説明

ETC車載器

【課題】 イジェクトボタンがプッシュ式でありながら、必要なばね(弾性部材)の点数を削減でき、安価に構成できるETC車載機を提供する。
【解決手段】 イジェクトボタン3とロック部材32とを連結する伝達部材33を、イジェクトボタン3の進退動作をロック部材32に対し、スライド部材側係合部31bとロック部材側係合部32eとが係合する係合位置EPと同じく係合解除される係合解除位置RPとの間での正逆両方向の旋回動作に変換しつつ伝達する部材として構成する。ロック部材32をスライド部材31との係合位置EPに移動させるための弾性部材を設けずとも、ロック部材32をイジェクトボタン3の進退動作と連動して旋回動作させることができ、カードECの着脱動作を担保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はETC(Electronic Toll Collection:自動料金収受システム)車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2005−321619
【0003】
近年普及しているETC車載器(例えば、特許文献1)において、ETCカードを筐体から取り出すためのイジェクトボタンはスライド式もしくはプッシュ式のものが採用されている。筐体内には、装着/排出時におけるETCカードのキャリアをなし、ばねにより排出方向に付勢されるスライド部材と、ばねの付勢力に抗してスライド部材を装着位置に保持するとともに、その状態で旋回移動してスライド部材との係合を解除することで、該スライド部材を装着されたETCカードとともに排出方向に移動させるロック部材とが設けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライド部材に対するロック部材の移動軌跡は、スライド部材によるカード排出方向と交差する向き(つまり、横方向)に生ずるので、イジェクトボタンがスライド式であれば、そのイジェクトボタンの動きをロック部材に直接伝達できる。しかし、プッシュボタン式の場合、前後方向に生ずるプッシュボタンの操作ストロークを、横方向の動作に変換してロック部材に伝える必要が生ずる。すなわち、上記のスライド部材及びロック部材に加え、上記変換を行なう伝達部材が必要である。この場合、従来は、スライド部材を排出方向に付勢するための第一のばねと、スライド部材をカードとともに装着位置に移動させたとき、ロック部材をスライド部材との係合位置に移動させるための第二のばねと、排出ボタンを押圧待機位置へ付勢するための第三のばねとの、都合3つのばねが用いられており、部品点数の増加が避けがたい欠点があった。
【0005】
本発明の課題は、イジェクトボタンがプッシュ式でありながら、必要なばね(弾性部材)の点数を削減でき、安価に構成できるETC車載器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のETC車載器は、
カードスロットを開口した筐体と、
カードスロットから該筐体内に挿入されるカードの挿入方向前端縁を受け止めるカード受け部を有し、挿入方向にてカードスロットから遠い側を前方側、近い側を後方側として、筐体内にて挿入方向前方側に位置するカード装着位置と、同じく後方側に位置するカード排出位置との間でカードとともに進退可能に設けられたスライド部材と、
該スライド部材がカード装着位置に移動するに伴い弾性変形し、その弾性復帰力により該スライド部材をカード排出位置に向けて付勢する第一弾性部材と、
筐体内にてカード面に沿って予め定められた軸線周りに旋回可能に取り付られ、該軸線から旋回半径方向に所定長離れた位置にロック部材側係合部を有し、スライド部材をカード装着位置に位置させた状態でスライド部材上のスライド部材側係合部とロック部材側係合部とを係合させることにより、第一弾性部材による弾性復帰力に抗して該スライド部材をロック保持する一方、当該ロック保持位置から予め定められたロック解除方向に旋回することによりスライド部材側係合部とロック部材側係合部との係合状態を解除するロック部材と、
筐体に対し、カードスロットへのカード挿入方向と一致した向きに押圧操作されるイジェクトボタンと、
イジェクトボタンとロック部材とを連結するとともに、イジェクトボタンの進退動作をロック部材に対し、スライド部材側係合部とロック部材側係合部とが係合する係合位置と同じく係合解除される係合解除位置との間での正逆両方向の旋回動作に変換しつつ伝達する伝達部材と、
イジェクトボタンを後方に押し戻す向きにて、伝達部材を経てロック部材を係合位置に旋回移動させるように弾性付勢する第二弾性部材とを、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成のETC車載器は、カードの着脱に伴い次のように動作する。まず、スライド部材が排出位置にあるとき、ロック部材はロック解除方向に旋回し、ロック部材側係合部とスライド部材側係合部とは係合解除された状態になっている。この状態でカードスロットにカードを差し込むと、スライド部材の前端(挿入方向にてカードスロットから遠い側を前方側、近い側を後方側と定義している点に注意)にあるカード受け部にカードの前端縁が当たり、第一弾性部材を弾性変形させながらスライド部材がカードとともに前方側へ移動する。ロック部材の旋回方向を、係合位置から係合解除位置へ向う向きを正方向と定義すれば、スライド部材がカード装着位置に到達すると、第二弾性部材による付勢力によりイジェクトボタンが後退し、その後退ストロークが逆方向の旋回ストロークに変換されつつ伝達部材によりロック部材に伝達される。これにより、ロック部材が係合位置へ移動し、スライド部材がカードとともに装着位置に保持される。この状態にてイジェクトボタンを押圧操作すると、イジェクトボタンの前進ストロークが正方向の旋回ストロークに変換されつつ伝達部材によりロック部材に伝達される。これにより、ロック部材が係合解除位置へ移動し、第一弾性部材の弾性復帰力によりスライド部材がカードとともに排出位置に移動する。
【0008】
本発明の構成の要旨は、イジェクトボタンとロック部材とを連結する伝達部材を、イジェクトボタンの進退動作をロック部材に対し、スライド部材側係合部とロック部材側係合部とが係合する係合位置と同じく係合解除される係合解除位置との間での正逆両方向の旋回動作に変換しつつ伝達する部材として構成した点にある。その結果、ロック部材をスライド部材との係合位置に移動させるための弾性部材を設けずとも、ロック部材をイジェクトボタンの進退動作と連動して旋回動作させることができ、カードの着脱動作を担保できる。すなわち、イジェクトボタンがプッシュ式でありながら、必要なばね(弾性部材)の点数を削減でき、安価に構成することが可能である。
【0009】
伝達部材は、一端がイジェクトボタンに連結され、他端がロック部材に連結されるとともに、該イジェクトボタンの進退動作力を該ロック部材に対し軸線周りの旋回動作力に変換して伝達するリンク部材とすることができる。ロック部材をイジェクトボタンの進退動作と連動して旋回動作させる機構を簡単なリンク機構により実現でき、構成をより単純化できる。
【0010】
ロック部材の旋回軸線位置が固定であり、かつ、リンク部材のイジェクトボタン側の結合点と、ロック部材側の結合点との距離が一定の場合、伝達部材の両端を通常のリンク結合にすると、ロック部材側の結合点がロック部材の旋回軸線を中心とした円弧状軌跡上を移動する関係上、イジェクトボタンの進退方向に対するリンク部材の角度も、ロック部材の旋回に伴い変化させなければならない。しかし、この構成では次の点が懸念される。
(1)イジェクトボタンとリンク部材とを旋回可能に結合しなければならず構造の複雑化と部品点数の増大を招く。
(2)イジェクトボタンの進退ストロークに対応したリンク部材の旋回角度がごく小さく、ロック部材の旋回動作に追従したリンク部材のスムーズな動きを確保しにくい。
【0011】
しかし、次のように構成すると、これらの懸念を解消することができる。すなわち、リンク部材を、一端がイジェクトボタンに対し旋回不能に結合され、該イジェクトボタンとともに一体的に進退移動するものとして構成する。そして、リンク部材の他端側に、該リンク部材の前進時においてロック部材側の被結合部を該ロック部材が係合解除位置に向けて移動する向きに付勢する正方向付勢部と、リンク部材の後退時において被結合部を該ロック部材が係合位置に向けて移動する向きに付勢する逆方向付勢部とを有し、かつロック部材の旋回に伴う被結合部のリンク部材に対する旋回半径方向への摺動を許容しつつ該被結合部と結合する摺動結合機構を設ける。
【0012】
すなわち、リンク部材とロック部材との結合点を構成する上記摺動結合機構は、正方向付勢部と逆方向付勢部とを有することで、リンク部材の進退移動をロック部材の双方向の旋回移動に変換して伝達することができる。そして、該結合点が旋回半径方向に摺動できるように構成したことで、ロック部材側の結合点の旋回半径がロック部材の旋回角度に応じて変化でき、リンク部材がイジェクトボタンに対し旋回不能に結合されていても(つまり、リンク部材の進退方向がジェクトボタンの移動方向と一致するように固定されていても)機構学的に矛盾のない動作が担保できる。
【0013】
ロック部材は、軸線から旋回半径方向にてスライド部材に向けて伸びるとともに先端にロック部材側係合部が形成される第一アーム部と、軸線から旋回半径方向にてリンク部材に向けて伸びる第二アーム部とが一体回転可能に形成されたものとして構成できる。そして、該第二アーム部の先端側をリンク部材に形成された貫通部に挿入すれば、リンク部材の前進方向において貫通部の後方側内縁部が正方向付勢部を、同じく前方側内縁部が逆方向付勢部を形成する形で、上記の摺動結合機構を簡単に実現できる。
【0014】
この場合、スライド部材は、カードと厚さ方向を一致させる形で配置された板状部材とすることができ、スライド部材側係合部をカード挿入方向における後端縁に形成することができる。これにより、第一アーム部先端に形成されるロック部材側係合部とスライド部材側係合部との着脱をよりスムーズに行なうことができる。
【0015】
また、ETC車載器の小さな筐体内スペースを有効に活用するには、カードスロットから筐体内に装着されるカードの幅方向における第一側に、該幅方向にてカードに近い側からスライド部材、ロック部材及びリンク部材をこの順序で配列することが有利である。この場合、スライド部材の後端縁には、幅方向においてロック部材が位置する側の端部に、スライド部材側係合部を板状のスライド部材の一方の板面側に曲げ返される形で突出形成することができる。スライド部材側係合部を曲げ加工により簡単に形成でき、かつ、曲げ部の大きさに応じてスライド部材側係合部の係合面積を所望の値に容易に調整することができる。
【0016】
具体的には、筐体が扁平箱状に形成でき、板枠状のベース部材を該筐体内に厚さ方向を一致させる形態で組み付けることができる。スライド部材とロック部材とはベース部材の第一板面側に配置でき、リンク部材は、幅方向が該ベース部材の厚さ方向に一致するように配置されるとともに、ベース部材の幅方向にて第一側の側縁に沿って延びる帯板状に形成することができる。帯状のリンク部材をベース部材の幅方向側縁に沿って配置することで、更なる省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかるETC車載器の外観斜視図である。ETC車載器1は、カードスロット4を開口した筐体2を有し、該筐体2の上面にて幅方向の第一端(図では左端)寄りに、カードスロット4へのカード挿入方向と一致した向きに押圧操作されるイジェクトボタン3が設けられている。筐体2は扁平箱状に形成されるとともに、図2のごとき板枠状の樹脂成形体からなるベース部材10が筐体2内に厚さ方向を一致させる形態で組み付けられている。
【0018】
図2は、図1のETC車載器1の内部構造を示すものであり、左がベース部材10に組み付けられたアセンブリ要部の底面視図、右が側面視図である。該ベース部材10に対し、カードECの幅方向における第一側に、該幅方向にてカードECに近い側からスライド部材31、ロック部材32及びリンク部材(伝達部材)33がこの順序で配列する形で組みつけられている。具体的には、ベース部材10の第一板面側(裏面側)には、スライド部材31とロック部材32とが配置される。また、ベース部材10の幅方向にて第一側の側縁(図2では右側、図1では左側(つまり、イジェクトボタン3の配置されている側))に沿って、帯板状のリンク部材33が、幅方向が該ベース部材10の厚さ方向に一致するように配置されている。
【0019】
スライド部材31は、カードスロット4から該筐体2内に挿入されるカードECの挿入方向前端縁を受け止めるカード受け部31dを有し、挿入方向にてカードスロット4から遠い側を前方側、近い側を後方側として、筐体2内にて挿入方向前方側に位置するカード装着位置MP(図3参照)と、同じく後方側に位置するカード排出位置EPとの間でカードECとともに進退可能に設けられている(図3参照)。
【0020】
また、ベース部材10には、スライド部材31がカード装着位置MPに移動するに伴い弾性変形し、その弾性復帰力により該スライド部材31をカード排出位置EPに向けて付勢する第一弾性部材51が組み付けられている。また、ロック部材32が、カードEC面に沿って旋回軸支点部32bにより、予め定められた軸線周りに旋回可能に取り付られている。ロック部材32は、該軸線から旋回半径方向に所定長離れた位置にロック部材側係合部32eを有し、スライド部材31をカード装着位置MPに位置させた状態でスライド部材31上のスライド部材側係合部31bとロック部材側係合部32eとを係合させることにより、第一弾性部材51による弾性復帰力に抗して該スライド部材31をロック保持する一方、当該ロック保持位置から予め定められたロック解除方向に旋回することによりスライド部材側係合部31bとロック部材側係合部32eとの係合状態を解除するためのものである。
【0021】
また、リンク部材33は、イジェクトボタン3とロック部材32とを連結するとともに、イジェクトボタン3の進退動作をロック部材32に対し、スライド部材側係合部31bとロック部材側係合部32eとが係合する係合位置EPと同じく係合解除される係合解除位置RPとの間での正逆両方向の旋回動作に変換しつつ伝達するためのものである。
【0022】
他方、ベース部材10には、イジェクトボタン3を後方に押し戻す向きにて、伝達部材33を経てロック部材32を係合位置EPに旋回移動させるように弾性付勢する第二弾性部材52が組み付けられている。
【0023】
スライド部材31は、カードECと厚さ方向を一致させる形で配置された金属板状部材とされ、その前端部が裏面側に折り返される形でカード受け部31dが形成されている。また、スライド部材側係合部31bがカード挿入方向における後端縁に形成されている。具体的には、スライド部材31の後端縁にて、幅方向においてロック部材32が位置する側の端部に、該スライド部材31の表面側に曲げ返す形でスライド部材側係合部31bが突出形成されている。なお、スライド部材31の後端縁にてスライド部材側係合部31bに隣接する位置には、ロック部材32の浮き上がりを防止するための押さえ部31cが後方側に延出する形で形成されている。
【0024】
ベース部材10の第一板面にはスライド部材ガイド溝11aが形成され、ここにスライド部材31が配置されてその進退移動がガイドされる。当該スライド部材ガイド溝11aの底部には、スライド部材31の第一側の幅方向側縁に沿ってばね収容貫通窓12が形成されている。また、スライド部材31の第一側の幅方向側縁から該ばね収容貫通窓12側にばね装着部31eが延出形成されている。第一弾性部材51は、ばね収容貫通窓12内にて両端がばね装着部31eと、当該ばね収容貫通窓12の内縁後端部に結合される引張コイルばねとして構成されている。
【0025】
一方、ベース部材10の第二板面には、カード挿入方向における後端部にて、幅方向における第一側の端部に後端側が開口するとともに前端側がばね受け底部14bとされた中空のばね収容部14が突出形成されている。リンク部材33は金属板材のプレス成形品であり、その後端縁には、ばね収容部14の開口側に曲げ返される形で該開口に対向するリンク側ばね受け部33fが一体形成されている。第二弾性部材52は、ばね収容部14内にてばね受け底部14bとリンク側ばね受け部33fとの間に配置される圧縮コイルばねとして構成されている。
【0026】
なお、帯板状のリンク部材33の幅方向側縁後端部にはイジェクトボタン装着部33eが、ベース部材10の第二板面から突出形成されるばね収容部14の表面に倣う形状となるように曲げ形成され、該ばね収容部14表面に沿ってリンク部材33とともに進退移動するようになっている。該イジェクトボタン装着部33eに前述のイジェクトボタン3が嵌着される。
【0027】
リンク部材33は、一端がイジェクトボタン3に連結され、他端がロック部材32に連結されるとともに、該イジェクトボタン3の進退動作力を該ロック部材32に対し軸線周りの旋回動作力に変換して伝達する。具体的には、リンク部材33は、一端がイジェクトボタン3に対し旋回不能に結合され、該イジェクトボタン3とともに一体的に進退移動するものとして構成されている。また、他端側には摺動結合機構40が設けられている。該摺動結合機構40は、リンク部材33の前進時においてロック部材32側の被結合部32cを該ロック部材32が係合解除位置RPに向けて移動する向きに付勢する正方向付勢部33dと、リンク部材33の後退時において被結合部32cを該ロック部材32が係合位置EPに向けて移動する向きに付勢する逆方向付勢部33cとを有し、かつロック部材32の旋回に伴う被結合部32cのリンク部材33に対する旋回半径方向への摺動を許容しつつ該被結合部32cと結合する。
【0028】
ロック部材32も金属板材にて構成され、旋回軸支点部32bから旋回半径方向にてスライド部材31に向けて伸びるとともに先端にロック部材側係合部32eが形成される第一アーム部32aと、旋回軸支点部32bから旋回半径方向にてリンク部材33に向けて伸びる第二アーム部(被結合部32cを形成する:以下、第二アーム部32cという)とが一体回転可能に形成されたものである。第二アーム部32cの先端側はリンク部材33に形成された貫通部33bに挿入される。リンク部材33の前進方向において貫通部33bの後方側内縁部が正方向付勢部33dを、同じく前方側内縁部が逆方向付勢部33cを形成する。
【0029】
以下、ETC車載器1の動作について説明する(ロック部材32の旋回方向は、係合位置EPから係合解除位置RPへ向う向きを正方向と定義する)。図3は、カード装着時の動作を示すものであり、状態Aに示すごとく、スライド部材31が排出位置にあるとき、ロック部材32はロック解除方向(正方向)に旋回し、ロック部材側係合部32eとスライド部材側係合部31bとは係合解除された状態になっている。次に、状態Bのごとく、カードスロット4にカードECを差し込むと、スライド部材31の前端にあるカード受け部31dにカードECの前端縁が当たり、第一弾性部材51を弾性変形させながらスライド部材31がカードECとともに前方側へ移動する。スライド部材31は、伝達部材33を介してロック部材32に伝えられる係合位置EPへ向けた旋回付勢力により、スライド部材側係合部31bの幅方向端縁をロック部材32の対応する側縁上にて摺動させつつ第一弾性部材51を弾性変形させながらスライド移動する。
【0030】
そして、状態Cに示すごとく、スライド部材31がカード装着位置MPに到達すると、第二弾性部材52による付勢力によりイジェクトボタン3が後退し、その後退ストローク(Δd:カード排出時の押圧ストロークを与えるものである)が逆方向の旋回ストロークに変換されつつ伝達部材33によりロック部材32に伝達される。スライド部材31がカード装着位置MPに到達すると、スライド部材側係合部31bの幅方向端縁がロック部材32の側縁前端から外れ、前記旋回付勢力により、ロック部材32の第一アーム部32aの先端にあるロック部材側係合部32eがスライド部材側係合部31bと係合する係合位置EPへ正方向に旋回移動する。これにより、ロック部材32が係合位置EPへ移動し、スライド部材31がカードECとともに装着位置に保持される。
【0031】
次に、図4は、カード排出時の動作を示すものである。すなわち、カードECが装着された上記状態Cにてイジェクトボタン3を押圧操作すると、イジェクトボタン3の前進ストロークが正方向の旋回ストロークに変換されつつ伝達部材33によりロック部材32に伝達される。これにより、ロック部材32が係合解除位置RPへ移動し、第一弾性部材51の弾性復帰力によりスライド部材31がカードECとともに排出位置に移動する。すなわち、イジェクトボタン3の押圧操作によりロック部材32が逆方向へ旋回移動し、ロック部材側係合部32eがスライド部材側係合部31bから外れるに伴い、第一弾性部材51の弾性復帰力により、スライド部材側係合部31bの幅方向端縁をロック部材32の側縁上にて摺動させつつ排出位置に向けてスライド移動する。
【0032】
イジェクトボタン3とロック部材32とを連結するリンク部材(伝達部材33)は、イジェクトボタン3の進退動作をロック部材32に対し、スライド部材側係合部31bとロック部材側係合部32eとが係合する係合位置EPと同じく係合解除される係合解除位置RPとの間での正逆両方向の旋回動作に変換しつつ伝達する部材として構成されている。その結果、ロック部材32をスライド部材31との係合位置EPに移動させるための弾性部材を設けずとも、ロック部材32をイジェクトボタン3の進退動作と連動して双方向に旋回動作させることができる。これにより、イジェクトボタン3がプッシュ式でありながら、必要なばね(弾性部材)の点数を削減できる。
【0033】
また、リンク部材33とロック部材32との結合点を構成する上記摺動結合機構40は、前述のごとく、正方向付勢部33dと逆方向付勢部33cとを有することで、リンク部材33の進退移動をロック部材32の双方向の旋回移動に変換して伝達することができる。そして、該結合点が旋回半径方向に摺動できるように構成されているので、ロック部材32側の結合点の旋回半径がロック部材32の旋回角度に応じて変化でき、リンク部材33がイジェクトボタン3に対し旋回不能に結合されていても(つまり、リンク部材33の進退方向がジェクトボタンの移動方向と一致するように固定されていても)機構学的に矛盾のない動作が担保されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のETC車載器の一例を示す外観斜視図。
【図2】図1の要部をなすアセンブリの説明図。
【図3】図2の要部にかかるカード装着時の動作説明図。
【図4】同じくカード排出時の動作説明図。
【符号の説明】
【0035】
1 ETC車載器
2 筐体
3 イジェクトボタン
4 カードスロット
31 スライド部材
31b スライド部材側係合部
31d カード受け部
32 ロック部材
32a 第一アーム部
32c 第二アーム部
32e ロック部材側係合部
33 リンク部材(伝達部材)
33b 貫通部
33d 正方向付勢部
33c 逆方向付勢部
40 摺動結合機構
51 第一弾性部材
52 第二弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードスロットを開口した筐体と、
前記カードスロットから該筐体内に挿入されるカードの挿入方向前端縁を受け止めるカード受け部を有し、前記挿入方向にて前記カードスロットから遠い側を前方側、近い側を後方側として、前記筐体内にて挿入方向前方側に位置するカード装着位置と、同じく後方側に位置するカード排出位置との間で前記カードとともに進退可能に設けられたスライド部材と、
該スライド部材がカード装着位置に移動するに伴い弾性変形し、その弾性復帰力により該スライド部材を前記カード排出位置に向けて付勢する第一弾性部材と、
前記筐体内にてカード面に沿って予め定められた軸線周りに旋回可能に取り付られ、該軸線から旋回半径方向に所定長離れた位置にロック部材側係合部を有し、前記スライド部材を前記カード装着位置に位置させた状態で前記スライド部材上のスライド部材側係合部と前記ロック部材側係合部とを係合させることにより、前記第一弾性部材による前記弾性復帰力に抗して該スライド部材をロック保持する一方、当該ロック保持位置から予め定められたロック解除方向に旋回することにより前記スライド部材側係合部と前記ロック部材側係合部との係合状態を解除するロック部材と、
前記筐体に対し、前記カードスロットへのカード挿入方向と一致した向きに押圧操作されるイジェクトボタンと、
前記イジェクトボタンと前記ロック部材とを連結するとともに、前記イジェクトボタンの進退動作を前記ロック部材に対し、前記スライド部材側係合部と前記ロック部材側係合部とが係合する係合位置と同じく係合解除される係合解除位置との間での正逆両方向の旋回動作に変換しつつ伝達する伝達部材と、
前記イジェクトボタンを後方に押し戻す向きにて、前記伝達部材を経て前記ロック部材を前記係合位置に旋回移動させるように弾性付勢する第二弾性部材とを、
を備えたことを特徴とするETC車載器。
【請求項2】
前記伝達部材は、前端が前記イジェクトボタンに連結され、後端が前記ロック部材に連結されるとともに、該イジェクトボタンの進退動作力を該ロック部材に対し前記軸線周りの旋回動作力に変換して伝達するリンク部材である請求項1記載のETC車載器。
【請求項3】
前記リンク部材は、前記一端が前記イジェクトボタンに対し旋回不能に結合され、該イジェクトボタンとともに一体的に進退移動するとともに、前記他端側には、該リンク部材の前進時において前記ロック部材側の被結合部を該ロック部材が前記係合解除位置に向けて移動する向きに付勢する正方向付勢部と、前記リンク部材の後退時において前記被結合部を該ロック部材が前記係合位置に向けて移動する向きに付勢する逆方向付勢部とを有し、かつ前記ロック部材の旋回に伴い前記被結合部を前記リンク部材に対する旋回半径方向への摺動を許容しつつ該リンク部材と結合する摺動結合機構が設けられている請求項2記載のETC車載器。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記軸線から旋回半径方向にて前記スライド部材に向けて伸びるとともに先端に前記ロック部材側係合部が形成される第一アーム部と、前記軸線から旋回半径方向にて前記リンク部材に向けて伸びる前記第二アーム部とが一体回転可能に形成されたものであり、該第二アーム部の先端側が前記リンク部材に形成された貫通部に挿入されるとともに、前記リンク部材の前進方向において前記貫通部の後方側内縁部が前記正方向付勢部を、同じく前方側内縁部が前記逆方向付勢部を形成してなる請求項3記載のETC車載器。
【請求項5】
前記スライド部材が、前記カードと厚さ方向を一致させる形で配置された板状部材とされ、前記スライド部材側係合部が前記カード挿入方向における後端縁に形成されてなる請求項4記載のETC車載器。
【請求項6】
前記カードスロットから前記筐体内に装着される前記カードの幅方向における第一側に、該幅方向にて前記カードに近い側から前記スライド部材、前記ロック部材及び前記リンク部材がこの順序で配列するとともに、前記スライド部材の前記後端縁には、前記幅方向において前記ロック部材が位置する側の端部に前記スライド部材側係合部が、板状の前記スライド部材の一方の板面側に曲げ返される形で突出形成されてなる請求項5記載のETC車載器。
【請求項7】
前記筐体が扁平箱状に形成されるとともに、板枠状のベース部材が該筐体内に厚さ方向を一致させる形態で組み付けられ、
前記スライド部材と前記ロック部材とが前記ベース部材の第一板面側に配置される一方、前記リンク部材は、幅方向が該ベース部材の厚さ方向に一致するように配置されるとともに、前記ベース部材の幅方向にて前記第一側の側縁に沿って延びる帯板状に形成されてなる請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載のETC車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−282210(P2008−282210A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125703(P2007−125703)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】