説明

IP電話機

【課題】IP電話機の通話開始時における一時的な無音状態を回避する。
【解決手段】IP電話機100は、発信メッセージを送信した後(S2)、RBTを鳴動させる(S4)。IP電話機100は、相手先との接続が完了し、通話開始指示を示すRTPオープンメッセージ(S8a)を受信した後も、RBTを継続して鳴動させ、相手先からRTPパケットを受信した時点(S11a)で、RBTの鳴動を停止する。このように通話開始時に、無音状態になるのを回避して、通話者に不快感を与えないIP電話機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP網に対してIPパケットを送受信するIP電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
IP電話機は、IP網での障害やIP網のゆらぎの影響を受けるため、これらの影響を回避するために、各種方法が採用されている。
【0003】
ところで、一般的に、IP電話機では、例えば、以下の特許文献1に記載されているように、発信メッセージ又は接続要求を送信すると、呼び出し音であるRBT(Ringing Back Tone)をハンドセットのスピーカから出力し、RTP(Real-time Transport Protocol)オープンメッセージ又は接続完了通知を受信すると、RTPの出力を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−045577号公報 図21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、一般的に、発側のIP電話機は、RTPオープンメッセージ又は接続完了通知を受信したことにより、RBTの出力を停止する。この際、この従来技術では、IP網で一時的な何らかの障害が生じているか、IP網上でIP音声パケットが遅延すると、発信側の通話者は、RBTが停止して、通話できると認識したにも関わらず、一時的な無音状態が発生することがある。また、この従来技術では、着信側のIP電話機から着信音が発生されて、着信側の者がハンドセットを外した際に、IP網で一時的な何らかの障害等が生じていると、発信側の者の音声の最初が聞こえない、いわゆる頭切れが発生することがある。
【0006】
すなわち、この従来技術では、通話開始時に、一時的に無音状態になり、通話者に不快感を与えることがあるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目し、通話開始時に、無音状態になるのを回避して、通話者に不快感を与えないIP電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するためのIP電話機に係る発明は、
ハンドセットスピーカに、呼び出し音であるRBT(Ringing Back Tone)を出力させる信号音発生処理手段と、通信部が受信したIPパケットを分解して解析すると共に、該通信部から送信するデータをIPパケット化する通信処理手段と、呼制御を実行する呼制御手段と、を備え、
前記呼制御手段は、
要求に応じて発信メッセージを作成し、前記通信処理手段により該発信メッセージをIPパケット化させて、該発信メッセージを含むIPパケットを前記通信部より送信させると、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカに前記RBTを出力させ、
前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記発信メッセージで示される着信先との通話開始を示すRTP(Real-time Transport Protocol)オープンメッセージであると認識された後、該通信部が受信したIPパケットが該着信先からのRTPパケットを含んでいると認識されると、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカからの前記RBTの出力を停止させる、
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記問題点を解決するためのIP電話に係る他の発明は、
ハンドセットスピーカに呼び出し音であるRBT(Ringing Back Tone)を出力させ、外部スピーカに着信音を出力させ、該ハンドセットスピーカ及び/又は該外部スピーカに音声待ちを示す音声待ち音を出力させる信号音発生処理手段と、通信部が受信したIPパケットを分解して解析すると共に、該通信部から送信するデータをIPパケット化する通信処理手段と、呼制御を実行する呼制御手段と、を備え、
前記呼制御手段は、
前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが着信メッセージであると認識されると、前記信号音発生処理手段により、前記外部スピーカから前記着信音を出力させ、前記外部スピーカから前記着信音を出力させている過程で、前記ハンドセットのオフフックが検知されてから、前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記着信メッセージで示される発信元からのRTPパケットを含んでいると認識されるまで、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカ及び/又は前記外部スピーカから音声待ち音を出力させる、
ことを特徴とするIP電話機。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、RBTや着信音の停止タイミングを相手側からのRTPパケットの到達時にしたことにより、通話開始時に、網障害が生じていて、通信パケットの遅延が発生しても、通話開始時における一時的な無音状態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施形態におけるIP電話機及びこれを含む通信システムの構成図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における統計情報テーブルのデータ構成を示す説明図である。
【図3】本発明に係る一実施形態におけるIP電話機の発信時における通信システムの動作を示すシーケンス図(その1)である。
【図4】本発明に係る一実施形態におけるIP電話機の発信時における通信システムの動作を示すシーケンス図(その2)である。
【図5】本発明に係る一実施形態におけるIP電話機の着信時における通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るIP電話機の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
まず、本実施形態のIP電話機の説明する前に、このIP電話機を含む通信システムについて説明する。
【0014】
拠点Aには、複数のIP電話機100と、IP電話交換機191と、複数の通信機器100,191,2a相互を通信可能に接続するハブ190と、が設けられている。この拠点Aのハブ190は、ルータ2aを介して、WAN1と通信可能に接続されている。
【0015】
また、拠点Bには、複数のIP電話機100bと、複数の通信機器100b,2bを相互に通信可能に接続するハブ190と、が設けられている。この拠点Bのハブ190bは、ルータ2bを介して、WAN1と通信可能に接続されている。
【0016】
以上で説明した拠点Aに設けられているIP電話機100が本実施形態のIP電話機である。一方、以上で説明した拠点Bに設けられているIP電話機100bは、背景技術の欄で説明した従来のIP電話機である。
【0017】
本実施形態のIP電話機100は、各種演算処理を実行するプロセッサ110と、読み出し専用のROM120と、プロセッサ110のワークエリア等になるRAM130と、読み書き可能な不揮発性のフラッシュROM140と、ハブ190等を介して他の通信機器と通信する通信インタフェース150と、ハンドセットスピーカ161やマイクを有するハンドセット160と、プロセッサ110からのディジタル信号をアナログ信号に変換する一方でハンドセット160からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ162と、着信音等を出力する外部スピーカ165と、プロセッサ110からのディジタル信号をアナログ信号に変換して外部スピーカ165に送るA/Dコンバータ166と、ハンドセット160のオフフックを検知するオフフックセンサ169と、各種入力キー170と、各種入力キー170のインタフェースである入力インタフェース171と、を備えている。
【0018】
プロセッサ110は、機能的に、通信インタフェース150が受信したIPパケットを分解して解析すると共に、通信インタフェース150から送信するデータをIPパケット化する通信処理部111と、呼制御を実行する呼制御部112と、音声制御を実行する音声制御部113と、ハンドセットスピーカ161や外部スピーカ165から各種信号音を出力させる信号音発生処理部114と、着信先からのRTPパケットが受信されるまでの音声待ち時間を計測して、この音声待ち時間を統計処理する統計処理部115と、を有している。
【0019】
ROM120には、プロセッサ110が実行するプログラムや各種信号音等が予め記憶されている。なお、プロセッサ110の上記各機能部111〜115は、このROM120に記憶されているプログラムをプロセッサ110が実行することで機能する。
【0020】
フラッシュROM140には、自IP電話機を含む各種通信機器の構成情報が格納される構成情報テーブルと、統計処理部115が算出した統計値等が格納される統計情報テーブル141とが設けられている。
【0021】
次に、図3〜図5に示すシーケンス図に従って、以上で説明した通信システムの動作について説明する。
【0022】
まず、図3及び図4に示すシーケンス図に従って、拠点Aに設けられている本実施形態のIP電話機100から拠点Bに設けられているIP電話機100bへの発信時の通信システムの動作について説明する。
【0023】
拠点AのIP電話機100に着信先番号が入力され、これをIP電話機100の呼制御部112が受け付けると(S1)、呼制御部112は、この着信先番号を含む発信メッセージを作成し、通信処理部112に渡す。通信制御部112は、この発信メッセージをIPパケット化し、この発信メッセージを通信インタフェース150から送出させる(S2)。
【0024】
IP電話機100の呼制御部112は、発信メッセージを通信制御部112により送出させると、信号音発生処理部114に対して、呼び出し音であるRBT(Ringing Back Tone)の出力を指示する。信号音発生処理部114は、この指示を受けると、ROM120に記憶されている信号音のデータのうちから、RBTのデータを抽出し、このデータが示す音をハンドセットスピーカ161から出力させる(S4)。
【0025】
IP電話機100からの発信メッセージは、IP電話交換機191により受信される。このIP電話交換機191は、この発信メッセージに基づき着信先に対する着信メッセージを作成し、これを拠点BのIP電話機100bへ送信する(S3)。
【0026】
拠点BのIP電話機100bは、この着信メッセージを受信すると(S3b)、着信音を鳴らす(S5)。拠点Bに居る人が、この着信音に気付いて、IP電話機100bのハンドセットを外すと、つまり、IP電話機100bがオフフックの状態になると(S6)、IP電話機100bは、着信音を停止させると共に、IP電話交換機191に対して、着信応答メッセージを送出する(S7)。
【0027】
IP電話交換機191は、この着信応答メッセージを受信すると、拠点AのIP電話機100及び拠点BのIP電話機100bに対して、接続処理が完了し、通話を開始してもよい旨を知らせるRTP(Real-time Transport Protocol)オープンメッセージを送出する(S8a,S8b)。
【0028】
拠点AのIP電話機100の呼制御部112及び拠点BのIP電話機100bの呼制御部は、このRTPオープンメッセージを受け付けると、音声制御部を動作させる。拠点AのIP電話機100の音声制御部113及び拠点BのIP電話機100bの音声制御部は、この時点から、ハンドセットマイクで集音した音を取得し、これをRTPパケットに収めて、通信処理部に渡し、これをさらにIPパケットに収めさせて、相手先へ送出させる(S9,S11x)。なお、RTPオープンメッセージを受信した直後は、両拠点A,Bの通話者が直ちに話し始めることはないので、RTPオープンメッセージを受信した直後のRTPパケット内の音声データは、基本的に無音データである。
【0029】
ところで、背景技術の欄で述べた従来技術では、発信側は、RTPオープンメッセージを受信すると、RBTの鳴動(S4x)を停止する。この際、WAN1に障害が発生していて、両拠点A,B間で送受信されるパケットに遅延等が生じているとすると、発信側の通話者が声を発しても、着信側からのRTPパケットが到達しないため、発信側の通話者は、着信側からの音声を一時的に聞くことができない状態になる。
【0030】
しかしながら、本実施形態のIP電話機100は、RTPオープンメッセージを受信しても、RBTの鳴動を継続させるため、この時点で、発信側の通話者が声を発することは基本的になく、また、着信側からの音声が聞こえなくても、何ら違和感を感じることはない。なお、前述したように、両拠点A,BのIP電話機100,100bは、この時点からRTPパケットを送出するようになる。
【0031】
拠点AのIP電話機100の通信処理部111は、通信インタフェース150が受信したIPパケットを分解して、IPパケットを解析し、このIPパケット内に着信側からのRTPパケットを含んでいると認識すると(S11a)、IP電話機100の呼制御部112は、信号音発生処理部114にRBTの出力を停止させる。すなわち、本実施形態のIP電話機100は、発信メッセージを送出してから(S2)、着信側からRTPパケットを受信する(S11a)までの間、RBTを鳴動させる。
【0032】
RBTの鳴動が停止すると、発信側の通話者は、例えば、「もしもし」等の声を発する。この音声データは、音声制御部113でRTPパケット化され、さらに、通信処理部111でIPパケット化されて、着信側のIP電話機100bへ送信される。一方、着信側のIP電話機100bからも、RTPパケットを含むIPパケットが順次送られ、これが発信側のIP電話機100で受信される。したがって、本実施形態では、発信側の通話者が、通話開始時に、着信側からの声を一時的に聞くことができなくなることを回避することができる。
【0033】
発信側のIP電話機100の統計処理部115は、通信インタフェース150が受信したIPパケットがRTPオープンメッセージであると通信処理部111に認識されてから、通信インタフェース150が受信したIPパケットが着信側からのRTPパケットを含んでいると通信処理部111に認識されるまでの時間、つまり、RTPオープンメッセージを受信してから着信側からのRTPパケットを受信するまでの音声待ち時間を計測している。そして、この統計処理部115は、着信側からのRTPパケットが受信されると(11a)、この音声待ち時間と、過去に計測した音声待ち時間とを統計処理する(S12)。
【0034】
ここで、図2を用いて、フラッシュROM140に設けられている統計情報テーブル141の構成について説明する。
【0035】
この統計情報テーブル141は、各拠点毎の音声待ち時間の積算値が格納される待ち時間積算値領域141aと、各拠点毎の音声待ち時間の計測回数が格納される回数領域141bと、音声待ち時間の積算値と音声待ち時間の計測回数とから求められた各拠点毎の平均値(統計値)が格納される平均値領域141cと、この平均値に基づいて、後述の待ち限度時間を定めるための各拠点毎の係数が格納されている係数領域141dと、を有している。
【0036】
統計処理部115は、拠点Bとの間での音声待ち時間を計測すると、統計情報テーブル141中の拠点Bの待ち時間積算値領域141aに格納されている積算値に、この音声待ち時間を加算すると共に、統計情報テーブル141中の拠点Bの回数領域141bに格納されている回数に1を加算する。そして、待ち時間積算値領域141a内の積算値を回数領域141b内の回数で割って、拠点Bとの間での音声待ち時間の平均値(統計値)を求め、統計情報テーブル141中の拠点Bの平均値領域141cにこの平均値を格納する。以上が、統計処理部115による統計処理(S12)の内容である。
【0037】
拠点AのIP電話機100の呼制御部112は、通信処理部111がRTPオープンメッセージを受信したと認識すると、この認識時点から、言い換えると、RTPオープンメッセージを受信してからの時間が待ち時間限度時間を超えたか否かを監視する(S10)。この待ち時間限度時間は、前述した統計情報テーブル141中の着信先の拠点Bに関する平均値領域141cに格納されている平均値に、係数領域141dに格納されている係数を掛けた値である。なお、この時点で、統計情報テーブル141には、前述のステップ12での統計処理結果は反映されておらず、これ以前の統計処理結果が反映されている。
【0038】
仮に、待ち時間限度時間を越える前に、着信先からRTPパケットの受信を通信処理部111が認識すると(S11a)、呼制御部112は、前述したように、RBTの鳴動を停止させ、統計処理部115は統計処理を実行する(S12)。
【0039】
一方、着信先からRTPパケットの受信を通信処理部111が認識するまえに、待ち時間限度時間が経過し、呼制御部112が待ち時間限度時間を越えたと判断すると(S10)、図4に示すように、呼制御部112は、信号音発生処理部114にRBTの出力を停止させ、替わりに、信号音発生処理部114にハンドセットスピーカ161から、音声待ち超過音としてBT(Busy Tone)を出力させる。
【0040】
この結果、発信側の通話者は、着信先が話中であると認識して、ハンドセット160を置くことになる。
【0041】
次に、図5に示すシーケンス図に従って、拠点Bに設けられているIP電話機100bから、拠点Aに設けられている本実施形態のIP電話機100への発信時の通信システムの動作、言い換えると、本実施形態のIP電話機の着信時の通信システムの動作について説明する。
【0042】
拠点BのIP電話機100bの呼制御部が着信先番号を受け付けると(S21)、この呼制御部は、この着信先番号を含む発信メッセージを作成し、これを通信インタフェースから送出させる(S22)。さらに、呼制御部は、発信メッセージを送出させると、ハンドセットスピーカからRBTを出力させる(S24)。
【0043】
拠点BのIP電話機100bからの発信メッセージは、IP電話交換機191により受信される。このIP電話交換機191は、この発信メッセージに基づき着信先に対する着信メッセージを作成し、これを拠点AのIP電話機100へ送信する(S23)。
【0044】
拠点AのIP電話機100の通信インタフェース150がこの着信メッセージを受信し、通信処理部111がこれを着信メッセージであると認識すると(S23a)、呼制御部112は、信号音発生処理部114に外部スピーカ165から着信音を出力させる(S25)。
【0045】
拠点Aに居る人が、この着信音に気付いて、IP電話機100のハンドセット160を外すと、言い換えると、オフフックセンサ169によりオフフックが検知されると(S26)、呼制御部112は、信号音発生処理部114に着信音を停止させると共に、この電話発生処理部114に音声待ち音をハンドセットスピーカ161から出力させる(S30)。
【0046】
なお、ここでは、音声待ち音をハンドセットスピーカ161から出力させているが、外部スピーカ165から出力させてもよいし、両スピーカ161,165から出力させてもよい。また、音声待ち音は、着信音と異なっていることが好ましいが、着信音と同じでもよい。この場合、オフフック状態(S26)になっても、着信音が継続することになる。
【0047】
さらに、呼制御部112は、IP電話機100がオフフックの状態になると(S26)、着信応答メッセージを作成し、これを通信処理部111でIPパケット化させた後、通信インタフェース150から送出させる(S27)。
【0048】
IP電話交換機191は、この着信応答メッセージを受信すると、拠点AのIP電話機100及び拠点BのIP電話機100bに対して、接続処理が完了し、通話を開始してもよい旨を知らせるRTPオープンメッセージを送出する(S28a,S28b)。
【0049】
拠点AのIP電話機100の呼制御部112及び拠点BのIP電話機100bの呼制御部は、このRTPオープンメッセージを受け付けると、音声制御部を動作させる。拠点AのIP電話機100の音声制御部113及び拠点BのIP電話機100bの音声制御部は、この時点から、ハンドセットマイクで集音した音を取得し、これをRTPパケットに収めて、通信処理部に渡し、これをさらにIPパケットに収めて、相手先へ送出させる(S29x,S31)。なお、この場合も、図3で説明したRTPオープンメッセージを受信した場合と同様、RTPパケット内の音声データは、基本的に無音データである。また、拠点BのIP電話機100bは、前述したように、従来のIP電話機であるため、RTPオープンメッセージを受信すると、RBTの鳴動(S24)を停止する。
【0050】
その後、拠点BのIP電話機100がRTPパケットを含むIPパケットを着信先である拠点AのIP電話機100に送出し(S29)、これを拠点AのIP電話機100が受信すると、このIP電話機100の通信処理部111は、IPパケットを分解して、IPパケットを解析し、このIPパケット内に発信側からのRTPパケットを含んでいると認識すると(S29a)、IP電話機100の呼制御部112は、信号音発生処理部114に音声待ち音の出力を停止させる。すなわち、本実施形態のIP電話機100は、オフフックされてから(S26)、発信側からのRTPパケットを受信する(S29a)までの間、音声待ち音を鳴動させる。
【0051】
ところで、背景技術の欄で述べた従来技術では、着信側は、オフフック状態になると、着信音が停止し、何らかの信号音が出力されることがない。この際、WAN1に障害が発生していて、両拠点A,B間で送受信されるパケットに遅延等が生じているとすると、発信側の通話者が声を発しても、着信側からのRTPパケットが到達せず、いわゆる音声の頭切れが生じる。
【0052】
しかしながら、本実施形態のIP電話機100は、オフフック状態になっても、着信側からRTPパケットが到達するまで、音声待ち音を出力しているので、音声の頭切れを回避することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、信号音の停止タイミングを相手側からのRTPパケットの到達時にしたことにより、通話開始時に、網障害が生じていて、通信パケットの遅延が発生しても、通話開始時における一時的な無音状態を回避することができる。
【符号の説明】
【0054】
100,100b:IP電話機、110:CPU、111:通信処理部、112:呼制御部、113:音声制御部、114:信号音発生処理部、115:統計処理部、141:統計情報テーブル、150:通信インタフェース、160:ハンドセット、161:ハンドセットスピーカ、165:外部スピーカ、170:入力キー、190:ハブ、191:IP交換機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網に対してIPパケットを送受信する通信部を備えているIP電話機において、
通話者に音声を出力するハンドセットスピーカを有するハンドセットと、
前記ハンドセットスピーカに、呼び出し音であるRBT(Ringing Back Tone)を出力させる信号音発生処理手段と、
前記通信部が受信したIPパケットを分解して解析すると共に、該通信部から送信するデータをIPパケット化する通信処理手段と、
呼制御を実行する呼制御手段と、
を備え、
前記呼制御手段は、
要求に応じて発信メッセージを作成し、前記通信処理手段により該発信メッセージをIPパケット化させて、該発信メッセージを含むIPパケットを前記通信部より送信させると、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカに前記RBTを出力させ、
前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記発信メッセージで示される着信先との通話開始を示すRTP(Real-time Transport Protocol)オープンメッセージであると認識された後、該通信部が受信したIPパケットが該着信先からのRTPパケットを含んでいると認識されると、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカからの前記RBTの出力を停止させる、
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項2】
請求項2に記載のIP電話機において、
前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記RTPオープンメッセージであると認識されてから、該通信部が受信したIPパケットが前記着信先からのRTPパケットを含んでいると認識されるまでの音声待ち時間を計測し、該音声待ち時間を計測する毎に、該音声待ち時間と過去の音声待ち時間とを統計処理して、音声待ち時間の統計処理値を求める統計処理手段を備え、
前記呼制御手段は、前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記RTPオープンメッセージであると認識されると、前記統計処理値に応じて定められた待ち限度時間を越えたか否かを判断し、該待ち限度時間を越えた場合には、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカからの前記RBTの出力を停止させる、
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項3】
請求項2に記載のIP電話機において、
前記信号音発生処理手段は、前記ハンドセットスピーカに音声待ち時間の超過を示す音声待ち超過音を出力させ、
前記呼制御手段は、前記待ち限度時間を越えた場合には、前記ハンドセットスピーカに前記音声待ち超過音を出力させる、
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のIP電話機において、
着信音を出力する外部スピーカを備え、
前記信号音発生処理手段は、前記外部スピーカに着信音を出力させると共に、前記ハンドセットスピーカ及び/又は前記外部スピーカに音声待ちを示す音声待ち音を出力させ、
前記呼制御手段は、
前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが着信メッセージであると認識されると、前記信号音発生処理手段により、前記外部スピーカから前記着信音を出力させ、
前記外部スピーカから前記着信音を出力させている過程で、前記ハンドセットのオフフックが検知されてから、前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記着信メッセージで示される発信元からのRTPパケットを含んでいると認識されるまで、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカ及び/又は前記外部スピーカから音声待ち音を出力させる、
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項5】
IP網に対してIPパケットを送受信する通信部を備えているIP電話機において、
通話者に音声を出力するハンドセットスピーカを有するハンドセットと、
着信音を出力する外部スピーカと、
前記ハンドセットスピーカに、呼び出し音であるRBT(Ringing Back Tone)を出力させ、前記外部スピーカに着信音を出力させ、該ハンドセットスピーカ及び/又は該外部スピーカに音声待ちを示す音声待ち音を出力させる信号音発生処理手段と、
前記通信部が受信したIPパケットを分解して解析すると共に、該通信部から送信するデータをIPパケット化する通信処理手段と、
呼制御を実行する呼制御手段と、
を備え、
前記呼制御手段は、
前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが着信メッセージであると認識されると、前記信号音発生処理手段により、前記外部スピーカから前記着信音を出力させ、
前記外部スピーカから前記着信音を出力させている過程で、前記ハンドセットのオフフックが検知されてから、前記通信処理手段により、前記通信部が受信したIPパケットが前記着信メッセージで示される発信元からのRTPパケットを含んでいると認識されるまで、前記信号音発生処理手段により、前記ハンドセットスピーカ及び/又は前記外部スピーカから音声待ち音を出力させる、
ことを特徴とするIP電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−3963(P2011−3963A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143197(P2009−143197)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】