説明

HLA結合ペプチドおよびそれらの用途

【課題】対立遺伝子特異的結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、HLA対立遺伝子によってコードされる糖タンパク質を特異的に結合し得、そしてこの対立遺伝子によって拘束されるT細胞におけるT細胞活性化を誘導し得る、免疫原性ペプチドおよび免疫原性ペプチド組成物を選択するための手段および方法を提供する。このペプチドは、所望の抗原に対して免疫応答を惹起するために有用である。本発明はまた、さらなるMHCクラスI分子に対する結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、USSN09/17,735、USSN08/753,622、USSN08/589,108、USSN08/454,033、USSN08/349,177、USSN08/159,184、USSN08/073,205、USSN08/207,146、およびUSSN08/205,713に関連する。本出願はまた、USSN09/017,524、USSN08/821,739、USSN08/758,409、USSN08/589,107、USSN08/451,913、ならびにUSSN08/347,610、USSN08/186,266、USSN08/159,399、USSN08/103,396、USSN08/027,746、およびUSSN07/926,666に関連する。上記全ての出願は本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、ウイルス疾患および癌のような多くの病理学的状態を予防、処置または診断するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、選択された主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し得、そして免疫応答を誘導し得る新規なペプチドを提供する。
【0003】
MHC分子は、クラスI分子またはクラスII分子のいずれかとして分類される。クラスII MHC分子は、免疫応答の開始および持続に関与する細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージなど)上で主に発現される。クラスII分子は、ヘルパーTリンパ球によって認識され、そしてヘルパーTリンパ球の増殖および提示される特定の免疫原性ペプチドに対する免疫応答の増幅を誘導する。クラスI MHC分子は、ほぼ全ての有核分子上で発現され、そして細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、これは、次いで、抗原保持細胞を破壊する。CTLは特に、腫瘍拒絶反応およびウイルス感染との闘いにおいて重要である。
【0004】
CTLは、インタクトな外来抗原自体よりむしろMHCクラスI分子に結合するペプチドフラグメントの形態である抗原を認識する。この抗原は、通常、細胞によって内因的に合成されねばならず、このタンパク質抗原の一部は、細胞質中で小さいペプチドフラグメントに分解される。これらの小さいペプチドのいくつかは、プレゴルジ(pre−Golgi)区画に移行し、そしてクラスI重鎖と相互作用して、適切な折り畳みおよびサブユニットβ2ミクログロブリンとの会合を容易にする。次いで、このペプチド−MHCクラスI複合体は、発現および特異的CTLによる潜在的認識のために細胞表面に移動する。
【0005】
ヒトMHCクラスI分子である、HLA−A2.1の結晶構造の研究は、ペプチドが結合する溝が、クラスI重鎖のα1およびα2ドメインの折り畳みによって作製されることを示す(非特許文献1)。しかし、この研究において、溝に結合するペプチドの正体は決定されなかった。
【0006】
非特許文献2は、MHCからの結合ペプチドの酸溶出の方法を最初に記載した。続いて、Rammenseeおよび共同研究者(非特許文献3)は、クラスI分子に結合する天然でプロセシングされたペプチドを特徴付けするためのアプローチを開発した。他の研究者らは、B型のクラスI分子から溶出されたペプチドの従来の自動配列決定法(非特許文献4)およびA2.1型のクラスI分子から溶出されたペプチドの質量分析法(非特許文献5)によって、種々のHPLC画分中のより大量のペプチドの直接的なアミノ酸配列決定を首尾よく達成した。MHCクラスIの天然でプロセシングされたペプチドの特徴付けの概論は、RotzschkeおよびFalk(非特許文献6)によって示されている。
【0007】
非特許文献7は、MHC対立遺伝子特異的モチーフを使用してMHC結合能力を予測し得ることを示した。非特許文献8は、MHC結合が免疫原性に関連することを示した。何人かの著者(非特許文献9;非特許文献10)は、クラスI結合モチーフが、動物モデルにおける潜在的な免疫原性ペプチドの同定に適用され得るという予備的証拠を提供した。所定のクラスIアイソタイプの多くのヒト対立遺伝子に特異的なクラスIモチーフは、まだ記載されていない。これらの異なる対立遺伝子の合わせられた頻度が、大きな画分またはおそらく大半のヒト非近交系集団をカバーするに非常に十分に高くあるべきであることが所望される。
当該分野における発展にもかかわらず、先行技術はまだ、本研究に基づく有用なヒトペプチドベースのワクチンまたは治療剤を提供していない。本発明は、これらおよび他の利点を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Bjorkmanら、Nature 329:506(1987)
【非特許文献2】Buusら、Science 242:1065(1988)
【非特許文献3】Falkら、Nature 351:290(1991)
【非特許文献4】Jardetzkyら、Nature 353:326(1991)
【非特許文献5】Huntら、Science 225:1261(1992)
【非特許文献6】RoetzschkeおよびFalk、Immunol.Today 12:447(1991)
【非特許文献7】Setteら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3296(1989)
【非特許文献8】Schaefferら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4649(1989)
【非特許文献9】De Bruijnら、Eur.J.Immunol.,21:2963−2970(1991)
【非特許文献10】Pamerら、Nature 353:852−955(1991)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、HLA−A2.1分子に対する結合モチーフのような、対立遺伝子特異的結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物を提供する。適切なMHC対立遺伝子に結合する、この免疫原性ペプチドは、好ましくは、9〜10残基長であり、そして2位および9位のような特定の位置で保存された残基を含む。さらに、これらのペプチドは、9アミノ酸長のペプチドの場合に1位、3位、6位および/または7位、および10アミノ酸長のペプチドの場合に1位、3位、4位、5位、7位、8位および/または9位のような他の位置で、本明細書中で定義されるようなネガティブな結合残基を含まない。本発明は、HLA A2.1に効率的に結合するペプチドの選択を可能にするモチーフ内の位置を定義する。
【0010】
本発明のモチーフは、9アミノ酸のペプチドを含み、これらは、L、M、I、V、A、TおよびQからなる群より選択される、N末端から2番目の位置の第1の保存された残基、ならびにV、L、I、A、MおよびTからなる群より選択される、C末端の位置で保存された第2の保存された残基を有する。好ましい実施態様において、このペプチドは、V、A,TおよびQからなる群より選択される、N末端から2番目の位置の第1の保存された残基;ならびにL、M、I、V、AおよびTからなる群より選択される、C末端の位置で保存された第2の保存された残基を有する。ペプチドが10残基有する場合、このペプチドは、L、M、I、V、A,TおよびQからなる群より選択される、N末端から2番目の位置の第1の保存された残基;ならびにV、I、L、A、MおよびTからなる群より選択される、C末端の位置で保存された第2の保存された残基を有し;ここで、この第1および第2の残基は、7残基離れている。
【0011】
本発明はまた、さらなるMHCクラスI分子に対する結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物を提供する。この免疫原性ペプチドは、代表的に約8〜約11残基の間であり、そして適切なMHC対立遺伝子にコードされる結合タンパク質に関与する保存された残基を有する。多数の対立遺伝子特異的モチーフが同定されている。
【0012】
例えば、HLA−A3.2に対するモチーフは、N末端からC末端にかけて、位置2でL、M、I、V、S、A、T、F、C、G、またはDの第1の保存された残基、およびC末端でK、R、Y、H、FまたはAの第2の保存された残基を含む。第1および第2の保存された残基は、好ましくは、6〜7残基離れている。
【0013】
HLA−A1に対するモチーフは、N末端からC末端にかけて、N末端に対する位置2で、T、SまたはMの第1の保存された残基、およびC末端でYの第2の保存された残基を含む。あるいは、このペプチドは、N末端に対する3位で、D、E、A、SまたはTの第1の保存された残基およびC末端でYの保存された残基を有し得る。
【0014】
HLA−A11に対するモチーフは、N末端からC末端にかけて、2位にT、V、M、L、I、S、A、G、N、C、DまたはFの第1の保存された残基、およびC末端でK、R、YまたはHの第2の保存された残基を含む。第1および第2の保存された残基は、好ましくは、6または7残基離れている。
【0015】
HLA−A24.1に対するモチーフは、N末端からC末端にかけて、位置2でY、F、WまたはMの第1の保存された残基、およびF、I、WまたはLのC末端の保存された残基を含む。第1および第2の保存された残基は、好ましくは、6〜7残基離れている。
【0016】
多くの免疫原性標的タンパク質上のエピトープは、本発明のペプチドを使用して同定され得る。適切な抗原の例としては、前立腺癌特異的抗原、B型肝炎コア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)、カポージ肉種ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ラッサウイルス、ヒト型結核菌(mycobacterium tuberculosis)(MT)、p53、CEA、トリパノソーマ表面抗原(TSA)およびHer2/neuが挙げられる。従って、このペプチドは、インビボ治療剤およびエキソビボ治療剤の両方ならびに診断適用のための薬学的組成物に有用である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 組成物であって、HLA対立遺伝子特異的結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含有し、該免疫原性ペプチドが、表5および表10に列挙したペプチドからなる群より選択される、組成物。
(項目2) 特異的MHCクラスI対立遺伝子を発現する患者において所定の抗原に対する細胞傷害性T細胞応答を誘導する方法であって、該方法が、該患者由来の細胞傷害性T細胞を、表5および表10に列挙したペプチドからなる群より選択される免疫原性ペプチドを含有する組成物と接触させる工程を包含する、方法。
(項目3) 表5および表10に列挙したペプチドからなる群より選択される免疫原性ペプチドを含有する、組成物。
(項目4) 患者において所定の抗原に対する細胞傷害性T細胞応答を誘導する方法であって、該方法が、該患者由来の細胞傷害性T細胞を、表5および表10に列挙したペプチドからなる群より選択される免疫原性ペプチドを含有する組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(定義)
用語「ペプチド」は、本明細書中で「オリゴペプチド」と交換可能に用いられ
、代表的に、隣接するアミノ酸のα−アミノ基およびカルボニル基との間のペプ
チド結合によって互いに結合する、一連の残基(代表的に、L−アミノ酸)とい
う。本発明のオリゴペプチドは、約15残基長未満であり、そして通常、約8〜
約11の残基からなり、好ましくは、9または10残基からなる。
【0018】
「免疫原性ペプチド」は、このペプチドがMHC分子に結合し、そしてCTL
応答を誘導するような、対立遺伝子特異的モチーフを含むペプチドである。本発
明の免疫原性ペプチドは、適切なHLA−A2.1分子に結合し得、そしてこの
免疫原性ペプチドが由来する抗原に対して細胞傷害性T細胞応答を誘導し得る。
【0019】
免疫原性ペプチドは、本発明のアルゴリズムを使用して簡便に同定される。こ
のアルゴリズムは、免疫原性ペプチドの選択を可能にするスコアを生じる数学的
手順である。代表的に、「結合閾値」を有するアルゴリズムスコアを使用して、
特定の親和性で結合する高い確率を有し、そしてそれは免疫原性であろうペプチ
ドの選択を可能にする。このアルゴリズムは、ペプチドの特定の位置の特定のア
ミノ酸のMHC結合に対する効果またはペプチド含有モチーフ中の特定の置換の
結合に対する効果に基づく。
【0020】
「保存された」残基は、ペプチドの特定の位置で、ランダムな分布によって期
待されるよりも有意により高頻度で存在するアミノ酸である。代表的に、保存さ
れた残基は、MHC構造が免疫原性ペプチドとの接触点を提供し得る残基である
。少なくとも1〜3個またはそれより多い(好ましくは2個)、定義された長さ
内の保存された残基は、免疫原性ペプチドについてのモチーフを規定する。これ
らの残基は、代表的に、ペプチドが結合する溝と緊密に接触し、ここで、これら
の側鎖は、この溝自体の特定のポケットに埋まっている。代表的に、免疫原性ペ
プチドは、3つまでの保存された残基、より通常は、2つの保存された残基を含
む。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「ネガティブな結合残基」は、特定の位置(例
えば、9マーの位置1、3、および/または7)に存在する場合、結合しないか
、結合の乏しいペプチドであり、次いで免疫原性にならない(すなわち、CTL
応答を誘導しない)ペプチドを生じる。
【0022】
用語「モチーフ」とは、定義された長さ(通常約8〜約11アミノ酸)のペプ
チドにおける残基のパターンをいい、これは特定のMHC対立遺伝子によって認
識される。このペプチドモチーフは、通常、各ヒトMHC対立遺伝子で異なり、
そして高度に保存された残基およびネガティブな残基のパターンにおいて異なる

【0023】
対立遺伝子についての結合モチーフは、正確さの程度の増加を伴い定義され得
る。1つの場合、全ての保存残基は、ペプチドの正確な位置に存在し、そして位
置1、3および/または7でネガティブな残基は存在しない。
【0024】
句「単離された」または「生物学的に純粋」とは、そのネイティブな形態に見
出されるようにそれに通常付随する成分を実質的または本質的に含まない物質を
いう。従って、本発明のペプチドは、そのインサイチュの環境正常に会合する物
質(例えば、抗原提示細胞上のMHC I分子)を含まない。タンパク質が均質
にまたは優位なバンドに単離されている場合でさえ、天然タンパク質の5〜10
%の範囲で所望のタンパク質と共に精製された微量の混入物が存在する。本発明
の単離されたポリペプチドは、外来性の同時精製されたようなタンパク質を含ま
ない。
【0025】
用語「残基」とは、アミド結合またはアミド結合模倣物によって、オリゴペプ
チド中に組み込まれるアミノ酸またはアミノ酸模倣物をいう。
【0026】
(好ましい実施態様の説明)
本発明は、ヒトクラスI MHC(時折、HLAと称される)対立遺伝子サブ
タイプについての対立遺伝子特異的ペプチドモチーフの決定に関する。次いで、
これらのモチーフは、潜在的な抗原または自己抗原標的のアミノ酸配列が公知で
ある、任意の所望の抗原(特に、ヒトウイルス疾患、癌または自己免疫疾患に関
連する抗原)由来のT細胞エピトープを規定するために使用される。
【0027】
多くの潜在的な標的タンパク質上のエピトープは、この様式で同定され得る。
適切な抗原の例としては、前立腺癌特異的抗原(PSA)、B型肝炎コア抗原お
よび表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン−バーウイ
ルス抗原、メラノーマ抗原(例えば、MAGH−1)、ヒト免疫不全ウイルス(
HIV)抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ラッサウイルス、ヒト
型結核菌(MT)、p53、CEA、トリパノソーマ表面抗原(TSA)および
Her2/neuが挙げられる。
【0028】
これらの抗原由来のエピトープを含むペプチドを合成し、次いで、例えば、免
疫蛍光染色およびフロー微量蛍光測定、ペプチド依存性クラスIアセンブリアッ
セイ、およびペプチド競合によるCTL認識の阻害による、例えば、精製クラス
I分子および放射性ヨウ化ペプチド、ならびに/または空のクラスI分子を発現
する細胞を使用するアッセイにおいて、適切なMHC分子へ結合するそれらの能
力を試験する。クラスI分子に結合するこれらのペプチドは、感染または免疫さ
れた個体に由来するCTLに対する標的として機能するそれらの能力について、
ならびに潜在的な治療剤として、ウイルス感染した標的細胞または腫瘍細胞と反
応し得るCTL集団を生じさせ得る、初期のインビトロまたはインビボのCTL
応答を誘導するそれらの能力について、さらに評価される。
【0029】
MHCクラスI抗原は、HLA−A、HLA−B、およびHLA−C遺伝子座
によりコードされる。HLA−A抗原およびHLA−B抗原は、適切な等密度で
細胞表面に発現されるが、HLA−Cの発現は、有意により低い(おそらく、1
0倍程度低い)。これらの遺伝子座の各々は、多くの対立遺伝子を有する。本発
明のペプチド結合モチーフは、各々の対立遺伝子サブタイプに比較的特異的であ
る。
【0030】
ペプチドベースのワクチンについて、本発明のペプチドは、好ましくは、ヒト
集団において広範な分布を有するMHC I分子によって認識されるモチーフを
含む。MHC対立遺伝子は、異なる民族群および人種内で異なる頻度で存在する
ために、標的MHC対立遺伝子の選択は、その標的集団に依存する。表1は、異
なる人種間のHLA−A遺伝子座の種々の対立遺伝子産物の頻度を示す。例えば
、大半のコーカソイド集団は、4つのHLA−A対立遺伝子サブタイプ(特に、
HLA−A2.1、A1、A3.2およびA24.1)に結合するペプチドによ
ってカバーされる。同様に、大半のアジア集団は、第5の対立遺伝子HLA−A
11.2へのペプチド結合を加え、包含される。
【0031】
【表1】


DuPont,Immunobiology of HLA,第1巻、His
tocompatibility Testing 1987、Springe
r−Verlag,New York 1989より編集された表
*N−ネグロイド;A=アジア人;C=コーカソイド。括弧内の数は、本分析
に含まれる個体の数を表す。
【0032】
ペプチド化合物を記載するために使用される命名法は、アミノ基が各アミノ酸
残基の左(N末端)に、そしてカルボキシル基が各アミノ酸残基の右(C末端)
に表される、従来の慣行に従う。本発明の選択された特定の実施態様を表す式に
おいて、アミノ末端基およびカルボキシル末端基は、具体的に示されないが、他
で特定されない限り、生理学的pH値で想定される形態にある。アミノ酸の構造
式において、各残基は、標準的な3文字または1文字表記によって一般的に表さ
れる。アミノ酸残基のL型は、大文字の1文字表記または3文字記号の最初の文
字の大文字表記によって表され、そしてD形態を有するこれらのアミノ酸に対す
るD形態は、小文字の1文字表記または小文字の3文字表記によって表される。
グリシンは、不斉炭素原子を有さず、単位「Gly」またはGと称する。
【0033】
本発明のペプチドを同定するために使用される手順は、一般に、Falkら、
Nature 351:290(1991)(本明細書中で参考として援用され
る)に記載の方法に従う。要するに、この方法は、代表的に、免疫沈降またはア
フィニティークロマトグラフィーによる、適切な細胞または細胞株からのMHC
クラスI分子のラージスケールでの単離を含む。当業者に等しく周知の、所望の
MHC分子を単離するための他の方法の例としては、イオン交換クロマトグラフ
ィー、レクチンクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体
(ligand)クロマトグラフィー、および上記の技術の全ての組み合わせを
含む。
【0034】
代表的な場合、免疫沈降を使用して、所望の対立遺伝子を単離する。多くのプ
ロトコルが、使用する抗体の特異性に依存して使用され得る。例えば、対立遺伝
子特異的mAb試薬は、HLA−A、HLA−B1、およびHLA−C分子のア
フィニティー精製のために使用され得る。HLA−A分子の単離のためのいくつ
かのmAb試薬が、利用可能である(表2を参照のこと)。従って、標的された
HLA−A対立遺伝子の各々について、HLA−A分子の直接的な単離のために
使用され得る試薬が利用可能である。標準的な技術を使用してこれらのmAbで
調製されるアフィニティーカラムは、それぞれのHLA−A対立遺伝子産物を精
製するために首尾よく使用される。
【0035】
対立遺伝子特異的mAbに加え、広範な反応性の抗HLA−A,B,C mA
b(例えば、W6/32およびB9.12.1)、および1つの抗HLA−B,
C mAbである、B1.23.2は、以前の適用において記載された代替的な
アフィニティー精製プロトコルにおいて使用され得る。
【0036】
【表2】


単離されたMHC分子のペプチド結合溝に結合したペプチドは、代表的には、
酸処理を用いて溶出される。ペプチドはまた、種々の標準的な変性手段(例えば
、熱、pH、界面活性剤、塩、カオトロピック剤、またはそれらの組合せ)によ
ってクラスI分子から解離され得る。
【0037】
ペプチド画分は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってMH
C分子からさらに分離され、そして配列決定される。ペプチドは、当業者に周知
の種々の他の標準的な手段(濾過、限外濾過、電気泳動、サイズクロマトグラフ
ィー、特異的抗体を用いる沈降、イオン交換クロマトグラフィー、等電点電気泳
動などを含む)によって分離され得る。
【0038】
単離されたペプチドの配列決定は、エドマン分解(Hunkapillerら
,Methods Enzymol.91,399(1983))のような標準
的な技術に従って実施され得る。配列決定のために適切な他の方法は、以前に記
載された通りの個々のペプチドの質量分析配列決定(本明細書中に参考として援
用される、Huntら,Science 225:1261(1992))を含
む。種々のクラスI分子由来の大量の不均質なペプチド(例えば、プールされた
HPLC画分)のアミノ酸配列決定は、代表的には、各クラスI対立遺伝子につ
いて特徴的な配列モチーフを示す。
【0039】
種々のクラスI対立遺伝子について特異的なモチーフの定義は、アミノ酸配列
が公知である抗原性タンパク質由来の可能性のあるペプチドエピトープの同定を
可能にする。代表的には、可能性のあるペプチドエピトープの同定は、モチーフ
の存在について所望の抗原のアミノ酸配列を走査するためにコンピューターを用
いて最初に実施される。次いで、エピトープ配列が合成される。MHCクラス分
子への結合能が、種々の異なる方法で測定される。1つの手段は、上記の関連出
願に記載される通りのクラスI分子結合アッセイである。文献に記載される他の
代替手段としては、抗原提示の阻害(Setteら,J.Immunol.14
1:3893(1991))、インビトロアセンブリアッセイ(Townsen
dら,Cell 62:285(1990))、および変異させた細胞(ell
s)(例えば、RMA−S)を用いる、FACSに基づくアッセイ(Melie
fら,Eur.J.Immunol.21:2963(1991))が挙げられ
る。
【0040】
次いで、MHCクラスI結合アッセイにおいてポジティブであると試験される
ペプチドが、これらのペプチドの、インビトロで特異的CTL応答を誘導する能
力についてアッセイされる。例えば、ペプチドとともにインキュベートされた抗
原提示細胞は、応答細胞集団においてCTL応答を誘導する能力についてアッセ
イされ得る。抗原提示細胞は、末梢血単核細胞または樹状細胞のような正常細胞
であり得る(Inabaら,J.Exp.Med.166:182(1987)
;Boog,Eur.J Immunol.18:219(1988))。
【0041】
あるいは、クラスI分子を、内部でプロセシングされたペプチドとともに負荷
する能力を欠損する変異体哺乳動物細胞株(例えば、マウス細胞株RMA−S(
Kaerreら,Nature,319:675(1986);Ljunggr
enら,Eur.J.Immunol.21:2963−2970(1991)
)、およびヒト体細胞T細胞ハイブリッドT−2(Cerundoloら,Na
ture 345:449−452(1990))であって、適切なヒトクラス
I遺伝子でトランスフェクトされた変異体哺乳動物細胞株は、ペプチドをこれら
の細胞に添加する場合、このペプチドがインビトロで一次CTL応答を誘導する
能力について試験するために便利に用いられる。用いられ得る他の真核生物細胞
株としては、蚊の幼生(ATCC細胞株CCL 125、126、1660、1
591、6585、6586)、カイコ(ATTC CRL 8851)、ヨト
ウムシ(ATCC CRL 1711)、蛾(ATCC CCL 80)、およ
びDrosophila細胞株(例えば、シュナイダー細胞株(Schneid
er,J.Embryol.Exp.Morphol.27:353−365(
1927)を参照のこと))のような種々の昆虫細胞株が挙げられる。
【0042】
末梢血リンパ球は、正常なドナーまたは患者の簡便な静脈穿刺または白血球搬
出の後に便利に単離され、そしてCTL前駆体の応答細胞供給源として用いられ
る。1つの実施態様では、適切な抗原提示細胞は、10μM〜100μMのペプ
チドとともに無血清培地中で4時間、適切な培養条件下でインキュベートされる
。次いで、ペプチドを負荷した抗原提示細胞は、応答細胞集団とともにインビト
ロで7日間〜10日間、最適化された培養条件下でインキュベートされる。ポジ
ティブなCTL活性化は、培養物を、特異的なペプチドをパルスした標的、なら
びにこのペプチド配列が誘導された内因的にプロセシングされた形態の関連のウ
イルスまたは腫瘍抗原を発現する標的細胞の両方の、放射性標識された標的細胞
を殺傷するCTLの存在についてアッセイすることにより決定され得る。
【0043】
CTLの特異性およびMHC拘束は、適切または不適切なヒトMHCクラスI
を発現する種々のペプチド標的細胞に対して試験することにより決定される。M
HC結合アッセイにおいてポジティブと試験され、そして特異的CTL応答を生
じるペプチドは、本明細書中で免疫原性ペプチドと呼ばれる。
【0044】
この免疫原性ペプチドは、合成によって、または組換えDNA技術によって、
または天然の供給源(例えば、ウイルス全体または腫瘍全体)から調製され得る
。これらのペプチドは、好ましくは、他の天然に存在する宿主細胞タンパク質お
よびそれらのフラグメントを実質的に含まないが、いくつかの実施態様には、こ
れらのペプチドは、合成によって、天然のフラグメントまたは粒子に対して結合
体化され得る。
【0045】
これらのポリペプチドまたはペプチドは、種々の長さであり得、それらの中性
(非荷電)形態または塩である形態のいずれかであり得、そしてグリコシル化、
側鎖の酸化、もしくはリン酸化のような改変を含まないか、またはその改変が本
明細書中に記載される通りのポリペプチドの生物学的活性を破壊しないことを条
件として、これらの改変を含むかのいずれかであり得る。
【0046】
望ましくは、これらのペプチドは、大きなペプチドの生物学的活性の実質的に
全てを依然として維持しながらも、できる限り小さい。可能な場合、本発明のペ
プチドを、細胞表面上のMHCクラスI分子に結合している内因的にプロセシン
グされたウイルスペプチドまたは腫瘍細胞ペプチドとサイズが釣り合っている、
9または10個のアミノ酸残基の長さに最適化することが所望され得る。
【0047】
所望の活性を有するペプチドは、所望のMHC分子に結合し、そして適切なT
細胞を活性化する、未改変のペプチドの生物学的活性の実質的に全てを増加させ
ながらも、または少なくとも維持しながらも、特定の所望の特性(例えば、改善
された薬理学的特徴)を提供するように必要に応じて改変され得る。例えば、こ
れらのペプチドは、種々の変更(例えば、保存的または非保存的のいずれかの置
換)に供され得、ここで、このような変更は、それらの用途における特定の利点
(例えば、改善されたMHC結合)を提供し得る。保存的置換によって、アミノ
酸残基を、生物学的および/または化学的に類似である別のアミノ酸残基で(例
えば、ある疎水性残基を別のもので、またはある極性残基を別のもので)置換す
ることが意味される。このような置換としては、Gly、Ala;Val、Il
e、Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Ly
s、Arg;およびPhe、Tyrのような組合せが挙げられる。単一アミノ酸
置換の効果はまた、Dアミノ酸を用いてプローブされ得る。このような改変は、
本明細書中に参考として援用される、例えば、Merrifield,Scie
nce 232:341−347(1986),BaranyおよびMerri
field,The Peptides,GrossおよびMeienhofe
r編(N.Y.,Academic Press),1−284頁(1979)
;ならびにStewartおよびYoung,Solid Phase Pep
tide Synthesis,(Rockford,Ill.,Pierce
),第2版(1984)に記載される通りの周知のペプチド合成手順を用いて行
われ得る。
【0048】
これらのペプチドはまた、この化合物のアミノ酸配列を、例えば、アミノ酸の
付加または欠失によって伸張または減少させることにより改変され得る。本発明
のペプチドまたはアナログは、特定の残基の順番または組成を変更することによ
り改変され得、生物学的活性に必須の特定のアミノ酸残基(例えば、重要な接触
部位のアミノ酸残基または保存された残基)が、一般には生物学的活性に有害な
効果を与えずに変更されないかもしれないことは容易に理解される。重要でない
アミノ酸は、タンパク質中で天然に存在するアミノ酸(例えば、L−α−アミノ
酸)またはそれらのD異性体に制限される必要はなく、非天然のアミノ酸(例え
ば、β−γ−δ−アミノ酸)ならびにL−α−アミノ酸の多くの誘導体をも含み
得る。
【0049】
代表的には、単一アミノ酸置換を有する一連のペプチドは、結合に対する静電
荷、疎水性などの効果を決定するために用いられる。例えば、一連の正に荷電し
たアミノ酸(例えば、LysまたはArg)または負に荷電したアミノ酸(例え
ば、Glu)の置換は、種々のMHC分子およびT細胞レセプターに向かって異
なる感受性パターンを示すペプチドの長さに沿って行われる。さらに、小さな、
比較的中性の部分(例えば、Ala、Gly、Pro、または類似の残基)を用
いる複数の置換が用いられ得る。これらの置換物は、ホモオリゴマーまたはヘテ
ロオリゴマーであり得る。置換または付加される残基の数およびタイプは、必須
の接触点の間で必要とされる間隔、および求められる特定の機能的特性(例えば
、疎水性対親水性)に依存する。MHC分子またはT細胞レセプターについての
、親ペプチドの親和性と比較して増加した結合親和性はまた、このような置換に
よって達成され得る。とにかく、このような置換は、例えば、結合を破壊し得る
立体妨害および電荷妨害を回避するように選択されたアミノ酸残基または他の分
子フラグメントを用いるべきである。
【0050】
アミノ酸置換は、代表的に、単一残基の置換である。置換、欠失、挿入、また
はそれらの任意の組合せは、最終的なペプチドに到達するように組み合わされ得
る。置換改変体は、ペプチドの少なくとも1つの残基が除去され、そして異なる
残基がその場所に挿入されている改変体である。このような置換は、一般に、ペ
プチドの特徴を精巧に調整することが所望される場合には、以下の表3に従って
行われる。
【0051】
【表3】


機能(例えば、MHC分子またはT細胞レセプターについての親和性)におけ
る実質的変更は、表3における置換よりも保存性が低い置換を選択することによ
り、すなわち、(a)置換の領域におけるペプチド骨格の構造(例えば、シート
またはヘリックス構造など)、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、ま
たは(c)側鎖のかさを維持することに対するそれらの効果においてより有意に
異なる残基を選択することにより行われる。ペプチド特性に最大の変化を生じる
と一般に期待される置換は、(a)親水性残基(例えば、セリル)が疎水性残基
(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニ
ル)を置換しているもの(または疎水性残基で置換されているもの);(b)陽
性の側鎖を有する残基(例えば、リジル、アルギニル、またはヒスチジル)が陰
性残基(例えば、グルタミルまたはアスパルチル)を置換しているもの(または
陰性残基によって置換されているもの);あるいは(c)嵩高い側鎖を有する残
基(例えば、フェニルアラニン)が側鎖を有さない残基(例えば、グリシン)を
置換しているもの(または側鎖を有さない残基によって置換されているもの)で
ある。
【0052】
これらのペプチドはまた、免疫原性ペプチドにおける2以上の残基の同配体を
有し得る。本明細書中に定義される場合の同配体は、第1の配列の立体的コンホ
メーションが、第2の配列に特異的な結合部位に適合するので、第2の配列を置
換し得る2以上の残基の配列である。この用語は、当業者に周知のペプチド骨格
改変を特異的に含む。このような改変としては、アミド窒素、α炭素、アミドカ
ルボニルの改変、アミド結合の完全な置換、伸張、欠失、または骨格の架橋が挙
げられる。一般的に、Spatola,Chemistry and Bioc
hemistry of Amino Acids,Peptides and
Proteins,第VII巻(Weinstein編,1983)を参照の
こと。
【0053】
種々のアミノ酸模倣物または非天然アミノ酸でのペプチドの改変は、インビボ
でのペプチドの安定性を増加させる際に特に有用である。安定性は、多数の方法
においてアッセイされ得る。例えば、ペプチダーゼおよび種々の生物学的培地(
例えば、ヒト血漿および血清)は、安定性を試験するために用いられている。例
えば、Verhoefら,Eur.J.Drug Metab Pharmac
okin.11:291−302(1986)を参照のこと。本発明のペプチド
の半減期は、25%ヒト血清(v/v)アッセイを用いて便利に決定される。こ
のプロトコルは、一般に以下の通りである。プールされたヒト血清(AB型、熱
不活化していない)は、使用前に遠心分離によって脱脂(delipidate
)される。次いで、この血清は、RPMI組織培養培地を用いて25%になるよ
うに希釈され、そしてペプチドの安定性を試験するために用いられる。所定の時
間間隔で、少量の反応溶液を取り出し、そして6%トリクロロ酢酸水溶液または
エタノールのいずれかに添加する。濁った反応サンプルを15分間冷却(4℃)
し、次いで回転させて沈澱した血清タンパク質をペレット化する。次いで、ペプ
チドの存在を、安定性特異的クロマトグラフィー条件を用いる逆相HPLCによ
って決定する。
【0054】
規定されたMHC分子、特にMHCクラスI分子を有する多数の細胞が公知で
あり、そして容易に利用可能である。例えば、ヒトEBVで形質転換されたB細
胞株は、クラスIおよびクラスIIのMHC分子の分取単離のために優れた供給
源であることが示されている。充分に特徴付けされた細胞株は、個人的供給源お
よび商業的供給源(例えば、American Type Culture C
ollection(「Catalogue of Cell Lines a
nd Hybridomas」,第6版(1988)Rockville,Ma
ryland,U.S.A.);National Institute of
General Medical Sciences 1990/1991
Catalog of Cell Lines(NIGMS)Human Ge
netic Mutant Cell Repository,Camden,
NJ;およびASHI Repository,Brigham and Wo
men’s Hospital,75 Francis Street,Bos
ton,MA 02115)から入手可能である。表4は、HLA−A対立遺伝
子についての供給源として用いるために適切ないくつかのB細胞株を列挙する。
これらの細胞株の全ては、大きなバッチで増殖させ得、それゆえ、MHC分子の
大規模産生に有用である。当業者は、これらが単に例示的な細胞株であること、
および他の多くの細胞供給源が用いられ得ることを認識する。HLA−Bについ
てホモ接合性の類似のEBV B細胞株およびHLA−Cについてホモ接合性の
類似のEBV B細胞株は、それぞれ、HLA−B対立遺伝子およびHLA−C
対立遺伝子についての供給源として役立ち得る。
【0055】
【表4】


CTL刺激活性を有する本発明のペプチドまたはそれらのアナログは、改善さ
れた血清半減期以外の所望の特性を提供するように改変され得る。例えば、この
ペプチドがCTL活性を誘導する能力は、Tヘルパー細胞応答を誘導し得る少な
くとも1つのエピトープを含む配列を連結することにより増強され得る。特に好
ましい免疫原性ペプチド/Tヘルパー結合体は、スペーサー分子によって連結さ
れる。このスペーサーは、代表的に、比較的小さな、中性の分子(例えば、生理
学的条件化で実質的に非荷電のアミノ酸またはアミノ酸模倣物)から構成される
。スペーサーは、代表的には、例えば、Ala、Gly、または非極性アミノ酸
もしくは中性極性アミノ酸の他の中性のスペーサーから選択される。この必要に
応じて存在するスペーサーは同じ残基から構成される必要性はなく、従って、ヘ
テロオリゴマーまたはホモオリゴマーであり得ることが理解される。存在する場
合、このスペーサーは、通常、少なくとも1または2の残基であり、より通常は
、3〜6の残基である。あるいは、このCTLペプチドは、Tヘルパーペプチド
にスペーサーなしで連結され得る。
【0056】
この免疫原性ペプチドは、Tヘルパーペプチドに直接的またはスペーサーを介
してのいずれかで、CTLペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれ
かで連結され得る。免疫原性ペプチドまたはTヘルパーペプチドのいずれかのア
ミノ末端は、アシル化され得る。例示的なTヘルパーペプチドとしては、破傷風
トキソイド830〜843、インフルエンザ307〜319、マラリアサーカム
スポロゾイト(circumsporozoite)382〜398および37
8〜389が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施態様では、本発明の薬学的組成物中に、CTLのプライミング
を補助する少なくとも1つの成分を含むことが所望され得る。脂質は、インビボ
でウイルス抗原に対するCTLのプライミングを補助し得る薬剤であると同定さ
れている。例えば、パルミチン酸残基は、Lys残基残基のαアミノ基およびε
アミノ基に結合され得、次いで、例えば、1以上の連結残基(例えば、Gly、
Gly−Gly−、Ser、Ser−Serなど)を介して免疫原性ペプチドへ
と連結され得る。次いで、この脂質化されたペプチドは、リポソーム中に取り込
まれるか、またはアジュバント(例えば、不完全フロイントアジュバント)中に
乳化されて、ミセル形態で直接注射され得る。好ましい実施態様では、特に有効
な免疫原は、Lysのαアミノ基およびεアミノ基に結合したパルミチン酸を含
み、このLysは、結合(例えば、Ser−Ser)を介して免疫原性ペプチド
のアミノ末端に結合している。
【0058】
CTL応答の脂質プライミングの別の例として、E.coliリポタンパク質
(例えば、トリパルミトイル−S−グリセリルシルテイニルセリル(glyce
rylcysteinlyseryl)−セリン(P3CSS))は、適切なペ
プチドに共有結合された場合、ウイルス特異的CTLをプライミングするために
用いられ得る。本明細書中に参考として援用される、Deresら,Natur
e 342:561−564(1989)を参照のこと。本発明のペプチドは、
例えば、P3CSSに結合され得、そしてこのリポペプチドは個体に投与されて
、標的抗原に対するCTL応答を特異的にプライミングし得る。さらに、中和抗
体の誘導はまた、適切なエピトープを提示するペプチドへと結合体化されたP3
CSSでプライミングされ得るので、この2つの組成物が合わされて、感染に対
する体液性および細胞媒介性の両方の応答をより効率的に惹起し得る。
【0059】
さらに、さらなるアミノ酸が、ペプチドを1つのものを別のものへと連結する
ことの容易さ、キャリア支持体もしくはより大きなペプチドへと結合すること、
ペプチドもしくはオリゴペプチドの物理的もしくは化学的な特性を改変すること
などを提供するために、ペプチドの末端に付加され得る。チロシン、システイン
、リジン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸などのようなアミノ酸が、ペプ
チドまたはオリゴペプチドのC末端またはN末端に導入され得る。いくつかの場
合、C末端での改変は、そのペプチドの結合の特徴を変更し得る。さらに、これ
らのペプチドまたはオリゴペプチド配列は、末端NH2アセチル化(例えば、ア
ルカノイル(C1〜C20)またはチオグリコリルアセチル化)、末端カルボキ
シルアミド化(例えば、アンモニア、メチルアミン)などによって改変されてい
ることによって天然の配列とは異なり得る。いくつかの例では、これらの改変は
、支持体または他の分子へと連結するための部位を提供し得る。
【0060】
本発明のペプチドは、広範な種々の方法において調製され得る。それらが相対
的に短いサイズであるので、これらのペプチドは、従来の技術に従って溶液中で
または固体支持体上で合成され得る。種々の自動合成機が、市販されており、そ
して公知のプロトコルに従って用いられ得る。例えば、StewartおよびY
oung,Solid Phase Peptide Synthesis,第
2版,Pierce Chemical Co.(1984)を参照のこと。
【0061】
あるいは、組換えDNA技術が用いられ得、ここで、目的の免疫原性ペプチド
をコードするヌクレオチド配列が、発現ベクター中に挿入され、適切な宿主細胞
中に形質転換またはトランスフェクトされ、そして発現に適切な条件下で培養さ
れる。これらの手順は一般に、本明細書中で参考として援用される、Sambr
ookら,Molecular Cloning,A Laboratory
Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold
Spring Harbor,New York(1982)に一般的に記載
される通りに当該分野で公知である。従って、本発明の1以上のペプチド配列を
含む融合タンパク質は、適切なT細胞エピトープを提示するために用いられ得る

【0062】
本明細書中で意図される長さのペプチドについてのコード配列は、化学的技術
(例えば、Matteucciら,J.Am.Chem.Soc.103:31
85(1981)のホスホトリエステル法)によって合成され得るので、改変は
、適切な塩基でネイティブなペプチド配列をコードする塩基を置換することによ
って簡便に行われ得る。次いで、このコード配列には、適切なリンカーが提供さ
れ得、そして当該分野で市販される発現ベクター中に連結され得、そしてこれら
のベクターを用いて適切な宿主を形質転換して所望の融合タンパク質を産生し得
る。多数のこのようなベクターおよび適切な宿主系が、現在利用可能である。こ
の融合タンパク質の発現のために、このコード配列には、所望の細胞宿主におけ
る発現のための発現ベクターを提供するための、作動可能に連結された開始コド
ンおよび終止コドン、プロモーター領域およびターミネーター領域、ならびに通
常は複製系が提供される。例えば、細菌宿主と適合性のプロモーター配列が、所
望のコード配列の挿入のために便利な制限部位を含むプラスミド中に提供される
。得られる発現ベクターは、適切な細菌宿主中に形質転換される。もちろん、適
切なベクターおよび制御配列を用いる、酵母または哺乳動物細胞宿主もまた用い
られ得る。
【0063】
本発明のペプチドならびにそれらの薬学的組成物およびワクチン組成物は、哺
乳動物(特にヒト)へ投与して、ウイルス感染および癌を処置および/または予
防するために有用である。本発明の免疫原性ペプチドを用いて処置または予防さ
れ得る疾患の例としては、前立腺癌、B型肝炎、C型肝炎、HPV感染、AID
S、腎臓癌、頚部癌、リンパ腫、CMV、マラリア、および尖圭コンジローム(
sondlyloma acuminatum)が挙げられる。
【0064】
本明細書中に記載されるような、免疫学的に有効な量の1以上のペプチドを含
有するワクチンは、本発明のさらなる実施態様である。適切に免疫原性のエピト
ープが一旦同定されたら、これらは、本明細書中で「ワクチン」組成物と呼ばれ
る種々の手段によって選別および送達され得る。このようなワクチン組成物とし
ては、例えば、以下が挙げられ得る:リポペプチド(Vitiello,A.ら
,J.Clin.Invest.95:341,1995)、ポリ(DL−ラク
チド−コ−グリコリド)(「PLG」)ミクロスフェア中に封入されたペプチド
組成物(例えば、Eldridgeら,Molec.Immunol.28:2
87−294(1991);Alonsoら,Vaccine 12:299−
306,1994;Jonesら,Vaccine 13:675−681(1
995)を参照のこと)、免疫刺激複合体(ISCOMS)中に含まれるペプチ
ド組成物(例えば、Takahashiら,Nature 344:873−8
75(1990);Huら,Clin Exp Immunol.113:23
5−243(1998)を参照のこと)、複数抗原ペプチド系(MAP)(例え
ば、Tam,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:54
09−5413(1988);Tam,J.Immunol.Methods
196:17−32(1996)を参照のこと)、ウイルス送達ベクター(Pe
rkusら,Concepts in vaccine developmen
t,Kaufmann編,379頁(1996);Chakrabartiら,
Nature 320:535(1986);Huら,Nature 320:
537(1986);Kienyら,AIDS Bio/Technology
4:790(1986);Topら,J.Infect.Dis.124:1
48(1971);Chandaら,Virology 175:535(19
90))、ウイルス起源または合成起源の粒子(Koflerら,J.Immu
nol.Methods.192:25(1996);Eldridgeら,S
em.Hematol.30:16(1993);Faloら,Nature
Med.7:649(1995))、アジュバント(Warrenら、Annu
.Rev.Immunol.4:369(1986);Guptaら,Vacc
ine 11:293(1993))、リポソーム(Reddyら,J Imm
unol.148:1585(1992);Rock,Immunol.Tod
ay 17:131(1996))、または裸のもしくは粒子に吸収されたcD
NA(Ulmerら,Science 259:1745(1993);Rob
inson i.,Vaccine 11:957(1993);Shiver
ら,Concepts in vaccine development,Ka
ufmann編,423頁(1996);CeaseおよびBerzofsky
Annu.Rev.Immunol.12:923(1994)、ならびにE
ldridgeら,Sem.Hematol.30:16(1993))。レセ
プター媒介標的化としても公知の、毒素標的化送達技術(例えば、Avant
Immunotherapeutics,Inc.(Needham,Mass
achusetts)の毒素標的化送達技術)もまた用いられ得る。
【0065】
さらに、本発明によるワクチンは、1以上の本願ペプチドの組成物を含む。ペ
プチドは、それ自体のキャリアに対して個々に連結され得る;あるいは、ペプチ
ドは、活性ペプチド単位のホモポリマーまたはヘテロポリマーとして存在し得る
。このようなポリマーは、増加した免疫学的反応という利点を有し、そして種々
のペプチドエピトープを用いてポリマーを作製する場合、免疫応答のために標的
化される、病原体生物の1以上のタンパク質または腫瘍関連ペプチド由来の種々
の抗原性決定基と反応する抗体および/またはCTLを誘導するさらなる能力を
有する。
【0066】
本発明のワクチンと共に用いられ得る有用なキャリアが当該分野で周知であり
、そしてこれらのキャリアとしては、例えば、チログロブリン、アルブミン(例
えば、ヒト血清アルブミン)、破傷風トキソイド、ポリアミノ酸(例えば、ポリ
L−リジン、ポリL−グルタミン酸)、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコア
タンパク質などが挙げられる。ワクチンは、水または生理食塩水(好ましくは、
リン酸緩衝化生理食塩水)のような生理学的に寛容可能な(すなわち、受容可能
な)希釈剤を含み得る。このワクチンはまた、代表的にはアジュバントを含む。
不完全フロイトアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、また
はミョウバンのようなアジュバントは、当該分野で周知の物質の例である。さら
に、本明細書中に開示されるように、CTL応答は、脂質(例えば、トリパルミ
トイル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(tripalmitoy
l−S−glycerylcysteinlyseryl−serine:P3
CSS)に対して本発明のペプチドを結合体化させることによってプライム(p
rime)され得る。
【0067】
本明細書中に非常に詳細に開示されるように、本発明によるペプチド組成物で
の、注射、エアロゾル、経口、経皮、経粘膜、胸膜腔内、髄腔内、または他の適
切な経路を介する免疫化の際に、宿主の免疫系は、所望される抗原に特異的な大
量のCTLを産生することによってワクチンに応答する。その結果として、この
宿主は後の感染に対して少なくとも部分的に免疫となるか、または進行中の慢性
感染の発症に対して少なくとも部分的に耐性となるか、またはこの抗原が腫瘍に
関連する場合、少なくともいくらかの治療的利益を誘導する。
【0068】
いくつかの例では、本発明のクラスIペプチドワクチンと、目的の標的抗原へ
の(特にウイルスエンベロープ抗原への)中和抗体応答を誘導または促進するワ
クチンとを合わせることが所望され得る。このような組成物の好ましい実施態様
は、本発明によるクラスIおよびクラスIIのエピトープを含有する。このよう
な組成物の別の実施態様は、本発明によるクラスIおよび/またはクラスIIの
エピトープを、PADRETM(Epimmune,San Diego,CA)
分子(米国特許第5,736,142号に記載される)とともに含有する。さら
に、これらの任意の実施態様は、核酸媒介様式として投与され得る。
【0069】
薬学的組成物について、本発明の免疫原性ペプチドは、ガンをすでに罹患して
いるか、または目的のウイルスに感染している個体に投与される。感染の潜伏期
または急性期にある個体は、適切に、免疫原性ペプチドを別々に用いて、または
他の処置と組み合わせて処置され得る。治療適用において、組成物は、ウイルス
または腫瘍抗原に対する有効なCTL応答を誘発するため、ならびに症状および
/または合併症を治癒または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で、
患者に投与される。これを達成するために適切な量は、「治療有効用量」として
規定される。この用途のために有効な量は、例えば、ペプチド組成、投与の様式
、処置される疾患の段階および重篤度、患者の体重および一般的な健康状態、な
らびに処方医の判断に依存するが、一般的には、最初の免疫(これは、治療的投
与または予防的投与のためである)については、70kgの患者では約1.0μ
g〜約50,000μgのペプチドの範囲であり、患者の血液中の特異的CTL
活性を測定することにより、患者の応答および状態に依存して、数週間から数ヶ
月にわたる追加免疫レジメに従う、約1.0μg〜約10,000μgのペプチ
ドの追加投薬量が続く。本発明のペプチドおよび組成物が、一般的に、重篤な疾
患状態(すなわち、生命を脅かす状況または生命を脅かす可能性のある状況)で
使用され得ることを心に留めておかなければならない。このような場合において
、外来性物質の最小化およびペプチドの比較的無毒性の性質を考慮して、実質的
に過剰なこれらのペプチド組成物を投与することが可能であり、そしてこのこと
は処置医によって望ましいと感じられ得る。
【0070】
治療用途のために、投与は、ウイルス感染の最初の徴候のとき、または腫瘍の
検出もしくは外科的除去のとき、または急性感染の場合は診断のすぐ後に開始す
べきである。これには、少なくとも症状が実質的に軽減されるまで、およびその
後の期間、追加用量が続く。慢性の感染において、負荷用量、続く追加用量が必
要とされ得る。
【0071】
本発明の組成物での感染個体の処置は、急性感染個体において感染の消散を早
め得る。慢性の感染を発症しやすい(または、その素因を有する)個体について
、この組成物は、急性から慢性への感染の進行を妨げるための方法において特に
有用である。この発症しやすい個体が、感染の前または感染の間に、例えば、本
明細書中で記載されるように同定される場合、この組成物は、これらの個体に対
して標的化され得、より大きな集団への投与の必要性を最小にし得る。
【0072】
ペプチド組成物はまた、慢性の感染の処置のため、および免疫系を刺激してキ
ャリアにおけるウイルス感染細胞を排除するために使用され得る。細胞傷害性T
細応答を効果的に刺激するために充分な量の免疫強化ペプチドを処方物および投
与態様において提供することが重要である。従って、慢性の感染の処置について
、代表的な用量は、1用量あたり70kgの患者について、約1.0μg〜約5
0,000μg、好ましくは、約5μgから10,000μgの範囲である。免
疫用量、その後の例えば、1週間から4週間の確立された間隔をおいての追加免
疫用量が、おそらく、個体を効果的に免疫するために延長された期間にわたって
必要とされ得る。慢性の感染の場合、投与は、少なくとも臨床的な症状または研
究室試験が、ウイルス感染が排除されたかまたは実質的に減少したことを示すま
で、およびその後の期間継続されるべきである。
【0073】
治療的処置のための薬学的組成物は、非経口的、局所的、経口的、または局部
的投与が意図される。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的に(例えば、静脈
内、皮下、皮内、または筋肉内に)投与される。従って、本発明は、受容可能な
キャリア(好ましくは、水性キャリア)中に溶解されたかまたは懸濁された免疫
原性ペプチドの溶液を含む、非経口投与のための組成物を提供する。種々の水性
キャリア(例えば、水、緩衝化した水、0.9%の生理食塩水、0.3%のグリ
シン、ヒアルロン酸など)が使用され得る。これらの組成物は、従来の、周知の
滅菌技術によって滅菌され得るか、または滅菌濾過され得る。得られる水溶液は
、投与の前に滅菌の溶液と合わされる凍結乾燥調製物としての使用のためにパッ
ケージングされ得るかまたは凍結乾燥され得る。この組成物は、生理学的条件に
近似するために必要とされる薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整お
よび緩衝化剤、張性調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリ
ウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレ
ート、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を含み得る。
【0074】
薬学的処方物中の本発明のCTL刺激ペプチドの濃度は、非常に広く変化し得
る。すなわち、約0.1重量%未満、通常は約2重量%から、または少なくとも
約2重量%から、20重量%〜50重量%以上の程度の高さまでであり、そして
選択される特定の投与態様に従って、流体容量、粘度などによって主に選択され
る。
【0075】
本発明のペプチドはまた、特定の細胞組織(例えば、リンパ組織)に対してペ
プチドを標的化するようにリポソームを介して投与され得る。リポソームはまた
、ペプチドの半減期を増大させる際に有用である。リポソームとしては、乳濁物
、発泡体、ミセル、不溶性の単層、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層などが挙げ
られる。これらの調製物では、送達されるべきペプチドは、リポソームの一部と
して、単独で、または例えば、リンパ系細胞の中でも一般的なレセプターに結合
する分子(例えば、CD45抗原に結合するモノクローナル抗体)と組み合わせ
て、または他の治療用もしくは免疫原性組成物とともに取り込まれる。従って、
本発明の所望のペプチドで満たされたリポソームは、リンパ系細胞の部位に対し
て指向され得、ここで、リポソームは次いで、選択された治療用/免疫原性ペプ
チド組成物を送達する。本発明での使用のためのリポソームは、標準的なベシク
ル形成脂質から形成され、これは、一般的に、中性の、および陰性に荷電したリ
ン脂質およびステロール(例えば、コレステロール)を含む。脂質の選択は、一
般的には、例えば、リポソームの大きさ、酸不安定性、および血流中のリポソー
ムの安定性の考慮によって導かれる。本明細書中で参考として援用される、例え
ば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:46
7(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号
、同第4,837,028号、および同第5,019,369号に記載されるよ
うな種々の方法が、リポソームの調製に利用可能である。
【0076】
免疫細胞を標的化するために、リポソーム中に取りこまれるべきリガンドとし
ては、例えば、所望の免疫系の細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体またはその
フラグメントが挙げられ得る。ペプチドを含有するリポソーム懸濁物が、静脈内
、局部的、局所的などで、とりわけ投与様式、送達されるべきペプチド、および
処置されるべき疾患の段階に従って変化する用量で投与され得る。
【0077】
固形の組成物について、従来の無毒性の固形キャリアが使用され得る。この固
形キャリアとしては、例えば、薬学的グレードの、マンニトール、ラクトース、
デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セル
ロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む。経口投与につ
いて、薬学的に受容可能な無毒性の組成物が、任意の通常使用される賦形剤(例
えば、上記に列挙されるキャリア)、および一般的に10〜95%(さらに好ま
しくは、25%〜75%の濃度で)の有効成分(すなわち、本発明の1つ以上の
ペプチド)を取り込むことによって形成される。
【0078】
エアロゾル投与について、免疫原性ペプチドは、好ましくは、界面活性剤およ
びプロペラントとともに、細かく分けられた形態で供給される。ペプチドの代表
的なパーセンテージは、0.01重量%〜20重量%であり、好ましくは、1重
量%〜10重量%である。界面活性剤は、もちろん、無毒性でなければならず、
そして好ましくはプロペラントに可溶性でなければならない。このような薬剤の
代表は、6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸のエステルまたは部分的なエステル
(例えば、脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物を有する、カプロン酸、
オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン
酸、オレスチン酸(olesteric acid)、およびオレイン酸)であ
る。混合されたエステル(例えば、混合されたまたは天然のグリセリド)が使用
され得る。界面活性剤は、この組成物の0.1重量%〜20重量%を構成し得、
好ましくは、0.25重量%〜5重量%を構成する。組成物の残りは、通常、プ
ロペラントである。所望される場合は、キャリアもまた、例えば、鼻腔内送達の
ためにはレシチンを用いるように、含まれ得る。
【0079】
本明細書中に記載されるようなペプチド組成物での、注射、エアロゾル、経口
、経皮、または他の経路を介する免疫によって、宿主の免疫系は、所望される抗
原に特異的な大量のCTLを産生することによってワクチンに応答し、そしてこ
の宿主は後の感染に対して少なくとも部分的に免疫となるか、または慢性の感染
の発症に対して耐性となる。
【0080】
本発明のペプチドを含有するワクチン組成物は、ウイルス感染もしくはガンを
罹患しやすいか、またはそうでなければウイルス感染もしくはガンの危険性を有
する患者に、抗原に対する免疫応答を誘発し、従って患者自体の免疫応答能力を
増強するために投与される。このような量は、「免疫原的に有効な用量」として
規定される。この用途において、正確な量はさらに、患者の健康状態および体重
、投与様式、処方物の性質などに依存するが、一般的には、70kgの患者あた
り約1.0μgから約50,000μgの範囲であり、より一般的には、70k
gの体重あたり約10μgから約10,000μgの範囲である。
【0081】
いくつかの場合、本発明のペプチドワクチンを、目的のウイルス(特に、ウイ
ルスエンベロープ抗原)に対する中和抗体応答を誘導するワクチンと合わせるこ
とが所望され得る。
【0082】
治療または免疫の目的のために、1以上の本発明のペプチドをコードする核酸
はまた、患者に投与され得る。多数の方法が、核酸を患者に送達するために従来
用いられている。例えば、核酸は、「裸のDNA」として直接送達され得る。こ
のアプローチは、例えば、Wolffら、Science 247:1465−
1468(1990)ならびに米国特許第5,580,859号および同第5,
589,466号に記載される。核酸はまた、例えば、米国特許第5,204,
253号に記載されるような、バリスティック(ballistic)送達を使
用して投与され得る。DNAのみから構成される粒子が投与され得る。あるいは
、DNAは、金粒子のような粒子に接着され得る。
【0083】
核酸はまた、カチオン性化合物(例えば、カチオン性脂質)に対して複合体化
されて送達され得る。脂質によって媒介される遺伝子送達方法は、例えば、WO
96/18372;WO 93/24640;ManninoおよびGoul
d−Fogerite,BioTechniques 6(7):682−69
1(1988);Rose 米国特許第5,279,833号;WO 91/0
6309;ならびにFelgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 84:7413−7414(1987)に記載される。
【0084】
本発明のペプチドはまた、弱毒化されたウイルス宿主(例えば、ワクシニアま
たは鶏痘)によって発現され得る。このアプローチには、本発明のペプチドをコ
ードするヌクレオチド配列を発現するベクターとしてのワクシニアウイルスの使
用を含む。急性または慢性に感染した宿主への導入、または未感染の宿主への導
入によって、この組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それ
によって宿主のCTL応答を誘発する。免疫プロトコールにおいて有用なワクシ
ニアベクターおよび方法は、例えば、本明細書中で参考として援用される米国特
許第4,722,848号に記載される。別のベクターは、BCG(Bacil
le Calmette Guerin)である。BCGベクターは、本明細書
中で参考として援用されるStoverら(Nature 351:456−4
60(1991))に記載される。本発明のペプチドの治療的投与または免疫に
有用な広範な種々の他のベクター(例えば、Salmonella typhi
ベクターなど)は、本明細書中の記載から当業者に明らかである。
【0085】
本発明のペプチドをコードする核酸を投与する好ましい手段は、本発明の複数
のエピトープをコードするミニ遺伝子構築物を使用する。ヒト細胞中での発現の
ための選択されたCTLエピトープをコードするDNA配列(ミニ遺伝子)を作
製するために、このエピトープのアミノ酸配列が逆翻訳される。ヒトのコドン使
用表が、各アミノ酸のコドン選択を導くために使用される。これらのエピトープ
をコードするDNA配列は、直接的に付加されて、連続するポリペプチド配列を
作製する。発現および/または免疫原性を最適化するために、さらなるエレメン
トが、ミニ遺伝子の設計に取り込まれ得る。逆翻訳され得、そしてミニ遺伝子配
列に含まれ得るアミノ酸配列の例としては、以下が挙げられる:ヘルパーTリン
パ球エピトープ、リーダー(シグナル)配列、および小胞体残留シグナル。さら
に、CTLエピトープのMHC提示は、合成の(例えば、ポリアラニン)または
天然に存在する隣接配列をCTLエピトープに隣接して含むことによって改善さ
れ得る。
【0086】
ミニ遺伝子配列は、ミニ遺伝子のプラス鎖およびマイナス鎖をコードするオリ
ゴヌクレオチドをアセンブリすることによって、DNAに転換される。重複して
いるオリゴヌクレオチド(30〜100塩基長)が、周知の技術を使用して適切
な条件下で合成、リン酸化、精製、およびアニーリングされる。オリゴヌクレオ
チドの末端は、T4 DNAリガーゼを使用して連結される。次いで、CTLエ
ピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニ遺伝子は、所望の発現ベクター
にクローニングされ得る。
【0087】
当業者に周知の標準的な調節配列が、標的細胞中での発現を確実にするために
ベクターに含まれる。いくつかのベクターエレメントが必要とされる:ミニ遺伝
子の挿入のための下流のクローニング部位を有するプロモーター;効率的な転写
の終結のためのポリアデニル化シグナル;E.coli複製起点;およびE.c
oli選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性またはカナマイシン耐性)。多
数のプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモータ
ー)が、この目的のために使用され得る。他の適切なプロモーター配列について
は、米国特許第5,580,859号および同第5,589,466号を参照の
こと。
【0088】
さらなるベクター改変が、ミニ遺伝子の発現および免疫原性を最適化するため
に所望され得る。いくつかの場合、イントロンが、効率的な遺伝子発現のために
必要とされ、そして1つ以上の合成のまたは天然に存在するイントロンが、ミニ
遺伝子の転写領域に取りこまれ得る。mRNA安定化配列を含むこともまた、ミ
ニ遺伝子の発現を増大させるために考慮され得る。免疫刺激配列(ISSまたは
CpG)がDNAワクチンの免疫原性において役割を果たすことが、近年提唱さ
れている。これらの配列は、免疫原性を増強することが見出される場合、ミニ遺
伝子のコード配列の外側に、ベクター中に含まれ得る。
【0089】
いくつかの実施態様において、ミニ遺伝子にコードされるエピトープ、および
免疫原性を増強するかまたは減少させるために含まれる第2のタンパク質の産生
を可能にする二シストロン性(bicistronic)発現ベクターが使用さ
れ得る。同時発現される場合に免疫応答を有益に増強し得るタンパク質またはポ
リペプチドの例としては、サイトカイン(例えば、IL2、IL12、GM−C
SF)、サイトカイン誘導性分子(例えば、LeIF)、または同時刺激性分子
が挙げられる。ヘルパー(HTL)エピトープは、細胞内標的化シグナルに連結
され得、そしてCTLエピトープとは別に発現され得る。このことは、CTLエ
ピトープとは異なる細胞区画へのHTLエピトープの指向を可能にする。必要と
される場合、このことは、MHCクラスII経路へのHTLエピトープのより効
率的な進入を促進し得、それによって、CTL誘導を改良する。CTL誘導とは
対照的に、免疫抑制性分子(例えば、TGF−β)の同時発現によって免疫応答
を特異的に減少させることは、特定の疾患において有益であり得る。
【0090】
一旦、発現ベクターが選択されると、ミニ遺伝子は、プロモーターの下流のポ
リリンカー領域にクローニングされる。このプラスミドは、適切なE.coli
株に形質転換され、そしてDNAは、標準的な技術を使用して調製される。ミニ
遺伝子の方向およびDNA配列、ならびにベクター中に含まれる全ての他のエレ
メントは、制限マッピングおよびDNA配列分析を使用して確認される。正確な
プラスミドを有する細菌細胞は、マスター細胞バンク(bank)および作業細
胞バンクとして保存され得る。
【0091】
治療的な量のプラスミドDNAは、E.coliにおける発酵、その後の精製
によって産生される。作業細胞バンクに由来するアリコートは、発酵培地(例え
ば、Terrific Broth)を接種するために使用され、そして周知の
技術に従って、振盪フラスコまたはバイオリアクターにおいて飽和するまで増殖
される。プラスミドDNAは、Quiagenより提供される固相アニオン交換
樹脂のような、標準的な生物分離技術を使用して精製され得る。必要とされる場
合、スーパーコイルDNAは、ゲル電気泳動または他の技術を使用して、開環状
および直鎖状の形態から単離され得る。
【0092】
精製されたプラスミドDNAは、種々の処方物を使用して注射のために調製さ
れ得る。これらのうち最も単純なものは、無菌のリン酸緩衝化生理食塩水(PB
S)中での凍結乾燥したDNAの再構成である。種々の方法が記載されており、
そして新規の技術が利用可能となり得る。上記のように、核酸は、カチオン性脂
質とともに好都合に処方される。さらに、糖脂質、フソジェニック(fusog
enic)リポソーム、防御的、相互作用的、非縮合(non−condens
ing)(PINC)として総称的に呼ばれるペプチドおよび化合物がまた、安
定性、筋肉内分散、特異的な器官もしくは細胞型へのトラフィッキングのような
変量に影響を与えるために、精製されたプラスミドDNAに対して複合体化され
得る。
【0093】
標的細胞の感作が、ミニ遺伝子によってコードされるCTLエピトープの発現
およびMHCクラスI提示のための機能的アッセイとして使用され得る。プラス
ミドDNAは、標準的なCTLクロム放出アッセイのための標的として適切であ
る、哺乳動物細胞株中に導入される。使用されるトランスフェクション法は、最
終的な処方物に依存する。エレクトロポレーションは、カチオン性脂質が直接的
なインビトロでのトランスフェクションを可能にするにもかかわらず、「裸の」
DNAについて使用され得る。グリーン蛍光タンパク質(GFP)を発現するプ
ラスミドが、蛍光活性化細胞分別(FACS)を使用するトランスフェクトされ
た細胞の富化を可能にするために、同時トランスフェクトされ得る。次いで、こ
れらの細胞は、クロム−51で標識され、そしてエピトープ特異的CTL株の標
的細胞として使用される。51Crの放出によって検出される細胞溶解は、ミニ
遺伝子によってコードされるCTLエピトープのMHC提示の産生を示す。
【0094】
インビボでの免疫原性は、ミニ遺伝子DNA処方物の機能的試験のための第2
のアプローチである。適切なヒトMHC分子を発現するトランスジェニックマウ
スは、DNA産物で免疫される。投与の用量および経路は、処方物に依存する(
例えば、PBS中のDNAについてはIM、脂質複合体化DNAについてはIP
)。免疫の21日後、脾細胞を回収し、そして試験される各エピトープをコード
するペプチドの存在下で1週間再刺激する。これらのエフェクター細胞(CTL
)は、ペプチドを負荷したクロム−51標識化標的細胞の細胞溶解について、標
準的な技術を使用してアッセイされる。ミニ遺伝子によってコードされるエピト
ープに対応するペプチドのMHC負荷によって感作された標的細胞の溶解は、C
TLのインビボ誘導のためのDNAワクチン機能を実証する。
【0095】
抗原性ペプチドは、CTLをエキソビボで誘発するために同様に用いられ得る
。得られるCTLは、他の従来の形態の治療に応答しないか、またはペプチドワ
クチンアプローチの治療に応答しない、患者における慢性の感染(ウイルス性ま
たは細菌性)または腫瘍を処置するために用いられ得る。特定の病原体(感染性
因子または腫瘍抗原)に対するエキソビボでのCTL応答は、組織培養において
、患者のCTL前駆細胞(CTLp)を、抗原提示細胞(APC)の供給源およ
び適切な免疫原性ペプチドとともにインキュベートすることにより誘導される。
適切なインキュベーション時間(代表的には1〜4週間)(このとき、これらの
CTLpが活性化され、そして成熟し、そして増殖してエフェクターCTLにな
る)の後、これらの細胞は、患者に注入し戻され、ここでこれらはそれらの特異
的標的細胞(感染した細胞または腫瘍細胞)を破壊する。特異的細胞傷害性T細
胞の生成のためのインビトロでの条件を最適化するために、刺激細胞の培養物は
、適切な無血清培地中で維持される。
【0096】
刺激細胞と、活性化されるべき細胞(例えば、前駆体CD8+細胞)とのインキ
ュベーションの前に、刺激細胞の表面上に発現されるべきヒトクラスI分子に負
荷されるのに充分な量の抗原性ペプチドが刺激細胞培養物に添加される。本発明
では、ペプチドの充分な量は、約200、そして好ましくは200以上のヒトク
ラスI MHC分子が、各刺激細胞の表面上に発現されるべきペプチドととに負
荷されることを可能にする量である。好ましくは、刺激細胞は、20μg/ml
を超えるペプチドとともにインキュベートされる。
【0097】
次いで、休止CD8+細胞または前駆CD8+細胞は、適切な刺激細胞を有す
る培養において、CD8+細胞を活性化するために充分な時間の間インキュベー
トされる。好ましくは、CD8+細胞は、抗原特異的溶液で活性化される。休止
CD8+細胞または前駆CD8+(エフェクター)細胞の、刺激細胞に対する比
は、個体毎に変動し得、そして個体のリンパ球の培養条件に対する順応性、なら
びに記載された処置様式が用いられる疾患状態または他の状態の性質および重篤
度のような変量にさらに依存し得る。しかし、好ましくは、リンパ球:刺激細胞
の比は、約30:1〜300:1の範囲である。エフェクター/刺激培養物は、
治療的に有用なまたは効果的な数のCD8+細胞を刺激するために必要な期間の
間維持され得る。
【0098】
インビトロでのCTLの誘導は、APC上の対立遺伝子特異的MHCクラスI
分子に結合しているペプチドの特異的認識を必要とする。APCあたりの特異的
MHC/ペプチド複合体の数は、CTLの刺激のために、特に一次免疫応答のた
めに重大である。細胞あたり少量のペプチド/MHC複合体が、細胞をCTLに
よる溶解に感受性にするために充分であるか、または二次CTL応答を刺激する
ために充分であるが、一次応答の間のCTL前駆体(pCTL)の好首尾の活性
化は、有意に多い数のMHC/ペプチド複合体を必要とする。細胞上での空の主
要組織適合遺伝子複合体分子のペプチド負荷は、一次細胞傷害性Tリンパ球応答
の誘導を可能にする。細胞上での空の主要組織適合遺伝子複合体分子のペプチド
負荷は、一次細胞傷害性Tリンパ球応答の誘導を可能にする。
【0099】
変異体細胞株は、全てのヒトMHC対立遺伝子に存在するわけではないので、
内因性MHC結合ペプチドをAPCの表面から除去する技術を用い、その後、得
られる空のMHC分子に目的の免疫原性ペプチドを負荷することが有利である。
患者の非形質転換(非腫瘍形成性)非感染細胞、および好ましくは自己細胞の、
APCとしての使用は、エキスビボCTL治療の開発に向けてのCTL誘導プロ
トコルの設計のために所望される。本願は、内因性MHC結合ペプチドをAPC
の表面から剥がし、その後、所望のペプチドをロードするための方法を開示する

【0100】
安定なMHCクラスI分子は、以下のエレメントから形成される三量体複合体
である:1)通常、8〜10残基のペプチド、2)α1ドメインおよびα2ドメ
イン中にペプチド結合部位を保有する膜貫通重鎖多型性タンパク質鎖、ならびに
3)非共有結合的に結合した非多型軽鎖である、β2ミクロブロブリン。複合体
から、結合したペプチドを除去することおよび/またはβ2ミクログロブリンを
解離することは、MHCクラスI分子を非機能的および不安定にし、迅速な分解
を生じる。PBMCから単離された全てのMHCクラスI分子は、その分子に結
合している内因性ペプチドを有する。それゆえ、第1段階は、APC上のMHC
クラスI分子に結合している全ての内因性ペプチドを、外因性ペプチドがそれに
添加され得る前にそれらの分解を生じることなく除去することである。
【0101】
結合したペプチドのMHCクラスI分子を遊離させるための2つの可能な方法
は、培養温度を37℃から26℃へと、一晩の間低下させてβ2ミクログロブリ
ンを不安定化する工程、および穏やかな酸処理を用いて細胞から内因性ペプチド
を剥がす工程を含む。この方法は、前に結合していたペプチドを細胞外環境へと
遊離させ、新たな外因性ペプチドが空のクラスI分子に結合することを可能にす
る。低温インキュベーション方法は、外因性ペプチドがMHC複合体に効率的に
結合することを可能にするが、26℃での一晩の培養(これは、細胞の代謝速度
を遅くし得る)を必要とする。MHC分子を活性には合成しない細胞(例えば、
休止PBMC)が、低温手順によっては多量の空の表面MHC分子を生じないこ
ともまたあるようである。
【0102】
厳しい酸ストリッピングは、トリフルオロ酢酸(pH2)でのペプチドの抽出
、または免疫アフィニティー精製したクラスIペプチド複合体の酸変性を含む。
これらの方法は、CTL誘導が可能ではない。なぜなら、抗原提示のために重要
であるAPCの生存度および最適な代謝状態を保ちながら、内因性ペプチドを除
去することが重要であるからである。pH3の穏やかな酸性溶液(例えば、グリ
シンまたはクエン酸−リン酸緩衝液)は、内因性ペプチドを同定するために、お
よび腫瘍関連T細胞エピトープを同定するために用いられている。MHCクラス
I分子のみが不安定化され(そして結合したペプチドが放出される)、一方、他
の表面抗原(MHCクラスII分子を含む)は、インタクトなままであるという
点で、この処理は特に有効である。最も重要なことには、穏やかな酸性溶液での
細胞の処理は、細胞の生存度にも代謝状態にも影響を与えない。穏やかな酸処理
は、迅速である。なぜなら、内因性ペプチドのストリッピングは、4℃にて2分
間で生じ、そしてAPCは、適切なペプチドが負荷された後にその機能を果たす
準備ができているからである。この技術は、一次抗原特異的CTLを生じるため
のペプチド特異的APCを作製するために本明細書中で利用される。得られるA
PCは、ペプチド特異的CD8+ CTLを誘導する際に効率的である。
【0103】
活性化CD8+細胞は、種々の公知の方法のうちの1つを用いて刺激細胞から
効果的に分離され得る。例えば、刺激細胞に、刺激細胞に負荷されるペプチドに
、またはCD8+細胞(またはそれらのセグメント)に特異的なモノクローナル
抗体は、それらの適切な相補的リガンドを結合するために利用され得る。次いで
、抗体タグ化分子は、刺激細胞/エフェクター細胞混合物から、適切な手段(例
えば、周知の免疫沈降またはイムノアッセイ方法)によって抽出され得る。
【0104】
有効な、細胞傷害性量の活性化CD8+細胞は、インビトロでの用途とインビ
ボでの用途との間で変動し得、そしてそれらのキラー細胞の最終的な標的である
細胞の量および型によって変動し得る。この量はまた、患者の状態に依存して変
動し得、そして開業医によって全ての適切な因子を考慮して決定されるべきであ
る。しかし、マウスにおいて用いられる約5×106〜5×107細胞と比較して
、好ましくは約1×106〜約1×1012、より好ましくは約1×108〜約1×
1011、そしてさらにより好ましくは約1×109〜約1×1010個の活性化C
D8+細胞が、成人ヒトのために利用される。
【0105】
好ましくは、上記のように、活性化CD8+細胞は、処置されるべき個体への
CD8+細胞の投与の前に、細胞培養物から収集される。しかし、他の現行の処
置様式および提唱される処置様式とは異なり、本発明の方法は、腫瘍形成性では
ない細胞培養系を用いることに留意することが重要である。それゆえ、刺激細胞
と活性化CD8+細胞との完全な分離が達成されないならば、少数の刺激細胞の
投与に関連することが公知の固有の危険性は存在せず、一方、哺乳動物腫瘍促進
細胞の投与は、極めて危険であり得る。
【0106】
細胞成分を再度導入する方法は、当該分野で公知であり、そしてこの方法とし
ては、Honsikらに対する米国特許第4,844,893号およびRose
nbergに対する米国特許第4,690,915号に例示される手順のような
手順が挙げられる。例えば、静脈内注入による活性化CD8+細胞の投与は適切
である。
【0107】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、モノクローナル抗体を作製するために用い
られ得る。このような抗体は、潜在的な診断剤または治療剤として有用であり得
る。
【0108】
これらのペプチドはまた、診断試薬としての用途を見出し得る。例えば、本発
明のペプチドは、ペプチドもしくは関連ペプチドを用いる処置レジメに対する特
定の個体の感受性を決定するために用いられ得、従って、既存の処置プロトコル
を改変する際に、または罹患個体についての予後を決定する際に有用であり得る
。さらに、これらのペプチドはまた、どの個体が、慢性の感染を発症するかなり
の危険性にあるかを予測するために用いられ得る。
【0109】
本明細書中に引用した全ての刊行物および特許出願は、あたかも各々の各刊行
物または特許出願が、参考として援用されると具体的かつ個別に示されたかのよ
うに、本明細書中で参考として援用される。
【0110】
前述の発明は、理解の明確化の目的のための実例および例としていくぶん詳細
に記載したが、本発明の教示を考慮して、特定の変更および改変が、添付の特許
請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく本発明に行われ得ることが当
業者には容易に明らかである。
【実施例】
【0111】
以下の実施例は、例示のためにのみ提供され、そして限定のために提供される
わけではない。当業者は、変更または改変され得る種々の重要でないパラメータ
ーが、本質的に類似の結果を生じることを容易に理解する。
【0112】
(実施例1)
クラスI抗原の単離を、上記の関連出願に記載されるとおりに実施した。次い
で、天然でプロセシングされたペプチドを、上記の関連出願に記載されるとおり
に単離および配列決定した。対立遺伝子特異的モチーフおよびアルゴリズムを決
定し、そして定量的結合アッセイを実施した。
【0113】
HLA−A2.1対立遺伝子について上記で同定されたモチーフを用いて、多
数の抗原由来のアミノ酸配列をこれらのモチーフの存在について分析した。表5
は、これらの検索の結果を提供する。
【0114】
【表5】


本発明のペプチドを同定するために、クラスI抗原単離、ならびに天然でプロ
セシングされたペプチドの単離および配列決定を、関連出願に記載されるとおり
に実施した。次いで、これらのペプチドを用いて、以下の各々の対立遺伝子につ
いての特異的結合モチーフを規定した:A3.2、A1、A11およびA24.
1。これらのモチーフを、上記に記載する。以下の表6〜表9に記載されるこれ
らのモチーフは、関連出願において記載されるように、天然でプロセシングされ
たペプチドの配列決定データプールから規定される。
【0115】
【表6】

【0116】
【表7】

【0117】
【表8】

【0118】
【表9】


(実施例2)
種々のMHCクラスI対立遺伝子について上記で同定されたモチーフを用いて
、種々の病原体および腫瘍関連タンパク質由来のアミノ酸配列を、これらのモチ
ーフの存在について分析した。関連出願において記載したスクリーニングを実施
した。表10は、これらの抗原の検索結果を提供する。
【0119】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2010−90167(P2010−90167A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4446(P2010−4446)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2000−554400(P2000−554400)の分割
【原出願日】平成11年6月17日(1999.6.17)
【出願人】(500521038)エピミューン インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】