説明

IgEタンパク質の変異体およびその使用

本発明は一般に、変異体IgEタンパク質に関する。特に、本発明は、未改変のIgEタンパク質に比較して可撓性の減少した重鎖を有し、結果として特定の構造状態にされた、改変されたIgEタンパク質に関する。本発明はまた、IgEグリコシル化変異体の三次元モデルに関する。本発明はまた、FcεRIまたはFcεRIαに対するIgEタンパク質の結合を阻害する化合物を産生し、および単離するための本発明のタンパク質の使用に関する。本発明のタンパク質をコードする核酸分子もまた、本発明に含まれる。IgEのそのレセプターへの結合を阻害する化合物もまた、含まれる。本発明はまた、本発明のタンパク質および/または化合物を含む治療組成物およびキットならびにこのような組成物およびキットを使用して動物を処置する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、変異体免疫グロブリンε(IgE)タンパク質およびこのようなタンパク質の3次元モデルに関する。本発明はまた、アレルギーの予防および処置ならびに動物における免疫反応の調節に有用である化合物を同定するための変異体タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
抗体Fcレセプター(FcR)は、分泌された抗体の特異性を免疫系の種々の細胞に結びつけることにより、免疫反応において重要な役割を演じる。多くの細胞型(マクロファージ、肥満細胞、好酸球および好塩基球を含む)が、その表面上に膜結合型FcRを発現する。アレルゲン結合抗体のFcRへの結合は、これらの細胞に対する抗原特異性を提供し、活性化に基いてさらに、免疫反応の細胞特異的メディエーター(例えば、インターロイキン、炎症のイニシエーター、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ヒスタミンまたは細胞傷害性タンパク質)を放出する。FcRの養子特異性は、これらのレセプターを発現する細胞型の多様性に抗体抗原認識部位の多様性を結びつけることにより、病原体除去のための組合せ方法を可能にする。
【0003】
FcRに開始される機構は、感染性疾患に対する通常の免疫ならびにアレルギー、抗体媒介性腫瘍識別、自己免疫疾患および免疫反応が異常である(すなわち、適切に調節されていない)他の疾患において重要である。トランスジェニックマウスを用いた最近の実験は、FcRが、免疫反応(抗体に関する細胞毒性および免疫複合体の生成に関連した炎症性カスケード(例えば、Ravetchら、1998、Annu Rev Immunolo 16、421〜432を参照のこと)を含む)の重要な工程を制御することを示した。IgGに結合するレセプター(集合的にFcgRとして公知であるFcgRI、FcgRIIおよびFcgRIII)は、種々の炎症反応を媒介し、B細胞活性化を調節し、また、過敏反応を誘発する。高親和性Fcεレセプター(IgEレセプターまたはFcεRIとしても公知である)は、肥満細胞の活性化およびアレルギー反応の誘発およびアナフィラキシーショックに関連する。FcεRIα鎖(FcεRIα)に対するノックアウトマウスは、IgE媒介性アナフィラキシーを起こすことができない(例えば、Dombrowiczら、1993、Cell 75、969〜976を参照のこと)が、FcgRはまだ、肥満細胞を活性化し得る(例えば、Dombrowiczら、1997、J.Clin.Invest.99、915〜925;Oettgenら、1994、Nature 370、367〜370を参照のこと。)。FcεRIはまた、血小板および好酸球から抗寄生虫反応を誘発し、ならびにT細胞の活性化のために、MHCクラスII提示経路に抗原を送達することを示した;例えば、Gounniら、1994、Nature 367、183〜186;Josephら、1997、Eur.J.Immunol.27、2212〜2218;Maurerら、1998、J.Immunol.161、2731〜2739を参照のこと。FcεRIのβサブユニットは、遺伝的研究において喘息と関連していた;例えば、Hillら、1996、Hum.Mol.Genet.5、959〜962;Hillら、1995、Bmj 311、776〜779;Kimら、1998、Curr.Opin.Pulm.Med.4、46〜48;Maoら、1998、Clin.Genet.53、54〜56;Shirakawaら、1994、Nat.Genet.7、125〜129を参照のこと。集団の有意な画分(約20%)は、アレルギーに感染され得、そして今世紀は、喘息の本質的な増加が認められた。FcεRIに対するIgE結合は、種々のアレルゲンに対する反応において必須の事象であるので、FcεRI/IgE相互作用の阻害を目的とする治療計画は、これらの疾患に対する有用な処置を提供し得る。例えば、IgEを標的し、レセプター結合をブロックするモノクローナル抗体は、治療潜在力を示した;例えば、Heusserら、1997、Curr.Opin.Immunol.9、805〜813を参照のこと。
【0004】
FcεRIは、肥満細胞、好塩基球、好酸球、ランゲルハンス細胞および血小板の表面上で、四量体(abg)または三量体(ag)膜結合レセプターとして見出される。FcεRIのα鎖はまた、FcεRIαと呼ばれ、高い親和性(約10〜1010モル/L(M)のK)でIgE分子に結合し、単一のC末端膜貫通アンカーの前の終止コドンの導入による可溶性の172アミノ酸のIgE結合フラグメントとして分泌され得る;例えば、Blankら、1991、E.J.Biol.Chem.266、2639〜2646(これは、172アミノ酸の可溶性IgE結合フラグメントの分泌を記載する)を参照のこと。ヒトFcεRIαタンパク質の細胞外ドメインは、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、7個のN結合型グリコシル化部位を含む。FcεRIαのグリコシル化は、レセプターの分泌および安定性に影響するが、IgE結合は必要としない;例えば、LaCroixら、1993、Mol.Immunol.30、321〜330;Letourneurら、1995、J.Biol.Chem.270、8249〜8256;Robertson、1993、J.Biol.Chem.268、12736〜12743;Scarselliら、1993、FEBS Lett 329、223〜226を参照のこと。FcεRIのβ鎖およびγ鎖は、シグナル伝達モジュールである。
【0005】
これまでの研究者は、ヒトFcεRIαに対するタンパク質をコードする核酸配列を開示してきた;例えば、Lederによる米国特許第4,962,035号(1990年10月9日に発行);Kinetらによる米国特許第5,639,660号(1997年6月17日に発行);Kochanら、1988、Nucleic Acids Res.16、3584;Shimizuら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、1907〜1911;およびPangら、1993、J.Immunol.151、6166〜6174を参照のこと。ヒトFcεRIβ鎖およびヒトFcεRIγ鎖をコードする核酸分子に対する核酸配列が報告されている;それぞれ、Kusterら、1992、J.Biol.Chem.267、12782〜12787;Kusterら、1990、J.Biol.Chem.265、6448〜6452を参照のこと。イヌのFcεRIαタンパク質、マウスのFcεRIαタンパク質、ラットのFcεRIαタンパク質、ネコのFcεRIαタンパク質およびウマのFcεRIαタンパク質をコードする核酸分子に対する核酸配列が報告されている;それぞれGenBankTM登録番号D16413;Swiss−Prot登録番号P20489(コードされたタンパク質配列を表す);GenBank登録番号J03606;FrankらによるPCT公開番号WO98/27208(1998年6月25日公開、本明細書中では、WO98/27208と呼ばれる);およびWeberらによるPCT公開番号WO99/38974(1999年8月5日公開、本明細書中では、WO99/38974と呼ばれる)を参照のこと。さらに、FcεRIαタンパク質を使用するIgE抗体を検出する方法が、FrankらによるPCT公開番号WO98/23964(1998年6月4日公開、本明細書中では、WO98/23964と呼ばれる);WO98/27208、前述;FrankらによるPCT公開番号WO98/45707(1998年10月15日公開、本明細書中では、WO98/45707と呼ばれる)およびWO99/38974、前述に報告されている。WO98/23964、WO98/27208、WO98/45707およびWO99/38974はそれぞれ、本明細書中で、その全体が参考として援用される。
【0006】
IgEは、4つのポリペプチド鎖:2つの同一の重鎖(H鎖)および2つの同一の軽鎖(L鎖)からなるという点で、全ての免疫グロブリン分子に共通である一般的な全体構造を共有する(Immunobiology:The Immune System in Health and Disease、JanewayおよびTravers、1996、Garland Publishing Inc.New Yorkに総説され、これは、その全体が参考として援用される)。2つの重鎖(非グリコシル化形態では、それぞれ約65kDaの分子量を有する)は、ジスルフィド結合で結合している。各重鎖はさらに軽鎖に結合し、各軽鎖は、約25kDaの分子量を有し、最終的には4鎖分子を生じる。重鎖および軽鎖の両方が、別々の配列ドメインを含む。軽鎖は、2つのドメイン、その領域における配列が同一のアイソタイプの異なる抗体間で変動する可変ドメイン(Vと呼ばれる)およびその領域における配列が同一のアイソタイプの異なる抗体間で定常なままである定常ドメイン(Cと呼ばれる)を含む。重鎖中の配列ドメインの数は、異なるアイソタイプ間で異なる。IgEの重鎖ポリペプチドは、1つの可変配列ドメイン(Vと呼ばれる)からなる5つの配列ドメインおよび4つの定常配列ドメイン(Cε1〜Cε4と呼ばれる)を有する。VドメインおよびVドメインは、抗原認識に関与するが、それに対して重鎖の定常ドメインは、分子に対する免疫グロブリンクラスの特有の機能特性(例えば、レセプター結合)を与え、分子が5つの主要な免疫グロブリンクラスのどれに属するかを決定する。
【0007】
重鎖および軽鎖タンパク質成分に加えて、全ての免疫グロブリンはまた、ポリペプチド鎖中のアミノ酸に共有結合した単純な側鎖および複雑な側鎖の形態の顕著な量の炭水化物を含有する。炭水化物側鎖は通常、N−グリコシド結合により結合しているが、O−グリコシド結合も観察されている。一般に、炭水化物側鎖は、重鎖の定常ドメインの1つに位置する結合によって、分子のタンパク質部分に結合するが、この原則に対する例外も観察されている。グリコシド結合の数は、免疫グロブリン型間および免疫グロブリン型内で異なるが、一般には、IgEは、完全免疫グロブリン分子に対して平均5つのオリゴ糖を有すると考えられる。
【0008】
IgE抗体は、重鎖の定常ドメインに存在するアミノ酸配列を介して細胞レセプターFcεRIαおよびFcεRII(CD23)と相互作用する。FcεRIαまたはIgEのそれぞれのタンパク質の結合(すなわち、その間の相互作用)に関与するFcεRIαまたはIgEのどちらかのアミノ酸の同定を試みるための突然変異誘発および交換技術(swapping technique)を使用するいくつかの報告、他のIgスーパーファミリーメンバーに対する相同性に基いてFcεRIαタンパク質のモデル化を試みる報告およびこのような結合を明白に阻害する化合物を同定する報告があり:例えば、Cookら、1997、Biochemistry 36、15579〜15588;Hulettら、1994、J.Biol.Chem.269、15287〜15293;Hulettら、1995、J.Biol.Chem 270、21188〜21194;Mallamaciら、1993、J.Biol.Chem.268、22076〜22083;Robertson、1993、前出;Scarselliら、1993、前出;McDonnellら、1997、Biochem.Soc.Trans.25、387〜392;McDonnellら、1996、Nat.Struc.Biol.3、419〜426;ChengらによるPCT公開番号WO97/40033(1997年10月30日公開);Gouldらによる米国特許第5,180,805号(1993年1月19日発行);Gouldらによる米国特許第5,693,758号(1997年12月2日発行);GouldらによるPCT公開番号第WO96/01643(1996年1月25日公開);GouldらによるPCT公開番号WO95/14779(1995年6月1日公開)を参照のこと。個々の分子ならびにIgE/FcεRIα複合体の最近の結晶学的な試験は、IgEとFcεRIα間の相互作用に関与する特定のアミノ酸を明らかにした;例えば、PCT公開番号WO00/26246、Jardetzkyら、2000年5月11日公開;米国特許公開番号20030003502−A1、Jardetzkyら、2003年1月2日公開;PCT公開番号WO01/69253 A3、Jardetzkyら、2001年9月20日公開;米国公開番号第20010039479号、Jardetzkyら、2001年11月8日公開およびPCT公開番号WO01/68861 A3、Jardetzkyら、2001年9月20日公開(これらは、それぞれ本明細書にその全体が参考として援用される)を参照のこと。これらの研究により生み出された三次元モデルは、FcεRIaのIgEに対する結合が、FcεRIα中のアミノ酸とCε2/Cε3リンカー領域(可撓性リンカー領域とも呼ばれる)中のアミノ酸およびIgE重鎖のCε3ドメイン中のアミノ酸との相互作用によって媒介されることを示した。さらに、IgEの三次元モデルは、IgEの重鎖が可撓性であり、少なくとも2つの固有の構造(閉じた高次構造および開いた高次構造)をとり得ることを示す。2つの構造は、開いた高次構造中ではさらに離れ、閉じた高次構造中ではより近づくCε3ドメインの相対的な空間配向性により一部区別され得る。閉じた高次構造では、Cε3−Cε4のドメイン間の角度は、相同なIgG−Fcドメイン間(Deisenhoferら、1976;Harrisら、1999)またはFcεRI−結合IgE−Fc(開いた高次構造、Garmanら、2000)で観察されるより鋭角である。さらに、2つのCε3ドメインの相互に対する相対的な配置およびCε4ドメインに対する相対的な配置は変化している。閉じた高次構造では、IgE−Fc Cε3ドメインは、共により近づき、相互に対してわずかに回転している。さらに、Cε3 A鎖の第1残基(N末端アミノ酸)間の距離は、わずか約13Å〜約22Åである。IgE−Fcの開いた高次構造において距離が23Åまで増加すると、その距離は、IgG2a−FcのCγドメイン間で観察される22Åに類似する(Harrisら、1997)。開いた高次構造と閉じた高次構造との間の変化において、各Cε3ドメインの上端は、2量体軸を越えて他のCε3ドメインの方へ約10Å移動し、同一鎖のCε4ドメインの方へ8Å移動する。
【0009】
IgE/FcεRIα複合体の研究は、IgE−Fc分子が、FcεRIαに結合する場合に開いた高次構造であることを明らかにした。IgE−Fc構造の大きな構造変化は、輪を高親和性レセプターであるFcεRIと相互作用するCε3ドメインに再配向する。FcεRIに結合する輪の大きな動きは、レセプターと相互作用する閉じたIgE−Fc高次構造に十分に位置しないことを示唆する。開いた型では、レセプター結合輪は露出され、結合残基は、FcεRIαとの相互作用に利用可能である大きな凹型の表面を表す。一部これらのデータに基いて、IgE分子が例えば化合物の結合のために、閉じた高次構造に制約される場合、これらの閉じたIgE分子は、FcεRIαに結合し得ないことが予測される。さらにこれらのデータを使用して、IgEを閉じた高次構造に固定し、それによってそのレセプターへの結合を防止するIgEに結合する化合物の生成に有用であるツール(例えば、変異体タンパク質)を設計することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日までの研究は、IgEおよびFcεRIαの構造ならびにそれらの相互作用の性質についての情報を提供してきたが、アレルギーを処置し、診断し、そして免疫反応を調節するための化合物の発見および生成に関して有用である特定のツールに対する必要性は残っている。動物におけるアレルギーを予防し、また処置し、かつ他の免疫反応を調節するための安全かつ有効な化合物も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、一般的に変異体、IgE重鎖タンパク質、変異体IgEHCタンパク質を含むIgEタンパク質およびこのような変異体IgEタンパク質の三次元モデルに関する。特に、本発明は、天然の分子と比較して可撓性が減少した重鎖を有する変異体IgEタンパク質に関し、結果として特定の構造状態に制約される。本発明はまた、IgEグリコシル化変異体の三次元モデルに関する。IgE変異体およびIgEHC変異体は、例えば動物におけるIgE媒介免疫反応を調節する化合物を単離または生成するために使用され得る。本発明はまた、IgEのFcεRIまたはFcεRIαへの結合を阻害する化合物を生成および単離するための本発明の変異体IgEHCおよび変異体IgEタンパク質の使用に関する。本発明のタンパク質をコードする核酸分子ならびにこのような核酸分子を含む細胞および組換えウイルスも本発明に含まれる。IgEのFcεRIまたはFcεRIαへの結合を阻害する化合物もまた、含まれる。本発明はまた、治療化合物ならびに本発明のタンパク質および/または化合物を含むキットならびにこのような組成物およびキットを使用する動物を処置するための方法を含む。従って、本発明は、PCT公開番号WO00/26246、Jardetzkyら、2000年5月11日公開;米国特許公開番号20030003502−A1、Jardetzkyら、2003年1月2日公開;PCT公開番号WO01/69253 A3、Jardetzkyら、2001年9月20日公開;米国特許公開番号20010039479、Jardetzkyら、2001年11月8日公開およびPCT公開番号WO01/68861 A3、Jardetzkyら、2001年9月20日公開の教示に基く。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般的に変異体IgEタンパク質、変異体IgEHCタンパク質およびこのような変異体IgEタンパク質の三次元モデルに関する。本発明の記載において、本明細書で使用される特定の用語は、以下のように定義される:
本明細書で使用される場合、用語「a」または「an」(1つの)実体とは、1つ以上のその実体をいう;例えば、「a」タンパク質とは、1つ以上のタンパク質または少なくとも1つのタンパク質をいう;別の例として、「a」核酸分子とは、1つ以上の核酸分子または少なくとも1つの核酸分子をいう。従って、用語「a」または「an」、「1つ以上の」および「少なくとも1つの」とは、本明細書では、相互変換可能に使用され得る。また、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」とは、本明細書では、相互変換可能に使用され得ることに注意されたい。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「IgE重鎖」、「IgEHC」および「IgEHCタンパク質」とは、相互変換可能に使用され得、任意の動物由来のIgE Fcレポーター結合部位を含むタンパク質をいい、従ってCε4の少なくとも一部を有するかまたは有さない、少なくともCε3の一部を含む。IgEHCタンパク質は、全長免疫グロブリンε(IgE)重鎖、IgE重鎖の全長Fc領域、FcεRIまたはFcεRIαに結合するIgE Fc領域のフラグメントまたはFcεRIまたはFcεRIαに結合するIgE Fc領域のフラグメントを含む任意のタンパク質であり得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「IgECε3」、「Cε3」および「Cε3ドメイン」とは、相互変換可能に使用され得、全長IgE重鎖タンパク質の3番目の定常領域ドメインをいう。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「IgECε4」、「Cε4」および「Cε4ドメイン」とは、相互変換可能に使用され得、全長IgE重鎖タンパク質の4番目の定常領域ドメインをいう。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「IgECε3/Cε4」とは、少なくとも一部のIgECε3および少なくとも一部のIgECε4を含むタンパク質をいう。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「Cε2/Cε3リンカー領域」とは、第2定常ドメインと第3定常ドメインとの間のアミノ酸セグメントをいう。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「IgE Fc領域」とは、第2、第3および第4定常ドメイン(Cε2、Cε3およびCε4)からなるIgE重鎖の領域をいう。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「IgEタンパク質」とは、単独でまたは1つ以上のIgE軽鎖と組み合わせて、少なくとも1つ以上のIgEHCタンパク質を含む分子をいう。IgEタンパク質の1つの例は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含むIgE抗体であり、別の例では、IgEHC二量体である。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「未改変の」とは、IgEタンパク質に適用される場合、配列番号11のアミノ酸配列を含むIgEHCを含有するIgEタンパク質のFcεRIまたはFcεRIα結合活性と同一であるFcεRIまたはFcεRIα結合活性を有するIgEタンパク質をいう。IgEHCの核酸分子および関連する核酸分子(すなわち、このようなIgEHCをコードする核酸分子)に適用される場合、用語「未改変の」とは、配列番号11のアミノ酸配列もしくは配列番号10のヌクレオチド配列をそれぞれ含む、IgEHCもしくは関連核酸分子により保有される機能特性と同一の機能特性を有するIgEHC核酸分子および関連核酸分子をいう。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「変異体」とは、IgEタンパク質、IgEHCタンパク質および未改変のIgEタンパク質に類似する配列を有する関連核酸分子、IgEHCタンパク質およびそれらの未改変の対応物とは機能的に異なる関連核酸分子をいう。特に、変異体IgEタンパク質、変異体IgEHCの核酸分子および関連核酸分子(すなわち、このようなIgEHCをコードする核酸分子)は、未改変の対応物と同一の様式ではFcεRIに結合しない。変異体は天然から単離され得るか、または操作の結果として作製され得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、それらの天然の環境から取り出されたIgEタンパク質、IgEHCタンパク質および関連核酸分子をいう。従って、用語「単離された」は、IgEタンパク質、IgEHCタンパク質および関連核酸分子が精製される程度を必ずしも範囲を反映しない。単離されたIgEタンパク質、IgEHCタンパク質または関連核酸分子は、その天然の源から入手し得るか、または組換え技術を使用して、および/または化学的合成もしくは化学的改変の使用によって作製され得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「閉じた高次構造」とは、FcεRIまたはFcεRIαへのIgEタンパク質の結合を防止するように、IgEHCタンパク質の定常ドメインが配向されるIgEタンパク質の三次元構造をいう。閉じた高次構造のIgEタンパク質は、Cε3ドメインのN末端アミノ酸が、23オングストローム(Å)未満離れているIgEHCタンパク質を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「開いた高次構造」とは、FcεRIまたはFcεRIαへのIgE分子の結合を可能にするように、IgEHCタンパク質の定常ドメインが配向されるIgEタンパク質の三次元構造をいう。開いた高次構造のIgEタンパク質は、Cε3ドメインのN末端アミノ酸が少なくとも23Å離れているタンパク質である。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「空間移動性」とは、それらの相互の相対的な位置および/または残りのIgEタンパク質を移動する(move)かまたは移す(shift)IgEHCタンパク質の能力をいう。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「低減した空間移動性」とは、開いたか、または閉じたかのどちらか1つの高次構造に存在し、かつ、IgEタンパク質が代わりの高次構造をとり得ないようにIgEHCタンパク質の動きが制限されるIgEタンパク質をいう。例えば、低減した空間移動性を有する閉じた高次構造中のIgEは、その構造を変化し得ないので、Cε3ドメインのN末端アミノ酸は少なくとも23Å離れている。同様に、用語「制約された」とは、開いたか、または閉じたかのどちらか1つの高次構造であるIgEをいい、代わりの構造をとり得ないことをいう。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「IgEの開いた型の変異体」(IgEofm)とは、開いた高次構造に制約され、閉じた高次構造を適用し得ないように空間移動性が低減した変異体IgEタンパク質をいう。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「IgEの閉じた型の変異体」(IgEcfm)とは、閉じた高次構造に制約され、開いた高次構造を適用し得ないように空間移動性が低減した変異体IgEタンパク質をいう。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「IgEグリコシル化変異体」(IgEgm)とは、1つ以上のN結合型グリコシル化部位のアミノ酸配列がもはやN結合型グリコシル化部位ではない(すなわち、変異部位が、N結合型グリコシル化方法によりもはやグリコシル化され得ない)ように変化した変異体IgEタンパク質をいう。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「FcεRIαタンパク質の細胞外ドメイン」とは、細胞外の環境に曝露され、IgE抗体のFcドメインに結合するFcεRI α鎖の一部である。このようなFcεRIα細胞外ドメインは、(a)成熟FcεRIα鎖の第1アミノ酸から膜貫通領域の開始部分の前の最後のアミノ酸まで伸長するドメインである完全な細胞外ドメイン、もしくは機能的に等価であって、D1ドメインおよびD2ドメインを含み、そして、FcεRIαタンパク質が天然で結合するようなIgE抗体に対して類似した親和性を示す細胞外ドメインであるかまたは、(b)(a)の細胞外ドメインの任意のフラグメントであって、ここで、そのフラグメントは、IgE抗体のFcドメインに結合する能力を保持するフラグメントであり得る。
【0031】
1つの局面では本発明は、未改変IgEタンパク質中のIgEHCのタンパク質の空間移動性と比較して低減した空間移動性を有するIgEHCのタンパク質を含む単離された変異体IgEタンパク質を提供する。適切な変異体IgEタンパク質は、IgEタンパク質内のIgEHC Cε3ドメインおよびCε4ドメインの空間移動性が、IgEHCのタンパク質の改変によって制限されたIgEタンパク質である。未改変IgEタンパク質のCε3ドメインおよびCε4ドメインの前述の結晶学的な分析は、これらのドメインがIgEタンパク質内で移動し、IgEタンパク質を少なくとも2つの構造:開いた高次構造または閉じた高次構造の一つをとらせ得ることを示した。閉じた高次構造では、2つの重鎖のCε3ドメインのN末端アミノ酸残基(これは、配列番号11の位置9のアミノ酸に対応し、それ自体、全長ヒトIgE重鎖タンパク質の位置336に対応する)は、約13Åの残基内距離を有するが、開いた高次構造では、2つのCε3ドメインのN末端アミノ酸残基は、少なくとも23Åの残基内距離を有するように位置する。IgEタンパク質はFcεRIαに結合する場合、開いた高次構造中に存在し、構造データに基くと、閉じた高次構造のIgEタンパク質は、FcεRIまたはFcεRIαに結合し得ないことが予測される。
【0032】
本発明の1つの実施形態は、IgEタンパク質が閉じた高次構造に制約されるように改変されたIgEHCを含む変異体IgEタンパク質である。閉じた高次構造に制約されたIgEタンパク質は、Cε3ドメインのN末端アミノ酸残基が、23Å未満しか離れていないIgEHCタンパク質を有し;このような変異体IgEタンパク質は、23Å以上の残基間距離を可能にするように十分に収縮し得ない。本発明の適切なIgEタンパク質は、IgEHC Cε3ドメインのN末端アミノ酸残基が、約13Å〜23Å未満の残基間距離を達成し得るIgEタンパク質を含む。従って、本発明の有用な変異体IgEタンパク質は、IgEHC Cε3ドメインのN末端アミノ酸残基が、約13Å以下、約14Å以下、約15Å以下、約16Å以下、約17Å以下、約18Å以下、約19Å以下、約20Å以下、約21Å以下または約22Å以下または23Å以下の残基間距離を達成し得るIgEタンパク質を含む。このような変異体IgEタンパク質は、天然源から単離され得るかまたは未改変IgEタンパク質、IgEHCタンパク質および/または関連核酸分子の研究室操作により生成され得る。IgEタンパク質を改変するための適切な方法は、当業者に公知であって、IgEHCタンパク質の化学的改変または酵素による改変、所望の構造を与える変異体タンパク質を生成するようなIgEHCタンパク質配列の変化、IgEHCタンパク質をコードする核酸分子およびこれらの組合せの変化が挙げられるがこれらに限定されず;これらの方法の実施例は、本明細書中により詳細に記載される。特に有用な変異体IgEタンパク質は、閉じた高次構造に制約され、開いた高次構造をとれず、結果としてFcεRIまたはFcεRIαに結合し得ないIgEタンパク質である。
【0033】
本発明の1つの実施形態は、配列番号11と少なくとも50%同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体IgEHCを含む変異体IgEタンパク質であって、ここで、変異体IgEHCのアミノ酸配列は、IgEHCタンパク質が架橋共有結合を形成し、それによってIgEタンパク質中にこのようなIgEHCタンパク質の動きを制約することを可能にするように改変されている。形成する適切な結合の型は、ジスルフィド結合である。同一性%および類似性%を決定するための方法は、当業者に周知である。変異体IgEタンパク質の例としては、配列番号11と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含むIgEHCを含むが、ここで、配列番号11の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、または9位に対応するIgEHC中のアミノ酸残基は、システインかまたはメチオニンである、IgEタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
1つの実施形態では、本発明の変異体IgEタンパク質は、以下:
(a)配列番号13、ここで、配列番号13の2位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(b)配列番号15、ここで、配列番号15の3位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(c)配列番号17、ここで、配列番号17の4位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(d)配列番号19、ここで、配列番号19の5位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(e)配列番号21、ここで、配列番号21の6位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(f)配列番号23、ここで、配列番号23の7位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(g)配列番号25、ここで、配列番号25の8位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;そして、
(h)配列番号27、ここで、配列番号27の9位に対応する前記IgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含むIgEHCを含む。特に有用な実施形態において、変異体IgEタンパク質は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25および配列番号27からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むIgEHCを含む。
【0035】
本発明はまた、変異体IgEHCを含むIgEタンパク質が、未改変のIgEHCを含むIgEタンパク質の空間移動性と比較して、低減した空間移動性を有するように改変された単離された変異体IgEHCを提供する。適切な変異体IgEHCは、開いた高次構造または閉じた高次構造に制約されたIgEタンパク質を誘導するものであって、ここで閉じた高次構造が好ましい。本発明の適切なIgEHCタンパク質の変異体は、配列番号11と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含むが、ここで、IgEHCは、2つ以上のIgEHCタンパク質の間の共有結合を形成することを可能にし、それによって、IgEタンパク質内でのこのようなIgEHCタンパク質の動きを制約するように改変されている。好ましい変異体IgEHCタンパク質は、配列番号11を含むIgEHCとの親和性を有するFcεRIまたはFcεRIαともはや結合しないが、IgEHCタンパク質の他の機能(例えば、未改変IgEHCに対する免疫応答を誘発する能力および未改変IgEHCを使用して産生された抗体に結合する能力)は保持している。未改変
もしくは変異体のIgEタンパク質もしくはIgEHCまたは関連する核酸分子は、本発明の変異体IgEもしくは変異体IgEHCまたは関連する核酸分子を産生するように改変を受け得る。改変を受けるべき好ましいタンパク質または核酸分子は、ヒト、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ウマ、ネズミ、ヒツジ、ウシまたはブタを含む哺乳動物のタンパク質または核酸分子が好ましい。特に好ましいのは、より好ましいヒトタンパク質または核酸分子を含むヒト、ネコ、イヌまたはウマのタンパク質または核酸分子である。IgEHCタンパク質が鎖間共有結合(例えば、ジスルフィド結合が挙げられるがこれに限定されない)の形成を可能にするように改変する方法は、当業者に公知であって、その方法としては、IgEHCタンパク質の化学的および/または酵素的改変、タンパク質の使用または組換え技術およびこれらの組合せの使用を介したIgEHCタンパク質配列の変化が挙げられるが、これらに限定されない。形成するための適切な結合の型は、ジスルフィド結合である。閉じた高次構造に制約されるように改変されたIgEHCを含むIgEタンパク質を誘導する改変の任意の方法が、本発明のIgEHCタンパク質およびIgEタンパク質を産生するために使用され得る。特に有用な実施形態は、約13Å以下、約14Å以下、約15Å以下、約16Å以下、約17Å以下、約18Å以下、約19Å以下、約20Å以下、約21Å以下、約22Å以下または約23Å未満離れた改変されたIgEHCを含むIgEタンパク質中のCε3ドメインのN末端アミノ酸を生じるようにIgEHCを改変する実施形態である。
【0036】
改変の有用な方法の一つの実施例は、化学的処理または酵素的処理である。適切な化学処理または酵素処理が、当業者に公知であって、その方法としては、例えば、グリコシル化反応、ミリスチル化反応、ビオチン化反応、還元反応、酸化反応、プロテアーゼ反応などが挙げられるが、これらに限定されない。適切な処理は、IgEHCタンパク質を架橋し、それによってIgEタンパク質を、閉じた高次構造の中に改変されたIgEHCを含むように制約する処理である。
【0037】
1つの実施形態において、IgEHCは、アミノ酸配列を変えることによって改変される。変異体IgEHCは、未改変のIgEHC配列と比較して1つ以上の配列の相違を有する場合があり、これらの配列の相違は、天然に生じるか、または、IgEHCタンパク質もしくはこのような、IgEHCをコードする核酸分子の実験室的操作(例えば、置換、挿入、欠失)を介して導入され得る。閉じた高次構造に制約される変異体IgEHCを含むIgEタンパク質を生じるIgEHCアミノ酸配列における変化はいずれも適している。このような配列変化は、閉じた高次構造に制約されたIgEタンパク質を生じるIgEHCの任意の位置になされ得る。改変を行うのに特に適した位置は、Cε2/Cε3リンカー領域、Cε3ドメインおよび/またはCε4ドメインにおける位置である。例えば、Jardetzkyらの2001年11月8日に公開された米国特許公開番号20010039479−A1およびJardetzkyらの2003年1月2日に公開された米国特許公開番号20030003502−A1によると、ヒトIgEHCCε3ドメインは、配列番号11のアミノ酸9〜107までに及び、これは、全長ヒトIgEHCのアミノ酸336〜434までに対応し、この番号は、Dorringtonら、1978、Immunol Rev 41、3〜25の番号方式を使用し、これは本明細書中にその全体が参考として援用される。一方で、Cε4ドメインは、配列番号11のアミノ酸114〜220までに及び、これは、全長ヒトIgEHCのアミノ酸441〜547までに対応し、この番号は、Dorringtonら、1978、Immunol Rev 41、3〜25の番号方式を使用する。以下のように、IgECε3/Cε4は、配列番号11のアミノ酸配列9〜220に延びる。適切な実施形態は、Cε2/Cε3リンカー領域のアミノ酸配列が、アミノ酸の付加、置換または欠失によって変えられたIgEHCである。例えば、Jardetzkyらの2001年11月8日に公開された米国特許公開番号20010039479−A1およびJardetzkyらの2003年1月2日に公開された米国特許公開番号20030003502−A1によると、IgEHCCε2/Cε3リンカー領域は、Dorringtonらの番号方式を使用すると、配列番号11のアミノ酸1〜8までに及び、これは、全長ヒトIgEHCのアミノ酸328〜335までに対応する。架橋アミノ酸を置換または挿入する特に好ましい位置としては、配列番号11のアミノ酸の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位が挙げられるがこれらに限定されない。これらの位置番号は、配列番号11のアミノ酸位置をいい、これらのアミノ酸は、Dorringtonら、1978、Immunol Rev 41、3〜25の番号方式を使用して、一般的に、全長IgEHCのアミノ酸A329、D330、S331、N332、P333、R334、G335およびV336といわれ、そしてそれらに対応することに留意すべきである。同一の変異体は、全長IgEHCの対応するアミノ酸において、またはIgE Fc領域フラグメントのみもしくは他のタンパク質内に含まれるIgE Fc領域フラグメントの対応する位置内で作製され得る。
【0038】
改変の特に有用な様式は、システイン残基またはメチオニン残基のIgEHCへの導入である。このような導入は、その配列へのさらなるアミノ酸残基(すなわち、システインまたはメチオニン)の挿入から生じ得るかまたはシステインもしくはメチオニン中に存在するアミノ酸残基の変換から生じ得る。このような変異体を作製する方法は、当業者に公知である。1つのこのような方法は、IgEHC核酸分子の操作(例えば、ヌクレオチド挿入、欠失および/または置換による)を介して、所望の変異体IgEHCをコードする核酸分子を産生する。核酸分子は、当業者に公知の種々の技術(例えば、部位特異的変異誘発、化学的処理、制限酵素消化、核酸フラグメントのライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、PCR変異形成、オリゴヌクレオチド混合物の合成および核酸分子の混合物を「構築する(build)」するための混合基のライゲーション、インビトロ進化または指向された進化およびこれらの組合せ)を使用して改変され得る。このような技術の使用は、当業者に公知である;例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Labs Pressを参照のこと、これは、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0039】
1つの実施形態において、変異体IgEHCは、配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一のアミノ酸配列を含むが、配列番号11の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位に対応するこのIgEHCのアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである。1つの実施形態において、本発明のIgEHCは、以下:
(a)配列番号13、ここで、配列番号13の2位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(b)配列番号15、ここで、配列番号15の3位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(c)配列番号17、ここで、配列番号17の4位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(d)配列番号19、ここで、配列番号19の5位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(e)配列番号21、ここで、配列番号21の6位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(f)配列番号23、ここで、配列番号23の7位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(g)配列番号25、ここで、配列番号25の8位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;および、
(h)配列番号27、ここで、配列番号27の9位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一のアミノ酸配列を含む。本発明の特に有用なIgEHCタンパク質は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むIgEHCタンパク質である。
【0040】
本発明の1つの実施形態は、閉じた高次構造に制約されたIgEタンパク質を産生するための方法であって、この方法は、:(a)未改変のIgEHCをコードする核酸分子の核酸配列を変える工程;および(b)閉じた高次構造に制約された変異体IgEタンパク質を産生するために、改変されたIgEHC核酸分子を使用する工程を包含する。好ましい実施形態において、核酸配列は、1つ以上のシステイン残基がIgEHCタンパク質中に導入されるように改変される。より好ましい実施形態において、核酸配列は、配列番号11の位置2、3、4、5、6、7、8および/または9に対応する位置にシステイン残基を有するタンパク質をコードするように改変される。
【0041】
本発明はまた、1つ以上のN結合型グリコシル化部位を欠く、単離された変異体IgEHCタンパク質を提供する。ヒトIgEHCは、潜在的なN結合型グリコシル化部位を少なくとも3つ有することが知られている。例えば、ヒトIgEHCは、潜在的に、配列番号11のアミノ酸44、56および/または67でグリコシル化され得、これは、Dorringtonら、1978、Immunol Rev 41、3〜25の番号方式を使用すると、全長IgEのアミノ酸371、373および394に対応する。本発明の有用な実施形態は、細胞のグリコシル化機構がその部位で炭水化物部分に付着しないように、潜在的なN結合型グリコシル化部位の1つ以上の配列が改変された、単離された変異体IgEHCである。適した改変としては、アミノ酸置換、欠失および付加が挙げられる。このような改変を行なう方法は、当業者に公知であって、例えば、IgEHCをコードする核酸配列を変化させる工程が挙げられる。作製するための有用な改変は、配列番号11の44位〜46位、および/または、配列番号11の56位〜58位の1つ以上のアミノ酸を改変する改変である。特に有用な実施形態は、配列番号11の44位のアスパラギンおよび/または配列番号11の56位のアスパラギンをアスパラギン以外のアミノ酸で置換した、単離された変異体IgEHCである。適した実施形態としては、配列番号11と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一のアミノ酸配列を含む、単離された変異体IgEHCタンパク質が挙げられるが、ここで、配列番号11の44位および/または56のアミノ酸は、アスパラギンではない。特に適した実施形態は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、単離された変異体IgEHCである。また、改変された部位でのグリコシル化を防止するために、1つ以上のグリコシル化部位が改変された、変異体IgEHCを含む変異体IgEタンパク質も企図される。
【0042】
本発明はまた、改変された部位でのグリコシル化を防止するために、1つ以上のグリコシル化部位が改変された、変異体IgEHCを含む変異体IgEタンパク質の三次元モデルを提供する。このようなモデルは、開いた高次構造または閉じた高次構造の変異体IgEタンパク質を説明し得、そして、IgEのFcεRIまたはFcεRIαへの結合を阻害する化合物を設計、または発見するために使用され得る。
【0043】
本発明の1つの実施形態は、本発明のタンパク質をコードする核酸分子である。有用な核酸分子としては、配列番号11と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一のアミノ酸配列を含むIgEHCをコードする核酸分子が挙げられるが、配列番号の11位置、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである。特に有用な核酸分子としては、以下;
(a)配列番号13、ここで、配列番号13の2位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(b)配列番号15、ここで、配列番号15の3位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(c)配列番号17、ここで、配列番号17の4位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(d)配列番号19、ここで、配列番号19の5位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(e)配列番号21、ここで、配列番号21の6位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(f)配列番号23、ここで、配列番号23の7位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;
(g)配列番号25、ここで、配列番号25の8位に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;および、
(h)配列番号27、ここで、配列番号27の位置9に対応するこのIgEHC中のアミノ酸残基は、システインまたはメチオニンである;からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含む変異体IgEHCをコードする核酸分子を含む。好ましい核酸分子は、配列番号2、配列番号8、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25および配列番号27からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約100%同一であるアミノ酸配列を含むIgEHCをコードする核酸分子である。
【0044】
本発明において有用な核酸分子は、例えば、組換え核酸技術または化学合成によって産生され得る。本発明の核酸分子は、DNA、RNAまたはDNAおよびRNAの誘導体であり得る。本発明の核酸分子としては、対立遺伝子の改変体を含む天然形態、特定の宿主内での発現に最適化された核酸分子ならびに、ヌクレオチド挿入、欠失、置換および/または転移によって改変された他の核酸分子が挙げられる。本発明の有用な核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約100%同一である核酸配列を含む核酸分子であって、ここで、この核酸配列は、配列番号11のアミノ酸配列を構成するIgEHCタンパク質に対して免疫反応を誘発するタンパク質をコードする。
【0045】
本発明の1つの実施形態は、以下:
(a)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の2位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
(b)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の3位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の4位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
(d)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の5位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
(e)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の6位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
(f)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の7位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
(g)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の8位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;および
(h)配列番号10と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約100%同一である核酸配列であって、配列番号10の9位のコドンに対応するこの核酸配列中のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする核酸配列;
からなる群から選択される核酸配列を含む核酸分子である。3ヌクレオチドからなり、そして、配列番号におけるコドンの位置に対する参照が、そのコドンを構成する3ヌクレオチド構成を指すことは、当業者に周知であることに留意すべきである。例えば、配列番号10の2位のコドンへの言及は、配列番号10のヌクレオチド4〜6を指す。好ましい核酸分子は、上記特徴を有する核酸分子であって、そして、機能を有するタンパク質をコードし、これらの機能としては、抗原結合、配列番号11のアミノ酸を含むIgEHCを含むIgEタンパク質に対する免疫応答の誘発および配列番号11のアミノ酸配列を含むIgEHCを含むIgEタンパク質に対して惹起された抗体の結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の適した核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48から選択される核酸配列を含む核酸分子である。
【0047】
本発明の1つの実施形態は、転写制御配列に作動可能に結合した核酸分子を含む組換え分子である。作動可能に結合したとの言い回しは、宿主生物に形質転換された場合に、分子が発現され得るような様式での核酸分子の転写制御配列への結合をいう。適切な宿主生物は、本発明の核酸分子から発現を指向し得る任意の生物である。本明細書で使用される場合、発現ベクターとは、DNAベクターまたはRNAベクターであって、代表的には、細胞を形質転換し得、特定の核酸分子の発現に影響し得るプラスミドまたはウイルスゲノムのどちらかである。本発明の好ましい組換え分子としては、調節配列(例えば、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点および組換え微生物と適合可能で、かつ、本発明の核酸分子の発現を制御する他の調節配列)を含む。転写制御配列は、転写の開始、伸張および終結を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、転写開始を制御する配列(例えば、プロモーター配列、エンハンサー配列、オペレーター配列、およびリプレッサー配列)である。適切な転写制御配列としては、少なくとも1つの本発明の組換え微生物中で機能し得る任意の転写制御配列が挙げられる。種々のこのような転写制御配列が、当業者に公知であって、例としては、tac、lac、trp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージλ(例えば、λPL、本明細書ではλPLともいわれる)およびバクテリオファージλp(本明細書中では、λPRともいわれる)ならびに融合物(例えば、プロモーター、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、SP01、α接合因子、アルコールオキシダーゼ(AOX)、抗生物質耐性遺伝子およびE.coli、メチル栄養性酵母微生物、昆虫細胞またはタンパク質の発現に有用な他の細胞における遺伝子発現を制御し得る他の配列が挙げられるが、これらに限定されない;この一覧は、さらに多くの転写制御配列が公知であるとして制限されることを意図しないことに留意すべきである。好ましい組換え分子としては、昆虫細胞のプロモーターに作動可能に結合した本発明のIgEHCをコードする核酸分子が挙げられる。
【0048】
本発明の別の実施形態としては、組換えベクターが挙げられ、この組換えベクターは、少なくとも1つの本発明の単離された核酸分子を含み、その核酸分子は、宿主細胞中へ核酸分子を送達し得る任意のベクター中に挿入される。このような組換えベクターは、異種の核酸配列を含み、この核酸配列は、天然には本発明の核酸分子に隣接して見出されない核酸配列であって、好ましくは、この核酸分子が由来する種以外の種に由来する。ベクターは、RNAまたはDNAのどちらかであり得、原核生物由来または真核生物由来のどちらかであって、代表的には、ウイルスまたはプラスミドである。組換えベクターは、本発明のIgE核酸分子のクローニング、配列決定および/または他の操作に使用され得る。
【0049】
本発明の1つの実施形態は、本発明の核酸分子で形質転換した宿主細胞である組換え細胞である。好ましい組換え分子は、本発明の組換え分子を含む。
【0050】
組換えDNA技術は、例えば、宿主細胞内の核酸分子のコピー数、核酸分子の転写される効率、生じた転写産物が翻訳される効率および翻訳後の改変の効率を操作することによって、形質転換した核酸分子の発現を改善するために使用され得る。本発明の核酸分子の発現を増加させるために有用な組換え技術としては、高コピー数のプラスミドに作動可能に結合する核酸分子、核酸分子の1つ以上の宿主細胞染色体への融合、ベクター安定配列のプラスミドへの添加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または改変、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、Shine−Dalgarno配列)の置換または改変、宿主細胞のコドンユーセージに対応する本発明の核酸分子の改変、転写物を不安定化する配列の欠失、ならびに発酵の間の組換え酵素産生から組換え細胞増殖を一時的に分離するコントロールシグナルの使用が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の発現された組換えタンパク質の活性は、このようなタンパク質をコードする核酸分子の断片化、改変または誘導体化によって改善され得る。
【0051】
本発明のIgEHCの1つの実施形態は、融合タンパク質である。本発明での使用に適した融合断片としては、多量体を形成するために2つ以上の本発明のIgEHCタンパク質を結合し得る;タンパク質の安定性を向上し得る;IgEHCタンパク質の精製を促進し得る;および/またはIgEタンパク質もしくはIgEHCタンパク質に対する免疫応答に影響し得る断片が挙げられるが、これらに限定されない。適切な融合断片は、所望の機能(例えば、安定性の向上を与える、タンパク質に対する免疫原性の向上を与える、および/またはタンパク質の精製を簡単にする)を有する任意の大きさのドメインであり得る。融合断片は、本発明のIgEHCのアミノ末端および/またはカルボキシ末端に結合し得、このようなタンパク質の直接的な発見を可能にするために、切断に対して感受性になり得る。融合タンパク質は好ましくは、IgEHCタンパク質のカルボキシ末端および/またはアミノ末端のどちらかに結合する融合断片を含むタンパク質をコードする融合核酸分子で形質転換した組換え細胞を培養することによって産生される。好ましい融合断片としては、金属結合ドメイン(例えば、ポリヒスチジン断片)、免疫グロブリン結合ドメイン(例えば、プロテインA、プロテインG、T細胞、B細胞、Fcレセプターまたは相補的タンパク質抗体の結合ドメイン)、糖結合ドメイン(例えば、マルトース結合ドメイン)および/または「タグ」ドメイン(例えば、少なくともβガラクトシダーゼの一部分、strepタグペプチド、T7タグペプチド、FlagTMペプチドまたはモノクローナル抗体のようなドメインに結合する化合物を使用して精製され得る他のドメイン)が挙げられる。より望ましい融合断片としては、金属結合ドメイン(例えば、ポリヒスチジン断片)、マルトース結合ドメイン、strepタグペプチド(例えば、Biometra、Tampa、FLから入手可能である)およびS10ペプチドが挙げられる。
【0052】
本発明の変異体IgEHCタンパク質または変異体IgEタンパク質を産生するために有効な培養条件としては、有効培地、バイオリアクター、タンパク質産生を可能にする温度条件、pH条件および酸素条件が挙げられるが、これらに限定されない。有効培地とは、本発明の変異体IgEHCタンパク質または変異体IgEタンパク質を産生するために、その中で細胞が培養される任意の培地をいう。このような培地は、代表的に、同化炭素源、同化窒素源、および同化リン酸塩源ならびに適切な塩、無機塩類、金属および他の栄養分(例えば、ビタミン)を含有する。本発明の組換え細胞は、従来的な発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリプレート中で培養され得る。培養は、酵母、E.coli、昆虫細胞または他の培養に適した細胞に適した、温度、pHおよび酸素含有量で実施され得る。このような培養条件の決定は、当業者の知識の範囲内である。
【0053】
産生に使用されるベクターおよび宿主系に依存して、生じる本発明のタンパク質は、組換え細胞内に残存し得るか、培養培地もしくは発酵培地中に分泌され得るか、または2つの細胞膜の間の空間に分泌され得る。好ましい実施形態では、タンパク質は、培地中に存在し、従って細胞から容易に分離され得る。
【0054】
本発明のタンパク質は、種々の精製技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィ−、イオン交換クロマトグラフィー、ろ過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、等電点電気泳動および差示的可溶化が挙げられるがこれらに限定されない)を使用して精製され得る。本発明のタンパク質は、好ましくは「実質的に純粋な」形態で回収される。本明細書中で使用される場合、「実質的に純粋な」とは、診断ツール、治療ツールもしくは予防ツールまたはスクリーニングツールとしてのタンパク質の有効な使用を可能にする純度をいう。
【0055】
本発明のIgEHCタンパク質またはIgEタンパク質ならびに未改変のIgEHCタンパク質またはIgEタンパク質の、FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質に選択的に結合する能力は、当該分野で公知の方法(例えば、本明細書およびJardetzkyらのPCT公開番号WO00/26246(2000年5月11日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20030003502−A1(2003年1月2日公開)、JardetzkyらのPCT公開番号WO01/69253A3(2001年9月20日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20010039479号(2001年11月8日公開)およびJardetzkyらのPCT公開番号WO01/68861A3(2001年9月20日公開)に開示されるが、これらに限定されない)によってアッセイされ得る。本明細書中で使用される場合、用語FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質に選択的に結合するとは、他のFcRタンパク質に実質的に結合し得ることなく、FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質に優先的に結合するタンパク質の能力をいう。好ましくは、FcεRIまたはFcεRIαは、少なくとも約10l/mol(M−1)、より好ましくは、少なくとも約10−1、さらにより好ましくは、少なくとも約1010−1の親和性(K)でIgEタンパク質に結合する。本発明の変異体タンパク質の結合活性を、未改変のタンパク質の結合活性と比較する方法も当該分野で公知であり、その方法としては、本明細書およびJardetzkyらのPCT公開番号WO00/26246(2000年5月11日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20030003502−A1(2003年1月2日公開)、JardetzkyらのPCT公開番号WO01/69253A3(2001年9月20日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20010039479号(2001年11月8日公開)およびJardetzkyらのPCT公開番号WO01/68861A3(2001年9月20日公開)に開示される方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明はまた、IgEタンパク質に結合する化合物を同定し、それによって、閉じた高次構造中にIgEタンパク質を配置し、拘束し、維持するかまたは安定化する(すなわち、このような化合物は、閉じた高次構造中のIgEタンパク質に結合するかまたは閉じた高次構造を生じるIgEタンパク質に結合する)ための方法を包含する。このような化合物が、IgEタンパク質のFcεRIへの結合を阻害することが好ましい。このような化合物を同定するための方法が、本発明の未改変もしくは変異体であるIgEHCタンパク質もしくはIgEタンパク質を使用し得ることが理解されるべきである。従って、以下に考察した方法は、変異体IgEタンパク質の使用を引用し得るが、本発明の変異体IgEHCタンパク質も使用され得ることが理解されるべきである。
【0057】
1つの実施形態は、IgEタンパク質の閉じた形態を結合する化合物を同定するための方法であって、上記方法は、(a)閉じた形態に制約された変異体IgEタンパク質と候補化合物と接触させる工程;および(b)このような候補化合物がIgE閉じた形態の変異体に結合するか否かを決定する工程を包含する。好ましい実施形態において、このような候補化合物(IgEタンパク質の閉じた形態に結合すると仮定する)は、次いで、このような候補化合物が、IgEとこのようなFcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質との結合を阻害するか否かを決定するために、IgEおよびFcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質と接触される。別の好ましい実施形態において、このような候補化合物(IgEタンパク質の閉じた高次構造に結合すると仮定する)は、候補化合物が開いた高次構造のIgEに結合するか否かを決定するために、開いた高次構造のIgEタンパク質とも接触される。別の実施形態は、IgEのFcεRIへの結合を阻害する化合物を同定するための方法であって、この方法は、(a)閉じた形態に制約された変異体IgEタンパク質を、FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質の存在下で、候補化合物と接触させる工程;および(b)このような候補化合物が、FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質へのIgEタンパク質の結合を阻害するか否かを決定する工程を包含する。
【0058】
好ましい化合物は、閉じた高次構造のIgEタンパク質に選択的に結合する化合物である。本明細書中で使用される場合、用語IgEタンパク質の閉じた高次構造に選択的に結合するとは、他のタンパク質または分子(開いた高次構造のIgEタンパク質を含む)に実質的に結合し得ることなく、IgEタンパク質の閉じた高次構造に優先的に結合する化合物の能力をいう。IgEタンパク質に選択的に結合し得る化合物はまた、本明細書中では、IgE結合化合物ともいわれる。特に好ましい化合物は、閉じた高次構造のIgEタンパク質に結合するが、開いた高次構造のIgEタンパク質に結合しない(このようなIgEが閉じた高次構造をとるのを誘導する場合を除いて)化合物であって、かつ、IgEタンパク質のFcεRIまたはFcεRIαへの結合を阻害する化合物ではない。
【0059】
適切な結合アッセイは、当業者に公知であって、結合複合体を形成するのに適した条件下、およびこのような条件を最適化するための当業者に公知の方法で行なわれ、このような条件としては、例えば、適切な濃度、緩衝液、温度、反応時間が挙げられる。例えば、Wingfiledら、1996、Current Protocols in Protein Science、1巻、John Wiley and Sons Publisher(これは本明細書中にその全体が参考として援用される)、Sambrookら、前出、JardetzkyらのPCT公開番号WO00/26246(2000年5月11日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20030003502−A1(2003年1月2日公開)、JardetzkyらのPCT公開番号WO01/69253A3(2001年9月20日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20010039479号(2001年11月8日公開)およびJardetzkyらのPCT公開番号WO01/68861A3(2001年9月20日公開)および実施例1を参照のこと。化合物のIgEタンパク質への結合を検出するために有用なアッセイの例としては、酵素結合型免疫アッセイ、放射免疫測定、蛍光免疫アッセイ、化学蛍光アッセイ、側方流動アッセイ、凝集アッセイ、微粒子ベースのアッセイ(例えば、粒子(例えば、磁気粒子またはラテックスもしくはポリスチレンビーズのようなプラスチックポリマーが挙げられるが、これらに限定されない)を使用する)、免疫沈降アッセイ、BioCoreTMアッセイ(例えば、金コロイドを使用する)および免疫ブロッティングアッセイ(例えば、ウエスタンブロット)が挙げられるがこれらに限定されない。このようなアッセイは、当業者に周知である。アッセイが、どのように使用されるかに依存して、定性的な結果または定量的な結果を得るために使用され得る。いくつかのアッセイ(例えば、凝集、粒子分離および免疫沈降)は、例えば、目または機械(例えば、検出可能マーカーを必要とせずに濃度計または分光光度計によって、)のいずれかによって、視覚的に観察され得る。他のアッセイでは、結合(すなわち、アッセイの結合成分の1つに対する検出可能マーカーの結合)は、複合体の形成を検出するのを補助する。検出可能マーカーの例としては、放射性標識、酵素、蛍光標識、化学発光標識、色素体標識またはリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。リガンドとは、別の分子に選択的に結合する分子をいう。好ましい検出可能マーカーとしては、フルオレセイン、放射性同位元素、アルカリホスファターゼなどのホスファターゼ、ビオチン、アビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼおよびビオチン関連化合物もしくはアビジン関連化合物(例えば、ストレプトアビジンまたはImmunoPure(登録商標)NeutrAvidin(Pierce、Rockfold、ILから入手可能である))が挙げられるが、これらに限定されない。このような方法は、一つ以上の化合物を同時に試験するために使用され得る。好ましい方法は、1つより多い化合物を同時に試験し、多数の候補化合物を同時に分析するためのスクリーニング方法を包含し得る。どの化合物が閉じた高次構造のIgEタンパク質に結合するか、どの化合物が開いた高次構造のIgEタンパク質に結合するか、どの化合物がIgEタンパク質をそのレセプターへの結合から阻害するか、どの化合物が閉じた高次構造のIgEタンパク質に結合しないか、および、どの化合物が開いた高次構造のIgEタンパク質に結合しないかを決定するために、このようなアッセイを最適化することは当業者の能力の範囲内である。
【0060】
閉じた高次構造のIgEタンパク質に結合する適切な化合物は、天然に産生される化合物であり得るか、または合成により産生される化合物であり得、それらとしては、タンパク質、炭水化物、有機分子、基質アナログおよび他の大きい分子または小さい分子が挙げられる。このような化合物は、例えば、化学的ライブラリーまたはファージディスプレイライブラリーなどをスクリーニングすることによって同定され得る。
【0061】
1つの実施形態において、候補化合物の混合物がカラムに適用され、そのカラムには、開いた高次構造のIgEタンパク質が固定化されている。カラムを貫流する化合物(開いた高次構造のIgEに結合しない化合物)は回収され、閉じた高次構造のIgEを固定化した第2カラムに適用される。IgEタンパク質のこの形態に結合しない化合物は、カラムを貫流する。閉じた高次構造のIgEに結合する化合物は次いで、さらなる分析のためにカラムから溶出される。
【0062】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のIgE結合化合物、本発明のタンパク質またはこれらの同一の組合せを含む治療組成物を包含する。治療組成物に含まれる好ましい化合物は、IgEの閉じた形態に結合する化合物および/またはIgEに結合する場合に、IgEを開いた高次構造中での存在から制限し、それによってIgEをFcεRIへの結合から阻害する化合物である。治療組成物に含まれる特に好ましい化合物は、IgEのFcεRIへの結合を阻害する化合物である。本発明の治療組成物は、処置される動物が許容し得る賦形剤中に処方化され得る。このような賦形剤の例としては、水、生理食塩水、Ringer溶液、デキストロース溶液、Hank溶液および他の水性の生理的に平衡化した塩溶液が挙げられる。非水性ビヒクル(例えば、不揮発性油、ゴマ油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)も使用され得る。他の有用な処方物としては、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストラン)を含有する懸濁液が挙げられる。賦形剤はまた、少量の添加剤(例えば、等張性および化学的安定性を向上する物質)を含有し得る。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液およびTris緩衝液が挙げられ、防腐剤の例としては、チメロサールまたはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。標準的な処方物は、注射可能な液体または適切な液体中に、注射のための懸濁液または溶液として取り込まれ得る固体のいずれかであり得る。従って、投与の前に、滅菌水または生理食塩水が添加され得る非液体処方物中では、賦形剤は、デキストロース、ヒト血清アルブミン、防腐剤などを含み得る。
【0063】
本発明の1つの実施形態では、治療組成物は、キャリアを含有し得る。キャリアとしては、処置されるべき動物内で、治療組成物の半減期を増加させる化合物が挙げられる。適切なキャリアとしては、ビヒクルの放出を制御するポリマー、生分解性移植物、リポソーム、細菌、ウイルス、他の細胞、油、エステルおよびグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の1つの実施形態は、本発明の組成物をゆっくりと動物内に放出し得る制御放出処方物である。本明細書中で使用される場合、制御放出処方物は、制御放出ビヒクル中の本発明の組成物を含む。適切に制御放出ビヒクルとしては、生体適合性ポリマー、他のポリマーマトリックス、カプセル、マイクロカプセル、微粒子、ボーラス調製物、浸透性ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、脂肪球(liposphere)および経皮送達系が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の他の放出を制御された処方物としては、動物に投与される場合に、インサイチュで、固体またはゲルを形成する液体が挙げられる。好ましい制御放出処方物としては、生分解性すなわち生物侵食され得る(bioerodible)ものが挙げられる。
【0065】
1つの実施形態において、本発明の治療組成物は、IgEの所望でない効果を予防するために、このような組成物をこのような動物に投与することによって、IgEによって媒介される疾患から動物を防御するために使用され得る。Ig媒介性疾患の1つの例は、アレルギーである。1つの実施形態において、本発明の治療組成物は、動物内のIgEの活性および/または量を低減させるために投与される。このような投与としては、経口適用、静脈内適用、筋肉内適用、眼内適用、粘膜適用、鼻腔内適用、皮下適用、または経皮適用が挙げられ得るが、これらに限定されない。投与の好ましい経路は、皮下である。動物を、IgEにより媒介される疾患から防御するために、本発明の治療組成物が、IgEによって媒介される疾患から動物を防御し得るように、有効な様式で動物に投与される。本発明の治療組成物は、疾患の前に疾患を予防するために、動物に投与され得、そして/または疾患が生じた後に動物に投与され得る。本発明の治療組成物の実際の用量、投与レジメンおよび投与経路は、当業者によって決定され得る。さらなる教示は、例えば、JardetzkyらのPCT公開番号WO00/26246(2000年5月11日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20030003502−A1(2003年1月2日公開)、JardetzkyらのPCT公開番号WO01/69253A3(2001年9月20日公開)、Jardetzkyらの米国特許公開番号第20010039479号(2001年11月8日公開)およびJardetzkyらのPCT公開番号WO01/68861A3(2001年9月20日公開)に提供される。
【0066】
本発明の1つの実施形態は、本発明の変異体IgEHCタンパク質またはIgEタンパク質を備えるキットである。このようなキットは、IgEタンパク質、好ましくは、閉じた高次構造中のIgEタンパク質に結合する化合物、または、このような化合物がIgEに結合する場合に、この化合物が開いた高次構造を維持するかまたは達成するのを防止するかまたは制限する化合物を同定するために使用される。このようなキットはまた、チューブ、瓶、試薬、シリンジ、印刷物、包装などを備え得る。
【0067】
以下の実施例は、例示目的で提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。以下の実施例は、当業者に公知の多数の組換えDNA技術およびタンパク質化学技術(例えば、Sambrookら、前出を参照のこと)を含む。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
この実施例は、IgEHCタンパク質のいくつかのシステイン変異体またはIgEHCタンパク質の構築および結合能力を記載する。
【0069】
(A.IgEHCシステイン変異体の構築)
配列番号11を有する未改変のIgEHCタンパク質中のシステインを置換することにより、いくつかの変異体IgEHCタンパク質を作製した。この置換により、鎖間のジスルフィド結合の潜在的な形成が可能になる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異形成を以下のように使用して、変異体タンパク質を作製した。
【0070】
配列番号10をテンプレートとして有する未改変(unmod)IgEHC核酸分子を使用し、標準的条件下で、種々の位置にシステイン残基を作成する変異を導入した5’プライマーを使用して、変異体IgEHC核酸分子をPCRにより増幅した。5’プライマーは以下のとおりである。
【0071】
【化1−1】

【0072】
【化1−2】

【0073】
それぞれの変異体IgEHC核酸分子を発現ベクターpAcGP67A(カタログ番号22122OP、Becton Dickinson Pharmingen、Franklin Lakes、N.J.)中に連結した。成熟(シグナル配列を切断した)タンパク質のN末端のコード配列は、DorringtonおよびBennich、1978、Immunol Rev 41、3〜25の番号方式を使用すると、成熟IgEのC328に対応するCを有するADPCADである。プラスミドを、標準的プロトコルを使用して、昆虫(HI−5)の昆虫細胞に形質転換し、発現させ、生じたタンパク質をウエスタンブロット解析を使用して分析した。
【0074】
(B.未改変IgEHCタンパク質および変異体IgEHCタンパク質のウエスタンブロット分析)
昆虫細胞での発現の後、IgEHCタンパク質をウエスタンブロット分析により分析した。感染細胞の上清のサンプルを、還元剤(例えば、5mM DTT)を含むかまたは含まないPAGeサンプル緩衝液に添加した。このサンプルを次いで、煮沸し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離した。分離後、タンパク質をイモビロン膜に移し、標準的ウエスタンブロットプロトコルを使用し、ヤギ抗ヒトポリクローナル抗IgE抗体(カタログ番号075−1004、Kirkegaard & Perry Labs、Gaithersburg、MD)を結合したアルカリホスファターゼを使用してタンパク質を可視化した。この分析の結果を図3に示す。
【0075】
(C.変異体IgEHCタンパク質のFcεRIαを結合する能力)
未改変IgEHCタンパク質および変異体IgEHCタンパク質のFcεRIαタンパク質を結合する能力を、以下のようにELISAアッセイを使用して比較した。
【0076】
マイクロタイタープレートの壁をPBS中のヒトFcεRIα(米国特許公開番号US−2001−0039479−A1に開示されるように作製した)で被覆し、そのプレートを一晩4℃でインキュベートした。このプレートをWASH緩衝液(10mM Tris pH7.5、150mM NaCl中0.5% Tween−20)で3回洗浄し、BLOCK緩衝液(10mM Tris、pH7.5、150mM NaCl中5%脱脂粉乳)を使用して室温(RT)で1時間ブロックした。このプレートをWASH緩衝液で3回洗浄し、100μlのIgEHC(BLOCK緩衝液中で0.5〜0.065までに希釈した未改変IgEHCまたは変異体IgEHCのどちらか)をプレートの種々のウェルに添加した。半数のサンプルに、5mMのDTTを添加した。次いで、このプレートを室温で1時間インキュベートし、WASH緩衝液で3回洗浄し、ヤギ抗ヒトポリクローナル抗IgE抗体(カタログ番号075−1004、Kirkegaard & Perry Labs、Gaithersburg、MD)(ストック溶液の1:1000希釈物を使用する)を結合した100μlのアルカリホスファターゼを、各ウェルに添加した。このプレートを室温で1時間インキュベートし、WASH緩衝液で3回洗浄し、水で3回リンスし、その後、各ウェルに50μlのp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)を添加した。このプレートを、RTで30〜60分間インキュベートし、その後、0.5MのEDTAを10μl添加することにより、反応を停止した。ELISAプレートリーダーを使用して、このプレートを、450nMで読みとった。その結果を以下の表1に示す。
【0077】
(表1)
【0078】
【表1】

【0079】
これらのデータは、その配列中に置換されたシステイン残基を有するIgEHCタンパク質を示し、この置換によって、鎖間のジスルフィド結合の形成が可能になり、ヒトFcεRIαタンパク質に結合する能力が低減する。
【0080】
(実施例2)
この実施例は、ヒトIgEのCε3/Cε4ドメインのグリコシル化変異体の結晶の生成および分析を記載する。
【0081】
(A.IgE Fc−Cε3/Cε4 CHO変異体の構築)
IgE−Fc領域Cε3/Cε4ドメインタンパク質中のグリコシル化部位でのグリコシル化を防止するために、これらの部位の配列を改変した新規変異体IgE−Fcタンパク質を作製した。以下のように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異形成を使用して、CHO変異体を作製した。
【0082】
IgE(配列番号10)のIgE Cε3/Cε4ドメインをコードする核酸分子をテンプレートとして使用して、5’核酸分子および3’核酸分子を2つの別のPCR反応で作製した。プライマーHIGEFC1b(これは、配列5’TAGGGCTACGTAGATTCCAACCCGAGAGG3’を有する)(配列番号3によって示される)は、SnaBI制限酵素認識部位を含み、成熟配列のD330に対応するDを有するVDSNPRのN末端配列(SnaBIでの制限消化の後)を有するFcタンパク質の一部をコードする。プライマーN371Q(これは、配列5’ACTGGCTCGAGACCAGGTCAGCTGCACGGTCCCCTTGCTGGGT3’を有する)(配列番号4によって示される)は、固有のXhoI部位およびPvuII部位を導入し、371位のアスパラギンをグルタミンに変化する変異を含む。プライマーN383QおよびHIGEFC2Bを使用して、3’核酸分子を合成した。プライマーN383Q(これは、配列5’CCTGGTCTCGAGCCAGTGGGAAGCCTGTGCAACACTCCACCAGAAAGGAGGAG3’を有する)(配列番号5によって示される)は、固有のXhoI制限酵素認識部位を導入し、383位のアスパラギンをグルタミンに変化する変異を含む。プライマーHIGEFC2B(これは、配列5’TCTAGGCAGCGGCCGCTTATCATTTACCGGGATTTACAG3’を有する)(配列番号6によって示される)は、Lys547で、Fc配列を終止し、NotI制限酵素認識部位を含む。標準PCR条件を使用して、5’核酸分子および3’核酸分子を産生し、ゲル精製し、次いで、制限酵素SnaBIおよびXhoI(5’フラグメント)またはNotIおよびXhoI(3’フラグメント)で消化した。次いで、消化した核酸分子を一緒にそのXhoI部位で連結し、グリコシル化部変異を含むCε3/Cε4ドメインをコードする核酸分子(配列番号7によって示される)を産生した。新規に構築した核酸分子の翻訳は、371位および383位のグリコシル化認識部位を欠くタンパク質(配列番号8によって示される)を生じる。
【0083】
昆虫細胞における発現に関しては、炭水化物変異体に対してCε3/Cε4ドメインをコードする新規に構築した核酸分子を、プライマーIgECABacおよびプライマーHIGEF2bを使用して、増幅した。プライマーIgECAbac(これは、配列5’TAGGGCGGATCCCTGTGCAGATTCGAACCCGAGAGGGGTGAGCG3’を有する)(配列番号9によって示される)は、発現ベクターpAcGP67A(カタログ番号22122OP、Becton Dickinson Pharmingen、Franklin Lakes、N.J.)中のシグナル配列の後ろに、核酸分子のクローニングのためのBamHI部位を含む。成熟(シグナル配列の切断された)タンパク質のN末端のコードされる配列は、ADPCADであり、成熟IgEのC328に対応するCを有する。増幅後、核酸分子をBamHIおよびNotIで消化し、ゲル精製し、pAcGP67Aベクター中に連結した。
【0084】
(B.CHO変異体タンパク質の発現、精製および結晶化)
IgE−Fc CHO変異体タンパク質を発現し、等質になるまで精製し、結晶化した。変異体タンパク質の発現、精製、結晶化、特徴づけおよびデータ収集およびリファインメントは、米国特許公開番号US−2001−0039479−Aの実施例1および実施例2に記載されているように行なった。3つの新規結晶を産生し、これらの結晶から得たデータを表2に示す。
【0085】
(表2 CHO変異体IgEタンパク質結晶に関するデータ)
【0086】
【表2】

【0087】
結晶1から得たデータコレクションおよびリファインメントの統計値を以下の表3に示す。
【0088】
m10_bi50CHO_m25_bi5_m35_P+EBA.pdbに基づいた統計値
【0089】
【表3】

【0090】
結晶2から得たデータコレクションおよびリファインメントの統計値を以下の表4に示す。
【0091】
mim300_c31.pdbに基づいた統計値
【0092】
【表4】

【0093】
結晶3から得たデータコレクションおよびリファインメントの統計値を以下の表5に示す。
【0094】
m200_bil4v3_bg10_bd8_m250_BE_new.pdbに基づいた統計値
【0095】
【表5】

【0096】
(C.IgE Fc領域Cε3/Cε4ドメイン変異体タンパク質構造の記述)
新規結晶形態は、IgE−Fc構造変化についてのさらなる情報を明らかにし、この情報は、C3ドメインが開いた高次構造と閉じた高次構造との間の種々の中間構造をとり得ることを示す。興味深いことに、閉じた高次構造に存在するC3ドメインは一般的に、より類似し、おそらくそのために、その構造の可撓性がより制限される。対照的に、開いた高次構造に近いC3ドメインは、種々の広範な側部−側部構造をとり、このことは、開いた高次構造のドメインの動きに対する制限はほとんどないことを示唆する。これらの差異は、薬物設計および種々の形態への結合に影響を有し得、実験を節約するために重要であり得る。
【0097】
IgE−Fcのこれらのさらなる結晶形態の決定によって明らかにされた構造全体の分析は、IgE−Fc内のいかなる力学的な動きが、レセプターの結合および解離と結びつき得るかを示唆する。例えば、IgE−Fcの構造変化は、レセプター結合部位1および2との結合および遊離における顕微鏡レベルでの工程では重要なようである。さらに、構造全体の分析は、IgE Ce2ドメインとの相互作用が、どのようにしてこのような構造の可撓性の制限に関与し、レセプターへの結合速度およびレセプターからの解離速度に作用するかを示唆する。これらの複数の結晶形態で観察されたCe3ドメインの動きおよび構造配置の範囲は、IgEのレセプターへの結合をブロックし、結合状態から解離状態へ刺激するための可能なモデルおよびアプローチを制限する、一連の好ましい配置を確立する。
【0098】
本発明の種々の実施形態が詳細に記載されるが、これらの実施形態の改変および適合が、当業者に思い浮かぶことは明らかである。しかし、このような改変および適合が、特許請求の範囲に示される本発明の範囲内であることは、明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、開いた高次構造および閉じた高次構造のIgE−Fcにおける鎖間距離および残基間距離の比較を示す。図1aは、閉じた高次構造のCε3ドメインおよびCε4ドメインの側面図を示す。図1bは、閉じた高次構造のCε3ドメインの平面図を示す。実線は、各鎖のN末端アミノ酸(残基336)間の13Åの間隙を示す。図1bは、開いた高次構造のCε3ドメインおよびCε4ドメインの側面図を示す。図1dは、開いた高次構造のCε3ドメインの平面図を示す。実線は、各鎖のN末端アミノ酸(残基336)間の23.5Åの間隙を示す。
【図2】図2は、IgEHC変異体中に生成されたシステイン残基により形成され得る潜在的なジスルフィド結合(例えば、アミノ酸位置329および335におけるジスルフィド結合が示される)を強調する開いたIgE高次構造および閉じたIgE高次構造の略図を示す。図2aは、閉じた高次構造中のCε4ドメインおよびCε3ドメインの残基329〜336を示す。実線は、各重鎖の残基335間のジスルフィド結合を示す。図2bは、開いた高次構造中のCε4ドメインおよびCε3ドメインの残基329〜336を示す。実線は、各重鎖の残基329間のジスルフィド結合を示す。
【図3】図3は、還元条件下および非還元条件下でPAGeにより分離されたIgEHCシステイン変異タンパク質のウエスタンブロットを示す。各レーンの上の数は、鎖間のジスルフィド結合を形成する能力を有するシステインに変換されたIgEHC中のアミノ酸残基を示す。タンパク質単量体および二量体の位置は、図の左側の矢印により示される。図3aは、非還元条件下で分析した場合に、単量体形態および二量体形態のどちらにも存在するタンパク質を示す。図3bは、IgE−Fcタンパク質が、還元条件を受ける場合に、それらが全てモノマー型で存在することを示す。
【配列表】































【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された変異体IgEタンパク質であって、ここで、該変異体IgEタンパク質の変異体IgEHCタンパク質は、未改変のIgEタンパク質中の未改変IgEHCタンパク質の空間移動性と比較して低減された空間移動性を有し、ここで、該未改変IgEHCタンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列を含む、変異体IgEタンパク質。
【請求項2】
前記変異体IgEタンパク質が、開いた高次構造または閉じた高次構造に制約された、請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項3】
前記変異体IgEHCタンパク質のCε3ドメインのN末端アミノ酸残基が、23Å以上の残基間距離を達成し得ない、請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項4】
前記変異体IgEHCタンパク質のCε3ドメインのN末端アミノ酸残基が、固定された約13Åと23Å未満との間の残基間距離を有する、請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項5】
請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質であって、ここで、該変異体IgEタンパク質は、前記IgEHCタンパク質のCε3ドメインのN末端アミノ酸残基が、約13Åの距離、約14Åの距離、約15Åの距離、約16Åの距離、約17Åの距離、約18Åの距離、約19Åの距離、約20Åの距離、約21Åの距離、約22Åの距離、または約22Åと23Å未満との間の距離からなる群から選択された残基間距離を有する高次構造に制約される、単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項6】
前記変異体IgEタンパク質が、配列番号11に対して少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含むIgEHCタンパク質を含み、ここで、配列番号11の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位に対応する該タンパク質中のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項7】
前記変異体IgEタンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列を含む未改変IgEHCを含むIgEタンパク質に対して惹起された抗体に結合する、請求項6に記載の単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項8】
前記変異体IgEHCタンパク質が、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25および配列番号27からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質。
【請求項9】
配列番号10に対して少なくとも約80%同一である核酸配列を含む、単離された核酸分子であって、ここで、配列番号10のヌクレオチド4〜6、7〜9、10〜12、13〜15、16〜18、19〜21、22〜24または25〜27に対応する該核酸配列のコドンが、システインまたはメチオニンをコードする、核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の単離された核酸分子であって、ここで、該核酸分子が、以下:
(a)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド4〜6のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
(b)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド7〜9のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
(c)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド10〜12のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
(d)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド13〜15のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
(e)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド16〜18のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
(f)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド19〜21のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
(g)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド22〜24のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;および
(h)配列番号10に対して少なくとも約90%同一である核酸配列であって、ここで、該核酸配列のヌクレオチド25〜27のコドンがシステインまたはメチオニンをコードする、核酸配列;
からなる群から選択された核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項11】
請求項9に記載の単離された核酸分子であって、ここで、前記核酸配列が、配列番号11と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードし、ここで、配列番号11の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位に対応する該タンパク質のアミノ酸が、システインまたはメチオニンであって、ここで、該タンパク質が配列番号11のアミノ酸配列を有するタンパク質に対して惹起された抗体に結合する、核酸分子。
【請求項12】
前記核酸配列が、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24および配列番号26からなる群から選択される、請求項9に記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
配列番号11に対して少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を有する単離されたタンパク質であって、ここで、配列番号11の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位に対応する該タンパク質のアミノ酸がシステインまたはメチオニンであって、ここで、該タンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列を有するタンパク質に対して惹起された抗体に結合する、タンパク質。
【請求項14】
請求項13に記載の単離されたタンパク質であって、ここで、該タンパク質が、以下:
(a)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の2位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
(b)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の3位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
(c)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の4位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
(d)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の5位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
(e)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の6位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
(f)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の7位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
(g)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の8位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;および
(h)配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列であって、ここで、このようなアミノ酸配列の9位のアミノ酸がシステインまたはメチオニンである、アミノ酸配列;
からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む、タンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質が、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25および配列番号27から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の単離されたタンパク質。
【請求項16】
以下からなる群から選択される方法であって:
(a)IgEのFcεRIへの結合を阻害する化合物を同定する方法であって、該方法は、以下:
(i)請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質または請求項13に記載の単離されたタンパク質を、FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質の存在下で、推定阻害化合物と接触させる工程;および
(ii)該推定阻害化合物が、請求項1に記載の該変異体IgEタンパク質または請求項13に記載の該単離されたタンパク質の、該FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質への結合を阻害するか否かを決定する工程
を包含する方法;ならびに、
(b)閉じた高次構造中に存在するかまたは閉じた高次構造を生じるかのどちらかの、IgEに結合する化合物を同定する方法であって、該方法は、以下:
(i)請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質または請求項13に記載の単離されたタンパク質を、FcεRIタンパク質またはFcεRIαタンパク質の存在下で、推定阻害化合物と接触させる工程;および
(ii)該推定阻害化合物が、請求項1に記載の該変異体IgEタンパク質または請求項13に記載の該単離されたタンパク質に結合するか否かを決定する工程
を包含する方法からなる群から選択される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、ここで、前記変異IgE分子が、配列番号11に対して少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含むIgEHCの分子を含み、ここで、配列番号11の2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位または9位に対応する前記タンパク質中のアミノ酸がシステインまたはメチオニンであって、ここで、該タンパク質が、配列番号11のアミノ酸配列を有するタンパク質に対して惹起された抗体に結合する、方法。
【請求項18】
IgEのFcεRIへの結合を阻害する単離された化合物であって、該化合物が、請求項16に記載の方法によって同定される、化合物。
【請求項19】
前記化合物がIgEの開いた型には結合しない、請求項18に記載の単離された化合物。
【請求項20】
請求項18に記載の化合物および賦形剤を含有する組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物を投与する工程を包含する、IgEによって媒介される疾患から動物を防御するための方法。
【請求項22】
請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質または請求項13に記載の単離されたタンパク質、および請求項1に記載の単離された変異体IgEタンパク質または請求項13に記載の単離されたタンパク質に化合物が結合するか否かを決定するための手段を備える、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500923(P2006−500923A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526396(P2004−526396)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/024336
【国際公開番号】WO2004/013158
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【Fターム(参考)】