説明

ICカードおよびICカードプログラム

【課題】デバッグ作業において有用なデュアルカードを提供する。
【解決手段】デュアルカード1は、外部装置とデータ通信するための通信モジュールとして、接触通信モジュール11と非接触通信モジュール12を備える。更に、デュアルカード1は、データの送受信に使用する通信モジュールを、デュアルカード1を活性化した通信I/Fに対応する通信モジュールから他のモジュールに切替えるモード変更コマンド10を備えている。デュアルカード1がモード変更コマンド10を備えることで、システムの運用中に非接触I/Fで動作しない場合であっても、リーダライタと前記ICカード間で伝送されているデータを接触I/Fで確認でき、デバッグ作業に役立てることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックなどのカード媒体にICチップが実装されたICカードに関し、更に詳しくは、リーダライタと通信するための通信インターフェースとして、接触インターフェースと非接触インターフェースの2つの通信インターフェースを兼ね備えたICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
接触型の通信インターフェース(InterFace、接触I/F)と非接触型の通信インターフェース(以下、非接触I/F)の2つの異なる通信I/Fを有するICカードは、デュアルインターフェースICカード(以下、デュアルカード)またはコンビICカードともと称される。
【0003】
デュアルカードは、接触ICカードと非接触ICカードを1枚のICカードにまとめることができる利便性の高いICカードで、非接触I/Fで動作する定期券と接触I/Fで動作するクレジットカードの機能を1枚のICカードにまとめるときなどに利用される。
【0004】
上述したデュアルカード用のプログラム(オペレーティングシステムやアプリケーション)を開発するときは、特許文献1で開示されているようなアンテナコイルが接続可能なエミュレータが用いられ、プログラムのデバック・テスト作業を行うのが一般的である。
【特許文献1】特開2003−5994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したエミュレータを用い十分なデバック・テスト作業を行いプログラムを作成したとしても、デュアルカードがシステムで運用されているときに、予期せぬ現象に起因する不具合が、デュアルカードのプログラムに発覚してしまうケースがある。
【0006】
デュアルカードのプログラムに不具合が発覚された場合は、不具合をエミュレータで再現テストすることで不具合の発生原因を究明し、発覚した不具合が取り除かれるデバッグ作業が行われる。
【0007】
エミュレータで不具合を再現することができればデバッグ作業は進められるが、エミュレータで不具合を再現できないことも稀にあり、このときは、システムで運用されたデュアルカードをデバッグに用いなければならないが、システムで運用されたデュアルカードにはデバッグの機能がなく大変不便であった。
【0008】
そこで本発明は、接触I/Fと非接触I/Fを備えたデュアルカードがデバッグに利用できる機能を備えたデュアルカードおよびデュアルカードのデバッグ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する第1の発明は、接触インターフェースと非接触インターフェースの2つの通信インターフェースを兼ね備えたICカードであって、前記ICカードは、データの送受信に使用する通信インターフェースを、前記ICカードを活性化した通信インターフェースから他の通信インターフェースに切替える通信インターフェース切替手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明のICカードにおいては、前記ICカードに備えられた前記通信インターフェース切替手段は一つのコマンドで実現され、前記コマンドを受信したときに前記通信インターフェース切替手段が作動することが望ましい。
またICカードとは、キャッシュカードサイズのICカードに加え、ICカードのICチップ近傍を短冊状に切り取った形状であるSIM(USIM)も含んでいる。
【0011】
また、第2の発明は、接触インターフェースと非接触インターフェースの2つの通信インターフェースを兼ね備えたICカードに実装されるICカードプログラムであって、前記ICカードのCPUを、データの送受信に使用する通信インターフェースを、前記ICカードを活性化した通信インターフェースから他の通信インターフェースに切替える通信インターフェース切替手段として動作させるためのICカード用プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によれば、接触インターフェースと非接触インターフェースの2つの通信インターフェースを兼ね備えたICカードが前記通信インターフェース切替手段を備えることで、例えば、システムの運用中に非接触インターフェースで動作しない場合であっても、リーダライタと前記ICカード間で伝送されているデータを接触インターフェースで確認できるため、デバッグ作業の不具合再現テストなどに役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここから、本発明を適用したデュアルカード1について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明が適用されたデュアルカード1を説明する図である。図1に示したように、デュアルカード1には、デュアルカード1が接触I/Fで動作するときに使用されるコンタクト端子1bを備えたICモジュール1aが実装され、このICモジュール1aにはデュアルカード用のICチップ2がモールドされている。
【0015】
加えて、デュアルカード1には、デュアルカード1が非接触I/Fで動作するときに使用されるアンテナコイル1cが内蔵され、ICモジュール1aにモールドされたICチップ2にアンテナコイル1cは接続されている。
【0016】
上述したデュアルカード1が接触型リーダライタ3aに装着された際は、ICモジュール1aのコンタクト端子1bを介し、供給電圧信号などが接触型リーダライタ3aからICモジュール1aにモールドされたICチップ2に供給され、デュアルカード1は接触I/Fで動作する。
【0017】
また、デュアルカード1が非接触型リーダライタ3bにかざされた際は、非接触型リーダライタ3bからの電波をアンテナコイル1cが受信し、この電波によってICモジュール1aにモールドされたICチップ2に電力が供給され、デュアルカード1は非接触I/Fで動作する。
【0018】
このような一般的なデュアルカードの機能に加えて、本発明に係るデュアルカード1は、ある通信I/Fで活性化されたときに、他の通信I/Fでデータの送受信できる機能が備えられている。
例えば、デュアルカード1は接触I/Fで活性化された場合であっても、非接触I/Fでデータの送受信が可能で、非接触I/Fで活性化された場合であっても、接触I/Fでデータの送受信が可能である。
【0019】
ある通信I/Fで活性化されたときに、データの送受信に使用する通信I/Fを他の通信I/Fに切替えるこの機能は、デュアルカード1に実装されたプログラムによって実現され、このプログラムによって、通信I/Fは、活性化された通信I/Fから他の通信I/Fに切替えられる。
【0020】
なお、デュアルカード1が、ある通信I/Fで活性化されたときに、他の通信I/Fでデータの送受信するためには、デュアルカード1は接触型リーダライタの機能と非接触型リーダライタの機能を兼ね備えたリーダライタに装着されていることが必要である。
【0021】
図2は、デュアルカード1に実装されるICチップ2のハードウェア構成図である。ICチップ2には、中央演算装置20(Central Processing Unit、CPU)に、バス26を介して、読み出し専用メモリ21(Read Only Memory、ROM)、書換え可能なメモリとしてEEPROM23(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略)、揮発性メモリとしてランダムアクセスメモリ22(Random Access Memory、RAM)、および、図外の外部端末とデータを通信するための接触I/F回路24、非接触I/F回路25が接続されている。
【0022】
なお、本発明は、ICチップ2の仕様を限定するものではなく、デュアルカード1の用途に適した仕様のICチップを選択することができる。例えばROM21およびEEPROM23の容量については限定しないし、書換え可能なメモリは強誘電体メモリまたはフラッシュメモリ等のEEPROM以外のメモリであっても構わない。またICチップ2はタイマー回路、暗号演算回路またはコプロセッサ回路等の図示していない他のデバイスを備えていても構わない。
【0023】
図3はデュアルカード1のモード遷移を示した図である。図2に示したようにデュアルカード1は、少なくとも2つの動作モード、すなわち、運用モードとデバックモードを有する。
【0024】
運用モードとは、デュアルカード1が活性化された通信I/Fのみで動作するモードである。
デュアルカード1が活性化されたときは、デュアルカード1は必ず運用モードになり、接触通信I/Fで活性化されたときは接触通信I/Fでデータの送受信を行い、また、非接触通信I/Fで活性化されたときは非接触通信I/Fでデータの送受信を行う。
【0025】
デバックモードとは、デュアルカード1が活性化された通信I/Fと異なる通信I/Fでデータの送受信を行うモードである。
デバッグモードにおいては、接触通信I/Fで活性化されたときは非接触通信I/Fでデータの送受信を行い、また、非接触通信I/Fで活性化されたときは接触通信I/Fでデータの送受信行う。
【0026】
デュアルカード1は、モードを変更するためのコマンドを受信することで、運用モードからデバッグモードに遷移する。
なお、デバッグモードにあるデュアルカード1は、デュアルカード1カードがリセット動作もしくは再度活性化されたときに運用モードへ遷移する。
【0027】
図4は、本発明を実現するためにデュアルカード1へ実装されるプログラムのブロック図である。
図4で示したそれぞれプログラムは、RAM22などのICチップ2に備えられたデバイスを使用しCPU20を動作させるプログラムで、このプログラムのコードは、ICチップ2のROM21やEEPROM23に記憶されている。
【0028】
デュアルカード1は、外部装置とデータ通信するための通信モジュールとして、接触I/F回路24を制御して接触型リーダライタ3aとデータを送受信する接触通信モジュール11と、非接触I/F回路25を制御して非接触型リーダライタ3bとデータを送受信する非接触通信モジュール12を備える。
【0029】
更に、デュアルカード1は、オペレーティングシステムのコマンドであるモード変更コマンド10を備えている。モード変更コマンド10は、データの送受信に使用する通信モジュールを、デュアルカード1を活性化した通信I/Fに対応する通信モジュールから他のモジュールに切替えるコマンドである。
【0030】
例えば、接触I/F回路24でデュアルカード1が活性化されたときには、デュアルカード1で使用される通信モジュールは接触通信モジュール11となり、デュアルカード1のモードは運用モードになる。
【0031】
この状態で接触型リーダライタ3aからモード変更コマンド10を受信すると、デュアルカード1のモードは運用モードからデバッグモードに遷移し、データの送受信に使用される通信モジュールは、接触通信モジュール11から接触通信モジュール12に変更され、デュアルカード1は非接触型リーダライタ3bと非接触でデータの送受信を行う。
【0032】
図5は、デュアルカード1の一連の動作を示したフロー図である。この動作の最初のステップS1は、デュアルカード1が活性化されるステップである。
このステップでは、デュアルカード1は、接触I/Fもしくは非接触I/Fのいずれかの通信I/Fで活性化され、デュアルカード1のモードは運用モードに設定される。
【0033】
次のステップS2は、デュアルカード1が活性化された通信I/Fでモード変更コマンド10を受信するステップである。
モード変更コマンド10の受信の有無によって、これ以降の手順は分岐され、モード変更コマンド10を受信した場合はステップS3に進み、受信しない場合はステップS5に進む。
【0034】
ステップS3では、データの送受信に使用する通信モジュールが切替るステップである。
このステップでは、モード変更コマンド10が作動し、データの送受信に使用する通信I/Fを、活性化した通信I/Fから他の通信I/Fに切替る。
【0035】
例えば、デュアルカード1が非接触I/Fで活性化されたときは、データの送受信で使用する通信モジュールは、非接触通信モジュール12から接触通信モジュール11に変更され、デバッグモードでデュアルカード1は動作する。
【0036】
また、ステップS2でモード変更コマンドを受信しなかったときは、デュアルカード1は運用モードのままであり、データの送受信に使用される通信I/Fは、デュアルカード1が活性化された通信I/Fのままである。
【0037】
なお、運用モードで動作しているときに、デュアルカード1がモード変更コマンドを受信したときは、ステップS3およびステップS4が実行され、デュアルカード1のモードはデバッグモードに遷移する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用されたデュアルカードを説明する図。
【図2】ICチップのハードウェア構成図。
【図3】デュアルカードのモード遷移を示した図。
【図4】デュアルカードに実装されるプログラムのブロック図。
【図5】デュアルカードの一連の動作を示したフロー図。
【符号の説明】
【0039】
1 デュアルカード
10 モード変更コマンド
11 接触通信モジュール
12 非接触通信モジュール
2 ICチップ
20 CPU
24 接触I/F回路
25 非接触I/F回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触インターフェースと非接触インターフェースの2つの通信インターフェースを兼ね備えたICカードであって、前記ICカードは、データの送受信に使用する通信インターフェースを、前記ICカードを活性化した通信インターフェースから他の通信インターフェースに切替える通信インターフェース切替手段を備えていることを特徴とするICカード。
【請求項2】
請求項1に記載のICカードであって、前記ICカードに備えられた前記通信インターフェース切替手段は一つのコマンドで実現され、前記コマンドを受信したときに前記通信インターフェース切替手段が作動することを特徴とするICカード。
【請求項3】
接触インターフェースと非接触インターフェースの2つの通信インターフェースを兼ね備えたICカードに実装されるICカードプログラムであって、データの送受信に使用する通信インターフェースを、前記ICカードを活性化した通信インターフェースから他の通信インターフェースに切替える通信インターフェース切替手段として、前記ICカードのCPUを動作させるためのICカード用プログラム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate