E1ペプチド及びNS3ペプチドを含むHCVワクチン組成物
本発明は、HCV感染の予防的及び治療的処置において有用である免疫原性及びワクチン組成物に関する。より詳細には、前記組成物は、HCV外被ペプチドE1及びHCV非構造ペプチドNS3を含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、HCV感染の予防的及び治療的処置において有用である免疫原性及びワクチン組成物の分野に関する。より詳細には、前記組成物はHCV外被ペプチド及びHCV非構造ペプチドを含む。
【0002】
背景技術
HCVウイルスの約9.6kbの一本鎖RNAゲノムは、5’−及び3’−非コーディング領域(NCR)とこれらのNCRの間の約3000個のアミノ酸のHCVポリタンパク質をコードする約9kbの単一の長い読取り枠を含んでいる。
【0003】
HCVポリペプチドは、読取り枠からの翻訳とそれに続く結果として得られた約330kDaのポリタンパク質のタンパク質分解プロセシングによって生成される。ポリタンパク質のアミノ末端4分の1から構造タンパク質が誘導され、これには、カプシド又はコアタンパク質(約21kDa)、E1外被糖タンパク質(約31kDa)及び従来NS1と呼ばれていたE2外被糖タンパク質(約70kDa)が含まれる。HCVポリタンパク質の残りの部分から非構造HCVタンパク質が誘導され、これには、NS2(約23kDa)、NS3(約70kDa)、NS4A(約8kDa)、NS4B(約27kDa)、NS5A(約58kDa)、及びNS5B(約68kDa)が含まれる(Grakouriら1993年)。E2タンパク質は、p7タンパク質のC末端融合を伴って又はこれを伴わずに発生し得る(Shimotohnoら1995年)。最近、F(フレームシフト(Frameshift))タンパク質と呼ばれる約17kDaのタンパク質をコードし発現するコア領域内の代替的読取り枠が発見された(Xuら2001年;OuおよびXu米国特許出願公開第2002/0076415号明細書)。同じ領域内で、その他の14−17kDaのARFP(Alternative Reading Frame Protein)、A1〜A4のためのORFが発見され、少なくともA1、A2、及びA3に対する抗体が、慢性感染した患者の血清中で検出された(Walewskiら2001年)。
【0004】
HCVは、世界中の非A、非B型肝炎の主な原因である。急性HCV感染(全急性肝炎感染の20%)は慢性肝炎(全慢性肝炎症例の70%)及び末期肝硬変を導くことが多い。HCV慢性担体の最高20%が約20年の時限にわたり肝硬変を発生させ得、そのうち1〜4%/年の間の肝硬変を有する者は肝ガンを発生するリスクが高い(LaunerおよびWalker2001年、Shiffman1999年)。HCVを原因とする末期肝疾患の寿命を延長させるための1つの選択肢は肝移植である(世界中の全ての肝移植の30%はHCV感染によるものである)。
【0005】
肝臓損傷及びウイルス浄化の病理学的メカニズムについて得られる情報は限られたものにすぎない。HCVに対する有効な予防用及び/又は治療用ワクチンの開発に向けての第1歩として、防御免疫(B細胞又は液性応答及びT細胞又は細胞性応答)に関与するHCV成分を同定することに多大な努力が払われてきた。
【0006】
ウイルスの浄化及び疾病の消散又はウイルスの存続及び慢性疾患のいずれが起こっているかについての決定は、HCV感染の急性期の間の免疫応答にあると考えられている。感染の初期における免疫応答の強さ、広さ及び維持そして恐らくは特にT細胞/CTL応答が感染を消散させるために根本的重要性をもつ可能性があることを複数の研究が示唆していると思われる(Diepolderら1995年、1997年;Missaleら1996年;Cooperら1999年;Ericksonら2001年)。しかしながら、感染の自然発生的な消散は、慢性感染へと進化している患者の体内でHCVタンパク質及びHCV特異的T細胞に対する抗体の存続が検出可能であるにもかかわらず(ひいては免疫応答の検出が可能であるにも関わらず)、HCV感染者の約30%において発生しているにすぎない。
【0007】
HCV感染を治療するための選択肢は、現在非常に限られたものであり、通常、抗ウイルスリバビリン及びインタフェロン−α(又はペグインタフェロン(pegylated interferon)−α)の治療計画を含む。今日の最適な治療計画(ペグインタフェロン−αとリバビリン及び遺伝子型及びウイルス負荷に基づく療法の拡大との組合せ)は、結果として重度の副作用(患者の約25%は早期に療法を停止する)をもたらし、治療計画を完了できた者のうちでも、世界中で最も優勢な遺伝子型である遺伝子型1に感染している場合に、持続した応答を示すのは50%だけである(Mannsら2001年)。さらに、この療法は、HCVにおいて頻発する身体条件である貧血症、自己免疫疾患又はうつ病歴の弁別的特徴が予め存在している患者については勧められない。これらの及びその他の医学的合併症のため、最高75%のHCV患者が今日療法から除外されている(Falck−Ytterら2002年)。シェリング・プラウ(Schering−Plough)は、現行の療法に応答しなかった人の数は2010年までに100万人まで増加するものと計算した(J.Albrecht,Schering−Plough satellite symposium,EASL,Madrid,April 2002)。
【0008】
HCV感染を予防するための選択肢は、現在HCV抗体及び/又はウイルスRNAの存在について献血をスクリーニングすることに制限されている。しかしながら、未知の経路を介して、静脈内薬物ユーザーを介して又はHCVウイルスの担体であることに気づいていない人を介して、大量の新たなHCV感染が発生している。かくして、HCV感染の予防と治療の両方において有用である作用物質に対する明白かつ緊急なニーズが存在している。
【0009】
HCVワクチンは、DNAベースのワクチン、タンパク質又はペプチドベースのワクチンであり得、そうでなければDNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種の組合せを適用することもできる。
【0010】
DNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種の研究は、マウスの体内でコア(Huら1999年)及びE2(Songら2000年)について実施されてきた。コアDNAワクチン接種は主にIgM抗体産生を生成し、一方、タンパク質追加免疫は、IgG抗体レベルの増大をひき起こした。コアDNA−ワクチン接種により誘発されたT細胞増殖応答は、タンパク質追加免疫により増大させられた。コアタンパク質単独で注射を行なった場合CTL応答は観察されなかったが、DNA−初回免役ワクチン接種及びDNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種の両方において検出できた。E2については、DNAワクチン接種時点で惹起された抗体応答及びCTL応答の両方がタンパク質追加免疫により増大した。
【0011】
タンパク質ベースのHCVワクチンでの研究は、非常に限られたものであり、コア(Shiraiら1996年、Huら1999年)、E1(Lopez−Diaz de Cerioら1999年)、E2(Nakanoら米国特許出願公開第2002/0119495号;Houghtonら米国特許出願公開第2002/0002272号)、E1/E2又はE1/E2+コア(Draneら国際公開第WO01/37869号)及びNS5(Shiraiら1996年)のフラグメントでのマウスの免疫化を含んでいる。
【0012】
マウスは、NS5か又はヘルパーペプチド(HIVgp160タンパク質のフラグメント)に共有結合で付着されたNS5又はコアのいずれかで初回免疫され、その後CTL−応答は、NS5又はコアの存在下での再刺激の後に測定された。NS5−HIV融合タンパク質及びコアタンパク質についてはCTL応答が見られたが、NS5タンパク質単独については見られなかった。NS5−HIV融合タンパク質に対するCTL応答は、使用されたアジュバントに左右された。サポニンアジュバント(QS21)はCTL−応答を支援したが、一方で完全フロイントアジュバントはこれを支援しなかった。NS5に対するいかなる増殖応答も検出されなかった(Shiraiら1996年)。Huら(1999年)により概略的に示されている通りの条件下では、コアに対するいかなるCTL−応答も検出されなかった。
【0013】
E1−ペプチド(アミノ酸121−135)でのマウスの免疫化は、CD4+Th1細胞ならびに、アジュバントの不在下でも同様に得られた長期持続性CD8+CTL−応答(Lopez−Diaz de Cerioら1999年)を誘発した。
【0014】
N及びC末端部分が欠如し昆虫細胞によって産生されたE2ペプチドで予めマウスを免疫化した場合、T細胞増殖応答が指摘された。この応答は、E2ペプチドにQS21又はMPL−TDMをアジュバントとして付加した場合にのみ検出可能で、ミョウバンをアジュバントとした場合には検出できなかった。液性抗E2応答は、QS21をアジュバントとしたE2でマウスを免疫化した場合にのみ検出された(Nakanoら米国特許出願公開第2002/0119495号)。E1/E2ヘテロ2量体性複合体の注射を受けたマウスは、有意な抗E2抗体応答を増大させなかった。E1/E2にMF59をアジュバントとして用いた場合、又はコア−ISCOMを付加した場合、検出可能で同程度の抗E2抗体応答が観察された。E2に対する液性応答は、マウスをE2発現プラスミドで免疫化した場合(Houghtonら米国特許出願公開第2002/0002272号)に比べてE2ペプチド(MF59をアジュバントとする)で免疫化した場合にさらに高いものであった。
【0015】
以上の調査目的のワクチン接種は全て、HCV感染についての動物モデル系でないげっ歯類について実施された。従って、得られた結果は、マカクといった霊長類又はチンパンジー又はヒト(このうち後者の2つがHCV感染を受ける可能性が高い)に対し先験的に外挿することはできない。従って、より有利なのは、チンパンジーに対し実施される予防用及び治療用ワクチン接種又はHCV感染したヒトの治療用ワクチン接種である。マウス、マカク及びチンパンジーのE2DNA−ワクチン接種については、Fornsら(1999年、2000年)の2つの研究の中で記述された。液性免疫応答(マウス及びマカクの両方における)は、細胞質ゾル内で発現されたE2変異体の場合と比べ細胞表面上で発現されたE2変異体の場合により早く発生し、より強いものであった。さらにマカクにおける液性応答は、1mgのプラスミドDNAをマカクに注射したにも関わらず、マウスにおける応答よりも低いものであった(Fornsら1999年)。追跡研究においては、細胞表面をターゲティングしたE2DNA−ワクチンがチンパンジーに投与された(10mgのプラスミドDNA3回)。このワクチン接種は、100CID50(50%のチンパンジー感染用量)同種モノクローナルHCVでの抗原投与感染の時点で、殺菌性免疫を結果としてもたらさなかったが、急性HCV感染からの回復は明らかであった。興味深いことに、急性HCV感染からの回復は、以前にHCVに感染した確率が最も高いチンパンジーにおいてより急速であった(Fornsら2000年)。
【0016】
アカゲザルに、コア発現ワクチニアウイルス、LTK63をアジュバントとするコア又はISCOMをアジュバントとするコアが、Draneら(国際公開第WO01/37869号)の研究において注射された。コア発現ワクチニアウイルス又はISCOMをアジュバントとするコアでの免役化により、CD8+CTL−応答が惹起された。コア−ISCOMで免役化された動物のさらなる分析が、持続性CTL−応答、CD4+T細胞増殖応答ならびにコアに対する液性応答を明らかにした。
【0017】
E1/E2又はコア/E1/E2複合体でのチンパンジーの予防用ワクチン接種が、Chooら1994年、Houghtonら1995年中に記述されている。10CID50同種HCV(1a型のHCV−1)での抗原投与感染の時点で、抗原投与時にワクチンに対する最高の抗E1/E2−抗体応答をもつチンパンジーから感染が消散した。抗E2HVRI抗体レベルとウイルス抗原投与の成果のレベル間ではこのような相関関係は、E2−HVRIに対する結合抗体の中和の存在が報告されているにも関わらず、全く明らかではなかった(Ishiiら1998年、Shimizuら1994年)。再抗原投与の時点でそして異種HCV(もう1つの1a型分離株であるHCV−H)64CID50での最初の抗原投与を消散させたワクチン接種されたチンパンジーの再免役化の後、チンパンジーは、ウイルス血症は遅延されたものの、感染状態になった。
【0018】
E1タンパク質でのチンパンジーの予防用及び治療用ワクチン接種については、WO99/67285およびWO02/055548の中で記述されている。治療的効果(ALTレベル、検出可能なE2−抗原及び肝臓炎症の減少)が、同じサブタイプ内部での異種設定(もう1つの1b型HCV分離株での感染を受けたチンパンジーにおいて有効な1b型E1のワクチン)及び交差サブタイプ設定(1a型HCVでの感染を受けたチンパンジーにおいて有効な1b型E1のワクチン)の両方において観察された。同じワクチンは同様に、異種1b型HCV100CID50での抗原投与を受けたワクチン接種済みのナイーブなチンパンジーにおける急性HCV感染の消散をも結果としてもたらした。興味深いことに、チンパンジーで観察された免疫応答は、HCV感染を受けたヒト及び健康なボランティアにおいても見られた。
【0019】
以上のことから、HCVタンパク質により惹起された応答が、アジュバントのタイプ及びヘルパーペプチドの有無などのさまざまな因子によって左右されるという結論を下すことができる。免役応答も同様に、ペプチドの組合せによる惹起とペプチド単独での惹起の間で異なっている。ヒト以外の霊長類では、これまで、コア(アジュバントに応じた免役応答、予防的及び治療的効果は現在不明)、E1/E2又はコア/E1/E2タンパク質複合体(同種HCVに対する予防的防御)又はE1(予防的及び治療的効果)でのみ、調査目的のワクチン接種が実施されてきた。これらの調査目的のワクチン接種研究は、有望なものであったが、HCVタンパク質組合せに基づくワクチン組成物は、より広い免役応答ひいてはHCV感染に対する改善された予防的及び/又は治療的効果をもたらす結果となり得る。
【0020】
発明の概要
1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCV免疫原性組成物に関する。前記HCV免疫原性組成物は、少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を有効量含むHCVワクチン組成物であり得る。前記HCVワクチン組成物は、それぞれ予防的及び/又は治療的有効量の少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含む予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物であり得る。
【0021】
特に、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物はHCV E1外被ペプチド及びHCV NS3非構造ペプチドを含む。
【0022】
1つの実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、アミノ酸192−326にわたるHCVポリタンパク質領域で構成されているHCV E1ペプチド及びアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含んでいるHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、アミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域、例えばアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドはアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域及びアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含むこともできる。さらなる実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、配列番号1により定義されるHCV E1ペプチド及び配列番号2により定義されるアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含むHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、例えば配列番号4により定義されるアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域といったような、配列番号3により定義されるアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドは、同様に、配列番号2及び配列番号3又は配列番号4により定義されるHCV NS3ペプチドをも含み得る。特に、かかるHCV NS3ペプチドは配列番号5により定義され得る。
【0023】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、前記HCVペプチドが所望によりスペーサを介してリンクされている、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0024】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、かつ、
− 前記HCVペプチドが合成ペプチド又は組換え型ペプチドであり、かつ/又は
− 前記HCVペプチドの少なくとも1つのシステインが可逆的又は不可逆的に遮断されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドの少なくとも1つのシステインがアルキル化されており、かつ/又は、
− 前記HCV非構造ペプチドの少なくとも1つのシステインがスルホン化されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドがウイルス様粒子として前記組成物に添加されている、
HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0025】
もう1つの態様においては、本発明は、そのいずれかが、任意の医薬上許容される担体の他に、
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチド、又は
− 少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、又は
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、
を含んでいる、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物の、
− 前記組成物のいずれかに含まれているHCVペプチドに対する液性応答を哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は
− CD4+T細胞増殖応答、及び/又はCD8+細胞毒性T細胞応答及び/又はサイトカインの産生増加であり得る、前記組成物のいずれかの中に含まれるHCVペプチドに対する細胞応答を、哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性HCV感染に対する哺乳動物の予防的防御のため、及び/又は
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性的にHCVに感染した哺乳動物を治療的処置のため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物において肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 全体イシャク(Ishak)評点に従って少なくとも2点だけ慢性HCV感染哺乳動物内の肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はガンマ−グルタミルペプチダーゼであり得る血清肝酵素のHCV感染哺乳動物体内の活性レベルを低減させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内のHCV RNAレベルを低減させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症の進行を減速させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症を低減させるため、
の使用を含んでいる。
【0027】
前記哺乳動物は明らかにヒトであり得る。
【0028】
特に、本発明に従った使用は、哺乳動物又はヒトに対し前記組成物のいずれかを投与することを含む、前述の効果のうちの少なくとも1つを得るための方法である。
【0029】
本発明のその他の態様は、DNAワクチン及び本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物を投与することを含む、HCV−ナイーブな又はHCV感染した哺乳動物にワクチン接種する方法に関する。
【0030】
発明の詳細な記述
本発明に導いた研究作業は、HCV外被タンパク質、より詳細にはE1及びHCV非構造タンパク質、より詳細にはNS3を、共に同じアジュバントを伴う処方の形で同時注射することで、ヒト以外の霊長類においてHCV抗原の両方に対する強い細胞性応答及び強い液性応答が惹起されるという予想外の効果を結果としてもたらした。この免役応答は、これまで調査目的のHCVタンパク質ベースの免疫原性/ワクチン組成物で得られた免役応答に比べて広いものである。従って、観察された広い免役応答は、HCV外被タンパク質抗原及びHCV非構造タンパク質抗原を、例えば治療的又は予防的目的のためワクチン組成物として哺乳動物の体内で使用可能な単一の免疫原性組成物の形で処方する途を開くものである。
【0031】
かくして1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCV免疫原性組成物に関する。前記HCV免疫原性組成物は、有効量の少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCVワクチン組成物であってよい。前記HCVワクチン組成物は、それぞれ予防的及び/又は治療的有効量の少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含む予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物であり得る。
【0032】
「免疫原性の」という語は、免役応答の少なくとも1つの要素を産生する1つのタンパク質又は物質の能力を意味する。免役応答は、抗原の導入に対する動物の体の全体的応答であり、抗体形成(液性応答又は液性免疫性)、細胞性応答、過敏性又は免疫学的寛容を含めた多数の要素を含んでいる。細胞免疫は、抗原により惹起される細胞性応答を意味し、Tヘルパー細胞及び/又はCTL応答を含む。「抗原」という語は、ペプチド、タンパク質又はその他の物質が抗原性又は免疫原性をもつ能力を意味する。抗原は少なくとも1つのエピトープを含むものと理解される。
【0033】
「抗原性の」という語は、惹起された液性及び/又は細胞性免役応答によって認識されるタンパク質又は物質の能力を意味する。標準的には、タンパク質又は物質の抗原性の質は、インビトロアッセイによって決定される。液性応答については、例えばタンパク質又は物質が惹起された抗体により認識され得、かかる認識が例えば比色分析、蛍光検出又は放射能検出又は沈降物形成により測定可能である例えばELISA、ウェスタンブロット、RIA、免疫沈降アッセイ又は任意の類似のアッセイの中で、惹起された抗体によって認識される場合に、そのタンパク質又は物質は抗原性であると言うことができる。細胞性応答については、タンパク質又は物質は、例えば免役応答が惹起された個体から引出されたT細胞の存在下でそれがインキュベートされ例えば増殖応答、細胞溶解応答、サイトカイン分泌によりT細胞による認識が測定される、例えばT細胞増殖アッセイ、51Cr−放出アッセイ、サイトカイン分泌アッセイなどにおいて、惹起されたT細胞応答によってそれが認識される場合に、抗原性であると言うことができる。抗原性のタンパク質又は物質はそれ自体免疫原性であり得るが、免疫原性となるために付加的構造を必要とする可能性もある。
【0034】
「免疫原性組成物」というのは、免疫原性があるとされる組成物、すなわち、免役応答をひき起こす能力をもつ動物の体内に導入された時点で自らの中に含まれた抗原に対する免役応答の少なくとも1つの要素を惹起する能力を有する抗原を含む組成物である。免疫原性組成物は、明らかに2つ以上の抗原、すなわち例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上、例えば最高15、20、25、30、40又は50個以上の全く異なる抗原といった複数の抗原を含み得る。特に、本発明の免疫原性組成物は、抗原が、HCV外被タンパク質抗原及び/又はHCV非構造タンパク質抗原といったようなHCV抗原であるHCV免疫原性組成物である。
【0035】
「ワクチン組成物」というのは、以下の効果のうちの1つ又は両方をひき起こすのに充分な広さ及び強さをもつ免役応答を惹起する能力をもつ免疫原性組成物である。
− 宿主の体内にすでに存在しそれに対してワクチン組成物がターゲティングされている病原体の増幅に対する安定化効果、及び
− 宿主の体内に新たに導入された病原体が、この病原体に対してターゲティングされたワクチン組成物での免疫化の後に前記宿主から消散される速度を増大させる効果。
【0036】
ワクチン組成物は明らかに、宿主内にすでに存在する病原体の生存に対し負の効果を及ぼすのに充分な広さ及び強さを有する、又は新たに導入された病原体によってひき起こされる疾病症候を免疫化済み宿主が発生させないようにするのに充分な広さ及び強さを有する免役応答をひき起こすこともできる。特に、本発明のワクチン組成物は、病原体がHCVであるHCVワクチン組成物である。
【0037】
1つのワクチン組成物内の抗原の「有効量」は、免役応答を惹起するために必要かつ充分である抗原の量として言及されている。当業者にとっては、ワクチン組成物によって想定されている効果をひき起こすのに充分な広さ及び強さを有する免役応答には、ワクチン接種スキーム又はワクチン接種計画の一部分として(時間的に)連続するワクチン組成物での免疫化が必要となる可能性がある、ということは明白であろう。「有効量」は、処置を受ける個体の健康状態及び体調、処置を受ける個体の分類学的グループ(例えばヒト、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の有効な免役応答を開始する能力、望まれる防御の度合、ワクチンの処方、処置担当医師の査定、感染性病原体の菌株及びその他の関連因子に応じて変動し得る。この量は、日常的試行を通して決定可能な比較的広い範囲の中に入ると予想される。通常、この量は0.01〜1000μg/用量、より詳細には0.1〜100μg/用量まで変動することになる。投薬治療は、単一用量計画又は多重用量計画であってよい。ワクチンは、その他の免疫調節作用物質と併用して投与してもよい。
【0038】
「予防用ワクチン組成物」というのは、防御免疫すなわち予防用ワクチン組成物で免疫化された宿主の抗原投与の時点で疾病の発生を防止する免疫を提供するワクチン組成物である。特にHCVについては、予防用HCVワクチン組成物は、抗原投与HCV感染を急速に消散させるのを助けかつ/又は抗原投与HCV感染が慢性感染にまで進行するのを防ぐ防御免疫を提供する能力をもつワクチン組成物として理解されるべきである。かくして、本発明に従った予防用HCV組成物でのワクチン接種により、加速化されたHCVウイルス浄化又は加速化されたHCV抗原投与感染制御が想定される。
【0039】
予防用ワクチン組成物内の抗原の「予防的有効量」は、防御免疫の発生を可能にする免疫応答を惹起するのに必要かつ充分な抗原の量として言及されている。当業者にとっては、予防用ワクチン組成物により想定された効果をひき起こすのに充分な広さ及び強さをもつ免役応答が、予防用ワクチン組成物での(時間的に)連続する免疫化を要求する必要があるかもしれない、ということは明白であろう(「有効量」も参照のこと)。
【0040】
「治療用ワクチン組成物」は、治ゆ的免役応答、すなわちすでに確立した病原体の感染に付随する疾病症候の逆転をもたらす能力をもつか又は少なくともその中止をもたらす能力を有する免役応答を提供するワクチン組成物である。特にHCVについては、治療的HCVワクチン組成物というのは、血中の例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はγ−グルタミルペプチダーセ(γ−GT)といった血清肝酵素の活性レベルを低減させる能力及び/又はHCV RNAレベルを低減させる能力及び/又は肝疾患を低減させる能力及び/又は肝線維症を低減させる能的及び/又は肝線維症の進行を減速させる能力をもつワクチン組成物として理解されるべきである。
【0041】
治療用ワクチン組成物内の抗原の「治療上の有効量」は、治ゆ的免役応答の発生を可能にする免役応答を惹起するのに必要かつ充分な抗原の量として言及されている。当業者にとっては、治療用ワクチン組成物により想定された効果をひき起こすのに充分な広さ及び強さをもつ抗原性又は免疫原性応答が治療用ワクチン組成物での(時間的に)連続する免疫化を要求する必要があるかもしれない、ということは明白であろう(「有効量」も参照のこと)。
【0042】
特に、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、HCV E1外被ペプチド及びHCV NS3非構造ペプチドを含む。HCV外被ペプチド及びHCV非構造ペプチドのその他の組合せも、除外されるわけではなく、例えばE1とNS2、E1とNS4、E1とNS4A、E1とNS4B、E1とNS5、E1とNS5A、E1とNS5B、E2とNS2、E2とNS4、E2とNS4A、E2とNS4B、E2とNS5、E2とNS5A及びE2とNS5Bを含む。
【0043】
「HCV外被ペプチド」というのは、本明細書では、免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物の中に含まれた場合、それぞれ免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物について定義された通りの免役応答を惹起する能力をもつあらゆるHCVE1又はE2タンパク質、そのあらゆるフラグメント又はそのあらゆる誘導体を意味する。より詳細には、免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物は、それぞれ本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、治療用HCVワクチン組成物又は予防用HCVワクチン組成物である。
【0044】
「HCV非構造ペプチド」というのは、本明細書では、免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物の中に含まれた場合、それぞれ免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物について定義された通りの免役応答を惹起する能力をもつあらゆるHCVNS2、NS3、NS4又はNS5タンパク質、そのあらゆるフラグメント(例えばNS4A、NS4B、NS5A、NS5B)又はそのあらゆる誘導体を意味する。より詳細には、免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物は、それぞれ本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、治療用HCVワクチン組成物又は予防用HCVワクチン組成物である。
【0045】
HCVペプチドの誘導体というのは、修飾されたアミノ酸(例えばビオチン又はジゴキシゲニン、非天然アミノ酸と接合されたもの)を含むHCVペプチド、1つ以上のアミノ酸の(天然に発生するHCV配列との関係における)挿入又は欠失を含むHCVペプチドならびに融合タンパク質を含むよう意図されている。融合タンパク質は、全く異なる2つのHCVペプチド間(以下参照)、又はHCVペプチドとB細胞エピトープ、T細胞エピトープ、CTLエピトープ又はサイトカインといったようなもう1つのペプチド、又はタンパク質の間で形成され得る。その他のペプチド又はタンパク質の融合パートナとしては、ウシ血清アルブミン(album)、キーホールリンペットヘモシアニン、ダイズ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ又はジヒドロ葉酸還元酵素又は(ヒスチジン)6−tag、タンパク質A、マルトース結合タンパク質、Tag・100エピトープ、c−mycエピトープ、FLAG(登録商標)−エピトープ、lacZ、CMP(カルモジュリン結合ペプチド)、HAエピトープ、タンパク質Cエピトープ又はVSVエピトープといった異種エピトープが含まれる。その他のタンパク質としては、ヒストン、1本鎖結合タンパク質(ssB)及び未変性及び工学処理済み蛍光タンパク質例えば緑色、赤色、青色、黄色、シアン蛍光タンパク質が含まれる。
【0046】
HCV外被タンパク質及びHCV非構造タンパク質は、アミノ酸192−383(E1の場合)、アミノ酸384−809又は384−746(それぞれE2−p7及びE2の場合)、アミノ酸810−1026(NS2の場合)、アミノ酸1027〜1657(NS3の場合)、アミノ酸1658−1711(NS4Aの場合)、アミノ酸1712〜1972(NS4Bの場合)、アミノ酸1973〜2420(NS5Aの場合)、及びアミノ酸2421〜3011(NS5Bの場合)にわたるHCVポリタンパク質領域に対応する。これらのタンパク質終点が近似であること(例えばE2のカルボキシ末端は、例えばアミノ酸730、735、740、742、744、745、好ましくは746、747、748、750、760、770、780、790、800、809、810、820で終結する730〜820のアミノ酸領域内のどこかに存在し得る)を理解すべきである。
【0047】
1つの実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、アミノ酸192−326にわたるHCVポリタンパク質領域で構成されているHCV E1ペプチド及びアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含んでいるHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、アミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域、例えばアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドはアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域及びアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含むこともできる。さらなる実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、配列番号1により定義されるHCV E1ペプチド及び配列番号2により定義されるアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含むHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、例えば配列番号4により定義されるアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域といったような、配列番号3により定義されるアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドは、同様に、配列番号2及び配列番号3又は配列番号4により定義されるHCV NS3ペプチドをも含み得る。特に、かかるHCV NS3ペプチドは配列番号5により定義され得る。
【0048】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、前記HCVペプチドが所望によりスペーサを介してリンクされている、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0049】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、かつ、
− 前記HCVペプチドが合成ペプチド又は組換え型ペプチドであり、かつ/又は
− 前記HCVペプチドの少なくとも1つのシステインが可逆的又は不可逆的に遮断されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドの少なくとも1つのシステインがアルキル化されており、かつ/又は
− 前記HCV非構造ペプチドの少なくとも1つのシステインがスルホン化されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドがウイルス様粒子として前記組成物に添加されている、
HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0050】
本発明に従った免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物の中に含まれるHCVペプチドは、別々の非リンク型ペプチドとして存在し得る。あるいはまた、前記HCVペプチドは、所望によりスペーサを介してリンクされていてよい。
【0051】
前記リンケージは、1つのペプチドのアルファアミノ基及びもう1つのペプチドのアルファカルボキシ基が関与する正規のペプチド結合を介して2つ以上のペプチドがリンクされている、無スペーサ線形融合タンパク質の形をとり得る。
【0052】
あるいはまた、2つのペプチドをリンクするためにペプチドスペーサが使用される。ペプチドスペーサは、リンクすべきHCVペプチドのいずれが一方に天然にリンクされていないHCVペプチド又は非HCVペプチドであり得る。このようなスペーサの標準的な例としては、nが1〜5の範囲内にあるものとしてG4C(G4S)n又は(G4S)nが考えられる(パーク(Park)ら、2001年、フランケル(Frankel)ら、2000年)。
【0053】
あるいはまた、前記リンケージは、例えば天然に発生するかつ/又は天然に発生しないシステインの間のジスルフィド結合を介して又は例えば2つ以上のペプチドのうちの少なくとも1つの中に存在する天然に発生する又は天然に発生しないリジンのイプシロンアミノ基が関与するペプチド結合を介して前記2つ以上のペプチドがリンクされている分枝融合タンパク質の形をとっている。
分離したペプチドの組換え型産生及び分枝融合ペプチドの合成的構築を除外することなく合成的手段を介して分枝融合ペプチドを得ることができるということが明らかになるだろう。線形融合ペプチドならびに分離した非リンク型ペプチドは、合成的手段及び/又は組換え型産生を介して得ることができる。
【0054】
明らかに、本発明に従った免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物中に含まれる2つ以上のHCVペプチドは、「担体」、例えば複数のペプチドを共有結合又はイオン結合する能力をもつ活性化された樹脂の粒子といったような非ペプチドスペーサを介してリンクされた状態で発生し得る。
【0055】
スペーサは同様に、その表面上及び/又は粒子の内部キャビティ内でHCVペプチドを吸収する能力をもつ粒子化合物又は担体をも含んでいる。
【0056】
HCV外被ペプチド又はHCV非構造ペプチドはいずれも、示されているように、合成由来すなわち有機化学を応用して合成されたものであっても、又組換え由来であってもよい。HCVペプチドは、組換え型ウイルスの感染を受けた哺乳動物又は昆虫の細胞、酵母細胞又は細菌細胞の中での発現により産生可能である。
【0057】
より詳細には、前記哺乳動物細胞には、HeLa細胞、Vero細胞、RK13細胞、MRC−5細胞、チャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞及びPK15細胞が含まれる。
【0058】
より詳細には、前記昆虫細胞には、Sf9細胞といったようなSpodoptera frugiperdaの細胞が含まれる。
【0059】
より詳細には、前記組換え型ウイルスには、組換え型ワクシニアウイルス、組換え型アデノウイルス、組換え型バキュロウイルス、組換え型カナリア痘瘡ウイルス、組換え型セムリキ森林熱ウイルス、組換え型アルファウイルス、組換え型アンカラ修飾ウイルス及び組換え型アビポックスウイルスが含まれる。
【0060】
より詳細には、前記酵母細胞には、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces kluyveri又はSaccharomyces uvarumといったSaccharomyces、Schizosaccharomyces pombeといったSchizosaccharomyces、Kluyveromyces lactisといったKluyveromyces、Yarrowia lipolyticaといったYarrowia、Hansenula polymorphaといったHansenula、Pichia pastorisといったPichia、コウジカビ(Aspergillus)種、Neurospora crassaといったNeurospora、又はSchwanniomyces occidentalisといったSchwanniomycesの細胞、又はこれらのいずれかから誘導された突然変異体細胞が含まれる。より詳細には、本発明に従ったHCVペプチド又はその一部分は、Hansenula細胞内の発現産物である。
【0061】
より詳細には、前記細菌細胞には、大腸菌(Escherichia coli)又はStreptomyces種の細胞が含まれる。
【0062】
本明細書に記述されている通りのHCVペプチド又はその一部分の中では、前記ペプチド内に含まれた1つのシステイン残基又は2つ以上のシステイン残基が「可逆的又は不可逆的に遮断」されていてよい。
【0063】
「不可逆的に遮断されたシステイン」というのは、そのシステインチオール基が化学的又は酵素的手段により不可逆的に防御されているシステインである。特に、化学的手段による「不可逆的防御」又は「不可逆的遮断」は、アルキル化、好ましくは例えば活性ハロゲン、エチレンイミン又はN−(ヨードエチル)トリフルオロ−アセトアミドといったようなアルキル化剤を用いた1つのタンパク質内のシステインのアルキル化を意味する。この点において、システインチオール基のアルキル化は、nが0、1、2、3又は4であり、R=H、COOH、NH2、CONH2、フェニル又はそのあらゆる誘導体である(CH2)nRによるチオール−水素の置換を意味するということを理解すべきである。アルキル化は、XがI、Br、Cl又はFといったハロゲンである活性ハロゲンX(CH2)nRなどといったような当該技術分野において既知のあらゆる方法によって実施可能である。活性ハロゲンの例としては、ヨウ化メチル、ヨード酢酸、ヨードアセトアミド、及び2−ブロモエチルアミンがある。その他のアルキル化方法には、NEM(N−エチルマレイミド)又はビオチン−NEM又はそれらの混合物の使用が含まれる(ヘルマンソン(Hermanson)1996年)。本明細書で使用されている「アルキル化剤」という語は、本明細書で記述されるようなアルキル化を実施することのできる化合物を意味する。かかるアルキル化は最終的に、その他のアミノ酸を模倣できる修飾システインを結果としてもたらす。エチレンイミンによるアルキル化は、トリプシンのための新しい開裂部位が導入されるような形でリジンに似た構造を結果としてもたらす(ヘルマンソン(Hermanson)1996年)。同様にして、ヨウ化メチルの使用は、結果としてメチオニンに似たアミノ酸をもたらし、一方ヨードアセテート及びヨードアセトアミドの使用は、それぞれグルタミン酸及びグルタミンに似たアミノ酸をもたらす。類推によりこれらのアミノ酸は好ましくはシステインの直接的突然変異において使用される。
【0064】
「可逆的に遮断されたシステイン」というのは、そのシステインチオール基が可逆的に防御されているシステインのことである。特に本明細書で用いられている「可逆的防御」又は「可逆的遮断」といった語は、システインチオール基に対する修飾作用物質の共有結合、ならびにシステインチオール基のレドックス状態が維持されるような形でのタンパク質の環境の操作(遮へい)を企図している。システインチオール基の可逆的防御は、化学的又は酵素的に実施可能である。
【0065】
本明細書で使用されている通りの「酵素的手段による可逆的防御」という語は、パルミトイルアシルトランスフェラーゼといったようなチオ−エステル化の触媒として関与するアシル−トランスフェラーゼなどのアシル−トランスフェラーゼといったような酵素によって媒介される可逆的防御を企図している。
【0066】
本明細書で使用されている通りの「化学的手段による可逆的防御」という語は、以下のものによる可逆的防御を企図している。
【0067】
1.例えばスルホン化及びチオ−エステル化などによりシステイニルを可逆的に修飾する修飾作用物質による。
スルホン化は、ジスルフィド架橋に関与するチオール又はシステインがS−スルホネートへと修飾される反応である。RSH→RS−SO3−(ダルブル(Darbre)1986)又はRS−SR→2RS−SO3−(亜硫酸との反応(sulfitolysis)(クマール(Kumar)ら、1986年))。スルホン化のための試薬は、例えばNa2SO3又は四チオン酸ナトリウムである。後者のスルホン化用試薬は、10〜200mMの濃度、より好ましくは50〜200mMの濃度で使用される。所望により、スルホン化は、例えばCu2+(100μM−1mM)又はシステイン(1〜10mM)といった触媒作用剤(catalysator)の存在下で実施可能である。
【0068】
反応は、タンパク質変性ならびに未変性条件下で実施可能である(クマール(Kumar)ら、1985、1986)。
【0069】
チオエステル結合形成又はチオ−エステル化は、Xが好ましくは化合物R’CO−X内のハロゲン化物であるものとして、
RSH+R’COX→RS−COR’
により特徴づけされる。
【0070】
2.例えば重金属特にZn2+、Cd2+、モノ−、ジチオ−、及びジスルフィド化合物(例えばアリール−及びアルキルメタンチオスルホネート、ジチオピリジン、ジチオモルフォリン、ジヒドロリポアミド、エルマン試薬、アルドロチオールTM(アルドリッチ(Aldrich))(レイン(Rein)ら、1996年)、ジチオカルバメート)、又はチオール化剤(例えばグルタチオン、N−アセチルシステイン、システインアミン)などによる、本発明のシステイニルを可逆的に修飾する修飾作用物質による。ジチオカルバメートには、スルフィドリル基と反応する能力を付与するR1R2NC(S)SR3官能基を有する広範な分子クラスが含まれる。チオール含有化合物は、好ましくは0.1〜50mM、より好ましくは1〜50mM、そしてさらに一層好ましくは10〜50mMの濃度で使用される。
【0071】
3.10μM〜10mM、より好ましくは1〜10mMの濃度範囲での、チオール状態を保存する(安定化する)修飾作用物質、特に例えばDTT、ジヒドロアスコルビン酸塩、ビタミン及び誘導体、マンニトール、アミノ酸、ペプチド及び誘導体(例えばヒスチジン、エルゴチオネイン、カルノシン、メチオニン)、没食子酸塩、ヒドロキシアニソール、ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、ヒドロキシメチルフェノール及びそれらの誘導体といったような酸化防止物質(antioxidantia)の存在による。
【0072】
4.例えば、(i)金属イオン(Zn2+、Mg2+)、ATPといったような共同因子、(ii)pH制御(例えば、タンパク質については大部分のケースで、pH約5又はpHは好ましくはチオールpKa−2、例えば逆相クロマトグラフィにより精製されたペプチドについてはpH約2)といったようなチオール安定化条件による。
【0073】
(1)、(2)、(3)及び(4)に記述されているような可逆的防御の組合せを適用することもできる。
【0074】
可逆的防御及びチオール安定化化合物は、単量体、重合体又はリポソーム形状で提示され得る。
【0075】
システイン残基の可逆的防御状態の除去は、例えば以下のものにより、化学的又は酵素的に達成可能である。
− 特に1〜200mM、より好ましくは50〜200mMの濃度での、特にDTT、DTE、2−メルカプトエタノール、亜ジチオン酸塩、SnCl2、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロキシルアミン、TCEPといった還元剤、
− 例えばpHの増加によるチオール安定化条件又は作用物質の除去、
− 特に0.01〜5μMの濃度、さらに一層詳細には0.1〜5μMの濃度範囲内のチオエステラーゼ、グルタレドキシン、チオレドキシンなどの酵素、
− 上述の化学的及び/又は酵素的条件の組合せ。
【0076】
システイン残基の可逆的防御状態の除去は、例えば細胞内又は個体内でインビトロ又はインビボで実施可能である。
【0077】
本発明に従った還元剤は、例えば「S−S」ジスルフィド架橋などのシステイン残基内の硫黄の還元、システイン残基の脱スルホン化(RS−SO3−→RSH)を達成するあらゆる作用物質である。酸化防止剤は、チオール状態を保存するか、「S−S」形成及び/又は免疫を最小限におさえるあらゆる試薬である。「S−S」ジスルフィド架橋の還元は、ジスルフィドをチオール(−SH)まで還元する化学反応である。特にHCV外被ペプチドに関しては、ジスルフィド架橋破壊剤及びその方法が、メーテンス(Maertens)らにより、国際公開第96/04385号パンフレット中で開示されている。「S−S」還元は(1)酵素カスケード経路又は(2)還元化合物によって得ることができる。チオレドキシン、グルタレドキシンのような酵素は、ジスルフィドのインビボ還元に関与することがわかっており、インビトロで「S−S」架橋を還元するのに有効であることも示されてきた。ジスルフィド結合は、DTTでの反応についての対応する速度定数よりも約104倍大きいものである見かけの二次的速度で、pH7.0の還元されたチオレドキシンにより急速に開裂させられる。還元反応速度は、1mMのDTT又はジヒドロリポアミドとのタンパク質溶液のプレインキュベーションにより劇的に増大させることができる(ホルムグレン(Holmgren)1979年)。タンパク質ジスルフィド架橋を還元できるチオール化合物は、例えばジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、β−メルカプトエタノール、チオカルバメート、ビス(2−メルカプトエチル)スルホン及びN,N’−ビス(メルカプトアセチル)ヒドラジン及び亜ジチオン酸ナトリウムである。モノクローナル抗体中のジスルフィド架橋の還元に非常に有用であることが示されてきた(サクール(Thakur)ら、1991年)アスコルビン酸塩又は塩化第一スズ(SnCl2)などのチオール基を含まない還元剤も同様に、HCVタンパク質の還元用に使用することができる。さらに、pH値の変化もHCVタンパク質のレドックス状態に影響を及ぼし得る。水素化ホウ素ナトリウムでの処理が、ペプチド内のジスルフィド架橋の還元に有効であることが示されてきた(ガイリット(Gailit)1993)。トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)は、低いpHでジスルフィドを還元することができる(バーンス(Burns)ら、1991)。セレノールは、還元剤としてDTT又は水素化ホウ素ナトリウムが用いられた場合、ジスルフィドからチオールへの還元の触媒として作用する。市販のジセレニドであるセレノシステアミンは、触媒の前駆体として使用された(シング及びカッツ(Singh & Kats)、1995年)。
【0078】
「ウイルス様粒子(virus−like particle)」、「ウイルス様粒子(viral−like particle)」又は「VLP」という語は、本明細書では、それ自体で1つ又は2つのE1及び/又はE2単量体をそれぞれ構成すると考えられているHCVE1及び/又はE2外被タンパク質の複数の基本単位を含有する詳細性質及び形状の構造として定義づけされている。本発明の粒子が、感染性HCV RNAゲノムを持たないものとして定義されていることは、明白でなくてはならない。本発明の粒子は、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を中に取込むことのできる外被タンパク質のシェルから成る、中空であってよい球状の高次粒子であり得る。この高次粒子は、同様にリポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったようなアポリポタンパク質又は低密度リポタンパク質によって、又は特定の器官又は組織に前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段により封入されていてもよい。この場合、このような中空球状粒子は往々にして「ウイルス様粒子」又はVLPと呼ばれる。あるいはまた、高次粒子は、完全な球体がHCVE1又はE2外被タンパク質オリゴマ−から成っているか、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を付加的に中に取込むことができるか又は、リポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったアポリポタンパク質、低密度リポタンパク質によって又は例えばアシアロ糖タンパク質などの特定の器官又は組織に前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段によりそれ自体封入され得る、中実球状構造であり得る。粒子は同様に、通常は丸い(後述の部分参照)形状のものでありかつ通常はHCV外被タンパク質を単層しか含んでいない(上述の中空又は中実球状構造に比べて)さらに小さい構造から成り得る。このようなさらに小さい粒子の標準的な例は、通常4〜16の間の少数のHCV外被タンパク質から成るロゼット様の構造である。後者の詳細な例としては、見かけ上8〜10個のE1単量体を含む本明細書に例示されている通りの0.2%のCHAPS中のE1で得られるより小さな粒子がある。かかるロゼット様の構造は、一つの平面内に組織され、通常例えばホイール状といった丸形である。ここでも又、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を付加的に取込むことができ、そうでなければ、より小さい粒子を、リポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったアポリポタンパク質又は低密度リポタンパク質によってか又は特定の器官又は組織に対し前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段によって封入させてもよい。より小さい粒子は同様に、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を付加的に中に取込むことができるか又は、リポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったアポリポタンパク質又は低密度リポタンパク質によって又は特定の器官又は組織に前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段によりそれ自体封入され得る、類似のより少数のHCVE1又はE2外被タンパク質から成る小さな球状又は小球状構造であってもよい。当該技術分野において周知の動的光散乱技術によって測定される通りの以上で定義された粒子のサイズ(すなわち直径)は、通常1〜100nmの間、より好ましくは2〜70nmの間にある。HCV外被タンパク質のウイルス様粒子は、国際特許出願国際公開第99/67285号パンフレット、同第02/055548号パンフレット及び国際特許出願PCT/BE02/00063号パンフレットの中で記述されてきた。
【0079】
もう1つの態様においては、本発明は、任意の医薬上許容される担体の他に、
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチド、又は
− 少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、又は
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、
を含んでいる、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0080】
現在既知のHCV型は、HCV遺伝子型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11を含み、その既知のサブタイプは、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2k、2l、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、5a、6a、6b、7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、9a、9b、9c、10a及び11aのHCVサブタイプを含む。複数のプロトタイプ分離株の完全なゲノムを網羅するcDNAクローンの配列は決定されており、HCV遺伝子型1a(例えばGenBank受託番号AF009606)、1b(例えばGenBank受託番号AB016785)、1c(例えばGenBank受託番号D14853)、2a(例えばGenBank受託番号AB047639)、2b(例えばGenBank受託番号AB030909)、2c(例えばGenBank受託番号D50409)、2k(例えばGenBank受託番号AB031663)、3a(例えばGenBank受託番号AF046866)、3b(例えばGenBank受託番号D49374)、4a(例えばGenBank受託番号Y11604)、5a(例えばGenBank受託番号AF064490)、6a(例えばGenBank受託番号Y12083)、6b(例えばGenBank受託番号D84262)、7b(例えばGenBank受託番号D84263)、8b(例えばGenBank受託番号D84264)、9a(例えばGenBank受託番号D84265)、10a(例えばGenBank受託番号D63821)及び11a(例えばGenBank受託番号D63822)の完全プロトタイプゲノムを含む。新しいHCV遺伝子型がさらに国際特許出願第PCT/EP02/09731号パンフレットの中で記述されている。HCV分離株が、HCV感染哺乳動物から単離されたHCV準種とみなされることになる。HCV準種には、通常同じHCV型又はHCVサブタイプの変異体ゲノムをもつ一定数の変異体ウイルスが通常含まれる。
【0081】
本発明のさらなる態様は、本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物の、
− 前記組成物のいずれかに含まれているHCVペプチドに対する液性応答を哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は
− CD4+T細胞増殖応答、及び/又はCD8+細胞毒性T細胞応答及び/又はサイトカインの産生増加であり得る、前記組成物のいずれかの中に含まれるHCVペプチドに対する細胞応答を、哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は、
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性HCV感染に対する哺乳動物の予防的防御のため、及び/又は
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性的にHCVに感染した哺乳動物の治療的処置のため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物において肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 全体イシャク(Ishak)評点に従って少なくとも2点だけ慢性HCV感染哺乳動物内の肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はガンマ−グルタミルペプチダーゼであり得る血清肝酵素のHCV感染哺乳動物体内の活性レベルを低減させる、ため及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内のHCV RNAレベルを低減させるため、又は、
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症の進行を減速させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症を低減させるため、
の使用を含んでいる。
【0082】
前記哺乳動物は明らかにヒトであり得る。
【0083】
特に、本発明に従った使用は、哺乳動物又はヒトに対し前記組成物のいずれかを投与することを含む、前述の効果のうちの少なくとも1つを得るための方法である。
【0084】
エピトープというのは、それに対する免疫応答の惹起に関与する細胞に結合しかつ/又はこれを活性化させる能力をもつ構造を意味する。かくして、エピトープには、B細胞、T細胞、T−ヘルパー細胞及びCTLのエピトープが含まれる。エピトープには、立体配座エピトープ及び線形エピトープが含まれる。線形エピトープは、例えば制限された数の全く異なる要素と共に解釈される反復的構造の隣接する要素の制限されたセットである。立体配座エピトープには通常、例えば、このような反復的構造の離れた要素が含まれているが、これらの要素はそれでも、前記反復的構造の3次元折畳みに起因して極く近くにある。このような反復的構造の周知の例としては、隣接する又は離れた要素がアミノ酸であるペプチド又はタンパク質がある。ペプチド−又はタンパク質−エピトープは、例えばT細胞レセプタ、B細胞レセプタ、抗体又はMHC分子に結合する能力をもつペプチド又はペプチドの一部分又はタンパク質を含む。線形ペプチド−又はタンパク質−エピトープのサイズは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個といったわずかなアミノ酸に制限され得る。エピトープは抗原性であるが、つねに免疫原性であるとは限らない。
【0085】
T細胞刺激エピトープというのは、T細胞、Tヘルパー細胞、又はCTL−細胞を刺激する能力をもつエピトープを意味する。Tヘルパー細胞刺激エピトープは、そのアミノ酸配列内に(推定上の)T細胞刺激エピトープを含む(潜在的抗原性)ポリペプチドに向かってのCD4+T細胞増殖応答とも呼ばれるリンパ増殖性応答を監視することによって選択され得る。前記リンパ増殖性応答は、T細胞刺激活性についてテストすべき変動する濃度のペプチドでの患者の血清からの末梢血単核細胞(PBMC)のインビトロ刺激を含むTヘルパー検定及びPBMCにより取上げられた放射線認識されたチミジンの量の計数により測定可能である。増殖は、刺激指数(対照培養の平均cpmあたりの抗原刺激された培養の平均cpm)が1を超える、好ましくは2を超える、より好ましくは3を超える場合に陽性とみなされる。CTL刺激エピトープは、51Cr放出を用いる、CD8+CTL応答とも呼ばれる細胞毒性細胞の溶解活性を測定する細胞毒性Tリンパ球又は細胞毒性T細胞(CTL)アッセイによって選択可能である。例えばELISpotアッセイによりサイトカイン産生を測定することによって、細胞媒介型応答を査定することもできる(例えばフジハシ(Fujihashi)ら、1993年を参照のこと)。Th1−様応答の特徴は、例えばIL−2及び/又はIFN−γの産生/分泌である。Th2−様応答の特徴は、例えばIL−4の産生/分泌である。
【0086】
「同種HCVによる感染に対する予防的防御」というのは、HCV抗原(複数も可)が由来するHCV遺伝子型、サブタイプまたは単離体と全く同じ遺伝子型、サブタイプまたは単離体の抗原投与HCVウイルスに対して得られる防御を意味する。組成物には例えば、共に特定のHCV1b型分離株から誘導されているHCV外被ペプチド及びHCV非構造タンパク質のペプチドが含まれる。「同種HCV」はこの場合、同じ特定のHCV1b型分離株となる。「1つの組成物中のHCVペプチドに対し同種のHCVの治療的措置」という文脈中の「同種の」も同様に解釈されなくてはならない。
【0087】
「異種HCVによる感染に対する予防的防御」というのは、HCV抗原(複数も可)が由来するHCV遺伝子型、サブタイプまたは単離体とは別の遺伝子型、サブタイプまたは単離体の抗原投与HCVウイルスに対して得られる防御を意味する。組成物には例えば、共にHCV1b型分離株から誘導されているHCV外被ペプチド及びHCV非構造タンパク質のペプチドが含まれる。「異種HCV」はこの場合、抗原がそこから誘導された1b型分離株、1a型HCVウイルス又は7型HCVウイルスとは充分異なるHCV1b型分離株となる。この特定の状況下で用いられる「充分に異なる」というのは、アミノ酸レベルで少なくとも2%、3%又は4%の差異と理解されるべきである。「1つの組成物中のHCVペプチドに対し異種のHCVの治療的措置」という文脈中の「異種の」も同様に解釈されなくてはならない。
【0088】
「肝疾患」という語は、この状況下では、炎症、線維症、肝硬変、壊死、壊死−炎症及び肝細胞ガンを含めた、C型肝炎ウイルスでの感染によりひき起こされた肝臓のあらゆる異常な状態を意味する。
【0089】
「肝疾患を低減させる」というのは、肝疾患状態のあらゆる安定化又は低減を意味する。肝疾患は、例えばノーデル(Knodell)評定システム(ノーデル(Knodell)ら、1981年)又はイシャク(Ishak)が適合させたノーデル評定システム(イシャク(Ishak)ら、1995年)によって決定可能である。この評点の2点低減は、いくつかの研究で治療的に有益な効果として受入れられている(例えばシフマン(Shiffman)1999の表2に示されているような1996年以降に発表された研究を参照のこと)。
【0090】
「肝線維症の進行を減速させる」というのは、肝線維症の通常予想される進行のあらゆる減速、停止又は復帰を意味する。肝繊維症の進行は、例えばメダヴィア(Metavir)評定システムにより決定可能である。このシステムに従った肝線維症の通常予想される進行とは、未治療の慢性HCV患者の年間約0.133のメタヴィア評点の増加として公表された(ポイナール(Poynard)ら、1997年)。「肝線維症を低減させる」というのは、肝線維症の通常予想される進行のあらゆる減速を含むものとされている。
【0091】
イシャク(Ishak)評定システム(ノーデル(Knodell)ら、1981年の評定システムの修正である。イシャク(Ishak)ら、1995年)又はメダヴィア(Metavir)評定システム(ベドッサ(Bedossa)及びポイナール(Poynard)1996年)に従って、肝線維症及び炎症を評定することができる。イシャク評点は、炎症の等級付け用として0〜18、線維症/肝硬変の病期分類用として0〜6の範囲を有する。イシャク炎症及び線維症評点の合計は、広く用いられている組織学的活性指数(HAI:ノーデル(Knodell)ら、1981)に最も近い。メタヴィア評点は、炎症の等級付け用として0〜3、線維症/肝硬変の病期分類用として0〜4の範囲を有する。未治療患者におけるメタヴィア評点の全体的進行速度は、年あたり0.133と推定される(ポイナール(Poynard)ら、1997)。
【0092】
本発明のその他の態様は、本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物及びDNAワクチンを投与することを含む、HCVナイーブな又はHCV感染した哺乳動物にワクチン接種を行なう方法に関する。
【0093】
上述の通りの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物はさらに、1つの抗原の発現を実施する能力をもつDNAベクターを含み得る。特に本発明に関連して、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、治療用HCVワクチン組成物又は予防用HCVワクチン組成物はさらに、1つ以上のHCV外被ペプチド及び/又は1つ以上のHCV非構造ペプチドの発現を実施する能力をもつDNAベクターを含み得る。あるいはまた、本発明のタンパク質又はペプチドベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物を、DNAベクターベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物(「DNAワクチン」とも呼ばれる)と組合せて使用することもできる。かかる組合せには、例えば、ワクチン接種がDNAベクターベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物を投与することによって開始され、その後続いて本発明のタンパク質又はペプチドベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物が投与される、DNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種スキームが含まれる。特にDNAベクターは、1つ以上のHCV抗原を発現する能力を有する。
【0094】
「DNAベクター」というのは、免役応答を惹起及び/又は増強させるのに有用なペプチドのうちの1つ以上のものについての読取り枠を含むあらゆるDNA担体を意味する。一般に、前記読取り枠は、プロモーター及びターミネータといった転写調節要素に操作可能な形でリンクされ、該読取り枠によりコードされたペプチドの発現を可能にしている。「DNAベクター」という語は、裸のプラスミドDNA、医薬上許容される担体と共に処方されたプラスミドDNA、(例えば上述のもののような)組換え型ウイルス又は適切な医薬上許容される担体と共に処方された組換え型ウイルスを含むものとされている。
【0095】
本明細書で使用されている、「転写調節要素」という語は、必須調節要素を含み、かくして、生きた脊椎動物細胞内に導入された時点でポリヌクレオチドによりコードされた翻訳産物を産生するべく細胞機構を導くことができるヌクレオチド配列を意味している。
【0096】
「操作可能な形でリンクされた」という語は、成分がそれらの通常の機能を実施するべく構成された並置を意味する。かくしてヌクレオチド配列に操作可能な形でリンクされた転写調節要素は、このヌクレオチド配列の発現をもたらす能力を有する。当業者であれば、異なる転写プロモーター、ターミネータ、担体ベクター又は特異的配列をうまく使用することができるということがわかるだろう。
【0097】
「医薬上許容される担体」又は「医薬上許容されるアジュバント」は、それ自体では組成物を受理する個体にとって有害な抗体の産生を誘発せず防御を惹起することもないあらゆる適切な賦形剤、希釈剤、担体及び/又はアジュバントである。好ましくは、医薬上許容される担体又はアジュバントは、抗原によって惹起される免役応答を増強する。適切な担体又はアジュバント(adjuvantia)は、標準的に、以下の非網羅的リストの中に含まれている化合物のうちの1つ以上のものを含む。
− タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体アミノ酸、アミノ酸共重合体及び不活性ウイルス粒子といった大型でゆっくりと代謝する巨大分子、
− 水酸化アルミニウム、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aと組合されたアルミニウム(国際特許出願国際公開第93/19780号パンフレット参照)又はリン酸アルミニウム(国際特許出願国際公開第93/24148号パンフレット参照)、
− N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(米国特許第4,606,918号明細書参照)、N−アセチル−ノルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン2−(1’,2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン、
− 2%のスクアレン/Tween80エマルジョン中にモノホスホリル脂質A(すなわち解毒済み内毒系)、トレハロース−6,6−ジミコレート及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有するRIBI(米国モンタナ州ハミルトンのイムノケムリサーチ(株)(ImmunoChem Research Inc.,Hamilton,MT,USA))。3つの成分MPL、TDM又はCWSのいずれも単独又は2つずつ組合せた形で使用可能である。MPLは同様に、RC−529と呼ばれるその合成類似体又はその他の任意のアミノ−アルキルグルコサミニド(glucosaminide)4−ホスフェートによっても置換され得る(ジョンソン(Johnson)ら、1999年、パーシング(Persing)ら、2002)、
− スチミュロン(Stimulon)(米国マサチューセッツ州ウースターのケンブリッジバイオサイエンス(Cambridge Bioscience,Worcester,MA,USA)、SAF−1(シンテックス(Syntex))といったようなアジュバント、
− ISS(ダイナバックス(Dynavax))又はCpG(コーレイファーマソティカルズ(Coley Pharmaceuticals)といったような細菌DNAベースのアジュバント、
− 代謝性油及びサポニン又は代謝性油、サポニン及びステロールを含んでいる水中油型エマルジョンをさらに補足され得る(例えば国際特許出願国際公開第95/17210号パンフレット、同第97/01640号パンフレット及び同第9856414号パンフレットを参照)か又は、サイトカインをさらに補足され得る(国際特許出願国際公開第98/57659号パンフレット参照)、QS21と3−デ−O−アセチル化モノホスホリル脂質A(国際特許出願国際公開第94/00153号パンフレット)の間の組合せといったようなアジュバント、
− MF−59(カイロン(Chiron)又はポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン]ベースのアジュバント(ウイルスリサーチ・インスティチュート(Vivus Research Institute)といったようなアジュバント、
− オプチバックス(Optivax)(ヴァクセル(Vaxcel)、サイトクス(Cythx))といったブロック共重合体ベースのアジュバント又はアルガムリン及びガンマイヌリン(Algammulin and GammaInulin)(アヌテック(Anutech))といったイヌリンベースのアジュバント、
− 完全又は不完全フロイントアジュバント(それぞれCFA又はIFA)又はゲルブ(Gerbu)調製物(ゲルブバイオテクニック(Gerbu Biotechnik)。完全フロインドアジュバント(CFA)は、ヒト以外の利用分野及び研究目的でも使用可能であり得るということを理解すべきである。
− クイルA(Quil A)といったようなサポニン、QS21、QS7又はQS17といったような精製サポニン、β−エシン又はジギトニン、
− [プリン−プリン−CG−ピリミジン−ピリミジン]オリゴヌクレオチドといったような未メチル化CpGジヌクレオチドを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド。免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、例えばリードル(Riedl)ら(2002年)により記述されているようなカチオン性ペプチドと組合せることも可能である、
− 例えばクイルA(Quil A)(ISCOMS)といったサポニンと合わせた免疫刺激性複合体、
− 本質的に非毒性で非治療性である、水、食塩水、グリゼロール、エタノール、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質、防腐剤といったような賦形剤及び希釈剤、
− 例えば1〜10%又は2.5〜5%の濃度の、スクアラン、スクアレン、エイコサン、テトラテトラコンタン、グリセロール、ラッカセイ油、植物油といったような、生体分解性及び/又は生体適合性油、
− ビタミンC(アスコルビン酸又はその塩又はエステル)、ビタミンE(トコフェロール)又はビタミンAといったようなビタミン、
− カロチノイド又は天然又は合成フラボノイド、
− セレンといったような微量元素。
【0098】
上述のアジュバントのいずれも3−デ−O−アセチル化モノホスホリル脂質Aを含んでおり、前記3−デ−O−アセチル化モノホスホリル脂質Aは、小さい粒子を形成していてよい(国際特許出願国際公開第94/21294号パンフレットを参照のこと)。
【0099】
典型的には、ワクチン組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注入物質として調製される。注入は、皮下、筋内、静脈内、腹腔内、くも膜下腔内、皮内、表皮内注入であってよい。その他のタイプの投与には、移植、座薬、経口接種、腸溶性適用、吸入、エアゾール適用、又は鼻腔用スプレー又は液滴が含まれる。注入に先立ち液体ビヒクル上で溶解又はその中で懸濁させるのに適した固体形態も同様に調製可能である。調製物は同様に、アジュバント効果を増強するためにリポソーム内で乳化又はその中に封入することもできる。ポリペプチドをその中に取込むことも可能である。
【実施例】
【0100】
実施例1.酵母中のHCVE1sの産生
HCVE1sタンパク質(HCVポリタンパク質のアミノ酸192〜326:配列番号1)を、Hansenula polymorpha RB11細胞内で発現された前駆体タンパク質から精製した。前記前駆体タンパク質は、ニワトリリゾチームリーダー(CL)、his−タグ(H6)及びリジン(K)を成熟HCV E1sタンパク質(CL−H6−K−E1s)のN末端に含んでいた。
【0101】
シャットルベクターpFPMT−CL−H6−K−E1s(図1中に概略的に描かれている)の構築が、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例5中で記述されている。
【0102】
pFPMT−CL−H6−K−E1sでのH.polymorpha RB11の形質転換及び形質転換体の選択が、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例6に記述されている。
【0103】
国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例14には、pFPMT−CL−H6−K−E1sで形質転換されたH.polymorphaによるHCV E1sタンパク質の発現のための発酵条件が記述されている。
【0104】
pFPMT−CL−H6−K−E1で形質転換されたH.polymorpha RB11内で発現されたH6−K−E1s前駆体タンパク質からの(ヨードアセトアミドでアルキル化された)成熟HCVE1sの、H6−K−タグ除去を含めた精製については、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例18で記述されている(部分的に国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例17を再度参照)。
【0105】
精製HCVE1sタンパク質(400μg/mLの濃度、ヨードアセトアミドでアルキル化されている)を用いたPBS、0.5%(w/v)ベタイン中のウイルス様粒子(VLP)の形成については、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例20の中で記述されている。
【0106】
実施例2:HCVE1sワクチン組成物の処方
出発材料は、(400μg/mlのE1s濃度で、PBS、0.5%(w/v)ベタイン中の)実施例1で記述されたように得られたHCVE1sウイルス様粒子の組成物であった。等体積のこのE1sVLP−組成物及びアルヒドロゲル(Alhydrogel)1.3%(スーパーフォス(Superfos)、デンマーク)を混合した。結果として得られた混合物を、最終的にさらに19体積の0.9%NaClで希釈して、0.065%のアルヒドロゲル及び20μg/mLのE1s濃度の、ミョウバンでアジュバントとしたE1sを得た。
【0107】
実施例3.Vero細胞からのE1sの産生
HCVE1sタンパク質(HCVポリタンパク質のアミノ酸192〜326、実施例1で記述したものと同じ成熟E1s)を、組換え型ワクシニアウイルスHCV11Bを用いてVero細胞内で発現させた。このワクシニアウイルスは基本的にvvHCV11A(米国特許第6,150,134号明細書で記述されているもの)と同一であるが、RK13からVero細胞へと継代されてきた。E1sタンパク質を、システインのためのアルキル化剤としてヨードアセトアミド(N−エチルマレイミドの代りに)を用いて、国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット)の実施例9に従って修正されてはいるものの基本的には米国特許第6,150,134号明細書の実施例5に記述されている通りに(レンティルクロマトグラフィ、還元−アルキル化及びサイズ排除クロマトグラフィを用いて)精製した。精製後、3%のエンピゲン(Empigen)−BBを、国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット)の実施例1に記述されている通りにサイズ排除クロマトグラフィによって3%のベタインと交換した。このプロセスにより、ウイルス様粒子としてのElsの回収が可能である。最後に、400μg/mLというE1s濃度及び0.5%のベタインを含むPBSに対し材料を脱塩した。このE1sを、等体積のアルヒドロゲル1.3%(スペルフォス(Superfos)、デンマーク)と混合し、最後に、19体積の0.9%のNaClでさらに希釈して20μgのE1s/mL及び0.065%のアルヒドロゲルの濃度で、ミョウバンをアジュバントとしたE1sを得た。
【0108】
実施例4 大腸菌(Escherichia coli)内でのNS3の産生
HCVNS3−TNタンパク質(国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット、配列番号5)の実施例7aに記述されているようにアミノ酸1167〜1180がアミノ酸1071〜1084で置換されアミノ酸1166がメチオニンへと突然変異させられたHCVポリタンパク質のアミノ酸1166〜1468、配列番号5)をE.coli内で発現させた。システインのための変性剤としてスルホン化を用いて、基本的に国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット)の実施例7bに記述されている通りに、タンパク質を精製した。最後に、材料を、1.3mg/mLのNS3−TNタンパク質濃度及び6Mの尿素を含有するpH7.5のPBSに対し脱塩させた。このNS3を、0.9%のNaClで400μg/mLまで希釈した後、等体積のアルヒドロゲル1.3%(スペルフォス(Superfos)、デンマーク)と混合し、最後に、19体積の0.9%のNaClでさらに希釈して20μgのNS3/mL及び0.065%のアルヒドロゲルの濃度で、ミョウバンをアジュバントとしたNS3を得た。
【0109】
実施例5.アカゲザルにおける免疫原性研究
動物の収容、維持及び世話は、全ての関連する指針及び規定要件に適合したものであった。
【0110】
8匹のアカゲザル(Macaca mulatta)の右上肢に用量10μgのNS3−TNを筋内ワクチン接種した。これらの動物の半数に同様に、Vero細胞からの用量10μgのE1sをワクチン接種し、もう半分は酵母からの10μgのE1sを受けた。E1sワクチンは、上左肢に投与した。実施例1〜3に記述されている通り、全てのタンパク質はミョウバン上で処方した。動物は、0、3及び9週目に免疫化を受け、3回目の免疫化から2週間後(すなわち11週目)に免役応答を査定した。
【0111】
抗体力価
抗体力価をELISAにより決定した。血清標本の階段希釈を、社内標準(1000mU/mLのE1s抗体を有するものとして定義されたこの社内標準は、高い抗外被力価に基づいて選択されたHCV慢性担体からの3つの血清の混合物である)と比較した。このアッセイの検出限界は5mU/mlである。
【0112】
全ての動物は、免疫化のために用いられたタンパク質に対する抗体応答を開始させた。log(mU/mL)+/−SD(標準偏差)で表わした抗体レベルは、酵母及びVero由来のE1sで免疫化された動物の両方について、高レベルの抗E1s抗体を伴う担体に基づいた標準の中に見出されるレベルと類似していた。酵母(H.polymorpha)から得たE1s及び哺乳動物(Vero)細胞系統から得たE1sでのこれらの結果の類似性は、両方の分子の間の生化学パラメータの大きな差異を考慮すると、驚くべきものである。酵母E1sタンパク質は、異なる形でグリコシル化された形態のE1sの梯子から成り、一方Vero由来のE1sは、均一的にグリコシル化された単一のタンパク質バンドから成る(図2に示されている)。全体に、Vero細胞由来のE1sで得られた応答より高い応答を誘発する酵母由来のE1sの傾向さえ存在する。
【0113】
【表1】
【0114】
NS3に対する抗体応答は、類似の要領で決定された。log(mU/mL)+/−SDとして表わされた2.74+/−0.32(n=8)の平均力価が達成され、これは、ここでも、慢性担体内で観察されたNS3応答と同様であり、これは、NS3タンパク質が免疫原性であることを示している。
【0115】
T細胞の免疫性
合計体積200μLでウェルあたり4×105個の細胞という濃度で0週目又は11週目に抜きとられた血液から単離させた末梢血単核細胞(PBMC)を、5%のCO2を含有する加湿した雰囲気内で37℃で90時間、ConA(5μg/mL、正の対照)、又は酵母E1sで免疫化された動物については組換え型酵母E1s、又はVero−E1sで免疫化された動物についてはVero−E1s、又はNS3タンパク質(全て5μg/mLで)、又は培地単独(負の対照)のいずれかと共に、U字形の96ウェルのマイクロタイタープレートの中の完全RPMI−1640倍地の中で培養した。マイトジェン及び抗原誘発された増殖応答の両方について最も適切なインキュベーション時間を立証するために一連の実験を実施した。(3H−チミジン摂取のための時間を含め)90時間の細胞培養が、マイトジェン刺激ならびに抗原誘発された応答にとって充分であることがわかった。最後の18時間、細胞をウェルあたり2μCi(3H−TRK758)のチミジンでパルス処理した。その後、ガラス繊維のフィルター上で培養を収獲し、パッカードトップカウンター(ダイレクトベータカウンター)内で同時に計数することによって標識摂取を決定する。
【0116】
結果は、外被抗原と共に培養された細胞の中に取込まれたチミジンと抗原無しで培養された細胞のものの比率である刺激指数(SI)として表わされている。3より大きい刺激指数が、陽性シグナルとみなされる。全ての動物は、実際CoAに対し満足のいく形で反応しており、アッセイ内で使用された細胞の質を証明した。図3に示されている結果から、E1sについて、8匹の動物のうち7匹が、0週目には無かったはっきりした抗原特異的増殖を11週目に有していたという結論を下すことができる。NS3については、8匹の動物全てがこのような応答を実際に開始した(図4)。E1s及びNS3の両方についてのT細胞増殖の高いレベルは、使用されたミョウバン−アジュバントが主として液性免役応答を刺激するものとして知られていることから、驚くべきものであった。このことは明らかに、同じ単一の個体内でT細胞を刺激する上でのE1s及びNS3の両方の高い免疫原性潜在能力を実証している。
【0117】
さらに、両抗原の交差反応性を実証するために、E1sで免疫化された全ての動物からのPBMCが酵母由来のE1s及びVero細胞由来のE1sで再刺激された対照実験が実施された。この実験(結果は図5に提示されている)は、8匹のE1s免疫化された動物のうちの実に7匹がE1sに対する高いT細胞応答を開始したこと、そして、7匹の動物の全てが、ワクチン接種のために使用された抗原の如何に関わらず、酵母及びVero由来のE1s材料の両方に対し反応したことを確認した。
【0118】
これは、同じアジュバント上で処方され単一の動物において投与されたHCV外被抗原及びHCV非構造抗原の組合せの、高等哺乳動物種において高い特異的免役応答を結果としてもたらした最初の実証である。この組合せを使用した場合、免疫系の液性及び細胞性の両方の区画が活性化された。酵母及び哺乳動物細胞に由来するE1s間に見られたような優れた交差反応性は、両方の材料の生物学的等価性を裏づけるものであり、両方の産物の間の生物物理学的レベル上の多大な差異に基づいて考えれば驚くべきことである。従って、酵母E1は、(国際公開第02/055548号パンフレットとして公示された国際特許出願第PCT/EP02/00219号パンフレットの中で記述されているように)抗原投与感染の時点でチンパンジーにおける慢性疾患に対する防御免役応答を誘発するものとして知られる哺乳動物−E1sに置換されることができるはずである。NS3、そしてより詳細には、E1sと同じアジュバントと共に処方されたNS3が有意なT細胞応答を誘発するということを実証すると、E1sをNS3と組合わせることでHCV特異的免役応答の幅が広がり、HCV感染をさらに一層効率良く制御する上で一助となるということが明確に示されることになる。
【0119】
実施例6.E1sとNS3の組合せによるワクチン接種を受けたチンパンジーの予防用防御免疫化
動物の収容、維持及び世話は、全ての関連する指針及び規定要件に適合したものであった。
【0120】
ミョウバン上でH.polymorpha由来のE1s及びE.coli由来のNS3−TNを処方し、40μgのE1s/mL又はNS3/mL及び0.13%のミョウバンの最終的処方を生成した。1.25mLのE1s(左上肢)及び1.25mLのNS3(右上肢)で3匹のチンパンジー(Pan troglodytes)を筋内で免疫化した。4匹目のチンパンジーを、両方の上肢で同時に、0.13%のミョウバンのみから成る1.25mLのプラシーボで免疫化した。0、4、8及び20週目に免疫化を実施した。最終的に、R.パーセル(Purcell)博士(メリーランド州ベセズダのNIH、肝炎ウイルス課)により提供された100CID50(チンパンジー感染用量の)接種材料J4.91で24週目に動物に抗原投与した。抗原投与を受けたチンパンジーの血清中のウイルス血症レベルは、抗原投与後12ヵ月間ロッシュモニターHCV(Roche Monitor HCV)を用いて分析される。検知不能なウイルス血症しかない動物は、完全防御済み動物として分類され、抗原投与から6ヵ月以内にウイルス血症が消散し続く6ヵ月以内にウイルスRNAの跳返り現象がなかった動物は、急性消散動物として分類され、一方6ヵ月後になおウイルス血症を有する動物は、慢性感染動物として分類される。
【0121】
これら4匹のチンパンジーについての免疫化計画が完了した後、E1及びNS3に対する抗体力価を決定した。E1については、酵母及びVero由来の両方に対する抗体力価をELISAを用いて決定した。NS3抗体については、スルホン化タンパク質及び脱スルホン化タンパク質の両方に対する抗体力価をELISAを用いて決定した。ELISAプレートのコーティング時間(37℃で1時間、3μg/mlのNS3)中5mMのDTTと共にスルホン化されたNS3をインキュベートすることによって、脱スルホン化を実施した。アッセイのバックグラウンドより2倍高いODをなおも生成する血清の希釈として、力価を規定した。結果は、表2にまとめられている。
【0122】
酵母又はVeroからのE1を用いた滴定の結果は、非常に類似していた。さらに重要なことに、力価は、本研究の4匹のチンパンジーについてと同じアッセイを用いてそれからのいくつかの標本が再度滴定された(国際特許出願国際公開第02/055548号パンフレットの実施例15に記述されている通りの)E1−Veroで免疫化したチンパンジーにおいて得られた力価ときわめて類似していた。この研究におけるチンパンジーがわずか4回の免疫化しか受けておらず、一方履歴対照動物(historical animal)が6回の免疫化を受けていることを考慮すると、このことは、酵母由来のE1がVero由来のE1に比べ同等かさらにはそれより優れた免疫原性を有することを再度確認するものである。
【0123】
驚くべきことに、脱スルホン化されたタンパク質で測定されたNS3応答は、スルホン化されたタンパク質で測定されたものよりもはるかに高いものであった。この結果は、NS3が免疫応答の誘発に先立ってインビボで脱スルホン化されていることを表わすため、重要なものである。特にT細胞応答については、T細胞がスルホン化されていない未変性NS3を認識できなくてはならないことから、これは非常に重要であり得る。
【0124】
【表2−1】
【表2−2】
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ベクターpFPMT−CL−H6−K−E1sの概略的マップ。
【図2】Hansenula E1a(レーン1)及びVero細胞(レーン2)により産生されたHCVE1sタンパク質のウェスタンブロット分析。分子量マーカー(レーン3)のサイズは、右側に示されている(kDa)。E1特異的マウスモノクローナル抗体IGH201(国際公開第99/50301号パンフレット参照)は、E1タンパク質の検出のために用いられた。
【図3】0週目(黒色棒)又は11週目(斜線棒)に観察されたE1s特異的T細胞刺激。T細胞刺激は、X軸に示されたアカゲザルについてのY軸上の刺激指数(SI)として表現されている。動物1〜4には、NS3及びVero E1sがワクチン接種され、単離されたPBMCはインビトロでVero E1sで再刺激された。動物5〜8は、NS3及び酵母E1sでのワクチン接種を受け、単離されたPBMCは、インビトロで酵母E1sで再刺激された。
【図4】0週目(黒色棒)又は11週目(斜線棒)に観察されたNS3特異的T細胞刺激。T細胞刺激は、X軸に示されたアカゲザルについてのY軸上の刺激指数(SI)として表現されている。動物1〜8には、NS3がワクチン接種された。動物1〜4は同様に、Vero E1sでのワクチン接種を受けた。動物5〜8は同様に酵母E1sでのワクチン接種も受けた。
【図5】X軸に示されたアカゲザルについてのY軸上の刺激指数(SI)として表現されたE1s特異的T細胞刺激。動物1〜4には、NS3及びVero E1sがワクチン接種され、単離されたPBMCはインビトロでVero E1s(斜線棒)又は酵母E1s(黒色棒)で再刺激された。動物5〜8は、NS3及び酵母E1sでのワクチン接種を受け、単離されたPBMCは、インビトロでVero E1s(斜線棒)又は酵母E1s(黒色棒)で再刺激された。
【0126】
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【配列表】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、HCV感染の予防的及び治療的処置において有用である免疫原性及びワクチン組成物の分野に関する。より詳細には、前記組成物はHCV外被ペプチド及びHCV非構造ペプチドを含む。
【0002】
背景技術
HCVウイルスの約9.6kbの一本鎖RNAゲノムは、5’−及び3’−非コーディング領域(NCR)とこれらのNCRの間の約3000個のアミノ酸のHCVポリタンパク質をコードする約9kbの単一の長い読取り枠を含んでいる。
【0003】
HCVポリペプチドは、読取り枠からの翻訳とそれに続く結果として得られた約330kDaのポリタンパク質のタンパク質分解プロセシングによって生成される。ポリタンパク質のアミノ末端4分の1から構造タンパク質が誘導され、これには、カプシド又はコアタンパク質(約21kDa)、E1外被糖タンパク質(約31kDa)及び従来NS1と呼ばれていたE2外被糖タンパク質(約70kDa)が含まれる。HCVポリタンパク質の残りの部分から非構造HCVタンパク質が誘導され、これには、NS2(約23kDa)、NS3(約70kDa)、NS4A(約8kDa)、NS4B(約27kDa)、NS5A(約58kDa)、及びNS5B(約68kDa)が含まれる(Grakouriら1993年)。E2タンパク質は、p7タンパク質のC末端融合を伴って又はこれを伴わずに発生し得る(Shimotohnoら1995年)。最近、F(フレームシフト(Frameshift))タンパク質と呼ばれる約17kDaのタンパク質をコードし発現するコア領域内の代替的読取り枠が発見された(Xuら2001年;OuおよびXu米国特許出願公開第2002/0076415号明細書)。同じ領域内で、その他の14−17kDaのARFP(Alternative Reading Frame Protein)、A1〜A4のためのORFが発見され、少なくともA1、A2、及びA3に対する抗体が、慢性感染した患者の血清中で検出された(Walewskiら2001年)。
【0004】
HCVは、世界中の非A、非B型肝炎の主な原因である。急性HCV感染(全急性肝炎感染の20%)は慢性肝炎(全慢性肝炎症例の70%)及び末期肝硬変を導くことが多い。HCV慢性担体の最高20%が約20年の時限にわたり肝硬変を発生させ得、そのうち1〜4%/年の間の肝硬変を有する者は肝ガンを発生するリスクが高い(LaunerおよびWalker2001年、Shiffman1999年)。HCVを原因とする末期肝疾患の寿命を延長させるための1つの選択肢は肝移植である(世界中の全ての肝移植の30%はHCV感染によるものである)。
【0005】
肝臓損傷及びウイルス浄化の病理学的メカニズムについて得られる情報は限られたものにすぎない。HCVに対する有効な予防用及び/又は治療用ワクチンの開発に向けての第1歩として、防御免疫(B細胞又は液性応答及びT細胞又は細胞性応答)に関与するHCV成分を同定することに多大な努力が払われてきた。
【0006】
ウイルスの浄化及び疾病の消散又はウイルスの存続及び慢性疾患のいずれが起こっているかについての決定は、HCV感染の急性期の間の免疫応答にあると考えられている。感染の初期における免疫応答の強さ、広さ及び維持そして恐らくは特にT細胞/CTL応答が感染を消散させるために根本的重要性をもつ可能性があることを複数の研究が示唆していると思われる(Diepolderら1995年、1997年;Missaleら1996年;Cooperら1999年;Ericksonら2001年)。しかしながら、感染の自然発生的な消散は、慢性感染へと進化している患者の体内でHCVタンパク質及びHCV特異的T細胞に対する抗体の存続が検出可能であるにもかかわらず(ひいては免疫応答の検出が可能であるにも関わらず)、HCV感染者の約30%において発生しているにすぎない。
【0007】
HCV感染を治療するための選択肢は、現在非常に限られたものであり、通常、抗ウイルスリバビリン及びインタフェロン−α(又はペグインタフェロン(pegylated interferon)−α)の治療計画を含む。今日の最適な治療計画(ペグインタフェロン−αとリバビリン及び遺伝子型及びウイルス負荷に基づく療法の拡大との組合せ)は、結果として重度の副作用(患者の約25%は早期に療法を停止する)をもたらし、治療計画を完了できた者のうちでも、世界中で最も優勢な遺伝子型である遺伝子型1に感染している場合に、持続した応答を示すのは50%だけである(Mannsら2001年)。さらに、この療法は、HCVにおいて頻発する身体条件である貧血症、自己免疫疾患又はうつ病歴の弁別的特徴が予め存在している患者については勧められない。これらの及びその他の医学的合併症のため、最高75%のHCV患者が今日療法から除外されている(Falck−Ytterら2002年)。シェリング・プラウ(Schering−Plough)は、現行の療法に応答しなかった人の数は2010年までに100万人まで増加するものと計算した(J.Albrecht,Schering−Plough satellite symposium,EASL,Madrid,April 2002)。
【0008】
HCV感染を予防するための選択肢は、現在HCV抗体及び/又はウイルスRNAの存在について献血をスクリーニングすることに制限されている。しかしながら、未知の経路を介して、静脈内薬物ユーザーを介して又はHCVウイルスの担体であることに気づいていない人を介して、大量の新たなHCV感染が発生している。かくして、HCV感染の予防と治療の両方において有用である作用物質に対する明白かつ緊急なニーズが存在している。
【0009】
HCVワクチンは、DNAベースのワクチン、タンパク質又はペプチドベースのワクチンであり得、そうでなければDNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種の組合せを適用することもできる。
【0010】
DNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種の研究は、マウスの体内でコア(Huら1999年)及びE2(Songら2000年)について実施されてきた。コアDNAワクチン接種は主にIgM抗体産生を生成し、一方、タンパク質追加免疫は、IgG抗体レベルの増大をひき起こした。コアDNA−ワクチン接種により誘発されたT細胞増殖応答は、タンパク質追加免疫により増大させられた。コアタンパク質単独で注射を行なった場合CTL応答は観察されなかったが、DNA−初回免役ワクチン接種及びDNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種の両方において検出できた。E2については、DNAワクチン接種時点で惹起された抗体応答及びCTL応答の両方がタンパク質追加免疫により増大した。
【0011】
タンパク質ベースのHCVワクチンでの研究は、非常に限られたものであり、コア(Shiraiら1996年、Huら1999年)、E1(Lopez−Diaz de Cerioら1999年)、E2(Nakanoら米国特許出願公開第2002/0119495号;Houghtonら米国特許出願公開第2002/0002272号)、E1/E2又はE1/E2+コア(Draneら国際公開第WO01/37869号)及びNS5(Shiraiら1996年)のフラグメントでのマウスの免疫化を含んでいる。
【0012】
マウスは、NS5か又はヘルパーペプチド(HIVgp160タンパク質のフラグメント)に共有結合で付着されたNS5又はコアのいずれかで初回免疫され、その後CTL−応答は、NS5又はコアの存在下での再刺激の後に測定された。NS5−HIV融合タンパク質及びコアタンパク質についてはCTL応答が見られたが、NS5タンパク質単独については見られなかった。NS5−HIV融合タンパク質に対するCTL応答は、使用されたアジュバントに左右された。サポニンアジュバント(QS21)はCTL−応答を支援したが、一方で完全フロイントアジュバントはこれを支援しなかった。NS5に対するいかなる増殖応答も検出されなかった(Shiraiら1996年)。Huら(1999年)により概略的に示されている通りの条件下では、コアに対するいかなるCTL−応答も検出されなかった。
【0013】
E1−ペプチド(アミノ酸121−135)でのマウスの免疫化は、CD4+Th1細胞ならびに、アジュバントの不在下でも同様に得られた長期持続性CD8+CTL−応答(Lopez−Diaz de Cerioら1999年)を誘発した。
【0014】
N及びC末端部分が欠如し昆虫細胞によって産生されたE2ペプチドで予めマウスを免疫化した場合、T細胞増殖応答が指摘された。この応答は、E2ペプチドにQS21又はMPL−TDMをアジュバントとして付加した場合にのみ検出可能で、ミョウバンをアジュバントとした場合には検出できなかった。液性抗E2応答は、QS21をアジュバントとしたE2でマウスを免疫化した場合にのみ検出された(Nakanoら米国特許出願公開第2002/0119495号)。E1/E2ヘテロ2量体性複合体の注射を受けたマウスは、有意な抗E2抗体応答を増大させなかった。E1/E2にMF59をアジュバントとして用いた場合、又はコア−ISCOMを付加した場合、検出可能で同程度の抗E2抗体応答が観察された。E2に対する液性応答は、マウスをE2発現プラスミドで免疫化した場合(Houghtonら米国特許出願公開第2002/0002272号)に比べてE2ペプチド(MF59をアジュバントとする)で免疫化した場合にさらに高いものであった。
【0015】
以上の調査目的のワクチン接種は全て、HCV感染についての動物モデル系でないげっ歯類について実施された。従って、得られた結果は、マカクといった霊長類又はチンパンジー又はヒト(このうち後者の2つがHCV感染を受ける可能性が高い)に対し先験的に外挿することはできない。従って、より有利なのは、チンパンジーに対し実施される予防用及び治療用ワクチン接種又はHCV感染したヒトの治療用ワクチン接種である。マウス、マカク及びチンパンジーのE2DNA−ワクチン接種については、Fornsら(1999年、2000年)の2つの研究の中で記述された。液性免疫応答(マウス及びマカクの両方における)は、細胞質ゾル内で発現されたE2変異体の場合と比べ細胞表面上で発現されたE2変異体の場合により早く発生し、より強いものであった。さらにマカクにおける液性応答は、1mgのプラスミドDNAをマカクに注射したにも関わらず、マウスにおける応答よりも低いものであった(Fornsら1999年)。追跡研究においては、細胞表面をターゲティングしたE2DNA−ワクチンがチンパンジーに投与された(10mgのプラスミドDNA3回)。このワクチン接種は、100CID50(50%のチンパンジー感染用量)同種モノクローナルHCVでの抗原投与感染の時点で、殺菌性免疫を結果としてもたらさなかったが、急性HCV感染からの回復は明らかであった。興味深いことに、急性HCV感染からの回復は、以前にHCVに感染した確率が最も高いチンパンジーにおいてより急速であった(Fornsら2000年)。
【0016】
アカゲザルに、コア発現ワクチニアウイルス、LTK63をアジュバントとするコア又はISCOMをアジュバントとするコアが、Draneら(国際公開第WO01/37869号)の研究において注射された。コア発現ワクチニアウイルス又はISCOMをアジュバントとするコアでの免役化により、CD8+CTL−応答が惹起された。コア−ISCOMで免役化された動物のさらなる分析が、持続性CTL−応答、CD4+T細胞増殖応答ならびにコアに対する液性応答を明らかにした。
【0017】
E1/E2又はコア/E1/E2複合体でのチンパンジーの予防用ワクチン接種が、Chooら1994年、Houghtonら1995年中に記述されている。10CID50同種HCV(1a型のHCV−1)での抗原投与感染の時点で、抗原投与時にワクチンに対する最高の抗E1/E2−抗体応答をもつチンパンジーから感染が消散した。抗E2HVRI抗体レベルとウイルス抗原投与の成果のレベル間ではこのような相関関係は、E2−HVRIに対する結合抗体の中和の存在が報告されているにも関わらず、全く明らかではなかった(Ishiiら1998年、Shimizuら1994年)。再抗原投与の時点でそして異種HCV(もう1つの1a型分離株であるHCV−H)64CID50での最初の抗原投与を消散させたワクチン接種されたチンパンジーの再免役化の後、チンパンジーは、ウイルス血症は遅延されたものの、感染状態になった。
【0018】
E1タンパク質でのチンパンジーの予防用及び治療用ワクチン接種については、WO99/67285およびWO02/055548の中で記述されている。治療的効果(ALTレベル、検出可能なE2−抗原及び肝臓炎症の減少)が、同じサブタイプ内部での異種設定(もう1つの1b型HCV分離株での感染を受けたチンパンジーにおいて有効な1b型E1のワクチン)及び交差サブタイプ設定(1a型HCVでの感染を受けたチンパンジーにおいて有効な1b型E1のワクチン)の両方において観察された。同じワクチンは同様に、異種1b型HCV100CID50での抗原投与を受けたワクチン接種済みのナイーブなチンパンジーにおける急性HCV感染の消散をも結果としてもたらした。興味深いことに、チンパンジーで観察された免疫応答は、HCV感染を受けたヒト及び健康なボランティアにおいても見られた。
【0019】
以上のことから、HCVタンパク質により惹起された応答が、アジュバントのタイプ及びヘルパーペプチドの有無などのさまざまな因子によって左右されるという結論を下すことができる。免役応答も同様に、ペプチドの組合せによる惹起とペプチド単独での惹起の間で異なっている。ヒト以外の霊長類では、これまで、コア(アジュバントに応じた免役応答、予防的及び治療的効果は現在不明)、E1/E2又はコア/E1/E2タンパク質複合体(同種HCVに対する予防的防御)又はE1(予防的及び治療的効果)でのみ、調査目的のワクチン接種が実施されてきた。これらの調査目的のワクチン接種研究は、有望なものであったが、HCVタンパク質組合せに基づくワクチン組成物は、より広い免役応答ひいてはHCV感染に対する改善された予防的及び/又は治療的効果をもたらす結果となり得る。
【0020】
発明の概要
1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCV免疫原性組成物に関する。前記HCV免疫原性組成物は、少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を有効量含むHCVワクチン組成物であり得る。前記HCVワクチン組成物は、それぞれ予防的及び/又は治療的有効量の少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含む予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物であり得る。
【0021】
特に、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物はHCV E1外被ペプチド及びHCV NS3非構造ペプチドを含む。
【0022】
1つの実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、アミノ酸192−326にわたるHCVポリタンパク質領域で構成されているHCV E1ペプチド及びアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含んでいるHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、アミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域、例えばアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドはアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域及びアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含むこともできる。さらなる実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、配列番号1により定義されるHCV E1ペプチド及び配列番号2により定義されるアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含むHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、例えば配列番号4により定義されるアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域といったような、配列番号3により定義されるアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドは、同様に、配列番号2及び配列番号3又は配列番号4により定義されるHCV NS3ペプチドをも含み得る。特に、かかるHCV NS3ペプチドは配列番号5により定義され得る。
【0023】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、前記HCVペプチドが所望によりスペーサを介してリンクされている、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0024】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、かつ、
− 前記HCVペプチドが合成ペプチド又は組換え型ペプチドであり、かつ/又は
− 前記HCVペプチドの少なくとも1つのシステインが可逆的又は不可逆的に遮断されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドの少なくとも1つのシステインがアルキル化されており、かつ/又は、
− 前記HCV非構造ペプチドの少なくとも1つのシステインがスルホン化されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドがウイルス様粒子として前記組成物に添加されている、
HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0025】
もう1つの態様においては、本発明は、そのいずれかが、任意の医薬上許容される担体の他に、
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチド、又は
− 少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、又は
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、
を含んでいる、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物の、
− 前記組成物のいずれかに含まれているHCVペプチドに対する液性応答を哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は
− CD4+T細胞増殖応答、及び/又はCD8+細胞毒性T細胞応答及び/又はサイトカインの産生増加であり得る、前記組成物のいずれかの中に含まれるHCVペプチドに対する細胞応答を、哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性HCV感染に対する哺乳動物の予防的防御のため、及び/又は
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性的にHCVに感染した哺乳動物を治療的処置のため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物において肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 全体イシャク(Ishak)評点に従って少なくとも2点だけ慢性HCV感染哺乳動物内の肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はガンマ−グルタミルペプチダーゼであり得る血清肝酵素のHCV感染哺乳動物体内の活性レベルを低減させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内のHCV RNAレベルを低減させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症の進行を減速させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症を低減させるため、
の使用を含んでいる。
【0027】
前記哺乳動物は明らかにヒトであり得る。
【0028】
特に、本発明に従った使用は、哺乳動物又はヒトに対し前記組成物のいずれかを投与することを含む、前述の効果のうちの少なくとも1つを得るための方法である。
【0029】
本発明のその他の態様は、DNAワクチン及び本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物を投与することを含む、HCV−ナイーブな又はHCV感染した哺乳動物にワクチン接種する方法に関する。
【0030】
発明の詳細な記述
本発明に導いた研究作業は、HCV外被タンパク質、より詳細にはE1及びHCV非構造タンパク質、より詳細にはNS3を、共に同じアジュバントを伴う処方の形で同時注射することで、ヒト以外の霊長類においてHCV抗原の両方に対する強い細胞性応答及び強い液性応答が惹起されるという予想外の効果を結果としてもたらした。この免役応答は、これまで調査目的のHCVタンパク質ベースの免疫原性/ワクチン組成物で得られた免役応答に比べて広いものである。従って、観察された広い免役応答は、HCV外被タンパク質抗原及びHCV非構造タンパク質抗原を、例えば治療的又は予防的目的のためワクチン組成物として哺乳動物の体内で使用可能な単一の免疫原性組成物の形で処方する途を開くものである。
【0031】
かくして1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCV免疫原性組成物に関する。前記HCV免疫原性組成物は、有効量の少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCVワクチン組成物であってよい。前記HCVワクチン組成物は、それぞれ予防的及び/又は治療的有効量の少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含む予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物であり得る。
【0032】
「免疫原性の」という語は、免役応答の少なくとも1つの要素を産生する1つのタンパク質又は物質の能力を意味する。免役応答は、抗原の導入に対する動物の体の全体的応答であり、抗体形成(液性応答又は液性免疫性)、細胞性応答、過敏性又は免疫学的寛容を含めた多数の要素を含んでいる。細胞免疫は、抗原により惹起される細胞性応答を意味し、Tヘルパー細胞及び/又はCTL応答を含む。「抗原」という語は、ペプチド、タンパク質又はその他の物質が抗原性又は免疫原性をもつ能力を意味する。抗原は少なくとも1つのエピトープを含むものと理解される。
【0033】
「抗原性の」という語は、惹起された液性及び/又は細胞性免役応答によって認識されるタンパク質又は物質の能力を意味する。標準的には、タンパク質又は物質の抗原性の質は、インビトロアッセイによって決定される。液性応答については、例えばタンパク質又は物質が惹起された抗体により認識され得、かかる認識が例えば比色分析、蛍光検出又は放射能検出又は沈降物形成により測定可能である例えばELISA、ウェスタンブロット、RIA、免疫沈降アッセイ又は任意の類似のアッセイの中で、惹起された抗体によって認識される場合に、そのタンパク質又は物質は抗原性であると言うことができる。細胞性応答については、タンパク質又は物質は、例えば免役応答が惹起された個体から引出されたT細胞の存在下でそれがインキュベートされ例えば増殖応答、細胞溶解応答、サイトカイン分泌によりT細胞による認識が測定される、例えばT細胞増殖アッセイ、51Cr−放出アッセイ、サイトカイン分泌アッセイなどにおいて、惹起されたT細胞応答によってそれが認識される場合に、抗原性であると言うことができる。抗原性のタンパク質又は物質はそれ自体免疫原性であり得るが、免疫原性となるために付加的構造を必要とする可能性もある。
【0034】
「免疫原性組成物」というのは、免疫原性があるとされる組成物、すなわち、免役応答をひき起こす能力をもつ動物の体内に導入された時点で自らの中に含まれた抗原に対する免役応答の少なくとも1つの要素を惹起する能力を有する抗原を含む組成物である。免疫原性組成物は、明らかに2つ以上の抗原、すなわち例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上、例えば最高15、20、25、30、40又は50個以上の全く異なる抗原といった複数の抗原を含み得る。特に、本発明の免疫原性組成物は、抗原が、HCV外被タンパク質抗原及び/又はHCV非構造タンパク質抗原といったようなHCV抗原であるHCV免疫原性組成物である。
【0035】
「ワクチン組成物」というのは、以下の効果のうちの1つ又は両方をひき起こすのに充分な広さ及び強さをもつ免役応答を惹起する能力をもつ免疫原性組成物である。
− 宿主の体内にすでに存在しそれに対してワクチン組成物がターゲティングされている病原体の増幅に対する安定化効果、及び
− 宿主の体内に新たに導入された病原体が、この病原体に対してターゲティングされたワクチン組成物での免疫化の後に前記宿主から消散される速度を増大させる効果。
【0036】
ワクチン組成物は明らかに、宿主内にすでに存在する病原体の生存に対し負の効果を及ぼすのに充分な広さ及び強さを有する、又は新たに導入された病原体によってひき起こされる疾病症候を免疫化済み宿主が発生させないようにするのに充分な広さ及び強さを有する免役応答をひき起こすこともできる。特に、本発明のワクチン組成物は、病原体がHCVであるHCVワクチン組成物である。
【0037】
1つのワクチン組成物内の抗原の「有効量」は、免役応答を惹起するために必要かつ充分である抗原の量として言及されている。当業者にとっては、ワクチン組成物によって想定されている効果をひき起こすのに充分な広さ及び強さを有する免役応答には、ワクチン接種スキーム又はワクチン接種計画の一部分として(時間的に)連続するワクチン組成物での免疫化が必要となる可能性がある、ということは明白であろう。「有効量」は、処置を受ける個体の健康状態及び体調、処置を受ける個体の分類学的グループ(例えばヒト、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の有効な免役応答を開始する能力、望まれる防御の度合、ワクチンの処方、処置担当医師の査定、感染性病原体の菌株及びその他の関連因子に応じて変動し得る。この量は、日常的試行を通して決定可能な比較的広い範囲の中に入ると予想される。通常、この量は0.01〜1000μg/用量、より詳細には0.1〜100μg/用量まで変動することになる。投薬治療は、単一用量計画又は多重用量計画であってよい。ワクチンは、その他の免疫調節作用物質と併用して投与してもよい。
【0038】
「予防用ワクチン組成物」というのは、防御免疫すなわち予防用ワクチン組成物で免疫化された宿主の抗原投与の時点で疾病の発生を防止する免疫を提供するワクチン組成物である。特にHCVについては、予防用HCVワクチン組成物は、抗原投与HCV感染を急速に消散させるのを助けかつ/又は抗原投与HCV感染が慢性感染にまで進行するのを防ぐ防御免疫を提供する能力をもつワクチン組成物として理解されるべきである。かくして、本発明に従った予防用HCV組成物でのワクチン接種により、加速化されたHCVウイルス浄化又は加速化されたHCV抗原投与感染制御が想定される。
【0039】
予防用ワクチン組成物内の抗原の「予防的有効量」は、防御免疫の発生を可能にする免疫応答を惹起するのに必要かつ充分な抗原の量として言及されている。当業者にとっては、予防用ワクチン組成物により想定された効果をひき起こすのに充分な広さ及び強さをもつ免役応答が、予防用ワクチン組成物での(時間的に)連続する免疫化を要求する必要があるかもしれない、ということは明白であろう(「有効量」も参照のこと)。
【0040】
「治療用ワクチン組成物」は、治ゆ的免役応答、すなわちすでに確立した病原体の感染に付随する疾病症候の逆転をもたらす能力をもつか又は少なくともその中止をもたらす能力を有する免役応答を提供するワクチン組成物である。特にHCVについては、治療的HCVワクチン組成物というのは、血中の例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はγ−グルタミルペプチダーセ(γ−GT)といった血清肝酵素の活性レベルを低減させる能力及び/又はHCV RNAレベルを低減させる能力及び/又は肝疾患を低減させる能力及び/又は肝線維症を低減させる能的及び/又は肝線維症の進行を減速させる能力をもつワクチン組成物として理解されるべきである。
【0041】
治療用ワクチン組成物内の抗原の「治療上の有効量」は、治ゆ的免役応答の発生を可能にする免役応答を惹起するのに必要かつ充分な抗原の量として言及されている。当業者にとっては、治療用ワクチン組成物により想定された効果をひき起こすのに充分な広さ及び強さをもつ抗原性又は免疫原性応答が治療用ワクチン組成物での(時間的に)連続する免疫化を要求する必要があるかもしれない、ということは明白であろう(「有効量」も参照のこと)。
【0042】
特に、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、HCV E1外被ペプチド及びHCV NS3非構造ペプチドを含む。HCV外被ペプチド及びHCV非構造ペプチドのその他の組合せも、除外されるわけではなく、例えばE1とNS2、E1とNS4、E1とNS4A、E1とNS4B、E1とNS5、E1とNS5A、E1とNS5B、E2とNS2、E2とNS4、E2とNS4A、E2とNS4B、E2とNS5、E2とNS5A及びE2とNS5Bを含む。
【0043】
「HCV外被ペプチド」というのは、本明細書では、免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物の中に含まれた場合、それぞれ免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物について定義された通りの免役応答を惹起する能力をもつあらゆるHCVE1又はE2タンパク質、そのあらゆるフラグメント又はそのあらゆる誘導体を意味する。より詳細には、免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物は、それぞれ本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、治療用HCVワクチン組成物又は予防用HCVワクチン組成物である。
【0044】
「HCV非構造ペプチド」というのは、本明細書では、免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物の中に含まれた場合、それぞれ免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物について定義された通りの免役応答を惹起する能力をもつあらゆるHCVNS2、NS3、NS4又はNS5タンパク質、そのあらゆるフラグメント(例えばNS4A、NS4B、NS5A、NS5B)又はそのあらゆる誘導体を意味する。より詳細には、免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物は、それぞれ本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、治療用HCVワクチン組成物又は予防用HCVワクチン組成物である。
【0045】
HCVペプチドの誘導体というのは、修飾されたアミノ酸(例えばビオチン又はジゴキシゲニン、非天然アミノ酸と接合されたもの)を含むHCVペプチド、1つ以上のアミノ酸の(天然に発生するHCV配列との関係における)挿入又は欠失を含むHCVペプチドならびに融合タンパク質を含むよう意図されている。融合タンパク質は、全く異なる2つのHCVペプチド間(以下参照)、又はHCVペプチドとB細胞エピトープ、T細胞エピトープ、CTLエピトープ又はサイトカインといったようなもう1つのペプチド、又はタンパク質の間で形成され得る。その他のペプチド又はタンパク質の融合パートナとしては、ウシ血清アルブミン(album)、キーホールリンペットヘモシアニン、ダイズ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ又はジヒドロ葉酸還元酵素又は(ヒスチジン)6−tag、タンパク質A、マルトース結合タンパク質、Tag・100エピトープ、c−mycエピトープ、FLAG(登録商標)−エピトープ、lacZ、CMP(カルモジュリン結合ペプチド)、HAエピトープ、タンパク質Cエピトープ又はVSVエピトープといった異種エピトープが含まれる。その他のタンパク質としては、ヒストン、1本鎖結合タンパク質(ssB)及び未変性及び工学処理済み蛍光タンパク質例えば緑色、赤色、青色、黄色、シアン蛍光タンパク質が含まれる。
【0046】
HCV外被タンパク質及びHCV非構造タンパク質は、アミノ酸192−383(E1の場合)、アミノ酸384−809又は384−746(それぞれE2−p7及びE2の場合)、アミノ酸810−1026(NS2の場合)、アミノ酸1027〜1657(NS3の場合)、アミノ酸1658−1711(NS4Aの場合)、アミノ酸1712〜1972(NS4Bの場合)、アミノ酸1973〜2420(NS5Aの場合)、及びアミノ酸2421〜3011(NS5Bの場合)にわたるHCVポリタンパク質領域に対応する。これらのタンパク質終点が近似であること(例えばE2のカルボキシ末端は、例えばアミノ酸730、735、740、742、744、745、好ましくは746、747、748、750、760、770、780、790、800、809、810、820で終結する730〜820のアミノ酸領域内のどこかに存在し得る)を理解すべきである。
【0047】
1つの実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、アミノ酸192−326にわたるHCVポリタンパク質領域で構成されているHCV E1ペプチド及びアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含んでいるHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、アミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域、例えばアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドはアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域及びアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含むこともできる。さらなる実施形態においては、本発明のHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物は、配列番号1により定義されるHCV E1ペプチド及び配列番号2により定義されるアミノ酸1188〜1468にわたるHCVポリタンパク質領域を含むHCV NS3ペプチドを含む。より詳細には、前記HCV NS3ペプチドはさらに、例えば配列番号4により定義されるアミノ酸1073〜1081にわたるHCVポリタンパク質領域といったような、配列番号3により定義されるアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたるHCVポリタンパク質領域を含み得る。前記HCV NS3ペプチドは、同様に、配列番号2及び配列番号3又は配列番号4により定義されるHCV NS3ペプチドをも含み得る。特に、かかるHCV NS3ペプチドは配列番号5により定義され得る。
【0048】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、前記HCVペプチドが所望によりスペーサを介してリンクされている、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0049】
さらなる態様においては、本発明は、そのいずれかが任意の医薬上許容される担体の他に少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチドを含んでおり、かつ、
− 前記HCVペプチドが合成ペプチド又は組換え型ペプチドであり、かつ/又は
− 前記HCVペプチドの少なくとも1つのシステインが可逆的又は不可逆的に遮断されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドの少なくとも1つのシステインがアルキル化されており、かつ/又は
− 前記HCV非構造ペプチドの少なくとも1つのシステインがスルホン化されており、かつ/又は
− 前記HCV外被ペプチドがウイルス様粒子として前記組成物に添加されている、
HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0050】
本発明に従った免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物の中に含まれるHCVペプチドは、別々の非リンク型ペプチドとして存在し得る。あるいはまた、前記HCVペプチドは、所望によりスペーサを介してリンクされていてよい。
【0051】
前記リンケージは、1つのペプチドのアルファアミノ基及びもう1つのペプチドのアルファカルボキシ基が関与する正規のペプチド結合を介して2つ以上のペプチドがリンクされている、無スペーサ線形融合タンパク質の形をとり得る。
【0052】
あるいはまた、2つのペプチドをリンクするためにペプチドスペーサが使用される。ペプチドスペーサは、リンクすべきHCVペプチドのいずれが一方に天然にリンクされていないHCVペプチド又は非HCVペプチドであり得る。このようなスペーサの標準的な例としては、nが1〜5の範囲内にあるものとしてG4C(G4S)n又は(G4S)nが考えられる(パーク(Park)ら、2001年、フランケル(Frankel)ら、2000年)。
【0053】
あるいはまた、前記リンケージは、例えば天然に発生するかつ/又は天然に発生しないシステインの間のジスルフィド結合を介して又は例えば2つ以上のペプチドのうちの少なくとも1つの中に存在する天然に発生する又は天然に発生しないリジンのイプシロンアミノ基が関与するペプチド結合を介して前記2つ以上のペプチドがリンクされている分枝融合タンパク質の形をとっている。
分離したペプチドの組換え型産生及び分枝融合ペプチドの合成的構築を除外することなく合成的手段を介して分枝融合ペプチドを得ることができるということが明らかになるだろう。線形融合ペプチドならびに分離した非リンク型ペプチドは、合成的手段及び/又は組換え型産生を介して得ることができる。
【0054】
明らかに、本発明に従った免役原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物中に含まれる2つ以上のHCVペプチドは、「担体」、例えば複数のペプチドを共有結合又はイオン結合する能力をもつ活性化された樹脂の粒子といったような非ペプチドスペーサを介してリンクされた状態で発生し得る。
【0055】
スペーサは同様に、その表面上及び/又は粒子の内部キャビティ内でHCVペプチドを吸収する能力をもつ粒子化合物又は担体をも含んでいる。
【0056】
HCV外被ペプチド又はHCV非構造ペプチドはいずれも、示されているように、合成由来すなわち有機化学を応用して合成されたものであっても、又組換え由来であってもよい。HCVペプチドは、組換え型ウイルスの感染を受けた哺乳動物又は昆虫の細胞、酵母細胞又は細菌細胞の中での発現により産生可能である。
【0057】
より詳細には、前記哺乳動物細胞には、HeLa細胞、Vero細胞、RK13細胞、MRC−5細胞、チャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞及びPK15細胞が含まれる。
【0058】
より詳細には、前記昆虫細胞には、Sf9細胞といったようなSpodoptera frugiperdaの細胞が含まれる。
【0059】
より詳細には、前記組換え型ウイルスには、組換え型ワクシニアウイルス、組換え型アデノウイルス、組換え型バキュロウイルス、組換え型カナリア痘瘡ウイルス、組換え型セムリキ森林熱ウイルス、組換え型アルファウイルス、組換え型アンカラ修飾ウイルス及び組換え型アビポックスウイルスが含まれる。
【0060】
より詳細には、前記酵母細胞には、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces kluyveri又はSaccharomyces uvarumといったSaccharomyces、Schizosaccharomyces pombeといったSchizosaccharomyces、Kluyveromyces lactisといったKluyveromyces、Yarrowia lipolyticaといったYarrowia、Hansenula polymorphaといったHansenula、Pichia pastorisといったPichia、コウジカビ(Aspergillus)種、Neurospora crassaといったNeurospora、又はSchwanniomyces occidentalisといったSchwanniomycesの細胞、又はこれらのいずれかから誘導された突然変異体細胞が含まれる。より詳細には、本発明に従ったHCVペプチド又はその一部分は、Hansenula細胞内の発現産物である。
【0061】
より詳細には、前記細菌細胞には、大腸菌(Escherichia coli)又はStreptomyces種の細胞が含まれる。
【0062】
本明細書に記述されている通りのHCVペプチド又はその一部分の中では、前記ペプチド内に含まれた1つのシステイン残基又は2つ以上のシステイン残基が「可逆的又は不可逆的に遮断」されていてよい。
【0063】
「不可逆的に遮断されたシステイン」というのは、そのシステインチオール基が化学的又は酵素的手段により不可逆的に防御されているシステインである。特に、化学的手段による「不可逆的防御」又は「不可逆的遮断」は、アルキル化、好ましくは例えば活性ハロゲン、エチレンイミン又はN−(ヨードエチル)トリフルオロ−アセトアミドといったようなアルキル化剤を用いた1つのタンパク質内のシステインのアルキル化を意味する。この点において、システインチオール基のアルキル化は、nが0、1、2、3又は4であり、R=H、COOH、NH2、CONH2、フェニル又はそのあらゆる誘導体である(CH2)nRによるチオール−水素の置換を意味するということを理解すべきである。アルキル化は、XがI、Br、Cl又はFといったハロゲンである活性ハロゲンX(CH2)nRなどといったような当該技術分野において既知のあらゆる方法によって実施可能である。活性ハロゲンの例としては、ヨウ化メチル、ヨード酢酸、ヨードアセトアミド、及び2−ブロモエチルアミンがある。その他のアルキル化方法には、NEM(N−エチルマレイミド)又はビオチン−NEM又はそれらの混合物の使用が含まれる(ヘルマンソン(Hermanson)1996年)。本明細書で使用されている「アルキル化剤」という語は、本明細書で記述されるようなアルキル化を実施することのできる化合物を意味する。かかるアルキル化は最終的に、その他のアミノ酸を模倣できる修飾システインを結果としてもたらす。エチレンイミンによるアルキル化は、トリプシンのための新しい開裂部位が導入されるような形でリジンに似た構造を結果としてもたらす(ヘルマンソン(Hermanson)1996年)。同様にして、ヨウ化メチルの使用は、結果としてメチオニンに似たアミノ酸をもたらし、一方ヨードアセテート及びヨードアセトアミドの使用は、それぞれグルタミン酸及びグルタミンに似たアミノ酸をもたらす。類推によりこれらのアミノ酸は好ましくはシステインの直接的突然変異において使用される。
【0064】
「可逆的に遮断されたシステイン」というのは、そのシステインチオール基が可逆的に防御されているシステインのことである。特に本明細書で用いられている「可逆的防御」又は「可逆的遮断」といった語は、システインチオール基に対する修飾作用物質の共有結合、ならびにシステインチオール基のレドックス状態が維持されるような形でのタンパク質の環境の操作(遮へい)を企図している。システインチオール基の可逆的防御は、化学的又は酵素的に実施可能である。
【0065】
本明細書で使用されている通りの「酵素的手段による可逆的防御」という語は、パルミトイルアシルトランスフェラーゼといったようなチオ−エステル化の触媒として関与するアシル−トランスフェラーゼなどのアシル−トランスフェラーゼといったような酵素によって媒介される可逆的防御を企図している。
【0066】
本明細書で使用されている通りの「化学的手段による可逆的防御」という語は、以下のものによる可逆的防御を企図している。
【0067】
1.例えばスルホン化及びチオ−エステル化などによりシステイニルを可逆的に修飾する修飾作用物質による。
スルホン化は、ジスルフィド架橋に関与するチオール又はシステインがS−スルホネートへと修飾される反応である。RSH→RS−SO3−(ダルブル(Darbre)1986)又はRS−SR→2RS−SO3−(亜硫酸との反応(sulfitolysis)(クマール(Kumar)ら、1986年))。スルホン化のための試薬は、例えばNa2SO3又は四チオン酸ナトリウムである。後者のスルホン化用試薬は、10〜200mMの濃度、より好ましくは50〜200mMの濃度で使用される。所望により、スルホン化は、例えばCu2+(100μM−1mM)又はシステイン(1〜10mM)といった触媒作用剤(catalysator)の存在下で実施可能である。
【0068】
反応は、タンパク質変性ならびに未変性条件下で実施可能である(クマール(Kumar)ら、1985、1986)。
【0069】
チオエステル結合形成又はチオ−エステル化は、Xが好ましくは化合物R’CO−X内のハロゲン化物であるものとして、
RSH+R’COX→RS−COR’
により特徴づけされる。
【0070】
2.例えば重金属特にZn2+、Cd2+、モノ−、ジチオ−、及びジスルフィド化合物(例えばアリール−及びアルキルメタンチオスルホネート、ジチオピリジン、ジチオモルフォリン、ジヒドロリポアミド、エルマン試薬、アルドロチオールTM(アルドリッチ(Aldrich))(レイン(Rein)ら、1996年)、ジチオカルバメート)、又はチオール化剤(例えばグルタチオン、N−アセチルシステイン、システインアミン)などによる、本発明のシステイニルを可逆的に修飾する修飾作用物質による。ジチオカルバメートには、スルフィドリル基と反応する能力を付与するR1R2NC(S)SR3官能基を有する広範な分子クラスが含まれる。チオール含有化合物は、好ましくは0.1〜50mM、より好ましくは1〜50mM、そしてさらに一層好ましくは10〜50mMの濃度で使用される。
【0071】
3.10μM〜10mM、より好ましくは1〜10mMの濃度範囲での、チオール状態を保存する(安定化する)修飾作用物質、特に例えばDTT、ジヒドロアスコルビン酸塩、ビタミン及び誘導体、マンニトール、アミノ酸、ペプチド及び誘導体(例えばヒスチジン、エルゴチオネイン、カルノシン、メチオニン)、没食子酸塩、ヒドロキシアニソール、ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、ヒドロキシメチルフェノール及びそれらの誘導体といったような酸化防止物質(antioxidantia)の存在による。
【0072】
4.例えば、(i)金属イオン(Zn2+、Mg2+)、ATPといったような共同因子、(ii)pH制御(例えば、タンパク質については大部分のケースで、pH約5又はpHは好ましくはチオールpKa−2、例えば逆相クロマトグラフィにより精製されたペプチドについてはpH約2)といったようなチオール安定化条件による。
【0073】
(1)、(2)、(3)及び(4)に記述されているような可逆的防御の組合せを適用することもできる。
【0074】
可逆的防御及びチオール安定化化合物は、単量体、重合体又はリポソーム形状で提示され得る。
【0075】
システイン残基の可逆的防御状態の除去は、例えば以下のものにより、化学的又は酵素的に達成可能である。
− 特に1〜200mM、より好ましくは50〜200mMの濃度での、特にDTT、DTE、2−メルカプトエタノール、亜ジチオン酸塩、SnCl2、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロキシルアミン、TCEPといった還元剤、
− 例えばpHの増加によるチオール安定化条件又は作用物質の除去、
− 特に0.01〜5μMの濃度、さらに一層詳細には0.1〜5μMの濃度範囲内のチオエステラーゼ、グルタレドキシン、チオレドキシンなどの酵素、
− 上述の化学的及び/又は酵素的条件の組合せ。
【0076】
システイン残基の可逆的防御状態の除去は、例えば細胞内又は個体内でインビトロ又はインビボで実施可能である。
【0077】
本発明に従った還元剤は、例えば「S−S」ジスルフィド架橋などのシステイン残基内の硫黄の還元、システイン残基の脱スルホン化(RS−SO3−→RSH)を達成するあらゆる作用物質である。酸化防止剤は、チオール状態を保存するか、「S−S」形成及び/又は免疫を最小限におさえるあらゆる試薬である。「S−S」ジスルフィド架橋の還元は、ジスルフィドをチオール(−SH)まで還元する化学反応である。特にHCV外被ペプチドに関しては、ジスルフィド架橋破壊剤及びその方法が、メーテンス(Maertens)らにより、国際公開第96/04385号パンフレット中で開示されている。「S−S」還元は(1)酵素カスケード経路又は(2)還元化合物によって得ることができる。チオレドキシン、グルタレドキシンのような酵素は、ジスルフィドのインビボ還元に関与することがわかっており、インビトロで「S−S」架橋を還元するのに有効であることも示されてきた。ジスルフィド結合は、DTTでの反応についての対応する速度定数よりも約104倍大きいものである見かけの二次的速度で、pH7.0の還元されたチオレドキシンにより急速に開裂させられる。還元反応速度は、1mMのDTT又はジヒドロリポアミドとのタンパク質溶液のプレインキュベーションにより劇的に増大させることができる(ホルムグレン(Holmgren)1979年)。タンパク質ジスルフィド架橋を還元できるチオール化合物は、例えばジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、β−メルカプトエタノール、チオカルバメート、ビス(2−メルカプトエチル)スルホン及びN,N’−ビス(メルカプトアセチル)ヒドラジン及び亜ジチオン酸ナトリウムである。モノクローナル抗体中のジスルフィド架橋の還元に非常に有用であることが示されてきた(サクール(Thakur)ら、1991年)アスコルビン酸塩又は塩化第一スズ(SnCl2)などのチオール基を含まない還元剤も同様に、HCVタンパク質の還元用に使用することができる。さらに、pH値の変化もHCVタンパク質のレドックス状態に影響を及ぼし得る。水素化ホウ素ナトリウムでの処理が、ペプチド内のジスルフィド架橋の還元に有効であることが示されてきた(ガイリット(Gailit)1993)。トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)は、低いpHでジスルフィドを還元することができる(バーンス(Burns)ら、1991)。セレノールは、還元剤としてDTT又は水素化ホウ素ナトリウムが用いられた場合、ジスルフィドからチオールへの還元の触媒として作用する。市販のジセレニドであるセレノシステアミンは、触媒の前駆体として使用された(シング及びカッツ(Singh & Kats)、1995年)。
【0078】
「ウイルス様粒子(virus−like particle)」、「ウイルス様粒子(viral−like particle)」又は「VLP」という語は、本明細書では、それ自体で1つ又は2つのE1及び/又はE2単量体をそれぞれ構成すると考えられているHCVE1及び/又はE2外被タンパク質の複数の基本単位を含有する詳細性質及び形状の構造として定義づけされている。本発明の粒子が、感染性HCV RNAゲノムを持たないものとして定義されていることは、明白でなくてはならない。本発明の粒子は、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を中に取込むことのできる外被タンパク質のシェルから成る、中空であってよい球状の高次粒子であり得る。この高次粒子は、同様にリポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったようなアポリポタンパク質又は低密度リポタンパク質によって、又は特定の器官又は組織に前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段により封入されていてもよい。この場合、このような中空球状粒子は往々にして「ウイルス様粒子」又はVLPと呼ばれる。あるいはまた、高次粒子は、完全な球体がHCVE1又はE2外被タンパク質オリゴマ−から成っているか、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を付加的に中に取込むことができるか又は、リポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったアポリポタンパク質、低密度リポタンパク質によって又は例えばアシアロ糖タンパク質などの特定の器官又は組織に前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段によりそれ自体封入され得る、中実球状構造であり得る。粒子は同様に、通常は丸い(後述の部分参照)形状のものでありかつ通常はHCV外被タンパク質を単層しか含んでいない(上述の中空又は中実球状構造に比べて)さらに小さい構造から成り得る。このようなさらに小さい粒子の標準的な例は、通常4〜16の間の少数のHCV外被タンパク質から成るロゼット様の構造である。後者の詳細な例としては、見かけ上8〜10個のE1単量体を含む本明細書に例示されている通りの0.2%のCHAPS中のE1で得られるより小さな粒子がある。かかるロゼット様の構造は、一つの平面内に組織され、通常例えばホイール状といった丸形である。ここでも又、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を付加的に取込むことができ、そうでなければ、より小さい粒子を、リポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったアポリポタンパク質又は低密度リポタンパク質によってか又は特定の器官又は組織に対し前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段によって封入させてもよい。より小さい粒子は同様に、脂質、洗浄剤、HCVコアタンパク質又はアジュバント分子を付加的に中に取込むことができるか又は、リポソーム又は例えばアポリポタンパク質Bといったアポリポタンパク質又は低密度リポタンパク質によって又は特定の器官又は組織に前記粒子をターゲティングするその他のあらゆる手段によりそれ自体封入され得る、類似のより少数のHCVE1又はE2外被タンパク質から成る小さな球状又は小球状構造であってもよい。当該技術分野において周知の動的光散乱技術によって測定される通りの以上で定義された粒子のサイズ(すなわち直径)は、通常1〜100nmの間、より好ましくは2〜70nmの間にある。HCV外被タンパク質のウイルス様粒子は、国際特許出願国際公開第99/67285号パンフレット、同第02/055548号パンフレット及び国際特許出願PCT/BE02/00063号パンフレットの中で記述されてきた。
【0079】
もう1つの態様においては、本発明は、任意の医薬上許容される担体の他に、
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチド、又は
− 少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、又は
− 異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチド、
を含んでいる、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物に関する。
【0080】
現在既知のHCV型は、HCV遺伝子型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11を含み、その既知のサブタイプは、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2k、2l、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、5a、6a、6b、7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、9a、9b、9c、10a及び11aのHCVサブタイプを含む。複数のプロトタイプ分離株の完全なゲノムを網羅するcDNAクローンの配列は決定されており、HCV遺伝子型1a(例えばGenBank受託番号AF009606)、1b(例えばGenBank受託番号AB016785)、1c(例えばGenBank受託番号D14853)、2a(例えばGenBank受託番号AB047639)、2b(例えばGenBank受託番号AB030909)、2c(例えばGenBank受託番号D50409)、2k(例えばGenBank受託番号AB031663)、3a(例えばGenBank受託番号AF046866)、3b(例えばGenBank受託番号D49374)、4a(例えばGenBank受託番号Y11604)、5a(例えばGenBank受託番号AF064490)、6a(例えばGenBank受託番号Y12083)、6b(例えばGenBank受託番号D84262)、7b(例えばGenBank受託番号D84263)、8b(例えばGenBank受託番号D84264)、9a(例えばGenBank受託番号D84265)、10a(例えばGenBank受託番号D63821)及び11a(例えばGenBank受託番号D63822)の完全プロトタイプゲノムを含む。新しいHCV遺伝子型がさらに国際特許出願第PCT/EP02/09731号パンフレットの中で記述されている。HCV分離株が、HCV感染哺乳動物から単離されたHCV準種とみなされることになる。HCV準種には、通常同じHCV型又はHCVサブタイプの変異体ゲノムをもつ一定数の変異体ウイルスが通常含まれる。
【0081】
本発明のさらなる態様は、本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物の、
− 前記組成物のいずれかに含まれているHCVペプチドに対する液性応答を哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は
− CD4+T細胞増殖応答、及び/又はCD8+細胞毒性T細胞応答及び/又はサイトカインの産生増加であり得る、前記組成物のいずれかの中に含まれるHCVペプチドに対する細胞応答を、哺乳動物の体内で誘発するため、及び/又は、
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性HCV感染に対する哺乳動物の予防的防御のため、及び/又は
− HCVが同種又は異種HCVであり得る、慢性的にHCVに感染した哺乳動物の治療的処置のため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物において肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 全体イシャク(Ishak)評点に従って少なくとも2点だけ慢性HCV感染哺乳動物内の肝疾患を低減させるため、及び/又は
− 例えばアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はガンマ−グルタミルペプチダーゼであり得る血清肝酵素のHCV感染哺乳動物体内の活性レベルを低減させる、ため及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内のHCV RNAレベルを低減させるため、又は、
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症の進行を減速させるため、及び/又は
− HCV感染哺乳動物体内の肝線維症を低減させるため、
の使用を含んでいる。
【0082】
前記哺乳動物は明らかにヒトであり得る。
【0083】
特に、本発明に従った使用は、哺乳動物又はヒトに対し前記組成物のいずれかを投与することを含む、前述の効果のうちの少なくとも1つを得るための方法である。
【0084】
エピトープというのは、それに対する免疫応答の惹起に関与する細胞に結合しかつ/又はこれを活性化させる能力をもつ構造を意味する。かくして、エピトープには、B細胞、T細胞、T−ヘルパー細胞及びCTLのエピトープが含まれる。エピトープには、立体配座エピトープ及び線形エピトープが含まれる。線形エピトープは、例えば制限された数の全く異なる要素と共に解釈される反復的構造の隣接する要素の制限されたセットである。立体配座エピトープには通常、例えば、このような反復的構造の離れた要素が含まれているが、これらの要素はそれでも、前記反復的構造の3次元折畳みに起因して極く近くにある。このような反復的構造の周知の例としては、隣接する又は離れた要素がアミノ酸であるペプチド又はタンパク質がある。ペプチド−又はタンパク質−エピトープは、例えばT細胞レセプタ、B細胞レセプタ、抗体又はMHC分子に結合する能力をもつペプチド又はペプチドの一部分又はタンパク質を含む。線形ペプチド−又はタンパク質−エピトープのサイズは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個といったわずかなアミノ酸に制限され得る。エピトープは抗原性であるが、つねに免疫原性であるとは限らない。
【0085】
T細胞刺激エピトープというのは、T細胞、Tヘルパー細胞、又はCTL−細胞を刺激する能力をもつエピトープを意味する。Tヘルパー細胞刺激エピトープは、そのアミノ酸配列内に(推定上の)T細胞刺激エピトープを含む(潜在的抗原性)ポリペプチドに向かってのCD4+T細胞増殖応答とも呼ばれるリンパ増殖性応答を監視することによって選択され得る。前記リンパ増殖性応答は、T細胞刺激活性についてテストすべき変動する濃度のペプチドでの患者の血清からの末梢血単核細胞(PBMC)のインビトロ刺激を含むTヘルパー検定及びPBMCにより取上げられた放射線認識されたチミジンの量の計数により測定可能である。増殖は、刺激指数(対照培養の平均cpmあたりの抗原刺激された培養の平均cpm)が1を超える、好ましくは2を超える、より好ましくは3を超える場合に陽性とみなされる。CTL刺激エピトープは、51Cr放出を用いる、CD8+CTL応答とも呼ばれる細胞毒性細胞の溶解活性を測定する細胞毒性Tリンパ球又は細胞毒性T細胞(CTL)アッセイによって選択可能である。例えばELISpotアッセイによりサイトカイン産生を測定することによって、細胞媒介型応答を査定することもできる(例えばフジハシ(Fujihashi)ら、1993年を参照のこと)。Th1−様応答の特徴は、例えばIL−2及び/又はIFN−γの産生/分泌である。Th2−様応答の特徴は、例えばIL−4の産生/分泌である。
【0086】
「同種HCVによる感染に対する予防的防御」というのは、HCV抗原(複数も可)が由来するHCV遺伝子型、サブタイプまたは単離体と全く同じ遺伝子型、サブタイプまたは単離体の抗原投与HCVウイルスに対して得られる防御を意味する。組成物には例えば、共に特定のHCV1b型分離株から誘導されているHCV外被ペプチド及びHCV非構造タンパク質のペプチドが含まれる。「同種HCV」はこの場合、同じ特定のHCV1b型分離株となる。「1つの組成物中のHCVペプチドに対し同種のHCVの治療的措置」という文脈中の「同種の」も同様に解釈されなくてはならない。
【0087】
「異種HCVによる感染に対する予防的防御」というのは、HCV抗原(複数も可)が由来するHCV遺伝子型、サブタイプまたは単離体とは別の遺伝子型、サブタイプまたは単離体の抗原投与HCVウイルスに対して得られる防御を意味する。組成物には例えば、共にHCV1b型分離株から誘導されているHCV外被ペプチド及びHCV非構造タンパク質のペプチドが含まれる。「異種HCV」はこの場合、抗原がそこから誘導された1b型分離株、1a型HCVウイルス又は7型HCVウイルスとは充分異なるHCV1b型分離株となる。この特定の状況下で用いられる「充分に異なる」というのは、アミノ酸レベルで少なくとも2%、3%又は4%の差異と理解されるべきである。「1つの組成物中のHCVペプチドに対し異種のHCVの治療的措置」という文脈中の「異種の」も同様に解釈されなくてはならない。
【0088】
「肝疾患」という語は、この状況下では、炎症、線維症、肝硬変、壊死、壊死−炎症及び肝細胞ガンを含めた、C型肝炎ウイルスでの感染によりひき起こされた肝臓のあらゆる異常な状態を意味する。
【0089】
「肝疾患を低減させる」というのは、肝疾患状態のあらゆる安定化又は低減を意味する。肝疾患は、例えばノーデル(Knodell)評定システム(ノーデル(Knodell)ら、1981年)又はイシャク(Ishak)が適合させたノーデル評定システム(イシャク(Ishak)ら、1995年)によって決定可能である。この評点の2点低減は、いくつかの研究で治療的に有益な効果として受入れられている(例えばシフマン(Shiffman)1999の表2に示されているような1996年以降に発表された研究を参照のこと)。
【0090】
「肝線維症の進行を減速させる」というのは、肝線維症の通常予想される進行のあらゆる減速、停止又は復帰を意味する。肝繊維症の進行は、例えばメダヴィア(Metavir)評定システムにより決定可能である。このシステムに従った肝線維症の通常予想される進行とは、未治療の慢性HCV患者の年間約0.133のメタヴィア評点の増加として公表された(ポイナール(Poynard)ら、1997年)。「肝線維症を低減させる」というのは、肝線維症の通常予想される進行のあらゆる減速を含むものとされている。
【0091】
イシャク(Ishak)評定システム(ノーデル(Knodell)ら、1981年の評定システムの修正である。イシャク(Ishak)ら、1995年)又はメダヴィア(Metavir)評定システム(ベドッサ(Bedossa)及びポイナール(Poynard)1996年)に従って、肝線維症及び炎症を評定することができる。イシャク評点は、炎症の等級付け用として0〜18、線維症/肝硬変の病期分類用として0〜6の範囲を有する。イシャク炎症及び線維症評点の合計は、広く用いられている組織学的活性指数(HAI:ノーデル(Knodell)ら、1981)に最も近い。メタヴィア評点は、炎症の等級付け用として0〜3、線維症/肝硬変の病期分類用として0〜4の範囲を有する。未治療患者におけるメタヴィア評点の全体的進行速度は、年あたり0.133と推定される(ポイナール(Poynard)ら、1997)。
【0092】
本発明のその他の態様は、本発明に従ったHCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、予防用HCVワクチン組成物及び/又は治療用HCVワクチン組成物及びDNAワクチンを投与することを含む、HCVナイーブな又はHCV感染した哺乳動物にワクチン接種を行なう方法に関する。
【0093】
上述の通りの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物はさらに、1つの抗原の発現を実施する能力をもつDNAベクターを含み得る。特に本発明に関連して、HCV免疫原性組成物、HCVワクチン組成物、治療用HCVワクチン組成物又は予防用HCVワクチン組成物はさらに、1つ以上のHCV外被ペプチド及び/又は1つ以上のHCV非構造ペプチドの発現を実施する能力をもつDNAベクターを含み得る。あるいはまた、本発明のタンパク質又はペプチドベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物を、DNAベクターベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物(「DNAワクチン」とも呼ばれる)と組合せて使用することもできる。かかる組合せには、例えば、ワクチン接種がDNAベクターベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物を投与することによって開始され、その後続いて本発明のタンパク質又はペプチドベースの免疫原性組成物、ワクチン組成物、治療用ワクチン組成物又は予防用ワクチン組成物が投与される、DNA−初回免疫・タンパク質−追加免疫ワクチン接種スキームが含まれる。特にDNAベクターは、1つ以上のHCV抗原を発現する能力を有する。
【0094】
「DNAベクター」というのは、免役応答を惹起及び/又は増強させるのに有用なペプチドのうちの1つ以上のものについての読取り枠を含むあらゆるDNA担体を意味する。一般に、前記読取り枠は、プロモーター及びターミネータといった転写調節要素に操作可能な形でリンクされ、該読取り枠によりコードされたペプチドの発現を可能にしている。「DNAベクター」という語は、裸のプラスミドDNA、医薬上許容される担体と共に処方されたプラスミドDNA、(例えば上述のもののような)組換え型ウイルス又は適切な医薬上許容される担体と共に処方された組換え型ウイルスを含むものとされている。
【0095】
本明細書で使用されている、「転写調節要素」という語は、必須調節要素を含み、かくして、生きた脊椎動物細胞内に導入された時点でポリヌクレオチドによりコードされた翻訳産物を産生するべく細胞機構を導くことができるヌクレオチド配列を意味している。
【0096】
「操作可能な形でリンクされた」という語は、成分がそれらの通常の機能を実施するべく構成された並置を意味する。かくしてヌクレオチド配列に操作可能な形でリンクされた転写調節要素は、このヌクレオチド配列の発現をもたらす能力を有する。当業者であれば、異なる転写プロモーター、ターミネータ、担体ベクター又は特異的配列をうまく使用することができるということがわかるだろう。
【0097】
「医薬上許容される担体」又は「医薬上許容されるアジュバント」は、それ自体では組成物を受理する個体にとって有害な抗体の産生を誘発せず防御を惹起することもないあらゆる適切な賦形剤、希釈剤、担体及び/又はアジュバントである。好ましくは、医薬上許容される担体又はアジュバントは、抗原によって惹起される免役応答を増強する。適切な担体又はアジュバント(adjuvantia)は、標準的に、以下の非網羅的リストの中に含まれている化合物のうちの1つ以上のものを含む。
− タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体アミノ酸、アミノ酸共重合体及び不活性ウイルス粒子といった大型でゆっくりと代謝する巨大分子、
− 水酸化アルミニウム、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aと組合されたアルミニウム(国際特許出願国際公開第93/19780号パンフレット参照)又はリン酸アルミニウム(国際特許出願国際公開第93/24148号パンフレット参照)、
− N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(米国特許第4,606,918号明細書参照)、N−アセチル−ノルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン2−(1’,2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン、
− 2%のスクアレン/Tween80エマルジョン中にモノホスホリル脂質A(すなわち解毒済み内毒系)、トレハロース−6,6−ジミコレート及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有するRIBI(米国モンタナ州ハミルトンのイムノケムリサーチ(株)(ImmunoChem Research Inc.,Hamilton,MT,USA))。3つの成分MPL、TDM又はCWSのいずれも単独又は2つずつ組合せた形で使用可能である。MPLは同様に、RC−529と呼ばれるその合成類似体又はその他の任意のアミノ−アルキルグルコサミニド(glucosaminide)4−ホスフェートによっても置換され得る(ジョンソン(Johnson)ら、1999年、パーシング(Persing)ら、2002)、
− スチミュロン(Stimulon)(米国マサチューセッツ州ウースターのケンブリッジバイオサイエンス(Cambridge Bioscience,Worcester,MA,USA)、SAF−1(シンテックス(Syntex))といったようなアジュバント、
− ISS(ダイナバックス(Dynavax))又はCpG(コーレイファーマソティカルズ(Coley Pharmaceuticals)といったような細菌DNAベースのアジュバント、
− 代謝性油及びサポニン又は代謝性油、サポニン及びステロールを含んでいる水中油型エマルジョンをさらに補足され得る(例えば国際特許出願国際公開第95/17210号パンフレット、同第97/01640号パンフレット及び同第9856414号パンフレットを参照)か又は、サイトカインをさらに補足され得る(国際特許出願国際公開第98/57659号パンフレット参照)、QS21と3−デ−O−アセチル化モノホスホリル脂質A(国際特許出願国際公開第94/00153号パンフレット)の間の組合せといったようなアジュバント、
− MF−59(カイロン(Chiron)又はポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン]ベースのアジュバント(ウイルスリサーチ・インスティチュート(Vivus Research Institute)といったようなアジュバント、
− オプチバックス(Optivax)(ヴァクセル(Vaxcel)、サイトクス(Cythx))といったブロック共重合体ベースのアジュバント又はアルガムリン及びガンマイヌリン(Algammulin and GammaInulin)(アヌテック(Anutech))といったイヌリンベースのアジュバント、
− 完全又は不完全フロイントアジュバント(それぞれCFA又はIFA)又はゲルブ(Gerbu)調製物(ゲルブバイオテクニック(Gerbu Biotechnik)。完全フロインドアジュバント(CFA)は、ヒト以外の利用分野及び研究目的でも使用可能であり得るということを理解すべきである。
− クイルA(Quil A)といったようなサポニン、QS21、QS7又はQS17といったような精製サポニン、β−エシン又はジギトニン、
− [プリン−プリン−CG−ピリミジン−ピリミジン]オリゴヌクレオチドといったような未メチル化CpGジヌクレオチドを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド。免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、例えばリードル(Riedl)ら(2002年)により記述されているようなカチオン性ペプチドと組合せることも可能である、
− 例えばクイルA(Quil A)(ISCOMS)といったサポニンと合わせた免疫刺激性複合体、
− 本質的に非毒性で非治療性である、水、食塩水、グリゼロール、エタノール、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質、防腐剤といったような賦形剤及び希釈剤、
− 例えば1〜10%又は2.5〜5%の濃度の、スクアラン、スクアレン、エイコサン、テトラテトラコンタン、グリセロール、ラッカセイ油、植物油といったような、生体分解性及び/又は生体適合性油、
− ビタミンC(アスコルビン酸又はその塩又はエステル)、ビタミンE(トコフェロール)又はビタミンAといったようなビタミン、
− カロチノイド又は天然又は合成フラボノイド、
− セレンといったような微量元素。
【0098】
上述のアジュバントのいずれも3−デ−O−アセチル化モノホスホリル脂質Aを含んでおり、前記3−デ−O−アセチル化モノホスホリル脂質Aは、小さい粒子を形成していてよい(国際特許出願国際公開第94/21294号パンフレットを参照のこと)。
【0099】
典型的には、ワクチン組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注入物質として調製される。注入は、皮下、筋内、静脈内、腹腔内、くも膜下腔内、皮内、表皮内注入であってよい。その他のタイプの投与には、移植、座薬、経口接種、腸溶性適用、吸入、エアゾール適用、又は鼻腔用スプレー又は液滴が含まれる。注入に先立ち液体ビヒクル上で溶解又はその中で懸濁させるのに適した固体形態も同様に調製可能である。調製物は同様に、アジュバント効果を増強するためにリポソーム内で乳化又はその中に封入することもできる。ポリペプチドをその中に取込むことも可能である。
【実施例】
【0100】
実施例1.酵母中のHCVE1sの産生
HCVE1sタンパク質(HCVポリタンパク質のアミノ酸192〜326:配列番号1)を、Hansenula polymorpha RB11細胞内で発現された前駆体タンパク質から精製した。前記前駆体タンパク質は、ニワトリリゾチームリーダー(CL)、his−タグ(H6)及びリジン(K)を成熟HCV E1sタンパク質(CL−H6−K−E1s)のN末端に含んでいた。
【0101】
シャットルベクターpFPMT−CL−H6−K−E1s(図1中に概略的に描かれている)の構築が、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例5中で記述されている。
【0102】
pFPMT−CL−H6−K−E1sでのH.polymorpha RB11の形質転換及び形質転換体の選択が、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例6に記述されている。
【0103】
国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例14には、pFPMT−CL−H6−K−E1sで形質転換されたH.polymorphaによるHCV E1sタンパク質の発現のための発酵条件が記述されている。
【0104】
pFPMT−CL−H6−K−E1で形質転換されたH.polymorpha RB11内で発現されたH6−K−E1s前駆体タンパク質からの(ヨードアセトアミドでアルキル化された)成熟HCVE1sの、H6−K−タグ除去を含めた精製については、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例18で記述されている(部分的に国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例17を再度参照)。
【0105】
精製HCVE1sタンパク質(400μg/mLの濃度、ヨードアセトアミドでアルキル化されている)を用いたPBS、0.5%(w/v)ベタイン中のウイルス様粒子(VLP)の形成については、国際特許出願国際公開第02/086100号パンフレットの実施例20の中で記述されている。
【0106】
実施例2:HCVE1sワクチン組成物の処方
出発材料は、(400μg/mlのE1s濃度で、PBS、0.5%(w/v)ベタイン中の)実施例1で記述されたように得られたHCVE1sウイルス様粒子の組成物であった。等体積のこのE1sVLP−組成物及びアルヒドロゲル(Alhydrogel)1.3%(スーパーフォス(Superfos)、デンマーク)を混合した。結果として得られた混合物を、最終的にさらに19体積の0.9%NaClで希釈して、0.065%のアルヒドロゲル及び20μg/mLのE1s濃度の、ミョウバンでアジュバントとしたE1sを得た。
【0107】
実施例3.Vero細胞からのE1sの産生
HCVE1sタンパク質(HCVポリタンパク質のアミノ酸192〜326、実施例1で記述したものと同じ成熟E1s)を、組換え型ワクシニアウイルスHCV11Bを用いてVero細胞内で発現させた。このワクシニアウイルスは基本的にvvHCV11A(米国特許第6,150,134号明細書で記述されているもの)と同一であるが、RK13からVero細胞へと継代されてきた。E1sタンパク質を、システインのためのアルキル化剤としてヨードアセトアミド(N−エチルマレイミドの代りに)を用いて、国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット)の実施例9に従って修正されてはいるものの基本的には米国特許第6,150,134号明細書の実施例5に記述されている通りに(レンティルクロマトグラフィ、還元−アルキル化及びサイズ排除クロマトグラフィを用いて)精製した。精製後、3%のエンピゲン(Empigen)−BBを、国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット)の実施例1に記述されている通りにサイズ排除クロマトグラフィによって3%のベタインと交換した。このプロセスにより、ウイルス様粒子としてのElsの回収が可能である。最後に、400μg/mLというE1s濃度及び0.5%のベタインを含むPBSに対し材料を脱塩した。このE1sを、等体積のアルヒドロゲル1.3%(スペルフォス(Superfos)、デンマーク)と混合し、最後に、19体積の0.9%のNaClでさらに希釈して20μgのE1s/mL及び0.065%のアルヒドロゲルの濃度で、ミョウバンをアジュバントとしたE1sを得た。
【0108】
実施例4 大腸菌(Escherichia coli)内でのNS3の産生
HCVNS3−TNタンパク質(国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット、配列番号5)の実施例7aに記述されているようにアミノ酸1167〜1180がアミノ酸1071〜1084で置換されアミノ酸1166がメチオニンへと突然変異させられたHCVポリタンパク質のアミノ酸1166〜1468、配列番号5)をE.coli内で発現させた。システインのための変性剤としてスルホン化を用いて、基本的に国際特許出願第PCT/EP99/04342号(国際公開第99/67285号パンフレット)の実施例7bに記述されている通りに、タンパク質を精製した。最後に、材料を、1.3mg/mLのNS3−TNタンパク質濃度及び6Mの尿素を含有するpH7.5のPBSに対し脱塩させた。このNS3を、0.9%のNaClで400μg/mLまで希釈した後、等体積のアルヒドロゲル1.3%(スペルフォス(Superfos)、デンマーク)と混合し、最後に、19体積の0.9%のNaClでさらに希釈して20μgのNS3/mL及び0.065%のアルヒドロゲルの濃度で、ミョウバンをアジュバントとしたNS3を得た。
【0109】
実施例5.アカゲザルにおける免疫原性研究
動物の収容、維持及び世話は、全ての関連する指針及び規定要件に適合したものであった。
【0110】
8匹のアカゲザル(Macaca mulatta)の右上肢に用量10μgのNS3−TNを筋内ワクチン接種した。これらの動物の半数に同様に、Vero細胞からの用量10μgのE1sをワクチン接種し、もう半分は酵母からの10μgのE1sを受けた。E1sワクチンは、上左肢に投与した。実施例1〜3に記述されている通り、全てのタンパク質はミョウバン上で処方した。動物は、0、3及び9週目に免疫化を受け、3回目の免疫化から2週間後(すなわち11週目)に免役応答を査定した。
【0111】
抗体力価
抗体力価をELISAにより決定した。血清標本の階段希釈を、社内標準(1000mU/mLのE1s抗体を有するものとして定義されたこの社内標準は、高い抗外被力価に基づいて選択されたHCV慢性担体からの3つの血清の混合物である)と比較した。このアッセイの検出限界は5mU/mlである。
【0112】
全ての動物は、免疫化のために用いられたタンパク質に対する抗体応答を開始させた。log(mU/mL)+/−SD(標準偏差)で表わした抗体レベルは、酵母及びVero由来のE1sで免疫化された動物の両方について、高レベルの抗E1s抗体を伴う担体に基づいた標準の中に見出されるレベルと類似していた。酵母(H.polymorpha)から得たE1s及び哺乳動物(Vero)細胞系統から得たE1sでのこれらの結果の類似性は、両方の分子の間の生化学パラメータの大きな差異を考慮すると、驚くべきものである。酵母E1sタンパク質は、異なる形でグリコシル化された形態のE1sの梯子から成り、一方Vero由来のE1sは、均一的にグリコシル化された単一のタンパク質バンドから成る(図2に示されている)。全体に、Vero細胞由来のE1sで得られた応答より高い応答を誘発する酵母由来のE1sの傾向さえ存在する。
【0113】
【表1】
【0114】
NS3に対する抗体応答は、類似の要領で決定された。log(mU/mL)+/−SDとして表わされた2.74+/−0.32(n=8)の平均力価が達成され、これは、ここでも、慢性担体内で観察されたNS3応答と同様であり、これは、NS3タンパク質が免疫原性であることを示している。
【0115】
T細胞の免疫性
合計体積200μLでウェルあたり4×105個の細胞という濃度で0週目又は11週目に抜きとられた血液から単離させた末梢血単核細胞(PBMC)を、5%のCO2を含有する加湿した雰囲気内で37℃で90時間、ConA(5μg/mL、正の対照)、又は酵母E1sで免疫化された動物については組換え型酵母E1s、又はVero−E1sで免疫化された動物についてはVero−E1s、又はNS3タンパク質(全て5μg/mLで)、又は培地単独(負の対照)のいずれかと共に、U字形の96ウェルのマイクロタイタープレートの中の完全RPMI−1640倍地の中で培養した。マイトジェン及び抗原誘発された増殖応答の両方について最も適切なインキュベーション時間を立証するために一連の実験を実施した。(3H−チミジン摂取のための時間を含め)90時間の細胞培養が、マイトジェン刺激ならびに抗原誘発された応答にとって充分であることがわかった。最後の18時間、細胞をウェルあたり2μCi(3H−TRK758)のチミジンでパルス処理した。その後、ガラス繊維のフィルター上で培養を収獲し、パッカードトップカウンター(ダイレクトベータカウンター)内で同時に計数することによって標識摂取を決定する。
【0116】
結果は、外被抗原と共に培養された細胞の中に取込まれたチミジンと抗原無しで培養された細胞のものの比率である刺激指数(SI)として表わされている。3より大きい刺激指数が、陽性シグナルとみなされる。全ての動物は、実際CoAに対し満足のいく形で反応しており、アッセイ内で使用された細胞の質を証明した。図3に示されている結果から、E1sについて、8匹の動物のうち7匹が、0週目には無かったはっきりした抗原特異的増殖を11週目に有していたという結論を下すことができる。NS3については、8匹の動物全てがこのような応答を実際に開始した(図4)。E1s及びNS3の両方についてのT細胞増殖の高いレベルは、使用されたミョウバン−アジュバントが主として液性免役応答を刺激するものとして知られていることから、驚くべきものであった。このことは明らかに、同じ単一の個体内でT細胞を刺激する上でのE1s及びNS3の両方の高い免疫原性潜在能力を実証している。
【0117】
さらに、両抗原の交差反応性を実証するために、E1sで免疫化された全ての動物からのPBMCが酵母由来のE1s及びVero細胞由来のE1sで再刺激された対照実験が実施された。この実験(結果は図5に提示されている)は、8匹のE1s免疫化された動物のうちの実に7匹がE1sに対する高いT細胞応答を開始したこと、そして、7匹の動物の全てが、ワクチン接種のために使用された抗原の如何に関わらず、酵母及びVero由来のE1s材料の両方に対し反応したことを確認した。
【0118】
これは、同じアジュバント上で処方され単一の動物において投与されたHCV外被抗原及びHCV非構造抗原の組合せの、高等哺乳動物種において高い特異的免役応答を結果としてもたらした最初の実証である。この組合せを使用した場合、免疫系の液性及び細胞性の両方の区画が活性化された。酵母及び哺乳動物細胞に由来するE1s間に見られたような優れた交差反応性は、両方の材料の生物学的等価性を裏づけるものであり、両方の産物の間の生物物理学的レベル上の多大な差異に基づいて考えれば驚くべきことである。従って、酵母E1は、(国際公開第02/055548号パンフレットとして公示された国際特許出願第PCT/EP02/00219号パンフレットの中で記述されているように)抗原投与感染の時点でチンパンジーにおける慢性疾患に対する防御免役応答を誘発するものとして知られる哺乳動物−E1sに置換されることができるはずである。NS3、そしてより詳細には、E1sと同じアジュバントと共に処方されたNS3が有意なT細胞応答を誘発するということを実証すると、E1sをNS3と組合わせることでHCV特異的免役応答の幅が広がり、HCV感染をさらに一層効率良く制御する上で一助となるということが明確に示されることになる。
【0119】
実施例6.E1sとNS3の組合せによるワクチン接種を受けたチンパンジーの予防用防御免疫化
動物の収容、維持及び世話は、全ての関連する指針及び規定要件に適合したものであった。
【0120】
ミョウバン上でH.polymorpha由来のE1s及びE.coli由来のNS3−TNを処方し、40μgのE1s/mL又はNS3/mL及び0.13%のミョウバンの最終的処方を生成した。1.25mLのE1s(左上肢)及び1.25mLのNS3(右上肢)で3匹のチンパンジー(Pan troglodytes)を筋内で免疫化した。4匹目のチンパンジーを、両方の上肢で同時に、0.13%のミョウバンのみから成る1.25mLのプラシーボで免疫化した。0、4、8及び20週目に免疫化を実施した。最終的に、R.パーセル(Purcell)博士(メリーランド州ベセズダのNIH、肝炎ウイルス課)により提供された100CID50(チンパンジー感染用量の)接種材料J4.91で24週目に動物に抗原投与した。抗原投与を受けたチンパンジーの血清中のウイルス血症レベルは、抗原投与後12ヵ月間ロッシュモニターHCV(Roche Monitor HCV)を用いて分析される。検知不能なウイルス血症しかない動物は、完全防御済み動物として分類され、抗原投与から6ヵ月以内にウイルス血症が消散し続く6ヵ月以内にウイルスRNAの跳返り現象がなかった動物は、急性消散動物として分類され、一方6ヵ月後になおウイルス血症を有する動物は、慢性感染動物として分類される。
【0121】
これら4匹のチンパンジーについての免疫化計画が完了した後、E1及びNS3に対する抗体力価を決定した。E1については、酵母及びVero由来の両方に対する抗体力価をELISAを用いて決定した。NS3抗体については、スルホン化タンパク質及び脱スルホン化タンパク質の両方に対する抗体力価をELISAを用いて決定した。ELISAプレートのコーティング時間(37℃で1時間、3μg/mlのNS3)中5mMのDTTと共にスルホン化されたNS3をインキュベートすることによって、脱スルホン化を実施した。アッセイのバックグラウンドより2倍高いODをなおも生成する血清の希釈として、力価を規定した。結果は、表2にまとめられている。
【0122】
酵母又はVeroからのE1を用いた滴定の結果は、非常に類似していた。さらに重要なことに、力価は、本研究の4匹のチンパンジーについてと同じアッセイを用いてそれからのいくつかの標本が再度滴定された(国際特許出願国際公開第02/055548号パンフレットの実施例15に記述されている通りの)E1−Veroで免疫化したチンパンジーにおいて得られた力価ときわめて類似していた。この研究におけるチンパンジーがわずか4回の免疫化しか受けておらず、一方履歴対照動物(historical animal)が6回の免疫化を受けていることを考慮すると、このことは、酵母由来のE1がVero由来のE1に比べ同等かさらにはそれより優れた免疫原性を有することを再度確認するものである。
【0123】
驚くべきことに、脱スルホン化されたタンパク質で測定されたNS3応答は、スルホン化されたタンパク質で測定されたものよりもはるかに高いものであった。この結果は、NS3が免疫応答の誘発に先立ってインビボで脱スルホン化されていることを表わすため、重要なものである。特にT細胞応答については、T細胞がスルホン化されていない未変性NS3を認識できなくてはならないことから、これは非常に重要であり得る。
【0124】
【表2−1】
【表2−2】
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ベクターpFPMT−CL−H6−K−E1sの概略的マップ。
【図2】Hansenula E1a(レーン1)及びVero細胞(レーン2)により産生されたHCVE1sタンパク質のウェスタンブロット分析。分子量マーカー(レーン3)のサイズは、右側に示されている(kDa)。E1特異的マウスモノクローナル抗体IGH201(国際公開第99/50301号パンフレット参照)は、E1タンパク質の検出のために用いられた。
【図3】0週目(黒色棒)又は11週目(斜線棒)に観察されたE1s特異的T細胞刺激。T細胞刺激は、X軸に示されたアカゲザルについてのY軸上の刺激指数(SI)として表現されている。動物1〜4には、NS3及びVero E1sがワクチン接種され、単離されたPBMCはインビトロでVero E1sで再刺激された。動物5〜8は、NS3及び酵母E1sでのワクチン接種を受け、単離されたPBMCは、インビトロで酵母E1sで再刺激された。
【図4】0週目(黒色棒)又は11週目(斜線棒)に観察されたNS3特異的T細胞刺激。T細胞刺激は、X軸に示されたアカゲザルについてのY軸上の刺激指数(SI)として表現されている。動物1〜8には、NS3がワクチン接種された。動物1〜4は同様に、Vero E1sでのワクチン接種を受けた。動物5〜8は同様に酵母E1sでのワクチン接種も受けた。
【図5】X軸に示されたアカゲザルについてのY軸上の刺激指数(SI)として表現されたE1s特異的T細胞刺激。動物1〜4には、NS3及びVero E1sがワクチン接種され、単離されたPBMCはインビトロでVero E1s(斜線棒)又は酵母E1s(黒色棒)で再刺激された。動物5〜8は、NS3及び酵母E1sでのワクチン接種を受け、単離されたPBMCは、インビトロでVero E1s(斜線棒)又は酵母E1s(黒色棒)で再刺激された。
【0126】
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22. Ishii,K.、Rosa,D.、Watanabe,Y.、Katayama,T.、Harada,H.、Wyatt,C.、Kiyosawa,K.、Aizaki,H.、Matsuura,Y.、Houghton,M.、Abrignani,S.、及びMiyamura,T.(1998年)Hepatology 28、1117−1120
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【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCV免疫原性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を有効量含んで成るHCVワクチン組成物。
【請求項3】
予防用HCVワクチン組成物である、請求項2に記載のHCVワクチン組成物。
【請求項4】
治療用HCVワクチン組成物である、請求項2に記載のHCVワクチン組成物。
【請求項5】
前記HCV外被ペプチドがE1ペプチドであり、前記HCV非構造ペプチドがNS3ペプチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記HCV E1ペプチドがアミノ酸192〜326にわたる前記HCVポリタンパク質領域で構成されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記E1ペプチドが酵母内発現により産生される、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記酵母がHansenula polymorphaである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記HCV NS3ペプチドがアミノ酸1188〜1468にわたる前記HCVポリタンパク質領域を含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記HCV NS3ペプチドが、アミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたる前記HCVポリタンパク質領域を含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記HCV NS3ペプチドが、アミノ酸1188〜1468にわたる前記HCVポリタンパク質領域及びアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたる前記HCVポリタンパク質領域を含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
前記HCV E1ペプチドが配列番号1により定義づけされる、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
アミノ酸1188〜1468にわたる前記HCVポリタンパク質領域が配列番号2により定義づけされる、請求項9又は11に記載の組成物。
【請求項14】
アミノ酸1071〜1084にわたる前記HCVポリタンパク質領域が配列番号3により定義づけされる、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項15】
アミノ酸1071〜1084にわたる前記HCVポリタンパク質領域の前記一部分が、アミノ酸1073〜1081にわたる前記HCVポリタンパク質領域である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項16】
アミノ酸1073〜1081にわたる前記HCVポリタンパク質領域の前記一部分が配列番号4により定義づけされる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記HCV NS3ペプチドが配列番号5により定義づけされる、請求項5に記載の組成物。
【請求項18】
前記HCVペプチドが所望によりスペーサを介してリンクされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記HCVペプチドが合成ペプチド又は組換え型ペプチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記HCVペプチドの少なくとも1つのシステインが可逆的又は不可逆的に遮断されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記HCV外被ペプチドの少なくとも1つのシステインがアルキル化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記HCV非構造ペプチドの少なくとも1つのシステインがスルホン化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記HCV外被ペプチドがウイルス様粒子として前記組成物に付加されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記医薬上許容される担体がミョウバンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された非構造ペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
医薬品として使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記HCVペプチドに対する液性応答を誘発するための、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記HCVペプチドに対する細胞性応答を誘発するための、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記HCVペプチドに対する液性及び細胞性応答を誘発するための、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記細胞性応答がCD4+T−細胞増殖応答であるか又はCD8+細胞毒性T−細胞応答であるか又はサイトカイン分泌応答である、請求項30又は31に記載の組成物。
【請求項33】
慢性HCV感染に対する哺乳動物の予防的防御のための、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
慢性HCV感染に対する哺乳動物の治療的処置のための、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
前記HCV感染が同種HCV又は異種HCVによるものである、請求項33又は34に記載の組成物。
【請求項36】
HCV感染哺乳動物における肝疾患を低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項37】
HCV感染哺乳動物における血清肝酵素活性レベルを低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項38】
前記肝酵素がアラニンアミノトランスフェラーゼ又はガンマ−グルタミルペプチダーゼである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
HCV感染哺乳動物におけるHCV RNAレベルを低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項40】
HCV感染哺乳動物における肝線維症の進行を減速させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項41】
HCV感染哺乳動物における肝線維症を低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項42】
HCVを処置するための医薬品の製造のための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項43】
HCVワクチンの製造のための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項44】
ワクチンが治療用HCVワクチンである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
ワクチンが予防用HCVワクチンである、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33〜41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
DNAワクチン及び請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含む、HCVワクチン。
【請求項1】
少なくとも1つのHCV外被ペプチド、少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を含むHCV免疫原性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのHCV外被ペプチド及び少なくとも1つのHCV非構造ペプチド及び所望により医薬上許容される担体を有効量含んで成るHCVワクチン組成物。
【請求項3】
予防用HCVワクチン組成物である、請求項2に記載のHCVワクチン組成物。
【請求項4】
治療用HCVワクチン組成物である、請求項2に記載のHCVワクチン組成物。
【請求項5】
前記HCV外被ペプチドがE1ペプチドであり、前記HCV非構造ペプチドがNS3ペプチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記HCV E1ペプチドがアミノ酸192〜326にわたる前記HCVポリタンパク質領域で構成されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記E1ペプチドが酵母内発現により産生される、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記酵母がHansenula polymorphaである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記HCV NS3ペプチドがアミノ酸1188〜1468にわたる前記HCVポリタンパク質領域を含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記HCV NS3ペプチドが、アミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたる前記HCVポリタンパク質領域を含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記HCV NS3ペプチドが、アミノ酸1188〜1468にわたる前記HCVポリタンパク質領域及びアミノ酸1071〜1084又はその一部分にわたる前記HCVポリタンパク質領域を含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
前記HCV E1ペプチドが配列番号1により定義づけされる、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
アミノ酸1188〜1468にわたる前記HCVポリタンパク質領域が配列番号2により定義づけされる、請求項9又は11に記載の組成物。
【請求項14】
アミノ酸1071〜1084にわたる前記HCVポリタンパク質領域が配列番号3により定義づけされる、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項15】
アミノ酸1071〜1084にわたる前記HCVポリタンパク質領域の前記一部分が、アミノ酸1073〜1081にわたる前記HCVポリタンパク質領域である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項16】
アミノ酸1073〜1081にわたる前記HCVポリタンパク質領域の前記一部分が配列番号4により定義づけされる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記HCV NS3ペプチドが配列番号5により定義づけされる、請求項5に記載の組成物。
【請求項18】
前記HCVペプチドが所望によりスペーサを介してリンクされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記HCVペプチドが合成ペプチド又は組換え型ペプチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記HCVペプチドの少なくとも1つのシステインが可逆的又は不可逆的に遮断されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記HCV外被ペプチドの少なくとも1つのシステインがアルキル化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記HCV非構造ペプチドの少なくとも1つのシステインがスルホン化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記HCV外被ペプチドがウイルス様粒子として前記組成物に付加されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記医薬上許容される担体がミョウバンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV非構造ペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された複数のHCV外被ペプチド及び異なるHCV遺伝子型、サブタイプ又は分離株から誘導された非構造ペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
医薬品として使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記HCVペプチドに対する液性応答を誘発するための、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記HCVペプチドに対する細胞性応答を誘発するための、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記HCVペプチドに対する液性及び細胞性応答を誘発するための、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記細胞性応答がCD4+T−細胞増殖応答であるか又はCD8+細胞毒性T−細胞応答であるか又はサイトカイン分泌応答である、請求項30又は31に記載の組成物。
【請求項33】
慢性HCV感染に対する哺乳動物の予防的防御のための、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
慢性HCV感染に対する哺乳動物の治療的処置のための、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
前記HCV感染が同種HCV又は異種HCVによるものである、請求項33又は34に記載の組成物。
【請求項36】
HCV感染哺乳動物における肝疾患を低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項37】
HCV感染哺乳動物における血清肝酵素活性レベルを低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項38】
前記肝酵素がアラニンアミノトランスフェラーゼ又はガンマ−グルタミルペプチダーゼである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
HCV感染哺乳動物におけるHCV RNAレベルを低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項40】
HCV感染哺乳動物における肝線維症の進行を減速させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項41】
HCV感染哺乳動物における肝線維症を低減させるための、請求項28に記載の組成物。
【請求項42】
HCVを処置するための医薬品の製造のための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項43】
HCVワクチンの製造のための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項44】
ワクチンが治療用HCVワクチンである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
ワクチンが予防用HCVワクチンである、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33〜41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
DNAワクチン及び請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含む、HCVワクチン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2006−516955(P2006−516955A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549134(P2004−549134)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012394
【国際公開番号】WO2004/041853
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(399044160)イノジェネティックス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (17)
【氏名又は名称原語表記】INNOGENETICS N.V.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012394
【国際公開番号】WO2004/041853
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(399044160)イノジェネティックス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (17)
【氏名又は名称原語表記】INNOGENETICS N.V.
【Fターム(参考)】
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