説明

LEDの駆動法、駆動装置およびLED照明装置

【課題】 複雑な構成をとることなく、確実に特定波長の光出力が得られるようにLEDを駆動するLEDの駆動方法を提供する。
【解決手段】 LEDの駆動方法であって、LEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、LEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御ステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発行ダイオード(以下、LEDと記す)を駆動するための駆動法、駆動装置、およびLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーと環境への配慮の両立する照明装置として、LEDを用いた照明装置が注目を集めている。LEDを用いた照明装置は、低消費電力、省スペースという利点を有する半面、LEDは半導体素子であり、LEDを用いた照明装置の駆動回路を設計する場合、LEDを安定して駆動できるように配慮する必要がある。
【0003】
下記特許文献1は、DAコンバータを直列に複数段接続してLEDの輝度・色調の調整を行うように構成されたLED駆動回路の一例を示している。特許文献1の駆動回路では、出力段の駆動回路に定電流回路を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDを用いた照明装置は上述のような利点を有するため、様々な分野への応用が期待されている。例えば、LED照明を植物育成に用いることを考慮する。植物の葉緑素は、特定波長に光吸収のポイントがあることが知られている。よって、特定波長の光を出力するようにLED駆動回路を構成すると、このような分野にLED照明装置を普及させることができる。ここで、LEDが特定波長で発光するよう駆動回路を構成することを考えると、一般的には、発光波長を検出し、出力光波長が一定になるように駆動回路を帰還制御することが考えられる。しかしながら、このような帰還制御による駆動回路は、回路構成が複雑であることや、所望の発光波長が安定して得られるような回路構成を量産レベルで実現できるかについて確定的な答えが得られていない等、採用するには問題のある手法である。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、複雑な構成をとることなく、確実に特定波長の光出力が得られるようにLEDを駆動する駆動法、駆動装置およびLED照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの側面によれば、LEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、LEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御ステップを有するLEDの駆動方法が提供される。
【0008】
上記構成によれば、複雑な構成をとることなく、確実に特定波長の光出力が得られるようにすることができる。
【0009】
駆動電流制御ステップにおいて、駆動電流を所定の周期で増減させるように制御しても良い。
【0010】
駆動電流制御ステップにおいて、駆動電流を所定範囲の振幅で変動させるよう制御しても良い。
【0011】
本発明の別の側面によれば、LEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、LEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御部と、駆動電流制御部で定められる駆動電流値に従ってLEDを駆動する駆動部と、を備えるLEDの駆動装置が提供される。
【0012】
上記構成によれば、複雑な構成をとることなく、確実に特定波長の光出力が得られるようにすることができる。
【0013】
本発明の別の側面によれば、少なくとも一つのLEDを有するLEDユニットと、少なくとも一つのLEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、少なくとも一つのLEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御部と、駆動電流制御部で定められる駆動電流値に従って少なくとも一つのLEDを駆動する駆動部と、を備えるLED照明装置が提供される。
【0014】
上記構成によれば、複雑な構成をとることなく、確実に特定波長の光出力が得られるようにすることができる。
【0015】
上記LEDの駆動装置またはLED照明装置において、駆動電流制御部は、駆動電流を所定の周期で増減させるよう制御しても良い。また、駆動電流制御部は、駆動電流を所定範囲の振幅で変動させるよう制御しても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複雑な構成をとることなく、確実に特定波長の光出力が得られるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるLED駆動回路の構成を表すブロック図である。
【図2】図2は、図1のLED駆動回路の電流値制御部によって制御される駆動電流の波形を示す図である。
【図3】図3は、図1のLED駆動回路の定電流駆動部の構成の一例を表す回路図である。
【図4】図4は、デジタル制御によって台形波或いは三角波を生成する回路の一例を示す図である。
【図5】図5は、アナログ制御によって台形波或いは三角波を生成する回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態によるLED駆動回路10の構成を表すブロック図である。以下で詳細に説明するように、LED駆動回路10は、LED列5が所望の特定波長(以下、特定波長λと記す)の光を出力する様に構成される。LED駆動回路10が、例えば植物育成用の照明装置として用いられる場合には、特定波長λは、例えば葉緑素の光吸収ポイントに設定される。なお、LED列5に用いられるLEDとしては、例えば緑色LED、あるいは紫外線発光LED等を想定することができる。
【0019】
図1に示すようにLED駆動回路10は、電流値制御部1、定電流駆動部3、およびLED列5を有する。LED駆動回路10において、定電流駆動部3は、電流値制御部1によって設定される電流設定値にしたがってLED列5を定電流駆動する定電流回路である。電流値制御部1は、定電流駆動部3の電流値を設定するように動作する。図2は、電流値制御部1によって制御される駆動電流の波形を示す図である。なお、図2において、横軸は時間、縦軸はLED列5の駆動電流値である。図2に示すように、電流値制御部1は、定電流駆動部3によるLED列5の駆動電流が周期Tで変化するように制御する。ここで、駆動電流Iが、LED列5のLEDが特定波長λで発光する電流値であるものとする。本実施形態では、図2に示すように、駆動電流Iの周りで電流値を緩やかに変動(増加或いは減少)させる。この構成によって、LED列5を必ず駆動電流Iで駆動できることとなり、特定波長λの光出力を必ず得ることができる。
【0020】
一般に、LEDの発光スペクトルはバンドギャップ(すなわち、順方向電圧)によって定まるが、この発光スペクトルは、周囲温度、駆動電流値等の環境条件によって変動する。よって、電流値制御部1は、たとえ環境条件が変化しても確実に特定波長λの発光スペクトルが得られるように、駆動電流を所定の範囲で周期的に変化させるように動作する。図2において電流値Iは、平均的な周囲温度(例えば25℃)の場合にLED列5のLEDが特定波長λで発光する電流値であるものとする。また、電流値I、Iによって規定される範囲は、周囲温度が使用温度範囲の上限(例えば35℃)或いは下限(例えば15℃)となっても、特定波長λで発光する電流値が確実にこの範囲内に含まれることを保証する電流値の範囲であるものとする。このように、駆動電流値を所定範囲で周期的に変化させることによって、たとえ環境温度が変化しても特定波長λの光出力を確実に得ることができる。なお、図2の例の台形の駆動波形を詳細に説明すると、時刻0のポイントの駆動電流の下限値Iを、時刻tにおいて上限値Iに到達するようにする漸増させる、その後上限値を時刻tまで維持してから駆動電流値を漸減させ時刻tにおいて下限値Iに至るようにする。その後、駆動電流の下限値Iを時刻tまで維持し、再び同様の制御を繰り返し実行する。
【0021】
なお、図2のような駆動電流波形は、比較的簡単な回路で実現することができる。例えば、カウンタ回路と抵抗ラダーによるDA変換回路を用いた制御回路を構成し、カウンタの動作を制御することによって任意の周期の周期的な信号(三角波、台形波など)を生成することができる。
【0022】
図4に、デジタル制御によって台形波或いは三角波を生成する回路の一例を示す。図4の台形波生成回路20は、発振器21、カウンタ23、制御部25、リセット部27、極性制御部31、オフセット設定部33、加算器35、およびDAC(DAコンバータ)37を有する。カウンタ23は、発振器21からのクロック信号に応じたカウント値を出力する。制御部25は、カウンタ23のカウント値が所定値に達したらリセット部27を介してカウンタ23をリセットするように動作する。制御部25がカウンタ23にリセットをかける値を設定することによって、出力台形波の周期と傾斜部の時間とを制御することができる。極性制御部31は、制御部25からの制御信号にしたがってカウンタ23の出力値の極性を制御するように動作する。すなわち、極性制御部31によって、カウンタ23の出力値にしたがって台形波の立ち上がりの傾斜と、立ち下がりの傾斜を生成することができる。加算器35は、極性制御部31の出力信号とオフセット設定部33の出力を加算することによって、DAC37への入力にオフセットを与えることができる(すなわち、台形波をプラス側にオフセットさせる)。DAC37は、加算器35からの出力にしたがってアナログ信号を生成する。上記構成によれば、台形波の下側の電圧は、オフセット設定部33によるオフセット値によって設定することができ、また、台形波の上側の電圧は、加算器35からDAC37に入力されるデータを制御することによって設定することができる。
【0023】
図5に、アナログ制御によって台形波或いは三角波を生成する回路の一例を示す。図5の台形波生成回路50は、発振器51、カウンタ53、積分回路55、加算回路57、およびオフセット設定部61を有する。カウンタ53は、発振器51から入力されるクロック信号に応じたカウント値を出力する。積分回路55は、カウンタ53の出力を積分することによって、図5に示すように台形上の波形を生成する。加算回路57は、積分回路55の出力とオフセット設定部61からのオフセット信号を加算した信号を生成する。その結果、台形波(或いは三角波)を出力することができる。上記構成によれば、カウンタ53によって出力台形波の周期を制御することができる。また、出力台形波の立ち上がり、立ち下がりは積分回路で制御することができる。出力台形波の下側の電圧のオフセットは、オフセット設定部61のオフセット値で設定することができ、また、出力台形波の上側の電圧は加算回路の利得で制御することができる。なお、オフセット設定部61及び加算回路57の下に円で囲んだ部分に、それぞれの具体的な回路構成例を示した。
【0024】
図3に、定電流駆動部3の構成の一例としての定電流回路の回路図を示す。図3に示すように、定電流駆動部3は、オペアンプOPを用いた負帰還増幅回路として構成されており、出力段トランジスタTrのエミッタに接続された抵抗によってLED列5に流れる電流を検出し、その検出結果を帰還回路を介してオペアンプOPに帰還させる構成となっている。この構成により、電流値制御部1による設定にしたがって、LED列5を定電流駆動することができる。
【0025】
以上述べた本発明の実施形態によれば、複雑な回路構成をとることなく、比較的簡単な回路構成で、確実に特定波長λの光出力を得ることができる。上述の実施形態のLED駆動回路10の構成は、量産化に適しており、LED照明装置の様々な分野への応用を促進するキーとなる事が理解されるべきである。
【0026】
なお、上記LED駆動回路10を用いたLED照明装置の応用分野は、上述の植物育成の分野以外にも様々なものを考慮することができる。例えば、二酸化チタン光触媒を利用した空気清浄機での紫外線発光用のLED光源としての応用である。また、同様の原理を用いた汚水処理設備への応用も考えられる。
【0027】
上述の実施形態は、本発明の範囲内で様々に変形することができる。例えば、図2に示した駆動電流は台形の形状となっているが、駆動電流は周期的な波形で比較的穏やかな傾斜部を有するものであれば、三角波など様々な波形を用いることができる。なお、駆動電流の周期についても、かならずしも、周期が常に一定である必要はないことは、上述の説明から明らかであろう。すなわち、駆動電流の周期は、例えば時間帯によって変動しても、上述の実施形態における効果と同様の効果を達成することができる。
【0028】
LED列5に含まれるLEDは、例えば、緑色LED、あるいは紫外線発光LED等が考えられるが、それに限られないことは言うまでもない。白色LED(擬似白色LED)、赤色LED、或いは青色LED等を駆動する場合においても、上述のLED駆動回路を用いて特定の波長が得られるように構成することが考えられる。
【符号の説明】
【0029】
1 電流値制御部
3 定電流駆動部
5 LED列
20 台形波生成回路
21 発振器
23 カウンタ
25 制御部
27 リセット部
31 極性制御部
33 オフセット設定部
35 加算器
37 DAC
50 台形波生成回路
51 発振器
53 カウンタ
55 積分回路
57 加算回路
61 オフセット設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、前記LEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに前記駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御ステップを有すること、を特徴とするLEDの駆動方法。
【請求項2】
前記駆動電流制御ステップにおいて、前記駆動電流を所定の周期で増減させること、を特徴とする請求項1に記載のLEDの駆動方法。
【請求項3】
前記駆動電流制御ステップにおいて、前記駆動電流を所定範囲の振幅で変動させること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のLEDの駆動方法。
【請求項4】
LEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、前記LEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに前記駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御部と、
前記駆動電流制御部で定められる駆動電流値に従って前記LEDを駆動する駆動部と、を備えることを特徴とするLEDの駆動装置。
【請求項5】
前記駆動電流制御部は、前記駆動電流を所定の周期で増減させること、を特徴とする請求項4に記載のLEDの駆動装置。
【請求項6】
前記駆動電流制御部は、前記駆動電流を所定範囲の振幅で変動させること、を特徴とする請求項4または請求項5に記載のLEDの駆動装置。
【請求項7】
少なくとも一つのLEDを有するLEDユニットと、
前記少なくとも一つのLEDが特定波長で発光する所定の電流値を含むように、前記前記少なくとも一つのLEDを駆動する駆動電流を増加または減少させ、さらに前記駆動電流を増加または減少させる動作を周期的に実行する駆動電流制御部と、
前記駆動電流制御部で定められる駆動電流値に従って前記少なくとも一つのLEDを駆動する駆動部と、を備えることを特徴とするLED照明装置。
【請求項8】
前記駆動電流制御部は、前記駆動電流を所定の周期で増減させること、を特徴とする請求項7に記載のLED照明装置。
【請求項9】
前記駆動電流制御部は、前記駆動電流を所定範囲の振幅で変動させること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載のLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16694(P2013−16694A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149303(P2011−149303)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(310016795)株式会社ブリンツテクノロジー (17)
【出願人】(503455802)
【Fターム(参考)】