説明

ICカードリーダライタ

【課題】ユーザにとって一段と使い易いICカードリーダライタを提供する。
【解決手段】ICカードリーダライタ10において、アンテナ32と、アンテナ32を介した通信を行うための通信領域AR11において通信対象であるICカード50を保持する保持手段21と、保持手段21による保持を解除して、通信領域AR11よりも低い位置に設けられた排出領域AR12にICカード50をその自重により排出させる保持解除手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードとの間で通信を行うICカードリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流通業の店舗等では、POSシステム(Point of sale system)が導入されている。このPOSシステムは、ICカードリーダライタを用い、電磁誘導等の方式を採用した非接触ICカードとの間で通信を行うことにより、当該ICカードを電子マネー(電子決済)として用いるようになされている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ICカードリーダライタにおいては、ICカードを当該ICカードリーダライタの表面の通信領域にかざすことにより、ICカードとICカードリーダライタとの間で通信を行わせることができる。ユーザに通信領域を認識させる方法として、例えば、ICカードリーダライタの表面に凹部を設けることにより、ICカードをかざすべき位置をユーザに分かり易くするものも考えられている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−86242号公報
【特許文献2】特開2005−165559号公報
【特許文献3】特開2008−123451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICカードリーダライタとICカードとの間で通信が行われている状態をユーザが外見上容易に確認する手段がなく、ユーザはICカードをいつまでかざしていればよいか分からないという問題があった。
【0006】
上記の問題を鑑みて、本発明は、ユーザにとって一段と使い易いICカードリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係る特徴は、ICカードリーダライタにおいて、アンテナと、前記アンテナを介した通信を行うための通信領域において通信対象であるICカードを保持する保持手段と、前記保持手段による保持を解除して、前記通信領域よりも低い位置に設けられた排出領域に前記ICカードをその自重により排出させる保持解除手段とを備えることである。
【0008】
このICカードリーダライタによれば、ICカードとの間の通信が終了すると、保持解除手段によってICカードが排出領域へ排出されることにより、ユーザは、通信が終了したことを容易に認識することができる。
【0009】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、上記ICカードリーダライタにおいて、前記排出領域は、前記通信領域側から最下部に向かって次第に傾斜が緩くなる第1の傾斜面と、前記最下部から前記通信領域側とは反対側の終端部まで逆方向へ傾斜した第2の傾斜面とを備えることである。
【0010】
このICカードリーダライタによれば、通信領域から排出されたICカードが第1の傾斜面を滑り落ち、最下部を通過した後、第2の傾斜面で減速する。これにより、スムーズな排出動作が可能となる。
【0011】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、上記ICカードリーダライタにおいて、前記終端部は、前記排出領域を滑り落ちる前記ICカードが乗り越えない高さに形成されていることである。
【0012】
このICカードリーダライタによれば、排出領域を滑り落ちたICカードが終端部で止まることにより、排出領域から飛び出すことがなくなり、ユーザの使い勝手をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ユーザにとって一段と使い易いICカードリーダライタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの内部構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタのカバーの取り付け方法の説明に供する斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタのカバーの取り付け方法の説明に供する斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの通信領域における表面及びカバーの間の空間を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの膨出部の構成を示す略線図である。
【図7】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの排出領域の説明に供する側面図である。
【図8】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの排出領域の説明に供する側面図である。
【図9】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタのカバーの変形例を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの変形例を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタのカバーの変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタのカバーの変形例を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの変形例を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの変形例を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態によるICカードリーダライタの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るICカードリーダライタ10の外観を示す斜視図である。このICカードリーダライタ10は、ICカード50との間で電磁誘導方式により非接触で通信を行う。
【0017】
ICカードリーダライタ10は、その本体11の表面部15に通信領域AR11とこれに続く排出領域AR12とを有する。通信領域AR11は、ICカード50との間で通信を行うための領域であり、この領域にICカード50が存在する場合に、ICカードリーダライタ10は、当該ICカード50との間で非接触により通信を行う。排出領域AR12は、通信終了後に通信領域AR11から排出されたICカードを、ユーザが取り易い位置まで移動させるための領域である。
【0018】
図1に示すように、通信領域AR11及び排出領域AR12は、本体11の表面部15によって、一続きの連続した面を構成している。本実施の形態の場合、通信領域AR11は所定の傾斜角度(一例として水平方向に対して45°の角度)により形成された平面状の領域であり、排出領域AR12は、通信領域AR11の下方に設けられた円弧状の曲面を有する領域である。これらの領域の形状については、後述する。
【0019】
図2に示すように、通信領域AR11においては、ICカードリーダライタ10の本体11の内部にアンテナが設けられている。このアンテナは、本体11の内部に固定されたアンテナ基板32上に設けられている。アンテナ基板32は、通信領域AR11の表面部15に平行に設けられている。アンテナ基板32のアンテナは、通信領域AR11に存在するICカード50との間で通信を行うためのアンテナである。
【0020】
本体11の内部には、アンテナ基板32の他に、制御部31を構成するCPU基板33が設けられている。CPU基板33(制御部31)は、アンテナ基板32のアンテナを介して、ICカード50との間でキャリア周波数が13.56MHzの電磁誘導方式により通信を行う。なお、CPU基板33の取付け位置は、図2において破線で示すようにアンテナ基板32に平行に配置する場合に限らず、例えば図2において一点鎖線で示すように水平に配置するようにしてもよい。
【0021】
一方、ICカードリーダライタ10の通信対象となるICカード50は、アンテナや通信ICが搭載された薄型の非接触型のRFID(Radio Frequency Identification)カードであり、ICカードリーダライタ10との間で、キャリア周波数が13.56MHzの電磁誘導方式により通信を行うものである。
【0022】
ICカード50の通信ICは、受信された信号を、復調して解釈し、反射波に応答情報を乗せてICカードリーダライタ10へ返す。ICカード50には、書換え可能な不揮発性メモリが設けられており、ICカードリーダライタ10との間の通信により、このメモリの情報を書き換えるようになされている。メモリに記憶される情報は、例えば、電子マネーとして用いられるICカードにあっては残高情報などであり、クレジットカードとして用いられるICカードにあっては、カードを特定するための情報等である。
【0023】
ICカードリーダライタ10の制御部31は、通信領域AR11に存在するICカード50から返送された信号を受信することにより、当該ICカード50の存在を確認し、通信を行うことができる。
【0024】
ICカードリーダライタ10の通信領域AR11(図1)において、本体11の表面側には、通信領域AR11を覆うカバー12が固定されている。カバー12の固定方法としては、図3に示すように、カバー12の側面部をICカードリーダライタ10の側面部にねじ止めする固定方法、又は図4に示すように、ICカードリーダライタ10の側面部にガイド溝13A、13Bを設けると共に、カバー12の内側面部にガイド溝13に係合する突起部(図示せず)を設け、当該突起部をガイド溝13に係合させながら、当該ガイド溝13に沿ってカバー12をICカードリーダライタ10の通信領域AR11まで挿入する方法などを用いることができる。
【0025】
図5に示すように、ICカードリーダライタ10にカバー12が装着された状態では、通信領域AR11において、カバー12とICカードリーダライタ10の表面部15との間に、ICカード50を1枚挿入可能な空間が形成される。この空間の上方には、カバー12と表面部15とによって囲まれた通信領域AR11の空間を外部空間に連通する開口部16(図1)が形成され、この開口部16から、ユーザがICカード50を挿入することにより、当該ICカード50を、その自重によって通信領域AR11まで滑り込ませることができる。
【0026】
通信領域AR11の下端部には、挿入されたICカード50を受け止める円柱形状の膨出部21が設けられている。図6に示すように、膨出部21は、本体11の表面部15に設けられた貫通孔15Aを介して、本体11の内部から通信領域AR11へ突出した突出状態(図6(A))又は通信領域AR11から本体11の内部へ退避した退避状態(図6(B))に変位するようになっている。
【0027】
膨出部21が通信領域AR11に突出した状態(図6(A))においては、通信領域AR11に挿入されたICカード50は、膨出部21に当接することにより、通信領域AR11に保持される。この状態において、ICカードリーダライタ10は、当該ICカード50との間で通信を行うことができる。
【0028】
これに対して、膨出部21が通信領域AR11から本体11の内部に退避すると(図6(B))、ICカード50は、膨出部21による係止状態が解除されることにより、その自重によって排出領域AR12へ表面部15上を滑り落ちる。
【0029】
膨出部21は、本体11の内部に設けられたソレノイド25によって、突出方向(矢印a方向)又はこれとは逆方向の退避方向(矢印b方向)へ移動可能となっている。ICカードリーダライタ10の制御部31は、ICカードリーダライタ10とICカード50との通信に応じてソレノイド25を駆動する。この駆動制御により、膨出部21は、ICカードリーダライタ10とICカード50との通信終了後に一定時間退避状態(図6(B))に移行した後、再び突出状態(図6(A))に戻る。
【0030】
かくして、通信が終了すると、膨出部21による保持状態が一定時間解除され、これにより、通信領域AR11に保持されていたICカードは、表面部15に沿って、その自重により排出領域AR12へ滑り落ちる。
【0031】
このように、膨出部21は、ICカードを通信領域AR11内に保持する保持手段を構成し、制御部31及びソレノイド25は、通信終了後にICカード50の保持状態を解除して排出領域AR12へ移動させる保持解除手段を構成する。
【0032】
因みに、膨出部21の先端部21Aは、先端に行くほど径が小さくなる円錐台形状となっており、突出状態(図6(A))においてICカード50は、その角部が先端部21A(円錐台の傾斜面)に点で接して係止される。このような係止状態から膨出部21を退避させる場合、点で接していることにより、比較的小さな力で膨出部21を退避させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態の場合、カバー12は、半透明の樹脂材によって形成されていることにより、通信領域AR11におけるICカード50の存在をユーザが目視確認できるようになっている。
【0034】
次に、排出領域AR12について説明する。図7及び図8に示すように、排出領域AR12は、その上端部(通信領域AR11に接する部分)から、下方に行くにしたがって水平方向に対する傾斜が徐々に緩くなる(水平に近づく)第1の傾斜面47Aと、最下部43を過ぎて終端部42まで逆方向に傾斜する円弧状の第2の傾斜面47Bを有している。すなわち、第1の傾斜面47A及び第2の傾斜面47Bは、最下部43に向かって各々下り傾斜を有する曲面で構成されている。なお、本実施の形態の場合の排出領域AR12の形状の一例として、第1の傾斜面47Aの曲率半径は、第2の傾斜面47Bの曲率半径よりも小さく、第1の傾斜面47A及び第2の傾斜面47Bは、全体として滑らかな円弧状の曲面からなる排出面41を形成する。なお、排出面41の形状は、全体として一定の曲率半径でなる円弧状、又は異なる曲率の円弧形状が複合された形状等、種々の形状を適用することができる。また、第2の傾斜面47Bは、その全体を円弧状とすることに代えて、例えば、終端部42の一定範囲を平板状としてもよい。
【0035】
通信領域AR11から滑り落ちたICカード50は(図7(A))、排出面41に沿って最下部43を通過し(図7(B))、逆方向に傾斜した第2の傾斜面47Bを一定高さまで排出面41に沿って滑り上がり、排出領域AR12の終端部42を乗り越えない一定高さで停止する(図8(A))。この高さは、ICカード50の重さ、ICカード50の表面粗さ、排出面41(表面部15)の表面粗さ、排出面41の曲率等の条件によって変化する。排出領域AR12の終端部42の高さは、使用されるICカード50及び排出面41(表面部15)のこれらの条件に基づいて設定されており、排出面41に沿って滑り落ちたICカードが、終端部42を越えないような高さに設定されている。これにより、排出領域AR12の終端部42において、ICカード50を強制的に停止させるための例えば段差形状等のストッパを設ける必要がなく、ICカード50をその自重と摩擦によって自然に停止させることができる。このように、段差等のストッパを設けず、排出面41を全体として滑らかな曲面によって形成することにより、ユーザは、停止したICカード50を、排出面41に沿って容易に掬い出すことができる(図8(B))。なお、図1に示すように、排出面41の左右両側には凸状のガイド部等が設けられていないことにより、ユーザは、終端部42に停止したICカード50(図8(B))を、左右斜め方向に掬い取ることができる。すなわち、ユーザは、右手又は左手のいずれによっても、自然な動きでICカード50を掬い取ることができる。
【0036】
以上説明した構成において、ユーザがICカード50をカバー12の上部の開口部16から通信領域AR11へ挿入すると、ICカード50は、ICカードリーダライタ10の本体11の表面部15とカバー12との間に滑り込んで、膨出部21により通信領域AR11に保持される。この状態において、ICカードリーダライタ10とICカード50との間で通信が行われることにより、ICカード50の情報はICカードリーダライタ10によって処理される。例えば、ICカード50が電子マネーとして機能する場合には、当該ICカード50の金額データを買い物の代金分だけ減算するといった処理が行われる。
【0037】
この場合、カバー12が半透明の部材により形成されていることにより、ユーザは、当該カバー12を介して、カバー12の裏側にあるICカード50を目視することができる。これにより、ユーザに見えない状態でICカード50が処理されることがなくなり、ユーザに安心感を与えることができる。
【0038】
ICカード50とICカードリーダライタ10との間の通信が終了すると、膨出部21が退避することにより、通信領域AR11のICカード50は、その自重によって排出領域AR12へ滑り落ちる。
【0039】
この滑り落ちる動作により、ユーザは、ICカード50とICカードリーダライタ10との通信が終了したことを認識することができる。
【0040】
排出領域AR12へ滑り落ちたICカード50は、排出面41上を摺動してその終端部42を越えない位置で停止する(図8(A))。終端部42には、段差等で構成されるストッパが設けられていないことにより、ユーザは、排出面41上のICカード50を容易に掬い取ることができる。
【0041】
このように、本実施の形態のICカードリーダライタ10においては、ICカード50とICカードリーダライタ10との間の通信が終了すると、自動的にICカード50が排出領域AR12へ排出されることにより、ユーザは、通信領域AR11へICカード50を滑り込ませた後、ICカード50が排出領域AR12へ滑り落ちるのを待つだけでよく、ICカード50とICカードリーダライタ10との間の通信が終了したことを容易に認識することができる。
【0042】
また、ユーザがICカード50を通信領域AR11に挿入してから、排出領域AR12へ排出されるまで、ICカード50は、ユーザが目視可能な状態におかれることとなり、ユーザに対して安心感を与えることができる。
【0043】
なお上述の実施の形態においては、カバー12を半透明とした場合について述べたが、これに加えて、所定の位置を透明にして、通信領域AR11に保持されるICカード50の表示部をカバー12を介して目視可能とするようにしてもよい。この場合、図9に示すように、カード残高等のカード情報が表示される表示部53を有するICカード50を通信領域AR11に保持した際に、当該ICカード50の表示部53に対峙することとなるカバー部分に透明部12Cを設ける。これにより、通信領域AR11に保持されたICカード50の表示部53を、ユーザが目視し得ることとなり、例えばICカードリーダライタ10との通信処理により、カード残高が減算された場合には、表示部に表示される残高の変化をユーザがリアルタイムで確認することができる。なお、透明部12Cは、樹脂材を透明にすることに限らず、当該透明部12Cを貫通させて表示部53を目視可能とするようにしてもよい。また、カバー12は、半透明に限らず、透明部12Cを除いて非透明としてもよく、透明部12Cを設けない場合は、全体を非透明としてもよい。このように、カバー12を非透明とした場合においても、ICカード50は、上下に開口したカバー12の裏側にあるため、ユーザにとって目の届く状態にあることに変わりはなく、ユーザに安心感を与えることができる。
【0044】
また上述の実施の形態においては、通信領域AR11におけるICカードリーダライタ10の表面部15を一様な平板状とした場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、図10及び図11に示すように、ICカード50の挿入方向(上下方向)に延在する突起状のリブ17A、17Bを表面部15に設けるようにしてもよい。このリブ17A、17Bを設けることにより、開口部16(図1)から挿入されたICカード50をその自重だけで一段と滑らかに通信領域AR11内へ滑り込ませることができる。
【0045】
また上述の実施の形態においては、通信領域AR11にカバー12を設ける場合について述べたが、これに限られるものではなく、カバー12を設けない構成としてもよい。この場合、図12に示すように、少なくとも通信領域AR11の左右にICカード50をガイドするための凸状のガイド部15B、15Cを設けると共に、通信領域AR11における表面部15に、ICカードを乗せる目標位置をユーザに知らせるための目標位置描画部15Dを設けておく。このようにすれば、ユーザはICカード50を乗せる位置を容易に認識することができる。
【0046】
また上述の実施の形態においては、通信領域AR11において、ICカードリーダライタ10の表面部15を水平方向に対して45°傾斜した傾斜面とした場合について述べたが、傾斜角度はこれに限らず、種々の角度を適用することができる。また、この通信領域AR11において、表面部15を垂直に形成するようにしてもよい。このようにしても、ICカード50を、膨出部21によって保持させることができる。
【0047】
また上述の実施の形態においては、通信領域AR11に保持されたICカード50を全体的に覆う形状のカバー12を設ける場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、図13に示すように、カバー12の上縁部12Aから下方に向かって切欠部12Bを形成するようにしてもよい。このようにすれば、一旦通信領域AR11へ落とし込まれたICカード50を、切欠部12Bを介してユーザの指で押し上げることにより、通信領域AR11から抜き取ることができる。
【0048】
また、図14に示すように、カバー12の上縁部12Aを所定幅で切り取った構成としてしてもよい。このようにしても、通信領域AR11内に保持されたICカード50を抜き取ることができる。
【0049】
また上述の実施の形態においては、通信領域AR11に保持されたICカード50を滑り落とすことによって、ICカード50とICカードリーダライタ10との通信が終了したことをユーザに認識させる場合について述べたが、これに加えて、図15に示すように、ICカードリーダライタ10の本体11にLED等の表示部61を設けて、通信終了状態を表示するようにしてもよい。この場合、ICカードリーダライタ10の制御部31(図6)は、ICカード50を挿入可能な状態、ICカード50との間で通信を行っている状態、通信が終了した状態の各々に応じた発光態様でLEDを発光させることにより、ユーザに対してICカード50の処理状態を知らせることができる。
【0050】
また上述の実施の形態においては、曲面状の排出面41の終端部42を逆方向に傾斜させることで滑り落ちたICカード50を終端部42を越えることなく停止させる場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、図16及び図17に示すように、終端部において突出状態または退避状態に変化するストッパ71Aを設けるようにしてもよい。このストッパ71Aは、図6について上述した膨出部21と同様に機能する膨出部71Bとアーム71Cを介して連動するように構成されており、アーム71Cは、略中心部に設けられた回動軸71Dを回動中心として本体11に枢支されている。これにより、膨出部71Bが通信領域AR11に突出した状態では、ストッパ71Aは、退避状態となり(図17)、膨出部71Bが通信領域AR11から退避した状態では、ストッパ71Aは、排出面41から突出した状態となる(図16)。これにより、膨出部71Bによる保持から解除されて排出領域AR12へ滑り落ちたICカード50をストッパ71Aによって停止させることができる。
【0051】
ストッパ71A及び膨出部71Bは、ソレノイド72等の駆動手段によって駆動される。ストッパ71A及び膨出部71Bにおいては、バネ等の付勢手段によって、常にストッパ71Aが突出するように付勢されており、ソレノイド72によって膨出部71Bを突出させた場合にストッパ71Aが退避状態となる。制御部によって所定のタイミングでソレノイド72が駆動されることにより、通信終了後の一定時間膨出部71Bが退避状態となることに応じて、ストッパ71Aは排出面41へ突出し、膨出部71Bが突出状態へ復帰することに応じて、ストッパ71Aは排出面41の下方へ退避することになる。これにより、ストッパ71AによってICカード50が停止した後、ストッパ71Aが下方へ退避することとなり、ユーザがICカード50を掬い取る際の障害となることを回避することができる。これにより、ユーザは容易にICカード50を掬い取ることができる。
【0052】
また上述の実施の形態においては、膨出部21の駆動手段としてソレノイドを用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、モータ及び歯車を組み合わせてなる駆動手段等、種々の駆動手段を用いることができる。
【0053】
また上述の実施の形態においては、本発明をPOSシステムのICカードリーダライタとして用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、要はICカードとの間で通信を行うICカードリーダライタに広く適用することができる。
【0054】
(ICカードリーダライタの概要)
本発明の実施の形態におけるICカードリーダライタ10は、アンテナ(アンテナ基板32)と、アンテナを介した通信を行うための通信領域AR11において通信対象であるICカード50を保持する保持手段(膨出部21)と、保持手段(膨出部21)による保持を解除して、通信領域AR11よりも低い位置に設けられた排出領域AR12にICカード50をその自重により排出させる保持解除手段(ソレノイド25、制御部31)とを備えることを特徴とする。
【0055】
このICカードリーダライタ10によれば、ICカード50との間の通信が終了すると、保持解除手段(ソレノイド25、制御部31)によってICカード50が排出領域AR12へ排出されることにより、ユーザは、通信が終了したことを容易に認識することができる。
【0056】
また本発明の実施の形態におけるICカードリーダライタ10は、前記構成において、排出領域AR12は、通信領域AR11側から最下部43に向かって次第に傾斜が緩くなる第1の傾斜面47Aと、最下部43から通信領域AR11側とは反対側の終端部42まで逆方向へ傾斜した第2の傾斜面47Bとを備えることを特徴とする。
【0057】
このICカードリーダライタ10によれば、通信領域AR11から排出されたICカード50が第1の傾斜面47Aを滑り落ち、最下部43を通過した後、第2の傾斜面47Bで減速する。これにより、スムーズな排出動作が可能となる。
【0058】
また本発明の実施の形態に係るICカードリーダライタ10は、前記構成において、終端部42は、排出領域AR12を滑り落ちるICカード50が乗り越えない高さに形成されていることを特徴とする。
【0059】
このICカードリーダライタ10によれば、排出領域AR12を滑り落ちたICカード50が終端部42で止まることにより、排出領域AR12から飛び出すことがなくなり、ユーザの使い勝手をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 ICカードリーダライタ
11 本体
12 カバー
12A 上縁部
12B 切欠部
12C 透明部
15 表面部
15A 貫通孔
15B、15C ガイド部
21 膨出部
21A 先端部
25、72 ソレノイド
31 制御部
32 アンテナ基板
33 CPU基板
41 排出面
42 終端部
43 最下部
50 ICカード
53 表示部
61 表示部(LED)
AR11 通信領域
AR12 排出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナを介した通信を行うための通信領域において通信対象であるICカードを保持する保持手段と、
前記保持手段による保持を解除して、前記通信領域よりも低い位置に設けられた排出領域に前記ICカードをその自重により排出させる保持解除手段と
を備えることを特徴とするICカードリーダライタ。
【請求項2】
前記排出領域は、前記通信領域側から最下部に向かって次第に傾斜が緩くなる第1の傾斜面と、前記最下部から前記通信領域側とは反対側の終端部まで逆方向へ傾斜した第2の傾斜面とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のICカードリーダライタ。
【請求項3】
前記終端部は、前記排出領域を滑り落ちる前記ICカードが乗り越えない高さに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のICカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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