説明

ICカードリーダライタ

【目的】 ICカードリーダライタの小型化、簡略化を図る。
【構成】 クリスタル101によるクロックをCPU100内部で分周し、それぞれ周波数の異なるシステムクロックφおよび同期クロックSCKを生成する。ICカードに対して調歩同期式通信を行う場合には、バッファ102を活性化し、システムクロックφを出力する。ICカードに対してクロック同期式通信を行う場合には、バッファ103を活性化し、同期クロックSCKを出力する。本発明によれば、単一の発振器によるクロックを分周することにより周波数の異なる複数のクロックを生成しているため、装置構成を簡略化することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ICカードリーダライタ、詳しくは同期式、調歩同期式の通信を切り換え可能なICカードリーダライタに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、メモリおよびマイクロコンピュータを搭載したICカードが利用され始めている。ICカードリーダライタは、このICカードに対してデータの読み書きを行うものであって、ICカードとのデータの送受信を行う通信手段を備えたものである。かかるICカードリーダライタに要求される機能の一つとして、種々のタイプのICカードに対応できることが掲げられる。従来より使用されているICカードの端子等の位置は規格により統一されているものの、通信方式は異なる種類のものが使用されている。例えば、ICカードに用いられている通信方式としては、調歩同期式およびクロック同期式の2つの方式がある。したがって、少なくともこれらの通信方式に対応できることがICカードリーダライタに要求される。
【0003】ここで、図10に、調歩同期式通信およびクロック同期式通信の概略を示す。同図の(A)に示す調歩同期式通信はいわゆる非同期式通信方式とも呼ばれるものであって、同期用のクロックを用いることなくデータの送受信を行う方式である。8ビットのデータの前後にはスタートビットおよびストップビットが付加されており、受信側においてはスタートビットおよびストップビットを基準としてデータの読み取りを行うものである。同図の(B)に示すクロック同期式通信方式は、データとともに同期用のクロックを送受信するものである。受信側においては、クロックの立ち上がり毎にデータを読み込むことにょり、データを正しく受信することが可能となる。
【0004】また、クロック同期式の通信方式を用いたICカードであっても、さらにクロック周波数の異なるものがある。そこで、特開平2−5192号公報、特開昭61−148588号公報に開示されたように、発振周波数の異なるクロック発生回路を用いて各ICカード毎に最適なクロックを生成していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のICカードリーダライタにあっては、ICカードの通信方式およびクロック周波数に応じて複数のクロック発振回路を用意する必要があった。このため、ICカードリーダライタの構成が複雑となり、装置の大型化、高価格化を招いていた。
【0006】
【発明の目的】そこで、本発明は、装置の小型化、簡略化を実現可能なICカードリーダライタを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、ICカードに対してデータの送受信を行うICカードリーダライタにおいて、所定の周波数の基準クロックを発振させる発振手段と、基準クロックに基づき、周波数の異なる複数のクロックを生成可能なクロック生成手段と、複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式を選択し、この通信方式に対応するクロックを、クロック生成手段により生成された複数のクロックのなかから選択する選択手段と、選択手段によりそれぞれ選択された通信方式およびクロックに基づきICカードに対してデータの送受信を行う送受信手段とを備えたことを特徴とするICカードリーダライタである。
【0008】請求項2記載の発明は、上記選択手段は、調歩同期式通信方式またはクロック同期式通信方式のいずれかを選択可能であることを特徴とする請求項1記載のICカードリーダライタである。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1記載のクロック生成手段は、基準クロックを分周することにより、周波数の異なる複数のクロックを生成することを特徴としたICカードリーダライタである。
【0010】請求項4記載の発明は、請求項1記載の選択手段は、ICカードリーダライタに通信回線を介して接続されたホスト端末からのコマンドに基づき、通信方式を選択することを特徴とするICカードリーダライタである。
【0011】請求項5記載の発明は、請求項1記載の送受信手段は、選択された通信方式に応じた初期通信をICカードに対して行うことを特徴とするICカードリーダライタである。
【0012】
【作用】請求項1記載の発明において、発振手段は、所定の周波数の基準クロックを発振し、クロック生成手段は基準クロックに基づき複数の異なる周波数のクロックを生成する。例えば、CPUのシステムクロックを基準クロックとして使用することができる。選択手段は、異なる複数の通信方式のいずれかを選択するとともに、この通信方式に対応するクロックを上記複数のクロックのなかから選択する。送受信手段は、選択手段によりそれぞれ選択された通信方式およびクロックに基づきICカードに対してデータの送受信を行う。
【0013】したがって、本発明によれば、単一の発振手段のみによって、通信方式およびクロック周波数の異なる複数のICカードに対応することが可能となる。これにより、ICカードリーダライタの装置の簡略化および小型化を図ることができる。
【0014】請求項2記載の発明において、選択手段は、調歩同期式通信方式またはクロック同期式通信方式のいずれかを選択可能である。したがって、本発明によれば、単一の発振手段によって、調歩同期式またはクロック同期式のいずれの通信方式にも対応することが可能である。
【0015】請求項3記載の発明において、請求項1記載のクロック生成手段は、基準クロックを分周することにより、複数の異なる周波数のクロックを生成する。これにより、単一の発振手段によって、複数の異なる周波数のクロックを生成することができ、ICカードリーダライタの装置の小型化等を図ることが可能となる。
【0016】請求項4記載の発明において、請求項1記載の選択手段は、ICカードリーダライタに通信回線を介して接続されたホスト端末からのコマンドに基づき、通信方式を選択する。すなわち、本発明によれば、ホスト端末を用いて通信方式およびクロック周波数を自由に選択することが可能となる。
【0017】請求項5記載の発明において、請求項1記載の送受信手段は、選択された通信方式に応じた初期通信をICカードに対して行っている。例えば、通信方式によってICカードの初期化情報の受信タイミングが異なっていたとしても、送受信手段は初期化情報を正確に受信することが可能となる。
【0018】
【実施例】以下に、本発明の一実施例に係るICカードリーダライタを図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係るICカードリーダライタの概略回路図である。このICカードリーダライタは、CPU100、RAM150、RS−232C用のIC160等により構成されている。CPU100に接続されたクリスタル101は、クロック発振用のものであり、9.8304MHzのクロック(基準クロック)を発振可能なものである。このクロックはCPU100内部において分周され、ポートP57からは4.9152MHzのシステムクロックφが、ポートP72からは50kHzの同期クロックSCKがそれぞれ出力さる構成となっている。
【0019】システムクロックφおよび同期クロックSCKはトライステートのバッファ102、103を介してゲート105に入力されている。また、バッファ102、103にはインバータ104が接続されており、バッファ102、103のいずれかを選択的に活性化することが可能である。例えば、ポートP10がハイレベルである場合には、バッファ102が活性化し、ゲート105からシステムクロックφが出力される。また、ポートP10がロウレベルである場合には、バッファ103が活性化し、ゲート105から同期クロックSCKが出力される。
【0020】RS−232C用のIC160は、図示されていないホスト端末とのデータ通信を行うためのものであって、CPU100によりその動作が制御される。
【0021】図2は、CPU100内部のシステムクロックφおよび同期クロックSCKの発生回路をブロック図で表したものである。クリスタル101および発振回路110は、9.8304MHzのクロックを発振するためのものである。このマスタクロックは、分周回路111により4.9152MHzに分周され、システムクロックφが生成される。システムクロックφは、分周回路112によりさらに分周され50kHzの同期クロックSCKが生成される。システムクロックφおよび同期クロックSCKは上述したように、バッファ102、103により選択的にICカードに出力される。
【0022】図3に、ICカードリーダライタのコマンドの一例を表す。これらのコマンドは、ホスト端末からICカードリーダライタに送信されるものである。すなわち、ホスト端末からICカードリーダライタにこれらのコマンドを送信することにより、Cカードの動作を制御することが可能となる。同図において、コマンド”C0”および”C1”は、調歩同期式モード、クロック同期式モードに対応したクロックを切り換えるためのものである。したがって、ホスト端末からICカードリーダライタにコマンド”C0”を送信すると、ICカードリーダライタは調歩同期式モードに遷移し、コマンド”C1”を送信するとICカードリーダライタはクロック同期式モードに遷移する。
【0023】続いて、以上のように構成されたICカードリーダライタの動作を説明する。
【0024】図4は本実施例に係るICカードリーダライタのメインフローチャートである。このフローチャートにおいて、先ずCPU100はポートの初期化を行う(S101)。すなわち、CPU100は、ポートP10、P11、P12、P14、P15を出力ポートに設定し、ポートP13、P16を入力ポートに設定する。また、CPU100は、ポートP10、P11、P14、P15、P15に”0”(ロウレベル)を出力し、ポートP12に”1”(ハイレベル)を出力する。
【0025】次に、CPU100は、シリアルコミュニケーションインタフェースSCI、SCI2の設定を行う(S102)。SCI1はICカードとの通信方式を設定するためのものであり、SCI2はRS−232C用IC160に対する通信方式を設定するためのものである。リセット処理の後、SCI1およびSCI2を調歩同期式モードに設定し、通信速度を9600bpsとする。また、キャラクタフォーマットは8ビットデータ、偶数パリティ、ストップビットは1とする。さらに、CPU100はシステムクロックφ用のポートP57および同期クロック用のポートP72を出力用ポートに設定する(S103、S104)。
【0026】CPU100がRS−232C用のIC160を介してホストコンピュータからコマンドを受信したとする(S105)。なお、データ通信はCRターミネーションにより行われる。CPU100は、受信したコマンドの処理を行い(S107)、レスポンスをホストコンピュータに送信する(S106)。かかる処理(S105〜S107)を繰り返すことにより、ICカードリーダライタはホストコンピュータの指示に従った動作を行う。
【0027】図5は、クロック切り換え処理を表すフローチャートである。CPU100は、ホストコンピュータから送信されたコマンドのパラメータP1を識別する。パラメータP1が”0”であることは調歩同期式の通信を行うことを示し、パラメータP1が”1”であることはクロック同期式通信を行うことを示している。したがって、パラメータP1がこれらのいずれにも該当しない場合(S201でNO)には、エラーレスポンスをセットし(S209)、メインフローチャートに復帰する。
【0028】パラメータP1が”1”である場合(S202でYES)には、調歩同期式モードを表すモード0を設定する(S203)。そして、CPU100は、ポートP10に”1”を出力し、バッファ102を活性化させる(S204)。これにより、ポートP57からシステムクロックφが出力可能となる。また、CPU100はSCI2の初期化を行い(S205)、SCI2を調歩同期式モードに設定する。
【0029】一方、パラメータP1が”0”である場合(S202でNO)には、クロック同期式モードを表すモード1を設定する(S206)。そして、CPU100は、ポートP10に”0”を出力し、バッファ103を活性化させる(S207)。これにより、ポートP72から同期クロックSCKが出力可能となる。また、CPU100はSCI2の初期化を行い(S208)、SCI2をクロック同期式モードに設定する。以上の処理の後、CPU100はメインフローチャートに復帰する。
【0030】図6は、ICカードのリセット処理を表すフローチャートである。先ず、CPU100は、ICカードがICカードリーダライタに挿入されたか否かを判断する(S201)。ICカードが挿入されなかった場合(S201でNO)には、エラーセットを行い(S309)、メインフローチャートに復帰する。ICカードが挿入された場合(S301でYES)には、ポートP12を”0”、ポートP11を”1”にした後(S302)、ポートP12に”1”を出力する(S303)。これにより、ポートP12からリセット信号RSTが出力され、ICカードのリセットが行われる。
【0031】次に、CPU100は、通信方式を表すモードが”0”が否か、すなわち調歩同期式モードか否かを判断する(S304)。調歩同期式モードに設定されている場合(S304でYES)には、調歩同期式通信のタイミングでATR情報を受信する(S305)。一方、調歩同期式モードに設定されていない場合、すなわちクロック同期式モードに設定されている場合(S304でNO)には、クロック同期式通信のタイミングでATR情報を受信する(S306)。図8、図9に示すように、ICカードによってATR情報を受信するタイミングが異なっている。図8において、I/O(IR)は調歩同期式内部リセットカードの入出力データのタイミングを表し、I/O(AR)は調歩同期式外部リセットカードの入出力データのタイミングを表している。また、I/O(SHR)はクロック同期式応答カードの入出力データのタイミングを表している。図9は、クロック同期式のICカードのリセット時におけるタイミングチャートである。
【0032】CPU100は、受信したATR情報が正常か否かを判断し、ATR情報が正常でない場合(S307でNO)にはエラーセットを行い(S309)、ATR情報が正常である場合(S307でYES)にはレスポンスセットを行う(S308)。以上の処理の後、CPU100はメインフローチャートに復帰する。
【0033】図7は、ICカードリーダライタおよびICカード間におけるコマンド処理を表すフローチャートである。CPU100がICカードからのコマンドを受信しない場合(S401でNO)には、R/Wコマンド処理の後(S407)、ICカードに対するレスポンスセットを行う(S408)。CPU100がICカードからのコマンドを受信した場合(S401でYES)には、CPU100はS402以降の処理を実行する。
【0034】S402において、CPU100はモードが”0”か否か、すなわち調歩同期式モードに設定されているか否かを判断する(S402)。調歩同期式モードに設定されている場合(S402でYES)には、CPU100は調歩同期式による送信および受信を行う(S403、S404)。一方、クロック同期式モードに設定されている場合(S402でNO)には、CPU100はクロック同期式による送信および受信を行う(S405、S406)。以上の処理が終了した後、CPU100はメインフローチャートに復帰する。
【0035】なお、本発明は、上述した実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施可能である。例えば、クロック同期式モードにおいて、ICカードに応じてクロック周波数を切り換えてもよい。
【0036】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば、通信方式に応じた周波数のクロックを分周することにより、通信方式およびクロック周波数が異なる種々のICカードに対してデータ通信を行っている。すなわち、単一の発振回路によるクロックを分周し、周波数の異なる複数のクロックを生成しているため、複数の発振回路を用意する必要がなくなる。この結果ICカードリーダライタの装置構成の簡略化および小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタの概略回路図である。
【図2】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタのクロック生成回路のブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタのコマンドの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタのメインフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタのクロック切り換え処理を表すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタのリセット処理を表すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施例に係るICカードリーダライタのコマンド処理を表すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施例に係るICカードのタイミングチャートである。
【図9】本発明の一実施例に係るICカードのタイミングチャートである。
【図10】調歩同期式通信およびクロック同期式通信を説明するための図である。
【符号の説明】
100 CPU(発振手段、クロック生成手段、送受信手段)
101 クリスタル(発振手段)
102、103 バッファ(選択手段)
110 発振回路(発振手段)
111、112 分周回路(クロック生成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ICカードに対してデータの送受信を行うICカードリーダライタにおいて、所定の周波数の基準クロックを発振させる発振手段と、基準クロックに基づき、周波数の異なる複数のクロックを生成可能なクロック生成手段と、複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式を選択し、この通信方式に対応するクロックを、クロック生成手段により生成された複数のクロックのなかから選択する選択手段と、選択手段によりそれぞれ選択された通信方式およびクロックに基づきICカードに対してデータの送受信を行う送受信手段とを備えたことを特徴とするICカードリーダライタ。
【請求項2】 上記選択手段は、調歩同期式通信方式またはクロック同期式通信方式のいずれかを選択可能であることを特徴とする請求項1記載のICカードリーダライタ。
【請求項3】 請求項1記載のクロック生成手段は、基準クロックを分周することにより、周波数の異なる複数のクロックを生成することを特徴としたICカードリーダライタ。
【請求項4】 請求項1記載の選択手段は、ICカードリーダライタに通信回線を介して接続されたホスト端末からのコマンドに基づき、通信方式を選択することを特徴とするICカードリーダライタ。
【請求項5】 請求項1記載の送受信手段は、選択された通信方式に応じた初期通信をICカードに対して行うことを特徴とするICカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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