説明

IL−1インヒビターを使用する糖尿病の治療

本発明は、(a)IL−1、(b)IL−1の合成、又は(c)IL−1の放出を阻害する化合物で、糖尿病又はメタボリックシンドロームを治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、(a)IL−1、(b)IL−1の合成、(c)IL−1の放出を阻害する化合物の投与により、1型又は2型糖尿病を治療する方法に関する。本発明はまた(a)IL−1、(b)IL−1の合成、(c)IL−1の放出を阻害する化合物の投与により、メタボリックシンドロームを治療する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
1型糖尿病は、一方ではベータ細胞を標的とする破壊的自己免疫プロセスと他方ではこれら細胞の再生能力の間の好ましくないバランスのために膵臓ベータ細胞の消失が進行することにより特徴付けられる。この不均衡は結果的に全ベータ細胞の消失と内因性インスリン分泌に至る。2型糖尿病は、インスリン抵抗性とベータ細胞機能障害により特徴付けられ、後者は、第一相インスリン放出障害、減少したべータ細胞プラス質量及びインスリン欠乏を含む(Donath及びHalban, Diabetologia 2004, 47, 581-589)。これは、脂質代謝異常、肥満症、及び高血圧によって特徴付けられるメタボリックシンドロームにしばしば関連する高血糖症を生じる。UKPDS研究では、2型糖尿病の診断時にベータ細胞機能が既に損なわれており、治療にもかかわらず機能が低下しつづけることが見出されている。やがては、ベータ細胞機能の消失は、おそらくはアポトーシスのために、ベータ細胞質量の消失を伴い、部分的にそれによって引き起こされる。(Butler等 Diabetes 2003, 52, 102-110。)ベータ細胞機能の低下とベータ細胞質量の消失は、内質ストレス、慢性高血糖症(糖毒性)、慢性高脂血症(脂肪毒性)、酸化ストレス、βアミロイド線維、ある種のサイトカイン及びアディポカイン、及びこれらのものと他の因子の組合せによって引き起こされうる (Rhodes Science 2005, 307, 380-384)。
【0003】
高濃度のグルコース又は脂質、並びにヒトβアミロイドペプチド、IL−1βのようなある種のサイトカイン及びレプチンのようなある種のアディポカインが齧歯類及びヒトベータ細胞を損ない、インビトロでのインキュベーション時にアポトーシスを引き起こすことが見出されている。(Maedler等 J. Clin. Invest. 2002, 110, 851-860;Maedler等 Diabetes 2004, 53, 1706-1713;Ritzel等 Diabetes 2003, 52, 1701-1708;Butler等 Diabetes 2003, 52, 2304-2314及びMaedler等 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2004, 101, 8138-8143を参照)高グルコース濃度又はレプチンの存在下でのヒト膵島のインキュベーションはIL−1βの放出を誘導し、ベータ細胞のアポトーシスを引き起こす。可溶型IL−1レセプターアンタゴニスト(ILRa)でIL−1βの効果を中和すると、糖毒性を改善しレプチンの有害な効果から保護することが示されている。(Maedler等 J. Clin. Invest. 2002, 110, 851-860;Maedler等 Diabetes 2004, 53, 1706-1713;Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2004, 101, 8138-8143;及び国際公開第04/002512号。)IL−1βはベータ細胞上のIL−1βレセプターに作用し、FAS発現を誘導し、これがついでアポトーシスを引き起こす。核因子カッパB(NFκB)の活性化は、IL−1β誘導FAS発現及びアポトーシスに必要とされる。NFκB転写因子はDNA結合タンパク質のRelファミリーのホモ及びヘテロ二量体からなる。(Karin等 Nat Rev Drug Discov 2004, 3, 17-26。)これらの転写因子のキーとなる役割は、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン、MHCタンパク質、成長因子、及び細胞接着分子を含む広域の炎症促進性遺伝子の発現を誘導しコーディネートすることにある。NFκBは通常はIκBによって細胞質に保持される;しかしながら、細胞活性化の際に、IκBはIκBキナーゼ(IKK)によってリン酸化され、つづいて分解する。ついで、遊離のNFκBは核に移動し、そこで炎症促進性遺伝子の発現を媒介する。3種の古典的なIκBがある:IκBα、IκBβ、及びIκBεである;全てが、分解されうる前に二つの重要なセリン残基のリン酸化を必要とする。二つの主要な酵素がIκBリン酸化の原因であると思われる:IKK−1及びIKK−2である。IKK−1又はIKK−2の何れかのドミナントネガティブ(DN)型(ここで、ATP結合はキーとなるキナーゼドメイン残基の変異によって不能とされている)はTNF−a、IL−1b、LPS、及びCD3/CD28架橋によってNFκBの活性化を抑制することが見出された;重要なことは、IKK−2DNがIKK−1DNよりの遙かに強力な阻害剤であることが見出されたことである。更に、IKK−1及びIKK−2欠損マウスの産生により、炎症促進性刺激によるNFκBの活性化にIKK−2が必要なことが確立され、生化学データにより示唆されたIKK−2のドミナントな役割が補強された。確かに、IKK−1がこれらの刺激によるNFκB活性化に不要であることが実証された。
【0004】
抗炎症性サリチル酸はヒトにおける抗糖尿病効果を有している。(Yuan等 Science 2001, 293, 1673-1677。)IKKβ及びNFκBに至るシグナル伝達経路が肥満及び抗脂肪給餌動物のインスリン応答性組織において活性化されることが更に見出された。従って、サリチル酸の抗炎症効果を生じるシグナル伝達経路の一部であるIKKβ/NFκBは、インスリン抵抗性に至るシグナル伝達経路の一部であると仮定される。(Yuan等 Science 2001, 293, 1673-1677。) IKKβ/NFκBの活性化は、例えばIL−1β及びIL6によるインターロイキンレセプターの活性化を通して部分的に媒介される。(Braddock等 Nat Rev Drug Discov 2004, 3, 330-339。)
IL−1βはIL−1β−変換酵素(ICE又はカスパーゼ−1)による切断を通して31kDaのプロ−IL−1βから誘導される17kDaのタンパク質である。(Braddock等 Nat Rev Drug Discov 2004, 3, 330-339。)幾つかのシグナル伝達経路が、NFκB、TNFα、及びToll様レセプターリガンド、例えばリポ多糖類(LPS)を介してIL−1β自体を含むプロ−IL−1βの転写上方制御を調節する。ICEのインヒビターは、LPS誘導IL−1β放出を減少させる。ICEはラットの膵島中に存在していることが見出された。(Karlsen等 J. Clin. Endocrinol Metab 2000, 85, 830-836。)
【0005】
ある種の化学物質、例えばスルホニル尿素が、LPS誘導IL−1β放出を、おそらくはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を含む機序を通して阻害することが更に見出されている。(Braddock等 Nat Rev Drug Discov 2004, 3, 330-339。)これらは、サイトカイン−放出阻害薬(CRID)と呼ばれる。
上記に鑑みると、IL−1β自体を阻害するか、又はIL−1βの合成又は放出を阻害することによって、1型又は2型糖尿病を治療することは有益であると思われる。従って、改善された効力、増加した血漿半減期、低下した治療投薬量、より少ない注射、より低い製造コスト、及びより少ない副作用を達成するために以下に記載した方法で1型又は2型糖尿病又はメタボリックシンドロームを治療することがまた望ましいであろう。
【0006】
(発明の概要)
一側面では、本発明は、(a)IL−1、(b)IL−1の合成、又は(c)IL−1の放出を阻害する化合物を投与することを含む、1型又は2型糖尿病を治療する新規方法を提供する。
一側面では、本発明は、(a)IL−1、(b)IL−1の合成、又は(c)IL−1の放出を阻害する化合物を投与することを含む、メタボリックシンドロームを治療する新規方法を提供する。
一側面では、本発明は、(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を投与することを含む、メタボリックシンドロームを治療する新規方法を提供する。
一側面では、本発明は、(a)IL−1α、(b)IL−1αの合成、又は(c)IL−1αの放出を阻害する化合物を投与することを含む、メタボリックシンドロームを治療する新規方法を提供する。
【0007】
他の側面では、本発明は、治療に使用される(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を提供する。
他の側面では、本発明は、1型又は2型糖尿病の治療のための医薬の製造のための(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を提供する。
他の側面では、本発明は、メタボリックシンドロームの治療のための医薬の製造のための(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を提供する。
次の詳細な説明の間に明らかになるこれらの目的及び他の目的は、(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物又はその薬学的に許容可能な塩が1型又は2型糖尿病あるいはメタボリックシンドロームを治療するのに有効であるはずであるという発明者の発見によって達成された。
【0008】
他の側面では、本発明は、治療において使用されるための(a)IL−1α、(b)IL−1αの合成、又は(c)IL−1αの放出を阻害する化合物を提供する。
他の側面では、本発明は、1型又は2型糖尿病の治療のための医薬の製造のための(a)IL−1α、(b)IL−1αの合成、又は(c)IL−1αの放出を阻害する化合物を提供する。
他の側面では、本発明は、メタボリックシンドロームの治療のための医薬の製造のための(a)IL−1α、(b)IL−1αの合成、又は(c)IL−1αの放出を阻害する化合物を提供する。
次の詳細な説明の間に明らかになるこれらの目的及び他の目的は、(a)IL−1α、(b)IL−1αの合成、又は(c)IL−1αの放出を阻害する化合物又はその薬学的に許容可能な塩が1型又は2型糖尿病あるいはメタボリックシンドロームを治療するのに有効であるはずであるという発明者の発見によって達成された。
【0009】
(発明の説明)
一実施態様では、本発明は、(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を投与することを含む、1型又は2型糖尿病の治療方法を提供する。
インターロイキン−1(IL−1)トラップは、IL−1レセプター成分と他の融合タンパク質に存在する多量体化成分と相互作用してより高次の構造を形成可能な多量体化成分を含む融合タンパク質の多量体、例えば二量体である。サイトカイントラップは、それらが単一のサイトカインに結合する二つの区別されるレセプター成分を含み、単一成分試薬によって提供されるものよりも劇的に親和性が増加したアンタゴニストの産生を生じる点で、レセプター−Fc融合概念の新規な拡張である。実際、ここに記載されるサイトカイントラップは、これまで記載されているなかで最も強力なサイトカインブロッカーである。簡潔に述べると、IL−1トラップと呼ばれるサイトカイントラップは、ヒトIL−1RのI型(IL−1 RI)又はII型(IL−1RII)の細胞外ドメインにヒトIL−1アクセサリータンパク質(IL−1AcP)が続き、それに多量体化成分が続くものからなる。好ましい実施態様では、多量体化成分は、免疫グロブリン誘導ドメイン、例えばヒンジ領域、CH2及びCH3ドメインの一部を含むヒトIgGのFc領域である。あるいは、IL−1トラップは、ヒトIL−1AcPの細胞外ドメインに、ヒトIL−1RI又はIL−1RIIの細胞外ドメインに続き、それに多量体化成分が続くものからなる。IL−1トラップの更に詳細な説明には、ここに出典明示によりその全体が特に援用される刊行物である国際公開第00/18932号を参照のこと。好ましいIL−1トラップは公開された米国特許出願第2005/0129685号の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、及び26に示されたアミノ酸配列を有している。
【0010】
特定の実施態様では、IL−1アンタゴニストはIL−1α、IL−1β、IL−1R1及び/又はIL−1RAcp、又はその断片に結合可能な抗体断片を含む。例えば単鎖Fv(scFv)のような一又は複数の抗体断片を含むIL−1アンタゴニストの一実施態様は、米国特許第6472179号に記載されており、該刊行物の全体を出典明示によりここに特に援用する。IL−1又はIL−1レセプターに特異的な一又は複数の抗体誘導成分を含むIL−1アンタゴニストの実施態様の全てにおいて、該成分は、その分子又は多量体がIL−1の生物学的活性を阻害することができる限り、様々な配置に構成することができ、例えば、IL−1レセプター成分−scFv−多量体化成分;IL−1レセプター成分−多量体化成分−scFv;scFv−IL−1レセプター成分−多量体化成分である。他の実施態様では、IL−1アンタゴニストはIL−1raである。
【0011】
好ましい一実施態様では、IL−1アンタゴニストは、IL−1α、IL−1β、IL−1R1及び/又はIL−1RAcpに結合することができる抗体ドメインを含む。ドメイン抗体は、ヒト抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)の何れかの可変領域に対応する抗体の最小の機能的結合単位である(Holt LJ Trends in biotechnology, Vol. 21 (11), pp. 484-490, 2003)。ドメイン抗体はおよそ13kDaの分子量を有している。一般的な抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母、及び哺乳動物細胞系中によく発現される。加えて、多くのドメイン抗体は非常に安定であり、凍結乾燥もしくは熱変性のような厳しい条件にさらされた後でさえ活性を維持している。これらの特徴は、ドメイン抗体を広範囲の薬学的製剤条件及び製造方法に受け入れやすくしている。加えて、ドメイン抗体の小さいサイズは、製品1グラム当たりのモル量を多くすることを可能にし、用量当たりの力価を有意に増加させ、全体的な製造コストを低減するはずである。IL−1α、IL−1β、IL−1R1及び/又はIL−1RAcpに対して選択されるドメイン抗体は、例えば、一つの簡単に作られた分子で、IL−1α、IL−1β、IL−1R1及び/又はIL−1RAcpから選択される二つの標的に結合する二重標的ドメイン抗体のような、一般的な抗体又はタンパク質では利用できない独特の特徴を持つ治療製品を作り出すための構築ブロックとして使用することができる。IL−1α、IL−1β、IL−1R1及び/又はIL−1RAcpと、限定しないがアルブミン又はトランスフェリンのような長い循環半減期を持つ血漿タンパク質に結合する二重標的二重標的ドメイン抗体は、目的に合わせた血漿半減期を持つように作製することができる。長い血漿半減期は、また、モノ又はポリ分散ポリエチレングリコール基又はアルブミン結合部分を含む化学的部分を結合させることにより目的に合わせてあつらえることができる。
好ましい実施態様では、アルブミン又はトランスフェリン結合ドメイン抗体はIL−1Ra又はその断片又は変異体にコンジュゲートされるか又は融合される。
【0012】
好ましい実施態様では、化合物は2つのIL−1レセプター成分と多量体化成分を含むIL−1特異的融合タンパク質、例えば出典明示によりその全体がここに特に援用される2003年7月31日公開の米国特許出願公開第2003/0143697号に記載されたIL−1トラップである。特定の実施態様では、IL−1トラップは、公開された米国特許出願第2005/0129685号の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示された融合タンパク質である。好ましいIL−1トラップは米国特許出願公開第2005/0129685号の配列番号10に示されている。特定の実施態様では、化合物は一又は複数のレセプター成分とIL−1及び/又はIL−1レセプターに特異的な一又は複数の免疫グロブリン誘導成分を含む修飾IL−1トラップである。他の実施態様では、化合物はIL−1及び/又はIL−1レセプターに特異的な一又は複数の免疫グロブリン誘導成分を含む修飾IL−1トラップである。他の実施態様では、IL−1アンタゴニストはIL−1α(米国特許出願公開第2005/0129685号の配列番号27(完全長分子);米国特許出願公開第2005/0129685号の配列番号28(成熟タンパク質)である。
【0013】
ここで使用される場合、「治療する」又は「治療」とは、哺乳動物、特にヒトにおける疾患状態の治療を包含し、(a)特に哺乳動物が疾患状態になる素因があるが、罹っているとまだ診断されていない場合に、哺乳動物に疾患状態が起こることを予防し;(b)疾患状態を抑制し、例えばその発生を抑止又は遅らせ;及び/又は疾患状態を軽減し、例えば疾患状態自体又は疾患状態の幾つかの徴候の後退を生じさせることを含む。
ここで使用される場合、「変異体(単数又は複数)」なる用語は、親タンパク質の一又は複数のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換され、及び/又は親タンパク質の一又は複数のアミノ酸が欠失させられ、及び/又は一又は複数のアミノ酸が挿入され、及び/又は一又は複数のアミノ酸が親タンパク質に付加されたタンパク質を指すものである。
【0014】
よって、本発明の一側面は、(a)IL−1、(b)IL−1の合成、又は(c)IL−1の放出を阻害する化合物を投与することを含む、1型又は2型糖尿病を治療する方法であって、但し化合物はIL−1トラップ分子である方法である。
本発明の他の側面は、(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を投与することを含む、1型又は2型糖尿病を治療する方法であって、但し化合物はIL−1トラップ分子である方法を提供する。
他の側面では、本発明は、1型又は2型糖尿病の治療のための、一又は二の抗体断片を含むインターロイキン1中和分子の使用を提供する。
他の側面では、本発明は、1型又は2型糖尿病の治療のための、多機能抗体又は抗体断片を含むインターロイキン1中和分子の使用を提供する。
他の側面では、本発明は、抗体断片はドメイン抗体である上記側面に記載の分子を提供する。
他の側面では、本発明は、二つの異なった結合ドメインを含む上記側面に記載の分子を提供する。
他の側面では、本発明は、IL−1Rに結合する上記側面6の何れか一に記載の分子を提供する。
他の側面では、本発明は、IL−1に結合する分子を提供する。
他の側面では、本発明は、親分子と比較して血漿半減期が増加するように分子が誘導体化されている分子を提供する。
他の側面では、本発明は、モノ又はポリ分散ポリエチレングリコール基を含む化学部分で分子が化学的に誘導体化されている分子を提供する。
他の側面では、本発明は、分子がアルブミン結合部分で化学的に誘導体化されるか組換え的に融合されている分子を提供する。
他の側面では、本発明は、アルブミン結合部分が抗体断片である分子を提供する。
他の側面では、本発明は、アルブミン結合部分が2000ダルトン以下の分子量を持つ分子である分子を提供する。
他の側面では、本発明は、分子がIgG Fcドメインで化学的に誘導体化されるか組換え的に融合されている分子を提供する。
他の側面では、本発明は、1型又は2型糖尿病の治療のための、IL−1Ra又はその断片又は変異体に融合したアルブミン結合ドメイン抗体を含む分子の使用を提供する。
他の側面では、本発明は、1型又は2型糖尿病の治療のための、IL−1Ra又はその断片又は変異体に融合したトランスファー結合ドメイン抗体を含む分子の使用を提供する。
他の側面では、本発明は、IL−1結合ドメイン抗体又はその変異体に融合したアルブミン結合ドメイン抗体を含む分子を提供する。
他の側面では、本発明は、IL−1結合ドメイン抗体又はその変異体に融合したトランスファー結合ドメイン抗体を含む分子を提供する。
【0015】
有用性
IL−1βの放出の阻害。
例えばヒト血液のような異なった組織からのIL−1βの放出を測定するためのアッセイは記載されている。(Ichikawa等 J. Antibiot (Tokyo) 2001, 54, 697-702 and Perregaux, et. al. J. Pharmacol Exp Ther 2001, 299, 187-197。)
グルコース誘導ベータ細胞死(アポトーシス)の阻害。
グルコースにより誘導されたベータ細胞死/アポトーシスを測定するためのアッセイは記載されている。(Maedler等 J. Clin. Invest. 2002, 110, 851-860。)
ベータ細胞機能の保存。
高グルコースの存在下でインキュベートしたヒトベータ細胞の機能に対する化合物の効果を測定するためのアッセイは記載されている。(Maedler等 Diabetes 2004, 53, 1706-1713;Ritzel等 J. Clin. Endocrinol Metab 2004, 89, 795-805;及びBjorklund等 Diabetes 2000, 49, 1840-1848を参照。)
インビボでのベータ細胞機能に対する急性効果。
インビボでのベータ細胞機能に対する試験化合物の急性効果は経口グルコース許容試験法を使用して定量することができる。同じ方法を、化合物の作用の時間を特徴付けるために使用することができる。
抗糖尿病効果。
化合物の抗糖尿病効果は、標準的な薬理学的方法を使用して決定し、測定することができる。これには、糖尿病のラット及びマウスへの急性及び亜慢性投与時に血糖及びHbAlcに対する化合物の効果を測定することが含まれる。このような方法は当該分野において記載されている。
糖尿病の予防。
前臨床モデルにおける糖尿病を予防する化合物の能力を測定するための方法は当該分野で記載されている。これには、例えば試験化合物が投与された糖尿病のズッカーラット(Carr等 Diabetes 2003, 52, 2513-2518)及びデブスナネズミ(Anis等 Diabetologia 2004, 47, 1232-1244)における血糖、HbAlc、及びグルコース耐性の測定が含まれる。
【0016】
臨床試験。インターロイキン−1レセプターアンタゴニストでの2型糖尿病の患者の治療(試験の示唆)
72名の患者を、患者の半分を本発明の化合物で治療し、残りの半分を生理食塩水で治療する二重盲検プラセボ対照プロトコルに従って無作為化する。治療時間は13週続く。この期間は、機能的糖毒性(61)の逆転に十分で、服薬(患者コンプライアンス)の点で実行可能でなければならない。13週の治療が予測できない形でβ細胞質量に有意な変化を生じさせるのに十分かどうか。しかしながら、新膵島形成及びβ細胞複製が正常であるが(62)、β細胞アポトーシスをブロックすると、β細胞質量の拡大を開始し、これが治療期間を超えて進行しうる。患者の評価は、開始時と4、13、26、39及び52週後に実施される。13週後に、空腹時血糖値が>8mMか又はグルコシル化ヘモグロビン値(HbAlc)が>8%の患者をインスリンで治療する。インスリン治療は、本発明の化合物の最大の効果が期待される期間で第一の結果に対するインスリンの可能な硬化との干渉をさけるためにそれより早くは開始されない。インスリン感受性に対する本発明の化合物の効果を評価するために、40名の患者(20名は本発明の化合物が投与され、20名はプラセボ処置)のサブセットが正常血糖高インスリンクランプ法並びに筋肉及び脂肪組織診を治療開始時と治療終了後(13週)に受ける。
【0017】
組み入れ基準
年齢>30
食事療法及び運動のみ及び/又は経口抗糖尿病薬で少なくとも3ヶ月の期間治療された糖尿病2型(米国糖尿病協会基準)
HbA1c>8%
肥満度指数(BMI)>27
【0018】
排除基準
GAD2又はIA−2抗体陽性
HbA1c>12%、多尿及び口渇 (深刻な非代償性患者の除外)
インスリンで現在治療中
確立された抗炎症治療
CRP>30mg/dl、発熱抗生物質で現在治療中、又は慢性肉芽腫感染(例えば、結核)が病歴にあり、又は胸部X線検診。
好中球減少症又は貧血(白血球数<2.0×10/l、ヘモグロビン<11g/dl(男性)又は<10g/dl(女性)
妊娠又は授乳中
深刻な肝臓又は腎臓疾患(AST又はALT>正常検査範囲の上限の3倍、血清クレアチニン値>130μM)
進行中の悪性腫瘍
治験への登録前の30日以内の任意の治験薬の使用か治験薬の5半減期以内(何れか長い方)
【0019】
主要評価項目:
活性化C−ペプチド及びインスリン(以下を参照)
HbA1c
空腹時血糖値 (FPG)
副次的評価項目:
【0020】
インスリン必要性
血清中サイトカイン値、CRP
インスリン及びグルコース測定値でOGTTから誘導したインスリン分泌及びインスリン感性指数
患者サブグループにおけるクランプ法によりまた筋肉及び脂肪組織診により評価されたインスリン感受性。
【0021】
患者評価
患者は次のようにして評価する:
肥満度指数、ヒップとウエストの比率、血圧(起立及び仰臥位)、心拍数を含む理学的検査
遊離脂肪酸を含む脂質プロファイル、HDL−及びLDL−コレステロール、IL−1β、IL−1Ra、IL−6、TNFα、CRP、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、AST、ALT、及び肝造影図の測定のための血液サンプル。
アルブミン尿及びクレアチニンクリアランスのための24時間の蓄尿(ベースラインと治験の終わりのみ)。
立体視的眼底写真を含む眼科的検査(ベースラインと治験の終わりのみ)
0、30、60、90及び120分での血漿血糖、インスリン及びC-ペプチドの測定を伴う標準的な経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)。120分にて、0.3g/kgグルコース+0.5mgグルカゴン+5gアルギニンを静脈内注射した後、0、3、6、9及び12分に血漿血糖及びインスリンを測定する。
毎週の完全な血糖プロファイルを患者が家で実施する。
正常血糖高インスリンクランプ法及び組織診:40名の患者(20名に本発明の化合物を投与、20名にプラセボ処置)のサブセットが正常血糖高インスリンクランプ法並びに筋肉及び脂肪組織診を受ける。ポリエチレンカテーテルを注入のために前腕前部の静脈に、また血液サンプリングのために反対側背側の手又は前腕前部の静脈に配する。この「サンプリング」の手を加熱したプレキシグラスボックスに配して静脈血液サンプルの動脈化をなす。最初の40分の基底時間後に、プライムド連続インスリン注入(40mU・m−2・min−1)を開始し、3時間継続する。基底及びインスリン刺激定常状態期間を、40分の基底状態期間の最後の30群及び3時間のクランプ期間の最後の30分の期間として定義する。グルコースの可変注入(180g/l)はインスリン注入中において正常血糖を維持する。血漿血糖濃度を、自動グルコース酸化法を使用して基底及びクランプ期間中に5から10分毎にモニターする。血液サンプルは、基底及びクランプ定常状態期間の間、10から30分毎にインスリンの測定のために血液サンプルを抜き取る。針生検を、外側広筋筋肉から、また同じ領域の皮下脂肪から、並びに腹部領域から基底状態(時間0分)において得る。生検を液体窒素中で即座に凍結させ、サイトカイン(例えばTNFα、OL−1α及びβ、IL−1Ra、IL−6、アディポネクチン及びレプチン)並びにインスリン作用に潜在的に重要な他の遺伝子及びタンパク質の発現について分析するまで−80℃で保存する。
患者は24時間の激しい身体的活動を絶ち、双方の試験(OGTT及びクランプ試験)前9−10時間の間、絶食するように指示される。彼らは試験日に治験薬の注射を受けるが他の抗糖尿病薬は受けない。クランプは、2から7日をあけて、OGTTに続く。治験薬は全ての評価が終わるまで継続される。
【0022】
基本的投薬法:
治験中、患者の現在の治療法の変更は避けなければならない。
本発明の化合物又はプラセボ(生理食塩水)は100mgの朝1回容量で24時間毎に投与される。本発明の化合物又はプラセボ(生理食塩水)は腹部又は大腿上部に皮下的に注射される。治験看護婦が患者に自分で注射をする方法を指示する。一人の医師が24時間を通して健康又は他のなんらかの問題のために常に待機している。
【0023】
予想される結論:
ベースライン又はプラセボ治療患者と比較して本発明の化合物で治療された患者において次の改善が期待できる:
活性化C-ペプチド及びインスリンレベルにおける60%(又はそれ以上)の増加
HbA1cの改善:ベースラインHbA1cに依存、HbA1cが1%(ベースライン8%)から4%(ベースライン12%)まで減少。
空腹時血漿グルコース(FPG):ベースラインFPGに依存、FPGが13%(ベースライン8mMグルコース)から27%(ベースライン15mMグルコース)まで減少。
IL−1Ra処置群ではインスリン要求性なしに対してプラセボ処置群では0.8IU/Kgのインスリン。
インスリン感受性の60%(又はそれ以上)の増加。
血清サイトカイン及びCRP値の正常化。
効能を証明する方法:
【0024】
ベータ細胞機能及び生存率に対するIL−1阻害化合物の効果のインビトロ分析:
異なった種(例えばデブスナネズミ及びヒト)の天然膵島又はベータ細胞又はベータ細胞株(例えばINS-1, RIN, MIN) を、IL−1阻害化合物の不在又は存在下で毒性濃度のIL−1β又は高グルコース濃度(例えば30mmol)にさらす。培養1−6日後に、膵島/細胞の生存率を標準的な市販の生存率アッセイ(例えばMTT、ATP.カスパーゼ-3、LDH、PI、Tunnelアッセイ)によって測定して、IL−1阻害化合物の不在下における高グルコース又はIL−1の毒性効果の減少を証明する。加えて、ベータ細胞機能に対する効果もまたインスリン放出に対する効果の測定によって取り組む。
【0025】
T2Dの治療及び発生の防止に対するIL−1阻害化合物の効果のインビボ分析:
血糖値(およそ20mmol)によって糖尿病の発症が検出されるまで高エネルギー食餌に維持した糖尿病誘発 デブスナネズミを、ビヒクル処置群と、高エネルギー食餌で更に2−4週の間、異なった濃度のIL−1阻害化合物(例えばIL−1トラップ)で治療した動物の群に分ける。治療の開始時から空腹時朝血糖値並びにHbAlCを測定してT2D動物を正常化させるIL−1阻害策の能力を検出する。
併行実験で、動物を高エネルギー食餌と共にビヒクル又はIL−1阻害化合物で処置して、活性化合物(例えばIL−1トラップ)がT2Dの発生を予防することができるかを決定する。
【0026】
本発明の他の実施態様では、本化合物は、一又は複数の更なる活性物質と任意の適切な比で併用して投与される。一又は複数の更なる活性物質と併用される場合、化合物の組合せは好ましくは相乗的組合せである。相乗効果は、併用して投与される場合の化合物の効果が、単一薬剤として投与される場合の化合物の相加効果よりも大きい場合に生じる。一般に、相乗効果は化合物の最適以下の濃度で最も明確に証明される。そのような更なる活性剤は、抗糖尿病薬、高脂血症治療薬、抗肥満薬、血圧降下薬、及び糖尿病から生じるか糖尿病に伴う合併症の治療剤から選択することができる。
適切な抗糖尿病薬には、インスリン、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)誘導体、例えば国際公開第98/08871号(ノボ・ノルディスクA/S)(ここに出典明示により援用する)に開示されているもの、並びに経口的に活性な血糖降下薬が含まれる。
【0027】
適切な経口活性の血糖降下薬には、好ましくは、イミダゾリン類、スルホニル尿素類、ビグアニド類、メグリチニド類、オキサジアゾリジンジオン類、チアゾリジンジオン類、インスリン抵抗性改善薬、α-グルコシダーゼ阻害剤、膵臓β細胞のATP依存性カリウムチャンネルに作用する薬剤、例えば、国際公開第97/26265号、同第99/03861号及び同第00/37474号(ノボ・ノルディスクA/S)(これらは出典明示によりここに援用する)に開示されているもののようなカリウムチャンネル開口薬;カリウムチャンネル開口薬;カリウムチャンネル遮断薬、例えばナテグリニド又はBTS-67582、グルカゴンアンタゴニスト、例えば国際公開第99/01423号及び同第00/39088号(ノボ・ノルディスクA/S及びAgouron Pharmaceuticals, Inc.)(全て出典明示によりここに援用する)に開示されているもの;GLP-1アゴニスト、例えば国際公開第00/42026号(ノボ・ノルディスクA/S及びAgouron Pharmaceuticals, Inc.)(出典明示によりここに援用する)に開示されているもの;DPP-IV(ジペプチジルペプチダーゼ-IV)阻害剤;PTPアーゼ(タンパク質チロシンホスファターゼ)阻害剤;グルコース新生及び/又はグリコーゲン分解の刺激に関連する肝酵素の阻害剤、グルコース取り込みモジュレーター、GSK-3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3)阻害剤、脂質代謝を改変する化合物、例えば抗高脂血薬及び抗脂血薬、食物摂取を低下させる化合物、及びPPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)アゴニスト及びRXR(レチノイドX受容体)アゴニスト、例えばALRT-268、LG-1268又はLG-1069が含まれる。
【0028】
本発明の他の実施態様では、スルホニル尿素、例えばトルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリメピリド、グリカジド、又はグリブリドと併用して投与される。
本発明の他の実施態様では、本化合物は、ビグアニド、例えばメトホルミンと併用して投与される。
本発明の他の実施態様では、本化合物は、メグリチニド、例えばレパグリニド又はセナグリニド/ナテグリニドと併用して投与される。
本発明の他の実施態様では、本化合物は、チアゾリジンジオンインスリン抵抗性改善薬、例えばトログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、イサグリタゾン(isaglitazone)、ダルグリタゾン、エングリタゾン、CS-011/CI-1037、T174、国際公開第97/41097号(DRF-2344)、同第97/41119号、同第97/41120号、同第00/41121号、及び同第98/45292号(Dr. Reddy's Research Foundation)(これらの全てを出典明示によりここに援用する)に開示されている化合物と併用して投与される。
【0029】
本発明の他の実施態様では、本化合物は、インスリン抵抗性改善薬、例えばGI262570、YM-440、MCC-555、JTT-501、AR-H039242、KRP-297、GW-409544、CRE-16336、AR-H049020、LY510929、MBX-102、CLX-0940、GW-501516、及び国際公開第99/19313号(NN622/DRF-2725)、同第00/50414号、同第00/63191号、同第00/63192号、同第00/63193号(Dr. Reddy's Research Foundation)、国際公開第00/23425号、同第00/23415号、同第00/23451号、同第00/23445号、同第00/23417号、同第00/23416号、同第00/63153号、同第00/63196号、同第00/63209号、同第00/63190号、及び同第00/63189号(ノボ・ノルディスクA/S)(これらの全てを出典明示によりここに援用する)と併用して投与される。
【0030】
本発明の他の実施態様では、本化合物は、α-グルコシダーゼ阻害剤、例えばボグリボース、エミグリテート、ミグリトール又はアカルボースと併用して投与される。
本発明の他の実施態様では、本化合物は、グリコーゲン・ホスホリラーゼ阻害剤、例えば国際公開第97/09040号(ノボ・ノルディスクA/S)に記載された化合物と併用して投与される。
本発明の他の実施態様では、本化合物は、膵臓β細胞のATP依存性カリウムチャンネルに作用する薬剤、例えばトルブタミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、BTS-67582又はレパグリニドと併用して投与される。
本発明の他の実施態様では、本化合物はナテグリニドと併用して投与される。
【0031】
本発明の他の実施態様では、本化合物は、抗高脂血症薬又は抗脂血薬、例えばコレスチルアミン、コレスチポール、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、プルブコール、又はデキストロチロキシンとの併用で投与される。
他の実施態様では、本発明の化合物は一又は複数の抗肥満薬又は食欲調節剤との併用で投与されうる。そのような薬剤は、CART(コカインアンフェタミン調節転写)アゴニスト、NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、MC3(メラノコルチン3)アゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、TNF(腫瘍壊死因子)アゴニスト、CRF(コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP(コルチコトロピン放出因子結合タンパク質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、β3アドレナリン作動性アゴニスト、例えばCL-316243、AJ-9677、GW-0604、LY362884、LY377267又はAZ-40140、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラノサイト集中ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再摂取インヒビター(フルオキセチン、セロザット又はシタロプラム)、セロトニン及びノルエピネフェリン再摂取インヒビター、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長因子、例えばプロラクチン又は胎盤ラクトゲン、成長ホルモン放出化合物、TRH(チロトロピン放出ホルモン)アゴニスト、UCP2又は3(脱共役タンパク質2又は3)モジュレーター、レプチンアゴニスト、DA(ドーパミン)アゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼインヒビター、PPARモジュレーター、RXRモジュレーター、TRβアゴニスト、アドレナリン作動性CNS刺激薬、AGRP(アグーチ関連タンパク質)インヒビター、H3ヒスタミンアンタゴニスト、例えば国際公開第00/42023号、同第00/63208号及び同第00/64884号(その全ての内容を出典明示によりここに援用する)に開示されているもの、エキセンジン(exendin)-4、GLP-1アゴニスト、毛様神経栄養因子、及びオキシントモジュリンからなる群から選択することができる。更なる適切な抗肥満薬は、ブプロピオン(抗うつ薬)、トピラメート(抗けいれん薬)、エコピパム(ecopipam)(ドーパミンD1/D5アンタゴニスト)、及びナルトレキソン(オピオイドアンタゴニスト)である。
【0032】
本発明の他の実施態様では、抗肥満薬はレプチンである。
本発明の他の実施態様では、抗肥満薬はセロトニン及びノルエピネフリン再摂取阻害剤、例えばシブトラミンである。
本発明の他の実施態様では、抗肥満薬はリパーゼ阻害剤、例えばオルリスタットである。
本発明の他の実施態様では、抗肥満薬はアドレナリン作動性CNS刺激薬、例えばデキサアンフェタミン、アンフェタミン、フェンテルミン、マジンドール、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フェンフルラミン、又はデキシフェンフルラミンである。
本発明の他の実施態様では、本化合物は一又は複数の降圧剤と併用して投与されうる。降圧剤の例は、アルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロール及びメトプロノールなどのβ遮断薬、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル及びラミプリルなどのACE(アンギオテンシン転換酵素)阻害剤、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼム及びベラパミルなどのカルシウムチャンネル遮断薬、及びドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシン及びテトラゾシンなどのα遮断薬である。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版, Gennaro編, Mac Publishing Co., Easton, PA, 1995を更に参考にすることができる。
【0033】
本発明の他の一実施態様では、本化合物は、インスリン、インスリン誘導体又はインスリン類似体と組み合わせて投与される。
本発明の他の実施態様では、インスリンは、インスリン誘導体で、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-ミリストイルヒトインスリン、B29-N-パルミトイルヒトインスリン、B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28-N-パルミトイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンからなる群から選択される。
【0034】
本発明の他の実施態様では、インスリン誘導体はB29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリンである。
本発明の他の実施態様では、インスリンは酸安定化インスリンである。酸安定化インスリンは、次のアミノ酸残基の置換の一つを有するヒトインスリンの類似体から選択することができる:
A21G
A21G、B28K、B29P
A21G、B28D
A21G、B28E
A21G、B3K、B29E
A21G、desB27
A21G、B9E
A21G、B9D
A21G、B10Eインスリン。
【0035】
本発明の他の実施態様では、インスリンはインスリン類似体である。インスリン類似体は、B28がAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaであり、B29位がLys又はProである類似体;des(B28−B30);des(B27);又はdes(B30)ヒトインスリンからなる群から選択されうる。
他の実施態様では、類似体は、B28位がAsp又はLysであり、B29位がLys又はProであるヒトインスリンの類似体である。
他の実施態様では、類似体はdes(B30)ヒトインスリンである。
他の実施態様では、インスリン類似体は、B28位がAspであるヒトインスリンの類似体である。
他の実施態様では、類似体は、B3位がLysであり、B29位がGlu又はAspである類似体である。
【0036】
他の実施態様では、本発明の化合物と組み合わせて用いられるGLP-1誘導体とは、GLP-1(1-37)、エキセンディン-4(1-39)、そのインスリン分泌促進断片、そのインスリン分泌促進類似体及びインスリン分泌促進誘導体のことである。GLP-1(1-37)のインスリン分泌促進断片は、全配列をGLP-1(1-37)の配列中に見出すことができ、少なくとも一つの末端アミノ酸が欠失しているインスリン分泌促進ペプチドである。GLP-1(1-37)のインスリン分泌促進断片の例は、GLP-1(1-37)の1−6位のアミノ酸残基が欠失しているGLP-1(7-37)、及びGLP-1(1-37)の1−6及び37位のアミノ酸残基が欠失しているGLP-1(7-36)である。エキセンディン-4(1-39)のインスリン分泌促進断片の例はエキセンディン-4(1-38)及びエキセンディン-4(1-31)である。所定の化合物のインスリン分泌促進特性は、当該分野でよく知られたインビボ又はインビトロアッセイによって確定することができる。例えば、化合物を動物に投与し、インスリン濃度を経時的にモニターすることができる。GLP-1(1-37)及びエキセンディン-4(1-39)のインスリン分泌促進類似体とは、該類似体がインスリン分泌促進性であるかインスリン分泌促進化合物のプロドラッグであるという条件下で、アミノ酸残基の一又は複数が他のアミノ酸残基と交換され、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基がそこから欠失され、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基が付加された各分子のことである。GLP-1(1-37)のインスリン分泌促進類似体の例は、例えば8位のアラニンがメチオニンに置き換えられ、1から6位のアミノ酸残基が欠失されたMet-GLP-1(7-37)、及び34位のバリンがアルギニンに置き換えられ、1から6位のアミノ酸残基が欠失されたArg34-GLP-1(7-37)である。エキセンディン-4(1-39)のインスリン分泌促進類似体の例は、2及び3位のアミノ酸残基がセリンとアスパラギン酸でそれぞれ置き換えられたSerAsp-エキセンディン-4(1-39)である(この特定の類似体はまたエキセンディン-3として当該分野で知られている)。GLP-1(1-37)、エキセンディン-4(1-39)及びその類似体のインスリン分泌促進誘導体は、当業者がこれらのペプチドの誘導体であると考えるものであり、すなわちその誘導体がインスリン分泌促進性であるかインスリン分泌促進化合物のプロドラッグであるという条件下で親ペプチド分子には存在しない少なくとも一つの置換基を有するものである。置換基の例はアミド、糖質、アルキル基及び脂溶性置換基である。GLP-1(1-37)、エキセンディン-4(1-39)及びその類似体のインスリン分泌促進誘導体の例は、GLP-1(7-36)-アミド、Arg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)及びTyr31-エキセンディン-4(1-31)-アミドである。GLP-1(1-37)、エキセンディン-4(1-39)、そのインスリン分泌促進断片、そのインスリン分泌促進類似体及びそのインスリン分泌促進誘導体の更なる例は、国際公開第98/08871号、同第99/43706号、米国特許第5424286号及び国際公開第00/09666号に記載されている。
【0037】
本発明の他の実施態様では、本化合物は、上述の化合物の二以上と組み合わせて、例えばメトホルミン及びグリブリドのようなスルホニル尿素と;スルホニル尿素とアカルボース;ナテグリニドとメトホルミン;アカルボースとメトホルミン;スルホニル尿素、メトホルミン及びトログリタゾン;インスリンとスルホニル尿素;インスリンとメトホルミン;インスリン、メトホルミン及びスルホニル尿素;インスリンとトログリタゾン;インスリンとロバスタチン等々と組み合わせて投与される。
ダイエット及び/又は運動、上述の化合物の一又は複数及び場合によっては一又は複数の他の活性物質との本発明に係る化合物の任意に適切な組合せは本発明の範囲内であると考えられると理解されなければならない。本発明の他の実施態様では、本発明に係る薬学的組成物は、例えば、本発明の化合物をメトホルミン及びグリブリドのようなスルホニル尿素と組み合わせて;本発明の化合物をスルホニル尿素とアカルボース;ナテグリニドとメトホルミン;アカルボースとメトホルミン;スルホニル尿素、メトホルミン及びトログリタゾン;インスリンとスルホニル尿素;インスリンとメトホルミン;インスリン、メトホルミン及びスルホニル尿素;インスリンとトログリタゾン;インスリンとロバスタチン等々と組み合わせて、含有する。
【0038】
薬学的組成物
本発明に係る化合物を含む薬学的組成物は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 1985 or in Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に記載されているように、常法により調製することができる。
本発明の一目的は、約0.1mg/mlから約25mg/mlの濃度で存在する本発明に係る化合物を含有する薬学的製剤を提供することであり、該製剤は2.0から10.0のpHを有する。該製剤は更にバッファー系、保存料、等張剤、キレート剤、安定剤及び界面活性剤を更に含有しうる。
【0039】
本発明の一実施態様では、薬学的製剤は水性製剤、つまり水を含有する製剤である。かかる製剤は典型的には溶液又は懸濁液である。本発明の更なる実施態様では、薬学的製剤は水溶液である。「水性製剤」なる用語は少なくとも50%w/wの水を含有する製剤として定義される。同様に、「水溶液」なる用語は少なくとも50%w/wの水を含有する溶液として定義され、「水性懸濁液」なる用語は少なくとも50%w/wの水を含有する懸濁液として定義される。他の実施態様では、薬学的製剤は凍結乾燥製剤であり、医師又は患者が使用前に溶媒及び/又は希釈剤を添加する。
他の実施態様では、薬学的製剤は事前の溶解の必要がない使用準備が整った乾燥製剤(例えば凍結乾燥又はスプレードライ)である。
【0040】
本発明の更なる態様では、本発明は、本発明に係る化合物とバッファーの水溶液を含有する薬学的製剤に関し、ここで前記化合物は0.1mg/ml又はそれ以上の濃度で存在しており、前記製剤は約2.0から約10.0のpHを有している。
本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約7.0から約9.5である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約3.0から約7.0である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約5.0から約7.5である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約7.5から約9.0である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約7.5から約8.5である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約6.0から約7.5である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約6.0から約7.0である。本発明の他の実施態様では、製剤のpHは約3.0から約9.0であり、上記pHは本発明の化合物の等電pHから少なくとも2.0pH単位である。
【0041】
本発明の更なる実施態様では、バッファーは、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物からなる群から選択される。その一般的なバッファー又はバッファー系は典型的にはホスフェートバッファーを含む。これらの特定のバッファーの各一が本発明の別の実施態様を構成する。
【0042】
本発明の更なる実施態様では、製剤は薬学的に許容可能な保存料を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、保存料は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択されうる。本発明の更なる実施態様では、保存料は、0.1mg/mlから20mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、保存料は、0.1mg/mlから5mg/mlの範囲の濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、保存料は、5mg/mlから10mg/mlの範囲の濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、保存料は、10mg/mlから20mg/mlの範囲の濃度で存在する。これらの特定の保存料の各一が本発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物中における保存料の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版, 1995が参照される。
【0043】
本発明の更なる実施態様では、製剤は等張剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えばL-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択される。例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンブン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルセルロース-Naを含む単糖類、二糖類、又は多糖類、又は水溶性グルカン類のような任意の糖を使用することができる。一実施態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは少なくとも一つの-OH基を有するC4−C8炭化水素として定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述の糖類又は糖アルコールは個々に又は組み合わせて使用することができる。糖又は糖アルコールが液体調製物中で可溶性であり、本発明の方法を使用して達成される安定化効果に悪影響を及ぼさない限り、使用される量に決まった制限はない。一実施態様では、糖又は糖アルコール濃度は約1mg/mlと約150mg/mlの間である。本発明の更なる実施態様では、等張剤は1mg/mlから50mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は1mg/mlから7mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は8mg/mlから24mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、等張剤は25mg/mlから50mg/mlの濃度で存在する。これらの特定の等張剤の各一は本発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物中における等張剤の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版, 1995が参照される。
【0044】
本発明の更なる実施態様では、製剤はキレート剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択される。本発明の更なる実施態様では、キレート剤は0.1mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、キレート剤は0.1mg/mlから2mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様では、キレート剤は2mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。これらの特定のキレート剤の各一は本発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物中におけるキレート剤の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版, 1995が参照される。
【0045】
本発明の更なる実施態様では、製剤は安定剤を更に含有する。薬学的組成物中における安定剤の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版,1995が参照される。
より詳細には、本発明の組成物は、液体薬学的製剤として貯蔵中に凝集体の形成をおそらくは示すポリペプチドをその治療的活性成分が含む安定化液体薬学的組成物である。「凝集体形成」とは、可溶性のままでありうるオリゴマー、あるいは溶液から沈殿する大きな可視できる凝集体の形成を生じるポリペプチド分子間の物理的相互作用を意味する。「貯蔵中」とは、ひとたび調製された液体薬学的組成物又は製剤が直ぐには患者に投与されないことを言う。むしろ調製後に、液体形態か、凍結状態か、又は後で液体形態もしくは患者への投与に適した他の形態へ再構成するための乾燥形態の何れかで貯蔵するために包装される。「乾燥形態」とは、液体薬学的組成物又は製剤が、フリーズドライ(つまり凍結乾燥;例えばWilliams及びPolli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59)、スプレードライ(Masters(1991), Spray-Drying Handbook (5版; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp.491-676;Broadhead等 (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;及びMumenthaler等(1994) Pharm. Res. 11:12-20を参照)、又はエアードライ(例えばCarpenter及びCrowe(1988) Cryobiology 25:459-470;及びRoser (1991) Biopharm. 4:47-53を参照)によって乾燥されると得られる製品を意味する。液体薬学的組成物の貯蔵中におけるポリペプチドの凝集体の形成はそのペプチドの生物学的活性に悪影響を及ぼし得、薬学的組成物の治療効果を消失させる。更に、凝集体形成は、ポリペプチド含有薬学的組成物を輸液システムを使用して投与する場合、管類、膜又はポンプの詰まりのような、他の問題を生じうる。
【0046】
本発明の薬学的組成物は組成物の貯蔵の間のポリペプチドによる凝集体形成を減少させるのに十分な量のアミノ酸塩基を更に含みうる。「アミノ酸塩基」とは、アミノ酸又はアミノ酸の組合せのことであり、任意の与えられたアミノ酸はその遊離塩基形態又はその塩形態で存在する。アミノ酸の組合せが使用される場合、アミノ酸の全てがその遊離塩基形態で存在し得、全てはその塩形態で存在し得、あるいは幾つかがその塩基形態で存在し得る一方、他のものはその塩形態で存在する。一実施態様では、本発明の組成物を調製する際に使用するアミノ酸は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸のような荷電側鎖を担持しているものである。特定のアミノ酸(例えばグリシン、メチオニン、ヒスチジン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体(つまりL、D、又はDL異性体)又はこれら立体異性体の組み合わせは、特定のアミノ酸がその遊離塩基形態又はその塩形態の何れかで存在している限り、本発明の薬学的組成物中に存在しうる。一実施態様では、L立体異性体が使用される。本発明の組成物はまたこれらのアミノ酸の類似体と共に製剤化されうる。「アミノ酸類似体」とは、本発明の液体薬学的組成物の貯蔵中におけるポリペプチドによる凝集体形成を減少させるという所望の効果をもたらす天然に生じるアミノ酸の誘導体のことである。適切なアルギニン類似体には、例えばアミノグアニジン、オルニチン及びN-モノエチルL-アルギニンが含まれ、適切なメチオニン類似体にはS-エチルホモシステイン及びブチルホモシステインが含まれ、適切なシステイン類似体にはS-メチル-Lシステインが含まれる。他のアミノ酸と同様に、アミノ酸類似体はその遊離の塩基形態又はその塩形態で本発明の組成物中に導入される。本発明の更なる実施態様では、アミノ酸又はアミノ酸類似体は、ポリペプチドの凝集を防止又は遅延させるのに十分な濃度で使用される。
【0047】
本発明の更なる実施態様では、治療剤として作用するポリペプチドが酸化を受けやすい少なくとも一のメチオニン残基を含むポリペプチドである場合、メチオニン(又は他の含硫アミノ酸又はアミノ酸類似体)を加えてメチオニン残基がメチオニンスルホキシドへ酸化するのを阻害することができる。「阻害する」なる用語は、メチオニンが酸化された種の経時的な蓄積の最小化を意味する。メチオニンの酸化を阻害することはポリペプチドをその正しい分子形態により維持することになる。メチオニンの任意の立体異性体(L、D、又はDL異性体)又はその組み合わせを使用することができる。付加される量は、メチオニンスルホキシドの量が規制機関に受け入れられるようにメチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量でなければならない。典型的には、これは、組成物がせいぜい約10%から約30%のメチオニンスルホキシドを含んでいることを意味する。一般に、これは、メチオニン残基に加えられるメチオニンの比が約1:1から約1000:1、例えば10:1から約100:1の範囲になるようにメチオニンを加えることによって達成することができる。
【0048】
本発明の更なる実施態様では、製剤は高分子量ポリマー又は低分子量化合物の群から選択される安定剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、安定剤はポリエチレングリコール(例えばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ/ヒドロキシセルロース又はその誘導体(例えばHPC、HPC-SL、HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2-メチルチオエタノールのような硫黄含有物質、及び様々な塩(例えば塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定剤の各一が本発明の他の実施態様を構成する。
本薬学的組成物はまたその中の治療的に活性なポリペプチドの安定性を更に向上させる更なる安定剤を含有しうる。本発明の文脈において特に興味がある安定剤には、限定するものではないが、メチオニンの酸化からポリペプチドを保護するメチオニン及びEDTAと、凍結融解又は機械的せん断に伴う凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0049】
本発明の更なる実施態様では、製剤は界面活性剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、界面活性剤は、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えばプルロニック(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、トリトンX-100のようなポロキサマー類)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン及びポリエチレン誘導体、例えばアルキル化及びアルコキシル化誘導体(トゥイーン類、例えばTween-20、Tween-40、Tween-80及びBrij-35)、そのモノグリセリド又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド又はそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチン及びリン脂質(例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、及びスフィンゴミエリン)、リン脂質誘導体(例えばジパルミトイルホスファチジン酸)及びリゾリン脂質誘導体(例えばパルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン及びエタノールアミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスフェートエステル)及びリゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び極性頭部基、つまり、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、正荷電DODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニンの修飾体、及びグリセロリン脂質(例えばケファリン)、グリセロ糖脂質(例えばガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えばセラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、ニワトリ卵白リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えばタウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウム等々)、長鎖脂肪酸及びその塩C6−C12(例えばオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンと中性又は酸性アミノ酸の任意の組合せを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と二つの荷電アミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS(ドキュセート・ナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドキュセート・カルシウム、CAS登録番号[128-49-4]、ドキュセート・カリウム、CAS登録番号[7491-09-0]、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩及びグリシンもしくはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホネート)一価界面活性剤、両性イオン性界面活性剤(例えばN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート類、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えば臭化セチル-トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(例えばドデシルβ-D-グルコピラノシド)、エチレンジアミンへのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーであるポロキサミン(例えばテトロニックス(Tetronic's))から選択することができ、あるいは該界面活性剤はイミダゾリン誘導体又はその混合物の群から選択されうる。これらの特定の界面活性剤の各一は本発明の別の実施態様を構成する。
薬学的組成物中における界面活性剤の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版, 1995が参照される。
【0050】
その他の成分が本発明の薬学的製剤中に存在することもありうる。そのような更なる成分には、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、張度調節剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えばベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジンのようなアミノ酸)が含まれうる。そのような付加的な成分は、当然ながら、本発明の薬学的製剤の全体の安定性に悪影響を及ぼしてはならない。
本発明に係る化合物を含む薬学的組成物は、そのような治療を必要とする患者の幾つかの部位に投与され得、例えば局所的部位、例えば皮膚及び粘膜部位、吸収をバイパスする部位、例えば動脈、静脈、心臓への投与、及び吸収を含む部位、例えば皮膚、皮下、筋肉又は腹部への投与である。
【0051】
本発明に係る薬学的組成物の投与は、幾つかの投与経路、例えば舌、舌下、頬、口、経口、胃及び腸、鼻、肺を介して、例えば細気管支及び肺胞及び/又はそれらを組合せたもの、表皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼を介して、例えば結膜、尿管、及び非経口を介して、そのような治療を必要としている患者になされうる。
本発明の組成物は、いくつかの投薬形態、例えば溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、多相エマルション、フォーム、膏薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、コート錠剤、リンス、カプセル、例えば硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル、坐薬、直腸用カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、パウダー、エアゾール、吸入剤、点眼剤、眼軟膏、眼用リンス、膣用ペッサリー、膣用リング、膣用軟膏、注射液、インサイツ形質転換溶液、例えばインサイツゲル化、インサイツ硬化、インサイツ沈殿、インサイツ結晶化のもの、輸液、及び移植片として投与されうる。
【0052】
本発明の組成物は、本化合物の安定性を更に高め、生物学的利用能を増加させ、溶解度を高め、副作用を低減させ、当業者によく知られている時間療法を達成し、また患者のコンプライアンスを高め、又はそれらの任意の組合せのために、例えば共有的、疎水的及び静電気的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤デリバリー系及び先端薬剤デリバリー系に更に配合され、又は結合されうる。担体、薬剤デリバリー系及び先進薬剤デリバリー系の例には、限定されるものではないが、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、多糖類、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリレート及びメタクリレートポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えばサーモゲル化系、例えば当業者によく知られているブロックコポリマー系、ミセル、リポソーム、ミクロスフィア、ナノ粒子、液晶及びそれらの分散液、脂質-水系における相挙動の当業者によく知られているL2相とそのディスパージョン、ポリマーミセル、多相エマルション、自己乳化、自己-マイクロ乳化、シクロデキストリン及びその誘導体、及びデンドリマーが含まれる。
【0053】
本発明の組成物は、全ての装置が当業者によく知られたものである例えば定量吸入器、乾燥パウダー吸入器及びネブライザーを使用し、本化合物を肺に投与するための固形物、半固形物、パウダー及び溶液の製剤に有用である、
本発明の組成物は、制御された徐放性、持続性、遅延及び持続放出薬物デリバリー系の製剤に特に有用である。より詳細には、限定されるものではないが、組成物は、当業者によく知られている非経口用の制御放出及び徐放系(双方の系は、投与数を何倍も低下させる)製剤に有用である。さらにより好ましくは、皮下投与される制御放出及び徐放系である。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御放出系及び組成物の有用な例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマーミセル、ミクロスフィア、ナノ粒子である。
【0054】
本発明の組成物に有用な徐放系の製造方法は、限定されるものではないが、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧ホモジナイズ、カプセル化、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフィアを製造するための溶媒蒸発、押出及び超臨界プロセスを含む。一般的には、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release(Wise, D.L.編 Marcel Dekker, New York, 2000)及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol.99:Protein Composition and Delivery(MacNally, E.J.編 Marcel Dekker, New York, 2000)を参照。
非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン状シリンジによる皮下、筋肉内、腹膜内又は静脈内注射によって実施することができる。あるいは、非経口投与は輸液ポンプにより実施することができる。更なる選択肢は、鼻用又は肺用スプレーの形態で本発明に係る化合物を投与するための溶液又は懸濁液であってもよい組成物にある。また更なる選択肢としては、本発明の化合物を含む薬学的組成物を、例えば針のない注射、又はイオン導入パッチであってよいパッチによる経皮投与、又は頬等の経粘膜投与用に適合させることもできる。
【0055】
「安定化された製剤」なる用語は、物理的な安定性が増し、化学的な安定性が増し、又は物理的及び化学的安定性が増した製剤を意味する。
ここで使用されるタンパク質製剤の「物理的安定性」という用語は、熱機械的ストレスへのタンパク質の暴露及び/又は疎水性表面及び界面のような不安定化している界面及び表面との相互作用の結果としてのタンパク質の生物学的に不活性な及び/又は不溶性の凝集体を形成するタンパク質の傾向を意味する。タンパク質水性製剤の物理的安定性は、適切な容器(例えばカートリッジ又はバイアル)中に満たした製剤を機械的/物理的ストレス(例えば攪拌)に様々な時間の間、異なった温度で暴露した後に視覚検査及び/又は濁度測定によって評価される。製剤の視覚検査は暗い背景中において鋭く集光された光下で実施される。製剤の濁りは例えば濁度を0から3の尺度(濁りを示さない製剤が視覚スコア0に相当し、昼光で可視できる濁りを示す製剤は視覚スコア3に相当する)でランク付けすることにより特徴付けされる。製剤は、昼光下で可視できる濁りを示す場合にタンパク質凝集に対して物理的に不安定であると分類される。あるいは、製剤の濁りは当業者によく知られている簡単な濁度測定によって評価することができる。タンパク質水性製剤の物理的安定性はタンパク質の立体構造状態の分光学的薬剤又はプローブを使用してまた評価することができる。プローブは好ましくはタンパク質の非天然配座異性体に優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子分光学的プローブの一例はチオフラビンTである。チオフラビンTはアミロイド線維の検出に広く使用されている蛍光染料である。線維と、おそらくは他のタンパク質立体配置もまた存在すると、チオフラビンTが約450nmで新たな励起極大を引き起こし、線維タンパク質形態に結合したとき約482nmで増強した発光を生じる。未結合のチオフラビンTは本質的にはその波長で非蛍光である。
天然から非天然状態までのタンパク質構造における変化のプローブとして、他の小分子を使用することができる。例えば、タンパク質の露出した疎水性パッチに優先的に結合する「疎水性パッチ」プローブである。疎水性パッチは、一般には、その天然状態のタンパク質の3次構造内に埋められているが、タンパク質がアンフォールドされ又は変性が始まると、露出するようになる。これらの小分子の分光学的プローブの例は、芳香族の疎水性染料、例えばアントラセン、アクリジン、フェナントロリン等である。他の分光学的プローブは金属-アミノ酸錯体、例えば疎水性アミノ酸、例えばフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリン等のコバルト金属錯体である。
【0056】
ここで使用されるタンパク質製剤の「化学的安定性」なる用語は、天然タンパク質構造と比較して潜在的に少ない生物学的効力及び/又は潜在的に増加した免疫原性を持つ化学的変性産物の形成に至るタンパク質構造中の化学共有結合変化を意味する。天然タンパク質のタイプと性質及びタンパク質がさらされる環境に応じて、様々な化学的変性産物が形成されうる。最も可能性が高いことは、化学的変性は完全には避けることができないことであり、当業者にはよく知られているように、化学的変性産物の量の増加がタンパク質組成物の貯蔵や使用中にしばしば見られる。殆どのタンパク質は、脱アミド化を受ける傾向があり、これはグルタミニル又はアスパラギニル残基の側鎖アミド基が加水分解されて遊離のカルボン酸を形成するプロセスである。他の変性経路は、アミド基転移及び/又はジスルフィド相互作用を通して二以上のタンパク質分子が互いに共有結合し、共有結合した二量体、オリゴマー及び多量体変性産物の形成に至る高分子量転換産物の形成を含む(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahern. T. J. & Manning M. C., Plenum Press, New York 1992)。(例えばメチオニン残基の)酸化は化学的変性の他の変形例として挙げることができる。タンパク質組成物の化学的安定性は、異なった環境条件への暴露後に様々な時点において化学的変性産物の量を測定することによって評価することができる(変性産物の形成は例えば温度上昇によってしばしば加速され得る)。それぞれ個々の変性産物の量は、様々なクロマトグラフィー法(例えばSEC-HPLC及び/又はRP-HPLC)を使用して分子サイズ及び/又は電荷に応じて変性産物を分離することにより決定されることが多い。
【0057】
よって、上に概説したように、「安定化された製剤」とは、増加した物理的安定性、増加した化学的安定性、又は増加した物理的及び化学的安定性を有する製剤を意味する。一般に、製剤は、有効期限に達するまで(推奨された使用及び貯蔵条件に応じて)使用及び貯蔵中に安定でなければならない。
本発明の一実施態様では、本発明に係る化合物を含有する薬学的製剤は、6週間を越える使用の間、また3年を越える貯蔵の間、安定している。
本発明の他の実施態様では、本発明に係る化合物を含有する薬学的製剤は、4週間を越える使用の間、また3年を越える貯蔵の間、安定している。
本発明の更なる実施態様では、本発明に係る化合物を含有する薬学的製剤は、4週間を越える使用の間、また2年を越える貯蔵の間、安定している。
本発明のまた更なる実施態様では、本化合物を含有する薬学的製剤は、2週間を越える使用の間、また2年を越える貯蔵の間、安定している。
【0058】
本発明を、その所定の好ましい実施態様を参照して記載し、例証したが、当業者であれば、本発明の要旨及び範囲を逸脱することなく、それに様々な変化、変更、及び置換をなすことができることは理解するであろう。例えば、ここに記載された好ましい用量以外の効果的な用量が、2型糖尿病について治療されている哺乳動物の応答性の変動の結果として適用可能である場合がある。同様に、観察される特定の薬理学的応答は選択される活性化合物又は薬学的担体が存在するかどうか、並びに製剤のタイプ及び用いられる投与形式に従ってまたそれに依存して変わり得、そのような予想される変動又は結果における差異は本発明の目的と実施に従って考慮される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)IL−1、(b)IL−1の合成、又は(c)IL−1の放出を阻害する化合物を投与することを含む、1型又は2型糖尿病を治療する方法であって、但し化合物はIL−1トラップ分子である方法。
【請求項2】
(a)IL−1β、(b)IL−1βの合成、又は(c)IL−1βの放出を阻害する化合物を投与することを含む、1型又は2型糖尿病を治療する方法であって、但し化合物はIL−1トラップ分子である方法。
【請求項3】
1型又は2型糖尿病の治療のための、一又は二の抗体断片を含むインターロイキン1中和分子の使用。
【請求項4】
1型又は2型糖尿病の治療のための、多機能抗体又は抗体断片を含むインターロイキン1中和分子の使用。
【請求項5】
抗体断片はドメイン抗体である請求項4に記載の分子。
【請求項6】
二つの異なった結合ドメインを含む請求項1、2又は5に記載の分子。
【請求項7】
IL−1Rに結合する請求項1から6の何れか一項に記載の分子。
【請求項8】
IL−1に結合する請求項1から7の何れか一項に記載の分子。
【請求項9】
親分子と比較して血漿半減期が増加するように分子が誘導体化されている請求項1から8の何れか一項に記載の分子。
【請求項10】
モノ又はポリ分散ポリエチレングリコール基を含む化学部分で分子が化学的に誘導体化されている請求項1から8の何れか一項に記載の分子。
【請求項11】
分子がアルブミン結合部分で化学的に誘導体化されるか、組換え的に融合されている請求項1から8の何れか一項に記載の分子。
【請求項12】
アルブミン結合部分が抗体断片である請求項11に記載の分子。
【請求項13】
アルブミン結合部分が2000ダルトン以下の分子量を持つ分子である請求項11に記載の分子。
【請求項14】
分子がIgG Fcドメインで化学的に誘導体化されるか、組換え的に融合されている請求項1から5の何れか一項に記載の分子。
【請求項15】
1型又は2型糖尿病の治療のための、IL−1Ra又はその断片又は変異体に融合したアルブミン結合ドメイン抗体を含む分子の使用。
【請求項16】
1型又は2型糖尿病の治療のための、IL−1Ra又はその断片又は変異体に融合したトランスファー結合ドメイン抗体を含む分子の使用。
【請求項17】
IL−1結合ドメイン抗体又はその変異体に融合したアルブミン結合ドメイン抗体を含む分子。
【請求項18】
IL−1結合ドメイン抗体又はその変異体に融合したトランスファー結合ドメイン抗体を含む分子。

【公表番号】特表2009−511545(P2009−511545A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535016(P2008−535016)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067255
【国際公開番号】WO2007/042524
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】