説明

EpCAMxCD3二重特異性抗体を投与するための投与計画

ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。本発明の方法(および同様に本発明の投与計画)は、ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療するため、または、ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を連続的に投与することにより仲介される医学的状態を改善および/または防止するためにも適している。さらに、本発明は、その先行する請求項のいずれか1項に定義されるような方法において使用される医薬組成物を製剤するためのEpCAMxCD3二重特異性抗体の使用に関する。また、本発明の方法/投与計画において定義されるような第1用量および第2用量を含む医薬パッケージまたはキットを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。本発明の方法(および同様に本発明の投与計画)は、ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療するため、または、ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を連続的に投与することにより仲介される医学的状態を改善および/または防止するためにも適している。さらに、本発明は、その先行する請求項のいずれか1項に定義されるような方法において使用される医薬組成物を製剤するためのEpCAMxCD3二重特異性抗体の使用に関する。また、本発明の方法/投与計画において定義されるような第1用量および第2用量を含む医薬パッケージまたはキットを開示する。
【背景技術】
【0002】
抗体ベースの癌治療法は、活性であるために癌細胞の表面にしっかりと結合される標的抗原を必要とする。表面標的との結合により、抗体は、致死信号を癌細胞へ送達することができる。理想的な治療計画では、標的抗原は、各癌細胞には多数存在して到達可能であり、正常細胞には存在せず、遮蔽され、または、それほど多数ではない。この状況は、抗体ベースの治療法の規定量が癌細胞を効果的に攻撃するが正常細胞は攻撃しない治療域についての基準を規定する。
【0003】
EpCAMは、結腸直腸、乳房、肺、胃、膀胱、前立腺、卵巣、および膵臓に発生する癌を含むほとんどのヒト腺癌に見つかる。例えば、結腸直腸癌では、98%を上回る患者は、原発腫瘍における癌細胞にEpCAMの強く頻繁な発現を示す(非特許文献1)。癌細胞が脱分化し、転移期に進行すると、EpCAMは、癌細胞から消滅しない。乳癌、卵巣癌、および一部の扁平上皮癌などのいくつかの癌では、EpCAM発現は、デノボ発現であるか、または、正常上皮組織に比べて高度に発現誘導されている。EpCAM発現が癌細胞においてアンチセンスまたはsiRNAによって抑制される場合、細胞は、軟寒天中での増殖、移動、および、侵襲性成長を停止する。逆に、静止細胞におけるEpCAMの異所発現は、これらの性質を与え、静止細胞の血清成長因子からは独立した成長につながる(非特許文献2)。EpCAMは、現在、癌幹細胞マーカーのリストに加えられている(非特許文献3)。癌幹細胞は、腫瘍を一定に再増殖させ、化学療法抵抗性および腫瘍再発の原因になると考えられる。EpCAM発現は、乳房、結腸、前立腺、肝臓、および膵臓の腫瘍に由来する癌幹細胞に見出されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P. Went etal., Br. J. Cancer 94: 128 (2006)
【非特許文献2】M. Munz et al., Oncogene 23: 5748 (2004)
【非特許文献3】J. E. Visvader および G. J. Lindeman, Nat. Rev.Cancer 8: 755 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EpCAMは、現在、複数の抗体ベースの治療的アプローチの対象となっており、これらのアプローチは、臨床開発の様々な段階にある。これらのEpCAM抗体によって患者を治療した際に、以下の有害事象が報告されている。
【0006】
カツマキソマブ:
発熱、心頻拍を引き起こす全身的サイトカイン放出
リンパ球の減少
デキサメタゾンが少ない状態で高用量の抗体を用いるとトランスアミナーゼにより肝臓パラメータが最高Grade4まで上昇
VB4−845
微熱、悪心、嘔吐
トランスアミナーゼの上昇
MT110は、上皮に発生するほとんどの固形癌に発現した上皮細胞接着分子(EpCAM)およびT細胞のCD3に結合する二重特異性単鎖抗体作成物(BiTE)である。MT110は、ヒト結腸直腸癌(CRC)異種移植を含む様々な前臨床モデルにおいて、高い抗腫瘍活性を示した。BiTE抗体についての概念は、B細胞リンパ腫を有する患者(pts)におけるブリナツモマブ(CD19xCD3BiTE)によって臨床により実証された(Bargou R et al. (2008)Science 321: 9741)。MT110は、(転移性)胃腸癌および肺癌の患者による用量増加第1相試験において現在研究中である。抗EpCAMx抗CD3二重特異性単鎖抗体の安全性および許容度を評価するために、化合物を、長期持続輸液によって投与した。輸液の開始後、熱、悪寒、または他の輸液反応を示した患者はいなかった。実質的な全身性サイトカインレベルは見出せなかった。しかしながら、EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体の輸液の開始時に、肝臓酵素の一時的上昇が観察された。
【0007】
治療される患者の肝臓酵素などの肝臓パラメータに影響を及ぼさない抗EpCAM抗体ベースの治療法を設計することは、明らかに困難である。
【0008】
よって、本発明の技術的課題は、上記問題を解決する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、この必要性に対応するものであり、したがって、ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与するための方法および投与計画に関する実施形態を提供する。
【0010】
これらの実施形態は、本明細書に特性が示され且つ説明されており、請求項に反映されている。
【0011】
なお、本明細書では、単数形の「ある(a、an)」「前記(the)」は、文脈が明示しない限り複数を指すことも含む。したがって、例えば、「ある試薬」は、1つ以上のこのような異なる試薬を含み、「前記方法」は、本明細書で説明した方法に変更または置換することのできる当業者の知る同等のステップおよび方法への言及を含む。
【0012】
本開示において引用される全ての発行物および特許は、参照によりその全内容がここに引用される。参照により引用される材料が本明細書と矛盾する、または、整合しない場合には、このような材料よりも本明細書が優先される。特記しない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の各要素を指すものとする。当業者は、本明細書に記載された発明の具体的実施形態の多くの均等物を、ルーチン実験だけで認識するであろう、または、確認することができるであろう。このような均等物は、本発明に含まれるものとする。
【0013】
本明細書、および、続く請求項を通して、文脈上必要でない限り、「含む」という用語、および、「含み」「含んでいる」などの変化形は、表記された値、ステップ、または、値若しくはステップのグループを含むことを意味し、その他の値、ステップ、または、値若しくはステップのグループを除外しないものとする。
【0014】
本明細書の文中にいくつかの文献が引用されている。ここに引用した各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、指示書などを含む)は、本明細書の前後を問わず、参照によりその全内容がここに引用される。これらにおける何れも、先行発明により本発明がこのような開示に先行しない、ということを認めているものとして解釈されるべきではない。
【0015】
有害事象、特に、EpCAM特異性抗体で観察されるALT、AST、APなど(「AP、ALTおよびASTなど」という用語は本明細書の他の部分において説明される)の肝臓パラメータの驚異的な増加を考慮すると、EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体を本明細書に提供したような投与計画に従って投与すれば患者が許容するように投与できる、という発見は、確かに注目に値する。
【0016】
具体的には、本願発明者らは、EpCAMxCD3二重特異性抗体などのEpCAM特異性抗体によって治療される患者にとって追加の負担になるかもしれない不都合な程度まで肝臓酵素の血清中濃度が著しく上昇することを観察した。しかしながら、驚くことに、本明細書に記載のような方法/投与計画に従って抗体を投与したことを前提とすると、EpCAMxCD3二重特異性抗体に対する再暴露においてトランスアミナーゼの増加は起こらなかった。つまり、本願発明者らは、EpCAMxCD3二重特異性抗体による治療前にEpCAMxCD3二重特異性抗体に患者を「適応」させておくことは不都合な有害反応(特に、肝臓パラメータの不都合な上昇)を回避するために有効だ、ということを見出した。
【0017】
したがって、本発明は、第1観点によると、ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。
【0018】
本発明に関しては、ヒト患者がEpCAM陽性上皮癌細胞を有している、または、有していると推定されることが好ましい。
【0019】
本発明に関しては、「方法」という用語は、本発明の方法において使用される「投与計画」を含むものとする。
【0020】
本発明に関しては、「EpCAMxCD3二重特異性抗体の投与」または「EpCAMxCD3二重特異性抗体を投与すること」、または、その他の文法形式は、EpCAMxCD3抗体が薬剤的に許容可能な仲介物を任意に含む医薬組成物の形態である、ということを意味している。したがって、EpCAMxCD3二重特異性抗体を含む医薬組成物がヒト患者に投与されるものとする。
【0021】
本発明に関しては、「患者」という用語は、EpCAM陽性上皮癌細胞の治療を必要とする被検者、または、個人を意味する。患者は、哺乳類であり、好ましくはヒトである。
【0022】
「投与」という用語は、その全ての文法形式において、(医薬組成物の形態の)EpCAMxCD3二重特異性抗体を単独の治療薬として、または、別の治療薬と組み合わせて投与することを意味している。
【0023】
したがって、本発明の医薬組成物は、併用療法アプローチにおいて、すなわち、他の薬剤または薬物、例えば、患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療するための他の薬剤、および/または、グルココルチコイド、および/または、本発明の方法に関して有用であろう他の治療薬との同時投与において採用される、ということが想定される。
【0024】
本明細書における医薬組成物の投与は、静脈内投与であることが好ましい。これは、本発明の方法において工程(a)における投与の経路、および/または、工程(b)における投与の経路が静脈内であることを意味する。
【0025】
EpCAMxCD3二重特異性抗体の(例えば、医薬組成物の形態での)投与は、連続的に、または本明細書においても使用されるように持続的に行われてもよい。連続的な投与は、実質的に中断のない投与を指す。「実質的に中断が無い」とは、通常はフローまたは空間的広がりの中断を伴う連続的な投与を含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、第2用量は、治療効果がある。有効量は、CD8+T細胞を活性化することが好ましい。活性化されたCD8+細胞は、CD25および/またはCD69表現型によって特徴付けられることが好ましい。「活性化されたCD8+T細胞」および「CD25および/またはCD69表現型」という用語は、本明細書の他の部分において説明される。
【0027】
「治療効果のある量」または「治療効果がある」とは、投与されたものに対して治療効果を生じるEpCAMxCD3二重特異性抗体の用量を意味する。
【0028】
正確な用量は、治療の目的に応じて決まり、周知の技術を用いる当業者によって確定可能になるであろう。当技術分野において周知のように、且つ、上述の通り、年齢、体重、一般的健康、性別、治療食、薬物相互作用および状態の深刻度に対する調整は必要であろうし、当業者によるルーチン実験によって確定可能になるであろう。「治療効果がある」とは、本発明に関しては、治療的アプローチの前提条件であるCD8+T細胞の上記活性化を少なくとも含む。本発明の各方法または方法工程の治療効果は、治療効果を示すであろう全ての確立された方法およびアプローチによって更に検出可能である。例えば、治療効果は患部組織/臓器を外科的切除または生検し、続いて免疫組織化学的(IHC)または同等の免疫学的方法による分析を行うことで検出される、ということが想定される。あるいは、患者の血清中の腫瘍マーカー(存在していれば)を治療的アプローチが既に有効かどうかを診断するために検出する、ということも想定される。さらに、または、代替として、当業者が治療効果が既にあるかどうかを評価するのを助けるであろう患者の一般的外見(フィットネス、ウェルビーイング、腫瘍により仲介された病気の減少など)を評価することも可能である。本発明の化合物の治療効果を観察できるようにする多くの他の方法は、当業者には周知である。
【0029】
更なる観点によれば、本発明は、ヒト患者におけるEpCAM陽性上皮癌細胞を治療するための方法であって、
(a)第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。
【0030】
更なる観点において、本発明は、ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の連続的(治療的)投与によって仲介される医学的状態、好ましくは有害反応を改善および/または防止するための方法であって、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。前記ヒト患者は、EpCAM陽性上皮癌細胞を有する、または、有していると推定されることが好ましい。
【0031】
ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される医学的状態、好ましくは有害反応を改善または防止するための方法の好ましい形態では、前記医学的状態は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇により特徴付けられる。
【0032】
前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇は、本明細書の以下で更に説明する有害事象共通用語規準v3.0(CTCAE)によると、その最高値はグレード4である。したがって、前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇は、グレード4が最高値であるが、グレード1、2、または3までの場合もある。
【0033】
上昇は、一過性のものであることが好ましい。「一過性」は、前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇に関して使用される場合、上昇が永久的ではなく治療の停止後または輸液さらに継続して行っているうちに解消する、ということを意味している。肝臓酵素の血清中濃度の一過性の上昇は肝臓の画像での病理所見、実質的組織損傷、または合成パラメータ障害を必ずしも伴っていない、ということも想定される。このことは、MT110、すなわち本発明の抗体によって治療された患者の肝実質を映す図7に例示されている。図に示すように、肝実質は、肝トランスアミナーゼのピークにおいて実質的細胞損傷(HE染色)のサインを示していない。
【0034】
概説すると、肝臓酵素の活性度は、肝臓のコンディション/状態についての指針を示すので、肝臓の「窓」として一般的に使用される。例えば、肝臓がアルコール若しくは他の薬剤によって損傷されている、または、他の何らかの理由によって異常機能を有している場合、肝臓酵素が血液へ漏れ出す。なお、肝臓酵素は、通常は血中に存在しない。
【0035】
したがって、肝臓酵素の血清中濃度は、肝臓酵素の活性度によって測定できる。一般的に許容される基準値を上回る(すなわち、上昇したまたは高まった)肝臓酵素の活性度は、通常、肝臓の潜在的な異常機能および/または損傷の指標となっている。
【0036】
したがって、肝臓酵素の活性度は、肝臓機能検査(LFTまたはLF)、すなわち、患者の肝臓の状態についての情報を提供するために設計された臨床生化学検査室血液分析によって測定可能である。肝臓酵素について、基準値(正常値)は知られており、一般的に受け入れられている。基準値は、一連の医学的検査結果を解釈するために医療従事者によって使用される価値体系である。基準値は、通常、95パーセントの正規母集団が当てはまる、または、平均からの2標準偏差以内の価値体系として定義される。基準値は、多数の臨床検査からデータを集めることによって決定される。
【0037】
肝臓酵素では、基準値は、国際単位(IU)として与えられている。国際単位は、測定された生物学的活性度または影響に基づいている。
【0038】
肝臓酵素の血清中濃度の(好ましくは一過性の)上昇は、正常上限(ULN)の倍数で測定される。ULNの倍数は、NCI有害事象共通用語規準(CTCAE)v3.0(出版日:2003年12月12日)に従って、グレードに分類される。Gradeは、有害反応の重症度を意味する。CTCAEv3.0は、グレード1から5を、各有害反応の重症度の独自の臨床記述で記載している。
Grade1:軽度の有害反応
Grade2:中等度の有害反応
Grade3:高度の有害反応
Grade4:生命を脅かすまたは活動不能とする有害反応
Grade5:患者の死亡
アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)などの肝トランスアミナーゼは、肝臓の細胞完全性の状態を示すものである。なぜなら、肝臓が損傷している、または、機能不全である場合は、これらの酵素は、損傷した、または、機能不全の肝臓細胞から血液へ漏れ出るからである。
【0039】
したがって、本発明の方法に関しては、ASTおよび/またはALTは、好ましい肝臓酵素(肝臓マーカー)である。いくつかの好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの肝臓酵素は、ASTおよび/またはALTと、任意でGGTおよび/またはAPとを含む。
【0040】
血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)とも呼ばれるアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)は、肝実質細胞に関連する他の酵素である、という点でアラニントランスアミナーゼ(ALT)に類似している。この酵素は、急性肝臓障害において発生するが、赤血球、心筋、および骨格筋にも存在し、したがって、肝臓に特有のものではない。ASTのALTに対する比率は、肝臓障害の原因を差別化する際に有効なこともある。上昇したASTレベルは、肝臓障害に特有のものではない。ASTについての通常の基準値は、10〜50IU/Iである。
【0041】
有害事象共通用語規準v3.0によると、ASTのグレーディングは以下の通りである。
表1

【0042】
血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)またはアラニンアミノ基転移酵素(ALAT)とも呼ばれるアラニントランスアミナーゼ(ALT)は、肝実質細胞(肝細胞)に存在する酵素である。細胞が損傷を受けたら、細胞はこの酵素を血液へ漏らし、血液中で酵素が測定される。
【0043】
ALTは、ウイルス性肝炎またはパラセタモール(アセトアミノフェン)服用量過多などの急性肝臓障害において急激に上昇する。ALTについての通常の基準値は、5〜50IU/Iである。
【0044】
有害事象共通用語規準v3.0によると、ALTについてのグレーディングは、以下の通りである。
表2

【0045】
ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)またはアルカリホスファターゼ(AP)などの他の肝臓酵素は、胆道に関連するコンディションを示す。
【0046】
したがって、本発明に関しては、さらなる肝臓酵素としてアルカリホスファターゼ(APまたはALP)をそれぞれ増加または減少について測定できる、ということも想定される。APは、肝臓の胆管を裏打ちする細胞における酵素である。血漿中のAPレベルは、肝臓の大胆管閉塞症、肝内性胆汁鬱滞,
または浸潤性疾患により上昇する。APは、骨および胎盤組織にも存在し、成長期の子供(骨が再造詣されるため)、および、高齢のパジェット病患者において高い。APについての通常の基準値は、30〜120IU/Iである。
【0047】
有害事象共通用語規準v3.0によると、APのグレーディングは以下のとおりである。
表3

【0048】
本発明に関しては、それぞれ増加または減少について測定できる他の肝臓酵素は、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)である。この酵素は、些細な、無症状レベルの肝機能不全によってさえ上昇されることが知られている。この酵素は、ALPの孤立上昇の原因を特定する際に有用でもある。GGTについての通常の基準値は、0〜51IU/Iである。
【0049】
有害事象共通用語規準v3.0によると、GGTについてのグレーディングは以下のとおりである。
表4

【0050】
本発明の方法の一観点では、前記第2期間は、前記第1期間を上回る。「上回る」という用語は、第2期間が第1期間よりも長く、好ましくは少なくとも1日長いということを意味する。本発明の方法/投与計画の他の観点によると、前記第1期間は、前記第2期間を上回る、または、第2期間と同じである。
【0051】
第1期間および第2期間は第3期間によって中断される(すなわち、第1期間と第2期間との間に休止期間がある)、ということも想定される。第3期間は、できる限り短いほうが好ましい(なぜなら、EpCAM陽性上皮癌がその間に成長するかもしれないからである)。しかしながら、第3期間は、1日以上であってもよいし、状況によっては1週間、2週間、またはそれ以上でもよい。中断の目的は、それが必要だとすれば、前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇から患者が回復するためのレクリエーションフェーズとみなされるはずである。好ましい実施形態では、(第1期間と第2期間との間の)前記第3期間は、2週間以下であり、1週間以下がより好ましい。
【0052】
本発明の他の観点では、前記第1期間は少なくとも1、2、3、4、5、6、7日間である、と想定され、これにより、8、9、10、11、12、13または14日といったより長い期間も除外されない。この場合、「より長い」は、最小時間単位として全(1)日に限定されない、すなわち、1/2日、または完全に時間であることも考えられる。しかしながら、最小時間単位は丸一日であることが好ましい。添付の例に示す結果を考慮すると、第1期間は理想的には7〜9日の間(7、8、9日)であり、7日が好ましいことが分かる。前記EpCAMxCD3二重特異性抗体は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード4またはそれ以下(好ましくはグレード3)へ上昇し、その後、グレード2へ低下するように、この第1期間に投与されることが好ましい。肝臓酵素のこの上昇および低下は、本明細書の他の部分において説明されている。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「X〜Y(X to Y)」と定義される時間間隔は、「X〜Yの間(betweenX and Y)」と定義される時間間隔と同じである。両時間間隔は、具体的には、上限と下限とを含む。このことは、例えば、時間間隔「1日〜4日」または「1日〜4日」の間は、1、2、3、および/または4日の期間を含む。
【0054】
本明細書において言及するように、発明者らは、ヒト患者を第1期間中にEpCAMxCD3二重特異性抗体による治療に「適応」させることで、第2期間に増加した第2用量の抗体でヒト患者を治療することができ、これにより、有害反応(少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇)をよりよくコントロールすることができる、すなわち、回避、または、少なくとも、CTCAEにおける許容可能なグレード内に収めることができる、ということを観察した。
【0055】
しかしながら、この改善を達成するためには、ヒト患者を、第1期間に第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与することにより該抗体に「適応」させる必要がある(ただし、第1用量は、続く(第2)用量よりも少ない)。
【0056】
第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体をヒト患者に対して連続的に投与する第1期間は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度が最大でグレード3または4へ上昇する(したがって、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード1または2へ上昇することを含む)ことによって特徴付けられることが好ましい。上昇は、第1期間の開始時の前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度と比較して分かる。
【0057】
「適応」フェーズ(第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体を連続的にヒト患者に投与する第1期間を含む)は、前記少なくとも1つの肝臓酵素の上昇した血清中濃度が、好ましくはグレード2へ、または、グレード1にまで低下するまで持続することが好ましい。前記適応フェーズは、(上述の第3期間が採用される場合は)この第3期間も含んでいてもよく、この第3期間は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇から(必要であれば)患者を回復させるためのレクリエーション的な休止のことである。
【0058】
つまり、第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体をヒト患者に連続的に投与する第1期間は、以前に説明したように、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇、および、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の低下によって特徴付けられる。この低下は、第3期間が採用される場合は、第3期間中にも起こる。したがって、この上昇および低下は、EpCAMxCD3二重特異性抗体が投与されるヒト患者の適応フェーズを特徴付け、これにより、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度を過度に上昇させることなく第2用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体を第2期間に連続的に投与することができる。
【0059】
したがって、第1期間(または、第1および第3期間)は、上昇および低下に必要な時間によって決まり、したがって、患者毎に様々である。しかしながら、本発明の示唆を適用することにより当業者は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇を、血清中濃度を測定し、測定したものを、「適応フェーズ」の開始時、すなわち、第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体をヒト患者に連続的に投与する第1期間(および採用した場合は第3期間)の開始時の血清中濃度と比較することによって決定することができる。
【0060】
同様に、当業者は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の低下を、血清中濃度が最高グレード4に達した後にその血清中濃度を測定して血清中濃度が低下したかどうかを評価することによって決定することができる。
【0061】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、EpCAMxCD3二重特異性抗体をヒト患者に連続的に投与する第1期間は、前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度が前記期間中にグレード2を上回って上昇しないことを前提として、4日以下(例えば、3日)である。
【0062】
第1期間の継続期間同様に、第2期間の継続期間および第3期間の継続期間は、ヒト患者の年齢、性別、体重などに応じて可変であってもよい。
【0063】
第2期間は、前記患者のCD8+T細胞が活性化されるまで持続することが好ましい。
【0064】
CD8+T細胞の活性化は、CD8用の抗体を適用してCD8+T細胞を分別することによる、および/または、CD8+T細胞の活性化の指標となる細胞表面マーカーに対して特定の抗体を適用することによるFACS分析などの当分野において知られている手段および方法によって決定できる。
【0065】
したがって、CD8+T細胞活性化は、前記CD8+T細胞のCD25および/またはCD69の陽性表現型が少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上増加することによって特徴付けられることが好ましい。CD8+T細胞の合計数は、当分野において知られている手段および方法、例えば、前記患者の抹消血のサンプルのFACS分析によって決定することができる。第2期間中の前記上昇は、第1期間に先行する、または、第2期間に先行する患者のCD8+T細胞のCD25および/またはCD69の陽性表現型と比較して分かる。したがって、利用可能な基準値を得るために第1期間に先行して、または、第2期間に先行して患者のCD8+T細胞の表現型を測定する、ということが想定される。
【0066】
本発明の方法の他の実施形態では、前記第2期間は、少なくとも2週間、すなわち、2、3、4、5、6、7、8週間またはそれ以上であり、3週間であることが好ましい。「1週間」という用語は、丸7日を意味するものとする。
【0067】
好ましい実施形態において、前記第2期間は、少なくとも19日、すなわち、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日またはそれ以上である。前記第2期間は、治療効果が検出されるまで持続することが好ましい。「治療効果」は、本発明に関しては、CD8+T細胞の少なくとも上記の活性化を含み、このことは、いずれの治療効果に対しても前提条件である。
【0068】
本明細書の方法/投与計画のより好ましい実施形態では、前記第1期間は、1日〜10日であり、第2期間は、少なくとも19日である。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、前記第1期間は7〜9日であり、第2期間は19日〜21日である。第1期間は7日であり、第2期間は21日であることが特に好ましい。別の特に好ましい実施形態では、前記第1期間は1週間であり、前記第2期間は少なくとも3週間であり、第3期間は1週間または2週間である。
【0070】
いくつかの実施形態においては、前記第1用量は、治療効果が無い。「治療効果が無い」とは、この文脈においては、上述のCD8+T細胞活性化が好ましくはCD8+T細胞のCD25および/またはCD69の陽性表現型の増加が20%以下であることによって特徴付けられる、ということを意味する。CD8+T細胞の合計数は、当分野において知られている手段および方法、例えば、前記患者の抹消血のサンプルをFACS分析することによって決定できる。前記上昇は、第1期間に先行する患者のCD8+T細胞のCD25および/またはCD69の陽性表現型と比較して分かる。したがって、利用可能な基準値を得るために第1期間に先行して患者のCD8+T細胞の表現型を測定する、ということが想定される。
【0071】
第2用量は治療効果がある、ということが想定される。前記第2用量の治療効果は、本明細書の他の部分で説明されるように、活性化されたCD8+T細胞によって特徴付けられる。前記活性化は、前記CD8+T細胞のCD25および/またはCD69の陽性表現型の増加が(第2期間に先行するCD25および/またはCD69の陽性表現型に比較して)20%を上回ることによって特徴付けられる。
【0072】
本発明の方法の他の実施形態において、前記第1用量は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度が、第1期間内に、グレード3または4の血清中濃度に上昇し、グレード2の血清中濃度に再び低下する用量である。「肝臓酵素」、「グレード」などの用語は、本明細書の他の部分において説明されている。
【0073】
本発明の方法/投与計画の更なる観点において、前記第1用量は、1〜6μg/d、すなわち、1、2、3、4、5、または6μg/dである(1〜3μg/d、すなわち、1、2、または3μg/dが好ましい)。なお「d」は1日を示す。例えば、1μg/dの用量とは、1μgのEpCAMxCD3二重特異性抗体が1日に亘って均等または連続的に投与されることを意味する。「1日に亘って連続的に」とは、中断なく恒久的に行える輸液のことを指す。第1用量を前記第1期間中に徐々に増加し(すなわち、第1期間を、用量の増加により特徴付けられる複数の段階に分割し)、前記第2用量未満の用量で増加を終わる、ということも想定される。第1期間内のこの段階的な増加は、日単位でもよいし、または、週単位で行ってもよい(例えば、図8参照)。したがって、第1期間を治療に対する患者の段階的な適応により特徴付けられる「用量増加」治療/投与計画(例えば、1週間は3μg/日、続いて、1週間は6μg/日または12μg/日)で始める、ということが想定される。
【0074】
本発明の方法/投与計画の更なる観点では、前記第2用量は、10〜120μg/d、すなわち、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120μg/d、またはそれ以上である。
【0075】
「μg」という用語は、「μgのEpCAMxCD3二重特異性抗体製剤」を含む。不正確に折り畳まれるのは前記EpCAMxCD3二重特異性抗体製剤の多くとも10%であることが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のEpCAMxCD3二重特異性抗体が正しく折り畳まれる。抗体製剤は、例えば、溶解防止剤、界面活性剤、増量剤、結着剤、および/または、増量剤などの更なる配合剤を任意で含んでいてもよい、ということも考えられる。このような更なる配合剤の量は、本発明の「用量」および/または、方法に関して使用されているような「μg」に含まれないことが好ましい。
【0076】
好ましい実施形態では、前記第1用量は1μg/d〜3μg/d(すなわち、1、2、または3)であり、第2用量は、20μg/d〜90μg/d(すなわち、20、30、40、50、60、70、80、または90)である。
【0077】
本明細書における範囲は10の増加量で示されているものとする。しかしながら、これらの範囲は、比較的小さな増加量、例えば1によって例示される増加量(10から30は、例えば、10、11、12、13、14など30まで含む)、または、さらに小さな増加量、例えば、小数点以下の値も含む。
【0078】
好ましい実施形態では、前記投与計画は、図8に示すようなものである。これら投与計画についての更なる詳細は、本発明の実施形態を含む実施例4および5に示されている。
【0079】
本明細書の上記に記載のように、本発明は、ヒトCD3イプシロン鎖の抗原決定基に結合可能な第1結合ドメインと、ヒトEpCAMに結合可能な第2結合ドメインとを含むEpCAMxCD3二重特異性抗体を採用する治療/投与計画の方法に関する。本発明の方法に係る二重特異性分子の例は、国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646)に詳しく記載されており、参照によりその全内容がここに引用される。これに開示された全ての具体的なEpCAMxCD3二重特異性抗体は、その変種、断片、同等物などを含めて本発明の特に好ましいEpCAMxCD3二重特異性抗体である。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体」は、2つの結合ドメインを有する一本鎖ポリペプチドを指す。このような単鎖抗体は、本発明の方法/投与計画に関して好ましいものである。各結合ドメインは、抗体重鎖からの少なくとも1つの可変領域(「VHまたはH領域」)を備え、第1結合ドメインのVH領域は、CD3イプシロン分子と特異的に結合し、第2結合ドメインのVH領域は、EpCAMと特異的に結合する。2つの結合ドメインは、短ポリペプチドスペーサーによって任意に互いに連結されている。ポリペプチドスペーサーの限定されていない例は、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(G−G−G−G−S)およびその反復である。各結合ドメインは、抗体軽鎖からの1つの可変領域(「VLまたはL領域」)をさらに含んでいてもよく、第1および第2結合ドメインの各々の範囲内におけるVH領域およびVL領域は、例えば、欧州特許第623679号明細書に開示され権利請求されたような種類のポリペプチドリンカーを介して互いに連結されているが、いずれの場合にも、第1結合ドメインのVH領域およびVL領域と第2結合ドメインのVH領域およびVL領域とが共に各第1および第2結合ドメインに特異性結合できるように互いに対になれるように十分に長い。このようなEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体は、国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646)に詳細に説明されており、参照によりその全内容をここに引用する。
【0081】
「結合ドメイン」という用語は、本発明では、任意の標的構造/抗原/抗原決定基と特異的に結合/相互作用するポリペプチドのドメインを特徴付けるものである。したがって、結合ドメインは、「抗原−相互作用部位」である。「抗原−相互作用部位」という用語は、本発明によれば、特定の抗原または抗原の特定のグループ、例えば、異なる種属における同一抗原と特異的に相互作用することのできるポリペプチドのモチーフを定義する。上記結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するとも理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明では、抗体分子は抗原、例えば、本明細書において定義されるようなヒトCD3抗原の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つのアミノ酸と特異的に相互作用、および/または、結合することができる、ということを意味する。このような結合は、「鍵と鍵穴原理」の特異性によって例証されてもよい。したがって、結合ドメインのアミノ酸配列の特異性モチーフと抗原とは、これらの一次、二次、または三次構造の結果として、且つ、前記構造の二次修飾の結果として、互いに結合する。また、抗原−相互作用部位とその特定の抗原との特異性相互作用は、抗原に対する前記部位の単純な結合となってもよい。あるいは、結合ドメイン/抗原−相互作用部位とその特定の抗原との特異性相互作用は、例えば、抗原の配座の変化、抗原のオリゴマー化などの誘発により、信号発生という結果になってもよい。本発明に一致する結合ドメインの好ましい例は、抗体である。結合ドメインは、モノクローナルまたはポリクローナルの抗体でもよいし、またはモノクローナルまたはポリクローナルの抗体に由来するものでもよい。
【0082】
「抗体」という用語は、誘導体または結合特異性を依然として維持しているその機能的な断片を含む。抗体を産生するための技術は、当技術分野において周知であり、例えば、HarlowおよびLane「Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988、ならびに、HarlowおよびLane「Using Antibodies: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999に記載されている。「抗体」という用語は、異なるクラス(すなわち、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgE)およびサブクラス(IgG1、IgG2など)の免疫グロブリン(Ig’s)も含む。
【0083】
「抗体」という用語の定義は、とりわけFab断片のような抗体断片だけではなく、キメラ抗体、単鎖抗体、およびヒト化抗体などの形態も含む。抗体断片または誘導体は、F(ab’)2、Fv、scFv断片、または、単一ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体、もしくは他のV領域またはドメインからは独立して抗原または抗原決定基と特異性結合する、VHまたはVLでもよい、可変ドメインを1つだけ備える免疫グロブリン単一可変ドメインを更に含む。例えば、上記で引用したHarlowおよびLane(1988)および(1999)を参照。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、分離された抗体単一可変ドメインポリペプチドだけではなく、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1つ以上のモノマーを含むより大きなポリペプチドも含む。
【0084】
本明細書中で使用される場合、CD3イプシロンは、T細胞受容体の一部として表される分子を指し、従来技術においてその典型とされるような意味を有している。ヒトにおいて、それは、個別に、または、独立して組み合わされた形態で、全ての知られているCDサブユニット、例えば、CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD3アルファ、およびCD3ベータを含む。ヒトCD3イプシロンは、ジェンバンク(GenBank)受入番号NM_000733に記載されている。
【0085】
ヒトEpCAMは、ジェンバンク受入番号N_002354に記載されている。
【0086】
本発明の方法/投与計画の好ましい実施形態では、二重特異性単鎖抗体作成物は、EpCAMVL−EpCAMVH−CD3VH−CD3VL二重特異性単鎖抗体作成物である。
【0087】
本発明の方法/投与計画のより好ましい実施形態では、二重特異性単鎖抗体作成物は、国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646)に開示された配列番号88(CDRH1)、配列番号92(CDRH2)、および配列番号96(CDRH3)に記載のCDRH1−3と、国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646)に開示された配列番号100(CDRL1)、配列番号102(CDRL2)、および配列番号104(CDRL3)に記載のCDRL1−3とを、すなわち、MT110を特徴付けるCDRを含んでいる。
【0088】
前記配列番号を、以下の表にも記載する。
表5

【0089】
本発明の方法のよりいっそう好ましい実施形態では、EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体作成物は、国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646)に開示され且つ以下に記載の配列番号63に定義されるようなアミノ酸配列、または、前記配列番号63に少なくとも90%、好ましくは95%の一致性を有する(本明細書でも以下に記載の)アミノ酸配列を含むか、または、これらからなる。この配列により特徴付けられるEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体作成物は、MT110である。
【0090】
MT110のアミノ酸配列

【0091】

【0092】

【0093】
したがって、本発明の方法/投与計画の最も好ましい実施形態では、前記EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体は、上記のアミノ酸配列によって特徴付けられるようなMT110である。
【0094】
本発明は、上記(または国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646))の配列番号63に記載のようなアミノ酸配列、および、前記アミノ酸配列に少なくとも90%、または好ましくは95%、最も好ましくは少なくとも96、97、98、または99%の一致性を有するアミノ酸配列を含むEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体分子を記載している。配列一致性は、アミノ酸配列全体に亘って決定されるものとする。配列アライメントのために、例えば、GapまたはBestFitというプログラムを使用することができ(Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48 (1970),443-453; Smith and Waterman, Adv. Appl. Math 2 (1981), 482-489)、このプログラムは、GCGソフトウエアパッケージに含まれている(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)。本明細書に記載のEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体(好ましくはMT110)のアミノ酸配列に対して例えば、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列一致性を有するアミノ酸配列を決定し特定することは、当業者にとっては慣例の方法である。例えば、Crickのゆらぎ仮説によると、アンチコドンの5’塩基は、他の2つの塩基ほど空間的に制限されておらず、それゆえ、非標準的な塩基対を有することができるであろう。言い換えれば、コドントリプレットにおける第3位置は、該第3位置の異なる2つのトリプレットが同じアミノ酸残基を符号化してもよいように変化するかもしれない。この仮説は、当業者には周知である(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Wobble_Hypothesis; Crick, J Mol Biol 19 (1966): 548-55参照)。さらに、本明細書に記載のEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対して例えば90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列一致性を有するこのようなアミノ酸配列の細胞障害性活性度を決定することは、当業者にとっては慣例の手順である。EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体、または、EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体のアミノ酸配列に対して例えば90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列一致性を有する抗体作成物の細胞障害性活性度は、例えば国際公開第2005/040220号(PCT/EP2004/011646)に記載のような方法によって検出することができる。
【0095】
本発明の方法は、グルココルチコイドの好ましくは併用の投与によりさらに特徴付けられる、ということも想定される。
【0096】
添付の実施例2に示すように、グルココルチコイドは、本発明の治療の方法の過程において肝臓酵素の上述の増加を多少緩和することが分かった。したがって、本発明の方法(および、本発明の投与計画)は少なくとも1つのグルココルチコイドの任意の投与によってさらに特徴付けられる、ということが想定される。前記投与は、本明細書に定義したような第1および/または第2期間に並行して行われることが好ましい。グルココルチコイド(GC)は、人を含むほぼ全ての脊椎動物の細胞に存在するグルココルチコイド受容体(GR)に結合するクラスのステロイドホルモンである。これらの化合物は、炎症の原因を問わず有力な抗炎症剤である。グルココルチコイドは、とりわけ、細胞によって仲介される免疫性を、サイトカインIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8およびIFN−γをコードする遺伝子を阻害することによって抑制する。
【0097】
本明細書では、「グルココルチコイド」という用語は、少なくともコルチゾン、コルチゾル、クロプレドノール、プレドニゾン、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、デフラザコルト、フルオコルトロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、およびベタメタゾンを含む。なお、プレドニゾン、プレドニソロンおよび/またはメチルプレドニソロンが好ましい。
【0098】
EpCAMは、ほぼ全ての癌腫の(基底外側)細胞表面に発現する全上皮分化抗原である。この場合、癌腫は、上皮細胞から生じる任意の悪性癌を意味している。癌腫は、周囲組織および臓器へ侵入し、リンパ節および他の部位へ転移または拡張することがある。したがって、「EpCAM陽性上皮癌細胞」という用語は、本明細書において使用される場合は、全種類の癌腫を指し、その細胞表面にEpCAMを発現する癌腫瘍の単細胞または転移細胞を含む。EpCAM陽性上皮癌(細胞)の例としては、胃腸癌(細胞)、肺癌(細胞)、前立腺癌(細胞)および卵巣癌(細胞)が挙げられる。「胃腸」は、例えば、食道、腹(胃)、小腸および大腸、膀胱、胆嚢、肝臓、および膵臓を含む。肺癌の主な種類は、小細胞肺腫および非小細胞肺癌腫である。
【0099】
癌細胞は、原発腫瘍から離脱、漏出、または、流出し、リンパ管および血管に入り、血流中を循環し、体の他の部分において正常細胞内に堆積され得る。ほとんどの悪性腫瘍および他の悪性新生物は、程度は違っても、転移する可能性がある。これらの転移癌細胞は、「転移性変種」または「転移」と呼ばれることもある。転移癌細胞は、明確に本発明の範囲に含まれる。
【0100】
本発明の方法の好ましい実施形態において、前記胃腸癌は、胃癌、結腸直腸癌、またはその転移性変種であり、前記肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、またはその転移性変種である。
【0101】
肺腺癌、胃食道接合部腺癌、耐ホルモン性前立腺癌、卵巣癌および乳房癌なども好ましい。
【0102】
本発明の方法の他の好ましい実施形態では、方法は、(転移性)EpCAM陽性上皮癌細胞を有する患者における微小残存病変(MRD)を治療、改善、または、除去するためのものである。「MRD」は、治療中または患者が寛解している場合(すなわち、患者が疾患の症状またはサインを示さない場合)は治療後に患者に残る少数の癌細胞に付けられた名称である。MRDは、上皮癌および白血病における再発の主な原因である。
【0103】
更なる実施形態では、本発明は、
(i)ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与する、または、
(ii)ヒト患者におけるEpCAM陽性上皮癌細胞を治療する、または、
(iii)ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与により仲介される医学的状態を改善または防止する
ための方法であって、
(a)EpCAMxCD3二重特異性抗体を、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード4またはそれ以下(好ましくはグレード3)へ上昇し、その後、グレード2へ低下するように連続的に投与する工程と、続いて、
(b)前記抗体を治療効果が出るように投与する工程とを含む方法に関する。
【0104】
本発明の方法の更なる実施形態では、(第1および第2期間を含み、任意で第3期間も含む)1つの治療サイクルは、無治療間隔の後に1回以上のサイクルで繰り返される。本発明の方法の好ましい実施形態では、(第1および第2期間を含み、任意で第3期間も含む)1つの治療サイクルは、4〜8週間の持続輸液であり、2〜6週間の無治療の間隔をあけた後にサイクルが繰り返される。前記第2治療サイクルは、第1治療サイクル(「第1治療サイクル」は、本明細書では、「第2治療サイクル」の直前の治療サイクルのことを指している)とは、第1治療サイクルと比較した場合に第1期間および/または前記第2サイクルの用量が異なる、および/または、第2期間および/または用量が異なる、という点で相違しているということも想定される。同様に、第3期間(第1治療サイクルに設けられている場合)が第2サイクルとは異なる、または、第2サイクルには設けられていない(または、その逆、すなわち、第3期間は第2サイクルに設けられているが第1サイクルには設けられてない)ということもあり得る。第2治療サイクルが第2期間のみからなるということも想定される。すなわち、第2治療サイクルを治療効果のある用量で直接開始し、本明細書において説明された第1期間(第3期間が設けられている場合は第3期間も含む)の第1用量により特徴付けられる適応フェーズを省略するということが明確に想定される。第2治療サイクルの前記治療効果のある用量は、第1治療サイクルの第2期間において使用された用量と同じであってもよいし、または、それとは異なっていてもよい(それを上回っていることが好ましい)。図8に示すような、または、添付の実施例に例示したような投与計画が特に好ましい。
【0105】
さらに、本発明は、
(i)ヒト患者にEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与する、または、
(ii)ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療する、または、
(iii)ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される医学的状態を改善または防止する
ためのEpCAMxCD3二重特異性抗体であって、本発明の方法または投与計画に従って投与される抗体に関する。
【0106】
また、本発明は、その先行する請求項のいずれか1項に定義されたような方法において使用される医薬組成物の製剤/製造のためのEpCAMxCD3二重特異性抗体の使用に関する。本発明の医薬組成物は、医薬担体を任意に含んでいてもよい。適切な医薬担体の例は、当分野において周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、無菌液などを含む。静脈内ビヒクルは、液体および栄養補液、電解質補液(例えば、ブドウ糖リンゲル液をベースとするもの)などを含む。防腐剤および他の添加物は、例えば、抗菌薬、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどとして存在していてもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、本明細書の他の部分でも説明したようなグルココルチコイドなどの更なる薬剤を含んでいてもよい。
【0107】
更なる観点では、本発明は、本明細書に定義したような第1用量および第2用量を含む(製薬)キットまたは医薬パッケージに関する。したがって、前記第1および第2用量は、まとめて1つの密閉された医薬パッケージまたはキット中にパッケージ化されている。「第1用量」および「第2用量」は、本明細書においては、任意の期間(第1または第2期間)に使用される各数の1回量を含む。このことは、例えば、本発明の医薬パッケージまたはキットに含まれる「第1用量」または「第2用量」は例えば、別々の7個の1日量を含む、ということを意味する。したがって、パッケージ化された1日量の数は、目的とされる期間を反映している(例えば、前記期間がX日であれば、X個の1日量、期間がY日であればY個の1日量)。これらの実施形態では、(製薬)キットまたは医薬パッケージは、別々の容器に入った複数の1日量が単一のパッケージに入れられているものである。本明細書の他の部分で説明されているように、前記別々の容器には異なる用量が入っていてもよく、例えば、本明細書に記載したような第1または第2期間中に用量を増加させる場合には、第1容器には3μg/日(を例えば7倍した分量)が含まれ、その一方で、他の容器には12μg/日(を例えば7倍した分量)が含まれていてもよいが、これらの全ての容器は依然として「第1用量」の一部である。
【0108】
あるいは、目的とした第1用量、および/または、第2用量は、各数の1日量に分けられていないが、全部または一部が1つの単一容器(例えば、輸液バッグ)に含まれており、この単一容器は、第1、および/または、第2期間のいずれかの必要用量を一部(例えば、1日〜3日)または全部(すなわち、第1または第2期間)含む、ということも考えられる。このことは、1つの単一容器が例えば第1期間に使用される「第1用量」のための7個の1日量を含む、ということを意味する。
【0109】
本発明の(製薬)キットまたは医薬パッケージは、各期間に必要とされるような事実上の1日量を(分けて、または、分けずに)含んでいてもよいものとする。あるいは、(製薬)キットまたは医薬パッケージは、本明細書に定義されたような第1および第2期間に必要な数の1日量を(分けて、または、分けずに)、すなわち、「第1用量」および「第2用量」を1つの単一パッケージに含むように調製されている。このようなパッケージは、(第1および第2期間を含む)患者の1回の完全な治療のために十分なものであることが理想的である。本発明のキットおよびパッケージの一部は、バイアルもしくはボトルに別々に、または、容器もしくはマルチコンテナユニットに組み合わせてパッケージ化されていてもよい。キットの製造は、当業者の周知の標準手順に従っていることが好ましい。
【0110】
さらに、本発明は、活性成分として以上に記載のような第1用量および第2用量を含む医薬パッケージまたはキット、および、本発明の方法に係るその逐次使用のための説明書に関する。前記医薬パッケージまたはキットは、ヒト患者におけるEpCAM陽性上皮癌細胞を治療するため、または、ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される医学的状態を改善または防止するために内容物を使用できる、ということを示すラベルまたは印をさらに含んでいてもよい。
【0111】
本発明の医薬パッケージまたはキットは、第1、および/または、第2用量を患者に投与する手段、および/または、治療薬の輸液のために通常使用される緩衝装置、バイアル、テフロン(登録商標)バッグまたは輸液バッグをさらに含む、ということも想定される。したがって、「手段」は、本発明の各用量および輸液の製剤において当業者を助けるシリンジ、皮下針、カニューレ、カテーテル、経静脈投与のための輸液バッグ、静脈内ビヒクル、バイアル、緩衝装置、安定剤、説明書からなる群より選択される1つ以上の品物を含む。
【0112】
発明の医薬パッケージまたはキットがさらにグルココルチコイドを含む、ということも想定される。
【0113】
更なる観点では、本発明は、医薬パッケージまたはキットに関するものであり、前記第1および/または前記第2用量がその先行する請求項のいずれか1項の方法に従った投与/投与計画に適しているように準備されている。「ように準備されている」は、複数の1日量がそれぞれ分けてまたはまとめてパッケージ化されている、および/または、第1および/または第2用量が全体でまたは組み合わせてパッケージ化されている、ということを含む。
【0114】
本発明は、以下の項目にも関する。
【0115】
1.ヒト患者に対してEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用を上回る方法。
【0116】
2.ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療するための方法であって、
(a)第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用を上回る方法。
【0117】
3.ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の連続的(治療的)投与によって仲介される医学的状態、好ましくは有害反応を改善および/または防止するための方法であって、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用を上回る方法。
【0118】
4.項目1、2、または3に記載の方法であって、前記ヒト患者は、EpCAM陽性上皮癌細胞を有している、または、有していると推定される方法。
【0119】
5.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、工程(a)における投与の経路および/または工程(b)における投与の経路は、静脈内である方法。
【0120】
6.項目3に記載の方法であって、前記医学的状態、好ましくは前記有害反応は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇を特徴とする方法。
【0121】
7.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2期間は、前記第1期間を上回る方法。
【0122】
8.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7日(またはそれ以上)であり、好ましくは7日である方法。
【0123】
9.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1期間は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード3または4へ上昇することを特徴とする方法。
【0124】
10.項目9に記載の方法であって、前記第1期間は、前記肝臓酵素の上昇した血清中濃度がグレード2へ低下するまで持続する方法。
【0125】
11.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1期間は、前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード2以下であることを前提として、4日である方法。
【0126】
12.項目6〜11のいずれか1つに記載の方法であって、前記少なくとも1つの肝臓酵素は、ASTおよび/またはALTであり、任意にはGGTおよび/またはAPでもある方法。
【0127】
13.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2期間は、少なくとも前記患者のCD8+T細胞が活性化されるまで持続する方法。
【0128】
14.項目13に記載の方法であって、前記活性化は、前記CD8+T細胞の少なくとも20%のCD25および/またはCD69の陽性表現型を特徴とする方法。
【0129】
15.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2期間は、少なくとも2、3、4、5または6週間であり、好ましくは3週間である方法。
【0130】
16.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2期間は、少なくとも19日である方法。
【0131】
17.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1期間は1〜10日であり、第2期間は少なくとも19日である方法。
【0132】
18.項目17に記載の方法であって、前記第1期間は7〜9日であり、第2期間は19〜21日である方法。
【0133】
19.項目18に記載の方法であって、前記第1期間は7日であり、第2期間は21日である方法。
【0134】
20.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2用量は、治療効果のある用量である方法。
【0135】
21.項目20に記載の方法であって、前記第2用量の治療効果は、活性化されたCD8+T細胞を特徴とする方法。
【0136】
22.項目21に記載の方法であって、前記活性化は、前記CD8+T細胞の(第2期間以前のCD25および/またはCD69の陽性表現型と比べて)少なくとも20%のCD25および/またはCD69の陽性表現型を特徴とする方法。
【0137】
23.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1用量は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度が前記第1期間内にグレード3または4の血清中濃度へ上昇し、グレード2の血清中濃度へ再び低下するような用量である方法。
【0138】
24.項目23に記載の方法であって、前記少なくとも1つの肝臓酵素は、ASTおよび/またはALTであり、任意にはGGTおよび/またはAPでもある方法。
【0139】
25.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1用量は1μg/d〜6μg/dであり、好ましくは1μg/d〜3μg/dである方法。
【0140】
26.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2用量は、10μg/d〜120μg/d(または、治療上必要であればそれ以上)である方法。
【0141】
27.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1用量は1μg/d〜3μg/dであり、第2用量は20μg/d〜90μg/dである方法。
【0142】
28.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記二重特異性抗体は、単鎖抗体である方法。
【0143】
29.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、前記抗体は、MT110である方法。
【0144】
30.前記項目のいずれか1つに記載の方法であって、グルココルチコイドの(併用)投与をさらに特徴とする方法。
【0145】
31.項目30に記載の方法であって、前記グルココルチコイドは、プレドニゾン、プレドニソロンおよび/またはメチルプレドニソロンである方法。
【0146】
32.項目1または4に記載の方法であって、前記EpCAM陽性上皮癌細胞は、胃腸および/または肺の癌細胞である方法。
【0147】
33.項目32に記載の方法であって、前記胃腸癌は、胃癌、結腸直腸癌、またはその転移性変種であり、前記肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、またはその転移性変種である方法。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】実施例1に係るEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体のT細胞活性化特性を示す図である。
【図2】実施例2に係る典型的投与計画を示す図である。
【図3】MT110の生成および作用形態を示す図である。
【図4】スケジュールA、B、またはCでMT110の維持量10μg/日または12μg/日によって治療した患者のMT110血清中濃度を比較プロファイルで示す図である。
【図5A】患者114−012(コホートB2:3μg/日→12μg/日)において、MT110輸液の開始後、且つ、7日目の用量増加後に観察されたリンパ球再分布を示す図である。
【図5B】患者114−012(コホートB2:3μg/日→12μg/日)において、MT110輸液の開始後、且つ、7日目の用量増加後に観察されたT細胞活性化を示す図である。
【図6A】切除された肺病巣であり、多数のCD3陽性リンパ球(赤矢印)、壊死組織(緑矢印)、腫瘍細胞(橙矢印)を示す図である。
【図6B】切除された肺病巣であり、CD8陽性リンパ球の浸潤(赤矢印)を示す図である。
【図7】トランスアミナーゼのピーク時の肝実質を示す図である。
【図8】本発明の具体的な投与計画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0149】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。実施例は、説明を目的とするものであり、本発明は、請求項のみによって限定される。
【0150】
実施例1
EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体は、T細胞に特有の細胞障害性をEpCAM陽性標的細胞へ仲介し、それにより、サイトカインの放出およびT細胞表面マーカーの発現誘導により測定可能なT細胞の活性化が起こる。このプロセスは、用量に厳密に依存しており、EpCAM陽性標的細胞の存在に完全に頼るものである。ヒトT細胞に対するEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体MT110のストリンジェントな生体影響を、インビトロで以下のように分析した。
【0151】
無作為の健康なドナーのヒトPBMCを指示濃度のEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体と共に、KatoIII細胞が無い状態で、または、0.2%、2%、または10%のKatoIII細胞の存在下で培養して自然にEpCAMを発現させた。加湿したインキュベータ内で40時間37℃で培養した後に、細胞をCD4、CD8およびCD25に対する蛍光標識抗体によって染色してエフェクター細胞(CD4またはCD8の陽性)およびその活性状態(CD25のデノボ発現)をフローサイトメトリーによって特定した。CD25T細胞のパーセンテージを、Prismソフトウエア(Graph Pad Software Inc., version 4.02)を用いてBiTE濃度の対数に対してプロットした。得られた用量反応曲線を、特定の生物活性についての指標として半数効果濃度(EC50)も計算する集積4パラメータ非線形フィットモデルによって分析した。100ng/mlのEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体を含む上澄液を、ヒトTh1/Th2サイトメトリックビードアレイ(CBA)キット(BD Bioscience)を用いて、製造者の説明書に従って、サイトカイン含有量について分析した。
【0152】
EpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体のT細胞活性化特性を図1に示す。10%のEpCAM細胞をヒトPBMCに添加することにより、約95%のCD8および85%のCD4T細胞が抗体用量に依存して40時間以内に活性化された。2%のEpCAM細胞を添加することで、約50%のCD8および25%のCD4T細胞が中程度活性化されたが、たった0.2%のEpCAM細胞の添加では、エフェクター細胞におけるCD25発現は、試験したどの濃度のBiTEについてもほとんど誘発されなかった。EC50値は、存在する標的細胞の量が減少するにつれて上昇し、10%、2%、および0.2%のKatolll細胞が存在するそれぞれの場合において、CD8Tリンパ球についてのEC50値は、0.26、0.99、および5.98ng/mlであり、CD4Tリンパ球についてのEC50値は0.8、2.35、および3.50ng/mlであった。BiTEにより仲介されたCD25の発現誘発は、ヒトPBMCからのIFN−γ、TNF−αおよびIL−10の放出を伴い、その強度は、存在するEpCAM陽性標的細胞のパーセンテージにはっきりと相関していた。EpCAM標的細胞が不在の場合は、評価したどのBiTE濃度でもサイトカイン放出、または、CD8またはCD4T細胞におけるCD25の発現誘発は検出されなかった。これは、EpCAMの多い腫瘍環境におけるEpCAMxCD3二重特異性単鎖抗体の高い作用効力、および、EpCAMがT細胞に直接到達できない組織における並行して良好な許容度を示すものであろう。
【0153】
実施例2
転移性の結腸直腸癌、胃癌または肺癌を有する患者におけるEpCAM/CD3二重特異性BiTE抗体MT110の安全性および薬理学
1.1 研究デザイン
第一次目的:安全性および許容度を評価すること
第二次目的:MT110の薬物動態学(PK)、薬力学(PD)および抗腫瘍活性を評価すること
患者:EpCAMを広く発現すると知られている局所進行性、再発性、または転移性の固形癌
−肺腺癌
−小細胞肺癌
−胃癌
−結腸直腸癌
他の主要適格条件:
標準的な治療可能性は試し尽くされた、または、拒絶された
少なくとも1コースの以前行われた化学療法
ECOGパフォーマンスステータス≦2
患者情報およびインフォームドコンセント用紙を理解する能力
ベースラインCTまたはMRIスキャンでCNS転移の兆候が無い、または、CNS病変の他の履歴が無い
好中球数<1,500/mm(=1.5×109/l)
血小板数<100,000/mm(=100×109/l)
WBC<3x109/l;ヘモグロビン<9.0g/dl
異常な腎機能または肝機能無し
<92%のO2飽和度無し(室内空気条件下)
姑息的放射線治療以外の並行する抗腫瘍治療無し
ヒト抗マウス抗体(HAMA)存在無し
1.2 MT110治療および用量増加
MT110:持続的静注第1〜28日、疾患進行まで2〜4週間の治療休止を入れた反復サイクル
用量コホート:MT110を1日当り1/3/6/10/12/24(現在継続中)μgで、コホートB/Cでは更なる用量増加が計画されている(図2参照)。
【0154】
DLTの発生に応じた3+3デザイン、各コホートの各患者の第1サイクル完了後に用量増加についての決定
スケジュールA、BまたはCで行われる治療
DLT条件:患者を十分に管理したにもかかわらず所定よりも長く持続するグレード3または4に関連する何らかのAE
併用薬:MT110輸液または用量増加以前にコルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、制酸剤、他の支持薬剤も許可
1.3 評価
安全性:安全性パラメータ(CTCAE第3.0版に従った有害事象(AE)報告)、検査値を第1週および第2週の1日目および2日目は少なくとも1日2回、3日目および5日目は1日に1回、その後は週に2回、持続的に評価
抗腫瘍活性:(測定可能な病変の場合はRECIST1.0版に従った)各治療サイクル後の評価
PK/PD:PKの分析のためのサンプル、サイトカイン、リンパ球亜集団、循環腫瘍細胞および免疫原性は、所定の時点で収集される
EpCAM発現は、パラフィン包埋した腫瘍組織において分析される
2. 結果
2.1 患者およびMT110治療
本明細書に提示されるデータは、2009年9月10日のものであり、研究は継続中である。
【0155】
・22人の患者はMT110治療を開始し、中間評価は以下を含む。
【0156】
−20人の患者の個体群統計学データ
−20人の患者の安全性および薬力学的データ
表6 用量コホート毎の患者個体群統計

【0157】
2.2 安全性および許容度
有害事象概要
・20人の患者のうち、17人は、少なくとも1サイクルの4週間MT110静注を完了することができた。
【0158】
・観察された臨床有害事象のほとんどは基礎疾患に関連するものであった
・MT110に関連する非血液臨床有害事象は、少数の患者の軽い発熱および疲労、発熱は第1輸液反応とは関係がなかった。
【0159】
・主に輸液の最初の週または用量増加後に起きたMT110に関連する臨床検査値の変化は、短期間であり、多くの場合は輸液の過程で解消した。肝臓パラメータの変化も、一過性且つ無症状であり、肝臓の画像での病理所見、実質的な組織損傷、または合成パラメータ障害は伴わなかった。
【0160】
表7 ≧3人の患者に起きる関連性に関係のないAEの発生率

【0161】
表8 >1人の患者に起きるMT110関連の有害事象の発生率

【0162】
表9 報告された用量を制限する中毒性

【0163】
2.3 薬動学的プロファイル
PKパラメータの概要
・MT110に対する血清半減期は、3.5〜6.8時間で決定された。
【0164】
・用量および体重の正常化の後にそれまでテストした用量レベルについての線量直線性を推定することができる
2.4 薬力学的マーカー
・患者は、著しい全身性サイトカイン放出を誰も示さなかった。低IL−6レベルは、様々な時点で測定可能であり、単一測定可能レベルのIFNγおよびIL−10は、数人の患者に見られた。
【0165】
・リンパ球の再分布は、MT110輸液の開始後、および、用量増加後に全ての患者において観察された(図5A)。
【0166】
・T細胞活性化の第1サインは、第1サイクル後に臨床的利点と共に観察された(図5B)。
【0167】
・CellSearch法による循環腫瘍細胞の第1分析は、CRC患者のサンプル7.5mlにつき最多で6細胞を明らかにした。
【0168】
2.5 患者予後
RECIST条件に従った腫瘍評価
・疾患安定化は、91日の平均期間(29+〜150日の範囲)での第1サイクル後に、18人の評価可能患者のうち7人において観察された
事例報告:生物学的抗腫瘍活性の証拠
・患者(女性、85歳)は、試験開始時にCRCの転移性病巣を肺に有していた。
【0169】
・1μg/dのMT110によって28日間治療
・患者は、MT110の開始から80日後に肺病巣の外科的切除を受けた。病理学は以下のことを明らかにした。
【0170】
−この病巣における>70%の壊死組織(図6A)
−腫瘍組織内および周囲におけるCD8陽性細胞を含む多数の浸潤Tリンパ球(図6B)
3. 概要
20人の適格患者は、5つの用量コホートに分けて治療され、これまでに合計で25回のMT110サイクルを受けた。
【0171】
・28日に亘るMT110静注は臨床的に非常によく許容された:
−軽い発熱および疲労が少数の患者に起こり、治験薬に関連していた。
【0172】
−関連する全身性サイトカイン放出のサインは観察されなかった
−初期の一過性リンパ球減少の他に、最高でグレード3/4の肝臓酵素の一過性の無症状の増加が最も頻繁な検査所見の異常であった。
【0173】
・生物学的活性度の第1サイン
−MT110は、輸液の開始の直後にリンパ球の急速な再分布を引き起こした。細胞増殖/活性化のサインは、4週間後に臨床的利点を伴って患者に見られた。
【0174】
−RECISTに従った疾患安定化は、18人の患者のうち7人において確認され、平均で91日持続した。
【0175】
−1人の患者において、MT110治療の開始から11週間後に肺転移を切除した。免疫組織化学は、MT110活性の有力な証拠として腫瘍細胞壊死および大量のT細胞浸潤を明らかにした。
【0176】
・MT110に対する抗体が生じた患者はいなかった。
【0177】
4. 結論
・MT110は、進行性EpCAM発現固形癌を有する患者に対して安全に経静脈投与できる。
【0178】
・生物学的活性度の第1サインは、臨床的に良好に許容される用量で観察された。
【0179】
・用量増加するBiTE抗体MT110の評価は現在継続中である。
【0180】
実施例3
治験MT110−101においてMT110によって治療された第1患者コホートにおける肝臓パラメータの変化の比較
以下の表では、ピーク血中濃度(表10)および平均血中濃度値(表11)の平均振幅によって示されている肝臓パラメータの上昇が、MT110用量、治療スケジュール、およびコルチコステロイド治療に応じて各患者グループについて分析されている。アミノトランスフェラーゼASTおよびALTは、MT110輸液によって主に影響を受けた肝臓パラメータである。
【0181】
各肝臓パラメータのピーク血中濃度の振幅は、スクリーニング検査で測定したベースライン値をこのグループの各患者に対する各用量でのMT110輸液の第1週に測定したピークレベルからから引き算することによって計算された。あるグループの各患者について得られた振幅値を使用してそれぞれのグループについての平均を計算した。
【0182】
各肝臓パラメータの平均血液値の振幅は、スクリーニング検査で測定したベースライン値をこのグループの各患者に対する各用量でのMT110輸液の第1週の全ての測定値から計算された平均レベルからから引き算することによって計算された。あるグループの各患者について得られた振幅値を使用してそれぞれのグループについての平均を計算した。
【0183】
異なるグループの比較は、以下のようにまとめられる。
【0184】
−追加の併用コルチコステロイド治療は、1μg/dのMT110で治療される患者について肝臓パラメータ(主にASTおよびALT)の増加を低減できる(グループIと比較したグループII)。
【0185】
−MT110用量を増加する場合は、併用コルチコステロイド治療をしても、肝臓パラメータのピークおよび平均の血中濃度の値は上昇する(グループIIと比較したグループVおよびIII)。
【0186】
結論:肝臓パラメータの上昇は、併用コルチコステロイド治療によって防止できない。
【0187】
−用量を増加する場合は、コルチコステロイドの用量をさらに増加しても、肝臓パラメータの上昇を防止できない(グループIIIと比較したグループIV)。
【0188】
−第1週は低用量でMT110治療を開始し、比較的高用量で第2週を始めると、第2週は肝臓酵素の増加が軽度になる(グループVと比較したグループVII)。
【0189】
結論:MT110開始用量を輸液の第1週は低くすると、更なる用量増加が可能である。
【0190】
表10:標準偏差の無い任意の用量での治療第1週におけるピーク値とスクリーニング値との間の振幅の平均

【0191】
表11:標準偏差の無い任意の用量での治療第1週における平均値とスクリーニング値との間の振幅の平均

【0192】
実施例4
表12

【0193】
表13

【0194】
実施例5:
表14


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞の治療方法において使用するためのEpCAMxCD3二重特異性抗体であって、前記方法は、
(a)第1用量のEpCAMxCD3二重特異性抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用を上回る、EpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項2】
ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の連続的(治療的)投与によって仲介される医学的状態、好ましくは有害反応を改善および/または防止するための方法において使用するためのEpCAMxCD3二重特異性抗体であって、前記方法は、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に連続的に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に連続的に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用を上回る、EpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項3】
前記ヒト患者は、EpCAM陽性上皮癌細胞を有している、または、有していると推定される、請求項1または2に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項4】
工程(a)における投与の経路および/または工程(b)における投与の経路は、静脈内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項5】
前記医学的状態、好ましくは前記有害反応は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度の上昇を特徴とする、請求項2に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項6】
前記第2期間は、前記第1期間を上回る、請求項1〜5のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項7】
前記第1期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7日(またはそれ以上)であり、好ましくは7日である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項8】
前記第1期間は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード3または4へ上昇することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項9】
前記第1期間は、前記肝臓酵素の上昇した血清中濃度がグレード2へ低下するまで持続する、請求項8に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第1期間は、前記少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード2以下であることを前提として、4日である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項11】
前記少なくとも1つの肝臓酵素は、ASTおよび/またはALTであり、任意にはGGTおよび/またはAPでもある、請求項5〜10のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項12】
前記第2期間は、少なくとも前記患者のCD8+T細胞が活性化されるまで持続する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項13】
前記活性化は、前記CD8+T細胞の少なくとも20%のCD25および/またはCD69の陽性表現型を特徴とする、請求項12に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項14】
前記第2期間は、少なくとも2、3、4、5または6週間であり、好ましくは3週間である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項15】
前記第2期間は、少なくとも19日である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項16】
前記第1期間は1日〜10日であり、第2期間は少なくとも19日である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項17】
前記第1期間は7日〜9日であり、第2期間は19日〜21日である、請求項16に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項18】
前記第1期間は7日であり、第2期間は21日である、請求項17に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項19】
前記第2用量は、治療効果のある用量である、請求項1〜18のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項20】
前記第2用量の治療効果は、活性化されたCD8+T細胞を特徴とする、請求項19に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項21】
前記活性化は、前記CD8+T細胞の(第2期間以前のCD25および/またはCD69の陽性表現型と比べて)少なくとも20%のCD25および/またはCD69の陽性表現型を特徴とする、請求項20に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項22】
前記第1用量は、少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度が前記第1期間内にグレード3または4の血清中濃度へ上昇し、グレード2の血清中濃度へ再び低下するような用量である、請求項1〜21のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項23】
前記少なくとも1つの肝臓酵素は、ASTおよび/またはALTであり、任意にはGGTおよび/またはAPでもある、請求項22に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項24】
前記第1用量は、1μg/d〜6μg/dであり、好ましくは1μg/d〜3μg/dである、請求項1〜23のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項25】
前記第2用量は、10μg/d〜120μg/d(または、治療上必要であればそれ以上)である、請求項1〜24のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項26】
前記第1用量は1μg/d〜3μg/dであり、第2用量は20μg/d〜90μg/dである、請求項1〜25のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項27】
単鎖抗体である、請求項1〜26のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項28】
MT110である、請求項1〜27のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項29】
グルココルチコイドの(併用)投与をさらに特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項30】
前記グルココルチコイドは、プレドニゾン、プレドニソロンおよび/またはメチルプレドニソロンである、請求項29に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項31】
前記EpCAM陽性上皮癌細胞は、胃腸および/または肺の癌細胞である、請求項1または3に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項32】
前記胃腸癌は、胃癌、結腸直腸癌、またはその転移性変種であり、前記肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、またはその転移性変種である、請求項31に記載のEpCAMxCD3二重特異性抗体。
【請求項33】
(i)ヒト患者に対してEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与する、または、
(ii)ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療する、または、
(iii)ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与により仲介される医学的状態を改善または防止する
ための方法であって、
(a)少なくとも1つの肝臓酵素の血清中濃度がグレード4またはそれ以下(好ましくはグレード3)へ上昇し、その後、グレード2へ低下するようにEpCAMxCD3二重特異性抗体を連続的に投与する工程と、続いて、
(b)前記抗体を治療効果が出るように投与する工程とを含む方法。
【請求項34】
(i)ヒト患者に対してEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与する、または、
(ii)ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療する、または、
(iii)ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与により仲介される医学的状態を改善または防止する
ためのEpCAMxCD3二重特異性抗体であって、
請求項1〜33のいずれか1項に定義されるような投与計画に従って投与される抗体。
【請求項35】
(i)ヒト患者に対してEpCAMxCD3二重特異性抗体を投与する、または、
(ii)ヒト患者のEpCAM陽性上皮癌細胞を治療する、または、
(iii)ヒト患者に対するEpCAMxCD3二重特異性抗体の投与により仲介される医学的状態を改善または防止する
ためのEpCAMxCD3二重特異性抗体であって、
請求項1〜34のいずれか1項に定義されるような方法に従って投与される抗体。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項に定義されるような方法において使用される医薬組成物の製剤のためのEpCAMxCD3二重特異性抗体の使用。
【請求項37】
請求項1〜36のいずれか1項に定義されるような前記第1用量および前記第2用量を含む医薬パッケージまたはキット。
【請求項38】
患者に前記第1および/または第2用量を投与するための手段をさらに含む、請求項37に記載の医薬パッケージまたはキット。
【請求項39】
前記第1および/または第2用量は、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法に従った投与/投与計画に適しているように準備されている請求項37および38に記載の医薬パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−505223(P2013−505223A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529298(P2012−529298)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063795
【国際公開番号】WO2011/033105
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512244819)アムゲン リサーチ (ミュンヘン) ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】AMGEN Research(Munich)GmbH
【Fターム(参考)】