説明

ICタグの制御方法

【課題】RFIDタグなどのICタグとの間の通信速度や精度を低下させることなく、より多くの情報が取り扱えるようにする。
【解決手段】データ処理部113で、受け付けたユーザーデータを、分割数sで分割し、各々nbyteの分割ユーザーデータとし、データバッファ115に格納する。次に、データ処理部113は、分割ユーザーデータに関するHeader情報を生成し、データバッファ115に格納する。次に、データ処理部113は、分割した分割ユーザーデータと生成したHeader情報とをまとめ、タグ格納ユーザーデータとする。RW制御部116で、タグIDに対応付けられているタグ格納ユーザーデータを、検出したRFIDタグ104のユーザーメモリ142に書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の識別などに用いられるRFIDタグおよびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICカードやICタグなどを利用した多くの通信制御のシステムが開発されている(特許文献1,2,3参照)。このような中で、ICタグの1つであるRFID(Radio Frequency IDentification)タグが利用されている。RFIDタグは、は、タグごとにID(識別子)が割り振られ、物品を個別に識別するためなどの用途に用いられる。RFIDタグは、リーダライタ(以下、RW)と呼ばれる装置と、無線技術を用いて通信を行い、IDやデータのやり取りを行うことができる。
【0003】
図14は、RFIDタグを用いたシステムの構成例を示す構成図である。RFIDタグとRWとの間の通信は、無線技術を利用しているが、この無線伝送では、基本的には共有バス型の伝送方式であり、複数のRFIDタグ1,2,3とRWとが通信する場合には、衝突(collision)が発生しやすい。このため、図14に示すように、RFIDタグとRWとの通信は、基本的には1対1であり、同時に他のRFIDタグとの通信はできない。
【0004】
また、1つのRFIDタグとRWとの全2重通信もできず、図15に示すように、一方方向の通信を連続的に異なる時間軸で行うことにより、RWとRFIDタグとの双方向の通信を実現している。
【0005】
特に、パッシブタイプのRFIDタグは、RWから電力を供給してもらっているため、高速なデータ通信が難しく、「ISO15693」の場合の最大論理速度は26Kbpsであり、これは伝送速度なので、実際に伝達できるデータ量はさらに少なくなる。このためRFIDタグとRWとの間の通信量を削減し、効率よくデータのやり取りをすることが重要となる。
【0006】
RFIDタグ自体を識別するためには、タグIDを用いる。タグIDは、RFIDタグを各々に区別するための識別子であり、RFIDタグの規格ごとに一意のIDが割り当てられている。RFIDタグのデータの読み書きには、タグIDによりRFIDタグを指定して行う。このようなタグIDを備えるRFIDタグの一般的な規格では、記憶容量は、図16に示すように、タグIDの領域が64〜256bit、ユーザーメモリの領域が100〜4000バイト以上とされている。RFIDタグの規格は、「ISO15693」や「EPCglobal」などの国際規格で規定されているが、RFIDタグは、タグID以外にも、ユーザーメモリやユーザーエリアと呼ばれるデータ領域をRFIDタグの内で規定している。
【0007】
ユーザーメモリは、RFIDタグを使用するユーザーが任意のデータを格納することができる。ユーザーは、RWを用いて必要なデータをユーザーメモリに書き込み、また、読み出すことが可能であり、ユーザーが必要なデータを活用することができる。
【0008】
通常、タグIDの大きさ(記憶容量)は64bit−258bit長が多いが、ユーザーメモリは、100byte以上の大きさがある。また、近年は、4000byte以上のユーザーメモリを持つRFIDタグも出てきている。このような大容量のデータ領域であるユーザーメモリは、納品番号やバーコードのデータ、履歴情報、画像データなどが格納され、ビジネスに利用されている。
【0009】
RFIDタグは、一つ一つのタグIDが違うため、各々の部品や品物に貼り付けられ、個品の管理を行うことに利用することができる。例えば、RFIDタグは、流通分野などに活用され、複数の品物の入出庫を一括で管理することに活用されている。
【0010】
ここで、複数の企業間で、個品単位による入出庫の管理をRFIDタグで活用する例について説明する。まず、一般には、図17に示すように、医薬品会社から品物(医薬品)などを、出庫確認をしてから出荷し、販売店に到着して入庫確認を行うようにしている。この中では、以下のような作業が行われる。
【0011】
1.販売店から医薬品の発注が医薬品会社に届く。
2.医薬品会社で発注伝票が作成され、発注に応じて、医薬品の数と種類とが揃ってから出荷する。
3.販売店では、到着した医薬品の数や種類が正しいか、発注伝票で確認してから、入荷する。
【0012】
上述した出庫および入庫の流において、対象となる物品の各々にRFIDタグを添付することで、取り引きされる物品の数と種類とが、RW(リーダライタ)によって離れた場所から一括で識別できるようになる。例えば、RFIDタグを使用した場合、図18に示すように、医薬品会社から出荷する時に、ゲート型RWによる一括読み取りを行うことにより、出荷する医薬品と伝票の内容との整合を出荷確認において簡単に行うことができる。この後、販売店に到着した医薬品は、添付されているRFIDタグの情報が、RWによって読み取られ、伝票の内容との照合による入庫確認も簡単に行うことができる。また、注文していない品物が間違って配送されてきた場合や、間違った品物を出荷しようとしている場合などもすぐに検知できる。
【0013】
また、一般には、出荷および入荷などのチェック用の情報を紙の伝票の形で受け渡しているが、発注伝票などの情報をRFIDタグのユーザーメモリに持たせる(記憶させる)ことにより、発注内容と品物のチェックが、RFIDタグを用いることで同時に行うことができる。
【0014】
上述では、RFIDタグを用いることで、出荷と入荷時に、発注した内容と出荷した品物の数および種類が、自動的に確認できる活用例を示した。
【0015】
また、RFIDタグを利用した商取引の管理では、流通会社を経由した販売形態にも適用することができる。例えば、図19に示すように、医薬品会社より、流通会社を経由して販売店まで医薬品が運送される場合について説明する。図19に示すように、実際の医薬品は、多数の企業を経由する。また、同じ発注内容で、異なる販売店に届く場合もあり、また、異なる発注内容のものが一緒に販売店に届くこともある。このため、個々の医薬品のデータだけでなく、個々の医薬品を示す全体の情報(例えば、発注内容や伝票の情報)が、RFIDタグの個別に付けられている(記憶されている)ことが必要となる。
【0016】
以上に示したことから明らかなように、例えば、より複雑な流通形態に対応させるためには、より多くの情報が利用可能となることが重要であり、このためには、RFIDタグにおけるユーザーメモリにより多くの情報を記憶できるようにすることが重要となる。ユーザーメモリに格納できるデータを増やすことにより、より詳細なチェックやチェック以外の活用が可能になる。例えば、発注伝票の画像データを入れることにより、人間にも確認しやすい情報を記憶し、また、バーコードなどの画像情報を入れることにより、現場でバーコードの印刷が可能になるなどの利用が可能となる。
【0017】
このように、RFIDタグの活用ユーザーメモリに格納するデータが、増大する傾向にある。
【0018】
【特許文献1】特開2004−280754号公報
【特許文献2】特開2005−141529号公報
【特許文献3】特開2006−023962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、RFIDタグを用いることにより、取り引きされる物品の認識や確認を自動化し、簡素化することが可能である。しかしかしながら、RFIDタグのユーザーメモリに入れる情報が画像データのような大容量になった場合は、以下のような問題が発生する。
【0020】
第1に、データの読み出しに時間がかかるようになる。
【0021】
物品の管理を詳細に行うためには、RFIDタグのユーザーメモリに入れるデータを増やす必要がある。例えば、伝票番号以外にも、発注日時、物品の数や種類、バーコード、出荷日時、画像データなど、より多くの情報を記憶しておくことで、物品ごとに問題を検出しやすくなる。
【0022】
ところが、ユーザーメモリに大量のデータを入れた場合には、RFIDタグの通信時間が増大することになる。RFIDタグとRWの通信速度は限られており、無線の特性上、複数のRFIDタグとは同時に通信できない。このため、大量のデータを取り扱う場合、RWがRFIDタグの検知とデータの読み書きに時間がかかるようになる。これでは、確認のためにRWで全ての荷物のRFIDタグのIDと全てのデータを読み込むまで、荷物はRWの所で待機することになり、一括読み取りによる時間短縮という利点が薄れることになる。
【0023】
第2に、RFIDタグの読み取り精度が悪くなる。
【0024】
RFIDタグとRWとの間の通信は、無線技術を利用しているため、電波の反射やノイズの影響を受けやすい。このため、多数のRFIDタグごとに大容量のデータのやり取りを行うと、RFIDタグ自体のデータ通信でエラーが発生する確率が増える。
【0025】
また、個別の物品の確認作業のためには、全てのRFIDタグと通信を行う必要があるが、1つのRFIDタグとの通信時間が長くなると、他のRFIDタグとの通信時間がなくなってしまう。例えば、ベルトコンベアーなど移動している物品の検知をする場合には、ある1つの物品のRFIDタグのデータの読み取りに時間がかかった場合、次の物品のデータを読み取る前に通過してしまう可能性がある。
【0026】
このため、RFIDタグ自体のデータ通信時間が長くなるとエラーが発生する確率が高くなり、エラーが発生した場合には、RFIDタグ自体の確認作業が発生してしまい、結果的に時間短縮および精度向上という利点が得られなくなる。
【0027】
第三に、データの格納効率が悪くなる。
【0028】
ユーザーデータを活用するためには、様々なデータをRFIDタグのユーザーメモリに記憶する必要があるが、データ自体は複数のRFIDタグで同一なことが多いため、重複したデータをRFIDタグに書き込むことになる。
【0029】
例えば、発注内容が100個の医薬品の場合、発注伝票の内容は100個のRFIDタグで同じ内容になる。このデータをこのままRFIDタグのユーザーメモリに記憶する場合、100個の同じデータをRFIDタグのユーザーメモリに書き込み、さらに確認のためには同じ内容を100回読み取ることになる。
【0030】
この問題を解消するためには、RFIDタグのユーザーデータ量自体は増やすが、各RFIDタグとRWとの通信量と時間は削減し、なおかつ、全てのRFIDタグと通信する必要がある。これを実現するためには、例えば、RFIDタグのユーザーメモリには、上述したようなデータを記憶せず、ネットワークなどの別の方法で必要なデータを取得して確認作業を行う方法がある。例えば、タグIDをキーとし、発注内容などのデータ自体はネットワークを利用して取得する方法である。
【0031】
しかし、この方法では、ネットワークの整備が必要になり、コストがかかるという問題がある。例えば、物品が格納され、また受け入れられる倉庫に、無線LANなどのネットワーク環境の整備や、別会社のデータを参照するためのネットワークの整備や協定を結ぶ必要があり、別のコストが発生するなどの問題が新たに発生する。
【0032】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、RFIDタグなどのICタグとの間の通信速度や精度を低下させることなく、より多くの情報が取り扱えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明に係るICタグの制御方法は、設定されている元データを予め設定されている分割数で分割して複数の分割データを生成する第1ステップと、予め設定されている複数のタグIDに分割データを関連付けた複数の対応関係からなるタグ情報リストを作成する第2ステップと、タグ情報リストをもとに、全ての分割データを対応するタグIDを備えるICタグに送信する第3ステップとを少なくとも備える方法である。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、元データを分割してタグIDに送信するようにしたので、RFIDタグなどのICタグとの間の通信速度や精度を低下させることなく、より多くの情報が取り扱えるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0036】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1Aは、本発明の実施の形態1におけるICタグの制御方法を実現するためのシステム構成を示す構成図である。本システムは、リーダライタ(RW)101と、制御装置102と、複数のRFIDタグ104とを備えている。RFIDタグ104は、タグIDを記憶するタグID記憶部141と、ユーザーデータを記憶するユーザーメモリ142とを備える。また、RW101は、電波を用いてRFIDタグ104と通信を行い、RFIDタグ104におけるタグIDとユーザーデータの読み書きを行う。
【0037】
制御装置102は、設定登録部111とデータ制御部112とリーダライタ(RW)制御部116とを備える。設定登録部111は、データ制御部112およびRW制御部116で使用する設定が格納されている。この設定は、ユーザーが変更可能である。データ制御部112は、データ処理部113およびデータバッファ115を備えている。データ処理部113は、RFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶することになるユーザーデータの分割を行う。データ処理部113は、データバッファ115において、上述したデータの分割などの作業を行う。
【0038】
RW制御部116は、RW101を制御し、RFIDタグ104のタグID記憶部141に記憶されているタグIDの読み取り、RFIDタグ104内のユーザーメモリ142に記憶されているユーザーデータ(分割されたユーザーデータ)の読み書きを行わせる。
【0039】
次に、本実施の形態におけるシステムの動作例(ICタグの制御方法例)について説明する。以下では、5個のRFIDタグ104を用いる場合を例に説明する。まず、制御装置102が、例えばRFIDタグ104を用いた物品の管理に必要な、各RFIDタグ104の情報(タグID)およびユーザーデータを受け付けると、データ制御部112が、設定登録部111より設定情報を読み取り、受け付けた情報およびユーザーデータより、分割数sおよびユーザー領域の情報などを取得し、必要な計算をする。この後、データ制御部112は、受け付けたユーザーデータをデータ処理部113に渡す。
【0040】
データ処理部113では、図1Bに示すように、受け付けたLbyteのユーザーデータ150を、分割数sで分割し、各々nbyteの分割ユーザーデータ151とし、データバッファ115に格納する。次に、データ処理部113は、分割ユーザーデータ151に関するHeader情報を生成し、データバッファ115に格納する。Header情報は、分割数sなどの分割したユーザーデータの情報を含む。
【0041】
次に、データ処理部113は、図1Cに示すように、分割した分割ユーザーデータ151と生成したHeader情報152とをまとめ、タグ格納ユーザーデータ153とする。データ制御部112は、分割数sだけ異なるタグ格納ユーザーデータ153を作成する。
【0042】
次に、データ処理部113は、各RFIDタグ104のタグID記憶部141に記憶されているタグIDと作成したタグ格納ユーザーデータ153とを関連付けた書き込み用RFIDタグ情報リストを作成し、RW制御部116に通知する。
【0043】
書き込み用RFIDタグ情報リストを受け付けたRW制御部116では、リストにあるタグIDがタグID記憶部141に記憶されているRFIDタグ104を検出し、当該タグIDに対応付けられているタグ格納ユーザーデータ153を、検出したRFIDタグ104のユーザーメモリ142に書き込む(記憶する)。RW制御部116は、RW101を制御してこれらの書き込みを行う。本例では、ユーザーデータ150は、5個の分割ユーザーデータ151に分割されている。従って、5個のタグ格納ユーザーデータ153が、5個のRFIDタグ104のいずれかに格納されることになる。
【0044】
分割したデータの復元では、まずRW101が、各RFIDタグ104を検出し、設定登録部111に設定されている方法で、各RFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶されているタグ格納ユーザーデータ153(分割ユーザーデータ151+Header情報152)を、タグID記憶部141に記憶されているタグIDと共に取得する。
【0045】
RW制御部116は、取得したタグIDとタグ格納ユーザーデータ153より、ダグID,分割ユーザーデータ151,およびHeader情報152が対応付けられた読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、データ制御部112に通知する。
【0046】
データ制御部112では、設定登録部111に設定されている設定情報と、通知された読み出し用RFIDタグ情報リストのHeader情報を用い、取得(通知)された分割ユーザーデータ151よりユーザーデータ150復元する。
【0047】
まず、データ処理部113が、設定登録部111の設定情報を用い、RFIDタグ104のユーザーメモリ142より読み出したタグ格納ユーザーデータ153をHeader情報152と分割ユーザーデータ151とに分離する。分離した各データは、データバッファ115に格納する。また、データ処理部113は、分離した一方のデータであるHeader情報より、分割数sなどを取得する。この後、データ処理部113は、分離した他方のデータである分割ユーザーデータ151を、例えば、分離して得られたHeader情報をもとに元の並べ順にならべるなどのことによりユーザーデータ150に復元する。本例では、5個の分割ユーザーデータ151をまとめて元のユーザーデータ150に復元する。このようにして、復元したユーザーデータ150および読み出し用RFIDタグ情報リストを用いれば、例えば、RFIDタグ104を用いた入庫の管理が行えるようになる。
【0048】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、大容量のユーザーデータ150が、複数のRFIDタグ104のユーザーメモリ142に分散して格納されるようになるので、書き込みに際して行われるRW101からRFIDタグ104に送信されるデータの量を抑制することができる。また、ユーザーデータ150を用いるときは、各RFIDタグ104に分散されている分割ユーザーデータ151を取り出して復元しているので、RFIDタグ104からのデータの読み出しに際しても、RFIDタグ104からRW101に送信されるデータの量を抑制することができる。
【0049】
従って、本実施の形態によれば、RW101とRFIDタグ104との間で送受信されるデータの量を小さくできるので、これらの間の通信速度の低下を抑制できるようになる。また、送受信されるデータの量を小さくできるので、通信におけるエラーの発生も抑制できるようになり、通信の精度低下を抑制できるようになる。
【0050】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図2は、本発明の実施の形態2におけるICタグの制御方法を実現するためのシステム構成を示す構成図である。本システムは、リーダライタ(RW)101と、制御装置202と、アプリケーション103と、複数のRFIDタグ104とを備えている。RFIDタグ104は、タグIDを記憶するタグID記憶部141と、ユーザーデータを記憶するユーザーメモリ142とを備える。また、RW101は、電波を用いてRFIDタグ104と通信を行い、RFIDタグ104におけるタグIDとユーザーデータの読み書きを行う。RFIDタグ104およびRW101は、前述した実施の形態1と同様である。
【0051】
制御装置202は、RW101やRFIDタグ104を制御し、後述するアプリケーション103より受け付けたユーザーデータの、RFIDタグ104における記憶,変更などを行う。制御装置202は,RW101を制御し、任意のRFIDタグ104のタグID記憶部141に対するタグIDの登録(記憶)制御、およびユーザーメモリ142に対するユーザーデータの登録制御を行う。制御装置202は、設定登録部111、データ制御部212、およびRW制御部116を備えている。
【0052】
設定登録部111は、データ制御部112やRW制御部116で使用する設定情報が格納されており、ユーザーが設定を変更できる。例えば、図4に示すように、設定登録部111には、分割数s、ローテーション長r、Header情報、分散方法、RW設定など、ユーザーデータを分割して圧縮するための情報や圧縮データの復元方法が格納されている。これら設定値は、ユーザーが任意の値に変更できる。また、ユーザーデータの領域の指定方法も設定登録部111に登録されている。ユーザーデータ領域の分割の方法は任意の数だけ指定することができる。
【0053】
データ制御部212は、データ処理部113,圧縮・伸張部114、およびデータバッファ115を備えている。データ制御部212は、RFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶することになるユーザーデータの、分割、および分割したデータの圧縮と伸張などを行う。
【0054】
RW制御部116は、RW101を制御し、RFIDタグ104のタグID記憶部141に記憶されているタグIDの読み取り、RFIDタグ104内のユーザーメモリ142に記憶されているユーザーデータ(分割されたユーザーデータ)の読み書きを制御することができる。
【0055】
アプリケーション103は、ユーザーが使用するERP(Enterprise Resource Planning)などを実現するための基幹システムであり、発注伝票のデータや内容,発注内容の確認などを行う。アプリケーション103は、RFIDタグ104のタグIDやユーザーデータを使用し、物品の管理および入出庫の管理などを行うシステムである。本実施例では、発注情報よりRFIDタグの情報と任意のユーザーデータを生成する部分となる。
【0056】
次に、本誌ステムの動作例について、図2,図3A,図3B,および図4を用いて説明する。図3A,図3Bは、ユーザーデータ250を分割して圧縮する状態をそれぞれ示している。図3Aでは、5個に分割する場合について例示している。また、図4は、設定登録部111が備える設定情報を表している。設定登録部111では、分割数sやローテーション長r,Header情報、ユーザーデータ領域の情報などが格納されている。
【0057】
はじめに、アプリケーション103が発注情報などを受け取ると、アプリケーション103は、発注情報をもとにRFIDタグの情報(タグID)を生成する。アプリケーション103は、発注情報をもとに、必要なRFIDタグの数を割り出し、必要な数のRFIDタグの情報を生成する。ここでは、I個のRFIDタグの情報が生成されるものとする。また、アプリケーション103は、図3Aの(a)に示すような、ユーザーデータ250を生成する。ユーザーデータ250は、Lbyteの大容量のデータであり、上述したアプリケーション103を用いたシステムが動作を行う上で必要なデータの集まりである。
【0058】
この後、アプリケーション103は、RFIDタグの情報とユーザーデータ250を関連付けるために、I個のRFIDタグの情報とユーザーデータ250を制御装置202に送る。
【0059】
制御装置202では、I個のRFIDタグの情報およびユーザーデータ250をアプリケーション103から受け取ると、ユーザーデータ250を所定数の分割し、分割した各分割データを圧縮し、複数のRFIDタグ104のユーザーメモリ142に格納する。これにより、ユーザーデータ250とI個のRFIDタグとが関連付けられることになる。
【0060】
まず、データ制御部212は、設定登録部111より設定情報を読み取り、アプリケーション103から通知されたRFIDタグの情報とユーザーデータ250の情報より、分割数s、ローテーション長r、ユーザー領域の情報などを取得し、必要な計算をして、データ処理部113に渡す。本例では、分割数sは、RFIDタグ104の数I個に等しい場合とする。
【0061】
データ処理部113はユーザーデータ250を分割して圧縮する。分割においては、はじめに、得られたローテーション長rだけユーザーデータ250をローテーションして、nbyte長の領域Aに分割する。この分割では、図3Aの(b)に示すように、ユーザーデータ250より、5分割したはじめのD1を取り出す。次に、図3Aの(c)から(d)に示すように、ローテーション長r1だけユーザーデータ250をローテーションし、先頭にD2が配置された状態とし、この先頭に配置されたD2を取り出す。ローテーション長r1は、分割した1つの分割領域に相当する。
【0062】
次に、図3Aの(e)から(f)に示すように、ローテーション長r2だけユーザーデータ250をローテーションし、先頭にD3が配置された状態とし、この先頭に配置されたD3を取り出す。ローテーション長r2は、分割した2つの分割領域に相当する。これらのことを順次繰り返すことで、5個(s個)の分割ユーザーデータ251を作成する。作成された分割ユーザーデータ251はデータバッファ115に格納される。
【0063】
次に、データ制御部212では、圧縮・伸張部114が、設定登録部111に設定されている圧縮方式で、s個の分割ユーザーデータ251を各々圧縮する。本事例では可逆方式Aで圧縮し、ReversibleFunction()を生成する。なお、以降では、可逆方式Aで圧縮して生成した圧縮データをRF()と表記する。例えば、分割ユーザーデータ251の全体である領域Aを、可逆方式Aで圧縮して生成した圧縮データは、RF(領域A)となる。なお、nbyteの分割ユーザーデータ251を可逆方式Aで圧縮して得たRF(分割ユーザーデータ251)のサイズは、n’byte長になるとする。また、得られた圧縮データは、データバッファ115に格納する。
【0064】
次に、データ処理部113は、圧縮したデータに関するHeader情報を生成する。Header情報には、分割数s,元データサイズL,ローテーション長r、領域Aサイズn,RF()サイズn’などの分割して圧縮したデータを復元するための情報を含む。生成したHeader情報は、データバッファ115に格納される。
【0065】
以上のようにして圧縮したデータおよびHeader情報が得られると、図3Bに示すように、圧縮したデータRF(領域A)である分割圧縮データ251aおよびHeader情報252を備えるタグ格納ユーザーデータ253を作成する。前述したように、ユーザーデータ251を分割数sで分割してs個の分割ユーザーデータ251が作成されており、データ制御部212は、分割数sだけ異なるタグ格納ユーザーデータ253を作成する。
【0066】
次に、データ処理部113は、各RFIDタグ104に、各タグ格納ユーザーデータ253を対応づける(割り当てる)ことことをI個分だけ繰り返す。これにより、I個のRFIDタグ104にs個のタグ格納ユーザーデータ253が各々対応付けられた書き込み用RFIDタグ情報リストを作成する。また、データ処理部113は、作成した書き込み用RFIDタグ情報リストをRW制御部116に通知する。
【0067】
RW制御部116では、書き込み用RFIDタグ情報リストにあるタグIDがタグID記憶部141に記憶されているRFIDタグ104を検出し、当該タグIDに対応付けられているタグ格納ユーザーデータ253を、検出したRFIDタグ104のユーザーメモリ142に書き込む(記憶する)。RW制御部116は、RW101を制御してこれらの書き込みを行う。
【0068】
タグ格納ユーザーデータ253は、複数(s個)できるため、各々のタグ格納ユーザーデータ253を、複数(I個)のRFIDタグ104のユーザーメモリ142に分散して格納することができる。これにより、大容量のユーザーデータ250から、s個の分割圧縮したデータを作成し、I個のRFIDタグ104に分散して格納することができる。
【0069】
分割圧縮したデータの復元では、まずRW101が、RFIDタグを検出し、設定登録部111に設定されている方法で、各RFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶されているデータを取得する。
【0070】
RW制御部116は、取得したタグIDとタグ格納ユーザーデータ253より、ダグID,分割圧縮データ251a,およびHeader情報252が対応付けられた読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、データ制御部212に通知する。
【0071】
データ制御部212では、設定登録部111と読み出し用RFIDタグ情報リストのHeader情報を用い、取得された分割圧縮データ251aより分割ユーザーデータ251を復元する。
【0072】
データ制御部212は、読み出し用RFIDタグ情報リストの1つのRFIDタグ104の(に記憶されていた)タグ格納ユーザーデータ253および設定登録部111の情報をデータ処理部113に渡し、復元処理を開始する。
【0073】
データ処理部113は、設定登録部111の情報を用い、タグ格納ユーザーデータ253をHeader情報252と分割圧縮データ251aとに分離する。分離した各データは、データバッファ115に格納する。分離した一方のデータであるHeader情報252より、分割数s,元データサイズL,ローテーション長r、領域A(分割ユーザーデータ251)サイズn,分割圧縮データ251aのサイズn’を取得する。
【0074】
分離した他方のデータである分割圧縮データ251aを、指定された方式により圧縮・伸張部114で伸張する。この伸張により、分割ユーザーデータ251が復元される。この復元された分割ユーザーデータ251は、データバッファ115に格納する。これで、1つのRFIDタグ104のユーザーメモリ142の復元が終了する。このデータの復元作業を、読み出し用RFIDタグ情報リストにある全てのRFIDタグの個数分繰り返す。
【0075】
この場合、分割ユーザーデータ251は完全に復元できるが、これは、元のユーザーデータ250を分割した一部であるため、1つのRFIDタグ104のユーザーメモリ142からは元のユーザーデータ250は復元できていない。本実施の形態では、ユーザーデータ251を分割した分割ユーザーデータ251は、分散して各RFIDタグ104に格納されているため、読み出し用RFIDタグ情報リストの全ての分割ユーザーデータ251を解析し、分割数s個だけの分割ユーザーデータ251が揃えば、完全に元のユーザーデータ250を復元できる。
【0076】
読み出し用RFIDタグ情報リストを全て解析し、ユーザーデータ250を復元した後、ユーザーデータ250と読み出し用RFIDタグ情報リストの情報をアプリケーション103に通知することより、アプリケーション103はRFIDタグ104のリストと、これらに関連付けられた任意の大容量のデータを活用することができる。
【0077】
次に、動作例について図5のフローチャートを用いてより詳細に説明する。なお、制御装置202の設定登録部111には、図4に示すような設定情報がすでに登録されているものとする。
【0078】
まず、アプリケーション103が発注情報などを受け取り、受け取った発注情報に関するRFIDタグの情報とユーザーデータ250を生成する(ステップS501)。次に、アプリケーション103が、RFIDタグ情報(タグID)とユーザーデータ250を関連付けるために、タグIDとユーザーデータ250の情報を制御装置202に通知する(ステップS502)。
【0079】
制御装置202では、データ制御部212が設定登録部111より設定を読み込み、分割数sやローテーション長rやHeader情報の読み込みを行う。データ制御部212は読み込んだ設定情報とRFIDタグ情報から、分割数s、ローテーション長rを計算する(ステップS503)。
【0080】
次に、ステップS504で、カウントiを0にセットする。次に、ステップS505における判断で、ユーザーデータ250より生成した圧縮データが指定した分割数sになった場合は、ステップS512に進む。これ以外の場合はステップS506に進む。
【0081】
ステップS506では、まず、計算された分割数s、ローテーション長r、ユーザーデータ領域の情報、Header情報とユーザーデータなどをデータ処理部113に渡す。次いで、データ処理部113が、i番目の分割ユーザーデータ251を作成する。分割ユーザーデータ251は、データ処理部113が、前述したように、ローテーション長rだけローテーション部分のデータを移動して取り出すことにより作成する。本実施例では、ローテーション長rは、計算で算出され、i番目ごとに異なる。作成した分割ユーザーデータ251は、データバッファ115に格納する。
【0082】
次に、ステップS507で、データ処理部113が、圧縮・伸張部114を用い、i番目の分割ユーザーデータ251の圧縮を行う。データ処理部113は、指定された方法で、各々の分割ユーザーデータ251の領域A部分を圧縮・伸張部114を用いて圧縮する。本例では、分割ユーザーデータ251の全てが領域Aとなる。これらのことにより、分割ユーザーデータ251を圧縮した分割圧縮データ251aが生成される。また、作成されたi番目の分割圧縮データ251aをデータバッファ115に格納する。
【0083】
次に、ステップS508で、データ処理部113が、i番目のHeader情報252を作成する。Header情報には、圧縮したデータを復元するために必要なデータ(分割数s,元データサイズL,ローテーション長r、領域Aサイズn,RF(領域A)サイズn’)を入れる。この後、作成したHeader情報252と分割圧縮データ251aとあわせたタグ格納ユーザーデータ253を作成し、データバッファ115に格納する。
【0084】
次に、ステップS509で、タグ格納ユーザーデータ253における分割圧縮データ251aと圧縮前の分割ユーザーデータ251とのデータサイズを比較する。分割圧縮データ251aが分割ユーザーデータ251より大きい場合には、ステップS510へ進み、Header情報252を「圧縮無し」という情報に変更し、作成されたタグ格納ユーザーデータ253を破棄し、元の分割ユーザーデータ251と圧縮なしとしたHeader情報252とで、新しいタグ格納ユーザーデータ253を作成し、これをデータバッファ115に格納する。
【0085】
一方、タグ格納ユーザーデータ253が分割ユーザーデータ251より小さい場合は、圧縮データの生成が成功したとして、ステップS511へ進む。ステップS511では、次のタグ格納ユーザーデータ253を作成するために、iを1つ増やし、ステップS505へ戻る。
【0086】
以上のステップS505からステップS511までを、iが分割数sとなるまで繰り返すことで、分割数s個のタグ格納ユーザーデータ253が生成される。
【0087】
s個のタグ格納ユーザーデータ253が生成されたら(ステップS505のNo)、ステップS512に進み、書き込み用RFIDタグ情報リストを作成する。書き込み用RFIDタグ情報リストは、タグIDとタグ格納ユーザーデータ253の組み合わせのリストである。データ制御部212は、設定登録部111に設定されている分散方式を読み取り、s個のタグ格納ユーザーデータ253をI個のRFIDタグのユーザーメモリに分散して格納するように組み合わせ、書き込み用RFIDタグ情報リストを作成する(ステップS512)。
【0088】
次に、ステップS513で、データ制御部212が、生成した書き込み用RFIDタグ情報リストをRW制御部116に通知する。
【0089】
RW制御部116は、通知された書き込み用RFIDタグ情報リストの情報より、各RFIDタグ104を検出し、指定されたタグIDのRFIDタグ104のユーザーメモリ142にタグ格納ユーザーデータ253を書き込んでいく(ステップS514)。I個のRFIDタグに、s個のタグ格納ユーザーデータ253を分散して格納して終了する。
【0090】
以上のことにより、1つのユーザーデータ250から分割して圧縮したs個のデータ(タグ格納ユーザーデータ253)を作成し、I個のRFIDタグ104のユーザーメモリ142に分散して格納することができる。
【0091】
次に、分割圧縮したデータを復元する動作手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0092】
まず、RW101の電波範囲内にRFIDタグ104が入ると、RW101はRFIDタグ104を検知する(ステップS601)。RFIDタグ104が検知されると、RW101は、検出されたRFIDタグ104のタグID記憶部141よりタグIDを読み出し、読み出したタグIDを制御装置202に通知する(ステップS602)。
【0093】
次に、RW制御部116は、検出されたタグIDを用い、設定登録部111に設定されている読み出し方法で、RFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶されているデータ(タグ格納ユーザーデータ253)を読み出すように、RW101に指示する(ステップS603)。これにより、検出されたRFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶されているタグ格納ユーザーデータ253が読み出される。
【0094】
次に、RW制御部116は、取得したタグIDと読み出したタグ格納ユーザーデータ253とをまとめて読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、これをデータ制御部212に通知する(ステップS604)。
【0095】
次に、ステップS605で、カウントiを0に初期化する。次に、ステップS606における判断で、カウントiが、読み出し用RFIDタグ情報リストのRFIDタグ104の数未満であることを確認する。カウントiがRFIDタグ104の数未満である場合、ステップS607に進む。これ以外の場合は、全てのRFIDタグ104のユーザーメモリを解析した場合であり、終了することになるので、ステップS613に進む。
【0096】
ステップS607で、データ制御部212は、読み出し用RFIDタグ情報リストの解析を開始する。読み出し用RFIDタグ情報リストの解析では、RFIDタグ104ごとにタグ格納ユーザーデータ253の情報を解析する。
【0097】
次に、ステップS608で、データ制御部212は、読み出し用RFIDタグ情報リストを用い、タグ格納ユーザーデータ253の復元を行う。データ処理部113は、設定登録部111の情報を用い、タグ格納ユーザーデータ253をHeader情報252と分割圧縮データ251aとに分割する。分割した各データはデータバッファ115に格納する。
【0098】
データ処理部113では、Header情報252より、分割数s,元データサイズL,ローテーション長r、領域A(分割ユーザーデータ251)サイズn,分割圧縮データ251aのサイズn’を取得する。この時、i=0である場合は、データ処理部113は、データバッファ115にデータサイズLのユーザーデータバッファを作成する。ユーザーデータバッファは復元したデータを格納しておく領域である。
【0099】
データ処理部113は、解析したHeader情報252を用い、分割圧縮データ251aを復元する。分割圧縮データ251aは可逆方式Aで圧縮されているので、データ処理部113は、データバッファ115より分割圧縮データ251aを取り出し、圧縮・伸張部114を用い、可逆方式Aで分割圧縮データ251aを復元し、分割ユーザーデータ251を作成する。これにより、分割圧縮データ251aを完全な分割ユーザーデータ251として復元できる(ステップS608)。
【0100】
次に、ステップS609で、データ処理部113は、復元した分割ユーザーデータ251をローテンション長rを用いて、元のユーザーデータ250内の配置状態に戻し、データバッファ115に作成したユーザーデータバッファに格納する。
【0101】
次に、データ処理部113はユーザーデータバッファの中の復元したデータの中でデータの完全性が保証できる部分は、格納されたデータをロックする(ステップ610)。従って、ステップS609の段階で、完全に復元されてロックされている部分には書き込めないことになる。
【0102】
次に、ステップS611で、データ処理部113は、ユーザーデータバッファの中をチェックし、元データ(ユーザーデータ250)が全て完全に復元できたかを確認する。元のユーザーデータ250が完全に復元されている場合は、ステップS613に進む。復元できていない場合は、ステップS612に進み、次のRFIDタグ104の情報(タグ格納ユーザーデータ253)の解析を行うため、iを1つ増やして次の解析のためにステップ606に進む。
【0103】
以上のステップS606〜ステップS612を繰り返すことにより、元のユーザーデータ250を復元していくことができる。完全に元のデータを復元できた場合、またはRFIDタグ104情報を全て解析した場合は、解析して得られた元のユーザーデータとRFIDタグ104の情報をシステムに通知する(ステップS613)
【0104】
以上に説明したように、I個のRFIDタグ104のユーザーデータ142を読み出し、s個の違う部分を圧縮した分割圧縮データ251aを取得し、解析と復号とをすることにより、完全なユーザーデータ250を得ることができる。
【0105】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態2では、ユーザーデータ250を分割した1つの分割ユーザーデータ251を可逆可逆方式で圧縮した分割圧縮データ251aを、各RFIDタグ104のユーザーメモリ142に格納するようにしたが、これに限るものではない。以下に説明する本実施の形態3では、分割して生成した複数の領域を、各々異なる圧縮方式で圧縮してユーザーメモリ142に格納する場合について説明する。なお、本実施の形態3においても、前述した実施の形態2と同様に、図2を用いて説明したシステムを用いる。
【0106】
はじめに、アプリケーション103が発注情報などを受け取る。アプリケーション103は発注情報をもとにRFIDタグの情報と、図7Aに示すような、Lbyteのユーザーデータ400を生成する。アプリケーション103はRFIDタグの情報とユーザーデータ400を関連付けるために、I個のRFIDタグの情報とユーザーデータ400を制御装置202に送る。
【0107】
制御装置202では、I個のRFIDタグの情報とユーザーデータ400をアプリケーション103から受け取った場合、ユーザーデータ400を分散圧縮して複数のRFIDタグのユーザーメモリに格納することにより、ユーザーデータ400とI個のRFIDタグに関連付けることを行う。
【0108】
この関連付けにおいて、データ制御部212は、設定登録部111より設定情報を読み取り、アプリケーション103から通知されたRFIDタグの情報とユーザーデータ400の情報より、分割数s、オフセット長o、ローテーション長r、領域A、領域Bの情報などを計算して取得する。
【0109】
次に、データ処理部113は、計算された値を利用してユーザーデータ400を分割圧縮することを行う。
【0110】
まず、オフセット長oを利用し、図7Bに示すように、ユーザーデータ400をオフセットとローテーション部分に分割したユーザーデータ403を作成する。次いで、ローテーション部分を、計算されたローテーション長rだけローテーションし、nbyte長の領域A分割データ401とmbyte長の領域B分割データ402の2つに分割する。
【0111】
例えば、分割数が5の場合、図7Bの(a)に示すように、設定されているオフセット長oによるオフセットとローテーション部分に分割し、また、ローテーション部分をD1,D2,D3,D4,D5に分ける。次に、図7Bの(b)に示すように、オフセットの部分とローテーション部分の最初よりrbyteの部分であるD1とを組み合わせて、領域A分割データ401とし、残りのD2,D3,D4,D5の部分を領域B分割データ402とする。
【0112】
次に、ローテーション部分をローテーション長1rでローテーションする。これにより、図7Bの(c)に示すように、ローテーション部分が、D2,D3,D4,D5,D1の並びとなる。この状態で、ローテーション部分の最初よりrbyteの部分を取り出すと、D2が取り出されることになる。このようにして取り出したD2と、オフセットの部分のとを組み合わせて、次の領域A分割データ401とし、残りのD3,D4,D5,D1の部分を次の領域B分割データ402とする。
【0113】
次に、ローテーション部分をローテーション長2rでローテーションする。これにより、図7Bの(d)に示すように、ローテーション部分が、D3,D4,D5,D1,D2の並びとなる。この状態で、ローテーション部分の最初よりrbyteの部分を取り出すと、D3が取り出されることになる。このようにして取り出したD3と、オフセットの部分のとを組み合わせて、次の領域A分割データ401とし、残りのD4,D5,D1,D2の部分を次の領域B分割データ402とする。
【0114】
次に、ローテーション部分をローテーション長3rでローテーションする。これにより、図7Bの(e)に示すように、ローテーション部分が、D4,D5,D1,D2,D3の並びとなる。この状態で、ローテーション部分の最初よりrbyteの部分を取り出すと、D4が取り出されることになる。このようにして取り出したD4と、オフセットの部分のとを組み合わせて、次の領域A分割データ401とし、残りのD5,D1,D2,D3の部分を次の領域B分割データ402とする。
【0115】
最後に、ローテーション部分をローテーション長4rでローテーションする。これにより、図7Bの(f)に示すように、ローテーション部分が、D5,D1,D2,D3,D4の並びとなる。この状態で、ローテーション部分の最初よりrbyteの部分を取り出すと、D5が取り出されることになる。このようにして取り出したD5と、オフセットの部分のとを組み合わせて、次の領域A分割データ401とし、残りのD1,D2,D3,D4の部分を次の領域B分割データ402とする。
【0116】
以上のことにより、5種類の、領域A分割データ401と領域B分割データ402の組が作成されることになる。いずれの領域Aにおいても、オフセット部分が共通に含まれている。また、同じ組の領域A分割データ401と領域B分割データ402とにより、元のユーザーデータ400が完全に復元されることになる。このように、この場合においては、複数組の領域A分割データ401と領域B分割データ402とが作成されるが、いずれか1組の領域A分割データ401と領域B分割データ402とにより、元のユーザーデータ400が復元できる。
【0117】
上述した分割では、オフセット長oが0以外の時は、このオフセット部分をローテーションさせず、ローテーション部分のみをローテーションさせて分割のために取り出す部分を変更する。このため、オフセット部分は必ず領域A分割データ401に含まれ、全てのRFIDタグ104のユーザーメモリ142に格納されることを保証する。なお、オフセット長oを0byteとした場合、ユーザーデータ400の全てがローテーション部分になり、データアドレス0(データの先頭部分)が、ローテーション長rだけローテーションすることになる。
【0118】
以上のように分割することで、作成される領域A分割データ401および領域B分割データ402は、データバッファ115に格納される。
【0119】
なお、設定情報に設定されている設定値は、ユーザーが任意の値に変更することができる。また、ユーザーデータの領域の指定方法も設定登録部111に登録されており、上述した領域Aと領域Bとなどのユーザーデータ領域の分割の方法は任意の数だけ指定することができる。例えば、領域A,領域B,および領域Cの3領域の分割し、後述する圧縮に関しても、領域毎に異なる圧縮方式を適用させるようにしてもよい。
【0120】
次に、データ処理部113が、設定登録部111に設定されている圧縮方式で、圧縮・伸張部114を用いて、領域A分割データ401および領域B分割データ402を圧縮する。本実施の形態においては、領域A分割データ401は可逆方式Aで圧縮して、RF(領域A)を生成する。RF(領域A)のサイズは、n’byte長になるとする。
【0121】
一方、領域B分割データ402は、不可逆方式Bで圧縮し、IrreversibleFunction(領域B)を生成する(以後、IF()と表記する)。IF(領域B)のサイズはm’byte長になるとする。生成した圧縮したデータRF(領域A)とIF(領域B)は、データバッファ115に格納する。
【0122】
通常、不可逆圧縮は可逆圧縮に比べ、高圧縮になりデータサイズが1/10以下になることが多い。従って、データ量の多い領域B分割データ402であっても、上記圧縮によりデータ量を小さくすることができる。しかし、不可逆圧縮はデータを復元した時に元のデータを完全に戻せない特徴を持つ。本実施の形態では、n’<n、m’<<mになるとする。
【0123】
次に、データ処理部113は、圧縮したデータRF(領域A)とIF(領域B)に関するHeader情報を生成する。Header情報には、分割数s,オフセット長o,元データサイズL,ローテーション長r、領域Aサイズn,領域Bサイズm、RF()サイズn’、IF()サイズm’などの分割圧縮したデータの情報を含む。生成したHeader情報はデータバッファ115に格納される。
【0124】
次に、図7Cに示すように、Header情報403と、分割圧縮データRF(領域A)401aと、分割圧縮データIF(領域B)402aとをまとめ、タグ格納ユーザーデータ404を作成する。データ制御部212は、分割数sだけ異なるタグ格納ユーザーデータ404を作成する。
【0125】
次に、データ処理部113は、各RFIDタグ104に、タグ格納ユーザーデータ404を割り当てることをI個分だけ繰り返し、各RFIDタグ104に対応してタグ格納ユーザーデータ404が割り当てられたI個分の情報が入った書き込み用RFIDタグ情報リストを作成する。また、作成した書き込み用RFIDタグ情報リストは、RW制御部116に通知する。
【0126】
次に、RW制御部116は、書き込み用RFIDタグ情報リストにあるタグIDを検出し、指定されたタグ格納ユーザーデータ404を、対応するRFIDタグ104のユーザーメモリ142に書き込んでいく。タグ格納ユーザーデータ404は複数(s個)作成されているため、各タグ格納ユーザーデータ404が、複数のRFIDタグ104のユーザーメモリ142に分散して格納されることになる。
【0127】
これにより、大容量のユーザーデータ400から、s個の分割圧縮したタグ格納ユーザーデータ404を作成し、I個のRFIDタグに分散して格納することができる。なお、前述したように、本実施の形態においては、s個とI個とは等しい数であるが、これらが異なっていてもよい。
【0128】
次に、データの復元について説明する。データ復元では、RW101がRFIDタグ104することからはじまる。RW101がRFIDタグ104を検出すると、設定されている方法で、検出されたRFIDタグ104におけるユーザーメモリ142のデータを取得する。取得したデータには、タグ格納ユーザーデータ404が含まれている。また、検出されたときには、RFIDタグ104のタグID記憶部141に記憶されているタグIDも取得される。
【0129】
RW制御部116は、以上のようにしてRW101が取得したタグIDとユーザーメモリのデータ(タグ格納ユーザーデータ404)より、読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、データ制御部212に通知する。データ制御部212では、設定登録部111と読み出し用RFIDタグ情報リストのHeader情報を用い、タグ格納ユーザーデータ404より、領域A分割データ401および領域B分割データ402を復元する。
【0130】
データ制御部212は、読み出し用RFIDタグ情報リストの1つのRFIDタグ(拓ID)のタグ格納ユーザーデータ404と、設定登録部111の情報とをデータ処理部113に渡し、復元処理を開始する。
【0131】
データ処理部113は、設定登録部111の情報を用い、タグ格納ユーザーデータ404をHeader情報403と分割圧縮データRF(領域A)401aと分割圧縮データIF(領域B)402aとに分離する。分離した各データは、データバッファ115に格納する。Header情報403より、分割数s,オフセット長o,元データサイズL,ローテーション長r、領域Aサイズn,領域Bサイズm、RF(n)サイズn’、IF(m)サイズm’を取得する。
【0132】
次に、分割した分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aを、圧縮・伸張部114で指定された方式で伸張する。これにより、領域A分割データ401と、不完全な領域B分割データ402が復元できる。これらデータは、データバッファ115に格納される。
【0133】
以上の動作により、1つのRFIDタグ104におけるユーザーメモリ142に格納されていたタグ格納ユーザーデータ404の復元が終了する。このデータの復元作業は、読み出し用RFIDタグ情報リストに登録されているタグIDの個数分繰り返す。
【0134】
上述した復元では、領域A分割データ401は完全に復元できるが、分割圧縮データIF(領域B)402aは不完全なデータである。このため、1つのタグ格納ユーザーデータ404からは、完全な元のユーザーデータ400は復元できていない。
【0135】
本実施の形態では、もとにユーザーデータ400を分割して領域A分割データ401を作成し、これについては可逆的に圧縮しているため、読み出し用RFIDタグ情報リスト全てのタグ格納ユーザーデータ404を解析して復元(伸張)し、分割数s個だけの領域A分割データ401が揃えば、完全に元のユーザーデータ400を復元できる。
【0136】
全てのタグ格納ユーザーデータ404を解析してユーザーデータ400を復元した後、復元したユーザーデータ400および読み出し用RFIDタグ情報リストの情報をアプリケーション103に通知する。この通知により、アプリケーション103は、RFIDタグ104のリストと、これらに関連付けられた任意のデータを活用することができる。また、1つのRFIDタグ104には、分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aがあるので、不完全であるが、ユーザーデータ400全体のデータが入っている。
【0137】
次に、動作例について図5のフローチャートを用いてより詳細に説明する。なお、制御装置202の設定登録部111には、図8に示すような設定情報がすでに登録されているものとする。
【0138】
はじめに、アプリケーション103が発注情報などを受け取り、受け取った発注情報に関するRFIDタグとユーザーデータ400を生成する(ステップS501)。次に、アプリケーション103が、RFIDタグとユーザーデータ400を関連付けるために、RFIDタグとユーザーデータ400の情報を制御装置202に通知する(ステップS502)。
【0139】
制御装置202では、データ制御部212が設定登録部111より設定を読み込み、分割数sやローテーション長rやHeader情報の読み込みを行う。データ制御部212は読み込んだ設定情報とRFIDタグ情報から、分割数s、オフセット長oを計算する(ステップS503)。
【0140】
次に、ステップS504で、カウントiを0にセットする。次に、ステップS505における判断で、ユーザーデータ400より生成した圧縮データが指定した分割数sになった場合は、ステップS512に進む。これ以外の場合はステップS506に進む。
【0141】
ステップS506では、まず、計算された分割数s、オフセット長o、ローテーション長r、ユーザーデータ領域の情報、Header情報とユーザーデータなどをデータ処理部113に渡す。次いで、データ処理部113が、前述したように、i番目の領域A分割データ401および領域B分割データ402を作成する。作成した領域A分割データ401および領域B分割データ402は、データバッファ115に格納する。
【0142】
次に、ステップS507で、データ処理部113が、圧縮・伸張部114を用い、i番目の領域A分割データ401および領域B分割データ402の圧縮を行う。圧縮・伸張部114は、各々指定された方法で、領域A分割データ401および領域B分割データ402を圧縮する。これらのことにより、分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aが生成される。これらのデータは、データバッファ115に格納される。
【0143】
次に、ステップS508で、データ処理部113が、i番目のHeader情報403を作成する。Header情報403には、圧縮したデータを復元するために必要なデータ(分割数s,元データサイズL,ローテーション長r、領域Aサイズn,領域Bサイズm、RF(領域A)サイズn’、IF(領域B)サイズm’)を入れる。この後、作成したHeader情報403と分割圧縮データRF(領域A)401aと分割圧縮データIF(領域B)402aとをあわせたタグ格納ユーザーデータ404を作成して、データバッファ115に格納する。
【0144】
次に、ステップS509で、タグ格納ユーザーデータ404における分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aの合計データサイズと、元のユーザーデータ400のデータサイズとを比較する。分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aの合計データサイズが、ユーザーデータ400のデータサイズより大きい場合には、ステップS510に進み、Header情報403を「圧縮無し」という情報に変更し、作成されたタグ格納ユーザーデータ404を破棄し、ユーザーデータ400をと圧縮なしとしたHeader情報403とで、新しいタグ格納ユーザーデータ404を作成し、これをデータバッファ115に格納する。
【0145】
一方、分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aの合計データサイズが、ユーザーデータ400のデータサイズより小さい場合は、圧縮データの生成が成功したとして、ステップS511へ進む。ステップS511では、次のタグ格納ユーザーデータ404を作成するために、iを1つ増やし、ステップS505へ戻る。
【0146】
以上のステップS505からステップS511までを、iが分割数sとなるまで繰り返すことで、分割数s個のタグ格納ユーザーデータ404が生成される。
【0147】
s個のタグ格納ユーザーデータ404が生成されたら(ステップS505のNo)、ステップS512に進み、書き込み用RFIDタグ情報リストを作成する。書き込み用RFIDタグ情報リストはタグIDとタグ格納ユーザーデータ404の組み合わせのリストである。データ制御部212は、設定登録部111に設定されている分散方式を読み取り、s個のタグ格納ユーザーデータ404をI個のRFIDタグのユーザーメモリに分散して格納するように組み合わせ、書き込み用RFIDタグ情報リストを作成する(ステップS512)。
【0148】
次に、ステップS513で、データ制御部212が、生成した書き込み用RFIDタグ情報リストをRW制御部116に通知する。
【0149】
RW制御部116は、通知された書き込み用RFIDタグ情報リストの情報より、各RFIDタグ104を検出し、指定されたタグIDのRFIDタグ104におけるユーザーメモリ142に、対応するタグ格納ユーザーデータ404を書き込んでいく(ステップS514)。I個のRFIDタグ104に、s個のタグ格納ユーザーデータ404を分散して格納して終了する。
【0150】
以上のことにより、1つのユーザーデータ400から分割して圧縮したs個のデータ(タグ格納ユーザーデータ404)を作成し、I個のRFIDタグ104のユーザーメモリ142に分散して格納することができる。
【0151】
次に、分割圧縮して作成した複数のタグ格納ユーザーデータ404よりユーザーデータ400を復元する動作手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0152】
はじめに、RW101の電波範囲内にRFIDタグが入ると、RW101はRFIDタグを検知する(ステップS601)。RFIDタグ104が検知されると、検出されたRFIDタグ104のタグID記憶部141よりタグIDを読み出し、読み出したタグIDを制御装置202に通知する(ステップS602)。
【0153】
次に、RW制御部116は、検出したタグIDを用い、設定登録部111に設定されている読み出し方法で、RFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶されている宅が句のユーザーデータ404を読み出すように、RW101に指示する(ステップS603)。これにより、検出されたRFIDタグ104のユーザーメモリ142に記憶されているタグ格納ユーザーデータ404が読み出される。
【0154】
次に、RW制御部116は、取得したタグIDと読み出したタグ格納ユーザーデータ404とをユーザーメモリの情報をまとめて読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、これをデータ制御部212に通知する(ステップS604)。
【0155】
次に、ステップS605で、カウントiを0に初期化する。次に、ステップS606における判断で、カウントiが、読み出し用RFIDタグ情報リストのRFIDタグ104の数未満であることを確認する。カウントiがRFIDタグ104の数未満である場合、ステップS607に進む。これ以外の場合は、全てのRFIDタグ104のユーザーメモリを解析した場合であり、終了することになるので、ステップS613に進む。
【0156】
ステップS607で、データ制御部212は、読み出し用RFIDタグ情報リストの解析を開始する。読み出し用RFIDタグ情報リストの解析では、RFIDタグ104ごとにタグ格納ユーザーデータ403の情報を解析する。
【0157】
次に、ステップS608で、データ制御部212は、読み出し用RFIDタグ情報リストを用い、タグ格納ユーザーデータ403の復元を行う。データ処理部113は、設定登録部111の情報を用い、タグ格納ユーザーデータ403をHeader情報403と、分割圧縮データRF(領域A)401aと、分割圧縮データIF(領域B)402aとに分割する。分割したデータはデータバッファ115に格納する。
【0158】
データ処理部113では、Header情報403より、分割数s,オフセット長o,元データサイズL,ローテーション長r、領域Aのサイズn,領域Bのサイズm、RF(領域A)サイズn’、IF(領域B)サイズm’を取得する。この時、i==0である場合は、データ処理部113は、データバッファ115にデータサイズLのユーザーデータバッファを作成する。ユーザーデータバッファは復元したデータを格納しておく領域である。
【0159】
データ処理部113は、解析したHeader情報403を用い、分割圧縮データRF(領域A)401aおよび分割圧縮データIF(領域B)402aを復元する。分割圧縮データRF(領域A)401aは可逆方式Aで圧縮されているので、データ処理部113は、データバッファ115により分割圧縮データRF(領域A)401aを取り出し、圧縮・伸張部114を用い、可逆方式Aで分割圧縮データRF(領域A)401aを復元する。
【0160】
一方、分割圧縮データIF(領域B)402aは不可逆方式Bで圧縮されているので、データバッファ115より分割圧縮データIF(領域B)402aを取り出し、圧縮・伸張部114を用いて、不可逆方式Bで分割圧縮データIF(領域B)402aを復元する。
【0161】
以上の伸張操作により、分割圧縮データRF(領域A)401aは、完全な領域A分割データ401として復元できる。一方、分割圧縮データIF(領域B)402aは、元の領域B分割データ402とは異なる状態に復元される(ステップS608)。
【0162】
次に、ステップS609で、データ処理部113は、復元した領域A分割データ401をオフセット長oとローテンション長rを用いて元のユーザーデータ400内の配置に戻す。オフセット長oより、ローテーション部分を算出して、ローテーション長rだけ逆に各領域A分割データ401をローテーションし、元のユーザーデータ400内の同じデータアドレスに戻す。次いで、データ処理部113は、復元したユーザーデータ400をデータバッファ115に作成したユーザーデータバッファに格納する。
【0163】
次に、データ処理部113はユーザーデータバッファの中の復元したデータの中でデータの完全性が保証できる部分は、格納されたデータをロックする(ステップ610)。従って、ステップS609の段階で、完全に復元されてロックされている部分には書き込めないことになる。
【0164】
次に、ステップS611で、データ処理部113は、ユーザーデータバッファの中をチェックして、元データが全て完全に復元できたかを確認する。元のユーザーデータ400が完全に復元した場合は、ステップS613に進む。復元できていない場合は、ステップS612に進み、次のRFIDタグ情報の解析を行うため、iを1つ増やして次の解析のためにステップS605に進む。
【0165】
以上のステップS606〜ステップS612を繰り返すことにより、元のユーザーデータ400を復元していくことができる。完全に元のデータを復元できた場合、またはRFIDタグ104情報を全て解析した場合は、解析して得られた元のユーザーデータとRFIDタグ104の情報をシステムに通知する(ステップS613)
【0166】
以上に説明したように、I個のRFIDタグ104のユーザーデータ142を読み出し、s個の違う部分を圧縮したタグ格納ユーザーデータ404を取得し、解析と復号をすることにより、完全なユーザーデータ400を得ることができる。また、本実施例では、1つのRFIDタグには、不完全ながらユーザーデータ400全体のデータが入っている。
【0167】
次に、具体的な実施例について説明する。
【0168】
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。本実施例1では、図9に示すように、医薬品会社901が、販売店902より発注情報を受け取り、発注された医薬品903を出荷して、販売店902で入荷した医薬品903を管理する場合について説明する。まず、全ての医薬品903には、RFIDタグ904が装着されている。
【0169】
また、医薬品会社901には、出荷を確認するためなどに用いられるRW911と、制御装置912と、医薬品会社システム916とを備える。また、制御装置912は、データ制御部913,設定登録部914,RW制御部915を備える。一方、販売店902には、入庫を確認するためなどに用いられるRW921と、制御装置922と、販売店システム926とを備える。また、制御装置922は、データ制御部923,設定登録部924,RW制御部925を備える。
【0170】
なお、制御装置912および制御装置922は、図2に示した制御装置202と同様である。また、データ制御部913およびデータ制御部923は、図2のデータ制御部212に対応し、設定登録部914および設定登録部924は、図2の設定登録部111に対応し、RW制御部915およびRW制御部925は、図2のRW制御部116に対応している。また、医薬品会社システム916および販売店システム926は、図2に示したアプリケーション103に対応する。
【0171】
まず、医薬品会社システム916が発注情報を受け取る。本実施例1では、販売店902から5つの医薬品903が発注されたものとする。医薬品会社910では、発注された5個の医薬品902を用意し、各々にRFIDタグ904を貼り付ける。各々のRFIDタグ904のタグIDは、図10Aに示すタグIDの情報とする。医薬品会社システム916は、RFIDタグ904と発注情報より、ユーザーデータ920を生成する。
【0172】
本実施例1では、ユーザーデータ920は、図10Bに示すように、5000byte長の伝票の画像データとする。医薬品会社システム916は、医薬品903の管理を行うために、RFIDタグ904とユーザーデータ920をひも付ける作業を行う必要がある。このため、RFIDタグ904のタグIDとユーザーデータ920を制御装置912に通知する。
【0173】
制御装置912では、データ制御部913が設定登録部914より、例えば図11に示すような設定情報を読み込み、分割数sとローテーション長rの計算を行う。本実施例1では、RFIDタグ数は5つで、ユーザーデータ920のデータサイズは5000byteであり、設定登録部914に設定されている設定値は、s=5,r=1000(,o=0)となる。
【0174】
次に、圧縮データの作成を行う。圧縮データは、設定登録部914に登録されているデータ領域情報を用いて作成する。本実施例1では、領域Aは可逆方式Aで割合は20%となり、領域Bは不可逆方式Bで、割合は80%となる。計算の結果、s=5、r=1000、A=20%、B=80%が得られる。
【0175】
圧縮データは分割数だけ生成されるので、本実施例では、図10Cに示すように、領域Aの部分と領域Bの部分との5組の圧縮データが生成される。例えば、1組目の圧縮データ1は、図10Bに示すT1の部分を可逆に圧縮したRF(T1)と、T2,T3,T4,T5の部分を不可逆に圧縮したIF(T2+T3+T4+T5)とから構成されることになる。
【0176】
また、各組の圧縮データに対応するHeader情報を作成する。Header情報は分割数やローテーション長、元のユーザーデータのサイズなどをまとめた情報であり、圧縮したデータを復元するために使用する。本実施例1において、例えば圧縮データ1に対応するHeader情報であるHeader1は、s=5,r=0,L=5000,n’=RF(T1)のデータサイズ、m’=IF(T2+T3+T4+T5)のデータサイズになる。このようなHeader1〜5を含めた圧縮データ1〜5が、前述したタグ格納ユーザーデータに対応している。なお、前述したように、圧縮データと元データとの比較により、圧縮データが元データより大きい場合、元データを圧縮データとして用いる。
【0177】
次に、作成した圧縮データ1〜5を、各RFIDタグ904に分散して格納するために、各RFIDタグ904に、圧縮データ1〜5を順番に対応付けた書き込みRFIDタグ情報リストを作成する。本実施例1では、RFIDタグ904に分散して格納するために、図10Dのように書き込みRFIDタグ情報リストを作成する。
【0178】
次に、作成した書き込みRFIDタグ情報リストをRW制御部915に通知する。RW制御部915は、書き込みRFIDタグ情報リストのタグIDを検出し、該当するRFIDタグ904に圧縮データ1〜5を書き込む。本実施例1では、5個のRFIDタグ904が用いられており、この各々のユーザーメモリ(不図示)に、圧縮データ1,圧縮データ2,圧縮データ3,圧縮データ4,圧縮データ5が書き込まれる。
【0179】
次に、上述したように圧縮データ1〜5が書き込まれたRFIDタグ904を備えた医薬品903を入荷した販売店902におけるデータの復元について説明する。まず、医薬品会社901から出荷された医薬品903が、販売店902に到着すると、医薬品902の入庫確認が行われる。医薬品903が入庫されると、RW921は、電波検出波範囲内に入ったRFIDタグ904を検知することになる。このようにして検知されると、RW921は、検出したRFIDタグ904のタグIDを制御装置922に通知する。
【0180】
制御装備922におけるRW制御部925は、通知されたタグIDを用い、RFIDタグ903のユーザーメモリを読み出すように、RW921に指示する。本実施例1では、5個のRFIDタグ904のユーザーメモリには、各々圧縮データ1,2,3,4、5が格納されているので、RW921はそれらのデータを読み出し、RW制御部925に通知する。
【0181】
RW制御部925は、取得した各タグIDと読み出した圧縮データ1,2,3,4、5の情報をまとめて、読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、データ制御部923に通知する。本実施例1では、作成される読み出し用RFIDタグ情報リストは、図10Dに示す書き込み用RFIDタグ情報リストと同様になる。
【0182】
次に、データ制御部923が、書き込み用RFIDタグ情報リストに示されている全ての圧縮データを解析し、引き続いて、これらデータの復元を行う。データ制御部923は、各圧縮データ1〜5の各々のHeader1〜5より、分割数s,ローテーション長r,領域Aのサイズn’、領域Bのサイズm’、元のデータサイズLを取得する。本実施例1では、Header1の情報では、s=5、r=0、n’=n1、m’=m1、L=5000となる。
【0183】
解析したHeader1の情報を用い、圧縮データ1を復元する。本実施例1では、領域Aの圧縮データRF(T1)を可逆方式AでT1に復元する。領域Bの圧縮データIF(T2+T3+T4+T5)を不可逆方式Bで復元する。ただし、不可逆方式Bでは、完全に下にデータが復元できないため(T2+T3+T4+T5)’になる。
【0184】
復元したデータT1と(T2+T3+T4+T5)’を対応するローテンション長rだけ逆にローテーションして、元のユーザーデータと同じデータアドレスに戻し、データバッファに入れる。なお、前述したように、復元した各データの中でデータの完全性が保証できる部分は、データバッファをロックする。ここでは、可逆方式Aにより圧縮した部分は、データの完全性が保証できるため、データバッファのT1部分をロックして、上書きできないようにする。以降においても同様である。
【0185】
次いで、Header2の情報を用いて圧縮データ2を復元し、データT2と(T3+T4+T5+T1)’を得て、対応するローテンション長rだけ逆にローテーションして、元のユーザーデータと同じデータアドレスに戻し、データバッファに入れる。
【0186】
次いで、Header3の情報を用いて圧縮データ3を復元し、データT3と(T4+T5+T1+T2)’を得て、対応するローテンション長rだけ逆にローテーションして、元のユーザーデータと同じデータアドレスに戻し、データバッファに入れる。
【0187】
次いで、Header4の情報を用いて圧縮データ4を復元し、データT4と(T5+T1+T2+T3)’を得て、対応するローテンション長rだけ逆にローテーションして、元のユーザーデータと同じデータアドレスに戻し、データバッファに入れる。
【0188】
最後に、Header5の情報を用いて圧縮データ5を復元し、データT5と(T1+T2+T3+T4)’を得て、対応するローテンション長rだけ逆にローテーションして、元のユーザーデータと同じデータアドレスに戻し、データバッファに入れる。
【0189】
以上のことにより、元のユーザーデータ920が、データバッファに再現されることになる。このようにしてユーザーデータ920が復元されると、ユーザーデータ920とRFIDタグとの情報を販売店システム926に通知する。
【0190】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。以下では、前述したオフセットを利用した場合について説明する。ユーザーデータには、画像データに限らず、伝票番号などの共通で容量は少ないが重要なデータが存在する。オフセットを利用すれば、このような重要な部分を、全てのRFIDタグに記憶されるようにすることができる。
【0191】
例えば、図12Aに示すようなユーザーデータ930とする。ユーザーデータ930は伝票番号(100byte)と画像データ(5000byte)を合わせたものとする。
【0192】
まず、医薬品会社システム916が発注情報を受け取る。本実施例2においても、販売店から5つの医薬品を発注されたものとする。医薬品会社910では、発注された5この医薬品902を用意し、各々にRFIDタグ904を貼り付ける。各々のRFIDタグ904のタグIDは、図12Bに示すタグIDの情報とする。医薬品会社システム916はRFIDタグ904と発注情報より、ユーザーデータ930を生成する。
【0193】
本実施例2では、前述したように、ユーザーデータ930は、伝票番号と伝票の画像データをあわせた5100byte長のデータとする。医薬品会社システム916は、医薬品の管理を行うために、RFIDタグ904とユーザーデータ930をひも付ける作業を行う必要がある。このため、RFIDタグ904のタグIDとユーザーデータ930を制御装置912に通知する。
【0194】
制御装置912では、データ制御部913が、設定登録部914より、例えば図13に示すような設定情報を読み込み、分割数sとローテーション長rオフセット長oの計算を行う。本実施例2では、RFIDタグ数は5つで、ユーザーデータ930のデータサイズは5100byteであり、設定登録部914に設定されている設定値を用いると、s=5,r=1000,o=100となる。
【0195】
次に、圧縮データの作成を行う。圧縮データは、設定登録部914に登録されているデータ領域情報を用いて作成する。本実施例2では、伝票番号が格納されている領域Oは可逆方式Aで100byte、領域Aは可逆方式Aで、領域Bは不可逆方式Bとなる。計算すると、s=5、r=1000、o=100、A=20%、B=80%が得られる。
【0196】
圧縮データは分割数だけ生成されるので、本実施例2においても、図12Cに示すように、5組の圧縮データが生成される。ただし、本実施例2では、各圧縮データにおいて、伝票番号に対応する領域Oが含まれている。
【0197】
また、各圧縮データに対応するHeader情報を作成する。Header情報は分割数やローテーション長、オフセット長、元のユーザーデータのサイズなどをまとめた情報である。これらは圧縮したデータを復元するために使用する。本実施例2において、Header1は、s=5,r=0,o=100,L=5000,RF(O)サイズo’,n’=RF(T1)のデータサイズ、m’=IF(T2+T3+T4+T5)のデータサイズになる。このようなHeader1〜5を含めた圧縮データ1〜5が、前述したタグ格納ユーザーデータに対応している。なお、前述したように、圧縮データと元データとの比較により、圧縮データが元データより大きい場合、元データを圧縮データとして用いる。
【0198】
次に、作成した圧縮データ1〜5を、各RFIDタグ904に分散して格納するために、各RFIDタグ904に、圧縮データ1〜5を順番に対応付けた書き込みRFIDタグ情報リストを作成する。本実施例2では、RFIDタグ904に分散して格納するために、図12Dのように書き込みRFIDタグ情報リストを作成する。
【0199】
次に、作成した書き込みRFIDタグ情報リストをRW制御部915に通知する。RW制御部915は、書き込みRFIDタグ情報リストのタグIDを検出し、該当するRFIDタグ904に圧縮データ1〜5を書き込む。本実施例2でも、5個のRFIDタグ904が用いられており、この各々のユーザーメモリ(不図示)に、圧縮データ1,圧縮データ2,圧縮データ3,圧縮データ4,圧縮データ5が書き込まれる。また、本実施の形態2においては、5個のRFIDタグ904の全てに対し、オフセット部分の情報が書き込まれている。
【0200】
次に、上述したように圧縮データ1〜5が書き込まれたRFIDタグ904を備えた医薬品903を入荷した販売店902におけるデータの復元について説明する。まず、医薬品会社901から出荷された医薬品903が、販売店902に到着すると、医薬品902の入庫確認が行われる。医薬品903が入庫されると、RW921は、電波検出波範囲内に入ったRFIDタグ904を検知することになる。このようにして検知されると、RW921は、検出したRFIDタグ904のタグIDを制御装置922に通知する。
【0201】
制御装備922におけるRW制御部925は、通知されたタグIDを用い、RFIDタグ903のユーザーメモリを読み出すように、RW921に指示する。本実施例1では、5個のRFIDタグ904のユーザーメモリには、各々圧縮データ1,2,3,4、5が格納されているので、RW921はそれらのデータを読み出し、RW制御部925に通知する。
【0202】
RW制御部925は、取得した各タグIDと読み出した圧縮データ1,2,3,4、5の情報をまとめて、読み出し用RFIDタグ情報リストを作成し、データ制御部923に通知する。本実施例1では、作成される読み出し用RFIDタグ情報リストは、図12Dに示す書き込み用RFIDタグ情報リストと同様になる。
【0203】
次に、データ制御部923が、書き込み用RFIDタグ情報リストに示されている全ての圧縮データを解析し、引き続いて、これらデータの復元を行う。このとき、データ制御部923は、オフセットのサイズのチェックも行う。データ制御部923は、各圧縮データ1〜5の各々のHeader1〜5より、分割数s,ローテーション長r,オフセット長o,領域Aのサイズn’、領域Bのサイズm’、元のデータサイズLを取得する。例えば、Header1の情報では、s=5、r=0、o=100,n’=n1、m’=m1、L=5000となる。
【0204】
次に、解析したHeader1の情報を用い、圧縮データ1を復元する。本実施例2では、オフセット領域および領域Aの圧縮データRF(T1)を可逆方式AでT1に復元する。また、領域Bの圧縮データIF(T2+T3+T4+T5)を不可逆方式Bで復元する。ただし、不可逆方式Bでは、完全に下にデータが復元できないため(T2+T3+T4+T5)’になる。
【0205】
この後、前述同様に、元のユーザーデータ930を復元し、復元したユーザーデータ930とRFIDタグとの情報が販売店システム926に通知される。本実施の形態2では、オフセットの領域の伝票番号については、完全に復元された状態で、販売店システム926に通知されることになる。伝票番号は、医薬品903の受け入れ時のチェックに活用される。
【0206】
上述した実施例2によれば、次に示すような効果が得られる。まず、第一の効果は、RFIDタグとRWの通信量と時間をさらに削減できる。大容量のデータのうち、通常は最小限のデータ(オフセットのみ)を読み出し、チェックなどに活用する。それ以外の情報は、必要になった場合にRFIDタグのユーザーメモリを再度、読み込んで活用することができる。
【0207】
例えば、通常はオフセットにある伝票番号などだけでチェックし、入庫する。そして、印刷するために伝票の詳細な画像データなどが必要になったら、再度RFIDタグのユーザーメモリのRF(T)の部分を読み込んで、全てのデータを活用できる。
【0208】
第2の効果は、問題が検出しやすい。ある単位のRFIDタグの一群にはオフセット部分は全て同じデータが入る。そのため、検出したRFIDタグの中で違うオフセットのデータが入っているものがあった場合、違うグループのものであるため問題が検出しやすい。
【0209】
例えば、5つのうち、1つだけ違うオフセットが書き込まれているRFIDタグがあった場合、それは間違って梱包されている可能性があることが、全てのユーザーデータを読み込まなくても検出が可能である。
【0210】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。この実施例3では、ユーザーデータを重複しないように格納し、エラーを検出する方法を説明する。本実施例3においては、ほとんどの部分が、前述した実施例2と同様である。本実施例3では、販売店902に到着した医薬品903に欠品があった場合の処理について説明する。例えば、欠品がある場合、圧縮データ1〜5のいずれかが取得できないため、ユーザーデータ930が完全に復元できないことになる。このように、ユーザーデータ930が完全に復元できないことを検出するようにすれば、欠品の存在を認識することができる。例えば、ユーザーデータ930が完全に復元できない場合、データ制御部923が、このエラー状態を販売店システム926に通知する。この通知により、販売店システム926は、RFIDタグ情報と、不完全なユーザーデータ、およびエラー状態である旨とを受け取ることになる。これにより、販売店システム926は、欠品がある状態を検出することができる。
【0211】
以上に説明した本発明によれば、まず、大容量のデータを分割し、また、分割したデータを圧縮して分散格納しているので、リーダライタとRFIDタグとの間の通信量と時間を削減できる用になる。このため、大量のRFIDタグがあった場合でも、短い時間で必要な情報が得られるようになる。
【0212】
また、前述したように、領域Aおよび領域Bと分けて分割することで、いずれかのRFIDタグからの情報が得られず、分割分散したデータの中のいずれかが足りなくても、不完全な状態ではあるが、ユーザーデータが取得できるようになる。例えば、1つのRFIDタグからの情報が得られない場合であっても、部分的に荒い画像となった伝票画像などの不完全なユーザーデータは取得できるようになる。一般に、画像データの場合、部分的に粗い状態(不完全な状態)であっても、実質的には問題がないことが多く、十分に実用的な処理が行える。
【0213】
また、上述したように、領域Aおよび領域Bと分けて分割する場合、1つのRFIDタグだけでも不完全ではあるが、ユーザーデータの活用が可能となる。この場合、全てのRFIDタグに、ユーザーデータの概要情報が記憶されているため、ユーザーデータの活用ができる。例えば、100個に分割していた場合、1つのRFIDタグには、ユーザーデータの1%を示す完全なデータ(領域A)と、ユーザーデータの99%を示す不完全なデータ(領域B)が格納されていることになる。これは、指定されたユーザーデータの画像の荒いデータを意味する。
入庫や出庫以外での活用方法として、店舗で物品の情報を確認するために、店員が物品の名前や概要の情報などを確認するには、荒い画像データでも満足する場合が多いため、このような状態でも十分に有用である。
【0214】
また、前述したように、本発明によれば、物品が足りないことも検出可能である。ユーザーデータの復元でデータの一部が足りないことで、欠品が検出できるため、システムはユーザーデータの解析やタグIDなどの複雑な解析を行うことなく、問題が検出でき、その時点で確認作業ができる。また、問題があった時は、一部は足りないが復元したユーザーデータで、欠品している個品がすぐに特定できる。
【0215】
ところで、ユーザーデータ領域は、3つ以上に分割してもよい。上述では、ユーザーデータを、領域Aおよび領域Bの2つの部分に分割するようにしたが、これに限らず、1つ以上であれば分割する数と方法に制限はない。ただし、分割したデータを圧縮する場合、必ず1つの領域は、可逆方式で圧縮する必要がある。
例えば、領域Aおよび領域Bに加え、領域C、領域Dなどと領域を増やし、圧縮方式も方式C、方式Dと組み合わせても良い。これにより、ユーザーデータの特性により、最も適した圧縮領域と方式を適用することが可能となり、さらなる圧縮率の高い分割圧縮データが得られる可能性がある。そこのように、より小さいデータとすることで、さらなる通信量と通信時間の削減が可能となる。
【0216】
また、RW設定において、ユーザーメモリの読み込み方法を変更しても良い。読み込み方法を最適化することにより、さらに通信量と時間が削減できる。例えば、最初にs個のRFIDタグのユーザーメモリを読み込み、その時点で完全にユーザーデータが復元できた場合は、残りはタグIDのみの読み込むようにRWの制御を変更しても良い。また、Header情報にデータIDを記載し、全ての可逆圧縮領域が揃った場合は、Header情報だけを読み取り、同じデータIDだった場合には、残りのユーザーメモリを読まないように動的にRWの制御をしても良い。
【0217】
また、分割数sを任意の値に変更してよい。本実施例では、分割数sはRFIDタグ数としたが、分割数sを(RFIDタグ数/2)などとしても良い。この場合、同じ分割圧縮したユーザーデータが2つのRFIDタグに格納されることになる。このため、データを冗長化しているため、1つのタグが足りない場合でも、同じデータが入っているRFIDタグがあれば、ユーザーデータを完全に復元できる。
【0218】
また、ローテーション長rを任意の値に変更しても良い。本実施例では、ローテーション長を(ユーザーデータサイズ/分割数)×i番目としたが、任意の値や計算式を利用してよい。これにより、領域Aの部分を重複するような、ローテーション長rになるようになると、冗長化したデータを複数のRFIDタグに分散するので、データを復元する信頼性を上げることが可能になるためである。
【0219】
また、上述した説明では、RFIDタグを用いたが、RFIDデバイスに限らず他のデバイスや装置でも、本発明は可能である。記憶領域を持った装置で複数ある場合には適用が可能である。例えば、ICカードやメモリ付きのセンサー、2次元バーコードなどでも本発明は実施可能である。
【0220】
また、全ての圧縮分割したデータが揃わない限り、データが復元できないようにしても良い。全てのRFIDタグが揃わない限り、データが復元できないようにした場合、エラーは検出できるが、物品の詳細な内容は現場の人はわからない。これは流通会社などを使用する場合、ユーザーが物品の詳細を知られたくない時に、セキュリティ対策として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1A】本発明の実施の形態1におけるICタグの制御方法を実現するためのシステム構成を示す構成図である。
【図1B】ユーザーデータ150の構成を示す構成図である。
【図1C】タグ格納ユーザーデータ153の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2におけるICタグの制御方法を実現するためのシステム構成を示す構成図である。
【図3A】ユーザーデータ250の分割について説明する説明図である。
【図3B】タグ格納ユーザーデータ253の構成を示す構成図である。
【図4】設定登録部111が備える設定情報の構成を示す構成図である。
【図5】分割に係わる動作を説明するフローチャートである。
【図6】復元に係わる動作を説明するフローチャートである。
【図7A】ユーザーデータ400の構成を示す構成図である。
【図7B】ユーザーデータ4000の分割について説明する説明図である。
【図7C】タグ格納ユーザーデータ404の構成を示す構成図である。
【図8】設定登録部111が備える他の設定情報の構成を示す構成図である。
【図9】実施例1におけるシステムの構成を示す構成図である。
【図10A】実施例1における各々のRFIDタグ904のタグIDの構成を示す構成図である。
【図10B】ユーザーデータ920の構成を示す構成図である。
【図10C】実施例1における分割・圧縮されたデータの構成を示す構成図である。
【図10D】実施例1におけるRFIDタグ情報リストの構成例を示す構成図である。
【図11】設定登録部914が備える設定情報の構成を示す構成図である。
【図12A】ユーザーデータ930の構成を示す構成図である。
【図12B】実施例2における各々のRFIDタグ904のタグIDの構成を示す構成図である。
【図12C】実施例2における分割・圧縮されたデータの構成を示す構成図である。
【図12D】実施例2におけるRFIDタグ情報リストの構成例を示す構成図である。
【図13】設定登録部914が備える他の設定情報の構成を示す構成図である。
【図14】RFIDタグを用いたシステムの構成例を示す構成図である。
【図15】RFIDタグとRWとの通信について説明する説明図である。
【図16】RFIDタグの構成を示す構成図である。
【図17】医薬品会社と販売店との間の物品の出荷・入庫を説明するための説明図である。
【図18】医薬品会社と販売店との間の物品の出荷・入庫の管理をRFIDタグを用いて行う場合の構成を説明するための説明図である。
【図19】医薬品会社と流通会社と販売店との間の物品の出荷・入庫の管理をRFIDタグを用いて行う場合の構成を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0222】
101…リーダライタ(RW)、102…制御装置、104…RFIDタグ、111…設定登録部、112…データ制御部、113…データ処理部、115…データバッファ、116…リーダライタ(RW)制御部、141…タグID記憶部、142…ユーザーメモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定されている元データを予め設定されている分割数で分割して複数の分割データを生成する第1ステップと、
予め設定されている複数のタグIDに前記分割データを関連付けた複数の対応関係からなるタグ情報リストを作成する第2ステップと、
前記タグ情報リストを元に、全ての前記分割データを対応するタグIDを備えるICタグに送信する第3ステップと
を少なくとも備えることを特徴とするICタグの制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のICタグの制御方法において、
前記第3ステップの後で、前記分割データを前記ICタグから受信する第4ステップと、
受信した全ての前記分割データを組み合わせて前記元データを復元する第5ステップと
を備えることを特徴とするICタグの制御方法。
【請求項3】
請求項1記載のICタグの制御方法において、
前記第1ステップでは、前記分割データを予め設定されている圧縮方法で圧縮して前記分割データとする
ことを特徴とするICタグの制御方法。
【請求項4】
請求項3記載のICタグの制御方法において、
前記第3ステップの後で、前記分割データを前記ICタグから受信する第4ステップと、
受信した全ての前記分割データを前記圧縮方法に対応する伸張方法で伸張した後で組み合わせて前記元データを復元する第5ステップと
を備えることを特徴とするICタグの制御方法。
【請求項5】
請求項1記載のICタグの制御方法において、
前記第1ステップでは、前記分割データを予め設定されている可逆的な第1の圧縮方法で圧縮した第1圧縮データおよび前記元データより前記分割データを除いた部分の残りデータを予め設定されている不可逆な第2の圧縮方法で圧縮した第2圧縮データを作成し、前記第1圧縮データと前記第2圧縮データとで前記分割データとする
ことを特徴とするICタグの制御方法。
【請求項6】
請求項5記載のICタグの制御方法において、
前記第3ステップの後で、前記分割データを前記ICタグから受信する第4ステップと、
受信した全ての前記分割データより前記第1圧縮データを分離し、分離した全ての前記第1圧縮データを前記第1の圧縮方法に対応する第1の伸張方法で伸張した後で組み合わせて前記元データを復元する第5ステップと、
受信した前記分割データより前記第1圧縮データと前記第2圧縮データをと分離し、分離した前記第1圧縮データを前記第1の伸張方法で伸張した第1伸張データ、および分離した前記第2圧縮データを前記第2の圧縮方法に対応する第2の伸張方法で伸張した第2伸張データを組み合わせて前記元データに対応する復元データを生成する第6ステップと
を備えることを特徴とするICタグの制御方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−67026(P2010−67026A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233059(P2008−233059)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】