説明

L型プレキャストコンクリート製品を使用したトンネル監視員通路の簡単な築造方法

【課題】走行車線の側部のトンネル側壁ぎわの既存の低い監査路をL型プレキャストコンクリート製品による安全なトンネル監視員通路に改造する方法を提供する。
【解決手段】立壁版6aと底版6bからなるL型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの端とトンネル側壁1の間に間隙8を設け、さらに、底版6bの四隅部に高さ調整用ボルトを挿着し、立壁版6aの長さ方向の端に連結用固定金具を有するL型プレキャストコンクリート製品6を監査路2に仮置きし、このL型プレキャストコンクリート製品6を順次トンネルの長手方向に載置し、その上部に規定の高さ2mの建築限界14を確保し、L型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの端とトンネル側壁1の間の間隙8に楔を挿着し、高さ調整用ボルトを回転して底版6bの高さ調整し、連接したL型プレキャストコンクリート製品6の端部を順次に連結用固定金具で連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車道路のトンネル内の走行路線の側部のトンネル側壁ぎわのL型プレキャストコンクリート製品による監視員通路の簡単な築造方法、特にトンネル内の走行路線の側部のトンネル側壁ぎわに設けられている既存の低い監査路の上にL型プレキャストコンクリート製品を構築することによって、既存の低い監査路をコンクリート製の立壁版で防護された安全な監視員通路に簡単に改築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道路の山岳トンネルや都会における地下トンネルなどのトンネルの建設工事では、トンネル内の道路のトンネル側壁ぎわに、L型プレキャストコンクリート製品を使ったトンネル内の監視員通路の築造が従来から行われてきた。
【0003】
これらのトンネル内のトンネル側壁ぎわの監視員通路の築造においては、L型プレキャストコンクリート製品を使用して、トンネル側壁ぎわの所定の位置に、L型プレキャストコンクリート製品を固定して設置する。このためにはトンネル側壁ぎわの所定の位置、すなわち既存の高さの低い監査路の上に監視員通路を形成する際の監査路の所定の位置に、監視員通路用のL型キャストコンクリート製品をトンネルの鉛直方向、横断方向および長手方向の3方向の全てにわたって生コンクリートを打設して固定する必要があった。
【0004】
従来の車道面より高い位置に監視員通路を設置する、すなわち、監査路の上に監視員通路を構築する方法では、L型プレキャストコンクリート製品のトンネルの鉛直方向の固定では、設置基盤である監査路に測量により枕木で高さ調整を行って、図9に示すように、高さ250mmの監査路の上に高さ750mmで長さ2000mmのL型プレキャストコンクリート製品をモルタルで高さを調整して固定し、さらに、トンネルの横断方向の固定では、トンネル側壁とL型プレキャストコンクリート製品の幅400mmの底版との間に生じる幅550mmの間隙に現場打ちでフレッシュコンクリートを充填して、走行自動車が運転を誤ってL型プレキャストコンクリート製品に衝突しても、L型プレキャストコンクリート製品を横断方向のトンネル側壁ぎわに移動しないようにしている。L型プレキャストコンクリート製品の立壁版の上にはさらに高さ800mmの手摺りを設け、立壁版の上端と平行な高さ位置のトンネル側壁との略900mmの間を監視員通路に形成し、監視員通路の下には裏込め材を充填する。監視員通路のトンネル側壁ぎわには窪んだ幅100mmの水路を設けている。道路の進行方向であるトンネルの長手方向では、複数のL型プレキャストコンクリート製品の長手方向端部どうしを接続板をボルトで連結して設置後の移動を阻止している。
【0005】
この従来の築造方法では、トンネル側壁ぎわの基礎コンクリートの上面に、L型プレキャストコンクリート擁壁を設置して、さらにL型擁壁とトンネル側壁との間の底版上と底版延長部の上の空所に裏込め材を充填し、裏込め材の上にクリートを打設して監視員通路に形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
一方、既に自動車が通行しているトンネルにおいては、高さの低い監査路では、例えば高さが250mmしかないので、この監査路でトンネル内の状況を監査するのは極めて危険な作業である。そこで、これらの高さの低い監査路を嵩上げして、例えば高さ800mmの手摺りを有する監視員に安全な高さの監視員通路に改築したい。ところで、L型プレキャストコンクリート製品を使って監視員通路に改築する場合、L型プレキャストコンクリート製品をトンネル内に搬入した後のL型プレキャストコンクリート製品の高さ調整やフレッシュコンクリートの打設などの作業は、車道側から行う作業であるので、この作業の期間中は車線規制が必要である。すなわち、L型プレキャストコンクリート製品の側面や下面をモルタルやフレッシュコンクリートで打設して固定する作業のために、トンネル内の自動車道路のうち、監視員通路を構築する側の一車線の走行車線を長期間にわたって通行規制する必要がある。したがって、山岳トンネルなどの、例えば片側一車線である自動車道路の場合では、工事期間中の長期間にわたって対面交通による車線規制が必要となる。このために交通渋滞などで、利用者に多大な不便をかけることになっている。さらに、監査路上に設置したL型プレキャストコンクリート製品とトンネル側壁の間をコンクリートで充填するために、監査路サイドの既存の水路がコンクリートで埋まってしまい、トンネル側壁を洗浄した際の洗浄水を流す水路を新たに造る必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−327600号公報(第2頁の段落0003、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トンネル内の側壁ぎわに監視員通路を設置する場合、トンネルの大きさに限界があり、その限界内で、トンネル側壁ぎわに設置の監視員通路の上方に、高さ2mの建築限界が規定されている。そこで、トンネルの大きさの限界内で、かつ、監視員通路の上の高さ2mの建築限界を守って監視員通路を構築する必要がある。しかも、工事期間中の車線規制をできるだけ短期間として利用者の便を図るものとしなければならない。
【0009】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、トンネル内の走行路線の側部のトンネル側壁ぎわの既存の高さの低い監査路をL型プレキャストコンクリート製品によるトンネル監視員通路に改築する方法において、監視員通路の上の高さ2mの建築限界を遵守しながら、既存の監査通路上にL型プレキャストコンクリート製品を正しい位置に設置して簡単に固定し、さらに作業のための車線規制の期間を大幅に短縮してトンネルの監視員通路を構築する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、先ず、垂直な立壁版と水平な底版からなるL型プレキャストコンクリート製品を、監査路の上の正しい位置に設置した際に、トンネル側壁とL型プレキャストコンクリート製品との間に間隙を設けるものとする。さらに監視員通路を構築した際に監視員通路とその上方のトンネル側壁との間に規定の高さ2mの建築限界を確保しながら、走行車線の幅に影響を及ばさないものとする。そのために、L型プレキャストコンクリート製品の底版の横断方向の幅を従来のL型プレキャストコンクリート製品の底版の横断方向の幅よりも小さくして監視員通路の幅を小さくしたL型プレキャストコンクリート製品を用いるものとする。さらにL型プレキャストコンクリート製品の製造時に、監査路の上に載置する準備としてL型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に孔を設け、この孔に高さ調整用のボルトを予めねじ込んで取り付ける。さらにL型プレキャストコンクリート製品の立壁版の背面である監視員通路側の長手方向端部に、連結用固定金具を予め取り付け、延長方向の複数のL型プレキャストコンクリート製品を互いに連結できるようにする。ところでトンネル側壁の下半部の内面は内側に傾斜しているので、トンネル側壁の下半部の側壁とL型プレキャストコンクリート製品の底版との間の間隙の形状はトンネル側壁ぎわが傾斜した上辺が広く下辺が狭い形状をしている。そこで、この形状の間隙に合わせた逆台形の楔を用意する。さらにL型プレキャストコンクリート製品の設置に先立ち、トンネル内の測量を行って、設置基盤となるトンネル側壁ぎわの監査路に設置するL型プレキャストコンクリート製品のトンネル内での横断方向の正しい位置を明示して、L型プレキャストコンクリート製品を設置する準備を完了する。
【0011】
以上の準備が完了すると、トンネル内の車線規制を行って、L型プレキャストコンクリート製品をトンネル内にトラックで搬入し、クレーンでL型プレキャストコンクリート製品を、設置基盤である監査路に明示した正しい横断方向の位置に、連続して並べて仮置きする。次いで、仮置きされたL型プレキャストコンクリート製品の鉛直方向の高さを、予め底版の四隅部に設けた孔に取り付けた高さ調整用のボルトを回転させることにより、高さ調整する。次いで、トンネル内の横断方向の正しい位置に設置して高さ調整したL型プレキャストコンクリート製品が車の衝突によってトンネルの横断方向に移動させられることを制限するために、トンネル側壁とL型プレキャストコンクリート製品の底版との間の間隙に、トンネル側壁ぎわが内側に傾斜した形状の、上辺が広く下辺が狭い形状の逆台形の楔を、打ち込む。このトンネル側壁とL型プレキャストコンクリート製品の底版との間隙の幅はトンネル側壁の施工誤差により正規の数値から多少前後するが、楔が間隙の形状に倣った逆台形であるので、打ち込みにより楔が間隙を上下して間隙に固定される。この結果、L型プレキャストコンクリート製品はトンネル側壁への横断方向の移動が規制されることとなる。これらの鉛直方向の高さ調整および横断方向への移動規制が完了すると、連続して設置したL型プレキャストコンクリート製品の相互を連結する連結用固定金具を連結ボルトで固定することにより、連接したL型プレキャストコンクリート製品の相互を固定するものとする。
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、トンネル内の既設の監査路の上に垂直な立壁版と水平な底版からなるL型プレキャストコンクリート製品を載置して監査路を監視員通路に改造する方法において、垂直な立壁版と水平な底版からなるL型プレキャストコンクリート製品の底版の端部とトンネル側壁の間に間隙を設け、さらにL型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に高さ調整用ボルトを挿着しかつ立壁版の長さ方向の両側の端に連結用固定金具を取付けたL型プレキャストコンクリート製品を既存の監査路に仮置きし、この状態としたL型プレキャストコンクリート製品と同様としたL型プレキャストコンクリート製品を順次トンネルの長手方向に仮置きし、仮置きしたL型プレキャストコンクリート製品の底版の上部のトンネル側壁との間に規定の高さ2mの建築限界を確保し、L型プレキャストコンクリート製品の底版の端部とトンネル側壁の間の間隙に、該間隙の形状に倣った幅からなる一定長さの楔を挿着し、一方、L型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に挿着した高さ調整用ボルトを回転してL型プレキャストコンクリート製品の底版の高さを調整し、連接して仮置きしたL型プレキャストコンクリート製品の端部を順次に連結用固定金具で連結することを特徴とする既設の監査路を監視員通路に改造する方法である。
【0013】
請求項2の発明では、L型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に高さ調整用ボルトを挿着しかつ立壁版の長さ方向の両側の端に連結用固定金具を取付けたL型プレキャストコンクリート製品を既存の監査路に仮置きする方法は、改造する監査路を有する側のトンネル内の走行車線の一車線を通行止めとする交通規制をして、この通行止めの期間内に仮置きするためのL型プレキャストコンクリート製品をトラックでトンネル内に搬送してクレーンで監査路上に順次仮置きし、仮置きが終了すると交通規制を解除して通行可能とすることを特徴とする請求項1の手段の既設の監査路を監視員通路に改造する方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の手段の方法により監査路を監視員通路に改造することで、従来の改造方法に比して短期間で実施でき、特に仮置きするための監査路上の測量を行い、次いでL型プレキャストコンクリート製品をトンネル内に搬入し、監査路上の正規の位置に仮置きするまでの間のみ、トンネル内の監視員通路設置側の走行車線の1車線のみを走行規制し、L型プレキャストコンクリート製品の仮置きが終了すると、その後のL型プレキャストコンクリート製品の監査路上の設置および固定作業は、単に底版の高さ調整を行い、底版の端部とトンネル側壁との間隙に楔を打ち付け、さらに長手方向のL型プレキャストコンクリート製品を連結する連結用固定金具のボルトによる締結する作業であり、これらの上記のその後の作業は、全て仮置きしたL型プレキャストコンクリート製品のトンネル側壁がわの内側で実施できるので、車線規制する期間が短期間である。すなわち、従来の方法では、L型プレキャストコンクリート製品の底版を既存の監査路上にモルタルで固定したり、トンネル側壁とトンネル側壁がわの底板の端部との間にフレッシュコンクリートを流し込んで固定する作業が不要であり、さらに底版の上に裏込め材を設け、その上に監視員通路を設ける方法などの場合の作業も不要である。したがって、本発明の方法の手段では、トンネル内の交通の障害となる走行規制期間が極めて短くなる利点がある。
【0015】
さらに、L型プレキャストコンクリート製品をトンネルの長手方向の長さが従来の方法におけるL型プレキャストコンクリート製品の長さに比して2.5倍としているので、連接して設置する期間が、従来のL型プレキャストコンクリート製品の設置よりも長さの長い分だけ設置期間が短縮できる上に、重量も重く、かつ、L型プレキャストコンクリート製品の底版の端部とトンネル側壁間の間隙に楔を挿着しているので、誤って走行自動車が衝突しても、容易にL型プレキャストコンクリート製品がトンネル側壁のがわに押されることがなく、監視員通路が確保でき、安全である。また、L型プレキャストコンクリート製品の底版の長さを、監視員通路の路幅を確保しながら、短くしているので、監視員通路の上のトンネル壁内に建築限界を十分に確保できながら、走行車線の幅を狭めることなく十分に確保できるので、トンネルの構造を改変するなどの影響を及ぼすことなく、監査路から監視員通路に改良することができるなど、本発明は優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法による監視員通路を片側に有するトンネルの模式的横断図である。
【図2】本発明の方法による監視員通路の部分を示す顔面図である。
【図3】本発明に用いるL型プレキャストコンクリート製品の平面図と側面図とトンネルの長手方向、横断方向および鉛直方向を示す図である。
【図4】本発明に用いる手摺りを備えたL型プレキャストコンクリート製品を車道側から見た模式図である
【図5】高さ調整用ボルトの正面図である。
【図6】楔の平面図および側面から見た立面図である。
【図7】左右の連結用固定金具の接合状態を示す平面図と、片方の連結用固定金具の正面図とその側面図を示す。
【図8】従来のL型プレキャストコンクリート製品の平面図と正面図と側面図である。
【図9】従来の方法によるL型プレキャストコンクリート製品からなる監視員通路の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。先ず、従来のトンネル側壁1の側部に設置の例えば走行車線16の路面20からの高さ25cmの監査路2を、本発明の方法による路面20から高さ40cmである監視員通路13に改修する方法について以下に説明する。
【0018】
従来の監査路2を改修するために、図3の(b)に示すトンネルの鉛直方向3の立壁版6aと水平なトンネルの横断方向4の底版6bからなるL型プレキャストコンクリート製品6を、図1の左側に示すように、監査路2の上に設置した場合に、トンネル側壁1とL型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの端部との間に、トンネルの横断方向の間隙8を得るようにする。このために、図3に示すように、L型プレキャストコンクリート製品6の底版6bのトンネルの横断方向4の長さを、間隙8が得られる長さとしてL型プレキャストコンクリート製品6製造する。さらに、図3に示すように、製造されたたL型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの四隅部に孔6fを設け、この四隅部の孔6fに、図5に示す長さ15cmの高さ調整用ボルト7を予め取り付ける。さらにL型プレキャストコンクリート製品6の立壁版6aのトンネル長手方向の端部6dの監視員通路13側となる面に、図7に示すように、ボルトで連結する連結用固定金具6gを取付け、トンネルの長手方向に連続して設置するL型プレキャストコンクリート製品6を互いに連結用固定金具6gで連結できるようする。一方、トンネル側壁1とL型プレキャストコンクリート製品6の底版6bとの間に設けたトンネルの横断方向の間隙8に、図6に示す楔9を挿着するものとする。この挿着用の楔9を挿着するために、間隙8を上辺の幅が広く下辺の幅が狭くかつL型プレキャストコンクリート製品6の底版6b側の側辺が鉛直からなる逆台形に形成する。以上のようにそれぞれの部材を形成して改修の準備をしておく。
【0019】
本発明の方法による監査路2を監視員通路13とするトンネルは、図1に示すように片側1車線からなるものとして説明する。この場合、1車線の走行車線の幅は3m50cmで、さらに監査路2までの間に幅50cmの路側帯がある。この路側帯の端部からさらに20cmトンネル側壁1に寄った位置の監査路2の上に、L型プレキャストコンクリート製品6の厚さ15cmの底版6bと高さ50cmの立壁版6aを位置するようにし、L型プレキャストコンクリート製品6のトンネルの長手方向5の一体の長さは5mからなるものとする。監査路2とトンネル側壁1との間には、幅15cmで深さ7.5cmの水路15が設けられている。この水路15はそのままに残して監査路2の上にL型プレキャストコンクリート製品6を載置し、水路15の上には、トンネル側壁1とL型プレキャストコンクリート製品6の幅40cmの底版6bの端部との間からなる、上部幅が略7cmで下部幅が略5cmである間隙8を設ける。この間隙8に、トンネル側壁1及び監視員通路13からの湧水を取り入れ、さらに間隙8から下部の水路15に流入するものとする。長さが5mからなるL型プレキャストコンクリート製品6におけるトンネル側壁1ぎわの間隙8には、上辺の幅が7cmと広く下辺の幅が5cmと狭く、高さが15cm、長さ20cmである逆台形からなる楔9がL型プレキャストコンクリート製品6の長手方向の両端部とその中間の1m毎に挿着されている。これらのL型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの厚さは15cmで、この底版6bの上面の上に高さ2mの建築限界14を形成して、監視員通路13を監視員が通り得るものとしている。この監査路2の高さは走行車線16の路面20から25cmであり、間隙8から下部のトンネル側壁1ぎわの水路15に流入した水は、さらに走行車線16のがわの監査路2の側壁から下に落ちて円形水路17に流入する。ところで、監視員通路13の立壁版6aの高さは、車両が衝突しても安全に車両を復元させるため車道の路面20から90cmの高さが求められているが、本発明によるL型プレキャストコンクリート製品6からなる擁壁の立壁版6aの車道の路面20からの高さは、監査路2の高さが25cm、底版6bの厚さが15cmあるので、90cmが確保されている。さらにL型プレキャストコンクリート製品6の高さ50cmの立壁版6aの上には、図3の(a)に示す4個のベースプレート12aに支持された図4に示す高さ30cmの手摺り12が設けられている。この監視員通路13の手摺り12の高さは、監視員通路面から80cmの高さが求められているが、本発明によるL型プレキャストコンクリート製品6からなる擁壁の高さ50cmの立壁版6aには30cmの手摺り12を取り付けており、監視員通路12の面からは80cmが確保されている。本発明に使用するL型プレキャストコンクリート製品6は上記したように長手方向の長さが5mであり、従来のL型プレキャストコンクリート製品の長さ方向の長さが2mのものに比してその長さは2.5倍である。また本発明の方法に用いるL型プレキャストコンクリート製品6の重さは略1925kgである。
【0020】
本発明の監査路2の上に監視員通路13とするための用のL型プレキャストコンクリート製品6を載置して改修方法を次に示す。先ず、監査路2の上に監視員通路13とするためのL型プレキャストコンクリート製品6を載せるために、設置基盤となる監査路2の上面にトンネルの横断方向4の正しい位置を測量により明示する。次いで、トンネル内の監査路2の側の走行車線16の1車線を交通規制して通行できなくし、他の1車線の走行車線16を相互通行とし、幅55cmの底版6b、高さ65cmの立壁版6aおよび長さ5mのL型プレキャストコンクリート製品6をトラックに載せてこの通行できなくした走行車線16に乗り入れ、このL型プレキャストコンクリート製品6をクレーンでトラックから上記の正しい位置を明示した監査路2の上に仮置きして順次並べて行く。この仮置きが終了すると、上記した交通規制を解除する。したがって、交通規制の時間はL型プレキャストコンクリート製品6の搬入および仮置きの時間のみであり、交通障害となる時間が極めて短時間である。
【0021】
上記で仮置きしたL型プレキャストコンクリート製品6の監査路2に固定する作業は、L型プレキャストコンクリート製品6の立壁版6aの内側である底版6bの上で全て実施する。先ず、既存の監査路2の上面は本来凹凸のない平面に施工されている。しかし、何らかの施工誤差で監査路の上面に凹凸があると、L型プレキャストコンクリート製品6を監査路2の上面と平行に堅固な状態で確実に保持できない。そこで、L型プレキャストコンクリート製品6の四隅部に設けた孔6fに予め設けた高さ調整用ボルト7を回転して監査路2の上面と平行になるように調整する。この時、L型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの上とトンネル側壁1との間に、2mの建築限界14がとれていることを確認し、L型プレキャストコンクリート製品6の設置位置の微調整を図るものとする。この調整に併せてトンネル側壁1とL型プレキャストコンクリート製品6の底版6bの端部との間の間隙8に逆台形状の楔9を打ち込み、走行自動車が走行車線16から外れてL型プレキャストコンクリート製品6の立壁版6aに衝突しても、L型プレキャストコンクリート製品6がトンネル側壁1の方へ移動しないものとする。さらに、これらの間に、図5に示すように、手摺り12をベースプレート12aによりL型プレキャストコンクリート製品6の立壁版6aの上端6cに順次設けて行く。
【0022】
上記のように監査路2の上面の測量により明示した位置にL型プレキャストコンクリート製品6を固定すると、このL型プレキャストコンクリート製品6と隣接するトンネルの長手方向のL型プレキャストコンクリート製品6との間を予め設けていた連結用固定金具6gをボルトねじで順次固定して接続する。このようにして順次トンネル内の全ての監査路2の上面にL型プレキャストコンクリート製品6を載置し肯定し連接すると、この改造作業は終了する。
【符号の説明】
【0023】
1 トンネル側壁
2 監査路
3 鉛直方向(トンネルの)
4 横断方向(トンネルの)
5 長手方向(トンネルの)
6 L型プレキャストコンクリート製品
6a 立壁版
6b 底版
6c 上端(立壁版の)
6d 長手方向端部(立壁版の)
6e 端部(底版の)
6f 孔(底版の四隅部に設けた)
6g 連結用固定金具
7 高さ調整用ボルト
8 間隙(底板とトンネル側壁間の)
9 楔
10 モルタル
11 フレッシュコンクリート
12 手摺り
12a ベースプレート
13 監視員通路
14 建築限界(2mの)
15 水路
16 走行車線
17 円形水路
18 裏込め材
19 水抜き孔
20 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の既設の監査路の上に垂直な立壁版と水平な底版からなるL型プレキャストコンクリート製品を載置して監査路を監視員通路に改造する方法において、垂直な立壁版と水平な底版からなるL型プレキャストコンクリート製品の底版の端部とトンネル側壁の間に間隙を設け、さらにL型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に高さ調整用ボルトを挿着しかつ立壁版の長さ方向の両側の端に連結用固定金具を取付けたL型プレキャストコンクリート製品を既存の監査路に仮置きし、この状態としたL型プレキャストコンクリート製品と同様としたL型プレキャストコンクリート製品を順次トンネルの長手方向に仮置きし、仮置きしたL型プレキャストコンクリート製品の底版の上部のトンネル側壁との間に規定の高さ2mの建築限界を確保し、L型プレキャストコンクリート製品の底版の端部とトンネル側壁の間の間隙に、該間隙の形状に倣った幅からなる一定長さの楔を挿着し、一方、L型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に挿着した高さ調整用ボルトを回転してL型プレキャストコンクリート製品の底版の高さを調整し、連接して仮置きしたL型プレキャストコンクリート製品の端部を順次に連結用固定金具で連結することを特徴とする既設の監査路を監視員通路に改造する方法。
【請求項2】
L型プレキャストコンクリート製品の底版の四隅部に高さ調整用ボルトを挿着しかつ立壁版の長さ方向の両側の端に連結用固定金具を取付けたL型プレキャストコンクリート製品を既存の監査路に仮置きする方法は、改造する監査路を有する側のトンネル内の走行車線の一車線を通行止めとする交通規制をして、この通行止めの期間内に仮置きするためのL型プレキャストコンクリート製品をトラックでトンネル内に搬送してクレーンで監査路上に順次仮置きし、仮置きが終了すると交通規制を解除して通行可能とすることを特徴とする請求項1に記載の既設の監査路を監視員通路に改造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−87554(P2012−87554A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235815(P2010−235815)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000161817)ケイコン株式会社 (37)