説明

GPSシステムの信号検出能力の強化

【課題】建造物等の障害物の影響による弱いGPS信号でも測位に利用できるようにするナビゲーションデータを利用する装置及び方法を提供する。
【解決手段】 無線端末は、推定ナビゲーションデータを用いて、データワイプオフ動作を行って積分間隔を増大し(例えば、20msを越える)、無線端末における全体的な信号検出感度を増大させる。強いGPS信号が検出された後に、該強いGPS信号は復調されて、ナビゲーションデータを含む衛星位置表を計算する。次に、復調されたナビゲーションデータをナビゲーションデータの既知の特徴とマッチングさせて、弱いGPS信号についてのナビゲーションデータを推定する。次に、推定ナビゲーションデータを用いて、弱いGPS信号の積分間隔を増大させて、弱いGPS信号も無線端末において検出できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衛星ナビゲーションシステムに関し、特に、変調方式を採用して、信号検出感度を強化した衛星ナビゲーションシステムに関する。
(関連出願への相互参照)本出願の主題は、代理人整理番号Vannucci 26として1997年9月11日付けで出願された米国特許出願番号08/927,434号、および代理人整理番号Richton 2-27として1997年9月11日付けで出願された米国特許出願08/927,434号に関連し、これら双方の教示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
【従来の技術】全地球測位システム(GPS)等の衛星ナビゲーションシステムは、無線端末の位置を決定するために、無線端末により使用可能なGPS信号を伝送する衛星の集団を含む。
【0003】図1は、従来技術によるGPSシステム100の模式図である。従来技術によるシステム100において、衛星集団のうちの1基または複数基の衛星101は、無線端末103により受信されるGPS信号102を伝送する。当該分野において既知のように、測位動作は、3基またはそれ以上の衛星からGPS信号102を受信することで行われる。位置を決定する基本的な方法は、各衛星についての時間差を知ることに基づいている。各衛星についての時間差は、衛星において開始されたGPS信号102が無線端末103により受信されるまでに必要な時間である。3基の衛星からのGPS信号102が、同時に受信される場合、「二次元」位置(経度および緯度)を決定することができる。GPS信号102が、4基またはそれ以上の衛星から同時に受信される場合、「三次元」位置(経度、緯度、および高度)を決定することができる。
【0004】各衛星101は、既知の速度で地球の周囲を軌道を描いて回り、その他の衛星から既知の距離だけ離れて配置される。各衛星101は、一意の疑似ランダム雑音(PN)コードと、特定の衛星101に関連するナビゲーションデータとを用いて変調された、既知の周波数fを有する搬送信号を含む一意のGPS信号102を伝送する。PNコードは、PNチップの一意のシーケンスを含み、ナビゲーションデータは、衛星識別子、タイミング情報、および仰角αjおよび方位角φj等の軌道データを含む。
【0005】無線端末103は、一般に、GPS信号102を受信するためのGPS受信器105と、GPS信号102を検出するための複数の相関器107と、ナビゲーションデータを用いて位置を決定するためのソフトウェアを有するプロセッサ109と、を備える。GPS受信器105は、PNコードを介してGPS信号102を検出する。GPS信号102の検出には、相関器107を用いて、搬送周波数次元およびコード位相次元においてPNコードを探索する相関プロセスが関連する。このような相関プロセスは、受信したGPS信号102との、複製された搬送信号に変調される位相をシフトした複製PNコードのリアルタイムでの乗算として実施され、後に積分およびダンププロセスが続く。
【0006】搬送周波数次元において、GPS受信器105は、搬送信号を複製して、GPS信号102がGPS受信器105に到来する際に、GPS信号102の周波数とマッチさせる。しかし、ドップラー効果により、GPS信号102が伝送される周波数fは、GPS信号102がGPS受信器105に到来する前に未知量Δfiだけ変化する。すなわち、GPS信号102は、GPS受信器105に到来するときには、周波数f+Δfiを有するはずである。ドップラー効果を考慮に入れるために、GPS受信器105は、複製された搬送信号の周波数が、受信したGPS信号102の周波数とマッチするまで、f+Δfminからf+Δfmaxの範囲の周波数スペクトルfspecにわたって搬送信号を複製する。但し、ΔfminおよびΔfmaxは、GPS信号102が衛星101からGPS受信器105に伝送される際のドップラー効果によりGPS信号102に発生する、周波数の最小変化および最大変化であり、すなわち、Δfmin<Δfi<Δfmaxである。
【0007】コード位相次元において、GPS受信器105は、各衛星101に関連する一意のPNコードを複製する。複製されたPNコードの位相は、複製PNコードで変調された複製搬送信号コードが、GPS受信器105により受信されているGPS信号102ととにかく相関するまで、コード位相スペクトルRj(spec)にわたってシフトされ、各コード位相スペクトルRj(spec)は、関連PNコードについてあらゆる可能な位相シフトを含む。GPS信号102が相関器107により検出されると、GPS受信器105は、当該分野で周知であるように、検出されたGPS信号102からナビゲーションデータNDを抽出し、該ナビゲーションデータを用いて、GPS受信器105の場所を決定する。
【0008】相関器107は、周波数スペクトルfspecおよびコード位相スペクトルRj(spec)にわたって複数のPNコードについて平行探索を行うよう構成される。換言すれば、複数の相関器107はそれぞれ、f+Δfminとf+Δfmaxの間の可能な各周波数およびそのPNコードについて可能な位相シフトにわたって特定のPNコードの探索専用である。相関器107がPNコードについての探索を完了すると、相関器107は、f+Δfminとf+Δfmaxの間の可能な各周波数およびそのPNコードについて可能な位相シフトにわたって別のPNコードを探索する。このプロセスは、複数の相関器107によりすべてのPNコードが集合的に探索されるまで、続けられる。例えば、12基の衛星があり、したがって12個の一意のPNコードがあるものと仮定する。GPS受信器105が6台の相関器107を有する場合、GPS受信器105は、相関器107を用いて、一度に6つの異なるPNコードの2つのセットについて探索する。具体的には、相関器107は、最初の6つのPNコードについて探索する、すなわち、第1の相関器は、PN−1について探索し、第2の相関器はPN―2について探索する等である。最初の6つのPNコードの探索が完了すると、相関器107は、次の6つのPNコードについて探索する。すなわち、第1の相関器は、PN―7について探索し、第2の相関器はPN―8について探索する等である。
【0009】探索された各PNコードについて、相関器107は、そのPNコードについての周波数および位相シフトの各組み合わせ毎に、積分およびダンププロセスを行う。例えば、周波数スペクトルfspecは、その搬送信号について50個の可能な周波数を含み、かつPNコードについてのコード位相スペクトルRj(spec)は、2046個の可能なハーフチップ(half-chip)位相シフトを含むものと仮定する。周波数およびハーフチップ位相シフトのあらゆる可能な組み合わせについて探索するために、相関器107は、次に、102、300の積分を行う必要がある。相関器107の通常の積分間隔は、1msであり、これは一般に、無線端末が、晴れ渡った空すなわち衛星101への直接的な見通し線を有する場合に、GPS受信器105がGPS信号102を検出するのに十分である。したがって、上記例の場合、1台の相関器107がPNコードについての周波数およびハーフチップ位相シフトのあらゆる可能な組み合わせを探索するには、102.3秒が必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来技術の1つの欠点は、GPS信号102が建造物または他の障害物により減衰されると、無線端末が、無線端末の位置決定に必要な最小数の衛星から十分に強いGPS信号を受信できなくなることである。この結果、位置決定が中断される。より弱いGPS信号を補償し、GPS信号102の検出を強化するために、相関器107は、より長い積分間隔で構成することができる。換言すれば、検出は、積分間隔をより長くすることで、より正確になる。
【0011】しかし、ナビゲーションデータの存在により、積分間隔の長さを20msに制限することで、無線端末の信号検出能力が制限されてしまう。
【0012】
【課題を解決するための手段】無線端末がナビゲーションデータについて独立した知識を有する場合、この知識を利用して、積分間隔を20msを越えて拡張することができる。例えば、無線端末が、GPS信号ソース(すなわち、送信衛星)以外のソースからナビゲーションデータを受信することができる場合、無線端末は、この情報を用いて、「データワイプオフ(wipe-off)」動作を行うことができる。「データワイプオフ」は、単に、積分およびダンププロセス前の、到来した未処理のRFデータに対する符号動作である。「データワイプオフ」動作は、ナビゲーションデータビットの値を基にする。例えば、ナビゲーションデータビットが1である場合、到来している未処理のRFデータの符号は保持される。しかし、ナビゲーションデータビットが0である場合、到来している未処理のRFデータの符号は逆になる。データワイプオフ動作後、無線端末は、積分間隔を20msを越えて拡張することができるため、信号検出性能が高まる。
【0013】本発明において、積分間隔を制限せずにナビゲーションデータを利用する装置および方法が提供される。本発明の実施形態によっては、従来技術における測位システムに関連するコストおよび制約の多くを回避しながら、無線端末の位置を決定することが可能である。特に、本発明の実施形態によっては、従来技術による無線端末よりも安価である。さらに、本発明の実施形態によっては、従来技術における無線端末よりも弱い信号を受信し、用いることができる。加えて、本発明の実施形態によっては、従来技術における無線端末よりも高速に位置を決定することができる。
【0014】第1の実施形態において、本発明の原理によれば、WAG(無線支援型GPS)サーバが設けられる。WAGサーバは、無線リンクを介して無線端末と通信する。WAGサーバは、GPS信号を衛星から受信し、GPS信号に変調されていたナビゲーションデータを復調する。次に、WAGサーバは、ナビゲーションデータストリームおよび復調されたナビゲーションデータの既知の特徴を利用して、推定されたナビゲーションデータを生成する。該推定されたナビゲーションデータは、次に、無線端末に伝送される。無線端末は、この推定ナビゲーションデータを用いて、後続するGPS信号に対してデータワイプオフ動作を行い、積分間隔を20msを越えて増大できるようにし、これによって、全体的な信号検出感度が増大される。後続するGPS信号は、同一の衛星または衛星集団における異なる衛星に対応しうる。
【0015】第2の実施形態において、WAGサーバは、ナビゲーションデータのみを復調し、復調されたデータを無線端末に転送する。実際の推定は、無線端末において行われる。無線端末は、推定されたナビゲーションデータを用いて、データワイプオフを行い、異なる衛星からの後続するGPS信号についての積分間隔を増大させる。
【0016】第3の実施形態では、WAGサーバがなくなり、復調、推定、データワイプオフ、および積分間隔増大の各ステップは、無線端末内で行われる。この場合、積分間隔は、異なる衛星からの後続するGPS信号について増大される。
【0017】別の実施形態において、本発明は、ナビゲーションデータで変調されたGPS信号を処理する方法であって、(a)GPSシステムの第1の衛星により伝送される第1のGPS信号から、ナビゲーションデータを回復するステップと、(b)該回復したナビゲーションデータに基づいて、推定ナビゲーションデータを生成するステップと、(c)該推定ナビゲーションデータに基づいて、後続するGPS信号に対してデータワイプオフ動作を行うステップと、を含む方法である。
【0018】さらに、一実施形態において、本発明は、GPSシステム用のサーバであって、(a)ナビゲーションデータで変調されるとともに、GPSシステムの第1の衛星から伝送される第1のGPS信号を受信するよう構成されるGPS受信器と、(b)受信された第1のGPS信号からナビゲーションデータを回復するよう構成される復調器と、(c)回復されたナビゲーションデータから推定ナビゲーションデータを生成するよう構成される推定器と、を備え、推定ナビゲーションデータに基づいてデータワイプオフ動作を行うよう構成される無線端末によって受信されるように、推定ナビゲーションデータを伝送するよう構成される、サーバである。
【0019】本発明の他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、および添付図面からより完全に明らかとなろう。
【0020】
【発明の実施の形態】図2は、衛星101の集団と、無線端末203と、補助システム201と、を備えるGPS衛星システムを示す。補助システム201は、1基または複数基の衛星110からのGPS信号をGPSアンテナ209で受信し、GPS信号に変調されていたナビゲーションデータを復調する。次に、補助システム201は、この情報を無線リンク205を介して無線端末203に転送する。無線端末203は、こ復調されたナビゲーションデータを用いて、データワイプオフ動作を行い、積分間隔を増大(例えば、20msを越えて)できるようにし、それによって、無線端末203における全体的な信号検出性能を増大させる。
【0021】図2のGPSシステムには、ナビゲーションデータが補助システム201において復調された時間から、無線端末203がこの情報をデータワイプオフ動作に適用する時間までの遅れがある。無線端末203は、補助システム201からの対応する復調済みナビゲーションデータ情報を待つ間、GPS信号をメモリに格納する。その結果、無線端末203の位置決定には遅れがある。また、この技術では、無線端末203が、衛星101から受信したGPS信号を格納するための大容量のメモリを有する必要がある。
【0022】図3は、本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。図3には、GPS信号を無線端末303に送信可能な衛星集団(すなわち、複数の衛星101)が存在する。また、通信リンク305を介して無線端末303に接続された無線支援型GPS(WAG)サーバ301も存在する。用途に応じて、通信リンク305は、無線リンクであっても、または有線リンクであってもよい。WAGサーバ301は、GPS受信器309と、ナビゲーションデータ復調器311と、データ推定器313と、を備える。
【0023】WAGサーバ301は、短いまたは長い積分回数で構成された(configured with short or long integration times)GPS受信器105によるGPS信号102の検出を助ける。WAGサーバ301は、GPS信号102についての探索する相関器によって行われる積分の数を低減することで、GPS信号102の検出を促進する。積分の数は、探索する周波数範囲およびコード位相範囲を狭めることで、低減される。具体的には、WAGサーバ301は、GPS信号102についての探索を特定の周波数(単数または複数)およびコード位相スペクトルRj(spec)未満のある範囲のコード位相に制限する。
【0024】WAGサーバ301におけるGPS受信器309は、衛星101から伝送されたGPS信号102を得る。次に、ナビゲーションデータ復調器311が、GPS信号を処理して、GPS信号に変調されていたナビゲーションデータを復調する。この復調されたナビゲーションデータは、次に、WAGサーバ301内に配置されたデータ推定器313に転送される。
【0025】データ推定器313は、現在の復調済みナビゲーションデータを受信し、将来のナビゲーションデータを推定する。この推定は、ナビゲーションデータの現在および過去の測定、ならびにナビゲーションデータの既知のフォーマット標準についての一般的な知識に基づく。例えば、ナビゲーションデータが、非常に反復的な性質の複数のナビゲーションデータビットを含むということは、周知の事実である。データ推定器313は、一般に、推定ナビゲーションデータの作成を助ける、これら周知のパラメータおよび事実を用いてプログラムされる。
【0026】推定されたナビゲーションデータは、次に、通信リンク305を介して無線端末303に転送される。無線端末303は、GPS受信器315と、データワイプオフプロセッサ317と、を備える。GPS受信器315は、1基または複数基の送信衛星101からGPS信号を受信するために用いられる。データワイプオフプロセッサ317は、WAGサーバ301から受信した対応する推定ナビゲーションデータを用いて、後続するGPS信号に対してデータワイプオフ動作を行う。後続するGPS信号は、同一の衛星または異なる衛星に対応しうる。次に、積分間隔を20msを越えて増大して、全体の信号検出感度を増大することができる。
【0027】無線端末303は、リアルタイムでデータワイプオフ動作を行ってもよい。このため、遅れという従来技術の問題が回避される。さらに、衛星ナビゲーションデータ情報の受信には待機期間がないため、従来技術での無線端末303における記憶装置要件も低減される。
【0028】したがって、本発明の原理を用いることで、無線端末303は、衛星からのGPS信号を、たとえ比較的弱い場合であっても、得ることができる。無線端末303は、従来技術による無線端末の動作には不適な、低信号対雑音比という減衰した条件下でナビゲーションデータを得ることもできる。
【0029】WAGサーバ301は、地上設備あっても、空中設備であっても、地球の周囲の軌道における衛星であってもよい。データ推定器313は、周知のナビゲーション推定アルゴリズムまたは他のいくつかの推定機構に従って推定ナビゲーションデータを作成するようプログラムしてもよい。本発明の原理は、柔軟な性質であり、また本発明は、異なる種類のデータ推定方式を用いて実行することができる。
【0030】さらに、図3はデータ推定性能をWAGサーバ301に配置して示しているが、第2の実施形態において、データ推定性能を無線端末内に配してもよい。
【0031】図4は、本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。この実施形態において、WAGサーバ401は、GPS受信器409と、ナビゲーションデータ復調器411と、を備える。データ推定器413は、無線端末403内に配される。無線端末403はまた、GPS受信器415と、データワイプオフプロセッサ417と、を備える。
【0032】WAGサーバ401は、衛星からGPS信号を得て、GPS信号に変調されたナビゲーションデータを復調し、復調したデータを無線端末403に伝送する。無線端末403内において、データ推定器413は、将来のナビゲーションデータを推定し、データワイプオフプロセッサ417は、推定されたナビゲーションデータを用いて、異なる衛星からの後続するGPS信号に対してデータワイプオフ動作を行う。
【0033】図5はさらに、本発明の第3の実施形態を示す。この実施形態では、WAGサーバがなくなり、復調、推定、データワイプオフ、および積分間隔増大の各ステップは、無線端末内で行われる。図5に示すように、本実施形態において、無線端末503は、GPS受信器515と、ナビゲーションデータ復調器511と、データ推定器513と、データワイプオフプロセッサ517と、を備える。
【0034】図6は、本発明の第1の実施形態により、推定されたナビゲーションデータの使用による信号検出性能の強化に関連する各種ステップを示すフローチャートである。この方法は、1つまたは複数のGPS信号の強度が、建造物および他の無線端末が遮られる環境により高度に減衰される場合に特に有用である。強いGPS信号からのナビゲーションデータ情報を用いて、弱いGPS信号を検出する方法が開示される。
【0035】この方法では、まず、無線端末が、GPS受信器で受信されるGPS信号を検出するよう試みる(ブロック601)。この試みにおいて、強いGPS信号が検出され、記録される(ブロック603)。WAGサーバはまた、GPS受信器を介して衛星からの強いGPS信号を受信し、記録する(ブロック605)。次に、WAGサーバは、強いGPS信号に変調されていたナビゲーションデータを復調する(ブロック609)。WAGサーバはまた、GPSシステムにおいて一般に知られているナビゲーションデータストリームの関連知識も検索する(ブロック611)。次に、WAGサーバは、復調されたナビゲーションデータおよびナビゲーションデータに関連する一般的な知識を利用して、後続する信号について将来のナビゲーションデータを推定する(ブロック613)。後続する信号は、同一の衛星または異なる衛星に対応しうる。
【0036】次に、WAGサーバは、推定されたナビゲーションデータを無線端末に転送し、該無線端末は、推定されたナビゲーションデータを利用して、後続するGPS信号に対してデータワイプオフ動作を行う(ブロック617)。そして、無線端末は、その積分間隔を増大する(ブロック619)。無線端末は、次に、増大された積分間隔を用いることで、弱いGPS信号を検出する(ブロック621)。
【0037】図6に示す方法は、図3のWAGサーバとともに、または図3のWAGサーバなしで用いるよう変更することができる。WAGサーバが存在する場合、ナビゲーションデータ復調ステップおよびナビゲーションデータ推定ステップは、WAGサーバで行うことができ、実際のデータワイプオフステップおよび信号検出ステップは、無線端末で行うことができる。代替の実施形態において、復調ステップは、WAGサーバで行い、ナビゲーションデータ推定、データワイプオフ、および信号検出の各ステップは無線端末で行ってもよい。別の代替の実施形態において、WAGサーバを完全になくし、信号検出、ナビゲーションデータ復調、およびナビゲーションデータ推定の各ステップ、ならびにデータワイプオフステップおよび信号検出ステップを無線端末内で行ってもよい。
【0038】本発明の原理は、現在利用可能な測位技術の精度をさらに強化するために利用してもよい。従来の技術は、無線端末の位置をある程度の精度で決定するが、大気の変動(例えば、電離圏)およびGPS信号伝送時のジッターにより、無線端末の位置を高度な精度で決定することができない。本発明は、積分間隔を増大して、これら要因の効果を軽減して、無線端末の位置を突き止めることのできる精度を改良するために、利用してもよい。
【0039】また、例示的な実施形態の1つの目標は、本発明の原理による無線端末が、その場所を、従来技術による無線端末よりも高速に、かつ弱いGPS信号で決定することができるようにするために、従来の無線端末の信号獲得および信号処理要件を低減することである。
【0040】当業者は、添付の特許請求の範囲において表現される本発明の範囲から逸脱せずに、本発明の性質を説明するために記載かつ例示された部分の詳細、材料、および配置における各種変更を行いうることが、さらに理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術によるGPSシステムの模式図である。
【図2】補助システムを備えるGPSシステムを示す。
【図3】本発明の第1の実施形態によるGPSシステムを示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるGPSシステムを示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態によるGPSシステムを示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に関連する各種ステップを示すフローチャートである。
【符号の説明】
301 WAGサーバ
303 無線端末
311 ナビゲーションデータ復調器
313 データ推定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ナビゲーションデータで変調されたGPS信号を処理する方法であって、(a)GPSシステムの第1の衛星により伝送される第1のGPS信号から、ナビゲーションデータを回復するステップと、(b)該回復したナビゲーションデータに基づいて、推定ナビゲーションデータを生成するステップと、(c)該推定ナビゲーションデータに基づいて、後続するGPS信号に対してデータワイプオフ(wipe-off)動作を行うステップと、を含む、方法。
【請求項2】 前記後続するGPS信号は、前記第1の衛星によって伝送され、前記ステップ(a)は、前記GPSシステムのサーバにおいて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記サーバは、前記回復されたナビゲーションデータを無線端末に伝送し、前記ステップ(c)は、該無線端末において行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】 前記ステップ(c)は、前記サーバにおいて行われ、該サーバは、前記推定ナビゲーションデータを前記無線端末に伝送する、請求項2記載の方法。
【請求項5】 前記後続するGPS信号は、前記GPSシステムの第2の衛星によって伝送される、請求項1記載の方法。
【請求項6】 前記ステップ(a)および(b)は、前記GPSシステムのサーバにおいて行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】 前記サーバは、前記回復されたナビゲーションデータを前記無線端末に伝送し、前記ステップ(c)は、該無線端末において行われる、請求項6記載の方法。
【請求項8】 前記ステップ(c)は、前記サーバにおいて行われ、該サーバは、前記推定ナビゲーションデータを前記無線端末に伝送する、請求項6記載の方法。
【請求項9】 前記ステップ(a)、(b)、および(c)は、前記無線端末において行われる、請求項5記載の方法。
【請求項10】 前記無線端末は、前記データワイプオフ動作後に、積分間隔を増大させて、前記後続するGPS信号を検出する、請求項1記載の方法。
【請求項11】 前記増大された積分間隔は、20msよりも大きい、請求項10記載の方法。
【請求項12】 前記無線端末は、前記後続するGPS信号をバッファリングする必要なく、該後続するGPS信号を検出する、請求項10記載の方法。
【請求項13】 前記後続するGPS信号は、前記第1の衛星によって伝送され、前記ステップ(a)および(b)は、前記GPSシステムのサーバにおいて行われ、該サーバは、前記回復されたナビゲーションデータを前記無線端末に伝送し、前記ステップ(c)は前記無線端末において行われる、請求項1記載の方法。
【請求項14】 前記後続するGPS信号は、前記第1の衛星によって伝送され、前記ステップ(a)および(b)は、前記GPSシステムのサーバにおいて行われ、前記ステップ(c)は該サーバにおいて行われ、該サーバは、前記推定ナビゲーションデータを前記無線端末に伝送する、請求項1記載の方法。
【請求項15】 前記後続するGPS信号は、前記GPSシステムの第2の衛星によって伝送され、前記ステップ(a)および(b)は、前記GPSシステムのサーバにおいて行われ、該サーバは、前記回復されたナビゲーションデータを前記無線端末に伝送し、前記ステップ(c)は前記無線端末において行われる、請求項1記載の方法。
【請求項16】 前記後続するGPS信号は、前記GPSシステムの前記第2の衛星によって伝送され、前記ステップ(a)および(b)は、前記GPSシステムのサーバにおいて行われ、前記ステップ(c)は該サーバにおいて行われ、該サーバは、前記推定ナビゲーションデータを前記無線端末に伝送する、請求項1記載の方法。
【請求項17】 前記後続するGPS信号は、前記GPSシステムの第2の衛星によって伝送され、前記ステップ(a)、(b)、および(c)は、前記無線端末において行われる、請求項1記載の方法。
【請求項18】 GPSシステム用のサーバであって、(a)ナビゲーションデータで変調されるとともに、GPSシステムの第1の衛星から伝送される第1のGPS信号を受信するよう構成されるGPS受信器と、(b)前記受信された第1のGPS信号から前記ナビゲーションデータを回復するよう構成される復調器と、(c)前記回復されたナビゲーションデータから推定ナビゲーションデータを生成するよう構成される推定器と、を備え、前記推定ナビゲーションデータに基づいてデータワイプオフ動作を行うよう構成される無線端末によって受信されるように、前記推定ナビゲーションデータを伝送するよう構成される、サーバ。
【請求項19】 前記推定ナビゲーションデータは、前記第1の衛星に対応する、請求項18記載のGPSシステム用サーバ。
【請求項20】 前記推定ナビゲーションデータは、前記GPSシステムの第2の衛星に対応する、請求項18記載のGPSシステム用サーバ。
【請求項21】 GPSシステム用の無線端末であって、(a)ナビゲーションデータで変調されたGPS信号を受信するよう構成されるGPS受信器と、(b)推定ナビゲーションデータに基づいて、前記GPSシステムにおける衛星によって伝送されるGPS信号に対してデータワイプオフ動作を行うよう構成される、データワイプオフプロセッサと、を備える、無線端末。
【請求項22】 前記無線端末は、前記GPSシステムにおけるサーバから、前記推定ナビゲーションデータを受信する、請求項21記載の無線端末。
【請求項23】 前記推定ナビゲーションデータは、前記衛星からの先行するGPS信号に対応する、請求項22記載の無線端末。
【請求項24】 前記推定ナビゲーションデータは、前記GPSシステムの別の衛星からの先行するGPS信号に対応する、請求項22記載の無線端末。
【請求項25】 回復されたナビゲーションデータから前記推定ナビゲーションデータを生成するよう構成される推定器をさらに備える、請求項21記載の無線端末。
【請求項26】 前記GPSシステムにおいてサーバから前記回復されたナビゲーションデータを受信する、請求項25記載の無線端末。
【請求項27】 前記回復されたナビゲーションデータは、前記衛星からの先行するGPS信号に対応する、請求項26記載の無線端末。
【請求項28】 前記回復されたナビゲーションデータは、前記GPSシステムの別の衛星からの先行するGPS信号に対応する、請求項26記載の無線端末。
【請求項29】 前記GPSシステムの別の衛星から受信したGPS信号に対応する拡幅されたナビゲーションデータを生成するよう構成される復調器をさらに備える、請求項25記載の無線端末。
【請求項30】 前記データワイプオフ動作後に、積分間隔を増大させて、前記GPS信号を検出する、請求項25記載の無線端末。
【請求項31】 前記増大された積分間隔は、20msよりも大きい、請求項30記載の無線端末。
【請求項32】 前記GPS信号をバッファリングする必要なく、該GPS信号を検出する、請求項30記載の無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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