説明

ICチップ、ICチップにおける処理方法、ICチップ用処理プログラム、及び携帯端末

【課題】サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理するICチップ、ICチップにおける処理方法、ICチップ用処理プログラム、及び携帯端末等を提供する。
【解決手段】CPU25は、インターフェース21の何れかからコマンドを受信した場合に、EEPROM23に記憶された処理対象データを、RAM24に書込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインターフェースを備えるICチップにおける処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、接触型IC(Integrated Circuit)チップが適用されるタイプと、非接触型ICチップが適用されるタイプとに大別される。そして、接触型ICが適用されるICカードは、クレジットカードやキャッシュカードなどに用いられ、ICカードリーダライタ装置等の接触インターフェースを介して(当該装置にICカードが挿入され)、ICチップに対してデータの読取り及び書込みが行われている。また、非接触型ICカードは、一部のIDカード(例えば、入退出管理カード等)や交通系カード(例えば、Suica(登録商標)等)に用いられ、非接触ICカード用のリーダライタ装置を介して、ICチップに対してデータの読取り及び書込みが行われている。
【0003】
近年、日本においては、携帯電話に非接触ICチップ用リーダライタ装置等との間で通信を行うための非接触通信用コイル(アンテナ)と非接触通信用のプロトコルや非接触アプリケーションを処理するマイコンを内蔵することで、回線接続やパケット接続に加えて、非接触インターフェースを用いた様々なサービスが提供されている。この携帯電話には接触アプリケーションを実行する専用のマイコンであるUIM(User Identity Module)と、非接触アプリケーションを実行する専用のマイコンがそれぞれ搭載されている。従って、当該携帯電話は、接触アプリケーションと接触アプリケーションを同時に実行(機能)することが可能である。具体的には、例えば、当該携帯電話では、接触アプリケーションの実行により実現される携帯電話への着信処理と、非接触アプリケーションの実行により実現されるゲートの通過処理(入退室管理処理)を同時に実行することが可能である。
【0004】
一方、欧州を中心に、UIMが搭載された携帯端末に備えられた非接触通信用コイルと非接触通信用のプロトコルや非接触アプリケーションの処理を主に担当するマイコンを、UIMが備える既存の接触インターフェースとは別のインターフェースに接続することにより、UIM内で接触アプリケーションに加え、非接触アプリケーションを管理する方法が検討され、関連技術の標準化が進められている。この方式では、接触用アプリケーションと非接触用アプリケーションは共にUIMに格納されUIMのハードウェアリソース(CPU、記憶装置、各種周辺回路)を共有する(即ち、1Chipでの処理が実行される)ことになるが、これらのアプリケーションがリムーバブル(Removable)であるUIMに統合して格納されるため、アプリケーションの管理や移行が容易であるなどのメリットが存在する(以下、NFC(Near Field Communication)方式と呼ぶ)。
【0005】
先に述べたように、接触用、非接触用のアプリケーションがUIMへ格納されることで、コスト低減効果があること、アプリケーションの管理・移行がし易いことなどNFC方式には利点もあるが、ユーザの利用状況等により、接触・非接触からそれぞれ非同期にアプリケーション処理依頼を受け付ける必要があるため、1Chipでは処理依頼の競合が避けられない。
【0006】
このような状況に対して、特許文献1では、複数のインターフェースを備えたICカードにおいて、あるインターフェースから受信したコマンド実行中に、他のインターフェースでコマンド受信が発生した場合、実行中のコマンド処理を中断してコマンドの受信処理を行うことで、複数のインターフェース上に非同期で送られるコマンドを取りこぼすこと無く受信する方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、接触用アプリケーション及び非接触用アプリケーションの実行状態(導入状況)に応じて、ICカードの記憶領域を物理的に又は論理的に分離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−090800号公報
【特許文献2】特許第4231148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記コマンド処理等のICカード内部で行われる処理の一つである不揮発性メモリの書込処理は、当該処理が完了するまでに数msecの時間を要するため、比較的時間がかかる処理として知られている。また、不揮発性メモリに対して書込処理が実行されている間は、当該不揮発性メモリに記憶される他の情報(データ)を読み出しおよび書込みができないとの物理的制約がある。
【0010】
具体的には、図4に示すように、アプリAの処理として不揮発性メモリの書込み処理が行われている間は、アプリBの処理として不揮発性メモリの書込み処理を行うことができず、メモリ書込み終了待ち状態となる。そして、アプリAによる不揮発性メモリの書込み処理が終了すると、アプリBによる不揮発性メモリ読み出し又は書込み処理が開始される。
【0011】
特許文献1に記載された方法では、他のインターフェースでコマンド受信が発生した場合に、先に実行中のコマンド処理が中断されることとなるが、先に実行中のコマンドが、例えば、AUTHENTICATE(ETSI TS 102 221 11.1.16、JIS X 6306)コマンド
に基づく不揮発性メモリの更新が実行されている場合には、当該不揮発性メモリが更新されている状態で中断されることとなる。この中断されている間に、接触インターフェース側から当該不揮発性メモリに記憶されたデータを参照する処理内容のコマンドが受信された場合には、当該データを参照することができず、当該コマンドを実行することができなかった。
【0012】
また、特許文献2に記載される技術としてICカードの記憶領域の分割態様を定めることができるのは、一般的に、ICカードの製造段階である。この製造段階に、接触用アプリケーション及び非接触用アプリケーションの実行状態を予測して上記分割態様を定める事は難しく、当該実行状態によっては、分割された記憶領域では記憶容量が不足し、十分な処理が実行できないケースも想定できる。
【0013】
そこで、本発明は上記各問題点に鑑みてなされたものであり、サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理するICチップ、ICチップにおける処理方法、ICチップ用処理プログラム、及び携帯端末等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のインターフェースを有し、前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理するICチップであって、前記コマンドに基づいて前記第1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部と、電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、不揮発性メモリに対するアクセス状態にかかわらず不揮発性メモリに記憶されたデータと同一のデータを処理することができるため、サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のICチップであって、前記データ書込み手段によって、前記第2の記憶部に前記コマンドの処理に用いられるデータが書込まれた場合には、前記データが前記第2の記憶部に書込まれたことを示す識別情報を前記第2の記憶部に記憶する識別情報記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のICチップであって、前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記識別情報記憶手段によって記憶された識別情報を検索もしくはコマンドの処理に用いられるデータの有無を判断する識別情報の判断手段と、前記識別情報の判断手段によって識別情報の存在が確認された、もしくはコマンドの処理に用いられるデータがあると判断された場合には、前記第2の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記識別情報記憶手段によって記憶された識別情報を検索もしくはコマンドの処理に用いられるデータの有無を判断する識別情報の判断手段と、前記識別情報の判断手段によって識別情報が検索されない、もしくは識別情報により当該処理対象データが存在しないと判断した場合には、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込む第2データ書込手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のICチップであって、前記ICチップは、UIM(User Identity Module)に搭載されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のICチップであって、前記UIMは、携帯端末に装着されていることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、複数のインターフェースを有し、前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理し、前記コマンドに基づいて前記第1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部を備えるICチップにおける処理方法であって、電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込工程を有することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、複数のインターフェースを有し、前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理し、前記コマンドに基づいて前記第1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部を備えるICチップに含まれるコンピュータを、電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込手段、として機能させることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、複数のインターフェースを有し、前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理する接触型ICチップと、当該ICチップと第一の前記インターフェースを介して通信可能なコントローラとを備える携帯端末において、前記接触型ICチップは、前記コマンドに基づいて前記1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部と、電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込手段と、を備えることを特徴とする携帯端末。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、不揮発性メモリのアクセス状態にかかわらず不揮発性メモリに記憶されたデータと同一のデータを処理することができるため、サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る携帯端末の概要構成例を示すブロック図である。
【図2】UIM13の概要構成例を示すブロック図である。
【図3】携帯端末1の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来の不揮発性メモリに記憶されたデータの処理例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1.携帯端末の構成及び機能概要]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、携帯端末に対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0027】
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る携帯端末の構成及び機能概要について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る携帯端末の概要構成例を示すブロック図である。図1に示すように、携帯端末1は、携帯端末1の機能を担うコントローラ11、CLF12、及びUIM13等を備えて構成されている。なお、携帯端末1には、例えば操作キー、ディスプレイ、スピーカ、及び移動体通信部(W−CDMA又はCDMA2000の通信方式による一般的な通信制御機能、URLを指定することで所定のサーバにアクセスして所定の情報を受けるブラウザ機能、及びメーラ機能等の通信処理を行う。)等を備える携帯電話機やPDA等を適用できる。なお、携帯端末1におけるこれらの機能は公知であるため詳しい説明を省略する。
【0029】
コントローラ11は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、各種プロ
グラム及びデータを記憶する不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ等)、データを一時記憶するRAM、UIM13との間のインターフェースを担うI/Oポート等を備えている。コントローラ11は、UIM13との間でインターフェースを介して通信可能になっている。そして、コントローラ11は、携帯端末1の通信処理(移動体通信網やインターネットを介して行われる通信)や携帯端末1のユーザからの操作キーを介した操作指示に応じて各種処理を実行する。このような処理の過程で、コントローラ11は、例えば、基地局3との間で行われる通話処理(着信処理を含む)、Webアクセス、メール送受信等の通信処理に関するサービス、その他暗号化処理や認証処理等のサービス(本願の所定のサービスの一例)を実行するためのコマンド(信号)を、インターフェース(後述する接触I/Oポートを含む)を介してUIM13へ送信する。
【0030】
本実施形態において、コントローラ11とUIM13との間におけるコマンドの送受信に基づいて実行されるサービス(上記通信処理に関するサービス等)を、接触サービスと称する。また、接触サービスを実行するためのコマンド(例えば、データの読み出し命令等)を、接触コマンドと称する(図1イ参照)。なお、上記接触サービスを実行するために必要な接触コマンドの送受信は、1回だけでなく複数回行われる場合もある。
【0031】
CLF(Contactless Front End)12は、NFCの規格で規定される非接触通信を行
う非接触型ICチップであり(即ち、NFC方式を採用)、図示しないが、CPU、各種プログラム及びデータを記憶する不揮発性メモリ、データを一時記憶するRAM、UIM13との間のインターフェースを担うI/Oポート(SWIO)等を備えている。このNFC規格で規定されるCLF12では、Type−A、Type−Bの通信方式に加えて、FeliCa(登録商標)の通信方式もType−Fとしてサポートしている。このようなCLF12は、非接触のフィールド内で非接触リーダ2との間で上記通信方式に準じた各種信号の送受信を行うためのアンテナ12aに接続されている。そして、ユーザが携帯端末1を非接触リーダ2に翳すと、CLF12は、非接触リーダ2から送信されたサービス(本願の所定のサービスの一例)を実行するためのコマンドを、インターフェース(後述する非接触I/Oポートを含む)を介してUIM13へ送信するようになっている。
【0032】
上記サービスとしては、例えば、鉄道及びバス等の交通機関のプリペイドカード及び定期券、クレジットカードや電子マネー等の決算サービス、施設の入退出管理等が該当する。
【0033】
本実施形態において、CLF12と非接触リーダ2との間のコマンドの送受信に基づいて実行されるサービス(上記プリペイドカード等)を、非接触サービスと称する。また、非接触サービスを実行するためのコマンドを、非接触コマンドと称する(図1ロ参照)。なお、上記非接触サービスを実行するために必要な非接触コマンドの送受信は、1回だけでなく複数回行われる場合もある。
【0034】
また、以下単にコマンドと示した場合には、上記接触コマンド及び上記非接触コマンドの双方を含むものとする。
【0035】
UIM13は、UICC(Universal Integrated Circuit Card)の一つであり、従来の
SIM(Subscriber Identity Module)をベースに機能を拡張された接触型ICチップを搭載する(ETSI TS 102 221、613等)。ここで、UIM13の構成及び機能概要につ
いて、図2を用いて説明する。図2は、UIM13の概要構成例を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、UIM13は、インターフェース21、ROM(Read Only Memory)22、EEPROM23、RAM(Random Access Memory)24、CPU(Central Processing Unit)25等を備えて構成されている。
【0037】
インターフェース21は、本願の複数のインターフェースの一例として機能し、コントローラ11との間のインターフェースを担う接触I/Oポート、及びCLF12との間のインターフェースを担う非接触I/Oポート等を備えている。なお、CLF12とUIM13間のインターフェースには、SWP(Single Wire Protocol)が適用される。
【0038】
ROM22には、CPU25によって実行されるべき各種プログラムが記憶されており、CPU25は、このプログラムに基づいてUIM13を統括的に制御すると共に、上記コマンドが示す動作を実行させるようになっている。
【0039】
ROM22に記憶されるプログラムには、UIM13全体の動作を統括的に制御するオペレーティングシステム(以下、「OS」とする)の他、CLF12から受信した非接触コマンドを処理する非接触インターフェースアプリケーションプログラム(以下、「非接触アプリ」という)と、コントローラ11から受信した接触コマンドを処理する接触インターフェースアプリケーションプログラム(以下、「接触アプリ」という)が実装されている。本実施形態における携帯端末1では、非接触アプリの制御によって非接触サービスが実行され、また、接触アプリの制御によって接触サービスが実行されるようになっている。なお、ROM22に記憶されるこれらのプログラムは、後述するEEPROM23に記憶するようにしてもよい。
【0040】
EEPROM23は、不揮発性半導体メモリの一種であり、記憶領域に記憶されているデータを消去し、何度でも再記憶ができるPROM(Programmable Rom)である。
【0041】
また、EEPROM23は、本願の第1の記憶部として機能し、上述したアプリ(接触アプリ及び非接触アプリを含む)の制御のもと、所定のサービスを実行させるコマンドに基づいてCPU25が処理するデータ(以下、単に「処理対象データ」とする。)が記憶されている。
【0042】
具体的には、例えば、鉄道及びバス等の交通機関のプリペイドカードサービス(例えば、Suica)を実行するアプリ(非接触アプリの一例)では、処理対象データとして、非接触リーダ2(PCD)とCLF12(PICC)との間で行われる初期化通信(JIS
X 6319)におけるREQCコマンドのパラメータのシステムコード等が記憶されてい
る。
【0043】
また、決済処理を実行する決済処理アプリ(非接触アプリの一例)では、処理対象データとして、当該決算処理の各段階に伴って生成される情報(例えば、決算処理で決定される取引金額に関する情報や暗証番号等)が、記憶されている。
【0044】
また、通話処理を実行する通話処理アプリ(接触アプリの一例)では、処理対象データとして、着信元の電話番号に対応する情報(氏名、名称、又は画像データの所謂電話帳に登録される情報等)が、記憶されている。
【0045】
RAM24は、CPU25がUIM13を統括的に制御するために作業領域として使用するメモリである。
【0046】
また、RAM24は、本願の第2の記憶部として機能し、コマンドに基づいて、EEPROM23から読み出されたデータ(上記CPU25が処理するデータを含む)の処理を行うための作業領域として使用される。
【0047】
さらに、RAM24には、処理対象データ(上記REQCコマンドのパラメータのシステムコード等)が記憶されるようになっている。
【0048】
この処理対象データは、詳しくは後述するが、OS、非接触アプリ、又は接触アプリの制御のもと、CPU25によって、予め設定されたRAM24の所定の記憶領域に記憶されるようになっている。
【0049】
CPU25は、上述したようにプログラムに基づいてUIM13全体の動作を統括的に制御すると共に、本願のデータ書込手段、識別情報記憶手段、識別情報の判断手段、及び第2データ書込手段として機能するようになっている。
【0050】
具体的には、データ書込手段としてのCPU25は、電源接続後に起動した場合、リセット(Reset)信号による初期化処理が行われた場合、又はインターフェース21の何れかから最初にコマンドを受信した場合に、処理対象データを、RAM24に書込むようになっている。
【0051】
上述したように、不揮発性メモリであるEEPROM23に対して書込処理が実行されている間は、CPU25は、EEPROM23に記憶される他の情報(データ)を読み出すことができないとの物理的制約がある。
【0052】
例えば、CPU25が、接触コマンドの一例としてAUTHENTICATE(ETSI TS 102 221 11.1.16、JIS X 6306)コマンドに基づいて不揮発性メモリに記憶されるデー
タの更新をしている場合であって、CPU25が、インターフェース21から当該不揮発性メモリに記憶されたデータを参照する処理内容のコマンドをさらに受信した場合には、CPU25は、当該データを参照することができない。
【0053】
具体的には、CPU25が、AUTHENTICATE(ETSI TS 102 221 11.1.16、JIS X 6306)コマンドに基づいて不揮発性メモリに記憶されたデータの更新をしている場
合に、ユーザが交通機関の改札口を通過(非接触サービスの一例としてのプリペイドカードサービスの機能)すると、CPU25は、不揮発性メモリの更新中に、非接触リーダ2から上述した初期化通信におけるREQCコマンド要求を受信することとなる。
【0054】
CPU25は、EEPROM23に記憶されたREQCコマンドの応答に必要なパラメータのシステムコードを参照することができないため、非接触リーダ2との初期化通信を確立することができない。その結果として、ユーザは、上記プリペイドカードサービスの提供を受けることができなくなってしまう。
【0055】
さらに、鉄道及びバス等の交通機関のプリペイドカードの機能を持たせたFelicaにあっては、初期コマンドの受信(初期化処理)から認証を含む一連の処理終了まで数100msec程度の短い間に終了しなければならないため、ICチップの高速な処理が要求される。
【0056】
そこで、CPU25は、処理対象データを、コマンド処理が実行される前に、予めRAM24に書込むことによって、EEPROM23に対して書込処理が実行されている場合であっても、CPU25は、RAM24に記憶された処理対象データを用いて処理を実行することができる。従って、サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理することができる結果、サービス全体も高速かつ確実に実行することができる。
【0057】
このコマンド処理が実行される前とは、例えば、携帯端末1に電源が接続され(例えば、携帯端末1の電源スイッチをオンとする。)CPU25が起動した場合(電源接続)、リセット信号が入力され初期化処理が実行される場合、又はインターフェース21の何れかから最初にコマンドを受信した場合の何れかを示す。
【0058】
換言すれば、コマンドの処理に基づいてEEPROM23に対して書込み処理が実行される前に、処理対象データをRAM24に書込むようになっている。
【0059】
さらに具体的には、例えば、UIM13は内部にクロック発振回路を備えているため、携帯端末1に電源が接続されるとCPU25は動作を開始する。このCPU25が動作を開始した直後に、CPU25は、処理対象データをRAM24に書込む。
【0060】
また、CPU25は、リセット信号が入力されると初期化処理を行い、ATR信号を出力するが(ISO/IEC7816−3等)、当該リセット信号が入力されると、CPU25は、処理対象データをRAM24に書込む。
【0061】
また、CPU25は、コマンド待ち状態にある場合に、インターフェース21の何れかから最初にコマンドを受信した場合に、処理対象データを、RAM24に書込む。
【0062】
識別情報記憶手段としてのCPU25は、CPU25によって、RAM24に処理対象データが書込まれた場合には、処理対象データがRAM24に書込まれたことを示す識別情報をRAM24に記憶する。
【0063】
この識別情報は、RAM24内の予め決められた位置に決められた値を書込むようにしてもよいし、当該処理対象データからCRC(Cyclic Redundancy Check)コード等を生成するようにしてもよい。この場合、RAM内のデータが特定の値になっている、あるいはCRCが処理対象データから算出した期待値との一致をもって、処理対象データが書き込まれたことを判断することが出来る。
【0064】
なお、複数の処理データをRAM24内に保持する場合、上記処理対象データは、任意に設定することができる。例えば、処理対象データとして、アプリ毎(処理するコマンド毎)に所定のデータを設定しRAM24に記憶するようにしてもよいし、所定のアプリの集合で一つのデータを設定し記憶するようにしてもよい。
【0065】
複数の処理データをRAM24内に保持する場合、識別情報には処理対象データと、CPU25に処理対象データを処理させるコマンドの種類、及び当該コマンドを処理するアプリの種類が夫々対応付けて記憶されている。従って、CPU25は、識別情報を参照することによって、インターフェース21から受信したコマンドに対応する処理対象データを特定することができる。また、CPU25は、識別情報を参照することによって、コマンドを処理するアプリに対応する処理対象データを特定することもできる。
【0066】
また、識別情報の判断手段としてのCPU25は、インターフェース21の何れかからコマンドを受信した場合に、当該コマンドに対応付けて記憶されたRAM24に記憶された識別情報を検索もしくは処理対象データの有無を判断するようになっている。そして、上記識別情報の存在が確認された、もしくは処理対象データがあると判断された場合には、CPU25は、当該識別情報に対応付けてRAM24に記憶された処理対象データを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理するようになっている。
【0067】
また、第2データ書込手段としてのCPU25は、インターフェース21の何れかからコマンドを受信した場合に、RAM24を参照し、当該コマンドに対応付けて記憶された識別情報を確認し、当該識別情報が検索されない、もしくは識別情報により当該処理対象データが存在しないと判断した場合には、処理対象データを、RAM24に書込むようになっている。
【0068】
[2.携帯端末1の動作]
次に、図3を参照して、携帯端末1の動作について説明する。
【0069】
図3は、携帯端末1の動作を示すフローチャートである。なお、図3に示す携帯端末1の動作は、携帯電話1を用いてユーザが交通機関の改札口を通過(非接触サービスの一例としてのプリペイドカードの機能)することによってCPU25がREQCコマンド要求(非接触コマンドの一例)を受信した場合、又は、CPU25がAUTHENTICATEコマンド(接触コマンドの一例)を受信した場合など、CPU25がインターフェース21の何れかからコマンドを受信した場合の形態である。
【0070】
図3に示すように、CPU25は、コマンドを受信すると(ステップS1)、RAM24を参照し、当該コマンドに対応付けて記憶された識別情報を検索する(ステップS2)。
【0071】
上記識別情報が検索された場合には(ステップS2:YES)、CPU25は、検索された識別情報に対応付けてRAM24に記憶された処理対象データを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理する(ステップS3)。
【0072】
従って、CPU25は、EEPROM23に対するアクセス状態にかかわらず、RAM24に記憶された不揮発性メモリに記憶されたデータと同一のデータを処理することができるため、サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理することができる。
【0073】
一方、上記識別情報が検索されなかった場合には(ステップS2:NO)、EEPROM23に記憶されている処理対象データを、RAM24に書込む(ステップS4)。そして、CPU25は、上記処理対象データがRAM24に書込まれたことを示す識別情報をRAM24に記憶する(ステップS5)。
【0074】
なお、以上説明した実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。そして、上記実施形態の中で説明されている構成の組み合わせ全てが発明の課題解決に必須の手段であるとは限らない。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、CPU25は、インターフェース21の何れかからコマンドを受信した場合に、EEPROM23に記憶された処理対象データを、RAM24に書込むように構成したため、EEPROM23に対するアクセス状態にかかわらず、RAM24に記憶された不揮発性メモリに記憶されたデータと同一のデータを処理することができるため、サービスを実行させるコマンドを高速かつ確実に処理することができる。
【0076】
なお、上記実施形態においては、本願を携帯端末1に搭載されたUIMに対して適用した場合を例に説明したが、インターフェースを介して複数のプロトコル(例えば、USB等)によって他の携帯端末と通信を行うことが可能なその他の携帯端末に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 携帯端末
2 非接触リーダ
3 基地局
11 コントローラ
12 CLF
13 UIM
21 インターフェース
22 ROM
23 EEPROM
24 RAM
25 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインターフェースを有し、
前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理するICチップであって、
前記コマンドに基づいて前記第1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部と、
電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のICチップであって、
前記データ書込み手段によって、前記第2の記憶部に前記コマンドの処理に用いられるデータが書込まれた場合には、前記データが前記第2の記憶部に書込まれたことを示す識別情報を前記第2の記憶部に記憶する識別情報記憶手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項3】
請求項2に記載のICチップであって、
前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記識別情報記憶手段によって記憶された識別情報を検索もしくはコマンドの処理に用いられるデータの有無を判断する識別情報の判断手段と、
前記識別情報の判断手段によって識別情報の存在が確認された、もしくはコマンドの処理に用いられるデータがあると判断された場合には、前記第2の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理することを特徴とするICチップ。
【請求項4】
請求項2に記載のICチップであって、
前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記識別情報記憶手段によって記憶された識別情報を検索もしくはコマンドの処理に用いられるデータの有無を判断する識別情報の判断手段と、
前記識別情報の判断手段によって識別情報が検索されない、もしくは識別情報により当該処理対象データが存在しないと判断した場合には、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込む第2データ書込手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のICチップであって、前記ICチップは、UIM(User Identity Module)に搭載されていることを特徴とするICチップ。
【請求項6】
請求項5に記載のICチップであって、前記UIMは、携帯端末に装着されていることを特徴とするICチップ。
【請求項7】
複数のインターフェースを有し、
前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理し、前記コマンドに基づいて前記第1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部を備えるICチップにおける処理方法であって、
電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込工程を有することを特徴とする処理方法。
【請求項8】
複数のインターフェースを有し、
前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理し、前記コマンドに基づいて前記第1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部を備えるICチップに含まれるコンピュータを、
前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込手段、
として機能させることを特徴とするICチップ用処理プログラム。
【請求項9】
複数のインターフェースを有し、
前記インターフェースを介して受信する、第1の記憶部に不揮発に記憶されたデータを用いて所定のサービスを実行させるコマンドを処理する接触型ICチップと、当該ICチップと第一の前記インターフェースを介して通信可能なコントローラとを備える携帯端末において、
前記接触型ICチップは、
前記コマンドに基づいて前記1の記憶部から読み出されたデータの処理を行うための作業領域として用いられる第2の記憶部と、
電源接続、リセット信号、又は前記複数のインターフェースの何れかからコマンドを受信した場合に、前記第1の記憶部に記憶された前記コマンドの処理に用いられるデータを、前記第2の記憶部に書込むデータ書込手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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