説明

HIDランプの始動補助機構

【課題】HIDランプの始動補助機構を提供することである。
【解決手段】絶縁体で作製した放電容器、陰極及び陽極、を含む高輝度放電ランプが提供される。放電容器の、内面から陽極が分離される部分に直ぐ隣り合う位置で容器の第1部分と陽極との間にV字型間隙が設けられる。放電容器の第1部分の外面上には二次陰極が設けられ、二次陰極は、V字型間隙と第1部分とが二次陰極と陽極との間に来るように位置決めされる。第1部分の電界が誘電体バリヤ放電(DBD)を創出させ、この放電が、紫外線(UV)フォトン及び真空紫外線(VUV)フォトンを発生させ、これらのフォトンが陰極に衝突して陰極と陽極との間に放電を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度放電(HID)ランプに関し、詳しくは、始動補助機構を有するHIDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
HIDランプは、ランプ動作電圧よりも高く且つアバランチ(avalanche)始動電子の存在下に放電を開始させるに充分な電界を提供する高電圧下に始動される。ある始動補助機構では、アバランチ始動電子が確実に放出させるべく紫外線(UV)エンハンサを用いている。
【0003】
例えば、米国特許第5,323,091号には、金属ハロゲン化物製の放電ランプ用UV始動補助機構が記載され、放電管のプレスシール内にキャビティを含み、このキャビティが電子シールのホイルの一部を含んでいる。接地面はプレスシールの外部に提供され、ホイルを接地に対して負に帯電させることでランプを賦活させる。ホイルの鋭端部からリークした電子がキャビティ内で誘電体バリヤ放電(DBD)を開始させる。DBDによって充填ガス及びその圧力に依存して生じるUVフォトン及び真空UV(VUV)フォトンが主容器内の陰極に達することでランプ始動が容易化されるが、フォトンはプレスシールを貫いて移動するため、その際の伝送損失により始動補助性が低下する。
【0004】
米国特許第6,201,348号には、密閉シールしたジャケット内に放電管を位置決めしたメタルハライド放電ランプが記載され、ジャケットが、放電管内の放電開始を補助するガスを含んでいる。ジャケット外部を伸延する外部導体が放電管の導線の一方に接続される。電極に電圧を印加すると、外部電極があるために内部電極に接近して隣り合う位置に電界が集中される。この効果自体は、放電管内の放電開始を助成させるが、ジャケット内にDBDを形成させる場合もある。ジャケット内にDBDが形成されると、フォトンは放電管の壁を貫いて移動しなければ放電管内の陰極に到達できないのでその有効性が大幅に低下する。なぜなら、DBDの発生場所や陰極に関するその位置を制御できないからである。また、DBDフォトンのスペクトルはジャケットの充填ガスに対する依存度が高く、陰極(代表的にはN2であり、そのDBDスペクトルは、強いUVやVUV成分を含むXeまたはArと比較して、可視光方向へのズレ量が大きい)に到達する前にガスによって強力に吸収され得る。
【0005】
米国特許第7,083,383号には、放電空間の壁に埋設した導電ストリップからなる始動補助機構が記載される。当該米国特許は、電界を陰極位置に集中させて電子放出を促進させることをその主目的とし、始動補助機構は容量結合型の外部電極のようなのでDBDが発生され得る。当該米国特許はフォトン形成に関する記述が無く、フォトン創出に際しての絶縁及び幾何学寸法状の重要性が認識されていない。
米国特許第7,187,131号には、2つのワイヤループを各電極のネック部に巻装した始動補助機構が記載され、各ループは連結され且つ点火パルスが送られる。この始動補助機構はランプの発光部を覆って伸延されるのでランプの光学特性に悪影響を与える。
【0006】
米国特許第4,010,397号には、導電パッチをランプの外面の一部に接合し、高電圧電極の一部を覆って伸延させたフラッシュランプのトリガー構成が記載される。当該米国特許でもフォトン形成時の絶縁及び幾何学的寸法の重要性は認識されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,323,091号
【特許文献2】米国特許第6,201,348号
【特許文献3】米国特許第7,083,383号
【特許文献4】米国特許第7,187,131号
【特許文献5】米国特許第4,010,397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
HIDランプの始動補助機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ランプ用のUV始動補助機構が従来の問題を回避するようにした新規なHIDランプ及びHIDランプの始動方法が提供される。
本発明によれば、ランプが、絶縁体で形成した放電容器、陰極、陽極、を含む新規な高輝度放電ランプ及びその始動方法が提供される。陽極と、陽極が容器の内面から分離する場所に直ぐ隣り合う容器の第1部分との間に、ガスを充填したV字型の間隙が設けられる。容器の第1部分の外面上に二次陰極を設け、この二次陰極が、V字型間隙と前記第1部分とが二次陰極と陽極との間に配置されるように位置決めされる。第1部分における、ガスをイオン化するまたは絶縁壁から自由電子を放出させるに充分な電界がDBDを創出させる。DBDによって創出されたUVフォトン及びVUVフォトンは陰極に衝突して陰極及び陽極間の放電を開始させ、かくしてランプを始動させる。
【発明の効果】
【0010】
HIDランプの始動補助機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のランプの実施例の略断面図である。
【図2】図2は、図1の実施例における陽極と二次陰極との間の間隙の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照するに、本発明の高輝度放電(HID)ランプ10(以下、ランプ10とも称する)が示され、中実の絶縁体から作製した放電容器12と、放電容器の一端部に取り付けた陰極14と、放電容器の他端部に取り付けた陽極16とを含んでいる。図2に明示されるように、放電容器12は、放電容器の内面から陽極16が分離される場所に直ぐ隣り合い、陽極を然るべく保持するプレスシール20に接近した第1部分18を有する。放電容器の第1部分18及び陽極16が、陽極と、放電容器の内面との間にV字型(三角形状)間隙22を確定する。V字型間隙は放電容器の放電チャンバ24に対して開口され、ガス26(放電チャンバ内のそれと同じガス)で充填される。V字型間隙22は陽極16の周囲に伸延され且つ陽極を中心として回転方向に対称的である。図2では、間隙部分の、放電容器12の内面が陽極から鋭角を成して離間するようになる頂部の境界位置が点線で示される。第1部分18は、V字型間隙22内のDBDから放出されたフォトンを陰極に到達させるための、陰極14に対する障害物の無い視線を有する。
【0013】
ランプ10は、容器の第1部分18の位置の外面上に設けた二次陰極30をも含み、この二次陰極30と陽極16との間には、ガス26を充填したV字型間隙22と、中実の絶縁体の第1部分18とが配置される。
二次陰極30は、点火(点灯)仕様に好適な回路(図示せず)を備える導電体41を介して陰極14に接続される。陽極16は別の導電体43を介してこの回路に接続される。V字型間隙22内の電界が、第1部分18の二次陰極と陽極との間に形成され、この電界がDBDを創出させる。ガス26はキセノンまたはアルゴンであり、何れの場合でもDBDはエキシマ分子の崩壊を介してUVフォトン及びVUVフォトンを生成させる。UVフォトン及びVUVフォトンは陰極14に衝突して陰極と陽極との間に放電を開始させ、かくしてランプ10の点火(点灯)を容易化する。各電極の極性が逆転することはない。陰極近接電界は電子を適時に取り出すには不十分なため、“二次陽極”は所望のDBDを創出しないのである。
【0014】
DBDの継続時間はイオンの運動によって制限される。イオンは、絶縁壁に到達するとDBDを消滅させる。フォトンのパルスは陰極への電圧印加の50〜100ナノ秒後に開始され、数マイクロ秒(例えば1〜5マイクロ秒)もの長さで継続され得る。UVフォトン及びVUVフォトンは陰極からの電子放出に必要なエネルギーを提供し且つ放出電子によるガスイオン化を支援する。
好ましい実施例において、二次陰極30は放電容器の第1部分の周囲のリングである。二次陰極はロッド(図2で点線30’で示す)としても良い。リングの場合、DBD開始電子の取り出し部分がロッドの場合のそれよりも長くなる。試験によれば、代表的なHIDランプ用の始動電圧18〜25kV(始動補助機構無しでの)は、ロッド実施例30’では9〜10kVに、リング実施例では約8kVに低減され得ることが示された。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0015】
10 高輝度放電(HID)ランプ
12 放電容器
14 陰極
16 陽極
18 第1部分
20 プレスシール
22 V字型間隙
24 放電チャンバ
26 ガス
30 二次陰極
41、43 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度放電ランプであって、
絶縁体から作製した放電容器と、
放電容器の一端に取り付けた陰極及び、放電容器の他端に取り付けた陽極と、
該放電容器の内面から陽極が分離する場所に直ぐ隣り合う、放電容器における第1部分にして、該第1部分と陽極とが、陽極と放電容器の内面との間にV字型間隙を確定し、該V字型間隙がガスで充填され且つ放電容器の放電チャンバに対して開口され、陰極に対する障害物の無い視線を有する第1部分と、
放電容器の第1部分の外面上に、前記V字型間隙と第1部分とが二次陰極と陽極との間に配置されるように位置決めした二次陰極にして、陰極に接続され且つ前記V字型間隙内に誘電バリヤ放電を生成させる電界を発生させ、該誘電バリヤ放電が、陰極上に衝突して陰極と陽極との間に放電を開始させるUVフォトン及びVUVフォトンを発生させる二次陰極と、
を含む高輝度放電ランプ。
【請求項2】
二次陰極が放電容器の第1部分の周囲のリングである請求項1の高輝度放電ランプ。
【請求項3】
二次陰極がロッドである請求項1の高輝度放電ランプ。
【請求項4】
ガスがキセノンまたはアルゴンを含む請求項1の高輝度放電ランプ。
【請求項5】
絶縁体から作製した放電容器、放電容器の一端に取り付けた陰極及び同他端に取り付けた陽極、を含む高輝度放電ランプの点灯方法であって、
陽極と、該陽極が放電容器の内面から分離する場所に直ぐ隣り合う第1部分との間に、ガスで充填され且つ放電容器の放電チャンバに対して開口されたV字型間隙にして、前記第1部分が陰極に対する障害物の無い視線を有するV字型間隙を設けること、
放電容器の前記第1部分の外面上に、二次陰極にして、前記V字型間隙と第1部分とが該二次陰極と陽極との間に配置されるように位置決めされ、陰極に接続した二次陰極を設けること、
陽極と二次陰極との間に電界を印加して、前記V字型間隙内に、陰極上に衝突して陰極と陽極との間に放電を開始させるUVフォトン及びVUVフォトンをパルス的に発生させる誘電バリヤ放電を形成させること、
を含む方法。
【請求項6】
パルス的に発生されるフォトンが、陰極に電圧を印加した50〜100ナノ秒後に発生し且つ数マイクロ秒まで持続される請求項5の方法。
【請求項7】
フォトンが紫外線(UV)または真空紫外線(VUV)における波長を有する請求項5の方法。
【請求項8】
二次陰極が、放電容器の第1部分の周囲のリングとして設けられる請求項5の方法。
【請求項9】
二次陰極がロッドとして設けられる請求項5の方法。
【請求項10】
ガスがキセノンまたはアルゴンを含む請求項5の方法。

【図1】
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【図2】
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