説明

EMI対策回路基板及びその製造方法

【目的】該導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層の形成面積が著しく増大し、しかも電磁波ノイズ低減効果も増大したEMI対策回路基板を提供する。
【構成】絶縁基板1に設けられた回路パターン2、2’間の電気的な接続が必要な箇所に、該絶縁基板1を貫通するスルーホール用貫通孔3が設けられ、該スルーホール用貫通孔3に該回路パターン2、2’と実質的に同一平面を形成するように導電物質4が充填されると共に、該スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆う均一な厚みの、硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターン5が形成された表面がほぼ平坦な両面回路基板6の表面にアース回路8が設けられ、該アース回路8と電気的に接続し、且つ絶縁層7を介して該回路パターン2、2’の電磁波ノイズ対策が必要な回路パターン及びスルーホール部Aを覆う導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9が形成されたEMI対策回路基板。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電磁波ノイズの低減に有効なEMI対策回路基板の新規な構造を及びその製造方法に関するものである。詳しくは、回路パターンが形成された絶縁基板上に、該回路パターン中のアース回路と電気的に接続する導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層を、絶縁層を介して積層したEMI対策回路基板において、該導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層の形成面積が著しく増大し、しかも電磁波ノイズ低減効果も増大したEMI(電磁波障害)対策回路基板及びその製造方法である。
【0002】
【従来の技術】近年、デジタル機器用回路基板において、信号処理速度の高速化と共に回路基板より発生する電磁波ノイズレベルが増大している。これに伴って電波障害自主規制(VCCI)が強化され、回路パターンを絶縁層を介して導電性銅ペーストの硬化体で覆ったEMI対策回路基板が提唱されている。
【0003】このEMI対策回路基板は、電磁波ノイズの低減及び電磁波ノイズマージンの向上策を施したもので、その代表的な例を図2に示した。図2においては、回路パターン2が形成されたされた絶縁基板1において、該回路パターン2のアース回路8と電気的に接続する導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9を絶縁層7を介して該回路パターン2を覆うように構成されていた。
【0004】尚、図2において16はソルダーレジスト層である。
【0005】上記のEMI対策回路基板において、図2に示したように導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9は、表面実装部品を接続するパッド13や、絶縁基板の表裏の回路パターンをスルーホール内に銅鍍金による鍍金層14を形成することにより電気的に接続するスルーホール部15を回避するように形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高密度な回路基板、特に部品穴(スルーホール)を使わずに、フラットパッケージタイプ、チップキャリアタイプの部品やデバイスパッケージを最外層の回路パターン表面(パッド)で電気的接続を行う表面実装が進んだ回路基板では、パッドやスルーホールを回避して導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層で配線パターンを覆うために、スルーホールやスルーホール近傍の回路パターンより発生する電磁波ノイズを低減できないことや導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層が回路パターンのアース回路と電気的接続がとれない部分が生じる等のことより電磁波ノイズ低減効果が充分に発揮されないという問題を有する。
【0007】一方、本願出願人は、上記のEMI対策回路基板を改良すべく、銅鍍金によって形成された鍍金層により電気的な導通が取られたスルーホール内に、絶縁樹脂を充填した後、絶縁層、導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層を順次上記スルーホール上に形成することで、電磁波ノイズ低減効果が向上することを見いだし提案した。
【0008】しかしながら、上記の方法により製造されるEMI対策回路基板は、電磁波ノイズ低減効果には優れるが、絶縁層の信頼性、特に鍍金層が形成されたスルーホール内壁と該スルーホール内に充填された絶縁樹脂の密着性に若干の問題があった。即ち、スルーホール内に形成される鍍金層の表面は、滑らかで光沢を有しているため、絶縁樹脂をスルーホール内に確実に固定するには、該鍍金層の表面を適度に粗面化する必要があるが、スルーホール内壁を物理的な研磨等によって粗面化するのは非常に困難であった。従って、酸性液等の表面処理剤で鍍金層の表面処理を行わざるを得ないが、上記表面処理剤での粗面化の程度は小さく、部品実装時のリフロー等の熱履歴が加わると、スルーホール内から絶縁樹脂が脱落すると言った不具合が発生する恐れがあった。
【0009】更に、両面回路基板として、スルーホール内に鍍金層を形成し回路パターン同士の電気的な接続を行ったスルーホール部を有する両面回路基板を用いた場合、回路パターン上にも鍍金層が形成されるため、回路パターンの厚みが増し該回路パターン間への絶縁層の形成が困難になり、パターン間に空隙ができやすい。このような空隙は絶縁層の絶縁信頼性を低下させるばかりではなく、部品実装時の半田リフロー等の熱衝撃が加わると、空隙が膨張し回路基板表面に膨れが生じる等の不具合の原因にもなる。
【0010】また、製造方法においてもスルーホール部を信頼性よく形成するためには最低2回の鍍金を行う必要もあり、改善の余地があった。
【0011】従って、本発明の目的は、上述した従来の問題点を解消し、電磁波ノイズ低減効果に優れ、且つ絶縁信頼性の高いEMI対策回路基板及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、絶縁基板の両面に回路パターンを形成すると共に、絶縁基板を貫通するスルーホール用貫通孔に該回路パターンと実質的に同一表面を形成するように導電物質が充填されると共に、該スルーホール用貫通孔に充填された導電物質と該回路パターンとの接続部分を覆う均一な厚みの硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターンを設けてスルーホール部が形成された、表面が平坦化された両面回路基板を使用することにより、該両面回路基板上に絶縁層の形成及び導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層が高精度で行えること、また、上記スルーホール部上も該絶縁層の形成及び導電性銅ペーストからなる導電層によって被覆することができるため、絶縁層の絶縁信頼性が高く、且つ電磁波ノイズ低減効果が向上することを見いだした。また、製造工程においては、鍍金層を形成する必要がないため、工程が簡略化し、回路パターンの形成が精度よく行えることを見いだした。
【0013】即ち、本発明は、(1)両面に回路パターンがそれぞれ形成された絶縁基板よりなり、該回路パターン間の電気的な接続が必要な箇所に該絶縁基板を貫通するスルーホール用貫通孔が設けられ、該スルーホール用貫通孔に該回路パターンと実質的に同一平面を形成するように導電物質が充填されると共に、該スルーホール用貫通孔に充填された導電物質と該回路パターンとの接続部分を覆う均一な厚みの硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターンを設けてスルーホール部が形成された、表面がほぼ平坦な両面回路基板、及び(2)該両面回路基板の少なくとも一方の表面にはアース回路が設けられ、該アース回路が設けられた基板表面に、該アース回路と電気的に接続し、且つ絶縁層を介して少なくとも該回路パターンの電磁波ノイズ対策が必要な回路パターン及びスルーホール部を覆う導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層を設けたことを特徴とするEMI対策回路基板を提供する。
【0014】以下、本発明を添付図面に従って更に詳細に説明するが、本発明はこれの添付図面に何等限定されるものではない。
【0015】本発明の代表的な態様のEMI対策回路基板の断面図を図1に示す。
【0016】上記の図面に示すように、本発明のEMI対策回路基板は、両面に回路パターン2、2’が形成された絶縁基板1よりなり、該絶縁基板1の両面に存在する回路パターン2、2’間の電気的な接続が必要な箇所に、該絶縁基板1を貫通するスルーホール用貫通孔3が設けられ、該スルーホール用貫通孔3に該回路パターン2、2’と実質的に同一平面を形成するように導電物質4が充填されると共に、該スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆う均一な厚みの、硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターン5が形成された表面がほぼ平坦な両面回路基板6を含む。該両面回路基板6の少なくとも一方の表面にはアース回路8が設けられ、該アース回路8が設けられた基板表面に、該アース回路8と電気的に接続し、且つ絶縁層7を介して少なくとも該回路パターン2、2’の電磁波ノイズ対策が必要な回路パターン及びスルーホール部Aを覆う導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9が形成されている。該絶縁層7には、上記アース回路8の一部が露出するように開口10が設けられ、該絶縁層7の外表面、開口10の内壁、アース回路8の露出面にわたって連続した導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9を被覆し、該導電層9とアース回路8との電気的接続が成される。
【0017】上記絶縁基板1として、公知の材質、構造を有するものが制限なく使用される。代表的なものを例示すれば、紙基材−フェノール樹脂積層基板、紙基材−エポキシ樹脂積層基板、紙基材−ポリエステル樹脂積層基板、ガラス基材−エポキシ樹脂積層基板、紙基材−テフロン樹脂積層基板、ガラス基材−ポリイミド樹脂積層基板、ガラス基材−BT(ビスマレイミド−トリアジン)レジン樹脂積層基板、コンポジット樹脂基板等の合成樹脂基板や、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等のフレキシブル基板や、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属をエポキシ樹脂等で覆って絶縁処理した金属系絶縁基板、あるいはセラミックス基板等が挙げられる。
【0018】また、絶縁基板1の両面に形成される回路パターン2、2’の材質は、導電性を有する公知の材質が制限なく使用できる。代表的な材質を例示すれば、銅、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。そのうち、銅が最も好適に使用される。また、上記回路パターンの厚みについても特に制限されないが、一般には5〜70μmが適当である。
【0019】上記両面回路基板において、スルーホール部Aは、絶縁基板1の所定の箇所に絶縁基板を貫通して設けられたスルーホール用貫通孔3に導電物質4をその端面が平滑で、且つ回路パターン2、2’とほぼ同一平面をなすように充填されると共に、該スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆う均一な厚みの、硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターン5を設けて形成される。
【0020】上記スルーホール用貫通孔3に充填される導電物質4の材質は、スルーホール用貫通孔3に固定されると共に、導電性を有するものであれば特に制限されない。本発明においては、回路基板の製造工程において、スルーホール用貫通孔への充填のし易さや、生産性の面などから、硬化後に導電性を有する硬化体を与える硬化性導電物質を硬化したものが好適である。
【0021】上記硬化性導電物質としては、金、銀、銅、ニッケル、鉛、カーボン等よりなる粉状の導電材料とエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の架橋性の熱硬化性樹脂とを必要により有機溶剤と共に混合してペースト状とした公知の硬化性導電物質を使用することができる。これらの硬化性導電物質の中から、エッチングに使用するエッチング液、例えば、塩化第二鉄エッチング液、塩化第二銅エッチング液、過硫酸アンモニウムエッチング液、過硫酸ナトリウムエッチング液、過硫酸カリウムエッチング液、過酸化水素/硫酸エッチング液、硫酸アンモニウム錯イオンを主成分とするアルカリ性エッチング液等のエッチング液により実質的に溶解されない硬化体を与えるものを選択して使用することが好ましい。
【0022】また、上記硬化性導電物質は、良好なスルーホール抵抗を得るために、硬化後の電気抵抗が、1×10-2Ω・cm以下となるように、導電材料の選択、及び使用量を調節することが好ましい。
【0023】上記したように、スルーホール用貫通孔3に充填される導電物質4が導電材料と熱硬化性の樹脂の混合物であることと、一般に使用される絶縁基板の材質が、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であることより、該導電物質4とスルホール用貫通孔3の内壁とのなじみがよく密着性に優れるため、該導電物質4がスルーホール用貫通孔3から脱落するといった不具合の発生がなくなり、信頼性よく絶縁層7及びその後に続く導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9の形成が行える。
【0024】また、回路パターン2、2’の形成において、鍍金層からなる導電層を形成する必要がないため、該回路パターン2、2’の厚みが薄いため、後記する絶縁層の形成が容易に高精度で行え、且つ回路パターン間にボイド等の空隙が生じにくいため、信頼性よく形成することができる。
【0025】また、上記スルーホール用貫通孔3の径は、特に制限されるのものではなく、任意に設定することができる。本発明にあっては、該スルーホール用貫通孔3の径は、硬化性導電物質を充填することが可能な程度の孔径以上、通常0.1mm以上、好ましくは、0.2mm〜2mmより選択することができる。そして、本発明においては、かかる微少な孔径であっても確実に導通をとることが可能であるため、後記するファインパターンの形成に有効である。本発明において、スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2,2’が実質的に同一平面をなすように形成することが、得られるEMI対策回路基板の絶縁信頼性を向上させるために重要である。後記する上記スルーホール部Aと回路パターン2、2’を覆うように形成される絶縁層7を、精度よく且つ高い信頼性で確実に形成するために必要である。
【0026】本発明において、上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2,2’との接続部分は、該接続部分を覆うように硬化性導電物質による均一な厚みの導電パターン5が形成され、該導電物質4とパターン2,2’の電気的な接続が信頼性よく成される。
【0027】上記導電パターン5で上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を均一な厚みで覆いスルーホール部Aを形成することにより、鍍金を用いない簡易な手段で、且つ該導電物質4と回路パターン2、2’との電気的接続の信頼性を確実に向上させることが可能となる。また、同様の目的で、スルーホール用貫通孔に充填された導電物質と回路パターンとを鍍金層によって覆う手段では、スルーホール用貫通孔に充填された硬化性導電物質の硬化体(導電物質4)と鍍金層との、熱膨張係数の差が大きく、部品実装のリフロー時において熱応力が該鍍金層に集中し、場合によっては、スルーホール部Aの導通不良につながる恐れがあるが、本発明の両面回路基板においては、スルーホール用貫通孔3に充填される導電物質4と、該導電物質と回路パターンの接続部を覆う導電パターン5の熱膨張係数が近似しているため、リフロー時に発生する熱応力が小さいため、高い接続信頼性を得ることができる。更に、導電層の厚みに影響を与えないため、回路パターンの形成精度に関して有利である。
【0028】また、スルーホール部Aの表面は、硬化性導電物質の硬化体により覆われているため、後記する絶縁層とスルーホール部Aの表面との密着性が優れ、高い絶縁信頼性を得ることが可能となる。
【0029】上記導電パターン5によって、上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターンとの接続部分を覆う態様は、少なくとも該スルーホール用貫通孔3の周縁と、該導電物質4と回路パターンとが接触する箇所を覆って導電パターンが存在する態様であればよいが、より好ましくは、該導電物質の表面の実質的に全表面と該導電物質4に接続する回路パターンの端部とを覆う態様が好ましい。かかる回路パターンの端部の長さは回路パターンの回路幅等にも依るが、一般には、信頼性を考慮すれば該導電物質4が充填されたスルーホール用貫通孔3の周縁から0.1mm以上がよいが、回路基板の配線密度を考慮すると2mm以下で決定することが好ましい。
【0030】また、図1の(a)に示すように、更に、信頼性を向上させるため、上記スルーホール貫通孔3に充填された導電物質4に接続する回路パターン2、2’にランド部12を設け、上記導電パターン5を該ランド部12も含めて覆うように形成することが更に好ましい。該ランド部12の大きさは該スルーホール用貫通孔3の円周から0.1mm〜2mmになるように設計することが好適である。勿論、図1の(b)に示すようにランド部を形成しない態様においても、十分に信頼性を確保することが可能である。
【0031】上記の導電パターン5によって上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’の接続部分を覆う態様において、図3に示すように、スルーホール部と回路パターンの接続部分の形状を、いわゆるティアドロップ状に形成することもできる。上記接続部分をティアドロップ状に形成することで、該導電パターン5に覆われる回路パターンの面積が増し、特に、図1の(b)に示すランド部を設けない態様においても、接続部の信頼性をより向上することが可能となる。
【0032】また、上記の図1の(a)のように回路パターン2、2’にランド部12を設け、上記導電パターン5を該ランド部12も含めて覆うように形成する態様では、図4に示すように、該導電パターン12を上記導電物質4の中心部を除いて、ドーナッツ状に形成することもできる。このように導電パターン5をドーナッツ状に形成することで、後記する該導電パターン5に使用される硬化性導電物質の使用量を低減することができ、経済的にも有利である。
【0033】また、上記本発明の両面回路基板において、上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電層4と回路パターン2,2’との接続部分を覆うように形成される導電パターン5は、均一な厚みであることが必要である。即ち、該導電パターン5を均一にすることで、安定したスルーホール抵抗値を得ることができ、製造時の歩留まりが向上する。また、該導電パターンが厚みに関して均一性を有することによって、後記する上記スルーホール部Aと回路パターン2、2’を覆うように形成される絶縁層7を、精度よく且つ高い信頼性で確実に形成するために必要である。
【0034】上記導電パターン5の厚みは、特に制限されないが、スルーホールの信頼性を考慮すると、5μm〜100μmの厚みが好ましい。また、半田ペーストの印刷性や絶縁層7の絶縁信頼性を考慮すると5μm〜70μmの範囲に制御すると更に好適である。また、該導電パターン5の厚みのばらつきは、該導電パターン5の形成方法や表面実装部品の接続部の大きさに依存するが、その平均厚みに対して±30%以下となるように調整することが好ましい。
【0035】更に、本発明においては、上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆うように形成される導電パターン5の材質は、前記スルーホール用貫通孔3に充填する導電物質として使用される硬化性導電物質の硬化体と同材質のものを使用することもできるが、特に、該硬化性導電物質より耐湿性を備えた硬化体を与える硬化性導電物質を使用することが好ましい。
【0036】かかる耐湿性を備えた導電パターン5を形成することにより、信頼性、特に耐湿性に優れたスルーホール部Aを有する回路基板を得ることができる。
【0037】上記耐湿性の硬化体を与える硬化性導電物質は、公知の硬化性導電物質より選択して使用することができる。例えば、上記耐湿性の硬化体を与える硬化性導電物質に含まれる導電材料としては、特には制限されないが、酸化されにくく、且つ固有抵抗値の低い金、銀、銅等の金属や、抵抗値は若干高いが全く酸化の影響を受けないカーボン等が好適に使用できる。
【0038】また、上記導電材料の中で、隣接する回路パターンとの絶縁信頼性を考慮すれば、マイグレーションの少ない金属を採用することが好ましい。中でも、銅は導電性、酸化防止の作業性、コスト等から考えて、特に好適に用いられる。
【0039】更に、上記硬化性導電物質に含まれる銅等の金属の酸化を防止するため、バインダー成分として熱硬化時に還元性雰囲気を与えるレゾール型のフェノール樹脂を主として使用したものがより好ましい。
【0040】上記レゾール型のフェノール樹脂を、スルーホール用貫通孔内に充填される硬化性導電物質のバインダー成分として用いた場合、該樹脂の熱硬化時に副生成物として発生する水分やホルマリンの影響でスルーホール内にボイドが発生し、スルーホール内に充填された硬化性導電物質の硬化体の導電性の低下、更には該スルーホール近辺に位置する回路の信頼性をも損ねるものであり、本発明においては、導電パターン5の形成においてのみ有効に使用することができる。
【0041】一方、前記したように、スルーホール用貫通孔に充填する硬化性導電物質は、バインダー成分として、バインダーの硬化時に副生成物の発生の少ないエポキシ樹脂と硬化剤よりなるエポキシ樹脂系バインダーを用いたものであり、耐湿性においては、前述のレゾール型のフェノール樹脂をバインダーとして主として使用した硬化性導電物質より若干劣るものであり、本発明の上記態様によれば、かかる耐湿性に乏しい硬化性導電物質を、導電パターン5の耐湿性により保護することができ信頼性を一層高めることが可能である。
【0042】従って、本発明においては、スルーホール内部にはバインダーの硬化時に副生成物の発生の少ないエポキシ樹脂系のバインダーを用いた硬化性導電物質を充填し、スルーホール内部の導電物質を形成し、且つスルーホールに充填された硬化性導電物質の硬化体と回路パターンの接続部分を覆うように形成される硬化性導電物質に、レゾール型のフェノール樹脂をバインダー主成分とし、マイグレーションの少ない銅を金属成分とした耐湿性銅ペーストを用いる態様が最も推奨される。
【0043】かかる構成でスルーホール部を形成することにより、スルーホール内部に欠陥が存在せず、且つ信頼性の高いスルーホール部Aを有する両面回路基板6を得ることができる。
【0044】本発明において、上記両面回路基板6の少なくとも一方の表面には、絶縁層7を介して上記回路パターン2、2’中のアース回路8と電気的に接続された導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9が形成される。
【0045】上記絶縁層7としては、電気的絶縁性を有するものであれば、公知の絶縁材料が特に制限なく使用される。一般には、絶縁層を形成する範囲の設定が容易な絶縁材料が好適である。例えば、熱または光によって硬化する公知の絶縁レジストが好ましい。上記絶縁レジストは塗布方法に準じてインキ、ドライフィルム、液状レジスト等適時選定される。上記絶縁レジストとしては、エポキシ樹脂系硬化性組成物、アクリル樹脂系硬化性組成物、エポキシ樹脂/アクリル樹脂混合系硬化性組成物、ポリイミド樹脂系硬化性組成物、ビスマレイミド−トリアジン樹脂系硬化性組成物等の公知の組成を有する硬化性組成物が使用される。また、該絶縁層7の厚みは、その両面に形成される回路パターンと導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9との絶縁性を維持し得る程度であればよく、一般には、15〜100μmの厚みが適当である。
【0046】また、上記絶縁層7は一層で形成してもよいが、絶縁層の絶縁信頼性を考慮するると、2層以上で形成されるのが好ましい。該絶縁層を1層で形成した場合、ピンホール等の絶縁層の欠陥が存在すると、その欠陥部分で後に形成される導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層と回路パターンとの絶縁性が劣化し、最悪の場合は短絡といった事故につながる。上記のように、複数の層で絶縁層を形成すると、欠陥部分が補修されるため歩留まりよく回路基板を製造することができる。
【0047】上記絶縁層表面は、表面に形成される導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9の密着性を向上させるため、粗面化処理を施してもよい。上記粗面化処理の方法は、バフ、ブラシ等で物理的に研磨する方法、アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液、クロム酸溶液に浸漬することにより化学的に粗面化する方法など公知の方法が特に制限なく採用される。
【0048】また、上記回路パターン2、2’中のアース回路8と電気的に接続された導電層9を構成する導電性銅ペーストは、公知の銅ペーストが特に制限なく使用される。代表的な導電性銅ペーストを例示すれば、導電材料としての銅粉、レゾール型フェノール樹脂等のバインダー成分、並びに、オレイン酸等の不飽和脂肪酸またはその塩等の還元剤を主な成分とし、必要に応じて溶剤が添加された導電性銅ペーストが挙げられる。
【0049】また、上記導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9の厚みは、特に制限されないが、該導電層の導電度と電磁波ノイズ低減効果を考慮すると、5〜100μmの厚みが好ましい。また、表面実装部品の実装時に印刷される半田ペーストの均一性を考慮すると5〜70μmの範囲に制御すると更に好適である。
【0050】また、上記導電層9を形成する範囲は、絶縁層を介して電磁波ノイズ対策が必要な回路パターン及びスルーホール部を覆うように形成してもよいが、上記絶縁基板に形成された部品実装用のパッド13及びリードスルー部品用のスルーホール部を除いて、上記両面回路基板6のほぼ全面に、絶縁層を介して形成すると更に好ましい。両面回路基板6のほぼ全面に上記導電層を形成することで、該導電層9で形成されるアース回路のインピーダンスが低下し、アース電位が安定し電磁波ノイズ低減効果がより一層発揮できることになる。
【0051】また、上記導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9の形成は、該両面回路基板の表裏両面に形成してもよい。該導電層を両面に形成することで、更に電磁波ノイズ低減効果の向上が期待できる。
【0052】上記のことから明らかなように、従来のスルーホール用貫通孔に鍍金層を形成して絶縁基板の表裏に存在する回路パターン間の電気的な接続を行っていた両面回路基板を用いてEMI対策回路基板を形成する場合に比べて、本発明の両面回路基板6を用いると、スルーホール部A上にも絶縁層7を介して、信頼性よく上記導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9を形成することができるため、形成される該導電層9の面積も広く、アース回路のインピーダンスも低下するため、電磁波ノイズ低減効果を飛躍的に増加することができる。
【0053】本発明において、絶縁層7には、回路パターン2、2’中のアース回路8と上記導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9を接続するための開口10が存在する。かかる開口は、該アース回路8の少なくとも一部を露出するように設けられる。かかる露出面積は、該導電層9とアース回路8との電気的な接続がとれる程度に露出すればよいが、上記電気的な接続の信頼性や電磁波ノイズ低減効果を考慮すると、該アース回路のほぼ全面を露出させることが好ましい。該アース回路のほぼ全面を露出させることで、該アース回路と該導電層9との間の接触抵抗が小さくなり、形成される導電層9やアース回路のインピーダンスが低くなり、電磁波ノイズ低減硬化が向上する。
【0054】本発明のEMI対策回路基板の他の構造として公知の回路基板の構造が特に制限なく採用される。例えば、図1に示すように、最外層の必要所望の箇所に、導電層銅ペーストの硬化体からなる導電層9上にオーバーコート層11による耐性の良好な層を設けることが好ましい。
【0055】本発明のEMI対策回路基板の代表的な製造方法を例示すれば、以下の方法が挙げられる。
【0056】即ち、図5は、EMI対策回路基板を製造する工程を断面図で示したものである。かかる図に示すように、(a)絶縁基板1の両面に回路パターン2、2’を有し、且つ該絶縁基板を貫通するスルーホール用貫通孔3を有し、該スルーホール用貫通孔3に該回路パターンと実質的に同一平面を形成するように導電物質4が充填されると共に、該スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターンとの接続部分を覆う均一な厚みの硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターン5を設けてスルーホール部Aが形成された、表面がほぼ平坦な両面回路基板6の少なくとも一方の表面に、(b)上記の回路パターン上に形成される導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9と接続が必要な回路パターン2中のアース回路8の一部と表面実装用部品の接続用パッド13とを露出させる開口10を形成するように絶縁層7で被覆した後、(c)該アース回路8の露出部及び絶縁層表面に導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9を形成し、(d)該導電層9の表面をオーバーコート層11で、また回路パターン2’上をソルダーレジスト層16でそれぞれ覆うことにより、本発明のEMI対策回路基板を製造することができる。
【0057】上記絶縁層7の形成方法は、特に限定されず、公知の方法が制限無く採用される。一般には、ドライフィルム、液状レジスト、ドライフィルム・液状レジスト併用等の種々の形態の光或いは熱により硬化する硬化性絶縁樹脂を使用することができる。該絶縁層の形成方法としては、上記硬化性絶縁樹脂を使用し、印刷法、写真法等の方法をファイン度に従って適宜選択して採用すればよい。例えば、光の照射により硬化する液状レジスト、ドライフィルム等の硬化性絶縁樹脂層を両面回路基板の全面に積層し、開口の形成が必要な箇所を除いて光を照射後、未硬化部分を現像により除去することによって絶縁層を形成することができる。
【0058】上記の方法で、絶縁層の形成に光により硬化するドライフィルムを用いると、絶縁樹脂の厚み精度もよく、表・裏同時に形成することもできるため、より効率的に且つ高精度で絶縁層を形成することができる。
【0059】また、図5に示す態様において、上記絶縁層7の開口10の大きさは、導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9により、アース回路8との電気的接続が得られる大きさとすることが好ましい。更に好ましくは、アース回路8と上記導電層9との接触抵抗が小さくなるように、アース回路8のほぼ全面を露出することが望ましい。
【0060】前記方法において、導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9を形成する方法は特に制限されないが、一般には、印刷機を用いたスクリーン印刷法で形成する方法が好適である。
【0061】上記の絶縁層を介して形成される導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9は、図には示していないが、回路パターン2、2’中の電源回路に接続しても同様の電磁波ノイズ低減効果が得られる。上記導電層9を電源回路に接続する方法は、アース回路に接続する方法と同様に、回路パターン中の電源回路を絶縁層に形成される開口10で露出し、該開口及び電源回路の露出部を含めて絶縁層上を導電層9で被覆することにより形成することができる。
【0062】上記製造方法において、両面回路基板の具体的な製造方法は、特に制限されるものではなく、得られる多層回路基板の構造に応じて適宜決定すればよい。かかる両面回路基板は、図6及び図7に示す方法が代表的な方法として挙げられる。
【0063】即ち、図6においては(a)絶縁基板1の両面に形成された回路パターン2、2’間の電気的な接続が必要な箇所に、スルーホール用貫通孔3を設け、(b)該スルーホール用貫通孔3に導電性を有する硬化体を与える硬化性導電物質17を充填して硬化させた後、(c)該回路パターン2、2’及び導電物質4によって構成される表面を実質的に平滑に研削し、(d)次いで、該スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターンとの接続部分を覆うように硬化性導電物質を塗布して均一な厚みの導電パターン5を形成することによりスルーホール部Aを形成することによって両面回路基板6を得ることができる。
【0064】また、予め回路パターンを形成しない他の方法として、図7に示すように、(a)両面に導電層18を有する絶縁基板1にスルーホール用貫通孔3を設け、(b)該スルーホール用貫通孔に導電性を有する硬化体を与える硬化性導電物質17を充填して硬化させた後、(c)該導電層18及び導電物質4によって構成される表面を平滑に研削し、(d)次いで、該導電層16に回路パターン2、2’を形成した後、(e)該スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆うように硬化性導電物質を塗布して均一な厚みの導電パターン5を形成することによりスルーホール部Aを形成することによって両面回路基板6を製造することができる。
【0065】以下、上記工程を更に詳細に説明する。
【0066】上記方法において、スルーホール用貫通孔3の形成方法は、ドリリング加工、パンチング加工、レーザー加工等の通常の回路基板の製造と同様の公知の手段が特に限定されずに用いられる。
【0067】また、上記絶縁基板に形成されたスルーホール用貫通孔3への硬化性導電物質17の充填は、該硬化性導電物質がスルーホール用貫通孔の全空間を満たし、且つ回路パターン或いは回路パターンが形成される導電層18の両表面より若干、具体的には、0.1mm以上、好ましくは、0.1mm〜2mm突出する程度に充填することが望ましい。該硬化性導電物質の代表的な充填法を例示すれば、印刷法によって1回或いは複数回の塗布を行う方法、絶縁基板の表裏両面側から表裏一対のスキージで圧入する方法、ロールコーター或いはカーテンコーターによって充填する方法等の手段が好適に用いられる。
【0068】また、上記硬化性導電物質を充填する態様において、図7に示す予め回路パターンを形成しないで、硬化性導電物質を充填する方法が、回路パターンが形成されていないため、硬化性導電物質で該第回路パターンや部品接続用のパッド13を汚染する恐れがないため、ファインパターンを形成する場合には有利である。
【0069】また、上記硬化性導電物質の充填に際し、硬化性導電物質は本来、バインダー硬化時の硬化収縮により硬化性導電物質に含有される導電材料が接触するため、導電性を呈するものであり、必ず硬化時には収縮が伴う。従って、スルーホール用貫通孔3に該硬化性導電物質17を充填する場合、硬化後に該硬化性導電物質の硬化体表面が上記回路パターン2、2’や回路パターンが形成される導電層18より凹むことのないよう、収縮率を勘案して充填することが重要である。
【0070】また、上記スルーホール用貫通孔3に充填された硬化性導電物質の硬化は、熱風炉、赤外線炉、遠赤外線炉、紫外線硬化炉、電子線硬化炉等の公知の硬化方法より、硬化性導電物質の硬化に適するものを適宜選んで硬化させれば良い。
【0071】上記回路パターン2、2’や回路パターンが形成される導電層18と実質的に同一平面を形成するように、スルーホール用貫通孔3に導電物質4を充填する方法を具体的に例示すれば、上記硬化性導電物質17をスルーホール用貫通孔に充填した後、硬化させ、該硬化性導電物質の硬化体(導電物質4)が該回路パターンや回路パターンが形成される導電層18より突出した部分を平滑に研削する方法が好適である。上記導電物質4が該回路パターンより突出した部分を平滑に研削する方法としては、スラリー研磨、バフ研磨、スクラブ研磨、ベルト研磨等の通常の回路基板の研磨に用いられる方法が好適に用いられる。
【0072】尚、図には示されていないが、図6の(c)の工程において、導電物質4の表面を平滑に研削する際、回路パターン2、2’を保護するために該回路パターン2、2’に前記絶縁層よりなる保護層を予め形成させることも可能である。
【0073】また、上記方法において、絶縁基板1の両面に導電層18を有する場合、これに回路パターン2、2’を形成する方法は特に限定されず、公知の方法が特に制限なく採用される。
【0074】一般的な形成方法を例示すれば、例えば、両面に導電層18を有する絶縁基板の該導電層18表面に、エッチングレジストによりエッチングパターンを形成後、エッチングを行う方法が一般的である。ここで用いられるエッチングレジストはドライフィルム、レジストインク等が特に制限なく使用され、パターンのファイン度によって適宜選択して使用すれば良い。また、エッチングレジストパターンはエッチング法によってポジパターン或いはネガパターンを適宜採用すれば良い。例えば、テンティング法に代表されるエッチング法ではポジパターンを、半田剥離法、SES法に代表されるエッチング法ではネガパターンを採用すれば良い。
【0075】また、図7に示す予め回路パターンを形成しないで、導電層18及び導電物質4によって構成される表面を平滑に研削した後、回路パターンを形成する場合は、電着フォトレジスト膜を用いたED法で形成すると、レジスト膜を電気的に形成するため、ゴミ等の悪影響を受けず高精度で且つ信頼性の高い回路パターンが得られる。
【0076】特に、ネガ型の電着フォトレジスト膜を用いると、スルーホール用貫通孔3が導電物質4で充填されているため、該スルーホール用貫通孔内を露光する必要がないため、0.3mm以下の小径のスルーホールを信頼性よく形成することができる。
【0077】また、前記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆うように硬化性導電物質を塗布して均一な厚みの導電パターン5を形成する方法としては、公知の印刷による回路パターンの製造方法が好適に採用される。具体的には、ディスペンサーを用いて必要な箇所に硬化性導電物質を塗布した後、硬化する方法や、スクリーン印刷機用いて印刷塗布した後、硬化する方法などが挙げられる。
【0078】上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’との接続部分を覆うように塗布された硬化性導電物質の硬化は、前述のスルーホール用貫通孔3に充填された硬化性導電物質の硬化方法と同様に、熱風炉、赤外線炉、遠赤外線炉、紫外線硬化炉、電子線硬化炉等の公知の硬化方法より、硬化性導電物質の硬化に適するものを適宜選んで硬化させれば良い。
【0079】本発明においては、前述したように、スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’とが実質的に同一平面をなすように形成されているため、例えば、スクリーン印刷機を用いて硬化性導電物質を上記接続部分に塗布する場合、印刷時の滲みの発生がなく、その結果、作業性に優れ、しかも均一に硬化性導電物質を塗布することが可能となる。
【0080】また、上記スルーホール用貫通孔3に充填された導電物質4と回路パターン2、2’の接続部分に形成される導電パターンの厚みが均一であるため、前記した絶縁層7の形成において、該絶縁層の厚みを均一に形成することができるため、回路パターンと導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層9との間の絶縁信頼性を向上することが可能となる。
【0081】また、図7に示す予め回路パターンを形成しないで、導電層18及び導電物質4によって構成される表面を平滑に研削した後、回路パターン2、2’を形成する場合、図には示されていないが、予め導電パターン5を形成した後、回路パターン2、2’を形成してもよい。かかる方法で製造した場合、スルーホール用貫通孔に充填された導電物質4の表面がエッチングレジストの剥離液等のアルカリ性溶液や、表面処理用の酸洗液に曝されることがなく、該導電物質4の表面や該導電物質4と該回路パターン2、2’との接続界面を汚染することがないため、信頼性のよいスルーホール部を形成することができる。
【0082】また、回路パターン2、2’或いは導電層18、及び導電物質4によって構成される表面を平滑に研削し、導電パターン5を形成する方法において、両面回路基板の片面を平滑に研削した後、導電パターン5を形成し、次いでもう一方の面を研削し、導電パターン5を形成してもよい。
【0083】
【効果】以上の説明において明らかなように、本発明によれば、絶縁基板の両面に回路パターンが形成され、該絶縁基板を貫通するスルーホール用貫通孔が設けられ、該スルーホール用貫通孔に該回路パターンと実質的に同一平面を形成するように導電物質が充填されると共に、該充填された導電物質と回路パターンとの接続部分を覆う均一な厚みの、硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターンを設けてスルーホール部が形成された、表面が平坦化された両面回路基板を用い、該両面回路基板上の絶縁層の形成及びアース回路に電気的に接続された導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層の形成を行うことにより、スルーホール用貫通孔とスルーホール用貫通孔に充填された導電物質との密着性に優れ、且つ該積層される導電層の形成を信頼性よく極めて高精度で行うことができる。また、該両面回路基板のスルーホール部上も絶縁層、導電性銅ペーストからなる導電層によって順次積層されていることにより、表面実装が進んだ回路基板や、スルーホール部が多数存在する回路基板でも十分に電磁波ノイズ低減効果を発揮することができる。
【0084】また、上記両面回路基板は、スルーホール用貫通孔に充填された導電物質と回路パターンの接続部分に形成される導電パターンの厚みが均一で、しかも耐湿性の高い硬化性導電物質を用いるため、スルーホールの導通信頼性の高く、且つ無電解鍍金、電気鍍金を行う必要がないため、経済的にも非常に有利である。
【0085】
【実施例】以下、本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】尚、実施例において、各種測定及び試験は下記の方法によって行った。
【0087】(1)電磁波ノイズ低減効果の測定EMI対策回路基板の回路パターンから放射される電磁波ノイズの電界強度をオープンサイト3m法で測定した。電磁波ノイズの低減効果は20〜1000MHzの周波数の範囲で、通常の鍍金スルーホール両面回路基板の測定結果からの減衰を測定した。
【0088】(2)電気絶縁性試験EMI対策回路基板を60℃、90%RHの雰囲気で1000時間曝した後、回路パターンと導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層間に1kVの交流電圧を1分間印加した。この操作を10枚の試料についてそれぞれ実施し、絶縁破壊が全くないものを○、絶縁破壊が1〜5枚生じたものを△、絶縁破壊が6枚以上生じたものを×として電気絶縁性を評価した。
【0089】(3)半田耐熱性試験EMI対策回路基板を有機酸系フラックスに浸漬後、260℃の半田槽に5秒間浸漬した。この操作を10枚の試料について、それぞれ10回繰り返した後、スルーホール部における絶縁層の膨れや剥がれを観察し、膨れや剥がれが全くないものを○、膨れや剥がれが1〜5枚生じたものを△、膨れや剥がれが6枚以上生じたものを×として半田耐熱性を評価した。
【0090】実施例1スルーホール用貫通孔に充填する硬化性導電物質として、以下の組成の銅ペーストを用いた。即ち、バインダー成分として、エポキシ当量が173g/当量のビスフェノールAジグリシジルエーテルと該ビスフェノールAジグリシジルエーテル100重量部に対して、35重量部のデシルグリシジルエーテルと、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂を39重量部と、銅粉として、平均粒径10.5μmの樹脂状銅粉を添加し、更に、2−エチル−4−メチルイミダゾールを、バインダー100重量部に対し2.8重量部加えたものを三本ロールで45分間混練して銅ペーストを調製した。
【0091】また、スルーホール貫通孔に充填された導電物質と回路パターンとの接続部分を覆うようにして形成される導電パターン5の硬化性導電物質としては、バインダーの主成分がレゾール型のフェノール樹脂であるタツタ電線(株)社製銅ペーストNF−2000EXを用いた。
【0092】以下、前者のエポキシ樹脂をバインダーの主成分とする銅ペーストを銅ペーストA、後者のレゾール型のフェノール樹脂を主成分とするタツタ電線(株)製の銅ペーストNF2000EXを銅ペーストBとして記載する。
【0093】図6に示す工程に従って両面回路基板の製造し、該両面回路基板を使用して図5に示す工程に従ってEMI対策回路基板を製造した。
【0094】即ち、図6に示すように、(a)絶縁基板1として厚さ1.2mmのガラスエポキシ基板を用い、該絶縁基板の両面に形成された銅箔よりなるアース回路8を有する回路パターン2、2’間の電気的な接続が必要な箇所に、直径が0.4mmのスルーホール用貫通孔3をドリリングにより100穴設け、(b)該スルーホール用貫通孔に硬化性導電物質17として銅ペーストAを上記回路パターンより0.25mm突出するように、スクリーン印刷法により充填し、エアオーブンで50℃−30分、180℃−60分の条件で硬化させた後、(c)該回路パターン及び硬化性導電物質の硬化体によって構成される表面を200番のバフと360番のバフを順次使用して、平滑に研削した後、(d)該スルーホール用貫通孔3に充填された硬化性導電物質の硬化体(導電物質4)と回路パターン2、2’との接続部分を覆う硬化性導電物質として銅ペーストBをスクリーン印刷法によって塗布して、平均厚さ30μm(±約20%のバラツキ)の導電パターン5を形成し、ベルトコンベア式遠赤外炉で最高温度230℃、硬化時間6分の条件で銅ペーストBを硬化して、スルーホール部Aを有する両面回路基板6を得た。
【0095】次いで、図5に示すように、(a)上記両面回路基板6を使用して、(b)スルーホール部Aを含む回路パターン上に、絶縁層を形成するため、液状フォトソルダーレジスト(DSR−2200:商品名、(株)タムラ製作所社製)を上記両面回路基板6の表裏全面にスクリーン印刷法で塗布し、80℃15分の条件で加熱乾燥し、露光、現像を行った後熱硬化し、アース回路8、表面実装部品接続用のパッド13等の部分に絶縁層7の開口10を有するパターンを形成した。更に、絶縁層の絶縁性を向上させるために、必要な回路に応じて絶縁レジスト(S−222:商品名、太陽インキ製造(株)社製)をスクリーン印刷法にて塗布し硬化させた。次ぎに、(c)導電性銅ペースト(NF−200:商品名、タツタ電線(株)社製)を上記絶縁層上を覆うように、且つ回路パターン中のアース回路と接続するようにスクリーン印刷法で塗布して硬化させ導電層9を形成した。(e)次いで、上記導電性銅ペーストの硬化体による導電層上を覆うようにオーバーコート層11をスクリーン印刷法で塗布して硬化させ形成し、EMI対策回路基板を得た。
【0096】以上の方法で得られたEMI対策回路基板の性能を評価したところ、放射ノイズ低減効果が18dB、電気絶縁性が○、半田耐熱性が○であった。
【0097】実施例2図7に示す工程に従って、両面回路基板を製造し、該両面回路基板を使用して図5に示す工程に従って多層回路基板を製造した。
【0098】即ち、図7に示すように(a)両面に銅箔よりなる導電層18を有する厚さ1.2mmのガラスエポキシ基板1に、直径が0.5mmのスルーホール用貫通孔3をドリリングにより100穴設け、(b)該スルーホール用貫通孔3に硬化性導電物質17として銅ペーストAをスクリーン印刷法により充填し、エアオーブンで50℃−30分、180℃−60分の条件で硬化させた後、(c)該導電層及び硬化性導電物質17の硬化体によって構成される表面を200番のバフと360番のバフを順次使用して、平滑に研削した後、(d)次いで該導電層18にエッチングレジストを用いて、アース回路8を含む回路パターン2、2’を形成した後、(e)該スルーホール用貫通孔3に充填された硬化性導電物質の硬化体(導電物質4)と回路パターン2との接続部分を覆うように硬化性導電物質として銅ペーストBをスクリーン印刷法にて塗布して、平均厚さ25μm(±約20%のバラツキ)の導電パターン5を形成し、ベルトコンベア式遠赤外炉で最高温度230℃、硬化時間6分の条件で銅ペーストBを硬化し、スルーホール部Aを有する両面回路基板6を得た。
【0099】次いで、実施例1と同様にして、図5に示す工程に従って、絶縁層7、導電性銅ペーストからなる導電層9、オーバーコート層11を作成し、EMI対策回路基板を得た。
【0100】以上の方法で得られたEMI対策回路基板の性能を評価したところ、放射ノイズ低減効果が18dB、電気絶縁性が○、半田耐熱性が○であった。
【0101】比較例1両面回路基板として、絶縁基板の表裏の回路パターン間の電気的な接続をスルーホール内に銅鍍金による鍍金層14で行ったスルーホール部15を有する回路基板を使用して、上記実施例1(c)の工程で、回路パターン上に、上記スルーホール部15、アース回路8、表面実装部品接続用のパッド13とを除いて、絶縁層を形成する以外は同様の方法でEMI対策回路基板を得た。
【0102】以上の方法で得られたEMI対策回路基板の性能を評価したところ、放射ノイズ低減効果が7dB、電気絶縁性が×、半田耐熱性が△であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のEMI対策回路基板の例示する断面図である。
【図2】EMI対策回路基板の従来例を示す断面図である。
【図3】本発明の両面回路基板の一つの例を示す表面図である。
【図4】本発明の両面回路基板の今一つの例を示す表面図である。
【図5】本発明のEMI対策回路基板の製造工程の1例を示す一連の断面図である。
【図6】図5の製造工程に使用した両面回路基板の製造工程を示す一連の断面図である。
【図7】図5の製造工程に使用した両面回路基板の今一つの製造工程を示す一連の断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
2 回路パターン
2’回路パターン
3 スルーホール用貫通孔
4 導電物質
5 導電パターン
6 両面回路基板
7 絶縁層
8 アース回路
9 導電層(導電性銅ペーストの硬化体)
10 開口
11 オーバーコート層
12 ランド部
13 パッド
14 鍍金層
15 スルーホール部
16 ソルダーレジスト層
17 硬化性導電ペースト
18 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】(1)両面に回路パターンがそれぞれ形成された絶縁基板よりなり、該回路パターン間の電気的な接続が必要な箇所に該絶縁基板を貫通するスルーホール用貫通孔が設けられ、該スルーホール用貫通孔に該回路パターンと実質的に同一平面を形成するように導電物質が充填されると共に、該スルーホール用貫通孔に充填された導電物質と該回路パターンとの接続部分を覆う均一な厚みの硬化性導電物質の硬化体よりなる導電パターンを設けてスルーホール部が形成された、表面がほぼ平坦な両面回路基板、及び(2)該両面回路基板の少なくとも一方の表面にはアース回路が設けられ、該アース回路が設けられた基板表面に、該アース回路と電気的に接続し、且つ絶縁層を介して少なくとも該回路パターンの電磁波ノイズ対策が必要な回路パターン及びスルーホール部を覆う導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層を設けたことを特徴とするEMI対策回路基板。
【請求項2】上記スルーホール部と回路パターンとの接続部分を覆うように形成された均一の厚みの硬化性導電物質が耐湿性導電ペーストであることを特徴とする請求項1記載のEMI対策回路基板。
【請求項3】絶縁基板の両面に形成された回路パターン間の電気的な接続が必要な箇所に、スルーホール用貫通孔を設け、該スルーホール用貫通孔に導電性を有する硬化体を与える硬化性導電物質を充填して硬化させた後、該回路パターン及び硬化性導電物質の硬化体によって構成される表面を平滑に研削し、次いで、該スルーホール用貫通孔に充填された該硬化性導電物質の硬化体と該回路パターンとの接続部分を覆うように硬化性導電物質を塗布して均一な厚みの導電パターンを形成することによりスルーホール部が形成された、表面がほぼ平坦な両面回路基板を作成し、該回路基板のアース回路の少なくとも一部が露出するように開口が形成された絶縁層を設け、該絶縁層の外表面、該開口の内壁及び前記回路パターンの露出部を連続する導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層で被覆することからなるEMI対策回路基板の製造方法。
【請求項4】両面に導電層を有する絶縁基板にスルーホール用貫通孔を設け、該スルーホール用貫通孔に導電性を有する硬化体を与える硬化性導電物質を充填して硬化させた後、該導電層及び硬化性導電物質の硬化体によって構成される表面を平滑に研削し、次いで、該導電層に回路パターンを形成した後、該スルーホール用貫通孔に充填された該硬化性導電物質の硬化体と該回路パターンとの接続部分を覆うように硬化性導電物質を塗布して均一な厚みの導電パターンを形成することによりスルーホール部が形成された、表面がほぼ平坦な両面回路基板を作成し、該両面回路基板の少なくとも一方の表面上に、該回路基板のアース回路の少なくとも一部が露出するように開口が形成された絶縁層を設け、該絶縁層の外表面、該開口の内壁及び前記回路パターンの露出部を連続する導電性銅ペーストの硬化体からなる導電層で被覆することからなるEMI対策回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平8−264989
【公開日】平成8年(1996)10月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−68146
【出願日】平成7年(1995)3月27日
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)