説明

HCV抗原抗体組み合わせアッセイ用の試薬

【課題】本発明は、検体中のHCV抗原及び抗HCV抗体の同時検出を行うための組み合わせイムノアッセイ、試薬及びキットを目的とする。
【解決手段】本発明の組み合わせイムノアッセイは、組換え型HCV抗原による抗HCV抗体の捕捉などの、他の試薬の機能を阻害することなく、検体中のビリオンからHCVコア抗原を効果的に曝露又は放出させる非イオン系洗剤を使用する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は全般に、HCV感染の検出及び診断用のイムノアッセイに関連する。特に本発明は、検体中のHCV抗原及び抗HCV抗体の同時検出のための非イオン系洗剤の使用に基づく組み合わせイムノアッセイ、試薬及びキットに関連する。
【0002】
〔発明の背景〕
一本鎖RNAウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)は、血液感染の非A非B型肝炎の病原因子である。HCVの慢性的活動性感染はしばしば、肝硬変及び肝細胞癌に進行する。疫学的研究により、HCVは世界で1億7000万人を超える人々が感染しており、進行して最終的に死に至る慢性疾患の発症率が高い(症例の50%超)ことが示されている。しかしながら、この疾患は主に血液感染であるため、血液検体中の病原体を識別し、輸血による疾患伝播を排除することが可能である。HCV病原体に曝露した後、最初のうちはウイルスの存在の証拠はない(すなわち検出可能なウイルスRNA又は血清マーカーがない)。この期間は「ウィンドウ期間」(WP)と呼ばれる。一般に、HCVに曝露してから10日後にウイルスRNAが検出可能になるが、一方、抗HCV抗体は約70日後に検出可能になる(Busch MP and Dodd RY,Transfusion 40(10):1157〜1160,2000)。HCV感染の拡大を防ぐためには、この観測可能な事実を考慮に入れ、検出ウィンドウを狭め得るような、信頼できる血液スクリーニング検査を確立することが非常に重要である。HCV RNAを検出する核酸増幅検査(NAT)の市販開始以来、輸血後HVC感染率は劇的に減少した。他の方法は、患者血清又は血漿中における、HCVコア抗原(Ortho HCVコア抗原ELISA(Ortho HCV Core Antigen ELISA)、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)、ニュージャージー州ラリタン(Raritan))又はHCVポリペプチドに対する抗体(Ortho HCV 3.0 ELISA(Ortho HCV 3.0 ELISA)、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社、ニュージャージー州ラリタン)の存在を検出するための、血液の血清学的スクリーニングに基づく。
【0003】
Semeら(J.Clin.Virol.32(2):92〜101,2005)によって実施された調査によれば、第一世代のHCVコア抗原アッセイは、核酸技法(NAT)に匹敵する感度と検出限界で、HCV感染を検出している。これらのアッセイは、現在の第三世代HCV抗体スクリーニングアッセイよりも、40〜50日早くHCV感染を検出している。血液スクリーニング用に設計された第一世代HCVコア抗体アッセイは、ウィンドウ期間を顕著に短縮したが、血清変換前段階、又は早期の血清変換後段階においてのみコア抗原を検出する。更に、第一世代HCVコア抗原アッセイは、後期血清変換段階においてコア抗原が抗コア抗体と免疫複合体を形成すると、コア抗原を検出することができない。明らかに、血清変換前段階においてHCVコア抗原を検出し、並びに血清変換段階において抗HCV抗体を検出することができ、これによりWPを顕著に狭めることができるような、組み合わせ血清学的アッセイを有することが望ましい。この組み合わせ血清学的検査は特に、装置又は能力の欠如によりNAT検査が実施できないような状況において、血液スクリーニングの貴重な方法となり得る。
【0004】
このようなHCV抗原抗体組み合わせアッセイは、現在の第三世代の血清学的血液スクリーニング法(Ortho HCV 3.0 ELISA)、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社、ニュージャージー州ラリタン)に対して、WPを狭めるという点について、顕著な改善となる。しかしながら、抗原抗体組み合わせアッセイを成功させるための課題の1つは、組換え型HCV抗原による抗HCV抗体の捕捉を阻害することなく、HCVビリオンを分裂させ抗原を放出させるための適切な洗剤を選択することである。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、検体中のHCV抗原及び抗HCV抗体の同時検出を行うための組み合わせイムノアッセイ、試薬及びキットを目的とする。
【0006】
本発明の組み合わせイムノアッセイの独自性は主に、検体の予備処理なしに、しかも組換え型HCV抗原によって抗HCV抗体の捕捉を阻害することなく、HCVコア抗原を効果的に曝露、又は検体中のビリオンから放出させる非イオン系洗剤を使用することにあり、これによりHCVコア抗原及び抗HCV抗体の同時測定を可能にする。
【0007】
本発明の組み合わせアッセイにおける使用に適した非イオン系洗剤は、N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシド族の員である。1つの好ましい実施形態において、組み合わせアッセイではラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)が使用される。他の実施形態においては、LDAOの誘導体又は機能的若しくは化学的に同等のものが使用される。
【0008】
したがって、本発明は、検体中のHCV抗原及び抗HCV抗体の同時検出のための、さまざまな形態の組み合わせイムノアッセイ、関連試薬及びキットを提供する。
【0009】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、HCV抗原抗体組み合わせイムノアッセイ、並びに関連する方法、試薬及びキットを目的とする。
【0010】
HCV抗原抗体組み合わせイムノアッセイ、又は「コンボ」アッセイとは、単一のアッセイで検体中のHCV抗原と抗HCV抗体との両方を同時に検出するイムノアッセイを指す。この抗原/抗体組み合わせアッセイ法は、HCV血清変換の早期段階に存在する抗原性及び免疫原性のHCV抗体及び抗原の識別及び使用に依存するものであり、これにより検出精度を高め、ウィンドウ期間中の偽結果の発生を減少させる。
【0011】
本発明は、早期のHCV感染を高感度かつ正確に検出するための組み合わせイムノアッセイにおける使用に適切かつ効果的な非イオン系洗剤の識別に、少なくとも部分的に基づいている。このような洗剤は、検査検体中のHCVウイルス性粒子を効果的に分裂させ、その結果、放出されたコア抗原が、モノクローナル抗体プローブによって効果的に捕捉かつ検出される。その一方では、この洗剤は、固相上にコーティングされた組換え型抗原を浸出することによって、又は組み合わせアッセイ中に抗HCV抗体を捕捉するのを妨げることによって、抗体検出に対して悪影響を与えることがない。よって、本発明によって提供されるこの組み合わせアッセイでは、単一のアッセイで検体中のHCV抗原(コア抗原を含む)と抗HCV抗体との両方を同時に検出することが可能になる。HCV抗原又は抗HCV抗体のいずれか一方を別々に検出することを目的としたアッセイをはじめとする既存のアッセイに比べて、本発明の組み合わせアッセイは、別個のアッセイを2回実施する必要を回避し、HCV検出に対して改善された感度及び特異性をもたらす。
【0012】
本発明に従って、組み合わせイムノアッセイにおける使用に好適な非イオン系洗剤には、N−アルキル−N−アルキル’−N−メチルアミンオキシド族の員が挙げられ、これらは別名、双性イオン性、又は双極性イオン系洗剤と呼ばれる。アルキル基は一般に、それぞれ15個以下の炭素原子を含有する。
【0013】
1つの実施形態において、この洗剤はN−アルキル−N−アルキル’−N−メチルアミンオキシドであり、式中、アルキル基は9〜13個の炭素原子を含有する単鎖又は分枝状アルキル基であり、もう一方のアルキル基(「そのアルキル(the alkyl)」基)は1〜13個の炭素原子を含有する単鎖又は分枝状アルキル基である。別の実施形態において、N−アルキル−N−アルキル’−N−メチルアミンオキシドの一方又は両方のアルキル基は、置換アルキル基である。
【0014】
1つの好ましい実施形態において、この洗剤は、次式:
CH−(CH)n−N−(CH
により特性付けられるN−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドである。
式中、アルキル鎖の長さは数字nで定義され、これは9〜13の範囲、又は好ましくは10〜12の範囲であり得、更に好ましくは、nは11である。数字「n」は少なくとも9であり、好ましくは少なくとも10であり、更に好ましくは少なくとも11である。
【0015】
本発明の特に好ましい1つの実施形態において、HCV組み合わせイムノアッセイに使用される非イオン系洗剤は、CH−(CH11−N−(CHの式を有するラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)であり、これは以下のように図で表わされる:
【化1】

【0016】
非イオン系洗剤は、任意の適切な方法で、組み合わせアッセイに供給されることができる。例えば、洗剤は、検体を検出試薬(捕捉抗原及び抗体など)に接触させて設置する前に、検査検体に加えることができる。あるいは、洗剤は、検出のための他の試薬を加えるのと同時に検査検体に混合することができる。1つの好ましい実施形態において、この洗剤は、溶液(又は「希釈剤」)として供給され、これは、検体を捕捉抗原及び抗体に接触させる前に、生物学的検査検体を希釈又は懸濁させるのに使用される。非イオン系洗剤がアッセイにどのように供給されるかにかかわらず、検査検体との接触が起こるときの、溶液混合物における洗剤の濃度は、0.1%〜2%(w/v)、好ましくは少なくとも0.3%(w/v)〜1%(w/v)の範囲であるべきであり、より好ましくは約0.5%(w/v)である。
【0017】
本発明の組み合わせアッセイを使用してHCVの検査を行うことが可能な生物学的検体には、HCVバイロン、抗原又は抗体を含有することが疑われる任意の検体が挙げられる。この検体は、体液を含む生物学的な流体又は組織であってよく、これには例えば、とりわけ、全血、乾燥全血、血清、血漿、又は他の血液構成成分(赤血球、白血球及び血小板)、尿、唾液、脳脊髄液、肝臓組織などが挙げられる。検体は、アッセイに使用する前に、任意の好適な方法で処理を行うことができる。
【0018】
本発明に従って、この組み合わせアッセイの抗HCV抗体の検出部分は一般に、検体中の抗HCV抗体を結合、したがって「捕捉」する少なくとも1つ(すなわち1つ以上)の捕捉抗原を利用する。捕捉抗原は一般に、HCVゲノムによってエンコードされたHCVタンパク質から誘導された抗原性ペプチド(1つ以上のエピトープを含有する)である。全HCVゲノムの配列、及びエンコードされたHCVポリタンパク質配列は、GenBank(それぞれアクセッション番号M62321及びAAA45676)に文書化されており、当業者に利用可能である。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「HCVタンパク質」は、HCVゲノムによってエンコードされた天然の完全長タンパク質(例えば、構造化タンパク質若しくは非構造化タンパク質、又は構造化タンパク質若しくは非構造化タンパク質の前駆体)と、2つの天然HCVタンパク質の人工的融合ポリペプチド又はこれらの断片(例えばNS3と部分的NS4との融合で、本明細書では「NS3/NS4」とも呼ばれる)との両方を含むことに注意されたい。
【0020】
HCVに感染した個体から得た検体中に存在する抗原に関して本明細書で使用されるとき、用語「HCV抗原(単数又は複数)」は、完全長HCVタンパク質、又はその抗原性断片であり得る。
【0021】
概して、HCVタンパク質のペプチド断片は抗原性であり、その断片の長さが少なくとも6個又は7個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8個、又は少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも12個、15個、又は20個のアミノ酸であるときに、対応する抗体に結合して捕捉することが可能である。捕捉HCV抗原は、1つを超えるエピトープを含有し得る。用語「エピトープ」は当該技術分野において周知であり、抗原の表面にあって抗体に結合し免疫反応を引き起こすことができる分子領域又は構造的決定子を指す。捕捉抗原は、組換えによって、又は従来の化学合成によって、作製することができる。
【0022】
特定の実施形態において、捕捉抗原は、コア抗原、E1、E2、NS2、NS3、NS4、又はNS5から選択されるHCVタンパク質の抗原性断片である。1つの好ましい実施形態において、捕捉抗原は、後述の実施例に記載されるように、コア抗原から、又はNS3/NS4融合タンパク質から誘導される。別の実施形態において、捕捉抗原として2つ以上のペプチドが使用され、これは同じHCVタンパク質から誘導することも、また異なるHCVタンパク質から誘導することもできる。
【0023】
捕捉抗原は、アッセイを実施する前に、固相上にコーティングされることができる。あるいは、この捕捉抗原は、適切な試薬(例えばビオチン)と結合し、これは、液相中(例えばカクテルELISAフォーマット)で捕捉抗原が抗HCV抗体と複合体を形成(すなわち、捕捉)した後の、固相への付着の媒介となり得る。
【0024】
本発明のイムノアッセイに使用するのに好適な固相の例としては、例えばラテックス粒子、磁気粒子、ビーズ、膜、及びマイクロタイターウェルなど、多孔質材料及び非多孔質材料の両方が挙げられる。固相材質の選択は、望まれるアッセイ形式に基づいて決定することができる。
【0025】
捕捉抗原が検査検体と接触したときに、もし抗HCV抗体がその検体内に存在すると、そのような抗体は捕捉抗原に結合する。捕捉抗原によって捕捉された抗体(すなわち捕捉された抗体)は、多数のアプローチを使用して検出することができる。
【0026】
1つのアプローチでは、捕捉されたHCV抗体を認識し結合するような、第二の抗体を利用する。第二の抗体、例えば抗ヒトIgGは、信号生成手段に結合される。第二の抗体が、捕捉された(第一の)抗体に結合すると、信号生成手段が測定可能な信号を生成し、これが、検査検体内に第一の抗体が存在していることを示す。
【0027】
別のアプローチでは、信号生成手段に結合することができる第二の抗原を利用し、これは「検出抗原」とも呼ばれる。捕捉抗原と同様に、検出抗原も1つを超えるエピトープを含有することができる(ただし、1つの共通エピトープが、捕捉抗原と検出抗原との両方に存在する限りにおいて)。更に、1つ以上の検出抗原を使用することができる。検出抗原が、捕捉された抗体に結合し、これによって捕捉抗原−抗体−検出抗原のサンドイッチを形成すると、検出抗原内の信号生成手段が測定可能な信号を生成し、これが、検査検体内に抗体が存在していることを示す。この「Agサンドイッチ」アプローチは、2つの異なる抗原分子にある2つの同じエピトープを同時に結合することができる抗HCV抗体の能力を前提条件としている。このAgサンドイッチアプローチでは、抗HCV抗体を高い特異性で検出することが可能になる。そしてこの高い特異性により、このアプローチでは大量の検査検体を使用することができ、これにより、検体中に存在するHCV抗原をより高い感度で検出することが可能になる。
【0028】
この信号生成手段は、それ自体が検出可能であるか、又は1つ以上の化合物と反応して検出可能な信号を生成するものであり得る。信号生成手段の例としては、色原体、放射性同位元素、化学発光化合物、酵素(例えばアルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びリボヌクレアーゼなど)、又は結合する組の一方(ビオチン又はストレプトアビジン(strepavidin)など)が挙げられる。ある酵素を信号生成手段として使用する場合(例えばアルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)、発色性、蛍光性、又は発光性の基質を加えることによって、検出可能な信号の生成が起こる。
【0029】
本発明に従って、組み合わせアッセイのHCV抗原検出部分は、一般に、抗体サンドイッチ形態での捕捉抗体と複合抗体との1つ以上の組を使用して達成される。
【0030】
複合抗体は、前述の信号生成手段の任意の1つに付着する。この捕捉抗体は、アッセイを実施する前に、固相(すなわち、前述の捕捉抗原と同じ固相)上にコーティングされることができる。あるいは、この捕捉抗原は、適切な試薬(例えばビオチン)と結合し、これは、液相中で捕捉抗体がHCV抗原と複合体を形成(すなわち捕捉)した後の、固相への付着(複合抗体とすでに結合している、又はこの後に結合することになる)の媒介となり得る。いずれのアプローチにおいても、いったん捕捉抗体−抗原−複合抗体のサンドイッチが形成され、固相上に捕捉されると、信号生成手段が測定可能な信号を生成することができ、これが、検査検体内に抗原が存在していることを示す。
【0031】
各組内において、それぞれが異なるエピトープを認識する1つ以上の捕捉抗体、及びそれぞれが異なるエピトープを認識する1つ以上の複合抗体が存在していてよい。捕捉抗体と複合抗体とを同一の抗原分子に同時に結合し、サンドイッチ複合体を形成できるようにするため、捕捉抗体(複数可)は、同じ組内にある複合抗体(複数可)によって認識されるものとは異なるエピトープを識別しなければならず、同時に、捕捉及び複合抗体それぞれによって識別されるエピトープは、抗体−抗原−抗体サンドイッチを形成するために、同じHCV抗原内になければならない。例えば、捕捉抗体及び複合抗体は、HCVゲノムによってエンコードされた、任意のHCVタンパク質、構造的又は非構造的HCVポリペプチドにおいて、エピトープに向わせることができる。好ましくは、抗体は、コア抗原、E1、E2、NS2、NS3、NS4、又はNS5から選択されるHCVタンパク質内のエピトープに向う。特に好ましい1つの実施形態において、1組の捕捉抗体及び複合抗体は、HCVコア抗原内のエピトープに向う(すなわち、特異的に結合する)。別の実施形態において、2組以上の捕捉抗体及び複合抗体が使用され、この組のうち少なくとも1組は、HCVコア抗原内のエピトープに向う捕捉抗体及び複合抗体を含む。
【0032】
捕捉抗体及び複合抗体は、モノクローナル抗体、若しくはポリクローナル抗体、又はこれらの組み合わせであり得る。好ましくは、モノクローナル抗体が使用される。
【0033】
本発明に従って組み合わせアッセイを実施するためには、捕捉抗原と、複合抗体若しくは検出抗原(抗HCV抗体を検出するためのもの);捕捉抗体と、HCV特異性抗体複合体(HCV抗原を検出するためのもの);及び適切な非イオン系洗剤が供給される。検査検体を、洗剤、捕捉試薬及び複合試薬と、順に又は同時に接触させ、複合試薬から生成された信号を、HCV感染の診断に相互に関連させることができる。
【0034】
1つの具体的な実施形態では、捕捉抗原、検出抗原、捕捉抗体及び複合抗体、並びに適切な非イオン系洗剤が提供される。好ましい1つの実施形態では、捕捉抗原及び捕捉抗体は両方とも、固相上にコーティングされる(共有結合的又は非共有結合的に付着する)。検査検体は、洗剤の存在下でこの固相に付着した捕捉試薬と接触させられる。同時に、又は好ましくは続いて、複合試薬(すなわち検出抗原及び複合抗体)が反応混合物に加えられる。複合試薬も固相に結合した結果生成される信号は、HCV感染の診断に相互に関連させることができる。
【0035】
捕捉試薬及び複合試薬は、交差反応及び偽陽性結果を避けるよう選択すべきであることに注意されたい。例えば、抗HCV抗体を検出するために使用されるHCV抗原は、捕捉抗体及び複合抗体が目的とするポリペプチドとは異なるHCVポリペプチドから誘導される。あるいは、抗体検出のために使用される抗原が、抗体試薬が産出されるタンパク質と同じHCVタンパク質(例えばコア抗原)から誘導される場合、抗体検出のために使用される抗原は、抗原検出に使用される抗体試薬によって認識されないエピトープを有するべきである。本質的に、アッセイの抗原検出部分において抗体が結合するエピトープは、HCV抗体検出に使用される抗原にあってはならない。
【0036】
本発明では、HCV感染の診断を支援するため、HCV抗原及び抗HCV抗体を同時に検出することを目的とした組み合わせアッセイ実施のための、上述のさまざまな試薬を含むキットも提供する。
【0037】
〔実施例〕
以下の実施例は、洗剤のラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)、並びにそれが抗原アッセイでのHCVコア抗原の放出を達成することにおける効率、及びHCV抗体アッセイとの適合性を調べることにより、本発明の利点及び重要性を詳細に説明するものである。HCVコア抗原及びHCV抗体の同時測定における洗剤のラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)使用についても記載される。
【0038】
以下に示される実施例は、実例を挙げるためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0039】
HCVコア抗原及び抗HCV抗体検出のための一般的な試薬
Ortho HCVコア抗原ELISA検査システム
ヒト血清又は血漿中のC型肝炎ヌクレオカプシドコア抗原(HCVコア抗原)を検出するために、Ortho HCVコア抗原ELISA(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社、ニュージャージー州ラリタン)が使用された。抗原を捕捉するために、マイクロウェル固相上にコーティングされたモノクローナル抗体が使用され、その捕捉された抗原を検出するために、HRPに結合した第二のモノクローナル抗体が使用された。前処理工程なしに捕捉及び検出するために、洗剤を含んだ試料希釈剤を使用して、HCVコア抗原を曝露した。
【0040】
Ortho HCV 3.0 ELISA検査システム
Ortho HCV 3.0 ELISA(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社、ニュージャージー州ラリタン)は、ヒト血清又は血漿中のC型肝炎ウイルスに対する抗体(抗HCV)の検出のためのものであった。マイクロウェル固相上にコーティングされた、組換え型HCV抗原c22(アミノ酸2〜120、コア領域)、c200(アミノ酸1192〜1931、NS3/NS4領域)及びNS5(アミノ酸2054〜2995)が、抗HCV抗体の捕捉に使用された。捕捉されたヒト抗HCVを検出するために、HRPに結合したマウスのモノクローナル抗ヒトIgG抗体が使用された。このフォーマットでは、試料希釈剤中に洗剤Tween20を使用した。
【0041】
Chiron RIBA HCV 3.0 SIA
Chiron RIBA HCV 3.0 SIA(ノバルティス・ワクチン・アンド・ダイアグノスティックス社(Novartis Vaccines & Diagnostics)、カリフォルニア州エメリービル(Emeryville))は、ヒト血清又は血漿中のC型肝炎ウイルスに対する抗体(抗HCV)の検出に使用されるストリップイムノブロットアッセイである。抗HCV抗体を捕捉するために、HCV抗原又はペプチドc22p(アミノ酸10〜53、コア領域)、c33c(アミノ酸1192〜1457、NS3領域)、5−1−1及びc100ペプチド(それぞれアミノ酸1694〜1735及び1920〜1935、NS4領域)並びにNS5(アミノ酸2054〜2995)が、検査ストリップ上に個々の帯として固定された。マウスのモノクローナル抗ヒトIgG抗体がHRPに結合され、次いで捕捉されたヒト抗HCVを検出した。このアッセイは、Ortho HCV 3.0 ELISA反応性試料の個々の抗原に対する抗体特異性反応性に関する追加情報を提供する。
【0042】
抗原
アミノ酸10〜アミノ酸45のHCVコアタンパク質配列をカバーするよう、2つのペプチド誘導体が合成された。HCC5Nについては、配列は配列番号:1に示されている(N−末端は、アセチル化によりブロックされたアミノ基ではなく、遊離アミノ基を有する)。HCC5NにはC末端にNorLeucine及びCysの2つの残基があり、これらはHCVコアタンパク質に属していない。HCC5−bについては、配列は配列番号:2に示されている(N−末端は遊離アミノ基を有する)。HCC5−bにはC末端にGly及びLysの2つの残基があり(ビオチン)、これらはHCVコアタンパク質に属していない。HCC5Nは更に、還元性条件下でHCC5NのC末端Cysを介してSMCC活性化BSAに結合していた。
【0043】
残基P1208〜T1657をカバーする組換え型HCV NS3ヘリカーゼ(rNS3(h))が、前述のように大腸菌にクローン化及び発現された(Jin,Arch Biochem Biophys.323(1):47−53,1995)。タンパク質を精製するため、6xHisタグがrNS3(h)のN末端に融合された(これにより6xHisタグ及びrNS3(h)の融合タンパク質を表わす配列番号:3が生じた)。EZ−Link Sulfo−NHS−LC−ビオチン(ピアース(Pierce)社、カタログ番号21335)を使用して、ビオチン結合rNS3(h)が生成された。この複合タンパク質がrNS3(h)分子当たり3個のビオチンを有していることが判定された。
【0044】
モノクローナル抗HCVコア抗体
本研究では4つのモノクローナル抗体が使用された。モノクローナル抗体C11−3、C11−7及びC11−14の調製及びエピトープ認識部位については、欧州特許公報第EP 0 967 484 A1号に記述されている。これらモノクローナル抗体のエピトープ認識部位のいずれも、HCVのアミノ酸10〜45の範囲内にはなかった。モノクローナル抗HCV抗体12F11が、組換え型c22に対して産出された。12F11の認識部位は、HCVのアミノ酸58〜72付近であった(コア抗原)。抗体C11−14及び12F11は、標準手順を使用してホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合された。
【0045】
HCV試料
(1)抗c22及び抗c33cが減損した抗HCV試料
試料WHO Hu−a−c33c、41530822、41530832及び41530883は、最初に、Ortho HCV 3.0 ELISAによって抗HCV強反応性、またOrtho HCVコア抗原ELISAによって非反応性であった。クロマトグラフィー樹脂が組換え型HCVコア抗原c22(Ortho HCV 3.0 ELISAに使用されているコーティング抗原の1つと同じ抗原)に結合した親和性カラムに試料を通すことによって、抗体の抗c22部分(抗HCVコア)を減損させた。
【0046】
試料WHO Hu−a−c22、I−20、及び360650は、最初に、Ortho HCV 3.0 ELISAによって抗HCV強反応性、Ortho HCVコア抗原ELISAによって非反応性であった。クロマトグラフィー樹脂が組換え型HCVコア抗原c33(Chiron RIBA 3.0 SIAで固定されている同じ抗原(c33c)、及びOrtho HCV 3.0 ELISAに使用されているコーティング抗原(c200)の1つの短いバージョン)に結合した親和性カラムに試料を通すことによって、抗体の抗c33c部分(部分的抗NS3)を減損させた。
【0047】
(2)HCVコア抗原反応性試料
HCVコア抗原反応検体ロット16は、血漿プールであり、Ortho HCV 3.0 ELISAによって抗HCVが非反応性であり、PCRによってHCV RNAが反応性であり、Ortho HCVコア抗原ELISAによってHCVコア抗原が反応性であった試料から作られていた。HCVコア抗原試料9160834は、ボストン・バイオメディカ(Boston Biomedica)社(BBI)から得た血漿試料である。この試料は、Ortho HCV 3.0 ELISAによって抗HCVに対して非反応性であり、Versant bDNA(バイエル(Bayer)社)によって約36,379,940IU/mL又は189,175,500コピー/mLでHCV RNAに対して反応性であり、Ortho HCVコア抗原ELISAに対して反応性であった。
【0048】
(3)HCV血清変換パネル
本研究で試験されたHCV血清変換パネルはすべて市販されているものであり、米国のセラケア・ライフ・サイエンシス社(SeraCare Life Sciences, Inc.)(BBIダイアグノスティックス(BBI Diagnostics))、及び米国のゼプトメトリックス社(ZeptoMetrix Corporation)(旧社名:インパス・バイオクリニカル・パートナーズ社(Impath/BioClinical Partners, Inc.))から購入された。HCV血清変換パネルは、HCVに感染した個体から採取されたヒト血液試料の一連の採血から構成されていた。試料は、抗HCV非反応性から反応性までの一周期をカバーしていた。
【0049】
実施例1:抗HCV抗体の検出(間接的なアッセイ形式)
アッセイは、Ortho HCV 3.0 ELISAキットの試薬を使用して実施された。洗剤Tween−20、BSA、カゼイン、酵母抽出液及びその他のタンパク質を含有するリン酸系緩衝液から構成される試料希釈剤150μLと、試料50μLとを、各ウェルに加えた。このプレートを37℃で60分間インキュベートし、次にPBS/Tween20含有の洗浄緩衝液で5回洗った。その後、HRP結合マウスモノクローナル抗ヒトIgG抗体200μLを各ウェルに加えた。このプレートを37℃で60分間インキュベートし、続いて6回洗った。200μLのOPD/基質(OPD錠剤1錠(シグマ(Sigma)社、カタログ番号P−8287)をELISA基質緩衝液6mLに溶解)を各ウェルに加え、このプレートを室温の暗所で30分間インキュベートした。4NのHSO停止溶液を50μL/ウェルの比率で加えた。プレート分光測光法リーダーを使用して、493nmでODを記録した。アッセイのカットオフ設定は、平均マイナスプラス0.6のODのHCV 3.0 ELISAから適応された。アッセイの例外は次の事項であった。
(1)「ELISA−1」では、洗剤Tween 20を含有する試料希釈剤がキットから得られた。一方、「ELISA−2」では、この洗剤はN−ラウリルサルコシン(NLS)に置き換えられ、「ELISA−3」では、洗剤はラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)に置き換えられた。
(2)「ELISA−1」では、キットに供給されているHRP結合マウスモノクローナル抗ヒトIgG抗体を、使用前に1:3に希釈した。「ELISA−2」及び「ELISA−3」では、キットに供給されている結合抗体を、使用前に1:2に希釈した。
【0050】
表1に示すように、抗c22及び抗c33c両方の減損試料において、Tween 20(抗HCV抗体検出に一般的に使用される)及びLDAOはそれぞれ、NLS(HCV抗原検出に典型的に使用される)に比べ、信号対カットオフ比(「S/C」)に表われているように、より良いアッセイ感度をもたらした。
【0051】
実施例2:抗HCV抗体の検出(Agサンドイッチアッセイ形式)
Agサンドイッチアッセイ形式においては、ビオチンで標識された抗原が複合体として使用された。ビオチン−抗原複合体が、固相に捕捉されているヒト抗HCV抗体に結合して、Ag−Ab−Agサンドイッチが形成された。このサンドイッチ複合体は次に、続くインキュベーションにおいてHRP結合したストレプトアビジンによって検出された。
【0052】
20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中にそれぞれ2.2μg/mLのモノクローナル抗体C11〜3及びC11〜7並びに0.1μg/mLのHCC5N−BSAをあらかじめ混合した溶液で、COSTA(商標)高結合マイクロタイタープレートを200μL/ウェルの割合でコーティングした。このプレートを25℃で一晩インキュベートした。コーティング溶液を吸引し、PB(pH7.0)中2μg/mLのrNS3(h)を、200μL/ウェルの割合で加えた。プレートを25℃で一晩インキュベートした。次にこのプレートをPBS/Tween洗浄緩衝液で1回洗い、続いて25℃で1時間、PBS/BSAブロッキング溶液(PBS中、1%ウシ血清アルブミン及び30%スクロース)を300μL/ウェルの割合で加えた。このプレートを吸引し、25℃、湿度10%で一晩乾燥させ、乾燥剤と共に小袋に入れた。
【0053】
試料希釈剤組成物は実施例1で使用したものと同じであったが、「ELISA−4」は洗剤Tween 20を含有し、「ELISA−5」は洗剤N−ラウリルサルコシン(NLS)を含有し、「ELISA−6」は洗剤ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)を含有していた。各ウェルに試料希釈剤100μL及び試料100μLを加えた。試料インキュベーションは、37℃で1時間、振盪と共に行われた。次にこのプレートをPBS/Tween 20で5回洗った。200μLのビオチン−rNS3(h)(又は「rNS3(h)−b」)を60ng/mLで、又はビオチン−HCC5(HCC5−b)を5ng/mLで、各ウェルに加えた。ビオチン−抗原を、複合希釈剤CD−1(PBS中のカゼインブロッカー、ピアース社カタログ番号37528、Tween 20を0.05%以下、EDTAを2mM以下添加)で希釈した。ビオチン−抗原インキュベーションは、37℃で60分間、振盪と共に維持された。このプレートを5回洗い、HRP−ストレプトアビジン(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch)社、カタログ番号016−030−084)をCD−1中に1:8,000で希釈した溶液を、200μL/ウェルの割合で加えた。HRP−ストレプトアビジンのインキュベーションは、室温で30分間維持された。次にこのプレートを6回洗い、その後各ウェルに200μLのOPD/基質が加えられた。このプレートを室温の暗所で30分間インキュベートし、4NのHSO停止溶液の50μLのアリコートを、各ウェルに加えた。プレート分光測光法リーダーを使用して、493nmでODを記録した。アッセイカットオフは、マイナス平均プラス0.300のODとして決定された。アッセイ結果を表2に示す。この結果、抗33c減損試料では、Tween20及びLDAOそれぞれが、NLSよりも良いアッセイ感度をもたらすことが示された。またこの結果、抗原サンドイッチ形式(Ag−Ab−Ag)が、間接形式(Ag−Ab−第二のAb)よりも良いことが示された。
【0054】
実施例3:HCVコア抗原の検出
実施例3に示されているHCVコア抗原の検出は、モノクローナル抗体−HCVコア抗原−モノクローナル抗体のサンドイッチELISAであった。試料にさらされたHCVコア抗原が、プレート上にコーティングされた2つのモノクローナル抗HCVコア抗体によって捕捉され、別の2つのHRP標識されたモノクローナル抗HCV抗体によって検出された。
【0055】
試料希釈剤を除き、実施例3に使用されたELISA試薬は基本的にOrtho HCVコア抗原ELISAキットのものであった。「ELISA−7」は、洗剤N−ラウリルサルコシン(NLS)を1.0%含有する本来のキット試料希釈剤を使用した。しかしながら、「ELISA−8」は、洗剤Tween 20を1.0%含有する試料希釈剤を使用し、「ELISA−9」は、洗剤ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)を1.0%含有する試料希釈剤を使用した。
【0056】
ELISAはHCVコア抗原ELISAのプロトコルに従って実施された。各ウェルに試料希釈剤100uL及び試料100μLを加えた。試料のインキュベーションは、37℃で90分間、振盪と共に行われた。このプレートをPBS/Tween 20で5回洗い、複合抗体を各ウェルに200μL加えた。この複合体インキュベーションは、37℃で30分間行われた。このプレートを6回洗い、200μLのOPD/基質を各ウェルに加えた。次にこのプレートを室温の暗所で30分間インキュベートした。次に4NのHSO停止溶液を50μL/ウェルの比率で加えた。プレート分光光度計リーダーを使用して、493nmでODを記録した。アッセイカットオフ設定はHCVコア抗原ELISAと同様であり、すなわち、マイナス平均プラス0.300のODであった。
【0057】
アッセイ結果を表3に示す。試料については、NLS及びLDAOはそれぞれ、Tween20よりも良いアッセイ感度をもたらした。
【0058】
実施例4:HCVコア抗原/抗HCV組み合わせアッセイ
HCVコア抗原/抗HCV抗体組み合わせELISAが、実施例2で使用されたものと同じプレート上で実施された。プレートは、モノクローナル抗HCV抗体C11〜3及びC11〜7、HCC5−BSA並びにrNS3(h)でコーティングされた。試料希釈剤は、20mMのリン酸緩衝液(pH7.3)、0.5Mの塩化ナトリウム、1mMのEDTA、1%の洗剤LDAO、1%のBSA、0.03%の酵母抽出液、及び0.01%の変性スーパーオキシダーゼジスムターゼ(SOD)、200μg/mLのマウス免疫グロブリンG(IgG)並びに0.1%の2−クロロアセトアミドで構成されていた。抗体/抗原複合体は、10mMのリン酸緩衝液(pH7.3)中に、HRP標識された抗HCVモノクローナル抗体C11−14(4μg/mL)及びHRP標識されたモノクローナル抗体12F11(4μg/mL)、HCC5−ビオチン(5ng/mL)並びにrNS3(h)−ビオチン(60ng/mL)、142mMの塩化ナトリウム、3mMの塩化カリウム、0.1%の洗剤Tween 20、1.5%のBSA、20%の加熱不活性化した新生仔ウシ血清、0.03%のフェリシアン化カリウム、100ug/mLのマウス免疫グロブリンG(モノクローナル)並びに0.1%の2−クロロアセトアミドで構成されていた。HRP標識されたストレプトアビジン複合体は、HRP−ストレプトアビジン(ジャクソン・イムノリサーチ社、カタログ番号016−030−084)をCD−1(PBS中のカゼインブロッカー、ピアース社カタログ番号37528、Tween 20を0.05%以下、EDTAを2mM以下添加)で1:8,000に希釈したもので構成されていた。
【0059】
アッセイプロトコルは、実施例2に記述されたものと同じであった。各ウェルに試料希釈剤100μL及び試料100μLを加えた。次にプレートを37℃で1時間、振盪と共にインキュベートし、続いてPBS/Tween 20で5回洗った。次に200μLの抗体/抗原複合体混合物を各ウェルに加えた。抗体/抗原複合体のインキュベーションは、37℃で60分間、振盪と共に行った。次にプレートを5回洗い、続いて200μL/ウェルの割合でHRP−ストレプトアビジンを加え、プレートを室温で30分間インキュベートした。その後プレートを6回洗い、200μLのOPD/基質を各ウェルに加え、プレートを室温の暗所で30分間インキュベートした。4NのHSO停止溶液を50μL/ウェル加え、プレート分光測光法リーダーを使用して、493nmでODを記録した。アッセイカットオフは0.300に設定された。
【0060】
BBI HCV血清変換パネルについてのHCV抗原/抗体組み合わせELISAのアッセイ結果を表4に示す。ゼプトメトリックスHCV血清変換パネルについてのHCV抗原/抗体組み合わせELISAのアッセイ結果を表5に示す。早期感染段階において、抗体検出アッセイにおける検出は陰性であり、一方HCV RNAアッセイ、HCV抗原アッセイ、又はHCV抗原抗体組み合わせアッセイを使用した検出は陽性であったことがわかる。例えば、表4の、最初の採血から4日目、7日目、13日目の「PHV907」を参照されたい。一方、抗原の検出が陰性になりHCV RNAの量が減少する、感染の後期段階において(例えば「PHV907」の164日目)、抗HCV抗体は抗体検出アッセイではっきりと検出され、抗原抗体組み合わせアッセイにおいてはS/C比もゆうに1を上回った。これらの結果から、HCV抗原抗体組み合わせアッセイは、HCV抗原単独又は抗HCV抗体単独の検出に基づくアッセイよりも広い検出ウィンドウをもたらしたことが示されている。
【0061】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4−1】

【表4−2】

【表5−1】

【表5−2】

【0062】
〔実施の態様〕
(1) 検体中のHCV抗原及び抗体を同時に検出するためのイムノアッセイにおいて、
N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドを含む非イオン系洗剤、捕捉抗原と検出抗原との第一組、捕捉抗体と複合抗体との第一組を提供することであって、前記捕捉抗原及び前記検出抗原が両方とも第一HCVタンパク質の第一ペプチド断片を含み、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が第二HCVタンパク質に特異的に結合し、前記検出抗原及び前記複合抗体が1つの同じ信号生成手段を含む、ことと、
前記検体を前記洗剤の存在下で、前記捕捉抗原、前記検出抗原、前記捕捉抗体、及び前記複合抗体に接触させることにより、前記捕捉抗原と、前記検出抗原と、前記検体中に存在する抗HCV抗体との間でサンドイッチ複合体を形成し、前記捕捉抗体と、前記複合抗体と、前記検体中に存在するHCV抗原との間で複合体を形成することと、
前記複合体の形成の結果として前記信号生成手段から生成される信号を測定し、これにより前記検体中のHCV抗原及び抗体を同時に検出することと、
を含む、イムノアッセイ。
(2) 前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、式CH−(CH)n−N−(CHによって特徴付けられ、式中、nは9〜13の範囲である、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
(3) 前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)である、実施態様2に記載のイムノアッセイ。
(4) 前記第一HCVタンパク質及び第二HCVタンパク質が、コア抗原、E1、E2、NS2、NS3、NS4、及びNS5からなる群から独立して選択される、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
(5) 前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が同じであり、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第一ペプチド断片の外側の前記第二HCVタンパク質領域に結合する、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
(6) 前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が両方とも前記HCVコア抗原である、実施態様5に記載のイムノアッセイ。
(7) 捕捉抗原と検出抗原との第二組が提供され、前記第二組の前記捕捉抗原及び前記検出抗原が両方とも、HCVタンパク質の第二ペプチド断片を含み、前記第二ペプチド断片は、前記第一ペプチド断片とは異なる、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
(8) 前記第一ペプチド断片及び前記第二ペプチド断片が、異なるHCVタンパク質から誘導される、実施態様7に記載のイムノアッセイ。
(9) 前記第一ペプチド断片又は前記第二ペプチド断片の少なくともいずれか一方が、前記HCVコア抗原の断片である、実施態様8に記載のイムノアッセイ。
(10) 前記第一組の前記捕捉抗体が、2つ以上の抗体を含む、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
【0063】
(11) 捕捉抗体と複合抗体との第二組が提供され、前記第二組の前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第二HCVタンパク質、又は異なるHCVタンパク質に特異的に結合する、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
(12) 前記捕捉抗原及び前記捕捉抗体が、固相に付着している、実施態様1に記載のイムノアッセイ。
(13) 検体中のHCV抗原及び抗体を同時に検出するためのキットにおいて、
N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドを含む非イオン系洗剤、捕捉抗原と検出抗原との第一組、捕捉抗体と複合抗体との第一組を含み、前記捕捉抗原及び前記検出抗原が、第一HCVタンパク質の第一ペプチド断片を含み、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が第二HCVタンパク質に特異的に結合し、前記検出抗原及び前記複合抗体が1つの同じ信号生成手段を含む、キット。
(14) 前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、式CH−(CH)n−N−(CHによって特徴付けられ、式中、nは9〜13の範囲である、実施態様13に記載のキット。
(15) 前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)である、実施態様14に記載のキット。
(16) 前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が、コア抗原、E1、E2、NS2、NS3、NS4、及びNS5からなる群から独立して選択される、実施態様13に記載のキット。
(17) 前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が同じであり、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第一ペプチド断片の外側の前記第二HCVタンパク質領域に結合する、実施態様13に記載のキット。
(18) 前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が両方とも前記HCVコア抗原である、実施態様17に記載のキット。
(19) 捕捉抗原と検出抗原との第二組を更に含み、前記第二組の前記捕捉抗原及び前記検出抗原が、HCVタンパク質の第二ペプチド断片を含み、前記第二ペプチド断片は、前記第一ペプチド断片とは異なる、実施態様13に記載のキット。
(20) 前記第一ペプチド断片及び前記第二ペプチド断片が、異なるHCVタンパク質から誘導される、実施態様19に記載のキット。
【0064】
(21) 前記第一ペプチド断片又は前記第二ペプチド断片の少なくともいずれか一方が、前記HCVコア抗原の断片である、実施態様20に記載のキット。
(22) 前記第一組の前記捕捉抗体が、2つ以上の抗体を含む、実施態様13に記載のキット。
(23) 捕捉抗体と複合抗体との第二組を更に含み、前記第二組の前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第二HCVタンパク質、又は異なるHCVタンパク質に特異的に結合する、実施態様13に記載のキット。
(24) 前記捕捉抗原及び前記捕捉抗体が、固相に付着している、実施態様13に記載のキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中のHCV抗原及び抗体を同時に検出するためのイムノアッセイにおいて、
N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドを含む非イオン系洗剤、捕捉抗原と検出抗原との第一組、捕捉抗体と複合抗体との第一組を提供することであって、前記捕捉抗原及び前記検出抗原が両方とも第一HCVタンパク質の第一ペプチド断片を含み、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が第二HCVタンパク質に特異的に結合し、前記検出抗原及び前記複合抗体が1つの同じ信号生成手段を含む、ことと、
前記検体を前記洗剤の存在下で、前記捕捉抗原、前記検出抗原、前記捕捉抗体、及び前記複合抗体に接触させることにより、前記捕捉抗原と、前記検出抗原と、前記検体中に存在する抗HCV抗体との間でサンドイッチ複合体を形成し、前記捕捉抗体と、前記複合抗体と、前記検体中に存在するHCV抗原との間で複合体を形成することと、
前記複合体の形成の結果として前記信号生成手段から生成される信号を測定し、これにより前記検体中のHCV抗原及び抗体を同時に検出することと、
を含む、イムノアッセイ。
【請求項2】
前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、式CH−(CH)n−N−(CHによって特徴付けられ、式中、nは9〜13の範囲である、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項3】
前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)である、請求項2に記載のイムノアッセイ。
【請求項4】
前記第一HCVタンパク質及び第二HCVタンパク質が、コア抗原、E1、E2、NS2、NS3、NS4、及びNS5からなる群から独立して選択される、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項5】
前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が同じであり、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第一ペプチド断片の外側の前記第二HCVタンパク質領域に結合する、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項6】
前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が両方とも前記HCVコア抗原である、請求項5に記載のイムノアッセイ。
【請求項7】
捕捉抗原と検出抗原との第二組が提供され、前記第二組の前記捕捉抗原及び前記検出抗原が両方とも、HCVタンパク質の第二ペプチド断片を含み、前記第二ペプチド断片は、前記第一ペプチド断片とは異なる、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項8】
前記第一ペプチド断片及び前記第二ペプチド断片が、異なるHCVタンパク質から誘導される、請求項7に記載のイムノアッセイ。
【請求項9】
前記第一ペプチド断片又は前記第二ペプチド断片の少なくともいずれか一方が、前記HCVコア抗原の断片である、請求項8に記載のイムノアッセイ。
【請求項10】
前記第一組の前記捕捉抗体が、2つ以上の抗体を含む、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項11】
捕捉抗体と複合抗体との第二組が提供され、前記第二組の前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第二HCVタンパク質、又は異なるHCVタンパク質に特異的に結合する、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項12】
前記捕捉抗原及び前記捕捉抗体が、固相に付着している、請求項1に記載のイムノアッセイ。
【請求項13】
検体中のHCV抗原及び抗体を同時に検出するためのキットにおいて、
N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドを含む非イオン系洗剤、捕捉抗原と検出抗原との第一組、捕捉抗体と複合抗体との第一組を含み、前記捕捉抗原及び前記検出抗原が、第一HCVタンパク質の第一ペプチド断片を含み、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が第二HCVタンパク質に特異的に結合し、前記検出抗原及び前記複合抗体が1つの同じ信号生成手段を含む、キット。
【請求項14】
前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、式CH−(CH)n−N−(CHによって特徴付けられ、式中、nは9〜13の範囲である、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドが、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)である、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が、コア抗原、E1、E2、NS2、NS3、NS4、及びNS5からなる群から独立して選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項17】
前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が同じであり、前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第一ペプチド断片の外側の前記第二HCVタンパク質領域に結合する、請求項13に記載のキット。
【請求項18】
前記第一HCVタンパク質及び前記第二HCVタンパク質が両方とも前記HCVコア抗原である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
捕捉抗原と検出抗原との第二組を更に含み、前記第二組の前記捕捉抗原及び前記検出抗原が、HCVタンパク質の第二ペプチド断片を含み、前記第二ペプチド断片は、前記第一ペプチド断片とは異なる、請求項13に記載のキット。
【請求項20】
前記第一ペプチド断片及び前記第二ペプチド断片が、異なるHCVタンパク質から誘導される、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記第一ペプチド断片又は前記第二ペプチド断片の少なくともいずれか一方が、前記HCVコア抗原の断片である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記第一組の前記捕捉抗体が、2つ以上の抗体を含む、請求項13に記載のキット。
【請求項23】
捕捉抗体と複合抗体との第二組を更に含み、前記第二組の前記捕捉抗体及び前記複合抗体が、前記第二HCVタンパク質、又は異なるHCVタンパク質に特異的に結合する、請求項13に記載のキット。
【請求項24】
前記捕捉抗原及び前記捕捉抗体が、固相に付着している、請求項13に記載のキット。