説明

ElectricFieldStabilizingSystem

【課題】ケーブルの行き線と帰り線の間に電位差が生じることで起こる被服材料の分極を最小限に抑えること。
【解決手段】ケーブルの構造を中心導体1、中心導体用被覆2、金属筒3、ドレイン線4、外部金属筒用被覆5で構成された二重被覆構造のものとし、ドレイン線4は中心導体1と片側のみで接続する。これにより中心導体と金属筒間の電位勾配はなくなり、中心導体用被覆の分極を最小限に抑えられる。また、この構造の被覆をケーブル内の掛かる電圧が異なる導体に対してそれぞれ独立に施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被服に特殊な構造を用いたオーディオ用ケーブル関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くのメーカーから被覆材料の音質への影響を考慮してフッ素樹脂など低誘電率の材料を被覆材として使用しているケーブルが発売されている。単純な静電容量の増加ではなく誘電体のダイポールと金属中に流れる自由電子との結合に着目した場合、信号線に流れる信号によって被覆材のダイポールは分極し、自由電子との間に一定の結合力が生じる。この結合力は常に一定ではなく音楽信号のように大小さまざまな信号成分が流れる場合、被覆材のダイポールは大きな信号成分に従って分極するので、微小信号から見た場合、自由電子とダイポールとの結合力は全くリニアな関係にはないということになる。
【0003】
この問題に対する対策のひとつには低誘電率の材料を被覆材として使う方法が上げられるが、この方法では結合力の軽減は出来てもダイポールの回転から逃れることは出来ない。ダイポールの回転から逃れるひとつの方法としてaudio−quest社のDBS(米国特許7126055)のように誘電体に直流電圧をかけてダイポールを固定してしまう方法が上げられる。この方法では信号線の電圧よりも強力な直流電圧によって被服材料のダイポールを固定するので、信号線の電圧によって被服材料のダイポールが回転することは無い。
【0004】
本発明では、audio−quest社のDBSとは異なった方法による上記の問題に対する対策方法として、特殊な二重構造の被服を施したケーブル構造を考案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】United States Patent 7,126,055
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大沼 俊朗著 「最新電磁気学」朝倉書店 1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、ケーブルの行き線と帰り線の間に電位差が生じると被服材料のダイポールが回転してしまい、信号線を流れる自由電子と被服材料のダイポールとの結合力が常に均一ではないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】

本発明は被服材料のダイポールの分極を最小限に抑えるケーブル構造で、中心導体1を覆う被覆材2の周りを金属箔で覆い、被覆材を覆う金属筒3を形成する。この金属筒3は静電容量の増加を抑えるために極力薄い箔が望ましく、メッキで代用することも可能である。この被覆材を覆う金属筒3からドレイン線4を引っ張り、伝送線1の片側のみに接続する。図2のように接地するのは片側のみでもう片方は接続しない。
【0009】
この方法により伝送線1と金属筒3には同等の電圧が掛かることで、金属筒3内部の電位勾配はほぼ0になる。これによって中心導体用被覆2の被服材料のダイポールの分極を最小限に抑えられ、被覆材のダイポールは自己分極のみになる。
【0010】
当然ながら外部金属筒用被覆5は帰り線との電位差の影響を受け分極するが、ドレイン線4を片側のみに接続することで金属筒3は信号の伝送路としては使われていない。これによりこの影響を最小限に抑えられる。
【0011】
このケーブルの構造では被覆材を覆う金属筒3からドレイン線4を片側のみ信号線と接続するが、接続するのは信号の送り側でも受け側でもどちらでも構わない。例えばスピーカーケーブルにおいてはアンプ側、スピーカー側どちらに接続しても構わない。重要なのは被覆材を覆う金属筒3を伝送路として使用しない点にある。
【0012】
またケーブルには行き線と帰り線があり、その電位差によって信号を伝達するが、帰り線も行き線と同様に金属筒を使った二重被覆で覆い、ドレイン線で帰り線と接続する。当然ながら、行き線を覆う金属筒から引っ張ってきたドレイン線は行き線と接続し、帰り線を覆う金属筒から引っ張ってきたドレイン線の場合は帰り線と接続することで、それぞれ独立して行う。
【発明の効果】
【0013】
・被服材料のダイポールの分極を最小限に抑えられる。
【0014】
・audio−quest社のDBSのような機構はバッテリーかもしくは電源回路といった電圧源が必要だが、この発明では電源を必要としない。
【0015】
・電源を必要としないので、比較的容易にスピーカーやアンプなどの内部配線等にも使用可能である。DBSのような機構は電源ケーブルのような高電圧の電線の場合さらに高い電圧源が必要になるが、本発明の場合その必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はケーブルの構造を示した拡大図である。(実施例1)
【図2】図2はケーブルの実施方法を示した全体図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0017】
ケーブルにおいて伝送線を覆っている被覆材料の分極を最小限に抑えるために、伝送線を覆う被覆材の周りを金属箔で覆い、その金属箔をドレイン線で伝送線の片側にのみ接続することで実現する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明のケーブル構造を示した拡大図である。図2はドレイン線4を片側のみ信号線と接続することを示した全体図で、1〜6まで各部は図1と同じである。
【0019】
伝送線1を覆う被覆材2の周りを金属箔で覆い、被覆材を覆う金属筒3とする。また、金属筒3はメッキで代用も可能である。金属筒3はドレイン線4によって伝送線1と接続されるので、当然伝送線1と同じ電圧が掛かる。金属筒3と外界を絶縁するため、外部金属筒用被覆5を備え、二重被覆構造としている。
【0020】
図1では一般的なツイステッド線の場合を示しており、信号の行き線と帰り線、2本の信号線があるが、帰り線の場合も行き線の場合と同様に金属筒とドレイン線を内蔵した二重被覆を施し、ドレイン線と帰り線を接続する。この金属筒とドレイン線を内蔵した二重被覆は必ず行き線と帰り線それぞれ独立して施す。もちろんスターカッド構造のように、行き線と帰り線が複数本ずつある場合も金属筒とドレイン線を内蔵した二重被覆は必ず行き線と帰り線に独立に施す。
【実施例2】
【0021】
図2はドレイン線4を片側のみ信号線と接続することを示した全体図で、1〜6の各部は図1と同じである。図2の上の部分はドレイン線と伝送線は接続されていないが、図2の下の部分ではドレイン線と伝送線が接続されている。
【0022】
この構造ではドレイン線4を片側のみ信号線と接続しているので、金属筒3は伝送線と同じ電圧ではあるが、信号の伝送路として使われることは無い。この構造は金属筒3と伝送線1の間にある被覆材2の分極は最小限に抑える事を目的としている。
【0023】
被覆材2の分極を抑える原理は誘電体の誘電分極にある。一般的に誘電体の分極率は数式1のように誘電体に掛かる電界に比例する値として定義されている。
【0024】
また、電気ダイポールとその空間に生じる電位との関係は数式2によって表されることが分かっており、大きさ+−qの電荷が、距離Lで分極した場合、そのダイポールの中心から上下に1/2dずつ離れた空間に生じる電位差は式3のようになる。つまり、コンデンサーなどの場合、掛けられた電界によって誘電体の分極が起こり極板間に電圧降下が生じることを意味する。
【0025】
【数1】


【数2】


【数3】

【0026】
上記の数式1に示したように、誘電体に電界が掛かると分極が起こり、分極率は誘電体に掛かる電界に比例する。これより電界が誘電体に掛からなければ、分極率は0になることが分かる。本発明ではこの原理を用いて、金属筒を使った二重被覆とした。金属筒には内部伝送線と同じ電圧が掛かるようになっており、金属筒と内部伝送線間に電位差は0である。電界とは電圧を距離で微分したもの、単位距離あたりの電圧変動なので、金属筒と内部伝送線の間にある被覆には電界が掛からない。これにより被覆の分極を最小限に抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
ケーブルの信号もしくはエネルギー伝送線路において、被覆材料の分極が問題になる場合その解決方法として適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 中心導体
2 被覆材
3 金属筒
4 ドレイン線
5 外部金属筒用被覆
6 外装用ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの導体を覆っている被覆を金属箔もしくはメッキなど電気伝導体で覆いドレイン線で導体と片側のみ接続し導体と同じ電圧を掛ける。それに金属箔もしくはメッキを絶縁するための被覆を備える事を特徴とするケーブル。
【請求項2】
請求項1を特徴とする被覆構造を掛かる電圧が異なる導体に対してそれぞれ独立に施した事を特徴とするケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−37923(P2013−37923A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173592(P2011−173592)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(711006474)
【Fターム(参考)】