説明

FPCケーブルのレアショートを判断し故障信号を出力する硬貨処理装置及び硬貨処理装置におけるFPCケーブルのレアショート発見法

【課題】発生頻度が低いことで発見が難しく、かつ甚大な被害を伴う硬貨処理装置におけるFPCケーブルのレアショートを容易に発見し、該レアショートを原因とする硬貨払出異常を未然に防ぐことができる硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】
FPCケーブルを通る信号を電圧値として検出し、検出した電圧値を高電位、低電位、中間電位の3つの電位に識別し、3つの電位のうちの中間電位を検出することで、該FPCケーブルのレアショートを容易に発見でき、レアショートが原因である不具合には、前記中間電位の検出を契機に、故障信号を出力して、各部の機能停止などを行うことを特徴とする硬貨処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に搭載される硬貨処理装置に使用されているFPCケーブルにおいて、レアショート発生の判断をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機等に搭載される硬貨処理装置は、その構成を大別すると、硬貨識別及び選別部と硬貨収納及び払出部とになる。
【0003】
この内、硬貨識別及び選別部においては、硬貨処理装置全体の制御を行う制御基板を具え、更に、硬貨収納部に収納された硬貨を任意に払い出すためのスイッチ等を具えた機能操作部を設けている。
【0004】
この機能操作部には、故障表示を点滅にて表すLEDや金種毎の収納硬貨を払い出すためのメンブレンスイッチなどが設けられていて、これらのLEDやメンブレンスイッチと前記制御基板とを電気的に接続するために、FPCケーブルが利用されている。
【0005】
FPCケーブルは、厚み12μmから50μmのフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に接着層を形成し、さらにその上に厚み12μmから50μm程度の導体箔を形成した構造であり、この構造による高い可撓性が組み立て易さとなり、利用される要因となっている。
【0006】
ところで、硬貨処理装置は、屋外に設置される自動販売機を想定して、雨水など外部からの水の侵入に対処する必要がある。この対処方法とは、外部から内部への侵入を阻止し、万が一侵入しても、侵入した水を外部へ流す流路を設けることである。(特許文献1及び特許文献2)
【0007】
一方、FPCケーブルはその材質、製法により、水をその内部に浸透させてしまうという性質がある。よって、コインチェンジャー内部に雨水等が侵入し、流路を超える量の侵入があった場合には、FPCケーブルに水が付着し浸透することとなり、FPCケーブル内部の各電線間が短絡するという不具合があった。
【0008】
この短絡は、装置自体を全く動作不能にするというものではなく、操作しない時に動き出すなど制御不能な状態を導くものである。これは、例えば、前記操作部のメンブレンスイッチをONさせなくても、払出モータが動作して硬貨が払い出されるという状態などを指す。このような短絡を“レアショート”と称し、レアショートであることを突き止めるのに多大な時間を要していた。
【0009】
本件は、不具合原因として突き止めるのに多大の時間を要していたFPCのレアショートを容易に発見することができる硬貨処理装置及びFPCのレアショートを容易に発見する方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特願昭63−142396号公報
【特許文献2】特願2010−266306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする課題は、FPCケーブルに水が浸透することで生じるレアショートを多大な時間をかけずに容易に発見する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明である請求項1の発明は、自動販売機等に搭載する硬貨処理装置であって、機能操作部と制御部とを結線するFPCケーブルと、前記制御部にあって、前記機能操作部からの信号を電圧値として検出する信号検出手段と、更に、前記信号検出手段が検出した電圧値が所定の電圧値であると判別した時に故障信号を出力する信号判断手段とを具え、前記信号判断手段は、あらかじめ定められた電圧値の閾値に基づき、前記信号検出手段が検出した前記電圧値を高電位、低電位、中間電位のいずれであるかを識別し、中間電位と識別した時に前記特定の電圧値であると判別し、前記FPCケーブルにおいてレアショートが発生したと判断して、故障信号を出力することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明は、自動販売機等に搭載する硬貨処理装置において、機能操作部と制御基板とをFPCケーブルで結線し、前記機能操作部からの信号を電圧値として前記制御基板に入力するようにし、入力した前記電圧値を高電位、低電位、中間電位の3つに識別し、前記電圧値が中間電位である時に、前記FPCケーブルでレアショートが発生したと判断して、故障信号を出力することを特徴とするFPCケーブルのレアショート発見法及び対処法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、FPCケーブルを通す信号を電圧値として検出し、その電圧値を高電位、低電位、中間電位、の3つに識別して検出し、前記電圧値が中間電位である時に、前記FPCケーブルでレアショートが発生したと判断するので、今まで発見に多大な時間を要したFPCケーブルにおけるレアショートを容易に発見することができ、それによってコインチェンジャーの修理時間を大幅に短縮することができる。更に、該レアショートの発見と同時に故障信号を出力することで、該レアショートが原因である硬貨払出異常を未然に防ぐことができるという格別な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は硬貨処理装置1の正面図である。
【図2】図2は硬貨識別及び選別部の機能操作部と制御基板とのFPCケーブルで結線している状態を示す説明図である。
【図3】図3は本発明の硬貨処理装置における構成ブロック図である。
【図4】図4は本発明の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
機能操作部と制御基板とを結線するFPCケーブルにおけるレアショートを容易に発見するいう目的を、該FPCケーブルで伝達される前記機能操作部の信号電圧値を検出し判別することで実現した。
【実施例1】
【0017】
図1は、硬貨処理装置の正面図であって、上方に硬貨識別及び選別部2、下方に硬貨収納及び払出部3によって構成されていることを示す。
【0018】
硬貨識別及び選別部2の正面側には、機能操作部4が設けられていて、正面から操作することができる。
【0019】
この機能操作部4には、硬貨収納部5の各硬貨収納筒5a〜5eに収納されている硬貨を回収するためのスイッチ4a〜4fと、自動釣銭合わせ機能を動作させるためのスイッチ4gと、点検時に使用するスイッチ4hと、機能切替設定用スイッチ4iと、装置各部の正常及び異常を点灯、点滅、の二つの形態で報せるモニターランプ(LED)4j〜4kと、点検が必要な時期を点灯の形態で報せるモニターランプ(LED)である点検ランプ4lを具えている。
【0020】
この内、収納硬貨を回収するためのスイッチ4a〜4fは、1つの硬貨収納筒に対して1つのスイッチが対応するようになっていて、このスイッチを押下(一度目の押下)することで払出動作が開始され、次の押下(二度目の押下)で払出動作が停止する。
【0021】
前記自動釣銭合わせ機能を動作させるためのスイッチ4gは、あらかじめ設定された収納硬貨枚数に基づいて、硬貨収納部5の各硬貨収納筒5a〜5eに収納される硬貨枚数を制御するためのスイッチであって、各硬貨収納筒5a〜5eのいずれかの収納筒に予め設定された収納枚数以上の硬貨が収納されていた場合に、当該スイッチ4gを押下することであらかじめ設定された枚数になるまで払出動作を行い、該設定された枚数に至った時に払出動作を停止する。
【0022】
前記点検時に使用するスイッチ4hは、点検し正常状態に戻した作業の後に、点灯している前記点検ランプ4lを消灯させるために押下するスイッチである。
【0023】
前記各種機能切替設定用スイッチ4iは、前記収納硬貨を回収するためのスイッチ4a〜4fと併用して、金種別に受け入れ禁止を設定するためのスイッチである。
【0024】
前記装置各部の正常及び異常を点灯、点滅、の二つの形態で報せるモニターランプ(LED)4j〜4kは、前記硬貨識別及び選別部2の正常及び異常を報せるモニターランプ4jと、前記硬貨収納及び払出部3の正常及び異常を報せるモニターランプ4kであって、いずれのモニターランプも正常時には点灯、異常時には点滅となる。
【0025】
以上のように、機能操作部4には、複数のスイッチと複数のモニターランプで構成され、種々の機能を働かせることができる。
【0026】
図2は硬貨識別及び選別部2の機能操作部4と制御基板7とをFPCケーブル6で結線している状態を示す。
【0027】
前記機能操作部4は、前述したように装置正面に設けられ、FPCケーブル6で装置内部の制御基板7に結線されている。このFPCケーブル6は機能操作部4からの信号を制御基板に伝達するものであるので、十数本の導体ラインが等間隔で設けられている。
【0028】
以上のように説明した硬貨処理装置1は、通常、自動販売機等の装置内部に装着される。以下、自動販売機に装着された場合を例にとって、いたずら等による水の侵入に対する説明をする。
【0029】
自動販売機には硬貨投入口があり、この硬貨受け入れ口は硬貨処理装置1の硬貨受け入れ口に連通する。従って、自動販売機の硬貨投入口から雨水が侵入したり、いたずらで液物を流し込まれたりした場合、その液物は硬貨処理装置1の硬貨受け入れ口から装置内部へと侵入することになる。
【0030】
硬貨処理装置1の硬貨受け入れ口から侵入した液物の多くは、硬貨処理装置1内部の硬貨通路に沿って更に内部へと侵入する。この時、従来技術では、液物を硬貨通路から退出させるように液物流路を設け、該液物流路を硬貨処理装置1の外部へと導くようにしている。
【0031】
しかし、侵入する液物の多くが硬貨受け入れ口から侵入するが、大量の液物が侵入した場合などは、硬貨受け入れ口を外れた箇所に液物が溜まり、それが装置内部に侵入することもある。従来技術では、この場合も考慮されていて、硬貨処理装置1の上部に液溜まりを設け、その液溜まりから背面へ液物を流すようにしている。
【0032】
このように、従来技術では、硬貨受け入れ口から侵入した液物や上部に溜まった液物が装置内部に入らないようにしている。しかし、これらの対策は液物を装置内部に完璧に侵入させないというものではなく、特に装置上部に溜まった液物は、背面以外にも流れ、少量だが装置内部に達することがある。
【0033】
この少量の液物が、前記FPCケーブル6に付着し徐々に浸透すると、該FPCケーブル6を構成する十数本の導体ライン間でレアショートが発生する。
【0034】
非常に稀ではあるが、該レアショートが発生すると、前記機能操作部4からあたかも信号が出力されたようになり、硬貨払出用モーターを動作させ、硬貨回収時の動作になる。
【0035】
不必要な時に硬貨回収時の動作になると、硬貨収納筒5a〜5eのいずれかから硬貨は払い出され、自動販売機の外部から容易に取り出せるという事態になる。
【0036】
上述した事態は非常に稀であり、前記FPCケーブル6に浸透した液物が、時間が経って蒸発すると正常に戻る場合もある。しかし、上述した事態が発生した時の経済的損失は、計り知れないほど多大なものになる。
【0037】
また、上述した事態の原因が前記レアショートであることを究明するのは非常に難しく、究明ができたとしても、究明するまでには多大の時間を要する。
【0038】
以上のように、自動販売機を例にとって説明すると、レアショートによる不具合は、その発生が非常に稀ではあるが、経済的かつ時間的に失うものが大きく、解決すべき課題の一つである。
【0039】
本発明は、上述したレアショートの発生を容易に発見できるようにした硬貨処理装置であり、図3に示す構成にした。
【0040】
図3は、本発明の硬貨処理装置における構成ブロック図であって、機能操作部4からの信号をFPCケーブル6で制御基板7に入力し、更に制御基板7からのモニターランプ(LED)制御信号をFPCケーブル6で機能操作部4に入力することを示している。
【0041】
図3において、機能操作部4の各スイッチの信号は電圧値として、制御基板7の信号検出部8に入力され、更に、信号判断部9に入力されて、高電位、低電位、中間電位、の3つの電位に識別し判別される。
【0042】
該3つの電位のうち、低電位とは機能操作部4の各スイッチのいずれもが押下されていない状態であり、高電位とは機能操作部4の各スイッチのいずれかが押下された状態である。すなわち、機能操作部4のスイッチを押す前は低電位であり、いずれかのスイッチを押下すると高電位に変化する。また、高電位の時には機能操作部4が正常にその役目を果たし、各スイッチに割り当てられた機能、動作を行う。
【0043】
3つの電位のうち、中間電位とは、FPCケーブル6でレアショートが発生した時の電位である。本発明者は、この中間電位の事実を発見したことで、本発明に想到した。
【0044】
上述した3つの電位を具体的に説明すると、機能操作部4の各スイッチをメンブレンスイッチにした場合、メンブレンスイッチの起動電圧を5Vとし、高電位は4V以上5V、中間電位は1V以上4V未満、低電位は1V未満、になる。尚、これらの電位の識別、判別については、従来技術で十分可能であるため省略する。
【0045】
図3において、信号判断部9は上述した中間電位を認識すると故障信号を制御部10へ入力し、制御部10は機能操作部4のモニターランプ(LED)の点灯制御や装置各部の機能停止などの制御を行い、不要な硬貨の払い出しを防止する。
【0046】
次に、図4を用いて、硬貨処理装置におけるFPCケーブルのレアショート発見法とその対処法を説明する。
【0047】
図4は、本発明の硬貨処理装置における動作フロー図である。
図4において、ステップ1は、機能操作部4からの信号をFPCケーブル6を通じて信号検出部8で検出する。そして、ステップ2では、検出した信号を高電位、低電位、中間電位のいずれの電位かを判別し、判別した3つの各電位別に動作を決定する。ステップ3では、中間電位であると判別した時に故障信号を出力する。ステップ4では、故障信号を入力した制御部が、機能操作部のモニターランプ点灯制御や各部の機能を停止するように制御する。
【0048】
以上、硬貨処理装置におけるFPCケーブルのレアショートの発見法とは、FPCケーブルを通る信号を電圧値として検出し、検出した電圧値を高電位、低電位、中間電位のいずれかに判別し、これら3つの電位のうちの中間電位を判別することで容易に発見できるというものであり、レアショートが原因である不具合には、前記中間電位の検出を契機に、故障信号を出力して、各部の機能停止などを行うことである。
【符号の説明】
【0049】
1 硬貨処理装置
2 硬貨識別及び選別部
3 硬貨収納及び払出部
4 機能操作部
4a〜4f 硬貨を回収するためのスイッチ
4g 自動釣銭合わせ機能を動作させるためのスイッチ
4h 点検時に使用するスイッチ
4i 機能切替設定用スイッチ
4j〜4k 装置各部の正常及び異常を報せるモニターランプ
4l 点検ランプ
5 硬貨収納部
5a〜5e 硬貨収納筒
6 FPCケーブル
7 制御基板
8 信号検出部
9 信号判断部
10 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動販売機等に搭載する硬貨処理装置であって、
機能操作部と制御部とを結線するFPCケーブルと、
前記制御部にあって、前記機能操作部からの信号を電圧値として検出する信号検出手段と、更に、前記信号検出手段が検出した電圧値が所定の電圧値であると判別した時に故障信号を出力する信号判断手段とを具え、
前記信号判断手段は、あらかじめ定められた電圧値の閾値に基づき、前記信号検出手段が検出した前記電圧値を高電位、低電位、中間電位のいずれであるかを識別し、中間電位と識別した時に前記特定の電圧値であると判別し、前記FPCケーブルにおいてレアショートが発生したと判断して、故障信号を出力することを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
自動販売機等に搭載する硬貨処理装置において、
機能操作部と制御基板とをFPCケーブルで結線し、
前記機能操作部からの信号を電圧値として前記制御基板に入力するようにし、
入力した前記電圧値を高電位、低電位、中間電位の3つに識別し、
前記電圧値が中間電位である時に、前記FPCケーブルでレアショートが発生したと判断して、故障信号を出力することを特徴とするFPCケーブルのレアショート発見法及び対処法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−190323(P2012−190323A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54110(P2011−54110)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】