異、
を含有するペプチドと免疫反応する抗体を含有する、請求項6に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、該組成物中の抗体は、
(i)配列 IDNo. 13、
(ii)配列 IDNo. 14、又は
(iii)内部で一致している、配列 ID No. 13と14の間の変異、及び
(iv)配列 IDNo. 15、
(v)配列 IDNo. 16、又は
(vi)内部で一致している、配列 ID No. 15と16の間の変異
によって同定される配列を含有するペプチドと免疫反応する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−36795(P2006−36795A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305068(P2005−305068)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【分割の表示】特願平5−512714の分割
【原出願日】平成5年1月19日(1993.1.19)
【出願人】(398055462)ジェネラブス テクノロジーズ,インコーポレイテッド (6)
【出願人】(598056238)アメリカ合衆国 (2)
【氏名又は名称原語表記】The United States of America
【Fターム(参考)】